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特許7380559光学フィルム、光学積層体、及び、液晶表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】光学フィルム、光学積層体、及び、液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20231108BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20231108BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231108BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20231108BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G02B5/30
C08J5/18 CEZ
B32B27/00 A
G02F1/13363
G02F1/1335 510
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020530064
(86)(22)【出願日】2019-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2019024151
(87)【国際公開番号】W WO2020012889
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2018133614
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 寛哉
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健作
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-238705(JP,A)
【文献】特開2008-046147(JP,A)
【文献】特開2009-139685(JP,A)
【文献】特開2000-235185(JP,A)
【文献】米国特許第6646701(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C08J 5/18
B32B 27/00
G02F 1/13363
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂からなる光学フィルムであって、
前記熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、応力複屈折C2910×10 -12 Pa -1 以上3900×10 -12 Pa -1 以下であり、ガラス転移温度Tgが125℃以上であり、
前記応力複屈折C は、前記熱可塑性ノルボルネン系樹脂から作製されたシート状サンプルを、前記熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tg+5℃において応力を与え延伸して測定試料を得て、前記測定試料の波長650nmの光におけるレタデーション値a(nm)及び前記測定試料の厚みb(mm)から下記式(1):
δn=a×(1/b)×10 -6 (1)
によりδn値を算出し、算出された前記δn値及び前記応力(Pa)から下記式(2):
=δn/応力 (2)
により算出された値であり、
前記光学フィルムの、厚みdに対する、厚み方向のレタデーションRthの比(Rth/d)は、3.5×10-3以上8.0×10 -3 以下であり、
延伸フィルムである、光学フィルム。
【請求項2】
面内方向のレタデーションReが40nm以上80nm以下である、請求項1記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記熱可塑性ノルボルネン系樹脂が、重合体を含み、
前記重合体が、芳香環構造を有するノルボルネン系単量体単位を含む、請求項1又は2記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記重合体が、前記芳香環構造を有するノルボルネン系単量体単位を25重量%以上含む、請求項3に記載の光学フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の光学フィルムと、
前記光学フィルムの上に設けられた偏光板と、を備える光学積層体。
【請求項6】
請求項5記載の光学積層体を備える液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム、光学積層体、及び、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂からなる光学フィルムが知られている。例えば、特許文献1には、熱可塑性ノルボルネン樹脂を含む光学フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-238705号公報(対応公報:米国特許出願公開第2004/057141号明細書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶表示装置に用いる光学フィルムにおいては、位相差発現性に優れ、厚み方向のレタデーションRthが高いものが求められている。従来の熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いて、厚み方向のレタデーションRthの高い光学フィルムを得る方法としては、高い延伸倍率で延伸することが考えられる。しかしながら、高い延伸倍率で延伸して得られたフィルムを、他の部材に接着した場合に、フィルムの表面近傍部分が破壊されることにより当該フィルムが他の部材から剥離する現象(デラミネーション)が発生することがあった。
【0005】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、位相差発現性に優れ、厚み方向のレタデーションが高く、かつデラミネーションの発生を抑制した光学フィルム、当該光学フィルムを備えた光学積層体、及び当該光学積層体を備えた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、光学フィルムの材料として、応力複屈折Cが大きく、ガラス転移温度Tgが高い熱可塑性ノルボルネン系樹脂を用い、かつ、光学フィルムの、厚みdに対する、厚み方向のレタデーションRthの比(Rth/d)を所定値以上とすることで、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0007】
〔1〕 熱可塑性ノルボルネン系樹脂からなる光学フィルムであって、
前記熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、応力複屈折Cが2900×10-12Pa-1より大きく、ガラス転移温度Tgが125℃以上であり、
前記光学フィルムの、厚みdに対する、厚み方向のレタデーションRthの比(Rth/d)は、3.5×10-3以上であり、
延伸フィルムである、光学フィルム。
〔2〕 面内方向のレタデーションReが40nm以上80nm以下である、〔1〕に記載の光学フィルム。
〔3〕 前記熱可塑性ノルボルネン系樹脂が、重合体を含み、
前記重合体が、芳香環構造を有するノルボルネン系単量体単位を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の光学フィルム。
〔4〕 前記重合体が、前記芳香環構造を有するノルボルネン系単量体単位を25重量%以上含む、〔3〕に記載の光学フィルム。
〔5〕 〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の光学フィルムと、
前記光学フィルムの上に設けられた偏光板と、を備える光学積層体。
〔6〕 〔5〕記載の光学積層体を備える液晶表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、位相差発現性に優れ、厚み方向のレタデーションが高く、かつデラミネーションの発生を抑制した光学フィルム、当該光学フィルムを備えた光学積層体、及び当該光学積層体を備えた液晶表示装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0010】
以下の説明において、フィルムの面内レタデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。また、フィルムの厚み方向のレタデーションRthは、別に断らない限り、Rth=[{(nx+ny)/2}-nz]×dで表される値である。ここで、nxは、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzは厚み方向の屈折率を表す。dは、フィルムの厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、550nmである。
【0011】
以下の説明において、構成要素の方向が「平行」、「垂直」又は「直交」とは、特に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば、通常±5°、好ましくは±2°、より好ましくは±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0012】
以下の説明において、MD方向(machine direction)は、製造ラインにおけるフィルムの流れ方向であり、TD方向(traverse direction)は、フィルム面に平行な方向であって、MD方向に垂直な方向である。また便宜上、長尺状のフィルムの長手方向をフィルムのMD方向、幅方向をフィルムのTD方向と呼ぶ場合もある。
以下の説明において、「長尺状」のフィルムとは、フィルムの幅に対して、5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。フィルムの幅に対する長さの割合の上限は、特に限定されないが、例えば100,000倍以下としうる。
【0013】
以下の説明において、「偏光板」とは、別に断らない限り、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0014】
[1.光学フィルム]
本発明の、光学フィルムは、熱可塑性ノルボルネン系樹脂からなるフィルムである。光学フィルムは、光学フィルムの材料となるフィルムを延伸して得られる延伸フィルムである。以下の説明において、光学フィルムの材料となるフィルムを、「延伸前フィルム」ともいう。
【0015】
(熱可塑性ノルボルネン系樹脂)
熱可塑性ノルボルネン系樹脂は重合体を含む。熱可塑性ノルボルネン系樹脂に含まれる重合体としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体、又はそれらの水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体、又はそれらの水素化物等を挙げることができる。
【0016】
ノルボルネン構造を有する単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン、「DCPD」ともいう)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(慣用名:テトラシクロドデセン、「TCD」ともいう)、及びこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)が挙げられる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。また、これらの置換基は、同一又は相異なって複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
極性基の種類としては、ヘテロ原子、又はヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン基などが挙げられる。飽和吸水率の小さいフィルムを得るためには、極性基の量が少ない方が好ましく、極性基を持たない方がより好ましい。
【0018】
ノルボルネン構造を有する単量体としては、位相差発現性が優れるという観点から、上述のノルボルネン構造を有する単量体とともに、または、上述の単量体に代えて芳香環構造を有するノルボルネン系単量体を用いうる。
【0019】
芳香環構造を有するノルボルネン系単量体としては、5-フェニル-2-ノルボルネン、5-(4-メチルフェニル)-2-ノルボルネン、5-(1-ナフチル)-2-ノルボルネン、9-(2-ノルボルネン-5-イル)-カルバゾール等の芳香族置換基を有するノルボルネン系単量体;1,4-メタノ-1,4,4a,4b,5,8,8a,9a-オクタヒドロフルオレン、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン、以下「MTF」ともいう)、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロジベンゾフラン、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロカルバゾール、1,4-メタノ-1,4,4a,9,9a,10-ヘキサヒドロアントラセン、1,4-メタノ-1,4,4a,9,10,10a-ヘキサヒドロフェナンスレン、などの縮合多環構造中にノルボルネン環構造と芳香環構造とを有するノルボルネン系単量体;等が挙げられる。これらの単量体は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
芳香環構造を有するノルボルネン系単量体は、置換基を有していても良い。置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロキル基などのアルキル基;アルキリデン基;アルケニル基;フルオロ基、クロル基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基;ヒドロキシ基;エステル基;アルコキシ基;シアノ基;アミド基;イミド基;シリル基などが挙げられる。芳香環構造を有するノルボルネン系単量体は、これらの置換基を2種以上有していてもよい。
【0021】
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類及びその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエン及びその誘導体;などが挙げられる。
【0022】
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との開環共重合体は、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に(共)重合することにより得ることができる。
【0023】
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの炭素数2~20のα-オレフィン及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィン及びこれらの誘導体;1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエンなどの非共役ジエンなどが挙げられる。これらの単量体は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、α-オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。
【0024】
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との付加共重合体は、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合することにより得ることができる。
【0025】
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素化物、ノルボルネン構造を有する単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環共重合体の水素化物、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の水素化物、及びノルボルネン構造を有する単量体とこれと付加共重合可能なその他の単量体との付加共重合体の水素化物は、これら開環(共)重合体又は付加(共)重合体の溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、水素を接触させて、炭素-炭素不飽和結合を水素化することによって得ることができる。
【0026】
本発明において、重合体としては、位相差発現性に優れるという観点から、非芳香族性の不飽和結合が選択的に水素化された開環(共)重合体であって、芳香環構造を有するノルボルネン系単量体単位を含むものが好ましい。ここで、「単量体単位」とは、その単量体を重合して形成される構造を有する、構造単位をいう。
【0027】
芳香環構造を有するノルボルネン系単量体単位を含む重合体は、上記開環(共)重合体または付加(共)重合体の溶液にルテニウム触媒を添加して水素を接触させることにより得ることができる。ルテニウム触媒としては、(1,3-ジメシチルイミダゾリジン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリド、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムが挙げられる。かかる水素化の結果得られた生成物をH-NMRで分析することにより、主鎖構造中の炭素-炭素二重結合の存否を、芳香族環構造中の不飽和結合と区別して分析することができる。したがって、かかるH-NMRによる分析により、非芳香族性の不飽和結合が選択的に水素化されたか否かを確認しうる。
【0028】
重合体が、芳香環構造を有するノルボルネン系単量体単位を含む場合、重合体中の芳香環構造を有するノルボルネン系単量体単位の量は、好ましくは25重量%以上、より好ましくは40重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。重合体中の芳香環構造を有するノルボルネン系単量体単位の量が下限値以上であると、応力複屈折Cを高くすることができ、延伸前フィルムを延伸する際の延伸倍率を抑えつつ光学フィルムのRthを高くすることができる。
【0029】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂に含まれる重合体の分子量は光学フィルムの使用目的に応じて適宜選定されるが、溶媒としてシクロヘキサン(樹脂が溶解しない場合はトルエン)を用いるゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレン(溶媒がトルエンのときは、ポリスチレン)換算の重量平均分子量(Mw)で、好ましくは10000~100000、より好ましくは15000~80000、特に好ましくは20000~60000である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、フィルムの機械的強度及び成形性が高度にバランスされ好適である。
【0030】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂に含まれる重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、特に制限されないが、通常1.0~10.0、好ましくは1.0~5.0、より好ましくは1.0~3.5の範囲である。
【0031】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、重合体以外の任意成分を含有しうる。任意成分としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、強化剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、顔料、有機又は無機の充填剤、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止剤、及び抗菌剤が挙げられる。
【0032】
紫外線吸収剤の例は、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、及び無機粉体が挙げられる。好適な紫外線吸収剤の例は、2,2’-メチレンビス(4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,4-ジ-tert-ブチル-6-(5-クロロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノンが挙げられる。特に好適なものの例は、2,2’-メチレンビス(4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール)が挙げられる。
【0033】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂が紫外線吸収剤を含有する場合、紫外線吸収剤の含有量は、熱可塑性ノルボルネン樹脂100重量%当たり0.5~5重量%が好ましい。
【0034】
(熱可塑性ノルボルネン系樹脂の物性値)
本発明において、熱可塑性ノルボルネン系樹脂の応力複屈折Cは2900×10-12Pa-1よりも大きい。熱可塑性ノルボルネン系樹脂の応力複屈折Cは、好ましくは2910×10-12Pa-1以上、より好ましくは3000×10-12Pa-1以上であり、好ましくは8000×10-12Pa-1以下、より好ましくは6000×10-12Pa-1以下である。熱可塑性ノルボルネン系樹脂の応力複屈折Cを2900×10-12Pa-1よりも大きくすることにより、延伸前フィルムを延伸する際の延伸倍率を抑えつつ光学フィルムのRthを高くすることができる。熱可塑性ノルボルネン系樹脂の応力複屈折Cを上限値以下とすることにより、フィルムのReおよびRthを制御しやすくなり、面内のバラツキをおさえることができる。
【0035】
応力複屈折Cは、熱可塑性ノルボルネン系樹脂に含まれる重合体を製造する際に用いる単量体の割合を変えることによって制御することが可能である。例えば上述の芳香環構造を有するノルボルネン系単量体の割合を多くすると応力複屈折Cを大きくしうる。
【0036】
応力複屈折Cは、例えば以下の方法により測定しうる。
熱可塑性ノルボルネン系樹脂をシート状に成形してサンプルを作製し、このサンプルの両端をクリップで固定した後に、片方のクリップに所定の重さ(例えば160g)の重りを固定する。次いで、所定温度(例えば樹脂のガラス転移温度(Tg)+5℃)に設定したオーブン内に、重りを固定していない方のクリップを支持点にして、所定時間(例えば1時間)シートを吊るして延伸処理を行う。延伸処理を行ったサンプルシートを、ゆっくりと冷やして室温まで戻し、これを測定試料とする。当該測定試料について、複屈折を用いて、測定試料中心部のレタデーション値(anm)と、測定試料中心部の厚み(bmm)とを測定する。当該測定値(a、b)を用いて、下記式(1)によりδn値を算出する。
δn=a×(1/b)×10-6 (1)
【0037】
当該δn値及びサンプルに加えた応力(上記の場合は、所定の重りを固定した際に加わった応力)を用いて、下記式(2)によりCを算出することができる。
=δn/応力 (2)
【0038】
熱可塑性ノルボルネン樹脂のガラス転移温度Tgは、125℃以上である。ガラス転移温度Tgは、好ましくは130℃以上、より好ましくは135℃以上であり、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下である。ガラス転移温度Tgを125℃以上とすることにより、光学フィルムの耐熱性及び耐久性を優れたものとしうる。Tgは、示差走査熱量分析計を用いて測定しうる。
【0039】
(延伸前フィルム)
光学フィルムの材料となる、延伸前フィルムは、上述の熱可塑性ノルボルネン系樹脂からなるフィルムである。
延伸前フィルムは、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を、公知の方法、例えば、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などにより、フィルム状に成形することにより製造しうる。
【0040】
(光学フィルム)
光学フィルムは、延伸前フィルムを延伸することにより得られる。延伸前フィルムを延伸して光学フィルムとする際の延伸の条件は、所望の光学特性が得られるよう適宜選択しうる。例えば、延伸前フィルムを延伸して光学フィルムとする際の延伸の態様は、一軸延伸、二軸延伸(同時二軸延伸、遂次二軸延伸)等の任意の態様としうる。これらの態様のうち、二軸延伸が好ましい。また、延伸前フィルムが長尺状のフィルムである場合、延伸の方向は、縦方向(長尺状のフィルムの長手方向に平行な方向)、横方向(長尺状のフィルムの幅方向に平行な方向)、及び斜め方向(縦方向でも横方向でも無い方向)のいずれであってもよい。
【0041】
延伸前フィルムを延伸して光学フィルムとする際の延伸倍率は、好ましくは1.4以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは2.2以下、より好ましくは2.1以下である。延伸倍率を前記範囲の上限値以下とすると、より有効にデラミネーションの発生を抑制することができ、延伸倍率を前記範囲の下限値以上とすると、Rthを高くすることができる。MD方向及びTD方向の二軸延伸により延伸前フィルムを延伸する場合は、MD方向の延伸倍率とTD方向の延伸倍率との積が上記範囲となるようにすると好ましい。
【0042】
延伸前フィルムを延伸して光学フィルムとする際の延伸温度は、好ましくはTg℃以上、より好ましくは(Tg+5)℃以上であり、一方好ましくは(Tg+40)℃以下、より好ましくは(Tg+30)℃以下である。延伸温度が前記範囲であることにより均一な膜厚の光学フィルムが得られる。
【0043】
(光学フィルムの物性値)
光学フィルムの厚みdは、好ましくは30μm以上、より好ましくは40μm以上であり、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下である。光学フィルムの厚みを下限値以上とすることによりデラミネーションの発生を有効に抑制することができ、光学フィルムの厚みを上限値以下とすることにより、光学フィルムの組み込まれる装置を薄型化することができる。
【0044】
本発明において、光学フィルムの厚みdに対する、厚み方向のレタデーションRthの比(Rth/d)は、3.5×10-3以上である。Rth/dは好ましくは3.5×10-3以上、より好ましくは4.0×10-3以上であり、好ましくは8.0×10-3以下、より好ましくは6.0×10-3以下である。Rth/dを3.5×10-3以上とすることによりRthが高く厚みの小さい光学フィルムとすることができ、これにより光学補償性に優れたフィルムを得ることができる。Rth/dを上限値以下とすることによりデラミネーションの発生をより有効に抑制することができる。
【0045】
光学フィルムの面内方向のレタデーションReは好ましくは40nm以上、より好ましくは50nm以上であり、好ましくは80nm以下、より好ましくは70nm以下である。Reを下限値以上とすることにより位相差発現性を良好とすることができ、Reを上限値以下とすることにより、面内のバラツキを抑えることができる。レタデーションReは表示装置の設計に適合するよう、上記範囲内から適宜選択されうる。
【0046】
(光学積層体)
本発明の光学積層体は、本発明の光学フィルムと、その上に設けられた偏光板とを備える。
【0047】
偏光板としては、二色性物質含有のポリビニルアルコール系偏光フィルム等からなる偏光子の片側又は両側に、例えば接着層を介して、保護層となるフィルム(保護フィルム)を接着したものを用いうる。
【0048】
偏光子(偏光フィルム)としては、例えばポリビニルアルコールや部分ホルマール化ポリビニルアルコール等のビニルアルコール系重合体よりなるフィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理等の処理を施したものを用いることができる。偏光子としては、自然光を入射させると直線偏光を透過するものを用いうる。
【0049】
偏光子(偏光フィルム)の片側又は両側に設ける透明保護層となる保護フィルム素材としては、透明フィルムを用いることができる。透明フィルムとしては、透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮蔽性等に優れる樹脂からなるフィルム等が好ましく用いられる。このような樹脂の例としては、トリアセチルセルロースの如きアセテート系樹脂やポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、アクリル系樹脂等があげられる。複屈折が小さいという観点から、アセテート系樹脂又はノルボルネン系樹脂が好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、ノルボルネン系樹脂が特に好ましい。
保護フィルムの厚さは、任意であるが一般には偏光板の薄型化などを目的に500μm以下、好ましくは5~300μm、特に好ましくは5~150μmである。
【0050】
光学フィルムと、偏光板との積層は、これらを接着する層を介して、これらを貼り合わせることにより行いうる。かかる層の例としては、接着剤の層、及び粘着剤の層が挙げられる。接着剤又は粘着剤としては、例えば、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性や透明性等の観点から、アクリル系のものが好ましい。
本発明の光学積層体においては、積層する偏光板の保護フィルムを本発明の光学フィルムが兼ねることができ、部材の薄型化が可能である。また、光学フィルムと偏光板の積層を、ロールトゥロールで行うことができ、長尺状の光学積層体を得ることができる。光学積層体における光学フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角は90°±1°の範囲内としうる。
【0051】
本発明の光学積層体の厚みは、好ましくは30μm以上、より好ましくは40μm以上であり、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下である。
【0052】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は本発明の光学積層体を備える。本発明の液晶表示装置は、本発明の光学積層体を液晶セルの少なくとも片側に備える。
液晶表示装置において、光学フィルムは、通常、液晶表示装置の液晶セルと視認側偏光子との間に設けられる。このような構成において、光学フィルムは、視野角補償フィルムとして機能できる。
【0053】
液晶セルは、例えば、インプレーンスイッチング(IPS)モード、バーチカルアラインメント(VA)モード、マルチドメインバーチカルアラインメント(MVA)モード、コンティニュアスピンホイールアラインメント(CPA)モード、ハイブリッドアラインメントネマチック(HAN)モード、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、オプチカルコンペンセイテッドベンド(OCB)モードなど、任意のモードの液晶セルを用いうる。
【0054】
液晶セルの両側に偏光板を設ける場合、偏光板は同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0055】
本発明の液晶表示装置においては、本発明の光学積層体と液晶セルとを接着するために、粘着層を設けうる。粘着層は、アクリル系等の従来公知の粘着剤を用いて適宜形成することができる。中でも、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性等の点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層であることが好ましい。また、微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層等としうる。
【実施例
【0056】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。以下の操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中にて行った。
【0057】
[重合体の物性値の測定方法及び算出方法]
(重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定)
重合体(開環重合体及び重合体(1)~(3)、重合体(C1)~(C5))の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、シクロヘキサンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリイソプレン換算値として求めた。
標準ポリイソプレンとしては、東ソー社製標準ポリイソプレン(Mw=602、1390、3920、8050、13800、22700、58800、71300、109000、280000)を用いた。
測定は、東ソー社製カラム(TSKgelG5000HXL、TSKgelG4000HXL及びTSKgel G2000HXL)を3本直列に繋いで用い、流速1.0mL/分、サンプル注入量100μL、カラム温度40℃の条件で行った。
分子量分布(Mw/Mn)は、上記方法により測定した測定値を用いて算出した。
【0058】
(ガラス転移温度(Tg)の測定)
重合体(1)~(3)、重合体(C1)~(C5)のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析計(ナノテクノロジー社製、製品名:DSC6220SII)を用いて、JIS K 6911に基づき、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0059】
(応力複屈折Cの測定)
重合体(1)~(3)、重合体(C1)~(C5)をそれぞれ、35mm×10mm×1mmのシート状に成形してサンプルを作製した。このサンプルの両端をクリップで固定した後に、片方のクリップに160gの重りを固定した。次いで、温度を重合体のガラス転移温度(Tg)+5℃に設定したオーブン内に、重りを固定していない方のクリップを支持点にして、1時間シートを吊るして延伸処理を行った後、ゆっくりと冷やして室温まで戻し、これを測定試料とした。
前記測定試料について、複屈折計(フォトニックラティス製、WPA-100)を用いて波長650nmの光における、測定試料中心部のレタデーション値を測定した(この測定値をanmとする。)。また、測定試料中心部の厚みを測定した(この測定値をbmmとする。)。
測定値a及びbを用い、下記式(1)によりδn値を算出した。
δn=a×(1/b)×10-6 (1)
当該δn値及びサンプルに加えた応力を用い、下記式(2)によりCを算出した。
=δn/応力 (2)
【0060】
(ノルボルネン系開環共重合体水素化物における、芳香環の存否の確認)
水素化前の重合体及び水素化された重合体を、H-NMRにより分析した。分析に際して、溶媒としては重クロロホルムを用いた。分析の結果から、非芳香族性の不飽和結合の水素化率及び芳香族性の不飽和結合の水素化率を求めた。これらの結果から、ノルボルネン系開環共重合体水素化物における、芳香環の存否を確認した。
【0061】
[製造例1:重合体(1)の製造]
(1-1)開環重合体の製造
内部を窒素置換したガラス製反応容器に、重合触媒である(1,3-ジメシチルイミダゾリジン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド0.05重量部、トルエン500重量部、単量体として1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレン(MTF)50重量部、テトラシクロドデセン(TCD)20重量部、ジシクロペンタジエン(DCPD)30重量部、及び連鎖移動剤として1-ヘキセンを0.75重量部加え、全容を60℃で2時間撹拌し、開環重合を行った。得られた開環重合体のMwは3.3×10、分子量分布(Mw/Mn)は2.3であった。また単量体の重合体への転化率は100%であった。
【0062】
(1-2)重合体(1)の製造
次いで、(1-1)で得られた開環重合体を含む反応溶液300部を攪拌器付きオートクレーブに移し、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(以下、「ルテニウム触媒」と略記する。)0.0043部を添加し、水素圧4.5MPa、160℃で4時間水素添加反応を行なった。
水素化反応終了後、得られた溶液を大量のイソプロパノール中に注ぎ、重合体(水素化物)を沈殿させた。得られた重合体を濾取した後に、真空乾燥機(220℃、1Torr)で6時間乾燥させ、重合体(1)を得た。重合体(1)のMwは4.3×10、Mw/Mnは2.5であった。また重合体(1)のTgは128℃、Cは、3900×10-12Pa-1であった。
得られた重合体の、H-NMRによる分析の結果、重合体(1)においては、非芳香族性の不飽和結合が選択的に水素化され、一方芳香族性の不飽和結合が残っていることが確認された。
【0063】
[製造例2:重合体(2)の製造]
(2-1)開環重合体の製造
製造例1の(1-1)において、単量体(MTF、TCD及びDCPD)の添加量を、MTF40重量部、TCD35重量部、DCPD25重量部としたこと以外は製造例1の(1-1)と同一の操作を行い、開環重合体を得た。開環重合体のMwは3.1×10、分子量分布は2.2であった。単量体の重合体への転化率は100%であった。
【0064】
(2-2)重合体(2)の製造
製造例1の(1-2)において、(1-1)で得られた開環重合体を含む反応溶液300部に代えて、(2-1)で得られた開環重合体を含む反応溶液300部を用いたこと以外は(1-2)と同一の操作を行い、重合体(2)を得た。重合体(2)のMwは4.0×10、Mw/Mnは2.4であった。重合体(2)のTgは136℃、Cは、3200×10-12Pa-1であった。
得られた重合体の、H-NMRによる分析の結果、重合体(2)においては、非芳香族性の不飽和結合が選択的に水素化され、一方芳香族性の不飽和結合が残っていることが確認された。
【0065】
[製造例3:重合体(3)の製造]
(3-1)開環重合体の製造
製造例1の(1-1)において、単量体(MTF、TCD及びDCPD)の添加量を、MTF25重量部、TCD35重量部、DCPD40重量部としたこと以外は製造例1の(1-1)と同一の操作を行い、開環重合体を得た。開環重合体のMwは3.2×10、分子量分布は2.4であった。単量体の重合体への転化率は100%であった。
【0066】
(3-2)重合体(3)の製造
製造例1の(1-2)において、(1-1)で得られた開環重合体を含む反応溶液300部に代えて、(3-1)で得られた開環重合体を含む反応溶液300部を用いたこと以外は(1-2)と同一の操作を行い、重合体(3)を得た。重合体(3)のMwは4.2×10、Mw/Mnは2.6であった。重合体(3)のTgは128℃、Cは、3000×10-12Pa-1であった。
得られた重合体の、H-NMRによる分析の結果、重合体(3)においては、非芳香族性の不飽和結合が選択的に水素化され、一方芳香族性の不飽和結合が残っていることが確認された。
【0067】
[製造例4:重合体(C1)の製造]
(4-1)開環重合体の製造
製造例1の(1-1)において、単量体(MTF、TCD及びDCPD)の添加量を、MTF22重量部、TCD38重量部、DCPD40重量部としたこと以外は同一の操作を行い、開環重合体を得た。開環重合体のMwは3.2×10、分子量分布は2.3であった。単量体の重合体への転化率は100%であった。
【0068】
(4-2)重合体(C1)の製造
製造例1の(1-2)において、(1-1)で得られた開環重合体を含む反応溶液300部に代えて、(4-1)で得られた開環重合体を含む反応溶液300部を用いたこと以外は(1-2)と同一の操作を行い、重合体(C1)を得た。重合体(C1)のMwは4.1×10、Mw/Mnは2.5であった。重合体(C1)のTgは129℃、Cは、2850×10-12Pa-1であった。
得られた重合体の、H-NMRによる分析の結果、重合体(C1)においては、非芳香族性の不飽和結合が選択的に水素化され、一方芳香族性の不飽和結合が残っていることが確認された。
【0069】
[製造例5:重合体(C2)の製造]
(5-1)開環重合体の製造
製造例1の(1-1)において、単量体(MTF、TCD及びDCPD)の添加量を、MTF25重量部、TCD35重量部、DCPD40重量部としたこと以外は製造例1の(1-1)と同一の操作を行い、開環重合体を得た。開環重合体のMwは3.2××10、分子量分布は2.4であった。単量体の重合体への転化率は100%であった。
【0070】
(5-2)重合体(C2)の製造
次いで、(5-1)で得られた開環重合体を含む反応溶液300部を攪拌器付きオートクレーブに移し、ケイソウ土担持ニッケル触媒(日揮化学社製、製品名「T8400RL」、ニッケル担持率57%)3部添加し、水素圧4.5MPa、160℃で4時間水素添加反応を行なった。
水素化反応終了後、得られた溶液をラジオライト#500を濾過床として、圧力0.25MPaで加圧濾過(石川島播磨重工社製、製品名「フンダバックフィルター」)して水素化触媒を除去し、無色透明な溶液を得た。得られた溶液を大量のイソプロパノール中に注ぎ、重合体を沈殿させた。得られた重合体を濾取した後に、真空乾燥機(220℃、1Torr)で6時間乾燥させ重合体(C2)を得た。重合体(C2)のMwは4.3×10、Mw/Mnは2.6であった。重合体(C2)のTgは136℃、Cは、1900×10-12Pa-1であった。
得られた重合体の、H-NMRによる分析の結果、重合体(C2)においては、非芳香族性の不飽和結合及び芳香族性の不飽和結合の両方が水素化されていることが確認された。
【0071】
[製造例6:重合体(C3)の製造]
(6-1)開環重合体の製造
製造例1の(1-1)において、単量体(MTF、TCD及びDCPD)の添加量を、MTF10重量部、TCD40重量部、DCPD50重量部としたこと以外は製造例1の(1-1)と同一の操作を行い、開環重合体を得た。開環重合体のMwは3.2×10、分子量分布は2.3であった。単量体の重合体への転化率は100%であった。
【0072】
(6-2)重合体(C3)の製造
次いで、(6-1)で得られた開環重合体を含む反応溶液300部を攪拌器付きオートクレーブに移し、ケイソウ土担持ニッケル触媒(日揮化学社製、製品名「T8400RL」、ニッケル担持率57%)3部添加し、水素圧4.5MPa、160℃で4時間水素添加反応を行なった。
水素化反応終了後、得られた溶液をラジオライト#500を濾過床として、圧力0.25MPaで加圧濾過(石川島播磨重工社製、製品名「フンダバックフィルター」)して水素化触媒を除去し、無色透明な溶液を得た。得られた溶液を大量のイソプロパノール中に注ぎ、重合体を沈殿させた。得られた重合体を濾取した後に、真空乾燥機(220℃、1Torr)で6時間乾燥させ重合体(C3)を得た。重合体(C3)のMwは4.1×10、Mw/Mnは2.5であった。重合体(C3)のTgは128℃、Cは、2200×10-12Pa-1であった。
得られた重合体の、H-NMRによる分析の結果、重合体(C3)においては、非芳香族性の不飽和結合及び芳香族性の不飽和結合の両方が水素化されていることが確認された。
【0073】
[製造例7:重合体(C4)の製造]
(7-1)開環重合体の製造
製造例1の(1-1)において、単量体(MTF、TCD及びDCPD)の添加量を、MTF5重量部、TCD5重量部、DCPD90重量部としたこと以外は製造例1の(1-1)と同一の操作を行い、開環重合体を得た。開環重合体のMwは3.3×10、分子量分布は2.3であった。単量体の重合体への転化率は100%であった。
【0074】
(7-2)重合体(C4)の製造
次いで、(7-1)で得られた開環重合体を含む反応溶液300部を攪拌器付きオートクレーブに移し、ケイソウ土担持ニッケル触媒(日揮化学社製、製品名「T8400RL」、ニッケル担持率57%)3部添加し、水素圧4.5MPa、160℃で4時間水素添加反応を行なった。
水素化反応終了後、得られた溶液をラジオライト#500を濾過床として、圧力0.25MPaで加圧濾過(石川島播磨重工社製、製品名「フンダバックフィルター」)して水素化触媒を除去し、無色透明な溶液を得た。得られた溶液を大量のイソプロパノール中に注ぎ、重合体を沈殿させた。得られた重合体を濾取した後に、真空乾燥機(220℃、1Torr)で6時間乾燥させ重合体(C4)を得た。重合体(C4)のMwは3.9×10、Mw/Mnは2.7であった。重合体(C4)のTgは102℃、Cは、3100×10-12Pa-1であった。
得られた重合体の、H-NMRによる分析の結果、重合体(C4)においては、非芳香族性の不飽和結合及び芳香族性の不飽和結合の両方が水素化されていることが確認された。
【0075】
[製造例8:重合体(C5)の製造]
(8-1)開環重合体の製造
製造例1の(1-1)において、単量体として、MTF、TCD及びDCPDに代えて、TCD50重量部及び8-メチルテトラシクロドデセン(以下MTDと略すことがある)50重量部を用いたこと以外は製造例1の(1-1)と同一の操作を行い、開環重合体を得た。開環重合体のMwは4.0×10、分子量分布は2.0であった。単量体の重合体への転化率は100%であった。
【0076】
(8-2)重合体(C5)の製造
次いで、(8-1)で得られた重合反応溶液300部を攪拌器付きオートクレーブに移し、ケイソウ土担持ニッケル触媒(日揮化学社製、製品名「T8400RL」、ニッケル担持率57%)3部添加し、水素圧4.5MPa、160℃で4時間水素添加反応を行なった。
水素化反応終了後、得られた溶液をラジオライト#500を濾過床として、圧力0.25MPaで加圧濾過(石川島播磨重工社製、製品名「フンダバックフィルター」)して水素化触媒を除去し、無色透明な溶液を得た。得られた溶液を大量のイソプロパノール中に注ぎ、重合体を沈殿させた。得られた重合体を濾取した後に、真空乾燥機(220℃、1Torr)で6時間乾燥させ重合体を得た。当該重合体のTgは158℃であった。
この重合体28重量部、無水マレイン酸10重量部及びジクミルパーオキシド3重量部をt-ブチルベンゼン130重量部に溶解し、140℃で6時間反応させた。反応生成物溶液をメタノール中に注ぎ、反応生成物を凝固させた。この凝固物を真空乾燥機(220℃、1Torr)で6時間乾燥させ、マレイン酸変性開環重合体水素添加物(重合体(C5))を得た。重合体(C5)のMwは5.6×10、Mw/Mnは2.5であった。重合体(C5)のTgは170℃、Cは、2000×10-12Pa-1、マレイン酸基含有率が25モル%であった。
【0077】
[評価方法]
(延伸フィルムのRth、Re、dの測定及びRth/dの算出)
実施例および比較例のそれぞれで得られた延伸フィルムの、厚み方向のレタデーションRth及び面内方向のレタデーションReは、位相差計(AXOMETRICS社製「AXOSCAN」)を用いて、測定波長550nmで測定した。実施例および比較例のそれぞれで得られた延伸フィルムの厚みdは、スナップゲージID-C112BS((株)ミツトヨ製)により測定した。
測定したRth値を、延伸フィルムの厚みdで割算して、Rth/dを算出し、以下の評価基準により評価し、結果を表1及び表2に示した。表1及び表2においては、Rth/dを上段に、評価結果を下段の括弧内に記載した。
良:3.5×10-3以上
不良:3.5×10-3未満
【0078】
(配向角精度)
実施例および比較例のそれぞれで得られた延伸フィルムの配向角θは、偏光顕微鏡(オリンパス製、偏光顕微鏡「BX51」)を用いて測定を行い、絶対値を配向角として算出した。延伸フィルムの幅方向に対して50mmの間隔、長さ方向に対して10mの間隔で配向角θの測定を行った。それらの測定結果の標準偏差を算出し、配向角精度θσとし、結果を表1および表2に示した。配向角精度は、小さいほうが配向角のばらつきが小さく、好ましい。
【0079】
(デラミネーションの評価方法)
<剥離強度の測定方法>
被着体として、ノルボルネン系重合体を含む樹脂のフィルム(ゼオノアフィルム、ガラス転移温度160℃、厚み100μm、日本ゼオン社製、延伸処理は特にされていないもの)を用意した。測定対象フィルム(実施例および比較例のそれぞれで得られた延伸フィルム)の片面及び被着体の片面に、コロナ処理を施した。測定対象フィルムのコロナ処理を施した面、及び被着体のコロナ処理した面の両方に接着剤を付着させ、接着剤を付着させた面同士を貼り合わせた。この際、接着剤としてはUV接着剤CRBシリーズ(トーヨーケム社製)を用いた。その後、無電極UV照射装置(ヘレウス社製)を用い、ランプとしてDバルブを使用し、ピーク照度100mW/cm、積算光量3000mJ/cmの条件でUV照射を行い、接着剤を硬化させた。これにより、測定対象フィルム及び被着体を備えるサンプルフィルムを得た。
【0080】
得られたサンプルフィルムについて、90度剥離試験を実施した。即ち、サンプルフィルムを15mmの幅に裁断して、測定対象フィルム側をスライドガラスの表面に粘着剤にて貼り合わせた。この際、粘着剤としては、両面粘着テープ(日東電工社製、品番「CS9621」)を用いた。高性能型デジタルフォースゲージZP-5N(イマダ社製)の先端に被着体を挟み、スライドガラスの表面の法線方向に300mm/分の速度で被着体を牽引し、牽引の力の大きさを剥離強度として測定した。剥離強度の評価は以下の評価基準により行い、結果を表1および表2に示した。表1及び表2においては、測定値を上段に、評価結果を下段の括弧内に記載した。
良:1.0N/15mm以上
不良:1.0N/15mm未満
【0081】
<参考例:剥離強度の測定方法の妥当性の評価>
上述の測定方法による剥離強度の測定が、被着体が偏光子である場合の剥離強度の評価を反映したものであると言えるか否かを評価する実験を行った。
特開2005-70140号公報の実施例1に記載される方法と同様の方法により、偏光フィルム及び接着剤を用意した。また、測定対象フィルムとして、本願の実施例1で得られた延伸フィルムを用意した。測定対象フィルムの片面にコロナ処理を施し、この面を、偏光フィルムの片方の表面に、接着剤を介して貼合した。偏光フィルムのもう片方の表面には、トリアセチルセルロースフィルムを、接着剤を介して貼合した。その後、80℃で7分間乾燥させて接着剤を硬化させて、サンプルフィルムを得た。得られたサンプルフィルムについて、上に述べた<剥離強度の測定方法>におけるものと同様の90度剥離試験を行った。その結果、本願実施例1で得られた値と同様の剥離強度の値が得られた。このことから、上に述べた測定方法による剥離強度の測定が、被着体が偏光子である場合の剥離強度の評価を反映したものであると言える。
【0082】
(85℃、500時間経過後のRth変化率)
実施例および比較例のそれぞれの延伸フィルムについて、85℃、500時間の耐久試験を行い、試験前後の延伸フィルムのRthを測定し、その変化率を下記式により算出し、以下の基準により評価した。変化率は小さい方が耐熱性が高く、好ましい。表1及び表2においては、変化率を上段に、評価結果を下段の括弧内に記載した。
変化率(%)=(試験前のRth-試験後のRth)/試験前のRth×100
良:変化率が3%以下
不良:変化率が3%より大きい
【0083】
(60℃、湿度90%、500時間経過後のRth変化率)
実施例および比較例のそれぞれの延伸フィルムについて、60℃、湿度90%、500時間の耐久試験を行い、試験前後の延伸フィルムのRthを測定し、その変化率を下記式により算出し、以下の基準により評価した。変化率は小さい方が耐熱性及び耐湿性が高く好ましい。表1及び表2においては、変化率を上段に、評価結果を下段の括弧内に記載した。
変化率(%)=(試験前のRth-試験後のRth)/試験前のRth×100
良:変化率が3%以下
不良:変化率が3%より大きい
【0084】
(吸水率の測定)
実施例および比較例のそれぞれの延伸フィルムの一部を切断して試験片(サイズ:100mm×100mm)を用意し、その試験片の質量を測定する。その後、この試験片を、23℃の水中に24時間浸漬して、浸漬後の試験片の質量を測定する。そして、浸漬前の試験片の質量に対する、浸漬によって増加した試験片の質量の割合を、吸水率(%)として算出した。吸水率は小さい方が好ましい。
【0085】
(実施例1)
(1-1)延伸前フィルムの製造
製造例1で製造した重合体(1)を二軸押出機に投入し、熱溶融押出成形によりストランド状の成形体に成形した。この成形体をストランドカッターにて細断して、重合体(1)を含む樹脂のペレットを得た。
【0086】
樹脂のペレットを100℃で5時間乾燥した後、常法によって該ペレットを押出し機に供給して250℃で溶融してダイから冷却ドラム上に吐出し、厚さ110μmの延伸前フィルムを得た。
【0087】
(1-2)延伸フィルムの製造
次に、ロール間でのフロート方式を用いた縦延伸機にて、延伸前フィルムを138℃(Tg+10℃)で、縦方向に1.2倍に延伸した。縦延伸されたフィルムをさらに、テンター法を用いた横延伸機に供給し、引取り張力とテンターチェーン張力とを調整しながら、138℃(Tg+10℃)の温度で横方向に1.4倍に延伸し、二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムは、Reが60nm、Rthが320nm、厚さdが65μmであった。得られた二軸延伸フィルムについて、評価試験を行い、結果を表1に示した。
【0088】
[実施例2]
(2-1)延伸前フィルムの製造
実施例1の(1-1)において、重合体(1)に代えて、製造例2で製造した重合体(2)を用いたこと以外は、実施例1の(1-1)と同様の操作を行い、重合体(2)を含む厚さ118μmの延伸前フィルムを得た。
【0089】
(2-2)延伸フィルムの製造
次に、ロール間でのフロート方式を用いた縦延伸機にて、延伸前フィルムを146℃(Tg+10℃)で、縦方向に1.25倍に延伸した。縦延伸されたフィルムをさらに、テンター法を用いた横延伸機に供給し、引取り張力とテンターチェーン張力とを調整しながら、146℃(Tg+10℃)の温度で横方向に1.45倍に延伸し、二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムは、Reが60nm、Rthが310nm、厚さdが65μmであった。得られた二軸延伸フィルムについて、評価試験を行い、結果を表1に示した。
【0090】
[実施例3]
(3-1)延伸前フィルムの製造
実施例1の(1-1)において、重合体(1)に代えて、製造例3で製造した重合体(3)を用いたこと以外は、実施例1の(1-1)と同様の操作を行い、重合体(3)を含む厚さ127μmの延伸前フィルムを得た。
【0091】
(3-2)延伸フィルムの製造
次に、ロール間でのフロート方式を用いた縦延伸機にて、延伸前フィルムを138℃(Tg+10℃)で、縦方向に1.3倍に延伸した。縦延伸されたフィルムをさらに、テンター法を用いた横延伸機に供給し、引取り張力とテンターチェーン張力とを調整しながら、138℃(Tg+10℃)の温度で横方向に1.5倍に延伸し、二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムは、Reが60nm、Rthが300nm、厚さdが65μmであった。得られた二軸延伸フィルムについて、評価試験を行い、結果を表1に示した。
【0092】
[比較例1]
(C1-1)延伸前フィルムの製造
実施例1の(1-1)において、重合体(1)に代えて、製造例4で製造した重合体(C1)を用いたこと及び溶融樹脂の吐出量を増やしたこと以外は、実施例1の(1-1)と同様の操作を行い、重合体(C1)を含む厚さ180μmの延伸前フィルムを得た。
【0093】
(C1-2)延伸フィルムの製造
次に、ロール間でのフロート方式を用いた縦延伸機にて、延伸前フィルムを139℃(Tg+10℃)で、縦方向に1.4倍に延伸した。縦延伸されたフィルムをさらに、テンター法を用いた横延伸機に供給し、引取り張力とテンターチェーン張力とを調整しながら、139℃(Tg+10℃)の温度で横方向に1.6倍に延伸し、二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムは、Reが60nm、Rthが300nm、厚さが80μmであった。得られた二軸延伸フィルムについて、評価試験を行い、結果を表1に示した。
【0094】
[比較例2]
(C2-1)延伸前フィルムの製造
実施例1の(1-1)において、重合体(1)に代えて、製造例5で製造した重合体(C2)を用いたこと及び溶融樹脂の吐出量を増やしたこと以外は、実施例1の(1-1)と同様の操作を行い、重合体(C2)を含む厚さ198μmの延伸前フィルムを得た。
【0095】
(C2-2)延伸フィルムの製造
次に、ロール間でのフロート方式を用いた縦延伸機にて、延伸前フィルムを146℃(Tg+10℃)で、縦方向に1.65倍に延伸した。縦延伸されたフィルムをさらに、テンター法を用いた横延伸機に供給し、引取り張力とテンターチェーン張力とを調整しながら、146℃(Tg+10℃)の温度で横方向に1.85倍に延伸し、二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムは、Reが60nm、Rthが250nm、厚さdが65μmであった。得られた二軸延伸フィルムについて、評価試験を行い、結果を表1に示した。
【0096】
[比較例3]
(C3-1)延伸前フィルムの製造
実施例1の(1-1)において、重合体(1)に代えて、製造例6で製造した重合体(C3)を用いたこと及び溶融樹脂の吐出量を増やしたこと以外は、実施例1の(1-1)と同様の操作を行い、重合体(C3)を含む厚さ188μmの延伸前フィルムを得た。
【0097】
(C3-2)延伸フィルムの製造
次に、ロール間でのフロート方式を用いた縦延伸機にて、延伸前フィルムを138℃(Tg+10℃)で、縦方向に1.6倍に延伸した。縦延伸されたフィルムをさらに、テンター法を用いた横延伸機に供給し、引取り張力とテンターチェーン張力とを調整しながら、138℃(Tg+10℃)の温度で横方向に1.8倍に延伸し、二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムは、Reが60nm、Rthが250nm、厚さdが65μmであった。得られた二軸延伸フィルムについて、評価試験を行い、結果を表2に示した。
【0098】
[比較例4]
(C4-1)延伸前フィルムの製造
実施例1の(1-1)において、重合体(1)に代えて、製造例7で製造した重合体(C4)を用いたこと以外は、実施例1の(1-1)と同様の操作を行い、重合体(C4)を含む厚さ136μmの延伸前フィルムを得た。
【0099】
(C4-2)延伸フィルムの製造
次に、ロール間でのフロート方式を用いた縦延伸機にて、延伸前フィルムを112℃(Tg+10℃)で、縦方向に1.35倍に延伸した。縦延伸されたフィルムをさらに、テンター法を用いた横延伸機に供給し、引取り張力とテンターチェーン張力とを調整しながら、112℃(Tg+10℃)の温度で横方向に1.55倍に延伸し、二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムは、Reが60nm、Rthが300nm、厚さが65μmであった。得られた二軸延伸フィルムについて、評価試験を行い、結果を表2に示した。
【0100】
[比較例5]
(C5-1)延伸前フィルムの製造
実施例1の(1-1)において、重合体(1)に代えて、製造例6で製造した重合体(C3)を用いたこと以外は、実施例1の(1-1)と同様の操作を行い、重合体(C3)を含む厚さ134μmの延伸前フィルムを得た。
【0101】
(C5-2)延伸フィルムの製造
次に、ロール間でのフロート方式を用いた縦延伸機にて、延伸前フィルムを138℃(Tg+10℃)で、縦方向に1.2倍に延伸した。縦延伸されたフィルムをさらに、テンター法を用いた横延伸機に供給し、引取り張力とテンターチェーン張力とを調整しながら、138℃(Tg+10℃)の温度で横方向に1.4倍に延伸し、二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムは、Reが60nm、Rthが260nm、厚さが80μmであった。得られた二軸延伸フィルムについて、評価試験を行い、結果を表2に示した。
【0102】
[比較例6]
(C6-1)延伸前フィルムの製造
実施例1の(1-1)において、重合体(1)に代えて、製造例8で製造した重合体(C5)を用いたこと及び溶融樹脂の吐出量を増やしたこと以外は、実施例1の(1-1)と同様の操作を行い、重合体(C5)を含む厚さ192μmの延伸前フィルムを得た。
【0103】
(C6-2)延伸フィルムの製造
次に、ロール間でのフロート方式を用いた縦延伸機にて、延伸前フィルムを180℃(Tg+10℃)で、縦方向に1.62倍に延伸した。縦延伸されたフィルムをさらに、テンター法を用いた横延伸機に供給し、引取り張力とテンターチェーン張力とを調整しながら、180℃(Tg+10℃)の温度で横方向に1.82倍に延伸し、二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムは、Reが60nm、Rthが250nm、厚さが65μmであった。得られた二軸延伸フィルムについて、評価試験を行い、結果を表2に示した。
【0104】
実施例及び比較例の評価結果を、下記の表に示す。下記の表において、略称の意味は、下記の通りである。
MRu:非芳香族性の不飽和結合が選択的に水素化され、芳香族性の不飽和結合が残っているMTF。
T:水素化TCD。
D:水素化DCPD。
M:水素化MTF(即ち、非芳香族性の不飽和結合及び芳香族性の不飽和結合の両方が水素化されたMTF)。
極性COP:極性基を有する環状オレフィン重合体。
MD×TD:縦方向の延伸倍率×横方向の延伸倍率。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
[結果]
表1および表2に示すように、本発明の要件を満たす実施例の延伸フィルムでは、延伸倍率が低いにもかかわらずRth/dが高く、デラミネーションの発生が抑制された。その結果、本発明の要件を満たす実施例のフィルムでは位相差発現性に優れ、厚み方向のレタデーションが高い視野角補償フィルムを提供することができることがわかった。