(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】単結晶シリコンから半導体ウェハを製造する方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20231107BHJP
C30B 15/20 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
C30B29/06 502J
C30B15/20
C30B29/06 502G
(21)【出願番号】P 2022513990
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(86)【国際出願番号】 EP2020072014
(87)【国際公開番号】W WO2021043523
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】102019213236.7
(32)【優先日】2019-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599119503
【氏名又は名称】ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Einsteinstrasse 172,81677 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホイビーザー,バルター
(72)【発明者】
【氏名】マンゲルベルガー,カール
(72)【発明者】
【氏名】フェターヘッファー,ユルゲン
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-092775(JP,A)
【文献】特開2009-221062(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1892107(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/06
C30B 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶シリコンの半導体ウェハの製造方法であって、
坩堝に収容された溶融物からシリコン単結晶の円筒部を引き上げることを含み、前記円筒部の酸素濃度は5×10
17原子/cm
3以下であり、前記方法はさらに、
前記溶融物を水平磁界にさらすことと、
前記単結晶の前記円筒部の引き上げ中に前記坩堝をある回転速度である回転方向に回転させることと、
前記単結晶の前記円筒部から前記単結晶シリコンの半導体ウェハを取り出すこととを含み、
経時的に平均された回転速度の量は1rpm未満であり、前記回転方向は変化
を繰り返し、前記回転方向における前記変化前後の前記回転速度の振幅は0.5rpm以上3.0rpm以下である、方法。
【請求項2】
前記回転方向は、10~100秒の周期で周期的に変更されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
経時的に平均された前記回転速度の量は0.7rpm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、単結晶シリコンの半導体ウェハを製造する方法である。
【背景技術】
【0002】
単結晶シリコンの半導体ウェハは工業規模で製造されている。このような半導体ウェハは、坩堝に収容された溶融物から引き上げられた単結晶の円筒部から半導体ウェハが取り出されることにより、多数存在する。この単結晶の製造方法は、CZ法とも呼ばれる。製造された半導体ウェハは、典型的には、電子部品へとさらに処理される。
【0003】
従来技術/問題
特にパワーエレクトロニクスの分野における特定の用途は、比較的狭い限界内で比較的低い濃度で格子間酸素(以下、単に酸素と呼ぶ)を含有する比較的大きな直径の半導体ウェハを必要とする。本明細書において、酸素濃度は、新ASTMで測定される値が5×1017原子/cm3以下であれば比較的低いと理解される。
【0004】
DE 10 2010 028 924 A1は、溶融物を水平磁界にさらし、坩堝の回転速度を低下させることによって、単結晶中の酸素濃度をどのように低減することができるかを表す。
【0005】
さらに、JP 9 175 895 A2における推奨は、坩堝の回転速度が、基本回転速度から開始して周期的に増加されること、ならびに基本回転速度および増加の振幅が、成長させる単結晶の長さの関数として増加されることを含む。
【0006】
そのような教示に従う場合、単結晶中の酸素の濃度を比較的低い値に下げることを可能にするが、それにもかかわらず、単結晶の長さにわたって濃度に比較的急激な変化があることが確認された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、酸素濃度の軸方向変動を減少させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、単結晶シリコンの半導体ウェハを製造する方法によって達成され、本方法は、
坩堝に収容された溶融物からシリコン単結晶の円筒部を引き上げることと、
前記溶融物を水平磁界にさらすことと、
前記単結晶の前記円筒部の引き上げ中に前記坩堝をある回転速度である回転方向に回転させることと、
前記単結晶の前記円筒部から前記単結晶シリコンの半導体ウェハを取り出すこととを含み、
経時的に平均された回転速度の量は1rpm未満であり、前記回転方向は連続的に変化し、前記回転方向における前記変化前後の前記回転速度の振幅は0.5rpm以上3.0rpm以下である、方法である。
【0009】
本発明を用いることによって、最大濃度と最小濃度との間の差として表される単結晶の円筒部内の酸素濃度の軸方向変動を半分超低減することが可能である。
【0010】
本発明は、単結晶の円筒部の直径とは無関係に利用することができる。単結晶の円筒部における酸素濃度は、5×1017原子/cm3以下である。本発明の方法は、好ましくは、少なくとも200mm、より好ましくは少なくとも300mmの直径を有する半導体ウェハを製造するために使用される。
【0011】
目的を達成するためには、時間平均としての坩堝の回転速度(平均回転速度)は、1rpm未満、好ましくは0.7rpm以下でなければならない。坩堝の平均回転速度の方向は、単結晶の回転速度の方向と一致していてもよいし、逆であってもよい。方向は、好ましくは一致する。さらに、坩堝の回転方向は、連続的に、好ましくは周期的に変更されなければならない。周期の長さは10~100sが好ましい。回転方向の変更前後における回転速度の振幅は0.5rpm以上3.0rpm以下である。5×1017原子/cm3を超える単結晶中の酸素濃度を目的としない限り、振幅が上限をオーバーシュートすることは望ましくない。
【0012】
成長する単結晶と溶融物との相境界の領域において、水平磁界の強度は0.2T以上0.4T以下であることが好ましい。
【0013】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ある周期にわたる坩堝の回転速度の時間プロファイルを概略的に示す。
【
図2】単結晶の円筒部における軸方向位置の関数としての、2つのシリコン単結晶群の酸素濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による実施例の詳細な説明
図1に示すように、1周期中の坩堝は、ある回転方向において振幅A
1まで加速されて再び制動され、その後、回転方向の変化のタイミング1まで、逆回転方向に振幅A
2まで加速されて再び制動される。振幅A
1と振幅とA
2は量が異なるため、回転方向の一方に、ある平均回転速度が生じる。
【0016】
実施例:
直径300mmの2群のシリコン単結晶をCZ法により引き上げ、単結晶のそれぞれの円筒部から半導体ウェハを取り出した。単結晶の第1の群は、本発明に従って、すなわち、特に、単結晶の円筒部の引上げ中に40秒の周期持続時間および1.1rpm以下の振幅で坩堝の回転方向を変えることによって、引上げられた。これに対し、他方の単結晶群は、坩堝の回転方向を変えずに、それ以外は同じ条件で引き上げた。両方の群について、坩堝の平均回転速度は0.6rpmであった。
【0017】
単結晶の円筒部における相対軸方向位置Pの関数としての酸素濃度の判定は、
図2に表される結果をもたらした。したがって、本発明の方法を用いると、比較的狭い領域に酸素濃度が留まることが期待できる。この場合、本発明に従って引き上げられる単結晶に割り当てられたデータ点(塗りつぶし円)のすべてが、破線で区切られた領域内にあり、酸素濃度は4.4×10
17原子/cm
3~約4.9×10
17原子/cm
3である。
【0018】
例示的な実施形態の上記の説明は、例として理解されるべきである。その中の開示は、一方では、当業者が本発明およびそれに関連する利点を理解することを可能にし、他方では、当業者の理解の範囲内で、説明される構造および方法に対する明白な変更ならびに修正も包含する。したがって、すべてのそのような変更および修正、ならびに均等物も、特許請求の範囲の保護の範囲に包含されるべきであることが意図される。
【符号の説明】
【0019】
使用される参照記号のリスト
1 回転方向の変化のタイミング