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特許7380872横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/22 20060101AFI20231108BHJP
   H01L 21/225 20060101ALI20231108BHJP
   H01L 21/324 20060101ALI20231108BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20231108BHJP
   C30B 33/02 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H01L21/22 501F
H01L21/225 Q
H01L21/324 G
C30B29/06 Z
C30B33/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022528450
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2021011241
(87)【国際公開番号】W WO2021246024
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2020097915
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】桑野 嘉宏
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-085725(JP,A)
【文献】特開昭63-126219(JP,A)
【文献】特開平04-329629(JP,A)
【文献】特開2006-049360(JP,A)
【文献】特開平09-027504(JP,A)
【文献】特開2005-340597(JP,A)
【文献】特開2006-005214(JP,A)
【文献】特開2007-059606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/22
H01L 21/225
H01L 21/324
C30B 29/06
C30B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向の中心軸を有する円筒形状の炉芯管と、前記炉芯管の周囲に位置し前記炉芯管を加熱するヒーターと、を有し、前記炉芯管の片方の端部には蓋が設けられ、前記炉芯管の他方の端部にはガス導入口が設けられ、前記炉芯管の前記蓋の付近の炉壁にガス排気口が設けられた横型熱処理炉を用意し、
前記炉芯管の前記蓋に近い方を炉口側とし、前記炉芯管の前記ガス導入口に近い方を炉奥側としたとき、前記蓋を開けて、前記炉芯管内に、以下の(A)~(C)の状態となるようにボートを配置し、
(A)前記ボート上に、主面が前記炉芯管の中心軸に直交するように複数枚のシリコンウェーハが並べられて、ウェーハ群を形成し、
(B)前記ボート上の、前記ウェーハ群よりも炉奥側に、前記炉芯管の中心軸と平行な軸を有する円柱形状の第1ダミーブロックが配置され、前記ウェーハ群よりも炉口側に、前記炉芯管の中心軸と平行な軸を有する円柱形状の第2ダミーブロックが配置され、前記第1及び第2ダミーブロックが、Fe、Ni、及びCuの濃度のいずれかが1×10 11 atoms/cm 以上であるシリコンからなり、
(C)前記ボート上の、前記第1ダミーブロックと前記ウェーハ群との間に第1追加ブロック、及び、前記第2ダミーブロックと前記ウェーハ群との間に第2追加ブロック、のうち少なくとも一方が配置され、前記第1及び第2追加ブロックは、(i)前記炉芯管の中心軸に垂直な仮想面への投影形状が、前記第1及び第2ダミーブロック並びに前記複数枚のシリコンウェーハの前記仮想面への投影形状を包含し、前記炉芯管の中心軸と平行な軸を有する柱形状であり、かつ、(ii)Feの濃度が1×1011atoms/cm未満であり、Ni及びCuの濃度がそれぞれ5×1010atoms/cm未満であるシリコンからなり、
前記蓋を閉め、
前記ガス導入口から前記炉芯管内にガスを導入し、前記ガス排気口から前記ガスを排気しつつ、前記ヒーターにより前記炉芯管を加熱することで、前記複数枚のシリコンウェーハに熱処理を施す、
横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法。
【請求項2】
前記(C)において、前記第1及び第2追加ブロックの両方が配置される、請求項1に記載の横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法。
【請求項3】
前記第1及び第2追加ブロックの前記仮想面への投影形状のうち、前記ボートよりも上方の部分は、前記複数枚のシリコンウェーハの半径よりも5mm以上大きな曲率半径を有する、請求項1又は2に記載の横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法。
【請求項4】
前記第1及び第2追加ブロックの、前記炉芯管の中心軸に沿った幅が、10~20mmの範囲内である、請求項1~のいずれか一項に記載の横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法。
【請求項5】
前記(C)において、前記ボート上の、前記第1ダミーブロックよりも炉奥側に第3追加ブロック、及び、前記第2ダミーブロックよりも炉口側に第4追加ブロック、のうち少なくとも一方が配置され、前記第3及び第4追加ブロックは、前記(i)及び(ii)を満たす、請求項1~のいずれか一項に記載の横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法。
【請求項6】
前記(C)において、前記第3及び第4追加ブロックの両方が配置される、請求項に記載の横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法。
【請求項7】
前記第3及び第4追加ブロックの前記仮想面への投影形状のうち、前記ボートよりも上方の部分は、前記複数枚のシリコンウェーハの半径よりも5mm以上大きな曲率半径を有する、請求項5又は6に記載の横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法。
【請求項8】
前記第3及び第4追加ブロックの、前記炉芯管の中心軸に沿った幅が、10~20mmの範囲内である、請求項のいずれか一項に記載の横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法。
【請求項9】
前記第1及び第2ダミーブロックの直径が、前記複数枚のシリコンウェーハの直径と等しい、請求項1~のいずれか一項に記載の横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法。
【請求項10】
前記第1及び第2ダミーブロックの、前記炉芯管の中心軸に沿った幅が、40~75mmの範囲内である、請求項1~のいずれか一項に記載の横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハ中にリン、ボロン等のドーパントを熱拡散する工程は、シリコンウェーハの表層にドーパントを付着させる工程(デポジション)と、表層に付着したドーパントをシリコンウェーハの内部に拡散させる工程(ドライブイン)とを含む。このドライブイン工程には、一般的に、横型熱処理炉(熱拡散炉)が用いられる。横型熱処理炉では、横方向の中心軸を有する円筒形状の炉芯管内に、主面が炉芯管の中心軸に直交するように複数枚のシリコンウェーハを並べて配置したボートを入れて、炉芯管内でシリコンウェーハに熱処理を施す。この際、炉芯管の中心軸方向における複数枚のシリコンウェーハの両側に、シリコンからなるダミーブロック(保温ブロック)を配置して、炉芯管内でのウェーハ設置領域の温度均一化を図る技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、「熱拡散炉のチューブ内に、主面がチューブの長手方向に直交するようにウェーハを並設し、その状態でウェーハに熱処理を施すにあたり、チューブ内にウェーハを仕込まない状態における均熱領域の両側において、雰囲気ガス流入側では、当該領域から少なくとも10mm以上離して、また雰囲気ガス流出側では、密接または離間して、チューブ径よりわずかに小さい保温ブロックをそれぞれ配するようにしたことを特徴とするウェーハの熱処理方法(請求項1)」が記載されている。また、特許文献1には、「保温ブロックの材質が高純度シリコンであること(請求項3)」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平3-85725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者が検討したところ、複数バッチの熱処理において同一のダミーブロックをくり返し使用した場合、各バッチにおける複数枚のシリコンウェーハのうち両端部分に位置するシリコンウェーハ、すなわちダミーブロックの付近に配置されるシリコンウェーハのライフタイム値が、バッチを経るにつれて顕著に低下することが判明した。
【0006】
上記課題に鑑み、本発明は、ウェーハ設置領域の温度均一化のために設置するダミーブロックの付近に配置されるシリコンウェーハのライフタイム値の低下を抑制して、製品歩留まりを向上させることが可能な、横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明者は鋭意研究を進め、以下の知見を得た。まず、ダミーブロックの付近に配置されるシリコンウェーハのライフタイム値の低下の原因は、ダミーブロックの金属汚染ではないかと本発明者は考えた。つまり、複数バッチの熱処理において同一のダミーブロックをくり返し使用した場合、ダミーブロックには炉芯管等からの金属汚染(Fe、Ni、Cu等)が徐々に蓄積すると考えられる。熱処理時にダミーブロックが加熱される過程で、ダミーブロックから汚染金属を含むガスが発生する。この汚染金属を含むガスが拡散して、ダミーブロックの付近に配置されるシリコンウェーハに供給される。その結果、ダミーブロックの付近に配置されるシリコンウェーハも金属汚染され、ライフタイム値が低下するものと考えられる。
【0008】
しかしながら、複数バッチの熱処理においてダミーブロックを毎回交換することは経済的ではない。また、各バッチの熱処理後にダミーブロックに高清浄度化処理(フッ酸と硝酸との混酸液等によるエッチング処理)を施して、ダミーブロックから汚染金属を除去することも考えられるが、以下の理由で操業上現実的ではない。すなわち、ダミーブロックは比較的厚いブロックであるため、これを収容できるようにエッチング槽を大きく作製するのに費用がかかることや、厚みが大きく表面積が大きいダミーブロックをエッチング処理すると、エッチング中に液温が上がりすぎるおそれがあることが、理由として挙げられる。
【0009】
そこで、本発明者は、ダミーブロックと複数枚のシリコンウェーハとの間に、ダミーブロック及びシリコンウェーハよりもサイズが大きく、かつ、高清浄度の追加ブロックを設置することで、ダミーブロックから発生した汚染金属を含むガスが、ダミーブロックの付近に配置されるシリコンウェーハに向かって拡散するのを抑制するとの着想を得た。そして、種々の実験の結果、このような追加ブロックの設置によって、ダミーブロックの付近に配置されるシリコンウェーハのライフタイム値の低下を抑制できることが確認された。
【0010】
上記知見に基づき完成した本発明の要旨構成は以下のとおりである。
[1]横方向の中心軸(X)を有する円筒形状の炉芯管(12)と、前記炉芯管(12)の周囲に位置し前記炉芯管(12)を加熱するヒーター(14)と、を有し、前記炉芯管(12)の片方の端部には蓋(12A)が設けられ、前記炉芯管(12)の他方の端部にはガス導入口(12B)が設けられ、前記炉芯管(12)の前記蓋(12A)の付近の炉壁にガス排気口(12C)が設けられた横型熱処理炉(100)を用意し、
前記炉芯管(12)の前記蓋(12A)に近い方を炉口側(H)とし、前記炉芯管(12)の前記ガス導入口(12B)に近い方を炉奥側(S)としたとき、前記蓋(12A)を開けて、前記炉芯管(12)内に、以下の(A)~(C)の状態となるようにボート(16)を配置し、
(A)前記ボート(16)上に、主面が前記炉芯管(12)の中心軸(X)に直交するように複数枚のシリコンウェーハが並べられて、ウェーハ群(WF)を形成し、
(B)前記ボート(16)上の、前記ウェーハ群(WF)よりも炉奥側(S)に、前記炉芯管(12)の中心軸(X)と平行な軸を有する円柱形状の第1ダミーブロック(18S)が配置され、前記ウェーハ群(WF)よりも炉口側(H)に、前記炉芯管(12)の中心軸(X)と平行な軸を有する円柱形状の第2ダミーブロック(18H)が配置され、
(C)前記ボート(16)上の、前記第1ダミーブロック(18S)と前記ウェーハ群(WF)との間に第1追加ブロック(20S)、及び、前記第2ダミーブロック(18H)と前記ウェーハ群(WF)との間に第2追加ブロック(20H)、のうち少なくとも一方が配置され、前記第1及び第2追加ブロック(20S,20H)は、(i)前記炉芯管(12)の中心軸(X)に垂直な仮想面への投影形状が、前記第1及び第2ダミーブロック(18S,18H)並びに前記複数枚のシリコンウェーハの前記仮想面への投影形状を包含し、前記炉芯管(12)の中心軸(X)と平行な軸を有する柱形状であり、かつ、(ii)Feの濃度が1×1011atoms/cm未満であり、Ni及びCuの濃度がそれぞれ5×1010atoms/cm未満であり、
前記蓋(12A)を閉め、
前記ガス導入口(12B)から前記炉芯管(12)内にガスを導入し、前記ガス排気口(12C)から前記ガスを排気しつつ、前記ヒーター(14)により前記炉芯管(12)を加熱することで、前記複数枚のシリコンウェーハ(WF)に熱処理を施す、
横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法。
【0011】
[2]前記(C)において、前記第1及び第2追加ブロック(20S,20H)の両方が配置される、上記[1]に記載の横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法。
【0012】
[3]前記第1及び第2追加ブロック(20S,20H)がシリコンからなる、上記[1]又は[2]に記載の横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法。
【0013】
[4]前記第1及び第2追加ブロック(20S,20H)の前記仮想面への投影形状のうち、前記ボート(16)よりも上方の部分は、前記複数枚のシリコンウェーハの半径よりも5mm以上大きな曲率半径を有する、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法。
【0014】
[5]前記第1及び第2追加ブロック(20S,20H)の、前記炉芯管(12)の中心軸(X)に沿った幅が、10~20mmの範囲内である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法。
【0015】
[6]前記(C)において、前記ボート(16)上の、前記第1ダミーブロック(18S)よりも炉奥側(S)に第3追加ブロック(22S)、及び、前記第2ダミーブロック(18H)よりも炉口側(H)に第4追加ブロック(22H)、のうち少なくとも一方が配置され、前記第3及び第4追加ブロック(22S,22H)は、前記(i)及び(ii)を満たす、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法。
【0016】
[7]前記(C)において、前記第3及び第4追加ブロック(22S,22H)の両方が配置される、上記[6]に記載の横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法。
【0017】
[8]前記第3及び第4追加ブロック(22S,22H)がシリコンからなる、上記[6]又は[7]に記載の横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法。
【0018】
[9]前記第3及び第4追加ブロック(22S,22H)の前記仮想面への投影形状のうち、前記ボート(16)よりも上方の部分は、前記複数枚のシリコンウェーハの半径よりも5mm以上大きな曲率半径を有する、上記[6]~[8]のいずれか一項に記載の横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法。
【0019】
[10]前記第3及び第4追加ブロック(22S,22H)の、前記炉芯管(12)の中心軸(X)に沿った幅が、10~20mmの範囲内である、上記[6]~[9]のいずれか一項に記載の横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法。
【0020】
[11]前記第1及び第2ダミーブロック(18S,18H)が、Fe、Ni、及びCuの濃度のいずれかが1×1011atoms/cm以上であるシリコンからなる、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法。
【0021】
[12]前記第1及び第2ダミーブロック(18S,18H)の直径が、前記複数枚のシリコンウェーハ(WF)の直径と等しい、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法。
【0022】
[13]前記第1及び第2ダミーブロック(18S,18H)の、前記炉芯管(12)の中心軸(X)に沿った幅が、40~75mmの範囲内である、上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法によれば、ウェーハ設置領域の温度均一化のために設置するダミーブロックの付近に配置されるシリコンウェーハのライフタイム値の低下を抑制して、製品歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】比較例によるシリコンウェーハの熱処理方法を説明するための、横型熱処理炉100の縦断面図である。
図2】本発明の一実施形態によるシリコンウェーハの熱処理方法を説明するための、横型熱処理炉100の縦断面図である。
図3】本発明の他の実施形態によるシリコンウェーハの熱処理方法を説明するための、横型熱処理炉100の縦断面図である。
図4】(A)は、第1乃至第4追加ブロック20S,20H,22S,22Hの正面図であり、(B)は、第1乃至第4追加ブロック20S,20H,22S,22Hの側面図である。
図5】(A)は、ボート16の炉中心軸Xに垂直な断面図であり、(B)は、図1のI-I断面図であり、(C)は、図2のII-II断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
まず、図1図2及び図3を参照して、本発明の実施形態及び比較例によるシリコンウェーハの熱処理方法に共通して用いられる横型熱処理炉100の構造について説明する。横型熱処理炉100は、均熱管10、炉芯管12、及びヒーター14を有する。
【0026】
均熱管10は、横方向の中心軸を有する円筒形状の管であり、その片方の端部には扉10Aが設けられ、その他方の端部には、均熱管10の内径よりも小さな直径を有する開口部10Bが設けられている。また、均熱管10の扉10A付近の炉壁には、吸引口10Cが設けられている。均熱管10の材質は、石英、炭化ケイ素(SiC)等からなるものとすることができる。
【0027】
炉芯管12は、横方向の中心軸Xを有する円筒形状の管であり、均熱管10の内側に位置する。炉芯管12の片方の端部には蓋12Aが設けられ、他方の端部にはガス導入口12Bが設けられる。また、炉芯管12の蓋12A付近の炉壁には、ガス排気口12Cが設けられている。炉芯管12の管本体とガス導入口12Bとの連結部(絞り部)が、均熱管10の開口部10Bに嵌合しており、これにより、炉芯管12は均熱管10に対して固定されている。炉芯管12(管本体)の内径は、一般的に160~360mmの範囲内である。炉芯管12の材質は、石英、炭化ケイ素(SiC)等からなるものとすることができる。なお、図1~3では、炉芯管12の外側に均熱管10が位置する例を示したが、炉芯管12は均熱管の役割を兼ねてもよいため、均熱管10は必ずしも設置する必要はない。
【0028】
ヒーター14は、炉芯管12及び均熱管10の周囲に位置し、炉芯管12及び均熱管10を加熱する。ヒーター14は、炉芯管12及び均熱管10の中央部に配置されるメインヒーターと、その両側に配置される2台の補助ヒーターとから構成されてもよい。
【0029】
図1~3に示すように、本明細書において、炉芯管12の蓋12Aに近い方を「炉口側H」とし、炉芯管12のガス導入口12Bに近い方を「炉奥側S」と表記する。
【0030】
本発明の実施形態によるシリコンウェーハの熱処理方法では、シリコンウェーハに熱処理を施す際に、ボート16に複数枚のシリコンウェーハを並べて載置してウェーハ群WFを形成し、均熱管10の扉10Aと炉芯管12の蓋12Aを開けて、炉芯管12の炉口側Hからボート16を炉芯管12内に入れる。その後、炉芯管12の蓋12Aと均熱管10の扉10Aを閉める。
【0031】
その後、ガス導入口12Bから炉芯管12内にガスを導入し、ガス排気口12Cから当該ガスを排気しつつ、ヒーター14により均熱管10及び炉芯管12を加熱することで、複数枚のシリコンウェーハ(ウェーハ群WF)に熱処理を施す。表層に付着したドーパントをシリコンウェーハの内部に拡散させるドライブイン工程を行う場合、炉芯管12内に導入されるガスは、微量の酸素(0.1~2体積%)を含み、残部がArからなる組成を有する。均熱管10の内部かつ炉芯管12の外側の空間の雰囲気は、空気である。均熱管10の吸引口10Cからポンプによって当該空間の空気を強制吸引することによって、炉芯管12内の雰囲気ガスがガス排気口12Cを介して排出される。その結果、炉芯管12内には、炉奥側Sから炉口側Hに向かって雰囲気ガスの流れが生じる。ドライブイン工程の場合、炉芯管12内の雰囲気温度は1200~1350℃の範囲とすることができ、この範囲の温度に10~250時間保持することができる。
【0032】
ボート16は、図1~3に加えて図5(A)を参照して、半円筒形の凹部からなるポケット16Aを有し、ここに複数枚のシリコンウェーハが収納される。ボート16は、その長手方向が炉芯管12の中心軸X方向と一致するように炉芯管12内に配置される。図5(A)に示すように、ボート16の長手方向に垂直なポケット16Aの断面形状は、収容するシリコンウェーハの半径と同じ曲率半径を有する半円形状であり、例えばシリコンウェーハの直径が150mmである場合には、当該曲率半径は75mmとなる。ボート16の材質は、炭化ケイ素(SiC)からなるものとすることができる。
【0033】
本発明の実施形態によるシリコンウェーハの熱処理方法では、炉芯管12内にボート16を配置する際に、以下の(A)~(C)の状態を満たすようにする。
【0034】
(A)まず、図1~3に示すように、ボート16上に、主面が炉芯管12の中心軸Xに直交するように、同一直径の複数枚のシリコンウェーハが並べられて、ウェーハ群WFを形成する。複数枚のシリコンウェーハの並べ方は、各ウェーハが倒れないように配置される限り特に限定されない。例えば、1ロット(例えば50枚)のシリコンウェーハを、互いに隣接するシリコンウェーハの主面同士が接するように並べることができる。図1~3では、4ロットのシリコンウェーハを配置する例を示している。なお、ポケット16の長手方向に垂直な仕切り板(図示せず)をポケット16A内に等間隔で設けることによって、各ロットのシリコンウェーハ群WFが倒れることなくポケット16A内に収納される。ただし、この並べ方に限定されることはなく、ポケット16A内に収納する全てのシリコンウェーハを、互いに隣接するシリコンウェーハの主面同士が接するように並べてもよい。本実施形態において、各シリコンウェーハの下半分はポケット16Aに接触して支持され、上半分はポケット16Aの上端よりも上方に位置し、つまりボート16よりも上方に位置する。ただし、シリコンウェーハがポケット16Aと接触する範囲は、各ウェーハの直立が阻害されない限り、下半分には限定されない。
【0035】
(B)ボート16上の、ウェーハ群WFよりも炉奥側Sに、ウェーハ群WFと離間して、炉芯管12の中心軸Xと平行な軸を有する円柱形状の第1ダミーブロック18Sが配置され、ウェーハ群WFよりも炉口側Hに、ウェーハ群WFと離間して、炉芯管12の中心軸Xと平行な軸を有する円柱形状の第2ダミーブロック18Hが配置される。これら第1及び第2ダミーブロック18S,18Hがない場合、炉芯管12内のウェーハ設置領域の中心軸X方向両端部分で炉内雰囲気温度が低下して、炉芯管12内の均熱長が短くなる。その場合、複数枚のシリコンウェーハのうち両端部分に位置するシリコンウェーハでは、不純物の拡散が不十分となってしまう。これに対して、第1及び第2ダミーブロック18S,18Hを配置することによって、炉芯管12内の均熱長を長くすることができ、炉芯管12内でのウェーハ設置領域の温度均一化を図ることができる。
【0036】
炉芯管12内でのウェーハ設置領域の温度均一化を十分に図る観点から、第1及び第2ダミーブロック18S,18Hは、シリコンからなることが好ましい。
【0037】
また、同じ観点から、第1及び第2ダミーブロック18S,18Hの直径は、ウェーハ群WFを構成する複数枚のシリコンウェーハの直径と等しいことが好ましい。例えばシリコンウェーハの直径が150mmである場合には、第1及び第2ダミーブロック18S,18Hの直径も150mmであることが好ましい。本実施形態では、図5(B)に示すように、第1及び第2ダミーブロック18S,18Hの下半分はポケット16Aに接触して支持され、上半分はポケット16Aの上端よりも上方に位置し、つまりボート16よりも上方に位置する。ただし、第1及び第2ダミーブロック18S,18Hがポケット16Aと接触する範囲は、各ダミーブロックの直立が阻害されない限り、下半分には限定されない。
【0038】
炉芯管12内でのウェーハ設置領域の温度均一化を十分に図る観点から、第1及び第2ダミーブロック18S,18Hの、炉芯管12の中心軸Xに沿った幅は、40mm以上であることが好ましい。他方で、ダミーブロックが長すぎると、均熱長の中で製品処理の領域が少なくなる等生産性が悪くなるため、第1及び第2ダミーブロック18S,18Hの、炉芯管12の中心軸Xに沿った幅は、75mm以下であることが好ましい。
【0039】
炉芯管12の中心軸Xの方向における、第1ダミーブロック18Sとウェーハ群WFとの距離(離間距離)、及び、第2ダミーブロック18Hとウェーハ群WFとの距離(離間距離)は、11mm以上であることが好ましい。当該距離が11mm未満の場合、製品となるウェーハ群WFに汚染の懸念があるからである。また、当該距離は30mm以下であることが好ましい。当該距離が30mm超えの場合、製品となるシリコンウェーハの設置数が制限され、生産性が阻害されるからである。
【0040】
第1及び第2ダミーブロック18S,18Hに関して、本実施形態では、複数バッチの熱処理において、交換や高清浄度化処理(フッ酸と硝酸との混酸液等によるエッチング処理)をすることなく、くり返し同一のダミーブロックを使用する。その理由は、既述のとおりである。その場合、ダミーブロックには炉芯管等からの金属汚染が徐々に蓄積すると考えられる。第1及び第2ダミーブロック18S,18Hのシリコン中において、少なくともFe、Ni、及びCuの濃度のいずれかが1×1011atoms/cm以上となると、あるいは、全ての遷移金属元素の濃度がそれぞれ1×1011atoms/cm以上となると、ダミーブロックの金属汚染が懸念される。
【0041】
この場合、図1に示す比較例によるシリコンウェーハの熱処理方法では、複数バッチの熱処理において、バッチを経るにつれて、第1及び第2ダミーブロック18S,18Hから発生した汚染金属を含むガスが、ダミーブロックの付近に配置されるシリコンウェーハに向かって拡散して供給されるようになる。その結果、第1及び第2ダミーブロック18S,18Hの付近に配置されるシリコンウェーハも金属汚染され、ライフタイム値が低下してしまう。所定値以下のライフタイム値のシリコンウェーハWFは製品とすることができないため、製品歩留まりが不十分となる。
【0042】
(C)そこで、本発明では、ダミーブロックと複数枚のシリコンウェーハとの間に、ダミーブロック及びシリコンウェーハよりもサイズが大きく、かつ、高清浄度の追加ブロックを設置することが重要である。
【0043】
その一実施形態を図2に示す。図2において、ボート16上の、第1ダミーブロック18Sとウェーハ群WFとの間には第1追加ブロック20Sが配置され、第2ダミーブロック18Hとウェーハ群WFとの間には第2追加ブロック20Hが配置されている。本実施形態では、第1ダミーブロック18Sから発生する汚染金属を含むガスは、第1追加ブロック20Sによって遮られるため、ウェーハ群WFに向かって供給されにくくなる。また、第2ダミーブロック18Hから発生する汚染金属を含むガスは、第2追加ブロック20Hによって遮られるため、ウェーハ群WFに向かって供給されにくくなる。その結果、第1及び第2ダミーブロック18S,18Hの付近に配置されるシリコンウェーハのライフタイム値の低下を抑制して、製品歩留まりを向上させることができる。なお、第1追加ブロック20S及び第2追加ブロック20Hは、どちらか一方を設置してもよいが、製品歩留まりをより向上させる観点からは、両方設置することが好ましい。
【0044】
他の実施形態を図3に示す。図3においては、第1追加ブロック20S及び第2追加ブロック20Hに加えて、ボート16上の、第1ダミーブロック18Sよりも炉奥側Sに第3追加ブロック22Sが配置され、第2ダミーブロック18Hよりも炉口側Hに第4追加ブロック22Hが配置されている。本実施形態では、第1ダミーブロック18Sから発生する汚染金属を含むガスは、第1追加ブロック20Sと第3追加ブロック22Sとの間の空間に閉じ込められやすくなる。また、第2ダミーブロック18Hから発生する汚染金属を含むガスは、第2追加ブロック20Hと第4追加ブロック22Hとの間の空間に閉じ込められやすくなる。その結果、第1及び第2ダミーブロック18S,18Hの付近に配置されるシリコンウェーハのライフタイム値の低下をより確実に抑制することができる。なお、第3追加ブロック22S及び第4追加ブロック22Hは、どちらか一方を設置してもよいが、製品歩留まりをより向上させる観点からは、両方設置することが好ましい。
【0045】
第1乃至第4追加ブロック20S,20H,22S,22Hは、第1及び第2ダミーブロック18S,18H並びに複数枚のシリコンウェーハよりもサイズが大きいことが必要である。具体的には、炉芯管12の中心軸Xに垂直な仮想面への第1乃至第4追加ブロック20S,20H,22S,22Hの投影形状が、第1及び第2ダミーブロック18S,18H並びに複数枚のシリコンウェーハの前記仮想面への投影形状を包含し、炉芯管12の中心軸Xと平行な軸を有する柱形状であることが必要である。図4(A),(B)及び図5(C)を参照して、第1乃至第4追加ブロック20S,20H,22S,22Hは、以下の条件を満たす形状を有する。
【0046】
(i-1)第1乃至第4追加ブロック20S,20H,22S,22Hのうち、ポケット16Aの上端よりも下方の部分(本実施形態では下半分)は、ポケット16Aに収納される。このため、第1乃至第4追加ブロック20S,20H,22S,22Hの前記仮想面への投影形状のうち、ポケット16Aの上端よりも下方の部分は、複数枚のシリコンウェーハの半径と同じ曲率半径を有する。
【0047】
(i-2)第1乃至第4追加ブロック20S,20H,22S,22Hのうち、ポケット16Aの上端よりも上方の部分、つまりボート16よりも上方の部分(本実施形態では上半分)は、汚染金属を含むガスの拡散を抑える機能を発揮する。このため、第1乃至第4追加ブロック20S,20H,22S,22Hの前記仮想面への投影形状のうち、ボート16よりも上方の部分は、複数枚のシリコンウェーハの半径よりも大きな曲率半径Rを有する。汚染金属を含むガスの拡散を抑える効果を十分に得る観点から、当該部分の曲率半径Rは、複数枚のシリコンウェーハの半径よりも5mm以上大きいことが好ましい。また、ボート16の搬入及び搬出の際に第1乃至第4追加ブロック20S,20H,22S,22Hが炉芯管12に接触する危険性を回避する観点から、当該部分の曲率半径Rは、複数枚のシリコンウェーハの半径よりも25mm以下の範囲で大きいことが好ましい。
【0048】
図4(B)を参照して、第1乃至第4追加ブロック20S,20H,22S,22Hの、炉芯管12の中心軸Xに沿った幅Wは、10mm以上であることが好ましく、15mm以上であることがより好ましい。この場合、追加ブロックに高清浄度化処理を施す際のハンドリングが容易となるからである。また、第1乃至第4追加ブロック20S,20H,22S,22Hの、炉芯管12の中心軸Xに沿った幅Wは、第1及び第2ダミーブロック18S,18Hの幅よりも小さいことが好ましく、具体的には、20mm以下であることが好ましい。この場合、ダミーブロックに比べて追加ブロックを毎バッチ交換する際の経済的負担を減らすことができ、また、エッチング槽の作製が容易でエッチング中の液温上昇のおそれも回避できることから、各バッチの熱処理後に追加ブロックに高清浄度化処理を施すことも容易である。
【0049】
図2及び図3において、炉芯管12の中心軸Xの方向における、第1ダミーブロック18Sと第1追加ブロック20Sとの距離(離間距離)、及び、第2ダミーブロック18Hと第2追加ブロック20Hとの距離(離間距離)は、0mm以上5mm以下であることが好ましい。当該距離が5mm以下であれば、第1追加ブロック20S及び第2追加ブロック20Hによる効果をより確実に得ることができる。
【0050】
図2及び図3において、炉芯管12の中心軸Xの方向における、第1追加ブロック20Sとウェーハ群WFとの距離(離間距離)、及び、第2追加ブロック20Hとウェーハ群WFとの距離(離間距離)は、1mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0051】
図2及び図3において、炉芯管12の中心軸Xの方向における、第1ダミーブロック18Sと第3追加ブロック22Sとの距離(離間距離)、及び、第2ダミーブロック18Hと第4追加ブロック22Hとの距離(離間距離)は、0mm以上5mm以下であることが好ましい。当該距離が5mm以下であれば、第3追加ブロック22S及び第4追加ブロック22Hによる効果をより確実に得ることができる。
【0052】
炉芯管12内でのウェーハ設置領域の温度均一化を阻害しない観点から、第1乃至第4追加ブロック20S,20H,22S,22Hは、シリコンからなることが好ましい。
【0053】
複数枚のシリコンウェーハの金属汚染を防ぐ観点から、第1乃至第4追加ブロック20S,20H,22S,22Hは、高清浄度である必要があり、具体的には、Feの濃度が1×1011atoms/cm未満であり、Ni及びCuの濃度がそれぞれ5×1010atoms/cm未満である必要があり、より好ましくはFe、Ni及びCuの濃度がそれぞれ5×1010atoms/cm未満であり、さらに好ましくは全ての遷移金属元素の濃度がそれぞれ5×1010atoms/cm未満であり、最も好ましくは全ての遷移金属元素の濃度がそれぞれ1×1010atoms/cm未満である。
【0054】
ダミーブロック及び追加ブロック中の遷移金属元素の濃度は、各ブロックの表層部を酸等で溶解して、溶解液に含まれる元素濃度をICP-MS等で測定することにより、求めることができる。
【0055】
本実施形態では、複数バッチの熱処理において、第1乃至第4追加ブロック20S,20H,22S,22Hは常に高清浄度である必要がある。そこで、第1乃至第4追加ブロック20S,20H,22S,22Hは、バッチ毎に高清浄度のブロックに交換するか、バッチ毎に使用済みブロックに遷移金属元素を除去するための高清浄度化処理を施す。具体的には、フッ酸と硝酸との混酸液等によるエッチング処理によって、追加ブロックから遷移金属元素を除去する。既述のように、第1乃至第4追加ブロック20S,20H,22S,22Hは、第1及び第2ダミーブロック18S,18Hよりも小サイズであるため、高清浄度化が容易である。
【実施例
【0056】
図1に示す構造を有する横型熱処理炉を用意した。SiCからなる炉芯管の内径は220mmである。また、図5(A)に示す構造のボートを用意した。ボートのポケットは、半径が75mmの半円筒形の凹部である。表層にリンガラスを付着させた直径150mmのシリコンウェーハを7ロット(350枚)用意して、主面が炉芯管の中心軸に直交するように、かつ、ロット毎に互いに隣接するシリコンウェーハの主面同士が接するように、ボート上に載置して、ウェーハ群とした。
【0057】
ボート上の、全てのシリコンウェーハ(ウェーハ群)よりも炉奥側Sに、炉芯管の中心軸と平行な軸を有する円柱形状の第1ダミーブロックを配置し、全てのシリコンウェーハ(ウェーハ群)よりも炉口側HSに、炉芯管の中心軸と平行な軸を有する円柱形状の第2ダミーブロックを配置した。各ダミーブロックは、直径150mm、幅40mmの円柱形状のシリコンブロックであり、CZ法により製造した単結晶シリコンインゴットから切り出したものである。ただし、各ダミーブロックは、すでに複数バッチの熱処理において交換や洗浄をすることなく、くり返し使用されたものである。そのため、同等の条件で使用済みのダミーブロックについて、既述の方法で遷移金属元素の濃度を測定したところ、Fe濃度は2×1011atoms/cmで、Ni濃度は1×1011atoms/cmで、Cu濃度は5×1010atoms/cm未満(Cuのみ検出下限値未満)であった。なお、炉芯管の中心軸の方向における、第1ダミーブロックとウェーハ群との距離(離間距離)、及び、第2ダミーブロックとウェーハ群との距離(離間距離)は、ともに25.3mmとした。
【0058】
表1に示すように、比較例1及び発明例1~6において、図3に示す第1乃至第4追加ブロック20S,20H,22S,22Hの設置有無を種々変更した。各追加ブロックの形状及び寸法は図4(A),(B)に示すとおりであり、図4(A)に示す下半分の曲率半径は75mmであり、上半分の曲率半径Rは表1に示し、図4(B)に示す幅Wは表1に示した。なお、各追加ブロックを設置する場合、各追加ブロックと、当該追加ブロックに最近接のダミーブロックとの距離(離間距離)は、1.2mmとした。各追加ブロックは、CZ法により製造した単結晶シリコンインゴットから切り出したシリコンブロックであり、これに対して既述の高清浄度化処理を行ったものである。そのため、各追加ブロックについて、既述の方法で遷移金属元素の濃度を測定したところ、Fe濃度は1×1011atoms/cm未満、Ni濃度及びCu濃度はそれぞれ5×1010atoms/cm未満であり、それぞれが測定の検出下限値未満であった。
【0059】
比較例1及び発明例1~6において、ボートを炉芯管内に入れて、ドライブイン工程の熱処理を行った。炉芯管内に導入するガスは、酸素0.5体積%を含み、残部がArからなる組成とした。均熱管内の雰囲気温度は1300℃とし、この温度に230時間保持した。
【0060】
[ライフタイムの測定]
熱処理の後、全てのシリコンウェーハのうち最も炉奥側のシリコンウェーハを「モニターウェーハS1」、最も炉口側のシリコンウェーハを「モニターウェーハH1」として、これらのモニターウェーハのライフタイムを一般的なμ-PCD法により測定した。比較例1のライフタイムを基準とした相対値を表1に示した。
【0061】
【表1】
【0062】
表1から明らかなように、発明例1~6では比較例よりもライフタイム値が大きかった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の横型熱処理炉を用いたシリコンウェーハの熱処理方法は、シリコンウェーハの表層から内部へのリン、ボロン等のドーパントの拡散熱処理に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
100 横型熱処理炉
10 均熱管
10A 扉
10B 開口部
10C 吸引口
12 炉芯管
12A 蓋
12B ガス導入口
12C ガス排気口
14 ヒーター
16 ボート
16A ポケット
18S 第1ダミーブロック(保温ブロック)
18H 第2ダミーブロック(保温ブロック)
20S 第1追加ブロック(遮蔽ブロック)
20H 第2追加ブロック(遮蔽ブロック)
22S 第3追加ブロック(遮蔽ブロック)
22H 第4追加ブロック(遮蔽ブロック)
S 炉奥側(ガス流入側)
H 炉口側(ガス流出側)
WF ウェーハ群(複数枚のシリコンウェーハ)
X 炉芯管の中心軸
図1
図2
図3
図4
図5