IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越半導体株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-研磨用組成物及びウェーハの加工方法 図1
  • 特許-研磨用組成物及びウェーハの加工方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】研磨用組成物及びウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020148688
(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公開番号】P2022043424
(43)【公開日】2022-03-16
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】大関 正彬
(72)【発明者】
【氏名】阿部 達夫
【審査官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/161701(WO,A1)
【文献】特開2014-041978(JP,A)
【文献】国際公開第2007/046420(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/158328(WO,A1)
【文献】特開2001-053050(JP,A)
【文献】特開2019-121795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨用組成物であって、
コロイダルシリカである砥粒と、
水溶性高分子及び界面活性剤の少なくとも1種と
を含み、
前記研磨用組成物中の全有機体炭素の濃度(ppmw)に対する前記砥粒の濃度(ppmw)の比が30以下のものであることを特徴とする研磨用組成物。
【請求項2】
ウェーハの加工方法であって、
前記ウェーハの両面又は片面を、請求項1に記載の研磨用組成物を用いて研磨する工程と、
及びHの少なくとも1種を含む薬液により研磨後の前記ウェーハ上の有機物を分解する工程と、
NH及びHFの少なくとも1種を含む薬液により研磨後のウェーハをエッチングする工程と
を含み、
前記エッチングする工程を、総エッチング量が5nm以下となるように行うことを特徴とするウェーハの加工方法。
【請求項3】
前記研磨する工程を、研磨後の前記ウェーハの表面上の砥粒付着量が5個/μm以下となるように行うことを特徴とする請求項2に記載のウェーハの加工方法。
【請求項4】
ウェーハの加工方法であって、
前記ウェーハの両面又は片面を、研磨用組成物を用いて研磨する工程と、
及びHの少なくとも1種を含む薬液により研磨後の前記ウェーハ上の有機物を分解する工程と、
NH及びHFの少なくとも1種を含む薬液により研磨後のウェーハをエッチングする工程と
を含み、
前記研磨用組成物として、砥粒と、水溶性高分子及び界面活性剤の少なくとも1種と
を含み、前記研磨用組成物中の全有機体炭素の濃度(ppmw)に対する前記砥粒の濃度(ppmw)の比が30以下のものを用い、
前記研磨する工程を、研磨後の前記ウェーハの表面上の砥粒付着量が5個/μm以下となるように行い、
前記エッチングする工程を、総エッチング量が5nm以下となるように行うことを特徴とするウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用組成物、ウェーハの加工方法、及びシリコンウェーハに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは微細化が進むにつれ、その土台となるシリコンウェーハもますます高い清浄度、表面品質が求められる。
【0003】
表面品質を損なう原因の1つに欠陥の存在がある。欠陥は大まかに結晶欠陥と研磨欠陥とに分けられる。
【0004】
結晶欠陥に関しては、結晶引き上げ時に導入された欠陥のことを指し、酸素析出欠陥や金属析出欠陥、ボイドなどが挙げられる。
【0005】
一方、研磨欠陥に関しては、研磨中に異物が混入するなどして表面にダメージが導入され発生する。
【0006】
結晶欠陥及び研磨欠陥はどちらも変質しているため、例えば研磨などの平坦化機構を有さない湿式エッチングなどの処理を行うと、変質部のエッチングレートが周囲と異なるため、突起やピットを生成し、さらにエッチング量が大きくなるほどにその顕在化量が大きくなってしまう。
【0007】
したがって、特に研磨後の洗浄工程でのエッチング量は可能な限り減らすことが望ましい。
【0008】
一方で、洗浄工程でのエッチング量を減少すると、別の問題が発生する。
【0009】
研磨後の洗浄の目的は、砥粒や水溶性高分子、界面活性剤などの研磨用組成物に含まれる成分を除去し出荷することにあるが、エッチング量を落としてしまうとこれらの成分を除去できずに残留してしまう可能性が高くなる。
【0010】
そこで、エッチング量を落としても研磨用組成物の成分が残留しないような研磨方法の開発が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第WO2007/046420号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、結晶欠陥及び研磨欠陥の顕在化が抑えられたウェーハを提供できる研磨用組成物、結晶欠陥及び研磨欠陥の顕在化が抑えられたウェーハを提供できるウェーハの加工方法、及びエッチングを受けても結晶欠陥及び研磨欠陥の顕在化を抑制できるシリコンウェーハを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明では、研磨用組成物であって、
砥粒と、
水溶性高分子及び界面活性剤の少なくとも1種と
を含み、
前記研磨用組成物中の全有機体炭素の濃度(ppmw)に対する前記砥粒の濃度(ppmw)の比が30以下のものであることを特徴とする研磨用組成物を提供する。
【0014】
このような本発明の研磨用組成物を用いてウェーハを研磨することにより、ウェーハへの砥粒の吸着を抑制することができる。それにより、研磨中のウェーハへの砥粒吸着量を減らし、ひいては研磨後のウェーハの表面上に残留する砥粒の量を減らすことができる。研磨後、ウェーハ上に残留した水溶性高分子及び/又は界面活性剤は、酸化剤等で分解することにより容易に除去できるので、少ないエッチング量でも、研磨後のウェーハ表面上に残留した研磨用組成物の成分を十分に除去できる。その結果、エッチングによって結晶欠陥及び研磨欠陥が顕在化するのを防ぐことができる。すなわち、本発明の研磨用組成物によると、残留砥粒量が少なく、結晶欠陥及び研磨欠陥の顕在化が抑えられた高品質のウェーハを提供できる。
【0015】
また、本発明では、ウェーハの加工方法であって、
前記ウェーハの両面又は片面を、本発明の研磨用組成物を用いて研磨する工程と、
及びHの少なくとも1種を含む薬液により研磨後の前記ウェーハ上の有機物を分解する工程と、
NH及びHFの少なくとも1種を含む薬液により研磨後のウェーハをエッチングする工程と
を含み、
前記エッチングする工程を、総エッチング量が5nm以下となるように行うことを特徴とするウェーハの加工方法を提供する。
【0016】
本発明のウェーハの加工方法であれば、本発明の研磨用組成物を用いるので、エッチングによる結晶欠陥及び研磨欠陥の顕在化を抑えながら、研磨後のウェーハの表面上に残留する研磨用組成物の成分を十分に除去することができる。すなわち、本発明のウェーハの加工方法によれば、残留砥粒量が少なく、結晶欠陥及び研磨欠陥の顕在化が抑えられた高品質のウェーハを提供できる。
【0017】
例えば、前記研磨する工程を、研磨後の前記ウェーハの表面上の砥粒付着量が5個/μm以下となるように行うことができる。
【0018】
表面上の砥粒付着量が5個/μm以下であるウェーハを、有機物を分解する工程及びエッチングする工程に供することで、研磨後のウェーハの表面上に残留する研磨用組成物の成分を確実に除去することができる。
【0019】
また、本発明では、研磨用組成物を用いて研磨されたシリコンウェーハであって、研磨後の表面上の砥粒付着量が5個/μm以下のものであることを特徴とするシリコンウェーハを提供する。
【0020】
本発明のシリコンウェーハは、研磨後の表面上の砥粒付着量が5個/μm以下なので、少ないエッチング量でも砥粒を十分に除去できる。その結果、エッチングによって結晶欠陥及び研磨欠陥が顕在化するのを防ぐことができる。すなわち、本発明のシリコンウェーハによると、残留砥粒量が少なく、結晶欠陥及び研磨欠陥の顕在化が抑えられた高品質のシリコンウェーハを提供できる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明の研磨用組成物であれば、残留砥粒量が少なく、結晶欠陥及び研磨欠陥の顕在化が抑えられた高品質のウェーハを提供できる。結晶欠陥及び研磨欠陥の顕在化が抑えられたウェーハは、表面品質が高く、半導体デバイスの微細化の要求に応えられるウェーハとして有効に使用できる。
【0022】
また、本発明のウェーハの加工方法であれば、残留砥粒量が少なく、結晶欠陥及び研磨欠陥の顕在化が抑えられた高品質のウェーハを提供できる。この方法で得られるウェーハは、表面品質が高いので、半導体デバイスの土台として有効に使用できる。
【0023】
そして、本発明のシリコンウェーハであれば、残留砥粒量が少なく、結晶欠陥及び研磨欠陥の顕在化が抑えられた高品質のシリコンウェーハを提供できる。本発明のシリコンウェーハを用いれば、表面品質の高いウェーハを製造でき、ひいては、表面品質の高いウェーハを土台として、微細化の要求に応えた半導体デバイスを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】比較例1及び実施例2のそれぞれで得られた、研磨工程後のウェーハの表面のSEM像である。
図2】実施例及び比較例の各々で得られた、エッチングする工程の後のウェーハ表面上のLLS欠陥数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
上述のように、結晶欠陥及び研磨欠陥の顕在化が抑えられたウェーハを提供できる研磨用組成物の開発が求められていた。
【0026】
本発明者は、上記課題を解決するために、結晶欠陥および研磨欠陥が顕在化しないような洗浄条件を見つけるとともに、そのような洗浄条件で除去可能な研磨用組成物の条件を見つけることを目的として、鋭意研究を行なった。
【0027】
まず、発明者は、洗浄条件を検討し、結晶欠陥及び研磨欠陥の顕在化を比較したところ、洗浄のエッチング量が大きく影響することを見出した。
【0028】
洗浄では、例えばNHとHとの混合溶液による洗浄や、自然酸化膜をHFにより剥離する洗浄、OやHとHFとの混合溶液による洗浄、HClとHの混合溶液による洗浄などがあるが、これらのうちNHとHとの混合溶液による洗浄、自然酸化膜をHFにより剥離する洗浄、OやHとHFとの混合溶液による洗浄ではエッチングを伴う。
【0029】
これらのエッチング量の多寡で結晶欠陥および研磨欠陥の顕在化程度が変わることが分かり、結晶欠陥及び研磨欠陥の顕在化抑制には、片面当たりのエッチング量を合計5nm以下に抑えることが重要であることが分かった。
【0030】
また、エッチング工程における片面当たりの総エッチング量を5nm以下に抑えることで、エッチング装置の生産性も向上し、薬液使用量も抑えることができることが分かった。
【0031】
しかし、エッチング工程での総エッチング量を5nm以下に抑えることで別の問題が浮上した。
【0032】
総エッチング量を5nm以下に抑えることで、結晶欠陥および研磨欠陥は減少したものの、残存砥粒が逆に増加し、パーティクルカウンターで検出される欠陥数としては増加してしまった。
【0033】
この現象は、エッチング量を従来より減少することで、研磨後ウェーハに付着した砥粒がリフトオフせずに表面に残り続けてしまったためと考えられる。
【0034】
したがって、研磨後のウェーハの残留砥粒を減少することができれば、エッチング後のウェーハの残留砥粒も減少することができると考えた。
【0035】
本発明者は、以上の知見を踏まえて更に鋭意検討を重ねた結果、研磨用組成物に、砥粒に加えて、水溶性高分子及び界面活性剤の少なくとも1種を含ませ、研磨用組成物中の全有機体炭素(TOC:Total Organic Carbon)の濃度に対する砥粒の濃度の比を30以下とすることにより、研磨中のウェーハへの砥粒吸着量を減らすことができ、ひいては研磨後ウェーハの表面上の残留砥粒も減少させられることを見出し、本発明を完成させた。
【0036】
即ち、本発明は、研磨用組成物であって、
砥粒と、
水溶性高分子及び界面活性剤の少なくとも1種と
を含み、
前記研磨用組成物中の全有機体炭素の濃度(ppmw)に対する前記砥粒の濃度(ppmw)の比が30以下のものであることを特徴とする研磨用組成物である。
【0037】
また、本発明は、ウェーハの加工方法であって、
前記ウェーハの両面又は片面を、本発明の研磨用組成物を用いて研磨する工程と、
及びHの少なくとも1種を含む薬液により研磨後の前記ウェーハ上の有機物を分解する工程と、
NH及びHFの少なくとも1種を含む薬液により研磨後のウェーハをエッチングする工程と
を含み、
前記エッチングする工程を、総エッチング量が5nm以下となるように行うことを特徴とする加工方法である。
【0038】
また、本発明は、研磨用組成物を用いて研磨されたシリコンウェーハであって、研磨後の表面上の砥粒付着量が5個/μm以下のものであることを特徴とするシリコンウェーハである。
【0039】
なお、特許文献1の請求項1には、酸化セリウム粒子、分散剤及び水を含有する酸化セリウムスラリーであって、酸化セリウム重量/分散剤重量比が20~80である酸化セリウムスラリーという発明が記載されている。特許文献1に記載のスラリーにおいて、酸化セリウムは、研磨剤として含まれている。また、特許文献1の例えば段落0032及び請求項4には、分散剤の例として、ポリ(メタ)アクリル酸塩、及びポリアクリル酸-ポリアクリル酸アルキルアンモニウム塩共重合体などが記載されている。さらに、特許文献1の請求項8には、このスラリーを用いた基板の研磨方法が記載されている。そして、特許文献1の段落0102には、このような酸化セリウムスラリー及び研磨方法によれば、研磨傷を低減させさらには研磨速度を速くすることができることが記載されている。
【0040】
しかしながら、特許文献1は、酸化セリウムスラリー中の全有機体炭素濃度については何ら着目しておらず、そのため、酸化セリウムスラリー中の全有機体炭素の濃度(ppmw)に対する砥粒の濃度(ppmw)の比を30以下のものとすることについても何ら着目していない。
【0041】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
(研磨用組成物)
本発明の研磨用組成物は、砥粒と、水溶性高分子及び界面活性剤の少なくとも1種と
を含み、前記研磨用組成物中の全有機体炭素の濃度(ppmw)に対する前記砥粒の濃度(ppmw)の比が30以下のものであることを特徴とする。
【0043】
このような本発明の研磨用組成物であれば、ウェーハへの砥粒の吸着を抑制することができる。それにより、研磨中のウェーハへの砥粒付着量を減らし、ひいては研磨後のウェーハの表面上に残留する砥粒の量を減らすことができる。
【0044】
本結果が発現した理由は、以下のとおりであると考えられる。
【0045】
研磨中のシリコンウェーハは、表面の自然酸化膜が存在しないため活性が高く、その表面に砥粒や水溶性高分子及び界面活性剤を吸着しやすい環境にある。
【0046】
そのような環境の中で、砥粒に対して水溶性高分子や界面活性剤の存在割合を高めることで、水溶性高分子や界面活性剤のウェーハ表面への吸着の割合を増やすことができ、ウェーハの表面における砥粒が吸着する物理的余地を減らしたことで残留砥粒が減少したと考えられる。
【0047】
このとき、水溶性高分子や界面活性剤が代わりに研磨後のウェーハの表面上に残留してしまう懸念はあるが、これらは、OやHといった酸化剤で分解でき、その結果砥粒に比べて容易に除去可能であり、そのためエッチングを伴わずして除去可能である。
【0048】
したがって、本発明の研磨用組成物を用いてウェーハを研磨した場合、少ないエッチング量でも、研磨後のウェーハの表面から研磨用組成物の成分を十分に除去できる。その結果、エッチングによって結晶欠陥及び研磨欠陥が顕在化するのを防ぐことができる。すなわち、本発明の研磨用組成物によると、残留砥粒量が少なく、結晶欠陥及び研磨欠陥の顕在化が抑えられた高品質のウェーハを提供できる。
【0049】
また、このとき、水溶性高分子及び界面活性剤の少なくとも1種がウェーハ表面にどの程度吸着して被覆できるかは、これらの成分における炭素-炭素結合の長さに最も依存すると考えられる。
【0050】
水溶性高分子及び界面活性剤の有機物成分はよくTOC(全有機体炭素)として評価されうる。なお、TOC(全有機体炭素)はTC(全炭素)からIC(無機体炭素)を差し引いた値である。そのため、水溶性高分子及び界面活性剤の炭素-炭素結合の長さの指標として、全有機体炭素(TOC)の濃度を好適に使用することができる。
【0051】
そして、TOCに対する砥粒の濃度割合を適切にコントロールできれば研磨後のウェーハの残留砥粒を減らすことができる。
【0052】
本発明者は、検討の結果、研磨用組成物における砥粒の濃度(ppmw)のTOCの濃度(ppmw)に対する比を30以下にすることが重要であることが分かった。
【0053】
より詳細には、研磨用組成物中の全有機体炭素の濃度に対する砥粒の濃度の比を30以下にすることにより、研磨中にウェーハ表面上に吸着する砥粒の量を十分に抑えることができ、その結果、研磨後のウェーハ表面上の残留砥粒量を小さくすることができることが分かった。
【0054】
一方、この比が30を超える場合、研磨中にウェーハ表面上への砥粒吸着量が過剰となり、研磨後の残留砥粒を十分に除去するには、その後に行なうエッチング工程におけるエッチング量を多く確保しなければいけなくなる。エッチング量を増やすと、結晶欠陥及び研磨欠陥の顕在化がより起こり易くなる。
【0055】
研磨用組成物中の全有機体炭素の濃度に対する砥粒の濃度の比の下限は、特に限定されないが、例えば、1以上とすることができる。研磨用組成物中の全有機体炭素の濃度に対する砥粒の濃度の比は、1以上30以下であることが好ましい。この範囲内であれば、砥粒による十分な研磨を達成しながら、研磨後の残留砥粒量を更に小さくすることができる。上記比は、3以上10以下であることがより好ましい。
【0056】
研磨用組成物中の全有機体炭素(TOC)の濃度は、例えば島津製作所株式会社製のTOC-Lシリーズにて測定することができる。研磨用組成物中の砥粒の濃度は、例えば京都電子工業株式会社製密度比重計DA-100にて測定することができる。
【0057】
研磨用組成物中の全有機体炭素の濃度に対する砥粒の濃度の比は、組成物中に含ませる砥粒の量と、水溶性高分子の量と、界面活性剤の量とを互いに調整することで、調整することができる。
【0058】
以下、本発明の研磨用組成物をより詳細に説明する。
【0059】
<砥粒>
砥粒の例としては、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化クロム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、二酸化マンガン、酸化亜鉛、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ダイヤモンド、フラーレンなどが挙げられるが、表面欠陥を抑制するためには二酸化ケイ素が好ましい。
【0060】
二酸化ケイ素は製法により、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、水ガラスシリカなどがあるが、スクラッチを防止するためにはコロイダルシリカが好ましい。
【0061】
コロイダルシリカの1次粒径は、欠陥低減の観点から1000nm以下が好ましく、さらに300nm以下が好ましく、さらには100nm以下が好ましい。また、研磨レート増大の観点から1nm以上が好ましく、さらには10nm以上が好ましい。
【0062】
コロイダルシリカの濃度は凝集防止の観点から10wt%以下が好ましく、さらには1wt%以下が好ましい。また、研磨レート増大の観点から0.0001wt%以上が好ましく、0.001wt%以上が好ましい。
【0063】
<水溶性高分子>
水溶性高分子としては、例えばセルロース誘導体が好適に用いられ、ヒドロキシエチルセルロースや、プロピオニルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースなどが用いられる。これらは、水溶性半合成高分子と呼ぶこともできる。
【0064】
また、欠陥低減の観点から、水溶性高分子として、上記半合成高分子と異なる合成高分子を用いる傾向もあり、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの高分子が好適に用いられる。
【0065】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、又はノニオン性界面活性剤を用いることができるが、特にノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0066】
ノニオン性界面活性剤の中でも、好適な例として、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体やランダム共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0067】
<その他の成分>
本発明の研磨用組成物は、砥粒、水溶性高分子、及び界面活性剤の他に、例えば分散媒及びpH調整剤等を更に含むことができる。
【0068】
分散媒としては、水、特に純水を用いることが好ましい。
【0069】
砥粒としてコロイダルシリカを用いる場合、コロイダルシリカの分散安定性を高めるため、pH調整剤は塩基性が好ましい。塩基性化合物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、アンモニア、アミン類などが好適に用いられる。
【0070】
(ウェーハの加工方法)
本発明のウェーハの加工方法は、
前記ウェーハの両面又は片面を、本発明の研磨用組成物を用いて研磨する工程と、
及びHの少なくとも1種を含む薬液により研磨後の前記ウェーハ上の有機物を分解する工程と、
NH及びHFの少なくとも1種を含む薬液により研磨後のウェーハをエッチングする工程と
を含み、
前記エッチングする工程を、総エッチング量が5nm以下となるように行うことを特徴とする。
【0071】
本発明の研磨用組成物を用いることにより、先に説明したように、研磨中にウェーハ表面上に吸着する砥粒の量を十分に抑えることができ、その結果、研磨する工程後のウェーハ表面上の残留砥粒量を小さくすることができる。また、研磨する工程後にウェーハ表面上に残留する水溶性高分子及び/又は界面活性剤は、続く有機物を分解する工程で、O及びHの少なくとも1種を含む薬液によって分解される。このように表面上の有機物が分解されたウェーハを、総エッチング量が5nm以下となるように、NH及びHFの少なくとも1種を含む薬液によりエッチングすることにより、エッチングによる結晶欠陥及び研磨欠陥の顕在化を抑えながら、研磨後のウェーハの表面上に残留する研磨用組成物の成分を十分に除去することができる。
【0072】
すなわち、本発明のウェーハの加工方法によれば、残留砥粒量が少なく、結晶欠陥及び研磨欠陥の顕在化が抑えられた高品質のウェーハを提供できる。
【0073】
次に、本発明のウェーハの加工方法の各工程を、順に詳細に説明する。
【0074】
<研磨する工程>
この研磨工程では、ウェーハの両面又は片面を、本発明の研磨用組成物を用いて研磨する。
【0075】
研磨に供するウェーハは、例えばシリコンウェーハである。シリコンウェーハは、例えば、シリコンインゴットからスライスしてスライス片を得、このスライス片を平面研削に供したものであり得る。
【0076】
研磨する工程は、1段の工程でもよいし、複数段の工程でもよい。表面品質の観点から、少なくとも2段の研磨工程を行うことが好ましい。
【0077】
研磨は、ウェーハを保持しながら研磨布に押し付け、研磨用組成物をウェーハの被研磨面に連続的に供給しながら、ウェーハ及び研磨布の一方又はこれらの両方を回転させながら行うことが望ましい。
【0078】
研磨は、両面研磨でも片面研磨でもどちらもでも良い。両面研磨の場合は、例えば、ウェーハの上下に研磨布を配置し、両面同時に研磨を行う。また、片面研磨の場合は、ウェーハの一方の面にのみ研磨布を配置する。
【0079】
研磨布は、表面品質の観点から樹脂製のものが望ましく、耐摩耗性が良好なことからウレタン樹脂を用いるのが良い。
【0080】
ウレタン樹脂を不織布などの繊維に含浸させたものを研磨布として用いても良いし、ウレタン樹脂を加熱して発泡ウレタン樹脂を形成しそれを研磨布として用いても良いし、又はPETフィルムなどの基材上にウレタン樹脂を塗布し、加水分解によりスウェードを形成しそれを研磨布として用いても良い。
【0081】
研磨布の硬度は、研磨レートの観点から、ショアA硬度で30以上が好ましく、さらには50以上が好ましい。また、研磨布の硬度は、表面品質の観点から、95以下が好ましく、さらには90以下が好ましい。
【0082】
研磨布は、研磨用組成物を効率的に作用するため、溝のようなテクスチャ構造を有しているのが好ましい。
【0083】
例えば、研磨する工程を、研磨後のウェーハの表面上の砥粒付着量が5個/μm以下となるように行うことができる。
【0084】
表面上の砥粒付着量が5個/μm以下であるウェーハを、以下にそれぞれ説明する、有機物を分解する工程及びエッチングする工程に供することで、研磨後のウェーハの表面上に残留する研磨用組成物の成分を確実に除去することができる。
【0085】
ウェーハ表面上の砥粒付着量は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定することができる。本発明のウェーハ加工方法の研磨する工程によると、表面上の砥粒付着量を、例えば0.1個/μm以上5個/μm以下とすることができ、1個/μm以上3個/μm以下とすることが好ましい。
【0086】
<有機物を分解する工程>
有機物を分解する工程では、O及びHの少なくとも1種を含む薬液により研磨後の前記ウェーハ上の有機物を分解する。
【0087】
及び/又はHは、酸化剤として働き、研磨後のウェーハ上の有機物、すなわち水溶性高分子及び/又は界面活性剤に起因する有機物を分解することができる。有機物の分解によって生じた生成物は、エッチングを伴わずに、ウェーハから除去できる。
【0088】
有機物を分解する工程で用いる薬液は、O及びH以外の成分を含んでいても良い。具体例は後述する。
【0089】
<エッチングする工程>
エッチングする工程では、NH及びHFの少なくとも1種を含む薬液により研磨後のウェーハをエッチングする。この際、総エッチング量が5nm以下となるように、エッチングを行う。
【0090】
ここでの総エッチング量は、ウェーハの片面をエッチングする場合には、エッチングに供される面の総エッチング量であり、ウェーハの両面をエッチングする場合には、エッチングに供される各面当たりの総エッチング量である。すなわち、総エッチング量は、ウェーハの片面当たりの総エッチング量である。
【0091】
総エッチング量が5nm以下となるようにエッチングをすることで、エッチングによる結晶欠陥及び研磨欠陥の顕在化を十分に抑えることができる。
【0092】
総エッチング量の下限は、特に制限されないが、例えば3nmとすることができる。総エッチング量は、0.1nm以上5nm以下とすることが好ましく、1nm以上5nm以下とすることがより好ましい。
【0093】
エッチング工程における総エッチング量は、以下の手順で確認することができる。まず、参照SOI(Silicon On Insulator)ウェーハを準備し、SOI膜厚をULVAC社製分光エリプソメーターUNECS-3000にて測定して、エッチング前のSOI膜厚を得る。次いで、参照SOIウェーハを、確認対象のエッチング工程の条件と同じ条件でエッチングする。次いで、エッチング後のSOI膜厚を、同じ分光エリプソメーターにて測定して、エッチング後のSOI膜厚を得る。そして、エッチング前後のSOI膜厚の差分を、確認対象のエッチング工程の総エッチング量とする。
【0094】
また、エッチング工程における総エッチング量は、例えばNH及びHFの少なくとも1種を含む薬液におけるエッチング剤の濃度、エッチング時間、及び薬液の温度によって調整することができる。
【0095】
例えば、必要に応じて薬液は加温しても良い。加温することでエッチング量が増加する。
【0096】
エッチングする工程で用いる薬液は、NH及びHF以外の成分を含んでいてもよい。具体例は後述する。
【0097】
また、上記有機物を分解する工程と、エッチングする工程とは、別々に行っても良いし、同時に行なっても良い。有機物を分解する工程と、エッチングする工程とを合わせて、洗浄工程と呼ぶこともできる。
【0098】
<その他の工程>
本発明のウェーハの加工方法は、エッチングする工程の後に、例えば評価工程を更に含むことができる。例えば、評価工程において、表面欠陥評価を行なってもよい。表面欠陥評価装置としては、例えばKLA株式会社製Surfscanシリーズを用いることができる。
【0099】
<薬液>
有機物を分解する工程と、エッチングする工程では、それぞれ、1つの薬液を用いても良いし、複数の薬液を用いても良い。
【0100】
また、有機物を分解する工程とエッチングする工程とを同時に行う場合、O及びHの少なくとも1種と、NH及びHFの少なくとも1種とを含む混合溶液を用いても良い。
【0101】
例えば、洗浄工程では、NHとHとを含む混合溶液、HFとOとを含む混合溶液、及びHFとOとHとを含む混合溶液を薬液として用いることができる。
【0102】
エッチングする工程とは別に有機物を分解する工程を行う場合、有機物を分解する為の薬液として、例えば、HClとHとを含む混合溶液、Hを含む溶液、及びOを含む溶液を挙げることができる。
【0103】
有機物を分解する工程とは別にエッチングする工程を行う場合、エッチングする工程で用いる薬液として、例えば、HFとHNOとを含む混合溶液、NHを含む溶液、及びHFを含む溶液を挙げることができる。
【0104】
これらの薬液は、溶媒として、水、特に純水を含むこともできる。
【0105】
(シリコンウェーハ)
本発明のシリコンウェーハは、研磨用組成物を用いて研磨されたシリコンウェーハであって、研磨後の表面上の砥粒付着量が5個/μm以下のものであることを特徴とする。
【0106】
本発明のシリコンウェーハは、例えば、先に説明した、本発明のウェーハの加工方法の研磨工程によって得ることができる。
【0107】
このようなシリコンウェーハを、先に説明した有機物を分解する工程及びエッチングする工程に供することにより、研磨後のウェーハの表面上に残留する研磨用組成物の成分を確実に除去することができるのに加え、エッチングによって結晶欠陥及び研磨欠陥が顕在化するのを防ぐことができる。すなわち、本発明のシリコンウェーハによると、結晶欠陥及び研磨欠陥の顕在化が抑えられたシリコンウェーハを提供できる。
【実施例
【0108】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0109】
(比較例1)
比較例1では、以下の手順で、ウェーハの加工を行なった。
【0110】
[準備]
まず、加工対象のウェーハとして、直径300mm及び厚さ775μmのシリコンウェーハを準備した。
【0111】
[研磨する工程]
比較例1では、以下の手順で、砥粒の濃度が10000ppmwであり、TOC濃度が100ppmwである比較例1の研磨用組成物を調製した。
【0112】
砥粒として、コロイダルシリカを準備した。また、水溶性高分子としてのポリビニルアルコール(PVA)と、界面活性剤としてポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体(EOPO)とを準備した。
【0113】
次に、コロイダルシリカと、ポリビニルアルコールと、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体とを、重量比10000:90:10で、純水に投入し、比較例1の研磨用組成物を得た。
【0114】
次に、比較例1の加工対象のウェーハの片面を、比較例1の研磨用組成物を用いて研磨した。比較例1における研磨する工程で得られた研磨後のウェーハの表面のSEM像を、図1の左側に示す。
【0115】
[有機物を分解する工程]
次に、研磨後のウェーハの表面に、オゾン(O)を含んだ薬液を供給し、次いで純水を用いて薬液を洗い流した。
【0116】
[エッチングする工程]
次いで、研磨後のウェーハの表面にNH/H/HOの混合液を供給した。用いたNH/H/HOの混合液は、NHの濃度を28wt%とし、Hの濃度を30wt%とし、NH:H:HO=1:1:10の割合で混合することにより調製した。供給時の温度を50℃とした。NH/H/HOの混合液に接触させている時間は、5分間とした。それにより、NH/H/HOの混合液による総エッチング量を3nmとした。
【0117】
次いで、ウェーハの表面に、HF水溶液を供給した。用いたHF水溶液は、HFの濃度が1wt%であり、供給時の温度を25℃とした。HF水溶液に接触させている時間は、5分間とした。それにより、HFによる総エッチング量を1nmとした。
【0118】
(実施例1)
実施例1では、研磨する工程での研磨用組成物の砥粒濃度を3000ppmw、TOC濃度を100ppmwとしたこと、及びエッチングする工程でのNH/H/HOの混合液による総エッチング量を9nm、HFによる総エッチング量を1nmとしたこと以外は比較例1と同様の手順で、比較例1で加工したのと同様のウェーハを加工した。
【0119】
実施例1では、コロイダルシリカと、ポリビニルアルコールと、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体とを、重量比3000:90:10で、純水に投入し、実施例1の研磨用組成物を得た。
【0120】
また、実施例1では、エッチングする工程において供給したNH/H/HOの混合液は、比較例1で用いたのと同様のものを用い、供給時の温度を50℃とした。NH/H/HOの混合液に接触させている時間は、15分とした。
【0121】
そして、実施例1では、エッチングする工程において供給したHF水溶液の濃度を1wt%とし、供給時の温度を25℃とした。HF水溶液に接触させている時間は、5分間とした。
【0122】
(実施例2)
実施例2では、エッチングする工程でのNH/H/HOの混合液による総エッチング量を3nm、HFによる総エッチング量を1nmとしたこと以外は実施例1と同様の手順で、比較例1で加工したのと同様のウェーハを加工した。
【0123】
実施例2では、比較例1と同様の条件で、エッチングする工程を行った。
【0124】
実施例2の研磨用組成物を用いて研磨した後のウェーハの表面のSEM像を、図1の右側に示す。
【0125】
(実施例3)
実施例3では、研磨する工程での研磨用組成物の砥粒濃度を1000ppmw、TOC濃度を100ppmwとしたこと以外は実施例2と同様の手順で、比較例1で加工したのと同様のウェーハを加工した。
【0126】
実施例3では、コロイダルシリカと、ポリビニルアルコールと、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体とを、重量比1000:90:10で、純水に投入し、実施例3の研磨用組成物を得た。
【0127】
(実施例4)
実施例4では、研磨する工程での研磨用組成物の砥粒濃度を370ppmw、TOC濃度を50ppmwとしたこと以外は実施例2と同様の手順で、比較例1で加工したのと同様のウェーハを加工した。
【0128】
実施例4では、コロイダルシリカと、ポリビニルアルコールと、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体とを、重量比370:45:5で、純水に投入し、実施例4の研磨用組成物を得た。
【0129】
(実施例5)
実施例5では、研磨する工程での研磨用組成物の砥粒濃度を1000ppmw、TOC濃度を167ppmwとしたこと以外は実施例2と同様の手順で、比較例1で加工したのと同様のウェーハを加工した。
【0130】
実施例5では、コロイダルシリカと、ポリビニルアルコールと、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体とを、重量比1000:150:17で、純水に投入し、実施例5の研磨用組成物を得た。
【0131】
以下の表1に、各実施例及び比較例についての、研磨用組成物の砥粒濃度、TOC濃度(全有機体炭素濃度)、及びTOC濃度に対する砥粒濃度、並びにエッチング量を示す。
【0132】
【表1】
【0133】
[評価]
実施例及び比較例のエッチングする工程後の各ウェーハに対し、KLA株式会社製のSurfscanシリーズSP3にて評価を実施し、LLS欠陥を評価した。その結果を以下の表2及び図2に示す。
【0134】
【表2】
【0135】
表2及び図2に示した結果、並びに表1に示した情報から、研磨用組成物中の全有機体炭素の濃度(ppmw)に対する砥粒の濃度(ppmw)の比が30以下のものである実施例1~5の研磨用組成物を用いた実施例1~5は、上記比が30を超えた比較例1の研磨用組成物を用いた比較例1よりも良好な欠陥レベルを達成できたことが分かる。
【0136】
また、図1に示した2つのSEM像において、白く見えている部分が砥粒である。この図1に示した2つのSEM像の比較からも明らかなように、実施例2で研磨する工程後に得られたウェーハの表面に残留していた砥粒の量は、0.42pcs/μmであり、比較例1において残留砥粒量である8.5pcs/μmよりも格段に少なかった。実施例1、3~5における残留砥粒量も、実施例と同程度であった。すなわち、研磨用組成物中の全有機体炭素の濃度(ppmw)に対する砥粒の濃度(ppmw)の比が30以下のものである実施例1~5の研磨用組成物を用いることにより、上記比が30を超えていた比較例1の研磨組成物を用いた場合よりも、研磨後のウェーハ上に残留する砥粒の量を減らすことができたことが分かる。この作用が、表2及び図2に示した欠陥数の差の結果に結びついたと考えられる。
【0137】
また、実施例1と実施例2~5との比較から、本発明の研磨用組成物を用い、なおかつエッチングする工程における総エッチング量を5nm以下にした実施例2~5は、総エッチング量を5nmよりも大きくした実施例1よりも更に良好な欠陥レベルを達成できたことが分かる。
【0138】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2