(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】位相シフトマスクブランク、位相シフトマスクの製造方法、及び位相シフトマスク
(51)【国際特許分類】
G03F 1/32 20120101AFI20231108BHJP
G03F 1/38 20120101ALI20231108BHJP
G03F 1/80 20120101ALI20231108BHJP
【FI】
G03F1/32
G03F1/38
G03F1/80
(21)【出願番号】P 2020181972
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三村 祥平
(72)【発明者】
【氏名】松橋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼坂 卓郎
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/066590(WO,A1)
【文献】特開2013-228579(JP,A)
【文献】特開2003-322948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板と、該透光性基板上に形成されたエッチング保護膜と、該エッチング保護膜に接して形成された位相シフト膜とを備え、ArFエキシマレーザー光を露光光とする位相シフトマスクブランクであって、
上記エッチング保護膜が、ハフニウム及び酸素
のみからなる材料、又はハフニウム、ケイ素及び酸素を含有する材料からなり、上記エッチング保護膜の膜厚が1~30nmであり、かつ上記エッチング保護膜の上記露光光に対する透過率が85%以上であり、
上記位相シフト膜が、ケイ素を含有し、ハフニウムを含有しない材料からなり、かつ膜厚が50~90nmであることを特徴とする位相シフトマスクブランク。
【請求項2】
上記エッチング保護膜
のハフニウム、ケイ素及び酸素を含有する材料に含有されるハフニウム及びケイ素の合計に対するケイ素の比率が0.1~99原子%であることを特徴とする請求項1に記載の位相シフトマスクブランク。
【請求項3】
上記エッチング保護膜及び位相シフト膜が、
同一条件のフッ素系ガスによるドライエッチングにおける位相シフト膜及びエッチング保護膜のエッチングレートを、各々、Rps[nm/sec]及びRep[nm/sec]、エッチング保護膜の厚さ1nmあたりの露光光に対する光学濃度をODsとしたとき、下記式(1)
ODs×Rep/Rps (1)
により算出される値が0.002以下である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の位相シフトマスクブランク。
【請求項4】
上記透光性基板が石英基板であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の位相シフトマスクブランク。
【請求項5】
上記エッチング保護膜が上記透光性基板に接して形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の位相シフトマスクブランク。
【請求項6】
上記エッチング保護膜のハフニウム及び酸素
のみからなる材料、又はハフニウム、ケイ素及び酸素を含有する材料に含有される酸素の含有率が60原子%以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の位相シフトマスクブランク。
【請求項7】
同一条件のフッ素系ガスによるドライエッチングにおける上記エッチング保護膜に対する上記位相シフト膜のエッチング選択比が1.5以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の位相シフトマスクブランク。
【請求項8】
上記位相シフト膜の上記露光光に対する位相差が、150~210度であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の位相シフトマスクブランク。
【請求項9】
上記位相シフト膜上に、更に、クロムを含有する材料からなる第3の膜を備え、同一条件の塩素系ガスによるドライエッチングにおける上記エッチング保護膜に対する上記第3の膜のエッチング選択比が10以上であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の位相シフトマスクブランク。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の位相シフトマスクブランクを用いて位相シフトマスクを製造する方法であって、
上記位相シフト膜をフッ素系ガスによりドライエッチングする工程
を含むことを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載の位相シフトマスクブランクを用いて位相シフトマスクを製造する方法であって、
上記位相シフト膜をフッ素系ガスによりドライエッチングする工程、及び
上記第3の膜を塩素系ガスによりドライエッチングする工程
を含むことを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
【請求項12】
透光性基板と、該透光性基板上に形成されたエッチング保護膜と、該エッチング保護膜に接して形成された位相シフト膜のパターンとを備え、ArFエキシマレーザー光を露光光とする位相シフトマスクであって、
上記エッチング保護膜が、ハフニウム及び酸素
のみからなる材料、又はハフニウム、ケイ素及び酸素を含有する材料からなり、上記透光性基板と、上記エッチング保護膜の上記位相シフト膜のパターンとの間の膜厚が1~30nmであり、かつ上記エッチング保護膜の上記露光光に対する透過率が85%以上であり、
上記位相シフト膜のパターンが、ケイ素を含有し、ハフニウムを含有しない材料からなり、かつ膜厚が50~90nmである
ことを特徴とする位相シフトマスク。
【請求項13】
上記エッチング保護膜
のハフニウム、ケイ素及び酸素を含有する材料に含有されるハフニウム及びケイ素の合計に対するケイ素の比率が0.1~99原子%であることを特徴とする請求項12に記載の位相シフトマスク。
【請求項14】
上記エッチング保護膜及び位相シフト膜が、
同一条件のフッ素系ガスによるドライエッチングにおける位相シフト膜及びエッチング保護膜のエッチングレートを、各々、Rps[nm/sec]及びRep[nm/sec]、エッチング保護膜の厚さ1nmあたりの露光光に対する光学濃度をODsとしたとき、下記式(1)
ODs×Rep/Rps (1)
により算出される値が0.002以下である
ことを特徴とする請求項12又は13に記載の位相シフトマスク。
【請求項15】
上記透光性基板が石英基板であることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の位相シフトマスク。
【請求項16】
上記エッチング保護膜が上記透光性基板に接して形成されていることを特徴とする請求項12乃至15のいずれか1項に記載の位相シフトマスク。
【請求項17】
上記エッチング保護膜のハフニウム及び酸素
のみからなる材料、又はハフニウム、ケイ素及び酸素を含有する材料に含有される酸素の含有率が60原子%以上であることを特徴とする請求項12乃至16のいずれか1項に記載の位相シフトマスク。
【請求項18】
同一条件のフッ素系ガスによるドライエッチングにおける上記エッチング保護膜に対する上記位相シフト膜のエッチング選択比が1.5以上であることを特徴とする請求項12乃至17のいずれか1項に記載の位相シフトマスク。
【請求項19】
上記位相シフト膜の上記露光光に対する位相差が、150~210度であることを特徴とする請求項12乃至18のいずれか1項に記載の位相シフトマスク。
【請求項20】
上記位相シフト膜上に、更に、クロムを含有する材料からなる第3の膜のパターンを備え、同一条件の塩素系ガスによるドライエッチングにおける上記エッチング保護膜に対する上記第3の膜のエッチング選択比が10以上であることを特徴とする請求項12乃至19のいずれか1項に記載の位相シフトマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路などの製造などに用いられる位相シフトマスクブランク、位相シフトマスクの製造方法、及び位相シフトマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体技術で用いられているフォトリソグラフィ技術において、解像度向上技術のひとつとして、位相シフト法が用いられている。位相シフト法は、例えば、基板上に位相シフト膜を形成したフォトマスクを用いる方法で、露光光に対して透明な基板上に、位相シフト膜を形成していない部分を透過した露光光、つまり、位相シフト膜の厚さと同じ長さの空気を通過した露光光に対する、位相シフト膜を透過した光の位相の差が概ね180度である位相シフト膜パターンを形成し、光の干渉を利用してコントラストを向上させる方法である。
【0003】
これを応用したフォトマスクのひとつとしてハーフトーン位相シフトマスクがある。ハーフトーン位相シフトマスクは、石英基板などの露光光に対して透明な基板の上に、位相シフト膜を形成していない部分を透過した光との位相差を概ね180度とした、実質的に露光に寄与しない程度の透過率を有するハーフトーン位相シフト膜のマスクパターンを形成したものである。これまで、位相シフトマスクの位相シフト膜としては、モリブデン及びケイ素を含む膜(MoSi系位相シフト膜)が主に用いられている(特開平7-140635号公報(特許文献1))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-140635号公報
【文献】特開2007-33469号公報
【文献】特開2007-233179号公報
【文献】特開2007-241065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
MoSi系位相シフト膜を有する位相シフトマスクにおいて、位相シフト膜のパターンを形成する際には、一般的に、フッ素系ガスによるドライエッチングがなされるが、MoSi系位相シフト膜のエッチングが透光性基板に到達すると、透光性基板も、フッ素系ガスによるドライエッチングで若干エッチングされてしまうため、得られた位相シフトマスクの位相シフト膜がある部分とない部分との位相差は、位相シフト膜で設定した位相差とは、透光性基板がエッチングされた程度に応じて誤差が生じる。そのため、位相シフトマスクの位相差の正確な制御が難しい、また、透光性基板上に形成されたMoSi系位相シフト膜は、位相シフト膜にパターン欠陥が生じたときの修正が難しい。
【0006】
このような問題に対応する位相シフトマスクブランクとしては、例えば、ケイ素を含む膜であるMoSi系位相シフト膜の透光性基板側に、クロム系膜のようなケイ素を含む膜とはエッチング特性が異なる膜をエッチングストッパー膜として形成した位相シフトマスクブランクが考えられる。このようなエッチングストッパー膜を用いた位相シフトマスクブランクでは、一般的には、MoSi系位相シフト膜の透光性基板と離間する側に、遮光膜や、MoSi系位相シフト膜をエッチングする際にハードマスクとして機能するエッチングマスク膜としてクロム系膜が形成される。この場合、ケイ素を含む膜がエッチングされて露出した透光性基板側のクロム系膜は、位相シフト膜上(基板から離間する側)のクロム系膜の剥離と同時に酸素を含有する塩素ガスなどの塩素系ガスによりドライエッチングされる。
【0007】
しかし、エッチングストッパー膜をクロム系膜とすると、露光光に対する透過率を高くすることが困難となる。特に、位相シフトマスクでは、透光性基板と位相シフト膜のパターンとの間に残ることになるエッチングストッパー膜の透過率を上げる必要があるが、クロム系膜では十分な透過率を得ることが困難である。また、クロム系膜の透過率を上げる場合、クロム系膜に含まれる酸素や窒素の割合を高くすることになるが、このようなクロム系膜はエッチングされる際にサイドエッチングが進みやすく、サイドエッチングにより、エッチングストッパー膜の上に形成された位相シフト膜のパターンが倒れやすくなる。
【0008】
また、上記の問題に対応する別の方法としては、透光性基板上に、透光性基板側から、エッチングストッパー膜、位相シフト膜としてケイ素を含む膜、遮光膜又はエッチングマスク膜としてクロム系膜が形成された位相シフトマスクブランクにおいて、エッチングストッパー膜を、ケイ素を含む膜のエッチングに用いるフッ素系ガスによるドライエッチングに対するエッチング特性が異なり、クロム系膜のエッチングに用いる塩素系ガスによるドライエッチングには耐性を有する、金属を含有する材料の膜とした位相シフトマスクブランクを用いることが考えられる。
【0009】
このようにすれば、位相シフト膜のフッ素系ガスによるドライエッチング時には、エッチングストッパー膜によって透光性基板がエッチングされるのを防ぐことができ、また、位相シフト膜がエッチングされ露出したエッチングストッパー膜は、遮光膜又はエッチングマスク膜の塩素系ガスによるドライエッチング時には、クロム系膜のエッチングストッパー膜とは異なり、同時にエッチングされることはなく、サイドエッチングによる位相シフト膜のパターンの倒れを防ぐことができる。
【0010】
しかし、この場合、位相シフトマスクの位相シフト膜がない部分の透光性基板上にも、エッチングストッパー膜が残るため、エッチングストッパー膜が露光光に対して高透過率であることが必要である。エッチングストッパー膜の透過率が低い場合、位相シフトマスクを用いた露光時に、位相シフトマスクの位相シフト膜がない部分を透過する光の量が不十分となり、位相シフトマスクの機能であるコントラストが向上しなくなる。また、エッチングストッパー膜の透過率が低い場合、エッチングストッパー膜が露光光を多く吸収して、吸収した露光光の熱により位相シフトマスクの熱膨張が生じる。熱膨張は、位相シフトマスクのパターンの位置精度を悪化させてしまう。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ケイ素を含む膜で構成された位相シフト膜のフッ素系ガスによるドライエッチング時に、透光性基板がエッチングされ難く、かつ位相シフトマスクとしたとき、位相シフト膜が形成されていない部分に、必要な高い透過率が確保される位相シフトマスクブランク、更には、位相シフト膜上にクロム系膜などの塩素系ガスによりドライエッチングされる膜を設けて、クロム系膜を塩素系ガスによりドライエッチングしても、位相シフト膜のパターンの倒れが抑制された位相シフトマスクブランクを提供することを目的とする。更に、本発明は、このような位相シフトマスクブランクを用いる位相シフトマスクの製造方法、及び位相シフトマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、透光性基板上に、膜厚が50~90nmの位相シフト膜を形成した位相シフトマスクブランクにおいて、位相シフト膜の透光性基板側に接して、ハフニウム及び酸素、又はハフニウム、ケイ素及び酸素を含有する材料からなり、膜厚が1~30nm、露光光に対する透過率が85%以上であるエッチング保護膜を設けることにより、ケイ素を含む膜で構成された位相シフト膜のフッ素系ガスによるドライエッチング時に、透光性基板がエッチングされ難く、かつ位相シフトマスクとしたとき、位相シフト膜が形成されていない部分に、必要な高い透過率が確保され、更には、位相シフト膜上にクロム系膜などの塩素系ガスによりドライエッチングされる膜を設けて、クロム系膜を塩素系ガスによりドライエッチングしても、位相シフト膜のパターンが倒れ難いことを見出し、本発明をなすに至った。
【0013】
従って、本発明は、以下の位相シフトマスクブランク、位相シフトマスクの製造方法、及び位相シフトマスクを提供する。
1.透光性基板と、該透光性基板上に形成されたエッチング保護膜と、該エッチング保護膜に接して形成された位相シフト膜とを備え、ArFエキシマレーザー光を露光光とする位相シフトマスクブランクであって、
上記エッチング保護膜が、ハフニウム及び酸素のみからなる材料、又はハフニウム、ケイ素及び酸素を含有する材料からなり、上記エッチング保護膜の膜厚が1~30nmであり、かつ上記エッチング保護膜の上記露光光に対する透過率が85%以上であり、
上記位相シフト膜が、ケイ素を含有し、ハフニウムを含有しない材料からなり、かつ膜厚が50~90nmである
ことを特徴とする位相シフトマスクブランク。
2.上記エッチング保護膜のハフニウム、ケイ素及び酸素を含有する材料に含有されるハフニウム及びケイ素の合計に対するケイ素の比率が0.1~99原子%であることを特徴とする1に記載の位相シフトマスクブランク。
3.上記エッチング保護膜及び位相シフト膜が、
同一条件のフッ素系ガスによるドライエッチングにおける位相シフト膜及びエッチング保護膜のエッチングレートを、各々、Rps[nm/sec]及びRep[nm/sec]、エッチング保護膜の厚さ1nmあたりの露光光に対する光学濃度をODsとしたとき、下記式(1)
ODs×Rep/Rps (1)
により算出される値が0.002以下であることを特徴とする1又は2に記載の位相シフトマスクブランク。
4.上記透光性基板が石英基板であることを特徴とする1乃至3のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
5.上記エッチング保護膜が上記透光性基板に接して形成されていることを特徴とする1乃至4のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
6.上記エッチング保護膜のハフニウム及び酸素のみからなる材料、又はハフニウム、ケイ素及び酸素を含有する材料に含有される酸素の含有率が60原子%以上であることを特徴とする1乃至5のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
7.同一条件のフッ素系ガスによるドライエッチングにおける上記エッチング保護膜に対する上記位相シフト膜のエッチング選択比が1.5以上であることを特徴とする1乃至6のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
8.上記位相シフト膜の上記露光光に対する位相差が、150~210度であることを特徴とする1乃至7のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
9.上記位相シフト膜上に、更に、クロムを含有する材料からなる第3の膜を備え、同一条件の塩素系ガスによるドライエッチングにおける上記エッチング保護膜に対する上記第3の膜のエッチング選択比が10以上であることを特徴とする1乃至8のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
10.1乃至8のいずれかに記載の位相シフトマスクブランクを用いて位相シフトマスクを製造する方法であって、
上記位相シフト膜をフッ素系ガスによりドライエッチングする工程
を含むことを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
11.9に記載の位相シフトマスクブランクを用いて位相シフトマスクを製造する方法であって、
上記位相シフト膜をフッ素系ガスによりドライエッチングする工程、及び
上記第3の膜を塩素系ガスによりドライエッチングする工程
を含むことを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
12.透光性基板と、該透光性基板上に形成されたエッチング保護膜と、該エッチング保護膜に接して形成された位相シフト膜のパターンとを備え、ArFエキシマレーザー光を露光光とする位相シフトマスクであって、
上記エッチング保護膜が、ハフニウム及び酸素のみからなる材料、又はハフニウム、ケイ素及び酸素を含有する材料からなり、上記透光性基板と、上記エッチング保護膜の上記位相シフト膜のパターンとの間の膜厚が1~30nmであり、かつ上記エッチング保護膜の上記露光光に対する透過率が85%以上であり、
上記位相シフト膜のパターンが、ケイ素を含有し、ハフニウムを含有しない材料からなり、かつ膜厚が50~90nmである
ことを特徴とする位相シフトマスク。
13.上記エッチング保護膜のハフニウム、ケイ素及び酸素を含有する材料に含有されるハフニウム及びケイ素の合計に対するケイ素の比率が0.1~99原子%であることを特徴とする12に記載の位相シフトマスク。
14.上記エッチング保護膜及び位相シフト膜が、
同一条件のフッ素系ガスによるドライエッチングにおける位相シフト膜及びエッチング保護膜のエッチングレートを、各々、Rps[nm/sec]及びRep[nm/sec]、エッチング保護膜の厚さ1nmあたりの露光光に対する光学濃度をODsとしたとき、下記式(1)
ODs×Rep/Rps (1)
により算出される値が0.002以下であることを特徴とする12又は13に記載の位相シフトマスク。
15.上記透光性基板が石英基板であることを特徴とする12乃至14のいずれかに記載の位相シフトマスク。
16.上記エッチング保護膜が上記透光性基板に接して形成されていることを特徴とする12乃至15のいずれかに記載の位相シフトマスク。
17.上記エッチング保護膜のハフニウム及び酸素のみからなる材料、又はハフニウム、ケイ素及び酸素を含有する材料に含有される酸素の含有率が60原子%以上であることを特徴とする12乃至16のいずれかに記載の位相シフトマスク。
18.同一条件のフッ素系ガスによるドライエッチングにおける上記エッチング保護膜に対する上記位相シフト膜のエッチング選択比が1.5以上であることを特徴とする12乃至17のいずれかに記載の位相シフトマスク。
19.上記位相シフト膜の上記露光光に対する位相差が、150~210度であることを特徴とする12乃至18のいずれかに記載の位相シフトマスク。
20.上記位相シフト膜上に、更に、クロムを含有する材料からなる第3の膜のパターンを備え、同一条件の塩素系ガスによるドライエッチングにおける上記エッチング保護膜に対する上記第3の膜のエッチング選択比が10以上であることを特徴とする12乃至19のいずれかに記載の位相シフトマスク。
【発明の効果】
【0014】
本発明の位相シフトマスクブランクは、エッチング保護膜のフッ素系ガスを用いたドライエッチングに対する特性が、位相シフト膜と異なるため、位相シフト膜のパターンを形成する際、位相シフト膜のエッチングが透光性基板におよび難く、透光性基板がエッチングされ難いため、位相シフト膜の位相差の制御性が良く、本発明の位相シフトマスクブランクからは、位相シフト膜が形成されていない部分を透過した露光光に対して必要な、高い透過率が確保された位相シフトマスクを製造することができる。更に、本発明の位相シフトマスクブランクのエッチング保護膜は、塩素系ガスによるドライエッチングに対して耐性を有しているので、クロム系膜のエッチングストッパー膜において発生するサイドエッチングによる位相シフト膜のパターンの倒れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の位相シフトマスクブランクの第1の態様の一例を示す断面図である。
【
図2】本発明の位相シフトマスクブランクの第2の態様の一例を示す断面図である。
【
図3】本発明の位相シフトマスクブランクの第3の態様の一例を示す断面図である。
【
図4】本発明の位相シフトマスクブランクの第4の態様の一例を示す断面図である。
【
図5】実施例及び比較例で用いたエッチング装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
[位相シフトマスクブランクの第1の態様]
本発明の位相シフトマスクブランクは、透光性基板と、透光性基板上に形成されたエッチング保護膜と、エッチング保護膜上に形成された位相シフト膜とを備える。
【0017】
本発明の位相シフトマスクブランク(第1の態様)として具体的には、
図1に示されるものが挙げられる。
図1は、本発明の位相シフトマスクブランクの第1の態様の一例を示す断面図であり、この位相シフトマスクブランク1は、透光性基板10と、透光性基板10上に形成されたエッチング保護膜11と、エッチング保護膜11上に形成された位相シフト膜12とを備える。
【0018】
本発明の位相シフトマスクブランクは、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、F2レーザー光(波長157nm)などの波長250nm以下、特に波長200nm以下の露光光でパターンを転写する露光に好適であり、特に、露光光がArFエキシマレーザー光である場合に特に効果的である。
【0019】
<透光性基板>
本発明において、透光性基板としては、特に限定されるものではないが、例えば、SEMI規格において規定されている、6インチ角、厚さ0.25インチの6025基板と呼ばれるものが好適であり、SI単位系を用いた場合、通常、152mm角、厚さ6.35mmの基板と表記される。透光性基板としては、石英基板が好ましい。
【0020】
<エッチング保護膜及び位相シフト膜>
エッチング保護膜は、ハフニウム及び酸素、又はハフニウム、ケイ素及び酸素を含有する材料からなる。ケイ素及び酸素を含有する材料は、露光光、特に、ArFエキシマレーザー光に対する透過率が高いが、透光性基板、例えば石英基板のように、フッ素系ガスによるドライエッチングでエッチングされやすい。これに対して、本発明のエッチング保護膜を構成するハフニウム及び酸素を含有する材料、及びハフニウム、ケイ素及び酸素を含有する材料は、いずれも、露光光に対する透過率が高く、フッ素系ガスによるドライエッチングでは多少エッチングされるが、そのエッチング特性は、位相シフト膜と異なるため、位相シフト膜のエッチングが、透光性基板におよび難い。また、ハフニウム及び酸素、又はハフニウム、ケイ素及び酸素を含有する材料は、塩素系ガスによるドライエッチングには耐性を有する。
【0021】
エッチング保護膜は、透光性基板に接して形成されていることが好ましい。エッチング保護膜は、更に、窒素及び炭素から選ばれる1種以上を含有していてもよいが、ハフニウム及び酸素、又はハフニウム、ケイ素及び酸素のみからなる材料で形成されていることが好ましい。エッチング保護膜に含有されるハフニウムの含有率は0.5原子%以上、特に10原子%以上であることが好ましく、また、50原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましい。
【0022】
エッチング保護膜は、ハフニウム、ケイ素及び酸素を含有する材料とすることで、膜表面の平滑性を高くすることができることから、エッチング保護膜はケイ素を含有していることが好ましく、その場合、エッチング保護膜に含有されるハフニウム及びケイ素の合計に対するケイ素の比率は0.1原子%以上であることがより好ましい。一方、エッチング保護膜のフッ素系ガスによるドライエッチング特性を、位相シフト膜と大きく異ならしめるためには、エッチング保護膜に含有されるハフニウム及びケイ素の合計に対するケイ素の比率は99原子%以下であることが好ましく、65原子%以下であることがより好ましい。更に、エッチング保護膜に含有される酸素の含有率は60原子%以上であることが好ましい。エッチング保護膜に含有される酸素の含有率は、特に限定されるものではないが、通常、80原子%以下である。なお、本発明において、透光性基板上に形成される各種の膜の組成は、例えば、XPS(X線光電分光)により測定することができる。
【0023】
エッチング保護膜の膜厚は、1nm以上であることが好ましく、また、30nm以下、特に10nm以下であることが好ましい。また、後述のとおり、位相シフト膜をフッ素系ガスによりドライエッチングする時には、通常、エッチングクリアタイムの10%以上、一般的には、10~50%程度長い時間を、エッチング処理時間として設定する(即ち、オーバーエッチングを実施する)ため、エッチング保護膜は、オーバーエッチング時間分のフッ素系ガスのドライエッチングに晒される。そのため、エッチング保護膜は、フッ素系ガスによる位相シフト膜のドライエッチング時に、位相シフト膜のエッチングクリアタイムの10%以上、特に30%以上、とりわけ50%以上のオーバーエッチング実施後も、エッチング保護膜が残存する膜厚であることが好ましい。エッチング保護膜は、露光光、特に、ArFエキシマレーザー光に対して、透過率が85%以上、特に90%以上であることが好ましい。透過率の上限は特に限定されるものではないが、通常、100%未満である。なお、この透過率として、透光性基板を透過した露光光に対する、透光性基板及びエッチング保護膜を透過した露光光の割合を適用することができる。
【0024】
位相シフト膜は、ケイ素を含有し、ハフニウムを含有しない材料からなる。エッチング保護膜は、フッ素系ガスによるドライエッチングでエッチングされるが、塩素系ガスによるドライエッチングには耐性を有する。位相シフト膜は、エッチング保護膜に接して形成されていることが好ましい。位相シフト膜は、更に、遷移金属(但し、ハフニウムを除く、好ましくはハフニウム及びクロムを除く)(Me)、酸素(O)、窒素(N)及び炭素(C)から選ばれる1種以上を含有するケイ素化合物からなることが好ましい。このようなものとしては、遷移金属ケイ素酸化物(MeSiO)、遷移金属ケイ素窒化物(MeSiN)、遷移金属ケイ素炭化物(MeSiC)、遷移金属ケイ素酸化窒化物(MeSiON)、遷移金属ケイ素酸化炭化物(MeSiOC)、遷移金属ケイ素窒化炭化物(MeSiNC)、遷移金属ケイ素酸化窒化炭化物(MeSiONC)などが挙げられる。なお、ここで、ケイ素化合物を表す化学式は、構成元素を示すものであり、構成元素の組成比を意味するものではない(以下のケイ素化合物において同じ。)。遷移金属(Me)としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)などから選ばれる1種以上が好ましく、モリブデンが特に好ましい。
【0025】
位相シフト膜の膜厚は、50nm以上、特に60nm以上であることが好ましく、また、90nm以下、特に80nm以下であることが好ましい。位相シフト膜の露光光に対する位相差は、150度以上、特に165度以上、とりわけ175度以上であることが好ましく、210度以下、特に195度以下、とりわけ185度以下であることが好ましく、略180度であることが特に好ましい。ここで、位相差とは、位相シフト膜を透過した露光光と、位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した露光光との間で生じる、露光光の位相の差異である。また、位相シフト膜の露光光に対する透過率は、5%以上、特に9%以上であることが好ましく、40%以下、特に30%以下であることが好ましい。本発明の位相シフト膜、位相シフトマスクブランク及び位相シフトマスクは、各々、ハーフトーン位相シフト膜、位相シフトマスクブランク及び位相シフトマスクとすることができる。
【0026】
位相シフト膜のフッ素系ガスのドライエッチングにおいて、透光性基板の掘り込みを防ぐためには、エッチング保護膜のエッチングレート(Rep)は、位相シフト膜のエッチングレート(Rps)よりも、十分低いことが要求される。一方、位相シフト膜のエッチング後、位相シフト膜のパターンを形成していない部分、即ち、エッチング保護膜が露出している部分では、エッチング保護膜が、その後のエッチング(例えば、第3の膜に対する塩素系ガスによりドライエッチング)に対する耐性を有している場合、透光性基板上に残るため、露光光に対して高透過率であることが要求される。
【0027】
位相シフト膜をフッ素系ガスのドライエッチングによってエッチングし、パターンを形成する際、一般的に、エッチングクリアタイムの10~50%程度長い時間を、エッチング処理時間として設定する(即ち、オーバーエッチングを実施する)。これは、位相シフト膜のパターンを形成しない部分に、位相シフト膜が残らないようにするためであるが、反面、透光性基板上に直接位相シフト膜が形成されていると、オーバーエッチングにより、透光性基板が掘り込まれ、位相シフト膜に設定した位相差との差異が生じてしまう。これを回避するために、本発明においては、位相シフト膜とフッ素系ガスのドライエッチング特性が異なるエッチング保護膜を、位相シフト膜と透光性基板との間に設けるが、エッチング保護膜が、位相シフト膜のオーバーエッチングにより、フッ素系ガスによるドライエッチングでエッチングされる時、ドライエッチングの面内分布に起因して、エッチング保護膜の面内で、エッチング量に差が生じる場合がある。特に、エッチング保護膜の単位膜厚あたりの光学濃度が大きい場合、エッチング保護膜のエッチング量の面内での差によって、エッチング保護膜の面内での透過率の均一性が悪化するおそれがある。
【0028】
本発明の位相シフトマスクブランクにおいて、エッチング保護膜の露光光に対する透過率を十分に高く、かつ位相シフト膜のフッ素系ガスのドライエッチングにおいて、位相シフト膜のオーバーエッチングにより、エッチング保護膜に生じる面内での透過率の均一性の悪化、例えば、エッチング装置に起因するエッチング保護膜のエッチング量のばらつきや、基板中央部のエッチング保護膜と、基板角部のエッチング保護膜のエッチング量の差や、ローディング効果によるエッチング保護膜のエッチング量の差によるエッチング保護膜の面内での透過率の均一性の悪化を防ぐためには、エッチング保護膜及び位相シフト膜は、同一条件のフッ素系ガスによるドライエッチングにおける位相シフト膜及びエッチング保護膜のエッチングレートを、各々、Rps[nm/sec]及びRep[nm/sec]、エッチング保護膜の厚さ1nmあたりの露光光に対する光学濃度をODsとしたとき、下記式(1)
ODs×Rep/Rps (1)
により算出される値が0.002以下であることが有効である。上記式(1)により算出される値は、エッチング保護膜が、位相シフト膜が膜厚1nm分エッチングされる時間エッチングされたときに、エッチング保護膜においてエッチングにより減少する光学濃度に相当する。上記式(1)により算出される値が小さいほど、エッチング保護膜の面内での透過率の分布を均一にすることができる。上記式(1)により算出される値は、好ましくは0.002未満、より好ましくは0.0015以下である。
【0029】
エッチング保護膜及び位相シフト膜は、位相シフト膜をオーバーエッチングしたときのエッチング保護膜のエッチング耐性を確保する観点から、同一条件のフッ素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチング保護膜に対する位相シフト膜のエッチング選択比が1.5以上、特に5以上、とりわけ10以上であることが好ましい。このエッチング選択比の上限は特に限定されるものではないが、通常、30以下である。なお、このエッチング選択比は、エッチング保護膜のエッチングレートに対する位相シフト膜のエッチングレートの比率である。
【0030】
<エッチング保護膜及び位相シフト膜の成膜方法>
本発明におけるエッチング保護膜及び位相シフト膜は、位相シフトマスクブランクの製造における公知の成膜手法を適用して成膜することができるが、均質性に優れた膜が容易に得られるスパッタ法により成膜することが好ましく、DCスパッタ、RFスパッタのいずれの方法をも用いることができるが、マグネトロンスパッタがより好ましい。ターゲットとスパッタガスは、層構成や組成に応じて適宜選択される。
【0031】
エッチング保護膜は、ハフニウムターゲットを用いても、ハフニウム及びケイ素からなるターゲットを用いても、ハフニウムターゲットと、ケイ素ターゲットとを用いて同時に放電させるコスパッタとしても、ハフニウムターゲット及び/又はケイ素ターゲットと、ハフニウム及びケイ素からなるターゲットとを用いて同時に放電させるコスパッタとしてもよい。
【0032】
位相シフト膜が、遷移金属を含んでいないケイ素を含有する膜であるときには、ケイ素ターゲットを用いることができる。遷移金属を含んでいるケイ素を含有する膜を形成するときは、遷移金属及びケイ素からなるターゲットを用いても、遷移金属ターゲットと、ケイ素ターゲットとを用いて同時に放電させるコスパッタとしても、遷移金属ターゲット及び/又はケイ素ターゲットと、遷移金属及びケイ素からなるターゲットとを用いて同時に放電させるコスパッタとしてもよい。また、これらターゲットは窒素を含有していてもよく、窒素を含有するターゲットと窒素を含有しないターゲットを同時に用いてもよい。
【0033】
エッチング保護膜及び位相シフト膜の酸素、窒素、炭素などの含有率は、スパッタガスに、反応性ガスとして、酸素ガスなどの酸素含有ガス、窒素ガスなどの窒素含有ガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガスなどの酸素窒素含有ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、メタンガス等の炭化水素ガス等の炭素含有ガスなどを用い、スパッタチャンバへの導入量を適宜調整して、反応性スパッタすることで、調整することができる。更に、スパッタガスには、希ガスとして、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガスなどを用いることもできる。
【0034】
[位相シフトマスクブランクの他の態様]
本発明の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜の上には、位相シフト膜側から順に、第3の膜、第4の膜及び第5の膜を形成してもよい。位相シフト膜の上に、第3の膜を設けた位相シフトマスクブランク(第2の態様)として具体的には、
図2に示されるものが挙げられる。
図2は、本発明の位相シフトマスクブランクの第2の態様の一例を示す断面図であり、この位相シフトマスクブランク1は、透光性基板10と、透光性基板10上に形成されたエッチング保護膜11と、エッチング保護膜11上に形成された位相シフト膜12と、位相シフト膜12上に形成された第3の膜13とを備える。
【0035】
また、位相シフト膜の上に、第3の膜及び第4の膜を設けた位相シフトマスクブランク(第3の態様)として具体的には、
図3に示されるものが挙げられる。
図3は、本発明の位相シフトマスクブランクの第3の態様の一例を示す断面図であり、この位相シフトマスクブランク1は、透光性基板10と、透光性基板10上に形成されたエッチング保護膜11と、エッチング保護膜11上に形成された位相シフト膜12と、位相シフト膜12上に形成された第3の膜13と、第3の膜13の上に形成された第4の膜14とを備える。
【0036】
更に、位相シフト膜の上に、第3の膜、第4の膜及び第5の膜を設けた位相シフトマスクブランク(第4の態様)として具体的には、
図4に示されるものが挙げられる。
図4は、本発明の位相シフトマスクブランクの第4の態様の一例を示す断面図であり、この位相シフトマスクブランク1は、透光性基板10と、透光性基板10上に形成されたエッチング保護膜11と、エッチング保護膜11上に形成された位相シフト膜12と、位相シフト膜12上に形成された第3の膜13と、第3の膜13の上に形成された第4の膜14と、第4の膜14の上に形成された第5の膜15とを備える。
【0037】
<第3の膜>
本発明の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜の上には、単層又は複数層からなる第3の膜を設けることができる。第3の膜は、通常、位相シフト膜に隣接して設けられる。この第3の膜として具体的には、遮光膜、遮光膜と反射防止膜との組み合わせ、位相シフト膜のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜(エッチングマスク膜)などが挙げられる。また、第4の膜を設ける場合、この第3の膜を、第4の膜のパターン形成においてエッチングストッパーとして機能する加工補助膜(エッチングストッパ膜)として利用することもできる。第3の膜の材料としては、クロムを含む材料が好適である。
【0038】
本発明のエッチング保護膜は、塩素系ガス(例えば、酸素を含有する塩素ガス、具体的には、塩素ガス(Cl2)と酸素ガス(O2)との混合ガス(以下同じ))によってドライエッチングされ難い膜となっている。そのため、位相シフト膜を剥離して位相シフト膜のパターンを形成していない部分、即ち、エッチング保護膜が露出している部分は、その後、第3の膜を塩素系ガスによりドライエッチングする際のエッチング耐性を有している。
【0039】
エッチング保護膜及び第3の膜(特に、遮光膜、遮光膜と反射防止膜との組み合わせ)は、第3の膜をエッチングしたときのエッチング保護膜のエッチング耐性を確保する観点から、同一条件の塩素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチング保護膜に対する第3の膜のエッチング選択比が10以上、特に15以上、とりわけ20以上であることが好ましい。このエッチング選択比の上限は特に限定されるものではないが、通常、30以下である。なお、このエッチング選択比は、エッチング保護膜のエッチングレートに対する第3の膜のエッチングレートの比率である。
【0040】
(第3の膜としての遮光膜及び反射防止膜)
遮光膜を含む第3の膜を設けることにより、位相シフトマスクに、露光光を完全に遮光する領域を設けることができる。この遮光膜を含む第3の膜は、エッチングにおける加工補助膜として利用することもできる。
【0041】
遮光膜及び反射防止膜の膜構成及び材料については多数の例(例えば、特開2007-33469号公報(特許文献2)、特開2007-233179号公報(特許文献3)など)があるが、好ましい遮光膜と反射防止膜との組み合わせの膜構成としては、例えば、クロムを含む材料の遮光膜を設け、更に、遮光膜からの反射を低減させるクロムを含む材料の反射防止膜を設けたものなどが挙げられる。遮光膜及び反射防止膜は、いずれも単層で構成しても、複数層で構成してもよい。
【0042】
遮光膜や反射防止膜のクロムを含む材料としては、クロム単体、クロム酸化物(CrO)、クロム窒化物(CrN)、クロム炭化物(CrC)、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム窒化炭化物(CrNC)、クロム酸化窒化炭化物(CrONC)等のクロム化合物などが挙げられる。なお、ここで、クロムを含む材料を表す化学式は、構成元素を示すものであり、構成元素の組成比を意味するものではない(以下のクロムを含む材料において同じ。)。
【0043】
第3の膜が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、遮光膜のクロム化合物中のクロムの含有率は40原子%以上、特に60原子%以上で、100原子%未満、特に99原子%以下、とりわけ90原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は60原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、1原子%以上であることがより好ましい。窒素の含有率は、50原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、1原子%以上であることがより好ましい。炭素の含有率は20原子%以下、特に10原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。この場合、クロム、酸素、窒素及び炭素の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
【0044】
また、第3の膜が遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、反射防止膜はクロム化合物であることが好ましく、クロム化合物中のクロムの含有率は30原子%以上、特に35原子%以上で、70原子%以下、特に50原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は60原子%以下であることが好ましく、1原子%以上、特に20原子%以上であることがより好ましい。窒素の含有率は50原子%以下、特に30原子%以下であることが好ましく、1原子%以上、特に3原子%以上であることがより好ましい。炭素の含有率は20原子%以下、特に5原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。この場合、クロム、酸素、窒素及び炭素の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
【0045】
第3の膜が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、第3の膜の膜厚は、好ましくは20nm以上、特に40nm以上で、好ましくは100nm以下、特に70nm以下である。また、波長200nm以下の露光光、特にArFエキシマレーザ(波長193nm)に対する位相シフト膜と第3の膜との合計の光学濃度が2以上、特に2.5以上、とりわけ3以上となるようにすることが好ましい。
【0046】
(第3の膜としての加工補助膜)
第3の膜が加工補助膜である場合、位相シフト膜のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜(エッチングマスク膜)として利用することができ、また、第4の膜のパターン形成においてエッチングストッパーとして機能する加工補助膜(エッチングストッパ膜)として利用することもできる。
【0047】
加工補助膜の例としては、特開2007-241065号公報(特許文献4)で示されているようなクロムを含む材料で構成された膜が挙げられる。加工補助膜は、単層で構成しても、複数層で構成してもよい。
【0048】
加工補助膜のクロムを含む材料としては、クロム単体、クロム酸化物(CrO)、クロム窒化物(CrN)、クロム炭化物(CrC)、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム窒化炭化物(CrNC)、クロム酸化窒化炭化物(CrONC)等のクロム化合物などが挙げられる。
【0049】
第3の膜が加工補助膜である場合、第3の膜のクロム化合物中のクロムの含有率は40原子%以上、特に50原子%以上で、100原子%未満、特に99原子%以下、とりわけ90原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は60原子%以下、特に55原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。窒素の含有率は50原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、1原子%以上であることがより好ましい。炭素の含有率は20原子%以下、特に10原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。この場合、クロム、酸素、窒素及び炭素の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
【0050】
第3の膜が加工補助膜である場合、第3の膜の膜厚は、好ましくは2nm以上、特に5nm以上で、好ましくは20nm以下、特に15nm以下である。
【0051】
<第4の膜>
本発明の位相シフトマスクブランクの第3の膜の上には、単層又は複数層からなる第4の膜を設けることができる。第4の膜は、通常、第3の膜に隣接して設けられる。この第4の膜として具体的には、加工補助膜、遮光膜、遮光膜と反射防止膜との組み合わせなどが挙げられる。第4の膜の材料としては、ケイ素を含む材料が好適であり、特に、クロムを含まないものが好ましい。
【0052】
(第4の膜としての加工補助膜)
第3の膜が遮光膜、若しくは遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、又は位相シフト膜のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜である場合、第4の膜として、第3の膜のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜(エッチングマスク膜)を設けることができる。また、第5の膜を設ける場合、この第4の膜を、第5の膜のパターン形成においてエッチングストッパーとして機能する加工補助膜(エッチングストッパ膜)として利用することもできる。
【0053】
この加工補助膜は、第3の膜とエッチング特性が異なる材料、例えば、クロムを含む材料のエッチングに適用される塩素系ガス(特に、酸素を含有する塩素ガス)によるドライエッチングに耐性を有する材料、具体的には、SF6やCF4などのフッ素系ガスでドライエッチングできるケイ素を含む材料とすることが好ましい。
【0054】
ケイ素を含む材料として具体的には、ケイ素単体、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方とを含む材料、ケイ素と遷移金属とを含む材料、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方と、遷移金属とを含む材料等のケイ素化合物などが挙げられ、遷移金属としては、モリブデン、タンタル、ジルコニウムなどが挙げられる。
【0055】
第4の膜が加工補助膜である場合、加工補助膜はケイ素化合物であることが好ましく、ケイ素化合物中のケイ素の含有率は20原子%以上、特に33原子%以上で、95原子%以下、特に80原子%以下であることが好ましい。窒素の含有率は50原子%以下、特に30原子%以下であることが好ましく、1原子%以上であることがより好ましい。酸素の含有率は70原子%以下、特に66原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましく、20原子%以上であることが更に好ましい。遷移金属は含有していても、含有していなくてもよいが、遷移金属を含有する場合、その含有率は35原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましい。この場合、ケイ素、酸素、窒素及び遷移金属の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
【0056】
第3の膜が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせ、第4の膜が加工補助膜である場合、第3の膜の膜厚は、好ましくは20nm以上、特に40nm以上で、好ましくは100nm以下、特に70nm以下であり、第4の膜の膜厚は、好ましくは1nm以上、特に2nm以上で、30nm以下、特に15nm以下である。また、波長200nm以下の露光光、特にArFエキシマレーザ(波長193nm)に対する位相シフト膜と第3の膜と第4の膜との合計の光学濃度が2以上、特に2.5以上、とりわけ3以上となるようにすることが好ましい。
【0057】
一方、第3の膜が加工補助膜、第4の膜が加工補助膜である場合、第3の膜の膜厚は、好ましくは1nm以上、特に2nm以上で、20nm以下、特に10nm以下であり、第4の膜の膜厚は、好ましくは1nm以上、特に2nm以上で、20nm以下、特に10nm以下である。
【0058】
(第4の膜としての遮光膜及び反射防止膜)
第3の膜が加工補助膜である場合、第4の膜として、遮光膜を設けることができる。また、第4の膜として、遮光膜と反射防止膜とを組み合わせて設けることもできる。
【0059】
第4の膜の遮光膜及び反射防止膜は、第3の膜とエッチング特性が異なる材料、例えばクロムを含む材料のエッチングに適用される塩素系ガス(特に、酸素を含有する塩素ガス)によるドライエッチングに耐性を有する材料、具体的には、SF6やCF4などのフッ素系ガスでドライエッチングできるケイ素を含む材料とすることが好ましい。
【0060】
ケイ素を含む材料として具体的には、ケイ素単体、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方とを含む材料、ケイ素と遷移金属とを含む材料、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方と、遷移金属とを含む材料等のケイ素化合物などが挙げられ、遷移金属としては、モリブデン、タンタル、ジルコニウムなどが挙げられる。
【0061】
第4の膜が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、遮光膜及び反射防止膜はケイ素化合物であることが好ましく、ケイ素化合物中のケイ素の含有率は10原子%以上、特に30原子%以上で、100原子%未満、特に95原子%以下であることが好ましい。窒素の含有率は50原子%以下、特に40原子%以下、とりわけ20原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。酸素の含有率は60原子%以下、特に30原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることが好ましい。遷移金属の含有率は35原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましく、1原子%以上であることがより好ましい。この場合、ケイ素、酸素、窒素及び遷移金属の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
【0062】
第3の膜が加工補助膜、第4の膜が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、第3の膜の膜厚は、好ましくは1nm以上、特に2nm以上で、20nm以下、特に10nm以下であり、第4の膜の膜厚は、好ましくは20nm以上、特に30nm以上で、好ましくは100nm以下、特に70nm以下である。また、波長200nm以下の露光光、特にArFエキシマレーザ(波長193nm)に対する位相シフト膜と第3の膜と第4の膜との合計の光学濃度が2以上、特に2.5以上、とりわけ3以上となるようにすることが好ましい。
【0063】
<第5の膜>
本発明の位相シフトマスクブランクの第4の膜の上には、単層又は複数層からなる第5の膜を設けることができる。第5の膜は、通常、第4の膜に隣接して設けられる。この第5の膜として具体的には、第4の膜のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜などが挙げられる。第5の膜の材料としては、クロムを含む材料が好適である。
【0064】
(第5の膜としての加工補助膜)
第4の膜が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、第5の膜として、第4の膜のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜(エッチングマスク膜)を設けることができる。
【0065】
この加工補助膜は、第4の膜とエッチング特性が異なる材料、例えば、ケイ素を含む材料のエッチングに適用されるフッ素系ガスによるドライエッチングに耐性を有する材料、具体的には、塩素系ガス(特に、酸素を含有する塩素ガス)でドライエッチングできるクロムを含む材料とすることが好ましい。
【0066】
クロムを含む材料として具体的には、クロム単体、クロム酸化物(CrO)、クロム窒化物(CrN)、クロム炭化物(CrC)、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム窒化炭化物(CrNC)、クロム酸化窒化炭化物(CrONC)等のクロム化合物などが挙げられる。
【0067】
第5の膜が加工補助膜である場合、第5の膜のクロム化合物中のクロムの含有率は30原子%以上、特に40原子%以上で、100原子%未満、特に99原子%以下、とりわけ90原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は60原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。窒素の含有率は50原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。炭素の含有率は20原子%以下、特に10原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。この場合、クロム、酸素、窒素及び炭素の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
【0068】
第3の膜が加工補助膜、第4の膜が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせ、第5の膜が加工補助膜である場合、第3の膜の膜厚は、好ましくは1nm以上、特に2nm以上で、20nm以下、特に10nm以下であり、第4の膜の膜厚は、好ましくは20nm以上、特に30nm以上で、好ましくは100nm以下、特に70nm以下であり、第5の膜の膜厚は、好ましくは1nm以上、特に2nm以上で、30nm以下、特に20nm以下である。また、波長200nm以下の露光光、特にArFエキシマレーザ(波長193nm)に対する位相シフト膜と第3の膜と第4の膜と第5の膜との合計の光学濃度が2以上、特に2.5以上、とりわけ3以上となるようにすることが好ましい。
【0069】
<第3~5の膜の成膜方法>
第3の膜及び第5の膜のクロムを含む材料で構成された膜は、クロムターゲット、クロムに酸素、窒素及び炭素から選ばれるいずれか1種又は2種以上を添加したターゲットなどを用い、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガスなどの希ガスに、成膜する膜の組成に応じて、酸素含有ガス、窒素含有ガス、炭素含有ガスなどから選ばれる反応性ガスを適宜添加したスパッタガスを用いた反応性スパッタにより成膜することができる。
【0070】
一方、第4の膜のケイ素を含む材料で構成された膜は、ケイ素ターゲット、窒化ケイ素ターゲット、ケイ素と窒化ケイ素の双方を含むターゲット、遷移金属ターゲット、ケイ素と遷移金属との複合ターゲットなどを用い、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガスなどの希ガスに、成膜する膜の組成に応じて、酸素含有ガス、窒素含有ガス、炭素含有ガスなどから選ばれる反応性ガスを適宜添加したスパッタガスを用いた反応性スパッタにより成膜することができる。
【0071】
<位相シフトマスクの製造方法>
位相シフトマスクブランクから、常法により位相シフトマスクを製造することができる。本発明の位相シフトマスクは、位相シフトマスクブランクを用い、位相シフト膜をフッ素系ガスによりドライエッチングする工程を含む方法により製造することができる。特に、第3の膜を備える第2~第4の態様の位相シフトマスクブランクを用いる場合は、位相シフト膜をフッ素系ガスによりドライエッチングする工程と、第3の膜を塩素系ガスによりドライエッチングする工程とを含む方法により製造することができる。以下に、位相シフトマスクの製造方法の具体例を示す。
【0072】
(具体例1)
第1の態様の位相シフトマスクブランクから位相シフトマスクを製造する例としては、透明基板上に、エッチング保護膜及び位相シフト膜がこの順に形成されている位相シフトマスクブランクでは、例えば、下記の工程で位相シフトマスクを製造することができる。
【0073】
まず、位相シフトマスクブランクの位相シフト膜上に、電子線レジスト膜を成膜し、電子線によるパターン描画を行った後、所定の現像操作によってレジストパターンを得る。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、位相シフト膜にレジストパターンを転写して、位相シフト膜のパターンを得て、位相シフトマスクを得ることができる。このとき、エッチング保護膜の存在により、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによって透明基板が掘りこまれることはない。
【0074】
(具体例2)
第2の態様の位相シフトマスクブランクから位相シフトマスクを製造する例としては、透明基板上に、エッチング保護膜、位相シフト膜及び第3の膜がこの順に形成されており、第3の膜が、クロムを含む材料の膜である位相シフトマスクブランクでは、例えば、下記の工程で位相シフトマスクを製造することができる。
【0075】
まず、位相シフトマスクブランクの第3の膜上に、電子線レジスト膜を成膜し、電子線によるパターン描画を行った後、所定の現像操作によってレジストパターンを得る。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、塩素系ガスを用いたドライエッチングにより、第3の膜にレジストパターンを転写して、第3の膜のパターンを得る。次に、得られた第3の膜のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、位相シフト膜に第3の膜のパターンを転写して、位相シフト膜のパターンを得る。このとき、エッチング保護膜の存在により、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによって透明基板が掘りこまれることはない。次に、第3の膜を、塩素系ガスを用いたドライエッチングにより除去して、位相シフトマスクを得ることができる。このとき、位相シフト膜のパターンが存在していない部分で露出しているエッチング保護膜は、塩素系ガスを用いたドライエッチングではエッチングされない。ここで、第3の膜の一部を残す必要がある場合は、その部分を保護するレジストパターンを、第3の膜の上に形成した後、塩素系ガスを用いたドライエッチングにより、レジストパターンで保護されていない部分の第3の膜を除去する。そして、レジストパターンを常法により除去して、位相シフトマスクを得ることができる。
【0076】
(具体例3)
第3の態様の位相シフトマスクブランクから位相シフトマスクを製造する例としては、透明基板上に、エッチング保護膜、位相シフト膜、第3の膜及び第4の膜がこの順に形成されており、第3の膜が、クロムを含む材料の遮光膜、又はクロムを含む材料の、遮光膜と反射防止膜との組み合わせ、第4の膜が、ケイ素を含む材料の加工補助膜である位相シフトマスクブランクでは、例えば、下記の工程で位相シフトマスクを製造することができる。
【0077】
まず、位相シフトマスクブランクの第4の膜の上に、電子線レジスト膜を成膜し、電子線によるパターン描画を行った後、所定の現像操作によってレジストパターンを得る。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、第4の膜にレジストパターンを転写して、第4の膜のパターンを得る。次に、得られた第4の膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素系ガスを用いたドライエッチングにより、第3の膜に第4の膜のパターンを転写して、第3の膜のパターンを得る。次に、レジストパターンを除去した後、得られた第3の膜のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、位相シフト膜に第3の膜のパターンを転写して、位相シフト膜のパターンを得ると同時に、第4の膜のパターンを除去する。このとき、エッチング保護膜の存在により、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによって透明基板が掘りこまれることはない。次に、第3の膜を残す部分を保護するレジストパターンを、第3の膜の上に形成した後、塩素系ガスを用いたドライエッチングにより、レジストパターンで保護されていない部分の第3の膜を除去する。そして、レジストパターンを常法により除去して、位相シフトマスクを得ることができる。
【0078】
(具体例4)
第3の態様の位相シフトマスクブランクから位相シフトマスクを製造する他の例としては、透明基板上に、エッチング保護膜、位相シフト膜、第3の膜及び第4の膜がこの順に形成されており、第3の膜が、クロムを含む材料の加工補助膜、第4の膜が、ケイ素を含む材料の遮光膜、又はケイ素を含む材料の、遮光膜と反射防止膜との組み合わせである位相シフトマスクブランクでは、例えば、下記の工程で位相シフトマスクを製造することができる。
【0079】
まず、位相シフトマスクブランクの第4の膜の上に、電子線レジスト膜を成膜し、電子線によるパターン描画を行った後、所定の現像操作によってレジストパターンを得る。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、第4の膜にレジストパターンを転写して、第4の膜のパターンを得る。次に、得られた第4の膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素系ガスを用いたドライエッチングにより、第3の膜に第4の膜のパターンを転写して、位相シフト膜を除去する部分の第3の膜が除去された第3の膜のパターンを得る。次に、レジストパターンを除去し、第4の膜を残す部分を保護するレジストパターンを、第4の膜の上に形成した後、得られた第3の膜のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、位相シフト膜に第3の膜のパターンを転写して、位相シフト膜のパターンを得ると同時に、レジストパターンで保護されていない部分の第4の膜のパターンを除去する。このとき、エッチング保護膜の存在により、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによって透明基板が掘りこまれることはない。次に、レジストパターンを常法により除去する。そして、塩素系ガスを用いたドライエッチングにより、第4の膜が除去された部分の第3の膜を除去して、位相シフトマスクを得ることができる。このとき、位相シフト膜のパターンが存在していない部分で露出しているエッチング保護膜は、塩素系ガスを用いたドライエッチングではエッチングされない。
【0080】
(具体例5)
第4の態様の位相シフトマスクブランクから位相シフトマスクを製造する例としては、透明基板上に、エッチング保護膜、位相シフト膜、第3の膜、第4の膜及び第5の膜がこの順に形成されており、第3の膜が、クロムを含む材料の加工補助膜、第4の膜が、ケイ素を含む材料の遮光膜、又はケイ素を含む材料の、遮光膜と反射防止膜との組み合わせ、第5の膜が、クロムを含む材料の加工補助膜である位相シフトマスクブランクでは、例えば、下記の工程で位相シフトマスクを製造することができる。
【0081】
まず、位相シフトマスクブランクの第5の膜の上に、電子線レジスト膜を成膜し、電子線によるパターン描画を行った後、所定の現像操作によってレジストパターンを得る。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、塩素系ガスを用いたドライエッチングにより、第5の膜にレジストパターンを転写して、第5の膜のパターンを得る。次に、得られた第5の膜のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、第4の膜に第5の膜のパターンを転写して、第4の膜のパターンを得る。次に、レジストパターンを除去し、第4の膜を残す部分を保護するレジストパターンを、第5の膜の上に形成した後、得られた第4の膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素系ガスを用いたドライエッチングにより、第3の膜に第4の膜のパターンを転写して第3の膜のパターンを得ると同時に、レジストパターンで保護されていない部分の第5の膜を除去する。次に、第3の膜のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、位相シフト膜に第3の膜のパターンを転写して、位相シフト膜のパターンを得ると同時に、レジストパターンで保護されていない部分の第4の膜のパターンを除去する。次に、レジストパターンを常法により除去する。そして、塩素系ガスを用いたドライエッチングにより、第4の膜が除去された部分の第3の膜と、レジストパターンが除去された部分の第5の膜を除去して、位相シフトマスクを得ることができる。このとき、位相シフト膜のパターンが存在していない部分で露出しているエッチング保護膜は、塩素系ガスを用いたドライエッチングではエッチングされない。
【0082】
<位相シフトマスク>
位相シフトマスクは、透光性基板の上に、マスクパターン(フォトマスクパターン)を備える。本発明の位相シフトマスクは、透光性基板と、透光性基板上に、好ましくは透光性基板に接して形成されたエッチング保護膜と、エッチング保護膜に接して形成された位相シフト膜のパターンとを備える。位相シフトマスクは、位相シフト膜のパターンの上には、第3の膜(特に、遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせ)のパターンを備えていてもよく、更に、第4の膜のパターン、又は第4の膜のパターン及び第5の膜のパターンを備えていてもよい。
【0083】
透光性基板、エッチング保護膜、位相シフト膜、第3の膜、第4の膜及び第5の膜は、位相シフトマスクブランクと同様のものであればよい。位相シフトマスクの位相シフト膜のない部分(位相シフト膜のパターン以外の部分)のエッチング保護膜は、位相シフトマスクブランクから位相シフトマスクを製造する際のドライエッチングに曝されるため、位相シフトマスクブランクに形成されていたものよりも薄くなっている(例えば、10~50%程度、薄くなっている。)。位相シフトマスクの位相シフト膜のない部分に、エッチング保護膜は存在していなくてもよいが、位相シフト膜のない部分にもエッチング保護膜が形成されている(残存している)ことが好ましい。
【0084】
本発明の位相シフトマスクは、被加工基板にハーフピッチ50nm以下、特に30nm以下、とりわけ20nm以下のパターンを形成するためのフォトリソグラフィにおいて、被加工基板上に形成したフォトレジスト膜に、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、F2レーザー光(波長157nm)などの波長250nm以下、特に波長200nm以下の露光光でパターンを転写する露光に好適であり、特に、露光光がArFエキシマレーザー光である場合に特に効果的である。
【実施例】
【0085】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0086】
[実施例1]
スパッタ装置のチャンバー内に、152mm角、厚さ6.35mmの6025石英基板を設置し、スパッタターゲットとしてHfターゲット、スパッタガスとしてアルゴンガス及び酸素ガスを用い、石英基板上に、HfOからなるエッチング保護膜を2.0nmの膜厚で成膜した。石英基板上にエッチング保護膜を成膜した状態で、波長193nmの光に対する透過率(透光性基板を透過した露光光に対する、透光性基板及びエッチング保護膜を透過した露光光の割合)を測定したところ、95.3%(光学濃度は0.021)であった。一方、エッチング保護膜自体の、厚さ1nmあたりの露光光に対する光学濃度(ODs)は0.0105であった。また、エッチング保護膜の組成をXPSにて測定したところ、Hfが36.2原子%、Oが63.8原子%であった。この場合、HfとSiの合計に対するSiの比率は0原子%である。
【0087】
次に、別のスパッタ装置のチャンバー内に、エッチング保護膜を成膜した石英基板を設置し、スパッタターゲットとしてMoSiターゲット及びSiターゲット、スパッタガスとしてアルゴンガス、酸素ガス及び窒素ガスを用い、エッチング保護膜上に、MoSiONからなり、波長193nmの光に対する位相差が177度、透過率が9%である位相シフト膜を75nmの膜厚で成膜した。位相シフト膜の組成をXPSにて測定したところ、Moが6.8原子%、Siが38.3原子%、Oが14.2原子%、Nが40.7原子%であった。
【0088】
次に、更に別のスパッタ装置のチャンバー内に、エッチング保護膜及び位相シフト膜を成膜した石英基板を設置し、スパッタターゲットとしてCrターゲット、スパッタガスとしてアルゴンガス、酸素ガス及び窒素ガスを用い、位相シフト膜上に、CrONからなる遮光膜を48nmの膜厚で成膜して、位相シフトマスクブランクを得た。遮光膜の組成をXPSにて測定したところ、Crが45.7原子%、Oが37.3原子%、Nが17.0原子%であった。この場合、位相シフト膜と遮光膜とを合わせた波長193nmの露光光でのODは3.0であった。
【0089】
得られた位相シフトマスクブランクを、
図5に示されるドライエッチング装置内に設置し、位相シフトマスクブランクの遮光膜、位相シフト膜及びエッチング保護膜の各々に対して、塩素系ガスを用いたドライエッチング(塩素系ドライエッチング)、フッ素系ガスを用いたドライエッチング(フッ素系ドライエッチング)を実施し、各々の膜のエッチングレートを算出した。
図5は、ドライエッチング装置の概略を示す図であり、ドライエッチング装置100は、チャンバー101、アース102、下部電極103、アンテナコイル104、高周波電源RF1,RF2を備える。この場合、下部電極103の上に、被処理基板(位相シフトマスクブランク)105が置かれている。
【0090】
その結果、エッチング保護膜(HfO膜)のフッ素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレート(Rep)は0.054[nm/sec]、位相シフト膜(MoSiON膜)のフッ素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレート(Rps)は1.15[nm/sec]であり、エッチング保護膜に対する位相シフト膜のエッチング選択比は21であった。また、エッチング保護膜の塩素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレートは0.16[nm/sec]、遮光膜(CrON膜)の塩素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレートは3.61[nm/sec]であり、エッチング保護膜に対する遮光膜のエッチング選択比は23であった。
【0091】
また、位相シフト膜のエッチングレート(Rps=1.15nm/sec)、エッチング保護膜のエッチングレート(Rep=0.054nm/sec)、及びエッチング保護膜の厚さ1nmあたりの露光光に対する光学濃度(ODs=0.0105)から、下記式(1)
ODs×Rep/Rps (1)
により算出される値は0.00049であった。
【0092】
<塩素系ドライエッチング条件>
RF1(RIE:リアクティブイオンエッチング):CW(連続放電)700V
RF2(ICP:誘導結合プラズマ):CW(連続放電)400W
圧力:6mTorr
Cl2:185sccm
O2:55sccm
He:9.25sccm
【0093】
<フッ素系ドライエッチング条件>
RF1(RIE:リアクティブイオンエッチング):CW(連続放電)54W
RF2(ICP:誘導結合プラズマ):CW(連続放電)325W
圧力:5mTorr
SF6:18sccm
O2:45sccm
【0094】
[実施例2]
スパッタ装置のチャンバー内に、152mm角、厚さ6.35mmの6025石英基板を設置し、スパッタターゲットとしてHfターゲット及びSiターゲット、スパッタガスとしてアルゴンガス及び酸素ガスを用い、石英基板上に、HfSiOからなるエッチング保護膜を7.3nmの膜厚で成膜した。石英基板上にエッチング保護膜を成膜した状態で、波長193nmの光に対する透過率(透光性基板を透過した露光光に対する、透光性基板及びエッチング保護膜を透過した露光光の割合)を測定したところ、96.2%(光学濃度は0.017)であった。一方、エッチング保護膜自体の、厚さ1nmあたりの露光光に対する光学濃度(ODs)は0.0023であった。また、エッチング保護膜の組成をXPSにて測定したところ、Hfが13.2原子%、Siが21.4原子%、Oが65.4原子%であった。この場合、HfとSiの合計に対するSiの比率は61.8原子%である。
【0095】
次に、実施例1と同様の方法で、エッチング保護膜上に、MoSiONからなる位相シフト膜を75nmの膜厚で成膜し、更に、位相シフト膜上に、CrONからなる遮光膜を48nmの膜厚で成膜して、位相シフトマスクブランクを得た。
【0096】
得られた位相シフトマスクブランクについて、実施例1と同様の方法で、エッチングレートを算出した。その結果、エッチング保護膜(HfSiO膜)のフッ素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレート(Rep)は0.22[nm/sec]、位相シフト膜(MoSiON膜)のフッ素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレート(Rps)は1.15[nm/sec]であり、エッチング保護膜に対する位相シフト膜のエッチング選択比は5.2であった。また、エッチング保護膜の塩素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレートは0.16[nm/sec]、遮光膜(CrON膜)の塩素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレートは3.61[nm/sec]であり、エッチング保護膜に対する遮光膜のエッチング選択比は23であった。
【0097】
また、位相シフト膜のエッチングレート(Rps=1.15nm/sec)、エッチング保護膜のエッチングレート(Rep=0.22nm/sec)、及びエッチング保護膜の厚さ1nmあたりの露光光に対する光学濃度(ODs=0.0023)から、上記式(1)により算出される値は0.00044であった。
【0098】
[実施例3]
Hfターゲット及びSiターゲットの印加電力を変更した以外は実施例2と同様にして、石英基板上に、HfSiOからなるエッチング保護膜を21nmの膜厚で成膜した。石英基板上にエッチング保護膜を成膜した状態で、波長193nmの光に対する透過率(透光性基板を透過した露光光に対する、透光性基板及びエッチング保護膜を透過した露光光の割合)を測定したところ、89.3%(光学濃度は0.049)であった。一方、エッチング保護膜自体の、厚さ1nmあたりの露光光に対する光学濃度(ODs)は0.0023であった。また、エッチング保護膜の組成をXPSにて測定したところ、Hfが3.4原子%、Siが30.8原子%、Oが65.8原子%であった。この場合、HfとSiの合計に対するSiの比率は90.1原子%である。
【0099】
次に、実施例1と同様の方法で、エッチング保護膜上に、MoSiONからなる位相シフト膜を75nmの膜厚で成膜し、更に、位相シフト膜上に、CrONからなる遮光膜を48nmの膜厚で成膜して、位相シフトマスクブランクを得た。
【0100】
得られた位相シフトマスクブランクについて、実施例1と同様の方法で、エッチングレートを算出した。その結果、エッチング保護膜(HfSiO膜)のフッ素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレート(Rep)は0.64[nm/sec]、位相シフト膜(MoSiON膜)のフッ素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレート(Rps)は1.15[nm/sec]であり、エッチング保護膜に対する位相シフト膜のエッチング選択比は1.8であった。また、エッチング保護膜の塩素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレートは0.18[nm/sec]、遮光膜(CrON膜)の塩素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレートは3.61[nm/sec]であり、エッチング保護膜に対する遮光膜のエッチング選択比は20であった。
【0101】
また、位相シフト膜のエッチングレート(Rps=1.15nm/sec)、エッチング保護膜のエッチングレート(Rep=0.64nm/sec)、及びエッチング保護膜の厚さ1nmあたりの露光光に対する光学濃度(ODs=0.0023)から、上記式(1)により算出される値は0.00128であった。
【0102】
[実施例4]
Hfターゲット及びSiターゲットの印加電力を変更した以外は実施例2と同様にして、石英基板上に、HfSiOからなるエッチング保護膜を24nmの膜厚で成膜した。石英基板上にエッチング保護膜を成膜した状態で、波長193nmの光に対する透過率(透光性基板を透過した露光光に対する、透光性基板及びエッチング保護膜を透過した露光光の割合)を測定したところ、88.6%(光学濃度は0.053)であった。一方、エッチング保護膜自体の、厚さ1nmあたりの露光光に対する光学濃度(ODs)は0.0022であった。また、エッチング保護膜の組成をXPSにて測定したところ、Hfが2.0原子%、Siが32.1原子%、Oが65.9原子%であった。この場合、HfとSiの合計に対するSiの比率は94.1原子%である。
【0103】
次に、実施例1と同様の方法で、エッチング保護膜上に、MoSiONからなる位相シフト膜を75nmの膜厚で成膜し、更に、位相シフト膜上に、CrONからなる遮光膜を48nmの膜厚で成膜して、位相シフトマスクブランクを得た。
【0104】
得られた位相シフトマスクブランクについて、実施例1と同様の方法で、エッチングレートを算出した。その結果、エッチング保護膜(HfSiO膜)のフッ素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレート(Rep)は0.73[nm/sec]、位相シフト膜(MoSiON膜)のフッ素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレート(Rps)は1.15[nm/sec]であり、エッチング保護膜に対する位相シフト膜のエッチング選択比は1.6であった。また、エッチング保護膜の塩素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレートは0.18[nm/sec]、遮光膜(CrON膜)の塩素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレートは3.61[nm/sec]であり、エッチング保護膜に対する遮光膜のエッチング選択比は20であった。
【0105】
また、位相シフト膜のエッチングレート(Rps=1.15nm/sec)、エッチング保護膜のエッチングレート(Rep=0.73nm/sec)、及びエッチング保護膜の厚さ1nmあたりの露光光に対する光学濃度(ODs=0.0022)から、上記式(1)により算出される値は0.00140であった。
【0106】
[実施例5]
Hfターゲット及びSiターゲットの印加電力を変更した以外は実施例2と同様にして、石英基板上に、HfSiOからなるエッチング保護膜を25nmの膜厚で成膜した。石英基板上にエッチング保護膜を成膜した状態で、波長193nmの光に対する透過率(透光性基板を透過した露光光に対する、透光性基板及びエッチング保護膜を透過した露光光の割合)を測定したところ、88.0%(光学濃度は0.056)であった。一方、エッチング保護膜自体の、厚さ1nmあたりの露光光に対する光学濃度(ODs)は0.0022であった。また、エッチング保護膜の組成をXPSにて測定したところ、Hfが0.6原子%、Siが33.4原子%、Oが66.0原子%であった。この場合、HfとSiの合計に対するSiの比率は98.2原子%である。
【0107】
次に、実施例1と同様の方法で、エッチング保護膜上に、MoSiONからなる位相シフト膜を75nmの膜厚で成膜し、更に、位相シフト膜上に、CrONからなる遮光膜を48nmの膜厚で成膜して、位相シフトマスクブランクを得た。
【0108】
得られた位相シフトマスクブランクについて、実施例1と同様の方法で、エッチングレートを算出した。その結果、エッチング保護膜(HfSiO膜)のフッ素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレート(Rep)は0.76[nm/sec]、位相シフト膜(MoSiON膜)のフッ素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレート(Rps)は1.15[nm/sec]であり、エッチング保護膜に対する位相シフト膜のエッチング選択比は1.51であった。また、エッチング保護膜の塩素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレートは0.19[nm/sec]、遮光膜(CrON膜)の塩素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレートは3.61[nm/sec]であり、エッチング保護膜に対する遮光膜のエッチング選択比は19であった。
【0109】
また、位相シフト膜のエッチングレート(Rps=1.15nm/sec)、エッチング保護膜のエッチングレート(Rep=0.76nm/sec)、及びエッチング保護膜の厚さ1nmあたりの露光光に対する光学濃度(ODs=0.0022)から、上記式(1)により算出される値は0.00145であった。
【0110】
[比較例1]
スパッタ装置のチャンバー内に、152mm角、厚さ6.35mmの6025石英基板を設置し、スパッタターゲットとしてCrターゲット及びSiターゲット、スパッタガスとしてアルゴンガス、酸素ガス及び窒素ガスを用い、石英基板上に、CrSiONからなるエッチング保護膜を3.4nmの膜厚で成膜した。石英基板上にエッチング保護膜を成膜した状態で、波長193nmの光に対する透過率(透光性基板を透過した露光光に対する、透光性基板及びエッチング保護膜を透過した露光光の割合)を測定したところ、79.6%(光学濃度は0.099)であった。一方、エッチング保護膜自体の、厚さ1nmあたりの露光光に対する光学濃度(ODs)は0.0291であった。また、エッチング保護膜の組成をXPSにて測定したところ、Crが43原子%、Siが7原子%、Oが20原子%、Nが30原子%であった。
【0111】
次に、実施例1と同様の方法で、エッチング保護膜上に、MoSiONからなる位相シフト膜を75nmの膜厚で成膜し、更に、位相シフト膜上に、CrONからなる遮光膜を48nmの膜厚で成膜して、位相シフトマスクブランクを得た。
【0112】
得られた位相シフトマスクブランクについて、実施例1と同様の方法で、エッチングレートを算出した。その結果、エッチング保護膜(CrSiON膜)のフッ素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレート(Rep)は0.10[nm/sec]、位相シフト膜(MoSiON膜)のフッ素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレート(Rps)は1.15[nm/sec]であり、エッチング保護膜に対する位相シフト膜のエッチング選択比は12であった。また、エッチング保護膜の塩素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレートは0.16[nm/sec]、遮光膜(CrON膜)の塩素系ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレートは3.61[nm/sec]であり、エッチング保護膜に対する遮光膜のエッチング選択比は23であった。
【0113】
また、位相シフト膜のエッチングレート(Rps=1.15nm/sec)、エッチング保護膜のエッチングレート(Rep=0.10nm/sec)、及びエッチング保護膜の厚さ1nmあたりの露光光に対する光学濃度(ODs=0.0291)から、上記式(1)により算出される値は0.0025であった。
【符号の説明】
【0114】
1 位相シフトマスクブランク
10 透光性基板
11 エッチング保護膜
12 位相シフト膜
13 第3の膜
14 第4の膜
15 第5の膜
100 ドライエッチング装置
101 チャンバー
102 アース
103 下部電極
104 アンテナコイル、
105 被処理基板(位相シフトマスクブランク)
RF1、RF2 高周波電源