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特許7380720半導体装置、pHセンサ、バイオセンサ、及び半導体装置の製造方法
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  • 特許-半導体装置、pHセンサ、バイオセンサ、及び半導体装置の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】半導体装置、pHセンサ、バイオセンサ、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/414 20060101AFI20231108BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20231108BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G01N27/414 301V
G01N27/414 301E
G01N27/414 301W
G01N27/416 353Z
H01L29/78 618B
H01L29/78 625
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022003648
(22)【出願日】2022-01-13
(62)【分割の表示】P 2018531827の分割
【原出願日】2017-07-20
(65)【公開番号】P2022058606
(43)【公開日】2022-04-12
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2016152721
(32)【優先日】2016-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中積 誠
(72)【発明者】
【氏名】西 康孝
【審査官】田付 徳雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-192971(JP,A)
【文献】特開2010-205923(JP,A)
【文献】特開2014-111818(JP,A)
【文献】特開2010-166030(JP,A)
【文献】特開2016-015484(JP,A)
【文献】特開2015-190848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/414
G01N 27/416
H01L 21/336
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層を形成する工程と、
前記半導体層上に導電層を形成する工程と、
前記導電層を所定のパターンに対応させて前記半導体層が露出するまでエッチングし、第1の電極及び第2の電極を形成する工程と、
を含み、
前記半導体層は、スピネル型のZnGaであり、
前記エッチングを酸性溶液で行う半導体装置の製造方法を備える、pHセンサの製造方法
【請求項2】
請求項1に記載のpHセンサの製造方法であって、
前記半導体層は、キャリア元素がドープされている、pHセンサの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のpHセンサの製造方法であって、
前記半導体層は、水素がドープされている、pHセンサの製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のpHセンサの製造方法であって、
前記半導体層を形成する工程は、ZnGaの焼結体ターゲットとZnOの焼結体ターゲットとを用いて共スパッタリングすることを含んで行われる、pHセンサの製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のpHセンサの製造方法であって、
前記第1の電極及び第2の電極を形成する工程は、
前記導電層上にレジスト層を形成することと、
前記レジスト層を所定のパターン光で露光した後に現像することと、
現像後に前記レジスト層に形成された開口部から露出している前記導電層を前記酸性溶液でエッチングすることと、
を含んで行われる、pHセンサの製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のpHセンサの製造方法であって、
前記半導体層を形成する工程を190℃以上で行う、pHセンサの製造方法。
【請求項7】
半導体層を形成する工程と、
前記半導体層上に導電層を形成する工程と、
前記導電層を所定のパターンに対応させて前記半導体層が露出するまでエッチングし、第1の電極及び第2の電極を形成する工程と、
を含み、
前記半導体層は、スピネル型のZnGa であり、
前記エッチングを酸性溶液で行う半導体装置の製造方法を備える、バイオセンサの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のバイオセンサの製造方法であって、
前記半導体層は、キャリア元素がドープされている、バイオセンサの製造方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のバイオセンサの製造方法であって、
前記半導体層は、水素がドープされている、バイオセンサの製造方法。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか一項に記載のバイオセンサの製造方法であって、
前記半導体層を形成する工程は、ZnGa の焼結体ターゲットとZnOの焼結体ターゲットとを用いて共スパッタリングすることを含んで行われる、バイオセンサの製造方法。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか一項に記載のバイオセンサの製造方法であって、
前記第1の電極及び第2の電極を形成する工程は、
前記導電層上にレジスト層を形成することと、
前記レジスト層を所定のパターン光で露光した後に現像することと、
現像後に前記レジスト層に形成された開口部から露出している前記導電層を前記酸性溶液でエッチングすることと、
を含んで行われる、バイオセンサの製造方法。
【請求項12】
請求項7~11のいずれか一項に記載のバイオセンサの製造方法であって、
前記半導体層を形成する工程を190℃以上で行う、バイオセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、pHセンサ、バイオセンサ、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(TFT)等の半導体装置に用いられる半導体材料としては、例えば、In、Ga及びZnからなる酸化物(IGZO;In-Ga-Zn-O)等のアモルファス酸化物が用いられている(特許文献1参照)。このような従来の半導体材料は化学的耐久性が十分ではないため、半導体装置を製造する際は、半導体材料を化学的なダメージから保護する構成を設けてエッチング工程等の処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-051421号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明の第一の態様は、半導体層を形成する工程と、前記半導体層上に導電層を形成する工程と、前記導電層を所定のパターンに対応させて前記半導体層が露出するまでエッチングし、第1の電極及び第2の電極を形成する工程と、を含み、半導体層は、スピネル型のZnGa であり、前記エッチングを酸性溶液で行う半導体装置の製造方法である。
【0005】
本発明の第二の態様は、第一の態様の半導体装置の製造方法を備えるpHセンサの製造方法である。
【0006】
本発明の第三の態様は、第一の態様の半導体装置の製造方法を備えるバイオセンサの製造方法である。
【0007】
本発明の第四の態様は、半導体層を形成する工程と、半導体層上に導電性の層を形成する工程と、導電性の層を所定のパターンに対応させてエッチングし、第1の電極及び第2の電極を形成する工程と、を含む半導体装置の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る製造方法の好適例を説明するための概念図である。
図2】実施例1のZnGa焼結体のXRD測定の回折パターンである。
図3】実施例1の半導体特性の測定結果を表すグラフである。
図4】実施例1のpHセンサの概略断面図である。
図5】実施例1のpHセンサの測定結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。なお、図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0010】
本実施形態に係る半導体装置は、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極とに接する半導体層と、を有し、半導体層は、亜鉛(Zn)とガリウム(Ga)とを含むスピネル型の酸化物である半導体装置である。本実施形態に係る半導体装置は、結晶構造がスピネル型である酸化物を用いることで、酸による化学的なダメージを防ぐための付加的な製造工程や付加的な構成が必要ないという利点を有する。よって、本実施形態に係る半導体装置の構成としては、半導体層を保護するための保護層を有しない構成とすることができる。
【0011】
従来、酸化物半導体の材料としては、ZnO、In、Ga、InGaZnO等が用いられており、これらは高い半導体特性を示すものの、酸や塩基に対する耐性が十分ではない。例えば、pH4以下といった強酸やpH10以上といった強塩基の条件下では、酸化物半導体が浸食されてしまう。このような、酸や塩基に対する耐性に弱いという問題点は、上述した酸化物であればアモルファスであっても結晶であっても抱えているものであり、幅広いpH領域に対して安定であることが望まれていた。この点、本実施形態に係る半導体装置は強酸や強塩基に対して高い安定性を有し、幅広いpH領域において高い安定性を有する。
【0012】
半導体層は、スピネル型のZnGaを含むことが好ましい。これにより酸や塩基性に対する耐性を一層向上させることができる。例えば、スピネル型のZnGaが半導体層である場合、フッ素系ドライエッチングやウエットエッチングといった加工方法が採用できる。
【0013】
半導体層は、その半導体特性を一層向上させるといった観点から、キャリア元素がドープされていることが好ましい。キャリア元素としては、特に限定されず、ドーピングプロセスにおいて公知のものを採用することができる。具体例としては、1価の金属、2価の金属、3価の金属等が挙げられる。これらの中でも、本実施形態では、半導体層には、水素がドープされていることがより好ましい。
【0014】
本実施形態に係る半導体装置としては、半導体層に接する絶縁層と、絶縁層を介して半導体層と対向して設けられた第3の電極と、を更に有し、第1の電極、第2の電極、第3の電極を、それぞれ、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極としてトランジスタを構成するものが好ましい。
【0015】
第1の電極をソース電極として用いる場合、ソース電極としては、特に限定されず、公知のものを採用することができる。具体例としては、Mo、W、Al、Cu、Cu-Al合金、Al-Si合金、Mo-W合金、Ni-P合金等の単層、これらの積層体等が挙げられる。
【0016】
第2の電極をドレイン電極として用いる場合、ドレイン電極としては、特に限定されず、公知のものを採用することができる。具体例としては、Mo、W、Al、Cu、Cu-Al合金、Al-Si合金、Mo-W合金、Ni-P合金等の単層、これらの積層体等が挙げられる。
【0017】
第3の電極をゲート電極として用いる場合、ゲート電極としては、特に限定されず、公知のものを採用することができる。具体例としては、Mo、W、Al、Cu、Cu-Al合金、Al-Si合金、Mo-W合金、Ni-P合金等の単層、これらの積層体等が挙げられる。
【0018】
本実施形態に係る半導体装置は、pHセンサ、バイオセンサ等に好適に用いることができる。上述したように、本実施形態に係る半導体装置は、強酸や強塩基に対して高い安定性を有し、pH1~14といった幅広いpH領域において高い安定性を有するため、強酸・強塩基であっても正確な測定が可能なpHセンサとすることができる。
【0019】
バイオセンサ(バイオセンサチップという場合もある)は、生体起源の分子認識機構を利用した化学センサであり、生体内のpH変化や酸化還元反応等の化学認識素子として用いられる。この点、本実施形態に係る半導体装置は幅広いpH領域において高い安定性を有するため、測定対象が強酸性・強塩基性であっても正確なセンシングが可能なバイオセンサとすることができる。例えば、特定の抗体を半導体表面に修飾させ、これに特異的なDNA等の検知対象が吸着した際のプロトン量を計測するバイオセンサとすることができる。
【0020】
従来の構成では半導体層を保護するための保護層を設けて測定されるが、この場合、保護層の膜厚として通常100nm程度以上であることが要求される一方、抗体の一般的な大きさは数nm程度であるので、保護層を設けると抗体の大きさを反映した電気的な情報が得られなかった。しかし、本実施形態に係る半導体装置では半導体層を保護するための保護層を必ずしも設ける必要がなく、これを省略することも可能なため、高速かつ高感度で検知することが可能である。
【0021】
本実施形態に係る半導体装置は、電子伝導度等といった半導体特性に優れることはもちろん、従来では達成できなかった程度の耐酸性や耐塩基性を有するため、強酸成分や光酸発生剤についての迅速かつ正確な検知が可能である。そして、半導体装置をデバイス化した際には、エッチング耐性が高いため配線パターンの微細化や精細化が期待されるとともに、デバイスとしての軽量化等にも寄与することができる。さらには、金属電極の材料の選択肢を広げることも期待される。したがって、本実施形態に係る半導体装置は、上述したセンサ類をはじめ、ディスプレイ類や各種電子機器等といった幅広い用途に用いることができる。
【0022】
<製造方法>
本実施形態に係る半導体装置の製造方法について、好適例を説明する。本実施形態に係る製造方法は、半導体層を形成する工程と、半導体層上に導電性の層を形成する工程と、導電性の層を所定のパターンに対応させてエッチングし、第1の電極及び第2の電極を形成する工程と、を含む方法が挙げられる。本実施形態に係る半導体装置は、半導体層が酸に強く、酸エッチング液に耐えうることから、例えば、逆スタガード型TFTの製造等にも応用できる。図1は、本実施形態に係る製造方法の例を説明するための概念図を表す。
【0023】
(S1工程)
まず、基板10の表面上にゲート電極20を形成する(S1工程)。基板としては、特に限定されず、公知の材料を採用することができる。具体例としては、例えば、ガラス、シリコン、金属、合金、これらの箔等が挙げられる。ゲート電極20は、上述した第3の電極に対応するものである。基板10の表面上へのゲート電極20の形成方法は、特に限定されず、基板10やゲート電極20の材料等を考慮した上で、適宜好適な方法を採用することができる。
【0024】
(S2工程)
次に、ゲート電極20が形成された側の基板10の表面上に絶縁層30を形成し、ゲート電極20を絶縁層30で被覆する(S2工程)。絶縁層30としては、特に限定されず、公知の材料を採用することができる。具体例としては、例えば、SiO、Si、SiON、Al、Ta、HfO等が挙げられる。
【0025】
(S3工程)
そして、絶縁層30の表面上に導電性の層である半導体層40を形成する(S3工程)。半導体層40は、スパッタ装置を用いて形成することができ、複数のカソードを用いて所定の半導体層40を形成することが好ましい。形成する半導体膜40は、亜鉛(Zn)とガリウム(Ga)とを含むスピネル型の酸化物である。かかる酸化物を用いることで、半導体層40は強酸や強塩基に対して強い耐性を発現する。そのため、製造プロセスとしては、半導体層を保護する工程等を省略することができる。具体的には、ガリウム亜鉛酸化物及び亜鉛酸化物をターゲットとして用いて共スパッタ(co-sputter)を行い、スピネル型のガリウム亜鉛酸化物からなる半導体層40を形成することができる。
【0026】
また、ガリウム酸化物及び亜鉛酸化物をターゲットとして用いて共スパッタする方法や、ガリウム及び亜鉛をターゲットとして用いて共スパッタし、成膜中に反応性ガスで酸化する方法を使用してもよい。さらに、共スパッタに限らず、亜鉛酸化物とガリウム酸化物の混合物をターゲットとして用いてスパッタする方法や、亜鉛とガリウムの混合物をターゲットとして用いてスパッタし、成膜中に反応性ガスで酸化する方法を使用してもよい。
【0027】
例えば、n型半導体材料の場合には、元素ドーピング、膜中の酸素欠損による作製が可能である。n型半導体が得られる元素としては、特に限定されないが、例えば、Al、In、Sn、Sb、Ta等が挙げられる。酸素欠損を発生させる方法としては、特に限定されず公知の方法を採用することができる。具体的には、嫌酸素雰囲気下又は水素等の還元ガス雰囲気下で加熱処理を施すことが好ましい。例えば、スパッタガスに水素を混合した状態で成膜を行い、格子間水素によるn型のキャリアドーピングを行う方法が挙げられる。これらの処理は、成膜後チャンバー内で行ってもよいし、後工程として焼成してもよい。
【0028】
半導体層40の成膜温度は、特に限定されないが、半導体層40の結晶性を向上させる観点から190℃以上で行うことが好ましい。なお、加熱しすぎると基板10の表面に飛来するZn粒子の蒸発を促し、GaとZnの化学量論比からのずれ(組成ずれ)が生じる場合があるが、Zn又はZnOを含む焼結体ターゲットを同時放電することで、膜中のZn濃度を増加させることができ、組成ずれを効果的に防止することができる。
【0029】
(S4工程)
半導体層40上に導電層を形成する工程と、導電層を所定のパターンに対応させてエッチングし、第1の電極52及び第2の電極54を形成する工程を行う(S4)。第1の電極52はソース電極であり、第2の電極54はドレイン電極である。第1及び第2の電極の形成方法としては、通常のフォトリソ工程を用いることができる。この場合、半導体層40上に導電層を形成した後、導電層上にレジスト層を形成し、所定のパターン光でレジスト層を露光、現像する。次いで、レジスト層の開口部から露出している導電層をエッチングすることで第1の電極、第2の電極を形成することができる。なお、レジスト層としてポジ型の材料を用いてもよいし、ネガ型の材料を用いてもよい。
【0030】
従来技術では半導体材料としてIGZO、ZnO、Ga等の酸化物が用いられているが、これらは両性物質であり、強酸性溶液や強塩基性溶液に溶解してしまう。すなわち、従来の半導体層はエッチングに使用される溶液に対する耐性が弱いため、ソース・ドレイン電極を形成するエッチング工程を行う前に、保護層としてSiOやAl等の絶縁層で半導体層を保護する工程が必要であった。この点、本実施形態によれば、半導体層40は高い耐酸性及び塩基性を有するため、このような保護層を設けなくとも、エッチングを行うことができる。そのため、半導体層を保護するための保護層を設ける工程を行うことなく、半導体装置の製造工程を簡略化することができる。
【0031】
エッチングを酸性溶液で行う場合には、上述した本実施形態の利点が一層顕著になる。通常のフォトリソ工程で使用されるレジスト材料はアルカリ性に可溶であるため、酸性溶液を用いることにより、レジスト層を溶かすことなく好適に導電層をエッチングすることができる。
【0032】
(S5工程)
そして、S4工程で形成された第1の電極52、第2の電極54の上にパッシベーション層60を形成し、半導体装置Aを得ることができる。パッシベーション層60を基板10の最外表面に形成させることで不導態化させることができる。それによって、外界の水分や金属イオン等から半導体装置Aの内部を保護することができる。パッシベーション層60の材料としては、特に限定されず、公知の材料を採用することができる。また、パッシベーション層60の形成方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。なお、本実施形態ではパッシベーション層60を有する半導体装置の製造方法について説明したが、パッシベーション層60は必須の構成ではなく、半導体装置の用途に応じてパッシベーション層60を有しない構成としてもよい。
【実施例
【0033】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0034】
<実施例1>
ZnGaの焼結体ターゲットとZnOの焼結体ターゲットを用意した。薄膜中のGaとZnのモル比がGa:Zn=2:1となるように同時放電し、ZnGa薄膜を得た。なお、スパッタガスとして水素3%を含んだArを用い、背圧1×10-4Pa以下、成膜圧力0.22Pa、基板温度190℃の条件で成膜した。
【0035】
得られたZnGa薄膜についてXRD(X線回折法)によるθ-2θ測定を行った。図2にZnGa薄膜のXRD測定の回折パターンを示す。その結果、(222)面で配向したスピネル型のZnGaのパターンを確認でき、得られたZnGa薄膜はスピネル型のZnGa薄膜であることが示された。
【0036】
次いで、上述のスピネル型のZnGa薄膜を半導体層として用いた薄膜トランジスタを作製した。基板としてn型ドープ(リンドープ)されたシリコンウエハに150nmの熱酸化膜が形成されたものを用い、この熱酸化膜上に上記の成膜条件でZnGaを成膜した。
【0037】
そして、ソース・ドレイン電極となるCu電極をスパッタ法で成膜し、基板のシリコンウエハをゲート電極、熱酸化膜をゲート絶縁膜とすることで、半導体装置を得た。得られた半導体装置の半導体特性を半導体パラメータアナライザー(4200-SCS、KEITHLEY社製)を用いてトランジスタ特性を測定した。その結果を図3に示す。図3において、横軸はゲート電極に印加した電圧を示し、縦軸はドレイン電極で検出された電流値を示す。図3に示されるように、本実施例の半導体装置は、n型の半導体特性を示すことが確認された。また、本実施例の半導体装置は、移動度:1.1cm/V・s、キャリア密度:1×1017cm-3、On/Off比:1×10の特性を示した。
【0038】
(pHセンサ)
(実験a)
上記で得られた半導体装置を用いてpHセンサ(Ion Sensitive-FET;イオン感応性電界効果型トランジスタ)を作製した。図4に、pHセンサの概略構成図を示す。pHセンサBは、ベース層12上に熱酸化膜14が形成されたシリコン製の基板10と、基板10上に設けられた半導体層(ZnGa:H)40とAg電極70、71とを有する半導体装置と、半導体装置上に設けられたシリコンゴム製のプール80と、プール80内に設けられた参照電極90とを有している。なお、参照電極90としてはAg/AgCl電極(銀-塩化銀電極)を用いた。そして、測定対象である溶液S(酸性溶液の場合は塩酸、アルカリ性溶液の場合は水酸化ナトリウム溶液)をプール80に入れ、参照電極90とAg電極71との電位差を測定した。なお、溶液SとしてpH1、pH7、pH14に調製された溶液を用意し、各溶液をプール80に入れた1秒後に測定を開始した。参照電極90とAg電極71との電位差は溶液中のプロトン濃度に依存する。当該電位差を測定することにより溶液中のプロトン濃度を求め、pH値として算出するのがpHセンサの測定原理である。
【0039】
図5に実施例1のpHセンサの測定結果を表すグラフを示す。横軸は時間を表し、縦軸は参照電極90とAg電極71との間の電位差を表している。図5に示すように、pH1やpH14の溶液であっても、時間とともに測定値(pH値)が大きく変化することはなく、長時間にわたり安定して測定できることが確認された。また、溶液Sをプール80に入れた1秒後に測定を開始したが、1秒後であっても電位差を検出しており、高速な応答が得られることも確認された。
【0040】
(実験b)
実験aのpH1の溶液Sの測定後、半導体層40とAg電極70、71を水で洗浄し、pH1の溶液Sを用いて再度同様の測定実験を行った。その結果、同様の値が得られ、再現性のあることが確認された。また、pH14の溶液Sの測定後、半導体層40とAg電極70、71を水で洗浄し、pH14の溶液Sを用いて再度同様の測定実験を行った。その結果、同様の値が得られ、再現性のあることが確認された。実験bの結果から、本実施例のpHセンサの測定値に再現性のあることが確認されたとともに、pH1やpH14の強酸性・強塩基性の条件下であってもpHセンサの半導体層40が浸食されることなく安定して繰り返し使用できることが確認された。
【0041】
以上より、本pHセンサは半導体層を保護するための絶縁膜を有していないにもかかわらず、高感度で高速かつ安定したpH測定が可能であることが確認された。
【0042】
<比較例1~5>
亜鉛(Zn)とガリウム(Ga)とを含むスピネル型の酸化物(実施例1)及びそれ以外の酸化物として表1に示す酸化物(比較例1~5)をそれぞれ用意して、pH1~6の溶液中での安定性を評価した。具体的には、以下の要領で実験を行った。
pH1、2、3、4、5、6の塩酸をそれぞれ準備し、それらを各酸化物半導体の表面に1mL滴下し、室温、1気圧の条件下で10分間静置した。そして、下記の基準に基づき目視にて表面の安定性を評価した。
○:表面の変化が全く無かった。
△:溶液により表面が一部浸食された。
×:溶液により表面が浸食された。
【0043】
【表1】
【0044】
表1から明らかなように、実施例1は、pH1~6の全ての領域において表面浸食が起こらず、強酸に対して高い耐性を有していることが確認された。
【符号の説明】
【0045】
10…基板、12…ベース層、14…熱酸化膜、20…ゲート電極、30…絶縁層、40…半導体層、52…第1の電極、54…第2の電極、60…パッシベーション層、70、71…Ag電極、80…プール、90…参照電極、A…半導体装置、B…pHセンサ、S…溶液
図1
図2
図3
図4
図5