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特許7380208貫通孔とくり抜き部を有するガラス基板とその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】貫通孔とくり抜き部を有するガラス基板とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20231108BHJP
   C03B 33/09 20060101ALI20231108BHJP
   C03C 15/00 20060101ALI20231108BHJP
   B23K 26/382 20140101ALI20231108BHJP
   H01L 23/15 20060101ALI20231108BHJP
   B23K 26/53 20140101ALN20231108BHJP
【FI】
H01L23/12 Z
C03B33/09
C03C15/00 Z
B23K26/382
H01L23/14 C
B23K26/53
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019237339
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021106229
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】礒部 衛
(72)【発明者】
【氏名】堀内 浩平
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-092107(JP,A)
【文献】特開2011-206838(JP,A)
【文献】特開2018-199605(JP,A)
【文献】特開2005-161320(JP,A)
【文献】特開2014-096446(JP,A)
【文献】特開2003-226551(JP,A)
【文献】特開2004-119732(JP,A)
【文献】特開2019-089082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
C03B 33/09
C03C 15/00
B23K 26/382
H01L 23/15
B23K 26/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面および第2の主面を有し、少なくとも1つのくり抜き部と、前記くり抜き部の周囲に形成された少なくとも1つの貫通孔を有し、
前記くり抜き部の前記第1の主面に垂直な断面において、前記くり抜き部の内部の最小径は、前記第1の主面および前記第2の主面における開口径より小さく、
前記くり抜き部の内部の最小径と前記第1の主面の開口径の差は、1μm以上、30μm以下である、半導体パッケージ用ガラス基板。
【請求項2】
前記くり抜き部の前記第1の主面に垂直な断面において、前記くり抜き部の第1の主面における開口部はすり鉢形状を有する、請求項に記載の半導体パッケージ用ガラス基板。
【請求項3】
前記くり抜き部の内壁は、鋸歯形状を有し、前記鋸歯形状は、前記第1の主面における平面視において、円弧状の溝部と、相互に接続する前記円弧の溝部の間に形成される突起部が、交互に繰り返す形状である、請求項1または2に記載の半導体パッケージ用ガラス基板。
【請求項4】
前記鋸歯形状の、前記第1の主面における前記突起部同士の間隔P1は、15μm以上である、請求項に記載の半導体パッケージ用ガラス基板。
【請求項5】
前記第1の主面における、前記突起部同士の間隔P1と、前記貫通孔の開口直径d1の間に、下記関係式1が成り立つ、請求項またはに記載の半導体パッケージ用ガラス基板。

P1<0.8・d1 (式1)
【請求項6】
前記鋸歯形状の、前記第1の主面における前記溝部の深さW1は、0.5μm以上、10μm以下である、請求項からのいずれか一項に記載の半導体パッケージ用ガラス基板。
【請求項7】
前記くり抜き部の前記第1の主面における開口中心の位置精度は、前記貫通孔から選ばれる任意の一つの貫通孔の前記第1の主面における開口中心を基準とした時、10μm以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の半導体パッケージ用ガラス基板。
【請求項8】
半導体パッケージ用ガラス基板の製造方法であって、
第1の主面および第2の主面を有するガラス基板を準備する工程
前記ガラス基板の第1の主面における貫通孔形成予定位置およびくり抜き予定形状の輪郭にレーザを照射する工程と、
前記ガラス基板をエッチングし、貫通孔を形成およびくり抜き部を形成する工程と、
を備え
前記レーザは波長400nm以下のパルスレーザであり、
前記くり抜き予定形状の輪郭に沿ってレーザを照射することで、初期孔を形成し、前記初期孔同士の間隔が、15μm以上である、半導体パッケージ用ガラス基板の製造方法。
【請求項9】
前記レーザのパルス幅は1nsec以上、1000nsec未満である、請求項に記載の半導体パッケージ用ガラス基板の製造方法。
【請求項10】
前記ガラス基板は、エッチング溶液に浸漬し、超音波エッチングされる、請求項8または9に記載の半導体パッケージ用ガラス基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通孔とくり抜き部を有するガラス基板とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターポーザと呼ばれる貫通電極を有する基板を用いて、複数の半導体チップを搭載し相互接続した、2.5Dデバイス、3Dデバイスと呼ばれる半導体の積層デバイスの開発が進んでいる。インターポーザの材料としては、シリコン、ガラス、有機材料、セラミックなどが検討されており、特にガラスは、平坦性や熱安定性、また電気的な絶縁性に優れている。
【0003】
また、これらのインターポーザ用ガラスに貫通電極用の貫通孔を形成する技術として、レーザ照射によるものが知られている(例えば特許文献1)。
【0004】
このようなガラスインターポーザでは、ガラス基板の主表面上に半導体チップを配置するデザインが主流であった。しかしながら、近年、半導体デバイスの更なる薄型化、高周波における誘電損失の更なる低減が求められている。そこで、非特許文献1のように、ガラス基板中に形成した凹部や貫通部(以下、合わせてくり抜き部と称する)に半導体チップを埋め込むことで、薄型化し、配線長さを短縮したインターポーザデザインが提案されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2017-510531号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Siddharth Ravichandran et al.2019, "Low-Cost Non-TSV based 3D Packaging using Glass Panel Embedding (GPE) for Power-efficient, High-Bandwidth Heterogeneous Integration", IEEE 69th Electronic Components and TechnologyConference,p1796-p1802
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような半導体チップ埋め込み型のインターポーザでは、くり抜き部に半導体チップを埋め込む際に、くり抜き部内部に樹脂材料を充填することがある。そこで、充填する樹脂材料とガラス基板の結合を強め、半導体チップが抜け落ちないようにする必要がある。
【0008】
以上の背景を鑑みて、本願では、充填樹脂材料とガラス基板の結合を高められる半導体パッケージ用ガラス基板と、その製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の主面および第2の主面を有し、少なくとも1つのくり抜き部と、前記くり抜き部の周囲に形成された少なくとも1つの貫通孔を有し、
前記くり抜き部の前記第1の主面に垂直な断面において、前記くり抜き部の内部の最小径は、前記第1の主面および前記第2の主面における開口径より小さい、半導体パッケージ用ガラス基板、を提供する。
【0010】
また、本発明は、第1の主面および第2の主面を有するガラス基板を準備する工程、前記ガラス基板の第1の主面における貫通孔形成予定位置および、くり抜き予定形状の輪郭にレーザを照射する工程と、前記ガラス基板をエッチングし、貫通孔およびくり抜き部を形成する工程と、を備えた半導体パッケージ用ガラス基板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の半導体パッケージ用ガラス基板を用いれば、充填する樹脂材料がくり抜き部から抜け落ちることなく、半導体パッケージが製造できる。また、本発明の製造方法によれば、そのような半導体パッケージ用ガラス基板を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態における半導体パッケージ用ガラス基板の上面および断面の模式図である。
図2】第1の実施形態におけるくり抜き部のガラス基板の第1の主面におけるすり鉢形状を示す断面の模式図である。
図3】第1の実施形態におけるくり抜き部の内壁が鋸歯形状を有する半導体パッケージ用ガラス基板の上面の模式図である。
図4】第1の実施形態における鋸歯形状の拡大図である。
図5】第1の製造方法における製造フローである。
図6】第1の製造方法のレーザ照射工程において初期孔が形成されたガラス基板の上面の模式図である。
図7】第1の製造方法のレーザ照射工程で用いられるレーザ照射装置の模式図である。
図8】第2の製造方法における製造フローである。
図9】実施例における上面図である。
図10】実施例における断面図である。
図11】実施例における上面図である。
図12】実施例における上面図である。
図13】実施例における上面図である
【発明を実施するための形態】
【0013】
(半導体パッケージ用ガラス基板の第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態における半導体パッケージ用ガラス基板は、第1の主面および第2の主面を有し、少なくとも1つのくり抜き部と、前記くり抜き部の周囲に形成された少なくとも1つの貫通孔を有し、前記くり抜き部の前記第1の主面に垂直な断面において、前記くり抜き部の内部の最小径は、前記第1の主面および前記第2の主面における開口径より小さいことを特徴とする。以下で、図1を用いて詳細の構成を説明する。
【0014】
図1には、半導体パッケージ用ガラス基板100の第1の主面側の上面図、およびAA'断面における断面図を示した。図1に示すように、半導体パッケージ用ガラス基板100は、くり抜き部101と、貫通孔102を有する。
【0015】
半導体パッケージ用ガラス基板100に用いられるガラスの材質は、特に限られないが、例えばソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、無アルカリガラス、石英、サファイアガラス、結晶化ガラス等が用いられる。また、ガラスはTi、Cuなどの着色成分を含んでいても、含んでいなくても良いが、好ましくは着色成分を含まない。
【0016】
半導体パッケージ用ガラス基板100の厚さは特に限られないが、例えば0.05mm~3mmの範囲である。半導体パッケージの薄型化という観点から、半導体パッケージ用ガラス基板100の厚さは好ましくは1mm以下、より好ましくは0.7mm以下のものが用いられる。一方、半導体パッケージの強度や誘電特性を保つために、半導体パッケージ用ガラス基板100の厚さは好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上のものが用いられる。
【0017】
半導体パッケージ用ガラス基板100の熱膨張係数は、5~200℃の測定範囲において、好ましくは5・10-6/K以下であると、後述する第1の製造方法において、UVレーザ加工時に貫通孔の周囲にクラックが発生しにくい。一方、熱膨張係数は3~15・10-6/Kであると、基板上や貫通孔に形成される配線に用いられる金属が剥離しにくいため、好ましい。
【0018】
半導体パッケージ用ガラス基板100の誘電正接は、好ましくは10GHz付近の共振周波数において、0.006以下である。誘電正接は、より好ましくは0.003以下である。これにより、高周波用の半導体パッケージであっても、誘電損失を小さくできるため、好ましい。
【0019】
半導体パッケージ用ガラス基板100は、少なくとも一つのくり抜き部101を有する。更に、半導体パッケージ用ガラス基板100は、くり抜き部101の周囲に少なくとも一つの貫通孔102を有する。図1の上面図では、くり抜き部101が略矩形状の場合を示した。くり抜き部101の形状はこれに限られず、埋め込む半導体チップの形状に合わせて任意の形状が選択される。また、図1の上面図では、半導体パッケージ用ガラス基板100が1つのくり抜き部101と、2つの貫通孔102を有する場合を示したが、くり抜き部101と貫通孔102の数はこれに限られず、複数のくり抜き部101と複数の貫通孔102を含んでいてもよい。
【0020】
ここで、図1の断面図を用い、くり抜き部101と貫通孔102の特徴について説明する。
【0021】
図1の断面図に示すように、くり抜き部101は狭窄部を有する形状をとり、第1の主面の開口径D1と、内部の最小径D2を有する。この時、第1の主面の開口径D1は、内部の最小径D2よりも大きい。このようにすることで、くり抜き部101内に半導体チップを入れ、樹脂で埋める際に、樹脂がくり抜き部101から抜け落ちにくくできる。好ましくは、第1の主面の開口径D1と内部の最小径D2の差は、1μm以上であり、より好ましくは5μm以上であると、樹脂の抜け落ちを有意に抑制できる。一方、第1の主面の開口径D1と内部の最小径D2の差は、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは25μm以下であり、更に好ましくは20μm以下である。半導体パッケージを製造する際、くり抜き部101に配置する半導体チップの位置は狭窄部より制限され、D1とD2の差が、くり抜き部101の開口部の縁から半導体チップ本体までの距離になる。従って、D1とD2の差を上記範囲にすることで、くり抜き部101周囲に形成した貫通孔102と、半導体チップとの距離の増大を抑制し、配線長さを短くできるため、電気的損失を小さくできる。また、D1とD2の差が上記範囲であるガラス基板100は後述する製造方法において、エッチング工程でくり抜き部101を短時間で分離できるため好ましい。
【0022】
ここで、くり抜き部101の第1の主面、第2の主面における開口部はすり鉢形状104を有することが好ましい。図2には、第1の主面におけるくり抜き部101の開口部の断面図を模式的に示した。すり鉢形状104とは、第1の主面の平面部103から、くり抜き部内壁105にかけて連続する曲面形状を指す。このような形状を有することで、半導体チップを埋め込む際に使用する樹脂がより抜け落ちにくくなるため、好ましい。
【0023】
更に、くり抜き部101の内壁は、鋸歯形状を有することが好ましい。図3には、くり抜き部101の内壁が鋸歯形状を有する際の、第1の主面の側からの上面図を示した。図4には、図3の鋸歯形状の拡大図を示した。鋸歯形状とは、図3、4qに示すように、第1の主面における平面視において、円弧状の溝部と、隣り合う円弧上の溝部同士が相互に接続し、その間に形成される突起部が、交互に繰り返す形状を指す。くり抜き部101の内壁が鋸歯形状を有することにより、くり抜き部101の内壁と半導体チップを埋め込む樹脂材料との接触面積が増加し、また、くり抜き部101の内壁のアンカー効果により樹脂材料が保持されるため、樹脂の抜け落ちを抑制でき、好ましい。なお、溝部の形状は略円弧状であり、完全な円弧でなくても同様の効果が得られる。
【0024】
ここで、図4に示すように、鋸歯形状の繰り返し間隔、すなわち突起部同士の間隔をP1、前記円弧上の溝部の底から突起部の頂点までの距離を溝部の深さW1と称する。この時、突起部同士の間隔P1は、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上である。突起部同士の間隔が上記範囲であると、アンカー効果が生じやすく、樹脂を固定できる。
【0025】
一方、貫通孔102の第1の主面の開口直径をd1とすると、前記突起部同士の間隔P1と、貫通孔の開口直径d1の間には、下記関係式(1)が成り立つことが好ましい。
P1<0.8・d1 ・・・(1)
P1が式(1)の範囲であると、以下で述べる製造時のエッチング工程において、くり抜き部を形成しやすい。
【0026】
溝部の深さW1は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であると、樹脂の抜け落ちを抑制しやすい。溝部の深さW1は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下であると、くり抜き部101と貫通孔102の距離を短くでき、電気的損失を小さくできるため、好ましい。
【0027】
更に、溝部の円弧形状は、好ましくは曲率半径20μm以上、100μm以下である。
【0028】
また、図1の断面図に示すように、貫通孔102は狭窄部を有する形状であってもよく、第1の主面の開口径d1と、内部の最小径d2を有する 。この時、第1の主面の開口径d1は、内部の最小径d2よりも大きいことが好ましい。貫通孔102に導電材料を充填し、貫通電極を作成する際、まず内壁に蒸着法やディップ法などで薄膜をつけ、薄膜を核として電解めっきなどで成長させることができる。d1>d2とすることで、貫通孔の内壁に核となる薄膜を形成しやすくなる。より好ましくは、第1の主面の開口径d1と内部の最小径d2の差は、1μm以上であり、より好ましくは5μm以上であると、上記効果が得られやすい。一方、第1の主面の開口径d1と内部の最小径d2の差は、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは20μm以下であり、更に好ましくは10μm以下である。d1とd2の差が上記範囲であると、貫通電極において、狭窄部での電気抵抗の増加を抑制し、所望の電気的特性が得られる。
【0029】
また、半導体パッケージでは、くり抜き部101に半導体チップを埋め込み、その上に配線を有する樹脂層を形成し、貫通孔102に導電材料を充填することで貫通電極として用いられる。そのため、半導体チップを所定の位置に精度高く配置することが求められる。そこで、半導体パッケージ用ガラス基板100の貫通孔102とくり抜き部101の相対的な位置精度を高くすることで、半導体パッケージの製造工程において、半導体チップの配置の位置精度を高くすることができる。本発明の半導体パッケージ用ガラス基板は、貫通孔102から選ばれる少なくとも一つの貫通孔の第1の主面における開口中心を基準にした時、くり抜き部101の、前記第1の主面における開口中心の位置精度が、10μm以下であことが好ましい。なお、くり抜き部101の開口部が非対称形状の場合は、開口部の非対称形状における重心を開口中心の代わりに用いることとする。
【0030】
ここで、位置精度について説明する。くり抜き部101の周囲に形成された貫通孔102のうち、任意の1つの貫通孔102を選び、その開口中心を基準座標Via00(0,0)としたとき、くり抜き部の開口中心の座標が(X,Y)となるように、くり抜き部を形成する。この時、実際に形成されたくり抜き部の座標が(X+ΔX,Y+ΔY)であったとすると、位置精度は下記式(2)で定義される。
(位置精度)=√(ΔX+ΔY)・・・(2)
貫通孔102の開口中心を基準としたくり抜き部101の開口中心の位置精度は、10μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは2μm以下であり、更に好ましくは1μm以下である。
【0031】
また、貫通孔102のうち、半数以上の貫通孔102の位置精度も、Via00を基準として10μm以下であることが好ましい。より好ましくは5μm以下であり、更に好ましくは2μm以下であり、更に好ましくは1μm以下である。
【0032】
更に、貫通孔102のうち、8割以上の貫通孔102の位置精度が、Via00を基準として、10μm以下であることが好ましい。より好ましくは5μm以下であり、更に好ましくは2μm以下であり、更に好ましくは1μm以下である。
【0033】
次に、本発明における半導体パッケージ用ガラス基板の製造方法について説明する。本発明の製造方法は、第1の主面および第2の主面を有するガラス基板を準備する工程、前記ガラス基板の第1の主面における貫通孔形成予定位置および、くり抜き予定形状の輪郭にレーザを照射する工程と、前記ガラス基板をエッチングし、貫通孔およびくり抜き部を形成する工程とを備えることを特徴とする。第1の製造方法では、レーザ照射工程によって初期孔を形成し、続くエッチング工程で初期孔を拡大する場合について説明し、第2の製造方法では、レーザ照射工程によって初期孔の代わりに改質部を形成し、エッチング工程で改質部を除去して貫通させ、孔を拡大させる場合について説明する。
【0034】
(半導体パッケージ用ガラス基板の第1の製造方法)
本発明における半導体パッケージ用ガラス基板の第1の製造方法を説明する。ここでは、図3に示す半導体パッケージ用ガラス基板100を例にとり製造方法を説明する。
【0035】
図5には、第1の製造方法における製造フローを示した。
【0036】
本発明における製造方法は、
(S101)第1の主面および第2の主面を有するガラス基板を準備する工程と(ガラス基板準備工程)、
(S102)ガラス基板の第1の主面における貫通孔形成予定位置および
くり抜き予定形状の輪郭にレーザを照射し、初期孔を形成する工程と(レーザ照射工程)、
(S103)前記ガラス基板をエッチングし、初期孔を拡張することで、貫通孔を形成し、くり抜き予定形状を分離しくり抜き部を形成する工程と(エッチング工程)、
を備えている。
【0037】
本発明の製造方法によると、貫通孔の形成とくり抜き部の形成を同時に行うことができ、貫通孔とくり抜き部の位置合わせを行う必要がない。このため、貫通孔に対するくり抜き部の位置精度が高い半導体パッケージ用ガラス基板を形成できる。また、以下で述べるレーザ照射とエッチング工程により、くり抜き部内部の径がくり抜き部の開口径よりも小さくなるため、くり抜き部に半導体チップを埋め込む際の樹脂が抜け落ちる現象を有意に抑制できる。
以下で、各工程の詳細について説明する。
【0038】
(工程S101)
まず、第1の主面および第2の主面を有するガラス基板を準備する。
【0039】
ガラス基板の材質は、特に限られないが、例えばソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、無アルカリガラス、石英、サファイアガラス、結晶化ガラス等が用いられる。また、ガラスは着色成分を含んでいても、含んでいなくても良いが、好ましくは着色成分を含まない。
【0040】
ガラス基板の厚さは特に限られないが、例えば0.05mm~3mmの範囲である。半導体パッケージの薄型化という観点から、ガラス基板の厚さは好ましくは1mm以下、より好ましくは0.7mm以下のものが用いられる。一方、半導体パッケージの強度や誘電特性を保つために、ガラス基板の厚さは好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上のものが用いられる。
【0041】
ガラス基板の熱膨張係数は、好ましくは5以下であると、レーザ照射工程でUVレーザを用いる際に、貫通孔の周囲にクラックが発生しにくい。一方、熱膨張係数は3~15であると、基板上や貫通孔に形成される配線に用いられる金属が剥離しにくいため、好ましい。
【0042】
ガラス基板の誘電正接は、好ましくは10GHz付近の共振周波数において、0.006以下である。これにより、高周波用の半導体パッケージであっても、誘電損失を小さくできるため、好ましい。
【0043】
(工程S102)
図6は、工程S102で、レーザ照射によりガラス基板に初期孔104、106が形成された様子を模式的に示している。
工程S102では、ガラス基板の第1の主面の貫通孔形成予定位置にレーザを照射し初期孔104を形成する。続けて、ガラス基板の第1の主面のくり抜き予定形状103の輪郭に沿ってレーザを照射し、初期孔106を形成する。なお、初期孔104と106の形成順序はどちらが先でも構わない。これらの工程を一続きに行うことで、貫通孔に対するくり抜き部の位置精度を向上することができる。図6では、複数の貫通孔形成予定位置に形成された複数の初期孔104と、くり抜き予定形状103の輪郭線上に形成された複数の初期孔106を示している。
【0044】
ここで、工程S102および工程S103で用いるレーザ照射の詳細について説明する。図7には、工程S102およびS103で使用され得る装置の構成を概略的に示す。図7に示すように、レーザ照射装置700は、ステージ750、レーザ発振器760と、ビーム調整光学系770と、集光レンズ780等を有する。
【0045】
まず、ステージ750に、ガラス基板100が、第2の主面がステージの側になるように設置される。次に、レーザ発振器760からレーザビーム765が発振される。レーザビーム765は、ビーム調整光学系770に入射し、ビーム調整光学系でビーム径やビーム形状が調整されレーザビーム775となる。ビーム調整光学系770は、例えば凹レンズや凸レンズの組み合わせで形成される。ビーム調整光学系770は、アパーチャを有しても良い。レーザビーム775は、集光レンズ780に入射し、集光されてレーザビーム785となる。レーザビーム785は、ガラス基板100の第1の主面に入射し、ガラス基板100の内部に1つ目の初期孔104を形成する。
【0046】
ここで、1つ目の初期孔104の開口中心を基準座標(0,0)と設定し、この基準座標をもとに、他の初期孔104の位置座標を決定し、形成する。
更に、くり抜き予定形状103の中心座標が(X,Y)となるように設定し、くり抜き予定形状103の輪郭線上に、初期孔106の開口中心が来るように設定し、初期孔106を形成していく。
なお、レーザ照射後、エッチング前に加熱工程を設ける場合は、ガラス基板の縮小を考慮して初期孔106の位置を設計することが好ましい。
このように貫通孔形成予定位置に形成される初期孔104と、くり抜き予定形状103の輪郭線上に形成される初期孔106を、一度の座標設定で連続して加工することにより、貫通孔102とくり抜き部101の相対位置精度の高い半導体パッケージ用ガラス基板100を製造することが可能になる。
【0047】
なお、初期孔とは、レーザ照射により形成される微細な孔を指し、貫通していても良く、途中で閉塞していても構わない。
【0048】
本発明におけるレーザビーム785の波長は特に限られないが、例えば3000nm以下であると、ガラス基板への熱影響を抑えられるため好ましい。レーザビーム785の波長は、レーザの持つエネルギーが十分大きくなり、初期孔を形成しやすいという観点から、好ましくは2050nm以下、より好ましくは1090nm以下である。第1の製造方法において、波長は好ましくは500nm以下であり、より好ましくは400nm以下のUV領域であると、高いエネルギーにより初期孔として微細な貫通孔が形成されやすい。波長は一般的に、150nm以上である。
本発明の半導体パッケージ用ガラス基板の第1の製造方法では、レーザ785が波長400nm以下のUVレーザである場合について説明する。
【0049】
この時、レーザビーム785は好ましくはパルス発振される。レーザビーム785のパルス幅は、好ましくは1000nsec以下であり、より好ましくは500nsec以下、更に好ましくは100sec以下であると、1パルス当たりのレーザビームのピークパワーを大きくすることができ、初期孔を形成しやすくなる。ただし、ピークパワーを大きくしすぎると、孔内部にクラックを発生させるため、パルス幅は、好ましくは1nsec以上が望ましい。
【0050】
パルスの繰り返し間隔は、蓄熱の観点から、1kHz~100kHzが好ましく、より好ましくは、5kHz~50kHzである。
【0051】
出力を繰り返し周波数で除算したパルスエネルギーは、5μJ~150μJが好ましく、好ましくは、10μJ~80μJである。
【0052】
好ましくは、一つの初期孔104または106の形成に、100~10000パルス照射する。
【0053】
くり抜き予定形状103の輪郭線上に形成された初期孔106は、初期孔106同士の間隔が好ましくは15μm以上になるように形成される。初期孔106の間隔を15μm以上にすることで、半導体パッケージ用ガラス基板100のくり抜き部101において、鋸歯形状が発生しやすい。また、鋸歯形状における突起部同士の間隔P1を15μm以上にすることができ、溝部の深さW1が0.5μm以上、10μm以下の範囲に入りやすくなる。
また、初期孔106の間隔が15μm以上であると、先に形成された初期孔に、次の初期孔を形成するために照射したレーザが吸収され、次の初期孔が形成されない現象や、次の初期孔と先の初期孔が接合しいびつな形状になる現象が発生しない。これにより、後のエッチング工程でくり抜き予定形状103が分離されない現象を抑制できる。更に、くり抜き部101の形状ゆがみを抑制でき、くり抜き部101の内壁の鋸歯形状の突起部と溝部の繰り返しを、均一な形状にできる。
【0054】
一方、くり抜き予定形状103の輪郭線上に形成された初期孔106の間隔は、広い方が加工孔数を少なくできて生産性がよくなるが、広すぎると後のエッチング工程でくり抜き予定形状103が分離されない虞がある。そのため、初期孔106の間隔は、エッチング工程後の貫通孔の開口直径d1に対して、0.8×d1以下であることが好ましい。
【0055】
一方、貫通孔予定位置に形成された初期孔104は、貫通孔102を貫通電極として機能させるため、貫通孔102同士が接合しないように形成する必要がある。従って、初期孔104の間隔は、エッチング工程後の貫通孔の開口直径d1に対して、2×d1以上であることが望ましい。
【0056】
初期孔104および106の第1の主面における開口径は、好ましくは5μm以上25μm以下、より好ましくは10μm以上20μm以下である。のちのエッチング工程により、くり抜き部101の第1の主面における開口径D1と、内部の径D2に差が生じるが、上記範囲にすることで、D1とD2の差が1μm以上、30μm以下になりやすい。
【0057】
以上の工程により、ガラス基板に初期孔104および106が形成される。
【0058】
ここで、工程S102と工程S103の間に、ガラス基板を加熱処理する工程を設けても良い。ガラス基板を加熱処理することで、工程S102のレーザ照射により初期孔106の周囲に生じた応力を緩和することができ、続く工程S103のエッチング時に孔の内壁が不均一に除去されることを抑制できるため、好ましい。
【0059】
(工程S103)
次に、初期孔104および106が形成されたガラス基板をエッチングする。エッチング工程は、ガラス基板をエッチング液に浸漬する、またはガラス基板の第1及び第2の主面に向けてエッチング液を噴霧する、などの方法で行われる。
【0060】
ガラス基板をエッチング液に浸漬する場合は、エッチング液に超音波を印加しても良い。エッチング液に超音波を印加することで、初期孔104、106の拡張速度を促進し、くり抜き予定形状103の分離を速めることができる。
超音波の周波数は、特に制限されないが、上記効果が得られやすいという観点から、好ましくは200kHz以下であり、より好ましくは100kHz以下で、更に好ましくは40kHz未満である。超音波は一般的に、20kHz以上のものが使用される。
【0061】
エッチング液は、特に限られないが、例えばフッ酸を含む溶液が選択される。エッチング液は、フッ酸だけでも良く、塩酸、硝酸水溶液などとの混酸を含んでいても良い。エッチング液は、エッチング時に発生した塩を溶解し、塩が初期孔の入り口を塞ぐ現象を抑制できるという観点から、好ましくは、塩酸、硝酸水溶液のいずれか一方を含むか、または両方を含む混酸を含んでいてよい。
【0062】
エッチング液中のフッ化水素の濃度は、エッチングが十分に進むという観点から、エッチング液全体に対して、好ましくは0.1wt%以上である。一方、フッ化水素の濃度は、初期孔の開口部と内部のエッチングの進行度をそろえ、くり抜き予定形状103を短時間で分離するために、エッチング液全体に対して、好ましくは5.0wt%以下、より好ましくは3.5wt%以下であることが好ましい。
【0063】
エッチング液が塩酸を含む場合、塩を溶解する効果が有意に発揮されるという観点から、塩化水素の濃度は、エッチング液全体に対して、好ましくは0.5wt%以上、より好ましくは1wt%以上である。一方、フッ酸による改質部の除去スピードを保ちやすいという観点から、エッチング液全体に対して、好ましくは20wt%以下、より好ましくは15wt%以下である。
【0064】
エッチング液が硝酸を含む場合、塩を溶解する効果が有意に発揮されるという観点から、硝酸の濃度は、エッチング液全体に対して、好ましくは0.5wt%以上、より好ましくは1wt%以上である。一方、硝酸の濃度は、フッ酸による改質部の除去スピードを保ちやすいという観点から、エッチング液全体に対して、好ましくは20wt%以下、より好ましくは15wt%以下である。
【0065】
以上のようなエッチング液の構成にすることで、初期孔104および106の開口径を真円度の高い状態で拡張できる。これにより、くり抜き部101の内壁の鋸歯形状が均一な繰り返し構造を有するようになり、鋸歯形状の突起部の頂点に曲率半径0.1μm以上、1μm以下の丸みを形成しやすい。また、貫通孔102のばらつきを小さくすることができ、好ましい。
【0066】
これにより、初期孔104が拡張し、貫通孔102となり。初期孔106が拡張し、隣り合う初期孔106同士が連結してくり抜き予定形状103が分離されることで、くり抜き部101が形成される。以上の工程により、半導体パッケージ用ガラス基板100が製造される。
【0067】
(半導体パッケージ用ガラス基板の第2の製造方法)
図8には第2の製造方法における製造フローを示した。
第2の製造方法では、レーザ照射工程で初期孔の代わりに改質部が形成される場合について説明する。改質部とは、レーザ照射によりガラスの構造が変化している部分を指す。このような改質部を形成する方法では、貫通孔102の直径を小さくすることができる。また、くり抜き部101の内壁は比較的滑らかになる。くり抜き部101の内壁に鋸歯形状が生じないか、突起部同士の間隔が数μm以下と狭く、溝部の深さが小さい鋸歯形状が形成される。以下では、第1の製造方法と異なる部分について説明する。
【0068】
(工程S201)
まず、第1の製造方法と同様にガラス基板が準備される。
【0069】
(工程S202)
次に、レーザ照射工程が実施される。
第2の製造方法において、ガラス基板に対して透過率が高いレーザビーム785波長を選択することで、レーザ照射により初期孔の代わりに改質部が形成されやすい。レーザビーム785波長は、300nm~1100nmが望ましい。
【0070】
第2の製造方法において、パルス幅は好ましくは1nsec以下、より好ましくは500psec以下、更に好ましくは100psec以下であると、改質部を形成しやすい。一方、パルス幅は好ましくは1psec以上である。
【0071】
レーザビーム785は、好ましくはバーストパルスである。バーストパルスは、パルス間隔が、非常に短い複数のパルス群のため、短時間に大きなパルスエネルギーを加工対象に与えることができる。この時、バーストパルス内の各パルス幅は好ましくは1psec以上、100psec以下であり、バーストパルス内のパルス間隔は好ましくは1nsec以上、50nsec以下であり、バーストパルスの間隔は、好ましくは数μsec設けられる。
【0072】
レーザビーム785は、集光レンズ780に集光されており、ガラス基板の第1の主面から内部、第2の主面にかけて、線状に集光された領域(焦線)を有することが好ましい。このような焦線を生じさせるビーム調整光学系770は、球面収差が存在するレンズや、アキシコンレンズを含むことが好ましい。
【0073】
くり抜き予定形状103の輪郭線上に形成される改質部の間隔は、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは5μm以下であると、くり抜き予定形状103を分離しやすい。一方、改質部の間隔は好ましくは1μm以上である。
【0074】
このような構成により、ガラス基板に改質部が形成される。改質部が形成されたガラス基板に、第1の製造方法と同様にエッチング工程S203を実施すると、半導体パッケージ用ガラス基板100が製造できる。
【実施例
【0075】
(実施例1)
前述の第1の製造方法を用いて、第1の実施形態における半導体パッケージ用ガラス基板を製造した。
【0076】
まず、厚さ0.6mm、無アルカリガラスからなるガラス基板を準備した。なお、ガラスは着色成分を含んでいなかった。
【0077】
次に、第2の主面がステージの側になるよう、ガラス基板をレーザ装置のステージに設置した。ガラス基板の第1の主面にレーザを照射し、貫通孔形成予定位置とくり抜き予定形状の輪郭線上に初期孔を形成した。レーザ波長355nm、パルス幅20nsのレーザを用いて、パルスエネルギー50μJで、初期孔1つを形成するのに、1500パルス照射した。なお、1つ目の初期孔の基準座標を(0,0)としたとき、くり抜き予定部の中心の座標が(4.0mm,3,75mm)となるように設定し、くり抜き予定部の輪郭線上の初期孔の間隔は15μmとした。
【0078】
次に、ガラス基板をエッチング液に浸漬してエッチングした。エッチング液は、フッ酸1wt%、塩酸2wt%を含む混酸溶液であった。浸漬時間は130分であった。浸漬後、ただちに純水に浸漬することで、エッチングを停止させた。エッチング工程により、ガラス基板の板厚が32μm減少した。ここで、板厚の減少量を「エッチング量」と称することがある。
【0079】
以上の工程により、貫通孔とくり抜き部を有する半導体パッケージ用ガラス基板が製造された。下記表1には、加工条件と、加工後のくり抜き部における開口径D1と内部の最小径D2の差D1-D2、第1の主面における貫通孔の開口径d1、第1の主面における、くり抜き部の開口中心の、基準となる貫通孔の開口中心に対する位置精度、第1の主面における鋸歯形状の突起部同士の間隔P1、溝部の深さW1をまとめた。また、図9には、加工後の第1の主面の側の上面からの撮影画像を、図10には、くり抜き部内壁を内壁と垂直な方向から撮影した画像、およびくり抜き部の断面形状の測定結果を示した。図9および図10の撮影画像により、くり抜き部の内壁が鋸歯形状を有することが分かる。また、断面形状の測定結果により、くり抜き部が狭窄していることが分かる。
【0080】
(実施例2~8)
実施例2~8では、輪郭線上の初期孔の間隔、エッチング量を変化させ、残りは実施例1と同様の条件で実験を行った。結果を表1および図9図10に示す。
【0081】
(実施例9~24)
実施例9~24では、初期孔の間隔、エッチング量に加え、更に、板厚を変化させて実験を行った。実験条件と結果を表1および図113図12に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
(実施例25)
実施例1と同様のガラスを使用し、レーザ波長532nm、パルス幅10ps、出力30Wのパルスレーザを照射して改質部を形成する。改質部1つを形成するのに、1つのパルスレーザを照射した。改質部の間隔は3μmとする。その後、実施例1と同様の条件でエッチングした。以上の工程により、貫通孔とくり抜き部が形成できる。形成されたくり抜き部および貫通孔には狭窄部が形成され、くり抜き部内部の最小径D2とくり抜き部の第1の主面の開口径D1の差D1-D2は20μmになる。なお、くり抜き部内壁に鋸歯形状は形成されない。
【0084】
(比較例1)
実施例1と同様のガラスを使用し、同様のレーザを用いてくり抜き予定部の輪郭線の初期孔の間隔を10μmとして実験を行った。なお、その他の条件は実施例1と同様であった。実験の結果、くり抜き予定部が分離できなかった。これは、レーザ照射時に隣り合う初期孔が連結し、輪郭線上に均一に初期孔を形成できなかったことが原因であると考えられる。図13には、実施例1と同様のレーザを照射し、ガラス基板に3点の初期孔を、間隔10μm、15μm、20μmとして形成した時の様子を示した。図13によると、初期孔の間隔が10μm以下では、3点の初期孔が連結し、1つの孔になっていることが分かる。
【0085】
(比較例2)
実施例1と同様のガラスを使用し、くり抜き予定部の輪郭線にレーザ波長532nmのバーストパルスを照射して改質部を形成する。一バーストパルス内の各パルス幅は10psであり、一つのバーストパルスは2つのパルスを含み、一つのバーストパルスのエネルギーは185μJである。改質部の間隔は2μmにする。次に、改質部が形成された輪郭線に、COレーザを50Wで連続発振し照射することで、くり抜き部を分離する。得られるサンプルには狭窄部および鋸歯形状が存在しない。
【0086】
(樹脂材料抜け落ち試験)
実施例1、実施例25、比較例2と同条件で作成したサンプルを用いて、樹脂抜け落ち試験を実施する。試験のため、くり抜き部の形状は50mm×50mmの略正方形とする。形成したくり抜き部に、樹脂材料を充填し硬化させる。樹脂はガラス基板の主面と同じ高さになるよう充填される。次に、ガラス基板を試験台に設置する。試験台にはくり抜き部と同形状の穴が設けてられており、該穴とくり抜き部が重なるようにガラス基板を設置する。次に、35mm×35mmの略正方形の断面を持つ金属製の角棒を準備する。角棒の角はR面取りされている。角棒の面が樹脂の表面と平行になるようにして、角棒を樹脂に押し込む。押し込み圧力を徐々に大きくし、樹脂が抜け落ちる、またはガラスが破損した際の押し込み圧力を測定する。試験の結果を以下の表2に示す。
【0087】
【表2】
【符号の説明】
【0088】
100 半導体パッケージ用ガラス基板
101 くり抜き部
102 貫通孔
103 平面部
104 すり鉢形状
105 くり抜き部内壁
D1 くり抜き部の第1の主面における開口径
D2 くり抜き部の内部の最小径
d1 貫通孔の第1の主面における開口径
d2 貫通孔の内部の最小径
P1 鋸歯形状の突起部同士の距離
W1 鋸歯形状の溝部の深さ
700 レーザ照射装置
750 ステージ
760 レーザ発振器
765 レーザビーム
770 ビーム調整光学系
775 レーザビーム
780 集光光学系
785 レーザビーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13