(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】半導体装置の設計方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/50 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
H01L23/50 H
H01L23/50 K
(21)【出願番号】P 2019221870
(22)【出願日】2019-12-09
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177493
【氏名又は名称】長谷川 修
(72)【発明者】
【氏名】荒木 千明
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-012673(JP,A)
【文献】国際公開第2004/004005(WO,A1)
【文献】特開2006-013001(JP,A)
【文献】特開昭63-079358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リード端子の一方の端部に、幅方向の少なくとも一方に突出する凸部を備え、半導体素子と前記凸部を含む前記リード端子の一方の端部とを樹脂により封止し、前記リード端子の他方の端部が前記樹脂から露出する半導体装置の設計方法において、
前記凸部を有する第1のリード端子と別の第2のリード端子とを隣接配置し、前記第1のリード端子に対して前記他方の端部の延出方向に引張応力を加えた場合に該引張応力に前記第1のリード端子が耐えられないとき、
前記第1のリード端子の少なくとも前記第2のリード端子側の前記凸部の一部を切り欠き、この切り欠かれた領域を前記樹脂で置換することで、前記第1のリード端子と前記第2のリード端子との間に、前記引張応力に耐える体積の前記樹脂を配置することを特徴とする半導体装置の設計方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の設計方法において、
前記第2のリード端子が前記凸部を備え、前記凸部を有する前記第1のリード端子と前記凸部を有する前記第2のリード端子とをそれぞれの前記凸部が対向するように隣接配置し、前記第1のリード端子に対して前記他方の端部の延出方向に引張応力を加えた場合に該引張応力に前記第1のリード端子が耐えられないとき、
前記第1のリード端子の前記凸部の一部を切り欠くとともに、前記第2のリード端子の前記凸部の一部を切り欠き、前記第1のリード端子および前記第2のリード端子のそれぞれの切り欠かれた領域を前記樹脂で置換することで、前記第1のリード端子と前記第2のリード端子との間に、前記引張応力に耐える体積の前記樹脂を配置することを特徴とする半導体装置の設計方法。
【請求項3】
請求項1又は2いずれか記載の半導体装置の設計方法において、
前記凸部のC面取りにより、前記切り欠かれた領域を配置することを特徴とする半導体装置の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子とリード端子の一端とを樹脂で封止する構造の半導体装置であって、リード抜け等が発生しない半導体装置の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子とリード端子の一端とを樹脂で封止する構造の半導体装置は、通常次のように製造される。まず、
図7に示すようにリードフレーム1を用意し、ダイパッド2上に半導体素子3を実装する。
図7に示す例では、2個の半導体装置を形成するリードフレーム1を示しており、各ダイパッド2を取り囲むように両側に4本ずつリード端子4a~4dが配置されている。半導体素子3の電極と各リード端子4a~4dとは、金属ワイヤ等周知の方法で接続される。なお
図7において、5はリード端子4a~4dの端部に形成された凸部、6はリード端子4a~4d間等の連結部、7はリードフレーム1の枠体である。
【0003】
半導体素子3と、この半導体素子3との接続が形成されたリード端子4a~4dの端部は、
図8に示すように樹脂8によって封止される。
図8に示す例では、2個の半導体装置を樹脂8により一括封止した例を示している。樹脂8は、リードフレーム1の表面側のみに形成して裏面にリード端子4a~4dの裏面側を露出するように形成する場合や、リードフレーム1の表面および裏面に形成してリード端子4a~4dを表面および裏面から覆うように形成する場合がある。
【0004】
その後、
図9に示すようにリード端子4a~4d間の連結部6、ダイパッド2間の連結部6、リード端子4a~4dあるいはダイパッド2と枠体7との連結部6および樹脂8の一部を切断領域A1~A5に沿って格子状に切断して、個々の半導体装置に個片化する。この切断は、ダイシングソーを用いる方法や、ダイシングソーと切断金型を用いる方法により行われる。また、リード端子4a~4dは連結部6のみを切断除去した後、リード端子を所望の形状に加工して切断する場合もある。
【0005】
このような個片化工程において、リード端子4a~4dの延出方向に引張応力が加わる。さらに個片化後の基板への実装工程や実装後においても、リード端子4a~4dの延出方向に引張応力が加わる。そこで、この引張応力によるリード抜けを防止するため、リード端子4a~4dの先端部に、幅方向に突出し幅広となる凸部5を形成している。あるいは別の方法としては、例えば特許文献1にはリード端子の厚さ方向に突出するツノ部等を配置する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで半導体装置の小型化、薄型化が進むと、リードフレーム1の表面のみに樹脂8を形成し、裏面からリード端子4a~4dを露出させる構造としたり、樹脂8で封止されるリード端子4a~4dの面積が小さくなってきている。その結果、リード端子4a~4dに加わる引張応力により、樹脂の破断やリード抜けが発生しやすくなっている。特に
図9に示す凸部5を備えた構造のリード端子4a~4dは、凸部5から樹脂8に加わる応力により樹脂の破断やリード抜けが発生しやすくなるという問題があった。本発明はこのような実状に鑑み、樹脂の破断やリード抜けが生じない半導体装置の設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る発明は、リード端子の一方の端部に、幅方向の少なくとも一方に突出する凸部を備え、半導体素子と前記凸部を含む前記リード端子の一方の端部とを樹脂により封止し、前記リード端子の他方の端部が前記樹脂から露出する半導体装置の設計方法において、前記凸部を有する第1のリード端子と別の第2のリード端子とを隣接配置し、前記第1のリード端子に対して前記他方の端部の延出方向に引張応力を加えた場合に該引張応力に前記第1のリード端子が耐えられないとき、前記第1のリード端子の少なくとも前記第2のリード端子側の前記凸部の一部を切り欠き、この切り欠かれた領域を前記樹脂で置換することで、前記第1のリード端子と前記第2のリード端子との間に、前記引張応力に耐える体積の前記樹脂を配置することを特徴とする。
【0009】
本願請求項2に係る発明は、請求項1記載の半導体装置の設計方法において、前記第2のリード端子が前記凸部を備え、前記凸部を有する前記第1のリード端子と前記凸部を有する前記第2のリード端子とをそれぞれの前記凸部が対向するように隣接配置し、前記第1のリード端子に対して前記他方の端部の延出方向に引張応力を加えた場合に該引張応力に前記第1のリード端子が耐えられないとき、前記第1のリード端子の前記凸部の一部を切り欠くとともに、前記第2のリード端子の前記凸部の一部を切り欠き、前記第1のリード端子および前記第2のリード端子のそれぞれの切り欠かれた領域を前記樹脂で置換することで、前記第1のリード端子と前記第2のリード端子との間に、前記引張応力に耐える体積の前記樹脂を配置することを特徴とする。
【0010】
本願請求項3に係る発明は、請求項1又は2いずれか記載の半導体装置の設計方法において、前記凸部のC面取りにより、前記切り欠かれた領域を配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の半導体装置の設計方法によれば、引張応力に耐えられないリード端子の凸部の一部を切り欠くことで、リード端子から樹脂に加わる応力の集中領域の位置を変えるとともに、切り欠かれた領域に樹脂を配置することで、引張応力に耐える体積の樹脂を確保することができ、樹脂の破断やリード抜けが生じない半導体装置とすることができる。
【0012】
隣接するリード端子の双方に凸部を備える場合には、それぞれのリード端子の凸部を切り欠くことで隣接するリード端子間に樹脂を配置することができ、いずれのリード端子に対する引張応力に対しても耐えることができる十分な体積の樹脂を確保することができ、効果が大きい。
【0013】
本発明では、凸部のC面取りにより所望の体積の樹脂を配置することができ、リード端子に複雑な加工を施す必要がなく簡便に半導体装置を形成することができる。また、半導体装置の小型化の妨げとなることもない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の半導体装置の設計方法を説明する図である。
【
図2】本発明の第1の実施例の半導体装置の設計方法を説明する図である。
【
図3】本発明の第2の実施例の半導体装置の設計方法を説明する図である。
【
図4】本発明の半導体装置の設計方法を説明する図である。
【
図5】本発明の第2の実施例の半導体装置の設計方法を説明する図である。
【
図6】本発明の第3の実施例の半導体装置の設計方法を説明する図である。
【
図7】一般的な半導体装置の製造方法を説明する図である。
【
図8】一般的な半導体装置の製造方法を説明する図である。
【
図9】一般的な半導体装置の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の半導体装置の設計方法は、リード端子の端部に幅方向に突出する凸部が形成されている場合に、凸部によるアンカー効果を保持しながら、樹脂に加わる応力の集中領域の位置を変えるとともに、リード端子に加わる引張応力に耐える体積の樹脂を配置するように凸部の一部を切り欠くことを特徴としている。その結果、樹脂の破断やリード抜けの生じない半導体装置を提供することが可能となる。以下本発明の実施例について、従来例で説明した半導体装置を例にとり説明する。
【実施例1】
【0016】
まず第1の実施例について説明する。
図1は従来例で説明した方法により製造された半導体装置のリード端子4a~4dおよびダイパッド2の表面における断面図を示しており、半導体素子3、半導体素子3とリード端子4a~4dとの接続、これらを封止する樹脂8の一部の記載を省略した図となっている。半導体装置は、
図1に示すようにダイパッド2とその両側に配置するリード端子4a~4dのそれぞれの間に樹脂8が充填されている。リード端子4a~4dの裏面側は、樹脂8から露出する構造とし、各リード端子4a~4dに対し、その延出方向(それぞれの端子に対し矢印方向)に引張応力が加わるものとして説明する。
【0017】
第1の実施例では、リード端子4aについて検討する。
図2は、リード端子4aとリード端子4b近傍の部分拡大図である。リード端子4aには、隣接するリード端子4b側に突出する凸部5aが形成されている。このためリード端子4aに対して矢印方向に引張応力が加わると、凸部5aから樹脂8に対して応力が加わる。
【0018】
ここでリード端子4aは、凸部5aから樹脂8の端部までの長さがリード端子4bに比べて長くなっている。このような構造の場合、凸部5aから樹脂8に応力が加わっても、その応力に対抗できる樹脂8(図示を省略した樹脂を含む)がリード端子4aの近傍に存在する。換言すると、この樹脂8はリード端子4aに対する引張応力に耐える体積となっている。そのため、リード端子4aについては、本発明の半導体装置の設計方法を適用する必要はないと判断される。
【0019】
リード端子4dについても同様である。またダイパッド2を挟んで配置されるリード端子4a、4dについても同様である。なお、当然ながら引張応力の強さによってはリード端子4aからの応力により樹脂の破断やリード抜けが生じてしまう場合がある。それに対し
図2に示すリード端子4aのように樹脂8の体積が十分にある場合には、後述する本発明を適用するより、アンカー効果を高めるため凸部5aの突出量を大きくするという従来から提案されている方法によりリード抜けを防ぐのが好ましい場合もある。
【実施例2】
【0020】
次に第2の実施例として、リード端子4bについて検討する。
図3に示すように、リード端子4bには隣接するリード端子4a側に突出する凸部5b1と、リード端子4c側に突出する凸部5b2とが形成されている。また、リード端子4bの延出方向の樹脂で覆われる長さは、リード端子4aと比較して短くなっている。
【0021】
このような構造のリード端子4bに引張応力が加わると、凸部5b1、凸部5b2から樹脂8に対して応力が加わり、樹脂8の破断やリード抜けが発生してしまう。
【0022】
そこで、リード端子4bの凸部5b1、凸部5b2の一部を切り欠き、樹脂8に対する応力が集中する領域を移動させ、応力に耐える樹脂8を残すようにする。凸部5のどの部分を切り欠くかは適宜設定することができるが、樹脂8に対して大きな応力が発生している部分を切り欠くのが好ましい。
【0023】
図4(a)は、凸部5を備えたリード端子4に対して図面右側方向に引張応力を加えた場合の樹脂8に加わる応力の大きさのシミュレーション結果で、9は樹脂の破断を招く大きさの応力集中領域を示している。この応力集中領域9が樹脂8の端部近傍まで延びており、応力集中領域9が樹脂8の端部に達すると樹脂8が破断しリード抜けが発生してしまう。また応力集中領域9が隣接するリード端子側(図面上側)に延びていることがわかる。
【0024】
そこで本実施例では、応力集中領域9を樹脂8の端部から離すとともに、隣接するリード端子側に延びないように、凸部5の一部を切り欠き、切り欠かれた領域を樹脂8で置換する構造としている。
図4(b)には、凸部5のC面取りを行い、リード端子4に対して図面右側方向に引張応力を加えた場合の樹脂8に加わる応力の大きさのシミュレーション結果を示している。
【0025】
図4(a)と比較して
図4(b)に示す本実施例では、凸部5のC面取りを行い、切り欠かれた領域を樹脂で置換しているため、応力集中領域9が樹脂8の端部から離れるとともに、隣接するリード端子側にも大きく延びておらず、応力集中領域9以外の応力に対抗する樹脂の面積が本実施例の方が大きくなっている。その結果、リード端子4に引張応力が加わった場合でも、この応力に耐える体積の樹脂8を確保することができ、樹脂8の破断やリード抜けを防ぐことが可能となる。
【0026】
図5は、
図3に示すリード端子4bの凸部5b1および凸部5b2にC面取りを行った例を示す。このようにC面取りを行うことで、リード端子4bの凸部5b1および凸部5b2から樹脂8に加わる応力の集中領域が変わり、引張応力に耐える体積の樹脂を確保することが可能となる。なお、リード端子4bに対する引張応力が小さい場合には、凸部5b1あるいは凸部5b2のいずれか一方にC面取りを行う構成としても何ら問題はない。
【0027】
リード端子4cについても同様である。またダイパッド2を挟んで配置されるリード端子4b、4cについても同様である。なお切り欠き領域の大きさ等は、リード端子4b、4cのアンカー効果を保持しながら、樹脂8に加わる応力の集中領域の位置を変えるとともに、リード端子4b、4cに加わる引張応力に耐える体積の樹脂8を配置するように設計すればよい。
【実施例3】
【0028】
次に第3の実施例について説明する。上述の第2の実施例で説明したリード端子4bあるいはリード端子4cのいずれかを切り欠く例について説明したが、リード端子4bとリード端子4cの両方を切り欠くことも可能である。
【0029】
図6は、リード端子4bの凸部5b1および凸部5b2と、リード端子4cの凸部5c1および凸部5c2にC面取りを行った例を示す。このようにC面取りを行うことで、リード端子4bの凸部5b1および凸部5b2と、リード端子4cの凸部5c1および凸部5c2から樹脂8に加わる応力の集中領域が変わり、引張応力に耐える体積の樹脂8を確保することが可能となる。
【0030】
特に、凸部5b2と凸部5c1とが対向するように隣接配置している場合、リード端子4bとリード端子4cとの間に充填される樹脂の量が少ないため、リード端子4bとリード端子4cのいずれもC面取りを行うことで、リード端子4bの凸部5b2およびリード端子4cの凸部5c1から樹脂8に加わる応力の集中領域が変わり、引張応力に耐える体積の樹脂を確保することが可能となる。なお、リード端子4bに対する引張応力が小さい場合には、凸部5b1にC面取りを行わない構成としても何ら問題はない。
【0031】
ダイパッド2を挟んで配置されるリード端子4b、4cについても同様である。なお、切り欠き領域の大きさ等は、リード端子4b、4cのアンカー効果を保持しながら、樹脂8に加わる応力の集中領域の位置を変えるとともに、リード端子4b、4cに加わる引張応力に耐える体積の樹脂8を配置するように設計すればよい。またリード端子4bとリード端子4cの形状を必ずしも同一にする必要もない。
【0032】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。例えば、リード端子の数や配置等は適宜変更可能である。またリード端子4a~4dの切り欠き領域の形成は、C面取りが簡便な方法であるが、必ずしもこれに限定されるものでもない。リード端子4a~4dから樹脂8に加わる応力は、リード端子4a~4dの厚さと等しい樹脂8にのみ加わるものでないので、リード端子4a~4d上に形成される樹脂8の厚さや、凸部5を覆う樹脂の端部までの寸法についても考慮されたうえで、切り欠き領域を設定すればよい。
【符号の説明】
【0033】
1:リードフレーム、2:ダイパッド、3:半導体素子、4、4a~4d:リード端子、5、5b1、5b2、5c1、5c2:凸部、6:連結部、7:枠体、8:樹脂、9:応力集中領域