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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】排ガス処理設備の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/68 20060101AFI20231108BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20231108BHJP
   B01D 47/06 20060101ALI20231108BHJP
   F23G 7/06 20060101ALI20231108BHJP
   F23J 15/04 20060101ALI20231108BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20231108BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B01D53/68 220
B01D53/78
B01D47/06 A
F23G7/06 D
F23G7/06 N
F23J15/04
B08B3/02 F
B08B3/08 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022055286
(22)【出願日】2022-03-30
(65)【公開番号】P2023147649
(43)【公開日】2023-10-13
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】原島 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】塚本 和巳
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆信
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-336642(JP,A)
【文献】特開平11-147019(JP,A)
【文献】特開2012-187476(JP,A)
【文献】実開昭57-199044(JP,U)
【文献】特開2008-284547(JP,A)
【文献】特開昭50-154175(JP,A)
【文献】特開昭51-055778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34 - 53/73
B01D 53/74 - 53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
B01D 47/00 - 47/18
F23G 7/06 - 7/08
F23G 5/14 - 5/18
F23J 13/00 - 99/00
B08B 3/00 - 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱により電子部品製造プロセスからの排ガスを分解処理する除害装置と、該除害装置からのガスが導入される湿式スクラバーとを有する排ガス処理設備の洗浄方法であって、
前記湿式スクラバーは、下部水槽と、該下部水槽から水が循環ポンプによって循環供給される散水手段とを有しており、
該下部水槽内の水、下部水槽から散水手段に送水される水、及び下部水槽から流出する水の少なくとも1つのpH測定値が規定値以上となるように該湿式スクラバーにアルカリ剤含有洗浄液を添加し、アルカリ剤含有洗浄液が添加された下部水槽内の水を前記散水手段に供給して散水し、該湿式スクラバーの洗浄を行う方法であって、
該pH測定値が規定値以上となった場合に該アルカリ剤含有洗浄液の添加を停止し、
このアルカリ剤含有洗浄液の添加停止後、所定時間以上にわたってpH測定値が前記規定値以上である場合に洗浄を終了する
湿式排ガス処理設備の洗浄方法。
【請求項2】
前記所定時間は、1~24時間の間から選定された時間である請求項1の排ガス処理設備の洗浄方法。
【請求項3】
前記所定時間は、1~6時間の間から選定された時間である請求項の排ガス処理設備の洗浄方法。
【請求項4】
前記湿式スクラバーはミストキャッチャーを備えており、
前記下部水槽内に水中ポンプを配置すると共に該ミストキャッチャーの上側に散水器を配置し、
該水中ポンプによって該散水器に下部水槽内の水を供給してミストキャッチャー及びそれよりも下側の湿式スクラバー内部の洗浄を行う、請求項1~3のいずれかの排ガス処理設備の洗浄方法。
【請求項5】
熱により電子部品製造プロセスからの排ガスを分解処理する除害装置と、該除害装置からのガスが導入される湿式スクラバーとを有する排ガス処理設備の洗浄方法であって、
前記除害装置は、
前記排ガスと空気とが供給され、該排ガスが燃焼処理される燃焼室(1)と、
該燃焼室(1)からガスが導入される1次洗煙室(11)と
を有しており、
該1次洗煙室(11)は、底部のピット(11a)の水がポンプ(14)及び配管(15)によって上部の散水器(16)に循環供給され、該散水器(16)から散水されるよう構成されており、
該1次洗煙室(11)の洗浄を行う場合、アルカリ剤含有洗浄液を該1次洗煙室(11)内の水に供給して洗浄水を該ピット(11a)と散水器(16)とを循環させ、この洗浄水のpHを測定し、このpH測定値が規定値よりも低下したときには該アルカリ剤含有洗浄液を追加供給し、該pH測定値が所定時間以上にわたって該規定値以上であるときには該1次洗煙室(11)の洗浄を終了する
排ガス処理設備の洗浄方法。
【請求項6】
前記所定時間は、1~24時間の間から選定された時間である請求項5の排ガス処理設備の洗浄方法。
【請求項7】
前記所定時間は、1~6時間の間から選定された時間である請求項5の排ガス処理設備の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理設備の洗浄方法に係り、詳しくは、半導体製造プロセス等からの排ガスを処理するための排ガス処理設備の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、液晶、LED、太陽電池等の製造プロセスからは、ペルフルオロ化合物などを含んだ排ガスが排出される。なお、この排ガス中にはWF、CH、Cl、BCl、F、HF、SiH、NH、PH、TEOS(テトラエトキシシラン)、TRIS(トリエトキシシラン)、TiClなどが含まれることもある。このような排ガスを処理する排ガス処理設備(除害装置)では、燃焼、電気加熱、プラズマなどを用いて、ペルフルオロ化合物等を燃焼(酸化)又は熱分解反応させた後、当該装置に組み込まれた洗煙室で排ガスを洗浄し、ガス中のF等を吸収除去する。
【0003】
この排ガスの燃焼処理装置として、燃焼室の内壁面に沿って水を流下させ、燃焼生成物の内壁面への付着を防止すると共に、内壁面を燃焼熱から防護するよう構成した水冷式燃焼方式の除害装置がある(特許文献1)。
【0004】
排ガスの浄化処理装置として湿式スクラバーが広く用いられている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-24741号公報
【文献】実開昭63-66132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水冷式燃焼方式の除害装置にあっては、除害装置内部や配管等において堆積物が生成し易く、除害装置を停止して堆積物を除去する作業が必要となる。なお、堆積物としてはシリカ系やタングステン系の固形物などが挙げられるが、これ以外の固形物も生成する。
【0007】
従来の除害装置にあっては、堆積物が生成した場合、装置を停止し、作業者が洗浄作業を行うようにしており、手間、コスト及び時間がかかっていた。
【0008】
特許文献2には、湿式スクラバー内の底部にジェットスプレーノズルを設置し、上向きに洗浄水を噴出させてスクラバー内の多孔板に吹き付け、物理的に堆積付着物を剥離除去することが記載されているが、スクラバー内部を十分に洗浄することはできない。
【0009】
本発明は、排ガス処理設備における堆積物や付着物などの固形物を短時間で十分に除去することができる排ガス処理設備の洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の排ガス処理設備の洗浄方法は、電子部品製造プロセスからの排ガスを処理する排ガス処理設備の洗浄方法であって、前記排ガス処理設備の洗浄対象に堆積及び/又は付着した固形物を溶解及び/又は分散する洗浄液を循環供給するとともに、該洗浄液のpH、導電率、酸化還元電位、及び濁度の少なくとも1つよりなる水質指標値の測定値に基づき、洗浄の終了及び/又は洗浄液への洗浄成分の追加注入を管理する。
【0011】
本発明の一態様では、前記排ガス処理設備は、熱により排ガスを分解処理する除害装置と、該除害装置からのガスが導入される湿式スクラバーとを有しており、前記排ガス処理設備の洗浄方法は、該湿式スクラバーを洗浄する方法である。
【0012】
本発明の一態様では、前記湿式スクラバーは、下部水槽と、該下部水槽から水が循環ポンプによって循環供給される散水手段とを有しており、前記排ガス処理設備の洗浄方法は、該下部水槽に洗浄剤水溶液を添加する工程と、洗浄剤水溶液が添加された下部水槽内の水を前記散水手段に供給する工程とを有しており、前記水質指標値の測定値は、該下部水槽内の水、下部水槽から散水手段に送水される水、及び下部水槽から流出する水の少なくとも1つの測定値である。
【0013】
本発明の一態様では、前記水質指標値はpHであり、洗浄開始時にpHが規定以上となるように洗浄剤水溶液を添加し、pHが規定以上となった場合に洗浄剤水溶液の添加を停止し、この洗浄剤水溶液添加後、所定時間以上にわたってpHが前記規定値以上である場合に洗浄を終了する。
【0014】
本発明の一態様では、前記湿式スクラバーはミストキャッチャーを備えており、前記下部水槽内に水中ポンプを配置すると共に該ミストキャッチャーの上側に散水器を配置し、該水中ポンプによって該散水器に下部水槽内の水を供給してミストキャッチャー及びそれよりも下側の湿式スクラバー内部の洗浄を行う。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、排ガス処理設備における固形物を洗浄剤により短時間で十分に溶解及び/又は分散除去することができる。本発明を半導体等の製造設備に適用した場合には、半導体等の製造プロセスマシンの稼動効率を向上させることができ、半導体等の生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】除害設備の構成図である。
図2】湿式スクラバーの構成図である。
図3】試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1,2を参照して実施の形態に係る方法が適用される除害設備の一例について説明する。
【0018】
この除害設備では、塔状の燃焼室1の上部に設けられたバーナ2に対し、半導体製造プロセスからの排ガスとブロワーからの空気が供給され、燃焼室1内において排ガスが燃焼処理される。
【0019】
なお、排ガスとしては電子部品製造プロセスで発生するガスが好適であり、特にWFを含有するものが好適である。シラン類(SiH,Si,SiHClなど)、シラン以外の他のガス成分(B,PH,NH,NO,H,HSe,GeHe,AsH,CH,C,CO,Cl,F,ClF,NF,CH,NO,O,CF,C,C,CHFなど)を含んでいてもよい。
【0020】
燃焼室1の内壁面に沿って水を流すようにノズル(図示略)が設けられており、該ノズルに対して給水ラインによって水が供給される。このノズルから流出した水が燃焼室1の内壁面を水膜状に流れ下り、内壁面が燃焼熱から防護される。なお、燃焼室1の内壁面を水が水膜状に流れることにより、燃焼ガス中の水可溶成分を吸収すると共に、微粒子を捕捉する。また、ガス温度を低下させる。
【0021】
内壁面を流れ下った水は、燃焼室底部のピット1aに溜まる。
【0022】
前記ノズルへの給水ラインは、配管3、ポンプ4、配管5、該配管5から分岐した配管6,7を有している。配管6は上記ノズルに接続され、配管7は燃焼室1の底部のピット1aに給水するように設けられている。
【0023】
燃焼室1に隣接して1次洗煙室11が設置されている。燃焼室1の下部と1次洗煙室11の下部同士はダクト12によって連通しており、燃焼室1からのガスが該ダクト12を介して1次洗煙室11内に導入され、1次洗煙室11内を上昇する。
【0024】
なお、燃焼室1のピット1a内の水の一部は、該ダクト12を通って1次洗煙室11のピット11aにオーバーフローにより流出する。燃焼室1のピット1a内の水の一部は、ダクト12とは別の水移送配管によってピット11aに移送されてもよい。
【0025】
1次洗煙室11の底部のピット11aの水がポンプ14及び配管15を介して散水器16によって散水される。1次洗煙室11内を上昇してきたガスが、散水器16から散水された水と接触してガス中の水可溶成分や微粒子が水に吸収ないし捕捉される。
【0026】
1次洗煙室11を通り抜けたガスは、ガス出口17からダクト18及び送風機19により、ガス導入口25を通って湿式スクラバー20に導入される。
【0027】
湿式スクラバー20内の上部のノズル21(散水手段)に対し、湿式スクラバー20内の底部の水が循環ポンプ23及び配管22によって供給される。ガスは、該ノズル21から散水された水と接触して水可溶成分と微粒子が水に吸収ないし捕捉された後、流出口26から流出する。湿式スクラバー20には洗浄用水が配管24によって補給される。
【0028】
燃焼室1,1次洗煙室11及び湿式スクラバー20の底部の水は、配管31,32,33を介して取り出され、排水処理設備(図示略)に送水されて処理される。
【0029】
湿式スクラバー20の構成の詳細を図2に示す。湿式スクラバー20内の上部には、ミストキャッチャー40が設けられている。ノズル21の下側にはグレイチング41が設けられている。
【0030】
湿式スクラバー20の下部水槽44の一部は側方に張り出しており、その上側にポンプ23が設置されている。下部水槽44内の水は、配管22aによってポンプ23に吸引され、配管22を介してノズル21に送水される。
【0031】
ノズル21から散水された水は、中間プレート42上に落下し、該中間プレート42に設けられた落水孔43を通って下部水槽44内に落下する。
【0032】
前記ガス流入口25は、中間プレート42よりも上側の湿式スクラバー側壁面に設けられている。
【0033】
下部水槽44に前記配管24が接続されている。下部水槽44の側面の上位箇所に溢流口45が設けられている。下部水槽44内の水位が該溢流口45よりも高くなると、下部水槽44内の水が溢流口45から中継タンク46に流出し、該中継タンク46から配管47を介して前記配管33に流出する。
【0034】
下部水槽44内の底部と配管47とを連通するように配管48が設けられており、該配管48に弁49が設けられている。弁49は下部水槽44から水抜きする場合のみ開とされ、その他のときは閉とされている。
【0035】
下部水槽44に対し、薬注装置50から洗浄剤の水溶液が配管51を介して注入可能とされている。薬注装置50は、洗浄剤の水溶液を貯留するタンクと、薬注ポンプと、該薬注ポンプを制御する制御回路とを有している。
【0036】
この実施の形態では、配管22と中継タンク46にそれぞれpH計52,53が設けられており、pH計52,53の検出信号が該制御回路に送信される。
【0037】
この湿式スクラバー20の固形物除去洗浄を行うには、送風機を停止した後、制御回路に洗浄開始指令信号を入力する。この信号が与えられると、制御回路は薬注ポンプを始動させ、pH計52,53の検出pHの平均値(又は、少なくとも一方のpH計の検出値)が規定pH(好ましくは8~14特に11~14の間から選定されたアルカリpH値)以上となるまで薬注を行い、規定pH以上になったならば薬注を停止する。検出pHの平均値が規定pHを下回るまで低下したときには薬注を再開し、規定pH以上になったならば薬注を停止する。
【0038】
薬注装置50によって湿式スクラバー20に洗浄剤水溶液を薬注することにより、ノズル21からの洗浄剤水溶液が噴出し、堆積物や付着物などの固形物が溶解及び/又は分散する。固形物が多く残っているうちは、薬注を停止するとpH計52,53の検出pHは低下するが、固形物の溶解及び/又は分散が十分に進行すると、薬注を停止しても検出pHは殆ど低下しなくなる。
【0039】
そこで、薬注を停止して所定時間(例えば1~24時間、特に1~6時間の間から選定された時間)が経過しても検出pHの平均値が規定pH以上であるときには、固形物の溶解及び/又は分散除去が十分に進行したものと判断し、薬注を終了する。すなわち、循環ポンプ23を停止し、弁49を開として洗浄廃水を排出する。その後、弁49を閉とし、配管24から洗浄用水を下部水槽44に注水した後、循環ポンプ23及び送風機19を作動させ、湿式スクラバー20による処理を再開する。
【0040】
上記実施の形態では、排ガス処理を停止した状態で湿式スクラバー20の洗浄を実施しているが、排ガス処理を継続した状態で洗浄を実施してもよい。また、洗浄は定期的に実施してもよく、固形物が付着して排気能力や排ガス処理性能が落ちた場合などに実施してもよい。
【0041】
このように、この洗浄方法によると、湿式スクラバー20の固形物を洗浄剤水溶液によって短時間で十分に溶解除去することができ、作業時間の短縮及び作業労務コストの低減を図ることができる。
【0042】
また、排ガス処理を継続した状態で洗浄を実施する態様にあっては、排ガス処理設備の停止に伴う半導体製造プロセスの稼動停止も防止され、生産性が向上する。
【0043】
洗浄剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メタ珪酸ナトリウム等の無機アルカリ剤、コリン、TMAH等の有機系アルカリ剤などのアルカリ系薬剤が好適であるが、これに限定されない。洗浄剤は、アルカリ系薬剤の他に、シリカスケール洗浄剤や、溶解補助剤(過酸化水素、EDTA,ポリリン酸等)、カルシウムスケール抑制剤、スライムコントロール剤(ジクロログリオキシム、2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール、2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド、クロロスルファミン酸、ビス-1,4-ブロモアセトキシ-2-ブテン、アメトリン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン)などを含んでもよい。アルカリ剤は、電子部品工場等からの廃アルカリであってもよい。
【0044】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態とされてもよい。例えば、上記実施の形態ではpH計を2箇所に設置しているが、1箇所又は3箇所以上に設置してもよい。
【0045】
上記実施の形態では、pHに基づいて薬注を制御しているが、これに限定されるものではなく、pH、導電率、酸化還元電位、及び濁度の少なくとも1つに基づいて制御すればよい。
【0046】
上記実施の形態では、循環ポンプ23によりノズル21から洗浄剤水溶液を流出させているが、下部水槽44内に水中ポンプを配置し、ミストキャッチャー40の上側に散水器を配置し、水中ポンプの吐出水をホースを介して該散水器に供給して散水し、ミストキャッチャー40やその下側の領域の固形物を溶解及び/又は分散除去するようにしてもよい。
【0047】
この水中ポンプは、循環ポンプ23の近傍に設けた下部水槽点検口を介して下部水槽44内に配置することができる。また、ホースは、該下部水槽点検口を介して湿式スクラバー20外に引き出し、湿式スクラバー20の側面の点検窓(図示略)又は流出口26を通して湿式スクラバー20内の上部に引き込むことができる。
【0048】
上記実施の形態は湿式スクラバー20の固形物を除去するものとしているが、1次洗煙室11や送風機19などの他の洗浄対象を洗浄剤水溶液で洗浄するようにしてもよい。この場合も、洗浄液を循環させて洗浄対象に供給し、洗浄対象から流出する洗浄剤水溶液のpHを測定し、pHが規定値よりも低下したときには洗浄剤を追加し、pHが所定時間以上既定値を維持するときには洗浄を終了するのが好適である。
【0049】
上記実施の形態では、除害装置は「燃焼式」であるが、これに限定されず、電熱式やプラズマ式などの熱を利用して除害するものであればよい。
【実施例
【0050】
アルカリによる固形物(スクラバーから採取した堆積物)の溶解試験を行った。
【0051】
<試験方法>
100mLのコリン1wt%の溶液に対し、0.5,1,2,3又は5wt%となるように固形物(半導体製造プロセスの除害装置後段に設置されたスクラバーから採取した堆積物)を加えてサンプルNo.1~5とした。各溶液をスターラーで撹拌し、pH及び外観(ビーカーの底部から写真を撮影)の経時変化を測定及び観察した。表1に、各サンプルの試験条件を示す。溶液量はすべて100mLであるため、固形物の添加量がそのままwt%濃度となる。
【0052】
【表1】
【0053】
<結果>
各サンプルについて、撹拌し、経時的にpHを測定した結果を表2に示す。また、この結果をグラフ化したものを図3に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
図3を見ると、固形物濃度が2~5wt%の溶液(サンプルNo.3,4,5)は、攪拌30~45分でpHが7.2~7.6まで低下し、その後安定した。これは、コリン量に対し固形物量が多いことを意味している。外観観察の結果を見ても、サンプルNo.3~5では明らかな固形物の溶け残りが見られた。
【0056】
一方で、固形物濃度が0.5~1wt%の溶液(サンプルNo.1,2)では、撹拌に伴いpHが減少し、24時間撹拌後もアルカリ域でほぼ安定した。外観観察の結果を見ても、サンプルNo.1では撹拌5時間後で、サンプルNo.2では撹拌24時間後で固形物がほとんど溶解した様子が見られた。
【0057】
このことより、洗浄液のpHは8以上であることが必要であり、短時間で十分に固形物を溶解するためにはpH10以上が必要であることがわかる。また、pHの変化によって洗浄効果を確認することが可能であることも示唆されている。
【0058】
<考察>
試験結果から、以下の3点の知見が得られた。
・固形物の溶解に伴い、pHが減少する。
・固形物が残存している場合、pHが中性域で安定する。
・pHが高いほど、固形物を溶解させる効果が高い。
【0059】
これらのことから、現場での固形物の洗浄を考えた場合、pHが中性に達したときにアルカリを追加注入し、アルカリ域でしばらくpHが安定したならば固形物が溶解したと判断する制御方法が考えられる。また、アルカリは濃いほど反応速度が速くなるため、短時間での洗浄が求められる場合、固形物濃度に対して同濃度以上のアルカリで洗浄するべきであると考える。
【符号の説明】
【0060】
1 燃焼室
2 バーナ
4 ポンプ
11 1次洗煙室
20 湿式スクラバー
21 ノズル
23 循環ポンプ
40 ミストキャッチャー
44 下部水槽
46 中継タンク
50 薬注装置
52,53 pH計
図1
図2
図3