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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】分散液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/54 20220101AFI20231108BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20231108BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20231108BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20231108BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20231108BHJP
   A61K 8/28 20060101ALN20231108BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALN20231108BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALN20231108BHJP
【FI】
C09K23/54
C08K3/01
C08L83/04
B82Y30/00
B82Y40/00
A61K8/28
A61Q1/02
A61Q17/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020056151
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021154203
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智海
(72)【発明者】
【氏名】原田 健司
(72)【発明者】
【氏名】大塚 剛史
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-097304(JP,A)
【文献】特開2015-029986(JP,A)
【文献】特開2009-040850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 23/00-23/56
C08K 3/01
C08L 83/04
B82Y 30/00
B82Y 40/00
A61K 8/28
A61Q 1/02
A61Q 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面修飾材料と無機粒子とアルコール系溶媒とを混合して混合液を得る工程Bと、
前記混合液中において前記無機粒子を分散して、前記無機粒子が分散した分散液を得る工程Cと、
前記分散液に疎水性溶媒を加える工程Dと、を有し、
前記疎水性溶媒を加える工程Dは、前記分散液を加熱した後に、前記疎水性溶媒を前記無機粒子が凝集しない速度で加える工程d1、前記分散液を加熱しながら、前記疎水性溶媒を前記無機粒子が凝集しない速度で加える工程d2、または、前記疎水性溶媒を前記無機粒子が凝集しない速度で加えた後に、前記分散液を加熱する工程d3であり、
前記混合液中における前記無機粒子の含有量が10質量%以上46質量%以下であり、前記混合液中における前記表面修飾材料と前記無機粒子との合計の含有量が65質量%以上93質量%以下である、分散液の製造方法。
【請求項2】
さらに、前記表面修飾材料と水とを混合して、加水分解された前記表面修飾材料を含む加水分解液を得る工程Aを有し、
前記混合液を得る工程Bにおいて、前記加水分解液と前記無機粒子と前記アルコール系溶媒とを混合することにより、前記混合液を得る、請求項1に記載の分散液の製造方法。
【請求項3】
前記加水分解液に添加される水の量が、前記表面修飾材料1molに対し、0.5mol以上5mol以下である、請求項2に記載の分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機粒子は、屈折率調整効果、熱線遮蔽機能等の様々な性能を部品、部材や材料に付与することができる。したがって、化粧料、樹脂製品や光学部品等の様々な技術分野において利用されている。
【0003】
無機粒子は、無修飾の場合、一般にその表面に水酸基が存在する。そのため、無機粒子は、通常は親水性である。そこで、疎水性材料に無機粒子を添加する場合には、シランカップリング剤等の表面改質剤により、無機粒子の表面を疎水性に改質することが行われている。
【0004】
表面を疎水性に改質した無機粒子としては、例えば、顔料の表面がn-オクチルトリエトキシシラン等の特定のシランカップリング剤により被覆処理された化粧料用顔料が知られている(例えば、特許文献1参照)。この化粧料用顔料は、化粧料に配合した際に、高い撥水性を有しながら、感触はしっとりとして重くなく肌への付着性が高い。
また、表面を疎水性に改質した無機粒子を含む分散液としては、例えば、1つ以上の反応性官能基を有する表面修飾剤により表面が修飾され、かつ分散粒径が1nm以上かつ20nm以下の無機酸化物粒子を含有してなる無機酸化物透明分散液が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-181136号公報
【文献】国際公開第2007/049573号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、無機粒子を液相中にて表面修飾材料により表面修飾する方法としては、例えば、無機粒子と表面修飾材料のみならず分散媒を混合して混合液を調製した後、その混合液について分散機を用いて分散処理する方法が挙げられる。このように表面修飾された無機粒子は、疎水性の高い材料と混合した際に、充分にその材料中に分散せずに凝集する。その結果、疎水性の高い材料に白濁等の濁りが生じるという課題があった。また、得られた分散液は、粒度分布がブロードであり、無機粒子の性能が十分に発揮されない場合があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、疎水性の高い材料と混合した場合であっても凝集が抑制され、白濁等の濁りの発生が防止された分散液の製造方法および粒度分布がシャープな分散液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、表面修飾材料と無機粒子とアルコール系溶媒とを混合して混合液を得る工程Bと、上記混合液中において上記無機粒子を分散して、上記無機粒子が分散した分散液を得る工程Cと、上記分散液に疎水性溶媒を加える工程Dと、を有し、上記疎水性溶媒を加える工程Dは、上記分散液を加熱した後に、上記疎水性溶媒を上記無機粒子が凝集しない速度で加える工程d1、上記分散液を加熱しながら、上記疎水性溶媒を上記無機粒子が凝集しない速度で加える工程d2、または、上記疎水性溶媒を上記無機粒子が凝集しない速度で加えた後に、上記分散液を加熱する工程d3であり、上記混合液中における上記無機粒子の含有量が10質量%以上46質量%以下であり、上記混合液中における上記表面修飾材料と上記無機粒子との合計の含有量が65質量%以上93質量%以下である、分散液の製造方法を提供する。
【0009】
本発明の一態様においては、さらに、上記表面修飾材料と水とを混合して、加水分解された上記表面修飾材料を含む加水分解液を得る工程Aを有し、上記混合液を得る工程Bにおいて、上記加水分解液と上記無機粒子と上記アルコール系溶媒とを混合することにより、上記混合液を得てもよい。
【0010】
本発明の一態様においては、上記加水分解液に添加される水の量が、上記表面修飾材料1molに対し、0.5mol以上5mol以下であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、疎水性の高い材料と混合した場合であっても凝集が抑制され、白濁等の濁りの発生が防止された分散液の製造方法および粒度分布がシャープな分散液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の分散液の製造方法および分散液の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。本発明は趣旨を逸脱しない範囲において、数値、量、材料、種類、時間、温度、順番等について、変更、省略、置換、追加等が可能である。
【0015】
[分散液の製造方法]
以下に本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
<1.本発明者等の着想>
まず、本発明の詳細な説明に先立ち、本発明者等による本発明に至るまでの着想について説明する。
【0016】
上述したように、従来、無機粒子を液相中にて表面修飾材料により表面修飾する場合には、無機粒子と表面修飾材料のみならず分散媒を混合して混合液を調製した後、その混合液について分散機を用いて分散処理を行っていた。このような表面修飾された無機粒子は、疎水性の高い材料と混合した場合に、充分にその材料中に分散せずに凝集する。その結果、疎水性の高い材料に白濁等の濁りが生じるという課題があった。このような場合、無機粒子は、所期の性能を充分に発揮できない。
【0017】
分散媒は、通常、無機粒子を均一に分散させ、表面修飾材料に無機粒子の表面を均一に修飾させることを目的として添加される。従来、分散媒を用いない場合、分散液の粘度が上昇する。その結果、表面修飾材料が無機粒子の表面に充分に付着しないと考えられていた。すなわち、従来、無機粒子を液相中にて表面修飾するには、分散媒は必須と考えられていた。本発明者等は、分散媒を用いないか、あるいは少量用いて、無機粒子を高濃度の表面修飾材料中に直接分散させた。これにより、本発明者等は、分散液中において、無機粒子の均一な分散が達成されるとともに、無機粒子への表面修飾材料の均一な修飾が可能であることを見出した。
【0018】
次に、このようにして得られる分散液は、分散時の混合液の粘度が高いため、粒度分布を充分にシャープにすることが困難であった。
そこで本発明者等は、混合液に親水性溶媒を少量混合することにより、粒度分布がシャープな分散液が得られることも見出した。
【0019】
そのメカニズムは以下のように推測される。
無機粒子を表面修飾材料中で直接分散させた場合、溶媒が添加されている場合と比べて混合液の粘度が高いため、ビーズ等の分散メディアの衝突による分散効果が低減する。さらに、分散中に加水分解よって生じたアルコールが揮発するため、分散中に混合液の粘度が上昇して、さらに分散効果が低減する。
そこで、親水性溶媒を少量添加することにより、分散時の混合液の粘度を低くし、かつ、分散中の混合液の増粘を抑制することで、分散効率の低下が抑制されると推測される。
【0020】
次に、このようにして得られた分散液は、固形分(濃度)が高いため、粘度が高く、ハンドリング性が悪い。しかし、固形分を低くするために、得られた分散液に疎水性溶媒を添加すると、粒子表面の疎水性が低いため、粒子が凝集してしまい、均一な分散液が得られなかった。
【0021】
そこで、本発明者等は、得られた分散液を加熱し、疎水性溶媒を徐々に添加することで、固形分の低い分散液に調整できることも見出した。
【0022】
そのメカニズムは以下のように推測される。
分散液を加熱することにより、無機粒子に付着した表面修飾材料の重合が進行し、粒子表面の疎水性が向上する。重合反応が進行し過ぎても無機粒子は凝集するため、重合反応が進行中の分散液に疎水性溶媒を徐々に添加することにより、過剰な重合反応を抑制しつつ、表面が徐々に疎水化され、疎水性の溶媒を徐々に混合することができる。
【0023】
すなわち、無機粒子が凝集しない程度の量の疎水性溶媒を添加し、添加した量の疎水性溶媒と相溶できる程度に、表面修飾材料の重合反応を進行させることにより、所望の固形分に調整された分散液を得ることができる。
【0024】
さらに、本発明者等は、このようにして得られる分散液を疎水性の高い材料と混合した場合に、当該材料中に無機粒子が凝集することなく分散可能であり、濁りの発生が抑制されることを見出し、本発明に至った。
【0025】
なお、分散時に分散媒を多量に用いた場合、疎水性の高い材料中に無機粒子が分散せず、濁りが生じる理由については、定かではないが、次のように考えられる。分散媒を多量に用いると、分散時において、無機粒子近傍に存在する表面修飾材料は希薄となる。その結果、表面修飾材料の無機粒子に対する反応性が低下し、無機粒子に充分な量の表面修飾材料が付着しなかったと考えられる。また、分散時の分散媒として疎水性溶媒を多量に用いた場合、そもそも水酸基を表面に有する無機粒子が充分に分散しない。また、分散媒として親水性溶媒を多量に用いた場合、分散液中に含まれる親水性溶媒と疎水性の高い材料との混和性が充分でない。
【0026】
また、ヘンシェルミキサーやスプレードライヤ等により、乾式にて無機粒子の表面に表面修飾材料を付着させることも考えられる。この場合、無機粒子が凝集してしまい、均一に表面修飾材料が無機粒子の表面に付着しない。さらには、乾式にて修飾を行う場合、充分な量の表面修飾材料を使用することが困難である。その結果、無機粒子を疎水性の高い材料と混合した場合に、当該材料中に無機粒子が分散せず、濁りが生じてしまう。
【0027】
<分散液の製造方法>
次に、本実施形態に係る分散液の製造方法について説明する。
【0028】
本実施形態に係る分散液の製造方法は、表面修飾材料と無機粒子と親水性溶媒とを混合して混合液を得る工程Bと、上記混合液中において上記無機粒子を分散して、上記無機粒子が分散した分散液を得る工程Cと、上記分散液に疎水性溶媒を加える工程Dと、を有し、上記疎水性溶媒を加える工程Dは、上記分散液を加熱した後に、上記疎水性溶媒を上記無機粒子が凝集しない速度で加える工程d1、上記分散液を加熱しながら、上記疎水性溶媒を上記無機粒子が凝集しない速度で加える工程d2、または、上記疎水性溶媒を上記無機粒子が凝集しない速度で加えた後に、上記分散液を加熱する工程d3であり、上記混合液中における上記無機粒子の含有量が10質量%以上46質量%以下であり、上記混合液中における上記表面修飾材料と上記無機粒子との合計の含有量が65質量%以上93質量%以下である。
【0029】
なお、上記表面修飾材料と上記無機粒子との合計含有量には、後述する表面修飾材料の加水分解で発生するアルコールは含まない。すなわち、上記表面修飾材料と上記無機粒子との合計含有量とは、表面修飾材料と、加水分解された表面修飾材料と、無機粒子との合計含有量を意味する。なお、上記合計含有量が上記表面修飾材料に付着された無機粒子の含有量を含めた値であることは言うまでもない。
【0030】
また、本実施形態においては、上記の各工程に先立ち、表面修飾材料と水とを混合して、加水分解された表面修飾材料を含む加水分解液を得る工程A(加水分解工程)を有してもよい。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0031】
(工程A(加水分解工程))
加水分解工程では、表面修飾材料と水とを混合して、加水分解された表面修飾材料を含む加水分解液を得る。このように予め表面修飾材料の少なくとも一部が加水分解した混合液を用いることにより、後述する分散工程において無機粒子に表面修飾材料が付着し易くなる。
【0032】
このような表面修飾材料としては、反応性官能基を有する表面修飾材料が好適に用いられる。反応性官能基を有する表面修飾材料としては、例えば、アルケニル基、H-Si基およびアルコキシ基の群から選択される少なくとも1種の官能基を有する表面修飾材料が挙げられる。特に、アルコキシ基を有する表面修飾材料は、水と反応して加水分解し得ることから、本実施形態において好適に用いられる。
【0033】
アルケニル基としては、例えば、炭素原子数2~5の直鎖または分岐状アルケニル基が挙げられる。具体的には、ビニル基、2-プロペニル基、プロパ-2-エン-1-イル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、炭素原子数1~5の直鎖または分岐状アルコキシ基が挙げられる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0034】
アルケニル基、H-Si基およびアルコキシ基の群から選択される少なくとも1種の官能基を有する表面修飾材料としては、例えば、以下のシラン化合物、シリコーン化合物および炭素-炭素不飽和結合含有脂肪酸が挙げられる。これらの表面修飾材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
シラン化合物としては、例えば、アルキル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物、アルケニル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物、H-Si基およびアルコキシ基を含むシラン化合物、その他アルコキシ基を含むシラン化合物、H-Si基を含むシラン化合物等が挙げられる。
【0036】
アルキル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、およびエチルトリプロポキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0037】
アルケニル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0038】
H-Si基およびアルコキシ基を含むシラン化合物としては、例えば、ジエトキシモノメチルシラン、モノエトキシジメチルシラン、ジフェニルモノメトキシシラン、ジフェニルモノエトキシシラン等が挙げられる。
【0039】
その他アルコキシ基を含むシラン化合物としては、例えば、フェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0040】
H-Si基を含むシラン化合物としては、例えば、ジメチルクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジエチルクロロシラン、エチルジクロロシラン、メチルフェニルクロロシラン、ジフェニルクロロシラン、フェニルジクロロシラン、トリメトキシシラン、ジメトキシシラン、モノメトキシシラン、トリエトキシシラン等が挙げられる。
【0041】
シリコーン化合物としては、例えば、H-Si基を含むシリコーン化合物、アルコキシ基を含むシリコーン化合物が挙げられる。
【0042】
H-Si基を含むシリコーン化合物としては、例えば、メチルフェニルシリコーンや、ジメチルシリコーンや、メチルハイドロジェンシリコーン、メチルフェニルハイドロジェンシリコーン、ジフェニルハイドロジェンシリコーン等が挙げられる。
【0043】
アルコキシ基を含むシリコーン化合物としては、例えば、アルコキシ両末端フェニルシリコーン、アルコキシ両末端メチルフェニルシリコーン、アルコキシ基含有メチルフェニルシリコーン、アルコキシ基含有ジメチルシリコーン、アルコキシ片末端トリメチル片末端(メチル基片末端)ジメチルシリコーン、アルコキシ基含有フェニルシリコーン等が挙げられる。
【0044】
シリコーン化合物は、モノマーであってもよく、オリゴマーであってもよく、レジン(ポリマー)であってもよい。表面修飾が容易であることより、モノマーかオリゴマーを用いることが好ましい。
【0045】
炭素-炭素不飽和結合含有脂肪酸としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられる。
【0046】
上記の表面修飾材料のなかでも、粘度が低く、後述する分散工程における無機粒子の分散が容易となる観点から、表面修飾材料としては、アルキル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物が好ましい。
【0047】
アルキル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物中のアルコキシ基の数は、1以上3以下であることが好ましく、3であることがより好ましい。アルコキシ基の炭素原子数は、1以上5以下であることが好ましい。
【0048】
アルキル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物中のアルキル基の数は、1以上3以下であることが好ましく、1であることがより好ましい。アルキル基の炭素数は、1以上5以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましく、1以上2以下であることがさらに好ましい。
アルキル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物中のアルキル基とアルコキシ基の総数は2以上4以下であり、4であることが好ましい。
【0049】
このような表面修飾材料としてのシラン化合物は、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシランおよびエチルトリプロポキシシランからなる群から選択される1種または2種以上を含んでもよい。
【0050】
表面修飾材料の25℃における粘度は、例えば、50mPa・s以下であることが好ましい。
表面修飾材料の粘度が50mPa・s以下であることにより、分散媒を多く含有させることなく、無機粒子を表面修飾材料中に分散させることができる。なお、ここでいう粘度とは、JIS Z 8803:2011「液体の粘度測定方法」に準拠して測定される粘度のことである。
【0051】
また、加水分解液中における表面修飾材料の含有量は、特に限定されず、加水分解液中の他の成分の残部とすることができるが、加水分解液中における表面修飾材料の含有量は、例えば、60質量%以上99質量%以下であることが好ましく、70質量%以上97質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上95質量%以下であることがさらに好ましい。
【0052】
また、加水分解工程において、加水分解液は水を含む。水は、表面修飾材料の加水分解反応の基質となる。
加水分解液中における水の含有量は、特に限定されず、例えば、表面修飾材料の量に応じて適宜設定できる。例えば、加水分解液に添加される水の量が、前記表面修飾材料1molに対し、0.5mol以上5mol以下であることが好ましく、0.6mol以上3mol以下であることがより好ましく、0.7mol以上2mol以下であることがさらに好ましい。これにより、表面修飾材料の加水分解反応を充分に進行させつつ、過剰量の水により製造される分散液において、無機粒子の凝集が生じることをより確実に防止することができる。
【0053】
あるいは、加水分解液中における水の含有量は、例えば、加水分解液100質量%中1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0054】
また、加水分解液には、触媒が添加されてもよい。触媒としては、例えば、酸または塩基を用いることができる。
酸は、加水分解液中およびこれを含んで調製される混合液において、表面修飾材料の加水分解反応を触媒する。塩基は、加水分解された表面修飾材料と無機粒子の表面の官能基、例えば、水酸基やシラノール基との縮合反応を触媒する。これにより、表面修飾材料が無機粒子に付着しやすくなり、無機粒子の分散安定性が向上する。
【0055】
上記の「酸」とは、いわゆるブレンステッド-ローリの定義に基づく酸のことである。ここでは、「酸」とは、表面修飾材料の加水分解反応においてプロトンを与える物質のことである。
【0056】
上記の「塩基」とは、いわゆるブレンステッド-ローリの定義に基づく塩基のことである。ここでは、「塩基」とは、表面修飾材料の加水分解反応およびその後の縮合反応においてプロトンを受容する物質のことである。
【0057】
本実施形態に係る分散液の製造方法に用いることのできる酸としては、表面修飾材料の加水分解反応においてプロトンを供給可能であれば特に限定されない。このような酸としては、例えば、無機酸または有機酸が挙げられる。
無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸等が挙げられる。
有機酸としては、例えば、酢酸、クエン酸、ギ酸等が挙げられる。
これらの酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
本実施形態に係る分散液の製造方法に用いることのできる塩基としては、表面修飾材料の加水分解反応またはその後の縮合反応においてプロトンを受容可能であれば特に限定されない。このような塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、アミン等が挙げられる。これらの塩基は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
上記の触媒のなかでも、触媒としては酸を用いることが好ましい。酸としては、酸性度の観点から、無機酸が好ましい。無機酸のなかでも、塩酸がより好ましい。
【0060】
加水分解液中における触媒の含有量は、特に限定されないが、例えば、10ppm以上1000ppm以下であることが好ましく、20ppm以上800ppm以下であることがより好ましく、30ppm以上600ppm以下であることがさらに好ましい。これにより、表面修飾材料の加水分解を充分に促進させつつ、表面修飾材料の副反応を抑制することができる。
【0061】
また、加水分解液は、親水性溶媒を含んでいてもよい。親水性溶媒は、加水分解液中において、水と表面修飾材料の混和を促進させ、表面修飾材料の加水分解反応をより一層促進させる。
【0062】
親水性溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒等が挙げられる。これらの親水性溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
アルコール系溶媒としては、例えば、炭素原子数1~4の分岐または直鎖状アルコール化合物およびそのエーテル縮合物が挙げられる。これらのアルコール系溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルコール系溶媒に含まれるアルコール化合物は、第1級アルコール、第2級アルコールまたは第3級アルコールのいずれであってもよい。アルコール系溶媒に含まれるアルコール化合物は、一価アルコール、二価アルコールまたは三価アルコールのいずれであってもよい。
【0064】
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、1-ブチルアルコール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、メタンジオール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、1,4-ブチンジオール、グリセリン、ジエチレングリコール、3-メトキシ-1,2-プロパンジオール等が挙げられる。
【0065】
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0066】
ニトリル系溶媒としては、例えば、アセトニトリル等が挙げられる。
【0067】
上記の親水性溶媒のなかでも、水と疎水性溶媒双方との親和性に優れ、これらの混和を促進させる観点から、アルコール系溶媒が好ましい。アルコール系溶媒を構成するアルコール化合物の炭素原子数は、1以上3以下であることが好ましく、1以上2以下であることがより好ましい。
上記のアルコール系溶媒のなかでも、メタノールおよびエタノールが好ましく、上記のアルコール系溶媒の効果を充分に発現することができる観点から、メタノールがより好ましい。
【0068】
加水分解液中における親水性溶媒の含有量は、特に限定されないが、例えば、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。これにより、加水分解液中における表面修飾材料および水の含有量を充分に多くすることができる。また、加水分解液中における親水性溶媒の含有量は、例えば、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。これにより、表面修飾材料と水との混和をより一層促進することができる。その結果、表面修飾材料の加水分解反応を効率よく進行させることができる。なお、加水分解液中において、加水分解反応由来の化合物を除く親水性溶媒が含まれなくてもよい。
【0069】
本実施形態では、表面修飾材料としてアルコキシ基を有する化合物、例えば、アルコキシ基を有するシラン化合物を用いる場合、これを加水分解するため、アルコキシ基由来のアルコール化合物が混合液中に含まれることとなる。加水分解反応は、無機粒子の吸着水でも進行するため、加水分解工程、混合工程、分散工程のいずれでも起こり得る。そのため、アルコール化合物を除去する工程がない限りは、最終的な分散液にはアルコール化合物が含まれる。
【0070】
加水分解工程では、加水分解液を調製後、一定の温度で所定の時間保持してもよい。これにより、表面修飾材料の加水分解をより一層促進させることができる。
加水分解工程において、加水分解液の温度は、特に限定されず、表面修飾材料の種類によって適宜変更できる。加水分解液の温度は、例えば、5℃以上65℃以下であることが好ましく、30℃以上60℃以下であることがより好ましい。
【0071】
また、加水分解液を一定の温度に保持する時間(保持時間)は、特に限定されないが、例えば、10分以上180分以下であることが好ましく、30分以上120分以下であることがより好ましい。
【0072】
なお、上記の加水分解液の保持において、加水分解液を適宜撹拌してもよい。
また、加水分解工程は、必要に応じて行うことができ、省略されてもよい。
【0073】
(工程B(混合工程))
混合工程では、表面修飾材料と無機粒子と親水性溶媒とを混合して混合液を得る。混合工程では、表面修飾材料と無機粒子と親水性溶媒の他に、水や触媒を混合してもよい。なお、上述した加水分解工程により加水分解液を得ている場合、加水分解液と無機粒子と親水性溶媒を混合することにより、混合液が得られる。
【0074】
混合工程では、混合液中における無機粒子の含有量が10質量%以上46質量%以下であり、混合液中における表面修飾材料と無機粒子との合計の含有量が65質量%以上93質量%以下であるように、混合が行われる。
【0075】
混合液中における親水性溶媒の含有量は、5質量%以上15質量%以下であることが好ましく、7質量%以上13質量%以下含有であることがより好ましい。親水性溶媒が上記範囲で混合されることにより、無機粒子の分散効率が向上し、表面修飾材料の無機粒子への表面修飾反応も促進される。
【0076】
表面修飾材料および無機粒子と混合する親水性溶媒としては、上記の加水分解工程で用いられる親水性溶媒と全く同じものを用いることができる。
【0077】
このように、本実施形態においては、混合液中の表面修飾材料と無機粒子との合計の含有量が非常に多い。そして、従来必須であると考えられていた有機溶媒、水等の分散媒は、少量混合される。このような場合であっても、分散工程を経ることにより、混合液中において、無機粒子の均一な分散が可能であるとともに、表面修飾材料の無機粒子への均一な付着(表面修飾)が達成される。
【0078】
ここで、表面修飾材料が無機粒子に「付着する」とは、表面修飾材料が無機粒子に対し、これらの間の相互作用により接触または結合することをいう。接触としては、例えば、物理吸着が挙げられる。また、結合としては、イオン結合、水素結合、共有結合等が挙げられる。
【0079】
混合液中における表面修飾材料と無機粒子との合計の含有量が65質量%未満である場合、表面修飾材料と無機粒子以外の成分、例えば、分散媒が多くなり過ぎて、後述する分散工程において表面修飾材料を無機粒子の表面に充分に付着させることができない。その結果、無機粒子表面に水酸基が多く残存し、得られる分散液を疎水性の高い材料と混合した際に、無機粒子が凝集してしまい、疎水性の高い材料に濁りが生じる。表面修飾材料と無機粒子との合計の含有量は、65質量%以上であればよいが、70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。
【0080】
混合液中における表面修飾材料と無機粒子との合計の含有量が93質量%を超えると、混合液の粘度が高くなりすぎて、後述する分散工程において、表面修飾材料を充分には無機粒子の表面に付着させることができない。表面修飾材料と無機粒子との合計の含有量は、93質量%以下であればよいが、91質量%以下であることが好ましく、89質量%以下であることがより好ましい。
【0081】
また、上述したように、混合液中における無機粒子の含有量が10質量%以上46質量%以下である。これにより、無機粒子に対する表面修飾材料の量を適切な範囲内とすることができ、無機粒子の表面に均一に表面修飾材料を付着させることができるとともに、混合液の粘度の上昇を抑制することができる。
【0082】
混合液中における無機粒子の含有量が10質量%未満である場合、無機粒子に対して表面修飾材料の量が過剰となり、得られる分散液において過剰の表面修飾材料が無機粒子の凝集を誘発する。混合液中における無機粒子の含有量は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。
【0083】
混合液中における無機粒子の含有量が46質量%を超えると、無機粒子に対して表面修飾材料の量が不足し、無機粒子に充分な量の表面修飾材料が付着しない。また、無機粒子の含有量が多くなり過ぎる結果、混合液の粘度が高くなり過ぎて、後述する分散工程において、無機粒子を充分に分散できない。混合液中における無機粒子の含有量は、43質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0084】
混合液中における無機粒子の含有量に対する表面修飾材料の含有量は、特に限定されないが、例えば、無機粒子を100質量部とした場合、100質量部以上800質量部以下であることが好ましく、140質量部以上600質量部以下であることがより好ましく、180質量部以上400質量部以下であることがさらに好ましい。これにより、無機粒子に対する表面修飾材料の量を適切な範囲内とすることができ、無機粒子の表面に均一に表面修飾材料を付着させることができる。
【0085】
混合液中に含まれる無機粒子としては、特に限定されない。無機粒子としては、例えば、酸化ジルコニウム粒子、酸化チタン粒子、シリカ粒子、酸化亜鉛粒子、酸化鉄粒子、酸化銅粒子、酸化スズ粒子、酸化セリウム粒子、酸化タンタル粒子、酸化ニオブ粒子、酸化タングステン粒子、酸化ユーロピウム粒子、酸化イットリウム粒子、酸化モリブデン粒子、酸化インジウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化ゲルマニウム粒子、酸化鉛粒子、酸化ビスマス粒子、酸化ハフニウム粒子、チタン酸カリウム粒子、チタン酸バリウム粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、ニオブ酸カリウム粒子、ニオブ酸リチウム粒子、タングステン酸カルシウム粒子、イットリア安定化ジルコニア粒子、アルミナ安定化ジルコニア粒子、シリカ安定化ジルコニア粒子、カルシア安定化ジルコニア粒子、マグネシア安定化ジルコニア粒子、スカンジア安定化ジルコニア粒子、ハフニア安定化ジルコニア粒子、イッテルビア安定化ジルコニア粒子、セリア安定化ジルコニア粒子、インジア安定化ジルコニア粒子、ストロンチウム安定化ジルコニア粒子、酸化サマリウム安定化ジルコニア粒子、酸化ガドリニウム安定化ジルコニア粒子、アンチモン添加酸化スズ粒子およびインジウム添加酸化スズ粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含む無機酸化物粒子が好適に用いられる。
【0086】
無機粒子は、得られる分散液の用途に応じてその種類を適宜選択できる。例えば、得られる分散液中の無機粒子を発光素子の封止部材の材料として用いる場合、透明性や封止樹脂(樹脂成分)との相溶性(親和性)を向上させる観点から、混合液は、無機粒子として、酸化ジルコニウム粒子、酸化チタン粒子およびシリカ粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。また、無機粒子は、封止部材の屈折率を向上させる観点から、屈折率が1.7以上であることが好ましい。封止部材の屈折率を向上させる無機粒子としては、上記の無機酸化物粒子のうち、シリカ粒子以外の粒子が挙げられる。封止部材の材料として用いる場合、無機粒子は、酸化ジルコニウム粒子および酸化チタン粒子の少なくとも一方であることがより好ましく、酸化ジルコニウム粒子であることが特に好ましい。
【0087】
なお、無機粒子は、混合液において一次粒子として分散していてもよいし、一次粒子が凝集した二次粒子として分散していてもよい。通常、無機粒子は、混合液において二次粒子として分散している。
【0088】
無機粒子の平均一次粒子径は、例えば、3nm以上200nm以下であることが好ましく、5nm以上170nm以下であることがより好ましく、10nm以上100nm以下であることがさらに好ましい。無機粒子の平均一次粒子径が前記の範囲であることにより、分散液の透明性が高くなる。また、発光素子、例えば、LED(light emitting diode)の封止部材の材料として用いる場合には、発光素子(LED)の明るさを向上させることができる。
【0089】
無機粒子の平均一次粒子径の測定は、例えば、透過型電子顕微鏡での観察により行うことができる。まず、透過型電子顕微鏡により、分散液から無機粒子を採取したコロジオン膜を観察し、透過型電子顕微鏡画像を得る。次いで、透過型電子顕微鏡画像中の無機粒子を所定数、例えば、100個を選び出す。そして、これらの無機粒子各々の最長の直線分(最大長径)を測定し、これらの測定値を算術平均して求める。
【0090】
ここで、無機粒子同士が凝集している場合には、この凝集体の凝集粒子径を測定するのではない。この凝集体を構成している無機粒子の粒子(一次粒子)の最大長径を所定数測定し、これらの測定値を算術平均して、平均一次粒子径とする。
【0091】
混合工程において、加水分解反応を妨げない範囲であれば、混合液にさらに親水性溶媒以外の有機溶媒を混合してもよい。
【0092】
親水性溶媒以外の有機溶媒としては、例えば、芳香族系溶媒、飽和炭化水素系溶媒、不飽和炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、混合工程で表面修飾材料が加水分解された場合には、表面修飾材料由来の化合物、例えば、アルコール系溶媒が混合液中に含まれる。
【0093】
混合液中における有機溶媒の含有量は、上述した無機粒子および表面修飾材料の含有量を満足するものであれば特に限定されない。
【0094】
混合液には、必要に応じて上述した以外の成分、例えば、分散剤、分散助剤、酸化防止剤、流動調整剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤等の一般的な添加剤等が混合されてもよい。
【0095】
(工程C(分散工程))
分散工程では、混合液中において無機粒子を分散して、無機粒子が分散した分散液(第1の分散液)を得る。
無機粒子の分散は、公知の分散機により行うことができる。分散機としては、例えば、ビーズミル、ボールミル、ホモジナイザー、ディスパー、撹拌機等が好適に用いられる。
【0096】
分散工程では、分散液中における無機粒子の粒子径(分散粒子径)がほぼ均一となるように、過剰なエネルギーを付与せず、必要最低限のエネルギーを付与して、混合液中において無機粒子を分散させることが好ましい。
【0097】
(工程E(除去工程))
本実施形態では、分散工程Cと、添加工程Dの間に、親水性溶媒を除去する工程Eを設けてもよい。
除去工程では、上記分散液に含まれる親水性溶媒や、加水分解反応により生成したアルコールを除去する。除去工程を設けることにより、以下に説明する工程Dの効率を向上させることができる。
親水性溶媒を除去する方法は特に限定されないが、例えば、エバポレータを用いることができる。
除去工程は、親水性溶媒が完全に除去されるまで行ってもよく、親水性溶媒が5質量%程度残存するまでに留めてもよい。
なお、以下の添加工程においても親水性溶媒は除去されるため、本工程は行わなくてもよい。
【0098】
(工程D(添加工程))
添加工程では、上記の分散液に疎水性溶媒を添加し、分散液を所望の固形分(濃度)に調整する。
上述の通り、疎水性溶媒は、無機粒子が凝集しないように、徐々に添加すればよい。そのため、分散液を加熱してから疎水性溶媒を添加してもよく、疎水性溶媒を添加してから分散液を加熱してもよく、分散液の加熱と疎水性溶媒の添加を同時に行ってもよい。
すなわち、添加工程は、上記の分散液を加熱した後に、上記の疎水性溶媒を上記の無機粒子が凝集しない速度で加える工程d1であってもよく、上記の分散液を加熱しながら、上記の疎水性溶媒を上記の無機粒子が凝集しない速度で加える工程d2であってもよく、または、上記の疎水性溶媒を上記の無機粒子が凝集しない速度で加えた後に、上記の分散液を加熱する工程d3であってもよい。
【0099】
無機粒子が凝集しない速度は、特に限定されない。例えば、1時間で3質量%以上20質量%以下の範囲で固形分が低くなるような速度で連続的に疎水性溶媒を添加すればよい。加熱温度が高い場合には疎水性溶媒の添加量を多くし、加熱温度が低い場合には疎水性溶媒の添加量を少なくするように、疎水性溶媒の添加量を適宜調整すればよい。
【0100】
例えば、30分毎、1時間毎、または2時間毎に、3質量%以上20質量%以下の範囲で固形分が低くなるように、疎水性溶媒を段階的に添加すればよい。加熱温度が高い場合には一度に添加する疎水性溶媒の添加量を多めにし、加熱温度が低い場合には一度に添加する疎水性溶媒の添加量を少なくするように、疎水性溶媒の添加量を適宜調整すればよい。
【0101】
加熱温度は、表面修飾材料の重合反応が進行する温度であれば特に限定されない。加熱温度は、例えば、35℃以上80℃以下であることが好ましい。加熱温度が35℃以上であることにより、表面修飾材料の重合反応を進行させることができる。一方、加熱温度が80℃以下であることにより、表面修飾材料の急激な反応による無機粒子の凝集を抑制することができる。
【0102】
加熱時間は、固形分の調整が終わるまで適宜実施すればよく、例えば、4時間以上12時間以下であることが好ましい。加熱時間が4時間以上であることにより、表面修飾材料の重合反応が進行し、疎水性溶媒と混合することが可能となる。一方、加熱時間が12時間以下であることにより、表面修飾材料の重合反応の進行し過ぎによる無機粒子の凝集を抑制することができる。
【0103】
疎水性溶媒は、本実施形態の分散液と混合したい材料と相溶できるものであれば特に限定されない。疎水性溶媒としては、例えば、芳香族類、飽和炭化水素類、不飽和炭化水素類等が挙げられる。これらの疎水性溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでも、芳香族類、特に芳香族炭化水素が好ましい。芳香族類は、メチル系シリコーンとの相溶性に優れ、これにより得られる組成物の粘度特性の向上および形成される封止部材の品質(透明性、形状等)の向上に資する。
【0104】
芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、1-フェニルプロパン、イソプロピルベンゼン、n-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、2-エチルトルエン、3-エチルトルエン、4-エチルトルエン等が挙げられる。これらの芳香族炭化水素は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0105】
これらでも、分散液の安定性や、後述する組成物製造時における分散媒の除去等における取り扱い性の容易性の観点から、芳香族炭化水素としては、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレンおよびベンゼンからなる群から選択される少なくとも1種が特に好ましく用いられる。
【0106】
最終的な分散液に含まれる疎水性溶媒の含有量は、所望の固形分となるように適宜調整すればよい。疎水性溶媒の含有量は、例えば、40質量%以上95質量%以下であることが好ましく、50質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがさらに好ましい。これにより、分散液と後述する樹脂成分、特にメチル系シリコーンとの混合がより容易となる。
【0107】
以上により、分散液を得ることができる。本実施形態に係る分散液の製造方法を用いて製造された分散液は、無機粒子が均一に分散するとともに、無機粒子の表面が表面修飾材料により均一かつ充分に修飾されている。さらには、疎水性の高い材料と分散液とを混合した場合において、無機粒子は、均一に疎水性の高い材料中に分散することができ、この結果、疎水性の高い材料の濁り、例えば、白濁が防止される。このため、疎水性の高い材料の色調に影響をほとんど与えることなく、無機粒子の目的とする機能が発揮される。
【0108】
本実施形態に係る分散液の製造方法を用いて製造された分散液は、固形分を低く調整することができるため、疎水性材料との混合が容易である。すなわち、本実施形態に係る分散液の製造方法を用いて製造された分散液は、後工程での疎水性材料との混合の手間等を軽減することができ、取り扱いが容易である。
【0109】
<分散液>
本実施形態に係る分散液は、無機粒子と、少なくとも一部が前記無機粒子に付着した1種以上の表面修飾材料と、疎水性溶媒とを含み、前記表面修飾材料は少なくともシラン化合物を含み、前記分散液と、メチルフェニルシリコーンとを、前記無機粒子と前記表面修飾材料の合計質量と、メチルフェニルシリコーンとの質量比が30:70となるように混合し、疎水性溶媒を除去した場合の粘度が100Pa・s以下であり、前記無機粒子の体積基準90%粒子径をD90、前記無機粒子の体積基準10%粒子径をD10とした場合のD90/D10が1.0以上2.4以下である。
【0110】
本実施形態の分散液は、上述した本実施形態に係る分散液の製造方法により製造される。
すなわち、本実施形態の分散液は、表面修飾材料と無機粒子と親水性溶媒とを混合して混合液を得る工程Bと、上記混合液中において上記無機粒子を分散して、上記無機粒子が分散した分散液を得る工程Cと、上記分散液に疎水性溶媒を加える工程Dと、を有し、上記混合液中における上記無機粒子の含有量が10質量%以上46質量%以下であり、上記混合液中における上記表面修飾材料と上記無機粒子との合計の含有量が65質量%以上93質量%以下である、分散液の製造方法によって得られる。
【0111】
従って、本実施形態の分散液は、無機粒子が表面修飾材料に均一に分散するとともに、無機粒子の表面が表面修飾材料により均一かつ充分に修飾されている。さらに、疎水性の高い材料と本実施形態の分散液とを混合した場合、無機粒子は、均一に疎水性の高い材料中に分散することができ、疎水性の高い材料の白濁を抑制することができる。その結果、疎水性の高い材料の色調にほとんど影響を与えることなく、無機粒子の目的とする機能が発揮される。
【0112】
上述のように、本実施形態の分散液は、表面修飾材料に無機粒子を直接分散させることによって、シャープな粒度分布を有する分散液が得られ、かつ無機粒子を疎水性材料と混合することができるようになった。本実施形態の分散液は、従来の分散液よりも、表面修飾材料が無機粒子に多く付着し、かつ、緻密な被覆がされていると推測される。しかしながら、無機粒子の表面がどのような状態になっているために、分散液は疎水性材料と混合することができるようになったのか不明である。そのため、本実施形態の分散液の特徴を、表面修飾材料によって修飾された無機粒子の表面の状態により、直接特定することは、不可能である。分散液が、無機粒子と、少なくとも一部が無機粒子に付着した1種以上の表面修飾材料と、疎水性溶媒とを含むことを鑑みると、無機粒子を疎水性材料と混合することができるようにするための表面の状態を文言により一概に特定することは、無機粒子を疎水性材料と混合できることが、表面修飾材料の構造・分散液中における重合度、無機粒子の形状・粒子径・粒度分布・比表面積等、多数の要因の複雑な絡み合いによって発現していると推察されることに照らせば、およそ不可能である。
【0113】
また、本実施形態の分散液は、分散し難い無機粒子、例えば、微粒の無機粒子の場合に、上述したような効果をより顕著に得ることができる。
【0114】
本実施形態における表面修飾材料は、少なくともシラン化合物を含むが、シリコーン化合物を含んでもよく、含まなくてもよい。すなわち、表面修飾材料としてシラン化合物のみを用いてもよい。
表面修飾材料中におけるシラン化合物の含有量は、60質量%以上100質量%以下であることが好ましく、70質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
シラン化合物の含有量が上記範囲であることにより、無機粒子を疎水性材料に均一に混合できる程度に、無機粒子の表面の疎水性を高めることができる。
【0115】
本実施形態の分散液と混合する疎水性材料としてシリコーン樹脂を選択する場合には、無機粒子の表面にシリコーン化合物を付着させることが好ましい。本実施形態の分散液に含まれる表面修飾材料中における、シリコーン化合物の含有量は0質量%以上40質量%以下であることが好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
シリコーン化合物の含有量が上記範囲であることにより、疎水性材料としてシリコーン樹脂を用いた場合には、無機粒子の混合がより容易になる。
【0116】
本実施形態の分散液と、メチルフェニルシリコーンとを、無機粒子と表面修飾材料の合計質量と、メチルフェニルシリコーンとの質量比が30:70となるように混合し、疎水性溶媒を除去した場合の粘度は100Pa・s以下である。
メチルフェニルシリコーンは、信越化学工業社製のKER-2500-Bである。
【0117】
疎水性溶媒は、エバポレーター等で完全に除去することが好ましいが、完全に除去することは困難であるため5質量%程度残存していてもよい。
粘度は、レオメーター(商品名:レオストレスRS-6000、HAAKE社製)を用い、25℃、剪断速度1(1/S)の条件で測定する。
【0118】
疎水性溶媒を除去すると、粒子同士が近接することとなり、組成物(無機粒子と表面修飾材料と、シリコーンとを含む組成物)の粘度が増粘する。したがって、疎水性溶媒を除去した場合の粘度とは、分散液から疎水性溶媒を除去してから1時間以内に測定した組成物の粘度を意味する。
【0119】
組成物の粘度は90Pa・s以下であることが好ましく、80Pa・s以下であることがより好ましく、70Pa・s以下であることがさらに好ましく、60Pa・s以下であることが特に好ましい。なお、組成物の粘度の下限値は、信越化学工業社製のKER-2500-Bの粘度と同程度であることが好ましく、1Pa・sであってもよく、5Pa・sであってもよく、10Pa・sであってもよい。
【0120】
組成物の粘度が上記範囲であれば、その組成物を用いた後の工程での取り扱いが容易になる。
【0121】
本実施形態に係る分散液は、無機粒子の体積基準90%粒子径をD90、無機粒子の体積基準10%粒子径をD10をとした際の、D90/D10は、1.0以上2.4以下である。D90/D10は、無機粒子の粒度分布の形状の指標であり、無機粒子の粒子径の均一性の指標となる。D90/D10が上述したような範囲内にあることにより、分散液中の無機粒子の粒子径が比較的均一となり、粒度分布がシャープである。また、本実施形態に係る分散液のこのような均一な粒子径を有する無機粒子は、疎水性の高い材料中においても比較的安定して、均一に分散することができる。このようなD90/D10の範囲は、上述した本実施形態に係る分散液の製造方法により、比較的容易に達成可能である。
【0122】
本実施形態に係る分散液は、無機粒子の体積基準50%粒子径D50は、特に限定されないが、例えば、30nm以上400nm以下であることが好ましく、40nm以上300nm以下であることがより好ましい。一般に、上記のような範囲の粒子径は、高い比表面積に起因して無機粒子同士が凝集し易い。しかしながら、本実施形態に係る分散液は、無機粒子に表面修飾材料が均一かつ充分に付着しているため、無機粒子の安定した分散が可能である。また、分散液を疎水性の高い材料と混合した場合にも、無機粒子の凝集が抑制され、安定して疎水性の高い材料中で分散することができる。
【0123】
なお、無機粒子のD10、D50およびD90は、それぞれ、動的光散乱法により得られる散乱強度分布の累積百分率が10%、50%、90%のときの無機粒子の粒子径D10、D50、D90である。無機粒子のD10、D50およびD90は、動的光散乱式の粒度分布計(例えば、HORIBA社製、型番:SZ-100SP)により測定することができる。この粒度分布計によれば、固形分を疎水性溶媒で5質量%に調整した分散液を対象として、光路長10mm×10mmの石英セルを用いて、無機粒子のD10、D50およびD90を測定することができる。
【0124】
なお、本明細書において「固形分」とは、分散液において揮発可能な成分を除去した際の残留物をいう。例えば、分散液1.2gを磁性るつぼに入れて、ホットプレートで、100℃で1時間加熱した場合に、揮発せずに残留する成分(無機粒子や表面修飾材料等)を固形分とすることができる。
【0125】
また、無機粒子のD10、D50、D90は、無機粒子が一次粒子または二次粒子のいずれの状態で分散しているかに関わらず、分散している状態の無機粒子の径に基づいて測定、算出される。また、本実施形態において、無機粒子のD10、D50、D90は、表面修飾材料が付着した無機粒子のD10、D50、D90として測定されてもよい。分散液中には、表面修飾材料が付着した無機粒子と、表面修飾材料が付着していない無機粒子とが存在し得るため、通常、無機粒子のD10、D50、D90は、これらの混合状態における値として測定され得る。
【0126】
本実施形態に係る分散液は、無機粒子の平均一次粒子径が、3nm以上200nm以下であることが好ましく、5nm以上170nm以下であることがより好ましく、10nm以上100nm以下であることがさらに好ましい。無機粒子の平均一次粒子径が上記範囲であることにより、分散液の透明性が高くなる。また、本実施形態に係る分散液に含まれる無機粒子を、発光素子、例えば、LEDの封止部材の材料として用いる場合には、発光素子(LED)の明るさを向上させることができる。
【0127】
なお、分散液中における無機粒子、表面修飾材料の種類、含有量や、他の成分については、上述した混合液と同様であるので説明を省略する。
ただし、表面修飾材料の無機粒子への付着に際し、加水分解等の分解反応が生じる場合には、分散液中における表面修飾材料の含有量が混合液中における表面修飾材料の含有量と比較して小さくなり得る。したがって、分散液中の表面修飾材料と無機粒子との合計の含有量についても、混合液中における表面修飾材料と無機粒子との合計の含有量と比較して小さくなり得る。また、分解反応によって生じる化合物、例えば、アルコール系化合物が、分散液中において、混合液の場合と比較して増加し得る。
【0128】
上述したように、本実施形態に係る分散液を疎水性の高い材料と混合した場合であっても、無機粒子が疎水性の高い材料中に均一に分散可能であり、疎水性の高い材料の白濁を抑制することが可能である。また、本実施形態に係る分散液を疎水性の高い材料と混合した場合であっても、混合後の組成物の粘度が低いため、組成物の取扱いが容易である。
疎水性の高い材料としては、例えば、炭素や疎水性基を多く含む、有機溶媒、樹脂材料、油脂等が挙げられる。より具体的には、例えば、メチル基を多く含むシリコーン等が挙げられる。
【0129】
また、本実施形態に係る分散液を用いた場合、疎水性の高い材料中における微粒の無機粒子の均一な分散を達成することができる。したがって、本実施形態に係る分散液は、疎水性の高い材料中に微粒の無機粒子を均一に分散させることが求められる部材、例えば、発光素子の封止部材等の光学部材の材料として適している。よって、本実施形態に係る分散液は、光学部材用分散液、特に、発光素子の封止部材用分散液であることができる。
【実施例
【0130】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、あくまでも本発明の一例であって、本発明を限定するものではない。
【0131】
[実施例1]
(分散液の作製)
(i)加水分解工程
表面修飾材料としてのメチルトリメトキシシラン(製品名:KBM-13、信越工業化学社製)90.78質量部と、水9.21質量部と、塩酸(1N)0.01質量部とを添加して混合した。次いで、この混合液(第1の混合液)を60℃で30分撹拌し、メチルトリメトキシシランの加水分解処理を行い、加水分解液を得た。なお、加水分解液に添加したメチルトリメトキシシランは0.7molで、水は0.5molであった。すなわち、表面修飾材料1molに対して、水の量は0.8molであった。
【0132】
(ii)混合工程
平均一次粒子径が12nmの酸化ジルコニウム粒子(住友大阪セメント社製)30質量部、上記加水分解液60質量部とイソプロピルアルコール10質量部を混合して、混合液(第2の混合液)を得た。混合液(第2の混合液)中の酸化ジルコニウム粒子の含有量は30質量%、メチルトリメトキシシランの含有量は54.5質量%、酸化ジルコニウム粒子とメチルトリメトキシシランの合計の含有量は、84.5質量%であった。
【0133】
(iii)分散工程
この混合液をビーズミルで6時間分散処理した後、ビーズを除去し、分散液(第1の分散液)を得た。
【0134】
(iv)添加工程
得られた分散液(第1の分散液)を60℃で2時間加熱した。次いで、固形分が40質量%となるように分散液にトルエンを添加し、60℃で2時間加熱した。
次いで、固形分が30質量%となるように分散液にトルエンを添加し、60℃で1時間加熱した。
次いで、固形分が20質量%となるように分散液にトルエンを添加し、60℃で1時間加熱することで、実施例1の分散液(第2の分散液)を得た。
【0135】
(分散液の粒度分布の評価)
得られた実施例1の分散液の一部を採取し、トルエンで固形分を5質量%に調整した分散液中の酸化ジルコニウム粒子のD10とD50とD90を、粒度分布計(HORIBA社製、型番:SZ-100SP)を用いて測定した。その結果、D10は35nm、D50は54nm、D90は81nmであった。D90/D10は2.3であった。
【0136】
(分散液の透明性の評価)
得られた実施例1の分散液の一部を採取し、トルエンで固形分を15質量%に調整した分散液を石英セルにいれ、光路長を10mmとしたときの波長600nmにおける透過率を、分光光度計(型番:V-770、日本分光社製)にて積分球を用いて測定した。その結果、透過率は25%であった。
【0137】
(疎水性樹脂との相溶性の評価)
固形分を15質量%に調整した実施例1分散液10gと、メチルフェニルシリコーン(製品名:KER-2500-B、信越化学工業社製)3.5gとを混合した。すなわち、ジルコニアおよび表面修飾材料の合計質量と、メチルフェニルシリコーンとを、質量比で30:70となるように混合した。
次いで、エバポレーターを用いて、この混合液からトルエンを除去し、組成物を得た。
得られた組成物の外観を目視で観察した結果、透明な組成物であった。
【0138】
(組成物の粘度の評価)
得られた組成物の粘度を、レオメーター(製品名:レオストレスRS-6000、HAAKE社製)を用い、25℃、剪断速度1(1/s)の条件で測定した。
その結果、トルエンを除去した後の組成物の粘度は、30.5Pa・sであった。
【0139】
[実施例2]
平均一次粒子径が12nmの酸化ジルコニウム粒子に代えて、平均一次粒子径が90nmの酸化ジルコニウム粒子(住友大阪セメント社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る分散液を得た。
混合工程において得られた混合液中の酸化ジルコニウム粒子の含有量は30質量%、メチルトリメトキシシランの含有量は54.5質量%、酸化ジルコニウム粒子とメチルトリメトキシシランの合計の含有量は、84.5質量%であった。
【0140】
実施例1と同様にして、実施例2の分散液の粒度分布を測定した。その結果、D10は79nm、D50は102nm、D90は165nmであった。D90/D10は2.1であった。
実施例1と同様にして、固形分が15質量%に調整された実施例2の分散液の透過率を測定した結果、19%であった。
【0141】
固形分が15質量%に調整された実施例2の分散液を、実施例1と同様に、メチルフェニルシリコーンと混合し、トルエンを除去し、組成物を得た。得られた組成物の外観を目視で観察した結果、透明な組成物であった。
【0142】
得られた組成物の粘度を、実施例1と同様にして測定した。その結果、トルエンを除去した後の組成物の粘度は、25.3Pa・sであった。
【0143】
[実施例3]
実施例1の添加工程において、得られた分散液(第1の分散液)を加熱する前に、固形分が55質量%となるように分散液にトルエンを添加し、次いで、この分散液を60℃で2時間加熱した。
次いで、固形分が40質量%となるように分散液にトルエンを添加し、60℃で2時間加熱した。
次いで、固形分が30質量%となるように分散液にトルエンを添加し、60℃で1時間加熱した。
次いで、固形分が20質量%となるように分散液にトルエンを添加し、60℃で1時間加熱することで、実施例3の分散液(第2の分散液)を得た。
【0144】
実施例1と同様にして、実施例3の分散液の粒度分布を測定した。その結果、分散液のD10は37nm、D50は59nm、D90は83nmであった。D90/D10は2.2であった。
実施例1と同様にして、固形分が15質量%に調整された実施例3の用分散液の透過率を測定した結果、24%であった。
固形分が15質量%に調整された実施例3の分散液を、実施例1と同様に、メチルフェニルシリコーンと混合し、トルエンを除去し、組成物を得た。得られた組成物の外観を目視で観察した結果、透明な組成物であった。
【0145】
得られた組成物の粘度を、実施例1と同様にして測定した。その結果、トルエンを除去した後の組成物の粘度は、30.7Pa・s以下であった。
【0146】
[比較例1]
実施例1の添加工程において、得られた分散液(第1の分散液)を60℃で2時間加熱し、次いで、固形分が20質量%となるように、分散液にトルエンを一度に添加した。
その結果、粒子が凝集し、分散液を得ることができなかった。
【0147】
[比較例2]
実施例1の添加工程において、得られた分散液(第1の分散液)を加熱する前に、固形分が40質量%となるように、分散液にトルエンを添加した。
その結果、粒子が凝集し、分散液を得ることができなかった。
【0148】
[比較例3]
混合工程において、上記加水分解液70質量部に代えて、上記加水分解液20質量部と、イソプロピルアルコール50質量部とを用いた以外は、実施例1と同様にして、混合工程と分散工程を行った。混合工程において得られた混合液中の酸化ジルコニウム粒子の含有量は30質量%、メチルトリメトキシシランの含有量は18.2質量%、酸化ジルコニウム粒子とメチルトリメトキシシランの合計の含有量は、48.2質量%であった。
分散液の固形分(100℃で1時間)を測定した結果、38質量%であった。
【0149】
得られた分散液(第1の分散液)に、固形分が20質量%となるようにトルエンを添加し、60℃で2時間加熱した。次いで、揮発した量と同程度のトルエンを分散液に添加し、60℃で2時間加熱した。次いで、揮発した量と同程度のトルエンを分散液に添加し、60℃で1時間加熱した。次いで、揮発した量と同程度のトルエンを分散液に添加し、60℃で1時間加熱することで、表面修飾が促進され、イソプロピルアルコールがトルエンに置換された比較例3の分散液(第2の分散液)を得た。
【0150】
実施例1と同様にして、比較例3の分散液の粒度分布を測定した。その結果、D10は42nm、D50は95nm、D90は100nmであった。D90/D10は2.4であった。
実施例1と同様にして、固形分が15質量%に調整された比較例3の分散液の透過率を測定した結果、40%であった。
【0151】
固形分が15質量%に調整された比較例3の分散液を、実施例1と同様に、メチルフェニルシリコーンと混合したが、粒子が凝集し、組成物を得ることができなかった。
【0152】
[比較例4]
実施例1の混合工程において、加水分解液60質量部とイソプロピルアルコール10質量部を混合する代わりに、加水分解液70質量部を混合し、イソプロピルアルコールの添加を行わなかった以外は実施例1と同様にして、分散液(第1の分散液)を得た。
【0153】
得られた分散液(第1の分散液)を60℃で2時間加熱した。次いで、固形分が40質量%となるように分散液にトルエンを添加し、60℃で2時間加熱した。
次いで、固形分が30質量%となるように分散液にトルエンを添加し、60℃で1時間加熱した。
次いで、固形分が20質量%となるように分散液にトルエンを添加し、60℃で1時間加熱することで、比較例4の分散液(第2の分散液)を得た。
【0154】
実施例1と同様にして、比較例4の分散液の粒度分布を測定した。その結果、D10は50nm、D50は120nm、D90は150nmであった。D90/D10は3.0であった。
実施例1と同様にして、固形分が15質量%に調整された分散液の透過率を測定した結果、21%であった。
【0155】
固形分が15質量%に調整された比較例4の分散液を、実施例1と同様に、メチルフェニルシリコーンと混合し、トルエンを除去し、組成物を得た。得られた組成物の外観を目視で観察した結果、透明な組成物であった。得られた組成物の外観を目視で観察した結果、透明な組成物であった。
得られた組成物の粘度を、実施例1と同様にして測定した。その結果、組成物の粘度は40.6Pa・sであった。
【0156】
以上、酸化ジルコニウム粒子を高濃度の表面修飾材料中で分散処理した実施例1~実施例3に係る分散液は、疎水性の高い樹脂に対して、白濁することなく、透明な組成物を得ることが可能であった。これに対し、比較例3に係る分散液を疎水性の樹脂に混合したところ、白濁し、透明な組成物を得ることができなかった。
【0157】
また、実施例1、3と、比較例1、2を比較すると、高濃度の表面修飾材料中で分散された分散液は、加熱をしながら徐々にトルエン(疎水性溶媒)を添加することで、固形分を低くすることができ、ハンドリング性が高い分散液が得られることが確認された。
【0158】
また、実施例1と比較例4を比較することにより、親水性溶媒を少し混合して分散処理することにより、D10、D50、D90が小さく、かつ、粒度分布幅が狭い(シャープな)分散液が得られ、かつ、疎水性材料と混合した時の粘度の上昇を抑制できることが確認された。