IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭硝子株式会社の特許一覧

特許7380235硬化性組成物、硬化物、及び硬化性組成物の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化物、及び硬化性組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20231108BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20231108BHJP
   C08L 33/16 20060101ALI20231108BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20231108BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
C08L71/02
C08L33/14
C08L33/16
C08K5/17
C08F220/26
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020004517
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021109947
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 友喜
(72)【発明者】
【氏名】神保 裕介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 千登志
(72)【発明者】
【氏名】砂山 佳孝
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-265156(JP,A)
【文献】特開2010-090286(JP,A)
【文献】特開2000-103928(JP,A)
【文献】特開2008-291159(JP,A)
【文献】特開2019-073680(JP,A)
【文献】特開平07-247461(JP,A)
【文献】特開平09-071749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08F 6/00-246/00、301/00
C08G 65/06、65/336
C09K 3/10-3/12
C09J 1/00-5/10、9/00-201/10
C09D 1/00-10/00、101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非フッ素重合体及び含フッ素重合体を含む硬化性組成物であって、
前記非フッ素重合体は、下式1で表される反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体及び下式1で表される反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体のいずれか一方又は両方であり、
前記含フッ素重合体は、第1の単量体に基づく繰り返し単位と、第2の単量体に基づく繰り返し単位と、第3の単量体に基づく繰り返し単位及び化合物aに基づく単位のいずれか一方又は両方と、を有する重合体であって、
第1の単量体が、ポリフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、
第2の単量体が、下式2で表される単量体を含み、
第3の単量体が、下式1で表される反応性ケイ素基及び重合性不飽和基の両方を有する単量体であり、
化合物aが、前記反応性ケイ素基及びスルファニル基の両方を有する化合物である、硬化性組成物。
-SiX3-a 式1
前記式1中、Rは炭素数1~20の1価の有機基であって、加水分解性基以外の有機基を示し、Xは水酸基又は加水分解性基を示し、aは1~3の整数を示し、aが1の場合、Rは互いに同一でも異なってもよく、aが2又は3の場合、Xは互いに同一でも異なってもよい。
20 -Z 21 -(CH CH O) 22 式2
前記式2中、R 20 は、CH =CH-、CH =CH-CH -O-、CH =CR 21 -C(=O)O-又はCH =CR 21 -OC(=O)-を表し、R 22 は、水素原子又はメチル基を表し、Z 21 は単結合又は炭素数1~10のアルキレン基を表す。R 21 は水素原子、塩素原子、フッ素原子又は炭素数1~3の直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、nは1~24の整数を表す。
【請求項2】
前記非フッ素重合体100質量部に対する前記含フッ素重合体の含有量は、0.1~20質量部である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記含フッ素重合体の数平均分子量は、3,000~20,000である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記含フッ素重合体に対するフッ素原子の割合は、5~35質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
硬化性組成物に対するフッ素原子の割合は、0.1~15質量%である、請求項1~のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
さらにアミン化合物を含有する、請求項1~のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の硬化性組成物の製造方法であって、
前記第1の単量体と、前記第2の単量体と、前記第3の単量体及び前記化合物aのいずれか一方又は両方と、を反応させて前記含フッ素重合体を得、
前記含フッ素重合体と、前記非フッ素重合体と、を混合する、硬化性組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、前記硬化性組成物の硬化物、及び前記硬化性組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反応性ケイ素基を有する重合体を含む硬化性組成物は、例えば外壁の目地のシーリング材として用いられる。
建築物の外壁は、防汚性に優れ、汚れ難いことが望ましい。そのために、付着した汚れが降雨等によって洗い流されるセルフクリーニング性を有することが望ましい。
【0003】
特許文献1には、シーリング材に含フッ素非イオン系活性剤を配合して、硬化後の表面を親水性にし、降雨による自浄作用を付与する方法が記載されている。
特許文献2には、シーリング材に特定のフッ素共重合体を混合して、撥水撥油性と汚れの拭き取りやすさを発現させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-291159号公報
【文献】特開2017-128725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、外壁ボードのセルフクリーニング性の向上に伴い、目地の汚れが目立ち難いように、シーリング材にもセルフクリーニング性の向上が求められている。
しかし、特許文献1、2に記載のシーリング材では、必ずしもセルフクリーニング性が充分ではない。
本発明は、硬化物の防汚性及びセルフクリーニング性に優れる硬化性組成物、前記硬化性組成物の硬化物、及び前記硬化性組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記[1]~[]である。
[1] 非フッ素重合体及び含フッ素重合体を含む硬化性組成物であって、前記非フッ素重合体は、下式1で表される反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体及び下式1で表される反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体のいずれか一方又は両方であり、前記含フッ素重合体は、第1の単量体に基づく繰り返し単位と、第2の単量体に基づく繰り返し単位と、第3の単量体に基づく繰り返し単位及び化合物aに基づく単位のいずれか一方又は両方と、を有する重合体であって、第1の単量体が、ポリフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、第2の単量体が、下式2で表される単量体を含み、第3の単量体が、下式1で表される反応性ケイ素基及び重合性不飽和基の両方を有する単量体であり、化合物aが、前記反応性ケイ素基及びスルファニル基の両方を有する化合物である、硬化性組成物。
-SiX3-a 式1
前記式1中、Rは炭素数1~20の1価の有機基であって、加水分解性基以外の有機基を示し、Xは水酸基又は加水分解性基を示し、aは1~3の整数を示し、aが1の場合、Rは互いに同一でも異なってもよく、aが2又は3の場合、Xは互いに同一でも異なってもよい。
20 -Z 21 -(CH CH O) 22 式2
前記式2中、R 20 は、CH =CH-、CH =CH-CH -O-、CH =CR 21 -C(=O)O-又はCH =CR 21 -OC(=O)-を表し、R 22 は、水素原子又はメチル基を表し、Z 21 は単結合又は炭素数1~10のアルキレン基を表す。R 21 は水素原子、塩素原子、フッ素原子又は炭素数1~3の直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、nは1~24の整数を表す。
[2] 前記非フッ素重合体100質量部に対する前記含フッ素重合体の含有量は、0.1~20質量部である、[1]に記載の硬化性組成物。
[3] 前記含フッ素重合体の数平均分子量は、3,000~20,000である、[1]又は[2]に記載の硬化性組成物。
[4] 前記含フッ素重合体に対するフッ素原子の割合は、5~35質量%である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
] 硬化性組成物に対するフッ素原子の割合は、0.1~15質量%である、[1]~[]のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
] さらにアミン化合物を含有する、[1]~[]のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
] [1]~[]のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化物。
] [1]~[]のいずれか一項に記載の硬化性組成物の製造方法であって、前記第1の単量体と、前記第2の単量体と、前記第3の単量体及び前記化合物aのいずれか一方又は両方と、を反応させて前記含フッ素重合体を得、前記含フッ素重合体と、前記非フッ素重合体と、を混合する、硬化性組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の硬化性組成物は、硬化物の防汚性及びセルフクリーニング性に優れる。
本発明の硬化物は、防汚性及びセルフクリーニング性に優れる。
本発明の硬化性組成物の製造方法は、硬化物の防汚性及びセルフクリーニング性に優れる硬化性組成物を製造可能である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書における用語の定義は以下である。
「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値及び上限値とする数値範囲を意味する。
「オキシアルキレン重合体」とは、環状エーテルに基づく繰り返し単位から形成されるポリオキシアルキレン鎖を有する重合体を意味する。
「前駆重合体」とは、開始剤の残基と、環状エーテルの開環付加重合により形成されたポリオキシアルキレン鎖と、前記ポリオキシアルキレン鎖の末端酸素原子を含む末端基とからなり、末端基の少なくとも一部が水酸基である重合体である。
【0009】
「(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体」とは、アクリル酸アルキルエステルに基づく繰り返し単位から形成される重合鎖及びメタクリル酸アルキルエステルに基づく繰り返し単位から形成される重合鎖の一方又は両方を有する重合体を意味する。
「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の一方又は両方を意味する。
「エステル部位」は、エステル結合の酸素原子に結合している原子団を意味する。
【0010】
「活性水素含有基」は、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、第一級アミンから水素原子を除去した1価の基、ヒドラジド基及びスルファニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基である。
「活性水素」とは、前記活性水素含有基に基づく水素原子である。
「シリル化剤」とは、活性水素含有基又は不飽和基と反応して反応性ケイ素基を導入し得る化合物である。
【0011】
「ポリフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル」とは、エステル部位にフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物であって、かつ化合物に対するフッ素原子の割合が30質量%以上の化合物である。
「フルオロアルキル基」とは、アルキル基中の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換された1価の基である。
【0012】
反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体の「シリル化率」は、重合体の末端基に含まれる反応性ケイ素基、活性水素含有基、及び不飽和基の数の合計に対する前記反応性ケイ素基の数の割合である。シリル化率の値はNMR分析によって測定できる。
【0013】
数平均分子量(以下、「Mn」と記す。)及び質量平均分子量(以下、「Mw」と記す。)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によって得られるポリスチレン換算分子量である。分子量分布は、MwとMnより算出した値であり、Mnに対するMwの比率(以下、「Mw/Mn」と記す。)である。
【0014】
「硬化性組成物、重合体、又は単量体中のフッ素原子の含有量」は、単量体におけるフッ素原子の含有量が分かっている場合には、重合体の製造時の各単量体の仕込み割合や硬化性組成物における重合体の配合割合に基づいて算出できる。得られた硬化性組成物や重合体から測定する場合には、例えば、加熱して灰化させた硬化性組成物や重合体を、エネルギー分散型X線(EDX)分析法やF-Ka線強度を測定する蛍光X線分析法により測定する方法、酸素を充填した石英フラスコ内にて硬化性組成物や重合体を1000℃以上で燃焼させ、得られた燃焼ガスを捕集液に吸収させた後、フッ素イオンをイオンクロマトグラフィー又はF電極法で測定する酸素燃焼フラスコ法、石英フラスコ内で燃焼させる代わりに石英管の内部で燃焼させる石英管酸素燃焼ガス捕集法、石英フラスコ内で燃焼させる代わりに白金容器内で炭酸カリウム粉末とともに600℃程度で燃焼させる炭酸カリウムカプセル法等によって測定できる。
【0015】
本実施形態の硬化性組成物は、非フッ素重合体及び含フッ素重合体を含む。非フッ素重合体は、下記反応性ケイ素基を有する非フッ素重合体(以下、「重合体A」という。)である。含フッ素重合体は、下記反応性ケイ素基を有する含フッ素重合体(以下、「重合体B」という。)である。硬化性組成物に含まれる重合体Aは2種以上でもよい。硬化性組成物に含まれる重合体Bは2種以上でもよい。
【0016】
<反応性ケイ素基>
反応性ケイ素基は、下式1で表わされる。
-SiX3-a 式1
前記式1において、Rは炭素数1~20の1価の有機基を示す。Rは加水分解性基を含まない。
Rとしては、炭化水素基、ハロ炭化水素基及びトリオルガノシロキシ基が挙げられる。
【0017】
Rとしては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1-クロロアルキル基及びトリオルガノシロキシ基が好ましい。炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、1-クロロメチル基、トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基及びトリフェニルシロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。反応性ケイ素基を有する重合体の硬化性と硬化性組成物の安定性が良い点からは、メチル基又はエチル基が好ましい。硬化物の硬化速度が速い点からは、1-クロロメチル基が好ましい。容易に入手できる点からは、メチル基が特に好ましい。
【0018】
前記式1において、Xは水酸基又は加水分解性基を示す。
加水分解性基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、スルファニル基、アルケニルオキシ基が例示できる。
Xとしては、加水分解性が穏やかで取扱いやすい点から、アルコキシ基が好ましい。アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましい。アルコキシ基がメトキシ基又はエトキシ基であると、シロキサン結合を速やかに形成し硬化物中に架橋構造を形成しやすく、硬化物の物性値がより良好となる。
【0019】
前記式1において、aは1~3の整数を示す。aが1の場合、Rは互いに同一でも異なってもよい。aが2以上の場合、Xは互いに同一でも異なってもよい。
aは1又は2が好ましく、aは2がより好ましい。
【0020】
前記式1で表される反応性ケイ素基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリス(2-プロペニルオキシ)シリル基、トリアセトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジメトキシエチルシリル基、ジイソプロポキシメチルシリル基、クロロメチルジメトキシシリル基、クロロメチルジエトキシシリル基が例示できる。活性が高く良好な硬化性が得られる点から、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基が好ましく、ジメトキシメチルシリル基及びトリメトキシシリル基がより好ましい。
【0021】
<重合体A>
重合体Aは、前記反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体(以下、「重合体A1」という。)及び前記反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(以下、「重合体A2」という。)のいずれか一方又は両方である。重合体A1は2種以上でもよい。重合体A2は2種以上でもよい。
【0022】
(重合体A1)
重合体A1は、開始剤残基と、環状エーテルの開環付加重合により形成されたポリオキシアルキレン鎖と、前記ポリオキシアルキレン鎖の末端酸素原子を含む末端基と、を有する。開始剤残基の価数と、ポリオキシアルキレン鎖の数と、末端基の数とは等しい。
環状エーテルとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド等のアルキレンオキシド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキシド以外の環状エーテルが挙げられる。特に、プロピレンオキシドが好ましい。
ポリオキシアルキレン鎖は2種以上のオキシアルキレン基を有する共重合鎖であってもよく、その場合、共重合鎖はブロック共重合鎖であってもよく、ランダム共重合鎖であってもよい。
重合体A1が有するポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシエチレン鎖、ポリ(オキシ-2-エチルエチレン)鎖、ポリ(オキシ-1、2-ジメチルエチレン)鎖、ポリ(オキシテトラメチレン)鎖、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)鎖、ポリ(オキシプロピレン・オキシ-2-エチルエチレン)鎖が挙げられる。ポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシプロピレン鎖及びポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)鎖が好ましく、ポリオキシプロピレン鎖が特に好ましい。
【0023】
重合体A1は、硬化物の硬化性の観点から、1つの末端基に平均して0.5~1.0個の前記反応性ケイ素基を有することが好ましく、0.55~0.97個であるものがより好ましく、0.65~0.95個であるものがさらに好ましい。
【0024】
重合体A1のMnは1,000~100,000が好ましく、2,000~50,000がより好ましく、3,000~40,000がさらに好ましい。Mnが前記範囲の下限値以上であると、重合体A1の質量あたりの反応性ケイ素基の導入量が多くなりすぎず、伸び物性と耐久性を両立させやすい点で好ましい。上限値以下であると、粘度が充分に低くなり作業性により優れる。
重合体A1の分子量分布は1.60以下が好ましく、1.40以下がより好ましく、1.20以下がさらに好ましく、1.17以下が特に好ましく、1.15以下が特別に好ましい。重合体A1の分子量分布は1.00以上が好ましい。分子量分布が前記上限値以下であると、硬化物の伸び物性が向上しやすい。
重合体A1の25℃における粘度は、0.1~70Pa・sが好ましく、0.5~60Pa・sがより好ましく、1~55Pa・sがさらに好ましい。前記範囲内であると作業性により優れる。
【0025】
重合体A1は、1分子中に末端基を2~8個有するものが好ましく、2~6個有するものがより好ましく、2個又は3個有するものがさらに好ましい。
重合体A1は、末端基に前記反応性ケイ素基、活性水素含有基、又は不飽和基のいずれかである基を含むことが好ましい。
【0026】
重合体A1は、1分子中に末端基を2個又は3個有し、各末端基に前記反応性ケイ素基、活性水素含有基、又は不飽和基のいずれかである基を平均して合計で0個超4.0個以下有することが好ましい。
重合体A1は、1分子中に前記反応性ケイ素基、活性水素含有基、又は不飽和基のいずれかである基を平均で合計して0.5~3.5個有することが好ましい。
【0027】
(重合体A1の製造方法)
重合体A1は、前駆重合体の末端基に前記反応性ケイ素基を導入して得られる。
前駆重合体の末端基に前記反応性ケイ素基を導入する方法としては、前駆重合体の末端基の活性水素含有基を直接反応性ケイ素基に変換する方法、又は前駆重合体の1つの末端基に対して不飽和基を1個又は2個導入した後、前記不飽和基を反応性ケイ素基に変換する方法が好ましい。
【0028】
前駆重合体は、水酸基を有する開始剤に環状エーテルを開環付加重合させた、末端基が水酸基である重合体が好ましい。
前記開始剤としては、水酸基を2~8個有する開始剤が好ましく、水酸基を2~6個有する開始剤がより好ましく、水酸基を2個又は3個有する開始剤がさらに好ましい。開始剤は、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
水酸基を2個有する開始剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、低分子量のポリオキシプロピレングリコールが例示できる。
水酸基を3個以上有する開始剤としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、低分子量のポリオキシプロピレントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュクロースが例示できる。
【0030】
開始剤に環状エーテルを開環付加重合させる際の開環付加重合触媒としては、従来公知の触媒を用いることができ、例えば、アルカリ触媒(KOH等)、遷移金属化合物-ポルフィリン錯体触媒(有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる錯体等)、複合金属シアン化物錯体触媒、ホスファゼン化合物からなる触媒が例示できる。
【0031】
重合体A1の分子量分布を狭くすることができ、粘度の低い硬化性組成物が得られやすい点から複合金属シアン化物錯体触媒が好ましい。複合金属シアン化物錯体触媒は、従来公知の化合物を用いることができ、複合金属シアン化物錯体を用いた重合体の製造方法も公知の方法を採用できる。例えば、国際公開公報第2003/062301号、国際公開公報第2004/067633号、特開2004-269776号公報、特開2005-15786号公報、国際公開公報第2013/065802号、特開2015-010162号公報に開示される化合物及び製造方法を用いることができる。
【0032】
前駆重合体の1つの末端基に対して不飽和基を1個導入する方法としては、前駆重合体の末端基の活性水素含有基に、アルカリ金属塩を作用させた後、不飽和基を有するハロゲン化炭化水素を反応させる方法が好ましい。前駆重合体の1つの末端基に対して不飽和基を2個導入する方法としては、前駆重合体の末端基の活性水素含有基に、アルカリ金属塩を作用させた後、不飽和基を有するエポキシ化合物を反応させ、次いで不飽和基を有するハロゲン化炭化水素化合物を反応させる方法が好ましい。
【0033】
不飽和基を反応性ケイ素基に変換する方法としては、不飽和基と、シリル化剤とを反応させる方法が好ましい。活性水素含有基を直接反応性ケイ素基に変換する方法としては、活性水素含有基と、シリル化剤とを反応させる方法が好ましい。
不飽和基を反応性ケイ素基に変換する方法で使用されるシリル化剤としては、不飽和基と反応して結合を形成し得る基(例えばスルファニル基)及び前記反応性ケイ素基の両方を有する化合物、ヒドロシラン化合物(例えばHSiX3-a、ただし、X、R及びaは前記式1と同様である。)が例示できる。具体的には、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリス(2-プロペニルオキシ)シラン、トリアセトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、エチルジメトキシシラン、メチルジイソプロポキシシラン、(α-クロロメチル)ジメトキシシラン、(α-クロロメチル)ジエトキシシランが例示できる。活性が高く良好な硬化性が得られる点から、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシランが好ましく、メチルジメトキシシラン又はトリメトキシシランがより好ましい。
【0034】
活性水素含有基を直接反応性ケイ素基に変換する方法で使用されるシリル化剤としては、活性水素含有基と反応して結合を形成し得る基(例えばイソシアネート基)及び前記反応性ケイ素基の両方を有する化合物(例えばイソシアネートシラン化合物)が例示できる。イソシアネートシラン化合物としては、例えば、特開2011-178955号に記載される、従来のイソシアネートシラン化合物を用いることができる。
【0035】
前駆重合体の1つの末端基に対して不飽和基を1個導入する方法、不飽和基を反応性ケイ素基に変換する方法、及び活性水素含有基を直接反応性ケイ素基に変換する方法は、従来公知の方法を用いることができ、例えば、特公昭45-36319号、特開昭50-156599号、特開昭61-197631号、特開平3-72527号、特開平8-231707号、特開2011-178955号、米国特許3632557、米国特許4960844号の各公報に提案されている方法が挙げられる。
【0036】
前駆重合体の1つの末端基に対して不飽和基を2個導入する方法としては、公知の方法を特に制限なく用いることができ、例えば、国際公開第2013/180203号公報、国際公開第2014/192842号公報、特開2015-105293号、特開2015-105322号、特開2015-105323号、特開2015-105324号、国際公開第2015/080067号公報、国際公開第2015/105122号公報、国際公開第2015/111577号公報、国際公開第2016/002907号公報、特開2016-216633号、特開2017-39782号に記載される方法を用いることができる。
【0037】
前記製造方法における、シリル化率は50モル%超100モル%以下が好ましく、55~98モル%がより好ましく、60~97モル%がさらに好ましい。硬化性組成物が、2種以上の重合体A1を含む場合、重合体A1全体における平均のシリル化率が前記の範囲内であればよい。
【0038】
(重合体A2)
重合体A2は、アクリル酸アルキルエステルに基づく繰り返し単位から形成される重合鎖及びメタクリル酸アルキルエステルに基づく繰り返し単位から形成される重合鎖の一方又は両方を有する。
重合体A2は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく繰り返し単位のほかに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な不飽和基を有する単量体に基づく繰り返し単位を有してもよい。
重合体A2を構成する単量体としては、例えば、特公平3-14068号公報、特開平6-211922号公報、特開平11-130931号公報に記載される、従来公知の単量体を用いることができる。
重合体A2を構成する全単量体に対して、(メタ)アクリル酸エステルは50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、100質量%でもよい。
【0039】
重合体A2における反応性ケイ素基は、末端基に導入されていても、側鎖に導入されていても、末端基と側鎖の両方に導入されていてもよい。
【0040】
重合体A2の1分子あたりの反応性ケイ素基の数の平均は0.5個超であり、硬化後の強度の観点から0.6個以上が好ましい。硬化物の伸びが良好となる点から4.0個以下が好ましく、3.0個以下がより好ましい。
重合体A2の1分子あたりの反応性ケイ素基の数の平均は「重合体A2中の反応性ケイ素基の濃度[mol/g]×重合体A2のMn」で算出する。重合体A2中の反応性ケイ素基の濃度[mol/g]は、NMRにより測定できる。
【0041】
重合体A2のMnは、500~100,000が好ましく、1,000~80,000がより好ましく、2,000~50,000がさらに好ましい。前記範囲の下限値以上であると、硬化物の伸び物性に優れやすく、上限値以下であると、低粘度になりやすく作業性に優れやすい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体A2の分子量分布は、3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましい。
【0042】
(重合体A2の製造方法)
重合体A2は、(メタ)アクリル酸エステルと、反応性ケイ素基及び重合性不飽和基を含む単量体とを重合することにより得られる。反応性ケイ素基及び重合性不飽和基を含む単量体としては、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、トリス(2-メトキシエトキシ)ビニルシラン、(メタ)アクリル酸-3-(メチルジメトキシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸-3-(トリメトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸-3-(トリエトキシシリル)プロピルが例示できる。これらは1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
反応性ケイ素基及び重合性不飽和基を含む単量体と、(メタ)アクリル酸エステルをフリーラジカル重合法で重合すると、側鎖に反応性ケイ素基を有する重合体A2が得られる。
リビングラジカル重合法を用いると、末端基として反応性ケイ素基を有する重合体A2が得られる。
【0044】
重合体A2は、特開2006-257405号公報、特開2006-37076号公報、特開2008-45059号公報などに記載の従来公知の重合方法で重合できる。重合に必要な開始剤などの副資材についても従来公知のものを用いることができ、反応温度や反応圧力などの反応条件も適宜選択できる。
重合方法としては、溶液重合、乳化重合、懸濁重合又はバルク重合によるフリーラジカル重合開始剤を用いた重合方法やリビングラジカル重合が例示できる。リビングラジカル重合法としては、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)、1994年、116巻、7943頁に示されているようなコバルトポルフィリン錯体を用いるもの、特表2003-500378号公報に示されているようなニトロオキサイドラジカルを用いるもの、特開平11-130931号公報に示されているような有機ハロゲン化物やハロゲン化スルホニル化合物などを開始剤とし、遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP法)が例示できる。リビングラジカル重合で得られる重合体は、分子量分布が狭く、低粘度である傾向がある。
【0045】
重合体A1と重合体A2の両方を含む場合の、重合体A1と重合体A2の合計に対する重合体A1の割合は、1~70質量%が好ましく、5~65質量%がより好ましく、10~60質量%がさらに好ましい。前記範囲内であれば、硬化性に優れやすい。
【0046】
<重合体B>
重合体Bは、第1の単量体に基づく繰り返し単位と、第2の単量体に基づく繰り返し単位と、第3の単量体に基づく繰り返し単位及び第1の化合物に基づく単位のいずれか一方又は両方とを有する重合体である。第1の単量体は、ポリフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(以下、「単量体b」という。)である。第2の単量体は、親水性基及び重合性不飽和基を有する単量体(以下、「単量体b」という。)である。第3の単量体は、前記反応性ケイ素基及び重合性不飽和基を有する単量体(以下、「単量体b」という。)である。第1の化合物は、前記反応性ケイ素基及びスルファニル基を有する化合物(以下、「化合物a」という。)である。重合体Bは2種以上でもよい。
単量体bは、ポリフルオロアルキル基を有し、親水性基、及び反応性ケイ素基を有しない。
単量体bは、親水性基を有し、ポリフルオロアルキル基、及び反応性ケイ素基を有しない。
単量体bは、反応性ケイ素基を有し、ポリフルオロアルキル基、及び親水性基を有しない。
化合物aは、反応性ケイ素基及びスルファニル基を有し、ポリフルオロアルキル基、親水性基、及び重合性不飽和基を有しない。
【0047】
重合体Bに対するフッ素原子の割合は、5~35質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましく、15~25質量%がさらに好ましい。フッ素原子の割合が前記範囲の下限値以上であると硬化性組成物の表面張力が低下しやすく、防汚性により優れ、上限値以下であると硬化性組成物の表面の親水性に優れ、セルフクリーニング性により優れる。
【0048】
単量体bは、エステル部位にフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである。フルオロアルキル基は、ポリフルオロアルキル基が好ましく、直鎖のポリフルオロアルキル基がさらに好ましい。
フルオロアルキル基の炭素数は、表面張力を低下しやすく、防汚性がより良好となる点で、1~30が好ましく、1~26がより好ましく、1~12がさらに好ましく、1~10が特に好ましく、1~8が最も好ましい。
重合体Bが単量体bに基づく繰り返し単位を含むことで、得られる硬化物の表面の表面張力が低くなりやすい点で好ましい。
【0049】
単量体bに対するフッ素原子の割合は、30~70質量%が好ましく、35~65質量%がより好ましく、40~60質量%がさらに好ましい。フッ素原子の割合が前記範囲の下限値以上であると硬化性組成物の表面張力が低下しやすく、防汚性により優れ、上限値以下であると硬化性組成物の表面の親水性により優れ、セルフクリーニング性により優れる。
単量体b中の、水素原子数とフッ素原子数の合計に対するフッ素原子数の割合は、30~80%が好ましく、35~75%がより好ましく、40~70%がさらに好ましい。フッ素原子数の割合が前記範囲の下限値以上であると硬化性組成物の表面張力が低下しやすく、防汚性により優れ、上限値以下であると硬化性組成物の表面の親水性により優れ、セルフクリーニング性により優れる。
【0050】
単量体bは、硬化性組成物の表面張力低下を目的とする点で、下式3で表される単量体を含むことが好ましい。
CH=C(R11)-C(=O)O-Z11-R12 式3
前記式3中、R11は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を示し、Z11は単結合又は2価の有機基を示し、R12は炭素数1~10のパーフルオロアルキル基を示す。
【0051】
11の炭素数は、1~6が好ましく、1~4がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。
12の炭素数は、1~10が好ましく、1~8がより好ましく、4~6がさらに好ましい。
11とR12の合計炭素数は、2~16が好ましく、2~14がより好ましく、2~10がさらに好ましく6~8が最も好ましい。
【0052】
11である2価の有機基は、炭素原子間又はR12に結合する側の末端に、-O-、-NH-、-CO-、-S-、-SO-、-CD=CD-(ただし、D、Dは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。)を有してもよいアルキレン基及びアルケニレン基が好ましい。
11の例としては、単結合、-CH-、-(CH-、-(CH-、-CHCH(CH)-、-CH(CH)CHCH-、-CH-CH=CH-、-(CH-S-、-(CH-S-(CH-、-(CH-SO-(CH-が挙げられる。単量体bの安定性の点で、-(CH-、-(CH-、-CH(CH)CHCH-等のアルキレン基が好ましい。
【0053】
前記式3で表される単量体として、R11が水素原子、ハロゲン原子又はメチル基、Z11が炭素数1~6のアルキレン基、R12が炭素数1~10のパーフルオロアルキル基である単量体が、硬化性組成物の硬化物における表面をより親水化しやすく、セルフクリーニング性がより良好となる点で好ましく、R11が水素原子、塩素原子又はメチル基、Z11が炭素数1~2のアルキレン基、R12が炭素数4~6のパーフルオロアルキル基である単量体がより好ましい。
【0054】
前記式3で表される単量体bとしては、
CH=CH-C(=O)O-(CH(CFCF
CH=C(CH)-C(=O)O-(CH(CFCF
CH=CH-C(=O)O-(CH(CFCF
CH=C(CH)-C(=O)O-(CH(CFCF
CH=CH-C(=O)O-(CH(CFCF
CH=C(CH)-C(=O)O-(CH(CFCF
CH=CH-C(=O)O-(CH(CFCF
CH=C(CH)-C(=O)O-(CH(CFCF
CH=CH-C(=O)O-(CHCH(CH))(CFCF
CH=C(CH)-C(=O)O-(CHCH(CH))(CFCF
CH=CH-C(=O)O-(CHCH(CH))(CFCF
CH=C(CH)-C(=O)O-(CHCH(CH))(CFCF
CH=CCl-C(=O)O-(CH(CFCF
CH=CCl-C(=O)O-(CH(CFCF、が例示できる。
【0055】
重合体Bを構成する単量体bは、2種以上でもよい。
単量体bに基づく繰り返し単位に対して、前記式3で表される単量体に基づく繰り返し単位は80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。100質量%でもよい。
【0056】
単量体bの親水性基は、アルキレンオキシド基(-R’O-;R’はアルキレン基))、アミノ基、ヒドロキシ基、アクリルアミド基(CH=CHCONH-)、カルボキシ基、リン酸基(-PO 2-)、スルホン基(-SO(OH))、及び4級アンモニウム塩からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。前記R’の炭素数は1~5が好ましく、1~3がより好ましい。
【0057】
得られる重合体の分散安定性が良好になりやすい点で、単量体bが親水性基として、-(R’O)-で表されるアルキレンオキシド鎖を有することが好ましい。vは1~30の整数を表す。
vが2以上の場合、v個の(R’O)は1種でもよく2種以上でもよい。また、(R’O)が2種以上場合、重合はランダム重合でもよく、ブロック重合でもよい。
【0058】
単量体bの重合性不飽和基としては、例えば、CH=CH-、CH=CH-CH-O-、CH=CR21-C(=O)O-、CH=CR21-OC(=O)-が挙げられる(ただし、前記R21は水素原子、塩素原子、フッ素原子又は炭素数1~3の直鎖若しくは分岐のアルキル基である。)。単量体bの重合性不飽和基としては、CH=CH-、CH=CH-CH-O-、CH=CH-C(=O)O-、CH=C(CH)-OC(=O)O-、CH=CH-OC(=O)-及びCH=C(CH)-OC(=O)-が好ましく、CH=CH-C(=O)O-及びCH=C(CH)-OC(=O)O-がより好ましい。
重合体Bが単量体bに基づく繰り返し単位を含むことで、得られる硬化物の表面の表面張力が低くなりやすい点で好ましい。
【0059】
単量体b2は、得られる硬化物の良好な親水性が得られやすい点で、下式2で表される 単量体を含むことが好ましい。
20-Z21-(CHCHO)22 式2
前記式2中、R20は、CH=CH-、CH=CH-CH-O-、CH= CR21-C(=O)O-又はCH=CR21-OC(=O)-を表し、R22は、水素原子又はメチル基を表す。Z21は単結合又は炭素数1~10のアルキレン基を表す。R21は前記と同じであり、nは1~24の整数を表す。
【0060】
21の炭素数は、0~10が好ましく、0~5がより好ましく、0~3がさらに好ましい。
nは2~24が好ましく、4~9がより好ましい。
【0061】
前記式2で表される単量体として、R20がCH=CR21-C(=O)O-、R21が水素原子又はメチル基、Z21が炭素数0~10のアルキレン基で、nが2~24である単量体が、親水化の点で好ましく、R20がCH=CR21-C(=O)O-、R21が水素原子又はメチル基、Z21が炭素数0~3のアルキレン基で、nが4~9である単量体がより好ましい。
【0062】
前記式2で表される単量体bとしては、
CH=CH-C(=O)-O-(CHCHO)-H、
CH=CH-C(=O)-O-(CHCHO)-H、
CH=CH-C(=O)-O-(CHCHO)10-H、
CH=CH-C(=O)-O-(CHCHO)24-H、
CH=C(CH)-C(=O)-O-(CHCHO)-H、
CH=C(CH)-C(=O)-O-(CHCHO)-H、
CH=C(CH)-C(=O)-O-(CHCHO)-H、
CH=C(CH)-C(=O)-O-(CHCHO)23-H、
CH=CH-C(=O)-O-(CHCHO)4-(CHCH(CH)O)-H、
CH=CH-C(=O)-O-(CHCHO)5-(CHCH(CH)O)-H、
CH=CH-C(=O)-O-(CHCHO)-CH
CH=CH-C(=O)-O-(CHCHO)-CH
CH=CH-C(=O)-O-(CHCHO)-CH
CH=CH-C(=O)-O-(CHCHO)13-CH
CH=C(CH)-C(=O)-O-(CHCHO)-CH
CH=C(CH)-C(=O)-O-(CHCHO)-CH
CH=C(CH)-C(=O)-O-(CHCHO)-CH
CH=C(CH)-C(=O)-O-(CHCHO)13-CH
CH=C(CH)-C(=O)-O-(CHCHO)23-CH
が例示できる。
【0063】
前記式2で表される単量体以外の単量体bとしては、
CH=CH-C(=O)-O-(CHCHO)-(CHCH(CH)O)-CH
CH=CH-C(=O)-O-(CHCHO)-(CHCH(CH)O)-H、
CH=CH-C(=O)-OH、
CH=C(CH)-C(=O)-OH、
CH=C(CH)-C(=O)-CH-CH-NH
CH=CH-C(=O)-CH-CH-NH
CH=C(CH)-C(=O)-N(CH
CH=CH-C(=O)-N(CH
CH=C(CH)-C(=O)-N(CHCHOCHCH)、
CH=CH-C(=O)-N(CHCHOCHCH)、
CH=CH―C(=O)-NH-(CH-N(CH・Cl
が例示できる。
【0064】
重合体Bを構成する単量体bは、2種以上でもよい。
単量体bに基づく繰り返し単位に対して、前記式2で表される単量体に基づく繰り返し単位は80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。100質量%でもよい。
【0065】
単量体b及び化合物aが有する前記式1で表される反応性ケイ素基としては、活性が高く。硬化性組成物の硬化性がより優れる点から、ジエトキシメチルシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジイソプロポキシメチルシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基が好ましく、ジエトキシメチルシリル基、ジメトキシメチルシリル基、トリメトキシシリル基がより好ましい。
単量体b及び化合物aは前記反応性ケイ素基を1分子中に平均して0.5~1個有することが好ましく、0.7~1個有することがより好ましく、0.8~1個有することがさらに好ましい。
重合体Bが単量体bに基づく繰り返し単位又は化合物aに基づく単位を含むことで、得られる硬化物の表面の親水性が維持しやすい点で好ましい。
【0066】
単量体bは、単量体b及び単量体bとの重合性がより良好である点で、下式4で表される単量体を含むことが好ましい。
CH=C(R31)-C(=O)O-Z31 式4
前記式4中、R31は前記式3のR11と同じであり、Z31は、前記反応性ケイ素基を置換基として有する1価の有機基を示す。
【0067】
31である反応性ケイ素基を有する1価の有機基としては、反応性ケイ素基を有するアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、α-クロロアルキル基及びトリオルガノシロキシ基が挙げられ、硬化性組成物の硬化性と安定性がより良好である点で、アルキル基、アルコキシ基が好ましく、アルキル基がさらに好ましい。アルキル基、アルケニル基は直鎖であってもよいし、分岐であってもよい。
【0068】
31は、前記有機基中の1個以上の水素原子が前記反応性ケイ素基で置換された構造となる。前記式4で表される単量体として、R31が水素原子又はメチル基、Z31が末端の1個の水素原子が前記反応性ケイ素基で置換された炭素数1~6の直鎖のアルキル基である単量体が、硬化性の点で好ましく、R31が水素原子又はメチル基、Z31が末端の1個の水素原子が前記反応性ケイ素基で置換された炭素数1~3の直鎖のアルキル基である単量体がより好ましい。
【0069】
前記式4で表される単量体bとしては、
CH=CH-C(=O)O-(CH)-Si、
CH=C(CH)-C(=O)O-(CH)-Si、
CH=CH-C(=O)O-(CHSi、
CH=C(CH)-C(=O)O-(CHSi、
CH=CH-C(=O)O-(CHSi、
CH=C(CH)-C(=O)O-(CHSi、
CH=CH-C(=O)O-(CHSi、
CH=C(CH)-C(=O)O-(CHSi、
が例示できる。
前記式中、Siは反応性ケイ素基を示す。
【0070】
重合体Bを構成する単量体bは、2種以上でもよい。
単量体bに基づく繰り返し単位の総質量に対して、前記式4で表される単量体に基づく繰り返し単位は80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。100質量%でもよい。
【0071】
化合物aは、重合体Bへの導入率がより良好となる点で、下式5で表される化合物を含むことが好ましい。
41-SH 式5
41は、前記反応性ケイ素基を置換基として有する1価の有機基を示し、好ましい態様は前記式4のZ31と同じである。
【0072】
化合物aとしては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3-メルカプトプロピルジエトキシメチルシランが例示できる。
【0073】
重合体Bは、エステル部位に炭素数1~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(以下、「単量体b」という。)に基づく繰り返し単位をさらに含んでもよい。
重合体Bが単量体bに基づく繰り返し単位を含むことで、得られる硬化物表面の親水性が向上する。
単量体bは、ポリフルオロアルキル基、親水性基及び反応性ケイ素基を有しない。
【0074】
単量体bは、重合体Aとの相溶性が得られやすい点で、下式6で表される単量体を含むことが好ましい。
CH=C(R51)-C(=O)O-R52 式6
前記式6中、R51は前記式3のR11と同じであり、R52は炭素数1~8のアルキル基を示す。
前記式6で表される単量体bとしては、重合体Aとの相溶性の点で、R52として、炭素数2~8のアルキル基を有する単量体が好ましく、炭素数2~6のアルキル基を有する単量体がより好ましい。前記アルキル基は、直鎖でも分岐でもよく、重合体Aとの相溶性の点で直鎖のアルキル基が好ましい。
【0075】
前記式6で表される単量体bとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシルが例示できる。(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシルが好ましく、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシルがより好ましい。
【0076】
重合体Bが単量体bに基づく繰り返し単位を含む場合、単量体bは、2種以上でもよい。
【0077】
重合体Bは、必要に応じて、単量体bに基づく繰り返し単位、単量体bに基づく繰り返し単位、単量体bに基づく繰り返し単位、化合物aに基づく単位、及び単量体bに基づく繰り返し単位以外のその他の単位を含んでもよい。
その他の単位は、単量体b、単量体b、単量体bと重合体を形成する単量体に基づく繰り返し単位であれば特に限定されない。例えば、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル等の炭素数9~24のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに基づく繰り返し単位、塩化ビニル、塩化ビニリデン、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、クロロメチルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル等のビニルエーテル、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化ビニルに基づく繰り返し単位、酢酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル等のビニルエステル、酢酸アリル、アジピン酸ジアリル等のアリルエステル、ジアリルエーテル、1,3ジアリルオキシ-2-プロパノール等のアリルエーテル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の長鎖アルキルビニル、エチレン、プロピレン、1,4-ブタジエンなどの炭化水素オレフィン化合物が挙げられる。
その他の繰り返し単位は、重合体Bを構成する全ての繰り返し単位に対して、50質量%未満が好ましく、40質量%未満が好ましい。
【0078】
重合体Bを構成する全ての繰り返し単位に対する単量体bに基づく繰り返し単位の割合は、10~60質量%が好ましく、15~55質量%がより好ましく、20~50質量%がさらに好ましい。
重合体Bを構成する全ての繰り返し単位に対する単量体bに基づく繰り返し単位の割合は、10~60質量%が好ましく、15~55質量%がより好ましく、20~50質量%がさらに好ましい。
重合体Bが単量体bに基づく繰り返し単位を含む場合、重合体Bを構成する全ての繰り返し単位に対する単量体bに基づく繰り返し単位の割合は、0.1~10質量%が好ましく、0.2~8質量%がより好ましく、0.3~6質量%がさらに好ましい。
重合体Bが化合物aに基づく単位を含む場合、重合体Bを構成する全ての繰り返し単位に対する化合物aに基づく単位の割合は、0.1~5質量%が好ましく、0.2~4質量%がより好ましく、0.3~3質量%がさらに好ましい。
重合体Bが単量体bに基づく繰り返し単位を含む場合、重合体Bを構成する全ての繰り返し単位に対する単量体bに基づく繰り返し単位の割合は、1~40質量%が好ましく、2~35質量%がより好ましく、5~30質量%がさらに好ましい。
【0079】
重合体Bを構成する全ての繰り返し単位に対する単量体bに基づく繰り返し単位と、単量体bに基づく繰り返し単位と、単量体bに基づく繰り返し単位と、化合物aに基づく単位の合計の割合は、50~95質量%が好ましく、55~95質量%がより好ましく、60~90質量%がさらに好ましい。
重合体Bが単量体bに基づく繰り返し単位と、化合物aに基づく単位の両方を含む場合、単量体bに基づく繰り返し単位に対する化合物aに基づく単位の割合(a/b)は、0.1~50が好ましく、0.2~30がより好ましく、0.5~20がさらに好ましい。
【0080】
重合体BのMnは、3,000~20,000が好ましく、4000~15000がより好ましく、4500~12000がさらに好ましい。前記範囲内であると、硬化性組成物の表面への移行性の点で優れている。
重合体Bの分子量分布は、2.5以下が好ましく、2.0以下がより好ましい。
【0081】
<重合体Bの製造方法>
重合体Bは、単量体bと、単量体bと、単量体b及び化合物aのいずれか一方又は両方とを、有機溶媒中で重合反応させて得られる。重合体Bが単量体bに基づく繰り返し単位を含む場合は、単量体bと、単量体bと、単量体b及び化合物aのいずれか一方又は両方と、単量体bとを含む単量体成分とを、有機溶媒中で重合反応させて得られる。有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソブタノール、2-プロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ヘキサン、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等が挙げられる。単量体の溶解性が得られやすく、良好な収率が得られやすい点で、酢酸エチル、2-プロパノール、及びイソブタノールが好ましい。有機溶媒は2種以上の混合物でもよい。
【0082】
前記重合反応において、開始剤の例としては、パーオキシド重合開始剤、アゾ重合開始剤、又はレドックス重合開始剤や金属化合物触媒等が挙げられる。ラジカル重合開始剤としては、2,2’-アゾビスイソブチロ、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシド、アセチルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
重合温度や重合時間は、使用する溶媒の沸点や開始剤の半減期温度などにより適宜選択できるが、重合温度は20~200℃であってよく、50~150℃が好ましく、重合時間は数時間~数十時間が好ましい。
【0083】
前記重合反応においては、必要により、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、n-ドデシルメルカプタン、n-オクタデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、α-メチルスチレン、α―メチルスチレンダイマーが挙げられる。
【0084】
<硬化性組成物>
硬化性組成物は、重合体A及び重合体Bをそれぞれ前記方法で合成し、重合体A及び重合体Bに、さらに必要に応じた成分を添加し、混合して得られる。
硬化性組成物における、重合体Aの割合は、5~60質量%が好ましく、10~55質量%がより好ましく、15~50質量%がさらに好ましい。重合体Aの割合が、前記範囲内であると、硬化性組成物の伸び特性がより良好となる。
硬化性組成物における、重合体Bの割合は、0.1~20質量%が好ましく、0.5~15質量%がより好ましく、1~10質量%がさらに好ましい。重合体Bの割合が、前記範囲内であると、硬化性組成物の水洗浄後の汚染がより低下しやすくなる。
硬化性組成物における、重合体A及重合体Bの合計の割合は、5~80質量%が好ましく、10~70質量%がより好ましく、15~60質量%がさらに好ましい。重合体A及重合体Bの合計の割合が前記範囲内であると、得られる硬化物が防汚性、セルフクリーニング性に優れる。
重合体Aの100質量部に対して、重合体Bの含有量は1~20質量部が好ましく、2~15質量部がより好ましく、3~10質量部がさらに好ましい。重合体Bの含有量が前記範囲の下限値以上であると得られる硬化物が防汚性、セルフクリーニング性に優れ、上限値以下であると重合体Aと重合体Bの相溶性に優れる。
硬化性組成物の総質量に対するフッ素原子の割合は、0.1~15質量%が好ましく、0.2~12質量%がより好ましく、0.3~10質量%がさらに好ましい。フッ素原子の含有割合が前記範囲の下限値以上であると硬化性組成物の表面張力が低下しやすく、防汚性性により優れ、上限値以下であると硬化性組成物の表面の親水性に優れ、セルフクリーニング性により優れる。
硬化性組成物における、重合体Aが有する反応性ケイ素基の数に対する重合体Bが有する反応性ケイ素基の数の割合は、0.1~40%が好ましく、0.3~30%がより好ましく、0.5~20%がさらに好ましい。前記範囲内であると、より硬化性組成物の伸び特性が優れるとともに、硬化性組成物の表面の防汚染性の維持性が良好となる。
【0085】
重合体Aと重合体Bとを混合した混合物の25℃における粘度は、1.5~50Pa・sが好ましく、2~35Pa・sがより好ましく、4~40Pa・sがさらに好ましい。重合体Aと重合体Bの混合物の粘度が前記範囲の下限値以上であると作業中の液だれが起こりにくく、上限値以下であると作業性が良好になりやすい。
重合体Aと重合体Bの分子量を低くする方法として、例えば、重合体Bの分子量を低くする等の方法が挙げられる。
前記粘度は、E型粘度計(東機産業社製、製品名:RE80型)を用いて、測定温度25℃ローターNo.4の条件で粘度を測定した値である。
【0086】
アミン化合物は硬化物表面のタック(べたつき)抑制に寄与する。
本発明の硬化性組成物は、アミン化合物を含まなくても、良好なセルフクリーニング性発揮するが、アミン化合物を含んだ場合には、セルフクリーニング性が向上しやすい。
アミン化合物は、例えば特開2008-291159号公報に記載されている、凝固点が34℃以下の天然由来のアミン化合物、及び融点が35℃以上のアミン化合物からなる群から選ばれる1種以上を用いることができる。凝固点が34℃以下の天然由来のアミン化合物としては、アルキル基を有するアミン化合物であって、アルキル基の鎖長分布が炭素数8~16であるアミン化合物が好ましい。具体例としては、ココナットアミン(ココナツ油を原料としたアミン)、オクチルアミン、ラウリルアミンが挙げられる。融点が35℃以上のアミン化合物としては、炭素数6~10の芳香族炭化水素基又は炭素数18~24の脂肪族炭化水素基を有するアミン化合物が挙げられ、例えば、ステアリルアミン、フェニレンジアミン、トルエンジアミンが挙げられる。耐熱性の点で融点が35℃以上のアミン化合物が好ましい。
また、加水分解によりアミンを生じる化合物(例えば、ケチミン化合物など)を、アミン化合物として用いてもよい。
【0087】
<その他の成分>
硬化性組成物は、重合体A、重合体B及びアミン化合物以外のその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、重合体A、重合体B以外のその他の重合体、充填剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、脱水剤、接着性付与剤、酸素硬化性化合物、光硬化性化合物、硬化触媒(シラノール縮合触媒)、アミン化合物が例示できる。
その他の重合体の主鎖骨格としては、例えば、飽和炭化水素系重合体、ポリエステル系重合体、重合体A2以外のビニル系重合体、ポリサルファイド系重合体、ポリアミド系重合体、ポリカーボネート系重合体、ジアリルフタレート系重合体が挙げられる。これらの重合体は前記反応性ケイ素基を有していてもよい。
その他の成分は、国際公開第2013/180203号、国際公開第2014/192842号、国際公開第2016/002907号、特開2014-88481号公報、特開2015-10162号公報、特開2015-105293号公報、特開2017-039728号公報、特開2017-214541号公報などに記載される従来公知のものを、制限なく組み合わせて用いることができる。
各成分は2種類以上を併用してもよい。
【0088】
前記可塑剤としては、フタル酸エステル(フタル酸ジイソニル等)、エポキシ可塑剤(4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸-ジ-2-エチルヘキシル等)、炭素数6~18のパラフィン系炭化水素(n-ドデカン等)、アクリル系可塑剤(無溶剤型アクリルポリマー等)、ポリエーテル系可塑剤(オキシアルキレン重合体等)が挙げられる。
前記可塑剤の一部又は全部として、Mnが1,000以上、Mwが1,000以上、又は水酸基1個当たりの分子量が500以上の高分子可塑剤を用いると、硬化物の表面汚染や周辺汚染の低減、硬化物上の塗料の乾燥性の向上、塗料表面の汚染性の低減、耐候性の向上などの効果が得られやすい点で好ましい。
【0089】
硬化性組成物は、すべての配合成分を予め配合し密封保存して、施工後に空気中の湿気により硬化させる1液型でもよく、少なくとも反応性ケイ素基を有する成分を含む主剤組成物と、少なくとも硬化触媒を含む硬化剤組成物とを別々に保存し、使用前に硬化剤組成物と主剤組成物を混合する2液型でもよい。施工が容易であるため、1液型の硬化性組成物が好ましい。
【0090】
1液型の硬化性組成物は水分を含まないことが好ましい。水分を含む配合成分を予め脱水乾燥するか、また配合混練中に減圧して脱水することが好ましい。
2液型の硬化性組成物において、硬化剤組成物は水を含んでもよい、主剤組成物は少量の水分を含んでもゲル化し難いが、貯蔵安定性の点からは配合成分を予め脱水乾燥することが好ましい。
貯蔵安定性を向上させるために、1液型の硬化性組成物又は2液型の主剤組成物に脱水剤を添加してもよい。
【0091】
硬化性組成物の用途としては、シーリング材(例えば建築用弾性シーリング材、複層ガラス用シーリング材、ガラス端部の防錆・防水用封止材、太陽電池裏面封止材、建造物用密封材、船舶用密封材、自動車用密封材、道路用密封材)、電気絶縁材料(電線・ケーブル用絶縁被覆材)、接着剤が好適である。
特に、セルフクリーニング性が要求される用途に好適であり、例えば屋外に施工されるシーリング材が例示できる。
【実施例
【0092】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0093】
<測定方法>
[前駆重合体の分子量]
以下の例におけるオキシアルキレン重合体の前駆重合体の水酸基換算分子量は、前記前駆重合体の水酸基価をJIS K 1557(2007)に基づいて算出し、「56,100/(水酸基価)×(開始剤の活性水素の数、又は前駆重合体の末端基の数)」として算出した値である。
【0094】
[Mn及び分子量分布]
HLC-8220GPC(東ソー社製品名)を用いて、Mw、Mn及びMw/Mnを以下の条件で求めた。
(GPCの測定条件)
使用機種:HLC-8220GPC(東ソー社製品名)、
データ処理装置:SC-8020(東ソー社製品名)、
使用カラム:TSG gel SuperMultiporeHZ 4000(東ソー社製品名)の2本と、TSG gel SuperMultiporeHZ 2500(東ソー社製品名)の2本を直列で連結して使用した。
カラム温度:40℃、
検出器:RI、
溶媒:テトラヒドロフラン、
流速:0.35ml/分、
試料濃度:0.5質量%、
注入量:20μl、
検量線作成用標準サンプル:ポリスチレン([Easical]PS-2[Polystyrene Standards]、Polymer Laboratories社製品名)。
【0095】
[重合体A1における1分子中の反応性ケイ素基の平均数(シリル基数)]
末端基に塩化アリルを用いて不飽和基を導入し、シリル化剤を前記不飽和基と反応させて反応性ケイ素基を導入する方法において、末端基に導入された不飽和基に対する、シリル化剤の反応性ケイ素基の仕込み当量(モル比)をシリル化率とした。
塩化アリルを用いて導入された不飽和基とシリル化剤の反応において、副反応によりシリル化剤と反応しない不飽和基はおよそ10%である。したがって不飽和基の90モル%未満をシリル化剤と反応させる場合には、上記仕込み当量をシリル化率とする。
シリル化率に基づいてシリル基数を算出した。
【0096】
[重合体A2における1分子中の反応性ケイ素基の平均数(シリル基数)]
重合体A2のシリル基数は、H-NMRにより算出した重合体中の反応性ケイ素基の濃度[mol/g]に上記GPCにより測定したMnを掛けることにより算出した。
【0097】
[フッ素原子の含有割合]
重合体B中のフッ素原子の割合、硬化性組成物中のフッ素原子の割合は、重合体Bの10gを600℃で1時間加熱して灰化させた後に、エネルギー分散型X線分析(EDX分析)により得られたフッ素原子の強度から、算出した。
【0098】
[接触角]
約3mm(深さ)×30mm(幅)の溝を設けたフレキシブルボード上に、各例の硬化性組成物をシーリング材として打設し、温度23℃、相対湿度50%雰囲気下で7日間放置して、硬化物を得た。室温(25℃)にて、硬化物表面に液滴1μLの水を静置し、5秒後及び60秒間後の接触角を測定した。この条件における測定結果を表4において「通常」の欄に示す。
前記で得られた硬化物を、さらに温度50℃、相対湿度65%雰囲気下で3日間放置した。室温(25℃)にて、得られた硬化物表面に液滴1μLの水を静置し、5秒後及び60秒後の接触角を測定した。この条件における測定結果を表4において「耐熱」の欄に示す。
【0099】
[硬化物汚染性]
約3mm(深さ)×30mm(幅)の溝を設けたフレキシブルボード上に、各例の硬化性組成物をシーリング材として打設し、温度23℃、相対湿度50%雰囲気下で7日間放置して硬化物を得た。硬化物の表面に赤土を振りかけ、フレキシブルボードを垂直に立てた状態のままで20cmの高さから床に3回落とし、余分な赤土を振り落として試験体とした。得られた試験体の赤土が付着している状態について、色差計を用いてEab(汚染後)の値を測定した。次いで、試験体を垂直に立てた状態で、赤土を振りかけた面に、霧吹きにて20cmの距離から水100ccを吹きかけ、放置乾燥後、赤土が付着している状態について、色差計を用いてEab(水洗浄後)の値を測定した。
前記のEab(汚染後)の値が、30以下では防汚性が良好であると評価し、表には判定「〇」と記載する。値が30超40以下では「△」、値が40超の場合は、防汚性が不良であると評価し、表には「×」と記載する。
前記Eab(水洗浄後)の値が、25以下ではセルフクリーニング性が良好であると評価し、表には判定「〇」と記載する。値が25超35以下では「△」、値が35超の場合は、セルフクリーニング性が不良であると評価し、表には「×」と記載する。
【0100】
<重合体A、重合体Bの合成>
(合成例1:重合体A1)
プロピレングリコールを開始剤とし、配位子がt-ブチルアルコールの亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体を触媒として使用してプロピレンオキシドを重合し、水酸基換算分子量が16,000の前駆重合体を得た。次いで、前駆重合体の水酸基量に対して1.05モル当量のナトリウムメトキシドのメタノール溶液を添加して前駆重合体をアルコラート化した。次に、加熱減圧によりメタノールを留去し、さらに前駆重合体の水酸基量に対して過剰量の塩化アリルを添加して末端基にアリルオキシ基を導入した。次に、塩化白金酸六水和物の存在下、前駆重合体の変換されたアリルオキシ基に対して0.65モル当量のメチルジメトキシシランをシリル化剤として添加し、70℃にて5時間反応させ、反応性ケイ素基としてジメトキシメチルシリル基が1つの末端基に平均して0.65個導入された重合体(重合体A1)を得た。
得られた重合体のMn、Mw/Mn、シリル基数を表1に示す(以下、同様に示す。)。
【0101】
(合成例2:重合体A2)
単量体としてブチルアクリレートの85g、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(日油社製品名:AME400、以下「AME400」という、1分子中にオキシエチレン基を約9モル含む。)の400g、3-メタクリロイルオキシプロピルジメトキシシラン(以下、「MPDMS」という。)15gを用いた。単量体の総質量500gに対して、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル(富士フィルム和光純薬社製品名:V-59、以下「V-59」という。)の5gを混合した混合液を、105℃に加熱したイソブタノールの500gに5時間かけて滴下した後1時間重合し、次いで、加熱減圧下でイソブタノールを除去して、(メタ)アクリル酸エステル重合体(重合体A2)を得た。重合体A2の単量体の構成等を表2に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
(合成例3:重合体B1)
単量体としてブチルアクリレートの97.5g、AME400の195g、2-パーフルオロヘキシルエチルメタクリレート(以下「C6FMA」という。)の195g、3-メタクリロイルオキシプロピルジエトキシシラン(以下、「MPDES」という。)12.5gを用いた。単量体の総質量500gに対して、連鎖移動剤であるn-ドデシルメルカプタン(以下「DoSH」という。)の5.9g及び開始剤である2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル(富士フィルム和光純薬社製品名:V-65、以下「V-65」という。)の9.8gを混合した混合液を、80℃に加熱したイソブタノールの500gに2時間かけて滴下した後2時間重合し、次いで、加熱減圧下でイソブタノールを除去して、重合体B1を得た。
得られた重合体の単量体の構成等を表2に示す(以下、同様に示す。)。
【0104】
(合成例:重合体B2)
単量体としてブチルアクリレートの100g、AMEの200g、C6FMAの200gを用いた。単量体の総質量500gに対して、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(以下、「MCPTMS」という。)の10g及びV-65の15gを混合した混合液を、80℃に加熱したイソブタノール500gに2時間かけて滴下した後2時間重合し、次いで、加熱減圧下でイソブタノールを除去して、重合体B2を得た。
【0105】
【表2】
【0106】
<その他の成分>
表3に記載の添加物は以下の通りである。
ホワイトンSB:重質炭酸カルシウム、白石工業社製品名。
CCR:白艶化CCR膠質炭酸カルシウム、白石工業社製品名。
R-820:酸化チタン、石原産業社製品名。
バルーン80GCA:有機バルーン、松本油脂社製品名。
UP-1110:ARUFON UP-1110、Mn=1,500のアクリルポリマー、東亜合成社製品名。
EL3020:1分子あたり水酸基を2個有し、水酸基換算分子量が2000であるオキシアルキレン重合体、エクセノール 3020、旭硝子社製品名。
DINP:フタル酸ジイソノニル。
N-12D:n-ドデカン、純度98.0%、カクタスノルマルパラフィンN-12D、JXTGエネルギー社製品。
サンソサイザーEPS:4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸-ジ-2-エチルヘキシル、新日本理化社製品名。
IRGANOX1135:ヒンダードフェノール系酸化防止剤、BASF社製品名。
TINUVIN326:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、BASF社製品名。
TINUVIN765:3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤、BASF社製品名。
LA-63P:アデカスタブLA-63P、ADEKA社製品名。
KBM-1003:ビニルトリメトキシシラン、信越化学社製品名。
KBM-403:3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学社製品名。
KBM-603:3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、信越化学社製品名。
ラウリルアミン:試薬、純正化学社製。
ファーミンCS:ココナットアミン、花王社製品名。
EH-235R-2:ケチミン化合物、ADEKA社製品名。
桐油:空気酸化硬化性化合物、木村社製。
M-309:アロニックスM-309、東亜合成社製品名。
U-220H:錫触媒、日東化成社製品名。
【0107】
【表3】
【0108】
<硬化性組成物の製造>
例1~3、例6~29は実施例であり、例4及び5は比較例である。
【0109】
(例1~5)
表4に示す配合(単位:質量部)の重合体A、重合体B及び表3に示す配合の添加剤1を混合して硬化性組成物を製造した。表3に示す配合は重合体A及び重合体Bの合計100質量部に対する値(単位:質量部)である。
得られた硬化性組成物の硬化物について、前記の方法により、接触角及び硬化物汚染性を評価した。結果を表4に示す。
【0110】
例1~3は、汚染後及び水洗浄後のEab値が低く、防汚性及びセルフクリーニング性が良好であった。
【0111】
【表4】
【0112】
(例6~29)
前記例1~3において添加剤を表3の添加剤2~9に変更してそれぞれ硬化性組成物を製造し、前記と同様に評価した。例6~8は添加剤2を添加した例であり、例9~11は添加剤3を添加した例であり、例12~14は添加剤4を添加した例であり、例15~17は添加剤5を添加した例であり、例18~20は添加剤6を添加した例であり、例21~23は添加剤7を添加した例であり、例24~26は添加剤8を添加した例であり、例27~29は添加剤9を添加した例である。いずれの例においても、汚染後及び水洗浄後のEab値が低く、防汚性及びセルフクリーニングが良好であった。