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特許7380394紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物およびその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物およびその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C09J 183/06 20060101AFI20231108BHJP
   C09J 183/14 20060101ALI20231108BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231108BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20231108BHJP
   C08F 299/08 20060101ALI20231108BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
C09J183/06
C09J183/14
C09J11/06
C09J11/04
C08F299/08
C08F290/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020066690
(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公開番号】P2021161339
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大竹 滉平
(72)【発明者】
【氏名】北川 太一
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-085489(JP,A)
【文献】特開2016-190977(JP,A)
【文献】特開2016-191001(JP,A)
【文献】特開2016-190979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(
【化1】
(式中、R1は、互いに独立して炭素原子数1~20の一価炭化水素基であり、 5 は、炭素原子数1~10のアルキレン基であり、Meはメチル基であり、bは、1≦b≦4を満たす数であり、nは、このオルガノポリシロキサンの25℃における粘度を10~1,000Pa・sとする数である。)
で示されるオルガノポリシロキサン、
(B)(a)下記一般式(2)
【化2】
(式中、R 1 、前記と同じである。 2 は、酸素原子または炭素原子数1~20のアルキレン基であり、R 3 は、互いに独立して、アクリロイルオキシアルキル基、メタクリロイルオキシアルキル基、アクリロイルオキシアルキルオキシ基、またはメタクリロイルオキシアルキルオキシ基であり、pは、0≦p≦10を満たす数であり、aは、1≦a≦3を満たす数である。
で示される単位と、(b)R4 3SiO1/2単位(式中、R4は、互いに独立して炭素原子数1~10の一価炭化水素基である。)と、(c)SiO4/2単位とからなり、(a)単位および(b)単位の合計量と(c)単位とのモル比が、0.6~0.84:1の範囲にあるオルガノポリシロキサンレジン、
(C)光重合開始剤、および
(D)(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤
を含有する紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物。
【請求項2】
(C)成分が、α-アミノアセトフェノン型光重合開始剤を含む請求項1記載の紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物。
【請求項3】
さらに、(E)微粉末シリカを含む請求項1または2記載の紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載の紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製造プロセスの省エネルギー化や短時間化が強く求められており、紫外線照射により短時間で硬化する紫外線硬化型材料が注目されている。
このような材料として、紫外線硬化型のアクリル接着剤(特許文献1)や、エポキシ接着剤(特許文献2)が知られている。しかし、これらは有機ポリマーを主骨格としているため、材料の耐熱性に劣り、長期耐熱性やリフロー耐性が必要な用途には適さない。
一方、耐熱性に優れる紫外線硬化型接着剤として、光活性型白金錯体触媒を配合したシリコーン接着剤(特許文献3)が提案されている。しかし、この材料を十分に硬化させるためには紫外線照射後に加熱や時間を必要とするため、より工程の省エネルギー化および短時間化が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6124379号公報
【文献】特許第4984111号公報
【文献】特開2015-110752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、紫外線照射により素早く硬化し、硬化後にガラス基材等への優れた接着性、高耐熱性を示す紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物およびその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、特定の(メタ)アクリロイルオキシ含有基を有するオルガノポリシロキサン、特定の(メタ)アクリロイルオキシ含有基を有するオルガノポリシロキサンレジン、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤を用いることにより、紫外線照射により素早く硬化し、硬化後にガラス基板等への良好な接着性、および高耐熱性を示す紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、
1. (A)下記一般式(1)
【化1】
(式中、R1は、互いに独立して炭素原子数1~20の一価炭化水素基であり、R2は、酸素原子または炭素原子数1~20のアルキレン基であり、R3は、互いに独立して、アクリロイルオキシアルキル基、メタクリロイルオキシアルキル基、アクリロイルオキシアルキルオキシ基、またはメタクリロイルオキシアルキルオキシ基であり、pは、0≦p≦10を満たす数であり、aは、1≦a≦3を満たす数である。)
で示される基を1分子中に2個有するオルガノポリシロキサン、
(B)(a)下記一般式(2)
【化2】
(式中、R1、R2、R3、aおよびpは、前記と同じである。)
で示される単位と、(b)R4 3SiO1/2単位(式中、R4は、互いに独立して炭素原子数1~10の一価炭化水素基である。)と、(c)SiO4/2単位とからなり、(a)単位および(b)単位の合計量と(c)単位とのモル比が、0.6~1.2:1の範囲にあるオルガノポリシロキサンレジン、
(C)光重合開始剤、および
(D)(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤
を含有する紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物、
2. (C)成分が、α-アミノアセトフェノン型光重合開始剤を含む1記載の紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物、
3. さらに、(E)微粉末シリカを含む1または2記載の紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物、
4. 1~3のいずれかに記載の紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物の硬化物
を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物は、紫外線照射により素早く硬化して、ガラス基材等への優れた接着性を示し、かつその硬化物は高い耐熱性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に係る紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物は、
(A)下記式(1)で示される基を1分子中に2個有するオルガノポリシロキサン、
(B)下記式(2)で示される単位を含むオルガノポリシロキサンレジン、
(C)光重合開始剤、
(D)(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤
を含有する。
【0009】
(A)オルガノポリシロキサン
本発明に使用される(A)成分は、本組成物の架橋成分の一つであり、下記式(1)で示される基を1分子中に2個有し、主鎖が実質的にジオルガノシロキサン単位の繰返しからなるオルガノポリシロキサンである。
【0010】
【化3】
【0011】
式(1)において、R1は、互いに独立して炭素原子数1~20の一価炭化水素基であるが、好ましくは、脂肪族不飽和基を除く、炭素原子数1~10、より好ましくは1~8の一価炭化水素基である。R2は、酸素原子または炭素原子数1~20のアルキレン基であるが、好ましくは炭素原子数1~10、より好ましくは1~5のアルキレン基である。R3は、互いに独立して、アクリロイルオキシアルキル基、メタクリロイルオキシアルキル基、アクリロイルオキシアルキルオキシ基、またはメタクリロイルオキシアルキルオキシ基である。
【0012】
式(1)において、R1の炭素原子数1~20の一価炭化水素基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル基等が挙げられる。それらの具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-デシル基等のアルキル基;ビニル、アリル(2-プロペニル)、1-プロペニル、イソプロペニル、ブテニル基等のアルケニル基;フェニル、トリル、キシリル、ナフチル基等のアリール基;ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0013】
また、これら一価炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が、塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子や、シアノ基等の他の置換基で置換されていてもよく、それらの具体例としては、クロロメチル、ブロモエチル、トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換炭化水素基;シアノエチル基等のシアノ置換炭化水素基などが挙げられる。
これらの中でも、R1としては、炭素原子数1~5のアルキル基、フェニル基が好ましく、メチル基、エチル基、フェニル基がより好ましい。
【0014】
2の炭素原子数1~20のアルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、イソブチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デシレン基等が挙げられる。
これらの中でも、R2としては、酸素原子またはメチレン、エチレン、トリメチレン基が好ましく、酸素原子またはエチレン基がより好ましい。
【0015】
3のアクリロイルオキシアルキル基、メタクリロイルオキシアルキル基、アクリロイルオキシアルキルオキシ基、またはメタクリロイルオキシアルキルオキシ基におけるアルキル(アルキレン)基の炭素原子数としては、特に限定されるものではないが、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。これらアルキル基の具体例としては、R1で例示した基のうち、炭素原子数1~10のものが挙げられる。
3の具体例としては、下記式で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
【化4】
【0017】
上記式中、bは、1≦b≦4を満たす数であるが、1≦b≦3を満たす数が好ましい。R5は、炭素原子数1~10のアルキレン基であるが、好ましくは炭素原子数1~5のアルキレン基である。R5の具体例としては、R2で例示した基のうち、炭素原子数1~10のものが挙げられ、メチレン、エチレン、トリメチレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0018】
式(1)中、pは、0≦p≦10を満たす数であるが、0≦p≦5が好ましく、0または1がより好ましい。aは、1≦a≦3を満たす数であるが、1または2が好ましい。
【0019】
本発明で用いる(A)成分のオルガノポリシロキサン分子中における上記一般式(1)で示される基の結合位置は、分子鎖末端であっても、分子鎖非末端(すなわち、分子鎖途中または分子鎖側鎖)であっても、あるいはこれらの両方であってもよいが、柔軟性の面では末端のみに存在することが望ましい。
【0020】
(A)成分のオルガノポリシロキサン分子中において、上記一般式(1)で示される基以外のケイ素原子に結合する有機基は、例えば、R1と同様の基が挙げられ、特に、脂肪族不飽和基を除く炭素原子数1~12、好ましくは1~10の一価炭化水素基が好ましい。
これらの具体例としては、R1で例示した基と同様のものが挙げられるが、合成の簡便さから、アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基が好ましく、メチル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基がより好ましい。
【0021】
また、(A)成分の分子構造は、基本的に、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状または分岐鎖状(主鎖の一部に分岐を有する直鎖状を含む)であり、特に、分子鎖両末端が上記一般式(1)で示される基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンが好ましい。
(A)成分は、これらの分子構造を有する単一の重合体、これらの分子構造からなる共重合体、またはこれらの重合体の2種以上の混合物であってもよい。
【0022】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの25℃における粘度は、組成物の作業性を考慮すると、10~1,000Pa・sが好ましく、50~500Pa・sがより好ましい。なお、本発明において、粘度は回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型、レオメーター等)により測定できる(以下、同様)。
【0023】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの具体例としては、下記式(3)~(5)で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
【化5】
【0025】
上記式中、R1、R5、およびbは、上記と同じ意味であり、Meはメチル基を表す。nは、オルガノポリシロキサンの粘度を上記値とする数であるが、1~800の数が好ましく、50~600の数がより好ましい。
【0026】
このようなオルガノポリシロキサンは、公知の方法で製造することができる。例えば、上記式(3)で表されるポリシロキサンは、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体とクロロジメチルシランとのヒドロシリル化反応物に、2-ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得ることができる。
上記式(4)で表されるオルガノポリシロキサンは、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体と3-(1,1,3,3-テトラメチルジシロキサニル)プロピルメタクリラート(CAS No.96474-12-3)とのヒドロシリル化反応物として得られる。
上記式(5)で表されるオルガノポリシロキサンは、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体とジクロロメチルシランとのヒドロシリル化反応物に、2-ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得ることができる。
【0027】
(B)オルガノポリシロキサンレジン
(B)成分は、本組成物の架橋成分の一つであり、(a)下記式(2)で示される単位(MA単位)と、(b)R4 3SiO1/2単位(M単位)と、(c)SiO4/2単位(Q単位)とからなる(メタ)アクリロイルオキシ含有基を有するオルガノポリシロキサンレジンである。
【0028】
【化6】
【0029】
(a)成分の式(2)中、R1、R2、R3、aおよびpは、上記と同じである。
(b)成分中、R4は、炭素原子数1~10の一価炭化水素基である。R4の炭素原子数1~10の一価炭化水素基の具体例としては、R1で例示した基のうち、炭素原子数1~10のものが挙げられる。それらの中でも、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル基等の炭素原子数1~6のアルキル基;フェニル、トリル基等の炭素原子数6~10のアリール基、ベンジル基等の炭素原子数7~10のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基等の炭素原子数2~6のアルケニル基等が好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましい。
なお、上記R4の一価炭化水素基も、R1と同様に、炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が、上述した他の置換基で置換されていてもよい。
【0030】
本発明の(B)成分では、(a)一般式(2)で示される単位(MA単位)および(b)R4 3SiO1/2単位(M単位)の合計量と、(c)SiO4/2単位(Q単位)とのモル比が、(MA単位+M単位):Q単位=0.6~1.2:1である。このモル比が0.6未満になると、組成物の粘度が非常に高くなり、1.2を超えると硬化物のゴム物性が低下する。
組成物の粘度、および硬化物のゴム物性をより適切な範囲とすることを考慮すると、(MA単位+M単位)とQ単位のモル比は、(MA単位+M単位):Q単位=0.7~1.2:1が好ましい。
【0031】
また、MA単位とM単位のモル比により、硬化物のゴム物性を調節できる。MA単位が多すぎると材料の柔軟性がなくなる場合があり、MA単位が少なすぎると材料の強度が低下する場合がある。従って、これらを考慮すると、MA単位:M単位=0.25~0.025:1が好ましい。
【0032】
(B)成分の数平均分子量は、1,000~20,000が好ましく、より好ましくは2,000~10,000であり、さらに好ましくは3,000~8,000である。なお、本発明において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値である。
【0033】
(B)成分のオルガノポリシロキサンレジンの含有量は、(A)成分100質量部に対して、5~300質量部が好ましく、より好ましくは10~200質量部である。5質量部未満であると硬化物の力学的特性が低くなる場合があり、300質量部を超えると粘度が非常に高くなり、作業性が低下する場合がある。
【0034】
(C)光重合開始剤
本発明で使用可能な光重合開始剤の具体例としては、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(Omnirad 651)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(Omnirad 184)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(Omnirad 1173)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(Omnirad 127)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル(Omnirad MBF)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(Omnirad 907)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン(Omnirad 369)、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オン(Omnirad 379EG)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(Omnirad 819)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(Omnirad TPO)等(以上、いずれもIGM Resins B.V.社製)が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
(C)成分としては、紫外線硬化時に酸素阻害を受けにくくなり、表面硬化性が向上する観点からα-アミノアセトフェノン型光重合開始剤が好ましく、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(Omnirad 1173)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(Omnirad 819)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(Omnirad TPO)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン(Omnirad 369)、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オン(Omnirad 379EG)(以上、いずれもIGM Resins B.V.社製)がより好ましい。
【0036】
光重合開始剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.01~20質量部が好ましく、より好ましくは0.1~10質量部である。0.01質量部未満であると硬化性が不足する場合があり、20質量部を超えると深部硬化性が悪化する場合がある。
【0037】
(D)(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤
(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤の具体例としては、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシオクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらは市販品として入手することができ、例えば、γ-(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン(商品名:KBM-503、信越化学工業(株)製)、γ-(アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン(商品名:KBM-5103、信越化学工業(株)製)、メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン(商品名:KBM-5803、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0038】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~50質量部が好ましく、より好ましくは0.2~30質量部である。0.1質量部未満であると硬化物の接着性が低下する場合があり、50質量部を超えると耐熱性が悪化する場合がある。
【0039】
(E)微粉末シリカ
本発明の組成物には、さらに、(E)成分として微粉末シリカを加えてもよい。(E)成分の微粉末シリカは、主に組成物にチクソ性を付与する任意成分であり、ヒュームドシリカ(乾式シリカ)や、沈殿シリカ(湿式シリカ)等が挙げられるが、ヒュームドシリカ(乾式シリカ)が好ましい。また、(E)成分を配合することで硬化物の強度をさらに高めることができる。
(E)成分の比表面積は、特に限定されるものではないが、50~400m2/gが好ましく、100~350m2/gがより好ましい。比表面積が50m2/g未満であると、組成物のチクソ性が不十分となる場合があり、また400m2/gを超えると、組成物の粘度が過剰に高くなり、作業性が悪くなる場合がある。なお、比表面積は、BET法による測定値である。
【0040】
これら微粉末シリカは、そのまま用いても構わないが、表面疎水化処理剤で処理したものを用いてもよい。
この場合、予め表面処理剤で処理した微粉末シリカを用いても、微粉末シリカの混練時に表面処理剤を添加し、混練と表面処理を同時に行ってもよい。
これら表面処理剤としては、アルキルアルコキシシラン、アルキルクロロシラン等のシラン化合物や、アルキルシラザン等のシラザン化合物、シランカップリング剤等が挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上を同時に、または異なるタイミングで用いてもよい
(E)成分の微粉末シリカは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
本発明の組成物において、(E)成分を用いる場合、その含有量は、(A)成分100質量部に対して1~200質量部の範囲が好ましく、5~100質量部がより好ましく、10~80質量部がより一層好ましい。
【0042】
なお、本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、(D)成分以外のシランカップリング剤、接着助剤、重合禁止剤、酸化防止剤、耐光性安定剤である紫外線吸収剤、光安定化剤等の添加剤を配合することができる。
また、本発明の組成物はその他の樹脂組成物と適宜混合して使用することもできる。
【0043】
本発明の紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物は、上記(A)~(D)成分、必要に応じて(E)成分およびその他の成分を、任意の順序で混合し、撹拌等して得ることができる。撹拌等の操作に用いる装置は特に限定されないが、擂潰機、3本ロール、ボールミル、プラネタリーミキサー等を用いることができる。また、これら装置を適宜組み合わせてもよい。
【0044】
本発明の紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物の粘度は、5,000Pa・s以下が好ましく、1,000Pa・s以下がより好ましい。5,000Pa・sを超えると作業性が悪くなる場合がある。
【0045】
本発明の紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物は、紫外線を照射することにより速やかに硬化する。
この場合、照射する紫外線の光源としては、例えば、UVLEDランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアークランプ、キセノンランプ等が挙げられる。
紫外線の照射量(積算光量)は、例えば、本発明の組成物を硬化後に2.0mm程度の厚みになるように成形したシートに対して、好ましくは1~20,000mJ/cm2であり、より好ましくは10~10,000mJ/cm2である。すなわち、照度100mW/cm2の紫外線を用いた場合、0.01~200秒程度紫外線を照射すればよい。
【0046】
本発明の紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物の硬化物がガラス基材等への優れた接着性を示すためには、せん断接着力は0.8MPa以上が好ましく、1.0MPa以上がより好ましい。なお、これらの値は、JIS-K6249:2003に準じた測定値である。
【実施例
【0047】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例で使用した各成分の化合物は以下のとおりである。下記式中、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表し、Viはビニル基を表す。
【0048】
(A)成分
【化7】
(式中、括弧が付されたシロキサン単位の配列順は任意である。)
【0049】
(B)成分
(B-1)下記式(6)で表されるメタクリロイルオキシ基含有単位、ViMe2SiO1/2単位、Me3SiO1/2単位およびSiO2単位を含有し、メタクリロイルオキシ基含有単位/(ViMe2SiO1/2単位)/(Me3SiO1/2単位)/(SiO2単位)のモル比が0.07/0.10/0.67/1.00であるオルガノポリシロキサンレジン(数平均分子量5,700)の50質量%キシレン溶液
(B-2)下記式(6)で表されるメタクリロイルオキシ基含有単位、ViMe2SiO1/2単位、Me3SiO1/2単位およびSiO2単位を含有し、メタクリロイルオキシ基含有単位/(ViMe2SiO1/2単位)/(Me3SiO1/2単位)/(SiO2単位)のモル比が0.14/0.03/0.67/1.00であるオルガノポリシロキサンレジン(数平均分子量6,200)の50質量%キシレン溶液
【0050】
【化8】
【0051】
(C)成分
(C-1)2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オン(Omnirad 379EG、IGM Resins B.V.社製)
(C-2)2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(Omnirad 1173、IGM Resins B.V.社製)
【0052】
(D)成分
(D-1)3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-5103、信越化学工業(株)製)
(D-2)3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503、信越化学工業(株)製)
【0053】
(E)成分
(E-1)乾式シリカ(レオロシールDM-30S、比表面積230m2/g、(株)トクヤマ製)
【0054】
(F)成分(比較成分)
(F-1)イソボルニルアクリレート(ライトアクリレートIB-XA、共栄社化学(株)製)
【0055】
[実施例1~7および比較例1,2]
上記(A)および(B)成分を表1の組成で常法に従って混合し、減圧下にて100℃でキシレンを留去した後、(C)~(E)成分を混合することで表1記載の各シリコーン組成物を調製した。
得られた組成物および硬化物について下記特性を評価した。結果を表1に併記する。
【0056】
〔粘度〕
表1における組成物の粘度は回転粘度計を用いて23℃で測定した。
〔硬度、切断時伸び、引っ張り強度〕
調製したシリコーン組成物に、アイUV電子制御装置(型式UBX0601-01、アイグラフィック(株)製)を用い、窒素雰囲気下、室温(25℃)で、波長365nmの紫外光での照射量が4,000mJ/cm2となるように紫外線を照射し、硬化させた。なお、硬化後のシートの厚みは2.0mmとした。
得られたシートについて、硬度、切断時伸び、引っ張り強度をJIS-K6249:2003に準じて測定した。
〔ガラスせん断接着力〕
ガラスせん断接着力試験用の試験片を次のように作製した。2枚のガラス板の間に、10mm×25mm×0.46mm厚みとなるようにテフロン(登録商標)テープでダムを作製し、その内側に未硬化のシリコーン接着剤組成物を配置した。アイUV電子制御装置(型式UBX0601-01、アイグラフィック(株)製)を用い、窒素雰囲気下、室温(25℃)で、ガラス板越しに波長365nmの紫外光での照射量が4,000mJ/cm2となるように紫外線を照射し、硬化させた。
得られた試験片について、ガラスせん断接着力をJIS-K6249:2003に準じて測定した。
〔耐熱性〕
接着剤の耐熱性は、リフロー試験にて検証した。上記のガラスせん断接着試験と同様に作製した試験片を275℃のホットプレートの上で3分間加熱した後、硬化物とガラス間の剥離の有無を確認した。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示されるように、実施例1~7で調製した紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物は、適度な粘度を有しており、さらにその硬化物は良好なガラス接着力および耐熱性を有していることがわかる。
一方、(D)成分を含まない比較例1の組成物では、ガラス接着力が低く、さらにリフロー試験後に剥離が生じたことから耐熱性が低いことがわかる。また、(B)成分を含まず、有機系アクリレートを含む比較例2の組成物では、リフロー試験で剥離が生じ、耐熱性が低いことがわかる。