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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】めっき装置およびめっき方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/06 20060101AFI20231108BHJP
   C25D 7/06 20060101ALI20231108BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
C25D17/06 J
C25D7/06 E
H05K3/18 L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020038314
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021139005
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須田 貴広
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-067852(JP,A)
【文献】特開2015-067854(JP,A)
【文献】特開2007-254877(JP,A)
【文献】特開平5-230697(JP,A)
【文献】特開平2-285097(JP,A)
【文献】実開昭62-070180(JP,U)
【文献】国際公開第2019/078063(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/078064(WO,A1)
【文献】特開昭63-35794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 7/00
C25D 17/00
C25D 21/00
H05K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状の基材フィルムを複数のクランプで吊持して、めっき槽を含むめっき装置内を移動させて、前記基材フィルムの表面にめっき層を形成するめっき装置において、
前記クランプは、電流を供給する給電体と接触する接触治具と前記基材フィルムを挟持する挟持部を備えており、
前記クランプを移動させる移動経路において、前記接触治具の接触面を清掃する清掃体を具備する清掃器具が設けられている
ことを特徴とするめっき装置。
【請求項2】
前記清掃器具は、前記クランプの走行方向において前後に2台が配置されている
ことを特徴とする請求項1記載のめっき装置。
【請求項3】
前記清掃器具は、前記清掃体を前記接触治具に押圧付勢する圧縮バネを備えており、
走行方向前側のクランプの圧縮バネは押圧付勢力が小さく、走行方向後側のクランプの圧縮バネは押圧付勢力が大きい
ことを特徴とする請求項2記載のめっき装置。
【請求項4】
前記めっき装置における前記移動経路は、前記クランプが前記基材フィルムを把持して移動する把持区間と、前記クランプが前記基材フィルムを把持していない非把持区間とからなり、
前記清掃器具は、前記非把持区間に配置されている
ことを特徴とする請求項1、2または3記載のめっき装置。
【請求項5】
前記清掃器具は、清掃体と、該清掃体を支持する支持板と、該支持板を支軸を介して支持する本体ボックスとからなり、
前記清掃体を前記支持板に取付けた取付位置と前記支持板を前記本体ボックスに取付ける支軸とは、前記クランプの走行方向において間隔があけられている
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載のめっき装置。
【請求項6】
前記清掃体が、針状素材を束ねたブラシ体である
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載のめっき装置。
【請求項7】
長尺帯状の基材フィルムを複数のクランプで吊持して、めっき槽を含むめっき装置内を移動させて、前記基材フィルムの表面にめっき層を形成するめっき方法であって、
前記クランプは、その移動経路の適所において、接触治具の接触面が清掃器具で清掃される
ことを特徴とするめっき方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置およびめっき方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、銅張積層板などのめっき製品を得るために用いられるめっき装置およびめっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
めっき装置は、めっき槽内を通過させる間に基材フィルムの表面に金属薄膜を電気めっきする装置である。このめっき装置では、長尺帯状の基材フィルムを垂直に立てて、上縁を多数のクランプで吊持した状態で搬送する。そして、クランプを通じて基材フィルムに給電しながら、めっき槽内を通過させて基材フィルムの表面に金属薄膜を形成する。
【0003】
特許文献1に示すように、基材フィルムを吊持する多数のクランプは、その上端に設けた接触治具に電源に接続された給電体を接触させることで、基材フィルムに電気を供給している。
給電体と接触治具は、接触する際に摩耗するが、接触時に発生する熱で摩耗粉が酸化し、摩耗粉が絶縁性を帯びる。このようにして絶縁性を帯びた摩耗粉が接触治具上へ堆積すると、摩耗粉の堆積層は給電の支障となる。
そのため、接触治具の接触面を定期的に研磨して堆積摩耗粉を除去し、給電状態を良好に維持するようにしていた。
【0004】
しかるに、接触治具を定期的(たとえば、2カ月に1回程度)に研磨するときは、めっき装置を一日は停止することになるため、めっき装置の稼働率が低下するという問題がある。
また、摩耗粉の堆積により給電不良が生ずると、めっき層の品位が低下する。さらに、堆積により抵抗が増すため電流を多く流す必要がでてくる、このように大電流が流れると整流器が異常と判断しめっき装置の運転を止めるので生産性が落ちるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-67852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、めっき装置の稼働率を低下させることがなく、めっき層の品位低下も抑止しうるめっき装置およびめっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明のめっき装置は、長尺帯状の基材フィルムを複数のクランプで吊持して、めっき槽を含むめっき装置内を移動させて、前記基材フィルムの表面にめっき層を形成するめっき装置において、前記クランプは、電流を供給する給電体と接触する接触治具と前記基材フィルムを挟持する挟持部を備えており、前記クランプを移動させる移動経路において、前記接触治具の接触面を清掃する清掃体を具備する清掃器具が設けられていることを特徴とする。
第2発明のめっき装置は、第1発明において、前記清掃器具は、前記クランプの走行方向において前後に2台が配置されていることを特徴とする。
第3発明のめっき装置は、第2発明において、前記清掃器具は、前記清掃体を前記接触治具に押圧付勢する圧縮バネを備えており、走行方向前側のクランプの圧縮バネは押圧付勢力が小さく、走行方向後側のクランプの圧縮バネは押圧付勢力が大きいことを特徴とする。
第4発明のめっき装置は、第1、第2または第3発明において、前記めっき装置における前記移動経路は、前記クランプが前記基材フィルムを把持して移動する把持区間と、前記クランプが前記基材フィルムを把持していない非把持区間とからなり、前記清掃器具は、前記非把持区間に配置されていることを特徴とする。
第5発明のめっき装置は、第1、第2、第3または第4発明において、前記清掃器具は、清掃体と、該清掃体を支持する支持板と、該支持板を支軸を介して支持する本体ボックスとからなり、前記清掃体を前記支持板に取付けた取付位置と前記支持板を前記本体ボックスに取付ける支軸とは、前記クランプの走行方向において間隔があけられていることを特徴とする。
第6発明のめっき装置は、第1、第2、第3、第4または第5発明において、前記清掃体が、針状素材を束ねたブラシ体であることを特徴とする。
第7発明のめっき方法は、長尺帯状の基材フィルムを複数のクランプで吊持して、めっき槽を含むめっき装置内を移動させて、前記基材フィルムの表面にめっき層を形成するめっき方法であって、前記クランプは、その移動経路の適所において、接触治具の接触面が清掃器具で清掃されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、クランプが、めっき装置内を移動する間に給電体との接触により摩耗粉が接触治具上に堆積しようとするが、清掃器具で清掃されて摩耗粉が取り除かれるので、摩耗粉の堆積は生じない。このため、クランプから基材フィルムへの給電が充分に行われるので、電気めっきが支障なく行われ、めっき層の品位も低下しない。また、接触治具の清掃が運転中に常時行われるので、めっき装置の運転を停止してメンテナンスする必要がない。このため、めっき装置の稼働率が向上する。
第2発明によれば、1台目の清掃器具で除き切れなかった摩耗粉が2台目の清掃器具で除けるので、クランプの接触治具の清掃が完全になる。
第3発明によれば、圧縮バネの押圧力が弱い1台目の清掃器具で摩耗粉の大部分を除去しておき、圧縮バネの押圧力が強い2台目の清掃器具で残りのこびり付いた摩耗粉を除去するようにすると、過大な摩耗抵抗を避けながら、摩耗粉を効果的に除去できる。
第4発明によれば、清掃器具がクランプが基材フィルムを把持していない非把持区間に配置されているので、清掃に伴い摩耗粉が落下しても基材フィルムを汚染することがない。このため、特別の防汚装置を講じなくても、品位の高いめっき製品が得られる。
第5発明によれば、清掃体を備えた支持板が支軸を介して本体ボックスに取付けられているが、清掃体を支軸よりもクランプの進行方向下流側に向けておけば、清掃体と支軸との間に間隔があることによって、清掃体の幅方向両端を常に押すので、清掃体が接触治具の進行方向に対して直交した姿勢を保つ。このため、接触治具の接触面の全面を効率良く清掃できる。
第6発明によれば、ブラシ体の針状素材は、接触治具への接触圧力を大きくしたり小さくする設定が容易に行える。このため、適切に摩耗粉堆積物を掻き取ることができる。
第7発明によれば、クランプの接触治具は、めっき装置内を移動する間に給電体との接触により摩耗粉が接触治具上に堆積しようとするが、清掃器具で清掃されて摩耗粉が取り除かれるので、摩耗粉の堆積は生じない。このため、クランプから基材フィルムへの給電が充分に行われるので、めっき品位の高いめっき製品が得られる。また、接触治具の清掃が運転中に常時行われるので、めっき装置の運転を停止してメンテナンスする必要がない。このため、めっき装置の稼働率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るめっき装置における清掃器具の説明図である。
図2図1に示す清掃ブラシ40の側面図である。
図3図2に示す清掃ブラシ40の正面図である。
図4】本発明が適用されるめっき装置の概略斜視図である。
図5】クランプ5と給電機構30の正面図である。
図6】クランプ5と給電機構30の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(めっき装置)
まず、本発明の一実施形態に係るめっき装置Aを図4に基づき説明する。図示のめっき装置Aは、後述する本発明に係るめっき方法を実施する装置でもある。
【0011】
図示のめっき装置Aは、長尺帯状の基材フィルムFを搬送しつつ、基材フィルムFに対して電気めっきを行なう装置である。このめっき装置Aは、前処理槽1、めっき槽2、および後処理槽3を備えている。前処理槽1は、基材フィルムFの表面を清浄化したり、濡れ性を高める処理を行う槽である。めっき槽2は、槽内にめっき液を貯留しており、めっき液に基材フィルムFを浸漬して通過させる槽である。このめっき槽2を通過している間に基材フィルムFに電流を供給すると電気めっきが行われる。後処理槽3は、めっきがなされた基材フィルムFの洗浄等を行う槽である。
これらの各槽1,2,3に長尺帯状の基材フィルムFが順に搬送されて、基材フィルムFの表面にめっき膜が形成される。なお、本発明では、めっき膜の形成がなされたフィルムを製品フィルムという。
【0012】
基材フィルムFの搬送は、基材フィルムFの長手方向に沿って進行させるとき、基材フィルムFの短手方向を上下に向けた懸垂状態で行われる。この懸垂状態の基材フィルムFを搬送するため、エンドレスベルト4が用いられ、またエンドレスベルト4に多数のクランプ5が連結されている。
めっき装置Aには、前処理槽1手前の入側ガイドローラ6、前処理槽1とめっき槽2の間の第1中間ガイドローラ7、めっき槽2と後処理槽3の間の第2中間ガイドローラ8、および後処理槽3直後の出側ガイドローラ9が備えられている。
【0013】
前記エンドレスベルト4は、入側ガイドローラ6、第1中間ガイドローラ7、第2中間ガイドローラ8、および出側ガイドローラ9の順に周回するように移動していく。
そして、多数のクランプ5は基材フィルムFの上縁を吊持しているので、エンドレスベルト4と共に基材フィルムFは、前処理槽1、めっき槽2、後処理槽3の内部を移動する。
【0014】
めっき装置Aは、基材フィルムFをロール状に巻き取った原反ロールを繰り出す供給装置11と、めっき後の製品フィルム(たとえば、銅張積層板)を製品ロールとしてロール状に巻き取る巻取装置12とを有する。後処理槽3と巻取装置12との間には、乾燥用のヒーター13等が配置されている。
なお、14は基材フィルムFを同じ姿勢で案内する水平ガイドロール、15は基材フィルムFの搬送姿勢を変換する傾斜ガイドロールである。
【0015】
前記供給装置11から繰り出された基材フィルムFは、クランプ5が入側ガイドローラ6を通過した直後にクランプ5でその上縁が把持される。基材フィルムFが前処理槽1、めっき槽2、および後処理槽3を通過すると、クランプ5が出側ガイドローラ9を通過する直前に基材フィルムFを開放し、基材フィルムFが巻取装置12で巻き取られる。
【0016】
基材フィルムFはめっき槽2内を搬送されつつ、電気めっきによりその表面に銅めっき等の被膜が形成される。これにより、めっき処理が完了した製品フィルムが得られる。たとえば、基材フィルムFの材質が樹脂フィルムであり、これに下地金属層を介して銅をめっき成膜すれば、製品フィルムとしての銅張積層板が得られる。
【0017】
上記めっき装置Aにおいて、クランプ5が入側ガイドローラ6を通過した後から第1中間ガイドローラ7、第2中間ガイドローラ8を経て出側ガイドローラ9を通過する直前までの間では、クランプ5が基材フィルムFの上縁を把持している。本明細書では、この間を把持区間という。そして、出側ガイドローラ9と入側ガイドローラ6の間はクランプ5は基材フィルムFを把持していない。本明細書では、この間を非把持区間という。
【0018】
つぎに、クランプ5まわりを図5および図6に基づき説明する。
クランプ5は、接触治具20と、その下端に結合された吊持板21を備えている。接触治具20は上端部に電気の供給を受ける接触板22を有している。接触板22には、移動方向の前端に前下りの案内部22a(図2参照)が形成されている。また、接触治具20は、表裏両面にローラ23を軸支しており、ローラ23はめっき装置A内の固定部材である案内板24上を転動するようになっている。接触治具20には図4に示すエンドレスベルト4(図5および図6では不図示)が結合されているので、エンドレスベルト4が移動すると、接触治具20、ひいてはクランプ5が一定の高さを保って移動することになる。
【0019】
前記吊持板21には、基材フィルムFを吊持するための挟持部25が取付けられている。挟持部25は一対の挟持片25a,25bからなる。一方の挟持片25bは吊持板21に固定されており、他方の挟持片25aにはレバー26が固定されている。レバー26の中間部はブラケットとピン27を介して固定側の挟持片25bに対して揺動自在に取付けられている。また、ピン27にはねじりコイルバネ28(以下、単にバネ28という)が介装され、一方の挟持片25aを他方(固定側)の挟持片25bに押し付けて閉じ方向に付勢している。
前記レバー26の先端には、ブラケットを介してローラ29が回転自在に取付けられている。
【0020】
図5および図6において、30は給電機構であり、クランプ5に電流を供給するために設けられている。給電機構30は、電極バー31と給電体32と押圧バネ33を有している。電極バー31はクランプ5の走行方向に沿って延びる長い電極であって、整流器を介して電源に接続されている。電極バー31の下方には複数個の給電体32が等間隔に取付けられている。
【0021】
電極バー31と給電体32との間には押圧バネ33が介装されており、この押圧バネ33により給電体32をクランプ5の接触治具20に押し付けている。電極バー31から給電される電流は、給電体32と接触治具20の接触を介して、吊持板21を経て挟持部25から基材フィルムFに供給される。
上記の電極バー31は、めっき槽2の上部に配置されており、めっき槽2を通過中の基材フィルムFに電流が供給される。
【0022】
つぎに、接触治具20の清掃器具を説明する。
本発明で用いられる清掃器具の清掃体は、クランプ5の接触板22上に堆積する摩耗粉を除去できるなら、どのようなものでも用いることができる。たとえば、針状素材で掻き取るブラシ体、回転ポリッシャー、板材で掻き取るスクレーパ、水や清掃用液体を圧力をかけて噴射する噴射装置などを、清掃体として例示できる。
また、ブラシ体を用いる場合、針状素材の選択にはとくに制限ない。このため、金属製のほか、ゴム製のもの、PPやPET等の合成樹脂製のものを例示できる。ブラシ体を金属製とする場合も、銅、真鍮、SUSなどをとくに制限なく用いることができる。
【0023】
以下では、清掃器具として清掃ブラシ40を用いた実施形態を説明する。
図1に示すように、清掃ブラシ40は、クランプ5における接触板22の上面を清掃できるように、その上方に配置される。また、その配置位置は、クランプ5の移動方向Mに沿った位置である。
【0024】
図2および図3に基づき、清掃ブラシ40の詳細を説明する。
清掃ブラシ40は、ブラシ体41と支持板42と本体ボックス43とを有している。ブラシ体41は、SUS材等のワイヤからなるブラシ44を数10本から数百本を束ねて上端部で一体的に固定したものである。ブラシ44の長さは概ね30~50mm程度が好ましく、束ねられたブラシ44の厚さは概ね6~10mm程度、幅は40~60mm程度が好ましい。ただし、本発明において寸法はこれらに限られない。ブラシ体41におけるブラシ44の長さと厚さは清掃の効率から選択すればよい。ブラシ体41の幅は、図3に示すように、清掃対象である接触板22の幅より広くしておくことが好ましい。
【0025】
前記支持板42はブラシ体41の上端に取付けられた平板状の部材である。図2では支持板42の先端(図中左端)がブラシ体41に取付けられ、基端(図中右端)が本体ボックス43への取付け側となっている。つまり、支持板42の基端部には垂直に延びる支軸45が固定されており、この支軸45の中間部から上方の部分は本体ボックス43内で上下に昇降自在に保持されている。なお、支軸45は自軸まわりの回転は拘束されておらず許容されている。
【0026】
支軸45には圧縮バネ46が挿入されており、この圧縮バネ46は、本体ボックス43の底壁と支持板42の上面との間に介装されている。このため、圧縮バネ46で支持板42、ひいてはブラシ体41が下方に付勢されている。
【0027】
図2に示すように、ブラシ体41は支持板42において、クランプ5の走行方向の下流側に取付けられ、支軸45は上流側に取付けられている。つまり、ブラシ体41を支持板42に取付けた取付位置と支持板42を本体ボックス43に取付ける支軸45とは、クランプ5の走行方向において間隔dがあけられている。
【0028】
清掃中は、ブラシ体41は移動しているクランプ5の接触板22から摩擦抵抗を受けている。この摩擦抵抗は多少なりとも変動しつつ、ブラシ体41の幅方向両端を常時押している。ブラシ体41と支軸45との間に間隔dがあることによって、ブラシ体41の両端部で押す力は概ね左右均等にバランスする。このため、ブラシ体41の幅方向は接触治具20の進行方向に対してほぼ直交した姿勢を保たれる。この結果、接触治具20の接触板22の上面を効率良く清掃できる。
【0029】
図1に示すように、清掃ブラシ40は、クランプ5の移動方向Mにおいて前後に2台(40A,40B)が配置されている。この清掃ブラシ40の配置位置は、図4に示すめっき装置Aにおいて、出側ガイドローラ9と入側ガイドローラ6の間におけるクランプ5が基材フィルムFを把持していない非把持区間とすることが最も好ましい。
その理由は、清掃ブラシ40で接触治具20を掃除して発生する清掃粉によって基材フィルムFが汚れることがないからである。
【0030】
上記非把持区間以外の場所であっても、清掃ブラシ40の設置は可能である。たとえば、前処理槽1とめっき槽2との間、およびめっき槽2と後処理槽3との間に清掃ブラシ40を設置することもできる。ただし、この場合は、基材フィルムFに清掃粉が付着しないようにするカバーを設けたり、清掃粉を吸引して外部に排出する等の汚染防止装置を設けることが好ましい。
また、前処理槽1、めっき槽2および後処理槽3をクランプ5が移動する経路上に清掃ブラシ40を設置することも可能ではあるが、各槽1,2,3への汚染防止をより徹底できる汚染防止装置を設けることが必要となる。
【0031】
図2および図3に示すブラシ体41は、ブラシ44自体が可撓性に富むので、接触治具20の接触板22への接触圧力を容易に調整できる。つまり、接触圧力を大きくするのも小さくするのも、圧縮バネ46のバネ設定を変えることで容易に実現でき、適切に摩耗粉堆積物を掻き取ることができる。
【0032】
清掃ブラシ40を2台設ける場合は、図1に示すように、走行方向前側の清掃ブラシ40Aの圧縮バネ46は押圧付勢力が小さく、走行方向後側の清掃ブラシ40Bの圧縮バネ46は押圧付勢力が大きくなるように設定することができる。
圧縮バネ46の押圧力が弱い1台目の清掃ブラシ40Aで摩耗粉の大部分を除去しておき、圧縮バネ46の押圧力が強い2台目の清掃ブラシ40Bで残りのこびり付いた摩耗粉を除去するようにすると、過大な摩耗抵抗を避けながら、摩耗粉を効果的に除去できる。また、1台目の清掃ブラシ40Aで除き切れなかった摩耗粉が2台目の清掃ブラシ40Bで除けるので、クランプ5の接触治具20の清掃が完全になる。
【0033】
上記のように、清掃ブラシ40は2台設けるのが好ましいが、1台でもよく、3台以上設けてもよい。本発明において、清掃ブラシ40の設置台数の選択は清掃の必要度合に応じて決めてよい。
【0034】
本実施形態では、接触治具20の清掃が運転中に常時行われるので、めっき装置Aの運転を停止してメンテナンスする必要がない。このため、めっき装置Aの稼働率が向上する。また、本めっき装置Aを用いると、クランプ5から基材フィルムFへの給電が充分に行われるので、電気めっきが設計どおりに行われ、めっき品位の高いめっき製品が得られる。
【0035】
(めっき方法)
つぎに、本発明に係るめっき方法を説明する。代表的には本発明のめっき方法は、上記しためっき装置Aを用いて実施される。
上記めっき装置Aにおいて、長尺帯状の基材フィルムFを複数のクランプ5で吊持して、前処理槽1、めっき槽2、後処理槽3を順に移動させて、基材フィルムFの表面にめっき膜を形成する。
そして、クランプ5は、移動経路の適所(好ましくは、クランプ5が基材フィルムFを把持していない非把持区間)において、接触治具20の接触面を清掃ブラシ40で清掃する。
【0036】
クランプ5の接触治具20は、めっき装置A内を移動する間に給電体32との接触により摩耗粉が接触治具20上に堆積しようとするが、清掃ブラシ40で清掃されて摩耗粉が取り除かれる。このため、摩耗粉の堆積は生じない。この結果、クランプ5から基材フィルムFへの給電が充分に行われるので、電気めっきが設計どおりに行われ、めっき品位の高いめっき製品が得られる。このように、接触治具20の清掃が運転中に常時行われるので、めっき装置Aの運転を停止してメンテナンスする必要がない。このため、めっき装置Aの稼働率が向上する。
【0037】
本発明のめっき方法において、基材フィルムFの材質が樹脂フィルムであり、これに下地金属層を介して銅をめっき成膜すれば、製品フィルムとしての銅張積層板が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
上記実施形態では、めっきされた製品フィルムとして銅張積層板を例示したが、本発明はこれに限られず、ニッケルめっきやクロムめっきなど種々のめっき膜成形フィルムの製造に適用できる。
【符号の説明】
【0039】
A めっき装置
1 前処理槽
2 めっき槽
3 後処理槽
4 エンドレスベルト
5 クランプ
6 入側ガイドローラ
7 第1中間ガイドローラ
8 第2中間ガイドローラ
9 出側ガイドローラ
20 接触治具
22 接触板
25 挟持部
30 給電機構
32 給電体
40 清掃ブラシ
41 ブラシ体
42 支持板
43 本体ボックス
45 支軸
46 圧縮バネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6