(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】物品収納トレイ及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
B65D 71/70 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
B65D71/70
(21)【出願番号】P 2019057550
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】福島 貞利
(72)【発明者】
【氏名】餅 直樹
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-087730(JP,A)
【文献】登録実用新案第3091587(JP,U)
【文献】特開2009-040480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 71/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
四角形の平板状であるベース部と、
前記ベース部の一主面の四隅近傍に前記ベース部の各辺に対して平行配置され、前記主面の中心側の角部に、積層された複数の物品を保持するための凹部が、前記主面に対して垂直方向に連続して形成された角柱状の第一保持部材と、
前記ベース部の一主面の四隅以外の周縁近傍に前記ベース部の各辺に対して平行配置され、前記主面の中心側の角部2箇所に、積層された複数の物品を保持するための凹部が、前記主面に対して垂直方向に連続して形成された複数の角柱状の第二保持部材と、
前記ベース部の一主面の周縁以外の領域に前記ベース部の各辺に対して平行かつ格子状に配置され、全ての角部に、積層された複数の物品を保持するための凹部が、前記主面に対して垂直方向に連続して形成された複数の角柱状の第三保持部材と、
を有し、前記各凹部は
断面がΩ状をなしていることを特徴とする物品収納トレイ。
【請求項2】
前記主面の裏面に複数の突起部を有することを特徴とする請求項1に記載の物品収納トレイ。
【請求項3】
物品は円弧状フェライト磁石であることを特徴とする請求項1または2に記載の物品収納トレイ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の物品収納トレイを準備する工程、
複数の物品を積層し、少なくとも一つの物品積層体を準備する工程、
物品収納トレイにおける、対向する二対の各保持部材によって形成される領域に、少なくとも一つの物品積層体を収納する工程、
物品積層体が収納された物品収納トレイ上に、他の物品収納トレイを載置する工程、
他の物品収納トレイが載置された物品収納トレイの上下を反転させることによって、物品積層体を物品収納トレイから他の物品収納トレイに移し替える工程、
を含む物品収納トレイの使用方法。
【請求項5】
物品は円弧状フェライト磁石である請求項4に記載の物品収納トレイの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物品収納トレイ及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェライト焼結磁石は最大エネルギー積が希土類系焼結磁石(例えばNdFeB系焼結磁石)の1/10にすぎないが、主原料が安価な酸化鉄であることからコストパフォーマンスに優れており、化学的に極めて安定であるという特長を有している。そのため、各種モータやスピーカなど様々な用途に用いられており、世界的な生産重量は現在でも磁石材料の中で最大である。
【0003】
フェライト焼結磁石の製造工場では、日々大量の磁石が生産され、出荷されている。出荷に際しては、比較的小物品の場合はトレイに収納されて出荷されることが多い。この場合、例えば、比較的厚みの薄い円弧状フェライト磁石であれば、複数個の収納スペースが形成された一枚のトレイの各収納スペースに、複数個(複数枚)の磁石(例えば5個単位や10個単位など)を積層して収納する。つまり、収納スペースが20個あり、各収納スペースにそれぞれ5個単位で積層して収納すれば、一枚のトレイに100個の磁石を収納することができる。
【0004】
複数個(複数枚)の磁石(例えば5個単位や10個単位など)を積層して収納するには、まず、磁石を複数個積層して積層体(単に積層しただけであって接着などは行わない)を構成し、その積層体を産業用ロボットや作業者の手で掴んで、トレイの収納スペースに収納する。
【0005】
しかし、トレイの各収納スペースには収納後の磁石が運搬時などに動かないように、磁石側面(4箇所)を支持(保持)する支持部材(保持部材)が設けられている。そのため、産業用ロボットを用いる場合はグリッパ(把持機構)が収納スペースに入りづらく、作業者の手で行う場合は指が入りづらい。従って、産業用ロボットを用いる場合はグリッパを細くする必要があるが、把持力が低下するという問題がある。また、作業者が行う場合は専用のピンセットなどを使用する必要が生じるとともに、作業能率が低下するという問題がある。
【0006】
特許文献1には、半導体ウエハや液晶パネル等の薄板状のパネル状物品を収納するトレイが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に開示される収納トレイは、各収納スペースに1枚ずつパネル状物品が収納され、当該収納トレイを積層させるものであって、各収納スペースに複数個の積層体を収納する態様は記載されていない。
【0009】
本開示の実施形態は、複数の物品、特に円弧状フェライト磁石を、容易にかつ高作業能率で収納することが可能な物品収納トレイの提供を可能にする。
【0010】
また、本開示の実施形態は、本開示の実施形態による物品収納トレイに収納された物品を、他の物品収納トレイに移し替えるための治具として使用することにより、容易にかつ高作業能率で複数の物品、特に複数個の円弧状フェライト磁石を他の物品収納トレイに収納することができる物品収納トレイの使用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の限定的ではない例示的な物品収納トレイは、
四角形の平板状であるベース部と、
前記ベース部の一主面の四隅近傍に前記ベース部の各辺に対して平行配置され、前記主面の中心側の角部に、積層された複数の物品を保持するための凹部が、前記主面に対して垂直方向に連続して形成された角柱状の第一保持部材と、
前記ベース部の一主面の四隅以外の周縁近傍に前記ベース部の各辺に対して平行配置され、前記主面の中心側の角部2箇所に、積層された複数の物品を保持するための凹部が、前記主面に対して垂直方向に連続して形成された複数の角柱状の第二保持部材と、
前記ベース部の一主面の周縁以外の領域に前記ベース部の各辺に対して平行かつ格子状に配置され、全ての角部に、積層された複数の物品を保持するための凹部が、前記主面に対して垂直方向に連続して形成された複数の角柱状の第三保持部材と、を有し、前記各凹部は断面がΩ状をなしている。
【0012】
ある実施形態において、物品は円弧状フェライト磁石である。
【0013】
本開示の限定的ではない例示的な物品収納トレイの使用方法は、
前記の物品収納トレイを準備する工程、
複数の物品を積層し、少なくとも一つの物品積層体を準備する工程、
物品収納トレイにおける、対向する二対の各保持部材によって形成される領域に、少なくとも一つの物品積層体を収納する工程、
物品積層体が収納された物品収納トレイ上に、他の物品収納トレイを載置する工程、
他の物品収納トレイが載置された物品収納トレイの上下を反転させることによって、物品積層体を物品収納トレイから他の物品収納トレイに移し替える工程、を含む。
【0014】
ある実施形態において、物品は円弧状フェライト磁石である。
【発明の効果】
【0015】
本開示の実施形態によれば、複数の物品、特に円弧状フェライト焼結磁石を、容易にかつ高作業能率で収納することが可能な物品収納トレイの提供が可能となる。
【0016】
また、本開示の実施形態によれば、本開示の実施形態による物品収納トレイに収納された物品を、他の物品収納トレイに移し替えるための治具として使用することにより、容易にかつ高作業能率で複数の物品、特に複数個の円弧状フェライト磁石を他の物品収納トレイに収納することができる物品収納トレイの使用方法の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(A)は本開示の実施形態の物品収納トレイの平面図であり、(B)は同正面図、(C)は同側面図である。
【
図2】本開示の実施形態の物品収納トレイの第三保持部材の部分拡大説明図である。
【
図3】(A)本開示の実施形態の物品収納トレイに物品の一例として円弧状フェライト磁石を収納した状態を示す平面図であり、(B)は同正面図、(C)は同側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態に係る物品収納トレイを、
図1~3に基づいて説明する。
【0019】
図1(A)は本開示の実施形態の物品収納トレイの平面図であり、(B)は同正面図、(C)は同側面図であり、
図2は本開示の実施形態の物品収納トレイの第三保持部材の部分拡大説明図であり、
図3(A)は本開示の実施形態の物品収納トレイに物品の一例として円弧状フェライト磁石を収納した状態を示す平面図であり、(B)は同正面図、(C)は同側面図である。なお、各図において同じ部分には同じ符号を付している。
【0020】
本開示の実施形態の物品収納トレイ1は、四角形の平板状であるベース部14と、第一保持部材11(
図1では四隅に配置される4個)と、第二保持部材12(
図1では四隅以外の周縁に配置される12個)と、第三保持部材13(
図1では周縁以外の領域に配置される8個)とを有する。各保持部材(第一保持部材11、第二保持部材12、第三保持部材13)には、積層された複数の物品を保持するための凹部15が、ベース部14の一主面に対して垂直方向に連続して形成されており、第一保持部材11には一つ、第二保持部材12には二つ、第三保持部材13には四つの凹部15がそれぞれ形成されている。凹部15は
図1~3に示すように、例えば、断面Ω状であってよい。
図1において、対向する二対の各保持部材によって形成される領域(それぞれが隣り合う四つの各保持部材によって形成される領域)が、物品が収納される収納スペース16(点線で囲まれる部分)である。このとき、各保持部材の凹部15は、収納スペース側に開口部が向いている。
【0021】
四角形の平板状であるベース部14は、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)から構成される。他の材料で構成されてもよい。形状は四角形であれば正方形であっても長方形であってもよく、角部や辺部にC面取りやR面取りなどが施されていてもよい。ベース部14と各保持部材とは一体で形成してもよいし、それぞれ別部材で構成し、公知の方法(例えば接着剤やネジ)で固定してもよい。一体で形成する場合は、例えば一枚のPVC板から削り出しで作製してもよい。
【0022】
ベース部14には、物品の収納に影響しない部分、例えば、収納スペース16の領域内に軽量化のための貫通孔を設けてもよい。貫通孔の形状は問わない(円形、楕円形、矩形などいずれでもよい)。一つの収納スペース16に設ける貫通孔の個数も任意である(一つでも複数でもよい)。また、一部の収納スペース16の領域内に設けてもよいし、全ての収納スペース16の領域内に設けてもよい(
図1ならば15箇所)。全ての収納スペース16の領域内に貫通孔を設けることにより物品収納トレイ1の軽量化効果が大きくなる。さらに、貫通孔に代えて貫通しない孔(凹部)であってもよい。
【0023】
第一保持部材11は
図1に示すように全体として角柱状をなしている。第一保持部材11はベース部14の一主面の四隅近傍にベース部14の各辺に対して平行配置される。すなわち、第一保持部材11は一つの物品収納トレイに四つ配置される。第一保持部材11はベース部14の一主面の中心側の角部に、積層された複数の物品を保持するための凹部15が、主面に対して垂直方向に連続して形成されている。すなわち、
図1の左上に配置される第一保持部材11であれば凹部の開口部が右斜め下45度に向くように、
図1の左下に配置される第一保持部材11であれば凹部の開口部が右斜め上45度に向くように配置される。なお、前記角度は積層された複数の物品を保持することができれば45度である必要なない(少々角度が違ってもよい)。第一保持部材11の主面からの高さ寸法及び主面と平行な面の幅、奥行きは、収納する物品の形状、寸法などによって、他の保持部材とのバランスも考慮して適宜選定する。本開示の実施形態においては、第一保持部材11の幅、奥行きは、第三保持部材13の約1/2になるように設定している。
【0024】
第二保持部材12は
図1に示すように全体として角柱状をなしている。第二保持部材12はベース部14の一主面の四隅以外の周縁近傍にベース部14の各辺に対して平行配置される。
図1においては、第二保持部材12は12個配置されており、
図1の上側と下側(上下側)に配置される第二保持部材12(8個)と、
図1の左側と右側(左右側)に配置される第二保持部材12(4個)とは形状が異なる。上下側及び左右側にかかわらず、第二保持部材12はベース部14の一主面の中心側の角部2箇所に、積層された複数の物品を保持するための凹部15が、主面に対して垂直方向に連続して形成されている。例えば、
図1の上側に配置される四つの第二保持部材12であれば凹部の開口部が左斜め下45度と右斜め下45度に向くように、
図1の左側に配置される二つの第二保持部材12であれば凹部の開口部が右斜め上45度と右斜め下45度に向くように配置される。なお、前記角度は積層された複数の物品を保持することができれば45度である必要はない(少々角度が違ってもよい)。第二保持部材12の主面からの高さ寸法及び主面と平行な面の幅、奥行きは、収納する物品の形状、寸法などによって、他の保持部材とのバランスも考慮して適宜選定する。本開示の実施形態においては、上下側に配置される第二保持部材12の奥行は第三保持部材13の約1/2に設定しており、左右側に配置される第二保持部材12の幅は第三保持部材13の約1/2に設定している。
【0025】
第三保持部材13は全体として角柱状をなしている。第三保持部材13はベース部14の一主面の周縁以外の領域にベース部14の各辺に対して平行かつ格子状に配置される。
図1においては、第三保持部材13は8個配置されている。第三保持部材13は全ての角部(4箇所)に、積層された複数の物品を保持するための凹部15が、主面に対して垂直方向に連続して形成されている。すなわち、
図1において、凹部の開口部が左斜め上45度、右斜め上45度、右斜め下45度及び左斜め下45度に向くように配置される。なお、前記角度は積層された複数の物品を保持することができれば45度である必要なない(少々角度が違ってもよい)。第三保持部材13の主面からの高さ寸法及び主面と平行な面の幅、奥行きは、収納する物品の形状、寸法などによって、他の保持部材とのバランスも考慮して適宜選定する。
【0026】
各保持部材(第一保持部材11、第二保持部材12、第三保持部材13)は、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)から構成される。他の材料で構成されてもよい。また、ベース部14と同じ材質であってもよいし、異なる材質で構成されてもよい。
【0027】
各保持部材に形成される積層された複数の物品を保持するための凹部15について
図2を用いて説明する。
図2は本開示の実施形態の物品収納トレイの第三保持部材の部分拡大説明図である。
図2に示すように、凹部15は主面に対して垂直方向に連続して形成されており、断面がΩ状をなしている。この凹部15の開口部15aに、収納される物品の角部周辺が当接することで物品が保持される。このとき、物品の角部先端は凹部15内に留まり、凹部の内壁に接触しないように開口部15aが開口している。本開示の実施形態では開口部15aの開き角は約90度としている。これによって、収納する物品の角部先端の破損が低減される。
【0028】
本開示の実施形態の物品収納トレイに、物品例として平面視が長方形の円弧状フェライト磁石を収納する例を、
図1及び
図3を用いて説明する。
【0029】
まず、産業用ロボット、積層治具または作業者の手で、円弧状フェライト磁石の円弧の凸面(外周面)が下になるように、磁石側面(長辺側)を挟持しながら、複数個(ここでは5個)を積層し、積層体を構成する。この積層体は単に磁石を積層しただけであって接着などは行わない。従って、積層体を維持するために産業用ロボットや作業者の手で積層体の側面(磁石長辺側)を挟持しておく。
【0030】
次に、挟持した積層体を
図1に示す物品収納トレイ1の収納スペース16に収納する。このとき、挟持した積層体を物品収納トレイ1の上方向から(
図1では紙面手前から奥へ)収納スペースに収納することとなるが、積層体を挟持している方向、すなわち、磁石側面に垂直な方向(
図1では左右方向)の物品収納トレイ1のベース部14上には保持部材などが存在しないので(ベース部14上に何もないので)、産業用ロボットのグリッパや作業者の手が入りやすく、挟持した積層体を収納スペース16に容易に収納することができ、作業能率が上がる。
【0031】
一つの収納スペースに積層体を収納し終えると、次の収納スペース(例えば
図1であれば収納スペース16の右横の収納スペース)に、前記と同様にして積層体を収納する。この場合も、収納スペースの積層体を挟持している方向(
図1では左右方向)には保持部材などが存在しないので、産業用ロボットのグリッパや作業者の手が入りやすく、挟持した積層体を収納スペースに容易に収納することができる。これを順次繰り返して、全ての収納スペースに積層体を収納する。これによって、15個の収納スペースに各5個づつ、計75個の円弧状フェライト磁石を、容易にかつ高作業能率で収納することができる。全ての円弧状フェライト磁石を収納した状態の物品収納トレイの例を
図3に示す。
【0032】
なお、前記の例では、円弧状フェライト磁石の積層体の積層数は5個とし、また、収納スペースが15個(5×3列)の例を挙げたが、磁石の厚みや大きさ、保持部材の高さ寸法、トレイ全体の強度、運搬重量などを考慮し、個数は任意に設定することができる。さらに、前記の例では円弧状フェライト磁石の円弧の凸面(外周面)が下になるように収納したが、円弧の凸面(外周面)が上になるように収納してもかまわない。
【0033】
次に、本開示の実施形態の物品収納トレイに収納された円弧状フェライト磁石を、他の物品収納トレイに移し替えるための治具(以下「差替え用治具」という場合がある)として使用する例を以下に説明する。
【0034】
まず、
図3に示すように、全ての円弧状フェライト磁石を本開示の実施形態の物品収納トレイ(以下「本トレイ」という)に収納する。次に、他の物品収納トレイ(以下「他トレイ」という)を準備し、全ての円弧状フェライト磁石を収納した本トレイ上に、収納スペースが下向きになるよう(上下反転させて)他トレイを載置する。そして、本トレイ上に他トレイが載置された状態で上下を反転させる。これによって、本トレイに収納されていた全ての円弧状フェライト磁石が他トレイに移し替えられる。最後に他トレイ上の本トレイを取り除く。
【0035】
例えば、顧客から支給されたトレイ(他トレイ)に円弧状フェライト磁石を収納する場合であって、顧客から支給された他トレイが、前記背景技術にて述べたように、磁石側面(4箇所)を支持(保持)する支持部材(保持部材)が設けられ、産業用ロボットを用いる場合はグリッパ(把持機構)が収納スペースに入りづらく、作業者の手で行う場合は指が入りづらい、という場合に、本トレイを差替え用治具として使用する。これにより、顧客から支給された他トレイに容易にかつ高作業能率で円弧状フェライト磁石を収納することができる。
【0036】
他トレイは、物品の保持部材が本トレイの保持部材の配置位置以外の位置、すなわち、円弧状フェライト磁石の磁石側面(長辺側及び短辺側)に対向するように形成されているものを用いることができる。他トレイの物品収納スペースは、本トレイの収納スペースとほぼ同じ大きさ、同じ位置、同じ個数形成されていることが望ましい。すなわち、本トレイの各保持部材と他トレイの各保持部材がぶつかり合うことなく、ぴったり嵌合するように設定する。なお、顧客から円弧状フェライト磁石の円弧の凸面(外周面)が上になるようにとの依頼があれば、本トレイに円弧の凸面(外周面)が下になるように収納して他トレイに移し替えればよい。
【0037】
本トレイの裏面(保持部材が形成されていない面)に複数の突起部(つまみ)を設けてもよい。本トレイを差替え用治具として使用する場合に特に有効である。例えば、作業台上に直に本トレイを置くと、本トレイ上に他トレイが載置された状態で上下を反転させる際、本トレイの裏面と作業台との間に隙間がないため、本トレイと他トレイを産業用ロボットのグリッパや作業者の手で把持することが困難となる場合がある。突起部を設けることによって、本トレイの裏面と作業台との間に隙間が形成されるため、本トレイと他トレイを容易に把持することができる。また、上下を反転後、最後に他トレイ上の本トレイを取り除く際、突起部を掴んで取り除くことにより、作業性が向上するという利点もある。そのような観点から、突起部は複数設けることが好ましく、少なくとも三箇所、より好ましくは四箇所以上設けることが好ましい。突起部の配置位置は特に限定しないが、本トレイの裏面の四隅近傍、あるいは、本トレイの裏面の周縁の各辺の中心付近に設けることが好ましい。さらに、突起部は本トレイから脱着できる構成であることが好ましい。
【0038】
さらに、本トレイの裏面にアルミ板などの補強板を設けてもよい。補強板を設けることにより、本トレイの強度の向上や変形を防止することができる。補強板を設ける場合、前記突起部は補強板に設ければよい。また、補強板に軽量化のための貫通孔を設けてもよい。本トレイを差替え用治具として使用する場合に特に有効である。
【0039】
本開示の実施形態の物品収納トレイに全ての円弧状フェライト磁石を収納した後、あるいは、本開示の実施形態の物品収納トレイを差替え用治具として使用し、他の物品収納トレイに全ての円弧状フェライト磁石を移し替えた後は、各収納スペースに収納された円弧状フェライト磁石の員数を確認することが好ましい。員数の確認方法としては、例えば、レーザー測定器によって、各収納スペースに収納された複数個(複数枚)の磁石全体の高さを測定し、その測定結果から員数を確認する。もちろん、目視などの他の方法によって員数確認を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本開示の実施形態によれば、複数の物品、特に円弧状フェライト焼結磁石を、容易にかつ高作業能率で収納することが可能な物品収納トレイの提供が可能になるとともに、本開示の実施形態による物品収納トレイを差替え用治具として使用することにより、容易にかつ高作業能率で複数の物品、特に複数個の円弧状フェライト磁石を他の物品収納トレイに収納することができる点で、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0041】
1 物品収納トレイ
11 第一保持部材
12 第二保持部材
13 第三保持部材
14 ベース部
15 凹部
15a 凹部の開口部
16 収納スペース
17 物品(円弧状フェライト磁石)