(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ポリアルキレンエーテルグリコール組成物及びそれを用いたポリウレタンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 65/48 20060101AFI20231108BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20231108BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20231108BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20231108BHJP
【FI】
C08G65/48
C08G18/65 011
C08G18/32 006
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2021508912
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2020009140
(87)【国際公開番号】W WO2020195641
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2019063409
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】手島 樂
(72)【発明者】
【氏名】山下 亮
(72)【発明者】
【氏名】谷口 翔平
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-251508(JP,A)
【文献】特開2015-214606(JP,A)
【文献】特開2014-169361(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069556(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00- 67/48
C08G 18/00- 18/87
C08G 71/00- 71/04
C08G101/00
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシ基を末端基として含むポリアルキレンエーテルグリコールを含有するポリアルキレンエーテルグリコール組成物であって、
該ポリアルキレンエーテルグリコール組成物の水酸基価が220以上750以下であり、
該ポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれるポリアルキレンエーテルグリコールの水酸基末端数に対する、該ポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれるアルコキシ基を末端基として含むポリアルキレンエーテルグリコールのアルコキシ基末端数の比が0.00001以上0.0040以下であるポリアルキレンエーテルグリコール組成物。
【請求項2】
前記ポリアルキレンエーテルグリコール組成物がジアルキレンエーテルグリコールを含み、該ジアルキレンエーテルグリコールの水酸基末端数に対する、前記ポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれるアルコキシ基を末端基として含むポリアルキレンエーテルグリコールのアルコキシ基末端数の比が0.0001以上0.025以下である請求項1に記載のポリアルキレンエーテルグリコール組成物。
【請求項3】
前記ジアルキレンエーテルグリコールの水酸基末端数が2.5mmol/g以上8.6mmol/g以下である請求項2に記載のポリアルキレンエーテルグリコール組成物。
【請求項4】
前記ポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれるアルコキシ基を末端基として含むポリアルキレンエーテルグリコールのアルコキシ基末端数が0.001mmol/g以上0.07mmol/g以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリアルキレンエーテルグリコール組成物。
【請求項5】
前記ポリアルキレンエーテルグリコールがポリテトラメチレンエーテルグリコールである請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリアルキレンエーテルグリコール組成物。
【請求項6】
前記ポリアルキレンエーテルグリコールの構造単位と前記アルコキシ基を末端基として含むポリアルキレンエーテルグリコールの構造単位が同じである請求項1乃至5のいずれか1項に記載のポリアルキレンエーテルグリコール組成物。
【請求項7】
前記ポリアルキレンエーテルグリコールの構造単位と前記ジアルキレンエーテルグリコールの構造単位が同じである請求項2又は3に記載のポリアルキレンエーテルグリコール組成物。
【請求項8】
前記アルコキシ基が炭素数4以下のアルコキシ基である請求項1乃至7のいずれか1項に記載のポリアルキレンエーテルグリコール組成物。
【請求項9】
前記アルコキシ基がメトキシ基である請求項8に記載のポリアルキレンエーテルグリコール組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のポリアルキレンエーテルグリコール組成物、複数のイソシアネート基を有する化合物、分子量が50~300のポリオール及び水酸基価200以下のポリアルキレンエーテルグリコールを含む原料を付加重合反応させるポリウレタンの製造方法。
【請求項11】
前記ポリウレタンがポリウレタンエラストマーである請求項10に記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項12】
前記ポリウレタンエラストマーがポリウレタンフォームである請求項11に記載のポリウレタンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアルキレンエーテルグリコール組成物及びそれを用いたポリウレタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは様々な分野で応用されている。ポリウレタンは、その主たるソフトセグメント部を構成する原料ポリオールの種類により、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコールなどに代表されるポリエーテルポリオールタイプ;ジカルボン酸系ポリエステルに代表されるポリエステルポリオールタイプ;ポリカプロラクトンに代表されるポリラクトンタイプ;並びにカーボネート源とジオールを反応させて得られるポリカーボネートタイプ;に分けられる。
【0003】
その中でも特に、ポリアルキレンエーテルグリコールをポリオール成分として使用したポリウレタンは、耐摩耗性、耐加水分解性及び弾性回復性に優れ、ポリウレタンエラストマーやポリウレタンフォーム、合成皮革・人工皮革を初めとして各種用途で使用されている。近年、特にポリウレタンエラストマーやポリウレタンフォームにおいて、各種用途に応じた機械特性及び反発弾性がより高い素材が求められている。
【0004】
ポリウレタンエラストマーは、加熱すると軟化し、その後冷却すると硬化する。ポリウレタンエラストマーの硬化物は、優れた弾性、機械的強度、低温特性、耐摩擦性、耐候性、耐油性を持つ。ポリウレタンエラストマーの硬化物は、加工性にも優れ、様々な形状に容易に加工することができる。ポリウレタンエラストマーは、主として、ロールおよびキャスター等の工業部品、ソリッドタイヤおよびベルト等の自動車部品、紙送りロール、複写機用ロール等のOA機器部品、スポーツおよびレジャー用品など広範囲に利用されている。
【0005】
ポリウレタンフォームは、発泡密度に応じて硬質ポリウレタンフォームと軟質ポリウレタンフォーム、さらにはその中間的な特徴を有する半硬質ポリウレタンフォームに分けられる。ポリウレタンフォームは、優れた衝撃吸収性を有し、反発弾性、低圧縮歪性、耐久性を持つと共に、様々な形状に容易に加工することができる。ポリウレタンフォームは、主として、電子機器、建築の断熱材や防振材、自動車シート、自動車の天井クッション、マットレスなどの寝具、インソール、ミッドソールや靴底など広範囲に利用されている。
【0006】
ポリウレタンエラストマーおよびポリウレタンフォームの製造には、イソシアネート化合物、低分子量のポリオール、ポリエーテルポリオールなどの高分子量成分を含む原料を用いることが一般的である。低分子量のポリオール成分と高分子量のポリオール成分の相溶性を改善するためにその中間となる分子量のポリオール成分を使用することがある。
【0007】
特許文献1には、成形性、機械的性質に優れたポリウレタンエラストマーとするために、グリコール成分として、特定の数平均分子量のポリテトラメチレンエーテルグリコール及び低分子量グリコールを用いることが開示されている。
【0008】
特許文献2には、低い初期弾性率と高い伸び特性とを兼ね備え、低温特性が良好なウレタンエラストマーとするために、ポリオールとして特定の数平均分子量のポリテトラメチレンエーテルグリコールを用い、活性水素化合物として1,4-ブタンジオールとトリメチロールプロパンを併用することが記載されている。
【0009】
特許文献3には、形状記憶性に優れたポリウレタンフォームとするために、ポリオールとして特定の数平均分子量のポリテトラメチレンエーテルグリコールを用い、鎖延長剤として低分子量のジプロピレングリコールまたはグリセリンを用いたポリウレタンフォームが提案されている。
【0010】
【文献】特開2000-72844号公報
【文献】特開2004-99643号公報
【文献】特開2014-234406号公報
【0011】
従前知られたポリアルキレンエーテルグリコールでは次のような問題がある。
該ポリアルキレンエーテルグリコールを、ポリウレタン製造原料として用いた場合、反応均一性が十分ではなく、ポリウレタンのハードセグメントとソフトセグメントからなる相分離構造の均一性に欠ける。このため、得られるポリウレタンが所望の物性に到達しない可能性がある。
【発明の概要】
【0012】
本発明は鎖延長剤に用いられる低分子量のポリオールおよび他のポリオール成分として使用する高分子量のポリアルキレンエーテルグリコールとの相溶性に優れ、ポリウレタンの原料として使用しても反応性が良好で、所望の物性を発現できるポリアルキレンエーテルグリコール組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、このポリアルキレンエーテルグリコール組成物を用いたポリウレタンの製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
本発明者は、アルコキシ基を末端基として含むポリアルキレンエーテルグリコールを含有するポリアルキレンエーテルグリコール組成物であって、該ポリアルキレンエーテルグリコール組成物の水酸基価が特定の範囲であり、該ポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれるポリアルキレンエーテルグリコールの水酸基末端数に対する、該ポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれるポリアルキレンエーテルグリコールのアルコキシ基末端数の比が特定範囲であるポリアルキレンエーテルグリコール組成物とすることにより、上記課題を解決することができることを見出した。
例えば、本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物をポリウレタン原料として使用した場合、他の原料、特に1,4-ブタンジオール等の鎖延長剤として用いられる低分子量のポリオールおよび他のポリオール成分として使用する高分子量のポリアルキレンエーテルグリコールとの相溶性が良好である。この結果、反応均一性が向上し、得られるポリウレタンのミクロ相分離構造の均一性が改善されることにより、所望の物性とすることが可能となる。
本発明は以下である。
【0014】
[1] アルコキシ基を末端基として含むポリアルキレンエーテルグリコールを含有するポリアルキレンエーテルグリコール組成物であって、該ポリアルキレンエーテルグリコール組成物の水酸基価が220以上750以下であり、該ポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれるポリアルキレンエーテルグリコールの水酸基末端数に対する、該ポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれるポリアルキレンエーテルグリコールのアルコキシ基末端数の比が0.00001以上0.0040以下であるポリアルキレンエーテルグリコール組成物。
【0015】
[2] 前記ポリアルキレンエーテルグリコール組成物がジアルキレンエーテルグリコールを含み、該ジアルキレンエーテルグリコールの水酸基末端数に対する、前記ポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれるアルコキシ基を末端基として含むポリアルキレンエーテルグリコールのアルコキシ基末端数の比が0.0001以上0.025以下である[1]に記載のポリアルキレンエーテルグリコール組成物。
【0016】
[3] 前記ジアルキレンエーテルグリコールの水酸基末端数が2.5mmol/g以上8.6mmol/g以下である[2]に記載のポリアルキレンエーテルグリコール組成物。
【0017】
[4] 前記ポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれるアルコキシ基を末端基として含むポリアルキレンエーテルグリコールのアルコキシ基末端数が0.001mmol/g以上0.07mmol/g以下である[1]乃至[3]のいずれかに記載のポリアルキレンエーテルグリコール組成物。
【0018】
[5] 前記ポリアルキレンエーテルグリコールがポリテトラメチレンエーテルグリコールである[1]乃至[4]のいずれかに記載のポリアルキレンエーテルグリコール組成物。
【0019】
[6] 前記ポリアルキレンエーテルグリコールの構造単位と前記アルコキシ基を末端基として含むポリアルキレンエーテルグリコールの構造単位が同じである[1]乃至[5]のいずれかに記載のポリアルキレンエーテルグリコール組成物。
【0020】
[7] 前記ポリアルキレンエーテルグリコールの構造単位と前記ジアルキレンエーテルグリコールの構造単位が同じである[2]又は[3]に記載のポリアルキレンエーテルグリコール組成物。
【0021】
[8] 前記アルコキシ基が炭素数4以下のアルコキシ基である[1]乃至[7]のいずれかに記載のポリアルキレンエーテルグリコール組成物。
【0022】
[9] 前記アルコキシ基がメトキシ基である[8]に記載のポリアルキレンエーテルグリコール組成物。
【0023】
[10][1]乃至[9]のいずれかに記載のポリアルキレンエーテルグリコール組成物、複数のイソシアネート基を有する化合物、分子量が50~300のポリオール及び水酸基価200以下のポリアルキレンエーテルグリコールを含む原料を付加重合反応させるポリウレタンの製造方法。
【0024】
[11] 前記ポリウレタンがポリウレタンエラストマーである[10]に記載のポリウレタンの製造方法。
【0025】
[12] 前記ポリウレタンエラストマーがポリウレタンフォームである[11]に記載のポリウレタンの製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、1,4-ブタンジオール等の低分子量のポリオールおよび他のポリオール成分として使用する高分子量のポリアルキレンエーテルグリコールとの相溶性が良好なポリアルキレンエーテルグリコール組成物が提供される。
【0027】
本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物を、ポリウレタン原料として使用した場合、他の原料との相溶性が良好となり、反応均一性が向上し、得られるポリウレタンのミクロ相分離構造の均一性が改善されることにより、所望の物性とすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【0029】
[ポリアルキレンエーテルグリコール組成物]
本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物は、アルコキシ基を末端基として含むポリアルキレンエーテルグリコール(以下、「末端アルコキシ基PAEG」と称す場合がある。)を含有する。
【0030】
本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物の水酸基価は220以上750以下であり、280以上700以下が好ましく、370以上660以下がより好ましい。水酸基価が前記範囲内であることにより低分子量のポリオールおよび他のポリオール成分として使用する高分子量のポリアルキレンエーテルグリコールとの相溶性がより良好となる。
【0031】
ポリアルキレンエーテルグリコール組成物の水酸基価(単位:mg-KOH/g)はJIS K1557-1に準拠して求めることができる。
【0032】
本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれるポリアルキレンエーテルグリコールの水酸基末端数(以下、「PAEG水酸基末端数」と称す場合がある。)に対する、ポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれる末端アルコキシ基PAEGのアルコキシ基末端数(以下、「PAEGアルコキシ基末端数」と称す場合がある。)の比は0.00001以上0.0040以下である。この比は、0.0001以上であることが好ましく、0.0005以上であることがより好ましく、0.001以上であることがさらに好ましい。一方、この比は、0.035以下が好ましく、0.030以下がより好ましく、0.025以下がさらに好ましい。この比が上記範囲内であることにより、低分子量のポリオールおよび他のポリオール成分として使用する高分子量のポリアルキレンエーテルグリコールとの相溶性がより良好となる。
【0033】
本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれるポリアルキレンエーテルグリコールの水酸基末端(PAEG水酸基末端数)は10.0mmol/g以上が好ましく、13.2mmol/g以上がより好ましい。一方、この水酸基末端数25.0mmol/g以下が好ましく、23.5mmol/g以下がより好ましい。PAEG水酸基末端数が上記上限以下であれば、他のポリオール成分として使用する高分子量のポリアルキレンエーテルグリコールとの相溶性が良好となる。PAEG水酸基末端数が上記下限以上であれば、低分子量のポリオールとの相溶性が良好となる。
【0034】
本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物は、ポリアルキレンエーテルグリコールの一部として、ジアルキレンエーテルグリコールを含むことが好ましく、本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれるジアルキレンエーテルグリコールの水酸基末端数(以下、「DAEG水酸基末端数」と称す場合がある。)に対する、ポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれる末端アルコキシ基PAEGのアルコキシ基末端数(PAEGアルコキシ基末端数)の比は0.0001以上0.025以下であることが好ましい。この比は、0.0005以上であることがより好ましく、0.001以上であることがさらに好ましい。一方、この比は、0.02以下がより好ましく、0.01以下がさらに好ましい。この比が上記範囲内であることにより、低分子量のポリオールおよび他のポリオール成分として使用する高分子量のポリアルキレンエーテルグリコールとの相溶性がより良好となる。
【0035】
本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれるジアルキレンエーテルグリコールの水酸基末端数(DAEG水酸基末端数)は2.5mmol/g以上が好ましく、3.7mmol/g以上がより好ましい。一方、この水酸基末端数は、8.6mmol/g以下が好ましく、7.4mmol/g以下がより好ましい。DAEG水酸基末端数は、2.5mmol/g以上8.6mmol/g以下が好ましく、2.5mmol/g以上7.4mmol/g以下がより好ましく、3.7mmol/g以上7.4mmol/g以下がさらに好ましい。DAEG水酸基末端数が上記上限以下であれば、他のポリオール成分として使用する高分子量のポリアルキレンエーテルグリコールとの相溶性が良好となる。DAEG水酸基末端数が上記下限以上であれば、低分子量のポリオールとの相溶性が良好となる。
【0036】
ジアルキレンエーテルグリコール及びポリアルキレンエーテルグリコールの水酸基末端数はガスクロマトグラフィーにより、ポリアルキレンエーテルグリコールの濃度を測定し、計算で求めることができる。
【0037】
本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれる末端アルコキシ基PAEGのアルコキシ基末端数は0.001mmol/g以上が好ましく、0.005mmol/g以上がより好ましい。このアルコキシ基末端数は0.07mmol/g以下が好ましく、0.05mmol/g以下がより好ましく、0.03mmol/g以下がさらに好ましい。このアルコキシ基末端数は、0.001mmol/g以上0.07mmol/g以下が好ましく、0.001mmol/g以上0.05mmol/g以下がより好ましく、0.005mmol/g以上0.03mmol/g以下がさらに好ましい。ポリアルキレンエーテルグリコール組成物中に含まれる末端アルコキシ基PAEGのアルコキシ基末端数が上記上限以下であれば、低分子量のポリオールおよび他のポリオール成分として使用する高分子量のポリアルキレンエーテルグリコールとの相溶性が良好となる。このアルコキシ基末端数が上記下限以上であれば、高分子量のポリアルキレンエーテルグリコールとの相溶性が良好となる。
【0038】
ポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれる末端アルコキシ基PAEGのアルコキシ基末端数は核磁気共鳴法(NMR)により測定することができる。
【0039】
本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれるポリアルキレンエーテルグリコールとしてはポリプロピレグリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、ポリ(3-メチル)-テトラメチレンエーテルグリコール、1モル%~20モル%の3-メチルテトラヒドロフランと80モル%~99モル%のテトラヒドロフランの共重合ポリエーテルポリオールが挙げられる。該ポリアルキレンエーテルグリコール組成物を用いて製造されたポリウレタンの機械強度および柔軟性の観点から、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが好ましい。
【0040】
ポリアルキレンエーテルグリコールの組成は核磁気共鳴(NMR)により分析することができる。
【0041】
ポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれるポリアルキレングリコールの構造単位と、末端アルコキシ基PAEGの構造単位は同じであることが好ましい。該構造単位とは末端基を除いた繰り返し単位のことである。該構造単位が同じであることにより、低分子量のポリオールおよび他のポリオール成分として使用する高分子量のポリアルキレンエーテルグリコールとの相溶性が良好となる。
【0042】
ポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれるジアルキレンエーテルグリコール以外のポリアルキレングリコールの構造単位と、ジアルキレンエーテルグリコールの構造単位は同じであることが好ましい。該構造単位とは末端基を除いた繰り返し単位のことである。該構造単位が同じであることにより低分子量のポリオールおよび他のポリオール成分として使用する高分子量のポリアルキレンエーテルグリコールとの相溶性が良好となる。
【0043】
末端アルコキシ基PAEGにおけるアルコキシ基は、炭素数が4以下のアルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基であることがより好ましい。アルコキシ基の炭素数が小さいほど低分子量のポリオールおよび他のポリオール成分として使用する高分子量のポリアルキレンエーテルグリコールとの相溶性が良好となる。
【0044】
本発明のポリアルキレングリコール組成物は、該ポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれるポリアルキレンエーテルグリコール等を構成する構造単位に由来した環状オリゴマーを含んでいてもよい。該環状オリゴマーの濃度は、ポリアルキレングリコール組成物に対して、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上で、好ましくは5.0重量%以下、より好ましくは4重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下である。この濃度が上記下限以上であれば高分子量のポリアルキレンエーテルグリコールとの相溶性が良好となる。この濃度が上記上限以下であれば、ポリウレタン原料とした際の未反応析出物を低減できる。
【0045】
本発明のポリアルキレングリコール組成物にはアセタール構造を有する成分を含んでいてもよい。ポリアルキレンエーテルグリコール組成物のアセタール構造を有する成分の濃度は好ましくは0.001mmol/g以上、より好ましくは0.005mmol/g以上、さらに好ましくは0.01mmol/g以上で、好ましくは0.5mmol/g以下、より好ましくは0.3mmol/g以下、さらに好ましくは0.1mmol/g以下である。この濃度が上記下限以上であれば高分子量のポリアルキレンエーテルグリコールとの相溶性が良好となる。この濃度が上記上限以下であれば、ポリウレタン原料とした際の架橋反応が抑制されゲル化が防止される。
【0046】
[ポリアルキレンエーテルグリコールの製造方法]
本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物の製造方法の一例として、複合金属酸化物等を含む固体酸触媒の存在下で、環状エーテル及び/又はその誘導体を、無水酢酸等のカルボン酸無水物で開環重合させてポリアルキレンエーテルグリコールジエステルを製造し、次いで、アルカリ触媒存在下で加水分解もしくは低級アルコールとエステル交換してポリアルキレンエーテルグリコールを製造する方法が挙げられる。
【0047】
<環状エーテル及びその誘導体>
開環重合反応の原料となる環状エーテル及びその誘導体は特に限定されない。環状エーテルを構成する炭素数は、通常2~10であり、好ましくは3~7である。環状エーテルとしては、具体的には、テトラヒドロフラン(THF)、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、オキセタン、テトラヒドロピラン、オキセパン、1,4-ジオキサンなどが挙げられる。これらの中でもTHFは反応性や製造物の工業的需要の点から好ましい。環状の炭化水素の一部がアルキル基、ハロゲン原子などで置換された環状エーテルも使用することができる。環状エーテルがTHFの場合は、3-メチル-テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランなどが挙げられる。これら環状エーテルは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
<カルボン酸無水物>
開環重合反応時に助剤(重合反応開始剤)としてカルボン酸無水物を使用してもよい。カルボン酸無水物としては、通常炭素数2~12、好ましくは炭素数2~8の脂肪族又は芳香族カルボン酸から誘導されるカルボン酸無水物が挙げられる。カルボン酸無水物の原料となるカルボン酸はモノカルボン酸であるのが好ましいが、ポリカルボン酸を用いてもよい。上記カルボン酸の具体例として、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、マレイン酸、コハク酸等の脂肪族カルボン酸;安息香酸、フタル酸、ナフタリン酸等の芳香族カルボン酸が挙げられる。これらの中でも価格や入手のしやすさから脂肪族カルボン酸から誘導される無水物を用いるのが好ましい。反応性や製造物の需給の観点から無水酢酸が好ましく用いられる。
【0049】
カルボン酸無水物の使用量は、特に限定されない。カルボン酸無水物の使用量は、原料の環状エーテル及び/又はその誘導体の合計に対して通常3モル%以上、好ましくは4モル%以上、より好ましくは5モル%以上で、通常30モル%以下、好ましくは28モル%以下、より好ましくは26モル%以下、さらに好ましくは25モル%以下である。カルボン酸無水物の使用量が上記上限以下であれば、開環重合反応時や開環重合反応後の加熱工程において、カルボン酸無水物由来の着色が起こりにくく、製造されるポリアルキレンエーテルグリコールジエステルの色相が良好となる。カルボン酸無水物の使用量が上記下限以上であれば、十分な開環重合反応速度を得ることができ、効率よくポリアルキレンエーテルグリコールジエステルを製造することができる。
【0050】
<重合触媒>
開環重合反応に用いる酸触媒としては、環状エーテルを開環重合できる能力を持つ酸触媒であれば特に限定されない。重合触媒としては、ルイス酸性を有する固体酸系触媒が好ましい。固体酸系触媒としては、金属酸化物からなる固体酸触媒が好適に使用される。金属酸化物としては、好ましくは長周期型周期表(IUPAC 無機化学命名法改訂版(1998)による。以下、「周期表」と称す。)の第3族、第4族、第13族又は第14族に属する金属元素からなる金属酸化物、または、これらの金属元素を含む複合酸化物が用いられる。具体的には酸化イットリウム、チタニア、ジルコニア、アルミナ、シリカなどの金属酸化物;またはジルコニアシリカ、ハフニアシリカ、シリカアルミナ、チタニアシリカ、チタニアジルコニアのような複合酸化物が好ましい。これらの複合酸化物にさらに他の金属元素を含有する複合酸化物を用いてもよい。
【0051】
開環重合反応に用いる固体酸触媒を調製する方法としては、例えば、周期表の第3族、第4族、第13族又は第14族に属する金属元素から選ばれる1種類以上の金属の塩またはそのアルコキシドを含有する混合溶液に、必要により酸、アルカリ又は水を添加することにより、沈澱物又はゲルを固体酸触媒前駆体として形成させる方法が挙げられる。上記沈澱物又はゲルを得る方法としては共沈殿法、ゾル-ゲル法、混練法、含浸法などが挙げられる。本発明においては、適当な担体上に金属塩及び/又は金属アルコキシドを担持させ、固相状態(実質的に水を含まない状態)においてアルカリやアミン等の塩基性物質を接触させる過程を経て固体酸触媒前駆体を得る方法が好ましく用いられる。
【0052】
このようにして得られた固体酸触媒前駆体は、必要に応じてろ過、洗浄、乾燥を行った後、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気、或いは空気又は希釈酸素ガス等の酸化性ガス雰囲気下で焼成し、所望の(複合)酸化物を得る。加熱焼成温度は通常600℃~1150℃、好ましくは700℃~1000℃である。上記温度範囲で焼成することにより活性、安定性に優れた固体酸触媒を得ることができる。
【0053】
開環重合反応に用いる触媒の使用量は、反応形式が固定床であるか懸濁床であるかによって、あるいは連続反応であるか回分反応であるかによって異なる。懸濁床連続反応の場合には、通常、反応系の全化合物中の触媒の量として、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上で、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。
【0054】
<末端水酸基化>
環状エーテルの開環重合で得られたポリアルキレンエーテルグリコールジエステルは、加水分解反応やエステル交換反応を行う等の公知の方法でポリアルキレンエーテルグリコールに変換することができる。
【0055】
例えば、環状エーテルとしてTHFを使用した場合、開環重合でポリテトラメチレンエーテルグリコールジエステル(以下、PTMEと称すことがある)が得られる。PTMEを炭素数1~4の脂肪族アルコールと混合し、エステル交換触媒存在下でのアルコリシス反応によりエステル交換を行うことで、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと称すことがある)を得ることができる。
【0056】
<エステル交換触媒>
エステル交換に用いる触媒としては、加水分解反応やエステル交換反応に使用されている公知のものが使用できる。エステル交換触媒としては、通常、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム等のアルカリ金属のアルコキシドが用いられる。中でも、ナトリウム、カリウムのアルコキシドが好ましく用いられる。エステル交換触媒としては、具体的には、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムイソプロポキシド等が挙げられる。汎用性が高く安価であることから、ナトリウムメトキシドがより好ましい。
【0057】
<反応条件・反応操作>
加水分解反応又はエステル交換反応は通常、常圧または加圧下で行うことができる。反応圧力は通常0.1MPa~2.0MPa、好ましくは1.0MPa~1.5MPaである。加水分解反応又はエステル交換反応における反応温度は通常60℃~180℃の範囲である。
【0058】
加水分解反応又はエステル交換反応により得られた反応液に含まれる触媒を取り除く方法として、酸性イオン交換樹脂による処理方法が挙げられる。酸性イオン交換樹脂としては、特に限定はされないが、スルホン酸基を有する強酸性イオン交換樹脂が好ましい。酸性イオン交換樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製陽イオン交換樹脂SK1B-H、SK110-H、PK216-H、PK220-H等が挙げられる。
【0059】
酸性イオン交換樹脂による処理に供する加水分解反応又はエステル交換後の反応液のポリアルキレンエーテルグリコール濃度は、30重量%~60重量%が好ましい。ポリアルキレンエーテルグリコール濃度が上記上限以下であれば粘度が高くなりすぎず、イオン交換処理で触媒を除去する際にイオン交換樹脂内での拡散速度を高くして、十分な触媒除去を行うことができる。ポリアルキレンエーテルグリコール濃度が上記下限以上であれば、製品収率が高く、生産効率が良好となる。
【0060】
加水分解反応又はエステル交換後の反応液を酸性イオン交換樹脂で処理する際に、この反応液に予め水を添加して、水分含量が、好ましくは0.5重量%~10重量%、より好ましくは1重量%~5重量%である反応液として用いる。この水分含量が上記下限以上であれば、実効イオン交換容量が十分なものとなり、その結果、処理に要するイオン交換樹脂量を低減することができる。水分含量が上記上限以下であれば、実効イオン交換容量、製品収率を確保した上で、イオン交換処理後の溶媒回収時の負荷を低減することができる。
【0061】
酸性イオン交換樹脂による処理は、回分式、固定床装置を用いる流通式のいずれの方式で行ってもよい。回分式よりも流通式の方が簡便である。流通式の処理条件としては、通常、LHSV(液空間速度)=0.5hr-1~5hr-1、温度20℃~60℃、好ましくはLHSV=1hr-1~3hr-1、温度25℃~40℃である。LHSVが上記下限以上であれば、処理に長時間を要することがない。LHSVが上記上限以下であれば交換効率が良好となる。温度が上記下限以上であれば、交換効率が良好となる。温度が上記上限以下であればエステル交換に用いたアルコールとのエーテル化が抑制される。
【0062】
前記処理により得られたポリアルキレンエーテルグリコールを、所望する組成とするためにさらには蒸発分離装置を通して処理したり、油水分離法などの抽出操作を行ったりしてもよい。蒸発分離装置としては特に限定はされない。好ましい蒸発分離装置として、例えば自然循環型蒸発器、強制循環型蒸発器、機械的撹拌型蒸発器等が挙げられる。自然循環型蒸発器としては、短管竪型、水平管型、長管竪型上昇液膜型、長管竪型流下液膜型等がある。強制循環型蒸発器としては、多管式、プレート式等がある。機械的撹拌型蒸発器としては、遠心薄膜型、撹拌薄膜型等がある。これらの中では機械的撹拌型蒸発器が好ましく、特に機械的撹拌薄膜型蒸発器が好ましい。これらの蒸発分離装置を用いて蒸発分離後に冷却により凝縮させて、所望のポリアルキレンエーテルグリコール組成物を回収する。
【0063】
機械的撹拌薄膜型蒸発器の運転条件は、その処理量にもよるが、圧力は通常10Pa~1000Pa、好ましくは50Pa~500Pa、温度は通常100℃~300℃、好ましくは150℃~250℃、処理時間は通常0.1分~10分、好ましくは0.5分~5分である。
【0064】
油水分離法では、ポリアルキレンエーテルグリコール組成物と、水と、少なくとも1種類以上のアルコールの混合液が用いられる。
アルコールはヒドロキシ基を一つ以上有している必要がある。具体的な化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、エチルヘキサノール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール:サリチルアルコール、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール等が挙げられる。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせてもよい。これらの中でもポリアルキレンエーテルグリコール及び水との溶解性の観点から炭素数1~10のアルコールが好ましく、炭素数1~10の脂肪族アルコールがより好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールがさらに好ましい。取扱いの容易さとポリアルキレンエーテルグリコールの溶解性の観点からメタノール、エタノールが特に好ましく用いられる。
【0065】
本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれる末端アルコキシ基PAEG並びにジアルキレンエーテルグリコールは製造の過程で含まれてもよく、ポリアルキレンエーテルグリコールに所望の組成物とするために別途製造された末端アルコキシ基PAEGとジアルキレンエーテルグリコールを添加してもよい。
即ち、末端アルコキシ基PAEGは、エステル交換に用いたアルコールとのエーテル化によりポリアルキレンエーテルグリコール製造過程において、ポリアルキレンエーテルグリコールの副生物として生成する場合がある。副生した末端アルコキシ基PAEG量が多過ぎる場合には、これらを前述の組成調整のための操作により除去することにより、所定量の末端アルコキシ基PAEGを含む本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物とすることができる。また、副生した末端アルコキシ基PAEG量が少な過ぎる場合には、別途末端アルコキシ基PAEGを添加してもよい。ジアルキレンエーテルグリコールについても、ポリアルキレンエーテルグリコールの製造過程でジアルキレンエーテルグリコールとエステル交換に用いたアルコールとのエーテル化のために副生物として生成する場合があるため、上記末端アルコキシ基PAEGの場合と同様に組成調整することで、本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物を得ることができる。
【0066】
[ポリウレタン]
本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物、複数のイソシアネート基を有する化合物(以下、「ポリイソシアネート化合物」と称す場合がある。)、好ましくは分子量が50~300の低分子量のポリオールからなる鎖延長剤及び水酸基価200以下のポリアルキレンエーテルグリコール等の高分子量ポリオールを含む原料を付加重合することによりポリウレタンを製造することができる。
【0067】
本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物を用いて製造されるポリウレタンは、好ましくはポリウレタンエラストマー(以下、「本発明のポリウレタンエラストマー」と称す場合がある。)である。ポリウレタンエラストマーは、ポリウレタンフォームであってもよい。
【0068】
<ポリイソシアネート化合物>
本発明のポリウレタンエラストマーの製造原料として使用されるポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基を2以上有するものであればよく、脂肪族、脂環族又は芳香族の各種公知のポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0069】
例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート及びダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1-メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1-メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及び1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジイソシアネート化合物;キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、トルエンジイソシアネート(2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート)、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、フェニレンジイソシアネート及びm-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
これらの中でも、ポリオールとの反応性や得られるポリウレタンエラストマーの硬化性の高さから芳香族ポリイソシアネート化合物が好ましい。特に工業的に安価に多量に入手が可能な点で、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と称する場合がある)、トルエンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0071】
<鎖延長剤>
本発明のポリウレタンエラストマーの製造原料として使用される鎖延長剤は、後述するイソシアネート基を有するプレポリマーを製造する場合において、イソシアネート基と反応する活性水素を少なくとも2個有する低分子量のポリオールから選ばれる。なかでも分子量が50~300であるポリオールが好ましい。
【0072】
その具体例としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の直鎖ジオール類;2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,4-ヘプタンジオール、1,4-ジメチロールヘキサン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ダイマージオール等の分岐鎖を有するジオール類;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のエーテル基を有するジオール類;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジヒドロキシエチルシクロヘキサン等の脂環構造を有するジオール類;キシリレングリコール、1,4-ジヒドロキシエチルベンゼン、4,4’-メチレンビス(ヒドロキシエチルベンゼン)等の芳香族基を有するジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール類等が挙げられる。これらの鎖延長剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
これらの中でも得られるポリウレタンエラストマーのソフトセグメントとハードセグメントの相分離性に優れることによる柔軟性と弾性回復性に優れる点、工業的に安価に多量に入手が可能な点で、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールが好ましい。
【0074】
<高分子量のポリオール>
高分子量のポリオールとしては、通常のポリウレタン製造の際に用いるものであれば特に限定されない。例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0075】
中でも水酸基価200以下、例えば水酸基価37~175のポリアルキレンエーテルグリコールが好ましい。このポリアルキレンエーテルグリコールは、本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれるポリアルキレンエーテルグリコールと同じ構造単位を持つことが好ましい。
これらの高分子量ポリオールは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物に含まれるポリアルキレンエーテルグリコールに対する、高分子量のポリオールの使用量のモル比率は好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上で、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下である。この範囲であれば、鎖延長剤として用いる低分子量のポリオールとの相溶性が良好となる。
【0077】
[ポリウレタンエラストマーの製造方法]
本発明のポリウレタンエラストマーを製造する方法としては、一般的に実験ないし工業的に用いられる製造方法が使用できる。その例としては、下記1),2)等が挙げられる。
1) 本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物、高分子量のポリオール、ポリイソシアネート化合物、及び低分子量のポリオールからなる鎖延長剤を一括に混合して反応させる方法(以下、「一段法」と称する場合がある。)。
2) 本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物、高分子量のポリオール及びポリイソシアネート化合物を反応させて両末端がイソシアネート基のプレポリマーを調製した後に、そのプレポリマーと低分子量のポリオールからなる鎖延長剤を反応させる方法(以下、「イソシアネート基末端の二段法」と称する場合がある)。或いは、本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物、高分子量のポリオール及びポリイソシアネート化合物を反応させて両末端が水酸基のプレポリマーを調製した後に、そのプレポリマーとポリイソシアネート化合物からなる鎖延長剤を反応させる方法(以下、「水酸基末端の二段法」と称する場合がある。)(以下、これらを「二段法」と総称する場合がある。)。
【0078】
これらのうち、イソシアネート基末端の二段法は、本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物と高分子量のポリオールとを予め1当量以上のポリイソシアネート化合物と反応させることにより、ポリウレタンのソフトセグメントに相当する部分の両末端イソシアネートのプレポリマーを中間体として調製する工程を経るものである。このように、プレポリマーを一旦調製した後に低分子量のポリオールからなる鎖延長剤と反応させると、ソフトセグメント部分の分子量の調整が行いやすい場合がある。二段法は、ソフトセグメントとハードセグメントの相分離を確実に行う必要がある場合には有用である。
【0079】
<一段法>
一段法とは、ワンショット法とも呼ばれ、本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物、高分子量のポリオール、ポリイソシアネート化合物、及び低分子量のポリオールからなる鎖延長剤を一括に仕込むことで反応を行う方法である。
【0080】
一段法におけるポリイソシアネート化合物の使用量は、特に限定はされないが、本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物および高分子量のポリオールとの総水酸基数と、低分子量のポリオールからなる鎖延長剤の水酸基数の総計を1当量とした場合、下限は、好ましくは0.7当量、より好ましくは0.8当量、さらに好ましくは0.9当量、特に好ましくは0.95当量であり、上限は、好ましくは3.0当量、より好ましくは2.0当量、さらに好ましくは1.5当量、特に好ましくは1.1当量である。
【0081】
ポリイソシアネート化合物の使用量が上記上限以下であれば、未反応のイソシアネート基が副反応を起こし、得られるポリウレタンエラストマーの粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難となったり、柔軟性が損なわれたりするおそれがない。ポリイソシアネート化合物の使用量が上記下限以上であれば、得られるポリウレタンエラストマーの分子量が十分に大きくなり、十分な強度が得られる傾向がある。
【0082】
低分子量のポリオールからなる鎖延長剤の使用量は、特に限定されない。本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物と高分子量のポリオールの総水酸基数をポリイソシアネート化合物のイソシアネート基数から引いた数を1当量とした場合、低分子量のポリオールからなる鎖延長剤の使用量の下限は、好ましくは0.7当量、より好ましくは0.8当量、さらに好ましくは0.9当量、特に好ましくは0.95当量であり、上限は好ましくは3.0当量、より好ましくは2.0当量、さらに好ましくは1.5当量、特に好ましくは1.1当量である。低分子量のポリオールからなる鎖延長剤の使用量が上記上限以下であれば、得られるポリウレタンエラストマーが溶媒に溶けやすく加工が容易になる傾向がある。低分子量のポリオールからなる鎖延長剤の使用量が上記下限以上であれば、得られるポリウレタンエラストマーが軟らかすぎず、十分な強度や硬度、弾性回復性能や弾性保持性能が得られやすく、耐熱性が良好となる。
【0083】
<二段法>
二段法は、プレポリマー法ともよばれ、主に以下の方法がある。
(a)予め本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物と、高分子量のポリオールと、過剰のポリイソシアネート化合物とを、ポリイソシアネート化合物/(本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物とそれ以外のポリオール)の反応当量比が1を超える量から10.0以下で反応させて、分子鎖末端がイソシアネート基であるプレポリマーを製造する。次いでこのプレポリマーに低分子量のポリオールからなる鎖延長剤を反応させてポリウレタンエラストマーを製造する。
【0084】
(b)予めポリイソシアネート化合物と、過剰の本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物と高分子量のポリオールを、ポリイソシアネート化合物/(本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物とそれ以外のポリオール)の反応当量比が0.1以上から1.0未満で反応させて分子鎖末端が水酸基であるプレポリマーを製造する。次いでこのプレポリマーに末端がイソシアネート基のポリイソシアネート化合物からなる鎖延長剤を反応させてポリウレタンエラストマーを製造する。
【0085】
二段法は無溶媒でも溶媒共存下でも実施することができる。
【0086】
二段法(a)によるポリウレタンエラストマー製造は以下に記載の(1)~(3)のいずれかの方法によって行うことができる。
(1) 溶媒を使用せず、まず直接ポリイソシアネート化合物と本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物と高分子量のポリオールとを反応させてプレポリマーを合成し、そのまま低分子量のポリオールからなる鎖延長反応に使用する。
(2) (1)の方法でプレポリマーを合成し、その後溶媒に溶解し、以降の低分子量のポリオールからなる鎖延長反応に使用する。
(3) 初めから溶媒を使用し、ポリイソシアネート化合物と本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物と高分子量のポリオールとを反応させ、その後、低分子量のポリオールからなる鎖延長反応を行う。
【0087】
(1)の方法の場合には、鎖延長反応にあたり、低分子量のポリオールからなる鎖延長剤を溶媒に溶かしたり、溶媒に同時にプレポリマー及び低分子量のポリオールからなる鎖延長剤を溶解したりするなどの方法により、ポリウレタンエラストマーを溶媒と共存する形で得ることが重要である。
【0088】
二段法(a)の方法におけるポリイソシアネート化合物の使用量は、特に限定はされないが、本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物と高分子量のポリオールの総水酸基の数を1当量とした場合のイソシアネート基の数として、下限が好ましくは1.0当量を超える量、より好ましくは1.2当量、さらに好ましくは1.5当量であり、上限が好ましくは10.0当量、より好ましくは5.0当量、さらに好ましくは3.0当量である。
【0089】
ポリイソシアネート化合物の使用量が上記上限以下であれば、過剰のイソシアネート基による副反応を抑制して所望のポリウレタンエラストマーの物性まで到達しやすい傾向がある。ポリイソシアネート化合物の使用量が上記下限以上であれば、得られるポリウレタンエラストマーの分子量が十分に上がり、強度や熱安定性が良好となる。
【0090】
低分子量のポリオールからなる鎖延長剤の使用量は特に限定されないが、プレポリマーに含まれるイソシアネート基の数1当量に対して、下限が、好ましくは0.1当量、より好ましくは0.5当量、さらに好ましくは0.8当量であり、上限が好ましくは5.0当量、より好ましくは3.0当量、さらに好ましくは2.0当量である。
【0091】
上記鎖延長反応を行う際に、分子量を調整する目的で、一官能性の有機アミン類やアルコール類を共存させてもよい。
【0092】
二段法(b)の方法における末端が水酸基であるプレポリマーを作成する際のポリイソシアネート化合物の使用量は、特に限定はされないが、本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物と高分子量のポリオールの総水酸基の数を1当量とした場合のイソシアネート基の数として、下限が好ましくは0.1当量、より好ましくは0.5当量、さらに好ましくは0.7当量であり、上限が好ましくは0.99当量、より好ましくは0.98当量、さらに好ましくは0.97当量である。
【0093】
ポリイソシアネート化合物の使用量が上記下限以上であれば、続く鎖延長反応で所望の分子量を得るまでの工程が長くなりすぎず、生産効率が良好となる。ポリイソシアネート化合物の使用量が上記上限以下であれば、粘度が高くなりすぎて得られるポリウレタンエラストマーの柔軟性が低下したり、取扱いが悪く生産性が劣ったりすることが防止される。
【0094】
末端がイソシアネート基のポリイソシアネート化合物からなる鎖延長剤の使用量については特に限定されないが、プレポリマーに使用した本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物と高分子量のポリオールの総水酸基の数を1当量とした場合、プレポリマーに使用したイソシアネート基の当量を加えた総当量として、下限が好ましくは0.7当量、より好ましくは0.8当量、さらに好ましくは0.9当量であり、上限が好ましくは1.0当量未満、より好ましくは0.99当量、さらに好ましくは0.98当量の範囲である。
【0095】
上記鎖延長反応を行う際に、分子量を調整する目的で、一官能性の有機アミン類やアルコール類を共存させてもよい。
【0096】
鎖延長反応は通常0℃~250℃の温度で行われる。鎖延長反応の温度は溶剤の量、使用原料の反応性、反応設備等により異なり、特に制限はない。鎖延長反応の温度が低すぎると反応の進行が遅くなったり、原料や重合物の溶解性が低いために製造時間が長くなることがある。鎖延長反応の温度が高すぎると副反応や得られるポリウレタンの分解が起こることがある。鎖延長反応は、減圧下で脱泡しながら行ってもよい。
【0097】
鎖延長反応には必要に応じて、触媒や安定剤等を用いてもよい。
【0098】
触媒としては例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸、スルホン酸等の化合物が挙げられる。触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0099】
安定剤としては例えば2,6-ジブチル-4-メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネート、N,N’-ジ-2-ナフチル-1,4-フェニレンジアミン、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト等の化合物が挙げられる。安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0100】
鎖延長剤が短鎖脂肪族アミン等の反応性の高いものの場合は、触媒を添加せずに実施してもよい。
亜リン酸トリス(2-エチルヘキシル)等の反応抑制剤を用いることもできる。
【0101】
<添加剤>
本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物を用いて得られたポリウレタンエラストマー(以下、「本発明のポリウレタンエラストマー」と称する場合がある。)には、熱安定剤、光安定剤、着色剤、充填剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘着防止剤、難燃剤、老化防止剤、無機フィラー等の各種の添加剤を、本発明のポリウレタンエラストマーの特性を損なわない範囲で、添加、混合することができる。
【0102】
熱安定剤として使用可能な化合物としては、燐酸、亜燐酸の脂肪族、芳香族又はアルキル基置換芳香族エステルや次亜燐酸誘導体、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルぺンタエリスリトールジホスファイト、ジアルキルビスフェノールAジホスファイト等のリン化合物;フェノール系誘導体、特にヒンダードフェノール化合物;チオエーテル系、ジチオ酸塩系、メルカプトベンズイミダゾール系、チオカルバニリド系、チオジプロピオン酸エステル系等のイオウを含む化合物;スズマレート、ジブチルスズモノオキシド等のスズ系化合物等を使用することができる。
【0103】
ヒンダードフェノール化合物の具体例としては、「Irganox1010」(商品名:BASFジャパン株式会社製)、「Irganox1520」(商品名:BASFジャパン株式会社製)、「Irganox245」(商品名:BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0104】
リン化合物としては、「PEP-36」、「PEP-24G」、「HP-10」(いずれも商品名:株式会社ADEKA社製)、「Irgafos 168」(商品名:BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0105】
イオウを含む化合物の具体例としては、ジラウリルチオプロピオネート(DLTP)、ジステアリルチオプロピオネート(DSTP)などのチオエーテル化合物が挙げられる。
【0106】
光安定剤の例としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。具体的には「TINUVIN622LD」、「TINUVIN765」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、「SANOL LS-2626」、「SANOL LS-765」(以上、三共株式会社製)等が使用可能である。
【0107】
紫外線吸収剤の例としては、「TINUVIN328」、「TINUVIN234」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)等が挙げられる。
【0108】
着色剤としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、金属錯塩染料などの染料;カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、マイカなどの無機顔料;及びカップリングアゾ系、縮合アゾ系、アンスラキノン系、チオインジゴ系、ジオキサゾン系、フタロシアニン系等の有機顔料等が挙げられる。
【0109】
無機フィラーの例としては、ガラス短繊維、カーボンファイバー、アルミナ、タルク、グラファイト、メラミン、白土等が挙げられる。
【0110】
難燃剤の例としては、燐及びハロゲン含有有機化合物、臭素あるいは塩素含有有機化合物、ポリ燐酸アンモニウム、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン等の添加及び反応型難燃剤が挙げられる。
【0111】
これらの添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で組み合わせて用いてもよい。
【0112】
これらの添加剤の添加量は、ポリウレタンエラストマーに対する重量割合として、下限が、好ましくは0.01重量%、より好ましくは0.05重量%、さらに好ましくは0.1重量%、上限は、好ましくは10重量%、より好ましくは5重量%、さらに好ましくは1重量%である。添加剤の添加量が上記下限以上であれば、その添加効果を十分に得ることができる。添加剤の添加量が上記上限以下であればポリウレタンエラストマー内で添加剤が析出したり、濁りを発生したりするおそれがない。
【0113】
<分子量>
本発明のポリウレタンエラストマーの分子量は、その用途に応じて適宜調整され、特に制限はない。本発明のポリウレタンエラストマーの分子量は、GPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)として好ましくは5万以上、より好ましくは10万以上で、好ましくは50万以下、より好ましくは30万以下である。Mwが上記下限以上であれば、十分な強度や硬度が得られる。Mwが上記上限以下であれば加工性などハンドリング性に優れる。
【0114】
<用途>
本発明のポリウレタンエラストマーは、柔軟性、耐久性に優れ、良好な耐熱性、耐摩耗性を有し、加工性にも優れることから、各種用途に使用することができる。
【0115】
例えば、本発明のポリウレタンエラストマーは、注型ポリウレタンエラストマーに使用できる。その具体的用途として、圧延ロール、製紙ロール、複写機用給紙ロール、プレテンションロール等のロール類、フォークリフト、自動車車両ニュートラム、台車、運搬車等のソリッドタイヤ、キャスター等が挙げられる。また、工業製品として、コンベアベルトアイドラー、ガイドロール、プーリー、鋼管ライニング、鉱石用ラバースクリーン、ギア類、コネクションリング、ライナー、ポンプのインペラー、サイクロンコーン、サイクロンライナー等が挙げられる。本発明のポリウレタンエラストマーは、OA機器のベルト、紙送りロール、複写機用クリーニングブレード、スノープラウ、歯付ベルト、サーフローラー等にも使用できる。
【0116】
本発明のポリウレタンエラストマーは、熱可塑性エラストマー(以下、「本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー」と称す場合がある。)としての用途にも適用される。本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマーを成形することによって伸縮性に優れた成形品を得ることができる。本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマーの成形方法は特に限定されるものではなく、熱可塑性重合体に対して一般に用いられている各種の成形方法を使用することができる。例えば、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、カレンダー成形、流延成形、ロール加工などの任意の成形法を採用することができる。本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマーを成形して、樹脂板、フィルム、シート、チューブ、ホース、ベルト、ロール、合成皮革、靴底、自動車部品、エスカレーターハンドレール、道路標識部材、繊維等の種々の形状の成形品を製造できる。
【0117】
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマーの用途としては、より具体的には、次のようなものが挙げられる。
食品、医療分野で用いる空圧機器、塗装装置、分析機器、理化学機器、定量ポンプ、水処理機器、産業用ロボット等におけるチューブやホース類、スパイラルチューブ、消防ホース等。
丸ベルト、Vべルト、平ベルト等のベルトとして、各種伝動機構、紡績機械、荷造り機器、印刷機械等。
履物のヒールトップや靴底、カップリング、パッキング、ポールジョイント、ブッシュ、歯車、ロール等の機器部品、スポーツ用品、レジャー用品、時計のベルト等。
自動車部品として、オイルストッパー、ギアボックス、スペーサー、シャーシー部品、内装品、タイヤチェーン代替品等。
キーボードフィルム、自動車用フィルム等のフィルム、カールコード、ケーブルシース、ベロー、搬送ベルト、フレキシブルコンテナー、バインダー、合成皮革、ディピンイング製品、接着剤等。
【0118】
本発明のポリウレタンエラストマーは、さらに、発泡ポリウレタンエラストマー、又はポリウレタンフォームとすることができる。ポリウレタンエラストマーを発泡又はフォームとする方法としては、例えば、水などを用いた化学発泡やメカニカルフロスなどの機械発泡が挙げられる。その他スプレー発泡やスラブ、注入、モールド成型で得られる硬質フォームや、同じくスラブ、モールド成型で得られる軟質フォーム等が挙げられる。
【0119】
具体的な発泡ポリウレタンエラストマー又はポリウレタンフォームの用途としては電子機器および建築の断熱材や防振材、自動車シート、自動車の天井クッション、マットレスなどの寝具、インソール、ミッドソールや靴底等が挙げられる。
【実施例】
【0120】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0121】
〔評価方法〕
以下の実施例及び比較例で得られたポリアルキレンエーテルグリコール及びポリアルキレンエーテルグリコール組成物の評価方法は下記の通りである。
【0122】
<水酸基価>
JIS K1557-1に準拠して、アセチル化試薬を用いた方法にてポリアルキレンエーテルグリコール又はポリアルキレンエーテルグリコール組成物の水酸基価を測定した。
【0123】
<ポリアルキレンエーテルグリコール(ジアルキレンエーテルグリコールを含む)の定量方法>
試料に内部標準としてトリデカンを添加し、ガスクロマトグラフィーによる分析を行って、水酸基末端数を求めた。
GC装置としては島津社のGC-14Aを使用した。カラムは無極性カラムであるアジレント社のDB-1を使用した。
【0124】
<末端アルコキシ基PAEGの定量方法>
試料をCDCl3に溶解し、400MHz 1H-NMR(日本電子株式会社製AL-400)を測定し、各成分のシグナル位置より求め、末端アルコキシ基PAEGを定量し、アルコキシ基末端数を求めた。
【0125】
〔ポリアルキレンエーテルグリコール組成物の製造と評価〕
[実施例1]
<ポリテトラメチレンエーテルグリコール組成物の調製>
ジブチレンエーテルグリコールを含まず、水酸基価が280であるポリテトラメチレンエーテルグリコール50重量部とメタノール50重量部を混合し、混合物とした。上記混合物を内部の温度を60℃に保った陽イオン交換樹脂PK216L-H(三菱ケミカル(株)製)に滞留時間10時間となるように連続的に通液し、ジブチレンエーテルグリコールを含まず、メトキシ基末端基数が1.0mmol/gであるポリテトラメチレンエーテルグリコール50重量部とメタノール50重量部の混合物を得た。次いでメタノールを単蒸留により留去した。
【0126】
上記ジブチレンエーテルグリコールを含まず、メトキシ基末端基数が1.0mmol/gであるポリテトラメチレンエーテルグリコールと、メトキシ基末端基を含まない水酸基価280のポリテトラメチレンエーテルグリコールとジブチレンエーテルグリコールを混合し、ポリテトラメチレンエーテルグリコール組成物を得た。
【0127】
得られたポリテトラメチレンエーテルグリコール組成物の水酸基価(PAEG組成物水酸基価)、PAEG水酸基末端数、DAEG水酸基末端数、PAEGアルコキシ基末端数(メトキシ基末端数)を分析し、この結果から、PAEGメトキシ基末端数/PAEG水酸基末端数と、PAEGメトキシ基末端数/DAEG水酸基末端数を算出した。結果を表1に示す。
【0128】
<1,4-ブタンジオールとの混合物の保持評価>
上記で得られたポリテトラメチレンエーテルグリコール組成物と1,4-ブタンジオールを重量比1:3の割合で混合し、透明なサンプル瓶に注入した。注入した時点で目視により内容物を確認したところ均一で無色透明な液体であった。該サンプル瓶を設定温度-10℃の冷凍庫に16時間保管したのちに取り出した。取り出したサンプル瓶の内容物を目視により確認したところ、固形物の析出量はごくわずかであった。
【0129】
[実施例2]
<ポリテトラメチレンエーテルグリコール組成物の調製>
実施例1と同様にジブチレンエーテルグリコールを含まず、メトキシ基末端基数が1.0mmol/gであるポリテトラメチレンエーテルグリコール、メトキシ基末端基を含まない水酸基価280のポリテトラメチレンエーテルグリコール及びジブチレンエーテルグリコールを混合し、ポリテトラメチレンエーテルグリコール組成物を得た。本実施例2において、水酸基価280のポリテトラメチレンエーテルグリコールの混合比率は実施例1より高い。
【0130】
得られたポリテトラメチレンエーテルグリコール組成物の水酸基価(PAEG組成物水酸基価)、PAEG水酸基末端数、DAEG水酸基末端数、PAEGアルコキシ基末端数(メトキシ基末端数)を分析し、この結果から、PAEGメトキシ基末端数/PAEG水酸基末端数と、PAEGメトキシ基末端数/DAEG水酸基末端数を算出した。結果を表1に示す。
【0131】
<1,4-ブタンジオールとの混合物の保持評価>
実施例1と同様の方法で保持評価を実施した。サンプル瓶に注入した時点での目視評価では、均一で無色透明な液体であった。低温保持後の目視評価において、固形物の析出量はわずかであった。
【0132】
[比較例1]
<ポリテトラメチレンエーテルグリコール組成物の調製>
実施例1と同様にジブチレンエーテルグリコールを含まず、メトキシ基末端基数が1.0mmol/gであるポリテトラメチレンエーテルグリコール、メトキシ基末端基を含まない水酸基価280のポリテトラメチレンエーテルグリコール及びジブチレンエーテルグリコールを混合し、ポリテトラメチレンエーテルグリコール組成物を得た。本比較例1において、水酸基価280のポリテトラメチレングリコールの混合比率は実施例1より低い。
【0133】
得られたポリテトラメチレンエーテルグリコール組成物の水酸基価(PAEG組成物水酸基価)、PAEG水酸基末端数、DAEG水酸基末端数、PAEGアルコキシ基末端数(メトキシ基末端数)を分析し、この結果から、PAEGメトキシ基末端数/PAEG水酸基末端数と、PAEGメトキシ基末端数/DAEG水酸基末端数を算出した。結果を表1に示す。
【0134】
<1,4-ブタンジオールとの混合物の保持評価>
実施例1と同様の方法で保持評価を実施した。サンプル瓶に注入した時点での目視評価は均一で無色透明な液体であった。低温保持後の目視評価においては多量の固形物の析出が認められた。
【0135】
[比較例2]
<ポリテトラメチレンエーテルグリコール組成物の調製>
実施例1と同様にジブチレンエーテルグリコールを含まず、メトキシ基末端基数が1.0mmol/gであるポリテトラメチレンエーテルグリコール、メトキシ基末端基を含まない水酸基価280のポリテトラメチレンエーテルグリコール及びジブチレンエーテルグリコールを混合し、ポリテトラメチレンエーテルグリコール組成物を得た。本比較例2において、水酸基価280のポリテトラメチレングリコールの混合比率は実施例1より低い。
【0136】
得られたポリテトラメチレンエーテルグリコール組成物の水酸基価(PAEG組成物水酸基価)、PAEG水酸基末端数、DAEG水酸基末端数、PAEGアルコキシ基末端数(メトキシ基末端数)を分析し、この結果から、PAEGメトキシ基末端数/PAEG水酸基末端数と、PAEGメトキシ基末端数/DAEG水酸基末端数を算出した。結果を表1に示す。
【0137】
<1,4-ブタンジオールとの混合物の保持評価>
実施例1と同様の方法で保持評価を実施した。サンプル瓶に注入した時点での目視評価は均一で無色透明な液体であった。低温保持後の目視評価においては非常に多量の固形物の析出が認められた。
【0138】
[比較例3]
<ポリテトラメチレンエーテルグリコール組成物の調製>
水酸基価173のポリテトラメチレンエーテルグリコール及びジブチレンエーテルグリコールを混合してポリテトラメチレンエーテルグリコール組成物を得た。
【0139】
<1,4-ブタンジオールとの混合物の保持評価>
実施例1と同様の方法で保持評価を実施した。サンプル瓶に注入した時点での目視評価は不均一で無色懸濁した液体であった。低温保持後の目視評価においては非常に多量の固形物の析出が認められた。
【0140】
上記結果を表1にまとめた。
表1中の略称は以下の通りである。
1,4BG:1,4-ブタンジオール
PAEG:ポリアルキレンエーテルグリコール
DAEG:ジアルキレンエーテルグリコール
【0141】
【0142】
比較例1~3のポリテトラメチレンエーテルグリコール組成物は、ポリウレタンの原料として用いる低分子量のポリオールである1,4-ブタンジオールとの相溶性が悪く、ポリウレタン製造時の反応均一性に欠けるので、得られるポリウレタンの各種物性の低下が懸念される。
これに対して、実施例1及び2のポリテトラメチレンエーテルグリコール組成物はともに、ポリウレタンの原料として用いる低分子量のポリオールである1,4-ブタンジオールとの相溶性が良好であり、ポリウレタン製造時の反応均一性および各種物性の向上が期待できる。
【0143】
〔ポリウレタンの製造と評価〕
<ポリウレタンの製造>
実施例1で得られたポリテトラメチレンエーテルグリコール組成物(水酸基価613)を原料として用いて、以下の操作でポリウレタンを製造した。
60℃のオイルバス上に、熱電対、冷却管及び撹拌装置を具備したセパラブルフラスコを設置し、あらかじめ80℃に加温した実施例1で得られたポリテトラメチレンエーテルグリコール組成物を9.7g、三菱ケミカル株式会社製PTMG(商品名「PTMG2000」、水酸基価53)を59.3g、1,4-ブタンジオールを6.33g、脱水N,N-ジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社製)を239.00g入れ、次いで、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「MDI」と称することがある。)27.01gを添加し、セパラブルフラスコ内を窒素雰囲気下、60rpmで撹拌しながら1時間程度で70℃に昇温した。70℃となった後、ウレタン化触媒としてネオスタンU-830(日東化成株式会社製)0.017gを添加し、70℃で、さらに2時間程度撹拌した。その後、MDIを分割添加して分子量を調整し、分子量18.0万のポリウレタン(以下「PU1」と称する場合がある。)の溶液(固形分濃度30重量%)を得た。
【0144】
参考として、PU1の原料として使用した、実施例1のポリテトラメチレンエーテルグリコール組成物9.7gと三菱ケミカル株式会社製PTMG(商品名「PTMG2000」、水酸基価53)59.3gの代わりに、三菱ケミカル株式会社製PTMG(商品名「PTMG1000」、水酸基価112)69gを使用したこと以外は上記PU1の製造手順と同様にして分子量18.0万のポリウレタン(以下「PU2」と称する場合がある。)の溶液を得た。
【0145】
[ポリウレタンの評価]
<ポリウレタン試験片の製造>
PU1又はPU2のポリウレタン溶液を500μmのアプリケーターでフッ素樹脂シート(日東電工株式会社製フッ素テープ「ニトフロン900」、厚さ0.1mm)上に塗布し、常圧条件下に50℃で5時間、常圧条件下に100℃で0.5時間、真空条件下に100℃で0.5時間、真空条件下に80℃で15時間の順で乾燥させてポリウレタンフィルム(厚み約50μm)の試験片を製造した。
【0146】
<耐溶剤性>
上記で得られたポリウレタンフィルムから3cm×3cmの試験片を切り出し、下記試験溶剤をそれぞれ50mL入れた内径10cmφのガラス製シャーレに投入して、各々の試験溶剤毎、下記温度で下記時間浸漬した後の重量を測定した。浸漬前の試験片の重量と浸漬後の試験片の重量との重量変化率(%)(={(浸漬後の試験片の重量-浸漬前の試験片の重量)/浸漬前の試験片の重量}×100)を算出した。重量変化率が0%に近いほうが耐溶剤性が良好であることを示す。
耐オレイン酸性:試験片をオレイン酸中に80℃で16時間浸漬した。
耐エタノール性:試験片をエタノール中に室温で1時間浸漬した。
耐酢酸エチル性:試験片を酢酸エチル中に室温で1時間浸漬した。
【0147】
<室温引張試験>
JIS K6301に準じ、上記で得られたポリウレタンフィルム(厚み約50μm)を幅10mm、長さ100mmの短冊状とした試験片を、引張試験機(オリエンテック社製 製品名「テンシロンUTM-III-100」)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、温度23℃、相対湿度60%で引張試験を実施し、試験片が破断した時点の伸度(破断伸度)及び応力(破断強度)を測定した。
【0148】
PU1及びPU2の物性の評価結果を表2に示す。
【0149】
【0150】
表2より本発明のポリアルキレンエーテルグリコール組成物をポリウレタンの製造原料として用いて製造されたポリウレタン(PU1)は、従来品(PU2)に比べて耐溶剤性および機械的強度が向上していることが明らかである。
【0151】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更が可能であることは当業者に明らかである。
本出願は、2019年3月28日付で出願された日本特許出願2019-063409に基づいており、その全体が引用により援用される。