(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】水質推定装置及び水質推定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/18 20060101AFI20231108BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20231108BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20231108BHJP
【FI】
G01N33/18 101
C02F1/00 V
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2019064861
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-12-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 寿和
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-191482(JP,A)
【文献】特開2016-196007(JP,A)
【文献】特開2002-316143(JP,A)
【文献】特開2018-142103(JP,A)
【文献】特開2018-142105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/18
C02F 1/00
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用水処理の被処理水であって、原水種別が天然水又は工水である原水の水質を推定したい場所を特定するための顧客情報を取得する情報取得部と、
取得された前記顧客情報で特定された場所で採取された前記原水の水質の第1の過去データ、
前記顧客情報で特定された場所から所定の範囲内の場所で採取された前記原水の水質の第2の過去データ、
前記顧客情報で特定された場所が属する地区区分のエリア内で採取された前記原水について所定の団体によって分析された前記原水の水質の第3の過去データ
の1つ以上を用いて、前記顧客情報で特定された場所の前記原水の水質を推定する推定部と、
を備え、
前記推定部は、
原水種別が既知の原水の指定水質項目を推定するものであって、
前記第1の過去データ、前記第2の過去データ、前記第3の過去データのいずれかに前記指定水質項目のデータがあり、かつ原水種別が前記原水種別と共通する場合には、
該当するデータの1つ以上を、
前記顧客情報で特定された場所における原水の水質の推定結果とす
る水質推定装置。
【請求項2】
用水処理の被処理水であって、原水種別が天然水又は工水である原水の水質を推定したい場所を特定するための顧客情報を取得する情報取得ステップと、
取得された前記顧客情報で特定された場所で採取された前記原水の水質の第1の過去データ、
前記顧客情報で特定された場所から所定の範囲内の場所で採取された前記原水の水質の第2の過去データ、
前記顧客情報で特定された場所が属する地区区分のエリア内で採取された前記原水について所定の団体によって分析された前記原水の水質の第3の過去データ
の1つ以上を用いて、前記顧客情報で特定された場所の前記原水の水質を推定する推定ステップと、
を有
し、
前記推定ステップにおいて、原水種別が既知の原水の指定水質項目を推定するものであって、
前記第1の過去データ、前記第2の過去データ、前記第3の過去データのいずれかに前記指定水質項目のデータがあり、かつ原水種別が前記原水種別と共通する場合には、
該当するデータの1つ以上を、
前記顧客情報で特定された場所における原水の水質の推定結果とする水質推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用水処理の被処理水である原水の水質を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水処理システムを効率的に構築する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。水処理システムにおいて、顧客現場に用水処理設備を新設する場合、原水(例えば原水種別として、表流水、井水、海水等の天然水の他、市水、工水も含めるものとする)の水質と処理水の要求水質、水量の情報が必要であるため、通常は原水をサンプリングして水質分析する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、分析結果が得られるまでは時間を要する。さらに、顧客の現場に調査員が赴いて、分析対象となる原水を取得しなければ原水水質の推定ができず、労力を要してしまう。上記のように、従来では、原水の水質を簡便に推定することができないという問題があった。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、現地にて原水の水質分析をすることなく、原水の水質を簡便に推定することができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、用水処理の被処理水であって、原水種別が天然水又は工水である原水の水質を推定したい場所を特定するための顧客情報を取得する情報取得部と、取得された前記顧客情報で特定された場所で採取された前記原水の水質の第1の過去データ、前記顧客情報で特定された場所から所定の範囲内の場所で採取された前記原水の水質の第2の過去データ、前記顧客情報で特定された場所が属する地区区分のエリア内で採取された前記原水について所定の団体によって分析された前記原水の水質の第3の過去データの1つ以上を用いて、前記顧客情報で特定された場所の前記原水の水質を推定する推定部と、を備え、前記推定部は、原水種別が既知の原水の指定水質項目を推定するものであって、前記第1の過去データ、前記第2の過去データ、前記第3の過去データのいずれかに前記指定水質項目のデータがあり、かつ原水種別が前記原水種別と共通する場合には、該当するデータの1つ以上を、前記顧客情報で特定された場所における原水の水質の推定結果とする水質推定装置である。
【0007】
本発明の一態様は、上記の水質推定装置であって、前記推定部は、前記第1の過去データがある場合には、前記第1の過去データを、前記顧客情報で特定された場所における原水の水質の推定結果とする。
【0008】
本発明の一態様は、上記の水質推定装置であって、前記推定部は、前記第1の過去データがない場合であって、前記第2の過去データがある場合には、前記第2の過去データを、前記顧客情報で特定された場所における原水の水質の推定結果とする。
【0009】
本発明の一態様は、上記の水質推定装置であって、前記推定部は、前記第2の過去データがない場合であって、前記第3の過去データがある場合には、前記第3の過去データを、前記顧客情報で特定された場所における原水の水質の推定結果とする。
【0010】
本発明の一態様は、上記の水質推定装置であって、前記推定部は、原水の指定水質項目を推定するものであって、前記第1の過去データに前記指定水質項目のデータがある場合には、前記第1の過去データにおける前記指定水質項目のデータを、前記顧客情報で特定された場所における原水の前記指定水質項目の推定結果とする。
【0011】
本発明の一態様は、上記の水質推定装置であって、前記推定部は、前記第1の過去データがない場合、または、前記第1の過去データに前記指定水質項目のデータがない場合であって、前記第2の過去データに前記指定水質項目のデータがある場合には、前記第2の過去データにおける前記指定水質項目のデータを、前記顧客情報で特定された場所における原水の前記指定水質項目の推定結果とする。
【0012】
本発明の一態様は、上記の水質推定装置であって、前記推定部は、前記第2の過去データがない場合、または、前記第2の過去データに前記指定水質項目のデータがない場合であって、前記第3の過去データに前記指定水質項目のデータがある場合には、前記第3の過去データにおける前記指定水質項目のデータを、前記顧客情報で特定された場所における原水の前記指定水質項目の推定結果とする。
【0013】
本発明の一態様は、上記の水質推定装置であって、前記推定部は、前記第1の過去データ、前記第2の過去データ、前記第3の過去データのいずれかのデータがある場合には、データがある1つ以上を、前記顧客情報で特定された場所における原水の水質の推定結果とし、各データの原水種別と共に提示する。
【0014】
本発明の一態様は、上記の水質推定装置であって、前記推定部は、原水の指定水質項目を推定するものであって、前記第1の過去データ、前記第2の過去データ、前記第3の過去データのいずれかに前記指定水質項目のデータがある場合には、前記データがある1つ以上を、前記顧客情報で特定された場所における原水の水質の推定結果とし、各データの原水種別と共に提示する。
【0015】
本発明の一態様は、上記の水質推定装置であって、前記推定部は、原水種別が既知の原水の水質を推定するものであって、前記第1の過去データ、前記第2の過去データ、前記第3の過去データのいずれかのデータがあり、かつ原水種別が前記原水種別と共通する場合には、該当するデータの1つ以上を、前記顧客情報で特定された場所における原水の水質の推定結果とする。
【0016】
本発明の一態様は、上記の水質推定装置であって、前記推定部は、原水の指定水質項目を推定するものであって、前記第1の過去データ、前記第2の過去データ、前記第3の過去データのいずれかに前記指定水質項目のデータがあり、かつ原水種別が前記原水種別と共通する場合には、該当するデータの1つ以上を、前記顧客情報で特定された場所における原水の水質の推定結果とする。
【0017】
本発明の一態様は、用水処理の被処理水であって、原水種別が天然水又は工水である原水の水質を推定したい場所を特定するための顧客情報を取得する情報取得ステップと、取得された前記顧客情報で特定された場所で採取された前記原水の水質の第1の過去データ、前記顧客情報で特定された場所から所定の範囲内の場所で採取された前記原水の水質の第2の過去データ、前記顧客情報で特定された場所が属する地区区分のエリア内で採取された前記原水について所定の団体によって分析された前記原水の水質の第3の過去データの1つ以上を用いて、前記顧客情報で特定された場所の前記原水の水質を推定する推定ステップと、を有し、前記推定ステップにおいて、原水種別が既知の原水の指定水質項目を推定するものであって、前記第1の過去データ、前記第2の過去データ、前記第3の過去データのいずれかに前記指定水質項目のデータがあり、かつ原水種別が前記原水種別と共通する場合には、該当するデータの1つ以上を、前記顧客情報で特定された場所における原水の水質の推定結果とする水質推定方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、現地にて原水の水質分析をすることなく、原水の水質を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明における水質推定装置の機能構成を表す概略ブロック図である。
【
図2】ユーザデータテーブルの具体例を示す図である。
【
図3】企業データテーブルの具体例を示す図である。
【
図4】公表水質データテーブルの具体例を示す図である。
【
図5】水質推定装置が行う水質推定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】水質推定装置が行う他の水質推定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】水質推定装置が行う他の水質推定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】水質推定装置が行う他の水質推定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明における水質推定装置100の機能構成を表す概略ブロック図である。
水質推定装置100は、原水の水質を推定する装置である。ここで、原水とは、用水処理の被処理水である。原水種別として、表流水、井水、海水等の天然水や市水及び工水が挙げられる。水質推定装置100は、例えばノートパソコン、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末等の情報処理装置を用いて構成される。
【0021】
水質推定装置100は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、推定プログラムを実行する。推定プログラムの実行によって、水質推定装置100は、情報取得部101、記憶部102、推定部103、結果出力部104を備える装置として機能する。なお、水質推定装置100の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。また、推定プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、推定プログラムは、電気通信回線を介して送受信されてもよい。
【0022】
情報取得部101は、顧客情報を取得する。ここで、顧客情報とは、原水の水質の推定を要求している顧客を識別するための情報である。例えば、顧客情報は、ユーザアカウント、企業名及び事業所名等である。
記憶部102は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。記憶部102は、ユーザデータテーブル121、企業データテーブル122及び公表水質データテーブル123を記憶している。ユーザデータテーブル121は、ユーザアカウントで識別されるユーザに関する情報が登録されたテーブルである。企業データテーブル122は、企業に関する情報が登録されたテーブルである。公表水質データテーブル123は、公表されている原水の水質に関する情報が登録されたテーブルである。
【0023】
次に、
図2~
図4を用いて、各テーブルについて説明する。
図2は、ユーザデータテーブル121の具体例を示す図である。
ユーザデータテーブル121は、ユーザアカウントで識別されるユーザに関する情報を表すレコードを複数有する。レコードは、ユーザアカウント、企業名、保有現場、原水水質分析データ有無、原水種別、水質項目及び計測日の各値を有する。ユーザアカウントは、既存の顧客専用に設けられたサイト(以下「専用サイト」という。)で利用されているアカウントを表す。専用サイトは、顧客からの水処理設備に関する問い合わせを受け付けるサイトであり、例えば特定の場所の原水の水質の問い合わせに利用される。企業名は、ユーザアカウントで識別される企業の名称を表す。保有現場は、ユーザアカウントで識別される企業が保有している、水処理を行うための事業所名を表す。原水水質分析データ有無は、保有現場で利用している原水の水質の分析データの有無を表す。原水種別は、保有現場で利用している原水の種類を表す。水質項目は、分析がなされた原水の水質の項目を表す。水質項目としては、pH、Ca濃度、Mg濃度、濁度、COD(Chemical Oxygen Demand)濃度、Fe濃度、Mn濃度、ORP(Oxidation-Reduction Potential)等が挙げられる。計測日は、原水の水質の分析が行われた日を表す。例えば、計測日は、保有現場で利用している原水の水質の分析が行われた最新の日を表す。
【0024】
図2に示される例では、ユーザデータテーブル121には複数のユーザアカウントが登録されている。これらのユーザアカウントは、“aaa”、“bbb”、“ccc”である。
図2において、ユーザデータテーブル121の最上段に登録されているレコードは、ユーザアカウントの値が“aaa”、企業名の値が“J社”、保有現場の値が“A1工場”、原水水質分析データ有無の値が“過去データあり”、原水種別の値が“水道水”、水質項目の値が“pH、Ca、Mg、…”、計測日の値が“YY.MM.DD”である。すなわち、ユーザアカウント“aaa”で識別される企業が“J社”であり、保有現場している、水処理を行うための事業所名が“A1工場”であり、原水の水質の過去データがあり、保有現場で利用されている原水種別が“水道水”であり、原水において水質分析がなされた水質の項目が“pH、Ca、Mg、…”であり、計測日がYY年.MM月.DD日であることが表されている。
【0025】
図3は、企業データテーブル122の具体例を示す図である。
企業データテーブル122は、企業に関する情報を表すレコードを複数有する。レコードは、企業名、事業所名、所在地及び地区区分の各値を有する。企業名は、企業の名称を表す。事業所名は、企業の事業所の名前を表す。所在地は、事業所が存在している場所を表す。所在地は、都道府県ではなく、緯度経度で表されてもよい。地区区分は、水の種類に応じて区分けされたエリアを表す。なお、
図3において“-”は、“-”が入力されている項目に関するデータが無いことを表す。
【0026】
図3に示される例では、企業データテーブル122には複数の企業名が登録されている。これらの企業名は、“J社”、“J社”、“K社”、“L社”である。
図3において、企業データテーブル122の最上段に登録されているレコードは、企業名の値が“J社”、事業所名の値が“P工場”、所在地の値が“○○県○○市…”、地区区分の値が“△△エリア”である。すなわち、企業“J社”の事業所が“P工場”であり、“P工場”の所在地が“○○県○○市…”であり、“P工場”の地区区分が“△△エリア”であることが表されている。
【0027】
図4は、公表水質データテーブル123の具体例を示す図である。
公表水質データテーブル123は、公表されている原水の水質に関する情報を表すレコードを複数有する。レコードは、地区区分、自治体、公表水質分析データ有無、原水種別、水質項目及び計測日の各値を有する。地区区分は、原水の水質が公表されている地区エリアを表す。自治体は、原水の水質のデータを公表している自治体を表す。公表水質分析データ有無は、公表されている原水の水質の分析データの有無を表す。原水種別は、分析がなされた原水の種類を表す。水質項目は、分析がなされた原水の水質の項目を表す。なお、
図4において“-”は、“-”が入力されている項目に関するデータが無いことを表す。
【0028】
図4に示される例では、公表水質データテーブル123には複数の地区区分が登録されている。これらの地区区分は、“△△エリア”、“□□エリア”、“☆☆エリア”である。
図4において、公表水質データテーブル123の最上段に登録されているレコードは、地区区分の値が“△△エリア”、自治体の値が“○○県”、公表水質分析データ有無の値が“あり”、原水種別の値が“水道水”、水質項目の値が“pH、Ca、Mg、…”、計測日の値が“YY.MM.DD”である。すなわち、地区区分“△△エリア”の水道水としての原水の水質のデータは“○○県”の自治体によってYY年.MM月.DD日に計測された過去のデータがあり、水質分析がなされた水質の項目が“pH、Ca、Mg、…”であることが表されている。
【0029】
図1に戻って、説明を続ける。
推定部103は、情報取得部101によって取得された顧客情報と、記憶部102に記憶されている各テーブルとに基づいて原水の水質を推定する。
結果出力部104は、推定部103によって推定された原水の水質の推定結果を出力する。例えば、結果出力部104は、水質の推定結果を原水の水質の分析を要求した顧客に対して送信してもよいし、水質の推定結果を媒体に出力してもよいし、不図示の表示装置に出力してもよい。
【0030】
以下、
図5~
図8を用いて、水質推定装置100が行う水質推定処理について説明する。
図5は、水質推定装置100が行う水質推定処理の流れを示すフローチャートである。
情報取得部101は、顧客情報を取得する(ステップS101)。例えば、情報取得部101は、外部装置から顧客情報を取得してもよいし、不図示の入力装置を用いてユーザが直接入力した顧客情報を取得してもよい。外部装置は、原水の水質の推定を要求するユーザによって操作される装置であり、例えばノートパソコン、スマートフォン、タブレット端末等の情報処理装置を用いて構成される。入力装置は、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、タブレット等)、タッチパネル、ボタン等の既存の入力装置である。情報取得部101は、取得した顧客情報(ユーザアカウント、企業名やその事業所名)を推定部103に出力する。
【0031】
推定部103は、情報取得部101から出力された顧客情報と、記憶部102に記憶されている企業データテーブル122とに基づいて、原水の水質の推定が要求されている所在地を特定する(ステップS102)。具体的には、まず推定部103は、取得した顧客情報に企業名やその事業所名が含まれる場合には、記憶部102から企業データテーブル122を読み出す。次に、推定部103は、読み出した企業データテーブル122を参照して、取得した企業名やその事業所名に対応するレコードを取得する。もし、企業データテーブル122に対応するレコードが存在しない場合には担当者が調べて新規レコードとして登録するか、自動的にインターネット検索して自動的に新規レコードとして登録した上で推定部103がレコードを取得してもよい。逆に、対応するレコードが複数ある場合、推定部103は複数のレコードを取得する。そして、推定部103は、取得したレコードの所在地の項目を参照して、原水の水質の推定が要求されている所在地を特定する。
一方、取得した顧客情報に企業名やその事業所名が含まれない場合には、まず推定部103はユーザデータテーブル121を参照して、取得したユーザアカウントに対応する企業名やその保有現場の情報を取得した上で上記処理を行う。
【0032】
その後、推定部103は、ユーザデータテーブル121を参照して、特定した所在地で採取された原水の水質の過去データ(以下「第1の過去データ」という。)があるか否かを判定する(ステップS103)。第1の過去データがある場合(ステップS103-YES)、推定部103は第1の過去データを用いて原水の水質を推定する(ステップS104)。具体的には、推定部103は、第1の過去データを、特定した所在地における原水の水質の推定結果とする。
【0033】
一方、第1の過去データがない場合(ステップS103-NO)、推定部103は、特定した所在地に近い地点で採取された水質の過去データ(以下「第2の過去データ」という。)があるか否かを判定する(ステップS105)。ここで、所在地に近い地点とは、物理的な距離が近い事業所であってもよいし(例えば、直線距離で10km以内、推定精度を重視する場合には5km以内)、同一の地区区分のエリア内で、かつ、同一の河川の水を利用する事業所であってもよい。推定部103は、所在地に近い地点を特定したのち、第2の過去データがあるか否かを判定する。
【0034】
第2の過去データがある場合(ステップS105-YES)、推定部103は第2の過去データを用いて原水の水質を推定する(ステップS106)。具体的には、推定部103は、第2の過去データを、特定した所在地における原水の水質の推定結果とする。
【0035】
一方、第1の過去データ及び第2の過去データのいずれか又は両方がない場合(ステップS105-NO)、推定部103は公表水質データテーブル123を参照して、特定した所在地に最も近い地区区分のエリア、すなわち特定した所在地が属する地区区分のエリア内で採取された公表水質データ(以下「第3の過去データ」という。)があるか否かを判定する(ステップS107)。第3の過去データがある場合(ステップS107-YES)、推定部103は第3の過去データを用いて、特定した所在地における原水の水質を推定する(ステップS108)。
【0036】
具体的には、まず推定部103は、記憶部102から公表水質データテーブル123を読み出す。次に、推定部103は、読み出した公表水質データテーブル123の地区区分の項目を参照して、特定した所在地に対応付けられている地区区分に対応するレコードを取得する。そして、推定部103は、取得したレコードの公表水質分析データの項目を参照して、公表されている原水の水質の分析データを取得する。推定部103は、取得した原水の水質の分析データを、特定した所在地における原水の水質として推定する。
【0037】
一方、第3の過去データがない場合(ステップS107-NO)、推定部103は、予め設定した標準水質データを用いて原水の水質を推定する(ステップS109)。具体的には、推定部103は、予め設定した標準水質データを、特定した所在地における原水の水質として推定する。なお、推定部103は、特定した所在地に近く、不足している水質の項目の過去データがある他の地点のデータを用いて原水の水質を推定してもよい。また、所在地で特定される場所において水が水道水と工業用水で利用される場合、水道水と工業用水は、河川水を原水としており、処理方法がある程度決まっている。そのため、推定部103は、所在地で特定される場所と同エリア内に河川水のデータがある場合には、河川水のデータに所定の係数で重み付けすることによって、不足している水質の項目における水質を推定してもよい。
【0038】
図6は、水質推定装置100が行う他の水質推定処理の流れを示すフローチャートである。
図6では、水質推定装置100が、過去データの有無を原水の水質項目毎に判定し、原水の水質項目毎に過去データを用いて原水の水質を推定する場合について説明する。なお、
図5と同様の処理については、
図6において
図5と同様の符号を付して説明を省略する。
【0039】
ステップS101及びステップS102の処理後、推定部103は指定水質項目Xの推定を開始する(ステップS201)。指定水質項目とは、顧客が推定を所望している原水の水質項目を表す。指定水質項目は、顧客情報に含まれていてもよいし、顧客情報とは別に入力されてもよい。推定部103は、ユーザデータテーブル121を参照して、第1の過去データがあるか否かを判定し、第1の過去データがある場合には第1の過去データに現在推定している指定水質項目のデータがあるか否かを判定する(ステップS202)。第1の過去データがあり、かつ、第1の過去データに現在推定している指定水質項目のデータがある場合(ステップS202-YES)、推定部103は第1の過去データを用いて原水の水質を推定する(ステップS203)。具体的には、推定部103は、第1の過去データにおける現在推定している指定水質項目のデータを、特定した所在地における原水の現在推定している指定水質項目の水質の推定結果とする。
【0040】
その後、推定部103は、全ての指定水質項目の推定が完了したか否かを判定する(ステップS204)。全ての指定水質項目の推定が完了した場合(ステップS204-YES)、水質推定装置100は
図6の処理を終了する。
一方、全ての指定水質項目の推定が完了していない場合(ステップS204-NO)、推定部103は推定していない他の指定水質項目の推定を開始する(ステップS205)。その後、推定部103は、ステップS202以降の処理を実行する。
【0041】
一方、第1の過去データがない場合、又は、第1の過去データに現在推定している指定水質項目のデータがない場合(ステップS202-NO)、推定部103は第2の過去データがあるか否かを判定し、第2の過去データがある場合には第2の過去データに現在推定している指定水質項目のデータがあるか否かを判定する(ステップS206)。
第2の過去データがあり、かつ、第2の過去データに現在推定している指定水質項目のデータがある場合(ステップS206-YES)、推定部103は第2の過去データを用いて原水の水質を推定する(ステップS207)。具体的には、推定部103は、第2の過去データにおける現在推定している指定水質項目のデータを、特定した所在地における原水の現在推定している指定水質項目の水質の推定結果とする。その後、推定部103は、ステップS204の処理を実行する。
【0042】
一方、第1の過去データ及び第2の過去データのいずれか又は両方がない場合、又は、第2の過去データに現在推定している指定水質項目のデータがない場合(ステップS206-NO)、推定部103は公表水質データテーブル123を参照して、第3の過去データがあるか否かを判定し、第3の過去データがある場合には第3の過去データに現在推定している指定水質項目のデータがあるか否かを判定する(ステップS208)。
【0043】
第3の過去データがあり、かつ、第3の過去データに現在推定している指定水質項目のデータがある場合(ステップS208-YES)、推定部103は第3の過去データを用いて原水の水質を推定する(ステップS209)。具体的には、推定部103は、第3の過去データにおける現在推定している指定水質項目のデータを、特定した所在地における原水の現在推定している指定水質項目の水質の推定結果とする。その後、推定部103は、ステップS204の処理を実行する。
一方、第3の過去データがない場合、又は、第3の過去データに現在推定している指定水質項目のデータがない場合(ステップS208-NO)、推定部103は予め設定した標準水質データを用いて原水の水質を推定する(ステップS210)。その後、推定部103は、ステップS204の処理を実行する。
【0044】
図7は、水質推定装置100が行う他の水質推定処理の流れを示すフローチャートである。
図7では、水質推定装置100が、各過去データの原水種別と共に原水の水質の推定結果を提示する場合について説明する。なお、
図5と同様の処理については、
図7において
図5と同様の符号を付して説明を省略する。
【0045】
ステップS103の処理において第1の過去データがない場合(ステップS103-NO)、又は、ステップS104の処理後、推定部103は第2の過去データがあるか否かを判定する(ステップS301)。なお、ステップS104の処理が行われた場合、推定部103は第1の過去データを用いて原水の水質を推定している。第2の過去データがある場合(ステップS301-YES)、推定部103は第2の過去データを用いて原水の水質を推定する(ステップS106)。
【0046】
一方、第1の過去データ及び第2の過去データのいずれか又は両方がない場合(ステップS301-NO)、又は、ステップS106の処理後、推定部103は公表水質データテーブル123を参照して、第3の過去データがあるか否かを判定する(ステップS302)。なお、ステップS106の処理が行われた場合、推定部103は第2の過去データを用いて原水の水質を推定している。第3の過去データがある場合(ステップS302-YES)、推定部103は第3の過去データを用いて、特定した所在地における原水の水質を推定する(ステップS108)。
【0047】
一方、第3の過去データがない場合(ステップS302-NO)、又は、ステップS108の処理後、推定部103は予め設定した標準水質データを用いて原水の水質を推定する(ステップS109)。なお、ステップS108の処理が行われた場合、推定部103は第3の過去データを用いて原水の水質を推定している。
推定部103は、過去データがあった過去データにおける水質の推定結果と共に、過去データがあった過去データの原水種別を提示する(ステップS301)。具体的には、推定部103は、第1の過去データ、第2の過去データ及び第3の過去データのいずれかの過去データがある場合には、過去データがある1つ以上を、顧客情報で特定された所在地における原水の水質の推定結果とし、過去データがあった過去データの原水種別と共に提示する。
【0048】
なお、
図7に示す処理は、指定水質項目においても実行されてもよい。このように構成される場合、推定部103は、指定水質項目毎に
図7の処理を実行する。すなわち、推定部103は、第1の過去データ、第2の過去データ及び第3の過去データのいずれかに指定水質項目のデータがある場合には、指定水質項目のデータがある1つ以上の過去データにおける現在推定している指定水質項目のデータを、顧客情報で特定した所在地における原水の現在推定している指定水質項目の水質の推定結果とし、指定水質項目のデータがあった過去データの原水種別と共に提示する。指定水質項目における処理は、
図6と同様である。
【0049】
図8は、水質推定装置100が行う他の水質推定処理の流れを示すフローチャートである。
図8では、水質推定装置100が、原水種別が共通する過去データを用いて原水の水質を推定する場合について説明する。なお、
図5と同様の処理については、
図8において
図5と同様の符号を付して説明を省略する。
【0050】
ステップS101の処理後、情報取得部101は、原水の水質を推定する対象となる原水種別を示す原水種別情報を取得する(ステップS401)。例えば、情報取得部101は、外部装置から原水種別情報を取得してもよいし、不図示の入力装置を用いてユーザが直接入力した原水種別情報を取得してもよい。情報取得部101は、取得した原水種別情報を推定部103に出力する。このように、推定部103は、原水種別情報を取得することによって原水の水質の推定対象となる原水種別が既知の原水の水質を推定する。その後、ステップS102の処理が実行される。
【0051】
推定部103は、ユーザデータテーブル121を参照して、第1の過去データがあって、かつ、第1の過去データがある原水種別が、原水種別情報で示される原水種別と共通であるか否かを判定する(ステップS402)。第1の過去データがあって、かつ、第1の過去データがある原水種別が、原水種別情報で示される原水種別と共通である場合(ステップS402-YES)、推定部103は第1の過去データを用いて原水の水質を推定する(ステップS403)。具体的には、推定部103は、原水種別情報で示される原水種別と共通の原水種別の第1の過去データを、特定した所在地における原水の水質の推定結果とする。
【0052】
一方、ステップS402において第1の過去データがない場合又は原水種別が異なる場合のいずれか又は両方が満たされた場合(ステップS402-NO)、もしくは、ステップS403の処理後、推定部103は第2の過去データがあって、かつ、第2の過去データがある原水種別が、原水種別情報で示される原水種別と共通であるか否かを判定する(ステップS404)。第2の過去データがあって、かつ、第2の過去データがある原水種別が、原水種別情報で示される原水種別と共通である場合(ステップS404-YES)、推定部103は第2の過去データを用いて原水の水質を推定する(ステップS405)。具体的には、推定部103は、原水種別情報で示される原水種別と共通の原水種別の第2の過去データを、特定した所在地における原水の水質の推定結果とする。
【0053】
一方、ステップS404において第2の過去データがない場合又は原水種別が異なる場合のいずれか又は両方が満たされた場合(ステップS404-NO)、もしくは、ステップS405の処理後、推定部103は第3の過去データがあって、かつ、第3の過去データがある原水種別が、原水種別情報で示される原水種別と共通であるか否かを判定する(ステップS406)。第3の過去データがあって、かつ、第3の過去データがある原水種別が、原水種別情報で示される原水種別と共通である場合(ステップS406-YES)、推定部103は第3の過去データを用いて原水の水質を推定する(ステップS407)。具体的には、推定部103は、原水種別情報で示される原水種別と共通の原水種別の第3の過去データを、特定した所在地における原水の水質の推定結果とする。
【0054】
一方、ステップS406において第3の過去データがない場合又は原水種別が異なる場合のいずれか又は両方が満たされた場合(ステップS406-NO)、もしくは、ステップS407の処理後、推定部103は、予め設定した標準水質データを用いて原水の水質を推定する(ステップS109)。
【0055】
なお、
図8に示す処理は、指定水質項目においても実行されてもよい。このように構成される場合、推定部103は、指定水質項目毎に
図8の処理を実行する。すなわち、推定部103は、第1の過去データ、第2の過去データ及び第3の過去データのいずれかに指定水質項目のデータがあって、かつ、原水種別が、原水種別情報で示される原水種別と共通である場合には、原水種別が、原水種別情報で示される原水種別と共通する過去データにおける指定水質項目のデータを、顧客情報で特定した所在地における原水の現在推定している指定水質項目の水質の推定結果とする。指定水質項目における処理は、
図6と同様である。
【0056】
以上のように構成された水質推定装置100によれば、現地にて原水の水質分析をすることなく、原水の水質を推定することが可能になる。具体的には、まず水質推定装置100は、取得した顧客情報から原水の水質を推定してほしい所在地を特定する。次に、水質推定装置100は、特定した所在地で採取された原水の水質の第1の過去データ、特定した所在地に近い場所で採取された原水の水質の第2の過去データ、特定した所在地が属するエリア内で採取された原水について所定の団体によって分析された原水の水質の第3の過去データの1つ以上を用いて、顧客情報で特定された場所の原水の水質を推定する。このように、水質推定装置100は、特定した所在地に関連するいずれかの過去データを、特定した所在地の原水の水質として推定する。そのため、現地にて原水の水質分析をすることなく、原水の水質を推定することが可能になる。
【0057】
水質推定装置100は、第1の過去データがある場合には第1の過去データを、所在地で特定される場所の原水の水質の推定結果とする。そのため、現地にて原水の水質分析をすることなく、原水の水質を推定することが可能になる。
【0058】
また、水質推定装置100は、第1の過去データがない場合であって、所在地で特定される場所に近い場所の過去データがある場所の水質の過去データ(第2の過去データ)がある場合には、第2の過去データを、所在地で特定される場所の原水の水質の推定結果とする。これにより、第1の過去データがない場合であっても、特定された所在地の原水の水質を推定することができる。そのため、現地にて原水の水質分析をすることなく、原水の水質を推定することが可能になる。
【0059】
また、水質推定装置100は、第2の過去データがない場合であって、特定した所在地が属する地区区分のエリア内で採取された公表水質データ(第3の過去データ)がある場合には、第3の過去データを、所在地で特定される場所の原水の水質の推定結果とする。これにより、第1の過去データ及び第2の過去データがない場合であっても、特定された所在地の原水の水質を推定することができる。そのため、現地にて原水の水質分析をすることなく、原水の水質を推定することが可能になる。
【0060】
水質推定装置100は、第1の過去データに指定水質項目がある場合には第1の過去データにおける指定水質項目のデータを、所在地で特定される場所の原水の指定水質項目の推定結果とする。これにより、原水の水質項目毎に水質を推定することができる。そのため、現地にて原水の水質分析をすることなく、原水の水質を推定することが可能になる。
【0061】
また、水質推定装置100は、第1の過去データに指定水質項目のデータがない場合であって、第2の過去データに指定水質項目のデータがある場合には、第2の過去データにおける指定水質項目のデータを、所在地で特定される場所の原水の指定水質項目の推定結果とする。これにより、第1の過去データがない場合であっても、特定された所在地の原水の指定水質項目のデータを推定することができる。そのため、現地にて原水の水質分析をすることなく、原水の水質を推定することが可能になる。
【0062】
また、水質推定装置100は、第2の過去データに指定水質項目のデータがない場合あって、第3の過去データに指定水質項目のデータがある場合には、第3の過去データにおける指定水質項目のデータを、所在地で特定される場所の原水の指定水質項目の推定結果とする。これにより、第1の過去データ及び第2の過去データに指定水質項目のデータがない場合であっても、特定された所在地の原水の指定水質項目のデータを推定することができる。そのため、現地にて原水の水質分析をすることなく、原水の水質を推定することが可能になる。
【0063】
<変形例>
情報取得部101は、顧客情報として所在地の情報を取得してもよい。この場合、推定部103は、取得された所在地の情報を用いて、所在地の情報で示される場所の原水の水質を推定する。推定の方法は、実施形態と同様であるため説明を省略する。
推定部103は、水質の過去データが、原水の水質を推定する時間から所定の期間(例えば、数日、数年)以上前に計測されたデータである場合には、その水質の過去データを利用しなくてもよい。この場合、推定部103は、別の場所、例えば、別の近い地点、かつ、水質の過去データがある場所の水質の過去データを利用して原水の水質を推定する。
推定部103は、同一の地区区分で複数の水質の過去データがある場合には、複数の水質の過去データをユーザに提示してどの箇所の水質の過去データを用いるのかを選択させてもよいし、所在地から物理的に最も近い距離に位置している箇所で計測された水質の過去データを用いてもよい。
【0064】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0065】
101…情報取得部, 102…記憶部, 103…推定部, 104…結果出力部