IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東京精密の特許一覧

<>
  • 特許-ブラストユニット付き面取り装置 図1
  • 特許-ブラストユニット付き面取り装置 図2
  • 特許-ブラストユニット付き面取り装置 図3
  • 特許-ブラストユニット付き面取り装置 図4
  • 特許-ブラストユニット付き面取り装置 図5
  • 特許-ブラストユニット付き面取り装置 図6
  • 特許-ブラストユニット付き面取り装置 図7
  • 特許-ブラストユニット付き面取り装置 図8
  • 特許-ブラストユニット付き面取り装置 図9
  • 特許-ブラストユニット付き面取り装置 図10
  • 特許-ブラストユニット付き面取り装置 図11
  • 特許-ブラストユニット付き面取り装置 図12
  • 特許-ブラストユニット付き面取り装置 図13
  • 特許-ブラストユニット付き面取り装置 図14
  • 特許-ブラストユニット付き面取り装置 図15
  • 特許-ブラストユニット付き面取り装置 図16
  • 特許-ブラストユニット付き面取り装置 図17
  • 特許-ブラストユニット付き面取り装置 図18
  • 特許-ブラストユニット付き面取り装置 図19
  • 特許-ブラストユニット付き面取り装置 図20
  • 特許-ブラストユニット付き面取り装置 図21
  • 特許-ブラストユニット付き面取り装置 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ブラストユニット付き面取り装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 9/00 20060101AFI20231108BHJP
   B24C 1/04 20060101ALI20231108BHJP
   B24C 3/22 20060101ALI20231108BHJP
   B24C 5/04 20060101ALI20231108BHJP
   B24C 5/02 20060101ALI20231108BHJP
   B24C 3/32 20060101ALI20231108BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B24B9/00 601G
B24C1/04 E
B24C3/22
B24C5/04 B
B24C5/02 A
B24C3/32 Z
H01L21/304 601B
H01L21/304 631
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019059583
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020157426
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 義信
(72)【発明者】
【氏名】生馬 はるか
(72)【発明者】
【氏名】岸下 真一
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-022684(JP,A)
【文献】特開2013-052457(JP,A)
【文献】特開平01-301021(JP,A)
【文献】特開昭53-051591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 9/00
B24C 1/00 - 11/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの端面を面取り加工するブラストユニット付き面取り装置であって、
前記端面の面取り斜面を所定の面取り角度の上斜面及び下斜面となるように研削する加工部と、
弾性母材に研磨用の砥粒を分散させた弾性研磨材を噴射ノズルによって噴射するブラストユニットと、
前記ブラストユニットによって前記弾性研磨材を噴射する際に前記ウェーハを上下から挟む上保持プレート及び下保持プレートと、を備え、
前記ブラストユニットは、前記上斜面及び前記下斜面を研削して成形加工した後、前記上斜面及び前記下斜面へ所定の噴射方向で前記弾性研磨材を噴射し、
前記上保持プレート及び前記下保持プレートは円錐台形とされ、
前記円錐台形の角度は、前記ウェーハの前記面取り角度以下とされ、前記ウェーハの被加工部分と同サイズの底面とされたことを特徴とするブラストユニット付き面取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン、サファイア、化合物、ガラス等の様々な素材、特に半導体ウェーハ、ガラスパネル等の板状被加工材の端面における高精度な面取り装置及び面取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の作製に使用されるシリコンウェーハ等の半導体ウェーハは、ハンドリングによるチッピングを防止するため、エッジ部を研削することで面取り加工が行われ、研磨による鏡面面取り加工が行われている。つまり、半導体製造工程において、ウェーハ製造からデバイス製造に至るまで、エッジ特性の品質改善は必要不可欠なプロセスとなっている。
【0003】
現在、ウェーハの材質はシリコンが主流だが、近年はサファイア、ガラス、SiC、GaN等、様々な性質のウェーハも生産量を伸ばしており、シリコンウェーハを加工するために最適化された従来の加工方法では十分でない。特に、SiC等の高硬度材のウェーハの場合、研削砥石が直ぐにすり減り、さらに寿命が短くなるので、ウェーハの製造コスト上昇の直接的な原因となる。また、GaN等の脆性材のウェーハの場合、ウェーハが加工負荷に耐えられず破損してしまい、歩留が低下する。さらに、ウェーハの破損の際、その破片が研削砥石に衝突すると、研削砥石や装置本体の破損や故障につながる。
【0004】
上記の高硬度材、脆性材ともに、研削砥石の消耗、ウェーハの破損を防ぐために加工(送り)速度を遅くしなければならず、スループットが低下する。一方、近年は半導体ウェーハのエッジ部の品質への要求そのものが高まっており、従来技術では要求に十分適合することができない。
【0005】
通常の研削ではレジン砥石の回転軸に対してウェーハWの主面が垂直となる状態で面取り部を研削するが、この場合、面取り部には円周方向の研削痕が発生し易い。そこで、ウェーハに対して例えばレジンボンド砥石(レジン砥石)を傾けてウェーハの面取り部を研削する、いわゆるヘリカル研削を行うことが知られている。ヘリカル研削を行い、通常研削に比べ面取り部の加工歪みを低減させ、面取り部の表面粗さが改善することが、例えば特許文献1に記載されている。
【0006】
また、チッピングやクラックの発生を防止し、硬質脆性材料基板の側部を研磨するため、弾性研磨材を、硬質脆性材料基板から成る被加工物の側部に向かって噴射ノズルより圧縮気体と共に噴射して衝突させ、被加工物の側部を研磨する方法であって、被加工物の側部上の加工点で側部の幅方向線と直交する接触線に対し所定の傾斜角を成す噴射方向で、加工領域に対して弾性研磨材の噴射を行うことが知られ、特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-190284号公報
【文献】特開2013-22684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術において、特許文献1に記載のものでは、条痕という研削砥石中のダイヤモンド砥粒のひっかき痕が被加工部分にダメージ層として残り、表面粗さの悪化という形で表れていた。この条痕の出現は仕上げ用研削砥石であっても避けることはできなかった。また、研削砥石は軸中心に回転し続けるので、その中の砥粒はそれぞれ同一の軌道上を繰り返し移動する。そのため、研削砥石の一部にでも欠けや目つぶれ等の不具合があると、ウェーハのエッジ部のダメージ(表面粗さ)が悪化する、異常な条痕やキズが断続的に出現し続ける、あるいはウェーハの破損の原因となっていた。
【0009】
さらに、正常な状態で研削砥石の使用を続けていたとしても、研削砥石は徐々にすり減り、溝の形状が崩れるため、加工後ウェーハのエッジ形状が不適合となる現象が起きていた。特に、仕上げに用いられるレジンボンドタイプの研削砥石はすり減りやすく、寿命が短かった。
【0010】
特許文献2に記載のものでは、幅方向線と直交する接触線方向から側面へ弾性研磨材の噴射を行い、エッジ部の面取り、面取り後の研磨を行っている。したがって、エッジ部の形状精度の向上、条痕の軽減が十分できなかった。特に、被加工材側面のエッジ部の面取り斜面の加工において、弾性研磨材の軌道は妨げられ、跳ね返ることもあり、表面粗さの向上、被加工面の平坦度の向上を図ることが困難であった。
【0011】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、板状の被加工材であるウェーハWのエッジ部の形状精度を向上すると共に、表面粗さの向上、うねりの解消、条痕を軽減するブラストユニット付き面取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、ウェーハの端面を面取り加工するブラストユニット付き面取り装置であって、前記端面の面取り斜面が所定の面取り角度(V)の上斜面及び下斜面となるように研削する加工部と、弾性母材に研磨用の砥粒を分散させた弾性研磨材を噴射ノズルによって噴射するブラストユニットと、を備え、前記ブラストユニットは、前記上斜面及び前記下斜面を研削して成形加工した後、前記上斜面及び前記下斜面へ所定の噴射方向(D)で前記弾性研磨材を噴射するものである。
【0013】
また、上記において、前記ブラストユニットは、2点以上の弾性研磨材の噴射口を有するように噴射ノズルを備え、前記噴射口から任意の方向へ噴射する機構を有することが好ましい。
【0014】
さらに、上記において、前記噴射ノズルは、前記上斜面に向かうものと、前記下斜面に向うものとを有し、それぞれ所定の噴射方向及び位置となるように設定されたことが好ましい。
【0015】
さらに、上記において、前記上斜面に向かう前記噴射ノズルと、前記下斜面に向う前記噴射ノズルとは、それぞれ独立したノズルテーブルに設けられ、前記噴射方向が所定位置となるように固定されたことが好ましい。
【0016】
さらに、上記において、前記ブラストユニットによって前記弾性研磨材を噴射する際に前記ウェーハを上下から挟む上保持プレート及び下保持プレートを有し、前記上保持プレート及び前記下保持プレートは円錐台形とされ、前記円錐台形の角度は前記ウェーハの前記面取り角度以下とされ、前記ウェーハの被加工部分と同サイズの底面とされたことが好ましい。
【0017】
さらに、上記において、前記弾性研磨材は2mm以下の粒子で前記砥粒と母材から成り、前記母材は、ゼラチン、あるいはゴムであり、前記砥粒を前記母材の中に分散させる、あるいは表層で保持させ、前記砥粒の粒径は0.1~20μmとされたことが好ましい。
【0018】
さらに、上記において、前記面取り斜面の加工点を通る接触線を想定し、前記弾性研磨材の前記噴射方向は、前記接触線、あるいは前記面取り斜面での条痕に対する角度θが前記ウェーハの回転方向に対して5°以上80°以下、かつ、前記面取り角度に対応する角度rが前記面取り角度をVとして(V-30°)以上(V-10°)以下となるように設定されることが好ましい。
ただし、角度θは、図9、11を参照、角度rは、図9、12を参照。
【0019】
さらに、上記において、前記角度θを8°±2°とすることが好ましい。
【0020】
さらに、上記において、前記弾性研磨材を噴射する時は、相対湿度を60~80%とすることが好ましい。
【0021】
さらに、上記において、前記ブラストユニットは、前記加工部又は前記面取り加工後の前記ウェーハの洗浄を行う洗浄部に設けられたことが好ましい。
【0022】
さらに、上記において、前記ウェーハがオリフラ形状である場合、オリフラへ前記弾性研磨材を噴射する時は、前記ウェーハの回転を停止し、前記噴射ノズルを前記オリフラの方向に直線的に往復移動して行うことが好ましい。
【0023】
さらに、上記において、前記ウェーハがノッチ形状である場合、ノッチの研磨加工は、前記ウェーハの回転を停止し、前記噴射ノズルの回転中心が、前記ノッチの頂点における曲率の中心点となるように所定の速度で揺動させて行うことが好ましい。
【0024】
また、本発明は、ウェーハの端面の面取り方法であって、前記端面の面取り斜面が所定の面取り角度の上斜面及び下斜面となるように研削し、前記上斜面及び前記下斜面を研削して成形加工した後、前記上斜面及び前記下斜面へ所定の噴射方向で弾性研磨材を噴射する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ウェーハの端面の面取り斜面が上斜面及び下斜面となるように研削した後、上斜面及び下斜面へ所定の噴射方向で弾性研磨材を噴射するので、ウェーハのエッジ部の形状精度を向上できると共に、表面粗さの向上、うねりの解消、条痕を軽減して、平滑性の高い鏡面研磨が可能となる。その結果、高硬度材、脆性材であっても、エッジ部の品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る面取り装置の全体構成を示す平面図。
図2】一実施形態における加工部16A、16Bの構成を示す斜視図。
図3】ウェーハWの端面が研削加工された状態を示す説明図。
図4】ブラストユニット21とウェーハWの位置関係を示す平面図。
図5】上斜面Wuを研磨する様子を示す側面図。
図6】下斜面Wdを研磨する様子を示す側面図。
図7】従来の研磨における噴射方向とウェーハWの加工表面との関係を示す図。
図8】一実施形態に係る噴射方向とウェーハWの加工表面との関係を示す図。
図9】一実施形態に係る弾性研磨材の噴射方向の詳細を示す斜視図。
図10】従来技術(特許文献2)による弾性研磨材の噴射方向を示す斜視図。
図11】面取り斜面における条痕Wsと弾性研磨材の噴射方向の関係を示す説明図。
図12】面取り角度Vと弾性研磨材の噴射方向の関係を示す側面図。
図13】オリフラ部の研磨加工を示す説明図。
図14】ノッチ部の研磨加工を示す説明図。
図15】一実施例における研磨条件。
図16】研削加工後の被加工面の光学顕微鏡写真。
図17】角度θ=0°、r=30°で研磨加工を行った被加工面の光学顕微鏡写真。
図18】角度θ=90°で研磨加工を行った被加工面の光学顕微鏡写真。
図19】角度θ=45°で研磨加工を行った被加工面の光学顕微鏡写真。
図20】角度θ=8°で研磨加工を行った被加工面の光学顕微鏡写真。
図21】湿度小の場合で研磨加工を行った被加工面の光学顕微鏡写真。
図22】湿度大の場合で研磨加工を行った被加工面の光学顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係るブラストユニット付き面取り装置10の全体構成を示す平面図である。同図に示すように、ブラストユニット付き面取り装置10は、供給回収部12、プリアライメント部14、加工部16A、16B、ノッチ研磨部18、洗浄部20、後測定部22、及び搬送部24から構成されている。また、ブラストユニット付き面取り装置10には、図示しない操作パネル、制御装置等も備えられている。
【0028】
供給回収部12は、面取り加工するウェーハWをウェーハカセット30から供給すると共に、面取り加工されたウェーハWをウェーハカセット30に回収する。この供給回収部12は、図1に示すように、4台のカセットテーブル32、32、…と、1台の供給回収ロボット34を有している。
【0029】
4台のカセットテーブル32、32、…上にウェーハカセット30、30、…がセットされる。ウェーハカセット30、30、…には、面取り加工するウェーハWが多数枚収納されている。供給回収ロボット34は、カセットテーブル32、32、…にセットされた各ウェーハカセット30からウェーハWを1枚ずつ取り出してプリアライメント部14に供給する。そして、供給回収ロボット34は、面取り加工されたウェーハWを後測定部22からウェーハカセット30に収納する。
【0030】
供給回収ロボット34は3軸回転型の搬送アーム36を備えており、搬送アーム36は、その上面部に図示しない吸着パッドを備えている。搬送アーム36は、この吸着パッドでウェーハWの裏面を真空吸着してウェーハWを保持する。また、搬送アーム36は、ガイドレール38に沿って移動可能なスライドブロック40上に設けられ、スライドブロック40が駆動されて前後方向(Y軸方向)に移動する。搬送アーム36は、ウェーハWを保持した状態で前後、昇降移動、及び旋回することができ、この動作を組み合わせることによりウェーハWの搬送を行う。
【0031】
プリアライメント部14は、面取り加工するウェーハWの厚さ測定とプリアライメントを行う。このプリアライメント部14は、測定テーブル50、センサ52、及びノッチ検出センサ54から構成されている。測定テーブル50は、回転及び上下動自在に構成されており、ウェーハWの裏面部を吸着保持して、その中心軸周りにウェーハWを回転させる。センサ52は、上下一対からなる静電容量センサで構成され、ウェーハWの表面、裏面までの距離を測定する。ノッチ検出センサ54は、レーザセンサで構成されており、測定テーブル50に保持されて回転するウェーハWのノッチ又はオリフラの位置を検出する。
【0032】
加工部16A、16Bは、ブラストユニット付き面取り装置10の正面部に並列して配置されており、それぞれ、ウェーハWの面取り加工を行う。加工部16A、16Bは互いに同一の構成を有しており、それぞれウェーハ送り装置60、研削装置62から構成されている。
【0033】
ノッチ研磨部18は、ウェーハWのノッチ部の仕上げ加工を行う。ノッチ研磨部18は、ウェーハ送り装置70及びノッチ研磨ユニット72から構成されている。ウェーハ送り装置70は、ウェーハWを吸着保持するチャックテーブル74を有している。ノッチ研磨ユニット72は、ノッチ研磨ヘッド76を備える。
【0034】
洗浄部20は、面取り加工後のウェーハWの洗浄を行う。洗浄部20は、スピン洗浄装置80を備える。スピン洗浄装置80は、洗浄テーブル82で保持したウェーハWを回転させてウェーハWの表面に洗浄液を噴射することにより、ウェーハWの表面に付着した汚れを剥離除去する。
【0035】
後測定部22は、面取り加工されたウェーハWの直径を測定する。後測定部22は、ウェーハWの直径を測定する直径測定器84と、ウェーハWを保持して回転及び上下動させる測定テーブル86とから構成されており、ウェーハWの直径を直径測定器84を用いて測定する。
【0036】
搬送部24は、ブラストユニット付き面取り装置10の各部にウェーハWを搬送する。搬送部24は、研削トランスファ部100、ノッチトランスファ部102、洗浄トランスファ部104、及び収納トランスファ部106から構成されている。
【0037】
研削トランスファ部100は、プリアライメント部14でプリアライメントされたウェーハWを各加工部16A、16Bに搬送する。研削トランスファ部100は、水平ガイド110と、その水平ガイド110に沿ってスライド移動するスライドブロック112(図示なし)と、そのスライドブロック上に設けられたトランスファアーム114とから構成されている。
【0038】
スライドブロック112は、水平ガイド110に沿ってスライド移動する。トランスファアーム114の先端には吸着パッド116が設けられている。トランスファアーム114は、ウェーハWを保持した状態で、水平移動及び上下移動してウェーハWの搬送を行う。
【0039】
ノッチトランスファ部102は、各加工部16A、16Bで面取り加工されたウェーハWをノッチ研磨部18に搬送する。ノッチトランスファ部102は、水平ガイド120と、水平ガイド120に沿ってスライド移動するスライドブロック122と、スライドブロック122上に設けられたトランスファアーム124とから構成されている。
【0040】
スライドブロック122は、水平ガイド120に沿ってスライド移動する。トランスファアーム124の先端には吸着パッド126が設けられている。トランスファアーム124は、ウェーハWを保持した状態で、水平移動、上下移動、及び旋回することができ、この動作を組み合わせることによりウェーハWの搬送を行う。これにより、各加工部16A、16Bで面取り加工されたウェーハWは、トランスファアーム124に保持された状態でノッチ研磨部18に搬送される。
【0041】
洗浄トランスファ部104は、ノッチ研磨部18でノッチ部が仕上げ加工されたウェーハWを洗浄部20に搬送する。洗浄トランスファ部104は、水平ガイド130と、水平ガイド130に沿ってスライド移動するスライドブロック132と、スライドブロック132上に設けられたトランスファアーム134とから構成されている。
【0042】
スライドブロック132は、水平ガイド130に沿ってスライド移動する。トランスファアーム134の先端には吸着パッド136が設けられている。また、トランスファアーム134は、ウェーハWを保持した状態で、ウェーハWの搬送を行う。そして、ノッチ研磨部18でノッチ部が仕上げ加工されたウェーハWは、トランスファアーム134に保持された状態で洗浄部20に搬送される。
【0043】
収納トランスファ部106は、洗浄部20で洗浄されたウェーハWを後測定部22に搬送する。収納トランスファ部106は、ノッチトランスファ部102と共有される水平ガイド120と、水平ガイド120に沿ってスライド移動するスライドブロック142と、そのスライドブロック142上に設けられたトランスファアーム144とで構成されている。
【0044】
スライドブロック142は、水平ガイド120に沿ってスライド移動する。トランスファアーム144の先端には吸着パッド146が設けられている。また、トランスファアーム144は、ウェーハWを保持した状態で、ウェーハWの搬送を行う。これにより、洗浄部20で洗浄されたウェーハWは、トランスファアーム144に保持された状態で後測定部22に搬送される。
【0045】
次に、加工部16A、16Bの構成について図2を参照して説明する。図2は、加工部16A、16Bの構成を示す斜視図である。加工部16A、16Bは、ウェーハ送り装置60、研削装置62を備える。
【0046】
ウェーハ送り装置60は、ウェーハWを吸着保持するチャックテーブル(ウェーハテーブル)150を有している。チャックテーブル150は、図示しない駆動手段に駆動されることにより、前後方向(Y軸方向)、左右方向(X軸方向)、及び上下方向(Z軸方向)の各方向に移動する。そして、チャックテーブル150は、チャックテーブル駆動モータ152に駆動されることにより中心軸回りに回転する。
【0047】
研削装置62は、ウェーハ送り装置60のチャックテーブル150に対してY軸方向に所定距離離れた位置に配置される。研削装置62は、粗研モータ154に駆動されて回転する粗研スピンドル156を有している。粗研スピンドル156は、前後方向(Y軸方向)及び上下方向(Z軸方向)の各方向に移動可能に構成される。粗研スピンドル156には、ウェーハWの端面を粗加工(粗研削)する外周粗研削砥石158が装着される。外周粗研削砥石158は、その外周面に複数の外周粗研削用溝が形成されており、この溝にウェーハWの外周を押し当てることにより、ウェーハWの端面が粗研削される。
【0048】
外周粗研削砥石158としては、例えば、Fe、Cr、Cu等の金属粉等を主成分とし、ダイヤモンド砥粒を混ぜて成形したものが用いられる。ツルアーの材質は、外周粗研削砥石158によって加工することができるものを採用する。
【0049】
図3は、ウェーハWの端面が研削によって成形加工された状態を示す説明図であり、(a)はウェーハW面取り部の断面形状であり、面取り斜面のうちWuがエッジ部の上斜面、Wdがエッジ部の下斜面、Wcが側面である。(b)は上斜面Wuの表面粗さWrの例を示している。同じく、(c)は上斜面Wuの条痕Wsであり、研削砥石中のダイヤモンド砥粒のひっかき痕がダメージ層として残っている。また、研削砥石中の砥粒はそれぞれ同一の軌道上を繰り返し移動するため、研削砥石の一部にでも欠けや目つぶれ等の不具合があると、異常な条痕Wsやキズが断続的に出現し続ける、あるいはウェーハWの破損の原因となっていた。
【0050】
特に、従来技術における仕上げ加工に用いられるレジンボンドタイプの研削砥石はすり減りやすく、研削砥石は徐々にすり減り、溝の形状が崩れる。そのため、加工後は、ウェーハWのエッジ部の形状が不適合となり、寿命が短かった。また、条痕Ws以外では、加工表面に表れる大きく波打つ凹凸である「うねり」を生じることがあった。
【0051】
さらに、GaN等の脆性材のウェーハWの場合、ウェーハWが加工負荷に耐えられず破損してしまい、歩留が低下する。また、ウェーハWの破損の際、その破片が研削砥石に衝突すると、研削砥石や装置本体の破損や故障につながる。また、高硬度材、脆性材ともに、研削砥石の消耗、ウェーハWの破損を防ぐために加工(送り)速度を遅くしなければならず、スループットが低下する。
【0052】
そこで、ブラストユニット付き面取り装置10は、加工部16A、16B又は洗浄部20のどちらかに研磨材を噴射して衝突させるブラストユニット21を搭載する。図4は、ブラストユニット21とウェーハWの位置関係を示す平面図、図5は、上斜面Wuを研磨する様子を示す側面図、図6は、下斜面Wdを研磨する様子を示す側面図である。ブラストユニット21は、弾性母材に研磨用の砥粒を分散させた弾性研磨材300、又は弾性母材の表面に研磨用の砥粒を付着させた弾性研磨材300をウェーハWの面取り斜面へ向かって圧縮気体と共に噴射して衝突させてエッジ部の面取り斜面を研磨する。つまり、ブラストユニット付き面取り装置10は、面取り斜面である上斜面Wu及び下斜面Wdを所定の面取り角度Vで研削して成形加工した後、上斜面Wu及び下斜面Wdへ所定の噴射方向で弾性研磨材300を噴射する。
【0053】
ブラストユニット21は、ノズルテーブル222に設置され、ウェーハWに対して半径方向に所定距離だけ離れた位置に配置される。そして、ブラストユニット21は、上斜面Wu、下斜面Wdの研磨が可能なように2点以上の弾性研磨材300の噴射口を持つように、噴射ノズル223、224を備える。研磨材は、圧縮気体又は遠心力によって噴射ノズル223、224の各噴射口から任意の方向へ弾性研磨材300を噴射する機構を有する。
【0054】
ノズルテーブル222は、図4の矢印に示すようにXY方向に移動が可能とされる。また、噴射ノズル223、224は、図5のZ方向で噴射口の高さ、及び回転軸229によって、噴射口の噴射方向が立体的に可変とされている。そして、噴射ノズル223は上斜面Wuに向かって、噴射ノズル224は下斜面Wdに向かってそれぞれ所定の噴射方向及び位置となるように設定されている。そして、ノズルテーブル222は、上斜面Wu、下斜面Wdの研磨毎に移動して行う。
【0055】
なお、一実施形態は、一つのノズルテーブル222に、噴射ノズル223、224を設けることで説明したが、二つの独立したノズルテーブル222を設け、噴射ノズル223、224をそれぞれ独立して切り離しても良い。この場合は、ノズルテーブル222の移動は不要でそれぞれ噴射方向が所定位置となるように固定すれば良い。
【0056】
ウェーハWは、上保持プレート227、下保持プレート228によって上下から挟んで保持テーブル226で保持される。保持テーブル226は、保持モータ225に駆動されて回転する。また、保持ユニット230は、前後方向(Y軸方向)及び上下方向(Z軸方向)の各方向に移動可能に構成される。
【0057】
上保持プレート227、下保持プレート228は円錐台形であり、ウェーハWのエッジ部でない部分(被加工部分)と同サイズの底面でウェーハWを挟み込む。円錐台形の角度は、面取り角度V以下とする。したがって、エッジ部でない部分への弾性研磨材300の衝突を防ぐことができる。また、弾性研磨材300の軌道は妨げられず、エッジ部を滑走した弾性研磨材300研磨材が上保持プレート227、下保持プレート228に衝突して再びエッジ部の方向へ跳ね返ることもない。さらに、上保持プレート227、下保持プレート228は、表面がセラミックコーティングされていることが望ましい。
【0058】
弾性研磨材300の噴射方向とその作用について説明する。弾性研磨材300は、2mm以下の粒子で、砥粒と母材から成る。母材は、弾性のタンパク質を主成分とするゼラチン、あるいはゴム等で、砥粒を母材の中に分散させる、あるいは表層で保持させた弾性研磨材300を用いる。砥粒は、粒度が#3000から1200相当、粒径0.1~20μmのダイヤモンド、CBN、GC等である。図7は、従来の研磨における噴射方向とウェーハWの加工表面(表面粗さWr)との関係を示す図であり、図8は、一実施形態に係る噴射方向とウェーハWの加工表面(表面粗さWr)との関係を示す図である。
【0059】
従来の研磨は、図7に示すように噴射方向は、矢印301のように加工表面に対して略直交して行っている。この方法は、弾性研磨材300が加工表面に対して強く衝突して切削力を発揮する。しかし、弾性研磨材300は、加工表面、特に条痕Wsとして大きな表面粗さである部分で矢印302のように跳躍する。特許文献2は、この作用を利用してエッジ部を切削して面取り、又は既に面取りが行われている面を研磨している。そのため、エッジ部の面取り斜面に関しては、表面粗さの向上、被加工面の平坦度の向上を図ることが困難であった。
【0060】
一実施形態では、図8に示すように弾性研磨材300の噴射方向は、矢印303のように加工表面に対して沿うような低い角度で行っている。したがって、噴射ノズル223、224から噴射された弾性研磨材300は、応力分散して加工表面へ到着後に素早く変形を始め、跳躍が抑制されて矢印304のように加工表面を長い距離に亘り滑走する。つまり、弾性研磨材300は、被加工物(ウェーハW)への衝突時に変形し、被加工物表面を滑走して砥粒を作用させる。これにより、砥粒の切り込みが大きくなり過ぎることなく、被加工物に深い条痕Wsが残り難く、平滑性の高い鏡面研磨が可能となる。
【0061】
ブラストユニット付き面取り装置10は、主に半導体ウェーハを被加工物としている。被加工物は、硬質であると共に脆性を有する材料で形成された基板であり、研削加工を行う際に、チッピングやクラックの発生し易い材質で形成された基板に適している。被加工物の材質は、単結晶シリコン、多結晶シリコン、SiC、Ga203、サファイア、GaN、GaAsをはじめとする半導体材料に適している。他に、GaSb、InP、LT、LN、Ge、ガラス、セラミックス、MgO、ZnO、水晶、LBO、BBO、BGO、CaF2、MgF2、LiF、BaF2、CeF3、KBr、GGG、YAG、ZnSe、ZnTe、ZnS、STO、YSL、LoB等でも良い。ウェーハWの形状種別は円、ノッチ、オリフラ、SOI、エッジ形状はテラス、舟形等に適用可能である。
【0062】
図9は、一実施形態に係る弾性研磨材300の噴射方向Dの詳細を示す斜視図であり、図10は、従来技術(特許文献2)による弾性研磨材300の噴射方向Dを示す斜視図である。図9図10を比較して、ブラストユニット付き面取り装置10による加工方法の特徴を説明する。加工方法の特徴は、ウェーハWのエッジ部の面取り斜面、つまり上斜面Wu、下斜面Wd(図3参照)上の加工点に対して所定の角度θ、角度rを成す噴射方向Dで弾性研磨材300を噴射することにある。
【0063】
図9は、上斜面Wuの研磨を示しており、加工点は上斜面Wuの点とし、加工点を通る接触線τを想定する。弾性研磨材300の噴射方向Dは、接触線τ、あるいは上斜面Wuでの条痕Wsに対する角度θがウェーハWの回転方向φに対して5°以上80°以下、望ましくは、8°±2°となるようにする。かつ、噴射方向Dは、上斜面Wuの面取り角度Vに対応する角度rが(V-30°)以上(V-10°)以下となるように噴射ノズル223(図4参照)が設定される。なお、下斜面Wdの研磨も同様である。
【0064】
そして、円周全体の研磨加工は、ウェーハWを所定の速度で回転方向φに回転させる。噴射方向Dは固定しているので、この動作によりウェーハWの加工点が移動する。下斜面Wdの研磨加工は、ノズルテーブル222をXY方向(図3参照)に移動して、上斜面Wuと同様に行う。なお、研磨加工における相対湿度は、60~80%とすることが弾性研磨材300を加工表面に効率良く滑走させる点で望ましい。
【0065】
図10は、従来技術(特許文献2)による噴射方向Dを図9と同様な図としたものであり、図9で加工点を上斜面Wuの点としているのと異なり、被加工物(ウェーハW)の側面Wcを加工点としている。また、図10は、側面Wcの加工点を通る幅方向線Hと、幅方向線Hと直交し、加工点で接する接触線Tを想定している。弾性研磨材300の噴射方向Dは、加工点で幅方向線Hと交叉し、接触線Tに対し所定の傾斜角ξを切削性の低下を考慮して角度2~60°としている。なお、本例では、噴射方向Dと条痕Wsの方向が一致することになる。
【0066】
図11は、面取り斜面における条痕Wsと弾性研磨材300の噴射方向Dの関係を示す説明図である。(a)は回転方向φに対して条痕Wsの方向と弾性研磨材300の噴射方向Dが一致、角度θ=0°の場合、(b)は、角度θ=90°、(c)は、角度θ=45°(噴射方向D、角度θは、図9参照)を示している。(a)の場合、条痕Wsは、加工表面の比較的に大きな深い傷なので、弾性研磨材300によっても条痕Wsを消すような研磨ができない。
【0067】
(b)は、噴射方向Dとしては条痕Wsを消す方向であるが、弾性研磨材300の滑走距離が小さくなり、砥粒の切り込みを大きくせざるを得ない。(c)の場合、弾性研磨材300の滑走距離を長くすると共に、条痕Wsによる弾性研磨材300の跳躍を防ぐことができる。
【0068】
したがって、(c)のように条痕Wsの方向に対して角度θを比較的に小さくすることで条痕Wsが残り難く、平滑性の高い鏡面研磨が可能となる。ただし、θを小さくし過ぎると、(a)の状態となり、条痕Wsを消すことが困難となる。角度θは、試行錯誤による実験を繰り返した結果、5°以上80°以下が実用的であり、略8°、8°±2°程度が平滑性の高い鏡面を得るには適していることが分かった。
【0069】
図12は、面取り角度Vと弾性研磨材300の噴射方向Dの関係を示す側面図である。図8で説明したように、弾性研磨材300の噴射方向Dは、加工表面に対して沿うような低い角度で行うことが望ましい。ただし、面取り斜面はウェーハWの水平面に対して角度Vを成しているので、噴射方向Dは、噴射方向DとウェーハWの水平面との角度rを角度Vと等しくなるようにすると、弾性研磨材300による切込み量が小さくなり過ぎる。したがって、噴射方向Dは、弾性研磨材300による切削力と砥粒の滑走による作用をバランスする必要がある。そこで、噴射方向Dは、面取り角度Vに対して角度rを(V-30°)以上(V-10°)以下とすることが望ましい。
【0070】
以上によって、ウェーハWのエッジ部に面取り斜面を研削した後、面取り斜面に弾性研磨材300を使用したブラスト研磨を行うので、研削時の条痕Wsが軽減し、表面粗さが向上する。また、被加工面が平坦に研磨され、うねりが解消される。したがって、脆性材のウェーハWであっても、エッジ部の形状精度を向上すると共に、ハンドリング等によるチッピングを防止し、品質改善を図ることができる。
【0071】
また、ブラスト研磨では、精研用ダイヤモンド砥石による加工特有の問題が発生しないので、砥石の消耗、ウェーハWの破損を防いで歩留まりを向上できる。さらに、仕上げ工程を精研用ダイヤモンド砥石からブラスト研磨へ置き換えれば、加工時間が短縮し、高レートの加工を行うことができる。
【0072】
図13は、オリフラ形状のウェーハWにおけるオリフラOF部の研磨加工を示す説明図である。研磨加工は、ウェーハWの回転を停止して行う。そして、弾性研磨材300の噴射は、オリフラOF部が直線形状であるので、噴射ノズル223又は224をX方向、つまり、オリフラOFの方向に直線的に往復移動して行う。また、弾性研磨材300の噴射方向Dは、ウェーハWの円形部、図11と同様に条痕Wsの方向に対して角度θ方向とする。
【0073】
図14は、オリフラOFに代わってノッチWNを設けたノッチ形状のウェーハWにおけるノッチ部の研磨加工を示す説明図である。研磨加工は、ウェーハWの回転を停止し、噴射方向Dが接触線τあるいは条痕Wsに対する角度θが90°となるようにする。例えば、噴射ノズル223又は224の回転中心が、ノッチWNの頂点で、その曲率の中心点Otとなるように所定の速度で揺動させ研磨加工する。研磨加工の際の加工点の移動は、ウェーハWの円形部の研磨加工時よりも速く、加工点を往復させて研磨を繰り返す。
【実施例
【0074】
以下に、本発明のブラストユニット付き面取り装置10によりウェーハWのエッジ部の面取り部を加工した実施例について以下説明する。
【0075】
被加工物は、材質をSiC(炭化ケイ素)とした半導体ウェーハとした。図15は、詳細な研磨条件を示している。面取り部の研削による成形加工は、ダイヤモンドホイール(砥石)で行った。成形加工の研削加工後による面粗度は、算術平均粗さRaが0.137μm、最大高さRzが0.703μmであった。図16は、研削加工後の被加工面の光学顕微鏡写真である。図の矢印が加工方向であり、多数の条痕Wsが認められる。
【0076】
図17は、噴射方向Dは、θ=0°、r=30°(図9参照)で研磨加工を行った被加工面の光学顕微鏡写真である。研磨条件は、弾性研磨材300の母材が、平均粒径300μm、材質がゼラチンとした。また、砥粒はダイヤモンドで粒度が#3000であり、母材中に分散又は表面に付着している。噴射速度は、2000m/min、湿度は60%としている。研磨加工後、算術平均粗さRaが0.059μm、最大高さRzが0.234μmであり、改善されているが、図17の光学顕微鏡写真では条痕Ws(図3参照)が未だ認められる状態である。
【0077】
図18は、同条件でさらにθ=90°としたものである。研磨加工後、算術平均粗さRaが0.045μm、最大高さRzが0.192μmであり、条痕Wsは噴射方向Dがθ=0°のときの図17よりも上下両端で平滑化されているが、中央部は未だ残っている。
【0078】
図19は、同条件でさらにθ=45°としたものである。研磨加工後、算術平均粗さRaが0.032μm、最大高さRzが0.185μmであり、弾性研磨材300の滑走距離が長くなった効果が表れており、実用的な状態である。
【0079】
図20は、同条件でさらにθ=8°としたものである。研磨加工後、算術平均粗さRaが0.023μm、最大高さRzが0.156μmであり、図19で一部残っていた中央部の条痕Wsもかなり消えている。この状態は、条痕Wsの軽減、表面粗さの向上、うねりの解消、形状精度を向上等で最適であり、平滑性の高い鏡面を得ることができている。
【0080】
図21、22は、湿度の影響を示しており、図21の光学顕微鏡写真が30%程度と湿度小の場合、図22が60%程度と湿度大で研磨加工を行った結果である。湿度大の方が面粗度の点で有利なことが確認できた。
【0081】
以上の結果から、面取り斜面を研削で成形加工後、弾性研磨材300でブラスト研磨加工を行う際、弾性研磨材300の噴射方向Dは、角度θ(図9参照)を5°以上80°以下とすることが実用的である。また、角度θは略8°、8°±2°程度が平滑性の高い鏡面を得るには適していることが確認できた。なお、角度θは、接触線τ、あるいは上斜面Wuでの条痕Wsに対するウェーハWの回転方向φに対する角度(図9参照)である。また、噴射方向Dは、面取り斜面の面取り角度Vに対応する角度rが(V-30°)以上(V-10°)以下となるようにすることが良いことも確認している。
【符号の説明】
【0082】
10:ブラストユニット付き面取り装置、12:供給回収部、14:プリアライメント部、16A、16B:加工部、18:ノッチ研磨部、20:洗浄部、21:ブラストユニット、22:後測定部、24:搬送部、30:ウェーハカセット、32:カセットテーブル、34:供給回収ロボット、36:搬送アーム、38:ガイドレール、40:スライドブロック、50:測定テーブル、52:センサ、54:ノッチ検出センサ、60:ウェーハ送り装置、62:研削装置、70:ウェーハ送り装置、72:ノッチ研磨ユニット、74:チャックテーブル、76:ノッチ研磨ヘッド、80:スピン洗浄装置、82:洗浄テーブル、84:直径測定器、86:測定テーブル、100:研削トランスファ部、102:ノッチトランスファ部、104:洗浄トランスファ部、106:収納トランスファ部、110:水平ガイド、112:スライドブロック、114:トランスファアーム、116:吸着パッド、120:水平ガイド、122:スライドブロック、124:トランスファアーム、126:吸着パッド、130:水平ガイド、132:スライドブロック、134:トランスファアーム、136:吸着パッド、142:スライドブロック、144:トランスファアーム、146:吸着パッド、150:チャックテーブル、152:チャックテーブル駆動モータ、154:粗研モータ、156:粗研スピンドル、158:外周粗研削砥石、222:ノズルテーブル、223、224:噴射ノズル、225:保持モータ、226:保持テーブル、227:上保持プレート、228:下保持プレート、229:回転軸、300:弾性研磨材、301、302、303、304:矢印、D:噴射方向、H:幅方向線、Ot:中心点、Rz:最大高さ、T:接触線、W:ウェーハ、WN:ノッチ、OF:オリフラ、Wc:側面、Wu:上斜面、Wd:下斜面、Ws:条痕、V:面取り角度、r:角度(面取り角度Vに対応する角度)、θ:角度(接触線τ、あるいは上斜面Wuでの条痕Wsに対する角度)、ξ:傾斜角、τ:接触線(面取り斜面の加工点を通る接触線)、φ:回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22