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特許7379418腫瘍のディープシークエンシングプロファイリング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】腫瘍のディープシークエンシングプロファイリング
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20231107BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20231107BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALI20231107BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20231107BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6837 Z
G01N33/50 P
G01N33/53 M
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021110459
(22)【出願日】2021-07-02
(62)【分割の表示】P 2018536830の分割
【原出願日】2016-11-07
(65)【公開番号】P2021176302
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】62/279,126
(32)【優先日】2016-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/415,952
(32)【優先日】2016-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511286517
【氏名又は名称】ヴェンタナ メディカル システムズ, インク.
(73)【特許権者】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アレキサンダー, ネルソン
(72)【発明者】
【氏名】バージェス, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】スタニスワフ, ステーシー
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンバウム, ハイジ
【審査官】井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-520202(JP,A)
【文献】国際公開第2011/002029(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/6869
C12Q 1/686
C12Q 1/6837
G01N 33/50
G01N 33/53
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ホモジナイズされた試料から少なくとも約10マイクログラムのゲノム材料を単離すること;
(b)前記単離されたゲノム材料を標的特異的捕捉プローブにハイブリダイズさせること;
(c)前記捕捉プローブにハイブリダイズされたゲノム材料を捕捉すること;および
)捕捉されたゲノム材料を配列決定すること、
を含む標的提示シークエンシングの方法であって、
捕捉前増幅サイクルは、抽出されたゲノム材料をビーズ上に捕捉する前に実行されず、かつ、
最大4回の捕捉後増幅サイクルは、配列決定の前に、捕捉されたゲノム材料に対して実施される、標的提示シークエンシングの方法。
【請求項2】
ホモジナイズされた試料から少なくとも約10マイクログラムのゲノム材料を単離することは、
(i)腫瘍試料、リンパ節試料または血液試料の少なくとも1つをホモジナイズして、ホモジナイズされた試料を提供すること;
(ii)ホモジナイズされた試料内の細胞成分を溶解して、溶解されたホモジナイズされた試料を提供すること;および
(iii)溶解されたホモジナイズされた試料からゲノム材料を抽出すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抽出されたゲノム材料は、腫瘍試料、リンパ節試料または血液試料の少なくとも1つのうちに存在する核酸を代表し;かつ、腫瘍試料、リンパ節または血液試料の少なくとも1つのうちの細胞の不均一性は、ホモジナイズされた試料内に実質的に均一に分布する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
約90ngから約900ngのゲノム材料が捕捉される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ホモジナイズされた試料は、標的核酸分子および非標的核酸分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
単離されたゲノム材料を捕捉することは、
(i)標的核酸分子を1又は複数の捕捉プローブにハイブリダイズすること;
(ii)非標的核酸分子を除去すること;および
(iii)1又は複数の捕捉プローブから標的核酸分子を放出させること
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
約10マイクログラムから約100マイクログラムのゲノム材料が単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
約10マイクログラムから約250マイクログラムのゲノム材料が単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
1回から3回の捕捉後増幅サイクルが、配列決定の前に、捕捉されたゲノム材料に対して実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
1回または2回の捕捉後増幅サイクルが、配列決定の前に、捕捉されたゲノム材料に対して実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
捕捉後増幅サイクルが、配列決定の前に、捕捉されたゲノム材料に対して実施されない、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
捕捉されたゲノム材料を配列決定することは、次世代シークエンシング技術を用いて実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
配列決定することは、合成シークエンシング法を用いて実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ホモジナイズされた試料から除去されたアリコートは、実質的に同一な成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ホモジナイズされた試料から除去されたアリコートは、実質的に同一な成分を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項16】
各アリコートは、同一のサブクローンを含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互参照]
本出願は、2016年11月1日に出願された米国仮特許出願第62/415952号の出願日の利益と2016年1月15日に出願された米国仮特許出願第62/279126号の出願日の利益を主張し、それら出願の開示を、その全体について出典明示によりここに援用する。
【0002】
[主題の開示の分野]
本開示は、標的提示(targeted representational)シークエンシングワークフローを提供する。
【背景技術】
【0003】
現在の診断腫瘍学は、腫瘍の一部から採取された情報を利用しており、腫瘍がその組成において均一である細胞からなっているという仮定に基づいている。組成が均一であるというよりはむしろ、多くの腫瘍は不均一である。実際、幾つかの固形腫瘍は、均一であるというよりむしろ、複数の遺伝的に異なり、空間的に分離されたがん細胞集団からなることが報告されている。Gerlinger等, NEJM (2012) 366:883-92;及びYachida等 Nature (2010) 467(7319):1114-1117。常套的な組織学的方法論は、例えば、形態学や他の特徴に基づいて、分析のために複数の生検試料を選択することでこの不均一性に対処している。例えば、生検試料は腫瘍の複数の領域から採取され、採取された各試料は約0.1立方センチメートルの組織を含む。これらの方法は、腫瘍組織のより多くや腫瘍の異なる空間領域を検査する。しかし、このような方法を使用してアッセイされる腫瘍の大部分は、サンプリングされないまま残る。同様に、常套的な方法は、がん患者のリンパ節のほんの一部のみをサンプリングし、組織の大部分をサンプリングしない。これら試料の小さいサイズが、シークエンシングのような、利用される更なる診断段階をまた制限する場合がある。
【0004】
固形腫瘍は、三次元腫瘍塊の全体にわたって空間的に分離された数百から数千の変異対立遺伝子を含んでいる。配列捕捉のための伝統的な方法は、図2に示すような(例えば、生検検体から)ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片から単離された極めて少量の入力DNA(約5から約200ナノグラム)を利用している。典型的な配列捕捉法は、今日の臨床病理研究室での入力DNA要件に適合するように発展してきた。配列捕捉ワークフローでは、少量の入力DNAと数工程でのDNAの損失のため、DNA断片を増幅させなければならないか、シークエンシングが実施される捕捉ワークフローの終わりに残るのがあまりにも少ない。この増幅は、一般に二回、すなわち特異的プローブ捕捉の前の一回目と、選択された標的の特異的プローブ捕捉に続く二回目に、実施される(図1及び2を参照)。この増幅は、後続のプロトコル工程に利用可能なDNAの絶対質量を増加させるのには有用であるが、存在する情報量を増加させない。むしろ、如何なる特定の理論に縛られることを望むものではないが、異なるDNA断片の集団が同じ反応(すなわちマルチプレックスPCR)で増幅される場合、増幅のプロセスが、元の試料内に含まれていた情報を改変しうる。例えば、二つの異なるDNA断片A及びBがそれぞれ1コピー(1:1の数値比)で試料中に最初に存在する場合、PCRは、1000コピーのDNA断片Aと2000コピーのDNA断片B(1:2の数値比)を含む増幅試料になりうる。より少数の個々の分子が増幅プロセスへの入力として使用される場合、また増幅量が増加される(すなわち、より多数のPCRサイクルが適用される)場合、元の情報にバイアスが取り込まれるリスクが増大すると考えられる。
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様は、配列決定の前に最小の増幅プロセスが必要とされるか増幅プロセスが全く必要とされないように十分な量のゲノム材料を含む入力試料が提供される、標的シークエンシングワークフローである。幾つかの実施態様では、入力試料はインタクトな腫瘍に又はリンパ節に由来する。幾つかの実施態様では、入力試料は、ここで更に検討されるように、インタクトな腫瘍試料(全体又は一部)及び/又は患者もしくは哺乳動物被験体から得られた一又は複数のリンパ節のホモジナイゼーションによって得られる。幾つかの実施態様では、入力試料は、全血又はその任意の画分を含む十分な量の血液に由来する。幾つかの実施態様では、入力試料はがん性組織に由来する。幾つかの実施態様では、入力試料は、前がん性組織に由来する。
【0006】
幾つかの実施態様では、標的シークエンシングワークフローは、配列決定の前に一又は複数の増幅工程(例えば、捕捉前増幅工程、捕捉後増幅工程)を含み、配列決定前の各増幅工程は0~3増幅サイクルを含み、配列決定前の増幅サイクルの総計は4を超えない。他の実施態様では、標的シークエンシングワークフローは、配列決定の前に一又は複数の増幅工程(例えば、捕捉前増幅工程、捕捉後増幅工程)を含み、配列決定前の各増幅工程は0~2増幅サイクルを含み、配列決定前の増幅サイクルの総計は3を超えない。更に他の実施態様では、標的シークエンシングワークフローは、配列決定の前に一の増幅工程(例えば、捕捉前増幅工程又は捕捉後増幅工程)を含み、配列決定前の単一の増幅工程は0~3増幅サイクルを含む。更なる実施態様では、標的シークエンシングワークフローは、配列決定の前に一の増幅工程を含み、配列決定前の単一の増幅工程は1~3サイクルを含む。また更なる実施態様では、標的シークエンシングワークフローは、配列決定の前に一の増幅工程を含み、配列決定前の単一の増幅工程は1サイクルを含む。また更なる実施態様では、標的シークエンシングワークフローは、配列決定の前に一の増幅工程を含み、配列決定前の単一の増幅工程は2サイクルを含む。幾つかの実施態様では、捕捉前増幅工程又は捕捉後であるが配列決定前の増幅工程の何れか又は両方がLM-PCRを利用する。
【0007】
幾つかの実施態様では、入力試料は、腫瘍試料、リンパ節試料、血液試料、又はそれらの任意の組み合わせに由来する細胞の代表的サンプリングを含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、がんと診断された患者又は哺乳動物被験体由来の腫瘍試料、リンパ節試料、血液試料、又はそれらの任意の組み合わせに由来する細胞の代表的試料を含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、がんを有すると疑われる患者又は哺乳動物被験体由来の腫瘍試料、リンパ節試料、血液試料、又はそれらの任意の組み合わせに由来する細胞の代表的試料を含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、がんを発症する危険性がある患者又は哺乳動物被験体由来の腫瘍試料、リンパ節試料、血液試料、又はそれらの任意の組み合わせ由来の細胞の代表的試料を含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、がんの再燃(relapse)又は再発(recurrence)が既知か又は疑われる患者又は哺乳動物被験体由来の腫瘍試料、リンパ節試料、血液試料、又はそれらの任意の組み合わせ内の細胞の代表的試料を含む。
【0008】
幾つかの実施態様では、入力試料は、腫瘍試料、リンパ節試料、又は血液試料に由来する細胞の不均一集団を含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、腫瘍試料、リンパ節試料又は血液試料内の少数の所定の腫瘍細胞集団を表すサブクローン(すなわち、腫瘍不安定性の結果として生じる異なる腫瘍細胞集団)を含む。幾つかの実施態様では、本方法は、入力試料中に2%未満の対立遺伝子頻度を有するもののような稀なゲノムバリアントの検出及び/又は配列決定を可能にする。幾つかの実施態様では、本方法は、入力試料中に1%未満の対立遺伝子頻度を有するもののような稀なゲノムバリアントの検出及び/又は配列決定を可能にする。
【0009】
幾つかの実施態様では、入力試料は、例えば、複数の組織学的切片及び/又は複数の生検試料から得られる、十分な量の組織学的切片及び/又は生検試料に由来する。幾つかの実施態様では、組織学的切片及び/又は生検試料に由来する入力試料は、少なくとも0.5マイクログラムのゲノム材料を含む。他の実施態様では、組織学的切片及び/又は生検試料に由来する入力試料は、少なくとも1マイクログラムのゲノム材料を含む。他の実施態様では、組織学的切片及び/又は生検試料に由来する入力試料は、少なくとも5マイクログラムのゲノム材料を含む。他の実施態様では、組織学的切片及び/又は生検試料に由来する入力試料は、少なくとも10マイクログラムのゲノム材料を含む。
【0010】
幾つかの実施態様では、開示された方法で使用するための入力試料内のゲノム材料の量は、伝統的な配列捕捉法で使用するための入力試料内の材料の量よりも少なくとも10倍多い。幾つかの実施態様では、開示された方法で使用するための入力試料内のゲノム材料の量は、伝統的な配列捕捉法で使用するための入力試料内の材料の量よりも少なくとも100倍多い。幾つかの実施態様では、開示された方法で使用するための入力試料内のゲノム材料の量は、伝統的な配列捕捉法で使用するための入力試料内の材料の量より少なくとも250倍多い。幾つかの実施態様では、開示された方法で使用するための入力試料内のゲノム材料の量は、伝統的な配列捕捉法で使用するための入力試料内の材料の量よりも少なくとも500倍多い。幾つかの実施態様では、開示された方法で使用するための入力試料内のゲノム材料の量は、伝統的な配列捕捉法で使用するための入力試料内の材料の量よりも少なくとも1000倍多い。幾つかの実施態様では、開示された方法で使用するための入力試料内のゲノム材料の量は、伝統的な配列捕捉法で使用するための入力試料内の材料の量よりも約1000倍多い。
【0011】
本開示の別の態様は、試料中のゲノム材料を配列決定する方法であって、腫瘍試料及び/又はリンパ節試料をホモジナイズしてホモジナイズされた試料を提供する工程;ホモジナイズされた試料から少なくとも0.5マイクログラムのゲノム材料を単離する工程;少なくとも0.5マイクログラムの単離されたゲノム材料を配列決定のために調製する工程;及び調製されたゲノム材料を配列決定する工程を含む方法である。幾つかの実施態様では、本方法は、配列決定の前に増幅工程を含まない。幾つかの実施態様では、本方法は、少なくとも一の捕捉前又は捕捉後増幅工程を含み、少なくとも一の捕捉前又は捕捉後増幅工程の間に実施される増幅サイクルの総数は多くとも4サイクルである。幾つかの実施態様では、増幅サイクルの総数は3である。幾つかの実施態様では、増幅サイクルの総数は2である。幾つかの実施態様では、配列決定のための少なくとも0.5マイクログラムの単離されたゲノム材料の調製は、少なくとも0.5マイクログラムの単離されたゲノムを捕捉プローブにハイブリダイズし、ハイブリダイズしたゲノム材料を捕捉することを含む。幾つかの実施態様では、捕捉されたゲノム材料の量は、約90ngから約900ngの範囲である。幾つかの実施態様では、1又は2回の増幅サイクルが、捕捉されたゲノム材料に対して実施される。幾つかの実施態様では、ホモジナイズされた試料は、細胞の代表的サンプリングを含む。幾つかの実施態様では、少なくとも1マイクログラムのゲノム材料が、ホモジナイズされた試料から単離される。幾つかの実施態様では、少なくとも5マイクログラムのゲノム材料が、ホモジナイズされた試料から単離される。幾つかの実施態様では、少なくとも10マイクログラムのゲノム材料が、ホモジナイズされた試料から単離される。
【0012】
本開示の別の態様は、試料内のDNAを配列決定する方法であって、血液試料から少なくとも0.5マイクログラムのDNAを単離する工程;配列決定のために少なくとも0.5マイクログラムの単離されたDNAを調製する工程、及び調製したDNAを配列決定する工程を含む方法である。幾つかの実施態様では、本方法は、配列決定の前に0の増幅工程を含む。幾つかの実施態様では、配列決定のために少なくとも0.5マイクログラムの単離されたDNAを調製する工程は、少なくとも0.5マイクログラムの単離されたゲノムを捕捉プローブにハイブリダイズさせ、ハイブリダイズさせたゲノム材料を捕捉することを含む。幾つかの実施態様では、捕捉されたゲノム材料の量は、約90ngから約900ngの範囲である。幾つかの実施態様では、捕捉されたゲノム材料に対して1又は2回の増幅サイクルが実施される。幾つかの実施態様では、少なくとも1マイクログラムのDNAが血液試料から単離される。
【0013】
本開示の別の態様は、(i)腫瘍の少なくとも一部、一又は複数の全リンパ節又は部分リンパ節、又はそれらの任意の組み合わせをホモジナイズして、ホモジナイズされた試料を提供する工程;(ii)ホモジナイズされた試料からゲノム材料を抽出する工程;(iii)抽出されたゲノム材料をビーズ上に捕捉する工程;及び(iv)捕捉されたゲノム材料を配列決定する工程を含み、標的提示シークエンシングが、捕捉されたゲノム材料の配列決定の前に最大で4回の増幅サイクルを実施することを含む、標的提示シークエンシング法である。幾つかの実施態様では、最大で3回の増幅サイクルが、抽出されたゲノム材料の捕捉前に、又は抽出されたゲノム材料の捕捉後に、又はそれらの任意の組み合わせのときに実施されうる。幾つかの実施態様では、捕捉前増幅サイクルは実施されない。幾つかの実施態様では、捕捉されたゲノム材料の量は、約90ngから約900ngの範囲である。幾つかの実施態様では、抽出されたゲノム材料の捕捉の後であるが、配列決定の前に、1~3回の増幅サイクルが実施される。幾つかの実施態様では、少なくとも0.5マイクログラムのゲノム材料が、ホモジナイズされた試料から抽出される。幾つかの実施態様では、4回を超える増幅サイクルを必要とするシークエンシング法において使用される入力材料の量と比較して、少なくとも100倍多いゲノム材料が、ホモジナイズされた試料から誘導される。
【0014】
本開示の別の態様は、少なくとも0.5マイクログラムの入力ゲノム材料であって、腫瘍試料、リンパ節試料、又は血液試料に由来する少なくとも0.5マイクログラムのゲノム材料を提供する工程;入力ゲノム試料からDNAを単離する工程、単離されたDNAを配列決定のために調製する工程、及び調製されたDNAを配列決定する工程を含み、増幅工程も含まない、試料内のDNAを配列決定する方法である。幾つかの実施態様では、前記少なくとも0.5マイクログラムの入力ゲノム材料は、複数の組織学的及び/又は生検検体に由来する。幾つかの実施態様では、前記少なくとも0.5マイクログラムの入力ゲノム材料は、ホモジナイズされた腫瘍試料に由来する。幾つかの実施態様では、前記少なくとも0.5マイクログラムの入力ゲノム材料は、ホモジナイズされたリンパ節試料に由来する。幾つかの実施態様では、前記少なくとも0.5マイクログラムの入力ゲノム材料は、それが由来する腫瘍試料、リンパ節試料、又は血液試料の代表的サンプリングである。幾つかの実施態様では、シークエンシングは、次世代シークエンシング法を使用して実施される。幾つかの実施態様では、シークエンシングは、合成シークエンシング法を使用して実施される。
【0015】
本開示の別の態様は、配列決定中のPCR取り込み変異を減少させる方法であって、十分な量のゲノム材料を含む試料からDNAを単離する工程;配列決定のために単離されたDNAを調製する工程;及び調製されたDNAを配列決定する工程を含み、配列決定の前に最大で3回の増幅サイクルを含む、方法である。幾つかの実施態様では、本方法は、配列決定の前に1又は2回の増幅サイクルを含む。幾つかの実施態様では、十分な量の入力ゲノム材料は、捕捉前増幅サイクルが利用されないような量である。幾つかの実施態様では、試料は、がんを有すると疑われる患者に由来する。幾つかの実施態様では、試料は、がんと診断された患者に由来する。幾つかの実施態様では、試料はがんを発症する危険性がある患者に由来する。幾つかの実施態様では、試料は健康な組織試料に由来する。幾つかの実施態様では、0.5マイクログラムのDNAが試料から単離される。幾つかの実施態様では、少なくとも1マイクログラムのゲノム材料が試料から単離される。幾つかの実施態様では、少なくとも5マイクログラムのゲノム材料が試料から単離される。幾つかの実施態様では、少なくとも10マイクログラムのゲノム材料が試料から単離される。
【0016】
本発明の別の態様は、PCR取り込み変異が低減される配列決定方法であって、少なくとも0.05マイクログラムのゲノム材料を捕捉する工程と、配列決定の前に0~2回の増幅サイクルを実施する工程を含む方法である。幾つかの実施態様では、0増幅サイクルが行われる。他の実施態様では、1増幅サイクルが行われる。更に他の実施態様では、2増幅サイクルが行われる。
【0017】
本開示の別の態様は、ゲノム量の比例的提示におけるPCR取り込みバイアスを減少させる配列捕捉法であって、少なくとも0.5マイクログラムのゲノム材料を含む入力試料を提供することを含み、配列決定の前に0~2増幅サイクルを実施することを含む配列捕捉法である。幾つかの実施態様では、0増幅サイクルが行われる。他の実施態様では、1増幅サイクルが行われる。更に他の実施態様では、2増幅サイクルが行われる。幾つかの実施態様では、入力試料は、少なくとも1マイクログラムのゲノム材料を含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、少なくとも5マイクログラムのゲノム材料を含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、少なくとも10マイクログラムのゲノム材料を含む。
【0018】
本開示の別の態様は、PCR取り込み変異が排除される配列捕捉法であって、少なくとも0.5マイクログラムのゲノム材料を含む入力試料を調製することを含む配列捕捉法である。幾つかの実施態様では、入力試料は、少なくとも1マイクログラムのゲノム材料を含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、少なくとも5マイクログラムのゲノム材料を含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、少なくとも10マイクログラムのゲノム材料を含む。
【0019】
本開示の別の態様は、配列決定前のPCR重複リードを除去する工程が省略された配列捕捉法であって、少なくとも0.5マイクログラムのゲノム材料を含む入力試料を提供することを含む配列捕捉法である。幾つかの実施態様では、入力試料は、少なくとも1マイクログラムのゲノム材料を含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、少なくとも5マイクログラムのゲノム材料を含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、少なくとも10マイクログラムのゲノム材料を含む。
【0020】
本開示の別の態様は、PCR取り込み変異が実質的に排除されるシークエンシング法であって、少なくとも0.05マイクログラムのゲノム材料を捕捉することを含むシークエンシング法である。幾つかの実施態様では、約0.05マイクログラムのゲノム材料が、ゲノム材料の捕捉後に提供される。幾つかの実施態様では、1又は2回の捕捉後増幅サイクルが配列決定の前に実施される。
【0021】
本開示の別の態様は、特定の治療又は活性医薬成分に応答するがんサブタイプを同定することによってがんを治療する方法であって、がんサブタイプが、腫瘍、リンパ節又は血液の代表的サンプリングを含む入力試料の配列決定によって同定され;入力試料が十分な量のゲノム材料を含み、配列決定の工程が多くとも3回の増幅サイクルを必要とする方法である。
【0022】
ここに記載されているように、伝統的なシークエンシングワークフローでは、ある種のバイアスが取り込まれうる。幾つかの例では、次世代シークエンシング(NGS)法を使用して試料を配列決定する場合、増幅されたDNA試料の情報内容におけるPCR誘発バイアスが維持されうる。従って、増幅されたDNA断片の集団へのNGSの適用は二つの欠点を生じる、すなわち(1)多数のシークエンシングリードが費用対効果が高くない同じ元の断片のコピーの重複シークエンシングに費やされ、(2)増幅プロセスによって取り込まれた数値バイアスが、元の増幅されていない試料中に存在する情報の誤った提示につながる可能性があり、これは、標的シークエンシングアッセイの主目的が試料中の異なるDNA配列の存在及び相対頻度を精確に決定することである場合に特に重要である。NGSに先立つDNA断片のPCR増幅の更なる欠点は、PCRプロセスが元の断片をコピーしながら配列エラーを生成し、ついでこれらが元の試料中に存在していたと解釈される可能性があることである。
【0023】
本出願人は、(i)配列決定の前に利用する増幅サイクルの数を最小化すること、又は(ii)配列決定の前に増幅工程を全て回避することによって、上記の欠点を改善し又は緩和する配列捕捉ワークフローを開発した。ここに提示される腫瘍の標的提示シークエンシングのための方法は、十分な量の入力ゲノムDNA及び/又は効率的な酵素断片化に基づくライブラリー調製を利用し、ワークフローの間にそのDNAを増幅させる必要性を除去するか又は大幅に低減する(図3A、3B、及び4を参照)。これは次に、試料の費用対効果の良い特徴付けを容易にし(シークエンシングリードが重複DNA断片の配列決定に浪費されないため)、出力配列データにおける増幅誘発バイアスの機会を減少させ、及び/又はシークエンシングデータに偽陽性を引き起こすPCR誘発エラーの機会を減少させると考えられる。実際、本出願人は、ワークフローからの捕捉前及び捕捉後PCRの低減又は排除が、(i)標的シークエンシングのコスト(PCRプライマー、PCR反応バッファー、及びPCR酵素のコストを取り除く)を低減し;(ii)アッセイ時間を低減し;(iii)試料間の汚染リスク(PCRプロセスのよく知られたリスク)を低減し;(iv)標的断片の差次的増幅のための配列データ中の提示バイアスのリスクを除去し又は緩和し;(v)PCR増幅中のポリメラーゼエラーによって引き起こされる偽陽性配列バリアントのリスクを除去し又は緩和し;及び/又は(vi)より単純で高速で、及び/又はエラーが起こり難いデータ解析及び解釈を容易にすることを予期せずに発見した。
【0024】
本出願人は、ここに開示された方法が、例えば図1に示されるプロセスによって取り込まれうるような、増幅によって取り込まれる等の、配列カバレッジにおける対立遺伝子及び座位のバイアスを予想外に低減し又は防止すると更に考える。従って、本出願人は、本開示方法が、がんゲノミクスにおける対立遺伝子頻度及びコピー数変動を測定する優れた方法(すなわち、より精確な方法)を提供すると考える。本出願人はまた、ここに開示される方法が、配列データの解析における重複配列リードを同定し除去する必要性が低いシークエンシングを可能にすると考える。これらの因子は、がん患者のゲノムDNA中に存在する体細胞対立遺伝子頻度及びコピー数変動の精確な測定に対して特に重要である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
次の図面を参照して、非限定的で非網羅的な実施態様を説明する。
【0026】
図1】二工程の増幅工程を組み入れた配列捕捉ワークフローを示す。
【0027】
図2】開示された配列捕捉法と比較した伝統的な配列捕捉法の比較を提供する。
【0028】
図3A】開示された配列捕捉法の工程を示すフローチャートであり、特に、配列決定の前に増幅工程が実施されない場合を示している。
【0029】
図3B】開示された配列捕捉法の工程を示すフローチャートであり、特に、配列決定の前に任意選択の増幅工程が実施されうる場合を示している。
【0030】
図4】開示された標的提示シークエンシングワークフローと比較した伝統的な標的シークエンシングワークフローの更なる比較を提供する。現行の標的シークエンシングプロトコル(左欄)、例えばビオチン化捕捉オリゴヌクレオチドを用いたハイブリダイゼーションに依存するプロトコルは、ワークフロー中に試料DNAマスを増加させるために多数のPCR増幅サイクル(この実施例では合計21サイクル)を組み入れている。標的提示シークエンシングワークフロー(右欄)は、示されているように(0~2回の増幅サイクル)又はここでの他の実施態様に記載されているようにワークフロー中の全増幅を低減させる。ワークフロー中のPCR増幅工程は白抜きボックスで示されている。
【0031】
図5】基本的なSeqCap EZ配列捕捉データ解析ワークフローの概略を示す。配列捕捉実験からのシークエンシングリードは、広く使用されている「FASTQ」ファイルフォーマットでまとめられている。配列リードのクオリティは、プログラム「FastQC」を使用して評価され、解析を続行するのに十分なクオリティのデータであるかどうかが判定される。次に、任意のシークエンシングアダプター及び低クオリティリードが、プログラム「Trimmomatic」を使用して除外され、残りのリードを、プログラム「BWA mem」を使用してリファレンスゲノムに効率的にマッピングすることができる。「SAMtools fixmate」プログラムは、ペアの両方のリードに対して一貫性のある情報が現れるようにする。「SAMtools sort」プログラムは、ゲノムソート順に従って出力ファイルを整えるために使用される。マッピング後、「Picard MarkDuplicates」コマンドを使用して、PCR重複を除去し又はマークして、バリアントコールにおける対立遺伝子増幅バイアスを回避する。ついで、増幅付随重複が除去されたマッピングされたリードが、その後の解析のために「BAM」フォーマットに変換される。配列カバレッジ及び捕捉統計が、プログラム「BEDtools」、「Picard」、「GATK」を使用して作製される一方、ゲノム配列バリアントが「SAMtools」及び「BCFtools」を使用してコールされ、フィルタリングされる。これらの方法の詳細な説明は、「How to Evaluate NimbleGen SeqCap EZ Target Enrichment Data」と題された文献ロッシュ・テクニカルノート(8月25日、その開示内容は出典明示によりその全体がここに援用される)に記載されている。
【0032】
図6】ゲノムにマッピングされ、捕捉標的にアラインする(「オンターゲット」)か、又は捕捉標的の100塩基対以内に位置する(「ニアターゲット」)全ての非重複配列決定塩基のパーセンテージが、実験が0、1、2、4、6、10又は14サイクルの捕捉後増幅を利用したかどうかでは実質的に異ならないことを示している。示した実験の何れも、捕捉前増幅工程を含んでいなかった。オンターゲット又はニアターゲットにある配列決定塩基を使用して、捕捉実験における配列バリアントが同定される。実験におけるオンターゲット又はニアターゲット塩基のパーセンテージの減少は、配列バリアントを同定するために有用なデータの同じ絶対量を達成するために費用が嵩む追加の補償的シークエンシングを必要とする。増幅を特定するプロトコルと比較して、良好なオンターゲット率を維持する増幅非含有の捕捉プロトコルの予想外の能力は、補償的配列決定のために費用増加を招くことなく、増幅工程に関するコスト及び時間の節約を促進することを示している。
【0033】
図7】幾つかの最小リードデプス(≧1、≧5、≧10、≧20、≧30、≧40、及び≧50)でカバーされた捕捉標的を含む全塩基のパーセンテージが、実験が0、1、2、4、6、10又は14サイクルの捕捉後増幅を利用したかどうかでは実質的に異ならなかったことを示している。配列デプスカバレッジ分布は、捕捉標的全体にわたる配列バリアントを検出するアッセイの感度の重要な決定因子である。従って、データは、増幅を含まない捕捉プロトコルは、増幅を特定する捕捉プロトコルと同様の配列バリアントを検出する感度を有しているはずであることを示している。
【0034】
図8】一倍体ゲノムサイズ(~3000000000塩基対)を捕捉標的サイズ(4571289塩基対)で割ったものに捕捉標的内にマッピングされる配列決定された塩基のパーセンテージを掛けて計算された、リファレンスゲノム全体に対する捕捉標的中のエンリッチメント倍率を示す(全7回の実験の平均=0.667)。
【0035】
図9】リファレンスゲノムの配列と比較して、図5に記載のデータ解析パイプラインによってコールされた一塩基多型(SNP)の総数を示す。このデータは、増幅を含まない捕捉プロトコルが、増幅を特定する捕捉プロトコルと比較して同様の数のSNPをもたらすことを示している。
【0036】
図10】我々が実施した捕捉実験において同定されたこの特定のDNA試料(インターナショナルHapMapプロジェクトにより以前に遺伝子型が同定されたNA1281)の捕捉標的中に存在することが知られているSNPのパーセンテージを示す。0.903~0.919の範囲の感度が全7回の実験において計算され、0.911で計算されたPCRを含まない捕捉プロトコルの感度が他のものの中間であった。
【0037】
図11】7回の捕捉実験におけるSNP分類の特異性を示す。試料(NA12891)で検出された既知のバリアントについて、SNP分類の特異性は、正しい接合性(ホモ接合性対ヘテロ接合性)を有していたパーセンテージとして定義される。SNP分類の特異性の低下は、増幅関連対立遺伝子バイアス(例えば、ヘテロ接合性遺伝子型はホモ接合性遺伝子型として現れる可能性が高いかも知れない)の予測された結果であろう。増幅を含まない捕捉プロトコルは、増幅を特定する捕捉プロトコルと同様かそれ以上のSNP分類の特異性を示し、増幅関連対立遺伝子バイアスの定義による不存在と一致する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
一般に、本開示は、伝統的なシークエンシング法と比較して増幅サイクルの数が少なくとも最小化されている標的提示シークエンシングワークフローを提供する。如何なる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、配列決定の前の捕捉前及び/又は捕捉後PCR増幅サイクルの数を減少させる一つの方法は、ここに更に開示されるように、システム中に提供される入力DNAの量を増加させることである。本出願人は、本シークエンシングワークフローが、(i)ヌクレオチドの誤取り込みの本質的な低率による変異の取り込み、及び(ii)PCR増幅バイアスに起因する標的配列の改変した提示のリスクを低減すると考える。
【0039】
ここで使用される場合、「a」、「an」及び「the」という単数の用語は、文脈が明確にそうでないことを示さない限り、複数の指示対象を含む。同様に、「又は」という語は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、「及び」を含むことが意図される。
【0040】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」等の用語は互換的に使用され、同じ意味を有する。同様に、「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「有する(has)」等は互換的に使用され、同じ意味を有する。具体的には、前記用語の各々は、「含む(comprising)」という共通の米国特許法の定義と一致するように定義され、従って、「少なくとも次の」を意味するオープンな用語であると解釈され、また追加の特徴、限定、態様などを排除しないものと解釈される。従って、例えば、「構成要素a、b、及びcを有する装置」は、装置が少なくとも構成要素a、b及びcを含むことを意味する。同様に、「工程a、b、及びcを含む方法」という語句は、その方法が少なくとも工程a、b及びcを含むことを意味する。更に、工程及び方法は、ここでは特定の順序で概説される場合があるが、当業者は、工程及び方法の順序付けは変わりうることを認識するであろう。
【0041】
ここで使用される「増幅」という用語は、より多くの量の元の核酸を得るために核酸鋳型の元の量を増加させるプロセスを指す。
【0042】
同様に、「増幅する」という用語は、例えば、広範囲のプライマー伸長反応の任意のものを使用して核酸の一部が複製されるプロセスを指す。例示的なプライマー伸長反応には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が含まれるが、これに限定されない。具体的に述べられていない限り、「増幅する」とは、単一の複製、又は算術、対数、又は指数関数増幅を意味する。一般に、PCRは、クローニング又は精製することなく、ゲノムDNAの混合物中の標的配列のセグメントの濃度を増加させるための方法である。標的配列を増幅するためのこのプロセスは、所望の標的配列を含むDNA混合物に大過剰の2つのオリゴヌクレオチドプライマーを導入し、これにDNAポリメラーゼの存在下で正確な順序の熱サイクルを続けることからなる。2つのプライマーは、二本鎖標的配列のそれぞれの各鎖に相補的である。増幅を行うために、混合物を変性させ、次にプライマーを標的分子内のそれらの相補配列にアニーリングさせる。アニーリング後、プライマーを、相補鎖の新しい対を形成するようにポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)で伸長させる。変性、プライマーアニーリング及びポリメラーゼ伸長の工程は、所望の標的配列の高濃度の増幅されたセグメント(アンプリコン)を得るために何度も繰り返すことができる(すなわち、変性、アニーリング及び伸長が一「サイクル」を構成し;多数の「サイクル」がありうる)。所望の標的配列の増幅されたセグメントの長さは、プライマーの互いの相対位置によって決定され、従って、この長さは制御可能なパラメータである。ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)は、例えば、それぞれの開示の全体が出典明示によりここに援用される米国特許第4683202号;米国特許第4683195号;米国特許第4000159号;米国特許第4965188号;米国特許第5176995号に記載されている。
【0043】
「ゲノム量の比例的提示におけるバイアス」という語句は、ポリメラーゼがコピーすることがより困難である部分のように、増幅後にゲノムの部分が過小提示される傾向を指す。
【0044】
ここで使用される「ハイブリダイゼーション」という用語は、DNAの二つの相補鎖又はDNAとRNAのそれぞれ一つを結合させて、ワトソン及びクリック塩基対合によって又はユニバーサル核酸塩基とDNAの4つの天然核酸塩基(アデニン、グアニン、チミン及びシトシン)の一つとの対合によって二本鎖分子を形成するプロセスを指す。
【0045】
「次世代シークエンシング(NGS)」という用語は、伝統的なサンガー及びキャピラリー電気泳動ベースのアプローチと比較してハイスループットなシークエンシングを有するシークエンシング技術を指し、シークエンシングプロセスが並行して実施され、例えば、何千又は何百万の相対的に小さい配列リードを一度につくり出す。次世代シークエンシング技術の幾つかの例には、合成によるシークエンシング、ライゲーションによるシークエンシング、及びハイブリダイゼーションによるシークエンシングが含まれるが、これに限定されない。これらの技術は、比較的短い時間でより短いリード(25~500bpの程度)であるが何十万又は何百万のリードをつくり出す。「次世代シークエンシング」という用語は、Illumina、Life Technologies、及びRoche等が現在用いているいわゆる並列化シークエンシング-バイ-シンセシス又はシークエンシング-バイ-ライゲーションプラットフォームを指す。次世代シークエンシング法はまた、ナノポアシークエンシング法又は電子検出ベースの方法、例えばLife Technologiesによって商業化されたイオントレント(Ion Torrent)技術を含みうる。
【0046】
ここで使用される「核酸」という用語は、遺伝情報を伝達するヌクレオチド鎖からなる高分子量の生化学高分子を指す。最も一般的な核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)とリボ核酸(RNA)である。核酸が構築されるモノマーはヌクレオチドと呼ばれる。各ヌクレオチドは、3つの成分、すなわち、プリン又はピリミジンの窒素含有複素環塩基(核酸塩基としても知られる);及びペントース糖からなる。異なる核酸型は、そのヌクレオチド中の糖の構造が異なる;DNAは2-デオキシリボースを含み、RNAはリボースを含む。
【0047】
ここで使用される「ポリメラーゼ」という用語は、核酸の複製プロセスを触媒する酵素を指す。より具体的には、DNAポリメラーゼは、該DNAポリメラーゼが「読み取り」、鋳型として使用するDNA鎖と並んでデオキシリボヌクレオチドの重合を触媒する。新たに重合された分子は鋳型鎖に相補的であり、鋳型のパートナー鎖と同一である。
【0048】
ここで使用される場合、「シークエンシング」又は「DNAシークエンシング」は、DNAオリゴヌクレオチド中のヌクレオチド塩基、アデニン、グアニン、シトシン、及びチミンの順序を決定するための生化学的方法を指す。該用語がここで使用される場合、シークエンシングは、限定されるものではないが、並列シークエンシング又は当業者に知られている任意の他のシークエンシング法、例えば鎖終結法、迅速DNAシークエンシング法、ワンダリングスポット分析、Maxam-Gilbertシークエンシング、ダイ・ターミネーターシークエンシングを含み得、又は任意の他の現代的自動DNAシークエンシング機器を使用することができる。
【0049】
「シークエンシングライブラリー」という用語は、一定の長さに剪断され、NGSに対しては両端にアダプター及びインデックス配列を付加した、ゲノムからの核酸断片のコレクションを指す。
【0050】
ここで使用される場合、「標的配列」という語句は、増幅され、検出され、又は他の方法で分析されるべき核酸の領域を指す。
【0051】
[入力試料]
【0052】
一般に、ここに開示されるシークエンシングワークフローの一部として利用される入力試料は、腫瘍試料、例えばインタクトな腫瘍、及び/又はリンパ節に由来するか、又はぞれから調製される。「腫瘍試料」という用語は、腫瘍から、又はがん細胞を潜在的に含むか又はがん細胞を含むと疑われる試料から調製され、又はリンパ節などのがん細胞の潜在的存在について試験される試料を包含する。幾つかの実施態様では、入力試料は、ここで更に検討されるように、患者又は哺乳動物被験体から得られた腫瘍試料(全体又は部分)及び/又は一又は複数のリンパ節を(ここに記載のように)ホモジナイズすることによって得られる。他の実施態様では、入力試料は、血液、例えば全血又は全血の構成部分に由来する。幾つかの実施態様では、入力試料は、組織学的切片又は生検試料から、例えば複数の組織学的切片又は複数の生検試料から得ることができる。
【0053】
幾つかの実施態様では、入力試料は、腫瘍(例えば、腫瘍試料)、リンパ節又は血液内の細胞の代表的サンプリングである。ここで使用される「代表的試料」及び「代表的サンプリング」という用語は、全体の成分を精確に反映する試料(又は試料のサブセット)を指し、よって、試料は全集団の偏りのない指標である。一般に、これは、代表的試料又はその一部内の異なるタイプの細胞及びそれらの相対的な割合又はパーセンテージが、組織検体全体内、一般には固形腫瘍又はその一部内のこれら細胞型の相対割合又はパーセンテージを本質的に精確に反映し又は模倣することを意味する。サンプリングは、後続の分析のために物体の部分を確保する操作である。代表的試料は、研究されている物体の合理的に近い知識が得られうるような方法で作製される。対照的に、常套的な無作為サンプリング法は、一般に「代表的試料」を生じない。より大きい試料からのより小さい個々のサブ試料の選択は、選択された領域に基づいて偏りがありうるが、大きな試料、例えば腫瘍又はリンパ節全体をホモジナイズすると、試料全体に均一に分散されている空間的に分離された要素となる。
【0054】
幾つかの実施態様では、入力試料は、がんと診断された患者又は哺乳動物被験体由来の腫瘍試料、リンパ節試料、血液試料、又はそれらの任意の組み合わせに由来する細胞の代表的試料を含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、がんを有すると疑われる患者又は哺乳動物被験体由来の腫瘍試料、リンパ節試料、血液試料、又はそれらの任意の組み合わせに由来する細胞の代表的試料を含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、がんを発症する危険性がある患者又は哺乳動物被験体由来の腫瘍試料、リンパ節試料、血液試料、又はそれらの任意の組み合わせ由来の細胞の代表的試料を含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、がんの再燃又は再発が知られ又は疑われる患者又は哺乳動物被験体由来の腫瘍試料、リンパ節試料、血液試料、又はそれらの任意の組み合わせ内の細胞の代表的試料を含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、がんを発症する危険性がある患者の腫瘍試料、リンパ節試料、又は血液試料内の細胞の代表的サンプリングを含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、健康な患者由来の組織試料又は血液試料内の細胞の代表的サンプリングを含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、必要量のDNAを精製するのに十分な数の組織学的切片を含む。
【0055】
一実施態様では、ここに開示される代表的な例は、被験体から得られた大きな体積又は量の腫瘍試料(臨床腫瘍試料など)又はリンパ節のホモジナイゼーションによって得られる。例えば、腫瘍全体又はその実質的な部分を、代表的試料が生成される入力材料として使用することができる。幾つかの実施態様では、腫瘍又はリンパ節(又は常套的なFFPE試料の調製に使用可能な部分の除去などの他の診断試験の実施のための部分の除去後に残るその部分)の少なくとも40%が、ホモジナイゼーションに利用される。他の実施態様では、腫瘍又はリンパ節の少なくとも50%がホモジナイゼーションに利用される。他の実施態様では、腫瘍又はリンパの少なくとも60%がホモジナイゼーションに利用される。他の実施態様では、腫瘍又はリンパ節の少なくとも70%がホモジナイゼーションに利用される。他の実施態様では、腫瘍又はリンパの少なくとも80%がホモジナイゼーションに利用される。他の実施態様では、腫瘍又はリンパ節の少なくとも90%がホモジナイゼーションに利用される。他の実施態様では、腫瘍又はリンパ節の少なくとも95%がホモジナイゼーションに利用される。更に他の実施態様では、腫瘍全体、リンパ節全体、又はリンパ節の全集団(又は常套的なFFPE試料の調製に使用可能な部分の除去などの他の診断試験の実施のための部分の除去後に残るその部分)がホモジナイゼーションに使用される。
【0056】
代表的試料は、固形腫瘍由来のインタクトな腫瘍生検試料から作製されうる。幾つかの実施態様では、生検試料は、少なくとも約100~200個の細胞を含む。他の実施態様では、生検試料は少なくとも約200~1000個の細胞を含む。更に他の実施態様では、生検試料は、少なくとも約1000~5000個の細胞を含む。更なる実施態様では、生検試料は、少なくとも約10000~100000個の細胞を含む。なお更なる実施態様では、生検試料は、少なくとも約100000~1000000個又はそれ以上の細胞を含む。幾つかの実施態様では、細胞は、腫瘍の空間的に異なる領域から得られる。別の実施態様では、ここに開示される代表的な例は、例えば遺伝子変異又は以前のがんのためにがんを発症する危険性がある者を含む、がんを発症する危険性がある患者又は哺乳動物被験体に由来する一又は複数の推定正常組織検体のホモジナイゼーションによって得られる。ここで使用される場合、「空間的に異なる」という用語は、空間の異なる領域に分布する要素を指す。一実施態様では、代表的試料を作製するために使用される腫瘍生検試料は、腫瘍試料の異なる領域から採取される。例えば、腫瘍全体内の多様性を捕捉する努力のなかで、腫瘍の近位領域対遠位領域、腫瘍の異なる面、腫瘍の異なる層等々。
【0057】
「ホモジナイズする」又は「ホモジナイゼーション」という用語は、生物学的試料が、試料の全ての画分が等しい組成である状態になされるプロセス(例えば機械的プロセス及び/又は生化学的プロセス)を指す。(上で定義された)代表的試料は、ホモジナイズされた試料の一部を除去することによって調製されうる。ホモジナイズされた試料(「ホモジネート」)は、試料の一部(アリコート)を除去しても残りの試料の全体的な構成を実質的に変化させず、除去されたアリコートの成分が、残りの試料の成分と実質的に同一であるように十分に混合される。本開示において、「ホモジナイゼーション」は、一般に、試料内の細胞の大部分の完全性を保存し、例えば、試料中の細胞の少なくとも50%は、ホモジナイゼーションプロセスの結果として破壊又は溶解されない。他の実施態様では、ホモジナイゼーションは、試料中の細胞の少なくとも80%の完全性を保存する。他の実施態様では、ホモジナイゼーションは、試料中の細胞の少なくとも85%の完全性を保存する。他の実施態様では、ホモジナイゼーションは、試料中の細胞の少なくとも90%の完全性を保存する。他の実施態様では、ホモジナイゼーションは、試料中の細胞の少なくとも95%の完全性を保存する。他の実施態様では、ホモジナイゼーションは、試料中の細胞の少なくとも96の完全性を保存する。他の実施態様では、ホモジナイゼーションは、試料中の細胞の少なくとも97%の完全性を保存する。他の実施態様では、ホモジナイゼーションは、試料中の細胞の少なくとも98%の完全性を保存する。他の実施態様では、ホモジナイゼーションは、試料中の細胞の少なくとも99%の完全性を保存する。他の実施態様では、ホモジナイゼーションは、同試料中の細胞の少なくとも99.9%の完全性を保存する。ホモジネートは、個々の細胞(又は細胞のクラスター)に実質的に解離することができ、得られた一又は複数のホモジネートは実質的に均一である(類似の要素からなるか又は構成され又は全体にわたって均一である)。
【0058】
幾つかの実施態様では、腫瘍試料、リンパ節試料、又は他の組織試料は、試料を機械的剪断装置、例えばブレンダー又は超音波処理装置に入れることによってホモジナイズされる。ホモジナイゼーションは、それぞれおそらく正規分布に適合する数千から数百の細胞のある範囲の組織断片を生成する。組織断片サイズの中央値は、ブレンダー(又は他の適切な装置)のエネルギーに反比例し;高エネルギーでは組織断片が非常に小さい。ブレンダーエネルギーに最も関連する組織の成分は、真皮が完全な解離のためにかなりのエネルギーを必要とするため、コラーゲン含有量である。混合時間もまた重要である;しかし、最も効果的な臨床適用では、全腫瘍が数分程度で解離されることが必要である。ひとたび混合時間が決まると、所望の時間制限下で腫瘍の解離に達するのに必要なエネルギーを容易に決定することができる。腫瘍試料又はリンパ節試料を調製する他の方法は、同時係属中の米国仮特許出願、すなわち出願第62/252153号(2015年11月6日出願)、第62/279405号(2016年1月15日出願)及び第62/354622号(2016年6月24日出願)(それぞれVentana Medical Systems,Inc.(Tucson,AZ)に譲渡)に譲渡されており、その開示内容は、出典明示によりその全体がそれぞれここに援用される。試験試料は、ここに記載のシークエンシングワークフローにおいて使用するため、すなわちゲノム材料を含む入力試料として使用するためホモジナイズされた試料から採取されうる。
【0059】
腫瘍、リンパ節、又は他の組織試料を解離するのに十分な機械的剪断に続いて、元々空間的に分離していた腫瘍細胞の亜集団の全てが、新たにホモジナイズされた試料全体に分布される。すなわち、腫瘍試料をホモジナイズ(又はリンパ節をホモジナイズ)した結果、腫瘍内の細胞の不均一性は、ホモジネート(又はその任意の画分)が、入力であった腫瘍生検試料の不均一性を実質的に均一に発現するように、得られたホモジネート又はその一部又は画分内に実質的に均質に(均一に)分布する。腫瘍又はリンパ節をホモジナイズして腫瘍全体を代表する試料(又はホモジネート)を作製することにより、腫瘍の景色(不均一性など)を特徴付け、及び/又は全体に含まれる異なるゲノム亜集団の各々を配列決定することができる。
【0060】
幾つかの実施態様では、入力試料は、腫瘍試料、リンパ節試料、又は血液試料に由来する細胞の不均一集団を含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、腫瘍試料、リンパ節試料又は血液試料内の所定の腫瘍細胞集団の少数部分を表すサブクローン(すなわち、腫瘍不安定性の結果として生じる異なる腫瘍細胞集団)を含む。幾つかの実施態様では、本方法は、入力試料中に2%未満の対立遺伝子頻度を有するもののような稀なゲノムバリアントの検出及び/又はシークエンシングを可能にする。幾つかの実施態様では、本方法は、入力試料中に1%未満の対立遺伝子頻度を有するもののような稀なゲノムバリアントの検出及び/又はシークエンシングを可能にする。
【0061】
幾つかの実施態様では、ホモジナイズされた試料は、例えば細胞又はゲノム材料を分離することにより、シークエンシングワークフローでの使用前に更に処理される。幾つかの実施態様では、ホモジナイズされた試料は最初に濾過される。
【0062】
幾つかの実施態様では、ホモジナイズされた試料又は濾過したホモジナイズ試料内の細胞を溶解して細胞成分を放出させる。例えば、細胞は、フレンチプレス又は類似のタイプの溶解装置、マイクロフルイダイザー、粉砕、製粉、化学的又は酵素的溶解、及び/又は当該分野で知られている他の技術を使用して、溶解させることができる。幾つかの実施態様では、細胞成分を含む試料から(例えば、界面活性剤又は酵素(プロテアーゼ)を添加することによって)膜脂質及びタンパク質(ヒストンを含む)が除去される。加えて、RNAが、細胞成分を含む試料から(例えば、リボヌクレアーゼ等の酵素を用いて)除去されうる。
【0063】
幾つかの実施態様では、DNAは、当業者に知られている手段によって、単離され、抽出され、又は精製されうる。例えば、DNAは、エタノール沈殿又はフェノール-クロロホルム抽出と、続く遠心分離によって抽出されてペレットを形成することができる。幾つかの実施態様では、DNAは、固相カラム上で単離され又は抽出されうる。幾つかの実施態様では、DNAは、核酸結合ビーズを使用して単離され又は抽出されうる。幾つかの実施態様では、DNAは、物理的、化学的又は電気的特性に基づく多孔質マトリックスを通る選択的通過によって単離され又は抽出されうる。
【0064】
抽出されたDNA(ゲノム材料)は、バッファー、例えばアルカリバッファーに溶解させ、ここに更に説明されるように、配列決定のための入力試料として導入されうる。
【0065】
[シークエンシングワークフロー]
【0066】
図3A及び3Bを参照すると、本開示のシークエンシング法に係る第1工程は、上記のように、入力試料などからゲノム材料を受け取ることである(300)。幾つかの実施態様では、本開示は、配列決定前の増幅サイクル数が最小になるように、十分な量のゲノム材料を含む入力試料が提供されるシークエンシングワークフローを提供する。幾つかの実施態様では、材料の前記「十分な量」料は、捕捉前の増幅サイクルなしでシークエンシングワークフローを進めることを可能にする量である。他の実施態様では、材料の前記「十分な量」は、1又は2回の捕捉前増幅サイクルを伴ってシークエンシングワークフローを進めることを可能にする量である。他の実施態様では、材料の前記「十分な量」は、捕捉前増幅サイクルなしで配列決定前にほんの最小数の捕捉後増幅サイクルを伴ってシークエンシングワークフローを進めることを可能にする量である。更に他の実施態様では、材料の前記「十分な量」は、捕捉前増幅サイクルなしで配列決定前に約1回から約4回の後増幅サイクルを伴ってシークエンシングワークフローを進めることを可能にする量である。更なる実施態様では、材料の前記「十分な量」は、捕捉前増幅サイクルなしで配列決定前に約1回から約2回の後増幅サイクルを伴ってシークエンシングワークフローを進めることを可能にする量である。幾つかの実施態様では、材料の前記「十分な量」は、捕捉前増幅サイクルなしでかつ捕捉後増幅サイクルなしでシークエンシングワークフローを進めることを可能にする量である。
【0067】
幾つかの実施態様では、任意の入力試料の量は、少なくとも約0.5マイクログラムである。他の実施態様では、入力試料の量は少なくとも約1マイクログラムである。他の実施態様では、入力試料の量は、少なくとも約2.5マイクログラムである。他の実施態様では、入力試料の量は、少なくとも約5マイクログラムである。他の実施態様では、入力試料の量は、少なくとも約7.5マイクログラムである。幾つかの実施態様では、入力試料の量は、少なくとも約9マイクログラムである。幾つかの実施態様では、入力試料の量は少なくとも約10マイクログラムである。他の実施態様では、入力試料の量は、少なくとも約50マイクログラムである。更に他の実施態様では、入力試料の量は、約10マイクログラムから約100マイクログラムの範囲である。更に他の実施態様では、入力試料の量は、約10マイクログラムから約250マイクログラムの範囲である。更なる実施態様では、入力試料の量は、約100マイクログラムから約250マイクログラムの範囲である。
【0068】
幾つかの実施態様では、開示された方法で使用するための入力試料内のゲノム材料の量は、伝統的な配列捕捉法で使用するための入力試料内の材料の量より少なくとも5倍多い。幾つかの実施態様では、開示された方法で使用するための入力試料内のゲノム材料の量は、伝統的な配列捕捉法で使用するための入力試料内の材料の量よりも少なくとも10倍多い。幾つかの実施態様では、開示された方法で使用するための入力試料内のゲノム材料の量は、伝統的な配列捕捉法で使用するための入力試料内の材料の量よりも少なくとも100倍多い。幾つかの実施態様では、開示された方法で使用するための入力試料内のゲノム材料の量は、伝統的な配列捕捉法で使用するための入力試料内の材料の量より少なくとも250倍多い。幾つかの実施態様では、開示された方法で使用するための入力試料内のゲノム材料の量は、伝統的な配列捕捉法で使用するための入力試料内の材料の量よりも少なくとも500倍多い。幾つかの実施態様では、開示された方法で使用するための入力試料内のゲノム材料の量は、伝統的な配列捕捉法で使用するための入力試料内の材料の量よりも少なくとも1000倍多い。幾つかの実施態様では、開示された方法で使用するための入力試料内のゲノム材料の量は、伝統的な配列捕捉法で使用するための入力試料内の材料の量よりも約1000倍多い。
【0069】
また図3A及び3Bを参照して、ゲノム材料の受け取り(300)後、標的核酸分子を含むゲノム材料を更に処理することができる(310)。幾つかの実施態様では、ゲノム材料を断片化して、断片化されたゲノム試料を提供する。幾つかの実施態様では、入力試料は、例えば超音波処理、又は核酸を断片化することができる他の方法によって、断片化される。幾つかの実施態様では、入力試料は、約100bpから約500bpの間の平均サイズに断片化される。幾つかの実施態様では、入力試料は、約500bpから約1000bpの間の平均サイズに断片化される。他の実施態様では、入力試料は、約1000bpから約10000bpの間の平均サイズに断片化される。
【0070】
幾つかの実施態様では、ゲノム材料の断片化に続いて、断片化されたゲノム材料の末端を修復又は「ポリッシュ」する。これを達成するために、ゲノム材料内の二本鎖標的分子を、例えば、dNTPの存在下でT4 DNAポリメラーゼ又はクレノウポリメラーゼのようなDNAポリメラーゼを用いたフィルイン反応に供し、これが平滑末端化標的分子を生じる。加えて、断片の末端は、T4ポリヌクレオチドキナーゼ及び当業者に知られている方法を使用してリン酸化され(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Sambrook等編, Cold Spring Harbour Pressを参照;出典明示によりその全体をここに援用)、アダプターのライゲーション前に断片の5’末端にリン酸基を付加する。ポリッシュしたリン酸化標的DNA上へのアダプター(例えば、約3~20塩基対を有する短い二本鎖平滑末端DNAオリゴヌクレオチド)の続くライゲーションが、当該分野で知られている任意の方法、例えば、T4 DNAリガーゼ反応によって実施されうる。
【0071】
特定の一実施態様では、断片化されたゲノム材料の末端をポリッシュする反応は、断片化されたゲノム材料、T4 DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ反応混合物、及び水を含む。幾つかの実施態様では、反応物を一定時間(例えば20分から60分)インキュベートする。その後、フェノール/クロロホルムで抽出し、続いてエタノールで沈殿させるなどして、ゲノム材料を混合物から回収する。
【0072】
幾つかの実施態様では、断片化された核酸試料(例えば、断片化されたゲノムDNA、cDNA等々)は、5’及び3’末端の一方又は両方のアダプターへのライゲーションによって改変される。幾つかの実施態様では、あるタイプのアダプター分子(例えば、アダプター分子A)がライゲートされ、断片の両端に同一の末端配列を有する断片の集団が生じる。他の実施態様では、二つのタイプのアダプター分子A及びBが使用される。これは、(i)一端に一方のアダプター(A)を、他端にもう一方のアダプター(B)を有する断片、(ii)両端にアダプターAを有する断片、及び(iii)両端にアダプターBを有する断片の、三種の異なるタイプからなる分子の集団を生じる。他の実施態様では、アダプターは、それらが断片化された核酸試料にライゲートされた後、核酸断片のそれぞれ個々の鎖が一端に一つのアダプター(A)を有し、他端にもう一つのアダプター(B)を有するように構築される。
【0073】
特定の一実施態様では、リンカーへのライゲーションは、断片化された(及び末端が修復された)ゲノム材料をリンカー、T4 DNAリガーゼ、ライゲーションバッファー、及び水と反応させることによって達成される。その後、ゲノム材料は、当業者に知られている方法によって精製され及び/又はサイズ選択されうる。
【0074】
図1、2及び4に示すような伝統的なシークエンシング法と比較して、本発明の方法は、アダプターの取り込み後であって、ハイブリダイゼーションの前に増幅が必要とされないか(例えば、図3A参照)、又はアダプターの取り込み後でハイブリダイゼーションの前に最小数の増幅サイクルが必要とされる(例えば、図3B参照)ように入力試料中のより多くの量のゲノム材料を利用する。幾つかの実施態様では、任意の捕捉前増幅工程が含められ、捕捉前増幅工程は1~3増幅サイクルを含む。他の実施態様では、任意の捕捉前増幅工程が含められ、前増幅工程は1又は2回の増幅サイクルを含む。更に他の実施態様では、任意の捕捉前増幅工程が含められ、前増幅工程は1増幅サイクルを含む。なお更なる実施態様では、増幅サイクルは、捕捉前に実施されない。
【0075】
その後、当業者に知られている手順に従ってゲノム材料を変性させて相補的DNA鎖を分離する。ついで、変性されたゲノム材料を、ハイブリダイゼーション反応に供し(320)、ハイブリダイゼーション反応混合物は、例えば、ゲノム材料内の標的への核酸配列に相補的なDNA捕捉プローブ、Cot1フラクションブロッキングDNA(非特異的ハイブリダイゼーションをブロック)、及びブロッキングオリゴヌクレオチドを含む。DNA捕捉プローブは、ストレプトアビジンでコーティングされたビーズ又は表面を使用してその後の固定化のためにビオチン化されうるか、又はマイクロアレイなどの固体担体に直接固定されうる。ハイブリダイゼーション(320)に続いて、非標的核酸及び未結合核酸を固体担体から洗浄し、当該分野で知られたプロトコルに従って、結合した標的核酸をマイクロアレイ又は捕捉ビーズ又は捕捉表面から溶出させる。幾つかの実施態様では、ハイブリダイゼーション工程320は、Roche SeqCap EZプローブプールを利用する。Roche SeqCap EZプローブプールは、それぞれ特定の配列を有する、溶液中の数十から数百万程度の異なるビオチン化一本鎖DNAオリゴヌクレオチドの混合物からなり、個々のオリゴヌクレオチドの長さは約50ヌクレオチドから約100ヌクレオチドの範囲であり得、約75ヌクレオチドの典型的なサイズを有する。Roche SeqCap EZプローブプールは、DNAシークエンシングライブラリーの標的相補断片にハイブリダイズし、よってそれらを捕捉し、配列決定前に同じDNAシークエンシングライブラリーの標的化されていない断片と比較してそれらを濃縮する配列捕捉実験において使用することができる。DNAシークエンシングライブラリーは、ゲノム解析のためにゲノムDNAから、又はトランスクリプトーム解析のためにRNA又はmRNAから調製されたcDNAから構築することができ、これらの核酸を抽出することができる任意の生物種のDNA又はcDNAから構築することができる。
【0076】
幾つかの実施態様では、ハイブリダイゼーションは、固体担体上で起こる。幾つかの実施態様では、固体担体はビーズを含むが、ビーズは、例えばチューブ又は他のそのような容器内の溶液中に存在するか、又は例えばアッセイプレートのウェル中に分注される(例えば、12ウェル、24ウェル、96ウェル、384ウェル等々)。
【0077】
幾つかの実施態様では、ビオチン化DNA捕捉プローブとのゲノム材料のハイブリダイゼーション(320)後、ストレプトアビジンでコーティングしたビーズを、ハイブリダイズしたゲノム材料がストレプトアビジン-ビオチン結合を介して固定されるようにハイブリダイズしたゲノム材料と共にインキュベートし、あらゆる非標的ゲノム材料を洗浄によって除去する(ビード捕捉、330)(図3A、3B、及び4を参照)。ついで、捕捉されたゲノム材料を溶出させ、配列決定のために提供するか、又は捕捉されたゲノム材料を配列決定の前に先ず増幅させる。
【0078】
幾つかの実施態様では、図1で特定された手順とは対照的に、ビーズ捕捉後で配列決定の前のゲノム材料の溶出後には更なる増幅工程を実施しない。如何なる特定のことに拘束されることを望むものではないが、工程300において十分な量の入力ゲノム材料を提供することによって、工程330及び/又は340に存在する捕捉された材料の量は、伝統的なシークエンシング法(その伝統的な方法では、ゲノム材料の量を増加させるために二工程の別個の増幅工程が必要である)によってもたらされる量と同様の量である(図2とまた図1に示す比較を参照)。ここに開示されるプロセスの革新、例えば、代表的サンプリングの調製は、十分な量の材料が最初に提供され、十分な量の材料が開示されたシークエンシング法の各工程を通して増えることを条件として、PCRの必要性を排除する。
【0079】
あるいは、最小数の増幅サイクル数(例えば、1~4回の増幅サイクル、又は1~3回の増幅サイクル)が捕捉後及び配列決定前に実施され(図3B及び4参照)、このような最小サイクルは、伝統的なシークエンシングワークフローにおけるのとほぼ同じ量の材料をもたらすように捕捉後に利用可能な材料の量を更に増加させうる(図2参照)。幾つかの実施態様では、1又は2回の増幅サイクルが捕捉後で配列決定前に実施される。他の実施態様では、1回の増幅サイクルが捕捉後で配列決定前に実施される。更に他の実施態様では、2回の増幅サイクルが捕捉後で配列決定前に実施される。
【0080】
本開示のワークフロー中に一又は複数の増幅プロセス又は工程(捕捉前又は捕捉後の何れか)が組み込まれる場合、増幅サイクルの総数、すなわち配列決定前であるが捕捉前増幅サイクルと捕捉後増幅サイクルの合計数は4サイクルを超えない。例えば、捕捉前に1増幅サイクルが実施され得、捕捉後に2増幅サイクルが実施されうる。他の実施態様では、配列決定前の増幅サイクルの総数は3サイクルを超えない。更に他の実施態様では、配列決定前の増幅サイクルの総数は2サイクルを超えない。更に別の実施態様では、配列決定前にワークフローに単一増幅サイクルのみが含められる。
【0081】
幾つかの実施態様では、ゲノム材料内の標的核酸は、ゲノムの一又は複数の特定の領域に向けられた分布した核酸プローブを含むマイクロアレイに対して標的核酸試料をハイブリダイズさせることによって濃縮される。ハイブリダイゼーション後、アレイを洗浄し、アレイからハイブリダイズしたゲノム核酸を溶出させることにより、ゲノム試料中に存在する標的核酸配列が濃縮される。他の実施態様では、本開示は、ゲノム材料の試料内の標的核酸分子の集団を均一に濃縮する方法であって、標的核酸分子を提供する工程と、固定化核酸プローブを含む担体に試料を、固定化核酸プローブと複数の標的核酸配列との間のハイブリダイゼーションを支持する条件下でハイブリダイズさせる工程であって、前記固定化された核酸プローブは前記複数の標的核酸配列に相補的であり、前記固定化された核酸プローブは前記複数の標的核酸配列間に均一なハイブリダイゼーションをもたらす工程と、ハイブリダイズした標的核酸配列から非ハイブリダイズ核酸配列を分離し、よって入力試料中の核酸分子の集団を濃縮する工程を含む方法を含む。
【0082】
シークエンシング(340)は、当業者に知られている任意の方法に従って実施されうる。幾つかの実施態様では、シークエンシング法は、サンガーシークエンシング及びダイターミネーターシークエンシング、並びに次世代シークエンシング技術、例えばパイロシークエンシング、ナノポアシークエンシング、マイクロポアベースシークエンシング、ナノボールシークエンシング、MPSS、SOLiD、Illumina、Ion Torrent、Starlite、SMRT、tSMS、合成によるシークエンシング、ライゲーションによるシークエンシング、質量分析シークエンシング、ポリメラーゼシークエンシング、RNAポリメラーゼ(RNAP)シークエンシング、顕微鏡法ベースシークエンシング、マイクロフルイディックサンガーシークエンシング、顕微鏡法ベースシークエンシング、RNAPシークエンシング、トンネル電流DNAシークエンシング、及びインビトロウイルスシークエンシングを含む。その各々の全体が出典明示によりここに援用される、国際公開第2014144478号、国際公開第2015058093号、国際公開第2014106076号及び国際公開第2013068528号を参照のこと。
【0083】
幾つかの実施態様では、シークエンシング(340)は、多くの異なる方法によって、例えば合成技術によるシークエンシングを用いることにより、実施することができる。従来技術による合成によるシークエンシングは、シークエンシング反応中に特定のデオキシヌクレオシド三リン酸を取り込む際の副産物の生成をモニターする任意のシークエンシング法として定義される(Hyman, 1988, Anal. Biochem. 174:423-436;Rhonaghi等, 1998, Science 281:363-365)。合成反応によるシークエンシングの卓越した一実施態様は、ピロリン酸シークエンシング法である。この場合、ヌクレオチド取り込み中のピロリン酸の生成が、化学発光シグナルの生成をもたらす酵素カスケードによってモニターされる。合成によるシークエンシングの一例である454ゲノムシークエンサーシステム(Roche Applied Scienceカタログ番号04760085001)は、ピロリン酸シークエンシング技術に基づいている。454GS20又は454FLX機器でのシークエンシングでは、平均ゲノムDNA断片サイズは、製品文献に記載されているように、それぞれ200又は600bpの範囲である。
【0084】
幾つかの実施態様では、合成反応によるシークエンシングは別法ではターミネーターダイタイプのシークエンシング反応に基づくことができる。この場合、取り込まれたダイデオキシヌクレオ三リン酸(ddNTP)ビルディングブロックが、好ましくは新生DNA鎖の更なる伸長を妨げる蛍光標識である検出可能な標識を含む。ついで、例えば、3’-5’エキソヌクレアーゼ又はプルーフリーディング活性を含むDNAポリメラーゼを使用することにより、標識は除去され、テンプレート/プライマー伸長ハイブリッドへのddNTPビルディングブロックの取り込み時に検出される。
【0085】
幾つかの実施態様では、ゲノムシークエンサーワークフロー(Roche Applied Scienceカタログ番号04896548001)の場合、第1の工程において、(クローン)増幅がエマルジョンPCRによって実施される。従って、増幅工程がエマルジョンPCR法によって実施されることもまた本開示の範囲内である。ついで、クローン的に増幅された標的核酸を保有するビーズは、製造者のプロトコルに従ってピコタイタープレート中に任意に移され得、配列決定のためのピロリン酸シークエンシング反応に供される。
【0086】
幾つかの実施態様では、シークエンシングは、Illumina社によって提供されるもの(「Illuminaシークエンシング法」)のような次世代シークエンシング法を使用して実施される。如何なる特定の理論に縛られることも望むものではないが、Illumina次世代シークエンシング技術は、迅速かつ精確なシークエンシングを可能にするためにクローン増幅及び合成によるシークエンシング(SBS)化学を使用する。本プロセスはDNA塩基を同定し、同時にそれを核酸鎖に取り込む。各塩基は、それが成長鎖に付加される際に独特の蛍光シグナルを放出し、それがDNA鎖の順序を決定するために使用される。
【0087】
幾つかの実施態様では、シークエンシングは、Pacific Biosciences of California社から入手可能なPacBioのような単一分子リアルタイムシークエンシングを使用して実施される。
【0088】
[キット]
【0089】
一実施態様では、本開示は、標的核酸配列の均一な濃縮を実施するためのキットであって、一又は複数の容器(前記一又は複数の容器は固定された核酸プローブを含む固体担体を含み、前記プローブは、複数の標的核酸配列にハイブリダイズ可能な複数のプローブからなる群から選択され、前記プローブが、前記複数の標的核酸配列の均一な濃縮をもたらす)と、標的核酸配列のハイブリダイゼーション、洗浄及び溶出を実施するための一又は複数の試薬とを備え、十分な量の各キット構成要素が、少なくとも約10マイクログラムのゲノム材料を含む入力試料を収容し処理するように提供されるキットを提供する。
【0090】
別の実施態様では、本開示は、標的核酸配列の均一な濃縮を実施するためのキットであって、一又は複数の容器(前記一又は複数の容器は固定された核酸プローブを含む固体担体を含み、前記プローブは、複数の標的核酸配列にハイブリダイズ可能な複数のプローブからなる群から選択され、前記プローブが、前記複数の標的核酸配列の均一な濃縮をもたらす)と、標的核酸配列のハイブリダイゼーション、洗浄及び溶出を実施するための一又は複数の試薬とを備え、十分な量の各キット構成要素が、配列決定前に実施される増幅サイクルの数が最小化されるように提供されるキットを提供する。
【0091】
一実施態様では、本開示は、標的核酸配列の均一な濃縮を実施するためのキットであって、一又は複数の容器(前記一又は複数の容器はビオチン化核酸プローブを含み、前記プローブは、複数の標的核酸配列にハイブリダイズ可能な複数のプローブからなる群から選択され、前記プローブが、前記複数の標的核酸配列の均一な濃縮をもたらす)と、標的核酸配列のハイブリダイゼーション、洗浄及び溶出を実施するための一又は複数の試薬とを備え、十分な量の各キット構成要素が、少なくとも約10マイクログラムのゲノム材料を含む入力試料を収容し処理するように提供されるキットを提供する。
【0092】
幾つかの実施態様では、キットは、腫瘍試料又はリンパ節試料をホモジナイズするための指示書及び/又は他の構成要素、及び/又は任意の得られるホモジネートを精製するための構成要素を含む。幾つかの実施態様では、キットは、腫瘍試料又はリンパ節に由来するホモジネートからゲノム材料を単離し、抽出し、及び/又は精製するための構成要素を含む。
【0093】
幾つかの実施態様では、キットは、(例えば、血液の凝固を防止するために)全血試料を安定化させるため、又は全血試料からゲノム材料を抽出するための構成要素を含む。
【0094】
幾つかの実施態様では、キットは、少なくとも約10マイクログラムのゲノム材料からシークエンシングライブラリーを調製するための指示書を含む。
【0095】
幾つかの実施態様では、キットは、捕捉前及び/又は捕捉後の増幅(例えば、ライゲーション媒介PCRによる)が実施されうるように、プローブ及びプライマーを含む。
【0096】
[更なる実施態様]
【0097】
本開示の別の態様は、試料内のゲノム材料を配列決定する方法であって、腫瘍試料及び/又はリンパ節試料をホモジナイズしてホモジナイズされた試料を提供する工程;ホモジナイズされた試料から少なくとも10マイクログラムのゲノム材料を単離する工程;少なくとも10マイクログラムの単離されたゲノム材料を配列決定のために調製する工程;及び調製されたゲノム材料を配列決定する工程を含む方法である。幾つかの実施態様では、本方法は、配列決定の前に増幅工程を含まない。幾つかの実施態様では、本方法は、少なくとも一工程の捕捉前又は捕捉後増幅工程を含み、少なくとも一工程の捕捉前又は捕捉後増幅工程の間に行われる増幅サイクルの総数は多くとも4サイクルである。幾つかの実施態様では、増幅サイクルの総数は3である。幾つかの実施態様では、増幅サイクルの総数は2である。幾つかの実施態様では、少なくとも10マイクログラムの単離されたゲノム材料の配列決定のための前記調製は、少なくとも10マイクログラムの単離されたゲノムを捕捉プローブにハイブリダイズさせる工程と、ハイブリダイズしたゲノム材料を捕捉する工程を含む。幾つかの実施態様では、捕捉されたゲノム材料の量は、約90ngから約900ngの範囲である。幾つかの実施態様では、捕捉されたゲノム材料に対して1又は2回の増幅サイクルが実施される。幾つかの実施態様では、ホモジナイズされた試料は、細胞の代表的サンプリングを含む。
【0098】
本開示の別の態様は、試料内のDNAを配列決定する方法であって、血液試料から少なくとも10マイクログラムのDNAを単離する工程;少なくとも10マイクログラムの単離されたDNAを配列決定のために調製する工程及び調製したDNAを配列決定する工程を含む方法である。幾つかの実施態様では、本方法は、配列決定の前に増幅工程を含まない。幾つかの実施態様では、少なくとも10マイクログラムの単離されたDNAの配列決定のための前記調製は、少なくとも10マイクログラムの単離されたゲノムを捕捉プローブにハイブリダイズさせる工程と、ハイブリダイズしたゲノム材料を捕捉する工程を含む。幾つかの実施態様では、捕捉されたゲノム材料の量は、約90ngから約900ngの範囲である。幾つかの実施態様では、捕捉されたゲノム材料に対して1又は2回の増幅サイクルが実施される。
【0099】
本開示の別の態様は、(i)腫瘍の少なくとも一部、一又は複数の全リンパ節又は部分リンパ節、あるいはそれらの任意の組み合わせをホモジナイズして、ホモジナイズされた試料を提供する工程;(ii)前記ホモジナイズされた試料からゲノム材料を抽出する工程;(iii)前記抽出されたゲノム材料をビーズ上に捕捉する工程;及び(iv)前記捕捉されたゲノム材料を配列決定する工程を含む標的提示シークエンシング法であって、捕捉されたゲノム材料の配列決定の前に最大で4回の増幅サイクルを実施することを含む標的提示シークエンシング法である。幾つかの実施態様では、最大で3回の増幅サイクルが、抽出されたゲノム材料の捕捉前に、又は抽出されたゲノム材料の捕捉後に、又はそれらの任意の組み合わせのときに行われうる。幾つかの実施態様では、捕捉前増幅サイクルは行われない。幾つかの実施態様では、捕捉されたゲノム材料の量は、約90ngから約900ngの範囲である。幾つかの実施態様では、抽出されたゲノム材料の捕捉後で配列決定前に、1~3回の増幅サイクルが実施される。幾つかの実施態様では、少なくとも9マイクログラムのゲノム材料が、ホモジナイズされた試料から抽出される。幾つかの実施態様では、4回を超える増幅サイクルを必要とするシークエンシング法で使用される入力材料の量と比較して、少なくとも100倍多くのゲノム材料がホモジナイズされた試料から得られる。
【0100】
本開示の別の態様は、試料内のDNAを配列決定する方法において、少なくとも10マイクログラムの入力ゲノム材料であって、腫瘍試料、リンパ節試料、又は血液試料由来の少なくとも10マイクログラムのゲノム材料を提供する工程、入力ゲノム試料からDNAを単離する工程、単離されたDNAを配列決定のために調製する工程、及び調製されたDNAを配列決定する工程を含み、増幅工程を含まない方法である。幾つかの実施態様では、少なくとも10マイクログラムの入力ゲノム材料は、複数の組織学的及び/又は生検検体に由来する。幾つかの実施態様では、少なくとも10マイクログラムの入力ゲノム材料は、ホモジナイズされた腫瘍試料に由来する。幾つかの実施態様では、少なくとも10マイクログラムの入力ゲノム材料は、ホモジナイズされたリンパ節試料に由来する。幾つかの実施態様では、少なくとも10マイクログラムの入力ゲノム材料は、それが由来する腫瘍試料、リンパ節試料又は血液試料の代表的サンプリングである。幾つかの実施態様では、シークエンシングは、次世代シークエンシング法を使用して実施される。幾つかの実施態様では、シークエンシングは、合成シークエンシング法を使用して実施される。
【0101】
本開示の別の態様は、配列決定中のPCR取り込み変異を減少させる方法であって、十分な量のゲノム材料を含む試料からDNAを単離する工程;単離されたDNAを配列決定のために調製する工程;及び調製されたDNAを配列決定する工程を含み、配列決定の前に最大で3回の増幅サイクルを含む方法である。幾つかの実施態様では、本方法は、配列決定の前に1又は2回の増幅サイクルを含む。幾つかの実施態様では、十分な量の入力ゲノム材料は、捕捉前増幅サイクルが利用されないような量である。幾つかの実施態様では、試料は、がんを有すると疑われる患者に由来する。幾つかの実施態様では、試料は、がんと診断された患者に由来する。幾つかの実施態様では、試料はがんを発症する危険性がある患者に由来する。幾つかの実施態様では、試料は健康な組織試料に由来する。幾つかの実施態様では、10マイクログラムのDNAが試料から単離される。
【0102】
本開示の別の態様は、少なくとも0.05マイクログラムのゲノム材料を捕捉する工程と、配列決定の前に0~2回の増幅サイクルを実施する工程とを含む、PCR取り込み変異が低減される配列決定法である。幾つかの実施態様では、増幅サイクルが行われない。他の実施態様では、1回の増幅サイクルが行われる。更に他の実施態様では、2回の増幅サイクルが行われる。
【0103】
本開示の別の態様は、ゲノム含有量の比例的提示におけるPCR取り込みバイアスが低減される配列捕捉法であり、配列決定法が少なくとも10マイクログラムのゲノム材料を含む入力試料を提供する工程を含み、配列捕捉法が配列決定前に0~2回の増幅サイクルを実施する工程を含む。幾つかの実施態様では、増幅サイクルが行われない。他の実施態様では、1回の増幅サイクルが行われる。更に他の実施態様では、2回の増幅サイクルが行われる。
【0104】
本開示の別の態様は、PCR取り込み変異が排除される配列捕捉方法であって、少なくとも10マイクログラムのゲノム材料を含む入力試料を調製することを含む配列捕捉方法である。
【0105】
本開示の別の態様は、配列決定の前にPCR重複リードを除去する工程が排除される配列捕捉法であって、少なくとも10マイクログラムのゲノム材料を含む入力試料を提供する工程を含む配列捕捉法である。
【0106】
本開示の別の態様は、少なくとも10マイクログラムのゲノム材料を含む入力試料が提供されるシークエンシングワークフローであって、配列決定前に0~2回の増幅サイクルを実施することを含むワークフローである。幾つかの実施態様では、ゲノム材料の量は、約10マイクログラムから約1000マイクログラムの範囲である。
【0107】
本開示の別の態様は、PCR取り込み変異が低減される配列決定法であって、少なくとも9マイクログラムのゲノム材料を有するシークエンシングライブラリーを調製することを含む配列決定法である。幾つかの実施態様では、本方法は、増幅サイクルが捕捉前、捕捉後、又は捕捉前と捕捉後の両方で実施されうる、1~3回の増幅サイクルを配列決定前に実施することを含む。幾つかの実施態様では、1~3回の増幅サイクルは捕捉後に実施される。
【0108】
本開示の別の態様は、少なくとも10マイクログラムのゲノム材料を含む入力試料が提供される配列捕捉ワークフローであって、配列決定前に1~3回の増幅サイクルを実施することを含むワークフローであり、増幅サイクルは、捕捉前、捕捉後、又はそれらの任意の組み合わせのときに実施されうる。幾つかの実施態様では、1~3回の増幅サイクルが捕捉後に実施される。幾つかの実施態様では、ゲノム材料の量は、約10マイクログラムから約1000マイクログラムの範囲である。幾つかの実施態様では、入力試料は、約10マイクログラムの材料を含む。
【0109】
本開示の別の態様は、ゲノム材料を配列決定する方法であって、全部又は一部の腫瘍又はリンパ節をホモジナイズしてホモジナイズされた試料を提供する工程、ホモジナイズされた試料からゲノム材料を捕捉する工程、及び捕捉したゲノム材料を配列決定する工程を含み、配列決定前に多くとも4回の増幅サイクルを必要とする方法である。幾つかの実施態様では、本方法は、捕捉後であるが配列決定の前に1又は2回の増幅サイクルを実施する工程を含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、約10から約100マイクログラムの材料を含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、少なくとも10マイクログラムの材料を含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、少なくとも150万個の細胞を含む。
【0110】
本開示の別の態様は、ゲノム材料を配列決定する方法であって、全血又はその画分の試料を取得し、試料からゲノム材料を捕捉し、ゲノム材料を配列決定する工程を含み、配列決定前に多くとも4回の増幅サイクルを必要とする方法である。幾つかの実施態様では、本方法は、捕捉後であるが配列決定の前に1又は2回の増幅サイクルを実施することを含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、約10から約100マイクログラムの材料を含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、少なくとも10マイクログラムの材料を含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、少なくとも150万個の細胞を含む。
【0111】
本開示の別の態様は、入力試料が十分な量のゲノム材料を含むPCRフリー配列捕捉ワークフローである。幾つかの実施態様では、少なくとも10マイクログラムのゲノム材料を含む入力試料が提供され、配列決定前に増幅プロセスが必要とされない。幾つかの実施態様では、ゲノム材料の量は、約10マイクログラムから約1000マイクログラムの範囲である。
【0112】
本開示の別の態様は、入力試料が伝統的な配列捕捉法で使用するための入力試料内の材料の量よりも少なくとも5倍多いPCRフリー配列捕捉ワークフローである。
【0113】
本開示の別の態様は、ゲノム材料を配列決定する方法であって、全部又は一部の腫瘍又はリンパ節をホモジナイズしてホモジナイズされた試料を提供する工程、ホモジナイズされた試料からゲノム材料を捕捉する工程、及び捕捉したゲノム材料を配列決定する工程を含み、配列決定の前にゲノム材料の増幅を必要としない方法である。幾つかの実施態様では、入力試料は、少なくとも10マイクログラムの材料を含む。幾つかの実施態様では、入力試料は少なくとも150万個の細胞を含む。
【0114】
本開示の別の態様は、ゲノム材料を配列決定する方法であって、全血又はその一部の試料を取得して入力試料を提供する工程、入力試料からゲノム材料を捕捉する工程、及びゲノム材料を配列決定する工程を含み、配列決定の前にゲノム材料の増幅を必要としない方法である。幾つかの実施態様では、入力試料は、少なくとも10マイクログラムの材料を含む。幾つかの実施態様では、入力試料は、少なくとも150万個の細胞を含む。
【0115】
本開示の別の態様は、ゲノム材料を含む十分な量の入力試料を得る工程、ゲノム材料をハイブリダイゼーションのために調製する工程、調製されたゲノム材料を捕捉プローブにハイブリダイズする工程、ゲノム材料を入力から捕捉する工程、及びゲノム材料を配列決定する工程を含むゲノム材料を配列決定する方法であって、幾つかの特殊な形態の増幅(例えばIlluminaフローセル上での架橋PCR、Ion TorrentシークエンシングにおけるエマルジョンPCR)がシークエンシング機器内で又は配列捕捉が完了した後のシークエンシングワークフローの一部として実施される場合を除いて、ワークフローの如何なる段階でもゲノム材料の増幅を必要としない方法である。幾つかの実施態様では、少なくとも約10マイクログラムのゲノム材料がハイブリダイゼーションのために提供される。
【0116】
本開示の別の態様は、特定の治療又は活性医薬成分に応答するがんサブタイプを同定することによってがんを治療する方法であって、がんサブタイプが、腫瘍、リンパ節、又は血液の代表的サンプリングを含む入力試料の配列決定によって同定される方法である。幾つかの実施態様では、治療は標的治療、例えば抗体に基づく治療である。幾つかの実施態様では、治療は、一又は複数の活性医薬成分を用いる化学療法を含む。
【実施例
【0117】
標的提示シークエンシングのためのプロトコル
【0118】
実施例1~5は、標的提示シークエンシングのためのプロトコルを記載する。これら実施例は、所定の実験機器及び/又は消耗品を指すことがある。そのような機器及び消耗品の例は、必要に応じて、供給元及びカタログ番号と共に表1及び2に記載される。ここに記載の方法によれば、当業者は、実施例4に記載された工程は任意であることを理解するであろう。当業者であれば、ここに記載されたプロトコルは、記載されたものよりも少ない又は多いゲノムDNAの入力量に適応するように調整されうることを理解するであろう。当業者は、追加の捕捉前増幅工程をこのプロトコルに組み込むこともできることを理解するであろうが、そのような捕捉前増幅工程はここに記載のように任意である。
【0119】
実施例1-KAPA HyperPlusライブラリー調製を使用する試料ライブラリー調製
【0120】
1.1. 凍結乾燥されたインデックスアダプター(アダプターキットA)を再懸濁する。
【0121】
1.1.1. SeqCapアダプターキットA及び/又はBに含まれる凍結乾燥されたインデックスアダプターを軽く回転させて、内容物がチューブの底でペレット化するようにする。
【0122】
1.1.2. SeqCapアダプターキットA及び/又はBの「SeqCap Index Adapter」と標識された12本のチューブのそれぞれに50マイクロリットルの冷たいPCRグレードの水を加える。アダプターを氷上に保つ。
【0123】
1.1.3. インデックスアダプターとPCRグレードの水を軽くボルテックスし、再懸濁したインデックスアダプターチューブをスピンダウンする。
【0124】
1.1.4. 再懸濁したインデックスアダプターのチューブは、-15~-25℃で保存されるべきである。
【0125】
1.2. 試料ライブラリーを調製する
【0126】
1.2.1. 10mlのTris-HCl(pH8.0)中でライブラリー構築に使用するgDNA(約100ng~約1マイクログラム)を全容量35マイクロリットルに希釈して0.2mlのチューブ又はPCRプレートのウェルに入れる。
【0127】
1.2.2. 以下に示される順で成分を添加することによって氷上で各断片化反応を構築する
【0128】
1.2.3. 断片化反応物を完全に混合する。
【0129】
1.2.4. 予め冷却したサーモサイクラーに入れ、4℃での即時のインキュベートの設定をする。次に、以下に概説するプログラムを使用して試料をインキュベートする:
【0130】
1.2.4.1. 工程1:+37℃で20分間
【0131】
1.2.4.2. 工程2:+4℃で保持する
【0132】
1.2.5. 反応物を氷に移し、直ちに次の工程に進む。
【0133】
1.2.6. 末端修復とA-テーリング反応を次のように実施する:
【0134】
1.2.6.1. 次の試薬のマスターミックスを調製する:
【0135】
1.2.6.2. 各50マイクロリットルの断片化試料に10マイクロリットルの末端修復及びA-テーリングマスターミックスを加える。
【0136】
1.2.6.3. 末端修復及びA-テーリング反応物を完全に混合する。
【0137】
1.2.6.4. 氷上に配し、直ぐに次の工程に進む。
【0138】
1.2.6.5. 加熱リッドを用いる次のプログラムを使用し、サーモサイクラー中で末端修復及びA-テーリングインキュベーションを実施する:
【0139】
1.2.6.5.1. 工程1:+65℃で30分間
【0140】
1.2.6.5.2. 工程2:+4℃で保持する
【0141】
1.2.6.6. 30分間のインキュベーション後、直ぐに次の工程に進む。
【0142】
1.2.7. アダプターライゲーション反応セットアップを進める:
【0143】
1.2.7.1. 次の試薬のマスターミックスを調製する:
【0144】
1.2.7.2. 末端修復及びA-テーリングミックス+DNAを含む試料ウェルにSeqCapライブラリアダプター(所望のIndexを含む)5ulを加える。各試料に使用されているインデックスを必ず記録する。
【0145】
1.2.7.3. 65マイクロリットルの末端修復及びA-テーリングミックス/DNA/アダプターを含む各試料ウェルに45マイクロリットルのライゲーションマスターミックスを添加し、合計110マイクロリットルの容量とする。
【0146】
1.2.7.4. ライゲーション反応物を完全に混合する。
【0147】
1.2.7.5. ライゲーション反応物を+20℃で15分間インキュベートする。
【0148】
1.2.7.6. インキュベーション後、直ぐに次の工程に進む。
【0149】
1.2.8. ライゲーション後クリーンアップを次のように実施する:
【0150】
1.2.8.1. 各ライゲーション反応物に、完全に再懸濁させた88マイクロリットルの室温AMPure XP試薬を添加する。
【0151】
1.2.8.2. ライゲーション反応産物とAMPure XP試薬を完全に混合する。
【0152】
1.2.8.3. 試料を室温で5分間インキュベートしてDNAをビーズに結合させる。
【0153】
1.2.8.4. 試料を磁性粒子コレクターに入れてビーズを捕捉する。液体が透明になるまでインキュベートする。
【0154】
1.2.8.5. 慎重に上清を除去し、捨てる。
【0155】
1.2.8.6. 試料を磁性粒子コレクター上に保持し、新たに調製した80%エタノール200マイクロリットルを加える。
【0156】
1.2.8.7. 試料を室温で≧30秒、インキュベートする。
【0157】
1.2.8.8. 慎重にエタノールを除去して捨てる。
【0158】
1.2.8.9. 試料を磁性粒子コレクター上に保持し、新たに調製した80%エタノール200マイクロリットルを加える。
【0159】
1.2.8.10. 試料を室温で≧30秒、インキュベートする。
【0160】
1.2.8.11. 慎重にエタノールを除去して捨てる。ビーズを乱すことなく全ての残留エタノールを除去するように努める。
【0161】
1.2.8.12. 全てのエタノールが蒸発するのに十分にビーズを室温で乾燥させる。
【0162】
1.2.8.13. 磁性粒子コレクターから試料を除去する。
【0163】
1.2.8.14. ビーズを53マイクロリットルの溶出バッファー(10mMトリス-HCl,pH8.0)中に徹底的に再懸濁する。
【0164】
1.2.8.15. 試料を室温で2分間インキュベートして、DNAをビーズから溶出させる。
【0165】
1.2.8.16. 試料を磁性粒子コレクター上に配してビーズを捕捉する。液体が透明になるまでインキュベートする。
【0166】
1.2.8.17. 50マイクロリットルの上清を新しいチューブ/ウェルに移す。
【0167】
実施例2-試料とSeqCap EZプローブプールをハイブリダイズさせる
【0168】
2.1.1. AMPure XP試薬を使用前に少なくとも30分間室温まで温める。
【0169】
2.1.2. SeqCap EZアクセサリーキットv2に含まれる5マイクロリットルのCOTヒトDNA(1mg/ml)を新しいチューブ/ウェルに加える。
【0170】
2.1.3. 5マイクロリットルのCOTヒトDNAを含む試料に3μgのDNA試料ライブラリーを加える。同じ試料から構築された複数のライブラリーをこの目的のためにプールしてもよい。
【0171】
2.1.4. DNA試料ライブラリー+COTヒトDNAに、2000pmol(又は2マイクロリットル)のハイブリダイゼーションエンハンサーオリゴ(1000pmolのSeqCap HEユニバーサルオリゴ1マイクロリットルと試料ライブラリーアダプターインデックスに適合する1000pmolのSeqCap HEインデックスオリゴ1マイクロリットル)を加える。
【0172】
2.1.5. COTヒトDNA、DNA試料ライブラリープール、SeqCap HEユニバーサルオリゴ及びSeqCap HEインデックスオリゴプールの入力容量を加えることにより、上記混合物の全容量を決定する。
【0173】
2.1.6. 上記の混合物に2容量のAMPure XP試薬(室温に平衡化して完全に再懸濁)を加える。徹底的に混合する。
【0174】
2.1.7. 試料を室温で10分間インキュベートし、試料ライブラリーをビーズに結合させる。
【0175】
2.1.8. 試料を磁性粒子コレクター上に配してビーズを捕捉する。溶液を透明にする。
【0176】
2.1.9. 透明になったら、ビーズを乱さないように注意しながら上清を除去して捨てる。
【0177】
2.1.10. ビーズ結合DNA試料を含む試料に190マイクロリットルの80%エタノールを加える。試料はこの工程中に磁性粒子コレクター上に残すべきである。
【0178】
2.1.11. 室温で≧30秒、インキュベートする。
【0179】
2.1.12. 慎重に80%エタノールを除去して捨てる。ビーズを乱すことなく全ての残留エタノールを除去するように努める。
【0180】
2.1.13. チューブのリッドが開いた状態で5分間(又は乾燥するまで)ビーズを室温で乾燥させる。
【0181】
2.1.14. 次の試薬のマスターミックスを調製し、捕捉数を反映するようにスケールアップする:
【0182】
2.1.14.1. 7.5マイクロリットルの2×ハイブリダイゼーションバッファー(バイアル5)
【0183】
2.1.14.2. 3マイクロリットルのハイブリダイゼーション成分A(バイアル6)
【0184】
2.1.15. 前の工程からのハイブリダイゼーションバッファー/ハイブリダイゼーション成分Aミックス10.5マイクロリットルをビーズ結合DNA試料に添加する。
【0185】
2.1.16. 磁性粒子コレクターから試料を取り出し、完全に混合する。十分な混合がこの工程で実施され、均一な混合物が得られることが重要である。
【0186】
2.1.17. 室温で2分間静置する。
【0187】
2.1.18. 試料を磁性粒子コレクターに配する。
【0188】
2.1.19. 液体が透明になった後、10.5マイクロリットルの上清(全容量)を除去し、4.5ulのSeqCap EZプローブプールを含む新しいチューブ/ウェルに入れる。徹底的に混合する。
【0189】
2.1.20. ブロック温度より10℃上に設定された加熱リッドと共に次のプログラムを使用して、サーモサイクラー中でハイブリダイゼーションインキュベーションを実施する:
【0190】
2.1.20.1. 95℃で5分間
【0191】
2.1.20.2. 47℃で16~20時間
【0192】
2.1.21. 47℃で16~20時間インキュベートする場合、サーモサイクラーの加熱リッドをオンにし、ハイブリダイゼーション温度(+57℃)より10℃上に維持するように設定することが重要である。試料は、工程3.3において捕捉ビーズに移されるまで、47℃のままでなければならない。
【0193】
実施例3-捕捉されたDNA試料ライブラリーを洗浄し回収する
【0194】
3.1. SeqCapハイブリダイゼーション及び洗浄キットに含まれている10×洗浄バッファー(I、II、III及びストリンジェント)及び2.5×ビーズ洗浄バッファーを希釈して、1×ワーキング溶液を作製する。以下に列挙される容量が1回の捕捉に対して十分である。
【0195】
3.2. 捕捉ビーズを調製する
【0196】
3.2.1. SeqCap Pure Captureビーズキットに含まれている捕捉ビーズを使用前に室温で30分間平衡化させる。
【0197】
3.2.2. 使用前に捕捉ビーズを15秒間ボルテックスし、均一なビーズ混合物を確保する。
【0198】
3.2.3. 各捕捉のため50マイクロリットルのビーズを0.2ml又は1.5mlチューブに等分する(すなわち、1回の捕捉では50マイクロリットルのビーズを使用し、4回の捕捉では200マイクロリットルのビーズを使用する等々)。2回の捕捉と12回の捕捉に十分なビーズを、それぞれ0.2mlのチューブ及び1.5mlのチューブで調製することができる。
【0199】
3.2.4. チューブを磁性粒子コレクター上に配する。溶液が透明になるようにする(5分以内にしなければならない)。
【0200】
3.2.5. ビーズを乱さないように注意して上清を除去して捨てる。残りの微量の液体は、その後の洗浄工程で除去される。
【0201】
3.2.6. チューブが磁性粒子コレクター上にある間、1×ビーズ洗浄バッファーのビーズの初期容量の2倍を加える(すなわち、1回の捕捉では100マイクロリットルのバッファーを使用し、4回の捕捉では400マイクロリットルのバッファーを使用する等々)。
【0202】
3.2.7. チューブを磁性粒子コレクターから取り外し、ボルテックスして又は上下にピペッティングして完全に混合する。
【0203】
3.2.8. チューブを磁性粒子コレクター上に戻して、ビーズを結合させる。
【0204】
3.2.9. 一旦透明になったら、液体を取り出して捨てる。
【0205】
3.2.10. 合計2回の洗浄に対して工程2.6-2.9を繰り返す。
【0206】
3.2.11. 2回目の洗浄後にバッファーを除去した後、1×ビーズ洗浄バッファーのビーズの初期容量の1×(すなわち、捕捉当たり50マイクロリットルのバッファー)を加える。
【0207】
3.2.12. 磁性粒子コレクターからチューブを取り出し、完全に混合する。
【0208】
3.2.13. 50マイクロリットルの再懸濁したビーズを各捕捉のために新しいチューブ/ウェルに等分する。
【0209】
3.2.14. チューブを磁性粒子コレクター上に配し、ビーズを結合させる。溶液を透明にする。
【0210】
3.2.15. 一旦透明になったら、上清を除去して捨てる。
【0211】
3.2.16. 捕捉ビーズは今、捕捉されたDNAに結合する準備ができている。直ぐに次の工程に進む。
【0212】
3.3. 捕捉ビーズにDNAを結合させる
【0213】
3.3.1. 一つのハイブリダイゼーション試料を、前の工程で得られた捕捉ビーズの単一の調製チューブ/ウェルに移す。
【0214】
3.3.2. 徹底的に混合する。
【0215】
3.3.3. 試料を+47℃に設定したサーモサイクラーに15分間配してビーズに捕捉試料を結合させる(加熱リッドは+57℃に設定)。
【0216】
3.4. 捕捉ビーズ+ビーズ結合DNAを洗浄する
【0217】
3.4.1. 15分間のインキュベーション後、サーモサイクラーから試料を除去する。
【0218】
3.4.2. サーモサイクラーは、次の工程に対して47℃に保たれていなければならない(加熱リッドがオンになり、+57℃を維持するように設定)。
【0219】
3.4.3. 100マイクロリットルの1×洗浄バッファーIを15マイクロリットルの捕捉ビーズ+ビーズ結合DNAに加える。
【0220】
3.4.4. 徹底的に混合する。
【0221】
3.4.5. ビーズを捕捉するために試料を磁性粒子コレクター上に配する。溶液を透明にする。
【0222】
3.4.6. 透明になったら、ビーズを乱さないように注意しながら上清を除去して捨てる。
【0223】
3.4.7. 各試料に200マイクロリットルの1×ストリンジェント洗浄バッファーを加える。
【0224】
3.4.8. 磁性粒子コレクターから試料を除去する。
【0225】
3.4.9. 上下にピペッティングすることによって均一になるまで混合する。
【0226】
3.4.10. +47℃に予熱したサーモサイクラー上に配し、リッドを閉め(+57℃に設定)、5分間インキュベートする。
【0227】
3.4.11. 5分間インキュベートした後、サーモサイクラーから試料を取り出し、磁性粒子コレクター上に配し、ビーズを捕捉する。溶液を透明にする。
【0228】
3.4.12. 一旦透明になったら、ビーズを乱さないように注意しながら上清を除去して捨てる
【0229】
3.4.13. 1×ストリンジェント洗浄バッファーを使用して、合計2回の洗浄について、工程4.6-4.11を繰り返す。
【0230】
3.4.14. 200マイクロリットルの室温1×洗浄バッファーIを加える。
【0231】
3.4.15. 10秒間ボルテックスするか、10回上下にピペッティングして完全に混合する。混合物が均一であることを確認する。
【0232】
3.4.16. 室温で1分間インキュベートする。
【0233】
3.4.17. ビーズを捕捉するために試料を磁性粒子コレクター上に配する。溶液を透明にする。
【0234】
3.4.18. 透明になったら、ビーズを乱さないように注意しながら上清を除去して捨てる。
【0235】
3.4.19. 200マイクロリットルの室温1×洗浄バッファーIIを添加する。
【0236】
3.4.20. 10秒間ボルテックスするか、10回上下にピペッティングして完全に混合する。混合物が均一であることを確認する。
【0237】
3.4.21. 室温で1分間インキュベートする。
【0238】
3.4.22. ビーズを捕捉するために試料を磁性粒子コレクター上に配する。溶液を透明にする。
【0239】
3.4.23. 透明になったら、ビーズを乱さないように注意しながら上清を除去して捨てる。
【0240】
3.4.24. 200マイクロリットルの室温1×洗浄バッファーIIIを添加する。
【0241】
3.4.25. 10秒間ボルテックスするか、10回上下にピペッティングして完全に混合する。混合物が均一であることを確認する。
【0242】
3.4.26. 室温で1分間インキュベートする。
【0243】
3.4.27. ビーズを捕捉するために試料を磁性粒子コレクター上に配する。溶液を透明にする。
【0244】
3.4.28. 一旦透明になったら、ビーズを乱さないように注意しながら上清を除去して捨てる。
【0245】
3.4.29. 磁性粒子コレクターから試料を除去する。
【0246】
3.4.30. ビーズ結合DNA試料の各チューブ/プレートウェルに15マイクロリットルのPCRグレード水を加える。
【0247】
実施例4-捕捉前ライゲーション媒介PCR(LM-PCR)を使用して捕捉試料ライブラリーを増幅する
【0248】
4.1. LM-PCR後オリゴを再懸濁する
【0249】
4.1.1. SeqCap EZアクセサリーキットv2に含まれている凍結乾燥されたLM-PCR後オリゴ1及び2を簡単にスピンさせ、内容物がチューブの底でペレット化するようにする。両方のオリゴが1本のチューブ内に含まれていることに留意のこと。
【0250】
4.1.2. 480マイクロリットルのPCRグレード水を、遠心分離したオリゴのチューブに加える。
【0251】
4.1.3. 再懸濁したオリゴを簡潔にボルテックスする。
【0252】
4.1.4. チューブをスピンダウンして内容物を回収する。
【0253】
4.1.5. 再懸濁されたオリゴチューブは、-15~-25℃で保存されるべきである。
【0254】
4.2. 捕捉後LM-PCRマスターミックスを調製する
【0255】
4.2.1. 次の試薬のマスターミックスを調製する
【0256】
4.2.2. 30マイクロリットルの捕捉後LM-PCRマスターミックスを0.2mlのチューブ又はPCRプレートのウェルに添加する。
【0257】
4.2.3. 工程3.3のビーズ結合DNAを完全に混合する。
【0258】
4.2.4. 20マイクロリットルのビーズ結合DNAを鋳型として等分して30ulの捕捉後LM-PCRマスターミックスと共にチューブ/ウェルに入れる。(陰性対照を実施する場合は、20ulのPCRグレード水をこのチューブ/ウェルに加える)。
【0259】
4.2.5. 数回上下にピペッティングすることにより完全に混合する。
【0260】
4.3. 捕捉後PCR増幅を実施する。
【0261】
4.3.1. 試料をサーモサイクラーに入れる。増幅工程中においてインキュベーション温度より+10℃高くなるようにサーモサイクラーの加熱リッドを設定することが推奨される。
【0262】
4.3.2. 次の捕捉後LM-PCRプログラムを使用して捕捉したDNAを増幅する:
【0263】
4.3.2.1. 工程1:+98℃で45秒
【0264】
4.3.2.2. 工程2:+98℃で15秒
【0265】
4.3.2.3. 工程3:+60℃で30秒
【0266】
4.3.2.4. 工程4:+72℃で30秒
【0267】
4.3.2.5. 工程5:工程2に進み、0又は1回繰り返す(合計1又は2サイクル)
【0268】
4.3.2.6. 工程6:+72℃で1分
【0269】
4.3.2.7. 工程7:+4℃で保持する
【0270】
4.3.2.8. 精製の準備が整うまで、最大72時間、反応を+2~+8℃で保存する。
【0271】
4.4. Agencourt AMPure XPビーズを使用して増幅された捕捉DNA試料を精製する
【0272】
4.4.1. SeqCap Pure捕捉ビーズキットに含まれているAMPure XPビーズを、使用前に少なくとも30分間室温まで温める。
【0273】
4.4.2. AMPure XPビーズを使用前に10秒間ボルテックスして、均一なビーズ混合物を確保する。
【0274】
4.4.3. 50マイクロリットルの増幅した捕捉DNA試料ライブラリーに90マイクロリットルのAMPure XPビーズを加える。
【0275】
4.4.4. ボルテックスするか又は上下に複数回ピペッティングして完全に混合する。
【0276】
4.4.5. 室温で5分間インキュベートし、捕捉した試料ライブラリーをビーズに結合させる。
【0277】
4.4.6. ビーズ結合DNAを含む試料を磁気粒子コレクター上に配し、ビーズを捕捉する。溶液を透明にする。
【0278】
4.4.7. 一旦透明になったら、ビーズを乱さないように注意しながら上清を除去して捨てる。
【0279】
4.4.8. 200マイクロリットルの新たに調製した80%エタノールを、ビーズ+試料ライブラリーを含む試料に加える。試料は、この工程中に磁性粒子コレクターに残す必要がある。
【0280】
4.4.9. 室温で≧30秒間インキュベートする。
【0281】
4.4.10. 80%エタノールを除去して捨てる。
【0282】
4.4.11. 試料を磁性粒子コレクター上に保持し、200マイクロリットルの新たに調製した80%エタノールを加える。
【0283】
4.4.12. 試料を室温で≧30秒間インキュベートする。
【0284】
4.4.13. 慎重にエタノールを除去して捨てる。ビーズを乱すことなく全ての残留エタノールを除去するように努める。
【0285】
4.4.14. チューブのリッドが開いた状態で5分間(又は乾燥するまで)ビーズを室温で乾燥させる。
【0286】
4.4.15. 磁性粒子コレクターから試料を除去する。
【0287】
4.4.16. 53マイクロリットルの10mM Tris-HCl,pH8.0又はPCRグレード水を使用してDNAを再懸濁する。
【0288】
4.4.17. 上下に10回ピペッティングして、全てのビーズが再懸濁されるようにする。
【0289】
4.4.18. 室温で2分間インキュベートする。
【0290】
4.4.19. 試料を磁性粒子コレクター上に戻し、溶液を透明にする。
【0291】
4.4.20. 増幅した捕捉DNA試料ライブラリープールを今含む上清50マイクロリットルを除去し、新しいチューブ/ウェルに移す。
【0292】
4.5. 増幅された捕捉DNA試料の濃度、サイズ分布及びクオリティを決定する
【0293】
4.5.1. DNA濃度を定量し、増幅した捕捉DNAと陰性対照のA260/A280比を測定する。
【0294】
4.5.1.1. A260/A280比は1.7~2.0でなければならない。
【0295】
4.5.1.2. LM-PCR収量は約500ngであるべきである。
【0296】
4.5.1.3. 陰性対照は、汚染を示している有意な増幅を示すべきではない。
【0297】
4.5.2. Agilent Bioanalyzer DNA1000チップを使用して、1マイクロリットルの増幅された捕捉DNA試料及び陰性対照を流す。製造者の説明書に従ってチップを流す。増幅された捕捉DNAは、150~500bpの平均断片長を示さなければならない:
【0298】
4.5.3. 増幅された捕捉DNAは、配列決定の準備が整う。
【0299】
実施例5-捕捉された試料ライブラリーを配列決定する
【0300】
5.1. Illuminaシークエンシング機器を使用して、製造者の説明書に従って、増幅した捕捉DNAを配列決定する。
【0301】
実施例6-標的シークエンシングに対する増幅サイクル数の効果の比較
【0302】
ここの実施例1~5に記載のプロトコルを使用して、同じ供給源(細胞株ヒトゲノムDNA,NA12891,Coriell Institutes)から得た同じ量の入力ゲノムDNA(3マイクログラム)を使用して7回の実験を実施した。実験に使用したビオチン化オリゴヌクレオチドプローブは、がんに関与する578個の遺伝子のエキソンを標的としており、累積捕捉標的は4571289塩基対であった(Design ID:120522_HG19_Onco_R_EZ、Roche NimbleGen,Inc.)。7回の実験の何れについても捕捉前PCR増幅は実施しなかったが、捕捉後PCR増幅サイクルの数は0と14の間で変えた(0、1、2、4、6、10、及び14)。
【0303】
得られた増幅された捕捉DNAを、Illumina MiSeqシークエンシング機器を使用して、製造者の説明書に従って、2×100ペアエンドシークエンシングを用いて、配列決定した。7回の実験のそれぞれについて、得られたリードを無作為にサンプリングして175万のリードペア(3500000リード)にし、等量のデータを使用してアッセイ性能の比較を容易にした。データ解析は、「How to Evaluate NimbleGen SeqCap EZ Target Enrichment Data」と題されたRocheテクニカルノート(2015年8月、その開示内容は、出典明示によりその全体がここに援用される)に記載されている標準的なバイオインフォマティク法を使用して実施した。解析ワークフローの概略を図5に示す。
【0304】
実験結果は、6通りの頻繁に使用される標的シークエンシングアッセイ性能測定基準について図6~11に示される。捕捉標的又は捕捉標的の近くにマッピングされた配列決定塩基のパーセンテージの値(図6)、捕捉標的にわたる配列デプスカバレッジの分布(図7)、ゲノムに対する標的配列のエンリッチメント倍率(図8)、コールされた一塩基多型(SNP)の総数(図9)、SNP検出の感度(図10)、及びSNP分類の特異性(図11)は、0、1、2、4、6、10又は14サイクルのPCR増幅を利用した実験間で同様であった。ビオチン化オリゴヌクレオチドプローブへのハイブリダイゼーションによる標的シークエンシングのための本方法は、ワークフロー内での複数サイクルのPCR増幅の使用を必要とし、典型的には4回より多い増幅サイクルを必要とする(図1及び4参照)。ここに提示された結果は、開示された標的提示シークエンシング法が、アッセイ性能の顕著な低下を招くことなく、ここに記載されるような最小の増幅サイクル又は増幅サイクルなしで標的シークエンシングを実施することを可能にすることを予想外に実証する。
【0305】
[産業上の利用性の記述]
本開示は、医療及び診断の分野において産業上の利用性を有する。
<さらなる実施態様>
[実施態様1]
試料内のゲノム材料を配列決定する方法であって、腫瘍試料及び/又はリンパ節試料をホモジナイズしてホモジナイズされた試料を提供する工程;前記ホモジナイズされた試料から少なくとも0.5マイクログラムのゲノム材料を単離する工程;前記少なくとも0.5マイクログラムの単離されたゲノム材料を配列決定のために調製する工程;及び前記調製されたゲノム材料を配列決定する工程を含む、方法。
[実施態様2]
配列決定の前に増幅工程を含まない、実施態様1に記載の方法。
[実施態様3]
少なくとも一の捕捉前又は捕捉後増幅工程を含み、前記少なくとも一の捕捉前又は捕捉後増幅工程の間に行われる増幅サイクルの総数が最大で4サイクルである、実施態様1に記載の方法。
[実施態様4]
増幅サイクルの総数が3である、実施態様3に記載の方法。
[実施態様5]
増幅サイクルの総数が2である、実施態様3に記載の方法。
[実施態様6]
少なくとも0.5マイクログラムの単離されたゲノム材料の配列決定のための前記調製が、前記少なくとも0.5マイクログラムの単離されたゲノムを捕捉プローブにハイブリダイズさせ、前記ハイブリダイズさせたゲノム材料を捕捉することを含む、実施態様1に記載の方法。
[実施態様7]
捕捉されたゲノム材料の量が約90ngから約900ngの範囲である、実施態様6に記載の方法。
[実施態様8]
1又は2回の増幅サイクルが前記捕捉されたゲノム材料に対して実施される、実施態様6に記載の方法。
[実施態様9]
前記ホモジナイズされた試料が、細胞の代表的サンプリングを含む、実施態様1に記載の方法。
[実施態様10]
少なくとも1マイクログラムのゲノム材料が、前記ホモジナイズされた試料から単離される、実施態様1に記載の方法。
[実施態様11]
少なくとも5マイクログラムのゲノム材料が、前記ホモジナイズされた試料から単離される、実施態様1に記載の方法。
[実施態様12]
少なくとも10マイクログラムのゲノム材料が、前記ホモジナイズされた試料から単離される、実施態様1に記載の方法。
[実施態様13]
血液試料から少なくとも0.5マイクログラムのDNAを単離する工程;前記少なくとも0.5マイクログラムの単離されたDNAを配列決定のために調製する工程;及び前記調製されたDNAを配列決定する工程を含む、試料内のDNAを配列決定する方法。
[実施態様14]
配列決定の前に0の増幅工程を含む、実施態様13に記載の方法。
[実施態様15]
少なくとも0.5マイクログラムの単離されたDNAの配列決定のための前記調製が、少なくとも0.5マイクログラムの単離されたゲノムを捕捉プローブにハイブリダイズさせ、ハイブリダイズさせたゲノム材料を捕捉することを含む、実施態様13に記載の方法。
[実施態様16]
捕捉されたゲノム材料の量が約90ngから約900ngの範囲である、実施態様15に記載の方法。
[実施態様17]
1又は2回の増幅サイクルが前記捕捉されたゲノム材料に対して実施される、実施態様15に記載の方法。
[実施態様18]
少なくとも1マイクログラムのDNAが前記血液試料から単離される、実施態様13に記載の方法。
[実施態様19]
(i)腫瘍の少なくとも一部、一又は複数の全リンパ節又は部分リンパ節、あるいはそれらの任意の組み合わせをホモジナイズして、ホモジナイズされた試料を提供する工程;(ii)前記ホモジナイズされた試料からゲノム材料を抽出する工程;(iii)前記抽出されたゲノム材料をビーズ上に捕捉する工程;及び(iv)前記捕捉されたゲノム材料を配列決定する工程を含む標的提示シークエンシング法であって、前記捕捉されたゲノム材料の配列決定の前に最大で4回の増幅サイクルを実施することを含む、標的提示シークエンシング法。
[実施態様20]
前記最大で4回の増幅サイクルが、前記抽出されたゲノム材料の捕捉前又は前記抽出されたゲノム材料の捕捉後に又はそれらの任意の組み合わせのときに実施されうる、実施態様19に記載の方法。
[実施態様21]
捕捉前の増幅サイクルが実施されない、実施態様19に記載の方法。
[実施態様22]
捕捉されたゲノム材料の量が約90ngから約900ngの範囲である、実施態様21に記載の方法。
[実施態様23]
1~3回の増幅サイクルが、前記抽出されたゲノム材料の捕捉後で配列決定の前に実施される、実施態様19に記載の方法。
[実施態様24]
少なくとも1マイクログラムのゲノム材料が前記ホモジナイズされた試料から抽出される、実施態様19に記載の方法。
[実施態様25]
4回を超える増幅サイクルを必要とするシークエンシング法において使用される入力材料の量と比較して、少なくとも100倍多くのゲノム材料が前記ホモジナイズされた試料から得られる、実施態様19に記載の方法。
[実施態様26]
試料内のDNAを配列決定する方法であって、少なくとも0.5マイクログラムのゲノム材料を入力試料であって、腫瘍試料、リンパ節試料、血液試料又はそれらの任意の組み合わせに由来する入力試料から単離する工程;前記単離されたゲノム材料を配列決定のために調製する工程;及び前記調製されたゲノム材料を配列決定する工程を含み、増幅工程を含まない、方法。
[実施態様27]
前記少なくとも0.5マイクログラムのゲノム材料が、複数の組織学的及び/又は生検検体に由来する、実施態様26に記載の方法。
[実施態様28]
前記少なくとも0.5マイクログラムのゲノム材料が、ホモジナイズされた腫瘍試料に由来する、実施態様26に記載の方法。
[実施態様29]
前記少なくとも0.5マイクログラムのゲノム材料が、ホモジナイズされたリンパ節試料に由来する、実施態様26に記載の方法。
[実施態様30]
前記少なくとも0.5マイクログラムのゲノム材料が、それが由来する腫瘍試料、リンパ節試料、又は血液試料の代表的サンプリングである、実施態様26に記載の方法。
[実施態様31]
配列決定が、次世代シークエンシング法を使用して実施される、実施態様26に記載の方法。
[実施態様32]
配列決定が、合成シークエンシング法を使用して実施される、実施態様26に記載の方法。
[実施態様33]
配列決定の間のPCR取り込み変異を減少させる方法であって、十分な量のゲノム材料を含む試料からDNAを単離する工程;前記単離されたDNAを配列決定のために調製する工程;及び前記調製されたDNAを配列決定する工程を含み、配列決定の前に最大で3回の増幅サイクルを含む、方法。
[実施態様34]
配列決定の前に1又は2回の増幅サイクルを含む、実施態様33に記載の方法。
[実施態様35]
入力ゲノム材料の前記十分な量が、捕捉前増幅サイクルが利用されないような量である、実施態様33に記載の方法。
[実施態様36]
前記試料が、がんを有すると疑われる患者に由来する、実施態様33に記載の方法。
[実施態様37]
前記試料が、がんと診断された患者に由来する、実施態様33に記載の方法。
[実施態様38]
前記試料が、がんを発症する危険性がある患者に由来する、実施態様33に記載の方法。
[実施態様39]
前記試料が、健康な組織試料に由来する、実施態様33に記載の方法。
[実施態様40]
約0.5マイクログラムのDNAが前記試料から単離される、実施態様33に記載の方法。
[実施態様41]
少なくとも0.5マイクログラムのDNAが前記試料から単離される、実施態様33に記載の方法。
[実施態様42]
特定の治療又は活性医薬成分に応答するがんサブタイプを同定することによってがんを治療する方法であって、前記がんサブタイプが、腫瘍、リンパ節又は血液の代表的サンプリングを含む入力試料を配列決定することによって同定され、前記入力試料が十分な量のゲノム材料を含み、配列決定の前に最大で4回の増幅サイクルが行われる、方法。
[実施態様43]
配列決定の前に最大で3回の増幅サイクルが行われる、実施態様42に記載の方法。
[実施態様44]
配列決定の前に最大で2回の増幅サイクルが行われる、実施態様42に記載の方法。
[実施態様45]
配列決定の前に最大で1回の増幅サイクルが行われる、実施態様42に記載の方法。
[実施態様46]
配列決定の前に増幅サイクルが行われない、実施態様42に記載の方法。
[実施態様47]
ゲノム材料の前記量が少なくとも0.5マイクログラムである、実施態様42に記載の方法。
[実施態様48]
ゲノム材料の前記量が少なくとも1マイクログラムである、実施態様42に記載の方法。
[実施態様49]
ゲノム材料の前記量が少なくとも5マイクログラムである、実施態様42に記載の方法。
[実施態様50]
ゲノム材料の前記量が少なくとも10マイクログラムである、実施態様42に記載の方法。

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11