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特許7380059液晶組成物及び液晶表示素子、並びに化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】液晶組成物及び液晶表示素子、並びに化合物
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/30 20060101AFI20231108BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20231108BHJP
   C09K 19/32 20060101ALI20231108BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20231108BHJP
   C09K 19/14 20060101ALI20231108BHJP
   C09K 19/16 20060101ALI20231108BHJP
   C09K 19/18 20060101ALI20231108BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20231108BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20231108BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20231108BHJP
   C07C 43/225 20060101ALI20231108BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20231108BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
C09K19/30
C09K19/34
C09K19/32
C09K19/12
C09K19/14
C09K19/16
C09K19/18
C09K19/20
C09K19/54 Z
C09K19/38
C09K19/54 C
C09K19/54 D
C07C43/225 C CSP
C07C43/225 D
G02F1/13 500
C08L101/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019188621
(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公開番号】P2021063178
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】間宮 純一
(72)【発明者】
【氏名】栗山 毅
(72)【発明者】
【氏名】須藤 豪
(72)【発明者】
【氏名】杉山 典幸
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-541600(JP,A)
【文献】特表2010-528129(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105376(WO,A1)
【文献】特開2019-6911(JP,A)
【文献】特開2019-116611(JP,A)
【文献】国際公開第2019/184860(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/192476(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/00-19/60
C07C 43/225
G02F 1/13
C08L 101/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
(式中、Rは炭素原子数1~8のアルキル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表し、これらの基中の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立的に-O-又は-S-に置換されてもよく、また、これらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立的にフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく、
環Aは、1,4-シクロへキシレン基又は1,4-シクロヘキセニレン基であり、
は、それぞれ独立的に1,4-シクロへキシレン基、1,4-フェニレン基、2-フルオロ-1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基を表し、これらの基中の1個又は2個以上の水素原子は独立して、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数2~12のアルケニル基で置換されていてもよく、当該アルキル基、アルコキシ基又は当該アルケニル基中の水素原子はハロゲンで置換されていてもよく、Aが複数存在する場合にはそれらは同一でも異なっていてもよく、
は、-OCH-、-CHO-、-CFO-、-OCF-、-CHCH-、-CFCF-又は単結合を表し、
は、0、1又は2を表すが、
但し、mが1であり、環A及びAが1,4-シクロへキシレン基であって且つZが単結合である場合を除く。)で表される化合物を1種又は2種以上含有する液晶組成物。
【請求項2】
一般式(I)中の環Aが1,4-シクロへキシレン基である請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
一般式(I)中のmが1である請求項1又は2に記載の液晶組成物。
【請求項4】
一般式(I)中のAが1,4-シクロへキシレン基、1,4-フェニレン基又は1,4-シクロヘキセニレン基であり、これらの基中の1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基又は炭素原子数2~12のアルケニル基で置換されていてもよく、当該アルキル基、アルコキシ基又は当該アルケニル基中の水素原子はハロゲンで置換されていてもよい請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項5】
更に、一般式(N-01)~一般式(N-05)
【化2】
(式中、R21及びR22は、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基、炭素原子数2~8のアルケニル基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表し、これらの基中の1個又は非隣接の2個以上の-CH-はそれぞれ独立して-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-によって置換されていてもよく、
は、それぞれ独立して、単結合、-CHCH-、-OCH-、-CHO-、-COO-、-OCO-、-OCF-、-CFO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-を表し、
mは、それぞれ独立して、1又は2を表す。)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物(但し、一般式(I)で表される化合物を除く。)を1種又は2種以上含有する請求項1~4のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項6】
更に、一般式(NU-01)~一般式(NU-08)
【化3】
(式中、RNU11、RNU12、RNU21、RNU22、RNU31、RNU32、RNU41、RNU42、RNU51、RNU52、RNU61、RNU62、RNU71、RNU72、RNU81及びRNU82は、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基、炭素原子数2~8のアルケニル基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表し、これらの基中の1個又は非隣接の2個以上の-CH-は、それぞれ独立して-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-によって置換されていてもよい。)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を1種又は2種以上含有する請求項1~5のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項7】
一般式(I)で表される1種又は2種以上の化合物、一般式(N-01)~一般式(N-05)で表される化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物及び一般式(NU-01)~一般式(NU-08)で表される化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物の含有量の合計が80質量%~100質量%である請求項6に記載の液晶組成物。
【請求項8】
更に、一般式(RM-1)
【化4】
(式中、ZM1及びZM2は、それぞれ独立して
【化5】
を表し、XM1~XM5は、それぞれ独立して炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、フッ素原子、水素原子又は
【化6】
を表すが、XM1~XM5のうちの少なくとも1つは、
【化7】
を表し、
M1は、炭素原子数1~12のアルキレン基又は単結合を表し、該アルキレン基中の-CH-は酸素原子同士が直接結合しないものとして酸素原子、-COO-、-OCO-、又は-OCOO-に置き換えられてもよく、
M1は以下の式(R-1)~式(R-15)
【化8】
のいずれかを表し、
M1及びLM2は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CH-、-OCH-、-CHO-、-CO-、-C-、―COO-、-OCO-、―CH=CH-COO-、-COO―CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-OCO-、―COOC-、―OCOC-、―COCO-、―CCOO-、-OCOCH-、―CHCOO-、-CH=CH-、-CF=CH-、-CH=CF-、-CF=CF-、-CF-、-CFO-、-OCF-、-CFCH-、-CHCF-、-CFCF-又は-C≡C-を表し、LM2が複数存在する場合にはそれらは同一でも異なっていてもよく、
M1は、1,4-フェニレン基、1,4-シクロへキシレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基を表すが、これらの基中に含まれる水素原子がフッ素原子、塩素原子、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基、ニトロ基、又は
【化9】
に置換されていてもよく、当該アルキル基又はアルコキシ基中の水素原子はハロゲンで置換されていてもよく、
M1は、0、1又は2を表し、
M1~XM5、SM1、RM1、LM2及びMM1が複数存在する場合にはそれらは同一であっても異なっていてもよい。)で表される重合性化合物を1種又は2種以上含む請求項1~7のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項9】
一般式(I)で表される1種以上の化合物、一般式(N-01)~一般式(N-05)で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上の化合物、一般式(NU-01)~一般式(NU-08)で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上の化合物及び一般式(RM-1)で表される重合性化合物、並びに、任意に含有される酸化防止剤、任意に含有される紫外線吸収剤、任意に含有される光安定剤及び任意に含有される赤外線吸収剤からなる請求項8に記載の液晶組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の液晶組成物を用いた液晶表示素子。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の液晶組成物を用いたアクティブマトリックス駆動用液晶表示素子。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項に記載の液晶組成物を用いたPSA型、VA型又はPSVA型の液晶表示素子。
【請求項13】
一般式(I)
【化10】
(式中、Rは炭素原子数1~8のアルキル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表し、これらの基中の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立的に-O-又は-S-に置換されてもよく、また、これらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立的にフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく、
環Aは、1,4-シクロへキシレン基又は1,4-シクロヘキセニレン基であり、
は、それぞれ独立的に1,4-シクロへキシレン基、1,4-フェニレン基、2-フルオロ-1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基を表し、これらの基中の1個又は2個以上の水素原子は独立して、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数2~12のアルケニル基で置換されていてもよく、当該アルキル基、アルコキシ基又は当該アルケニル基中の水素原子はハロゲンで置換されていてもよく、Aが複数存在する場合にはそれらは同一でも異なっていてもよく、
は、-OCH-、-CHO-、-CFO-、-OCF-、-CHCH-、-CFCF-又は単結合を表し、
は、0、1又は2を表すが、
但し、mが1であり、環A及びAが1,4-シクロへキシレン基であって且つZが単結合である場合を除く。)で表される化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶組成物及びこれを使用した液晶表示素子、並びに化合物に関する。より具体的には、本発明は、誘電率異方性(Δε)が負の値を示す、いわゆるn型液晶組成物及びこれの調製に好適な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、時計、電卓をはじめとして、家庭用各種電気機器、工業用測定機器、自動車用パネル、携帯電話、スマートフォン、ノートPC、タブレットPC、テレビ等に用いられている。液晶表示方式としては、その代表的なものにTN(捩れネマチック)型、STN(超捩れネマチック)型、GH(ゲスト・ホスト)型、IPS(インプレーンスイッチング)型、FFS(フリンジフィールドスイッチング)型、OCB(光学補償複屈折)型、ECB(電圧制御複屈折)型、VA(垂直配向)型、CSH(カラースーパーホメオトロピック)型、FLC(強誘電性液晶)等を挙げることができる。また駆動方式としてもスタティック駆動、マルチプレックス駆動、単純マトリックス方式、TFT(薄膜トランジスタ)やTFD(薄膜ダイオード)等により駆動されるアクティブマトリックス(AM)方式を挙げることができる。これらの表示方式において、IPS型、FFS型、ECB型、VA型、CSH型等は、誘電率異方性が負の値を示す液晶組成物(n型液晶組成物)を用いると有利な特性を示すことが知られている。
【0003】
n型液晶組成物を用いた表示方式には、VA型や更に重合性化合物を液晶相中で重合させ配向を制御したPSA(Polymer Sustained Alignment)型またはPSVA(Polymer Stabili zed Vertival Alignment)型に代表される垂直配向方式と、IPS型やFFS型に代表される水平配向方式とがある。垂直配向方式は、広い視野角、高い透過率、高いコントラスト、速い応答速度に特徴があり、主にTVやモニターなどの大型の表示素子に用いられている。一方、水平配向方式は、広い視野角、高い透過率、低い消費電力及びタッチパネルとの最適性の観点から、例えばスマートフォン、タブレットPC等のモバイル機器で採用されており、更には液晶テレビへの採用も進んでいる。PSA型又はPSVA型の液晶表示素子は、液晶分子のプレチルト角を制御するためにセル内にポリマー構造物を形成するものであり、垂直配向方式の特徴の中でも特に高速応答や高コントラストが知られている。
【0004】
近年、液晶TVの高解像度化、高周波駆動化等が進むなか、高性能液晶デバイスに適し、且つ、各種特性を満足しうる液晶組成物への要求が高まりつつある。しかし、以下の特許文献1~4に記載のような液晶組成物では、未だ改良の余地がある。
【0005】
また、これまで常用されていた、液晶組成物に重合性化合物を含有させた重合性化合物含有液晶組成物では、4Kや8K等の高解像度の液晶TVに対応可能な特性を備えていないという問題がある。具体的には、高解像度の液晶表示素子では、高精細の画素が必要であるため、1画素当たりのサイズが小さい。そのため、配線や遮光部の領域が相対的に増加するため、UV光が大量にカットされ、液晶表示部の開口率が減少して透過率が低下してしまう。
【0006】
特に、垂直配向液晶表示素子(以下、「VA液晶表示素子」と記載する場合がある。)の場合には、閾値電圧を調整しただけでは、光透過性を十分に改善するのが困難である。閾値電圧を低くして印加電圧-透過率の特性を示すV-T曲線を低電圧側へシフトさせることにより、低い電圧条件下での透過率を向上させることができる。しかし、この方法では、VA液晶表示素子のV-T曲線の傾きが急峻にならない上に、最大透過率が高くならないため、低い駆動電圧で高い光透過性を実現することが困難である。
【0007】
そこで、液晶層を構成する液晶組成物について、ベンドの弾性定数(K33)に対するスプレイの弾性定数(K11)の比であるK11/K33の値を調整する方法が考えられる。この方法によれば、VA液晶表示素子のV-T曲線が急峻になり、低い駆動電圧でも光透過率を向上させることができる。
【0008】
さらに、高級機種の液晶TV等では、高周波駆動化が進んでいるため、電圧変化に高速で応答できる液晶組成物の開発が急務である。電圧変化に高速で応答するためには応答速度を支配するパラメータであるγ/K33の値が小さいことが望ましいため、弾性定数K33を大きくすることが考えられる。γは回転粘性を示すパラメータである。
【0009】
以上のことから、液晶組成物が、これらの液晶表示素子に用いられたときに高透過率及び高速応答を示すためには、弾性定数K11が小さく且つ弾性定数K33が大きいことが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2010/084823号
【文献】特開2016-216747号公報
【文献】特開2017-14486号公報
【文献】特許第6403038号公報
【文献】特許第6233550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、液晶組成物において、弾性定数K11及び弾性定数K33は互いに関連性が高いパラメータであるため、弾性定数K11を小さくしつつ弾性定数K33を大きくすることは困難である。そこで、γ/K33を小さくするために、弾性定数K33を大きくするのではなく回転粘性γを小さくすることが考えられる。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、誘電率異方性(Δε)が負の値を示すn型液晶組成物に求められる諸特性を満たしつつ、回転粘性γが十分に小さく、弾性定数K11が小さく、且つ、液晶TV等の液晶デバイスに用いられた際に高速応答及び高透過率を達成しうる液晶組成物、及びそれを用いた液晶表示素子、並びに、当該液晶組成物の調製に好適な化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らが鋭意検討した結果、特定の化学構造を有する化合物を1種又は2種以上含有する液晶組成物により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の液晶組成物は、一般式(I)
【化1】
(式中、Rは炭素原子数1~8のアルキル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表し、これらの基中の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立的に-O-又は-S-に置換されてもよく、また、これらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立的にフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく、
環Aは、1,4-シクロへキシレン基又は1,4-シクロヘキセニレン基であり、
は、それぞれ独立的に1,4-シクロへキシレン基、1,4-フェニレン基、2-フルオロ-1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基を表し、これらの基中の1個又は2個以上の水素原子は独立して、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数2~12のアルケニル基で置換されていてもよく、当該アルキル基、アルコキシ基又は当該アルケニル基中の水素原子はハロゲンで置換されていてもよく、Aが複数存在する場合にはそれらは同一でも異なっていてもよく、
は、-OCH-、-CHO-、-CFO-、-OCF-、-CHCH-、-CFCF-又は単結合を表し、
は、0、1又は2を表すが、
但し、mが1であり、環A及びAが1,4-シクロへキシレン基であって且つZが単結合である場合を除く。)で表される化合物を1種又は2種以上含有することを特徴とする。
【0015】
本発明の液晶表示素子は、上述した液晶組成物を用いたことを特徴とする。
【0016】
本発明の化合物は、一般式(I)
【化2】
(式中、Rは炭素原子数1~8のアルキル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表し、これらの基中の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立的に-O-又は-S-に置換されてもよく、また、これらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立的にフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく、
環Aは、1,4-シクロへキシレン基又は1,4-シクロヘキセニレン基であり、
は、それぞれ独立的に1,4-シクロへキシレン基、1,4-フェニレン基、2-フルオロ-1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基を表し、これらの基中の1個又は2個以上の水素原子は独立して、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数2~12のアルケニル基で置換されていてもよく、当該アルキル基、アルコキシ基又は当該アルケニル基中の水素原子はハロゲンで置換されていてもよく、Aが複数存在する場合にはそれらは同一でも異なっていてもよく、
は、-OCH-、-CHO-、-CFO-、-OCF-、-CHCH-、-CFCF-又は単結合を表し、
は、0、1又は2を表すが、
但し、mが1であり、環A及びAが1,4-シクロへキシレン基であって且つZが単結合である場合を除く。)で表される化合物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の液晶組成物は、上記一般式(I)で表される化合物を含有することにより、誘電率異方性Δεが負の値を示すn型液晶組成物に求められる諸特性を満たしつつ、回転粘性γが十分に小さく、弾性定数K11が小さく、且つ、液晶TV等の液晶デバイスに用いられた際に、高速応答及び高透過率を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
前述のとおり、本願発明は、液晶組成物及びそれを用いた液晶表示素子、並びに、当該液晶組成物の調製に好適な化合物に関する。以下、まず、本発明における液晶組成物の実施の態様について説明する。なお、以下の説明において、「総量」とは「総質量」を意味し、各化合物の含有量の単位「%」とは「質量%」を意味する。
【0019】
<液晶組成物>
本発明の液晶組成物は、以下の一般式(I)で表される化合物を1種又は2種以上含有する。
【化3】
【0020】
一般式(I)中、Rは炭素原子数1~8のアルキル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表す。これらの基中の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立的に-O-又は-S-に置換されてもよく、また、これらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立的にフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよい。Rが炭素原子数1~4のアルコキシ基であることがより好ましい。
【0021】
環Aは、それぞれ独立的に1,4-シクロへキシレン基又は1,4-シクロヘキセニレン基である。安定性の観点から、環Aが1,4-シクロへキシレン基であることが好ましい。
【0022】
は、それぞれ独立的に1,4-シクロへキシレン基、1,4-フェニレン基、2-フルオロ-1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基を表す。これらの基中の1個又は2個以上の水素原子は独立して、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数2~12のアルケニル基で置換されていてもよい。当該アルキル基、アルコキシ基又は当該アルケニル基中の水素原子はハロゲンで置換されていてもよい。Aが複数存在する場合にはそれらは同一でも異なっていてもよい。
【0023】
液晶性の観点から、Aは、シクロへキシレン基、1,4-フェニレン基又は1,4-シクロヘキセニレン基であることが好ましい。このとき、これらの基中の1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基又は炭素原子数2~12のアルケニル基で置換されていてもよい。当該アルキル基、アルコキシ基又は当該アルケニル基中の水素原子はハロゲンで置換されていてもよい。
【0024】
は、-OCH-、-CHO-、-CFO-、-OCF-、-CHCH-、-CFCF-又は単結合を表す。液晶性の観点から、Zが-CHO-、-CHCH-又は単結合であることが好ましく、-CHO-又は単結合であることがより好ましい。
【0025】
は、0、1又は2を表す。溶解性の観点から、mが1であることが好ましい。
【0026】
但し、一般式(I)で表される化合物には、mが1であり、A及びAが1,4-シクロへキシレン基であって且つZが単結合である化合物は含まれない。
【0027】
一般式(I)で表される化合物としては、下記一般式(I-A)~一般式(I-X)で表される化合物が挙げられる。式中、Rは前記一般式(I)におけるRと同じ意味を表す。液晶性の観点から、一般式(I-A)~一般式(I-J)及び一般式(I-L)、(I-M)で表される化合物が好ましい。更に、溶解性の観点から、一般式(I-A)、(I-B)及び(I-K)で表される化合物がより好ましい。
【化4】
【化5】
【化6】

【0028】
本発明では、一般式(I)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、その含有量は1~100質量%である。溶解性の観点から、1~80質量%であることが好ましく、2~50質量%であることが更に好ましい。2~30質量%であることが特に好ましい。
【0029】
液晶組成物の粘度を低減させることを重視する場合には、一般式(I)で表される化合物のRがアルキル基、アルキルオキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基であることが好ましく、アルキル基、アルキルオキシ基であることがより好ましく、アルキルオキシ基であることが特に好ましい。さらに、一般式(I)で表され、Rがアルキル基、アルキルオキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基である化合物の含有率を多くすることが好ましく、下限値として1質量%が好ましく、2質量%がより好ましく、3質量%がより好ましく、4質量%がより好ましい。
【0030】
そして、液晶組成物の粘度を低減させつつ、液晶組成物の対紫外線への安定性も重視する場合には、一般式(I)で表される化合物のRがアルキル基、アルキルオキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基である化合物の含有率を少なくすることが好ましく、上限値として15質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。
【0031】
本発明の液晶組成物は、上記一般式(I)で表される化合物を含有することにより、誘電率異方性Δεが負の値を示すn型液晶組成物に求められる諸特性を満たしつつ、回転粘性γが十分に小さく、弾性定数K11が小さく、且つ、液晶TV等の液晶デバイスに用いられた際に、高速応答及び高透過率を実現することができる。
【0032】
本発明の液晶組成物は、下記一般式(N-01)~一般式(N-05)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を1種類又は2種類以上含有することが好ましい。これらの化合物は、誘電的に負の異方性を有する化合物に該当し、Δεの符号が負で、その絶対値が2より大きい値を示す。なお、化合物のΔεは、25℃において誘電的にほぼ中性の組成物に該化合物を添加した組成物の誘電率異方性の測定値から外挿した値である。
【0033】
本発明の液晶組成物は、下記一般式(N-01)~一般式(N-05)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を1種類又は2種類以上含有することが好ましい。
【化7】
【0034】
一般式(N-01)~一般式(N-05)中、R21及びR22は、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表し、これらの基中の1個又は非隣接の2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-によって置換されていてもよく、Zは、それぞれ独立して、単結合、-CHCH-、-OCH-、-CHO-、-COO-、-OCO-、-OCF-、-CFO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-を表し、mは、それぞれ独立して、1又は2を表す。但し、一般式(I)で表される化合物は除く。
【0035】
一般式(N-01)~一般式(N-05)中、R21は、炭素原子数1~8のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基がより好ましく、炭素原子数2~5のアルキル基が更に好ましい。但し、Zが単結合以外を表す場合は、R21は、炭素原子数1~3のアルキル基が好ましく、炭素原子数2~3のアルキル基がより好ましい。
【0036】
一般式(N-01)~一般式(N-05)中、R22は、炭素原子数1~8のアルキル基又は炭素原子数1~8のアルコキシ基であることが好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~4のアルコキシ基がより好ましく、炭素原子数1~4のアルコキシ基が更に好ましい。
【0037】
一般式(N-01)~一般式(N-05)中、R21及びR22は、アルケニル基である場合は、式(R1)~式(R5)のいずれかで表される基から選ばれることが好ましく、式(R1)又は式(R2)が更に好ましい。各式中の黒点は、環構造中の炭素原子を表す。但し、R21及びR22がアルケニル基である化合物の含有量はできる限り少ない方がよく、含有しない方が好ましい。
【化8】
【0038】
一般式(N-04)中、Zは、それぞれ独立して、単結合、-CHCH-、-OCH-、-CHO-、-COO-、-OCO-、-OCF-、-CFO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-を表すが、単結合、-CHCH-、-OCH-、-CHO-が好ましく、単結合又は-CHO-がより好ましい。mが1のとき、Zは単結合であることが好ましい。mが2のとき、Zは-CHCH-又は-CHO-であることが好ましい。
【0039】
一般式(N-01)~(N-05)で表される化合物のフッ素原子は、同じハロゲン族である塩素原子で置換されていてもよい。但し、塩素原子で置換された化合物の含有量はできる限り少ない方がよく、含有しない方が好ましい。
【0040】
一般式(N-01)~(N-05)で表される化合物の環上に存在する水素原子は、フッ素原子又は塩素原子で置換されていてもよいが、塩素原子は好ましくない。
【0041】
一般式(N-01)~(N-05)で表される化合物は、Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物であることが好ましい。具体的には、R22は、炭素原子数1~8のアルコキシ基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表すことが好ましく、炭素原子数1~4のアルコキシ基が特に好ましい。
【0042】
本発明の液晶組成物は、一般式(N-01)で表される化合物として、一般式(N-01-1)~一般式(N-01-4)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を1種類又は2種類以上含有することが好ましい。式中、R21は先述と同じ意味を表し、R23は、それぞれ独立して、炭素原子数1~4のアルコキシ基を表す。
【化9】
【0043】
本発明の液晶組成物は、一般式(N-01-1)で表される化合物及び一般式(N-01-4)で表される化合物を同時に含有することが好ましい。
【0044】
本発明の液晶組成物は、一般式(N-01-3)で表される化合物及び一般式(N-01-4)で表される化合物を同時に含有することが好ましい。
【0045】
本発明の液晶組成物は、一般式(N-02)で表される化合物として、一般式(N-02-1)~一般式(N-02-4)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を1種類又は2種類以上含有することが好ましい。式中、R21は先述と同じ意味を表し、R23は、それぞれ独立して、炭素原子数1~4のアルコキシ基を表す。
【化10】
【0046】
本発明の液晶組成物は、一般式(N-02-1)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0047】
本発明の液晶組成物は、一般式(N-02-1)で表される化合物及び一般式(N-02-3)で表される化合物を同時に含有することが好ましい。
【0048】
本発明の液晶組成物は、一般式(N-02-1)で表される化合物及び一般式(N-01-4)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0049】
本発明の液晶組成物は、一般式(N-03)で表される化合物として、一般式(N-03-1)で表される化合物を1種類又は2種類以上含有することが好ましい。式中、R21は先述と同じ意味を表し、R23は、炭素原子数1~4のアルコキシ基を表す。
【化11】
【0050】
本発明の液晶組成物は、一般式(N-03-1)で表される化合物及び一般式(N-02-1)で表される化合物を同時に含有することが好ましい。
【0051】
本発明の液晶組成物は、一般式(N-03-1)で表される化合物及び一般式(N-01-4)で表される化合物を同時に含有することが好ましい。
【0052】
本発明の液晶組成物は、一般式(N-03-1)で表される化合物及び一般式(N-01-3)で表される化合物一般式(N-01-4)で表される化合物を同時に含有することが好ましい。
【0053】
本発明の液晶組成物は、一般式(N-04)で表される化合物として、一般式(N-04-1)で表される化合物を1種類又は2種類以上含有することが好ましい。式中、R21は先述と同じ意味を表し、R23は、炭素原子数1~4のアルコキシ基を表す。
【化12】
【0054】
本発明の液晶組成物は、一般式(N-04-1)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0055】
本発明の液晶組成物は、一般式(N-04-1)で表される化合物及び一般式(N-01-4)で表される化合物を同時に含有することが特に好ましい。
【0056】
本発明の液晶組成物は、一般式(N-04-1)で表される化合物及び一般式(N-01-3)で表される化合物及び一般式(N-01-4)で表される化合物を同時に含有することが特に好ましい。
【0057】
本発明の液晶組成物は、一般式(N-04-1)で表される化合物、一般式(N-01-4)で表される化合物及び一般式(N-02-1)で表される化合物を同時に含有することが特に好ましい。
【0058】
本発明の液晶組成物は、一般式(N-04-1)で表される化合物、一般式(N-01-4)で表される化合物及び一般式(N-03-1)で表される化合物を同時に含有することが特に好ましい。
【0059】
本発明の液晶組成物は、一般式(N-04-1)で表される化合物、一般式(N-02-1)で表される化合物及び一般式(N-03-1)で表される化合物を同時に含有することが特に好ましい。
【0060】
本発明の液晶組成物は、一般式(N-04-1)で表される化合物、一般式(N-01-4)で表される化合物、一般式(N-02-1)で表される化合物及び一般式(N-03-1)で表される化合物を同時に含有することが特に好ましい。
【0061】
本発明の液晶組成物は、一般式(N-05)で表される化合物として、式(N-05-1)~式(N-05-3)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を含有してもよい。
【化13】
【0062】
本発明の液晶組成物は、一般式(N-05-1)で表される化合物及び一般式(N-03-1)で表される化合物及び一般式(N-01-1)で表される化合物及び一般式(N-01-2)で表される化合物及び一般式(N-02-1)で表される化合物を同時に含有することが好ましい。
【0063】
本発明の液晶組成物の総量に対して、一般式(N-01)で表される化合物の好ましい含有量の下限値は、0質量%であり、1質量%であり、5質量%であり、10質量%であり、20質量%であり、30質量%であり、40質量%であり、50質量%であり、55質量%であり、60質量%であり、65質量%であり、70質量%であり、75質量%であり、80質量%である。好ましい含有量の上限値は、95質量%であり、85質量%であり、75質量%であり、65質量%であり、55質量%であり、45質量%であり、35質量%であり、25質量%であり、20質量%であり、15質量%であり、10質量%である。
【0064】
本発明の液晶組成物の総量に対して、一般式(N-02)で表される化合物の好ましい含有量の下限値は、0質量%であり、1質量%であり、5質量%であり、10質量%であり、20質量%であり、30質量%であり、40質量%であり、50質量%であり、55質量%であり、60質量%であり、65質量%であり、70質量%であり、75質量%であり、80質量%である。好ましい含有量の上限値は、95質量%であり、85質量%であり、75質量%であり、65質量%であり、55質量%であり、45質量%であり、35質量%であり、25質量%であり、20質量%であり、15質量%であり、10質量%である。
【0065】
本発明の液晶組成物の総量に対して、一般式(N-03)で表される化合物の好ましい含有量の下限値は、0質量%であり、1質量%であり、5質量%であり、10質量%であり、20質量%であり、30質量%であり、40質量%であり、50質量%であり、55質量%であり、60質量%であり、65質量%であり、70質量%であり、75質量%であり、80質量%である。好ましい含有量の上限値は、95質量%であり、85質量%であり、75質量%であり、65質量%であり、55質量%であり、45質量%であり、35質量%であり、25質量%であり、20質量%であり、15質量%であり、10質量%である。
【0066】
本発明の液晶組成物の総量に対して、一般式(N-04)で表される化合物の好ましい含有量の下限値は、0質量%であり、1質量%であり、5質量%であり、10質量%であり、20質量%であり、30質量%であり、40質量%であり、50質量%であり、55質量%であり、60質量%であり、65質量%であり、70質量%であり、75質量%であり、80質量%である。好ましい含有量の上限値は、95質量%であり、85質量%であり、75質量%であり、65質量%であり、55質量%であり、45質量%であり、35質量%であり、25質量%であり、20質量%であり、15質量%であり、10質量%である。
【0067】
本発明の液晶組成物の総量に対して、式(N-05)で表される化合物の好ましい含有量の下限値は、0質量%であり、2質量%であり、5質量%であり、8質量%であり、10質量%であり、13質量%であり、15質量%であり、17質量%であり、20質量%である。好ましい含有量の上限値は、30質量%であり、28質量%であり、25質量%であり、23質量%であり、20質量%であり、18質量%であり、15質量%であり、13質量%である。
【0068】
本発明の液晶組成物は、更に、一般式(N-06)で表される化合物を1種又は2種以上含有してもよい。式中、R21及びR22は先述と同じ意味を表す。
【化14】
【0069】
一般式(N-06)で表される化合物は、種々の物性を調整したい場合に有効であるが、大きな屈折率異方性Δn、高いネマチック相-等方性液体相転移温度TNI、大きな誘電率異方性Δεを得るために使用することができる。
【0070】
本発明の液晶組成物の総量に対して、式(N-06)で表される化合物の好ましい含有量の下限値は、0質量%であり、2質量%であり、5質量%であり、8質量%であり、10質量%であり、13質量%であり、15質量%であり、17質量%であり、20質量%である。好ましい含有量の上限値は、30質量%であり、28質量%であり、25質量%であり、23質量%であり、20質量%であり、18質量%であり、15質量%であり、13質量%であり、10質量%であり、5質量%である。
【0071】
本発明の液晶組成物は、一般式(NU-01)~一般式(NU-08)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を1種又は2種以上含有することが好ましく、一般式(NU-01)~(NU-08)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を1種又は2種以上含有することがより好ましい。
【化15】
【0072】
式中、RNU11、RNU12、RNU21、RNU22、RNU31、RNU32、RNU41、RNU42、RNU51、RNU52、RNU61、RNU62、RNU71、RNU72、RNU81及びRNU82は、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基、炭素原子数2~8のアルケニル基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表し、これらの基中の1個又は非隣接の2個以上の-CH-はそれぞれ独立して-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-によって置換されていてもよい。
【0073】
更に詳述すると、RNU11、RNU12、RNU21、RNU22、RNU31、RNU32、RNU41、RNU42、RNU51、RNU52、RNU61、RNU62、RNU71、RNU72、RNU81及びRNU82は、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基が更に好ましい。応答速度を重視する場合には、少なくとも1個のRNU11、RNU21、RNU41及びRNU51は、炭素原子数2~3のアルケニル基であることが好ましく、上述する式(R2)で表されるアルケニル基が好ましい。
【0074】
アルケニル基を有する化合物は、本発明の液晶組成物の総量に対して、30質量%以下が好ましく、25質量%以下が好ましく、20質量%以下が好ましく、15質量%以下が好ましく、10質量%以下が好ましく、5質量%以下が好ましい。高いVHRを重視する場合には、アルケニル基を有する化合物は10質量%以下が好ましく、5質量%以下が好ましく、1質量%以下が好ましく、含有しないことが好ましい。
式中、RNU11、RNU12、RNU21、RNU22、RNU31、RNU32、RNU41、RNU42、RNU51、RNU52、RNU61、RNU62、RNU71、RNU72、RNU81及びRNU82は、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基、炭素原子数2~8のアルケニル基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表し、これらの基中の1個又は非隣接の2個以上の-CH-はそれぞれ独立して-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-によって置換されていてもよい。
更に詳述すると、RNU11、RNU21、RNU31、RNU41、RNU51、RNU61、RNU71、RNU81は、炭素原子数1~5のアルキル基が特に好ましく、RNU12、RNU22、RNU32、RNU42、RNU52、RNU62、RNU72及びRNU82は、炭素原子数1~5のアルキル基または炭素原子数1~5のアルコキシ基が特に好ましい。
【0075】
本発明の液晶組成物は、一般式(NU-01)で表される化合物及び一般式(NU-02)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0076】
本発明の液晶組成物は、一般式(NU-01)で表される化合物及び一般式(NU-03)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0077】
本発明の液晶組成物は、一般式(NU-03)で表される化合物及び一般式(NU-04)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0078】
本発明の液晶組成物は、一般式(NU-03)で表される化合物及び一般式(NU-05)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0079】
本発明の液晶組成物は、一般式(NU-01)で表される化合物及び一般式(NU-06)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0080】
本発明の液晶組成物は、一般式(NU-01)で表される化合物及び一般式(NU-07)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0081】
本発明の液晶組成物は、一般式(NU-01)で表される化合物及び一般式(NU-08)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0082】
本発明の液晶組成物は、一般式(NU-01)で表される化合物及び一般式(NU-02)で表される化合物及び一般式(NU-04)で表される化合物を含有することが更に好ましい。
【0083】
本発明の液晶組成物は、一般式(NU-01)で表される化合物及び一般式(NU-03)で表される化合物及び一般式(NU-05)で表される化合物を含有することが更に好ましい。
【0084】
本発明の液晶組成物は、一般式(NU-01)で表される化合物及び一般式(NU-02)で表される化合物及び一般式(NU-03)で表される化合物及び一般式(NU-05)で表される化合物を含有することが更に好ましい。
【0085】
一般式(NU-01)で表される化合物の含有量は、1~60質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることが更に好ましい。
【0086】
一般式(NU-02)で表される化合物の含有量は、1~40質量%であることが好ましく、5~25質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることが更に好ましい。
【0087】
一般式(NU-03)で表される化合物の含有量は、1~20質量%であることが好ましく、0~15質量%であることがより好ましく、0~10質量%であることが更に好ましい。
【0088】
一般式(NU-04)で表される化合物の含有量は、1~30質量%であることが好ましく、3~20質量%であることがより好ましく、3~10質量%であることが更に好ましい。
【0089】
一般式(NU-05)で表される化合物の含有量は、1~30質量%であることが好ましく、1~20質量%であることがより好ましく、3~20質量%であることが更に好ましい。
【0090】
一般式(NU-06)で表される化合物の含有量は、1~30質量%であることが好ましく、3~20質量%であることがより好ましく、3~10質量%であることが更に好ましい。
【0091】
一般式(NU-07)で表される化合物の含有量は、1~30質量%であることが好ましく、3~20質量%であることがより好ましく、3~10質量%であることが更に好ましい。
一般式(NU-08)で表される化合物の含有量は、1~30質量%であることが好ましく、3~20質量%であることがより好ましく、3~10質量%であることが更に好ましい。
【0092】
本発明の液晶組成物は、一般式(I)で表される1種又は2種以上の化合物を含有し、更に一般式(N-01)~一般式(N-05)で表される化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有し、更に一般式(NU-01)~(NU-08)で表される化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有することが好ましく、これらの含有量の合計の上限値は、99質量%、98質量%、97質量%、96質量%、95質量%、94質量%、93質量%、92質量%、91質量%、90質量%、89質量%、88質量%、87質量%、86質量%、85質量%、84質量%であることが好ましく、これらの含有量の合計の下限値が、78質量%、80質量%、81質量%、83質量%、85質量%、86質量%、87質量%、88質量%、89質量%、90質量%、91質量%、92質量%、93質量%、94質量%、95質量%、96質量%、97質量%、98質量%、99質量%であることが好ましい。
【0093】
本発明の液晶組成物は、更に、重合性化合物を含有することもできる。これにより、PSAモード、PSVAモード、PSモード用等の液晶組成物として使用することができる。この場合、重合性化合物は0.01~2質量%含有することが好ましい。
【0094】
更に詳述すると、本発明の液晶組成物に、一般式(RM-1)で表される重合性化合物を1種又は2種以上含有することが好ましい。
【化16】
【0095】
式中、ZM1及びZM2は各々独立して
【化17】
を表し、XM1~XM5は、それぞれ独立して炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、フッ素原子、水素原子又は
【化18】
を表すが、ZM1及びZM2中のXM1~XM5のうちの少なくとも1つは、
【化19】
であることが好ましい。
【0096】
M1は、炭素原子数1~12のアルキル基、又は単結合を表し、該アルキル基中のメチレン基は酸素原子同士が直接結合しないものとして酸素原子、-COO-、-OCO-、又は-OCOO-に置き換えられてもよい。
【0097】
M1は以下の式(R-1)~式(R-15)のいずれかを表すが、式(R-1)又は式(R-2)を表すことが好ましい。
【化20】
【0098】
式中、LM1及びLM2はお互い独立して、単結合、-O-、-CH-、-OCH-、-CHO-、-CO-、-C-、―COO-、-OCO-、―CH=CH-COO-、-COO―CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-OCO-、―COOC-、―OCOC-、―COCO-、―CCOO-、-OCOCH-、―CHCOO-、-CH=CH-、-CF=CH-、-CH=CF-、-CF=CF-、-CF-、-CFO-、-OCF-、-CFCH-、-CHCF-、-CFCF-又は-C≡C-を表し、LM2が複数存在する場合にはそれらは同一でも異なっていてもよいが、単結合、-OCH-、-CHO-、-C-、―COO-、-OCO-、―CH=CH-COO-、-COO―CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-OCO-、―COOC-、―OCOC-、―COCO-、―CCOO-、-CFO-、-OCF-、又は-C≡C-が好ましく、単結合、-C-、―COO-、-OCO-、―CH=CH-COO-、-COO―CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-OCO-、―COOC-、―OCOC-又は―CCOO-がより好ましい。
【0099】
存在するMM1は、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基を表し、これらの基中に含まれる水素原子がフッ素原子、塩素原子、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基、ニトロ基、又は
【化21】
に置換されていてもよく、当該アルキル基又はアルコキシ基中の水素原子はハロゲンで置換されていてもよい。MM1が複数存在する場合はそれらは同一でも異なっていてもよい。MM1は、好ましくは、1,4-フェニレン基であるか、当該基中に含まれる水素原子がフッ素原子、又は炭素原子数1~8のアルキル基又は炭素原子数1~8のアルコキシ基に置換されているものがよい。
【0100】
M1は0、1又は2を表すが、0又は1が好ましい。
【0101】
更に詳述すると、重合性化合物である一般式(RM-1)で表される化合物として、具体的に以下の一般式(RM-1A)で表される化合物が挙げられる。
【化22】
【0102】
式中、RM1及びSM1は、一般式(RM-1)中のRM1及びSM1と同じ意味を表し、XM1~XM8は水素、フッ素又は、
【化23】
を表す。
【0103】
一般式(RM-1A)で表される化合物において、上記のビフェニル骨格の構造は、非置換であるか、或いは、式(IV-11)~式(IV-14)であることが好ましく、非置換又は式(IV-11)であることがより好ましい。
【化24】
【0104】
非置換又は式(IV-11)~式(IV-14)で表されるビフェニル骨格を含む重合性化合物を含有した液晶組成物を用いると、PSAモード、PSVAモード、PSモード等の液晶表示素子中の配向規制力が最適となり、良好な配向状態が得られる。
【0105】
重合性化合物である一般式(RM-1A)で表される化合物として、具体的に以下の式(M1-1)~式(M1-4)で表される化合物が好ましい。
【化25】
【0106】
また、一般式(RM-1)で表される化合物として、一般式(RM-1B)で表される化合物も挙げられる。
【化26】
【0107】
式中、RM1、SM1、LM1、LM2、MM1及びmM1は、一般式(RM-1)中のRM1、SM1、LM1、LM2、MM1及びmM1と同じ意味を表し、XM1~XM5は水素、フッ素、又は
【化27】
を表す。
【0108】
重合性化合物である一般式(RM-1B)で表される化合物として、具体的に以下の式(M1-5)~式(M1-22)で表される化合物が好ましく、式(M1-5)~式(M1-21)で表される化合物がより好ましい。
【化28】
【化29】
【化30】
【0109】
上述した一般式(RM-1)で表される重合性化合物は、重合速度が十分に速く、液晶組成物に含浸されたときに析出しづらく、その残留量を低減することができる。そのため、一般式(I)で表される化合物と重合性化合物である一般式(RM-1)で表される化合物を同時に含有する重合性化合物含有液晶組成物は、製造のためのエネルギーコストの最適化及び削減によって、生産効率を向上することができる。そして、上記重合性化合物含有液晶組成物を用いた液晶表示子において、配向不良や焼き付き等の表示不良がない又は抑制された、優れた表示品位を得ることができ、更に、高い電圧保持率(VHR)と所望のプレチルト角とを両立することができる。
【0110】
更に、本発明の液晶組成物は、特許文献5(特許第6233550号公報)の段落0236~段落0509に記載の誘電率異方性が正の化合物を1種又は2種以上含有することができる。更に好ましくは、ターフェニル構造又はテトラフェニル構造を有し、誘電率異方性Δεが+2より大きい化合物が好ましい。なお、化合物のΔεは、25℃において誘電的にほぼ中性の組成物に該化合物を添加した組成物の誘電率異方性の測定値から外挿した値である。該化合物は、例えば、低温での溶解性、転移温度、電気的な信頼性、屈折率異方性などの所望の性能に応じて組み合わせて使用するが、特に、重合性化合物を含有された液晶組成物中の重合性化合物の反応性を加速させることができる。
【0111】
ターフェニル構造又はテトラフェニル構造を有し、誘電率異方性Δεが+2より大きい化合物は、本発明の液晶組成物の総量に対して、好ましい含有量の下限値は、0.1質量%であり、0.5質量%であり、1質量%であり、1.5質量%であり、2質量%であり、2.5質量%であり、3質量%であり、4質量%であり、5質量%であり、10質量%である。好ましい含有量の上限値は、本発明の液晶組成物の総量に対して、例えば本発明の一つの形態では20質量%であり、15質量%であり、10質量%であり、9質量%であり、8質量%であり、7質量%であり、6質量%であり、5質量%であり、4質量%であり、3質量%である。
【0112】
本発明の液晶組成物は、特許文献5(特許第6233550号公報)の段落0624~段落0642に記載の誘電率異方性がほぼ中性(Δεが-2~+2)の化合物を1種類又は2種類以上含有することができる。
【0113】
本発明の液晶組成物が重合性化合物を含む場合に、重合開始剤が存在しなくても重合は進行するが、重合を促進するために重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤としては、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、アシルフォスフィンオキサイド類等が挙げられる。
【0114】
本発明の液晶組成物は、上述の化合物以外に、通常のネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤又は赤外線吸収剤等を含有してもよい。
【0115】
酸化防止剤として、一般式(H-1)~一般式(H-4)で表されるヒンダードフェノールが挙げられる。
【化31】
【0116】
一般式(H-1)~一般式(H-3)中、RH1は、それぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基又は炭素原子数2~10のアルケニルオキシ基を表すが、これらの基中に存在する1個の-CH-又は非隣接の2個以上の-CH-はそれぞれ独立的に-O-又は-S-に置換されてもよく、また、これらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立的にフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよい。更に具体的には、炭素原子数2~7のアルキル基、炭素原子数2~7のアルコキシ基、炭素原子数2~7のアルケニル基又は炭素原子数2~7のアルケニルオキシ基であることが好ましく、炭素原子数3~7のアルキル基又は炭素原子数2~7のアルケニル基であることが更に好ましい。
【0117】
一般式(H-4)中、MH4は炭素原子数1~15のアルキレン基(該アルキレン基中の1つ又は2つ以上の-CH-は、酸素原子が直接隣接しないように、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-に置換されていてもよい。)、-OCH-、-CHO-、-COO-、-OCO-、-CFO-、-OCF-、-CFCF-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-C≡C-、単結合、1,4-フェニレン基(1,4-フェニレン基中の任意の水素原子はフッ素原子により置換されていてもよい。)又は1,4-シクロヘキシレン基を表すが、炭素原子数1~14のアルキレン基であることが好ましく、揮発性を考慮すると炭素原子数は大きい数値が好ましいが、粘度を考慮すると炭素原子数は大き過ぎない方が好ましいことから、炭素原子数2~12が更に好ましく、炭素原子数3~10が更に好ましく、炭素原子数4~10が更に好ましく、炭素原子数5~10が更に好ましく、炭素原子数6~10が更に好ましい。
【0118】
一般式(H-1)~一般式(H-4)中、1,4-フェニレン基中の1個又は非隣接の2個以上の-CH=は-N=によって置換されていてもよい。また、1,4-フェニレン基中の水素原子はそれぞれ独立的に、フッ素原子又は塩素原子で置換されていてもよい。
【0119】
一般式(H-2)および一般式(H-4)の中の、1,4-シクロヘキシレン基中の1個又は非隣接の2個以上の-CH-は-O-又は-S-によって置換されていてもよい。また、1,4-シクロヘキシレン基中の水素原子はそれぞれ独立的に、フッ素原子又は塩素原子で置換されていてもよい。
【0120】
更に具体的には、例えば、式(H-11)~式(H-15)が挙げられる。
【化32】
【0121】
本発明の液晶組成物は、酸化防止剤を含有する場合、その下限は10質量ppmが好ましく、20質量ppmが好ましく、50質量ppmが好ましく、その上限は10000質量ppmであるが、1000質量ppmが好ましく、500質量ppmが好ましく、100質量ppmが好ましい。
【0122】
本発明の液晶組成物は、誘電率異方性Δεが負の値を示すn型液晶組成物に求められる諸特性を満たしつつ、回転粘性γが十分に小さく、弾性定数K33が大きく、弾性定数K11が小さい。回転粘性γと弾性定数K33は高速応答性に寄与し、弾性定数K11は透過性に寄与する。そのため、本発明の液晶組成物は、液晶TV等の液晶デバイスに用いられた際に、高速応答及び高透過率を実現することができる。
【0123】
<液晶表示素子>
本発明の液晶組成物を用いた液晶表示素子は、高速応答及び高透過率を両立させた有用なものであり、特に、アクティブマトリックス駆動用液晶表示素子に有用であり、VAモード、PSVAモード、PSAモード、IPSモード又はECBモード用液晶表示素子に適用できる。中でも、本発明の液晶組成物は、VAモード、PSVAモード又はPSAモードの液晶表示素子に好適である。
【0124】
本発明の液晶表示素子は、対向に配置された第1の基板及び第2の基板と、前記第1の基板又は前記第2の基板に設けられる共通電極と、前記第1の基板又は前記第2の基板に設けられ、薄膜トランジスタを有する画素電極と、前記第1の基板と第2の基板間に設けられる液晶組成物を含有する液晶層と、を有することが好ましい。必要により前記液晶層と当接するように第1の基板及び/又は第2の基板の少なくとも一つの基板の対向面側に、液晶分子の配向方向を制御する配向膜を設けてもよい。該配向膜としては、液晶表示素子の駆動モードに併せて、垂直配向膜や水平配向膜など適宜選択することができ、ラビング配向膜(例えば、ポリイミド)又は光配向膜(分解型ポリイミドなど)などの公知の配向膜を使用することができる。更に、カラーフィルターを、第1の基板又は第2の基板上に適宜設けてもよく、また前記画素電極や共通電極上にカラーフィルターを設けることができる。
【0125】
本発明の液晶表示素子の各部材、製造方法は特に限定されるものではなく、一般的な部材や製造方法を用いて液晶表示素子を構成、製造することができる。
【0126】
本発明の液晶組成物が重合性化合物を含有する場合、当該重合性化合物を重合させる方法は特に限定されるものではない。ただし、液晶の良好な配向性能を得るためには、適度な重合速度で重合することが望ましいので、紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を単一又は併用又は順番に照射することによって重合させる方法が好ましい。紫外線を使用する場合、偏光光源を用いてもよいし、非偏光光源を用いてもよい。また、液晶組成物を2枚の基板間に挟持させた状態で重合を行う場合には、少なくとも照射面側の基板は活性エネルギー線に対して適当な透明性が与えられていなければならない。また、光照射時にマスクを用いて特定の部分のみを重合させた後、電場や磁場又は温度等の条件を変化させることにより、未重合部分の配向状態を変化させて、更に活性エネルギー線を照射して重合させるという手段を用いてもよい。特に紫外線露光する際には、液晶組成物に直流電界又は交流電界を印加しながら紫外線露光することが好ましい。なお、印加する交流電界は、周波数1Hz~10kHzの交流が好ましく、周波数60Hz~10kHzがより好ましく、電圧は液晶表示素子の所望のプレチルト角に依存して選ばれる。つまり、印加する電圧により液晶表示素子のプレチルト角を制御することができる。PSA型又はPSVA型の液晶表示素子においては、配向安定性及びコントラストの観点からプレチルト角を80度~89.9度に制御することが好ましい。
【0127】
PSA型又はPSVA型の液晶表示素子においては、素子の製造後に重合性化合物が重合せずにそのまま残存しているとIS(焼き付き)が発生する。この残存している重合性化合物の量は20ppm以下が好ましく、15ppm以下が更に好ましく、10ppm以下が特に好ましく、検出下限以下又は0が特に好ましい。
【0128】
本発明の液晶組成物に含まれる重合性化合物を重合させる際に使用する紫外線又は電子線等の活性エネルギー線の照射時の温度は特に制限されることはない。例えば、配向膜を有する基板を備えた液晶表示素子に本発明の液晶組成物を適用する場合は、前記液晶組成物の液晶状態が保持される温度範囲内であることが好ましい。すなわち、15~50℃で重合させることが好ましい。
【0129】
紫外線を発生させるランプとしては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等を用いることができ、USHIO社の超高圧UVランプ、TOSHIBA社の蛍光形紫外線ランプが好ましい。また、照射する紫外線の波長としては、液晶組成物の吸収波長域でない波長領域の紫外線を照射することが好ましく、必要に応じて、より短波長側の紫外線をカットして使用することが好ましい。照射する紫外線の強度は、0.1mW/cm~100W/cmが好ましく、2mW/cm~50W/cmが更に好ましい。照射する紫外線のエネルギー量は、適宜調整することができるが、10mJ/cm~500J/cmが好ましく、100mJ/cm~200J/cmが更に好ましい。
【0130】
<化合物の製造方法>
本発明の液晶組成物を調製する際、上記一般式(I)で表される化合物、より具体的には、上記一般式(I-A)~一般式(I-X)で表される化合物が好適である。一般式(I)で表される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。勿論、本発明の趣旨及び適用範囲は、これらの製造例によって制限されるものではない。
【0131】
(製造方法1)一般式(I-A)、(I-B)、(I-O)及び(I-P)で表される化合物の合成方法
製造方法1は、以下の式で表される合成方法である。一般式(I-Z)は、上述した一般式(I-A)、(I-B)、(I-O)及び(I-P)を含む。
【化33】
【0132】
上記式中、R、Ai1、及びmi1は一般式(I)におけるR、A及びmを表し、Xi1は塩素、臭素、よう素、ベンゼンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基又は水酸基を表す。
【0133】
一般式(S-1)で表される化合物に、一般式(S-2)で表される化合物と炭酸カリウム等の塩基とを反応させることにより、一般式(I-Z)で表される目的化合物、すなわち、一般式(I-A)、(I-B)、(I-O)及び(I-P)で表される目的化合物を得ることができる。
【0134】
(製造方法2)一般式(I-E)で表される化合物の合成方法
製造方法2は、以下の式で表される合成方法である。
【化34】
【0135】
まず、4-ブロモ-1-ヨードベンゼンとマグネシウムによりグリニャール試薬を調製した後、メチルシクロヘキサノンと反応させる。得られた化合物をp-トルエンスルホン酸によって脱水した後、2-メチル-3-ブチン-2-オールと、反応触媒としてテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムと、塩基としてトリエチルアミンとを用いて薗頭反応を行う。更に加熱によってtert-ブチル基を脱保護してアセチレン化合物を得た後、式(S-3)で表される化合物を加えて、再度、薗頭反応を行う。得られた化合物を、撹拌装置を備えたオートクレーブ容器に入れて、5%パラジウムカーボン(含水品)と、溶媒としてテトラヒドロフランを加えて、0.3MPaの水素雰囲気下で還元反応(室温、8時間)を行う。得られた化合物を取り出してtert-ブトキシカリウムを用いて異性化反応を行った後、再結晶による精製を行うことにより、一般式(I-E)で表される目的化合物を得ることができる。
【0136】
(製造方法3)一般式(I-I)で表される化合物の合成方法
製造方法3は、以下の式で表される合成方法である。
【化35】
【0137】
4-ブロモ-1-クロロ-3-フルオロベンゼン及びマグネシウムによりグリニャール試薬を調製した後、メチルシクロヘキサノンと反応させる。得られた化合物をp-トルエンスルホン酸によって脱水した後、式(S-4)で表される化合物を加え、その後、テトラヒドロフラン溶媒下で鈴木カップリング反応を行うことにより、一般式(I-I)で表される目的化合物を得ることができる。
【0138】
(製造方法4)一般式(I-L)で表される化合物の合成方法
製造方法4は、以下の式で表される合成方法である。
【化36】
【0139】
上述した製造方法3で得られた一般式(I-I)で表される化合物を、撹拌装置を備えたオートクレーブ容器に入れて、5%パラジウムカーボン(含水品)と、溶媒としてテトラヒドロフランとを加え、0.3MPaの水素雰囲気下で還元反応(室温、8時間)を行う。得られた化合物を取り出し、tert-ブトキシカリウムを用いた異性化反応を行った後、再結晶による精製を行うことにより、一般式(I-L)で表される目的化合物を得ることができる。
【実施例
【0140】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は「質量%」を意味する。
【0141】
実施例において化合物の記載について以下の略号を用いる。
(側鎖)
-n -C2n+1 炭素数nの直鎖状のアルキル基
n- C2n+1- 炭素数nの直鎖状のアルキル基
-On -OC2n+1 炭素数nの直鎖状のアルコキシ基
nO- C2n+1O- 炭素数nの直鎖状のアルコキシ基
-V -CH=CH
V- CH=CH-
-V1 -CH=CH-CH
1V- CH-CH=CH-
-F -F
-OCF3 -OCF
(連結基)
-1O- -CH-O-
-O1- -O-CH
-2- -CH-CH
-COO- -COO-
-OCO- -OCO-
- 単結合
(環構造)
【化37】
【0142】
実施例中、測定した特性は以下のとおりである。各物性値は、特別の記載がない限り、電子情報技術産業協会規格 JEITA ED-2521B 2009年3月改正 社団法人 電子情報技術産業協会発行 に記載の方法に基づいて測定した。
Tni:ネマチック相-等方性液体相転移温度(℃)
Δn:20℃における屈折率異方性
Δε:20℃における誘電率異方性
γ:20℃における回転粘性(mPa・s)
11:20℃におけるスプレイの弾性定数(pN)
33:20℃におけるベンドの弾性定数(pN)
VHR:313nmの照度3mW/cmのUV光を60分照射した後、1V、60Hz、60℃で測定したときの電圧保持率(%)
【0143】
<1.化合物の調製及び評価>
以下の実施例において、水素圧は、大気圧を0MPaとした場合の圧力を意味する。化合物の純度は、GCによって分析した。分析条件は以下の通りである。
(GC分析条件)
カラム:Agilent Technologies,J&W Column DB-1HT,15m×0.25mm×0.10μm
温度プログラム:100℃(1分間)-(20℃/分間)-250℃-(10℃/分間)-380℃-(7℃/分間)-400℃(2.64分間)
注入口温度:350℃
検出器温度:400℃
【0144】
[実施例1]
以下の式で表される製造方法によって、式(1)で表される目的化合物を得た。
【化38】
【0145】
まず、窒素雰囲気下で、撹拌装置、温度計及び冷却管を備えた反応容器に、trans-4-メチルシクロヘキシルメタノール84gと、4-エトキシ-2,3-ジフロロフェノール125gと、トリフェニルフォスフィン200gと、テトラヒドロフラン700mLとを加えて攪拌し、-10℃まで冷却した。そこに、アゾジカルボキシルジイソプロピル144gを滴下にて添加し、-10℃で1時間攪拌した後、室温まで昇温し、4時間攪拌した。次に、得られた溶液を0℃まで冷却し、水30mLを加えた後、溶媒を減圧留去し、得られた残渣にヘキサン1260mL、トルエン140mL、メタノール700mL及び水50mLを加えて有機層を分離し、水/メタノール(体積比2/1)1050mLで2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。得られた溶液を濃縮し、化合物の粗体154gを得た。その後、アセトン/メタノール混合溶媒を用いて再結晶を繰り返すことで、式(1)で表される化合物である1-エトキシ-2,3-ジフルオロ-4-(trans-4-メチルシクロヘキシルメトキシ)ベンゼン100gを得た。
【0146】
次に、得られた式(1)で表される化合物を評価した。結果は、以下のとおりである。
GC純度:99.8%
相転移温度(℃):Cr 34 N
1H-NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:0.88(s,3H),0.90-1.90(m,13H),3.76-3.77(m,2H),3.96-3.99(m,2H),6.58-6.64(m,2H)
【0147】
[実施例2]
以下の式で表される製造方法によって、式(2)で表される目的化合物を得た。
【化39】
【0148】
窒素雰囲気下で、撹拌装置、温度計及び冷却管を備えた反応容器に、(trans,trans-4’-メチルビシクロヘキシル-4-イル)メタノール137gと、4-エトキシ-2,3-ジフロロフェノール125gと、トリフェニルフォスフィン200gとテトラヒドロフラン700mLとを加えて攪拌し、-10℃まで冷却した。アゾジカルボキシルジイソプロピル144gを滴下にて添加し、-10℃で1時間攪拌後、室温まで昇温し、4時間攪拌した。次に、得られた溶液を0℃まで冷却し、水30mLを加えた後、溶媒を減圧留去し、得られた残渣にヘキサン1260mL、トルエン140mL、メタノール700mL及び水350mLを加えて有機層を分離し、水/メタノール(体積比2/1)1050mLで2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。得られた溶液を濃縮し、化合物の粗体200gを得た。その後、アセトン/メタノール混合溶媒を用いて再結晶を繰り返すことで、式(2)で表される化合物である、trans,trans-4-(4-エトキシ-2,3-ジフルオロフェノキシメチル)-4’-メチルビシクロヘキシル131gを得た。
【0149】
次に、得られた式(2)で表される化合物を評価した。結果は、以下のとおりである。
GC純度:99.8%
相転移温度(℃):Cr 66 N 110 Iso
1H-NMR(溶媒:重クロロホルム):0.86(s,3H),1.34(s,3H),0.84-2.08(m,20H),3.74-3.76(m,2H),4.02-4.08(m,2H),6.59-6.61(m,2H)
【0150】
[実施例3]
以下の式で表される製造方法によって、式(3)で表される目的化合物を得た。
【化40】
【0151】
まず、窒素雰囲気下で、撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、マグネシウム4.2g、テトラヒドロフラン10mLを加え、4-ブロモ-1-クロロベンゼン30gを含有するテトラヒドロフラン溶液100mLを滴下した。滴下終了後、室温で2時間反応させた後、メチルシクロヘキサノン20gを含有するテトラヒドロフラン溶液60mLを滴下した。滴下終了後、室温で3時間反応させた。反応終了後、反応液を5℃以下に冷却し、10%塩酸150mLを加え反応を停止させた後、トルエン50mLを加え、更に有機層を飽和炭酸水素ナトリウム及び飽和食塩水で洗浄し溶媒を留去することにより、式(S-3)で表される化合物36gを得た。
【0152】
次いで、撹拌装置、ディーンスターク水分計、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、得られた式(S-3)で表される化合物36gと、トルエン180mLと、p-トルエンスルホン酸・1水和物1.5gとを加え、還流下で4時間加熱した。反応終了後、反応容器を冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム150mLを加え、有機層を濃縮することにより、式(S-4)で表される化合物28gを得た。
【0153】
続いて、窒素雰囲気下で、撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、得られた式(S-4)で表される化合物15gと、4-エトキシ-2,3-ジフロロ-フェニルホウ酸16gと、炭酸カリウム61gと、テトラヒドロフラン250mLと、水25mLとを加えて撹拌する。次いで、触媒としてテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム1.6gを室温で添加した後、加熱還流を行い4時間撹拌した。放冷した後、水200mL及びトルエン250mLを加えて分液し、更に有機層を水250mL及び飽和食塩水250mLにて洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した後、有機溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、化学式(3)で表される化合物である4-フェニル(4-エトキシー2,3-ジフルオロフェニル)-1-メチルシクロヘキシル-3-エン16gを得た。
【0154】
次に、得られた化学式(3)で表される化合物を評価した。結果は、以下のとおりである。
GC純度:99.9%
相転移温度(℃):Cr 124 N 139 Iso
1H-NMR(溶媒:重クロロホルム):δ: 0.95(d,3H),1.34(t,3H),1.45(m,2H),1.63(s,1H),1.93-2.19(m,4H),4.12(q,2H),5.90-5.97(m,1H),7.08-7.12(m,1H),7.49-7.57(m,5H)
13C-NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:14.7,20.9,28.3,30.2,30.4,35.2,64.6,110.0,118.5,122.3,123.6,126.8,127.7,135.5,135.7, 141.1,148.8
【0155】
[実施例4]
以下の式で表される製造方法によって、化学式(4)で表される目的化合物を得た。
【化41】
【0156】
まず、撹拌装置を備えたオートクレーブ容器に、実施例3で合成した化学式(3)で表される化合物10gと、5%パラジウムカーボン1gと、テトラヒドロフラン150mLと、エタノール20mLとを加え、0.3MPaの水素にて還元反応(室温、8時間)を行った。得られた反応液を、ろ過剤を用いてろ過した後、有機溶媒を減圧留去した。次いで、窒素雰囲気下で、撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、得れた反応物と、N.N-ジメチルホルムアミド100mLと、tert-ブトキシカリウム2gとを加え、90℃で4時間攪拌させた。放冷した後、水200mL及びトルエン100mLを加えて分液し、更に有機層を水250mL及び飽和食塩水250mLにて洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した後、有機溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー及び酢酸エチルによる再結晶にて精製することにより、化学式(4)で表される化合物である4-エトキシー2,3-ジフルオロー4’-(trans-4-メチルシクロヘキシル)ビフェニル16gを得た。
【0157】
次に、得られた化学式(4)で表される化合物を評価した。結果は、以下のとおりである。
GC純度:99.6%
相転移温度(℃):Cr 94 N 98 Iso
1H-NMR(溶媒:重クロロホルム):δ: 0.87(d,3H),1.32(t,3H),1.38-1.47(m,3H),1.59-1.63(m,4H),1.83-1.87(m,2H),2.70-2.73(m,1H),4.12(q,2H),5.90-5.97(m,1H),7.08-7.12(m,1H),7.34-7.38(m,2H),7.49-7.57(m,3H)
13C-NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:14.7,20.9,28.3,30.2,30.4,31.6,33.2,64.6,110.0,118.5,122.3,123.6,126.8,127.7,135.5,135.7, 141.3,148.6
【0158】
<2.液晶組成物の調製及び評価>
まず、実施例4~13の液晶組成物(LC-1)~(LC-9)及び比較例1~4の液晶組成物(C-1)~(C-4)を調製し、その物性値を測定した。これらの液晶組成物の成分比を表1~3に示し、その物性値を表4~6に示す。
【0159】
次に、これらの液晶組成物を、それぞれセルギャップ3.0μmでホメオトロピック配向を誘起するポリイミド配向膜を塗布したITO付きセルに真空注入法で注入することにより、VA液晶表示素子を得た。
【0160】
得られた実施例4~13の液晶組成物を用いたVA液晶表示素子について、光学評価装置(OCA-100)を用いて電気光学特性評価試験を行った。このときのV-Tカーブより駆動電圧及び透過率を測定した。さらに、弾性定数及び低温保存性を測定した。
応答速度: 応答速度は、Vonは5V、Voffは0.5Vとし、測定温度は20℃で、測定機器としてAUTRONIC-MELCHERS社のDMS703を用いて測定した。表4~6中の◎印は応答が十分速いことを意味し、〇印は応答が速いことを意味し、×印は応答が遅いことを意味する。
駆動電圧: VAモードの液晶表示素子に60Hzの矩形波を印加して応答時間とVTカーブを測定した。測定してVTカーブより透過率が90%となる電圧を駆動電圧とした。〇印は適切な駆動電圧であることを意味する。
透過率: セルに電圧を0~10V印加したときの透過率を測定した。表4~6中の〇印は透過率が十分高いことを意味し、×印は透過率が低いことを意味する。
弾性定数: 各液晶組成物のスプレイおよびベンド弾性定数は、弾性定数測定システム(東陽テクニカ社製、「EC-1型」)を用いて、20℃で測定した。
低温保存性: 実施例14~49の重合性化合物含有液晶組成物を-20℃で240時間冷却した後、重合性化合物の析出の有無を観察し、低温保存性の指標とした。表4~6中の〇印は析出がなく、輝点等の表示不良を引き起こさないことを意味し、△印はスメクチック性であることを意味し、×印は析出していることを意味する。
【0161】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0162】
表4~6に示すように、実施例5~7の液晶組成物は、比較例1の液晶組成物と比較して、回転粘性γ及び弾性定数K11が小さく、弾性定数K33に対する回転粘性γの比であるγ/K33の値が小さく、電気光学効果の急峻性を支配するパラメータであるK11/K33が充分に小さく、更に、応答速度及び透過率に優れることが確認された。
【0163】
また、実施例8~10の液晶組成物と比較例2の液晶組成物とを比較したとき、実施例11~12の液晶組成物と比較例3の液晶組成物とを比較したとき、実施例123の液晶組成物と比較例4の液晶組成物とを比較したときについても、実施例5~7の液晶組成物と比較例1の液晶組成物とを比較したときと同様の結果が得られた。
【0164】
以上のことから、これらの実施例は本発明の課題を解決していることを確認した。
【0165】
更に、これらの液晶組成物と、上述した式(M1-2)、(M1-3)、(M1-5)~(M1-9)、(M1-12)~(M1-14)及び(M1-16)で表される重合性化合物の1種又は2種とを混合して、実施例14~49の重合性化合物含有液晶組成物を調製した。液晶組成物及び重合性化合物の配合比を表7~13に示す。
【0166】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【0167】
更に、実施例14~49の重合性化合物含有液晶組成物をそれぞれセルギャップ3.0μmでホメオトロピック配向を誘起するポリイミド配向膜を塗布したITO付きセルに真空注入法で注入することで、垂直配向(VA)液晶表示素子を得た。得られたVA液晶表示素子に対し、10V、100Hzの矩形波を印加しながら、100mW/cm-2(365nm)の強度の高圧水銀ランプで10J露光した。そして、電圧を切った状態で100J露光することで高分子安定化垂直配向(PSVA)液晶表示素子を得た。
【0168】
実施例14~49の重合性化合物含有液晶組成物を用いたVA液晶表示素子及びPSVA液晶表示素子について、実施例4~実施例13の液晶組成物を用いたVA液晶表示素子と同様に、応答速度、駆動電圧、低温保存性及び透過率について測定したところ、それらと同等の結果が得られた。
【0169】
次に、実施例14~49で得られた液晶表示素子中に残存する重合性化合物の量を確認したところ残留量は十分に少なかった。このことから、プレチルト角の変化による表示不良が発生しにくいPSVA液晶表示素子であることが確認された。
【0170】
更に、実施例4の液晶組成物に、以下の式(H-2-R3)で表される酸化防止剤を50ppm添加した酸化防止剤含有液晶組成物(実施例50)と、式(H-3-R3)で表される酸化防止剤を30ppm添加した酸化防止剤含有液晶組成物(実施例51)と、式(H-4-M8)で表される酸化防止剤を50ppm添加した酸化防止剤含有液晶組成物(実施例52)とを調製した。
【化42】
【0171】
得られた実施例50~実施例52の酸化防止剤含有液晶組成物を用いて、上述と同様にして、VA液晶表示素子を作製した後、VHRについて評価した。
【0172】
VHRの結果から、実施例50~実施例52の酸化防止剤含有液晶組成物を用いたVA液晶表示素子は、酸化防止剤を含有しない実施例14の液晶組成物を用いたVA液晶表示素子と比較して、より信頼性が高く、熱安定性に優れる液晶表示素子となることが確認された。
【0173】
以上のことから、本発明の液晶組成物は、VA液晶表示素子及びPSVA表示素子に用いたときに、高速応答、低駆動電圧、良好な低温保存性、高透過率を全て両立できる、優れた液晶組成物であることが確認された。