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特許7380906顕微鏡装置、顕微鏡装置の試料屈折率測定方法、および顕微鏡装置の試料屈折率測定プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】顕微鏡装置、顕微鏡装置の試料屈折率測定方法、および顕微鏡装置の試料屈折率測定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20231108BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20231108BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G02B21/00
G02B21/36
G02B21/06
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022553548
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2021031109
(87)【国際公開番号】W WO2022070689
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2020165984
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】新谷 大和
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-026665(JP,A)
【文献】特開2015-018045(JP,A)
【文献】国際公開第2019/097587(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00 - 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの照明光を試料に導く照明光学系と、
前記試料からの検出光を検出する検出部と、
前記試料からの前記検出光を前記検出部に導く検出光学系と、
前記照明光学系および前記検出光学系の少なくとも一方に設けられる部材と、
前記部材を挿脱又は制御することにより、前記照明光学系の光軸に交わる面内における前記照明光の断面形状及び前記検出光学系の光軸に交わる面内における前記検出光の断面形状の少なくとも一方を変化させる切替部と、
前記切替部による前記部材の挿脱又は制御に伴う、前記照明光の集光位置及び前記検出光の結像位置の少なくと一方のずれ量に関する情報を算出し、前記ずれ量に関する情報に基づき、前記試料の屈折率を算出する演算制御部と、を備える顕微鏡装置。
【請求項2】
前記演算制御部は、
前記試料の屈折率と、前記照明光学系及び前記検出光学系の少なくとも一方の光軸に沿った前記試料の深さ位置の変化量に対する前記集光位置及び前記結像位置の少なくとも一方のずれ量の変化量の比との関係を示す第1の情報を特定し、
前記試料の深さ方向の複数の深さ位置それぞれにおける、前記部材を第1の状態から第2状態に変更した際の前記ずれ量を示す第2の情報を、前記検出光に基づいて求め、
前記第2の情報に基づき、前記深さの変化量と前記ずれ量の変化量との比を示す第3の情報を算出し、
前記第1の情報と前記第3の情報とに基づき、前記試料の屈折率を算出する請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項3】
前記演算制御部は、
前記試料の深さ方向に、前記試料を分割し、前記分割した領域ごとに前記屈折率を算出する請求項2に記載の顕微鏡装置。
【請求項4】
前記検出光学系は、対物レンズを含み、
前記対物レンズを含む光学系の収差を補正する収差補正部を備え、
前記演算制御部は、
前記試料の屈折率と、前記深さ位置の変化量に対する前記収差補正部の補正量の変化量の比との関係を示す第4の情報を特定し、
前記試料の深さ方向の第1の位置における、前記収差補正部の補正量を示す第5の情報を、前記検出光に基づいて求め、
前記試料の深さ方向の第2の位置における、前記収差補正部の最適補正量を示す第6の情報を、前記第4の情報及び前記第5の情報、前記分割した領域ごとの屈折率、および前記分割した領域の各境界面位置に関する情報に基づき算出する請求項3に記載の顕微鏡装置。
【請求項5】
前記試料と前記対物レンズとを前記対物レンズの光軸に沿って相対移動させることが可能な駆動部を備え、
前記演算制御部は、
前記第6の情報に基づき前記収差補正部を制御し、前記駆動部を制御して、前記試料の深さ方向の1以上の深さ位置での前記試料の画像を、前記検出光に基づいて生成する請求項4に記載の顕微鏡装置。
【請求項6】
前記検出光学系は、対物レンズを含み、
前記対物レンズを含む光学系の収差を補正する収差補正部を備え、
前記演算制御部は、
前記収差補正部を制御し、前記対物レンズの光軸に沿った前記試料の深さ方向の第1の深さ位置における前記収差を補正し、
前記試料の屈折率と、前記深さ位置の変化量に対する前記集光位置及び前記結像位置の少なくとも一方のずれ量の変化量の比との関係を示す第7の情報を特定し、
前記試料の深さ方向の前記第1の深さ位置とは異なる第2の深さ位置における、前記部材が挿脱又は制御された際の前記集光位置及び前記結像位置の少なくとも一方のずれ量を示す第8の情報を、前記検出光に基づいて求め、
前記第8の情報と、前記第1の深さ位置に関する情報と、前記第2の深さ位置に関する情報とに基づき、前記深さ位置の変化量と前記集光位置及び前記結像位置の少なくとも一方のずれ量の変化量との比を示す第9の情報を算出し、
前記第7の情報と前記第9の情報とに基づき、前記試料の屈折率を算出する請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項7】
前記集光位置及び前記結像位置の少なくとも一方のずれ量が、前記照明光学系及び前記検出光学系の少なくとも一方の光軸方向のずれ量である請求項1~6のいずれかに記載の顕微鏡装置。
【請求項8】
前記集光位置及び前記結像位置の少なくとも一方のずれ量が、前記照明光学系及び前記検出光学系の少なくとも一方の光軸と垂直な方向のずれ量である請求項1~6のいずれかに記載の顕微鏡装置。
【請求項9】
記演算制御部は
記部材が第1の状態にあるときにおける、前記試料の深さ方向の所定の複数の位置での前記試料の画像である第1の画像群を、前記検出光に基づいて生成し、
前記部材が第2の状態にあるときにおける、前記所定の複数の位置での前記試料の画像である第2の画像群を、前記検出光に基づいて生成し、
前記第1の画像群と前記第2の画像群との間の前記深さ方向の倍率に基づき、前記試料の屈折率を算出する請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項10】
光源からの照明光を試料に導く照明光学系と、前記試料からの検出光を検出する検出部と、前記試料からの前記検出光を前記検出部に導く検出光学系と、前記照明光学系および前記検出光学系の少なくとも一方に設けられる部材と、前記部材を挿脱又は制御することにより、前記照明光学系の光軸に交わる面内における前記照明光の断面形状及び前記検出光学系の光軸に交わる面内における前記検出光の断面形状の少なくとも一方を変化させる切替部と、演算制御部とを備える顕微鏡装置での試料屈折率測定方法であって、
前記切替部による前記部材の挿脱又は制御に伴う、前記照明光の集光位置及び前記検出光の結像位置の少なくと一方のずれ量に関する情報を算出し、前記ずれ量に関する情報に基づき、前記試料の屈折率を算出する顕微鏡装置の試料屈折率測定方法。
【請求項11】
光源からの照明光を試料に導く照明光学系と、前記試料からの検出光を検出する検出部と、前記試料からの前記検出光を前記検出部に導く検出光学系と、前記照明光学系および前記検出光学系の少なくとも一方に設けられる部材と、前記部材を挿脱又は制御することにより、前記照明光学系の光軸に交わる面内における前記照明光の断面形状及び前記検出光学系の光軸に交わる面内における前記検出光の断面形状の少なくとも一方を変化させる切替部と、演算制御部とを備える顕微鏡装置での試料屈折率測定プログラムであって、
コンピュータに、前記切替部による前記部材の挿脱又は制御に伴う、前記照明光の集光位置及び前記検出光の結像位置の少なくと一方のずれ量に関する情報を算出し、前記ずれ量に関する情報に基づき、前記試料の屈折率を算出する処理を実行させる顕微鏡装置の試料屈折率測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡装置、顕微鏡装置の試料屈折率測定方法、および顕微鏡装置の試料屈折率測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
球面収差を補正する補正装置を用いて、試料の任意の部位の屈折率を算出する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-026665号公報(対応US2017/017071)
【発明の概要】
【0004】
第1の態様に係る顕微鏡装置は、光源からの照明光を試料に導く照明光学系と、前記試料からの検出光を検出する検出部と、前記試料からの前記検出光を前記検出部に導く検出光学系と、前記照明光学系および前記検出光学系の少なくとも一方に設けられる部材と、前記部材を挿脱又は制御することにより、前記照明光学系の光軸に交わる面内における前記照明光の断面形状及び前記検出光学系の光軸に交わる面内における前記検出光の断面形状の少なくとも一方を変化させる切替部と、前記切替部による前記部材の挿脱又は制御に伴う、前記照明光の集光位置及び前記検出光の結像位置の少なくと一方のずれ量に関する情報を算出し、前記ずれ量に関する情報に基づき、前記試料の屈折率を算出する演算制御部と、を備える。
【0005】
第2の態様に係る顕微鏡装置の試料屈折率測定方法は、光源からの照明光を試料に導く照明光学系と、前記試料からの検出光を検出する検出部と、前記試料からの前記検出光を前記検出部に導く検出光学系と、前記照明光学系および前記検出光学系の少なくとも一方に設けられる部材と、前記部材を挿脱又は制御することにより、前記照明光学系の光軸に交わる面内における前記照明光の断面形状及び前記検出光学系の光軸に交わる面内における前記検出光の断面形状の少なくとも一方を変化させる切替部と、演算制御部とを備える顕微鏡装置での試料屈折率測定方法であって、前記切替部による前記部材の挿脱又は制御に伴う、前記照明光の集光位置及び前記検出光の結像位置の少なくと一方のずれ量に関する情報を算出し、前記ずれ量に関する情報に基づき、前記試料の屈折率を算出する。
【0006】
第3の態様に係る顕微鏡装置の試料屈折率測定プログラムは、光源からの照明光を試料に導く照明光学系と、前記試料からの検出光を検出する検出部と、前記試料からの前記検出光を前記検出部に導く検出光学系と、前記照明光学系および前記検出光学系の少なくとも一方に設けられる部材と、前記部材を挿脱又は制御することにより、前記照明光学系の光軸に交わる面内における前記照明光の断面形状及び前記検出光学系の光軸に交わる面内における前記検出光の断面形状の少なくとも一方を変化させる切替部と、演算制御部とを備える顕微鏡装置での試料屈折率測定プログラムであって、コンピュータに、前記切替部による前記部材の挿脱又は制御に伴う、前記照明光の集光位置及び前記検出光の結像位置の少なくと一方のずれ量に関する情報を算出し、前記ずれ量に関する情報に基づき、前記試料の屈折率を算出する処理を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る顕微鏡装置の構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係る対物レンズの位置の変化に対する観察深さの変化を示す説明図である。
図3】第1実施形態に係る顕微鏡制御部と情報処理装置との間の電気的な接続を示すブロック図である。
図4】第1実施形態に係る2つのマスクパターンを示す模式図である。
図5】マスクパターンと励起光(照明光)の集光位置のずれ量との関係を説明する模式図である。
図6】第1実施形態に係る試料屈折率測定方法を示すフローチャートである。
図7】第1実施形態に係る設定用データテーブルを示す模式図である。
図8】試料屈折率ごとの、対物レンズz位置とマスクパターンを切り替えたときの励起光(照明光)の集光位置および蛍光(検出光)の結像位置の少なくとも一方のずれ量との関係を示す模式図である。
図9】観察深さ等を設定する際に用いられるGUIの一例を示す模式図である。
図10】第1実施形態に係るマスクパターンMP1のときの所定の対物レンズz位置での試料画像と、マスクパターンMP2のときの複数の対物レンズz位置での試料画像の一例を示す模式図である。
図11】第1実施形態に係る対物レンズz位置と相関値との関係を示すグラフである。
図12】第1実施形態に係る対物レンズz位置とz方向のフォーカス位置のずれ量との関係を示すグラフである。
図13】第2実施形態に係る顕微鏡装置の構成を示す図である。
図14】第2実施形態に係る共焦点顕微鏡における収差補正部の拡大図である。
図15】第2実施形態に係る顕微鏡制御部と情報処理装置との間の電気的な接続を示すブロック図である。
図16】第2実施形態に係る試料屈折率測定方法を示すフローチャートである。
図17】第2実施形態に係る対物レンズz位置とz方向のフォーカス位置のずれ量との関係を示すグラフである。
図18】第2実施形態に係る補正環位置決定処理の詳細を示すフローチャートである。
図19】第2実施形態に係る補正環位置決定処理における評価値の一例を示すグラフである。
図20】第3実施形態に係る試料屈折率測定方法を示すフローチャートである。
図21】第3実施形態に係る対物レンズz位置とz方向のフォーカス位置のずれ量との関係を示すグラフである。
図22】第3実施形態に係る対物レンズz位置と試料屈折率との関係を示す図である。
図23】第4実施形態に係る2つのマスクパターンを示す模式図である。
図24】球面収差を有する波面の形状と、波面をx方向に微分したときの形状を示す模式図である。
図25】第4実施形態に係る試料屈折率測定方法を示すフローチャートである。
図26】第4実施形態に係る設定用データテーブルを示す模式図である。
図27】第4実施形態に係る対物レンズz位置とxy方向の励起光(照明光)の集光位置および蛍光(検出光)の結像位置の少なくとも一方のずれ量との関係を示すグラフである。
図28】第5実施形態に係る試料屈折率測定方法を示すフローチャートである。
図29】第5実施形態に係る設定用データテーブルを示す模式図である。
図30】第5実施形態に係る2つのマスクパターンそれぞれに対応するxz断面画像を示す模式図である。
図31】第6実施形態に係る設定用データテーブルを示す模式図である。
図32】第6実施形態に係る(A)は観察深さと補正環の最適な回転位置との関係を示すグラフであり、(B)は観察深さと対物レンズの最適な位置との関係を示すグラフであり、(C)は補正環の回転位置が一定の場合における観察深さと対物レンズの位置との関係を示すグラフである。
図33】観察深さと、補正環の最適な回転位置と、対物レンズの最適な位置との関係を示す説明図である。
図34】観察深さと、補正環の最適な回転位置と、補正環の回転位置が一定の場合における対物レンズの位置との関係を示す説明図である。
図35】第6実施形態に係る試料屈折率測定方法を示すフローチャートである。
図36】第6実施形態に係る対物レンズの焦点が、補正環の最適補正環位置を実験的に求める観察深さの位置にある状態を示す模式図である。
図37】第6実施形態に係る画像取得パラメータ等を入力する際に用いられるGUIの一例を示す図である。
図38】第6実施形態に係るパラメータリストを示す模式図である。
図39】第6実施形態に係る観察深さと補正環位置と対物レンズz位置との関係を示すグラフである。
図40】第7実施形態に係る顕微鏡装置の構成を示す図である。
図41】第7実施形態に係る顕微鏡制御部と情報処理装置との間の電気的な接続を示すブロック図である。
図42】第8実施形態に係る顕微鏡装置の構成を示す図である。
図43】第8実施形態に係る顕微鏡制御部と情報処理装置との間の電気的な接続を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る顕微鏡装置1の構成を示す図である。この顕微鏡装置1は、共焦点顕微鏡10と、情報処理装置90とを主体に構成される。共焦点顕微鏡10と情報処理装置90とは、互いにデータの送受信が可能に構成されている。以降の説明において、共焦点顕微鏡10の対物レンズ30の光軸方向に延びる座標軸をz軸とする。また、このz軸と垂直な面内において互いに直交する方向に延びる座標軸をそれぞれx軸およびy軸とする。
【0009】
共焦点顕微鏡10は、ステージ11と、光源ユニット16と、照明光学系20と、検出光学系40と、検出部51と、顕微鏡制御部80とを備える。ステージ11は、図2に示すように、中央に開口部を有する板状に形成される。ステージ11は、観察対象である試料TPが載置されたカバーガラスCGを支持する(図2を参照)。試料TPの例として、例えば、生体試料(図示せず)やビーズ(図示せず)等がある。生体試料は、蛍光染色された細胞等の厚みがある試料である。ビーズは、蛍光標識されたポリスチレン製の(例えば、直径0.2μm程度の)微小な球体である。
【0010】
図1に示すように、ステージ11には、ステージ駆動部12が設けられる。ステージ駆動部12は、ステージ11をz軸(対物レンズ30の光軸AX)と垂直な面内で移動させる。ステージ駆動部12によりステージ11をz軸と垂直な面内で移動させることで、カバーガラスCGを介してステージ11に支持された、試料TPにおける広範囲の画像を取得することが可能である。なお、ステージ駆動部12は、ステージ11をz軸(対物レンズ30の光軸AX)に沿って移動させてもよい。
【0011】
光源ユニット16は、試料TPに含まれる蛍光物質を励起するための励起光を射出させる。光源ユニット16は、光源17と、シャッタ18と、音響光学素子19とを有する。光源17として、例えば、所定の波長域のレーザー光(励起光)を射出させることが可能なレーザー光源等が用いられる。
【0012】
照明光学系20は、光源ユニット16から射出された励起光で試料TPを照明する。照明光学系20は、光源ユニット16側から順に、照明用レンズ21と、励起フィルタ22と、ダイクロイックミラー23と、スキャナ24と、リレーレンズ25,26と、マスク27と、対物レンズ30とを有する。照明用レンズ21は、光源ユニット16から射出された励起光を平行光にするためのコリメーターレンズである。励起フィルタ22は、光源ユニット16からの励起光が透過し、他の波長の光(例えば、外光、迷光)の少なくとも一部を遮る特性を有する。ダイクロイックミラー23は、光源ユニット16から射出された励起光が反射し、ステージ11上の試料TPで発生した光のうち所定の波長帯の光(例えば、蛍光)が透過する特性を有する。スキャナ24は、x方向とy方向との2方向において、光源ユニット16からの励起光で試料TPを走査する。スキャナ24として、例えば、ガルバノスキャナや、レゾナントスキャナ等が用いられる。リレーレンズ25,26は、スキャナ24と対物レンズ30との間で光をリレーする。マスク27(詳細後述)には、マスク切替部28が設けられる。
【0013】
対物レンズ30は、ステージ11の下方近傍に配置される。対物レンズ30は、ステージ11の開口部およびカバーガラスCG(図2を参照)を介して、ステージ11上の試料TPと対向する。対物レンズ30とカバーガラスCGとの間隙部は、浸液IM(図2を参照)で満たされるようになっている。なお、対物レンズ30とカバーガラスCGとの間隙部は、浸液IMに限らず、空気等の気体で満たされていてもよい。
【0014】
対物レンズ30には、対物z位置駆動部62が設けられる。対物z位置駆動部62は、例えば電動モータ(図示せず)を用いて構成される。対物z位置駆動部62は、レボルバ(不図示)とともに対物レンズ30をz方向に上下移動させる。図2に示すように、対物z位置駆動部62により対物レンズ30がz方向に移動すると、試料TPに対する対物レンズ30の相対位置が変化し、試料TPに対する対物レンズ30の焦点PFの位置がz方向に変化する。対物z位置駆動部62により対物レンズ30の焦点PFの位置をz方向に変位させることで、z方向(対物レンズ30の光軸方向)の位置が異なる試料TPの断面(観察面TA)の画像を取得することが可能である。以降、z方向の位置が異なる複数の試料TPの断面の画像を、試料TPのzスタック画像と称することがある。
【0015】
検出光学系40は、試料TPで発生した蛍光を検出部へ導く。検出光学系40は、試料TP側から順に、対物レンズ30と、マスク27と、リレーレンズ26,25と、スキャナ24と、ダイクロイックミラー23とを含む。さらに、検出光学系40は、ダイクロイックミラー23側から順に、蛍光フィルタ44と、集光レンズ45とを有する。蛍光フィルタ44は、試料TPからの光のうち所定の波長帯の光(例えば、蛍光)が透過する特性を有する。蛍光フィルタ44は、例えば、試料TPで反射した励起光、外光、迷光などの少なくとも一部を遮断する。集光レンズ45は、試料TPの微小領域(対物レンズの回折限界)から発せられた蛍光を集光する。検出部51は、検出光学系40を介して、試料TPで発生した蛍光を検出する。検出部51として、例えば、光電子増倍管が用いられる。
【0016】
検出光学系40と検出部51との間における検出部51の近傍に、ピンホール46が設けられる。ピンホール46は、対物レンズ30の試料TP側の焦点位置と共役な位置に配置される。ピンホール46は、対物レンズ30の焦点面(対物レンズ30の焦点位置を通る対物レンズ30の光軸AXと垂直な面)または、当該焦点面から所定のずれ許容範囲内で光軸方向にずれた面からの光のみを通過させ、他の光を遮光する。ピンホール46には、ピンホール駆動部47が設けられる。ピンホール駆動部47は、ピンホール46の大きさを拡大若しくは縮小させる。ピンホール駆動部47により、ピンホール46の大きさを拡大若しくは縮小させることで、上述した所定のずれ許容範囲を変えることができる。
【0017】
顕微鏡制御部80は、ステージ駆動部12、ピンホール駆動部47、検出部51等を制御する。また、顕微鏡制御部80は、試料TPの画像の取得条件として、例えば、光源ユニット16から射出される励起光の光強度、ピンホール46の大きさ、試料TPに対する励起光の走査速度等を設定する。
【0018】
光源ユニット16から射出された励起光は、照明光学系20の照明用レンズ21を透過して略平行光になる。照明用レンズ21を透過した励起光は、励起フィルタ22を通ってダイクロイックミラー23に入射する。ダイクロイックミラー23に入射した励起光は、ダイクロイックミラー23で反射してスキャナ24に入射する。スキャナ24は、x方向とy方向との2方向において、スキャナ24に入射した励起光で試料TPを走査する。スキャナ24に入射した励起光は、スキャナ24を通って対物レンズ30を透過し、対物レンズ30の焦点面に集光される。試料TPにおいて励起光が集光される部分(すなわち、対物レンズ30の焦点面と重なる部分)は、スキャナ24によりx方向とy方向との2方向において2次元的に走査される。
【0019】
試料TPにおいて励起光が集光される部分に含まれる蛍光物質から、蛍光が発光する。試料TPで発した蛍光は、検出光学系40としての対物レンズ30に入射する。対物レンズ30に入射した蛍光は、対物レンズ30を透過し、スキャナ24を通ってダイクロイックミラー23に入射する。ダイクロイックミラー23に入射した蛍光は、励起光と波長が異なるため、ダイクロイックミラー23を透過して蛍光フィルタ44に達する。蛍光フィルタ44に達した蛍光は、蛍光フィルタ44を通って集光レンズ45を透過し、対物レンズ30の焦点位置と共役な位置に集光される。対物レンズ30の焦点位置と共役な位置に集光された蛍光は、ピンホール46を通過して検出部51に入射する。
【0020】
検出部51は、検出部51に入射した光(蛍光)の光電変換を行い、光の検出信号として、その光の光量(明るさ)に対応するデータを生成する。検出部51は、生成したデータを顕微鏡制御部80の検出制御部82(図3を参照)へ出力する。情報処理装置90の演算装置91(図3を参照)は、検出制御部82から入力されたデータを1画素分のデータとして、これをスキャナ24による2次元的な走査と同期して並べる処理を行うことで、複数画素分のデータが2次元で(2方向で)並ぶ1つの画像データを生成し、RAMなどの記憶部92(図3を参照)に記憶させる。このようにして、演算装置91は、試料TPの画像を取得する。
【0021】
マスク27は、光源ユニット16から射出された励起光と試料TPから発せられた蛍光のどちらか一方または両方の光束の一部を透過させ一部を遮光する。マスク27は、照明光学系20または検出光学系40または2つの光学系の共通光路における、励起光または試料TP中の1点から発せられた蛍光が略平行光となっている範囲内に配置される。マスク27には光の一部を遮光し一部を透過させる板状部材を用いてもよく、このような板状部材以外に、例えばDMD(デジタルミラーデバイス)や液晶SLM(空間変調器)を用いてもよい。DMDを用いる場合、例えば、DMD上の光を遮光する領域のミラーをオフ状態、透過させる領域のミラーをオン状態にすることで、光の一部を遮光し一部を透過させることが可能である。液晶SLMを用いる場合、例えば、液晶SLM上の光を遮光する領域には光を試料または検出器に入射しない方向へ回折させる位相パターンを作成し、透過させる領域には位相変調を加えないことで、光の一部を遮光し一部を透過させることが可能である。
【0022】
マスク切替部28は、マスク27における光を透過させる領域と遮断する領域の大きさや形状、配置等に関するマスクパターンを変更する。例えば、互いに異なるマスクパターンが形成された複数のマスクを切り替えてマスク設置位置に抜き差しすることでマスクパターンを変更してもよいし、複数のマスクパターンを形成した板状部材を回転または平行移動することでマスクパターンを変更してもよい。また、マスク27としてDMDや液晶SLMを用いる場合、マスク切替部28はDMDや液晶SLMの空間的なパターンを変更する。なお、本発明におけるマスクの切り替えは自動での切り替えに限らない。例えば、ユーザーが手動でマスクを挿脱してマスクパターンを変更してもよい。
【0023】
図3は、第1実施形態に係る共焦点顕微鏡10の顕微鏡制御部80と情報処理装置90との間の電気的な接続を示すブロック図である。顕微鏡制御部80および情報処理装置90は、本発明に係る演算制御部を構成する。顕微鏡制御部80は、光源制御部81、検出制御部82、ピンホール径制御部83、スキャナ制御部84、対物z位置制御部85、ステージ位置制御部86、およびマスク制御部87を有する。
【0024】
光源制御部81は、光源ユニット16と電気的に接続され光源ユニット16を制御する。検出制御部82は、検出部51と電気的に接続され検出部51を制御する。ピンホール径制御部83は、ピンホール駆動部47と電気的に接続されピンホール駆動部47を制御する。スキャナ制御部84は、スキャナ24と電気的に接続されスキャナ24を制御する。対物z位置制御部85は、対物z位置駆動部62と電気的に接続され対物z位置駆動部62を制御する。ステージ位置制御部86は、ステージ駆動部12と電気的に接続されステージ駆動部12を制御する。マスク制御部87は、マスク切替部28と電気的に接続されマスク切替部28を制御する。
【0025】
情報処理装置90は、演算装置91および記憶部92を有する。演算装置91は、顕微鏡制御部80の各制御部81~87と電気的に接続されている。演算装置91は、記憶部92に保持されている処理内容(プログラム)に従い処理を行い、接続されている各制御部81~87を制御する。記憶部92は、RAM等のメモリやハードディスク等を用いて構成される。記憶部92は、演算装置91が実行する処理内容や演算装置91から入力される各種データを記憶する。入力部94は、ユーザーが操作可能な入力インターフェースである。入力部94は、例えば、マウス、キーボード、タッチパッド、トラックボール等のうち少なくとも1つを含む。入力部94は、ユーザーによる操作を検出し、その検出結果をユーザーが入力した入力データとして情報処理装置90の演算装置91へ出力する。表示部95は、例えば、液晶ディスプレイ等である。情報処理装置90の演算装置91は、共焦点顕微鏡10の操作に必要なGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)や、共焦点顕微鏡10の顕微鏡制御部80から出力された試料TPの画像、算出した試料屈折率を表示部95に表示させる。
【0026】
次に、試料TPの屈折率を算出するための方法(以降、試料屈折率測定方法と称する)について説明する。光学系に収差が存在するとき、照明光学系に配置されたマスクパターンを変更すると、励起光(照明光)の集光位置が変化する。検出光学系に配置されたマスクパターンを変更すると、試料のある微小領域(対物レンズの回折限界)から発せられた蛍光(検出光)の結像位置が変化する。照明光学系と検出光学系の共通光路に配置されたマスクパターンを変更すると、励起光(照明光)の集光位置および蛍光(検出光)の結像位置の両方が変化する。以後、励起光(照明光)の集光位置および蛍光(検出光)の結像位置の少なくとの一方について、「フォーカス位置」と称する。第1実施形態に係る試料屈折率測定方法では、複数の観察深さ位置(後述する対物レンズz位置)において、マスク27のマスクパターンを変更した際に生じる、対物レンズ30を含む光学系のz方向のフォーカス位置のずれ量を求め、求めたフォーカス位置のずれ量に基づき試料TPの屈折率を算出する。図4は、本実施形態で用いるマスク27における2つのマスクパターンを示している。マスクパターンMP1は、円環状(2つの同心円によって囲まれた領域)の光通過領域(白色で示す領域)を有し、マスク27に入射した光束のうち、この光通過領域に入射した光束のみを通過(透過)させて、他の部分(光通過領域以外)に入射した光を遮断するマスクパターンである。マスクパターンMP2は、円形状(例えば、マスクパターンMP1の円環の内径に相当するが、これに限定しない)の光通過領域(白色で示す領域)を有し、マスク27に入射した光束のうち、この光通過領域に入射した光束(光束内の中心近傍の部分)のみを通過させて、他の部分(光通過領域以外)に入射した光を遮断するマスクパターンである。なお、本発明におけるマスクパターンは上記に限るものではない。マスクパターンMP1、またはマスクパターンMP2のどちらか一方のみを用い、光路にマスクを入れた状態とマスクを入れていない状態でのフォーカス位置のずれ量に基づき試料屈折率の算出を行っていてもよい。また、3つ以上の異なるマスクパターンを用い、それぞれのマスクパターン間での複数のフォーカス位置のずれ量に基づいて試料屈折率を算出してもよい。
【0027】
例えば、試料TPの屈折率と浸液IMの屈折率とが異なるといった理由により、試料TPを含む光学系に球面収差が生じることがある。球面収差が存在するときには、図5に示すように、円環状の光束(例えば、マスクパターンMP1を通過した光)が光学系により集光され形成される集光位置FP1と、光束の中央部分(例えば、円環の内径に相当するが、これに限定しない)の光(例えば、マスクパターンMP2を通過した光)が光学系により集光され形成される集光位置FP2とは、z方向(レンズの光軸方向)に位置がずれる。この集光位置のずれ量ΔLは、球面収差量が大きいほど大きくなる。
【0028】
図6は、第1実施形態に係る試料屈折率測定方法を示すフローチャートである。図6に示す各ステップの処理は、顕微鏡制御部80または情報処理装置90の演算装置91により、所定の制御プログラムに従って実行される。まず、ステップST101において、試料屈折率nとL-ΔL変化比mfcとの関係を表す設定用データテーブルDB1(本発明に係る第1の情報に相当する)を予め作成しておく(図7を参照)。L-ΔL変化比mfcとは、対物レンズz位置Lと、マスクパターンMP1,MP2を変更した際のz方向のフォーカス位置のずれ量ΔLとの比である。対物レンズz位置Lとは、所定の基準位置L0を原点位置とした、対物レンズ30のz方向の位置である(図2を参照)。対物レンズz位置Lが変わることにより、観察深さd(対物レンズ30の焦点PFが位置するz方向の位置)が変化する(図2を参照)。対物レンズz位置は、例えば、対物レンズ30をz方向に駆動させるギアの角度の基準位置からの変化量で検出できる。
【0029】
試料屈折率nとL-ΔL変化比mfcとの関係は、例えば、光学シミュレーションを行うことにより求めることが可能である。具体的には、試料屈折率、浸液屈折率、カバーガラスの厚み、光学系の収差、試料中の観察深さを設定し、例えば、公知のPSF(点像分布関数)の最大強度比(以降、ストレール比と称する)が最大となる対物レンズのz位置Lを求める。例えば、光路中にいずれのマスクパターンも設置されていない状態で前記ストレール比が最大となる対物レンズz位置をLT0、光路中にマスクパターンMP1を設置した状態で前記ストレール比が最大となる対物レンズのz位置をLT1、光路中にマスクパターンMP2を設置した状態で前記ストレール比を最大とする対物レンズのz位置をLT2とする。この場合、マスクパターンMP1,MP2を切り替えた際のフォーカス位置のずれ量ΔLは、下記の式(1)で求められる。
【0030】
【数1】
【0031】
例えば、複数の観察深さにおいて、対物レンズz位置LT0とフォーカス位置のずれ量ΔLとを求め、LT0とΔLとの対応点をプロットした散布図を作成する。そして作成した散布図におけるプロットを例えば直線でフィッティングし、この直線の傾きを、L-ΔL変化比mfcとして求める。複数の試料屈折率を設定し、それぞれの試料屈折率に応じてL-ΔL変化比mfcを求めることで、設定用データテーブルDB1を作成することが可能である。作成した設定用データテーブルDB1は記憶部92で保持する。なお、データテーブルは複数の波長や温度等の条件ごとに作成し保持しておき、観察条件に応じて使い分けてもよい。
【0032】
試料屈折率nとL-ΔL変化比mfcとの関係は、例えば、屈折率が既知の試料を用いて、実験的に求めてもよい。このとき、屈折率が既知の試料に対して、後述するステップST102からステップST109の処理を行ったあと、対物レンズ位置Lと実験的に求めたフォーカス位置のずれ量ΔLTEとの対応点をプロットした散布図を作成する。そして、作成した散布図のプロットを1本の直線でフィッティングし、その直線の傾きからL-ΔL変化比mfcを算出する。複数の屈折率が既知の試料に対して、それぞれの試料屈折率に応じてL-ΔL変化比mfcを求めることで、設定用データテーブルDB1を作成することが可能である。
【0033】
図8は、試料屈折率ごとの、対物レンズz位置LT0と、マスクパターンMP1,MP2を切り替えたときのフォーカス位置のずれ量ΔLとの関係を例示する図である。ここで、対物レンズz位置LT0が0となる対物レンズz位置の定義は任意であり、例えば試料とカバーガラスの境界面にフォーカス位置が存在するときの対物レンズz位置等を設定してもよい。図8に示すように、例えば、試料屈折率がn1の場合における対物レンズz位置LT0とフォーカス位置のずれ量ΔLとの関係は直線fΔLTn1で表すことができる。試料屈折率がn2の場合における対物レンズz位置LT0とフォーカス位置のずれ量ΔLとの関係は直線fΔTn2で表すことができる。試料屈折率がn3の場合における対物レンズz位置LT0とフォーカス位置のずれ量ΔLとの関係は直線fΔTn3で表すことができる。このとき、試料屈折率がn1の場合におけるL-ΔL変化比mfcは、直線fΔLTn1の傾きとして求まる。試料屈折率nがn2の場合におけるL-ΔL変化比mfcは、直線fΔLTn2の傾きとして求まる。試料屈折率がn3の場合におけるL-ΔL変化比mfcは、直線fΔLTn3の傾きとして求まる。図8に示す例では、試料屈折率がn1、n2、n3の順で浸液屈折率との差が大きく、L-ΔL変化比mfcも大きい。
【0034】
ステップST102において、屈折率を求める試料のxy方向位置およびフォーカス位置のずれ量を求める複数の対物レンズz位置Lを設定する。図9に示すように、ユーザーは表示部95に表示されるGUIを利用して、試料画像TI(マスクパターンが設定されていない状態で撮影された試料画像)を見ながら観察領域ROI(ステージ11)のx方向位置およびy方向位置を入力する操作を入力部94に対して行い、観察領域ROIを設定することができる。ユーザーが、対物レンズz位置Lを入力する操作や、観察領域ROI(ステージ11)のx方向位置およびy方向位置を入力する操作を入力部94に対して行うと、入力部94は、これらの操作に対応する入力データを、演算装置91を介して顕微鏡制御部80の対物z位置制御部85およびステージ位置制御部86へ出力する。
【0035】
ユーザーはGUIを利用して対物レンズz位置Lを変更しつつ、その変更に応じて変化する試料画像の状態を見て判断することで、フォーカス位置のずれ量ΔLを算出する複数の対物レンズz位置(以降、フォーカス位置ずれ量算出z位置と称する)を決定し、GUIを利用して入力欄に入力する。図9では、複数のフォーカス位置ずれ量算出z位置として、10、30、50.5μmの3位置を例示している。なお、フォーカス位置ずれ量算出z位置は自動的に設定されてもよい。この場合、例えば予め定めておいた対物レンズz位置の範囲内で等間隔に予め定めておいた所定の数のフォーカス位置ずれ量算出z位置を設定する方法がある。ユーザーがGUI上で、屈折率算出の開始ボタンを操作することで、ステップST103以降のステップへ進む。
【0036】
ステップST103において、ステップST102で設定した複数のフォーカス位置ずれ量算出z位置の中から1つを選択し、選択したフォーカス位置ずれ量算出z位置(対物レンズz位置Lcと称する)に、対物レンズ30を移動させる。ステップST104において、マスク27におけるマスクパターンをマスクパターンMP1に設定する。
【0037】
ステップST105において、試料画像を取得する。具体的には、顕微鏡制御部80は、光源ユニット16からレーザー光(励起光)をマスクパターンMP1のマスク27および対物レンズ30を介して試料TPに照射する。検出部51は、試料TPから対物レンズ30およびマスクパターンMP1のマスク27を通過した光(蛍光)を検出し、その検出信号を顕微鏡制御部80へ出力する。この検出信号は、顕微鏡制御部80を介して演算装置91に出力される。演算装置91は、顕微鏡制御部80から入力された検出信号をスキャナ24による2次元的な走査と同期して並べる処理を行うことで、マスクパターンMP1のときの対物レンズz位置Lcでの試料画像を生成する。生成した試料画像は、記憶部92に保持する。
【0038】
ステップST106において、マスク27におけるマスクパターンをマスクパターンMP2に変更する。ステップST107において、対物レンズz位置Lcを中心とする複数の対物レンズz位置での試料画像(試料TPのzスタック画像)を取得する。具体的には、顕微鏡制御部80は、対物レンズ30が対物レンズz位置Lcに移動している状態おいて、光源ユニット16からレーザー光(励起光)をマスクパターンMP2のマスク27および対物レンズ30を介して試料TPに照射する。検出部51は、試料TPから対物レンズ30およびマスクパターンMP2のマスク27を通過した光(蛍光)を検出し、その検出信号を顕微鏡制御部80へ出力する。この検出信号は、顕微鏡制御部80を介して演算装置91に出力される。演算装置91は、顕微鏡制御部80から入力された検出信号をスキャナ24による2次元的な走査と同期して並べる処理を行うことで、マスクパターンMP2のときの対物レンズz位置Lcでの試料画像を生成する。
【0039】
その後、対物レンズ30を他の対物レンズz位置に順次移動させ、移動させるごとに、上記と同様にして、マスクパターンMP2のときの各対物レンズz位置での試料画像(zスタック画像)を生成する。生成したzスタック画像は、記憶部92に保持する。zスタック画像を取得するためのz方向の範囲は、想定される観察条件の中で発生するフォーカス位置のずれ量ΔLの最大値の2倍よりも大きい範囲を設定する。図10は、マスクパターンMP1のときの対物レンズz位置Lcでの試料画像と、マスクパターンMP2のときの複数の対物レンズz位置(Lc+2、Lc+1、Lc、Lc-1、Lc-2)での試料画像(zスタック画像)を例示している。
【0040】
ステップST108において、ステップST105で撮影したマスクパターンMP1のときの対物レンズz位置Lcでの試料画像と、ステップST107で撮影したマスクパターンMP2のときのzスタック画像とからフォーカス位置のずれ量(本発明に係る第2の情報に相当する)を算出する。例えば、ステップST105で撮影したマスクパターンMP1のときの対物レンズz位置Lcでの試料画像と、ステップST107のマスクパターンMP2のときの各対物レンズz位置(Lc+2、Lc+1、Lc、Lc-1、Lc-2)で撮影した複数の試料画像それぞれとの間の相関値を計算する。そして、図11に示すように、各対物レンズz位置(Lc+2、Lc+1、Lc、Lc-1、Lc-2)と、計算した相関値との対応点をプロットした散布図を作成する。この散布図のプロットを補間または関数近似を行った上で、相関値が最大となる対物レンズz位置をLmaxとする。補間を行う方法としては、例えば、対物レンズz位置に対する相関値のプロットに対しラグランジュ補間やスプライン補間をする方法がある。関数近似を行う方法としては、例えば、最小二乗法により、対物レンズz位置に対する相関値のプロットを二次曲線やガウス関数によりフィッティングする方法がある。フォーカス位置のずれ量をΔLTEとするとき、ΔLTEは、下記の式(2)により算出できる。算出したフォーカス位置のずれ量ΔLTEは、ステップST103で選択した対物レンズz位置Lcと共に記憶部92に保持する。
【0041】
【数2】
【0042】
ステップST109において、ステップST102で設定した全ての対物レンズz位置についてフォーカス位置のずれ量ΔLTEを算出したかどうか判断する。全てに対して算出済みでない場合(ステップST109:No)、はステップST103へ戻り、対物レンズz位置を次の位置へ移動させる。全てに対して算出済みの場合(ステップST109:Yes)はステップST110に進む。
【0043】
ステップST110において、試料屈折率値を算出する。この試料屈折率値の算出は、例えば、次のように行う。まず、図12に示すように、ステップST102で設定した各対物レンズz位置Lと、それぞれの対物レンズz位置Lにおいて算出したフォーカス位置のずれ量ΔLTEとの対応点をプロットした散布図を作成する。そして、作成した散布図のプロットを1本の直線fΔLTEでフィッティングし、その直線fΔLTEの傾きmfcE(本発明に係る第3の情報に相当する)を算出する。この算出した傾きmfcEをステップST101で作成しておいた設定用データテーブルDB1(図7を参照)と照らし合わせることで、試料屈折率を求める。例えば、算出した傾きmfcEと最も値が近い設定用データテーブルDB1上のL-ΔL変化比mfcを選択し、その選択したL-ΔL変化比mfcに対応する屈折率nの値を試料屈折率としてもよい。また、例えば設定用データテーブルDB1上の屈折率nとL-ΔL変化比mfcとの関係を補間し、算出した傾きmfcEに対応する屈折率を算出してもよい。
【0044】
ステップST111において、ステップST110で算出した試料屈折率を表示部95に表示されるGUI上に表示することでユーザーに提示する。算出した試料屈折率値は記憶部92に保持しておき、別の処理に用いてもよい。
【0045】
なお、上述の説明ではステップST105で1枚の試料画像を取得し、ステップST107でzスタック画像を取得するとしたが、ST105でzスタック画像を取得し、ステップST107で1枚の試料画像を取得してもよい。また、ステップST105とステップST107の両方でzスタック画像を取得し、ステップST108ではぞれぞれのzスタック画像の中の複数の画像間の相関値に基づいてフォーカス位置のずれ量を算出してもよい。
【0046】
第1実施形態によれば、複数の対物レンズz位置においてマスクパターンMP1,MP2を変更した際に生じるz方向のフォーカス位置のずれ量に基づき試料TPの屈折率を求めることができる。求めた試料屈折率は、顕微鏡装置1における装置パラメータを最適化するために利用することができる。
【0047】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。図13は、第2実施形態に係る顕微鏡装置1Aの構成を示す図である。この顕微鏡装置1Aは、第1実施形態に係る顕微鏡装置1と類似した構成であり、上述の第1実施形態と同様の構成については、適宜、同じまたは類似の符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。顕微鏡装置1Aは、収差補正部60や顕微鏡制御部80Aを有する共焦点顕微鏡10Aを備えており、この点において、第1実施形態に係る顕微鏡装置1と相違している。
【0048】
図14は、共焦点顕微鏡10Aにおける収差補正部60の拡大図である。収差補正部60は、対物レンズ30Aの先端からカバーガラスCGまでの距離、カバーガラスCGの厚み、及び試料中の観察深さなどに起因する球面収差を補正する。対物レンズ30Aは、レボルバ(図示せず)によりステージ11の下方近傍で保持される。対物レンズ30Aは、収差補正レンズ31と、補正環32とを有する。収差補正レンズ31は、対物レンズ30Aの光軸AXに沿って移動することで、対物レンズ30Aの球面収差を変化させることが可能である。補正環32は、対物レンズ30Aの鏡筒部に、対物レンズ30Aの光軸AXを中心に回転自在に設けられる。補正環32の回転に応じて、収差補正レンズ31が対物レンズ30Aの光軸AXに沿って移動する。例えば、カム構造等を利用して、収差補正レンズ31が対物レンズ30Aの光軸AXに沿って移動するように構成されてもよい。
【0049】
収差補正部60は、対物レンズ30Aの収差補正レンズ31および補正環32と、検出部51とを含む。さらに、収差補正部60は、補正環駆動部63と、対物z位置駆動部62とを含む。補正環駆動部63は、例えば電動モータ(図示せず)を用いて構成される。補正環駆動部63は、補正環32を回転駆動し、補正環32の回転位置Cを変化させ、収差補正レンズ31を対物レンズ30Aの光軸AXに沿って移動させる。補正環駆動部63は、補正環32の回転位置Cを変化させて、収差補正レンズ31の光軸上の位置を変化させることにより、対物レンズ30Aの球面収差を変化させる。対物z位置駆動部62は、第1実施形態に係る顕微鏡装置1のものと同様の構成および機能を有する。
【0050】
図15は、共焦点顕微鏡10Aの顕微鏡制御部80Aと情報処理装置90との間の電気的な接続を示すブロック図である。顕微鏡制御部80Aおよび情報処理装置90は、本発明に係る演算制御部を構成する。第2実施形態に係る顕微鏡制御部80Aは、第1実施形態に係る顕微鏡制御部80の構成に加えて補正環制御部88を備えており、この点において、第1実施形態に係る顕微鏡制御部80と相違している。補正環制御部88は、補正環駆動部63と電気的に接続され補正環駆動部63を制御する。
【0051】
次に、第2実施形態に係る試料屈折率測定方法について説明する。第2実施形態に係る試料屈折率測定方法では、2つの対物レンズz位置を設定し、一方の対物レンズz位置で補正環32を最適位置に調整した上で、もう一方の対物レンズz位置でマスクパターンMP1,MP2を変更した際のz方向のフォーカス位置のずれ量を求め、求めたフォーカス位置のずれ量に基づき試料屈折率を算出する。
【0052】
図16は、第2実施形態に係る試料屈折率測定方法を示すフローチャートである。図16に示す各ステップの処理は、顕微鏡制御部80Aまたは情報処理装置90の演算装置91により、所定の制御プログラムに従って実行される。まず、ステップST201において、第1実施形態におけるステップST101と同様に、データテーブルを予め作成しておく。データテーブルとして、第1実施形態と同様の設定用データテーブルDB1(図7を参照)が用いられる。第2実施形態においても、予め、光学シミュレーションを行うことにより、複数の試料屈折率nについてL-ΔL変化比mfcとの関係を求めることで、設定用データテーブルDB1(本発明に係る第7の情報に相当する)を作成することが可能である。
【0053】
ステップST202において、第1実施形態におけるステップST102と同様に、屈折率を求める試料のxy方向位置およびフォーカス位置のずれ量を求める複数(本実施形態では2つ)の対物レンズz位置Lを設定する。第1実施形態と同様にユーザーは、表示部95に表示されるGUIを利用して、観察領域ROIを設定するとともに、2つの対物レンズz位置(L2_1とL2_2と称する)を設定することができる。なお、2つの対物レンズz位置は予め定めておいてもよい。
【0054】
ステップST203において、対物レンズ30AをステップST202で定めた第1の対物レンズz位置L2_1へ移動させる。
【0055】
ステップST204において、詳細を後述する補正環位置自動調整処理を行う。これにより、第1の対物レンズz位置L2_1において、補正環位置が最適となり、球面収差量が最小となる。そのため、仮にこの状態でマスク27のマスクパターンを2つのマスクパターンMP1,MP2の間で変更してもフォーカス位置のずれは略生じない。なお、補正環位置を変えたときに、フォーカス位置も変化する場合は、L2_1を後述のステップST227で算出するLPへ置き換え、L2_2を、L2_2-(LP-L2_1)へ置き換える。
【0056】
ステップST205において、対物レンズ30AをステップST202で定めた第2の対物レンズz位置L2_2へ移動させる。
【0057】
ステップST206~ステップST210では、第1実施形態におけるステップST104~ステップST108と同様の処理が行われる。これにより、第2の対物レンズz位置L2_2におけるフォーカス位置のずれ量ΔLTE(本発明に係る第8の情報に相当する)が算出される。
【0058】
ステップST211において、試料屈折率値を算出する。この試料屈折率値の算出は、例えば、次のように行う。まず、図17に示すように、対物レンズz位置Lを横軸にとり、フォーカス位置のずれ量ΔLTEを縦軸にとった座標図において、第1の対物レンズz位置L2_1とフォーカス位置のずれ量ΔLTE(=0)との対応点と、第2の対物レンズz位置L2_2とフォーカス位置のずれ量ΔLTEとの対応点とをプロットする。そして、プロットした2つの対応点を結ぶ直線fΔLTE2を求め、その直線fΔLTEの傾きmfcE(本発明に係る第9の情報に相当する)を算出する。上述したように第1の対物レンズz位置でのフォーカス位置のずれ量は略無いので、傾きmfcEは、下記の式(3)により算出することができる。
【0059】
【数3】
【0060】
この算出した傾きmfcEをステップST201で作成しておいた設定用データテーブルDB1(図7を参照)と照らし合わせることで、試料屈折率を算出する。算出した試料屈折率は、ステップST212において、第1実施形態におけるステップST111と同様に、ユーザーに提示される。
【0061】
ここで、補正環位置自動調整処理の詳細について説明する。図18は、補正環位置自動調整処理の詳細を示すフローチャートである。ステップST221において、顕微鏡制御部80Aは、試料TPの画像を取得する。このステップST221で取得する試料TPの画像を、試料TPの基準画像とする。以降、基準画像取得時の補正環32の回転位置を基準補正環位置CAと称し、対物レンズ30Aの位置を基準対物レンズ位置LAと称することがある。顕微鏡制御部80Aは、光源ユニット16からレーザー光(励起光)射出させる。また、顕微鏡制御部80Aの検出制御部82は、検出部51へ制御信号を送信し、この制御信号を受信した検出部51は、試料TPからの光(蛍光)の検出信号を、検出制御部82を介して情報処理装置90の演算装置91へ出力する。情報処理装置90の演算装置91は、検出部51から入力された光の検出信号(前述の1画素分のデータ)をスキャナ24による2次元的な走査と同期して並べる処理を行うことで、試料TPの基準画像を生成する。情報処理装置90の演算装置91は、生成した試料TPの基準画像データを記憶部92へ出力する。
【0062】
ステップST222において、顕微鏡制御部80Aの補正環制御部88は、補正環32を初期状態の回転位置へ回転移動させ、対物z位置制御部85は、対物レンズ30Aを初期状態の位置へz方向に移動させる。以降、初期状態の補正環32の回転位置を初期状態の補正環位置CA0と称し、初期状態の対物レンズ30Aの位置を初期状態の対物レンズ位置LA0と称することがある。その後、顕微鏡制御部80Aは、補正環32の回転位置Cを初期状態の補正環位置CA0から所定の回転移動量ずつ変化させ、対物レンズ30Aの位置Lを初期状態の対物レンズ位置LA0から所定の移動量ずつ変化させた、試料TPの複数種類の評価用画像を取得する。なお、各補正環32の回転位置Cおよび対物レンズ30Aの位置Lにおいて評価用画像を、1回取得してもよく、複数回取得してもよい。このとき、顕微鏡制御部80Aの補正環制御部88は、補正環駆動部63へ制御信号を送信し、この制御信号を受信した補正環駆動部63は、補正環32を初期状態の補正環位置CA0から所定の回転移動量ずつ回転移動させる。顕微鏡制御部80Aの対物z位置制御部85は、対物z位置駆動部62へ制御信号を送信し、この制御信号を受信した対物z位置駆動部62は、対物レンズ30Aを初期状態の対物レンズ位置LA0から所定の移動量ずつz方向に移動させる。それぞれの補正環32の回転位置および対物レンズ30Aの位置において、顕微鏡制御部80Aは、光源ユニット16からレーザー光(励起光)射出させる。また、顕微鏡制御部80Aの検出制御部82は、検出部51へ制御信号を送信し、この制御信号を受信した検出部51は、試料TPからの光(蛍光)の検出信号を顕微鏡制御部80Aの検出制御部82を介して情報処理装置90の演算装置91へ出力する。情報処理装置90の演算装置91は、検出制御部82から入力された光の検出信号(前述の1画素分のデータ)をスキャナ24による2次元的な走査と同期して並べる処理を行うことで、試料TPの評価用画像を生成する。演算装置91は、生成した試料TPの評価用画像データを記憶部92へ出力する。
【0063】
ステップST223において、情報処理装置90の演算装置91は、記憶部92に記憶された試料TPの基準画像データと、ステップST222で生成した試料TPの複数種類の評価用画像データとの相関値をそれぞれ求める。演算装置91は、補正環32の回転位置が同じで対物レンズ30Aの位置Lが異なる試料TPの評価用画像のうち、試料TPの基準画像データとの相関値が最大となる対物レンズ30Aの位置での評価用画像を、補正環32の各回転位置での評価用画像として選択する。演算装置91は、補正環32の各回転位置について、選択した試料TPの評価用画像データに基づいて、評価値vを求める。演算装置91は、求めた評価値vのデータおよび、このときの補正環32の回転位置Cのデータを記憶部92に記憶させて保持する。評価値vとして、例えば、画像のコントラストや、画像の信号強度(輝度)の積算値、画像の信号強度をフーリエ変換して得られる周波数成分の所定の周波数領域における積算値等を用いることができる。また、評価値vとして、同じ補正環32の回転位置Cおよび対物レンズ30Aの位置Lの条件で複数回取得した画像間の相関値を用いてもよい。
【0064】
図19は、補正環32の回転位置Cを変えて求まる評価値vの一例を示すグラフである。図19に示すように、補正環32の回転位置Cを変える規定回数を初期状態の補正環位置CA0から4回とした場合、まず、顕微鏡制御部80Aは、試料TPの基準画像TI(CA)を取得する。これに加え、顕微鏡制御部80Aは、補正環32を基準補正環位置CAから所定の初期回転量だけ回転移動させた初期状態の補正環位置CA0において、対物レンズ30Aの位置を初期状態の対物レンズ位置LA0および4つの位置LA1~LA4に変位させた試料TPの評価用画像を取得する。情報処理装置90の演算装置91は、これらの評価用画像のうち、図19の左側から1番目の△印で示した、相関値が最大となる初期状態の対物レンズ位置LA0での評価用画像を、初期状態の補正環位置CA0での評価用画像TI(CA0)として選択する。
【0065】
顕微鏡制御部80Aは、補正環32を初期状態の補正環位置CA0から第1の回転量だけ回転移動させた回転位置CA1において、対物レンズ30Aの位置を初期状態の対物レンズ位置LA0および4つの位置LA1~LA4に変位させた試料TPの評価用画像を取得する。情報処理装置90の演算装置91は、これらの評価用画像のうち、図19の左側から2番目の△印で示した、相関値が最大となる対物レンズ30Aの位置LA1での評価用画像を、補正環32の回転位置CA1での評価用画像TI(CA1)として選択する。顕微鏡制御部80Aは、補正環32を初期状態の補正環位置CA0から第2の回転量だけ回転移動させた回転位置CA2において、対物レンズ30Aの位置Lを初期状態の対物レンズ位置LA0および4つの位置LA1~LA4に変位させた試料TPの評価用画像を取得する。情報処理装置90の演算装置91は、これらの評価用画像のうち、図19の左側から3番目の△印で示した、相関値が最大となる対物レンズ30Aの位置LA2での評価用画像を、補正環32の回転位置CA2での評価用画像TI(CA2)として選択する。
【0066】
顕微鏡制御部80Aは、補正環32を初期状態の補正環位置CA0から第3の回転量だけ回転移動させた回転位置CA3において、対物レンズ30Aの位置Lを初期状態の対物レンズ位置LA0および4つの位置LA1~LA4に変位させた試料TPの評価用画像を取得する。情報処理装置90の演算装置91は、これらの評価用画像のうち、図19の左側から4番目の△印で示した、相関値が最大となる対物レンズ30Aの位置LA3での評価用画像を、補正環32の回転位置CA3での評価用画像TI(CA3)として選択する。顕微鏡制御部80Aは、補正環32を初期状態の補正環位置CA0から第4の回転量だけ回転移動させた回転位置CA4において、対物レンズ30Aの位置Lを初期状態の対物レンズ位置LA0および4つの位置LA1~LA4に変位させた試料TPの評価用画像を取得する。情報処理装置90の演算装置91は、これらの評価用画像のうち、図19の左側から5番目の△印で示した、相関値が最大となる対物レンズ30Aの位置LA4での評価用画像を、補正環32の回転位置CA4での評価用画像TI(CA4)として選択する。情報処理装置90の演算装置91は、選択した評価用画像データに基づいて、初期状態の補正環位置CA0および、初期状態の補正環位置CA0から1~4回だけ移動させた回転位置CA1~CA4での評価値vを求めることができる。
【0067】
ステップST224において、情報処理装置90の演算装置91は、記憶部92に記憶された補正環32の複数の回転位置での評価値vに基づいて、補正環32の最適補正環位置CPを求める。具体的には、演算装置91は、補正環32の複数の回転位置に対する評価値vをプロットした散布図を作成する。そして、演算装置91は、図19に示すように、このプロットに対して補間または関数近似を行うことで、評価値vが最大となる補正環32の最適補正環位置CPを求める。演算装置91は、求めた補正環32の最適補正環位置CPのデータを、顕微鏡制御部80Aの補正環制御部88へ出力する。補間を行う方法としては、例えば、補正環32の複数の回転位置CA0~CA4に対する評価値vのプロットに対しラグランジュ補間やスプライン補間をする方法がある。関数近似を行う方法としては、例えば、最小二乗法により、補正環32の複数の回転位置CA0~CA4に対する評価値vのプロットを二次曲線やガウス関数にフィッティングする方法がある。必要に応じて、求めた最適補正環位置CPを記憶部92に保持してもよい。
【0068】
ステップST225において、顕微鏡制御部80Aの補正環制御部88は、補正環駆動部63へ制御信号を送信し、この制御信号を受信した補正環駆動部63は、補正環32をステップST224で求めた最適補正環位置CPへ回転移動させる。
【0069】
ステップST226において、顕微鏡制御部80Aは、補正環32が最適補正環位置CPに回転移動した状態で、対物レンズ30Aの位置Lを変化させた、試料TPの評価用zスタック画像を取得する。このとき、顕微鏡制御部80Aの対物z位置制御部85は、対物z位置駆動部62へ制御信号を送信し、この制御信号を受信した対物z位置駆動部62は、対物レンズ30Aをz方向に移動させる。それぞれの対物レンズ30Aの位置において、顕微鏡制御部80Aは、光源ユニット16からレーザー光(励起光)射出させる。また、顕微鏡制御部80Aの検出制御部82は、検出部51へ制御信号を送信し、この制御信号を受信した検出部51は、試料TPからの光(蛍光)の検出信号を顕微鏡制御部80Aの検出制御部82を介して情報処理装置90の演算装置91へ出力する。情報処理装置90の演算装置91は、検出制御部82から入力された光の検出信号(前述の1画素分のデータ)をスキャナ24による2次元的な走査と同期して並べる処理を行うことで、試料TPの評価用zスタック画像を生成する。情報処理装置90の演算装置91は、生成した試料TPの評価用zスタック画像データを記憶部92へ出力する。
【0070】
ステップST227において、情報処理装置90の演算装置91は、記憶部92に記憶された試料TPの基準画像データと、ステップST226で生成した試料TPの評価用zスタック画像データとの相関値をそれぞれ求める。演算装置91は、試料TPの評価用zスタック画像のうち、相関値が最大となる画像が得られる対物レンズ30Aの位置を、最適対物レンズ位置LPとして求める。なお、演算装置91は、対物レンズ30Aの複数の位置に対する相関値をプロットした散布図を作成してもよい。そして、演算装置91は、このプロットに対して補間または関数近似を行うことで、相関値が最大となる対物レンズ30Aの位置を、最適対物レンズ位置LPとして求めるようにしてもよい。必要に応じて、求めた最適対物レンズz位置LPを記憶部92に保持してもよい。
【0071】
第2実施形態によれば、2つの対物レンズz位置のうちの一方の対物レンズz位置でマスクパターンMP1,MP2を変更した際に生じるz方向のフォーカス位置のずれ量に基づき試料屈折率を求めることができる。求めた試料屈折率は、顕微鏡装置1Aにおける装置パラメータを最適化するために利用することができる。
【0072】
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。第3実施形態に係る顕微鏡装置は、第1実施形態に係る顕微鏡装置1と同様であり、顕微鏡制御部および情報処理装置は、第1実施形態における顕微鏡制御部80および情報処理装置90と同様である。上述の第1実施形態と同様の構成については、適宜、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
【0073】
図20は、第3実施形態に係る試料屈折率測定方法を示すフローチャートである。この図20に基づき、第3実施形態に係る試料屈折率測定方法について説明する。第3実施形態に係る試料屈折率測定方法では、試料屈折率が試料TPの複数の深さ領域(例えば、階層状の領域)ごとに異なる場合において、深さ領域ごとの試料屈折率を算出する。ステップST301~ステップST309においては、第1実施形態におけるステップST101~ステップST109と同様の処理が行われる。
【0074】
ステップST310において、試料TPの深さ領域ごとの屈折率値を算出する。この屈折率値の算出は、例えば、次のように行う。概略的には、まず、図21に示すように、ステップST302で設定した対物レンズz位置Lと、ステップST308でそれぞれの対物レンズz位置Lにおいて算出したフォーカス位置のずれ量(ここではΔLと称する)との対応点をプロットした散布図を作成する。そして、作成した散布図のプロットを直線でフィッティングする。試料屈折率が深さ領域ごとに異なる場合、深さ領域ごとに、対物レンズz位置Lとフォーカス位置のずれ量ΔLとの比(L-ΔL変化比mfc)が異なる。そこで例えば、深さ領域ごとに異なる複数の直線を表すモデルを用いてこのプロットをフィッティングすることによって、複数の深さ領域ごとの試料屈折率を求める。
【0075】
具体的には、ステップST303からステップST309で取得したN個の対物レンズz位置Lと対応するフォーカス位置のずれ量ΔLとの組み合わせを、(L(i),ΔL(i))とする(iはデータを表すインデックスでありi=0,1,…,N-1。またL(i)<L(i+1)とする)。このN個のデータをM(M<N)本の直線でフィッティングすることで、各直線の傾きを深さ領域ごとのL-ΔL変化比として求める。図21は、9個のデータを3本の直線でフィッティングしている状態を例示している。この際、異なる直線の交点(隣接する深さ領域の境界)となる対物レンズz位置Lもパラメータとし、後述する評価関数を最小にするよう境界を選ぶ。このとき傾きの異なるM個の直線からなる対物レンズz位置Lとフォーカス位置のずれ量ΔLとの関係のモデルを、下記の式(4)で表す。
【0076】
【数4】
【0077】
ここで、a,a,…,aM-1は直線の傾き、b,b,…,bM-1は直線の切片を表すM個のパラメータである。I,…,IM-1は1つの直線が含むデータのインデックスを表す整数であり、0<I<I<…<IM-1<N-1である。上記モデルはa,b,Iの(3M-1)個のパラメータからなる。取得データ(L(i),ΔL(i))を最もよく表す個数Mおよび(3M-1)個のパラメータを、下記の式(5)で表される評価関数を最小にするように選択する。
【0078】
【数5】
【0079】
ここで、αMは取得データを表現する直線の数を増やすことによるペナルティーの項である。係数αの値は、例えば、屈折率が既知の試料などを用いて、最も精度よく屈折率を算出できる値を予め定めておく。
【0080】
以上のようにして求めた傾きa,a,…,aM-1から、第1実施形態におけるステップST110と同様に、設定用データテーブルDB1を参照することによりM個の試料屈折率値n,n,…,nM-1を求めることが可能である。なお、試料屈折率の異なるz方向の領域(深さ領域)の数Mが既知の場合は、Mを固定してもよい。また、屈折率が変化する境界面に対物レンズ30の焦点があるときの対物レンズz位置Lは以下のようにして求める。試料屈折率nとnj+1の境界面に対物レンズ30の焦点があるときの対物レンズz位置をLとすると、Lは求めた二つの直線、ΔL=aL+bとΔL=aj+1L+bj+1との交点の対物レンズ位置Lとして求められる。このようにしてM-1個の屈折率境界となる対物レンズz位置(Lb,Lb,…,LbM-2と称する)を求めることができる。
【0081】
ステップST311において、求めた複数の試料屈折率値と屈折率が変化する境界となる対物レンズz位置Lを表示部95に表示されるGUI上に表示することでユーザーに提示する。例えば図22に示すように、屈折率値と対物レンズz位置を数値と図で表して表示してもよい。
【0082】
第3実施形態によれば、複数の対物レンズz位置でマスクパターンMP1,MP2を変更した際に生じるz方向のフォーカス位置のずれ量に基づき試料TPの深さ領域ごとの屈折率を求めることができる。求めた試料屈折率は、顕微鏡装置1における装置パラメータを最適化するために利用することができる。
【0083】
[第4実施形態]
第4実施形態について説明する。第4実施形態に係る顕微鏡装置は、第1実施形態に係る顕微鏡装置1と同様であり、顕微鏡制御部および情報処理装置は、第1実施形態における顕微鏡制御部80および情報処理装置90と同様である。上述の第1実施形態と同様の構成については、適宜、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
【0084】
第4実施形態では、マスク27において変更するマスクパターンが第1~第3実施形態で用いるものとは異なる。そして、マスクパターンを変更したときに対物レンズ30を含む光学系のフォーカス位置のずれが、z方向へ生じるのではなくxy方向へ生じるようにし、このxy方向へのフォーカス位置のずれ量に基づき試料屈折率を算出する。第4実施形態で用いるマスクパターンの例として、図23には、マスクパターンMP3,MP4を示している。マスクパターンMP3は、半円環状の光通過領域(白色で示す領域)がx方向負の側に配置され、半円板状の光透過領域(白色で示す領域)がx方向正の側に配置されている。マスクパターンMP4は、マスクパターンMP3とはx方向に対称的に、半円環状の光通過領域がx方向正の側に配置され、半円板状の光透過領域がx方向負の側に配置されている。
【0085】
図24には、球面収差を有する波面W(x,y)の形状と、波面W(x,y)をx方向に微分したときの形状(波面微分ΔW(x,y)と称する)を模式的に表している。波面W(x,y)の図において、例えば、濃度が低い(明るい)領域は紙面手前側に凸の領域となり、濃度が高い(暗い)領域は紙面手前側に凹の領域となる。また、波面微分ΔW(x,y)の図において、例えば、濃度が低い(明るい)領域はx方向への傾きが正(+)の領域となり、濃度が高い(暗い)領域はx方向への傾きが負(-)の領域となる。波面W(x,y)がマスクパターンMP3に入射すると、波面微分ΔW(x,y)において傾きが負となる部分がマスクパターンMP3を通過し、傾きが正となる部分は遮光される。一方、波面W(x,y)がマスクパターンMP4に入射すると、波面微分ΔW(x,y)において傾きが正となる部分がマスクパターンMP4を通過し、傾きが負となる部分は遮光される。そのため、波面W(x,y)がマスクパターンMP3を通過したときと、マスクパターンMP4を通過したときとでは、波面W(x,y)全体のx方向の傾きが異なり、これによりx方向にフォーカス位置のずれが生じる。第4実施形態では、マスクパターンMP3のときと、マスクパターンMP4のときとのフォーカス位置のxy方向のずれ量を求め、そのxy方向のずれ量に基づき、試料屈折率を算出する。
【0086】
図25は、第4実施形態に係る試料屈折率測定方法を示すフローチャートである。この図25に基づき、第4実施形態に係る試料屈折率測定方法について説明する。まず、ステップST401において、試料屈折率nとL-ΔXY変化比mscとの関係を表す設定用データテーブルDB2(図26を参照)を予め作成しておく。L-ΔXY変化比mscとは、対物レンズz位置Lと、マスクパターンMP3,MP4を変更した際のxy方向のフォーカス位置のずれ量ΔXYとの比である。
【0087】
光学シミュレーションを行うことにより試料屈折率とL-ΔXY変化比mscとの関係を求めることが可能である。具体的には、試料屈折率、浸液屈折率、カバーガラスの厚み、光学系の収差、試料中の観察深さを設定し、例えば、PSF(点像分布関数)のストレール比を最大とする対物レンズのz位置Lとxy位置(X,Y)を求める。例えば、光路中にいずれのマスクパターンも設置されていない状態で前記ストレール比を最大とする対物レンズz位置をLT0、光路中にマスクパターンMP3を設置した状態で前記ストレール比を最大とする対物レンズのz位置をLT1、xy位置を(XT1,YT1)、光路中にマスクパターンMP4を配置した状態で前記ストレール比を最大とする対物レンズのz位置をLT2、xy位置を(XT2,YT2)とする。この場合、マスクパターンMP3,MP4を切り替えた際のxy方向のフォーカス位置のずれ量ΔXYは、下記の式(6)で求められる。
【0088】
【数6】
【0089】
例えば、複数の観察深さにおいて、対物レンズz位置LT0とxy方向のフォーカス位置のずれ量ΔXYとを求め、LT0とΔXYとの対応点をプロットした散布図を作成する。そして作成した散布図におけるプロットを例えば直線でフィッティングし、この直線の傾きを、L-ΔXY変化比mscとして求める。複数の試料屈折率を設定し、それぞれの試料屈折率に応じてL-ΔXY変化比mscを求めることで、設定用データテーブルDB2を作成することが可能である。作成した設定用データテーブルDB2は記憶部92で保持する。なお、データテーブルは複数の波長や温度等の条件ごとに作成し保持しておき、観察条件に応じて使い分けてもよい。
【0090】
ステップST402~ST403においては、第1実施形態におけるステップST102~ステップST103と同様の処理が行われる。ステップST404において、マスク27におけるマスクパターンをマスクパターンMP3に設定する。ステップST405において、ステップST403で選択したxy方向のフォーカス位置のずれ量算出z位置Lcにおける試料画像を撮影する。
【0091】
ステップST406において、マスク27におけるマスクパターンをマスクパターンMP4に設定する。ステップST407において、ステップST403で選択したフォーカス位置ずれ量算出z位置Lcにおける試料画像を撮影する。第1実施形態とは異なり、2つ目のマスクパターンMP4に設定した状態においてzスタック画像を撮影する必要はなく、試料画像を1枚撮影するだけでもよい。
【0092】
ステップST408において、ステップST405で撮影した画像とステップST407で撮影した画像から画像のxy方向のずれ量を算出する。例えば、ステップST405で撮影した画像と、ステップST407で撮影した画像間の相互相関関数を計算する。相互相関関数がピーク値となるxy位置に基づき画像のずれ量を算出し、この画像のずれ量に基づきxy方向のフォーカス位置のずれ量ΔXYを求める。この際、相互相関関数の補間または関数近似を行い、サブピクセルでのずれ量を算出してもよい。算出したxy方向のフォーカス位置のずれ量ΔXYは、ステップST103で選択したz位置Lcと共に記憶部92に保持する。
【0093】
ステップST409において、ステップST402で設定した全ての対物レンズz位置についてxy方向のフォーカス位置のずれ量ΔXYを算出したかどうか判断する。全てに対して算出済みでない場合(ステップST409:No)、はステップST403へ戻り、対物レンズz位置を次の位置へ移動させる。全てに対して算出済みの場合(ステップST409:Yes)はステップST410に進む。
【0094】
ステップST410において、試料屈折率値を算出する。この試料屈折率値の算出は、例えば、次のように行う。まず、図27に示すように、ステップST402で設定した各対物レンズz位置Lと、それぞれの対物レンズz位置Lにおいて算出したxy方向のフォーカス位置のずれ量ΔXYとの対応点をプロットした散布図を作成する。そして、作成した散布図のプロットを1本の直線fΔXYTEでフィッティングし、その直線fΔXYTEの傾きmscEを算出する。この算出した傾きmscEをステップST401で作成しておいた設定用データテーブルDB2(図26を参照)と照らし合わせることで、試料屈折率を求める。例えば、算出した傾きmscEと最も値が近い設定用データテーブルDB2上のL-ΔXY変化比mscを選択し、その選択したL-ΔXY変化比mscに対応する屈折率nの値を試料屈折率としてもよい。また、例えば設定用データテーブルDB2上の屈折率nとL-ΔXY変化比mscとの関係を補間し、算出した傾きmscEに対応する屈折率を算出してもよい。
【0095】
ステップST411において、ステップST410で算出した試料屈折率を表示部95に表示されるGUI上に表示することでユーザーに提示する。なお、第1~第3実施形態においても、本実施形態と同様のマスクパターンMP3,MP4を用い、対物レンズ30,30Aを含む光学系のz方向のフォーカス位置のずれ量に代えて、xy方向のフォーカス位置のずれ量(撮影した試料画像のXY方向の位置ずれ量)に基づいて試料屈折率を算出してもよい。また、マスクパターンを切り替えたときのz方向のフォーカス位置のずれ量とxy方向のフォーカス位置のずれ量の両方の情報に基づいて試料屈折率を算出してもよい。
【0096】
第4実施形態によれば、複数の対物レンズz位置でマスクパターンMP3,MP4を変更した際に生じるxy方向のフォーカス位置のずれ量に基づき試料屈折率を求めることができる。また、求めた試料屈折率は、顕微鏡装置1における装置パラメータを最適化するために利用することができる。
【0097】
[第5実施形態]
第5実施形態について説明する。第5実施形態に係る顕微鏡装置は、第1実施形態に係る顕微鏡装置1と同様であり、顕微鏡制御部および情報処理装置は、第1実施形態における顕微鏡制御部80および情報処理装置90と同様である。上述の第1実施形態と同様の構成については、適宜、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
【0098】
第5実施形態では、2つのマスクパターンMP1,MP2のそれぞれを光路上に設定して試料TPのzスタック画像を撮影し、撮影された2つのzスタック画像(マスクパターンMP1のときのzスタック画像とマスクパターンMP2のときのzスタック画像)間のz方向の相対的な倍率(縮尺の違い)に基づき試料屈折率を測定する。2つのzスタック画像間のz方向の倍率は試料屈折率に応じて変わるため、その倍率から試料屈折率を算出することができる。
【0099】
図28は、第5実施形態に係る試料屈折率測定方法を示すフローチャートである。この図28に基づき、第5実施形態に係る試料屈折率測定方法について説明する。まず、ステップST501において、試料屈折率nと、2つのzスタック画像間のz方向の倍率βzとの関係を表す設定用データテーブルDB4(図29を参照)を予め作成しておく。光学シミュレーションを行うことにより試料屈折率nと倍率βzとの関係を求めることが可能である。
【0100】
具体的には、試料屈折率、浸液屈折率、カバーガラスの厚み、光学系の収差、試料中の観察深さを設定し、例えば、PSF(点像分布関数)のストレール比を最大とする対物レンズのz位置Lを求める。光路中にマスクパターンMP1を設置した状態で前記ストレール比を最大とする対物レンズのz位置をLT1、光路中にマスクパターンMP2を設置した状態で前記ストレール比を最大とする対物レンズのz位置をLT2とする。複数の観察深さでLT1とLT2を求め、横軸をLT1、縦軸をLT2とした散布図を作成する。そしてこの散布図を例えば直線でフィッティングし、この直線の傾きを、z方向の倍率βzとして求める。複数の試料屈折率を設定してそれぞれ倍率βzを求めることで、試料屈折率nと倍率βzの関係を示す設定用データテーブルDB4を作成することが可能である。作成した設定用データテーブルDB4は記憶部92で保持する。なお、データテーブルは複数の波長や温度の条件ごとに作成し保持しておき、観察条件に応じて使い分けてもよい。
【0101】
ステップST502において、ユーザーは図9に示すようなGUIを利用して試料画像TIを見ながら、zスタック画像を取得する観察領域ROIのxy方向位置(x方向位置およびy方向位置)、およびzスタック画像を取得する対物レンズz位置の可動範囲を決定し、GUIを利用して入力欄に入力する。本実施形態では第1実施形態で入力したフォーカス位置ずれ量算出z位置の代わりに、zスタック上端とzスタック下端の2つの対物レンズz位置を入力する。ユーザーがGUI上で開始ボタンを操作することで、ステップST503以降のステップへ進む。
【0102】
ステップST503において、マスク27におけるマスクパターンをマスクパターンMP1に設定する。ステップST504において、ステップST502で設定したxy位置と対物レンズz位置の可動範囲(zスタック上端とzスタック下端)に基づいて試料TPのzスタック画像(本発明に係る第1の画像に相当する)を取得する。
【0103】
ステップST505において、マスク27におけるマスクパターンをマスクパターンMP2に設定する。ステップST506において、ステップST504と同様に、試料TPのzスタック画像(本発明に係る第2の画像に相当する)を取得する。
【0104】
ステップST507において、ステップST504で取得したマスクパターンMP1のときのzスタック画像と、ステップST506で取得したマスクパターンMP2のときのzスタック画像との間のz方向の倍率βzを求める。z方向の倍率βzは、例えば、以下の方法で求めることが可能である。まず、マスクパターンMP1のときのzスタック画像に基づき、マスクパターンMP1のときのxz断面画像ZS1を作成するとともに、マスクパターンMP2のときのzスタック画像に基づき、マスクパターンMP2のときのxz断面画像ZS2を作成する(図30を参照)。そして、xz断面画像ZS1をz方向に縮小または拡大した上で、xz断面画像ZS2との画像相関値を計算し、最も相関値が高くなるときの拡大倍率または縮小倍率をz方向の倍率βzとして求める。
【0105】
また、z方向の倍率βzは、例えば、以下の方法で求めることも可能である。まず、マスクパターンMP1のときのzスタック画像から、マスクパターンMP1のときの任意の2つのz方向位置(z1_1、z1_2とする)のxy断面画像を抽出する。また、マスクパターンMP2のときのzスタック画像から、マスクパターンMP2のときの全てのz方向位置でのxy断面画像を抽出する。そして、マスクパターンMP1のときの2つのxy断面画像が、マスクパターンMP2のときのどのz方向位置でのxy断面画像と相関値が高くなるのかに基づき、z方向の倍率βzを求めることができる。具体的には、マスクパターンMP1のときの2つのxy断面画像それぞれと、マスクパターンMP2のときの全てのz方向位置でのxy断面画像との画像相関値を計算する。マスクパターンMP1のときのz方向位置z1_1でのxy断面画像と最も相関値が高いマスクパターンMP2のときのxy断面画像z方向位置をz2_1、マスクパターンMP1のときのz方向位置z1_2でのxy断面画像と最も相関値が高いマスクパターンMP2のときのxy断面画像z方向位置をz2_2とすると、倍率βzは、下記の式(7)を用いて求められる。
【0106】
【数7】
【0107】
ステップST508において、ステップST507で求めた倍率βzをステップST501であらかじめ作成しておいた設定用データテーブルDB4と照らし合わせることで、試料屈折率を求める。例えば、ステップST507で求めた倍率βzと最も近い設定用データテーブルDB4上の倍率βzに対応する屈折率nの値を試料屈折率としてもよい。また、例えば設定用データテーブルDB4上の屈折率nと倍率βzとの関係を補間し、ステップST507で求めた倍率βzに対応する屈折率を算出してもよい。
【0108】
ステップST509において、ステップST508で算出した試料屈折率を表示部95に表示されるGUI上に表示することでユーザーに提示する。算出した試料屈折率値は記憶部92に保持しておき、別の処理に用いてもよい。なお、本実施形態において、複数の深さ領域ごとにz方向の倍率βzを算出し、各深さ領域の試料屈折率を算出してもよい。
【0109】
第5実施形態によれば、マスクパターンMP1,MP2を変更して撮影されたzスタック画像間の倍率に基づき試料屈折率を求めることができる。求めた試料屈折率は、顕微鏡装置1における装置パラメータを最適化するために使用することができる。
【0110】
[第6実施形態]
第6実施形態について説明する。第6実施形態に係る顕微鏡装置は、第2実施形態に係る顕微鏡装置1Aと同様であり、顕微鏡制御部および情報処理装置は、第2実施形態における顕微鏡制御部80Aおよび情報処理装置90と同様である。上述の第2実施形態と同様の構成については、適宜、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
【0111】
第6実施形態では、第3実施形態に係る試料屈折率測定方法により求めることができる深さ領域ごとの複数の試料屈折率を利用して、深さ領域ごとに補正環位置を最適な状態に設定し、試料TPのzスタック画像の撮影を行う。以降、或る観察深さにおける補正環32の最適位置をCPと称し、最適な対物レンズz位置をLPと称することがある。第6実施形態では、まず、或る1つの観察深さdの位置に対物レンズ30Aを含む光学系のフォーカス位置があるときの、対物レンズ30Aのz位置Lを求める。次に、当該観察深さdにおける補正環32の最適補正環位置CPおよび対物レンズ30Aの最適対物レンズ位置LPを実験的に求める。そして、他の観察深さdにおける補正環32の最適補正環位置CPおよび対物レンズ30Aの最適対物レンズ位置LPを、第3実施形態で求めた深さ領域ごとの複数の試料屈折率および、試料屈折率の境界位置に対物レンズ30Aを含む光学系のフォーカス位置があるときの複数の対物レンズz位置に基づいて求める。
【0112】
第6実施形態において、情報処理装置90の記憶部92は、図31に示す設定用データテーブルDB3を記憶する。この設定用データテーブルDB3は、図31に示すように、試料TPの屈折率nと、CP-d変化比mCPと、LP-d変化比mLPと、L’-d変化比mL’との関係を示すデータテーブルである(L’の詳細については後述する)。
【0113】
ここで、CP-d変化比mCPとは、観察深さdの変化量と、観察深さdの変化に伴う補正環32の最適補正環位置CPの変化量との比である。例えば、図32(A)に示すように、試料の屈折率がnの場合における観察深さdと最適補正環位置CPとの関係は直線fCPn1で表すことができる。試料TPの屈折率がnの場合における観察深さdと最適補正環位置CPとの関係は直線fCPn2で表すことができる。このとき、試料TPの屈折率がnの場合におけるCP-d変化比mCPは、直線fCPn1の傾きとして求まる。試料TPの屈折率がnの場合におけるCP-d変化比mCPは、直線fCPn1の傾きとは異なる直線fCPn2の傾きとして求まる。
【0114】
LP-d変化比mLPとは、観察深さdの変化量と、観察深さdの変化に伴う対物レンズ30Aの最適対物レンズz位置LPの変化量との比である。対物レンズ30Aの最適対物レンズ位置LPとは、補正環32の回転に伴う焦点PFの位置の変位を補正した対物レンズ30Aの最適な位置である(図33を参照)。例えば、図32(B)に示すように、試料の屈折率がn1の場合における観察深さdと最適対物レンズz位置LPとの関係は直線fLPn1で表すことができる。試料TPの屈折率がn2の場合における観察深さdと最適対物レンズ位置LPとの関係は直線fLPn2で表すことができる。このとき、試料TPの屈折率がnの場合におけるLP-d変化比mLPは、直線fLPn1の傾きとして求まる。試料TPの屈折率nがnの場合におけるLP-d変化比mLPは、直線fLPn1の傾きとは異なる直線fLPn2の傾きとして求まる。
【0115】
L’-d変化比mL’とは、観察深さdの変化量と、観察深さdの変化に伴う対物レンズ30Aの位置L’の変化量との比である。対物レンズ30Aの位置L’とは、補正環の回転位置Cが一定であると仮定した場合における、対物レンズ30Aの焦点PFが観察深さdの位置にあるときの対物レンズ30Aのz位置である。例えば、図32(C)に示すように、試料TPの屈折率がnの場合における観察深さdと対物レンズ30Aのz位置L’との関係は直線fL’n1で表すことができる。試料TPの屈折率がnの場合における観察深さdと対物レンズ30Aのz位置L’との関係は直線fL’n2で表すことができる。このとき、試料TPの屈折率がnの場合におけるL’-d変化比mL’は、直線fL’n1の傾きとして求まる。試料TPの屈折率nがnの場合におけるL’-d変化比mL’は、直線fL’n1の傾きとは異なる直線fL’n2の傾きとして求まる。
【0116】
なお、図33に示すように、観察深さがdから観察深さdi+1まで変位する際、補正環32の回転位置をCPからCPi+1まで変位させる場合には、対物レンズ30Aの位置をLPからLPi+1まで変位させるものとする。図34に示すように、観察深さがdから観察深さdi+1まで変位する際、補正環32の回転位置を一定の位置(C=CCST)に固定する場合には、対物レンズ30Aの位置をL’からL’i+1まで変位させるものとする。補正環32の回転位置が変位する場合の対物レンズ30Aの変位量(Li+1-L)は、補正環32の回転位置が一定である場合の対物レンズ30Aの変位量(L’i+1-L’)とは異なる。
【0117】
図35は、第6実施形態に係る試料屈折率測定方法を示すフローチャートである。この図35に基づき、第6実施形態に係る試料屈折率測定方法および試料画像の取得方法について説明する。まず、ステップST601において、設定用データテーブルDB3(本発明に係る第4の情報に相当する)を作成する。予め、光学シミュレーションを行うことにより、複数の屈折率について、CP-d変化比mCP、LP-d変化比mLP、およびL’-d変化比mL’を求めることで、設定用データテーブルDB3を作成することが可能である。具体的には、光学シミュレーションを行うことによりCP-d変化比mCPおよびLP-d変化比mLPを求める。このときまず、或る試料TP中の観察深さdにおいて、補正環32の回転位置Cと対物レンズ30Aの位置Lとの2次元のパラメータ空間内で、結像状態が最良となる補正環32の回転位置Cおよび対物レンズ30Aの位置Lを求める。具体的には、試料屈折率、カバーガラスの厚み、試料TP中の観察深さdなどを設定し、結像状態が最良となる補正環32の回転位置(最適補正環位置CP)および対物レンズ30Aの位置(最適対物レンズ位置LP)を求める。結像状態を表す指標として、PSF(点像分布関数)のストレール比を用いることができる。
【0118】
次に、複数の観察深さdについて補正環32の最適補正環位置CPを求めることで、各観察深さdと補正環32の最適補正環位置CPとの対応点をプロットした散布図を作成する。そして、作成した散布図のプロットを例えば直線でフィッティングし、CP-d変化比mCPを求める。また、複数の観察深さdについて対物レンズ30Aの最適対物レンズz位置LPを求めることで、各観察深さdと対物レンズ30Aの最適対物レンズz位置LPとの対応点をプロットした散布図を作成する。そして、作成した散布図のプロットを例えば直線でフィッティングし、LP-d変化比mLPを求める。
【0119】
続いて、光学シミュレーションを行うことによりL’-d変化比mL’を求める。このときまず、試料屈折率、浸液屈折率、カバーガラスの厚み、試料TP中の観察深さdなどを設定し、補正環32を任意の固定回転位置CCSTで固定し、対物レンズz位置Lについての1次元のパラメータで、結像状態が最良となる対物レンズz位置L’を求める。結像状態を表す指標として、PSF(点像分布関数)のストレール比を用いることができる。次に、複数の観察深さdについて対物レンズz位置L’を求めることで、各観察深さdと対物レンズz位置L’との対応点をプロットした散布図を作成する。そして、作成した散布図のプロットを例えば直線でフィッティングし、L’-d変化比mL’を求める。補正環32の任意の固定回転位置CCSTには、例えば、ユーザーが最も高い頻度で観察を行うと予想される試料TP中の観察深さdにおける、補正環の最適な回転位置が用いられてもよい。複数の試料屈折率を設定してCP-d変化比mCP、LP-d変化比mLP、L’-d変化比mL’を求めることで、試料屈折率毎にCP-d変化比mCP、LP-d変化比mLP、L’-d変化比mL’を求める。作成した設定用データテーブルDB3は記憶部92に保持しておく。
【0120】
ステップST602において、試料TPの観察深さdに応じて異なるM個の試料屈折率値n,n,…,nM-1および、屈折率が変化する境界面に対物レンズ30Aの焦点があるときのM-1個の対物レンズz位置Lk,Lk,…,LkM-2を求める。ステップST602では、第3実施形態におけるステップST301~ST310と同様の処理が行われる(図20を参照)。
【0121】
ステップST603において、補正環32の最適補正環位置CPおよび対物レンズ30Aの最適対物レンズ位置LPを実験的に求める観察深さdおよび観察領域ROIの位置を設定する。ユーザーは、図9に示すように表示部95に表示されるGUIを利用して、試料画像TIを見ながら、対物レンズz位置Lを入力する操作を入力部94に対して行い、観察深さdを設定する。また、ユーザーは、表示部95に表示されるGUIを利用して、試料画像TIを見ながら、観察領域ROI(ステージ11)のx方向位置およびy方向位置を入力する操作を入力部94に対して行い、観察領域ROIを設定する。ユーザーが、対物レンズz位置Lを入力する操作や、観察領域ROI(ステージ11)のx方向位置およびy方向位置を入力する操作を入力部94に対して行うと、入力部94は、これらの操作に対応する入力データを、演算装置91を介して共焦点顕微鏡10Aの顕微鏡制御部80Aへ出力する。
【0122】
図36は、対物レンズ30Aの焦点PFが、補正環32の最適補正環位置CPを実験的に求める観察深さdの位置にある状態を示す。図9を用いて説明したように、ユーザーは、補正環32の最適補正環位置CPを実験的に求める観察深さdが実際にはわからないため、観察深さdは、対物レンズ30Aの焦点PFがこの観察深さdの位置にあるときの対物レンズz位置Lにより設定される。なお、観察深さdのときの値を0とする相対的な観察深さを、相対観察深さdrと称することがある。補正環32の最適補正環位置CPを実験的に求める、対物レンズz位置Lおよび、観察領域ROI(ステージ11)のx方向位置およびy方向位置は、手動に限らず、画像の信号強度(輝度値)やコントラストが高いこと等を条件として自動的に設定されるようにしてもよい。設定した対物レンズz位置Lは記憶部92に保持する。以下の説明では対物レンズz位置Lが、ステップST602で求めた、屈折率が変化する境界面に対物レンズ30Aの焦点PFがあるときのM-1個の対物レンズz位置Lk,Lk,…,LkM-2からユーザーが予め任意に選択した場合を記述する。なお、対物レンズz位置Lが、Lkより大きい値を選択してもよい。
【0123】
ステップST604において、ユーザーが図9に示すGUI上で補正環調整「開始」を選択する操作を入力部94に対して行うと入力部94は、この操作に対応する入力データを、情報処理装置90の演算装置91を介して共焦点顕微鏡10Aの顕微鏡制御部80Aへ出力する。そして、ステップST603で設定した観察深さd(対物レンズz位置L)および観察領域ROIにおいて、補正環32の最適補正環位置CP(本発明に係る第5の情報に相当する)と最適対物レンズz位置LPとを求める処理が開始される。最適補正環位置CPと最適対物レンズz位置LPは、第2実施形態におけるステップST204と同様の補正環位置自動調整処理(図18を参照)を行い求める。求めた最適補正環位置CPと最適対物レンズz位置LPは、それぞれ記憶部92に保持する。
【0124】
ステップST605において、画像取得パラメータ、画像取得範囲の入力を行う。図34に示すように、ユーザーは、表示部95に表示されるGUI(設定入力画面)を利用して、画像取得パラメータを入力する操作を入力部94に対して行う。画像取得パラメータを入力する操作として、レーザーパワー(光源のパワー)、スキャンピッチ(スキャナ24により走査される試料TPにおける走査点の間隔)、スキャン点数(スキャナ24により走査される試料TPにおける走査点の数)を入力する操作が行われる。ユーザーは、表示部95に表示されるGUIを利用して、画像取得範囲を入力する操作を入力部94に対して行う。画像取得範囲を入力する操作として、試料のzスタック画像の取得枚数N、対物レンズの上端位置LTP、対物レンズの下端位置LBMを入力する操作が行われる。以下の説明では、ステップST602で求めた、屈折率が変化する境界面に対物レンズ30Aの焦点PFがあるときのM-1個の対物レンズz位置Lk,Lk,…,LkM-2のうち、最も小さい対物レンズz位置LkよりもLBMが小さく(LBM<Lk)、最も大きい対物レンズz位置LkM-2よりもLTPが大きい(LkM-2<LTP)場合を記述する。なお、LBMがLkより大きい値を選択してもよい。
【0125】
ユーザーが、画像取得パラメータを入力する操作、画像取得範囲を入力する操作を入力部94に対して行うと、これらの操作に対応する入力データを、情報処理装置90の演算装置91は記憶部92へ保存する。なお、zスタック画像は、対物レンズの上端位置LTPが設定されたときの対物レンズ30Aの焦点PFの位置から、対物レンズ30Aの下端位置LBMが設定されたときの対物レンズ30Aの焦点PFの位置までの間で取得される。
【0126】
ステップST606において、演算装置91は記憶部92に保持された設定用データテーブルDB3と、ステップST602で求めて記憶部92に保持したM個の試料屈折率値n,n,…,nM-1および、屈折率が変化する境界面に対物レンズ30Aの焦点PFがあるときのM-1個の対物レンズz位置Lk,Lk,…,LkM-2と、ステップST603で設定し記憶部92に保持された対物レンズz位置Lと、ステップST604で実験的に求め記憶部92に保持された補正環32の最適補正環位置CPと最適対物レンズz位置LPsと、ステップST605でユーザーにより入力され記憶部92に保持された試料TPのzスタック画像の取得枚数N、対物レンズ30Aの上端位置LTPおよび、対物レンズ30Aの下端位置LBMとに基づいて、共焦点顕微鏡10Aの設定に関するパラメータリストLS1を作成する(図38を参照)。パラメータリストLS1は、図38に示すように、試料TPのzスタック画像を取得する際の、相対観察深さdrと、補正環32の最適補正環位置CPと、対物レンズ30Aの最適対物レンズ位置LPとの関係を示すリストである。
【0127】
パラメータリストを作成するには、まず、ステップST601で作成した設定用データテーブルDB3に基づいて、ステップST602で求めたM個の試料屈折率値n,n,…,nM-1に対応する、CP-d変化比mCP0,mCP1,…,mCPM-1、LP-d変化比mLP0,mLP1,…,mLPM-1、およびL’-d変化比mL’0,mL’1,…,mL’M-1を求める。屈折率n,n,…,nM-1と合致する屈折率の値が、設定用データテーブルにない場合、設定用データテーブルにおける屈折率の近傍の屈折率の値に対して補間を行うことで、CP-d変化比mCP0,mCP1,…,mCPM-1、LP-d変化比mLP0,mLP1,…,mLPM-1、およびL’-d変化比mL’0,mL’1,…,mL’M-1を求めるようにしてもよい。
【0128】
続いて求めたM個のL’-d変化比mL’0,mL’1,…,mL’M-1と下記の式(7),(8)に基づいて、屈折率が変化する境界面に対物レンズ30Aの焦点PFがあるときのM-1個の対物レンズz位置Lk,Lk,…,LkM-2を、それぞれ対応する試料TP中の相対観察深さdrk,drk,…,drkM-1に変換する。以下の式(8),(9)では、補正環位置を固定した状態で得た対物レンズz位置をmL’i(i=0,1,…,N-1)で割ることで、対物レンズz位置を試料TP中の深さに変換することが可能である。
【0129】
【数8】
【0130】
続いて、試料TPのzスタック画像を取得する際の、相対観察深さの下端深さdrBMおよび相対観察深さの上端深さdrTPを下記の式(10),(11)から求める。なお、下記の式(10),(11)においてLPを減算する理由は、ステップST605のパラメータ設定が、補正環位置がCPにある状態で実行されるため、対物レンズz位置がLPのとき、対物レンズの焦点PFは相対観察深さdr=0にあるためである。
【0131】
【数9】
【0132】
次に、試料TPのzスタック画像を取得する際に変化させる相対観察深さdrを求める。ここで、jは、1~N(試料TPのzスタック画像の取得枚数N)までの整数である。相対観察深さdr(j番目に取得される画像の相対観察深さ位置)は、下記の式(12)を用いて求められる。下記の式(12)では、j番目の相対観察深さを求めるため、相対観察深さの下端深さdrBMに、zスタック画像の取得ステップ幅と画像取得インデックス(j-1)とを掛けたものを加える。
【0133】
【数10】
【0134】
次に、各相対観察深さdrjに対応する補正環32の最適補正環位置CPjおよび対物レンズ30Aの最適対物レンズz位置LPjを求める(図39の関係に基づく)。補正環32の最適補正環位置CPjは、下記の式(13)~(15)を用いて求められる。下記の式(13)~(15)を用いる理由は、相対観察深さdrjとその深さでの補正環32の最適補正環位置CPとの関係が、相対観察深さdrjにおける試料屈折率njに対応するCP-d変化比mCPjで決まるためである。
【0135】
【数11】
【0136】
対物レンズ30Aの最適対物レンズ位置LPは、下記の式(16)~(18)を用いて求められる。
【0137】
【数12】
【0138】
そして、上記の式(12)~(18)を用いて求めた、相対観察深さdrと、補正環32の最適補正環位置CPと、対物レンズ30Aの最適対物レンズ位置LPとの関係を示すリスト(本発明に係る第6の情報に相当する)を作成する。これにより、図38に示すようなパラメータリストLS1を作成することができる。
【0139】
ステップST607において、顕微鏡制御部80Aは、ステップST606で作成したパラメータリストLS1に従って、補正環32の最適補正環位置CPと、対物レンズ30Aの最適対物レンズz位置LPとを変化させることにより、試料TPのzスタック画像を取得する。
【0140】
第6実施形態によれば、試料TPのzスタック画像を取得する際、z方向(対物レンズ30Aの光軸方向)の位置が異なる試料TPの断面の画像を取得する毎に、パラメータリストLS1に従って、補正環32の最適補正環位置CPと、対物レンズ30Aの最適対物レンズz位置LPとを変化させることができる。そのため、z方向(対物レンズ30Aの光軸方向)の位置が異なる試料TPの断面の画像を取得する毎に、最適な収差補正を行うことができる。
【0141】
なお例えば、実際に試料TPのzスタック画像を取得するときのカバーガラスCGの厚みは、設定用データテーブルDB3を作成する際に光学シミュレーションで設定したカバーガラスCGの厚みと異なっている場合がある。第6実施形態では、光学シミュレーションを行うことにより作成した設定用データテーブルDB3と、或る一つの観察深さdで実験的に求めた補正環32の最適補正環位置CPおよび対物レンズ30Aの最適位置LPを用いることにより、他の観察深さ位置での補正環32の最適補正環位置CPおよび対物レンズ30Aの最適位置LPを算出するので、補正環32の最適補正環位置CPおよび対物レンズ30Aの最適位置LPを、光学シミュレーションだけを用いて算出する場合よりも精度よく算出することができる。
【0142】
[第7実施形態]
第7実施形態について説明する。図40は、第7実施形態に係る顕微鏡装置2の構成を示す図である。この顕微鏡装置2は、落射蛍光顕微鏡110と、情報処理装置190とを主体に構成される。落射蛍光顕微鏡110と情報処理装置190とは、互いにデータの送受信が可能に構成されている。以降の説明において、落射蛍光顕微鏡110の対物レンズ130の光軸方向に延びる座標軸をz軸とする。また、このz軸と垂直な面内において互いに直交する方向に延びる座標軸をそれぞれx軸およびy軸とする。
【0143】
落射蛍光顕微鏡110は、ステージ111と、光源117と、照明光学系120と、検出光学系140と、撮像素子151と、顕微鏡制御部180とを備える。ステージ111は、中央に開口部を有する板状に形成され、観察対象である試料TPが載置されたカバーガラスCGを支持する。ステージ111には、ステージ駆動部112が設けられる。ステージ駆動部112は、ステージ111をz軸(対物レンズ130の光軸AX)と垂直な面内で移動させる。なお、ステージ駆動部112は、ステージ111をz軸(対物レンズ130の光軸AX)に沿って移動させてもよい。
【0144】
光源117は、試料TPに含まれる蛍光物質を励起するための励起光を射出させる。光源117として、例えば、水銀ランプやLED等が用いられる。
【0145】
照明光学系120は、光源117から射出された励起光で試料TPを照明する。照明光学系120は、光源117側から順に、照明用レンズ121と、励起フィルタ122と、レンズ123と、ダイクロイックミラー124と、マスク127と、対物レンズ130とを有する。照明用レンズ121は、光源117から射出された励起光を略平行光にするためのコレクタレンズである。励起フィルタ122は、光源117から射出した光のうち、所定の波長域の励起光が透過し、他の波長の光(例、外光、迷光)の少なくとも一部を遮る特性を有する。レンズ123は、励起フィルタ122からの略平行光を集束させながらダイクロイックミラー124に導く。ダイクロイックミラー124は、光源117から射出された励起光が反射し、ステージ111上の試料TPで発生した光のうち所定の波長帯の光(例えば、蛍光)が透過する特性を有する。マスク127(詳細後述)には、マスク切替部128が設けられる。
【0146】
対物レンズ130は、第1実施形態の対物レンズ30と同様の構成であり、ステージ111の開口部およびカバーガラスCGを介して、ステージ111上の試料TPと対向する。対物レンズ130とカバーガラスCGとの間隙部は、浸液で満たされるようになっているが、浸液に限らず、空気等の気体で満たされていてもよい。対物レンズ30には、対物z位置駆動部162が設けられる。対物z位置駆動部162は、第1実施形態の対物z位置駆動部62と同様の構成であり、レボルバ(不図示)とともに対物レンズ130をz方向に上下移動させる。
【0147】
検出光学系140は、試料TPで発生した蛍光を結像する。検出光学系140は、試料TP側から順に、対物レンズ130と、マスク127と、ダイクロイックミラー124と、蛍光フィルタ144と、結像レンズ145とを有する。蛍光フィルタ144は、試料TPからの光のうち所定の波長帯の光(例えば、蛍光)が透過する特性を有する。蛍光フィルタ144は、例えば、試料TPで反射した励起光、外光、迷光などの少なくとも一部を遮断する。結像レンズ145は、試料TPからの蛍光を結像する。
【0148】
撮像素子151は、検出光学系140を介して、試料TPで発生した蛍光を検出する検出部として機能する。撮像素子151として、例えば、CCDカメラやCMOSカメラ等が用いられる。撮像素子151は、撮像素子151に入射した光(蛍光)の光電変換を行い、光の検出信号として、その光の光量(明るさ)に対応するデータを生成する。撮像素子151は、生成したデータを顕微鏡制御部180の撮像素子制御部181(図41を参照)へ出力する。情報処理装置190の演算装置191(図41を参照)は、撮像素子151から入力された複数画素分のデータに基づき1つの画像データを生成し、RAMなどの記憶部192(図41を参照)に記憶させる。このようにして、演算装置191は、試料TPの画像を取得する。
【0149】
マスク127は、第1実施形態のマスク27と同様の構成であり、試料TPから発せられた蛍光の一部を透過させ一部を遮光する。マスク127は、検出光学系140における、試料TP中の1点から発せられた蛍光が略平行光となっている範囲内に配置される。なお、マスク127は照明光学系と検出光学系の共通光路に配置されてもよい。マスク切替部128は、第1実施形態のマスク切替部28と同様の構成であり、マスク127における光を透過させる領域と遮断する領域の大きさや形状、配置等に関するマスクパターンを変更する。
【0150】
図41は、第7実施形態に係る落射蛍光顕微鏡110の顕微鏡制御部180と情報処理装置190との間の電気的な接続を示すブロック図である。顕微鏡制御部180および情報処理装置190は、本発明に係る演算制御部を構成する。顕微鏡制御部180は、撮像素子制御部181、対物z位置制御部185、ステージ位置制御部186、およびマスク制御部187を有する。
【0151】
撮像素子制御部181は、撮像素子151と電気的に接続され撮像素子151を制御する。対物z位置制御部185は、対物z位置駆動部162と電気的に接続され対物z位置駆動部162を制御する。ステージ位置制御部186は、ステージ駆動部112と電気的に接続されステージ駆動部112を制御する。マスク制御部187は、マスク切替部128と電気的に接続されマスク切替部128を制御する。なお、マスクの切り替えは自動での切り替えに限らない。例えば、ユーザーが手動でマスクを挿脱してマスクパターンを変更してもよい。
【0152】
情報処理装置190は、演算装置191および記憶部192を有する。演算装置191は、顕微鏡制御部180の各制御部181,185~187と電気的に接続されている。演算装置91は、記憶部192に保持されている処理内容(プログラム)に従い処理を行い、接続されている各制御部181,185~187を制御する。記憶部192は、第1実施形態の記憶部と同様の構成であり、演算装置191が実行する処理内容や演算装置191から入力される各種データを記憶する。入力部194および表示部195は、それぞれ第1実施形態の入力部94および表示部95と同様の構成および機能を有する。情報処理装置190の演算装置191は、落射蛍光顕微鏡110の操作に必要なGUIや、落射蛍光顕微鏡110の顕微鏡制御部180から出力された試料TPの画像、算出した試料屈折率を表示部195に表示させる。
【0153】
次に、第7実施形態に係る試料屈折率測定方法について説明する。検出光学系に収差があるとき、マスクパターンを変更することで、検出光の結像位置のみが変化する。以後、検出光の結像位置を、「フォーカス位置」と称する。第7実施形態に係る試料屈折率測定方法では、第1実施形態に係る試料屈折率測定方法と同様、複数の観察深さ位置(対物レンズz位置L)において、マスク127のマスクパターンを変更した際に生じる、対物レンズ130を含む光学系のz方向のフォーカス位置のずれ量を求め、求めたフォーカス位置のずれ量に基づき試料TPの屈折率を算出する。マスク127において変更するマスクパターンは、第1実施形態で用いたのと同様の2つのマスクパターンMP1,MP2である。第7実施形態に係る試料屈折率測定方法の具体的な手順は、第1実施形態に係る試料屈折率測定方法と同様であり(図6を参照)、その詳細な説明は省略する。第7実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0154】
[第8実施形態]
第8実施形態について説明する。図42は、第8実施形態に係る顕微鏡装置2Aの構成を示す図である。この顕微鏡装置2Aは、第7実施形態に係る顕微鏡装置2と類似した構成であり、上述の第7実施形態と同様の構成については、適宜、同じまたは類似の符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。顕微鏡装置2Aは、収差補正部160や顕微鏡制御部180Aを有する落射蛍光顕微鏡110Aを備えており、この点において、第7実施形態に係る顕微鏡装置2と相違している。
【0155】
収差補正部160は、第2実施形態の収差補正部60と同様の構成であり、対物レンズ130Aの先端からカバーガラスCGまでの距離、カバーガラスCGの厚み、及び試料中の観察深さなどに起因する球面収差を補正する。対物レンズ130Aは、第2実施形態の対物レンズ30Aと同様の構成であり、収差補正レンズ(不図示)と、補正環132とを有する。収差補正レンズは、対物レンズ130Aの光軸AXに沿って移動することで、対物レンズ130Aの球面収差を変化させることが可能である。補正環132は、対物レンズ130Aの鏡筒部に、対物レンズ130Aの光軸AXを中心に回転自在に設けられる。補正環132の回転に応じて、収差補正レンズが対物レンズ130Aの光軸AXに沿って移動する。
【0156】
収差補正部160は、対物レンズ130Aの収差補正レンズおよび補正環132と、撮像素子151とを含む。さらに、収差補正部160は、、補正環駆動部163と、対物z位置駆動部162とを含む。補正環駆動部163は、例えば電動モータ(図示せず)を用いて構成される。補正環駆動部163は、補正環132を回転駆動し、補正環132の回転位置Cを変化させ、収差補正レンズを対物レンズ130Aの光軸AXに沿って移動させる。補正環駆動部163は、補正環132の回転位置Cを変化させて、収差補正レンズの光軸上の位置を変化させることにより、対物レンズ130Aの球面収差を変化させる。対物z位置駆動部162は、第1実施形態に係る顕微鏡装置1のものと同様の構成および機能を有する。
【0157】
図43は、落射蛍光顕微鏡110Aの顕微鏡制御部180Aと情報処理装置190との間の電気的な接続を示すブロック図である。顕微鏡制御部180Aおよび情報処理装置190は、本発明に係る演算制御部を構成する。第8実施形態に係る顕微鏡制御部180Aは、第7実施形態に係る顕微鏡制御部180の構成に加えて補正環制御部188を備えており、この点において、第7実施形態に係る顕微鏡制御部180と相違している。補正環制御部188は、補正環駆動部163と電気的に接続され補正環駆動部163を制御する。
【0158】
次に、第8実施形態に係る試料屈折率測定方法について説明する。第8実施形態に係る試料屈折率測定方法では、第2実施形態に係る試料屈折率測定方法と同様、2つの対物レンズz位置を設定し、一方の対物レンズz位置で補正環132を最適位置に調整した上で、もう一方の対物レンズz位置でマスクパターンMP1,MP2を変更した際のフォーカス位置のずれ量を求め、求めたフォーカス位置のずれ量に基づき試料屈折率を算出する。第8実施形態に係る試料屈折率測定方法の具体的な手順は、第2実施形態に係る試料屈折率測定方法と同様であり(図16を参照)、その詳細な説明は省略する。第8実施形態によれば、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0159】
[第9実施形態]
第9実施形態について説明する。第9実施形態に係る顕微鏡装置は、第7実施形態に係る顕微鏡装置2と同様であり、顕微鏡制御部および情報処理装置は、第7実施形態における顕微鏡制御部180および情報処理装置190と同様である。上述の第7実施形態と同様の構成については、適宜、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
【0160】
次に、第9実施形態に係る試料屈折率測定方法について説明する。第9実施形態に係る試料屈折率測定方法では、第3実施形態に係る試料屈折率測定方法と同様、試料屈折率が試料TPの複数の深さ領域ごとに異なる場合において、深さ領域ごとの試料屈折率を算出する。第9実施形態に係る試料屈折率測定方法の具体的な手順は、第3実施形態に係る試料屈折率測定方法と同様であり(図20を参照)、その詳細な説明は省略する。第9実施形態によれば、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0161】
[第10実施形態]
第10実施形態について説明する。第10実施形態に係る顕微鏡装置は、第7実施形態に係る顕微鏡装置2と同様であり、顕微鏡制御部および情報処理装置は、第7実施形態における顕微鏡制御部180および情報処理装置190と同様である。上述の第7実施形態と同様の構成については、適宜、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
【0162】
次に、第10実施形態に係る試料屈折率測定方法について説明する。第10実施形態に係る試料屈折率測定方法では、マスク127において変更するマスクパターンを、第4実施形態に係る試料屈折率測定方法と同様のマスクパターンMP3,MP4(図23を参照)としている。そして、マスクパターンを変更したときに対物レンズ130を含む光学系のフォーカス位置の位置ずれが、z方向へ生じるのではなくxy方向へ生じるようにし、このxy方向へのフォーカス位置のずれ量に基づき試料屈折率を算出する。第10実施形態に係る試料屈折率測定方法の具体的な手順は、第4実施形態に係る試料屈折率測定方法と同様であり(図25を参照)、その詳細な説明は省略する。第10実施形態によれば、第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0163】
[第11実施形態]
第11実施形態について説明する。第11実施形態に係る顕微鏡装置は、第8実施形態に係る顕微鏡装置2Aと同様であり、顕微鏡制御部および情報処理装置は、第8実施形態における顕微鏡制御部180Aおよび情報処理装置190Aと同様である。上述の第8実施形態と同様の構成については、適宜、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
【0164】
次に、第11実施形態に係る試料屈折率測定方法について説明する。第11実施形態に係る試料屈折率測定方法では、第9実施形態に係る試料屈折率測定方法により求めることができる深さ領域ごとの複数の試料屈折率を利用して、深さ領域ごとに補正環位置を最適な状態に設定し、試料TPのzスタック画像の撮影を行う。第11実施形態に係る試料屈折率測定方法の具体的な手順は、第6実施形態に係る試料屈折率測定方法と同様であり(図32を参照)、その詳細な説明は省略する。第11実施形態によれば、第6実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0165】
[第12実施形態]
第12実施形態について説明する。第12実施形態に係る顕微鏡装置は、第7実施形態に係る顕微鏡装置2と同様であり、顕微鏡制御部および情報処理装置は、第7実施形態における顕微鏡制御部180および情報処理装置190と同様である。上述の第7実施形態と同様の構成については、適宜、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
【0166】
次に、第12実施形態に係る試料屈折率測定方法について説明する。第12実施形態に係る試料屈折率測定方法では、第5実施形態に係る試料屈折率測定方法と同様、2つのマスクパターンMP1,MP2のそれぞれを光路上に設定して試料TPのzスタック画像を撮影し、撮影された2つのzスタック画像間のz方向の倍率に基づき試料屈折率(観察深さによらず均一の屈折率とする)を測定する。第12実施形態に係る試料屈折率測定方法の具体的な手順は、第5実施形態に係る試料屈折率測定方法と同様であり(図37を参照)、その詳細な説明は省略する。第12実施形態によれば、第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0167】
上述の各実施形態において、画像取得パラメータ、および画像取得範囲は、ユーザーの入力操作によって設定されるが、これに限られるものではない。例えば、これらのデータのうち少なくともいずれかは、記憶部等に記憶された、以前に試料TPのzスタック画像を取得したときのデータを参照して、自動的に設定されるようにしてもよい。
【0168】
上述の各実施形態において、対物レンズ先端からカバーガラスCGまでの距離、カバーガラスCGの厚み、及び観察深さdなどに起因する収差、または、対物レンズ先端から試料TPまでの距離、及び観察深さdなどに起因する収差を補正する収差補正素子として、収差補正レンズが用いられているが、これに限られるものではない。例えば、収差補正素子として、液体レンズ、デフォーマブルミラーおよび液晶素子等の他の位相変調素子が用いられてもよい。液体レンズは、照明光学系または検出光学系または2つの光学系の共通部分、あるいは対物レンズ内部に配置され、レンズの形状を変化させることにより、収差を補正する。デフォーマブルミラーおよび液晶素子等の位相変調素子は、照明光学系または検出光学系または2つの光学系の共通部分に配置され、試料TPに対する照明光(励起光)および、試料TPからの検出光(蛍光)のうち、少なくとも一方の位相を変調することにより、収差を補正する。
【0169】
位相変調素子には、収差の補正量を変更もしくは調整することが可能な調整部が設けられる。例えば、液体レンズに設けられる調整部は、液体レンズに印加される電圧値を制御することで、レンズの形状を変化させる。これにより、液体レンズによる収差の補正量を変更もしくは調整することができる。デフォーマブルミラーに設けられる調整部は、デフォーマブルミラーに印加される電圧値を制御することで、ミラーの形状を変化させる。これにより、デフォーマブルミラーによる、収差の補正量を変更もしくは調整することができる。液晶素子に設けられる調整部は、液晶素子に印加される電圧値を制御することで、液晶の分布を変化させる。これにより、液晶素子による収差の補正量を変更もしくは調整することができる。なお、1つの液晶素子が、収差補正とマスクの両方の役割を担ってもよい。
【0170】
上述の各実施形態において、入力部および表示部は、情報処理装置と別体に設けられた装置であるが、これに限られるものではない。例えば、入力部は、情報処理装置と一体的に設けられた装置(例えば、内蔵型のタッチパッド等)であってもよい。入力部は、表示部と一体的に設けられた装置(例えば、タッチパネル)であってもよい。表示部は、情報処理装置と一体的に設けられた装置であってもよい。
【0171】
上述の各実施形態において、顕微鏡装置に共焦点顕微鏡または落射蛍光顕微鏡が設けられているが、これに限られるのではない。例えば、共焦点顕微鏡に代えて二光子励起顕微鏡を用いてもよい。その場合、ダイクロイックミラーを光路のスキャナと対物レンズの間に配置し、ピンホールおよびピンホール駆動部を取り除いてもよい。顕微鏡装置に設けられる顕微鏡は、微分干渉顕微鏡、位相差顕微鏡、、超解像顕微鏡、暗視野顕微鏡、熱レンズ顕微鏡等であってもよい。また、顕微鏡装置に設けられる顕微鏡は、倒立顕微鏡に限らず、正立顕微鏡であってもよい。
【符号の説明】
【0172】
1,1A,2,2A 顕微鏡装置
10,10A 共焦点顕微鏡
11,111 ステージ
20,120 照明光学系
30,30A,130,130A 対物レンズ
32,132 補正環
40,140 検出光学系
51 検出部
80,80A,180,180A 顕微鏡制御部
90,190 情報処理装置
110,110A 落射蛍光顕微鏡
151 撮像素子
TP 試料
MP1~MP4 マスクパターン
図1
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