(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】反射率測定装置、成膜装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/55 20140101AFI20231107BHJP
【FI】
G01N21/55
(21)【出願番号】P 2021179016
(22)【出願日】2021-11-01
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク ソミン
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-203410(JP,A)
【文献】国際公開第2011/062087(WO,A1)
【文献】特開2019-184279(JP,A)
【文献】特開昭62-237311(JP,A)
【文献】特表2008-539441(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0147081(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
G01N 21/84-G01N 21/958
G01B 11/00-G01B 11/30
G01M 11/00-G01M 11/08
G01J 3/00-G01J 4/04
G01J 7/00-G01J 9/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射率測定装置であって、
光源と、
投受光ヘッドであって、
前記投受光ヘッドに入力された光源からの光に含まれる第1光と第2光のうち前記第1光を被測定物に照射する投光部と、
前記第1光が前記被測定物で反射した反射光を第1素線に入力する反射光入力部と、
前記第2光を前記被測定物に照射せずに第2素線に入力する補正光入力部と、
を備える投受光ヘッドと、
前記第1素線を介して伝送された第3光の強度と前記第2素線を介して伝送された第4光の強度とを測定する測定手段と、
前記測定手段で測定した前記第3光の強度および前記第4光の強度に基づいて前記被測定物の反射率を特定する特定手段と、
を備え、
前記第1光と前記第2光とは異なる素線を被膜によってまとめた投光用光ファイバを介して前記投受光ヘッドに入力され、
前記第1素線と前記第2素線とを被膜によってまとめた受光用光ファイバが前記反射光入力部と前記補正光入力部に接続されることを特徴とする反射率測定装置。
【請求項2】
反射率測定装置であって、
光源と、
投受光ヘッドであって、
前記投受光ヘッドに入力された光源からの光に含まれる第1光と第2光のうち前記第1光を被測定物に照射する投光部と、
前記第1光が前記被測定物で反射した反射光を第1素線に入力する反射光入力部と、
前記第2光を前記被測定物に照射せずに第2素線に入力する補正光入力部と、
を備える投受光ヘッドと、
前記第1素線を介して伝送された第3光の強度と前記第2素線を介して伝送された第4光の強度とを測定する測定手段と、
前記測定手段で測定した前記第3光の強度および前記第4光の強度に基づいて前記被測定物の反射率を特定する特定手段と、
を備え、
前記第1光と前記第2光とは同一の素線を被膜によってまとめた投光用光ファイバを介して前記投受光ヘッドに入力され、
前記投受光ヘッドは、前記第1光と前記第2光とを異なる素線に入力する分岐部をさらに有
し、
前記第1素線と前記第2素線とを被膜によってまとめた受光用光ファイバが前記反射光入力部と前記補正光入力部に接続されることを特徴とす
る反射率測定装置。
【請求項3】
前記補正光入力部は、前記第2光を前記被測定物とは異なる反射体で反射することで前記第2素線に前記第2光を入力することを特徴とする
請求項1または2に記載の反射率測定装置。
【請求項4】
前記補正光入力部は、外部光が前記第2素線に入力されないように前記被測定物側に配置された遮光部材を備えることを特徴とする
請求項1から3の何れか1項に記載の反射率測定装置。
【請求項5】
前記受光用光ファイバにおける前記投受光ヘッドから前記測定手段までの分岐点において前記第1素線と前記第2素線とが分岐されることを特徴とする
請求項1から4の何れか1項に記載の反射率測定装置。
【請求項6】
前記受光用光ファイバにおける前記分岐点から前記測定手段までの素線の長さは5m以下であることを特徴とする
請求項5に記載の反射率測定装置。
【請求項7】
成膜装置であって、
基板に対して成膜を行う成膜ユニットが設けられた成膜室と、
基板を下側に保持しながら、基板の成膜位置と基板の受取位置との間で基板を搬送する搬送手段と、
搬送手段に保持された基板に形成された膜の反射率を測定するための
請求項1から6のいずれか1項に記載の反射率測定装置と、
を備えることを特徴とする成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板に蒸着された有機材料の膜厚を計測するための反射率測定装置および成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板上に形成された半導体膜を測定する膜厚測定装置が開示されている。特許文献1では、測定光源から照射される光源からの光をリファレンスとして測定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、測定光源から分光検出部までの間の光ファイバの屈曲などによって伝送される光の損失が変化し、反射率の測定精度が低下するという課題があった。
【0005】
上記の課題を鑑み、本発明は、反射率の測定精度の低下を防ぐための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る反射率測定装置は、
光源と、
投受光ヘッドであって、
前記投受光ヘッドに入力された光源からの光に含まれる第1光と第2光のうち前記第1光を被測定物に照射する投光部と、
前記第1光が前記被測定物で反射した反射光を第1素線に入力する反射光入力部と、
前記第2光を前記被測定物に照射せずに第2素線に入力する補正光入力部と、
を備える投受光ヘッドと、
前記第1素線を介して伝送された第3光の強度と前記第2素線を介して伝送された第4光の強度とを測定する測定手段と、
前記測定手段で測定した前記第3光の強度および前記第4光の強度に基づいて前記被測定物の反射率を特定する特定手段と、
を備え、
前記第1光と前記第2光とは異なる素線を被膜によってまとめた投光用光ファイバを介して前記投受光ヘッドに入力され、
前記第1素線と前記第2素線とを被膜によってまとめた受光用光ファイバが前記反射光入力部と前記補正光入力部に接続される。
【発明の効果】
【0007】
これによって、反射率の測定精度の低下を防ぐための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る成膜システムのレイアウト図。
【
図2】(A)及び(B)は搬送ユニットの平面図と側面図。
【
図3】
図2(A)及び
図2(B)の搬送ユニットのハンドの斜視図。
【
図4】(A)及び(B)は基板の撓みと支柱部材の機能の説明図。
【
図7】(A)及び(B)は基板の受渡動作の説明図。
【
図8】(A)及び(B)は基板の受渡動作の説明図。
【
図9】(A)及び(B)は基板の受渡動作の説明図。
【
図10】(A)及び(B)は基板の受渡動作の説明図。
【
図12】(A)及び(B)はマスク台へのマスクの搬送動作の説明図。
【
図13】(A)及び(B)はマスク台へのマスクの搬送動作の説明図。
【
図14】(A)及び(B)は基板の搬送動作及びアライメント動作の説明図。
【
図15】(A)及び(B)は基板に対する成膜動作の説明図。
【
図16】(A)~(C)は成膜装置全体の動作例を示す説明図。
【
図17】(A)~(C)は成膜装置全体の動作例を示す説明図。
【
図18】(A)~(C)は成膜装置全体の動作例を示す説明図。
【
図19】(A)~(C)は成膜装置全体の動作例を示す説明図。
【
図20】(A)~(D)は成膜装置全体の動作例を示す説明図。
【
図21】(A)~(C)は別の蒸着源及びその移動ユニットの説明図。
【
図22】(A)及び(B)はアライメントユニットの説明図。
【
図23】(A)~(C)は成膜装置の別の構成例の説明図。
【
図25】(A)は有機EL表示装置の全体図、(B)は1画素の断面構造を示す図。
【
図28】(A)~(C)は膜厚測定装置の測定原理を示す説明図。
【
図29】(A)~(C)は膜厚測定装置の構成例を示す説明図。
【
図30】成膜前後の基板の反射率の変化例を示す説明図。
【
図35】(A)、(B)は投受光部の構成例を示す説明図。
【
図36】(A)~(C)は膜厚測定装置の測定原理を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<システムの概要>
図1は成膜システム1のレイアウト図である。なお、各図において矢印Zは上下方向(重力方向)を示し、矢印X及び矢印Yは互いに直交する水平方向を示す。矢印θはZ軸周りの回転方向を示す。
【0011】
成膜システム1は、中間搬送装置101、成膜装置1及び中間搬送装置102がX方向に配列された構成であり、基板Wがこの順番で搬送され、処理される。中間搬送装置101は基板Wの搬送方向で上流側に位置しており、中間搬送装置102は基板Wの搬送方向で下流側に位置している。図示の例では、成膜システム1は、成膜装置1を一つ備えているが、中間搬送装置101の上流側、或いは、中間搬送装置102の下流側にも成膜装置1を設けることができる。制御装置103は、CPU等のプロセッサ、半導体メモリやハードディスクなどの記憶デバイス、入出力インタフェースを備え、成膜システム1を制御する。
【0012】
中間搬送装置101及び102は、搬送ロボット110を備える。搬送ロボット110は、ベース部110a上に二組のアーム110b及びハンド110cが支持されたダブルアーム型のロボットである。二組のアーム110b及びハンド110cは、ベース部110a上でθ方向に旋回し、また、伸縮自在である。中間搬送装置101及び102に隣接して、マスクMが収容されるストッカ104が設けられている。搬送ロボット110は、基板Wの搬送の他、マスクMの搬送も行う。ハンド110cはフォーク形状を有しており、基板MやマスクMはハンド110c上に載置されて搬送される。
【0013】
成膜装置1は、中間搬送装置101から搬入される基板Wに対して成膜処理を行い、中間搬送装置102へ搬出する装置である。成膜装置1は、基板Wの受渡を行う受渡室2と、受渡室2に隣接して配置された複数の成膜室3とを備える。本実施形態では成膜室3は、二つ設けられており、受渡室2のY方向の両側にそれぞれ一つずつ配置されている。受渡室2及び成膜室3はそれぞれ壁部20、30で囲まれて気密に維持可能である。
【0014】
成膜室では基板Wに蒸着物質が成膜される。基板WにはマスクMを用いて所定のパターンの蒸着物質の薄膜を形成可能である。基板Wの材質は、ガラス、樹脂、金属等の材料を適宜選択可能であり、代表的にはガラス上にポリイミド等の樹脂層が形成されたものが用いられる。本実施形態の場合、基板Wは矩形である。蒸着物質としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの物質である。成膜装置1は、例えば表示装置(フラットパネルディスプレイなど)や薄膜太陽電池、有機光電変換素子(有機薄膜撮像素子)等の電子デバイスや、光学部材等を製造する製造装置に適用可能であり、特に、有機ELパネルを製造する製造装置に適用可能である。
【0015】
<受渡室>
受渡室2は、中間搬送装置101及び102と、成膜装置1との間での基板WやマスクMの受け渡しの他、成膜室3に対する基板WやマスクMの振り分けを行う。したがって、受渡室2は仕分室と呼ぶこともできる。
【0016】
<多方向の搬送ユニット>
受渡室2には基板W及びマスクMを搬送する搬送ユニット4が設けられている。搬送ユニット4は、中間搬送装置101から基板W又はマスクMを受け取り、保持ユニット6A~6Dに受け渡す。また、保持ユニット6A~6Dから受け取った基板W又はマスクMを中間搬送装置102へ搬出する。
図2(A)及び
図2(B)は搬送ユニット4の平面図及び側面図である。
【0017】
本実施形態の搬送ユニット4は、X-Y平面上の多方向に基板W等を移動可能な水平多関節型のロボットであり、円筒形状のベース部40と、ベース部40上に支持されたアーム部41と、アーム部41に支持されたハンド44とを備える。ベース部40は駆動軸40aを有し、駆動軸40aのθ方向の回転によるZ1軸周りのアーム部41の旋回と、駆動軸40aの上下の移動によるアーム部41の昇降とを行う。アーム部41は、アーム部材42及び43を有する。アーム部42の一端は駆動軸40aに連結され、他端はアーム部材43の一端に連結されている。アーム部材43はアーム部材42に対してZ2軸周りに旋回可能に連結されている。ハンド44はアーム部材43の他端にZ3軸周りに旋回自在に連結されている。
【0018】
図2(A)及び
図2(B)に加えて
図3を参照する。
図3はハンド44の斜視図である。ハンド44は、板状のハンド本体45と、ハンド本体45に立設され、基板Wを支持する複数の支柱部材46~48と、を備える。支柱部材46~48は、ハンド本体45の中央部に位置する支柱部材46と、周辺部に位置する支柱部材47及び48と、に大別される。基板Wは複数の支柱部材46~48上に載置される。基板Wがハンド44に支持された状態において、支柱部材46は基板Wの中央部に位置し、支柱部材47及び48は基板Wの周縁部に位置する。
【0019】
支柱部材46は、ピン46aと、その先端部に設けられた弾性部材46bとを備える。支柱部材47は、ピン47aと、その先端部に設けられた載置部47bと、載置部47bの上面に設けられ、支柱部材47の先端部に位置する弾性部材47cとを備える。支柱部材48は、複数のピン48aと、複数のピン48aの先端部に設けられた載置部48bと、載置部48bの上面に設けられ、支柱部材48の先端部に位置する複数の弾性部材48cとを備える。
【0020】
こうした支柱部材46~48で基板Wを支持することで、少ない面積で基板Wを支持することができ、基板Wの表面に擦れ等が生じることを防止できる。また、弾性部材46b、47c及び48cは基板Wと接する部分であり、例えば樹脂である。弾性部材46b、47c及び48cが基板Wと接触することで、基板Wの表面に擦れ等が生じることをより確実に防止する。
【0021】
図2(B)に示すように、ハンド本体45からの支柱部材46の高さH1と、支柱部材47及び48の高さH2との関係は、H1>H2の関係にある。これにより、基板Wの中央部が垂れ下がることを防止することができる。
図4(A)及び
図4(B)はその説明図であり、基板Wを保持ユニット6Aがハンド44から受け取る状態を例示している。
【0022】
後述するように本実施形態の場合、保持ユニット6A~6Dは基板Wを静電気力により保持する。保持ユニット6A~6Dが基板Wを受け取る際、その平面度が低いと吸着力が低下する。また、成膜時に膜の形成精度も低下する。
図4(A)は比較例として、ハンド44が支柱部材46を備えず、基板Wが支柱部材47(及び支柱部材48)で支持された場合を想定している。大型の基板Wでは、自重によりその中央部が撓んで垂れ下がる。この状態で保持ユニット6Aが基板Wを吸着すると、基板Wの中央部と保持ユニット6Aの下面(保持面)との間に隙間ができる可能性があり、吸着力の低下を招く。
【0023】
一方、
図4(B)に示す本実施形態では、支柱部材46の高さH1と、支柱部材47及び48の高さH2との関係がH1>H2の関係にあることで、基板Wの中央部が支柱部材46によって支持され、基板Wは中央部が僅かに盛り上がった状態となる。大型の基板Wであっても、自重によりその中央部が撓んで垂れ下がることを防止し、むしろ、基板Wの中央部が周縁部よりも先に保持ユニット6Aに接する。その結果、基板Wの中央部から周縁部へ吸着が広がってゆき、その全体が隙間なく保持ユニット6Aに帆にされることになる。
【0024】
<スライド式の搬送ユニット>
図1に示すように、成膜装置1は、受渡室2から二つの成膜室3に渡って配置された二組の搬送ユニット5A及び5Bを備える。搬送ユニット5Aは保持ユニット6A及び6Cと、これらを独立してY方向に平行移動する移動ユニット7Aを備える。搬送ユニット5Bは、搬送ユニット5Aと同様の構造であり、保持ユニット6B及び6Dと、これらを独立してY方向に平行移動する移動ユニット7Bとを備える。
【0025】
図5は搬送ユニット5A及び5Bのうち、受渡室2に配置された部分を示しており、
図6は搬送ユニット5A(移動ユニット7A及び保持ユニット6A)の断面図を示している。搬送ユニット5A及び5Bは、搬送ユニット4よりも高い位置で保持ユニット6A~6Dを水平姿勢でY方向に独立して往復させるユニットであって、X方向に並設されている。なお、
図6は代表として搬送ユニット5A(移動ユニット7A及び保持ユニット6A)の構造を示すが、保持ユニット6A~6Dは同じ構造を有し、移動ユニット7A及び7Bも同じ構造を有している。
【0026】
本実施形態の移動ユニット7A及び7Bは、保持ユニット6A~6Dを磁力により移動する機構であり、特に磁力により浮上移動する機構である。移動ユニット7A及び7Bは、それぞれ、保持ユニット6A~6DのY方向の移動軌道を規定する一対のガイド部材70を備える。各ガイド部材70はC字型の断面を有し、Y方向に延設されたレール部材である。一対のガイド部材70は互いに、X方向に離間している。
【0027】
各ガイド部材70は、Z方向に離間した一対の磁気素子71を多数備える。多数の一対の磁気素子71は、Y方向に等ピッチで配列されている。一対の磁気素子71のうちの少なくとも一方は電磁石であり、他方は電磁石又は永久磁石である。
【0028】
保持ユニット6A~6Dは、基板WやマスクMを搬送するためのキャリアである。保持ユニット6A~6Dは、それぞれ、平面視で矩形状の本体部材60を備える。本体部材60のX方向の各端部は、対応するガイド部材70に差し込まれている。本体部材60のX方向の各端部の上面、下面にはそれぞれ不図示のヨークが設けられた永久磁石61が固定されている。上下の永久磁石61は本体部材60にY方向に複数設けられている。永久磁石61は、ガイド部材70の磁気素子71と対向している。永久磁石61と磁気素子71との反発力によって保持ユニット6A~6Dに浮上力を生じさせることができる。Y方向に多数設けられた磁気素子(電磁石)71のうち、磁力を発生させる磁気素子71を順次切り替えることにより、永久磁石61と磁気素子71との吸引力によって保持ユニット6A~6DにY方向の移動力を生じさせることができる。
【0029】
なお、本実施形態では、移動ユニット7A及び7Bを、磁気浮上搬送機構としたがローラ搬送機構、ベルト搬送機構、ラック-ピニオン機構等、保持ユニット6A~6Dを移動可能な他の搬送機構であってもよい。
【0030】
ガイド部材70にはY方向に延設されたスケール72が配置されており、本体部材60にはスケール72を読み取るセンサ64が設けられている。センサ64の検知結果により、各保持ユニット6A~6DのY方向の位置を特定することができる。
【0031】
保持ユニット6A~6Dは、それぞれ、基板Wを保持する保持部62を備える。保持部62は本実施形態の場合、静電気力により基板Wを吸着する静電チャックであり、保持部62は保持ユニット6A~6Dの下面に配置された複数の電極62aを含む。保持ユニット6A~6Dは、また、それぞれ、マスクMを保持する保持部63を備える。保持部63は、例えば、磁力によりマスクMを吸着するマグネットチャックであり、保持部62のX方向で外側に位置している。保持部63は、マスクMを機械的に挟持するクランプ機構であってもよい。
【0032】
<基板の受取動作>
搬送ユニット4から搬送される基板WやマスクMの保持ユニット6A~6Dによる受け取りは、受渡室2内の所定の位置で行われる。
図5は保持ユニット6A~6Dが、各受取位置PA~PDに位置している状態を示している。受取位置PA~PDはX-Y平面状でマトリクス状(2×2)に配置されており、成膜室3の外部である受渡室2の内部に設定されている。四か所の異なる受取位置PA~PDがあることで、下流側でのシステム障害が生じた場合に、基板Wを停留させておくバッファとしてもこれら受取位置PA~PDを用いることもできる。
【0033】
図7(A)~
図8(B)は受取位置PBにおける搬送ユニット4からの基板Wの保持ユニット6Bによる受取動作の例を示している。
図7(A)は中間搬送装置101から基板Wを搬送ユニット4が受け取った状態を示している。基板Wはハンド44上に載置されている。換言すると基板Wはその下側からハンド44に支持されている。保持ユニット6Bは移動ユニット7Bによって受取位置PBに移動される。
図7(B)は、搬送ユニット4のアーム部41の動作によりハンド44が保持ユニット6Bの下方に移動した状態を示している。
図7(B)の状態では、
図7(A)の状態に対してハンド44はθ方向に90度旋回している。このため、基板Wはその長手方向がX方向に向いた姿勢(
図7(A))からY方向に向いた姿勢(
図7(B))に変化している。
【0034】
図7(B)の段階で、保持ユニット6Bと基板Wとの位置合わせ(アライメント)を行う。受渡室2にはアライメント用のカメラ21が設けられている。カメラ21の撮像画像から保持ユニット6Bと基板Wとの相対位置を特定し、基板WのX方向、Y方向及びθ方向の位置を搬送ユニット4によって調整する。
【0035】
図8(A)は、搬送ユニット4のアーム部41を上昇させ、基板Wを保持ユニット6Bの保持部62に当接した状態を示している。保持部62の静電力によって基板Wは保持部62に保持される。このように本実施形態では、搬送ユニット4から保持ユニット6Bに対して基板Wを下から上へ渡すようにしている。
図8(B)は、搬送ユニット4のアーム部41を降下させ、保持ユニット6Bによる基板Wの受け取りが完了した状態を示している。
【0036】
搬送ユニット4と他の保持ユニット6A、6C及び6Dとの間での基板Wの受け渡しも同様である。一例として、
図9(A)~
図10(B)は受取位置PAにおける搬送ユニット4からの基板Wの保持ユニット6Aによる受取動作の例を示している。
図9(A)は中間搬送装置101から基板Wを搬送ユニット4が受け取った状態を示している。基板Wはその下側からハンド44に支持されている。保持ユニット6Aは移動ユニット7Aによって受取位置PAに移動される。
図9(B)は、搬送ユニット4のアーム部41の動作によりハンド44が保持ユニット6Bの下方に移動した状態を示している。
図9(B)の状態では、
図9(A)の状態に対してハンド44はθ方向に90度旋回している。このため、基板Wはその長手方向がX方向に向いた姿勢(
図9(A))からY方向に向いた姿勢(
図9(B))に変化している。
【0037】
図9(B)の段階で、保持ユニット6Aと基板Wとの位置合わせを行う。受渡室2に設けられたカメラ21の撮像画像から保持ユニット6Aと基板Wとの相対位置を特定し、基板WのX方向、Y方向及びθ方向の位置を搬送ユニット4によって調整する。
【0038】
図10(A)は、搬送ユニット4のアーム部41を上昇させ、基板Wを保持ユニット6Aの保持部62に当接した状態を示している。保持部62の静電力によって基板Wは保持部62に保持される。
図10(B)は、搬送ユニット4のアーム部41を降下させ、保持ユニット6Aによる基板Wの受け取りが完了した状態を示している。
【0039】
以上は基板Wの受取動作について説明したが、マスクMの受取動作についても同様である。
【0040】
<成膜室>
成膜室3では、マスクMを用いて基板Wに対する成膜を行う。
図1に示すように、二つの成膜室3には、それぞれ、二つのマスク台31が配置されている。合計で四つのマスク台31により、蒸着処理を行う蒸着位置JA~JDが規定される。二つの成膜室3の構造は同じである。各成膜室3には、蒸着源8と、蒸着源8を移動する移動ユニット9とが設けられている。蒸着源8と移動ユニット9の構造及び動作について
図11(A)~
図11(F)を参照して説明する。
【0041】
蒸着源8は、蒸着物質の原材料を収容する坩堝や、坩堝を加熱するヒータ等を備え、原材料を加熱してその蒸気である蒸着物質を開口部8aから上方へ放出する成膜ユニットである。移動ユニット9は、アクチュエータ90と、一対の可動レール94と、一対の固定レール95とを備える。アクチュエータ90は、駆動源93と、アーム部材91と、アーム部材92とを備える。アーム部材91の一端は駆動源93に連結されており、駆動源93によって旋回する。アーム部材91の他端はアーム部材92の一端と回動自在に連結されており、アーム部材92の他端は蒸着源8の底部に回動自在に連結されている。
【0042】
一対の可動レール94は、蒸着源8のY方向の移動を案内する。各可動レール94はY方向に延設されており、一対の可動レール94は互いにX方向に離間している。一対の固定レール95は、一対の可動レール94のX方向の移動を案内する。各固定レール95は、移動不能に固定されており、Y方向に延設されている。一対の固定レール95は互いにY方向に離間している。
【0043】
アクチュエータ90の駆動により、蒸着源8は、蒸着位置JAの下(マスク台31の下)をY方向にスライドし、また、蒸着位置JAの側から蒸着位置JBの側へスライドし、更に、蒸着位置JBの下(マスク台31の下)をY方向にスライドする。具体的に述べると、
図11(A)の位置からアクチュエータ90の駆動によりアーム部材91及び92を旋回させると、
図11(B)に示すように蒸着源8が一対の可動レール94の案内により蒸着位置JAの下をY方向に通過する。この状態からアクチュエータ90の駆動によりアーム部材91及び92を逆方向旋回させると、
図11(C)に示すように蒸着源8が蒸着位置JAの下をY方向に通過して
図11(A)の位置に戻る。
【0044】
アクチュエータ90の駆動によりアーム部材91及び92を更に旋回させると、蒸着源8及び一対の可動レール94は、一対の固定レール95の案内にしたがって蒸着位置JBの側へX方向に移動する。
図11(D)の位置からアクチュエータ90の駆動によりアーム部材91及び92を更に旋回させると、
図11(E)に示すように蒸着源8が一対の可動レール94の案内により蒸着位置JBの下をY方向に通過する。この状態からアクチュエータ90の駆動によりアーム部材91及び92を逆方向旋回させると、
図11(F)に示すように蒸着源8が蒸着位置JBの下をY方向に通過して
図11(D)の位置に戻る。
【0045】
このように本実施形態では、一つの蒸着源8を移動させることで、蒸着位置JAと蒸着位置JBの二つの蒸着位置で蒸着源8を共用できる。
【0046】
次に、マスクMのマスク台31への搭載、マスクMと基板Wとの位置合わせ(アライメント)動作、及び、その後の成膜動作についてについて
図12(A)~
図15(B)を参照して説明する。
【0047】
まず、マスクMをマスク台31に搭載する動作について説明する。
図12(A)~
図13(B)は蒸着位置JAにおいてマスクMをマスク台31に搭載する動作を示している。
図12(A)の状態から、マスクMを保持した保持ユニット6Aが移動ユニット7Aによってマスク台31上に移動してくる。
図13(A)に示すようにマスクMがマスク台31上の所定の位置に到達すると、
図13(B)に示すように移動ユニット7Aの磁気素子71の磁力を調節して保持ユニット6Aの浮上量を下げ、保持ユニット6AによるマスクMの保持を解除する。これによりマスク台31上にマスクMが搭載される。
【0048】
次に、アライメント動作及び成膜動作について説明する。
図14(A)は、蒸着位置JAに、基板Wを保持した保持ユニット6Aが移動ユニット7Aによって移動している状態を示している。基板WがマスクMの上方に到達すると、基板WとマスクMとのX-Y平面上のアライメントを行う。アライメントでは、
図14(B)に示すように、カメラ32により基板WとマスクMにそれぞれ付されているアライメントマークを撮像し、その撮像画像から基板WとマスクMとの位置ずれ量を演算する。そして、演算した位置ずれ量を減少させるように基板Wの位置を調整する。基板Wの位置の調整は本実施形態の場合、移動ユニット7Aの磁気素子71の磁力を調節して行う。X方向、Y方向に離間した各磁気素子71の磁力を調整することで、保持ユニット6Aの位置をX方向、Y方向、θ方向に変位させることができ、これにより保持ユニット6Aに保持されている基板WのX方向、Y方向、θ方向の位置を変位させることができる。例えば、一対のガイド部材70のうちの、一方のガイド部材70に設けられている磁気素子71の磁力を強くすると、保持ユニット6A及び基板Wを、磁力の吸引によって一方のガイド部材70の側に(又は磁力の反発によって他方のガイド部材70の側に)変位させることができる。
【0049】
カメラ32による撮像と、磁気素子71の磁力の調整による基板WとマスクMとのアライメントは、両者の位置ずれ量が許容範囲内になるまで繰り返し行ってもよい。アライメントが完了すると、
図15(A)に示すように移動ユニット7Aの磁気素子71の磁力を調節して保持ユニット6Aの浮上量を下げ、マスクM上に基板Wを重ねる。保持ユニット6Aによる基板Wの保持は解除しない。次に成膜動作を行う。
図15(B)に示すように蒸着源8を移動しつつ、蒸着源8から蒸着物質を基板Wへ放出する。基板WにはマスクMを通過した蒸着物質の膜が形成される。成膜中、基板Wは保持ユニット6Aに保持された状態が維持される。
【0050】
<成膜装置の動作例>
図16(A)から
図20(D)を参照して成膜装置1において複数の基板Wに対して連続的に成膜を行う動作例について説明する。まず、マスクMを各蒸着位置JA~JDのマスク台31に搬送する。
図16(A)は一枚目のマスクMが中間搬送装置101から搬送されてきた状態を示す。搬送ユニット4はハンド44上でマスクMを受け取り、
図16(B)に示すように、受取位置PAにて保持ユニット6AにマスクMを受け渡す。保持ユニット6AはマスクMを、マスクMの上側から保持する。
【0051】
図16(C)に示すように二枚目のマスクMが中間搬送装置101から搬送されてくる。並行して、保持ユニット6Aが移動ユニット7Aによって蒸着位置JAに平行移動される。搬送ユニット4はハンド44上で二枚目のマスクMを受け取り、
図17(A)に示すように、受取位置PCにて保持ユニット6CにマスクMを受け渡す。保持ユニット6CはマスクMを、マスクMの上側から保持する。並行して、一枚目のマスクMが蒸着位置JAにおいてマスク台31上に載置され、保持ユニット6Aは受取位置PAに戻る。
【0052】
図17(B)に示すように三枚目のマスクMが中間搬送装置101から搬送されてくる。並行して、保持ユニット6Cが移動ユニット7Aによって蒸着位置JCに平行移動される。搬送ユニット4はハンド44上で三枚目のマスクMを受け取り、受取位置PBにて保持ユニット6BにマスクMを受け渡す。以上の手順を繰り返すことで、
図17(C)に示すように蒸着位置JA~JDにそれぞれマスクMが配置される。
【0053】
次に、基板Wに成膜を行う一連の動作について説明する。
図18(A)は一枚目の基板Wが中間搬送装置101から搬送されてきた状態を示す。搬送ユニット4はハンド44上で基板Wを受け取り、
図18(B)に示すように、受取位置PAにて保持ユニット6Aに基板Wを受け渡す。保持ユニット6Aは基板Wを、基板Wの上側から保持する。
【0054】
図18(C)に示すように二枚目の基板Wが中間搬送装置101から搬送されてくる。並行して、基板Wを受け取った保持ユニット6Aが移動ユニット7Aによって蒸着位置JAに平行移動される。蒸着位置JAでは基板WとマスクMとのアライメントが行われる。搬送ユニット4はハンド44上で二枚目の基板Wを受け取り、
図19(A)に示すように、受取位置PCにて保持ユニット6Cに基板Wを受け渡す。保持ユニット6Cは基板Wを、基板Wの上側から保持する。並行して、一枚目の基板Wに対して、蒸着位置JAにおいて蒸着源8による成膜動作が行われる。
【0055】
図19(B)に示すように三枚目の基板Wが中間搬送装置101から搬送されてくる。並行して、二枚目の基板Wを受け取った保持ユニット6Cが移動ユニット7Aによって蒸着位置JCに平行移動される。蒸着位置JCでは基板WとマスクMとのアライメントが行われる。搬送ユニット4はハンド44上で三枚目の基板Wを受け取り、
図19(C)に示すように、受取位置PBにて保持ユニット6Bに基板Wを受け渡す。保持ユニット6Bは基板Wを、基板Wの上側から保持する。並行して、蒸着位置JAにて成膜を終えた蒸着源8が蒸着位置JBの側へ移動される。また、二枚目の基板Wに対して、蒸着位置JCにおいて蒸着源8による成膜動作が行われる。
【0056】
図20(A)に示すように四枚目の基板Wが中間搬送装置101から搬送されてくる。並行して、三枚目の基板Wを受け取った保持ユニット6Bが移動ユニット7Bによって蒸着位置JBに平行移動される。蒸着位置JBでは基板WとマスクMとのアライメントが行われる。また、成膜を終えた一枚目の基板Wを保持する保持ユニット6Aが移動ユニット7Aによって受取位置PAへ移動される。
【0057】
搬送ユニット4はハンド44上で四枚目の基板Wを受け取り、
図20(B)に示すように、受取位置PDにて保持ユニット6Dに基板Wを受け渡す。保持ユニット6Dは基板Wを、基板Wの上側から保持する。並行して、蒸着位置JCにて成膜を終えた蒸着源8が蒸着位置JDの側へ移動され、成膜を終えた二枚目の基板Wを保持する保持ユニット6Cが移動ユニット7Aによって受取位置PCへ移動される。また、三枚目の基板Wに対して、蒸着位置JBにおいて蒸着源8による成膜動作が行われる。
【0058】
成膜を終えた一枚目の基板Wを保持する保持ユニット6Aが移動ユニット7Aに戻ると、
図20(C)に示すように、搬送ユニット4が受取位置PAにおいて、一枚目の基板Wを保持ユニット6Aから受け取る。並行して、四枚目の基板Wを受け取った保持ユニット6Dが移動ユニット7Bによって蒸着位置JDに平行移動される。搬送ユニット4は
図20(D)に示すように成膜を終えた一枚目の基板Wを、中間搬送装置102へ搬出する。以上の手順を繰り返すことで、多数の基板Wに対して順次成膜が行われることになる。
【0059】
以上の成膜装置1によれば、中間搬送装置101から各蒸着位置JA~JDへの基板WやマスクMの搬送は、搬送ユニット4と、搬送ユニット5A又は5Bとの併用により行われる。単一の搬送機構で搬送するよりも、各搬送ユニットの搬送距離を短くしつつ、より長い距離で基板Wを搬送することができる。大型の基板Wを搬送する際に、長い搬送距離を実現しつつ、各搬送ユニットが高剛性化のために大型化することを防止できる。したがって、基板Wの大型化に対応可能な成膜装置1を提供することができる。
【0060】
また、搬送ユニット4と搬送ユニット5A及び5Bとで異なる機構を採用した。すなわち、搬送ユニット4を多関節ロボットで構成したことで、基板Wの搬送先の位置に自由度や、基板Wの姿勢(向き)の自由度を向上することができる。また、搬送ユニット5A及び5Bを基板Wの平行移動機構で構成して、長い搬送距離に対応可能とした。
【0061】
搬送ユニット4から搬送ユニット5A及び5Bへの基板Wの受け渡しは、静電チャックである保持部62で行うようにしたので、搬送ユニット4から保持部62へ基板Wを貼り付けるようにして、基板Wの受け渡しを行うことができる。基板Wを置き換える方式に対して、基板Wの載置が不要となり、受渡時間を短縮できる。これにより生産性を向上できる。
【0062】
受渡室2から成膜室3への基板W及びマスクMの搬送に際し、これらの姿勢を搬送ユニット4によって90度転換し、基板W及びマスクMの長手方向がY方向を指向するようにした。これは成膜装置1のX方向の幅の小型化に寄与する。無論、基板W及びマスクMの姿勢を転換しない構成も採用可能である。この場合、成膜装置1のY方向の幅の小型化に寄与する。
【0063】
ここまで説明した形態では、蒸着源8をX方向とY方向との双方に移動可能な構成としたが、X方向にのみ移動可能な構成であってもよい。
図21(A)~
図21(C)はその一例を示し、蒸着位置JA、JBにおける構成を例示している。蒸着位置JC、JDにおいても同様の構成を採用可能である。
【0064】
蒸着源8に代わる蒸着源8'はY方向に細長い形態を有しており、蒸着物質を放出する開口部8a'は蒸着位置JA、JBのY方向の長さに対応した長さを有している。移動ユニット9に代わる移動ユニット9'は、一対の固定レール96を有している。各固定レール96はX方向に延設され、一対の固定レール96は互いにY方向に離間している。移動ユニット9'は、アクチュエータ90に相当する不図示のアクチュエータを有する。
【0065】
蒸着源8'は、
図21(A)に示すように、蒸着位置JAと蒸着位置JBとの間の位置を待機位置とし、蒸着位置JAにおいて基板Wに対して成膜を行う場合は
図21(B)に示すように蒸着位置JAをX方向に横断する。また、蒸着位置JBにおいて基板Wに対して成膜を行う場合は
図21(C)に示すように蒸着位置JBをX方向に横断する。本実施形態によれば、移動ユニット9'の機構を比較的簡単な機構とすることができる。
【0066】
ここまで説明した形態では、蒸着位置JA~JDにおける基板WとマスクMとのアライメントに際し、磁気素子71の磁力の調整を利用したが、専用のアライメント装置を設けてもよい。
図22(A)及び
図22(B)はその一例を示す。アライメント装置10は、各蒸着位置JA~JDに配置され、図示の例では蒸着位置JAに配置されたアライメント装置10を例示している。
【0067】
アライメント装置10は、保持ユニット6Aから基板Wを受け取り、マスクMと基板Wとのアライメントを行って、基板WをマスクMに重ね合わせる装置である。アライメント装置10は、基板Wを保持する爪を有するアーム部材11を有する。保持ユニット6Aに保持された基板Wは、保持を解除されてアーム部材11に載置される。アーム部材11は、駆動ユニット12により、X方向、Y方向及びθ方向に変位可能であり、これによりアーム部材11に載置された基板WのX方向、Y方向及びθ方向の位置を調整する。駆動ユニット12は昇降ユニット13により昇降可能である。
【0068】
アライメント装置10は、また、プレートユニット14と、プレートユニット14を昇降する昇降ユニット15を備える。プレートユニット14は、基板WとマスクMとを密着させるためのプレートであり、例えば、鉄製のマスクMと引き合う磁石や、基板Wを冷却する冷却器を有する。
【0069】
アライメントに際しては、
図22(A)に示すように、カメラ32により基板WとマスクMにそれぞれ付されているアライメントマークを撮像し、その撮像画像から基板WとマスクMとの位置ずれ量を演算する。そして、演算した位置ずれ量を減少させるように基板Wの位置を調整する。基板Wの位置の調整は、基板WとマスクMとが上下に離間した状態で、基板Wが載置されたアーム部材11を駆動ユニット12が変位させることで行う。
【0070】
カメラ32による撮像と、磁気素子71の磁力の調整による基板WとマスクMとのアライメントは、両者の位置ずれ量が許容範囲内になるまで繰り返し行ってもよい。アライメントが完了すると、
図22(B)に示すように、保持ユニット6Aが蒸着位置JAから退避した後に、昇降ユニット13によって駆動ユニット12及びアーム部材12と共に基板WをマスクM上に降下して両者を重ね合わせ、更に、昇降ユニット15によってプレートユニット14を基板W上に降下して基板WとマスクMとを密着させる。この状態で基板Wに対する成膜を行う。
【0071】
成膜が終了すると、昇降ユニット15によってプレートユニット14を上昇する。保持ユニット6Aが蒸着位置JAに再び移動された後、昇降ユニット13によって駆動ユニット12及びアーム部材12と共に基板Wを上昇して、基板Wを保持ユニット6Aに受け渡す。
【0072】
また、搬送ユニット5A及び5Bを介さずに、搬送ユニット4のみで基板WやマスクMを成膜室3へ搬送することも可能である。
図23(A)~
図23(D)はその一例を示す。図示の例では、各蒸着位置JA、JCに、対応する保持ユニット6A、6Cが配置されている。保持ユニット6A、6Cは固定的に配置されており、その位置は不動である。各蒸着位置JA、JCは、下から順に、蒸着源8、8、マスク台31、31、保持ユニット6A、6Cが配置された形態である。蒸着源8は固定して配置されるものであってもよいが、本実施形態では、他の実施形態と同様に移動する形態である。マスクMは、マスク台31に予め載置される。
【0073】
図23(A)に示すように、基板Wが中間搬送装置101から搬送されてくると、搬送ユニット4はハンド44上で基板Wを受け取り、
図24(B)及び
図24(C)に示すように、蒸着位置JAにて保持ユニット6Aに基板Wを受け渡す。蒸着位置JAは受取位置PAを兼ねている。保持ユニット6Aは基板Wを、基板Wの上側から保持する。基板Wの受け渡しは、静電チャックである保持部62で行うようにしたので、搬送ユニット4から保持部62へ基板Wを貼り付けるようにして、基板Wの受け渡しを行うことができる。基板Wを置き換える方式に対して、基板Wの載置が不要となり、受渡時間を短縮できる。これにより生産性を向上できる。マスクMと基板Wとのアライメントは搬送ユニット4によって基板Wの位置や姿勢を調整することで行うことができる。
【0074】
その後、
図23(D)に示すように蒸着源8をY方向に移動して、保持ユニット6Aに保持された基板Wに対する成膜を行う。蒸着位置JCにおける成膜動作も同様であり、蒸着位置JAと蒸着位置JCとで並行的に基板Wの搬送と成膜を行える。成膜を終えると、搬送ユニット4は保持ユニット6A又は6Cから基板Wを受け取り、中間搬送装置102へ搬出する。
【0075】
ここまで説明した形態では基板Wを保持する保持部62を静電チャックで構成したが、他の吸着方式であってもよい。
図24はその一例を示し保持部62の下面を示している。保持部62の下面には複数の吸着パッド65が設けられている。吸着パッド65は、例えば、粘着力により基板Wを保持する粘着部材である。或いは、吸着パッド65はバキュームパッドである。
【0076】
次に、電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。
【0077】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図25(A)は有機EL表示装置50の全体図、
図25(B)は1画素の断面構造を示す図である。
【0078】
図25(A)に示すように、有機EL表示装置50の表示領域51には、発光素子を複数備える画素52がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。
【0079】
なお、ここでいう画素とは、表示領域51において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。カラー有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子52R、第2発光素子52G、第3発光素子52Bの複数の副画素の組み合わせにより画素52が構成されている。画素52は、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子の3種類の副画素の組み合わせで構成されることが多いが、これに限定はされない。画素52は少なくとも1種類の副画素を含めばよく、2種類以上の副画素を含むことが好ましく、3種類以上の副画素を含むことがより好ましい。画素52を構成する副画素としては、例えば、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子と黄色(Y)発光素子の4種類の副画素の組み合わせでもよい。
【0080】
図25(B)は、
図25(A)のA-B線における部分断面模式図である。画素52は、基板53上に、第1の電極(陽極)54と、正孔輸送層55と、赤色層56R・緑色層56G・青色層56Bのいずれかと、電子輸送層57と、第2の電極(陰極)58と、を備える有機EL素子で構成される複数の副画素を有している。これらのうち、正孔輸送層55、赤色層56R、緑色層56G、青色層56B、電子輸送層57が有機層に当たる。赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。
【0081】
また、第1の電極54は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層55と電子輸送層57と第2の電極58は、複数の発光素子52R、52G、52Bにわたって共通で形成されていてもよいし、発光素子ごとに形成されていてもよい。すなわち、
図25(B)に示すように正孔輸送層55が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成された上に赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bが副画素領域ごとに分離して形成され、さらにその上に電子輸送層57と第2の電極58が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成されていてもよい。
【0082】
なお、近接した第1の電極54の間でのショートを防ぐために、第1の電極54間に絶縁層59が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層60が設けられている。
【0083】
図25(B)では正孔輸送層55や電子輸送層57が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を有する複数の層で形成されてもよい。また、第1の電極54と正孔輸送層55との間には第1の電極54から正孔輸送層55への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成してもよい。同様に、第2の電極58と電子輸送層57の間にも電子注入層を形成してもよい。
【0084】
赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bのそれぞれは、単一の発光層で形成されていてもよいし、複数の層を積層することで形成されていてもよい。例えば、赤色層56Rを2層で構成し、上側の層を赤色の発光層で形成し、下側の層を正孔輸送層又は電子ブロック層で形成してもよい。あるいは、下側の層を赤色の発光層で形成し、上側の層を電子輸送層又は正孔ブロック層で形成してもよい。このように発光層の下側又は上側に層を設けることで、発光層における発光位置を調整し、光路長を調整することによって、発光素子の色純度を向上させる効果がある。
【0085】
なお、ここでは赤色層56Rの例を示したが、緑色層56Gや青色層56Bでも同様の構造を採用してもよい。また、積層数は2層以上としてもよい。さらに、発光層と電子ブロック層のように異なる材料の層が積層されてもよいし、例えば発光層を2層以上積層するなど、同じ材料の層が積層されてもよい。
【0086】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。ここでは、赤色層56Rが下側層56R1と上側層56R2の2層からなり、緑色層56Gと青色層56Bは単一の発光層からなる場合を想定する。
【0087】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)及び第1の電極54が形成された基板53を準備する。なお、基板53の材質は特に限定はされず、ガラス、プラスチック、金属などで構成することができる。本実施形態においては、基板53として、ガラス基板上にポリイミドのフィルムが積層された基板を用いる。
【0088】
第1の電極54が形成された基板53の上にアクリル又はポリイミド等の樹脂層をバーコートやスピンコートでコートし、樹脂層をリソグラフィ法により、第1の電極54が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層59を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0089】
絶縁層59がパターニングされた基板53を第1の成膜室に搬入し、正孔輸送層55を、表示領域の第1電極54の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層55は、最終的に1つ1つの有機EL表示装置のパネル部分となる表示領域51ごとに開口が形成されたマスクを用いて成膜される。
【0090】
次に、正孔輸送層55までが形成された基板53を第2の成膜室に搬入する。基板53とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、正孔輸送層55の上の、基板53の赤色を発する素子を配置する部分(赤色の副画素を形成する領域)に、赤色層56Rを成膜する。ここで、第2の成膜室で用いるマスクは、有機EL表示装置の副画素となる基板53上における複数の領域のうち、赤色の副画素となる複数の領域にのみ開口が形成された高精細マスクである。これにより、赤色発光層を含む赤色層56Rは、基板53上の複数の副画素となる領域のうちの赤色の副画素となる領域のみに成膜される。換言すれば、赤色層56Rは、基板53上の複数の副画素となる領域のうちの青色の副画素となる領域や緑色の副画素となる領域には成膜されずに、赤色の副画素となる領域に選択的に成膜される。
【0091】
赤色層56Rの成膜と同様に、第3の成膜室において緑色層56Gを成膜し、さらに第4の成膜室において青色層56Bを成膜する。赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bの成膜が完了した後、第5の成膜室において表示領域51の全体に電子輸送層57を成膜する。電子輸送層57は、3色の層56R、56G、56Bに共通の層として形成される。
【0092】
電子輸送層57までが形成された基板を第6の成膜室に移動し、第2電極58を成膜する。本実施形態では、第1の成膜室~第6の成膜室では真空蒸着によって各層の成膜を行う。しかし、本発明はこれに限定はされず、例えば第6の成膜室における第2電極58の成膜はスパッタによって成膜するようにしてもよい。その後、第2電極68までが形成された基板を封止装置に移動してプラズマCVDによって保護層60を成膜して(封止工程)、有機EL表示装置50が完成する。なお、ここでは保護層60をCVD法によって形成するものとしたが、これに限定はされず、ALD法やインクジェット法によって形成してもよい。
【0093】
ここで、第1の成膜室~第6の成膜室での成膜は、形成されるそれぞれの層のパターンに対応した開口が形成されたマスクを用いて成膜される。成膜の際には、基板53とマスクとの相対的な位置調整(アライメント)を行った後に、マスクの上に基板53を載置して成膜が行われる。
【0094】
次に、成膜が行われた基板の膜厚を測定する膜厚測定装置について説明する。本実施形態では、光学センサを使用して基板表面の光の反射率に基づいて膜厚測定を行う膜厚測定装置を例に説明を行う。
【0095】
図26は成膜装置において膜厚測定装置120が配置されうる測定位置MAA~MDCを示す。測定位置MAA、MBA、MCA,MDAは、受取位置PA~PDと蒸着位置JA~JDとの間であって、受渡室2内、すなわち成膜室3外で搬送ユニット5A、5Bによって搬送される基板53の膜厚を測定する位置である。測定位置MAB、MBB、MCB、MDBは、受取位置PA~PDと蒸着位置JA~JDとの間であって、成膜室3内で搬送ユニット5A、5Bによって搬送される基板の膜厚を測定する位置である。測定位置MAC、MBC、MCC、MDCは、成膜室3内の蒸着位置JA~JJDに位置する基板の膜厚を測定する位置である。なお、測定位置MAA~MDCのうち、受取位置PA~PDと蒸着位置JA~JDとの間のそれぞれの少なくとも1か所に膜厚測定装置120が配置されればよく、全ての測定位置に膜厚測定装置120が配置される必要はない。
【0096】
図27は、YZ面での成膜装置の断面図である。
図27に示すように、膜厚測定装置120が配置されうる測定位置MAA~MDCは、いずれも基板53の鉛直方向(Z方向)で下方に配置される。これによって、基板53の膜厚を搬送ユニット5A、5Bによる搬送中に膜厚測定装置120によって測定することができる。
【0097】
このように、基板Wの膜厚を基板WがESCで吸着された状態で測定するため、測定精度を高めながら、薄膜測定室などの追加の大型の設備を必要とすることなく薄膜測定を行うことができる。また、搬送中に膜厚測定を行うため、成膜後に高速に膜厚の測定を行うことができる。
【0098】
図28(A)~(C)は、測定位置MAAに膜厚測定装置120が配置される例を使用して測定原理を説明する説明図である。
【0099】
図28(A)は、基板が成膜室3に搬入される前に膜厚測定装置120からレーザ光の射出を行い、反射光の強度を測定する際の図である。ここで、受信したレーザ光の受光強度をP
BGとする。受光強度を測定することで、受光センサの温度特性などに起因するノイズ(バックグラウンドノイズ)の大きさや、後述する測定器内のファイバ間の光の漏れを特定することができる。
【0100】
続いて、
図28(B)は、リファレンス基板W
REFが成膜室3に搬入される際に膜厚測定装置120によってレーザ光の射出を行い、リファレンスとして反射光の強度を測定する際の図である。
図28(B)では、例えば素ガラスなど、反射率R
refの分かっている基板W
REFが使用される。ここで、送信したレーザ光の照射強度をP
Trefとし、受信したレーザ光の受光強度をP
Rrefとすると、以下の数式(1)が成り立つ。
R
ref=(P
Rref-P
BG)/(P
Tref-P
BG) (1)
ここで上述したように、反射率R、
図28(A)における受光強度P
BG、
図28(B)における受光強度P
Rrefが取得可能であるため、上記式に基づいてレーザ光の照射強度P
Trefを特定することができる。これによって、反射率と受光強度との対応関係を特定することができる。
【0101】
続いて、
図28(C)は、基板Wが成膜室3で成膜された後に成膜室3から搬出される際に膜厚測定装置120によってレーザ光の射出を行い、反射光の強度を測定する際の図である。
図28(C)では、
図28(B)において特定したレーザ光の照射強度P
Trefを参照し、受信したレーザ光の受光強度P
Rに基づいて以下の数式(2)によって成膜した基板Wの反射率Rを特定することができる。
R=(P
R-P
BG)/(P
Tref-P
BG) (2)
これによって、反射率の変化を特定することができる。
【0102】
なお、
図28(A)および
図28(B)に示すような、バックグラウンドノイズの測定およびリファレンスの測定は、基板ごとに行ってもよいし、所定の枚数の基板の成膜が行われた後、あるいは、所定の時間経過後に行われてもよい。
【0103】
図30に、成膜した膜厚ごとの反射率の測定結果の一例を示す。
図30に示すように、膜厚40オングストローム(Å)の場合の基板の反射率と比較して、膜厚1600Åの場合には、波長280、330~420nm周辺の反射率が大きくなっている。このため、この波長帯の反射率を測定することで、膜厚を推定することができる。反射率に基づく膜厚の推定には、公知の技術を用いることができる。例えば、複数の膜厚で反射率をあらかじめ測定し、測定した反射率からどの測定結果に近いかを推定してもよい。
【0104】
また、反射率の測定結果に基づく膜厚の推定には、複数の周波数帯において測定した反射率に基づいて膜厚を推定してもよい。例えば、波長が280nmと330nmとにおける反射率の測定結果に基づく膜厚の推定結果がそれぞれ1000Åと1200Åである場合、膜厚の推定結果の平均を取り、膜厚は1100Åであるものとしてもよい。
【0105】
<<膜厚測定装置の構成例>>
(構成例1)
図29(A)は、膜厚測定装置120の一構成例を示す。構成例1に係る膜厚測定装置120は、光源2901、真空フランジ2902、投受光部2903、分光器2904、およびPC2905を備える。光源2901、真空フランジ2902、投受光部2903、および分光器2904間は、光ファイバで接続される。
【0106】
光源2901は、シャッター29011を動作させて光の出力と非出力とを切り替えることができる発光装置である。一例では、光源2901は、1つの出射口からハロゲンと重水素の連続光を出射する重水素(D2)ハロゲン光源29012を備える。別の例では、光源2901はレーザ励起プラズマ(Laser-Driven Light Source)光源を備える。
【0107】
真空フランジ2902は、真空環境と大気環境との接続部に配置される。例えば、光源2901、分光器2904、PC2905は大気環境に保たれる筐体内に配置され、筐体外の真空状態におかれうる成膜室内には投受光部2903が配置され、投受光部2903と光源2901および分光器2904とを接続する光ファイバは、真空フランジ2902を介して筐体内外を接続する。別の例では、成膜室3や受渡室2の内側には投受光部2903が配置され、光源2901、分光器2904、およびPC2905は成膜室3や受渡室2の外側に配置されてもよい。この場合、真空フランジ2902は成膜室3や受渡室2の壁面に設けられてもよい。
【0108】
投受光部2903は、光源2901から出射された光を
図27に示すように、垂直上方に出射するための投光部と、反射光を受光して分光器2904に送出するための受光部とを備える。分光器2904は、光の入力口を備え、入力された光を分光して波長帯ごとに光強度を測定する。そして、測定した光の強度に関する情報をPC2905に送信する。
【0109】
PC2905は、分光器2904が測定した光の強度に基づいて、上記数式(1)および(2)を用いて膜厚の測定値を計算する。また、一例では、PC2905は、膜厚の測定値を、成膜装置2の成膜プロセスにかける時間の調整や、成膜装置2の蒸着源8からの蒸着材料の放出量の調整や、後段の成膜プロセスのパラメータの調整などのために使用することができる。
【0110】
(構成例2)
図29(B)は、膜厚測定装置120の構成例2を示す。構成例2に係る膜厚測定装置120は、光源2921、真空フランジ2922aおよび2922b(以下、区別せず真空フランジ2922と呼ぶ場合がある)、投受光部2923a、b(以下、区別せず投受光部2923と呼ぶ場合がある)、分光器2924、PC2925、ファイバ切替器2926、ジョイント2927を備える。光源2921、真空フランジ2922、投受光部2923、分光器2924、ファイバ切替器2926、およびジョイント2927間は、光ファイバで接続される。
【0111】
光源2921、真空フランジ2922、投受光部2923、分光器2924、PC2925は実施例1で説明した光源2901、真空フランジ2902、投受光部2903、分光器2904、PC2905と同様のため説明を省略する。
【0112】
ジョイント2927は、光源2921から出力された光をファイバ切替器2926の複数の入力ポートに分岐するための分岐ファイバと、光源2921とを接続する。
【0113】
ファイバ切替器2926は、分岐ファイバから入力された光の出力/非出力を切り替える切替器であり、いずれかの出力口から光を送出する。本実施例では、ファイバ切替器2926は3入力3出力であるものとして説明をするが、複数の入力口と出力口との対が設けられればよく、個数は限定されない。本実施例では、1つめの出力口(ポート1とする)から出力された光は投受光部2923aに、2つめの出力口(ポート2とする)から出力された光は投受光部2923bに、3つめの出力口(ポート3とする)から出力された光は分光器に直接入力される。これによって、投受光部2923a、bを異なる測定位置MAA~MDDに配置することによって複数の搬送ラインの膜厚の測定を行うことができる。また、投受光部2923a、bを1つの測定位置の異なる場所に配置することによって1つの搬送ラインの膜厚の測定精度を高めることができる。また、ポート3によって光源2921から出力される光の強度変化を検出することができる。
【0114】
(構成例3)
図29(C)は、膜厚測定装置120の構成例3を示す。構成例3に係る膜厚測定装置120は、光源2941a、b(以下、区別せず光源291と呼ぶ場合がある)、真空フランジ2942a、b(以下、区別せず真空フランジ2942と呼ぶ場合がある)、投受光部2943a、b(以下、区別せず投受光部2943と呼ぶ場合がある)、分光器2944、およびPC2945を備える。光源2941、真空フランジ2942、投受光部2943、および分光器2944間は、光ファイバで接続される。
【0115】
光源2941、真空フランジ2942、投受光部2943、分光器2944、PC2945は実施例1で説明した光源2901、真空フランジ2902、投受光部2903、分光器2904、PC2905と同様のため説明を省略する。
【0116】
構成例3によれば、分光器およびPCを測定位置ごとに用意する必要がなくなる。
【0117】
<<テーパー部材>>
図27のように、膜厚測定装置120が配置される配置位置MAA~MDCにおいて、膜厚測定装置120から送出された測定光が、受渡室2や成膜室3の天井部分に反射して、投受光部に入力された結果、測定精度が下がる場合がある。このため、膜厚測定装置120の光の照射方向、
図31の例では受渡室2の天井部分に、テーパー部材3101が配置される。例えば、テーパー部材3101は、三角柱や、角錐、円錐状の形状を有する。これによって、測定光を膜厚測定装置120とは異なる方向に反射させることができる。また、一例ではテーパー部材3101は光の吸収率の高い黒色部材である。また、一例では、膜厚測定装置120からの測定光が照射される表面部分は、サンドブラスト加工などの表面加工が施され、光の拡散を促すことができる。
【0118】
このようにテーパー部材3101を配置することで、膜厚測定装置120から照射した測定光が、基板Wとは異なる箇所で反射したことによって膜厚の測定精度が低下することを防ぐことができる。
【0119】
<<基板および保持ユニットの構成例>>
図32に示すように、基板上には、膜厚測定装置120によって測定が行われる箇所ごとに測定用の成膜エリア3201a~3201c(以下、区別せず成膜エリア3201と呼ぶ場合がある)が配置される。
図32では、基板Wの3つの箇所で測定を行うために3つの成膜エリア3201a~cが配置されるものとして図示されているが、膜厚の測定を行うための成膜エリアは、測定箇所の数に対応して決められてよいし、複数の箇所の膜厚の測定のために1つの成膜エリアが配置されてもよい。例えば、成膜エリア3201a~3201cを含む1つの長穴状の成膜エリアが配置されてもよい。
【0120】
一例では、成膜エリア3201は、実際に基板W上に電子デバイスが製造される領域とは異なる領域に配置される。例えば、異なる電子デバイスが製造される複数種類の基板で共通の位置を測定することができるよう、成膜エリアは基板Wの端部付近に配置される。
【0121】
また、測定位置MAA、MABなど、基板Wが保持ユニット6によって搬送されている間に膜厚の測定が行われる場合、膜厚測定装置からの測定光が保持ユニット6に反射することで膜厚の測定精度が下がる場合がある。このため、成膜エリア3201に対応する位置、例えば成膜エリア3201の鉛直上方の位置には保持ユニット6にも開口が配置される。これによって、膜厚測定装置120から照射された測定光が基板を保持する保持ユニット6に反射し、反射光が膜厚測定装置120の受光部に入射し、測定のノイズとなることを防ぐことができる。
【0122】
また、測定用の成膜エリア3201に成膜が行われるよう、マスクMにも開口が配置される。このため、
図27の測定位置MACのように、成膜位置で膜厚の測定が行われる位置では、基板WにマスクMが位置決めされている状態で膜厚の測定が行われる。
【0123】
<<ジョイント構造>>
図33(A)~
図33(C)は、例えば
図29(B)のジョイント2927などの、膜厚測定装置120で光を伝送するファイバの接続に使用されるジョイント構造を示す説明図である。
【0124】
図33(A)は、ジョイント構造の斜視図である。コネクタ3301に、プラグ3302を差し込むことでファイバの接続が行われる。コネクタ3301は、光の出力側の1本の素線3311を、ケーブルマウンタ3312で固定し、ケーブルマウンタ3312をアダプタ3313に接続し、アダプタ3313と筒状部材3314とを接続することで形成される。
【0125】
プラグ3302は、複数の入力側の素線3321が束ねられ、束ねられた素線全体が樹脂で包まれた構造となっている。樹脂はステンレス製の筒状部材3322によって保護される。束ねられた素線が、分岐数ごとに割り当てられることで、ジョイント2927とファイバ切替器2926との接続に使用されるファイバの分岐を行うことができる。
【0126】
図33(B)はジョイントの断面図を示す。素線3311はクラッドとコアと被覆を含む。ケーブルマウンタ3312は、アダプタ3313に差し込む長さL
1が所定の規格によって予め定められている。ケーブルマウンタ3312の先端と素線3311とが位置合わせするように固定される。アダプタ3313にケーブルマウンタ3312を差し込んだ場合のアダプタ3313側のマージン長L
2も所定の規格によって予め定められている。
【0127】
ここで、
図33(B)に示すように、素線3311から光が送出されると、素線3311の先端から光が所定の出射角で出射される。一例では、出射角は出射方向を0度として11度~13度である。このため、プラグ3302の先端位置が位置3341に位置する場合は、プラグ3302の中心付近の素線には光が入射するが、プラグ3302の外周側に位置する素線には光が入射しない。一方、プラグ3302の先端位置が位置3343に位置する場合は、全体の素線に光が入射するが、プラグ3302のステンレス製の筒状部材にも光があたることとなり、素線に入射する光の強度が小さくなってしまう。このため、プラグ3302の先端位置が位置3342のように、素線全体に光が入射し、かつ素線以外に光が照射してしまわないようにすることで、ファイバの接続時に生じる光のロスを抑えることができる。
【0128】
このため、本実施形態に示すジョイント2927では、
図33(C)に示すように、筒状部材の内側に、さしこまれたプラグ3302の先端が当接するスペーサ3361が配置される。
図33(C)では、スペーサ3361は筒状部材であるものとして示しているが、円柱形状のガラスで構成されてもよい。この場合、入射面での光の屈折を考慮してスペーサ3361の厚みが決定されてもよい。このように、本実施形態に係るジョイント構造では、出力側の素線と入力側の複数の素線との間の距離を一定に保つためにスペーサ3361を配置する。
【0129】
また、素線3311側のスペーサ3361の入射面を凸形状にし、スペーサ3361によってレンズ効果が得られるようにしてもよい。これによって、プラグ3302の先端の断面に対して垂直に光を入射させることができる。
【0130】
次に、成膜が行われた基板の膜厚を特定するための反射率測定装置において、基板に照射した光の強度を補正するためにリファレンス測定を行うための構成例について説明する。なお、ここまで説明した形態と同様の構成、機能、処理については同一の参照符号を使用し、説明を省略する。
【0131】
本実施形態に係る膜厚測定装置120(反射率測定装置)では、リファレンス基板WREFや基板Wなどの測定対象物に照射する光の強度変化によって測定精度が低下することを防止する。測定対象物に照射される光の強度変化は、温度変化や電圧変化によって光源から送出される光自体の強度が変化することによっても生じるが、光源から送出された光が伝送される光ファイバの屈曲や伸長などの光ファイバの姿勢の変化による光の伝搬損失の変化によっても生じ得る。このため、本実施形態に係る膜厚測定装置は、リファレンス測定のための光の経路と膜厚測定のための光の経路と重複するように伝送することで、光ファイバの光の伝搬損失の変化による測定対象物に照射される光の強度変化を含めてリファレンス測定を行う。
【0132】
図34は本実施形態に係る膜厚測定装置の構成例を示す図である。
図34に示す膜厚測定装置120は、光源3401から送出された光は、ジョイント3402によって、複数の投光用の素線3403
1~3403
k(以下、区別せず投光用素線3403と呼ぶ場合がある)に分岐される。投光用素線3403は、例えば複数の素線をまとめる被膜によって、1本の光ファイバとして真空フランジ3404を介して投受光ヘッド3405に接続される。また、投光用素線3403は、その一部がリファレンス測定用の素線として使用され、他の部分が膜厚測定用の素線として割り当てられる。
【0133】
投受光ヘッド3405は、膜厚測定用の素線からの光は、測定対象物に向かって照射される。測定対象物によって反射された反射光は、分光器34071に入力される受光用の素線34061に入力される。一方、リファレンス測定用の素線からの光は、折り返し構造34051によって測定対象物に照射されることなく分光器34072に入力される受光用の素線34062に入力される。分光器3407によって測定された光の強度は、PC3408に送信され、後述する反射率の測定に使用される。
【0134】
なお、受光用の素線3406は、分光器34071と34072とにそれぞれ入力される。ここで、受光用の素線3406は、分岐点3409まではまとめて被膜されることで1本のファイバとして配線されてもよい。そして、分岐点3409において、膜厚測定用の素線34061とリファレンス測定用の素線34062として分光器3407に入力される。分光器34071には、測定対象物によって反射された反射光を伝送するための受光用素線が接続され、分光器34072には、折り返し構造34051によって入力された光を伝送するための受光用素線が接続される。
【0135】
光源3401、ジョイント3402、真空フランジ3404、投受光ヘッド3405、PC3408は第七実施形態で上述した光源2921、ジョイント2927、真空フランジ2922、投受光部2923、およびPC2925と同様の構成のため説明を省略する。
【0136】
ここで、
図35(A)、
図35(B)を参照して、投受光ヘッド3405の構成について説明する。
図35(A)は、投受光ヘッド3405を測定対象物側から見た図である。
図35(B)は、投受光ヘッド3405を光の照射方向と平行な面における断面図である。
【0137】
図35(A)に示すように、投受光ヘッド3405には、白抜きで示す投光用の素線3501
1~3501
k(以下、区別せず投光用素線3501と呼ぶ場合がある)と、網掛けして示す受光用の素線3502
1~3502
j(以下、区別せず受光用素線3502と呼ぶ場合がある)とが配置される。投光用素線3501と受光用素線3502とは任意に設定することができるが、一例では投光用素線3501は20本(k=20)、受光用素線3502は10本(j=10)配置される。
【0138】
また、投受光ヘッド3405には、1本以上の投光用素線3503と1本以上の受光用素線3504とを覆うように折り返し構造34051が配置される。折り返し構造34051は、投光用素線3503を伝送された光を、測定対象物に照射することなく受光用素線3504に入力するための補正光入力部である。
【0139】
ここで、
図35(B)を参照して折り返し構造34051の構造について説明する。
図35(B)は
図35(A)の点線Lと光の照射方向とを通る平面における投受光ヘッド3405の断面図である。投受光ヘッド3405に配置された折り返し構造は、透過層3511と、不透過層3512とを含む。透過層3511は、上述したように、投光用素線3503の出射口と受光用素線3504の入射口とを覆うように配置され、光の伝送を行うための透過性の材料によって構成される。また、不透過層3512は、透過層3511によって覆われた素線の測定対象物側に配置される遮光部材である。これによって、測定対象物に照射され、反射した反射光などの、投光用素線3501から照射された外部光が受光用素線3504に入力され、リファレンス測定の際にノイズとなることを防ぎながら、投光用素線3503から受光用素線3504に光を伝送することができる。
【0140】
なお、
図35(B)では、投光用素線3503から出射した光は透過層3511と不透過層3512との境界で反射し、受光用素線3504に入射するように図示しているが、透過層3511および不透過層3512の代わりに投光用素線3503と受光用素線3504とを光ファイバによって接続してもよい。
【0141】
<<反射率の測定方法>>
ここで、
図36(A)~
図36(C)を参照して、本実施形態に係る膜厚測定装置が実行する反射率の測定方法について説明する。
【0142】
図36(A)において、膜厚測定装置120は、バックグラウンドノイズの測定を行った際の分光器3407
1に入力された反射光の強度をP
Rmea1とし、分光器3407
2に入力されたリファレンス測定用の光の強度をP
Rref1として記憶する。すなわち、
図36(A)では、光の照射強度をP
T1とすると、強度P
T1の光を照射すると、リファレンス測定用の光の強度として受光強度P
Rref1の光を受光し、バックグラウンドノイズの測定用の光の強度P
Rmea1の光を受光する。
【0143】
続いて、
図36(B)に示すようにリファレンス測定用の基板W
REFの反射率を測定する際に、分光器3407
1に入力された反射率の測定用の光の強度をP
Rmea2とし、分光器3407
2に入力されたリファレンス測定用の光の強度をP
Rref2として記憶する。ここでは、光の照射強度をP
T2とする。
【0144】
ここで、リファレンス測定用の光の強度PRref2は測定対象物の有無によって変化しないと仮定すると、照射強度PT2に対して測定されたリファレンス測定用の光の強度PRref2は、照射強度PT1に対して測定されたリファレンス測定用の光の強度PRref1と相関を有する。このため、光の照射強度PT2を以下の数式(3)に示すように特定することができる。
PT2=(PRref2/PRref1)PT1 (3)
ここで、照射強度PT2で光を照射した際のバックグラウンドノイズの大きさは、(PT2/PT1)PRmea1として特定することができる。このため、照射強度PT2でリファレンス測定用の基板WREFに光を照射して得られた反射光の強さは、PRmea2-(PT2/PT1)PRmea1として表すことができる。ここから、リファレンス測定用の基板WREFの反射率Rrefは以下の数式(4)によって表すことができる。
Rref={PRmea2-(PT2/PT1)PRmea1}/PT2 (4)
ここで、数式(4)に数式(3)を代入し、既知の反射率Rrefから、光の照射強度PT2を特定することができる。また、数式(3)に基づいて、バックグラウンドノイズの測定を行った際の光の照射強度PT1も特定することができる。
【0145】
続いて、
図36(C)に示すように、成膜した基板Wの反射率Rを測定する際に、分光器3407
1に入力された反射率の測定用の光の強度をP
Rmea3とし、分光器3407
2に入力された光のリファレンス測定用の光の強度をP
Rref3として記憶する。なお、
図36(C)における光の照射強度をP
T3と仮定する。
【0146】
ここで、
図36(C)ではリファレンス測定用の光の強度として強度P
Rref3の光を受光しているため、光の照射強度P
T3を上記数式(3)と同様に以下の数式(3')に基づいてバックグラウンドノイズを測定した際と同様に特定することができる。
P
T3=(P
Rref3/P
Rref1)P
T1 (3')
続いて、
図36(B)と同様に照射強度P
T3で光を照射した際に得られるバックグラウンドノイズの大きさは、(P
T3/P
T1)P
Rmea1として推定することができる。このため、照射強度P
T3で成膜した基板Wに光を照射して得られた反射光の強さは、P
Rmea3-(P
T3/P
T1)P
Rmea1として表すことができる。ここから、基板Wの反射率Rを以下の数式(4')によって表すことができる。
R={P
Rmea3-(P
T3/P
T1)P
Rmea1}/P
T3 (4')
ここで、特定した照射強度P
T1、P
T3、並びに測定したP
Rmea3、P
Rmea1を数式(4')に代入することで基板Wの反射率Rを特定することができる。
【0147】
以上説明したように、本実施形態に係る膜厚測定装置は、リファレンス測定を行うことで、光源から送出される光の強度変化やファイバの姿勢の変化によらずに高い精度で反射率を測定することができる。
【0148】
また、本実施形態に係る膜厚測定装置は、リファレンス測定用の光を伝送する素線と、反射率の測定用の光を伝送する素線とをまとめて投受光ヘッドに接続する。また、投受光ヘッドから分光器までの少なくとも一部の経路をまとめて配線する。これによって、リファレンス測定用の素線と反射率の測定用の素線とで、ケーブルの姿勢の変化による光の損失の変化によって反射率の測定精度が低下することを防ぐことができる。
【0149】
<<変形例>>
図37を参照して、膜厚測定装置120の変形例について説明する。なお、
図34と同様の構成については同一の参照符号を使用し、説明を省略する。
【0150】
図37に示す投受光ヘッド3701は、単一の素線を介して入力された光を分岐するための分岐構造37011を備える。そして、分岐した光の一部を折り返し構造37012でリファレンス測定用の素線3406
2に入射する。これによって、光源3401から投受光ヘッド3701まで同一の素線3702でリファレンス測定用の光と反射率の測定用の光とを伝送することができ、光ファイバの姿勢の変化による光の損失の変化によって反射率の測定精度が低下することを防ぐことができる。
【0151】
また、本実施形態は、第一~第七実施形態と任意に組み合わせることができる。例えば、本実施形態では、1つの光源に対して1つの投受光ヘッド3405、3701が設けられる構成について説明したが、
図29(B)に示すように分岐され、1つの光源に対して複数の投受光ヘッドが設けられてもよい。
【0152】
また、
図36(A)~
図36(C)では受渡室2内に膜厚測定装置120が配置されるものとして図示されているが、
図26に示す測定位置MAA~MDCのいずれに配置されてもよい。
【0153】
また、一例では、
図34に示す分岐点3409と分光器3407との間の、リファレンス測定用の光を伝送する素線と、反射率の測定用の光を伝送する素線とが異なるケーブルとして配線される部分では、それぞれのケーブルが固定されうる。これによって、分岐点3409と分光器3407との間のケーブルの姿勢の変化によって、リファレンス測定用の光と反射率の測定用の光との損失の変化に差が出ることを防ぐことができる。また、一例では、分岐点3409と分光器3407との間のケーブルの長さは5m以下に抑えられる。
【0154】
<他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0155】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0156】
1 成膜装置、3 成膜室、4 搬送ユニット、5A及び5B 搬送ユニット、6A~6D 保持ユニット、7A及び7B 移動ユニット