(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】合わせガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20231108BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20231108BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20231108BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
C03C27/12 N
B32B7/022
B32B17/10
B60J1/00 H
(21)【出願番号】P 2021505600
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2020004747
(87)【国際公開番号】W WO2020184014
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2019046106
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】定金 駿介
(72)【発明者】
【氏名】林 英明
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/122704(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/041106(WO,A1)
【文献】特表2009-534246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12,
B32B 17/06-17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲した車内側ガラス板と、
湾曲した車外側ガラス板と、前記車内側ガラス板と前記車外側ガラス板を接合する中間膜と、前記中間膜に封入された構造体と、を有する車両用の合わせガラスであって、
前記中間膜は、前記車内側ガラス板と接合する第1の中間膜と、前記車外側ガラス板と接合する第2の中間膜と、前記第1の中間膜と前記第2の中間膜の間に位置して前記構造体の外周を包囲する第3の中間膜と、を有し、
前記第1の中間膜と前記第2の中間膜の何れか薄い方の膜厚をti、前記構造体の厚さをtsとしたときに、ti/ts≧0.4を満たし、
前記構造体の曲げ弾性率をE
1[MPa]としたときに、tsとE
1との関係が、E
1×ts
3≧500を満た
し、
前記車内側ガラス板及び前記車外側ガラス板と前記構造体との曲げ形状が異なる合わせガラス。
【請求項2】
前記第1の中間膜と前記第2の中間膜の何れか薄い方の膜厚をti、前記構造体の厚さをtsとしたときに、ti/ts≧0.6を満たす請求項1に記載の合わせガラス。
【請求項3】
前記構造体の曲げ弾性率が、100MPa以上である請求項1又は2に記載の合わせガラス。
【請求項4】
前記構造体の曲げ弾性率が、1GPa以上である請求項1又は2に記載の合わせガラス。
【請求項5】
前記構造体の曲げ弾性率が、10GPa以上である請求項1又は2に記載の合わせガラス。
【請求項6】
前記構造体の端部から平面視で10mm内側の位置から、前記構造体の端部から平面視で10mm外側の位置までの領域において、前記合わせガラスの総厚の変化量が±100μm以下である請求項1乃至
5の何れ一項に記載の合わせガラス。
【請求項7】
前記第3の中間膜の幅が5mm以上である請求項1乃至
6の何れ一項に記載の合わせガラス。
【請求項8】
前記構造体は、前記構造体と電気的に接続される配線板を有し、
平面視において、前記配線板が前記構造体と接続される接続端部と前記車内側ガラス板の端部との距離が1mm以上であり、かつ、前記接続端部と前記車外側ガラス板の端部との距離が1mm以上である請求項1乃至
7の何れ一項に記載の合わせガラス。
【請求項9】
前記配線板は該合わせガラスの平面視において、視認可能な位置に配置されている請求項
8に記載の合わせガラス。
【請求項10】
該合わせガラスの総厚が、2.8mm以上10mm以下である請求項1乃至
9の何れ一項に記載の合わせガラス。
【請求項11】
前記構造体は、表示装置である、請求項1乃至
10の何れ一項に記載の合わせガラス。
【請求項12】
前記構造体は、照明装置である、請求項1乃至
10の何れ一項に記載の合わせガラス。
【請求項13】
前記構造体は、太陽光発電装置である、請求項1乃至
10の何れ一項に記載の合わせガラス。
【請求項14】
前記構造体は、調光装置である、請求項1乃至
10の何れ一項に記載の合わせガラス。
【請求項15】
前記第1の中間膜と前記第2の中間膜の何れか薄い方の膜厚tiが0.4mm以上である請求項1乃至14の何れ一項に記載の合わせガラス。
【請求項16】
前記構造体の厚さtsが0.5mm以上である請求項1乃至15の何れ一項に記載の合わせガラス。
【請求項17】
前記車内側ガラス板及び車外側ガラス板の板厚が2mm以上請求項1乃至16の何れ一項に記載の合わせガラス。
【請求項18】
前記合わせガラスはサイドガラスであり、前記構造体の全体が前記合わせガラスの外周から5mm以上離間する位置に配置されており、前記構造体に接続される配線板は前記合わせガラスの下辺から取り出す請求項1乃至17の何れ一項に記載の合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラス内に表示装置等の構造体を封入する技術が知られている。例えば、フロントガラスとして使用される合わせガラスの周縁領域に、フラットパネルディスプレイ等を封入したもの(例えば、特許文献1参照)、ヘッドアップディスプレイの表示領域に液晶ディスプレイを封入したもの(例えば、特許文献2参照)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/041106号
【文献】特表2009-534246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、合わせガラスが表示装置等の構造体を有する場合、構造体を被覆する中間膜の膜厚等が適切でないと、脱気不良が生じたり、構造体やガラス板が割れたりする場合があることを発明者らは見出した。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、表示装置等の構造体を有する合わせガラスにおいて、脱気不良及び構造体等の割れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本合わせガラスは、湾曲した車内側ガラス板と、湾曲した車外側ガラス板と、前記車内側ガラス板と前記車外側ガラス板を接合する中間膜と、前記中間膜に封入された構造体と、を有する車両用の合わせガラスであって、前記中間膜は、前記車内側ガラス板と接合する第1の中間膜と、前記車外側ガラス板と接合する第2の中間膜と、前記第1の中間膜と前記第2の中間膜の間に位置して前記構造体の外周を包囲する第3の中間膜と、を有し、前記第1の中間膜と前記第2の中間膜の何れか薄い方の膜厚をti、前記構造体の厚さをtsとしたときに、ti/ts≧0.4を満たし、前記構造体の曲げ弾性率をE1[MPa]としたときに、tsとE1との関係が、E1×ts3≧500を満たし、前記車内側ガラス板及び前記車外側ガラス板と前記構造体との曲げ形状が異なることを要件とする。
【発明の効果】
【0007】
開示の一実施態様によれば、表示装置等の構造体を有する合わせガラスにおいて、脱気不良及び構造体等の割れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る合わせガラスを例示する図である。
【
図2】表示装置の厚さについて説明する断面図である。
【
図3】表示装置の好適な配置について説明する図である。
【
図4】表示装置と電気的に接続される配線板の端部である接続端部と、ガラス板の端部との距離について説明する図である。
【
図5】サイドガラスにおける配線板の隠蔽について説明する図である。
【
図6】合わせガラスの総厚分布について説明する図である。
【
図7】合わせガラスの引張応力変化について説明する図である。
【
図8】実施例で作製した合わせガラスの寸法ついて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。又、各図面において、本発明の内容を理解しやすいように、大きさや形状を一部誇張している場合がある。
【0010】
なお、車両とは、代表的には自動車であるが、電車、船舶、航空機等を含む、ガラスを有する移動体を指すものとする。
【0011】
又、平面視とは合わせガラスの所定領域を合わせガラスの車内側の面の法線方向から視ることを指し、平面形状とは合わせガラスの所定領域を合わせガラスの車内側の面の法線方向から視た形状を指すものとする。
【0012】
図1は、本実施形態に係る合わせガラスを例示する図であり、
図1(a)は合わせガラスを車両に取り付けて車室内から車室外に視認した様子を模式的に示している。
図1(b)は、
図1(a)のA-A線に沿う断面図である。
【0013】
図1に示すように、合わせガラス20は、ガラス板21と、ガラス板22と、中間膜23と、表示装置25とを有する車両用の合わせガラスである。中間膜23は、例えば、ガラス板21と接合する中間膜231と、ガラス板22と接合する中間膜232と、中間膜231と中間膜232の間に位置して表示装置25の外周を包囲する中間膜233とを有している。中間膜231、232、及び233を特に区別する必要がない場合には、単に中間膜23と称する。
【0014】
なお、
図1では、合わせガラス20を平面的に示しているが、合わせガラス20は湾曲した形状であってもよい。又、
図1では、合わせガラス20を矩形状としているが、合わせガラス20の平面形状は矩形状には限定されず、台形状等を含む任意の形状として構わない。合わせガラス20は、車両用の窓ガラスとして用いられる。車両用の窓ガラスとは、例えば、車両用のフロントガラス、リアガラス、サイドガラス、ルーフガラス等である。
【0015】
ガラス板21は、合わせガラス20を車両に取り付けたときに車内側となる車内側ガラス板である。又、ガラス板22は、合わせガラス20を車両に取り付けたときに車外側となる車外側ガラス板である。ガラス板21及び22は、所定の曲率を有していてもよい。
【0016】
ガラス板21とガラス板22は互いに対向する一対のガラス板であり、中間膜23及び表示装置25は一対のガラス板の間に位置している。ガラス板21とガラス板22とは、中間膜23及び表示装置25を挟持した状態で固着されている。ガラス板21、ガラス板22、及び中間膜23の詳細については後述する。
【0017】
なお、遮蔽層を、例えば、合わせガラス20の周縁領域に帯状に設けてもよい。遮蔽層は、例えば、黒色顔料を含有する溶融性ガラスフリットを含むセラミックカラーペーストを塗布し、焼成することによって形成できるが、これに限定されない。遮蔽層は、黒色又は濃色顔料を含有する有機インクを塗布し、乾燥させることによって形成したものであってもよい。遮蔽層は、例えば、ガラス板21の車内側の面21aに設けてもよい。但し、遮蔽層は、必要に応じ、ガラス板22の車内側の面22aに設けてもよいし、ガラス板21の車内側の面21a及びガラス板22の車内側の面22aの両方に設けてもよい。
【0018】
合わせガラス20の周縁領域に不透明な遮蔽層が存在することで、合わせガラス20の周縁領域を車体に保持するウレタン等の樹脂の紫外線による劣化を抑制できる。又、表示装置25と電気的に接続される配線板(例えば、フレキシブルプリント基板)等を隠蔽できる。
【0019】
表示装置25は、中間膜23に封入された構造体の一例である。表示装置25のガラス板21側の面は中間膜231に被覆され、表示装置25のガラス板22側の面は中間膜232に被覆されている。又、表示装置25の外周(側面)は、額縁状の中間膜233に被覆されている。
【0020】
中間膜233の幅W(額縁の幅)は5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましく、20mm以上であることが更に好ましい。中間膜233の幅Wが5mm以上であると、表示装置25を十分に保護でき、10mm以上、20mm以上になるにつれて更に表示装置25を保護する効果が大きくなる。又、表示装置25の周囲のガラス板21及び22の応力変化が、面内よりも相対的に強度の弱いガラス板21及び22のエッジにかからないため、ガラス板21及び22の割れを抑制できる。
【0021】
表示装置25の端部とガラス板21及び22の端部とは、必ずしも平行でなくてもよい。表示装置25の端部とガラス板21及び22の端部とが平行でない場合、上記の中間膜233の幅W(額縁の幅)は、額縁の最も狭い部分の幅を指す。
【0022】
なお、中間膜23の外周はエッジ処理されていることが好ましい。すなわち、中間膜23の端部(エッジ)は、ガラス板21及び22の端部(エッジ)から大きく飛び出さないように処理されていることが好ましい。中間膜23の端部のガラス板21及び22の端部からの飛びだし量が150μm以下であると、外観を損なわない点で好適である。但し、合わせガラス20がサイドガラスである場合には、下辺はドアパネルにより隠蔽されるため、中間膜23の下辺のエッジ処理は必須ではない。
【0023】
表示装置25は、画像や文字等の情報を表示するパネル状の装置である。ここでいう情報は、特に限定されないが、例えば、車外の風景についての案内、道路交通情報、経路案内、宣伝広告等である。
【0024】
表示装置25の種類は、特に限定されないが、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Organic Electro-Luminescence)ディスプレイ、無機EL(Inorganic Electro-Luminescence)ディスプレイ、LED(発光ダイオード)ディスプレイ等である。表示装置25は、例えば、ガラス製やプラスチック製の基板と、表示素子(液晶表示素子や有機EL表示素子、無機EL表示素子、LED素子等)とを有する。表示装置25は、必要に応じて、基板や表示素子以外の構成要素(表示素子を被覆する保護層等)を有してもよい。表示装置25の各構成要素は、外部を視認可能とするために透明な素材から形成されてもよい。但し、表示装置25は、反射型であってもよい。なお、本実施形態に係る合わせガラス20を車両に取り付けたときに、表示装置25が画像や文字等の情報を表示する向きは、車内側であってもよいし、車外側であってもよい。
【0025】
表示装置25は、必要に応じて、合わせガラス20の略全体に配置してもよいし、一部のみに配置してもよい。表示装置25の平面形状は、例えば、合わせガラス20の平面形状よりも小さな矩形である。表示装置25の厚さtsは、例えば、0.1mm以上3mm以下である。
【0026】
合わせガラス20では、中間膜231の膜厚t1と中間膜232の膜厚t2の何れか薄い方の膜厚をti、表示装置25の厚さをtsとしたときに、『ti/ts≧0.4』・・・(1)を満たす。すなわち、合わせガラス20では、中間膜231及び232のうち薄い方の膜厚tiは、表示装置25の厚さtsの0.4倍以上である。
【0027】
式(1)を満たすことで、中間膜231及び232のクッション性が向上する。本発明の合わせガラス20を得るには、詳細については後述するが、ガラス板21、中間膜231、表示装置25及び中間膜233、中間膜232、ガラス板22の順に重ね合わせた積層体を準備し、例えばゴムバッグ等に積層体を入れ、ゴムバッグ内を減圧吸引(脱気処理)しながら加熱して予備圧着し、この予備圧着された積層体をオートクレーブの中に入れて加熱及び加圧し、本接着(本圧着)を行う。
【0028】
本発明において、式(1)を満たすと、中間膜231及び232のクッション性が向上する。そのため、合わせガラス20を作製する工程において、脱気不良を抑制(残留空気の排気性を向上)できると共に、ガラス板21及び22並びに表示装置25の割れを抑制できる。その結果、高品質な合わせガラス20を実現できる。
【0029】
特に、湾曲したガラス板21及び22との間に湾曲していない表示装置25を挟む場合のように、ガラス板21及び22と表示装置25との曲げ形状が異なる場合に、脱気不良やガラス板21及び22や、表示装置25の割れの抑制に関し、大きな効果を発揮する。
【0030】
又、表示装置25の厚さtsに対する中間膜231及び232のうち薄い方の膜厚tiが、『ti/ts≧0.6』・・・(2)を満たすことがより好ましい。すなわち、中間膜231及び232のうち薄い方の膜厚tiは、表示装置25の厚さtsの0.6倍以上であることがより好ましい。
【0031】
式(2)を満たすことで、中間膜231及び232のクッション性が更に向上する。そのため、上記の脱気不良や、ガラス板21及び22、表示装置25の割れを抑制する効果を更に向上できる。
【0032】
又、表示装置25の厚さをts[mm]、曲げ弾性率をE1[MPa]としたときに、tsとE1との関係が、E1×ts3≧500を満たす剛性の高い表示装置25を中間膜23に封入する場合に、脱気不良や、ガラス板21及び22、表示装置25の割れを抑制する観点から式(1)を満たすことが有効であり、式(2)を満たすことが更に有効である。
【0033】
又、E1×ts3≧1000を満たす更に剛性の高い表示装置25を中間膜23に封入する場合ほど、脱気不良や、ガラス板21及び22、表示装置25の割れを抑制する観点から特に式(2)を満たすことが有効である。例えば、表示装置25がプラスチック製の基板を有する場合のように、表示装置25の剛性が比較的低い場合には、式(1)を満たせば十分である。一方、表示装置25がガラス製の基板を有する場合のように、表示装置25の剛性が比較的高い場合には、式(2)を満たすことが有効である。
【0034】
すなわち、表示装置25がプラスチック製の基板から構成され、表示装置25の曲げ弾性率が100MPa以上となる場合は、本発明の合わせガラス20の構成が式(1)を満たすことにより、脱気不良や、ガラス板21及び22、表示装置25の割れを抑制する構造にできる。
【0035】
又、表示装置25がポリカーボネート製等の基板から構成され、表示装置25の曲げ弾性率が1GPa以上となる場合や、表示装置25がガラス製の基板から構成され、表示装置25の曲げ弾性率が10GPa以上となる場合は、本発明の合わせガラス20の構成が式(2)を満たすことにより、脱気不良や、ガラス板21及び22、表示装置25の割れを抑制する構造にできる。
【0036】
なお、本願における曲げ弾性率E1は「ASTM D790」に準拠した方法で測定できる。
【0037】
なお、表示装置25には様々な形状があるが、表示装置25の厚さtsは、
図2に示すように、突起部を含まない部分の平均の厚さとする。
【0038】
例えば、
図2(a)に示す表示装置25Aに示すように、大きさの異なる複数の層が積層されている場合、厚さtsは表示装置25Aに含まれる各層の合計の平均の厚さである。又、
図2(b)に示す表示装置25Bに示すように、大きさが同じ複数の層が積層されている場合、厚さtsは表示装置25Bに含まれる各層の合計の平均の厚さである。又、
図2(c)に示す表示装置25Cに示すように、突起部が存在する場合、厚さtsは表示装置25Cの突起部を除く部分の平均の厚さである。突起部は、例えば、表面実装用のLED等である。
【0039】
図3は、表示装置の好適な配置について説明する図であり、合わせガラスを車両に取り付けて車室内から車室外に視認した様子を模式的に示している。
図3(a)及び
図3(b)において、紙面上側は車両のルーフ側であり、紙面下側は車両の床側である。
【0040】
合わせガラス20がフロントガラス又はリアガラスである場合は、
図3(a)に示すように、表示装置25の長手方向が、合わせガラス20を車両に取り付けた場合の上下方向に向くように、表示装置25を配置することが好ましい。フロントガラスやリアガラスは傾斜した状態で車両に取り付けるため、
図3(a)の配置の方が
図3(b)の配置よりも透視歪を低減できる。
【0041】
これに対し、合わせガラス20がサイドガラスである場合は、
図3(b)に示すように、表示装置25の長手方向が、合わせガラス20を車両に取り付けた場合の左右方向に向くように、表示装置25を配置することが好ましい。サイドガラスの場合には車両の搭乗者が横向きに視認するため、
図3(b)の配置の方が
図3(a)の配置よりも透視歪を低減できる。
【0042】
但し、ここでいう上下方向及び左右方向は、厳密な意味での上下方向及び左右方向ではなく、透視歪が目立たなくなる効果を損なわない範囲で上下方向又は左右方向に対して表示装置25が斜めに配置される場合も含むものとする。
【0043】
図4は、表示装置と電気的に接続される配線板の端部である接続端部と、ガラス板の端部との距離について説明する図であり、合わせガラスを車両に取り付けて車室内から車室外に視認した様子を模式的に示している。
【0044】
前述のように、中間膜233の幅Wは5mm以上であることが好ましい。しかし、
図4(a)に示すように、表示装置25がガラス板21及び22の端部近傍に配置される場合や、
図4(b)に示すように、表示装置25の一部がガラス板21及び22の端部からはみ出して配置される場合もある。
図4(a)や
図4(b)の場合、中間膜233の幅Wは部分的に0mmとなる。
【0045】
合わせガラス20がサイドガラスである場合には、表示装置25とガラス板21及び22との位置関係が
図3(a)や
図3(b)に示すようになる場合がある。この場合、合わせガラス20の単体では、表示装置25全体が合わせガラス20の外周から5mm以上離間する位置に配置されており、表示装置25に接続される配線板30(例えば、フレキシブルプリント基板)は、合わせガラス20の平面視において、視認可能な位置に配置されている。しかし、配線板30を合わせガラス20の下辺から取り出すことで、配線板30近傍をドアパネルにより隠蔽できるため、合わせガラス20を車両に搭載後は外観上の問題はない。
【0046】
すなわち、
図5に示すように合わせガラス20が上下方向に摺動可能なサイドガラスである場合、ドアパネルの内部には、合わせガラス20を窓枠130に沿って上下に摺動させるためのウインドウレギュレーター120やホルダ127が配置されている。
【0047】
合わせガラス20の上辺102は、サイドガラスの開放時に露出する辺である。合わせガラス20の下辺103にはホルダ127が装着され、ウインドウレギュレーター120の昇降レール123に取り付けられる。
【0048】
そして、合わせガラス20(サイドガラス)が完全に上まで閉まっている状態においても、サイドガラスのベルトラインBL(サイドガラスとドアパネルとの境界線)よりも下側はドアパネル内に位置するため、露出しない。
【0049】
そのため、合わせガラス20内において、
図5(a)に示すように、表示装置25全体が合わせガラス20の外周から5mm以上離間する位置に配置されていても、表示装置25の下辺がベルトラインBL上に位置するように配置すれば、表示装置25の下辺から配線板30を取り出したとしても、合わせガラス20を車両のドアに組み込んだ場合、配線板30は視認できない。
【0050】
或いは、合わせガラス20内において、
図5(b)に示すように、表示装置25全体が合わせガラス20の外周から5mm以上離間する位置に配置されていても、表示装置25の下辺がベルトラインBLよりも下側(ドアパネル内)に位置するように配置すれば、表示装置25の下辺から配線板30を取り出したとしても、合わせガラス20を車両のドアに組み込んだ場合、配線板30は視認できない。
【0051】
なお、
図5(a)及び
図5(b)の何れの場合も、車両に取り付ける前の合わせガラス20単体では配線板30が視認可能な位置に配置されているが、合わせガラス20を車両のドアに組み込んだ場合は、配線板30は視認できないため、外観を損なう恐れはない。
【0052】
又、合わせガラス20がサイドガラスである場合、配線板30を合わせガラス20の下辺から取り出すことで、車両に搭載された合わせガラスが上下に摺動したときに、配線板30が他の部材に噛みこむことを防止できる。
【0053】
図4の説明に戻り、
図4(a)及び
図4(b)の場合、平面視において、配線板30が表示装置25と接続される端部である接続端部30eとガラス板21の端部21eとの距離L
1が1mm以上であり、かつ、配線板30の接続端部30eとガラス板22の端部22eとの距離L
1が1mm以上であることが好ましい。
【0054】
図4(a)の場合は、配線板30の接続端部30eを、ガラス板21の端部21e及びガラス板22の端部22eに対してガラス板21及び22の内側にずらしている。又、
図4(b)の場合は、配線板30の接続端部30eを、ガラス板21の端部21e及びガラス板22の端部22eに対してガラス板21及び22の外側にずらしている。
図4(a)及び
図4(b)の何れの場合も、距離L
1が1mm以上であると、配線板30に含まれる配線の断線を防止できる。
【0055】
図6は、合わせガラスの総厚分布について説明する図であり、合わせガラスを車両に取り付けて車室内から車室外に視認した様子を模式的に示している。
【0056】
図6において、二点鎖線P
1は、表示装置25の端部25eから平面視でL
2=10mm内側の位置を示している。又、二点鎖線P
2は、表示装置25の端部25eから平面視でL
3=10mm外側の位置を示している。
【0057】
このとき、二点鎖線P1の位置から二点鎖線P2の位置までの領域R1(すなわち、表示装置25の端部25eから平面視で±10mmの領域R1)において、合わせガラス20の総厚の変化量が±100μm以下であることが好ましい。これにより、表示装置25の端部25e近傍における合わせガラス20の厚み分布が低減されるため、表示装置25の端部25e近傍における透視歪の悪化を抑制できる。
【0058】
又、二点鎖線P1の位置から二点鎖線P2の位置までにおいて、合わせガラス20の総厚の変化量が±70μm以下であることがより好ましい。これにより、表示装置25の端部25e近傍における合わせガラス20の厚み分布が更に低減されるため、表示装置25の端部25e近傍における透視歪の悪化を更に抑制できる。
【0059】
図7は、合わせガラスの引張応力変化について説明する図であり、合わせガラスを車両に取り付けて車室内から車室外に視認した様子を模式的に示している。
図7において、二点鎖線P
2は、表示装置25の端部25eから平面視でL
3=10mm外側の位置を示している。
【0060】
このとき、表示装置25の端部25eの位置から二点鎖線P2の位置までの領域R2(すなわち、表示装置25の端部25eから平面視で外側に10mmの領域R2)において、合わせガラス20の引張応力変化は1MPa以上30MPa以下であることが好ましい。これにより、ガラス板21及び22並びに表示装置25に過大な応力がかかって割れるおそれを低減できる。なお、合わせガラス20の引張応力変化とは、合わせガラス20の内側に位置するガラス板21の車内側の表面、若しくは、合わせガラス20の外側に位置するガラス板22の車外側の表面の少なくとも一方、若しくは両方の表面に生じる引張応力変化を意味する。
【0061】
又、領域R2において、合わせガラス20の引張応力変化は、1MPa以上20MPa以下であることがより好ましく、1MPa以上10MPa以下であることが更に好ましい。合わせガラス20の引張応力変化が1MPa以上20MPa以下、1MPa以上10MPa以下になるにつれて、ガラス板21及び22並びに表示装置25が割れるおそれを更に低減できる。なお、合わせガラス20の引張応力変化は、光弾性等を用いた表面応力計により求められる。
【0062】
ここで、ガラス板21、ガラス板22、及び中間膜23について詳述する。
【0063】
ガラス板21及び22は、無機ガラスであっても有機ガラスであってもよい。無機ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が特に制限なく用いられる。これらのうちでも、製造コスト、成形性の点からソーダライムガラスが特に好ましい。
【0064】
無機ガラスは、未強化ガラス、強化ガラスの何れでもよい。未強化ガラスは、溶融ガラスを板状に成形し、徐冷したものである。強化ガラスは、未強化ガラスの表面に圧縮応力層を形成したものである。
【0065】
強化ガラスは、物理強化ガラス(例えば風冷強化ガラス)、化学強化ガラスの何れでもよい。物理強化ガラスである場合は、曲げ成形において均一に加熱したガラス板を軟化点付近の温度から急冷させるなど、徐冷以外の操作により、ガラス表面とガラス内部との温度差によってガラス表面に圧縮応力層を生じさせることで、ガラス表面を強化してもよい。
【0066】
化学強化ガラスである場合は、曲げ成形の後、イオン交換法等によってガラス表面に圧縮応力を生じさせることでガラス表面を強化してもよい。又、紫外線又は赤外線を吸収するガラスを用いてもよく、更に、透明であることが好ましいが、透明性を損なわない程度に着色されたガラス板であってもよい。
【0067】
一方、有機ガラスの材料としては、ポリカーボネート、アクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の透明樹脂が挙げられる。
【0068】
ガラス板21及び22の形状は、特に矩形状に限定されるものではなく、種々の形状及び曲率に加工された形状であってもよい。ガラス板21及び22の曲げ成形としては、重力成形、又はプレス成形、ローラー成形等が用いられる。ガラス板21及び22の成形法についても特に限定されないが、例えば、無機ガラスの場合はフロート法等により成形されたガラス板が好ましい。
【0069】
合わせガラス20の外側に位置するガラス板22の板厚は、最薄部が1.8mm以上3mm以下であることが好ましい。ガラス板22の板厚が1.8mm以上であると、耐飛び石性能等の強度が十分であり、3mm以下であると、合わせガラスの質量が大きくなり過ぎず、車両の燃費の点で好ましい。ガラス板22の板厚は、最薄部が1.8mm以上2.8mm以下がより好ましく、1.8mm以上2.6mm以下が更に好ましい。
【0070】
合わせガラス20の内側に位置するガラス板21の板厚は、0.3mm以上2.3mm以下であることが好ましい。ガラス板21の板厚が0.3mm以上であることによりハンドリング性がよく、2.3mm以下であることによりの質量が大きくなり過ぎない。
【0071】
ガラス板21及び/又は22は、一定の板厚ではなく、必要に応じて場所毎に板厚が変わっても良い。例えば、合わせガラス20がフロントガラスである場合、ガラス板21及び22の何れか一方、又は両方は、フロントガラスを車両に取り付けた状態でフロントガラスの下辺から上辺に向かうにつれて板厚が厚くなる楔形状であってもよい。この場合、中間膜23の膜厚が一定であれば、ガラス板21とガラス板22の合計の楔角は、例えば、0mradより大きく1.0mrad以下の範囲で変化する。
【0072】
ガラス板21及び/又は22の外側に撥水、紫外線、赤外線カットの機能を有する被膜や、低反射特性、低放射特性を有する被膜を設けてもよい。又、ガラス板21及び/又は22の内側(中間膜23と接する側)に、紫外線や赤外線カット、低放射特性、可視光吸収、着色等の被膜を設けてもよい。
【0073】
ガラス板21及び22が無機ガラスの場合は、例えば、フロート法等による成形の後、中間膜23による接着前に、曲げ成形される。曲げ成形は、ガラスを加熱により軟化させて行われる。曲げ成形時のガラスの加熱温度は、大凡550℃~700℃である。
【0074】
ガラス板21とガラス板22とを接着する中間膜23としては熱可塑性樹脂が多く用いられ、例えば、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、可塑化飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、可塑化ポリウレタン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合体系樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、アイオノマー樹脂等の従来からこの種の用途に用いられている熱可塑性樹脂が挙げられる。又、特許第6065221号に記載されている変性ブロック共重合体水素化物を含有する樹脂組成物も好適に使用できる。
【0075】
これらの中でも、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性、及び遮音性等の諸性能のバランスに優れることから、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂が好適に用いられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。上記可塑化ポリビニルアセタール系樹脂における「可塑化」とは、可塑剤の添加により可塑化されていることを意味する。その他の可塑化樹脂についても同様である。
【0076】
但し、表示装置の種類によっては特定の可塑剤により劣化することがあり、その場合には、その可塑剤を実質的に含有していない樹脂を用いることが好ましい。つまり、中間膜23が可塑剤を含まないことが好ましい場合がある。可塑剤を含有していない樹脂としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂等が挙げられる。
【0077】
上記ポリビニルアセタール系樹脂としては、ポリビニルアルコール(以下、必要に応じて「PVA」と言うこともある)とホルムアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルホルマール樹脂、PVAとアセトアルデヒドとを反応させて得られる狭義のポリビニルアセタール系樹脂、PVAとn-ブチルアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルブチラール樹脂(以下、必要に応じて「PVB」と言うこともある)等が挙げられ、特に、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性、及び遮音性等の諸性能のバランスに優れることから、PVBが好適なものとして挙げられる。なお、これらのポリビニルアセタール系樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0078】
但し、中間膜23を形成する材料は、熱可塑性樹脂には限定されない。又、中間膜23は、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、発光剤等の機能性粒子を含んでもよい。又、中間膜23は、シェードバンドと呼ばれる着色部を有しもよい。
【0079】
又、中間膜23に含まれる中間膜231、232、及び233は、全て同一の材料で形成することが望ましいが、中間膜231、232、及び233の一部又は全部を異なる材料で形成してもよい。例えば、中間膜233のせん断弾性率が、中間膜231、232のせん断弾性率よりも小さい材料であってもよい。中間膜233のせん断弾性率が、中間膜231、232のせん断弾性率よりも小さい場合、合わせガラス20の遮音性を向上できる。なお、中間膜231のせん断弾性率が、中間膜232、233のせん断弾性率よりも小さい場合であっても合わせガラス20の遮音性を向上できるし、中間膜232のせん断弾性率が、中間膜231、233のせん断弾性率よりも小さい場合であっても合わせガラス20の遮音性を向上できる。但し、ガラス板21及び22との接着性、或いは合わせガラス20の中に入れ込む機能材料等の観点から、中間膜23の膜厚の50%以上は上記の材料を使うことが望ましい。
【0080】
中間膜23の膜厚は、最薄部で0.5mm以上であることが好ましい。中間膜23の膜厚が0.5mm以上であると合わせガラスとして必要な耐貫通性が十分となる。又、中間膜23の膜厚は、最厚部で3mm以下であることが好ましい。中間膜23の膜厚の最大値が3mm以下であると、合わせガラスの質量が大きくなり過ぎない。中間膜23の最大値は2.8mm以下がより好ましく、2.6mm以下が更に好ましい。
【0081】
中間膜23は、ヘッドアップディスプレイに用いられる中間膜のように、一定の膜厚ではなく、必要に応じて場所毎に膜厚が変わっても良い。例えば、合わせガラス20がフロントガラスである場合、中間膜23は、フロントガラスを車両に取り付けた状態でフロントガラスの下辺から上辺に向かうにつれて膜厚が厚くなる楔形状であってもよい。この場合、ガラス板21及び22の膜厚が一定であれば、中間膜23の楔角は、例えば、0mradより大きく1.0mrad以下の範囲で変化する。
【0082】
なお、中間膜23は、4層以上の層を有していてもよい。例えば、中間膜を4層以上から形成し、両側の層を除く何れかの層のせん断弾性率を可塑剤の調整等により両側の層のせん断弾性率よりも小さくすることにより、合わせガラス20の遮音性を向上できる。この場合、両側の層のせん断弾性率は同じでもよいし、異なってもよい。
【0083】
中間膜23を作製するには、例えば、中間膜となる上記の樹脂材料を適宜選択し、押出機を用い、加熱溶融状態で押し出し成形する。押出機の押出速度等の押出条件は均一となるように設定する。その後、押し出し成形された樹脂膜を、のデザインに合わせて、上辺及び下辺に曲率を持たせるために、例えば必要に応じ伸展することで、中間膜23が完成する。
【0084】
合わせガラス20を作製するには、ガラス板21とガラス板22との間に、中間膜23、表示装置25を挟んで積層体とする。そして、例えば、この積層体をゴム袋の中に入れ、-65~-100kPaの真空中で温度約70~110℃で接着する。加熱条件、温度条件、積層方法は表示装置25の性質に配慮して、例えば積層中に劣化しないように適宜選択される。
【0085】
更に、例えば100~150℃、圧力0.6~1.3MPaの条件で加熱加圧する圧着処理を行うことで、より耐久性の優れた合わせガラス20を得られる。但し、場合によっては工程の簡略化、並びに合わせガラス20中に封入する材料の特性を考慮して、この加熱加圧工程を使用しない場合もある。
【0086】
ガラス板21とガラス板22との間に、本願の効果を損なわない範囲で、中間膜23及び表示装置25の他に、電熱線、赤外線反射、発光、発電、調光、タッチパネル、可視光反射、散乱、加飾、吸収等の機能を持つフィルムやデバイスを有してもよい。上記機能性フィルム及びデバイスは、ガラス板21、ガラス板22の主面上に直接形成されてもよい。
【0087】
合わせガラス20の総厚は、2.8mm以上10mm以下であることが好ましい。合わせガラス20の総厚が2.8mm以上であれば、十分な剛性を確保できる。又、合わせガラス20の総厚が10mm以下であれば、十分な透過率が得られると共にヘイズを低減できる。
【0088】
合わせガラス20の少なくとも1辺において、ガラス板21とガラス板22の板ずれ(平面視におけるガラス板21の端部とガラス板22の端部のずれ量)が1.5mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。合わせガラス20の少なくとも1辺において、ガラス板21とガラス板22の板ずれが1.5mm以下であると、外観を損なわない点で好適である。合わせガラス20の少なくとも1辺において、ガラス板21とガラス板22の板ずれが1.0mm以下であると、外観を損なわない点で更に好適である。
【0089】
以上の説明では、合わせガラス20の中間膜23に表示装置25を封入する例を示したが、中間膜23に封入する構造体は、表示装置には限定されない。中間膜23に、表示装置に代えて、或いは表示装置に加えて、照明装置(LED照明装置、有機EL照明装置、警告灯等)や太陽電池(シリコン系、化合物系、有機系等)を備える太陽光発電装置、調光装置(SPD(Suspended Particle Device)、エレクトロクロミック、フォトクロミック、サーモクロミック、PDLC(高分子分散型液晶)、GHLC(ゲストホスト型液晶)等)を封入してもよい。すなわち、合わせガラス20は、中間膜23に、表示装置、照明装置、太陽光発電装置、調光装置の何れか1つ以上を封入してもよい。
【0090】
中間膜23に、表示装置、照明装置、太陽光発電装置、調光装置の何れの構造体を封入した場合も、式(1)を満たすことで、中間膜231及び232のクッション性が向上する。そのため、合わせガラス20を作製する工程において、脱気不良を抑制(残留空気の排気性を向上)できると共に、ガラス板21及び22並びに封入した構造体の割れを抑制できる。その結果、高品質な合わせガラス20を実現できる。式(2)を満たすことが好ましい点等についても同様である。
【0091】
なお、車両用の窓ガラスは、合わせガラス20と少なくとも1枚以上のガラス板とを、スペーサーを介して間隔を有して配置される複層ガラスとしてもよい。車両用の窓ガラスが複層ガラスである場合、合わせガラス20とガラス板との間には中空層が設けられる。中空層には、乾燥空気が充填されていてもよいし、クリプトンやアルゴンなどの希ガスが充填されていてもよい。また、中空層は真空であってもよい。中空層が真空である場合、合わせガラス20とガラス板との間隙を保持するために、中空層領域においてステンレス鋼などの金属材料からなる間隙保持部材を合わせガラス20とガラス板との間に複数配置してもよい。スペーサーは、アルミニウムなどの金属製でもよいし、ポリアミドやポリプロピレンなどの樹脂製であってもよい。車両用の窓ガラスが複層ガラスである場合、合わせガラス20が車外側に配置されてもよいし、車内側に配置されてもよい。
【0092】
〈実施例〉
以下、実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0093】
例1~例18では、ガラス板21とガラス板22との間に、中間膜23(中間膜231、232、及び233)と、表示装置25に見立てたガラス製の基板(便宜上、封入基板25とする)とを挟んで積層体を作製した。そして、積層体をゴム袋の中に入れ、-65~-100kPaの真空中で温度約70~110℃で接着し、合わせガラスを作製した。作製した合わせガラスのサイズ等は、
図8に示す通りである。
【0094】
図8に示すように、ガラス板21及び22のサイズは300mm×300mm×厚み2mm、封入基板25のサイズは100mm×100mmとした。そして、中間膜233の幅の最も狭い所が20mmになるように、ガラス板21とガラス板22との間に中間膜23(中間膜231、232、及び233)及び封入基板25を挟んだ。
【0095】
なお、中間膜231、232、及び233の材料としてはEVA(Ethylene Vinyl Acetate)を用い、中間膜231と中間膜232の膜厚は同じにした(中間膜231の膜厚=中間膜232の膜厚=ti)。
【0096】
例1~例18では、中間膜231及び232の膜厚tiと、封入基板25の板厚tsを変えて、割れと脱気不良の目視による評価を行った。評価では、割れも脱気不良も確認できなかった場合を〇、割れと脱気不良の少なくとも一方が確認できた場合を×とした。例1~例18における中間膜231及び232の膜厚tiの値、封入基板25の板厚tsの値、及び評価結果を表1にまとめた。
【0097】
【表1】
表1に示すように、ti/ts≧0.6を満たす場合は、割れも脱気不良も確認できなかった。これに対して、ti/ts≧0.6を満たさない場合(すなわち、ti/ts<0.6を満たす場合)は、割れと脱気不良の少なくとも一方が確認できた。
【0098】
すなわち、合わせガラスにおいて、中間膜にガラス板のような比較的剛性の高い構造体を封入する場合、ti/ts≧0.6を満たすことで、割れや脱気不良を抑制できることが確認できた。なお、tiやtsの測定方法としては、光の干渉を用いたレーザ厚み測定や、合わせガラスを切り、当該断面を顕微鏡で測定する方法が考えられる。
【0099】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0100】
本国際出願は2019年3月13日に出願した日本国特許出願2019-046106号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願2019-046106号の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0101】
20 合わせガラス
21、22 ガラス板
21a、22a 面
21e、22e、25e 端部(エッジ)
23、231、232、233 中間膜
25 表示装置
30 配線板
30e 接続端部