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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】顕微鏡、及び、顕微鏡の設定方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20231108BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20231108BHJP
   G02B 21/00 20060101ALI20231108BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALN20231108BHJP
【FI】
C12M1/34 B
C12M1/00 A
C12M1/34 D
G02B21/00
C12Q1/06
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019073404
(22)【出願日】2019-04-08
(65)【公開番号】P2020171198
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(72)【発明者】
【氏名】大川 潤也
(72)【発明者】
【氏名】中田 千枝子
(72)【発明者】
【氏名】坂本 ちか
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/143375(WO,A1)
【文献】特開2016-034288(JP,A)
【文献】特開2016-220613(JP,A)
【文献】特開2017-97227(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0175827(US,A1)
【文献】国際公開第2018/213709(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/34
C12M 1/00
G02B 21/00
C12Q 1/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズを含み、光源からの照明光によって、走査部を介して、前記対物レンズの光軸方向に交差する面内において、細胞塊を走査して照射する照明光学系と、
前記細胞塊からの光を、前記走査部を介して受光部へ集光する検出光学系と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記光軸方向に沿って異なる複数の位置それぞれで、前記走査部により前記照明光を2次元走査して、2次元画像を取得する際、前過程として、前記複数の位置それぞれの画像取得条件を決定するために画像取得をすることなく、前記2次元画像を取得する過程において、前記細胞塊の第1の位置で取得された2次元画像に基づき、細胞の構造体の密度の情報、前記細胞の構造体の周囲長の情報、及び前記細胞の構造体の輝度と前記細胞の構造体以外の部分の輝度との比率情報のうち、少なくとも1つの情報を特定し、前記特定された情報に基づき、前記光軸方向に沿って、前記第1の位置とは異なる第2の位置における画像取得条件を決定する微鏡。
【請求項2】
前記制御部は、前記特定された情報が、適正範囲に収まるまで前記第2の位置の前記画像取得条件を変更する請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項3】
前記細胞の構造体は、前記細胞の内部の構造又は前記細胞の表面の構造である請求項1又は2に記載の顕微鏡。
【請求項4】
前記細胞の内部の構造は、前記細胞の核である請求項3に記載の顕微鏡。
【請求項5】
前記細胞の表面の構造は、表面突起である請求項3に記載の顕微鏡。
【請求項6】
前記画像取得条件は、前記照明光の強度、前記走査部の走査速度、前記受光部への印加電圧、及び、前記第2の位置で取得される2次元画像のアベレージ回数の少なくとも1つを含む請求項1~5のいずれか一項に記載の顕微鏡。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1の位置で取得された2次元画像に含まれる前記細胞の構造体の密度が適正範囲に入るように前記画像取得条件を変更する請求項1~6のいずれか一項に記載の顕微鏡。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1の位置で取得される2次元画像に含まれる前記細胞の構造体の周囲長の分布が適正範囲に入るように前記画像取得条件を変更する請求項1~7のいずれか一項に記載の顕微鏡。
【請求項9】
前記細胞塊は、保持部材に配置され、
前記第1の位置は、前記細胞塊と前記保持部材とが接する位置とは前記光軸方向に沿って異なる位置に設定される請求項1~8のいずれか一項に記載の顕微鏡。
【請求項10】
前記第1の位置は、前記細胞塊と前記保持部材とが接する位置から前記光軸方向に沿って10μm以内の位置に設定される、請求項9に記載の顕微鏡。
【請求項11】
前記細胞塊は、組織切片を含む請求項1~10のいずれか一項に記載の顕微鏡。
【請求項12】
対物レンズを含み、光源からの照明光によって、走査部を介して、前記対物レンズの光軸方向に交差する面内において、細胞塊を走査して照射する照明光学系と、
前記細胞塊からの光を、前記走査部を介して受光部へ集光する検出光学系と、
を備える顕微鏡において、
前記光軸方向に沿って異なる複数の位置それぞれで、前記走査部により前記照明光を2次元走査して、2次元画像を取得する際、前過程として、前記複数の位置それぞれの画像取得条件を決定するために画像取得をすることなく、前記2次元画像を取得する過程において、前記細胞塊の第1の位置で取得された2次元画像に基づき、細胞の構造体の密度の情報、前記細胞の構造体の周囲長の情報、及び前記細胞の構造体の輝度と前記細胞の構造体以外の部分の輝度との比率情報のうち、少なくとも1つの情報を特定することと、
前記特定された情報に基づき、前記光軸方向に沿って、前記第1の位置とは異なる第2の位置における画像取得条件を決定することと、を備える顕微鏡の設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡、及び、顕微鏡の設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の塊を観察することが知られている。例えば、特許文献1もしくは特許文献2が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】US201113315794A
【文献】US201213364928A
【発明の概要】
【0004】
本実施形態の第1の態様に従えば、対物レンズを含み、によって、走査部を介して、前記対物レンズの光軸方向に交差する面内において、細胞塊を走査して照射する照明光学系と、前記細胞塊からの光を、前記走査部を介して受光部へ集光する検出光学系と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記光軸方向に沿って異なる複数の位置それぞれで、前記走査部により前記照明光を2次元走査して、2次元画像を取得する際、前過程として、前記複数の位置それぞれの画像取得条件を決定するために画像取得をすることなく、前記2次元画像を取得する過程において、前記細胞塊の第1の位置で取得された2次元画像に基づき、細胞の構造体の密度の情報、前記細胞の構造体の周囲長の情報、及び前記細胞の構造体の輝度と前記細胞の構造体以外の部分の輝度との比率情報のうち、少なくとも1つの情報を特定し、前記特定された情報に基づき、前記光軸方向に沿って、前記第1の位置とは異なる第2の位置における画像取得条件を決定する微鏡が提供される。
【0005】
本実施形態の第2の態様に従えば、対物レンズを含み、光源からの照明光によって、走査部を介して、前記対物レンズの光軸方向に交差する面内において、細胞塊を走査して照射する照明光学系と、前記細胞塊からの光を、前記走査部を介して受光部へ集光する検出光学系と、を備える顕微鏡において、前記光軸方向に沿って異なる複数の位置それぞれで、前記走査部により前記照明光を2次元走査して、2次元画像を取得する際、前過程として、前記複数の位置それぞれの画像取得条件を決定するために画像取得をすることなく、前記2次元画像を取得する過程において、前記細胞塊の第1の位置で取得された2次元画像に基づき、細胞の構造体の密度の情報、前記細胞の構造体の周囲長の情報、及び前記細胞の構造体の輝度と前記細胞の構造体以外の部分の輝度との比率情報のうち、少なくとも1つの情報を特定することと、前記特定された情報に基づき、前記光軸方向に沿って、前記第1の位置とは異なる第2の位置における画像取得条件を決定することと、を備える顕微鏡の設定方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、ウェルプレートWPのウェルWに配置された細胞の塊を示す概略図である。
図2図2は、本実施形態にかかる計数装置1の概略図である。
図3図3は、細胞の塊に含まれる細胞の数を計数する方法を示すフローチャートである。
図4図4は、初期値決定処理を示すフローチャートである。
図5図5は、細胞の塊にレーザ光を照射したときの様子を示す概略図と、基準面における、レーザ強度Iと核のカウント数との相関を示す図である。
図6図6は、Zスタック実行処理を示すフローチャートである。
図7図7は、内部に血管を含んだ細胞の塊を示す概略図である。
図8図8は、複数の樹状突起スパインを含む神経細胞を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の記載においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系に基づいて位置関係を説明している(図2参照)。Z軸方向は、例えば鉛直方向に設定され、X軸方向及びY軸方向は、例えば、水平方向に平行で互いに直交する方向に設定される。
【0008】
本明細書において、図1に示す通り、複数の細胞が3次元的に凝集したものを細胞の塊と呼んでいる。細胞の塊の例としては、組織切片、細胞スフェロイド、オルガノイド等が挙げられる。なお、細胞スフェロイドとは、3次元培養された細胞の3次元的な塊であり、オルガノイドとは、臓器の特色の一部を備えている、小さくて単純化された細胞の集まりである。オルガノイドは、例えば、iPS細胞やES細胞などの多能性幹細胞を原料として、細胞培養の条件を制御しつつ細胞を分化させることにより、3次元的に試験管内(in vitro)で作製することができる。また、細胞の塊には、2次元的に広がった細胞の層が2層以上にわたって積層されたもの(例えば、細胞シート)も含まれる。細胞シートは単層でもよいし、積層された複数の層であるものでも構わない。
【0009】
3次元培養は2次元培養と比較して、立体構造を持ったより複雑な系を構築することが可能であり、より生体内に類似した環境を構築することが可能である。細胞スフェロイドやオルガノイドのような3次元培養された細胞の塊や、組織切片のような細胞の塊を、基礎研究、創薬研究、再生医療などの分野において応用する際において、細胞の塊の中に含まれる細胞の数を正確に知りたいという要求がある。例えば、細胞の塊に薬剤を注入し、その薬剤が細胞の塊の中に含まれる細胞にどのくらい吸収されたかを調べる場合において、細胞の塊の中に含まれる細胞の数を正確に知ることにより、各細胞に吸収された薬剤の量を正しく評価することができる。
【0010】
図2を参照しつつ、本実施形態に係る、細胞の塊の内部に含まれる細胞の数を計数するための計数装置1について説明する。計数装置1は、顕微鏡装置10と、制御部20と、表示部30と、入力部40とを主に備えている。なお、細胞の数は、細胞情報の一例である。また、本実施形態においては、細胞に含まれる核の数を、細胞の数とすることができる。この場合に、例えば、細胞分裂中の細胞においては、細胞に複数の核が含まれる場合がある。この場合には、細胞の核の面積と細胞の面積に基づいて、計数する細胞の数を変更しても構わない。もちろん、細胞の数を計数する方法は、細胞の核の数の計数に限られない。例えば、細胞の輪郭情報から細胞の面積を算出し、算出された細胞の面積から細胞の数を計数しても構わない。また、細胞の核は、細胞の内部の構造の一例である。また、細胞の輪郭情報による細胞の外形構造は、細胞の構造体の一例である。
【0011】
顕微鏡装置10は、照明部100と、光学系120と、受光部140と、試料Sが置かれる可動ステージ160とを主に備えている。本実施形態の顕微鏡装置10は、いわゆる共焦点レーザ顕微鏡と呼ばれる顕微鏡装置である。なお、顕微鏡装置10は、光学検出装置の一例である。
【0012】
図2に示されるように、照明部100は、3つのCWレーザ102と、音響光学可変フィルタ103(Acousto-Optics Tunable Filter、以下AOTF103と呼ぶ)とを有している。CWレーザ102は、それぞれ、波長405nm、488nm、561nmの連続波レーザであり、本実施形態では半導体レーザが用いられている。AOTF103は、電気的に制御可能な透過型のバンドパスフィルタであり、オン/オフ変調による高速スイッチング、及び、変調レベルの調整によるレーザ強度のコントロールが可能である。本実施形態の照明部100においては、AOTF103により3つのCWレーザ102のオン/オフ制御及びレーザ強度の制御を行うことができる。なお、AOTF103に代えて、例えば音響光学変調器(AOM)を用いることもできる。
【0013】
光学系120は、4つのレンズL1~L4と、ダイクロイックミラーDMと、ガルバノミラーGMと、2つのピンホールPH1、PH2と、瞳投影レンズ122と、結像レンズ124と、対物レンズ126とを備える。なお、対物レンズ126には、駆動機構128が設けられており、対物レンズ126のZ方向の位置を調整することができる。
【0014】
受光部140は、光電子増倍管PMTを有し、試料Sに含まれる細胞から発せられる蛍光の強度を計測する。
【0015】
可動ステージ160は、図2のXY平面に平行な上面161Uを有するステージ161と、ステージ161をX方向及びY方向に移動させる移動機構162とを備えている。ステージ161の上面161Uには、試料Sが入ったウェルプレートWPが配置される。ウェルプレートWPは、透明な板状の部材であり、その表面には複数のくぼみ(ウェルW)が2次元的に配置されている。それぞれのウェルWは、試験管またはシャーレとして利用することができる。移動機構162は、制御部20の制御のもとで、ステージ161のX方向の位置、Y方向の位置をそれぞれ調整することができる。これにより、ステージ161の上面161Uに置かれたウェルプレートWPの位置を調整することができ、ウェルプレートWP内の所望のウェルWに入れられた試料Sに対してレーザ光を照射することができる。
【0016】
制御部20は、顕微鏡装置10の各部(照明部100、光学系120、受光部140、可動ステージ160)の動作を制御するための設定信号(調整信号)を顕微鏡装置10に出力する調整部21と、受光部140からの信号に基づいて後述の2次元画像を作製し、2次元画像に基づいて細胞の塊に含まれる細胞の数などの細胞情報を取得する取得部22とを有する。後述の説明では、受光部140からの信号に基づく2次元画像を適宜、2次元マッピング画像と言い換えることができる。また、制御部20は、入力部40を通じて顕微鏡装置10の各部に対する設定及び指示を受け付ける。制御部20は顕微鏡装置10の各部に対する設定及び指示を受け付けるための設定画面を表示部30に表示させる。入力部40は、各種指示情報を入力する不図示のマウス、キーボード、ジョイスティック、タッチパネルなどを有する。なお、入力部40は、測定者による入力に限定されない。例えば、不図示の記憶部に入力部40に入力する情報を記憶させておき、適宜記憶部の情報を各種指示情報として入力しても構わない。例えば、前回の基準位置での測定条件を記憶部に記憶させておき、適宜記憶部から調整部21に入力するデータを作成させる構成が入力部40にあっても構わない。したがって、マウスなどの指示情報を入力する構成も入力部40に含まれるが記憶部も入力部40に含まれても構わない。表示部30は設定画面、指示画面、計測画面、計測結果などを表示する表示画面を有する。本実施形態において、入力部40と、調整部21を含む制御部20とが協働して、顕微鏡装置10の測定条件を設定する測定条件設定装置として機能する。
【0017】
制御部20は、専用のハードウェアにより形成されていてもよく、パーソナルコンピュータに所定のプログラムを実装することにより形成されていてもよい。制御部20と顕微鏡装置10とは、必ずしも一体の装置として形成されていなくてもよい。例えば、制御部20は、有線又は無線により顕微鏡装置10に通信可能に接続されたコンピュータであってもよい。
【0018】
次に、顕微鏡装置10のレーザ光の光路を説明する。3つのCWレーザ102から照射されたレーザ光は、いずれもAOTF103に入射する。AOTF103は、所望の波長のレーザ光を選択的に透過させる。また、AOTF103は、レーザ光の強度(単に、レーザ強度ともいう)を調整する。AOTF103から照射されたレーザ光は、レンズL1に向かって直進する。レンズL1の焦点位置にはピンホールPH1が配置されている。レンズL1及びピンホールPH1を通過したレーザ光は、レンズL2を通った後、ダイクロイックミラーDMに入射する。ダイクロイックミラーDMは、CWレーザ102からのレーザ光の波長帯域の光を反射し、それ以外の光を透過させる特性を有する。そのため、レーザ光はダイクロイックミラーDMで反射されて、ガルバノミラーGMに入射する。ガルバノミラーGMは、往復瑶動可能な走査ミラーであり、制御部20により制御される。ガルバノミラーGMは、レーザ光を所定の1方向(例えば、X方向)に走査することができる。なお、図2においては、1つのガルバノミラーGMだけが図示されているが、2つのガルバノミラーを用いて、レーザ光を2方向(例えば、X-Y方向)に走査することができる。また、ガルバノミラーに代えて、レゾナントスキャナを用いることもできる。
【0019】
ガルバノミラーGMを出たレーザ光は、瞳投影レンズ122、結像レンズ124を通った後、対物レンズ126に入射する。なお、ガルバノミラーGMは、対物レンズ126の瞳位置(出射瞳位置)と共役に配置される。対物レンズ126を出たレーザ光は可動ステージ160の上に置かれた試料Sに照射される。上述のように、試料Sは細胞の塊を含んでいる。試料Sに含まれる各細胞の核は、予め染料で染色されており、レーザ光が照射されることにより蛍光を発する。本実施形態においては、4’,6-diamidino-2-phenylindole(DAPI)により染色されている。なお、染色は細胞の核のみが染色されていても構わないし、細胞の核とそれ以外の構造が染色されていても構わない。また、細胞は染色されていない状態でも構わない。細胞が染色されていない状態では、例えば、細胞の内部の構造からの自家蛍光でも構わない。
【0020】
試料Sから戻ってきた蛍光は、対物レンズ126、結像レンズ124、瞳投影レンズ122、ガルバノミラーGMを逆にたどってダイクロイックミラーDMに入る。蛍光はダイクロイックミラーDMを透過して直進し、レンズL3に入射する。レンズL3の焦点位置にはピンホールPH2が配置されている。ピンホールPH2を通過した蛍光はレンズL4を通った後、受光部140に入って検出される。ここで、ピンホールPH1、PH2は、対物レンズ126の焦点位置と共役の位置に配置されている。これにより、ピンホールPH2は、対物レンズ126の焦点位置からの光(蛍光、散乱光)のみを選択的に透過させることができる。これにより、ボケ像の原因となる光を遮断することができ、焦点位置からの光だけを検出することができる。
【0021】
制御部20は、ガルバノミラーGMの駆動を制御することによってレーザ光の照射位置(焦点位置)をX-Y方向に走査することができる。これにより、制御部20は、レーザ光をX-Y平面での各位置に照射したときに、各位置で受光部140で蛍光の強度を受光する。このため、X-Y平面の強度分布を取得することができ、X-Y平面の強度分布を2次元画像として取得することができる。さらに、制御部20は、対物レンズ126に設けられた駆動機構128を制御することによって、対物レンズ126のZ方向の位置を調整することができる。言い換えると、制御部20は、レーザ光の焦点面のZ方向の位置(以下、単にZ位置という)を調整することができる。これにより、制御部20は、レーザ光の焦点面のZ位置を調整しつつ、各Z位置において、X-Y平面の蛍光の強度分布の2次元マッピングを取得することができる。以下の説明において、レーザ光の焦点面のZ位置を設定し、そのZ位置において、X-Y平面の蛍光の強度分布の2次元マッピング画像を取得することを、Zスライスを実行すると呼ぶ。後述の説明においては、各Z位置におけるX-Y平面の2次元画像を、Zスライス画像と呼ぶ。また、レーザ光の焦点面のZ位置を所定の範囲にわたって移動させつつ、複数のZ位置においてZスライスを実行することを、Zスタックを実行すると呼ぶ。したがって、Zスタックを実行すると、Z位置の異なる複数枚のZスライス画像を取得することができる。
【0022】
Z方向において、細胞の塊全体をカバーするようにZスタックを実行し、得られた複数枚のZスライス画像から、後述のように、細胞の塊に含まれる細胞の数を計数することができる。各Z位置におけるZスライス画像から、細胞の数を正確に計数するためには、得られたZスライス画像が各細胞の核を弁別できる程度に鮮明でなければならない。細胞の塊の内部において、入射する光の散乱が細胞の塊のZ位置に応じて異なるために、Z位置ごとに設定パラメータを調整していた。例えば、Zスライス画像を鮮明にするために、ユーザが各Zスライスを実行する毎に、レーザ強度、光電子増倍管PMTのゲインなどの顕微鏡装置10の設定パラメータを調整していた。設定パラメータの詳細については後述する。しかしながら、各Zスライスを実行する毎に設定パラメータの調整を行うのは時間がかかる。また、Zスライス画像を調整する場合に、調整するための指標がないことから、ユーザの熟練度の差によっては、得られるZスライス画像の鮮明さが大きく異なることがあり、解析結果の定量性が担保されないという問題があった。
【0023】
これに対して、本実施形態における計数装置1は、調整部21及び取得部22を有する制御部20を備えているため、以下に示されるように、顕微鏡装置10の設定パラメータを自動的に設定することができる。
【0024】
次に、計数装置1を用いて、細胞の塊に含まれる細胞の数を計数する方法について図3を参照しつつ説明する。ウェルWに細胞の塊を入れたウェルプレートWPを、ステージ161に配置する(S101)。変数iを1に設定し(S102)、i番目のウェルWに入れられた細胞の塊を測定できるように、ステージ161のX位置及びY位置を調整する(S103)。変数iが1である場合(S104:Yes)、レーザ光の焦点面が以下に説明する基準面BPと同じになるように、対物レンズ126のZ位置を調整する(S105)。
【0025】
なお、図1に示されるように、細胞の塊のウェルWと接触する部分は、ウェルWに沿って外側に広がってしまう。そのため、細胞の塊は、ウェルWと接触する部分よりも少し上側においてくびれた形状となる。本実施形態においては、後述のように、基準面BPにおいて顕微鏡装置10の可変パラメータPvの初期値を決定している。レーザ光の強度を確保する観点からは、対物レンズ126から最も近い位置である、細胞の塊のウェルWと接触する部分に基準面BPを設定することが考えられる。しかしながら、細胞の塊の、ウェルWと接触する部分に含まれる細胞は、他の部分に含まれる細胞と比べて、細胞の状態が変わっている恐れがある。そこで、本実施形態においては、細胞の塊の、ウェルWと接触する部分よりも少し上側の、くびれた形状の部分を通るように基準面BPを設定する。基準面BPは細胞の塊のウェルWと接触する部分から例えば10μmより下側のZ位置に設定される。基準面のZ位置は10μmより下側に限られず、レーザ光の強度が確保できれば、それ以外のZ位置でも構わない。また、基準面BPは細胞の塊のウェルWと接触する部分から例えば5μmより離れた上側のZ位置に設定される。また、細胞の塊のウェルWと接触する部分の細部が他の部分に含まれる細胞の状態と変わっていない場合には、細胞の塊のウェルと接触する部分を基準面BPとして設定しても構わない。また、細胞の核がより多く撮像できる位置を基準面BPとして設定しても構わない。
【0026】
なお、基準面BPを設定する際に、適宜の設定パラメータで、Zスタックを実行して、各Z位置における細胞の塊の輪郭を取得し、細胞の塊の外形を求めてもよい。この場合においては、各Z位置における細胞の塊の輪郭が取得できればよいため、必ずしも各細胞に含まれる核を弁別できる程度の鮮明なZスライス画像が取得できなくても問題ない。また、測定できている輪郭から細胞の塊を推定し、その推定した細胞の塊から、細胞の基準面BPを推定しても構わない。細胞の塊の輪郭は一部測定ができない場合があっても構わない。
【0027】
レーザ光の焦点面が基準面BPと同じになるように、対物レンズ126のZ位置を調整した後、後述の手順により顕微鏡装置10の可変パラメータPvの初期値を決定する(S106)。次に、レーザ光の焦点面のZ位置をZスタックの開始位置に設定し(S107)、後述の手順により、i番目のウェルWに入れられた細胞の塊に対してZスタックを実行する(S108)。Zスタックが終了したら、直前のZスタックが最後のウェルWに対して行われたかどうかを判定する(S109)。最後のウェルWに対するZスタックが終了していない場合には(S109:No)、変数iをインクリメントしてステップS103に戻る。なお、ステップS104において、変数iが1ではない場合には、ステップS105、S106を省略してステップS107に進む。ステップS109において、最後のウェルWに対するZスタックが終了したと判断された場合には(S109:Yes)、測定を終了する。
【0028】
次に、上述のステップS106の処理、すなわち、顕微鏡装置10の可変パラメータPvの初期値を決定するための処理(以下、初期値決定処理という)について、図4、5を参照しつつ説明する。
【0029】
顕微鏡装置10の設定パラメータとして、例えば、レーザ強度、撮影速度、アベレージ回数、ゲインなどが挙げられる。レーザ強度は、照明部100から照射されるレーザ光の強度であり、上述のようにAOTF103を用いて調整できる。レーザ強度を高くするほど蛍光が明るくなるため、得られるZスライス画像が鮮明になる。しかしながら、レーザ強度を高く設定しすぎるとレーザ光を照射される細胞の塊に損傷を与える恐れがある。撮影速度は、ガルバノミラーGMの走査速度に対応する。ガルバノミラーGMの走査速度が低い場合には、所定の測定時間に光電子増倍管PMTに入射する光子の数(フォトン数)が多くなるため、得られるZスライス画像が鮮明になる。しかしながら、撮影速度を低くすると、Zスライス(及びZスタック)の実行にかかる時間が長くなってしまう。アベレージ回数は、1つのZスライスにおいて平均化処理されるZスライス画像の枚数である。アベレージ回数分のZスライス画像を平均化処理することにより、得られるZスライス画像を鮮明にすることができる。アベレージ回数を多くしすぎた場合にも、Zスライス(及びZスタック)の実行にかかる時間が長くなってしまう。ゲインは光電子増倍管PMTの感度であり、光電子増倍管PMTに印加する印加電圧によって調整できる。ゲインを高くすれば蛍光強度が弱い場合(フォトン数が少ない時)であっても検出できるようになり、ゲインを低くすれば蛍光強度が強い場合であっても輝度の飽和を防ぐことができる。これらの設定パラメータは、調整部21により設定される。なお、これらの設定パラメータの全てが調整部21により設定されてもよく、これらの設定パラメータのうち、少なくとも1つが調整部21により設定されてもよい。
【0030】
図4に示されるように、初期値決定処理においては、まず、調整部21は、上述の設定パラメータの中から、可変パラメータPvを選択する(S201)。選択した可変パラメータPv以外の設定パラメータについては、固定パラメータとし、適宜の値に設定する。以下の説明においては、可変パラメータPvとしてレーザ強度Iが選択されたものとする。
【0031】
次に、調整部21は、選択された可変パラメータPvについて、その上限値、下限値及び変化幅Δを決定し(S202)、可変パラメータPvの値を下限値に設定する(S203)。ここで、調整部21は、制御部20の不図示のメモリに記憶されたテーブルに基づいて、選択された可変パラメータPvの上限値、下限値、変化幅Δを決定してもよい。あるいは、調整部21は、入力部40を通じて、ユーザが入力した値に基づいて、選択された可変パラメータPvの上限値、下限値、変化幅Δを決定してもよい。次に、調整部21が顕微鏡装置10にZスライスを実行させて、取得部22が基準面BPにおけるZスライス画像を取得する(S204)。そして、取得部22は、取得したZスライス画像に基づいて核の数をカウントする(S205)。例えば、取得部22は、Zスライス画像において、輝度の等高線を作製し、一定の輝度以上の部分が核に対応すると判断することができ、核に対応する部分(以下、単に核部分と呼ぶ)の数を計数することで核の数をカウントすることができる。
【0032】
次に調整部21は、可変パラメータPvの値を、変化幅Δだけ変化させて(S206)、可変パラメータPvの値が上限値以下であるかどうかを判定する(S207)。可変パラメータの値が上限値以下である場合(S207:YES)には、調整部21は、ステップS206において変化幅Δだけ変化させた可変パラメータPvの値を用いて、顕微鏡装置10にZスライスを実行させ、取得部22は基準面BPにおけるZスライス画像を再度取得する(S208)。そして、取得部22は、取得したZスライス画像に基づいて核の数をカウントする(S209)。次に、取得部22は、前回のZスライスに基づいて算出された核の数と、今回のZスライスに基づいて算出された核の数とを比較して、これらの変化がゼロであるかどうかを判定する(S210)。なお、ユーザが別の方法により、予め核の数をカウントしている場合には、ステップS210の処理において、取得部22は、ユーザがカウントした核の数と、今回のZスタックに基づいて算出された核の数とが同じであるかどうかを判断してもよい。
【0033】
上述のように、ステップS201において、調整部21はレーザ強度Iを可変パラメータPvとして選択している。この場合には、図5に示されるように、レーザ強度Iを増やしていくと、それに伴って、Zスライスに基づいて算出される核の数は一定値に収束する。これは、レーザ強度Iを増加させることによって、Zスライスによって取得されるZスライス画像が鮮明になり、核の検出精度が上がるからである。しかしながら、レーザ強度Iが、Zスライス画像に含まれる全ての細胞の核が検出できる程度に強くなると、それ以上レーザ強度Iを増加させてもZスライス画像において検出される核の数は一定となる。なお、必要以上に強いレーザ強度のレーザ光を細胞の塊に照射すると、細胞の塊に含まれる細胞が損傷する恐れがある。そこで、前回のZスライスに基づいて算出された核の数と、今回のZスライスに基づいて算出された核の数とを比較して、これらの変化がゼロである場合(S210:YES)には、調整部21は前回のZスライスを実行する際に用いた可変パラメータPvの値を、可変パラメータPvの初期値に決定して(S211)、初期値決定処理を終了する。
【0034】
なお、前回のZスライスに基づいて算出された核の数と、今回のZスライスに基づいて算出された核の数とを比較して、これらの変化がゼロでない場合(S210:NO)には、ステップS206の処理に戻り、調整部21は可変パラメータPvの値を、変化幅Δだけ変化させる(S206)。そして、調整部21は可変パラメータPvの値が上限値以下であるかどうかを再度判定する(S207)。可変パラメータの値が上限値を超える場合(S207:NO)には、ステップS211の処理に進み、調整部21は前回の(最後の)Zスライスを実行する際に用いた可変パラメータPvの値を、可変パラメータPvの初期値に決定して(S211)、初期値決定処理を終了する。または、よりカウントの精度を上げるためには、ステップS202で決めた上限、下限、変化幅Δでパラメータを変化させて、複数枚画像を撮影して、図5下図の様なレーザ強度と核カウントの関係図を実際に作成して、そこから核カウント個数が一定になる最小のレーザ強度Iを初期値に決定して、初期値決定処理を終了してもよい。レーザ強度と核カウントの関係図を表示してユーザがレーザ強度を指定してもよい。
【0035】
このような初期値決定処理を実行することにより、ユーザの熟練度の差にかかわらず、可変パラメータPvの初期値が自動的に決定される。最後に、Pvパラメータの初期値にて撮影したBP面のZスライス画像から、基準の核密度を計算する。核密度とは、Zスライス画像から算出した核の個数を同じZスライス画像から算出した細胞の塊の断面積で割った数値である。一般的なスフェロイド、オルガノイドは核密度は場所に依らず一定であるので、基準の核密度から大きくズレた場合は、適切な画像が撮影できていないと判定をすることができる。S108に進む前に、核密度の適正範囲を決めておく。
【0036】
次に、上述のステップS108の処理(以下、Zスタック実行処理という)について、図6を参照しつつ説明する。まず、焦点面の位置がZスタックの開始位置となるように、調整部21は対物レンズ126のZ位置を調整する(S301)。なお、Zスタックが実行される際には、調整部21は、細胞の塊とウェルWとの境界面(ウェルWの上面)から離れる向きに焦点面のZ位置をずらしていくので、調整部21は、Zスタックの開始位置を、細胞の塊とウェルWとの境界面近傍に設定する。
【0037】
次に、調整部21が顕微鏡装置10にZスライスを実行させ、取得部22は設定されたZ位置におけるZスライス画像を取得する(S302)。取得部22は、取得されたZスライス画像において輝度の等高線を作製して、核部分を弁別するとともに、核部分の輝度の平均値を算出する(S303)。調整部21は、算出された核部分の輝度の平均値に基づいて、次のZスライスにおけるレーザ強度Iを決定する(S304)。上述のように、可変パラメータPvの初期値は、細胞の塊とウェルWとの境界面から大きく離れていない基準面BPにおいて決定されている。1回目のZスライスは、基準面BPにおいて決定された可変パラメータPvの初期値を用いて実行されているので、得られたZスライス画像における核部分の輝度の平均値は十分な大きさとなる。そこで、調整部21は、2回目のZスライスにおけるレーザ強度Iを、1回目のZスライスにおけるレーザ強度Iと同じ値に設定する。
【0038】
次に、取得部22は、取得されたZスライス画像に基づいて、核密度を算出し、算出された核密度が適正範囲内にあるかどうかを判定する(S305)。ここでも、1回目のZスライスは、基準面BPにおいて決定された可変パラメータPvの初期値を用いて実行されているので、算出された核密度は適正範囲内にある。算出された核密度が適正範囲内にある場合に(S305:YES)には、調整部21は、前回行われたZスライスが最後のZ位置に対応するかどうかを判断する(S306)。前回行われたZスライスが最後のZ位置でない場合(S306:No)には、上述のステップS301に戻って、調整部21は、次のZ位置になるように対物レンズ126のZ位置を調整する。そして、再び、調整部21が顕微鏡装置10にZスライスを実行させ、取得部22は設定されたZ位置におけるZスライス画像を取得する(S302)。そして、上述のように、取得部22は、取得されたZスライス画像において輝度の等高線を作製して、核部分を弁別するとともに、核部分の輝度の平均値を算出する(S303)。そして、調整部21は、算出された核部分の輝度の平均値に基づいて、次のZスライスにおけるレーザ強度Iを決定する(S304)。
【0039】
なお、図5において点線で示されるように、焦点面のZ位置が細胞の塊とウェルWとの境界面(ウェルWの上面)から離れるにつれて、徐々に焦点面までレーザ光が届きにくくなり、それにつれて蛍光の輝度が小さくなる。そのため、取得されたZスライス画像において、核部分の輝度の平均値が小さくなることがある。そこで、ステップS304の処理において、核部分の輝度の平均値が前回のZスタックにおける核部分の輝度の平均値よりも一定割合以上小さくなっている場合には、調整部21は、次のZスライスにおけるレーザ強度Iを前回のZスライスにおけるレーザ強度Iよりも大きくすることができる。ここで、制御部20は、核部分の輝度の平均値とレーザ強度Iとの相関に関する情報を、テーブルとして不図示のメモリに保持していてもよい。調整部21は、制御部20の不図示のメモリに記憶されたテーブルを参照して、核部分の輝度の平均値の落ち込みに基づいて、次のZスライスにおけるレーザ強度Iを決定してもよい。あるいは、調整部21は、入力部40を通じて、ユーザが入力した値に基づいて、次のZスライスにおけるレーザ強度Iを決定してもよい。
【0040】
そして、上述のように、取得部22は、取得されたZスライス画像に基づいて、核密度を算出し、算出された核密度が適正範囲内にあるかどうかを判定する(S305)。取得部22は、算出された核密度が適正範囲内にある場合(S305:YES)には、取得されたZスライス画像において、正常に核部分を弁別できていると判断して、上述のようにステップS306に進む。なお、取得部22は、算出された核密度が適正範囲内にあると判断していても、ステップS303、S304において、調整部21が、次のZスライスにおけるレーザ強度Iを前回のZスライスにおけるレーザ強度Iよりも大きくするように判断していることがある。この場合には、調整部21は、レーザ強度Iを前回のZスライスにおけるレーザ強度Iよりも大きくして、顕微鏡装置10に次のZスライスを実行させる。これにより、次のZスライスにおいて、Zスライス画像における核部分の輝度の平均値を大きくすることができる。
【0041】
なお、Zスライス画像における核部分の輝度の平均値が十分でなく、正常に核部分を弁別することできなくなった場合には、算出される核密度の値が適正範囲から外れて、異常な値になってしまう。そこで、取得部22が、算出された核密度が適正範囲内に無いと判断した場合(S305:No)には、調整部21は、レーザ強度Iを次のZスライスで設定する予定であるレーザ強度Iまで強くして、顕微鏡装置10にZスライスを再度実行させる。これにより、再度実行するZスライスにおいて、Zスライス画像における核部分の輝度の平均値を大きくすることができる。
【0042】
上記実施形態にかかる計数装置1において、調整部21及び取得部22が初期値決定処理を実行するができる。これにより、ユーザの熟練度の差にかかわらず、可変パラメータPvの初期値を自動的に決定することができる。
【0043】
以上説明した実施形態は、あくまでも例示であって、請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、上記の実施形態の中で説明された特徴の組み合わせの全てが必須であるとは限らない。また、上記実施形態には種々の変更を加えることが可能である。以下に、実施形態の変更形態について説明する。
【0044】
上記説明においては、細胞の塊の、ウェルWと接触する部分よりも少し上側の、くびれた形状の部分を通るように基準面BPを設定していた。しかしながら本実施形態はそのような態様には限られず、核を弁別可能なZスライス画像が得られる限りにおいて、基準面BPを任意のZ位置に設定しうる。
【0045】
以上の説明において、調整部21は、可変パラメータPvとしてレーザ強度Iを選択していたが、他の設定パラメータを選択することもできる。例えば、アベレージ回数を可変パラメータPvとして設定した場合には、取得部22は、1つのZスライスにおいて、1、2、4、8、16、32回などの回数で取得したZスライス画像をそれぞれ平均化処理し、各回数で取得された平均化処理されたZスライス画像に基づいて核の数をカウントする(S204、S205)。そして、調整部21は、核の数のカウントが一定となるアベレージ回数を取得することにより、可変パラメータPvの初期値を所得することができる(S210、S211)。
【0046】
上記説明において、照明部100は、波長405nm、488nm、561nmの3つのCWレーザ102を備えていたが、CWレーザの数、及び波長は上記実施形態の例には限られず、任意に設定しうる。また、顕微鏡装置10は、光源としてレーザ光源を備えた共焦点レーザ顕微鏡であったが、本実施形態はこのような形態には限られず、例えば、多光子励起顕微鏡であってもよく、薄いシート状に成形した励起光を試料側面から照射する光シート顕微鏡であってもよい。また、例えば、OCT(Optical Coherence Tomography:光干渉断層撮影)でも構わない。
【0047】
上記説明においては、Zスタック実行処理において、取得部22は、取得されたZスライス画像に基づいて、核密度を算出し、算出された核密度が適正範囲内にあるかどうかを判定していた。しかしながら、必ずしも核密度に基づいてステップS305の判断を行う必要はない。例えば、取得部22は、核の周囲長の分布を算出し、その分布が想定される範囲を超えて異常な分布になっていないかどうかを判定してもよい。あるいは、核部分の輝度と、核以外の部分の輝度の比を算出し、輝度の比が一定値以上であるかどうかを判断してもよい。
さらに、上記の説明においては、細胞の構造体として細胞の核を例に挙げて説明してきたが、細胞の構造体は核に限られない。例えば、リソソーム、ゴルジ体、ミトコンドリアなどの細胞小器官(オルガネラ)や、タンパク質、セカンドメッセンジャー、mRNA、遺伝子などでも構わない。
【0048】
上記説明においては、細胞の塊のZ軸方向において、異なる位置における顕微鏡装置100の設定パラメータを調整したが、これに限られない。例えば、細胞の塊のX軸方向において、異なる位置における顕微鏡装置100の設定パラメータを調整しても構わない。また、例えば、細胞の塊のY軸方向において、異なる位置における顕微鏡装置100の設定パラメータを調整しても構わない。もちろん、これらのX軸方向、Y軸方向、Z軸方向を単独の軸方向において、設定パラメータを調整しても構わないし、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向のそれぞれを適宜組み合わせても構わない。例えば、細胞塊の同じZ位置のXY平面の所定位置における設定パラメータを用い、所定位置とは異なる位置での設定パラメータの設定に用いても構わない。
【0049】
上記説明においては、試料Sとして、細胞が一様に分布した細胞の塊(図1参照)を例に挙げて説明してきたが、本実施形態において、測定対象となる試料は、細胞が一様に分布した細胞の塊には限られない。例えば、図7に示されるように、試料Sが、内部に血管を含んだ細胞の塊であってもよい。この場合においても、Zスタック実行処理において、取得部22は、必ずしも核密度に基づいてステップS305の判断を行う必要はない。血管の分布に応じて、核密度が一定にはならないからである。そこで、取得部22は、上述のように、核の周囲長の分布を算出し、その分布が想定される範囲を超えて異常な分布になっていないかどうかを判定してもよい。あるいは、核部分の輝度と、核以外の部分の輝度の比を算出し、輝度の比が一定値以上であるかどうかを判断してもよい。
【0050】
また、さらに、上記の説明においては、細胞の構造体として、細胞の内部の構造を例に挙げて説明したがこれに限られない。例えば、細胞情報の一例として、図8に示されているような、神経細胞における、細胞表面の細胞の構造体である樹状突起スパインの数が挙げられる。本実施形態にかかる計数装置1は、図8に示されているような、複数の樹状突起スパインを含む神経細胞を試料Sとして、樹状突起スパインの数をカウントすることにも適用することができる。なお、樹状突起スパインは、予め適当な染料により染色されている。この場合には、Zスタック実行処理において、取得部22は、必ずしも樹状突起スパインの密度に基づいてステップS305の判断を行う必要はない。樹状突起スパインの、密度は必ずしも一定であるとは限らないからである。そこで、取得部22は、上述の場合と同様に、樹状突起スパインの周囲長の分布を算出し、その分布が想定される範囲を超えて異常な分布になっていないかどうかを判定してもよい。あるいは、樹状突起スパインの輝度と、それ以外の部分の輝度の比を算出し、輝度の比が一定値以上であるかどうかを判断してもよい。
【0051】
なお、画像を測定する目的は、細胞の塊の中の細胞の数を測定する目的に限られない。細胞の塊の中の所定位置の画像を鮮明に取得する目的でも構わない。例えば、細胞の塊の中に所定の細胞の画像を解析することで、細胞の塊の中の細胞の状態を調べる場合において、細胞の塊の状態を適切に評価することできる。例えば、細胞の塊に注入された薬剤の、細胞の塊の内部での薬剤の細胞に対する効果を正しく評価することができる。
【0052】
上述の実施形態において、顕微鏡装置10の各構成要素(照明部100、光学系120、受光部140、可動ステージ160)の構造、配置等は適宜変更しうる。例えば、上記実施形態においては、光学系120について具体的な光学素子を示しつつ説明したが、本教示はこのような形態には限られず、光学系120を構成する光学素子の数、種類、配置等を適宜変更しうる。また、上記実施形態において、計数装置1は、顕微鏡装置10と、顕微鏡装置10の測定条件を設定する測定条件設定装置として機能する調整部21及び入力部40とを備えていた。そのため、上記実施形態においては、調整部21及び入力部40は、同じ計数装置1に含まれる顕微鏡装置10の測定条件を設定する測定条件設定装置として機能していたが、そのような態様には限られない。例えば、調整部21及び入力部40が、独立に設けられた別の顕微鏡装置の測定条件を設定するように構成されていてもよい。
【0053】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態や変形例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。前述の実施形態の各構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、法令が許容される限りにおいて、前述の各実施形態及び変形例などに関するすべての公開広報および米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。前述した実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態及び運用技術等は、すべて本実施形態の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1 計数装置
10 顕微鏡装置
20 制御部
30 表示部
40 入力部
100 照明部
120 光学系
140 受光部
160 可動ステージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8