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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】重合性化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 277/82 20060101AFI20231108BHJP
   C08F 20/34 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
C07D277/82
C08F20/34
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020522568
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(86)【国際出願番号】 JP2019021411
(87)【国際公開番号】W WO2019230848
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2018106523
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】奥山 久美
(72)【発明者】
【氏名】坂本 圭
【審査官】谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/147904(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/010325(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/025793(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/064698(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/141784(WO,A1)
【文献】特許第7147747(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 277/82
C08F 20/34
C08F 20/30
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒中、下記式(I)
【化1】
(式中、Qは、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、FgおよびFgは、それぞれ独立して、水酸基、-CHOH、または、-CHCHOHを表す。)
で示される化合物と、下記式(II)
【化2】
(式中、Aは、水素原子、メチル基または塩素原子を表し、Lは、脱離基を表し、nは、1~20のいずれかの整数を表す。)
で示される化合物とを、塩基存在下にてエステル化させて、下記式(III)
【化3】
(式中、YおよびYは、それぞれ独立して、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-、または、-C(=O)-O-CH-CH-を表し、Q、Aおよびnは、前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物を含む反応液を得る工程(1)、
前記工程(1)で得られた反応液に含まれる前記式(II)で示される化合物を加水分解する工程(2)、
並びに、
前記工程(2)の後、下記式(IV)
【化4】
(式中、Xは、酸素原子、硫黄原子、-C(R)(R)-、または、-NR-を表し、ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基を表し、Rは、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~60の有機基を表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、一置換アミノ基、二置換アミノ基、-OCF、-C(=O)-O-R、または、-O-C(=O)-Rを表し、ここで、Rは、前記R、Rと同じ意味を表し、複数のR同士は、すべて同一であっても、相異なっていてもよく、環を構成する任意のC-Rは、窒素原子に置き換えられていてもよい。)
で示される化合物を加えて前記式(III)で示される化合物と反応させる工程(3)を有する、下記式(A)
【化5】
(式中、Y、Y、A、R、R、X、Qおよびnは、前記と同じ意味を表す。)で示される重合性化合物の製造方法。
【請求項2】
有機溶媒中、下記式(I)
【化6】
(式中、Qは、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、FgおよびFgは、それぞれ独立して、水酸基、-CHOH、または、-CHCHOHを表す。)
で示される化合物と、下記式(II)
【化7】
(式中、Aは、水素原子、メチル基または塩素原子を表し、Lは、水酸基を表し、nは、1~20のいずれかの整数を表す。)
で示される化合物とを、脱水縮合剤としてのカルボジイミド化合物の存在下にてエステル化させて、下記式(III)
【化8】
(式中、YおよびYは、それぞれ独立して、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-、または、-C(=O)-O-CH-CH-を表し、Q、Aおよびnは、前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物を含む反応液を得る工程(1)、
前記工程(1)で得られた反応液に含まれる前記カルボジイミド化合物を加水分解する工程(2)、
並びに、
前記工程(2)の後、下記式(IV)
【化9】
(式中、Xは、酸素原子、硫黄原子、-C(R)(R)-、または、-NR-を表し、ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基を表し、Rは、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~60の有機基を表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、一置換アミノ基、二置換アミノ基、-OCF、-C(=O)-O-R、または、-O-C(=O)-Rを表し、ここで、Rは、前記R、Rと同じ意味を表し、複数のR同士は、すべて同一であっても、相異なっていてもよく、環を構成する任意のC-Rは、窒素原子に置き換えられていてもよい。)
で示される化合物を加えて前記式(III)で示される化合物と反応させる工程(3)を有する、下記式(A)
【化10】
(式中、Y、Y、A、R、R、X、Qおよびnは、前記と同じ意味を表す。)で示される重合性化合物の製造方法。
【請求項3】
前記工程(2)では、前記反応液に水または水溶液を添加して前記加水分解を行う、請求項1または2に記載の重合性化合物の製造方法。
【請求項4】
前記工程(2)では、前記反応液に酸性水溶液を添加する、請求項3に記載の重合性化合物の製造方法。
【請求項5】
前記酸性水溶液の酸成分が、無機酸および/または炭素数1~20の有機酸である、請求項4に記載の重合性化合物の製造方法。
【請求項6】
前記酸性水溶液の酸成分が、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、スルホン酸類、スルフィン酸類、ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸およびリンゴ酸からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項4または5に記載の重合性化合物の製造方法。
【請求項7】
前記Rが、置換基を有していてもよい炭素数1~60のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2~60のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2~60のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい炭素数2~18の芳香族複素環基、または、Ra-Y-G-(式中、Raは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方を有する環状基を表し、Yは、化学的な単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-O-C(Rb)(Rc)-、-C(Rb)(Rc)-O-、-O-CH-CH-、-CH-CH-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR-C(=O)-、-C(=O)-NR-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-、-CH-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-CH-、-C(=O)-O-C(Rb)(Rc)-、-C(Rb)(Rc)-O-C(=O)-、-O-C(=O)-C(Rb)(Rc)-、-C(Rb)(Rc)-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR-、-NR-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-S-、-S-CH-C(=O)-O-、または、-O-C(=O)-O-を表し、ここで、Rは、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、RcおよびRbは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素環基、または、置換基を有していてもよい炭素数2~18の芳香族複素環基を表し、Gは、(i)炭素数1~20の2価の脂肪族炭化水素基、および、(ii)炭素数3~20の2価の脂肪族炭化水素基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR-C(=O)-、-C(=O)-NR-、-NR-、または、-C(=O)-に置換された基、のいずれかの有機基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)であり、ここで、Rは、水素原子、または、炭素数1~6のアルキル基を表す。)である、請求項1~6の何れかに記載の重合性化合物の製造方法。
【請求項8】
前記Rが全て水素原子である、請求項1~7の何れかに記載の重合性化合物の製造方法。
【請求項9】
前記工程(3)において、更に酸性水溶液を加えて反応を行う、請求項1~8の何れかに記載の重合性化合物の製造方法。
【請求項10】
前記式(II)で示される化合物が、下記式(IIa)
【化11】
(式中、A、Lおよびnは、前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物である、請求項1~9の何れかに記載の重合性化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム等の調製に使用し得る重合性化合物を高収率で製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、位相差板、特に逆波長分散性を有する位相差板を薄層化し得る技術として、フィルム基材に低分子重合性化合物を含有する重合性組成物を塗布することにより位相差板を作成する方法が注目されている。
【0003】
そして、例えば特許文献1には、重合性組成物の調製に好適に使用し得る、実用的な低い融点および汎用溶媒に対する高い溶解性を有し、更に、広い波長域において一様の偏光変換が可能な光学フィルムを形成可能な重合性化合物として、下記式(α)で示される重合性化合物が開示されている。
【化1】
(式中、Aは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基または塩素原子を表し、Rは、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~60の有機基を表し、Xは、酸素原子、硫黄原子、-C(R)(R)-、または、-N-R-を表し、ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基を表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、一置換アミノ基、二置換アミノ基、-OCF、-C(=O)-O-R、または、-O-C(=O)-Rを表し、ここで、Rは、前記R、Rと同じ意味を表し、複数のR同士は、すべて同一であっても、相異なっていてもよく、環を構成する任意のC-Rは、窒素原子に置き換えられていてもよく、nは、1~20のいずれかの整数を表す。)
【0004】
また、特許文献1には、上記式(α)で示される重合性化合物を高純度で収率よく製造する方法として、有機溶媒中、下記式(II):
【化2】
(式中、Aおよびnは、前記と同じ意味を表し、Lは脱離基を表す。)
で示される化合物と、2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒドとを塩基存在下で反応(エステル化反応)させて、下記式(β):
【化3】
(式中、Aおよびnは、前記と同じ意味を表す。)
で表される化合物を含む反応液を得た後、得られた反応液に下記式(IV):
【化4】
(式中、X、RおよびRは、前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物と酸性水溶液とを添加して、エステル化反応で生成する塩類を酸性水溶液に溶解させながら式(α)で示される重合性化合物を合成する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2015/141784号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、式(IV)で示される化合物と酸性水溶液とを同時に添加する上記従来の重合性化合物の製造方法には、重合性化合物の収率を更に向上させるという点において改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、光学フィルム等の調製に使用し得る重合性化合物を高収率で製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、有機溶媒中、下記式(I)で示される化合物と、下記式(II)で示される化合物とを、塩基および/または脱水縮合剤の存在下にて反応させて、下記式(III)で示される化合物を含む反応液を得た後、得られた反応液中に含まれている所定の成分を加水分解し、その後、下記式(IV)で示される化合物を添加して式(IV)で示される化合物と式(III)で示される化合物とを反応させることで、下記式(A)で示される重合性化合物を高収率で得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
かくして本発明によれば、下記<1>~<9>の重合性化合物の製造方法が提供される。
<1>有機溶媒中、下記式(I)
【化5】
(式中、Qは、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、FgおよびFgは、それぞれ独立して、水酸基、-CHOH、または、-CHCHOHを表す。)
で示される化合物と、下記式(II)
【化6】
(式中、Aは、水素原子、メチル基または塩素原子を表し、Lは、水酸基または脱離基を表し、nは、1~20のいずれかの整数を表す。)
で示される化合物とを、塩基および/または脱水縮合剤存在下にてエステル化させて、下記式(III)
【化7】
(式中、YおよびYは、それぞれ独立して、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-、または、-C(=O)-O-CH-CH-を表し、Q、Aおよびnは、前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物を含む反応液を得る工程(1)、
前記工程(1)で得られた反応液に含まれる前記式(II)で示される化合物または、前記脱水縮合剤を加水分解する工程(2)、
並びに、
前記工程(2)の後、下記式(IV)
【化8】
(式中、Xは、酸素原子、硫黄原子、-C(R)(R)-、または、-N-R-を表し、ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基を表し、Rは、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~60の有機基を表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、一置換アミノ基、二置換アミノ基、-OCF、-C(=O)-O-R、または、-O-C(=O)-Rを表し、ここで、Rは、前記R、Rと同じ意味を表し、複数のR同士は、すべて同一であっても、相異なっていてもよく、環を構成する任意のC-Rは、窒素原子に置き換えられていてもよい。)
で示される化合物を加えて前記式(III)で示される化合物と反応させる工程(3)を有する、下記式(A)
【化9】
(式中、Y、Y、A、R、R、X、Qおよびnは、前記と同じ意味を表す。)で示される重合性化合物の製造方法。
<2>前記工程(2)では、前記反応液に水または水溶液を添加して前記加水分解を行う、<1>に記載の重合性化合物の製造方法。
<3>前記工程(2)では、前記反応液に酸性水溶液を添加する、<2>に記載の重合性化合物の製造方法。
<4>前記酸性水溶液の酸成分が、無機酸および/または炭素数1~20の有機酸である、<3>に記載の重合性化合物の製造方法。
<5>前記酸性水溶液の酸成分が、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、スルホン酸類、スルフィン酸類、ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸およびリンゴ酸からなる群から選ばれる少なくとも一種である、<3>または<4>に記載の重合性化合物の製造方法。
<6>前記Rが、置換基を有していてもよい炭素数1~60のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2~60のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2~60のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい炭素数2~18の芳香族複素環基、または、Ra-Y-G-(式中、Raは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方を有する環状基を表し、Yは、化学的な単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-O-C(Rb)(Rc)-、-C(Rb)(Rc)-O-、-O-CH-CH-、-CH-CH-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR-C(=O)-、-C(=O)-NR-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-、-CH-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-CH-、-C(=O)-O-C(Rb)(Rc)-、-C(Rb)(Rc)-O-C(=O)-、-O-C(=O)-C(Rb)(Rc)-、-C(Rb)(Rc)-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR-、-NR-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-S-、-S-CH-C(=O)-O-、または、-O-C(=O)-O-を表し、ここで、Rは、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、RcおよびRbは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素環基、または、置換基を有していてもよい炭素数2~18の芳香族複素環基を表し、Gは、(i)炭素数1~20の2価の脂肪族炭化水素基、および、(ii)炭素数3~20の2価の脂肪族炭化水素基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR-C(=O)-、-C(=O)-NR-、-NR-、または、-C(=O)-に置換された基、のいずれかの有機基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)であり、ここで、Rは、水素原子、または、炭素数1~6のアルキル基を表す。)である、<1>~<5>の何れかに記載の重合性化合物の製造方法。
<7>前記Rが全て水素原子である、<1>~<6>の何れかに記載の重合性化合物の製造方法。
<8>前記工程(3)において、更に酸性水溶液を加えて反応を行う、<1>~<7>の何れかに記載の重合性化合物の製造方法。
<9>前記式(II)で示される化合物が、下記式(IIa)
【化10】
(式中、A、Lおよびnは、前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物である、<1>~<8>の何れかに記載の重合性化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、光学フィルム等の調製に使用し得る、前記式(A)で示される重合性化合を高収率で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、「置換基を有していてもよい」とは、「無置換の、または、置換基を有する」の意味である。また、一般式中に含まれるアルキル基や芳香族炭化水素環基等の有機基が置換基を有する場合、当該置換基を有する有機基の炭素数には、置換基の炭素数を含まないものとする。例えば、炭素数6~18の芳香族炭化水素環基が置換基を有する場合、炭素数6~18の芳香族炭化水素環基の炭素数には、このような置換基の炭素数を含まないものとする。一方、「Ra中の環構造に含まれるπ電子の数」には、置換基に含まれている環構造のπ電子も含まれるものとする。さらに、本発明において、「アルキル基」とは、鎖状(直鎖状または分岐状)の飽和炭化水素基を意味し、「アルキル基」には、環状の飽和炭化水素基である、「シクロアルキル基」は含まれないものとする。
【0012】
本発明は、有機溶媒中、塩基および/または脱水縮合剤の存在下、下記式(I)で示される化合物(以下、「化合物(I)」ということがある。)と、下記式(II)で示される化合物(以下、「化合物(II)」ということがある。)とをエステル化させて、下記式(III)で示される化合物(以下、「化合物(III)」ということがある。)を含む反応液を得る工程(1)、例えば水または水溶液を添加し、工程(1)で得られた反応液に含まれる化合物(II)または脱水縮合剤を加水分解する工程(2)、および、工程(2)の後、下記式(IV)で示される化合物(以下、「化合物(IV)」ということがある。)を添加して化合物(III)と反応させる工程(3)、を有することを特徴とする、下記式(A)で示される重合性化合物(以下、「重合性化合物(A)」ということがある。)の製造方法である。
【0013】
【化11】
【0014】
そして、本発明の製造方法では、工程(1)において化合物(I)と化合物(II)とを反応させて化合物(III)を得た後、工程(2)において化合物(II)または脱水縮合剤を加水分解しているので、工程(1)において化合物(I)と化合物(II)とを反応させた際に残存した化合物(II)(化合物(II)のLが脱離基(例えば、ハロゲン原子、有機スルホニルオキシ基等)の時)、或いは、工程(1)において使用し得る脱水縮合剤(化合物(II)のLが水酸基の時)を工程(2)において加水分解することができる。従って、本発明の製造方法によれば、工程(3)において化合物(III)と化合物(IV)とを反応させる際に、工程(1)で残存した化合物(II)または脱水縮合剤と化合物(IV)とが反応するのを防止して、式(A)で示される重合性化合物を高収率で得ることができる。
【0015】
(工程(1))
工程(1)は、有機溶媒中、化合物(I)と化合物(II)とを反応(エステル化反応)させて化合物(III)を含む反応液を得る工程である。なお、本発明の工程(1)の反応は、塩基および/または脱水縮合剤の存在下で行う。
【0016】
ここで、式(I)で示される化合物(I)において、Qは、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。なお、炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。中でも、Qは、水素原子であることが好ましい。
また、化合物(I)において、FgおよびFgは、それぞれ独立して、水酸基、-CHOH、または、-CHCHOHを表し、水酸基または-CHOHであることが好ましく、水酸基であることがより好ましい。
【0017】
式(II)で示される化合物(II)において、Aは、水素原子、メチル基または塩素原子を表し、水素原子であるのが好ましい。
また、化合物(II)において、Lは、水酸基または脱離基を表す。脱離基としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メタンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基、トリフルオロメチルスルホニルオキシ基、カンファースルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基等の有機スルホニルオキシ基;等が挙げられる。これらの中でも、低コストで、収率よく目的物が得られる観点から、ハロゲン原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
更に、化合物(II)において、nは、1~20のいずれかの整数を表す。nとしては、2~8の整数が好ましく、6がより好ましい。
なお、得られる重合性化合物を用いて調製した光学フィルム等の特性を高める観点からは、化合物(II)は、下記式(IIa)で示される化合物であることが好ましい。
【化12】
(式中、A、Lおよびnは、前記と同じ意味を表す。)
【0018】
工程(1)における化合物(I)と化合物(II)との使用割合は、化合物(I):化合物(II)のモル比で、1:2~1:4、好ましくは1:2~1:3であり、より好ましくは1:2~1:2.5であり、更に好ましくは1:2.01~1:2.5である。
なお、工程(1)では、化合物(II)として異なる2種の化合物(化合物(II-1)、化合物(II-2))を用い、段階的に反応を行えば、左右に異なる基を有する化合物(III)を得ることができる。すなわち、化合物(I)の1モルに、化合物(II-1)の1モルを反応させた後、化合物(II-2)の1モルを反応させることにより、左右に異なる基を有する化合物(III)を得ることができる。
【0019】
ここで、工程(I)において使用し得る塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(N,N-ジメチル-4-アミノピリジン)、2,6-ルチジン等の有機塩基;水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基;が挙げられる。
塩基の使用量は、化合物(II)1モルに対し、通常1~3モルである。
なお、式(II)で示される化合物(II)のLが脱離基(例えば、ハロゲン原子、有機スルホニルオキシ基等)である場合には、通常、工程(1)の反応は、塩基の存在下で行う。また、式(II)で示される化合物(II)のLが水酸基である場合には、工程(1)の反応は、塩基の存在下で行ってもよいし、塩基の不存在下で行ってもよい。
【0020】
また、工程(1)において使用し得る脱水縮合剤としては、N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N-ジイソプロピルカルボジイミド等が挙げられる。
なお、式(II)で示される化合物(II)のLが水酸基である場合には、通常、工程(1)の反応は、脱水縮合剤の存在下で行う。
【0021】
反応は有機溶媒中で行われる。用いる有機溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に限定されない。例えば、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶媒;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン等のエーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;および、これらの溶媒の2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。
これらの中でも、収率よく目的物が得られる観点から、塩素系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒等の有機溶媒が好ましい。
【0022】
有機溶媒の使用量は、特に限定されず、用いる化合物の種類や反応規模等を考慮して適宜定めることができるが、化合物(II)1gに対し、通常1~50gである。
【0023】
反応方法としては、(a)化合物(I)と、塩基および/または脱水縮合剤とを含む有機溶媒溶液に、化合物(II)または化合物(II)の有機溶媒溶液を添加する方法、(b)化合物(II)と、塩基および/または脱水縮合剤とを含む有機溶媒溶液に、化合物(I)または化合物(I)の有機溶媒溶液を添加する方法、(c)化合物(I)および化合物(II)の有機溶媒溶液に塩基および/または脱水縮合剤を添加する方法;等が挙げられ、収率よく目的物が得られることから、(a)の方法が好ましい。
【0024】
反応温度は、-20℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲、好ましくは-15℃~+30℃である。
反応時間は、反応規模にもよるが、通常、数分から数時間である。
得られる反応液は、上記温度を保ったまま、洗浄・抽出操作等することなく、そのまま次の工程(2)に供される。
【0025】
なお、化合物(I)および化合物(II)の多くは公知物質であり、公知の方法(例えば、国際公開第2014/010325号に記載の方法)で製造し、入手することができる。化合物(I)は、市販されているものをそのまま、或いは、所望により精製して用いることができる。
例えば、化合物(II)のうち、Lがハロゲン原子である化合物は、国際公開第2015/141784号に記載の方法により製造することができる。
【0026】
そして、工程(1)で得られる、式(III)で示される化合物(III)において、Q、Aおよびnは、前記化合物(I)および(II)と同じ意味を表す。
また、化合物(III)において、YおよびYは、それぞれ独立して、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-、または、-C(=O)-O-CH-CH-を表し、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-であることが好ましい。
なお、工程(1)では、化合物(II)として上記式(IIa)で示される化合物を使用し、化合物(III)として下記式(IIIa)で示される化合物を得ることが好ましい。
【化13】
(式中、Q、A、Y、Yおよびnは、前記と同じ意味を表す。)
【0027】
(工程(2))
工程(2)では、工程(1)において化合物(I)と化合物(II)とを反応させた際に残存した化合物(II)、或いは、工程(1)で使用した脱水縮合剤を加水分解する反応を行う。具体的には、工程(2)では、工程(1)で使用した化合物(II)のLが脱離基(例えば、ハロゲン原子、有機スルホニルオキシ基等)である場合には、残存した化合物(II)を加水分解し、工程(1)で使用した化合物(II)のLが水酸基である場合には、残存する脱水縮合剤を加水分解する。
なお、工程(2)における加水分解は、例えば、工程(1)で得られた反応液に水または水溶液を添加することにより行う。そして、工程(2)で添加する水の量は、残存した化合物(II)または脱水縮合剤を加水分解できる量であれば問題なく、反応当量以上であれば良いが、通常その1.05~500モル倍が好ましく、1.5~300モル倍がより好ましく、1.5~200モル倍が更に好ましい。
また、工程(2)では、水溶液を添加することが好ましい。ここで、水溶液としては、塩基性水溶液および酸性水溶液が挙げられ、酸性水溶液が好ましい。
【0028】
ここで、酸性水溶液としては、特に制限されないが、pH6以下の酸性水溶液が好ましく、pH2以下の酸性水溶液がより好ましい。
また、酸性水溶液の酸成分としては、塩酸、硫酸、リン酸、炭酸、ホウ酸、過塩素酸、硝酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、酪酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸類;シュウ酸、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸等のヒドロキシ酸類;p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、10-カンファースルホン酸等のスルホン酸類;ベンゼンスルフィン酸等のスルフィン酸類;等の有機酸が挙げられる。これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、化合物(II)を良好に加水分解する観点から、無機酸および/または炭素数1~20の有機酸が好ましく、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、スルホン酸類、スルフィン酸類、ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸およびリンゴ酸からなる群から選ばれる少なくとも一種がより好ましく、塩酸、スルホン酸類が更に好ましい。
酸性水溶液の濃度は、0.1mol/L~2mol/Lであるのが好ましく、0.5mol/L~1.5mol/Lであるのがより好ましい。酸性水溶液の濃度が上記下限値以上であれば、化合物(II)または脱水縮合剤を良好に加水分解することができる。また、酸性水溶液の濃度が上記上限値以下であれば、工程(1)で生成した化合物(III)の分解等の副反応を抑制することができる。
【0029】
酸性水溶液の使用量は、残存している化合物(II)または脱水縮合剤を加水分解することができ、且つ、後述の工程(3)で反応を触媒できるだけの量であることが好ましい。例えば、1.0規定の酸性水溶液であれば、化合物(II)10質量部に対し、1~50質量部、好ましくは5~50質量部である。酸性水溶液の使用量が上記下限値以上であれば、化合物(II)または脱水縮合剤を良好に加水分解させると共に工程(3)で反応を触媒することができる。また、酸性水溶液の使用量が上記上限値以下であれば、工程(1)で生成した化合物(III)の分解等の副反応を抑制することができる。
なお、後述の工程(3)で反応を触媒するのに必要な酸性水溶液は、化合物(II)または脱水縮合剤を加水分解させた後で更に加えてもよい。
【0030】
ここで、工程(2)における加水分解反応は、任意に、撹拌下において行うことができる。そして、工程(2)における反応時間は、化合物(II)または脱水縮合剤が十分に加水分解されれば特に制限されないが、例えば、1分以上5時間以下とすることができ、15分以上1時間以下とすることが好ましい。反応時間が上記下限値以上であれば、化合物(II)または脱水縮合剤を良好に加水分解することができる。また、反応時間が上記上限値以下であれば、工程(1)で生成した化合物(III)の分解等の副反応を抑制することができる。
また、工程(2)における反応温度は、化合物(II)または脱水縮合剤が十分に加水分解されれば特に制限されないが、例えば、-5℃以上50℃以下とすることができ、0℃以上50℃以下とすることが好ましい。反応温度が上記下限値以上であれば、化合物(II)または脱水縮合剤を良好に加水分解することができる。また、反応温度が上記上限値以下であれば、工程(1)で生成した化合物(III)の分解等の副反応を抑制することができる。
【0031】
そして、工程(2)では、Lが脱離基(例えば、ハロゲン原子、有機スルホニルオキシ基等)である場合には、残存していた化合物(II)が加水分解されてLが水酸基の式(II)で示される化合物となる。或いは、工程(2)では、Lが水酸基である場合は、例えば脱水縮合剤として用いたカルボジイミド化合物がウレア化合物に変換される。
なお、工程(2)を実施した後の反応液は、洗浄、抽出等の後処理操作等することなく、そのまま次の工程(3)に供し得る。
【0032】
(工程(3))
工程(3)は、工程(2)の後、化合物(IV)を添加して、化合物(III)と化合物(IV)とを反応させる工程である。
そして、本発明の製造方法では、工程(2)を実施した後に工程(3)を実施するので、工程(1)で残存した化合物(II)または脱水縮合剤と化合物(IV)とが反応するのを防止して、化合物(IV)の使用量が少量であっても式(A)で示される重合性化合物を高収率で得ることができる。
【0033】
ここで、式(IV)で示される化合物(IV)において、Xは、酸素原子、硫黄原子、-C(R)(R)-、または、-N-R-を表す。ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基を表す。
【0034】
、Rの、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基の炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、イソヘキシル基、3-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
また、炭素数1~10のアルキル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基等のアリール基;シクロプロピル基、シクロペンチル基等の炭素数3~8のシクロアルキル基;水酸基;等が挙げられる。
【0035】
これらの中でも、本発明の効果がより得られやすいことから、Xは、酸素原子、硫黄原子、または、-CH-であるのが好ましく、酸素原子または硫黄原子であるのがより好ましく、硫黄原子であるのが特に好ましい。
【0036】
また、化合物(IV)において、Rは、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~60の有機基を表す。
【0037】
ここで、炭素数1~60の有機基としては、例えば、炭素数1~60のアルキル基、炭素数2~60のアルケニル基、炭素数2~60のアルキニル基、炭素数6~18の芳香族炭化水素環基、および、炭素数2~18の芳香族複素環基等が挙げられる。
【0038】
炭素数1~60のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-へキシル基、n-ヘプチル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、1-メチルペンチル基、1-エチルペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果がより得られやすい点で、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、n-ブチル基、n-へキシル基、n-オクチル基がより好ましく、n-へキシル基が特に好ましい。
【0039】
炭素数2~60のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブチニル基等が挙げられ、炭素数2~12のアルケニル基が好ましい。
【0040】
炭素数2~60のアルキニル基としては、プロピニル基、プロパルギル基、ブチニル基等が挙げられ、炭素数2~12のアルキニル基が好ましい。
【0041】
炭素数6~18の芳香族炭化水素環基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
【0042】
炭素数2~18の芳香族複素環基としては、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピリミジル基、トリアジニル基、ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
【0043】
Rの、炭素数1~60の有機基の置換基としては、シアノ基;ニトロ基;水酸基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基で置換された炭素数1~6のアルコキシ基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数3~8のシクロアルキル基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、アセチルアミノ基、ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;等が挙げられる。
【0044】
また、炭素数1~60の有機基としては、式:Ra-Y-G-で示される基も挙げられる。
【0045】
ここで、Raは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方を有する環状基を表す。
これらの中でも、本発明の効果がより得られやすい点で、炭素数6~30の芳香族炭化水素環基がより好ましい。
【0046】
芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、フルオレン環等が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果がより得られやすい点で、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環がより好ましい。
【0047】
芳香族複素環としては、例えば、1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン環、1-ベンゾフラン環、2-ベンゾフラン環、アクリジン環、イソキノリン環、イミダゾール環、インドール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、オキサゾロピラジン環、オキサゾロピリジン環、オキサゾロピリダジル環、オキサゾロピリミジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、シンノリン環、チアジアゾール環、チアゾール環、チアゾロピラジン環、チアゾロピリジン環、チアゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、チオフェン環、トリアジン環、トリアゾール環、ナフチリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、ピラノン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピロール環、フェナントリジン環、フタラジン環、フラン環、ベンゾ[b]チオフェン環、ベンゾ[c]チオフェン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾトリアジン環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾピラゾール環、ペンゾピラノン環、キサンテン環等が挙げられる。
これらの中でも、芳香族複素環としては、フラン環、ピラン環、チオフェン環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環等の単環の芳香族複素環;および、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、1-ベンゾフラン環、2-ベンゾフラン環、ベンゾ[b]チオフェン環、1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン環、ベンゾ[c]チオフェン環、チアゾロピリジン環、チアゾロピラジン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、ベンゾチアジアゾール環、キサンテン環等の縮合環の芳香族複素環;が好ましい。
【0048】
Raが有する芳香族炭化水素環および芳香族複素環は置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換された炭素数1~6アルキル基;ジメチルアミノ基等の炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6~18の芳香族炭化水素環基;-OCF;-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-O-C(=O)-R;および-SO;等が挙げられる。ここで、Rは、(i)置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、(ii)置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルケニル基、(iii)置換基を有していてもよい炭素数3~12のシクロアルキル基、または、(iv)置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素環基を表す。また、Rは、メチル基、エチル基等の炭素数1~6のアルキル基;または、フェニル基、4-メチルフェニル基、4-メトキシフェニル基等の、炭素数1~6のアルキル基若しくは炭素数1~6のアルコキシ基を置換基として有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素環基を表す。
これらの中でも、Raが有する芳香族炭化水素環および芳香族複素環の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基が好ましい。
なお、Raは、上述した置換基から選ばれる複数の置換基を有していてもよい。Raが複数の置換基を有する場合、置換基は同一でも相異なっていてもよい。
【0049】
の、(i)置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基の炭素数1~20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、1-メチルペンチル基、1-エチルペンチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基等が挙げられる。
なお、(i)置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基の炭素数は、1~12であることが好ましく、1~10であることがさらに好ましい。
【0050】
の、(ii)置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルケニル基の炭素数2~20のアルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
なお、(ii)置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルケニル基の炭素数は、2~12であることが好ましい。
【0051】
の、(i)置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基の炭素数1~20のアルキル基および(ii)置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルケニル基の炭素数2~20のアルケニル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素数1~12のアルコキシ基で置換された炭素数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6~18の芳香族炭化水素環基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基、ベンゾチアゾール-2-イルチオ基等の、炭素数2~18の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数3~8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の炭素数2~12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6~14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CHCF等の、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1~12のフルオロアルキル基;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基;などが挙げられる。これらの中でも、Rの、(i)置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基の炭素数1~20のアルキル基および(ii)置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルケニル基の炭素数2~20のアルケニル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1~20のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6~18の芳香族炭化水素環基;フラニル基、チオフェニル基、ベンゾチアゾール-2-イルチオ基等の、炭素数2~18の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~8のシクロアルキル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CHCF等の、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1~12のフルオロアルキル基;が好ましい。
なお、Rの、(i)置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基の炭素数1~20のアルキル基および(ii)置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルケニル基の炭素数2~20のアルケニル基は、上述した置換基から選ばれる複数の置換基を有していてもよい。Rの、(i)置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基の炭素数1~20のアルキル基および(ii)置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルケニル基の炭素数2~20のアルケニル基が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は互いに同一でも相異なっていてもよい。
【0052】
の、(iii)置換基を有していてもよい炭素数3~12のシクロアルキル基の炭素数3~12のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。これらの中でも、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましい。
の、(iii)置換基を有していてもよい炭素数3~12のシクロアルキル基の炭素数3~12のシクロアルキル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6~18の芳香族炭化水素環基;などが挙げられる。これらの中でも、Rの、(iii)置換基を有していてもよい炭素数3~12のシクロアルキル基の炭素数3~12のシクロアルキル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6~18の芳香族炭化水素環基;が好ましい。
なお、Rの、(iii)置換基を有していてもよい炭素数3~12のシクロアルキル基の炭素数3~12のシクロアルキル基は、複数の置換基を有していてもよい。Rの、(iii)置換基を有していてもよい炭素数3~12のシクロアルキル基の炭素数3~12のシクロアルキル基が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は互いに同一でも相異なっていてもよい。
【0053】
の、(iv)置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素環基の炭素数6~18の芳香族炭化水素環基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。これらの中でも、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基がより好ましい。
の(iv)置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素環基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素数1~12のアルコキシ基で置換された炭素数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基等の、炭素数2~18の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数3~8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の炭素数2~12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6~14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CHCF等の、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1~12のフルオロアルキル基;-OCF;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基;などが挙げられる。これらの中でも、Rの(iv)置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素環基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1~20のアルコキシ基;ニトロ基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基等の、炭素数2~18の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~8のシクロアルキル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CHCF等の、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1~12のフルオロアルキル基;-OCF;から選ばれる少なくとも1つの置換基が好ましい。
なお、Rの、(iv)置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素環基の炭素数6~18の芳香族炭化水素環基は、複数の置換基を有していてもよい。Rの、(iv)置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素環基の炭素数6~18の芳香族炭化水素環基が複数の置換基を有する場合、置換基は同一でも相異なっていてもよい。
【0054】
ここで、Raの芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方を有する環状基の「炭素数」は、置換基の炭素原子を含まない芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方を有する有機基自体の炭素数を意味する。
Raが、複数の芳香族炭化水素環および/または複数の芳香族複素環を有する場合は、それぞれが同じであっても異なっていてもよい。
【0055】
前記Raは、炭素数6~30の芳香族炭化水素環および炭素数2~30の芳香族複素環の少なくとも一方を有する環状基であることが好ましい。
【0056】
Raの、炭素数6~30の芳香族炭化水素環および炭素数2~30の芳香族複素環の少なくとも一方を有する環状基の好ましい具体例を以下に示す。但し、本発明は以下に示すものに限定されるものではない。なお、下記式中、「-」は環の任意の位置からのび、Yとの結合手を表す。
【0057】
1)少なくとも一つの炭素数6~30の芳香族炭化水素環を有する、置換基を有していてもよい炭化水素環基の具体例としては、下記式(1-1)~(1-21)で表される構造が挙げられ、式(1-8)~(1-21)等で表される炭素数6~18の炭化水素環基が好ましい。なお、下記式(1-1)~(1-21)で表される基は置換基を有していてもよい。
【化14】
【化15】
【0058】
2)炭素数6~30の芳香族炭化水素環および炭素数2~30の芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、置換基を有していてもよい複素環基の具体例としては、下記式(2-1)~(2-51)で表される構造等が挙げられ、式(2-11)~(2-51)等で表される炭素数2~16の複素環基が好ましい。なお、下記式(2-1)~(2-51)で表される基は置換基を有していてもよい。
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
(各式中、Aは、-CH-、-NR-、酸素原子、硫黄原子、-SO-または-SO-を表し、
BおよびDは、それぞれ独立して、-NR-、酸素原子、硫黄原子、-SO-または-SO-を表し、
Eは、-NR-、酸素原子または硫黄原子を表す。
ここで、Rは、水素原子、または、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~6のアルキル基を表す。(但し、各式中において酸素原子、硫黄原子、-SO-、-SO-は、それぞれ隣接しないものとする。))
【0059】
上述した中でも、Raは、上記式(1-8)、式(1-11)、式(1-12)、式(1-13)、式(1-14)、式(1-15)、式(1-20)、式(2-9)~式(2-11)、式(2-24)~式(2-33)、式(2-35)~式(2-43)、式(2-47)および、式(2-49)~(2-51)で表される基のいずれかであることが好ましい。
【0060】
なお、Ra中の環構造に含まれるπ電子の総数は、4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、8以上であることが更に好ましく、10以上であることが特に好ましく、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましい。
【0061】
さらに、Raが下記(i-1)~(i-6)のいずれかであることが好ましい。なお、下記式(i-1)~(i-6)で表される基は置換基を有していてもよい。
【化20】
(式(i-4)中、Jは、-CH-、-NR-、酸素原子、硫黄原子、-SO-または-SO-を表し、Rは水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。)
【0062】
なお、Raの、炭素数6~30の芳香族炭化水素環および炭素数2~30の芳香族複素環の少なくとも一方を有する環状基は、1以上の置換基を有していてもよい。複数の置換基を有する場合は、複数の置換基は互いに同一でも相異なっていてもよい。
【0063】
Raの、炭素数6~30の芳香族炭化水素環および炭素数2~30の芳香族複素環の少なくとも一方を有する環状基が有する置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換された炭素数1~6アルキル基;ジメチルアミノ基等の炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6~18の芳香族炭化水素環基;-OCF;-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-O-C(=O)-R;-SO;などが挙げられる。ここでRおよびRは、前記と同じ意味を表し、その好適例も前記と同じである。そして、複数の置換基を有する場合は、複数の置換基は互いに同一でも相異なっていてもよい。
これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~6のアルキル基、および、炭素数1~6のアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つの置換基が好ましい。
【0064】
また、Yは、化学的な単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-O-C(Rb)(Rc)-、-C(Rb)(Rc)-O-、-O-CH-CH-、-CH-CH-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR-C(=O)-、-C(=O)-NR-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-、-CH-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-CH-、-C(=O)-O-C(Rb)(Rc)-、-C(Rb)(Rc)-O-C(=O)-、-O-C(=O)-C(Rb)(Rc)-、-C(Rb)(Rc)-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR-、-NR-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-S-、-S-CH-C(=O)-O-、または、-O-C(=O)-O-を表す。ここで、Rは、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、RcおよびRbは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素環基、または、置換基を有していてもよい炭素数2~18の芳香族複素環基を表す。
【0065】
Yとしては、これらの中でも、本発明の効果がより得られやすい点で、化学的な単結合、-O-、-O-C(Rb)(Rc)-、-C(Rb)(Rc)-O-、-O-CH-CH-、-CH-CH-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-CH-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-CH-、-C(=O)-O-C(Rb)(Rc)-、-C(Rb)(Rc)-O-C(=O)-、-O-C(=O)-C(Rb)(Rc)-、-C(Rb)(Rc)-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR-、-NR-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-S-、-S-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、が好ましく、化学的な単結合、-O-、-O-C(Rb)(Rc)-、-C(Rb)(Rc)-O-、-O-CH-CH-、-CH-CH-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-CH-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-CH-、-C(=O)-O-C(Rb)(Rc)-、-C(Rb)(Rc)-O-C(=O)-、-O-C(=O)-C(Rb)(Rc)-、-C(Rb)(Rc)-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR-、-NR-C(=O)-O-、-S-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-S-がより好ましく、化学的な単結合、-O-、-O-C(Rb)(Rc)-、-C(Rb)(Rc)-O-、-O-CH-CH-、-CH-CH-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-CH-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-CH-、-C(=O)-O-C(Rb)(Rc)-、-C(Rb)(Rc)-O-C(=O)-、-O-C(=O)-C(Rb)(Rc)-、-C(Rb)(Rc)-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR-、-NR-C(=O)-O-、-S-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-S-が特に好ましい。
ここで、Rは、(i)水素原子、または、(ii)メチル基、エチル基等の炭素数1~6のアルキル基を表し、これらの中でも、Rは、水素原子が好ましい。
Rc、Rbは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素環基、または、置換基を有していてもよい炭素数2~18の芳香族複素環基を表す。Rc、Rbは、互いに同一であってもよく、相異なっていてもよい。
RbおよびRcの、置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素環基、または、置換基を有していてもよい炭素数2~18の芳香族複素環基、の具体例としては、前記Raと同様のもののうちそれぞれ規定された炭素数のものが挙げられる。Rb、Rcの有する置換基としては、前記Raが有する置換基と同様のものが挙げられ、その好ましいものも同様である。また、複数の置換基を有する時には、同一であっても、相異なっていても構わない。
Rc、Rbは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素環基が好ましく、さらに、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはナフチル基が好ましく、さらに、RcおよびRbの両方が同時に水素原子である組み合わせ、水素原子とフェニル基である組み合わせ、または、水素原子とナフチル基の組み合わせが特に好ましい。
Ra-Y-の好ましい組み合わせとしては、
Raが、前記一般式(i-1)~(i-6)から選択され、Yが、化学的な単結合、-O-Z、-O-C(Rb)(Rc)-Z、-C(Rb)(Rc)-O-Z、-O-CH-CH-Z、-CH-CH-O-Z、-C(=O)-O-Z、-O-C(=O)-Z、-CH-CH-C(=O)-O-Z、-O-C(=O)-CH-CH-Z、-C(=O)-O-C(Rb)(Rc)-Z、-C(Rb)(Rc)-O-C(=O)-Z、-O-C(=O)-C(Rb)(Rc)-Z、-C(Rb)(Rc)-C(=O)-O-Z、-NR-C(=O)-O-Z、-S-CH-C(=O)-O-Zから選択される組み合わせが好ましく、
Raが、前記一般式(i-1)~(i-6)から選択され、Yが、化学的な単結合、-O-Z、-C(Rb)(Rc)-O-Z、-CH-CH-O-Z、-C(=O)-O-Z、-O-C(=O)-Z、-CH-CH-C(=O)-O-Z、-C(Rb)(Rc)-O-C(=O)-Z、-C(Rb)(Rc)-C(=O)-O-Z、-NR-C(=O)-O-Z、-S-CH-C(=O)-O-Zから選択される組み合わせがより好ましく、
更に、Ra-Y-は、下記式(ii-1)~(ii-45)のいずれかであることが特に好ましく、(iii-1)~(iii-46)のいずれかであることが最も好ましい。なお、Rb、Rcは前記と同じ意味を表し、ZはGと結合する方向を示している。また、下記式(ii-1)~(ii-45)で表される基、および、(iii-1)~(iii-46)で表される基中の「●」は、Gとの結合部位を示す。
下記式(ii-1)~(ii-45)で表される基および(iii-1)~(iii-46)で表される基は置換基を有していてもよい。
なお、下記式(ii-26)~(ii-32)および下記式(iii-26)~(iii-32)中、Jは、-CH-、-NR-、酸素原子、硫黄原子、-SO-または-SO-を表し、Rは水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。
【化21】
【化22】
【0066】
Gは、置換基を有していてもよい炭素数1~20の2価の有機基であり、好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数3~20の2価の有機基である。
Gは、より好ましくは、(i)置換基を有していてもよい炭素数1~20の2価の脂肪族炭化水素基、および、(ii)置換基を有していてもよい炭素数3~20の2価の脂肪族炭化水素基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR-C(=O)-、-C(=O)-NR-、-NR-、または、-C(=O)-に置換された基、のいずれかの有機基である。ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く(即ち、-O-O-および-S-S-の構造を形成しない)。
ここで、Rは、水素原子、または、炭素数1~6のアルキル基を表す。これらの中でも、水素原子、または、メチル基が好ましい。また、Gの前記有機基が有する置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~5のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1~5のアルコキシ基;シアノ基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;が挙げられる。
ここで、Gに関し、前記「2価の脂肪族炭化水素基」は、2価の鎖状の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、アルキレン基であることがより好ましい。また、前記「2価の脂肪族炭化水素基」の炭素数は、3~20であることが好ましく、3~18であることがより好ましい。そして、前記「2価の脂肪族炭化水素基」は、炭素数2~20の2価の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数2~18の2価の鎖状の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数3~18のアルキレン基であることがより好ましい。
【0067】
Gの炭素数は、4~16が好ましく、5~14が更に好ましく、6~12が特に好ましく、6~10が最も好ましい。
【0068】
Gの構造としては、炭素数4~16の無置換のアルキレン基が好ましく、炭素数5~14の無置換のアルキレン基がより好ましく、炭素数6~12の無置換のアルキレン基がさらに好ましく、炭素数6~10の無置換のアルキレン基が特に好ましく、n-ヘキシレン基、n-オクチレン基が最も好ましい。
【0069】
なお、Gの炭素数が3以上の場合、Gの両末端は-CH-であること(Gの両末端が置換されていないこと)が好ましい。また、「(ii)炭素数3~20の2価の脂肪族炭化水素基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR-C(=O)-、-C(=O)-NR-、-NR-、または、-C(=O)-に置換された基」において、-C(=O)-は、脂肪族炭化水素基中の連続した-CH-を置換しない(すなわち、-C(=O)-C(=O)-の構造を形成しない)ことが好ましい。
炭素数3~20の2価の脂肪族炭化水素基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR-C(=O)-、-C(=O)-NR-、-NR-、または、-C(=O)-に置換される場合、-O-で置換されることが最も好ましく、炭素数2ごとに-O-に置換される、いわゆるエチレンオキシを繰り返し単位とし、Gの両末端は-CH-であることが好ましい。
【0070】
Gとしては、(i)「置換基を有していてもよい炭素数1~18、好ましくは炭素数3~18の2価の鎖状の脂肪族炭化水素基、および、置換基を有していてもよい炭素数3~18の2価の鎖状の脂肪族炭化水素基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、または、-C(=O)-に置換された基、のいずれかの有機基であり、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除くこと」が好ましく、(ii)「置換基を有していてもよい炭素数3~18の2価の鎖状の脂肪族炭化水素基であること」がより好ましく、(iii)「置換基を有していてもよい炭素数3~18のアルキレン基」がさらに好ましく、(iv)「炭素数4~16の無置換のアルキレン基」がさらにより好ましく、(v)「炭素数5~14の無置換のアルキレン基」がさらにより好ましく、(vi)「炭素数6~12の無置換のアルキレン基」がさらにより好ましく、(vii)「炭素数6~10の無置換のアルキレン基」が特に好ましく、「n-ヘキシレン基、n-オクチレン基」が最も好ましい。Gの上記置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~5のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~5のアルコキシ基;シアノ基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子が挙げられる。
【0071】
は、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~6のアルキル基;シアノ基;ニトロ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換された炭素数1~6アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等の少なくとも1個の水素原子が硫黄原子で置換された炭素数1~6のアルキルチオ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、アセチルアミノ基等の一置換アミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、フェニルメチルアミノ基等の二置換アミノ基;-OCF;-C(=O)-O-R;または、-O-C(=O)-Rを表す。ここで、Rは、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基を表し、メチル基、エチル基が好ましい。Rの置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基としては、R、Rの置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基と同じものが挙げられ、その好適例も同じである。
これらの中でも、Rが、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基であることが好ましく、Rの全てが水素原子であることがより好ましい。
【0072】
は、すべて同一であっても、相異なっていてもよく、環を構成する少なくとも1つのC-Rは窒素原子に置き換えられていてもよい。C-Rのうちの少なくとも1つが窒素原子に置き換えられた基の具体例を下記に示す。但し、C-Rのうちの少なくとも1つが窒素原子に置き換えられた基はこれに限定されるものではない。
【化23】
(式中、R、XおよびRは、前記と同じ意味を表す。)
【0073】
工程(3)における化合物(IV)の使用量は、化合物(III)との割合が、化合物(III):化合物(IV)のモル比で、好ましくは1:1~1:2、より好ましくは1:1~1:1.5となる量である。
【0074】
工程(2)において反応液に水または水溶液を添加して加水分解を行った場合、工程(3)の反応は、通常、工程(2)で反応液に水または水溶液を添加してなる混合液に化合物(IV)を添加して行うが、工程(3)の反応は、工程(2)で加えた水または水溶液を抜き出した後に化合物(IV)を添加して行ってもよい。また、工程(3)では、反応を触媒するための酸性水溶液を新たに添加しても良く、特に、工程(2)で加えた水または水溶液を抜き出す場合には、反応を触媒するための酸性水溶液を新たに添加することが好ましい。なお、新たに添加する酸性水溶液としては、工程(2)において使用し得るものとして列挙したものと同様のものを用いることができる。
上述した中でも、工程(3)では、工程(2)で得られた反応液を、洗浄、抽出等の後処理操作等をすることなく、そのまま使用する(即ち、工程(2)で得られる混合液に化合物(IV)を添加する)と、コスト削減が図られるため好ましい。その際には、工程(2)において、酸性水溶液を用いることが特に好ましい。工程(2)で添加した酸性水溶液を工程(3)の反応の触媒として効率的に利用し得るからである。
【0075】
化合物(IV)は、所望により、適当な有機溶媒に溶解してから添加してもよい。用いる有機溶媒は、前記工程(1)で例示したのと同様のものを使用することができる。
なお、化合物(IV)は、例えば、国際公開第2015/141784号や特開2016-190818号公報に記載の方法により製造することができる。
【0076】
ここで、本発明においては、工程(1)で用いる有機溶媒(第1の有機溶媒)、および、工程(3)で化合物(IV)を有機溶媒溶液の形態で添加する場合に用いる有機溶媒(第2の有機溶媒)の少なくとも一方が、水非混和性有機溶媒であることが好ましい。第1の有機溶媒及び/又は第2の有機溶媒として水非混和性有機溶媒を用いることで、高純度の重合性化合物(A)をより高収率で得ることができる。
【0077】
ここで「水非混和性有機溶媒」は、20℃の水への溶解度が、10g(有機溶媒)/100mL(水)以下、好ましくは1g(有機溶媒)/100mL(水)以下、更に好ましくは0.1g(有機溶媒)/100mL(水)以下の有機溶媒である。
水非混和性有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等のエステル類;塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素類;ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;等が挙げられる。
【0078】
工程(3)の反応温度は、-20℃から用いる溶媒の沸点まで、好ましくは0℃~80℃である。反応時間は、反応規模にもよるが、通常、数分から10時間である。
【0079】
反応終了後、反応液が有機層と水層の2層に分離する場合には、必要に応じて、水(食塩水)および水非混和性有機溶媒を添加し、分液して有機層を分取する。
また、反応液が2層に分離しない場合には、必要に応じて、水(食塩水)および水非混和性有機溶媒を添加し、分液して有機層を分取する。
いずれの場合にも、得られた有機層に対して有機合成化学における通常の後処理操作を行い、所望により、沈澱法、再結晶法、蒸留法、カラムクロマトグラフィー等の公知の分離・精製手段を施すことにより、目的とする重合性化合物(A)を単離することができる。
【0080】
工程(3)では、イオン性不純物の低減、不溶分(高分子量体)の除去のため、吸着剤または濾過助剤、あるいは、それらの両方組み合わせて使用することができる。
ここで用いられる吸着剤としては、活性炭、シリカゲル(主成分SiO)、合成吸着剤(主成分MgO、Al、SiO)、活性白土、アルミナ、イオン交換樹脂、吸着樹脂等が挙げられる。
濾過助剤としては珪藻土、シリカゲル(主成分SiO)、合成ゼオライト、パーライト、ラジオライト等が挙げられる。
【0081】
中でも、本発明においては、簡便な操作により収率よく、高純度の目的物を得ることができる観点から、得られた有機層を濃縮して、濃縮液から目的物の結晶を析出させる方法、または、得られた有機層を濃縮し、濃縮液に貧溶媒を添加して目的物の結晶を析出させる方法、のいずれかが好ましい。
後者の方法で用いる貧溶媒としては、水;メタノール、エタノール等のアルコール類;等が挙げられる。
【0082】
また、得られた結晶を再結晶法により精製することも好ましい。
再結晶法は、得られた(粗)結晶を、少量の溶媒に溶かし(溶け残りがあるようにする)、このものを加熱して完全に溶かし、熱時ろ過して不溶物を除去し、その後、ろ液を冷却して、結晶を析出させる方法である。
再結晶に用いる溶媒としては、沈澱法で例示した貧溶媒と、テトラヒドロフラン等のエーテル類が挙げられる。
また、再結晶溶媒に、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール等の酸化防止剤を添加することも、高純度品を得る上で好ましい。酸化防止剤の添加量は、目的物の結晶100gに対して、1~500mgである。
【0083】
目的物の構造は、NMRスペクトル、IRスペクトル、マススペクトル等の測定、元素分析等により、同定することができる。
【0084】
本発明によれば、工程(3)において式(A)で示される重合性化合物(A)を高収率で得ることができる。なお、重合性化合物(A)において、Y、Y、A、R、R、X、Qおよびnは、前記と同じ意味を表す。
そして、本発明により得られる重合性化合物(A)を用いれば、例えば、配向欠陥がない高品質な液晶層を形成することができる。
なお、本発明においては、化合物(II)として上記式(IIa)で示される化合物を使用し、重合性化合物(A)として下記式(Aa)で示される重合性化合物を得ることが好ましい。
【化24】

(式中、Y、Y、A、R、R、X、Qおよびnは、前記と同じ意味を表す。)
【実施例
【0085】
以下、本発明を、実施例によりさらに詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例により何ら制限されるものではない。
【0086】
(実施例1)重合性化合物1の合成
【化25】
【0087】
ステップ1:中間体Aの合成
【化26】
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、trans-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸90g(0.52mol)とテトラヒドロフラン(THF)800mlを加えた。そこへ、メタンスルホニルクロライド33g(0.29mol)を加え、反応器を水浴に浸して反応器内温を20℃とした。次いで、トリエチルアミン31.7g(0.31mol)を、反応器内温を20~30℃に保持しながら、30分間かけて滴下した。滴下終了後、全容を25℃で2時間さらに攪拌した。得られた反応液に、4-(ジメチルアミノ)ピリジン3.2g(26.2mmol)、及び、特開2015-140302号公報を参考に合成した4-(6-アクリロイルオキシ-ヘクス-1-イルオキシ)フェノール69g(0.26mol)を加え、再度反応器を水浴に浸して反応器内温を15℃とした。そこへ、トリエチルアミン31.7g(0.31mmol)を、反応器内温を20~30℃に保持しながら、30分間かけて滴下し、滴下終了後、全容を25℃でさらに2時間攪拌した。反応終了後、反応液に蒸留水4000mlと飽和食塩水500mlを加え、酢酸エチル1000mlで2回抽出した。有機層を集め、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、硫酸ナトリウムをろ別した。ロータリーエバポレーターにてろ液から溶媒を蒸発除去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(THF:トルエン=1:9(体積比、以下にて同じ。))により精製することで、白色固体として中間体Aを70.6g得た。収率65%。
【0088】
目的物の構造は、H-NMRで同定した。
H-NMR(500MHz,DMSO-d,TMS,δppm):12.12(s,1H)、6.99(d,2H,J=9.0Hz)、6.92(d,2H,J=9.0Hz)、6.32(dd,1H,J=1.5Hz,17.5Hz)、6.17(dd,1H,J=10.0Hz,17.5Hz)、5.93(dd,1H,J=1.5Hz,10.0Hz)、4.11(t,2H,J=6.5Hz)、3.94(t,2H,J=6.5Hz)、2.48-2.56(m,1H)、2.18-2.26(m,1H)、2.04-2.10(m,2H)、1.93-2.00(m,2H)、1.59-1.75(m,4H)、1.35-1.52(m,8H)。
【0089】
ステップ2:中間体Bの合成
【化27】
特開2016-190818号公報を参考に中間体Bを合成した。
【0090】
目的物の構造はH-NMRで同定した。
H-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):7.60(dd,1H,J=1.0Hz,8.0Hz)、7.53(dd,1H,J=1.0Hz,8.0Hz)、7.27(ddd,1H,J=1.0Hz,8.0Hz,8.0Hz)、7.06(ddd,1H,J=1.0Hz,8.0Hz,8.0Hz)、4.22(s,2H)、3.74(t,2H,J=7.5Hz)、1.69-1.76(m,2H)、1.29-1.42(m,6H)、0.89(t,3H,J=7.0Hz)。
【0091】
ステップ3:中間体Cの合成
【化28】
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、前記ステップ1で合成した中間体A30g(71.7mmol)及びクロロホルム300g、N,N-ジメチルホルムアミド10.5g(143.4mmol)を加えて、10℃以下に冷却した。そこへ、塩化チオニル9.81g(82.44mmol)を、反応温度を10℃以下に保持しながら滴下した。滴下終了後、反応液を25℃に戻して1時間撹拌した。反応終了後、エバポレーターにてクロロホルム225gを抜き出して濃縮して、クロロホルム溶液として合成した。
【0092】
ステップ4:重合性化合物1の合成
温度計を備えた3口反応器内で、窒素気流中、2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド4.5g(32.58mmol)、トリエチルアミン19.78g(195.5mmol)を150gのクロロホルムに溶解させ、得られた溶液を10℃以下まで冷却した。この溶液に、ステップ3で合成した中間体Cのクロロホルム溶液の全量を反応温度を10℃以下に保持しながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、さらに、全容を5~10℃で1時間撹拌した(工程(1))。
反応終了後、10℃以下に保持しながら、反応液に、1.0規定の塩酸水溶液120gを加えた。その後、10℃以下で30分撹拌して反応を行った(工程(2))。
反応終了後、前記ステップ2で合成した中間体B10.58g(42.4mmol)、2,6-ジターシャリーブチル-パラ-クレゾール0.3gを加えた。その後、反応液を40℃に昇温して4時間反応を行った(工程(3))。
反応終了後、水層を抜き出した。更に有機層に蒸留水105gを投入して有機層を40℃にて30分撹拌して洗浄した。水層を抜き出した後、有機層を25℃に冷却して、ロカヘルプ#479を1.5g加えて30分撹拌した。その後、1gのロカヘルプ#479を敷いた桐山ロートでろ過を行い、ロカヘルプ#479を除去した。得られた有機層からロータリーエバポレーターにてクロロホルムを180g抜き出して、濃縮を行った。得られた有機層にヘキサン210gを1時間かけて加えて固体を析出させ、ろ過により淡黄色固体を得た。得られた淡黄色固体を25℃にてテトラヒドロフラン120gに溶解させて、ロカヘルプ#479を1.5g加えて30分撹拌した。その後、1gのロカヘルプ#479を敷いた桐山ロートでろ過を行い、ロカヘルプ#479を除去した。得られた有機層に15℃にて165gのメタノールをゆっくりと滴下して、固体を析出させ、ろ過を行い、固体を得た。得られた固体を真空乾燥機にて乾燥して重合性化合物1を淡黄色固体として、32.4g得た。収率は85%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0093】
目的物の構造はH-NMRで同定した。
H-NMR(400MHz,CDCl,TMS,δppm):7.75(d,1H,J=2.5Hz)、7.67-7.70(m,3H)、7.34(ddd,1H,J=1.0Hz,7.0Hz,7.5Hz)、7.17(ddd,1H,J=1.0Hz,7.5Hz,7.5Hz)、7.12(d,1H,J=9.0Hz)、7.10(dd,1H,J=2.5Hz,9.0Hz)、6.99(d,2H,J=9.0Hz)、6.98(d,2H,J=9.0Hz)、6.88(d,4H,J=9.0Hz)、6.40(dd,2H,J=1.5Hz,17.0Hz)、6.13(dd,2H,J=10.5Hz,17.5Hz)、5.82(dd,2H,J=1.5Hz,10.5Hz)、4.30(t,2H,J=8.0Hz)、4.18(t,4H,J=6.5Hz)、3.95(t,4H,J=6.5Hz)、2.58-2.70(m,4H)、2.31-2.35(m,8H)、1.66-1.82(m,18H)、1.31-1.54(m,14H)、0.90(t,3H,J=7.0Hz)。
【0094】
(実施例2)重合性化合物1の合成
ステップ1:中間体Cの合成
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、前記実施例1のステップ1で合成した中間体A30g(71.7mmol)及びトルエン300g、N,N-ジメチルホルムアミド5.5gを加えて、10℃以下に冷却した。そこへ、塩化チオニル8.96g(75.3mmol)を、反応温度を10℃以下に保持しながら滴下した。滴下終了後、反応液を25℃に戻して1時間撹拌した。反応終了後、エバポレーターにて反応液の量が半分になるまで濃縮した。その後、抜き出した量と同じ量のトルエンを加えて、エバポレーターにて反応液の量が半分になるまで濃縮した。この操作を3回繰り返し、トルエン溶液として合成した。
【0095】
ステップ2:重合性化合物1の合成
温度計を備えた3口反応器内で、窒素気流中、2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド4.13g(29.9mmol)、トリエチルアミン7.62 g(75.4mmol)を150gのテトラヒドロフランに溶解させ、得られた溶液を10℃以下まで冷却した。この溶液に、ステップ1で合成した中間体Cのトルエン溶液150gを、反応温度を10℃以下に保持しながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、さらに、全容を5~10℃で1時間撹拌した(工程(1))。
反応終了後、10℃以下に保持しながら、反応液に、1.0規定の塩酸水溶液30gを加えて10℃以下で30分撹拌した(工程(2))。
その後、前記実施例1のステップ2で合成した、中間体B9.7g(38.9mmol)を加えて、40℃に昇温して4時間反応を行った(工程(3))。
反応終了後、反応液を25℃まで冷却し、酢酸エチル300g、10質量%食塩水300gを加えて分液操作を行った。得られた有機層はさらに2質量%の食塩水300gで2回洗浄した。
得られた有機層から、総質量の約15%をエバポレーターにて抜き出して濃縮した。この溶液を25℃にした後、ここに、メタノール300g、水60gの混合溶媒をゆっくりと滴下した。その後、10℃まで冷却して固体を析出させ、ろ過により固体を得た。得られた固体に、テトラヒドロフラン240g、メタノール240g、及び、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール20mgを加え、全容を50℃に昇温して均一な溶液とした。この溶液を50℃にて熱時ろ過し、得られたろ液をゆっくりと10℃まで冷却し、再結晶を行った。ろ過により結晶を得て、真空乾燥機にて乾燥して、淡黄色固体として重合性化合物1を28.3g得た。収率は81%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0096】
(実施例3)重合性化合物1の合成
ステップ1:混合物1の合成
【化29】
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、trans-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド16.6g(79.40mmol)と、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)120gと、テトラヒドロフラン46gとを加えた。そこへ、特開2015-140302号公報を参考に合成した4-(6-アクリロイルオキシ-ヘクス-1-イルオキシ)フェノール20g(75.67mmol)、2,6-ジターシャリーブチル-パラ-クレゾール0.33gを加え、反応器を氷浴に浸して反応器内温を0℃とした。次いで、トリエチルアミン8.0g(79.45mmol)を、反応器内温を10℃以下に保持しながら、30分間かけてゆっくり滴下した。滴下終了後、全容を10℃以下に保持しながら1時間さらに攪拌した。
得られた反応液に、蒸留水50gを加えた。この反応液を50℃に昇温した後、2時間洗浄(加水分解反応)した後、水層を抜き出した。この水による洗浄(加水分解反応)を合計3回、合計6時間実施した。得られた有機層を40℃に冷却した後、さらに、濃度1mol/Lの酢酸と酢酸ナトリウムからなる緩衝溶液(pH:5.5)83.2gを加えて、撹拌することで洗浄した。その後、緩衝溶液層(水層)を抜き出し、有機層を得た。この緩衝溶液による洗浄操作を合計5回行った。得られた有機層にさらに、蒸留水50gで洗浄を行った後、水層を抜き出した。この蒸留水による洗浄を合計2回実施した。得られた有機層に、40℃にてn-ヘキサン240gを加えた後、0℃まで冷却して結晶を析出させた。その後、析出した結晶をろ過によりろ取した。ろ過物をn-ヘキサンで洗浄後、真空乾燥させて、白色固体として混合物1を26.91g得た。
【0097】
得られた結晶をHPLCにて分析を行い、検量線にてモノエステルとジエステルの定量を行ったところ、目的物であるモノエステルが、68.34質量%(43.95mmol)含まれていることが分かった。また、得られた結晶を13C-NMR(ジオキサン-d)にて分析を行い、シクロヘキサンジカルボン酸の含量を算出したところ、検出限界以下であった。
【0098】
ステップ2:重合性化合物1の合成
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、前記ステップ1で合成した混合物1:26.91g、クロロホルム183.9g、及び、N,N-ジメチルホルムアミド6.4gを加えて、10℃以下に冷却した。そこへ、塩化チオニル6.0g(50.54mmol)を反応温度が10℃以下になるように制御して滴下した。滴下終了後、反応液を25℃に戻して1時間撹拌した。反応終了後、エバポレーターにて減圧下、クロロホルムを138g抜き出した。その後、新たにクロロホルム46gを加えて、クロロホルム溶液(1)を得た。別途、温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド2.76g(20.0mmol)、トリエチルアミン12.13g(119.8mmol)を92gのクロロホルムに溶解させ、10℃以下まで冷却した。この溶液に、前記クロロホルム溶液(1)を、反応器内温を10℃以下に保持しながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、反応液を10℃以下に保持しながらさらに1時間反応を行った(工程(1))。
反応終了後、温度10℃以下のまま、反応液に、1.0規定の塩酸水溶液725gを加えて10℃以下で30分撹拌した(工程(2))。
その後、実施例1のステップ2で合成した中間体B6.48g(26.0mmol)、2,6-ジターシャリーブチル-パラ-クレゾール0.33gを加えて、40℃に昇温して4時間反応を行った(工程(3))。
反応終了後、40℃にて水層を抜き出して分液操作を行った。得られた有機層にロカヘルプ#479(三井金属鉱業社製)0.92gを加え、25℃にて30分撹拌した後、0.6gのロカヘルプ#479を敷いたろ過器でろ別した。ろ過器は9.2gのクロロホルムで洗浄して、先に得たろ液と一緒にした。次いで、得られた有機層からエバポレーターにて減圧下で110gのクロロホルムを抜き出して濃縮した。この溶液にテトラヒドロフラン33gを加えた後、攪拌しながら15℃に冷却した。次いで、この溶液に60%ヘキサン(株式会社ゴードー製)129gをゆっくり滴下した。そのままの温度で30分撹拌して固体を析出させた。その後、析出した固体をろ過によりろ取した。
得られた固体に、テトラヒドロフラン88.3g、ロカヘルプ#479:1.1g、及び、2,6-ジターシャリーブチル-パラ-クレゾール0.33gを加えて25℃にて30分撹拌した後、0.66gのロカヘルプ#479を敷いたろ過器でろ別した。ろ過器は44gのテトラヒドロフランで洗浄して、先に得たろ液と一緒にした。次いで、得られた有機層から、エバポレーターにてテトラヒドロフラン110gを留去した。得られた溶液を15℃にして、メタノール121gをゆっくり滴下した。そのままの温度で30分撹拌して固体を析出させた。その後、析出した固体をろ過によりろ取した。ろ過物をメタノールで洗浄後、真空乾燥させて、淡黄色固体として重合性化合物1を19.4g得た。収率は83%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0099】
(実施例4)重合性化合物1の合成
実施例1のステップ4において、トリエチルアミン19.78g(195.5mmol)を2,6-ルチジン20.97g(195.7mmol)に変えた以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、淡黄色固体として重合性化合物1を34.7g得た。収率は91%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0100】
(実施例5)重合性化合物1の合成
実施例3のステップ2において、トリエチルアミン12.13g(119.8mmol)を2,6-ルチジン12.8g(120.0mmol)に変えた以外は実施例3と同様の操作を行った。その結果、淡黄色固体として重合性化合物1を21.1g得た。収率は90%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0101】
(実施例6)重合性化合物1の合成
実施例3のステップ2において、1.0規定の塩酸水溶液725gを1.0規定のメタンスルホン酸水溶液700gに変えた以外は実施例3と同様の操作を行った。その結果、淡黄色固体として重合性化合物1を19.9g得た。収率は85%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0102】
(実施例7)重合性化合物1の合成
実施例3のステップ2において、トリエチルアミン12.13g(119.8mmol)を2,6-ルチジン12.8g(120.0mmol)に変えると共に、1.0規定の塩酸水溶液725gを1.0規定のメタンスルホン酸水溶液700gに変えた以外は実施例3と同様の操作を行った。その結果、淡黄色固体として重合性化合物1を20.6g得た。収率は88%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0103】
(比較例1)重合性化合物1の合成
ステップ1~3:実施例1のステップ1~3と同様の操作を行った。
【0104】
ステップ4:重合性化合物1の合成
温度計を備えた3口反応器内で、窒素気流中、2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド4.5g(32.58mmol)、トリエチルアミン19.78g(195.5mmol)を150gのクロロホルムに溶解させ、得られた溶液を10℃以下まで冷却した。この溶液に、ステップ3で合成した中間体Cのクロロホルム溶液の全量を反応温度を10℃以下に保持しながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、さらに、全容を5~10℃で1時間撹拌した(工程(1))。
反応終了後、10℃以下に保持しながら、反応液に、1.0規定の塩酸水溶液120gと、ステップ2で合成した中間体B10.58g(42.4mmol)と、2,6-ジターシャリーブチル-パラ-クレゾール0.3gとを加えた。その後、反応液を40℃に昇温して4時間反応を行った(工程(3))。
反応終了後、水層を抜き出した。更に有機層に蒸留水105gを投入して有機層を40℃にて30分撹拌して洗浄した。水層を抜き出した後、有機層を25℃に冷却して、ロカヘルプ#479を1.5g加えて30分撹拌した。その後、1gのロカヘルプ#479を敷いた桐山ロートでろ過を行い、ロカヘルプ#479を除去した。得られた有機層からロータリーエバポレーターにてクロロホルムを180g抜き出して、濃縮を行った。得られた有機層にヘキサン210gを1時間かけて加えて固体を析出させ、ろ過により淡黄色固体を得た。得られた淡黄色固体を25℃にてテトラヒドロフラン120gに溶解させて、ロカヘルプ#479を1.5g加えて30分撹拌した。その後、1gのロカヘルプ#479を敷いた桐山ロートでろ過を行い、ロカヘルプ#479を除去した。得られた有機層に15℃にて165gのメタノールをゆっくりと滴下して、固体を析出させ、ろ過を行い、固体を得た。得られた固体を真空乾燥機にて乾燥して重合性化合物1を淡黄色固体として、27.5g得た。収率は72%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0105】
(比較例2)重合性化合物1の合成
ステップ1:実施例3のステップ1と同様の操作を行った。
【0106】
ステップ2:重合性化合物1の合成
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、ステップ1で合成した混合物1:26.91g、クロロホルム183.9g、及び、N,N-ジメチルホルムアミド6.4gを加えて、10℃以下に冷却した。そこへ、塩化チオニル6.0g(50.54mmol)を反応温度が10℃以下になるように制御して滴下した。滴下終了後、反応液を25℃に戻して1時間撹拌した。反応終了後、エバポレーターにて減圧下、クロロホルムを138g抜き出した。その後、新たにクロロホルム46gを加えて、クロロホルム溶液(2)を得た。別途、温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、2,5-ジヒドロキシ ベンズアルデヒド2.76g(20.0mmol)、トリエチルアミン12.13g(119.8mmol)を92gのクロロホルムに溶解させ、10℃以下まで冷却した。この溶液に、前記クロロホルム溶液(2)を、反応器内温を10℃以下に保持しながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、反応液を10℃以下に保持しながらさらに1時間反応を行った(工程(1))。
反応終了後、温度10℃以下のまま、反応液に、1.0規定の塩酸水溶液725g、及び、実施例1のステップ2で合成した中間体B6.48g(26.0mmol)、2,6-ジターシャリーブチル-パラ-クレゾール0.33gを加えて、40℃に昇温して4時間反応を行った(工程(3))。
反応終了後、40℃にて水層を抜き出して分液操作を行った。得られた有機層にロカヘルプ#479(三井金属鉱業社製)0.92gを加え、25℃にて30分撹拌した後、0.6gのロカヘルプ#479を敷いたろ過器でろ別した。ろ過器は9.2gのクロロホルムで洗浄して、先に得たろ液と一緒にした。次いで、得られた有機層からエバポレーターにて減圧下で110gのクロロホルムを抜き出して濃縮した。この溶液にテトラヒドロフラン33gを加えた後、攪拌しながら15℃に冷却した。次いで、この溶液に60%ヘキサン(株式会社ゴードー製)129gをゆっくり滴下した。そのままの温度で30分撹拌して固体を析出させた。その後、析出した固体をろ過によりろ取した。
得られた固体に、テトラヒドロフラン88.3g、ロカヘルプ#479:1.1g、及び、2,6-ジターシャリーブチル-パラ-クレゾール0.33gを加えて25℃にて30分撹拌した後、0.66gのロカヘルプ#479を敷いたろ過器でろ別した。ろ過器は44gのテトラヒドロフランで洗浄して、先に得たろ液と一緒にした。次いで、得られた有機層から、エバポレーターにてテトラヒドロフラン110gを留去した。得られた溶液を15℃にして、メタノール121gをゆっくり滴下した。そのままの温度で30分撹拌して固体を析出させた。その後、析出した固体をろ過によりろ取した。ろ過物をメタノールで洗浄後、真空乾燥させて、淡黄色固体として重合性化合物1を16.6g得た。収率は71%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0107】
(比較例3)重合性化合物1の合成
ステップ1~3:実施例1のステップ1~3と同様の操作を行った。
【0108】
ステップ4:重合性化合物1の合成
温度計を備えた3口反応器内で、窒素気流中、2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド4.5g(32.58mmol)、2,6-ルチジン20.97g(195.7mmol)を150gのクロロホルムに溶解させ、得られた溶液を10℃以下まで冷却した。この溶液に、ステップ3で合成した中間体Cのクロロホルム溶液の全量を反応温度を10℃以下に保持しながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、さらに、全容を5~10℃で1時間撹拌した(工程(1))。
反応終了後、10℃以下に保持しながら、反応液に、1.0規定の塩酸水溶液120g、ステップ2で合成した中間体B10.58g(42.4mmol)、及び、2,6-ジターシャリーブチル-パラ-クレゾール0.3gを加えた。その後、反応液を40℃に昇温して4時間反応を行った(工程(3))。
反応終了後、水層を抜き出した。更に有機層に蒸留水105gを投入して有機層を40℃にて30分撹拌して洗浄した。水層を抜き出した後、有機層を25℃に冷却して、ロカヘルプ#479を1.5g加えて30分撹拌した。その後、1gのロカヘルプ#479を敷いた桐山ロートでろ過を行い、ロカヘルプ#479を除去した。得られた有機層をロータリーエバポレーターにてクロロホルムを180g抜き出して濃縮を行った。得られた有機層にヘキサン210gを1時間で加えて固体を析出させ、ろ過により淡黄色固体を得た。得られた淡黄色固体を25℃にてテトラヒドロフラン120gに溶解させて、ロカヘルプ#479を1.5g加えて30分撹拌した。その後、1gのロカヘルプ#479を敷いた桐山ロートでろ過を行い、ロカヘルプ#479を除去した。得られた有機層に15℃にて165gのメタノールをゆっくりと滴下して、固体を析出させ、ろ過を行い、固体を得た。得られた固体を真空乾燥機にて乾燥して重合性化合物1を淡黄色固体として、29.4g得た。収率は77%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0109】
(比較例4)重合性化合物1の合成
ステップ1:実施例3のステップ1と同様の操作を行った。
【0110】
ステップ2:重合性化合物1の合成
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、ステップ1で合成した混合物1:26.91g、クロロホルム183.9g、及び、N,N-ジメチルホルムアミド6.4gを加えて、10℃以下に冷却した。そこへ、塩化チオニル6.0g(50.54mmol)を反応温度が10℃以下になるように制御して滴下した。滴下終了後、反応液を25℃に戻して1時間撹拌した。反応終了後、エバポレーターにて減圧下、クロロホルムを138g抜き出した。その後、新たにクロロホルム46gを加えて、クロロホルム溶液(3)を得た。別途、温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド2.76g(20.0mmol)、2,6-ルチジン12.8g(120.0mmol)を92gのクロロホルムに溶解させ、10℃以下まで冷却した。この溶液に、前記クロロホルム溶液(3)を、反応器内温を10℃以下に保持しながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、反応液を10℃以下に保持しながらさらに1時間反応を行った(工程(1))。
反応終了後、10℃以下のまま、反応液に、1.0規定の塩酸水溶液725g、実施例1のステップ2で合成した中間体B6.48g(26.0mmol)、及び、2,6-ジターシャリーブチル-パラ-クレゾール0.33gを加えて、40℃に昇温して4時間反応を行った(工程(3))。
反応終了後、40℃にて水層を抜き出して分液操作を行った。得られた有機層にロカヘルプ#479(三井金属鉱業社製)0.92gを加え、25℃にて30分撹拌した後、0.6gのロカヘルプ#479を敷いたろ過器でろ別した。ろ過器は9.2gのクロロホルムで洗浄して、先に得たろ液と一緒にした。次いで、得られた有機層からエバポレーターにて減圧下で110gのクロロホルムを抜き出して、濃縮した。この溶液にテトラヒドロフラン33gを加えた後、攪拌しながら15℃に冷却した。次いで、この溶液に60%ヘキサン(株式会社ゴードー製)129gをゆっくり滴下した。そのままの温度で30分撹拌して固体を析出させた。その後、析出した固体をろ過によりろ取した。得られた固体に、テトラヒドロフラン88.3g、ロカヘルプ#479:1.1g、及び、2,6-ジターシャリーブチル-パラ-クレゾール0.33gを加えて25℃にて30分撹拌した後、0.66gのロカヘルプ#479を敷いたろ過器でろ別した。ろ過器は44gのテトラヒドロフランで洗浄して、先に得たろ液と一緒にした。次いで、得られた有機層から、エバポレーターにてテトラヒドロフラン110gを留去した。得られた溶液を15℃にして、メタノール121gをゆっくり滴下した。そのままの温度で30分撹拌して固体を析出させた。その後、析出した固体をろ過によりろ取した。ろ過物をメタノールで洗浄後、真空乾燥させて、淡黄色固体として重合性化合物1を17.8g得た。収率は76%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0111】
(比較例5)重合性化合物1の合成
ステップ1:実施例3のステップ1と同様の操作を行った。
【0112】
ステップ2:重合性化合物1の合成
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、ステップ1で合成した混合物1:26.91g、クロロホルム183.9g、及び、N,N-ジメチルホルムアミド6.4gを加えて、10℃以下に冷却した。そこへ、塩化チオニル6.0g(50.54mmol)を反応温度が10℃以下になるように制御して滴下した。滴下終了後、反応液を25℃に戻して1時間撹拌した。反応終了後、エバポレーターにて減圧下、クロロホルムを138g抜き出した。その後、新たにクロロホルム46gを加えて、クロロホルム溶液(4)を得た。別途、温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド2.76g(20.0mmol)、2,6-ルチジン12.8g(120.0mmol)を92gのクロロホルムに溶解させ、10℃以下まで冷却した。この溶液に、前記クロロホルム溶液(4)を、反応器内温を10℃以下に保持しながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、反応液を10℃以下に保持しながらさらに1時間反応を行った(工程(1))。
反応終了後、10℃以下のまま、反応液に、1.0規定のメタンスルホン酸水溶液700g、実施例1のステップ2で合成した中間体B6.48g(26.0mmol)、及び、2,6-ジターシャリーブチル-パラ-クレゾール0.33gを加えて、40℃に昇温して4時間反応を行った(工程(3))。
反応終了後、40℃にて水層を抜き出して分液操作を行った。得られた有機層にロカヘルプ#479(三井金属鉱業社製)0.92gを加え、25℃にて30分撹拌した後、0.6gのロカヘルプ#479を敷いたろ過器でろ別した。ろ過器は9.2gのクロロホルムで洗浄して、先に得たろ液と一緒にした。次いで、得られた有機層からエバポレーターにて減圧下で110gのクロロホルムを抜き出して、濃縮した。この溶液にテトラヒドロフラン33gを加えた後、攪拌しながら15℃に冷却した。次いで、この溶液に60%ヘキサン(株式会社ゴードー製)129gをゆっくり滴下した。そのままの温度で30分撹拌して固体を析出させた。その後、析出した固体をろ過によりろ取した。得られた固体に、テトラヒドロフラン88.3g、ロカヘルプ#479:1.1g、及び、2,6-ジターシャリーブチル-パラ-クレゾール0.33gを加えて25℃にて30分撹拌した後、0.66gのロカヘルプ#479を敷いたろ過器でろ別した。ろ過器は44gのテトラヒドロフランで洗浄して、先に得たろ液と一緒にした。次いで、得られた有機層から、エバポレーターにてテトラヒドロフラン110gを留去した。得られた溶液を15℃にして、メタノール121gをゆっくり滴下した。そのままの温度で30分撹拌して固体を析出させた。その後、析出した固体をろ過によりろ取した。ろ過物をメタノールで洗浄後、真空乾燥させて、淡黄色固体として重合性化合物1を17.6g得た。収率は75%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0113】
(比較例6)重合性化合物1の合成
比較例1のステップ4における工程(3)の反応時間を4時間から8時間に変更した以外は比較例1と同様の操作を行った。その結果、淡黄色固体として重合性化合物1を28.6g得た。収率は75%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0114】
(比較例7)重合性化合物1の合成
比較例2のステップ2における工程(3)の反応時間を4時間から8時間に変更した以外は比較例2と同様の操作を行った。その結果、淡黄色固体として重合性化合物1を17.1g得た。収率は73%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0115】
(比較例8)重合性化合物1の合成
比較例3のステップ4における工程(3)の反応時間を4時間から8時間に変更した以外は比較例3と同様の操作を行った。その結果、淡黄色固体として重合性化合物1を30.5g得た。収率は80%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0116】
(比較例9)重合性化合物1の合成
比較例4のステップ2における工程(3)の反応時間を4時間から8時間に変更した以外は比較例4と同様の操作を行った。その結果、淡黄色固体として重合性化合物1を18.5g得た。収率は79%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0117】
(比較例10)重合性化合物1の合成
比較例5のステップ2における工程(3)の反応時間を4時間から8時間に変更した以外は比較例5と同様の操作を行った。その結果、淡黄色固体として重合性化合物1を18.0g得た。収率は77%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0118】
実施例1~7、及び、比較例1~10の結果を表1にまとめた。
【0119】
【表1】
【0120】
(実施例8)重合性化合物2の合成
【化30】
【0121】
ステップ1:中間体Dの合成
【化31】
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、1-ナフチル酢酸500.5g(2.69mol)とトルエン1049gとを加えた。更に、6-クロロ-1-ヘキサノール349.5g(2.56mol)、パラトルエンスルホン酸1水和物48.6g(0.26mol)を加えた。ディーンスタークを用いてこの溶液を加熱して、生成する水を反応系外に排出しながら共沸脱水(内温約95℃)を2時間行った。反応終了後、反応液を25℃まで冷却して、5.8質量%の重曹水742gで洗浄した。分液後、更に有機層を水500gで洗浄した。その後、有機層にロカヘルプ#479:7gを加えて室温下にて30分撹拌した後、ろ過を行い、ロカヘルプ#479を除去した。有機層からロータリーエバポレーターにて溶媒を留去して、中間体Dを含む淡茶色オイルを755g得た。高速液体クロマトグラフによる定量により、この中間体Dを含む淡茶色オイルには中間体Dが93.0質量%含まれていることが分かった。この茶色オイルの精製は行わず、そのまま次の反応に用いた。
【0122】
ステップ2:中間体Eの合成
【化32】
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、先のステップ1で合成した中間体Dを含む淡茶色オイル:59.52g(中間体Dの正味量として、55.35g(0.182mol))およびN-メチル-2-ピロリドン:235gを投入し、均一な溶液とした。そこへ、2-ヒドラジノベンゾチアゾール:25.0g(0.151mol)を加えた。次いで、リン酸三カリウム:48.18g(0.227mol)を加え、全容を100℃で3時間攪拌した。反応終了後、60℃に降温した反応液に酢酸エチル312.5gを加えた後、60℃を維持して、ろ過を行った。ろ液である有機層を0.5規定のクエン酸水溶液250gにゆっくり滴下して、内温60℃で30分撹拌した後、水層を抜き出した。更に有機層に9.1質量%の塩化ナトリウム水溶液275gを加え、内温60℃で30分撹拌した後、30分静置して水層を抜き出した。次いで有機層に4.76質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液262.5gを加え、内温60℃で30分撹拌した後、30分静置して水層を抜き出した。更に有機層に水250gを加え、内温60℃で30分撹拌した後、30分静置して水層を抜き出した。得られた有機層を徐々に0℃まで冷却して、0℃にて30分撹拌した。生じた固体をろ過によって取得した。その後、取得した固体に酢酸エチル150gを加えて、60℃まで昇温して均一溶液として、30分撹拌した。その後、酢酸エチル溶液を徐々に0℃まで冷却して、0℃にて1時間撹拌した。生じた固体をろ過によって取得して、減圧乾燥させることで、中間体Eを白色固体として36.9g得た。収率は56.4モル%であった。
【0123】
目的物の構造はH-NMRで同定した。
H-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):8.00(d,1H,J=8.5Hz)、7.85(dd,1H、J=1.0Hz、8.0Hz)、7.78(dd,1H,J=1.5Hz,7.5Hz)、7.60(dd,1H,J=1.0Hz,7.5Hz)、7.54-7.51(m,2H)、7.49-7.40(m,3H)、7.28(ddd,1H,J=1.0Hz,7.5Hz,7.5Hz)、7.07(ddd,1H,J=1.0Hz,7.5Hz,7.5Hz)、4.16(br,2H)、4.08(t,2H,J=6.5Hz)、4.06(s,2H)、3.66(t,2H,J=7.0Hz)、1.63-1.54(m,4H)、1.32-1.22(m,4H)。
【0124】
ステップ3:重合性化合物2の合成
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、前記実施例3のステップ1で合成した混合物1:26.91g、クロロホルム183.9g、及び、N,N-ジメチルホルムアミド6.4gを加えて、10℃以下に冷却した。そこへ、塩化チオニル6.0g(50.54mmol)を反応温度が10℃以下になるように制御して滴下した。滴下終了後、反応液を25℃に戻して1時間撹拌した。反応終了後、エバポレーターにて減圧下、クロロホルムを138g抜き出した。その後、新たにクロロホルム46gを加えて、クロロホルム溶液(5)を得た。別途、温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド2.76g(20.0mmol)、トリエチルアミン12.13g(119.8mmol)を92gのクロロホルムに溶解させ、10℃以下まで冷却した。この溶液に、前記クロロホルム溶液(5)を、反応器内温を10℃以下に保持しながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、反応液を10℃以下に保持しながらさらに1時間反応を行った(工程(1))。
反応終了後、10℃以下のまま、反応液に、1.0規定の塩酸水溶液725gを加えて10℃以下で30分撹拌した(工程(2))。
その後、前記ステップ2で合成した、中間体E10.38g(23.9mmol)、2,6-ジターシャリーブチル-パラ-クレゾール0.33gを加えて、40℃に昇温して4時間反応を行った(工程(3))。
反応終了後、40℃にて水層を抜き出して分液操作を行った。得られた有機層にロカヘルプ#479(三井金属鉱業社製)0.92gを加え、25℃にて30分撹拌した後、0.6gのロカヘルプ#479を敷いたろ過器でろ別した。ろ過器は9.2gのクロロホルムで洗浄して、先に得たろ液と一緒にした。このクロロホルム溶液を25℃にて、メタノール367.8gにゆっくりと滴下して固体を析出させた。そのままの温度でゆっくり撹拌しながら30分熟成した後、析出した固体をろ過によりろ取した。得られた固体をクロロホルム147gに溶解させて、ロカヘルプ#479(三井金属鉱業社製)0.92gを加え、25℃にて30分撹拌した後、0.6gのロカヘルプ#479を敷いたろ過器でろ別した。ろ過器は36.8gのクロロホルムで洗浄して、先に得たろ液と一緒にした。このクロロホルム溶液を25℃にて、メタノール184gにゆっくりと滴下して固体を析出させた。そのままの温度でゆっくり撹拌しながら30分熟成した後、析出した固体をろ過によりろ取した。ろ過物をメタノールで洗浄後、真空乾燥させて、淡黄色固体として重合性化合物2を22.2g得た。収率は82%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0125】
目的物の構造はH-NMRで同定した。
H-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):7.97(dd,1H,J=0.5Hz,8.5Hz)、7.80(ddd,1H,J=0.5Hz,0.5Hz,8.0Hz)、7.73-7.76(m,2H)、7.67-7.71(m,2H)、7.61(s,1H)、7.49(ddd,1H,J=1.0Hz,6.5Hz,8.5Hz)、7.42(ddd,1H,J=1.5Hz,7.0Hz,7.0Hz)、7.33-7.39(m,3H)、7.18(ddd,1H,J=1.0Hz,7.5Hz,8.0Hz)、7.10-7.14(m,2H)、6.95-7.01(m,4H)、6.85-6.90(m,4H)、6.405(dd,1H,J=1.5Hz,17.5Hz)、6.402(dd,1H,J=1.5Hz,17.5Hz)、6.127(dd,1H,J=10.5Hz,17.5Hz)、6.124(dd,1H,J=10.5Hz,17.5Hz)、5.822(dd,1H,J=1.5Hz,10.5Hz)、5.819(dd,1H,J=1.5Hz,10.5Hz)、4.16-4.22(m,6H)、4.08(t,2H,J=6.5Hz)、4.03(s,2H)、3.95(t,2H,J=6.5Hz)、3.93(t,2H,J=6.5Hz)、2.56-2.67(m,4H)、2.28-2.36(m,8H)、1.59-1.83(m,20H)、1.42-1.56(m,8H)、1.24-1.36(m,4H)。
【0126】
(実施例9)重合性化合物2の合成
ステップ1:前記実施例1のステップ1と同様の操作を行った。
【0127】
ステップ2:重合性化合物2の合成
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、前記実施例1のステップ1で合成した中間体A:18.39g、クロロホルム183.9g、及び、N,N-ジメチルホルムアミド6.4gを加えて、10℃以下に冷却した。そこへ、塩化チオニル6.0g(50.54mmol)を反応温度が10℃以下になるように制御して滴下した。滴下終了後、反応液を25℃に戻して1時間撹拌した。反応終了後、エバポレーターにて減圧下、クロロホルムを138g抜き出した。その後、新たにクロロホルム46gを加えて、クロロホルム溶液(6)を得た。別途、温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド2.76g(20.0mmol)、2,6-ルチジン12.84g(119.8mmol)を92gのクロロホルムに溶解させ、10℃以下まで冷却した。この溶液に、前記クロロホルム溶液(6)を、反応器内温を10℃以下に保持しながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、反応液を10℃以下に保持しながらさらに1時間反応を行った(工程(1))。
反応終了後、温度10℃以下のまま、反応液に、1.0規定の塩酸水溶液725gを加えて10℃以下で30分撹拌した(工程(2))。
その後、前記実施例8のステップ2で合成した、中間体E10.38g(23.9mmol)、2,6-ジターシャリーブチル-パラ-クレゾール0.33gを加えて、40℃に昇温して4時間反応を行った(工程(3))。
反応終了後、40℃にて水層を抜き出して分液操作を行った。得られた有機層にロカヘルプ#479(三井金属鉱業社製)0.92gを加え、25℃にて30分撹拌した後、0.6gのロカヘルプ#479を敷いたろ過器でろ別した。ろ過器は9.2gのクロロホルムで洗浄して、先に得たろ液と一緒にした。このクロロホルム溶液を25℃にて、メタノール367.8gにゆっくりと滴下して固体を析出させた。そのままの温度でゆっくり撹拌しながら30分熟成した後、析出した固体をろ過によりろ取した。得られた固体をクロロホルム147gに溶解させて、ロカヘルプ#479(三井金属鉱業社製)0.92gを加え、25℃にて30分撹拌した後、0.6gのロカヘルプ#479を敷いたろ過器でろ別した。ろ過器は36.8gのクロロホルムで洗浄して、先に得たろ液と一緒にした。このクロロホルム溶液を25℃にて、メタノール184gにゆっくりと滴下して固体を析出させた。そのままの温度でゆっくり撹拌しながら30分熟成した後、析出した固体をろ過によりろ取した。ろ過物をメタノールで洗浄後、真空乾燥させて、淡黄色固体として重合性化合物2を24.9g得た。収率は92%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0128】
(実施例10)重合性化合物2の合成
実施例8のステップ3において、トリエチルアミン12.13g(119.8mmol)を2,6-ルチジン12.84g(119.8mmol)に変えた以外は実施例8と同様の操作を行った。その結果、淡黄色固体として重合性化合物2を24.9g得た。収率は92%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0129】
(比較例11)重合性化合物2の合成
ステップ1~3:前記実施例8のステップ1~3と同様の操作を行った。
【0130】
ステップ2:重合性化合物2の合成
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、前記実施例3のステップ1で合成した混合物1:26.91g、クロロホルム183.9g、及び、N,N-ジメチルホルムアミド6.4gを加えて、10℃以下に冷却した。そこへ、塩化チオニル6.0g(50.54mmol)を反応温度が10℃以下になるように制御して滴下した。滴下終了後、反応液を25℃に戻して1時間撹拌した。反応終了後、エバポレーターにて減圧下、クロロホルムを138g抜き出した。その後、新たにクロロホルム46gを加えて、クロロホルム溶液(7)を得た。別途、温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド2.76g(20.0mmol)、トリエチルアミン12.13g(119.8mmol)を92gのクロロホルムに溶解させ、10℃以下まで冷却した。この溶液に、前記クロロホルム溶液(7)を、反応器内温を10℃以下に保持しながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、反応液を10℃以下に保持しながらさらに1時間反応を行った(工程(1))。
反応終了後、10℃以下のまま、反応液に、1.0規定の塩酸水溶液725g、ステップ2で合成した中間体E10.38g(23.9mmol)、及び、2,6-ジターシャリーブチル-パラ-クレゾール0.33gを加えて、40℃に昇温して4時間反応を行った(工程(3))。
反応終了後、40℃にて水層を抜き出して分液操作を行った。得られた有機層にロカヘルプ#479(三井金属鉱業社製)0.92gを加え、25℃にて30分撹拌した後、0.6gのロカヘルプ#479を敷いたろ過器でろ別した。ろ過器は9.2gのクロロホルムで洗浄して、先に得たろ液と一緒にした。このクロロホルム溶液を25℃にて、メタノール367.8gにゆっくりと滴下して固体を析出させた。そのままの温度でゆっくり撹拌しながら30分熟成した後、析出した固体をろ過によりろ取した。得られた固体をクロロホルム147gに溶解させて、ロカヘルプ#479(三井金属鉱業社製)0.92gを加え、25℃にて30分撹拌した後、0.6gのロカヘルプ#479を敷いたろ過器でろ別した。ろ過器は36.8gのクロロホルムで洗浄して、先に得たろ液と一緒にした。このクロロホルム溶液を25℃にて、メタノール184gにゆっくりと滴下して固体を析出させた。そのままの温度でゆっくり撹拌しながら30分熟成した後、析出した固体をろ過によりろ取した。ろ過物をメタノールで洗浄後、真空乾燥させて、淡黄色固体として重合性化合物2を18.69g得た。収率は69%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0131】
(比較例12)重合性化合物2の合成
ステップ1:前記実施例1のステップ1と同様の操作を行った。
【0132】
ステップ2:重合性化合物2の合成
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、前記実施例1のステップ1で合成した中間体A:18.39g、クロロホルム183.9g、及び、N,N-ジメチルホルムアミド6.4gを加えて、10℃以下に冷却した。そこへ、塩化チオニル6.0g(50.54mmol)を反応温度が10℃以下になるように制御して滴下した。滴下終了後、反応液を25℃に戻して1時間撹拌した。反応終了後、エバポレーターにて減圧下、クロロホルムを138g抜き出した。その後、新たにクロロホルム46gを加えて、クロロホルム溶液(8)を得た。別途、温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド2.76g(20.0mmol)、2,6-ルチジン12.84g(119.8mmol)を92gのクロロホルムに溶解させ、10℃以下まで冷却した。この溶液に、前記クロロホルム溶液(8)を、反応器内温を10℃以下に保持しながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、反応液を10℃以下に保持しながらさらに1時間反応を行った(工程(1))。
反応終了後、温度10℃以下のまま、反応液に、1.0規定の塩酸水溶液725g、前記実施例8のステップ2で合成した中間体E10.38g(23.9mmol)、及び、2,6-ジターシャリーブチル-パラ-クレゾール0.33gを加えて、40℃に昇温して4時間反応を行った(工程(3))。
反応終了後、40℃にて水層を抜き出して分液操作を行った。得られた有機層にロカヘルプ#479(三井金属鉱業社製)0.92gを加え、25℃にて30分撹拌した後、0.6gのロカヘルプ#479を敷いたろ過器でろ別した。ろ過器は9.2gのクロロホルムで洗浄して、先に得たろ液と一緒にした。このクロロホルム溶液を25℃にて、メタノール367.8gにゆっくりと滴下して固体を析出させた。そのままの温度でゆっくり撹拌しながら30分熟成した後、析出した固体をろ過によりろ取した。得られた固体をクロロホルム147gに溶解させて、ロカヘルプ#479(三井金属鉱業社製)0.92gを加え、25℃にて30分撹拌した後、0.6gのロカヘルプ#479を敷いたろ過器でろ別した。ろ過器は36.8gのクロロホルムで洗浄して、先に得たろ液と一緒にした。このクロロホルム溶液を25℃にて、メタノール184gにゆっくりと滴下して固体を析出させた。そのままの温度でゆっくり撹拌しながら30分熟成した後、析出した固体をろ過によりろ取した。ろ過物をメタノールで洗浄後、真空乾燥させて、淡黄色固体として重合性化合物2を21.13g得た。収率は78%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0133】
(比較例13)重合性化合物2の合成
比較例11のステップ3において、トリエチルアミン12.13g(119.8mmol)を2,6-ルチジン12.84g(119.8mmol)に変えた以外は比較例11と同様の操作を行った。その結果、淡黄色固体として重合性化合物2を20.32g得た。収率は75%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0134】
実施例8~10、及び、比較例11~13の結果を表2にまとめた。
【0135】
【表2】
【0136】
(実施例11)重合性化合物1の合成
ステップ1:中間体Fの合成
【化33】
国際公開第2017/150622号を参考にして合成した。
【0137】
ステップ2:混合物2の合成
【化34】
【0138】
国際公開第2016/159193号に記載の方法を適用して以下のようにして合成した。
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、trans-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド83.05g(0.397mol)、シクロペンチルメチルエーテル600g、テトラヒドロフラン230gを加えた。そこへ、前記ステップ1で合成した中間体F100.0g(0.378mol)を加え、反応器を氷浴に浸して反応液内温を0℃とした。次いで、トリエチルアミン40.20g(0.397mol)を、反応液内温を10℃以下に保持しながら、30分間かけてゆっくり滴下した。滴下終了後、全容を10℃以下にて1時間さらに攪拌した。得られた反応液に、蒸留水250gを加えて50℃にて2時間洗浄を行った後、水層を抜き出した。新たな蒸留水250gを加えて50℃にてさらに2時間洗浄を行った。この操作を合計で3回行った。さらに有機層を、濃度1mol/リットルの酢酸と酢酸ナトリウムからなる緩衝溶液(pH:5.5)416gを用いて40℃にて30分洗浄を行った後、緩衝溶液を抜き出した。新たな濃度1mol/リットルの酢酸と酢酸ナトリウムからなる緩衝溶液(pH:5.5)416gを用いて40℃にて30分洗浄を行った後、緩衝溶液を抜き出した。この操作を合計で5回行った。さらに、得られた有機層に蒸留水250gを加えて40℃にて30分洗浄した後、水層を抜き出した。得られた有機層にノルマルヘキサン1300gを40℃にて1時間かけて滴下した。その後、0℃に冷却し、更に1時間撹拌して、固体を析出させ、析出した固体をろ取した。ろ過物をノルマルヘキサンで洗浄後、真空乾燥させて、白色固体を142.0g得た。得られた結晶をHPLCにて分析し、検量線にて中間体Aの定量を行ったところ、中間体Aが、68.5質量%含まれていることが分かった。また、得られた結晶を13C-NMR(ジオキサン-d8)にて分析し、シクロヘキサンジカルボン酸の含量を算出したところ、検出限界以下であった。
【0139】
ステップ3:重合性化合物1の合成
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、前記ステップ2で合成した中間体Aを主成分とする混合物2:43.8g(中間体Aとして30g(71.7mmol))、クロロホルム300g、及び、N,N-ジメチルホルムアミド10.5g(143.4mmol)を加えて、10℃以下に冷却した。そこへ、塩化チオニル9.81g(82.44mmol)を、反応温度を10℃以下に保持しながら滴下した。滴下終了後、反応液を25℃に戻して1時間撹拌した。反応終了後、エバポレーターにてクロロホルム225gを抜き出して濃縮した。その後、新たなクロロホルム75gを加えて中間体Aの酸クロライドのクロロホルム溶液を得た。別途用意した、温度計を備えた3口反応器内で、窒素気流中、2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド4.5g(32.58mmol)、トリエチルアミン19.78g(195.5mmol)を150gのクロロホルムに溶解させ、得られた溶液を10℃以下まで冷却した。この溶液に、先に合成した中間体Aの酸クロライドのクロロホルム溶液の全量を反応温度10℃以下に保持しながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、さらに、全容を5~10℃で1時間撹拌した(工程(1))。
反応終了後、10℃以下に保持しながら、反応液に、1.0規定の塩酸水溶液120gを加えた。その後、10℃以下で30分撹拌して反応を行った(工程(2))。
その後、前記実施例1のステップ2で合成した中間体B:10.58g(42.4mmol)、2,6-ジターシャリーブチル-パラ-クレゾール0.3gを加えた。その後、反応液を40℃に昇温して4時間反応を行った(工程(3))。
反応終了後、水層を抜き出した。更に有機層に蒸留水105gを投入し、40℃にて30分撹拌して洗浄した。水層を抜き出した後、有機層を25℃に冷却して、ロカヘルプ#479を1.5g加えて30分撹拌した。その後、1gのロカヘルプ#479を敷いた桐山ロートでろ過を行い、ロカヘルプ#479を除去した。得られた有機層からロータリーエバポレーターにてクロロホルムを180g抜き出して、濃縮を行った。得られた有機層にヘキサン210gを1時間かけて加えて固体を析出させ、ろ過により淡黄色固体を得た。得られた淡黄色固体を25℃にてテトラヒドロフラン120gに溶解させて、ロカヘルプ#479を1.5g加えて30分撹拌した。その後、1gのロカヘルプ#479を敷いた桐山ロートでろ過を行い、ロカヘルプ#479を除去した。得られた有機層に15℃にて165gのメタノールをゆっくりと滴下して固体を析出させ、ろ過を行い、固体を得た。得られた固体を真空乾燥機にて乾燥して重合性化合物1を淡黄色固体として35.1g得た。収率は92.0%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0140】
(実施例12)重合性化合物1の合成
ステップ1:中間体Gの合成
国際公開第16/159193号に記載の方法を用いて以下のようにして合成した。
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、trans-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド83.05g(0.397mol)、シクロペンチルメチルエーテル600g、テトラヒドロフラン230gを加えた。そこへ、前記実施例11のステップ1で合成した中間体F100.0g(0.378mol)を加え、反応器を氷浴に浸して反応液内温を0℃とした。次いで、トリエチルアミン40.20g(0.397mol)を、反応液内温を10℃以下に保持しながら、30分間かけてゆっくり滴下した。滴下終了後、全容を10℃以下にて1時間さらに攪拌した。得られた反応液に、蒸留水250gを加えて50℃にて2時間洗浄を行った後、水層を抜き出した。新たな蒸留水250gを加えて50℃にてさらに2時間洗浄を行った。この操作を合計で3回行った。有機層をさらに、濃度1mol/リットルの酢酸と酢酸ナトリウムからなる緩衝溶液(pH:5.5)416gを用いて40℃にて30分洗浄を行った後、緩衝溶液を抜き出した。新たな濃度1mol/リットルの酢酸と酢酸ナトリウムからなる緩衝溶液(pH:5.5)416gを用いて40℃にて30分洗浄を行った後、緩衝溶液を抜き出した。この操作を合計で5回行った。さらに、得られた有機層に蒸留水250gを加えて40℃で30分洗浄した。水層を抜き出して得られた有機層を撹拌しながら徐々に0℃まで冷却し、0℃で1時間撹拌した後、析出した固体をろ別した。ろ液にノルマルヘキサン1400gを1時間かけて滴下した。その後、0℃で1時間撹拌して、固体を析出させ、析出した固体をろ取した。ろ過物をノルマルヘキサンで洗浄後、真空乾燥させて、白色固体を105.7g得た。得られた結晶をHPLCにて分析し、検量線にて中間体Gの定量を行ったところ、中間体Aが、91.3質量%含まれていることが分かった。また、得られた結晶を13C-NMR(ジオキサン-d8)にて分析し、シクロヘキサンジカルボン酸の含量を算出したところ、検出限界以下であった。
【0141】
ステップ2:重合性化合物1の合成
実施例11のステップ3において、実施例11のステップ2で合成した中間体Aを主成分とする混合物2:43.8g(中間体Aとして30g(71.7mmol))を前記ステップ1で合成した中間体G:32.9g(中間体Aとして30g(71.7mmol))に変更した以外は実施例11と同様の操作を行った。その結果、重合性化合物1を淡黄色固体として35.0g得た。収率は91.8%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0142】
(実施例13)重合性化合物1の合成
ステップ1:中間体Hの合成
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、トランス-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド83.05g(0.397mol)と、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)830gとを加えた。そこへ、前記実施例11のステップ1で合成した中間体F:100g(0.378mol)、2,6-ジターシャリーブチル-パラ-クレゾール1.67gを加え、反応器を氷浴に浸して反応液内温を0℃とした。次いで、トリエチルアミン40.2g(0.397mol)を、反応液内温を10℃以下に保持しながら、20分間かけてゆっくり滴下した。滴下終了後、そのまま10℃以下で1時間さらに撹拌した。得られた反応液に、10℃以下で蒸留水250gを加えて50℃に昇温した。その後、50℃にて2時間洗浄を行った。分液して水層を抜き出した後、50℃にて、新たに蒸留水250gを加えて50℃にて2時間洗浄を行った。この操作を合計で3回実施した。得られた有機層を40℃に冷却した後、メタノール200gを加え、徐々に冷却して0℃にて1時間ゆっくり撹拌することで固体を析出させた。析出した固体をろ過により除去してろ液を得た。ろ過器の中のろ過物を別途準備した0℃に冷却したメタノール100gで洗浄して、この洗浄により得られた洗浄液と先のろ液とを一緒にした。この洗浄液と一緒にしたろ液をさらに、濃度1mol/リットルの酢酸と酢酸ナトリウムからなる緩衝溶液(pH5.5)416gを用いて40℃にて30分間撹拌して洗浄した。洗浄後、分液して水層を抜き出した後、新たに濃度1mol/リットルの酢酸と酢酸ナトリウムからなる緩衝溶液(pH5.5)416gを加えて40℃にて30分間撹拌を行った。この操作を合計で5回実施し、分液し、水層を抜き出して得た有機層(油層)に、蒸留水250gを加えて、40℃にて30分間洗浄を行った。この操作を合計で2回実施し、分液して得た有機層に、ノルマルヘキサン1200gを加えて、徐々に0℃に冷却することで固体を析出させ、析出した固体をろ取した。ろ過物をノルマルヘキサンで洗浄した後、真空乾燥させて、中間体Hとしての白色固体98.55gを得た。得られた白色固体を高速液体クロマトグラフにて定量したところ、白色固体に対する中間体Aの含量は、92.6質量%であった。また、得られた結晶を13C-NMR(ジオキサン-d8)にて分析を行い、シクロヘキサンジカルボン酸の含量を算出したところ、検出限界以下であった。
【0143】
ステップ2:重合性化合物1の合成
実施例11のステップ3において、実施例11のステップ2で合成した中間体Aを主成分とする混合物2:43.8g(中間体Aとして30g(71.7mmol))を前記ステップ1で合成した中間体H:32.4g(中間体Aとして30g(71.7mmol))に変更した以外は実施例11と同様の操作を行った。その結果、重合性化合物1を淡黄色固体として35.7g得た。収率は93.6%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0144】
(実施例14)重合性化合物1の合成
実施例11のステップ3において、トリエチルアミン19.78g(195.5mmol)を2,6-ルチジン17.46g(163.0mmol)及びN,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)43.8mg(0.36mmol)の併用に変更した以外は実施例11と同様の操作を行った。その結果、重合性化合物1を淡黄色固体として34.9g得た。収率は91.5%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0145】
(実施例15)重合性化合物1の合成
実施例11のステップ3において、実施例11のステップ2で合成した中間体Aを主成分とする混合物2:43.8g(中間体Aとして30g(71.7mmol))を実施例12のステップ1で合成した中間体G:32.9g(中間体Aとして30g(71.7mmol))に変更し、かつ、トリエチルアミン19.78g(195.5mmol)を2,6-ルチジン17.46g(163.0mmol)及びN,N-ジメチル-4-アミノピリジン43.8mg(0.36mmol)の併用に変更した以外は実施例11と同様の操作を行った。その結果、重合性化合物1を淡黄色固体として35.2g得た。収率は92.3%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0146】
(実施例16)重合性化合物1の合成
実施例11のステップ3において、実施例11のステップ2で合成した中間体Aを主成分とする混合物2:43.8g(中間体Aとして30g(71.7mmol))を実施例13のステップ1で合成した中間体H:32.4g(中間体Aとして30g(71.7mmol))に変更し、かつ、トリエチルアミン19.78g(195.5mmol)を2,6-ルチジン17.46g(163.0mmol)及びN,N-ジメチル-4-アミノピリジン43.8mg(0.36mmol)の併用に変更した以外は実施例11と同様の操作を行った。その結果、重合性化合物1を淡黄色固体として35.8g得た。収率は93.9%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0147】
(実施例17)重合性化合物1の合成
実施例11のステップ3において、塩化チオニル9.81g(82.44mmol)を塩化チオニル8.79g(73.85mmol)に変更し、かつ、トリエチルアミン19.78g(195.5mmol)を2,6-ルチジン17.46g(163.0mmol)及びN,N-ジメチル-4-アミノピリジン43.8mg(0.36mmol)の併用に変更した以外は実施例11と同様の操作を行った。その結果、重合性化合物1を淡黄色固体として35.5g得た。収率は93.1%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0148】
(実施例18)重合性化合物1の合成
実施例11のステップ3において、実施例11のステップ2で合成した中間体Aを主成分とする混合物2:43.8g(中間体Aとして30g(71.7mmol))を実施例12のステップ1で合成した中間体G:32.9g(中間体Aとして30g(71.7mmol))に変更し、塩化チオニル9.81g(82.44mmol)を塩化チオニル8.79g(73.85mmol)に変更し、かつ、トリエチルアミン19.78g(195.5mmol)を2,6-ルチジン17.46g(163.0mmol)及びN,N-ジメチル-4-アミノピリジン43.8mg(0.36mmol)の併用に変更した以外は実施例11と同様の操作を行った。その結果、重合性化合物1を淡黄色固体として35.6g得た。収率は93.4%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0149】
(実施例19)重合性化合物1の合成
実施例11のステップ3において、実施例11のステップ2で合成した中間体Aを主成分とする混合物2:43.8g(中間体Aとして30g(71.7mmol))を実施例13のステップ1で合成した中間体H:32.4g(中間体Aとして30g(71.7mmol))に変更し、塩化チオニル9.81g(82.44mmol)を塩化チオニル8.79g(73.85mmol)に変更し、かつ、トリエチルアミン19.78g(195.5mmol)を2,6-ルチジン17.46g(163.0mmol)及びN,N-ジメチル-4-アミノピリジン43.8mg(0.36mmol)の併用に変更した以外は実施例11と同様の操作を行った。その結果、重合性化合物1を淡黄色固体として36.0g得た。収率は94.4%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0150】
(実施例20)重合性化合物1の合成
ステップ1:中間体Iの合成
実施例13のステップ1において、ノルマルヘキサン1200gをノルマルヘプタン1200gに変更し、かつ、ろ過物を洗浄するノルマルヘキサンをノルマルヘプタンに変更した以外は実施例13と同様の操作を行い、中間体Iとしての白色固体97.40gを得た。得られた白色固体を高速液体クロマトグラフにて定量したところ、白色固体に対する中間体Aの含量は、94.7質量%であった。また、得られた結晶を13C-NMR(ジオキサン-d8)にて分析し、シクロヘキサンジカルボン酸の含量を算出したところ、検出限界以下であった。
【0151】
ステップ2:化合物1の合成
実施例11のステップ3において、実施例11のステップ2で合成した中間体Aを主成分とする混合物2:43.8g(中間体Aとして30g(71.7mmol))を前記ステップ1で合成した中間体I:31.7g(中間体Aとして30g(71.7mmol))に変更し、塩化チオニル9.81g(82.44mmol)を塩化チオニル8.79g(73.85mmol)に変更し、かつ、トリエチルアミン19.78g(195.5mmol)を2,6-ルチジン17.46g(163.0mmol)及びN,N-ジメチル-4-アミノピリジン43.8mg(0.36mmol)の併用に変更した以外は実施例11と同様の操作を行った。その結果、重合性化合物1を淡黄色固体として36.1g得た。収率は94.7%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0152】
(実施例21)重合性化合物1の合成
実施例11のステップ3において、実施例11のステップ2で合成した中間体Aを主成分とする混合物2:43.8g(中間体Aとして30g(71.7mmol))を実施例20のステップ1で合成した中間体I:31.7g(中間体Aとして30g(71.7mmol))に変更し、塩化チオニル9.81g(82.44mmol)を塩化チオニル8.79g(73.85mmol)に変更し、トリエチルアミン19.78g(195.5mmol)を2,6-ルチジン17.46g(163.0mmol)及びN,N-ジメチル-4-アミノピリジン43.8mg(0.36mmol)の併用に変更し、かつ、固体を析出させるために使用したヘキサン210gをヘプタン210gに変更した以外は実施例11と同様の操作を行った。その結果、重合性化合物1を淡黄色固体として36.0g得た。収率は94.4%(2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0153】
実施例11~21の結果を表3にまとめた。
【0154】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明の製造方法によれば、光学フィルム等の調製に使用し得る、前記式(A)で示される重合性化合を高収率で得ることができる。