(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】医療行為のオーダー管理方法及びプログラム、オーダー管理システム
(51)【国際特許分類】
G16H 40/20 20180101AFI20231108BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G16H40/20
A61B5/00 G
(21)【出願番号】P 2021558311
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(86)【国際出願番号】 JP2020041870
(87)【国際公開番号】W WO2021100547
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2019208743
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】松政 宏典
【審査官】田川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/102903(WO,A1)
【文献】特開2019-106122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾病に関する計算処理と、前記計算処理の対象部位と、前記計算処理の実行に必要な第1の医療行為と、医師による前記疾病の診断及び治療の少なくとも一方に必要な第2の医療行為と、を紐付けて管理する医療行為管理工程と、
患者の検査対象となる前記対象部位を取得する対象部位取得工程と、
前記取得した対象部位における前記第1の医療行為と前記第2の医療行為とのオーダーを発行するオーダー管理工程と、
前記第1の医療行為の結果に基づいて実行された前記疾病に関する計算処理の計算処理結果を取得する計算処理結果取得工程と、
を備え、
前記オーダー管理工程は、前記計算処理結果に基づいて前記第2の医療行為の要否を判断し、
前記オーダー管理工程は、前記計算処理結果が前記疾病について陰性である場合に前記第2の医療行為のオーダーをキャンセルする医療行為のオーダー管理方法。
【請求項2】
前記医療行為管理工程は、それぞれ異なる複数の疾病の各疾病について、前記計算処理と、前記対象部位と、前記第1の医療行為と、前記第2の医療行為と、を紐付けて管理する請求項
1に記載の医療行為のオーダー管理方法。
【請求項3】
前記オーダー管理工程は、前記取得した対象部位に対応する前記計算処理が複数ある場合に、優先度順に前記複数の計算処理の実行に必要な複数の第1の医療行為のオーダーを発行する請求項1
又は2に記載の医療行為のオーダー管理方法。
【請求項4】
前記オーダー管理工程は、前記複数の第1の医療行為のオーダーの後に前記第2の医療行為のオーダーを発行する請求項
3に記載の医療行為のオーダー管理方法。
【請求項5】
前記計算処理は、人工知能を用いて計算する処理である請求項1から
4のいずれか1項に記載の医療行為のオーダー管理方法。
【請求項6】
前記人工知能を用いて計算する処理は、機械学習された学習モデルによって入力データに対して推論結果を出力する処理である請求項
5に記載の医療行為のオーダー管理方法。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか1項に記載の医療行為のオーダー管理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項8】
非一時的かつコンピュータ読取可能な記録媒体であって、前記記録媒体に格納された指令がコンピュータによって読み取られた場合に請求項
7に記載のプログラムをコンピュータに実行させる記録媒体。
【請求項9】
疾病に関する計算処理と、前記計算処理の対象部位と、前記計算処理の実行に必要な第1の医療行為と、医師による前記疾病の診断及び治療の少なくとも一方に必要な第2の医療行為と、を紐付けて管理する医療行為管理部と、
患者の検査対象となる前記対象部位を取得する対象部位取得部と、
前記取得した対象部位における前記第1の医療行為と前記第2の医療行為とのオーダーを発行するオーダー管理部と、
前記第1の医療行為の結果に基づいて実行された前記疾病に関する計算処理の計算処理結果を取得する計算処理結果取得部と、
を備え、
前記オーダー管理部は、前記計算処理結果に基づいて前記第2の医療行為の要否を判断し、
前記オーダー管理部は、前記計算処理結果が前記疾病について陰性である場合に前記第2の医療行為のオーダーをキャンセルする医療行為のオーダー管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療行為のオーダー管理方法及びプログラム、オーダー管理システム並びにデータベースに係り、特に医療行為のオーダーを管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、深層学習により学習がなされたニューラルネットワークを利用した人工知能(AI;Artificial Intelligence)を用いることにより、読影の効率化及び診断支援が実現されつつある。
【0003】
また、医療行為のオーダーを管理する技術が知られている。特許文献1には、症状、検査、レポート内容を総合的にデータベース化し、主治医が特定の症状に対し撮影をオーダーする際に、院内における既存のプロトコルを基に、そのオーダーが適当であるかを判断し、特定の検査が欠落している場合は、それを指摘することが可能な知識データベースが記載されている。この知識データベースによれば、例えば胸痛の場合、ある医療施設ではX線CT(Computed Tomography)及びMR(Magnetic Resonance)の両方の検査をオーダーとするプロトコルを有する場合、ある医師などの医療従事者がその症状をもとにX線CT検査のみをオーダーした場合には、MRによる検査が欠落していることを指摘することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
診断対象となる医療データ、及び管理が必要な医療データ量自体は増加の一途をたどっており、医師の負荷軽減の妨げとなっている。医師の負荷軽減には、発生する医療データを管理する必要があり、そのためには、医療行為の実施管理を支援する必要がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、医療行為のオーダーを適切に管理する医療行為のオーダー管理方法及びプログラム、オーダー管理システム並びにデータベースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための医療行為のオーダー管理方法の一の態様は、疾病に関する計算処理と、計算処理の対象部位と、計算処理の実行に必要な第1の医療行為と、医師による疾病の診断及び治療の少なくとも一方に必要な第2の医療行為と、を紐付けて管理する医療行為管理工程と、患者の検査対象となる対象部位を取得する対象部位取得工程と、取得した対象部位における第1の医療行為と第2の医療行為とのオーダーを発行するオーダー管理工程と、を備える医療行為のオーダー管理方法である。本態様によれば、医療行為のオーダーを適切に管理することができる。
【0008】
第1の医療行為の結果に基づいて実行された疾病に関する計算処理の計算処理結果を取得する計算処理結果取得工程を備え、オーダー管理工程は、計算処理結果に基づいて第2の医療行為の要否を判断することが好ましい。これにより、第2の医療行為のオーダーを管理することができる。
【0009】
オーダー管理工程は、計算処理結果が疾病について陰性である場合に第2の医療行為のオーダーをキャンセルすることが好ましい。これにより、不要な医療行為を行うことを防止し、データ量を削減することができる。
【0010】
医療行為管理工程は、それぞれ異なる複数の疾病の各疾病について、計算処理と、対象部位と、第1の医療行為と、第2の医療行為と、を紐付けて管理することが好ましい。これにより、それぞれ異なる複数の疾病に対応する医療行為のオーダーを適切に管理することができる。
【0011】
オーダー管理工程は、取得した対象部位に対応する計算処理が複数ある場合に、優先度順に複数の計算処理の実行に必要な複数の第1の医療行為のオーダーを発行することが好ましい。これにより、優先度の高い計算処理を優先することができる。
【0012】
オーダー管理工程は、複数の第1の医療行為のオーダーの後に第2の医療行為のオーダーを発行することが好ましい。これにより、複数の計算処理を優先して行うことができる。
【0013】
計算処理は、人工知能を用いて計算する処理であることが好ましい。また、人工知能を用いて計算する処理は、機械学習された学習モデルによって入力データに対して推論結果を出力する処理であることが好ましい。これにより、第1の医療行為の結果を適切に計算処理した計算処理結果を取得することができる。
【0014】
上記の医療行為のオーダー管理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムも本態様に含まれる。上記の医療行為のオーダー管理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムは、コンピュータの読取可能な非一時的な記録媒体に記憶させて提供されてもよい。本態様によれば、医療行為のオーダーを適切に管理することができる。
【0015】
上記目的を達成するための医療行為のオーダー管理システムの一の態様は、疾病に関する計算処理と、計算処理の対象部位と、計算処理の実行に必要な第1の医療行為と、医師による疾病の診断及び治療の少なくとも一方に必要な第2の医療行為と、を紐付けて管理する医療行為管理部と、患者の検査対象となる対象部位を取得する対象部位取得部と、取得した対象部位における第1の医療行為と第2の医療行為とのオーダーを発行するオーダー管理部と、を備える医療行為のオーダー管理システムである。本態様によれば、医療行為のオーダーを適切に管理することができる。
【0016】
上記目的を達成するための医療行為のオーダー管理システムの一の態様は、プロセッサに実行させるための命令を記憶するメモリと、メモリに記憶された命令を実行するプロセッサとを備え、プロセッサは、疾病に関する計算処理と、計算処理の対象部位と、計算処理の実行に必要な第1の医療行為と、医師による疾病の診断及び治療の少なくとも一方に必要な第2の医療行為と、を紐付けて管理し、患者の検査対象となる対象部位を取得し、取得した対象部位における第1の医療行為と第2の医療行為とのオーダーを発行する医療行為のオーダー管理システムである。本態様によれば、医療行為のオーダーを適切に管理することができる。
【0017】
上記目的を達成するための医療行為のデータベースの一の態様は、疾病に関する計算処理と、計算処理の対象部位と、計算処理の実行に必要な第1の医療行為と、医師による疾病の診断及び治療の少なくとも一方に必要な第2の医療行為と、が紐付けて記憶された医療行為のデータベースである。本態様によれば、医療行為のオーダーを適切に管理することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、医療行為のオーダーを適切に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、病院内システム10の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、医療行為のオーダー管理システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、計算処理部の主要な機能構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、医療行為のオーダー管理方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、オーダー管理部が管理するオーダーを示す表である。
【
図7】
図7は、オーダー管理部が管理するオーダーを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。
【0021】
<病院内システム>
図1は、病院内システム10の構成を示すブロック図である。病院内システム10は、検査予約システム12と、AI(Artifi
cial Intelligence)処理コンピュータ14と、検査予約コンピュータ18と、データ作成装置20と、ネットワーク22と、を備えている。
【0022】
検査予約システム12は、データ作成装置20の予約(オーダー)を管理する不図示のコンピュータとソフトウェアとから構成される。
【0023】
AI処理コンピュータ14と検査予約コンピュータ18とは、それぞれ病院内にて使用されるコンピュータである。AI処理コンピュータ14と検査予約コンピュータ18とは、それぞれCPU(Central Processing Unit)、メモリ、ストレージ、入出力インターフェース、通信インターフェース、入力装置、表示装置、データバス等の不図示のハードウェア構成を備える。また、AI処理コンピュータ14と検査予約コンピュータ18とは、それぞれ入力装置として、不図示のキーボード、マウス等を有し、表示装置として不図示のディスプレイ等を有する。AI処理コンピュータ14と検査予約コンピュータ18とは、それぞれ周知のオペレーションシステム等がインストールされ、医療画像表示用のビューワアプリケーションが実行される。
【0024】
AI処理コンピュータ14は、それぞれ異なる複数の疾病にそれぞれ対応する複数の計算処理(AI処理)を実行する。疾病に関する計算処理は、人工知能の一例であり、入力データに対して推論結果を出力するように機械学習によって学習されている学習モデルである。入力データは医療データを含む。医療データとは、被検体に関するデータであり、医療画像、病理画像、診断情報、及び所見情報の少なくとも1つを含むデータである。診断情報は、ゲノム解析結果、心電図波形データ、及びバイタルデータ等の情報を含む。所見情報は、病気の種類及び進行状況等を示すテキストデータを含む。医療データは、被検体の性別及び年齢等の個人情報、既往歴等の臨床情報を含んでもよい。
【0025】
AI処理コンピュータ14は、テーブル16を備える。テーブル16(医療行為のデータベースの一例)には、AI処理コンピュータ14が実行可能な計算処理のそれぞれについて、計算処理の対象部位と、計算処理の実行に必要な第1の医療行為と、医師による疾病の診断及び治療の少なくとも一方に必要な第2の医療行為とが、紐付けられて記憶されている。
【0026】
図2は、テーブル16の一例を示す図である。ここでは、管理ナンバー1~6の紐付けされたデータを示している。例えば、管理ナンバー1では、AI名称が脳梗塞の推論結果を出力する脳梗塞AIであり、脳梗塞AIの対象部位が頭部であり、第1の医療行為がCT(Computed Tomography)画像の撮影であり、第2の医療行為がMR(Magnetic Resonance)画像の撮影であることが記憶されている。また、管理ナンバー2では、AI名称が骨転移の推論結果を出力する骨転移AIであり、骨転移AIの対象部位が胸部であり、第1の医療行為がCT(Computed Tomography)画像の撮影であり、第2の医療行為がPET(Positron Emission Tomography)画像の撮影であることが記憶されている。本実施形態では、このテーブル16を用いることで、医療行為のオーダーを適切に管理する。
【0027】
図1の説明に戻り、検査予約コンピュータ18は、医師が検査のオーダーを行うためのコンピュータである。検査予約コンピュータ18において入力されたオーダーは、検査予約システム12に送信される。検査予約システム12は、検査予約コンピュータ18から受け付けたオーダーに基づいて、データ作成装置20のオーダーを管理する。
【0028】
データ作成装置20は、医療情報システムである。データ作成装置20は、各種モダリティから医療情報を取得し、AI処理コンピュータ14が実行する計算処理に使用するデータを作成する。モダリティは、被検体の対象部位を撮影することにより、その部位を表す医療画像を生成し、医療画像にDICOM規格で規定された付帯情報を付加して出力する装置が含まれる。具体例としては、CT装置(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影装置)、4DCT装置(4 Dimensions Computed Tomography:4次元CT装置)、MRI装置(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像撮影装置)、PET装置(Positron Emission Tomography:陽電子放射断層撮影装置)、超音波診断装置、平面X線検出器(FPD:flat panel detector)を用いたCR装置(Computed Radiography:コンピュータX線撮影装置)、MG装置(Mammography:マンモグラフィ)等が挙げられる。
【0029】
データ作成装置20は、被検体から採取した組織をカメラで撮影した病理画像を医療画像として扱ってもよい。また、データ作成装置20は、心電図測定装置、内視鏡、ゲノム解析システムからデータを取得してもよい。心電図測定装置は、心臓の電気的な活動の変化を生体表面の電極を介して検出してグラフの形に記録する装置である。内視鏡は、被検体の食道、腸等の管腔領域を観察するための光学系機器である。内視鏡は、切開部位の内部を観察するための光学系機器を含む。ゲノム解析システムは、被検体の遺伝情報を解析するシステムである。ゲノム解析システムは、被検体の細胞サンプルについてゲノム解析を行う。
【0030】
ネットワーク22は、例えばLAN(Local Area Network)によって実現される。検査予約システム12と、AI処理コンピュータ14と、検査予約コンピュータ18と、データ作成装置20とは、ネットワーク22を介して接続されている。なお、AI処理コンピュータ14の機能をクラウド上に配置してもよい。
【0031】
<医療行為のオーダー管理システム>
図3は、病院内システム10で使用される医療行為のオーダー管理システム30の機能構成を示すブロック図である。医療行為のオーダー管理システム30の処理は、例えば検査予約コンピュータ18によって行われる。医療行為のオーダー管理システム30は、対象部位取得部32と、計算処理結果取得部34と、医療行為管理部36と、オーダー管理部38と、を備えている。
【0032】
対象部位取得部32は、患者(被検体)の検査対象となる対象部位を取得する。計算処理結果取得部34は、第1の医療行為の結果に基づいて実行された疾病に関する計算処理の計算処理結果を取得する。
【0033】
医療行為管理部36は、疾病に関する計算処理と、計算処理の対象部位と、計算処理の実行に必要な第1の医療行為と、医師による疾病の診断及び治療の少なくとも一方に必要な第2の医療行為と、を紐付けて管理する。オーダー管理部38は、対象部位における第1の医療行為と第2の医療行為とのオーダーを発行し、発行したオーダーをデータ作成装置20に依頼する。
【0034】
<計算処理部>
図4は、AI処理コンピュータ14が備える計算処理部40の主要な機能構成を示すブロック図である。ここでは、計算処理部40が脳梗塞を認識する脳梗塞AIである場合を例に説明する。脳梗塞AIは、CT画像を使用して脳梗塞の認識処理を行う学習モデルであり、CT画像を使用して学習する学習モデルである。
【0035】
計算処理部40は、複数のレイヤー構造を有し、複数の重みパラメータを保持している。計算処理部40は、重みパラメータが初期値から最適値に更新されることで、未学習モデルから学習済みモデルに変化しうる。
【0036】
計算処理部40は、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolution Neural Network)の構成を有し、入力層60と、中間層62と、出力層64と、を備える。入力層60、中間層62、出力層64は、それぞれ複数の「ノード」が「エッジ」で結ばれる構造となっている。
【0037】
入力層60には、入力データとしてCR画像とCT画像とが入力される。
【0038】
中間層62は、入力層から入力した画像から特徴を抽出する層である。中間層62は、畳み込み層とプーリング層とを1セットとする複数セットと、全結合層とを有する。畳み込み層は、前の層で近くにあるノードに対してフィルタを使用した畳み込み演算を行い、特徴マップを取得する。プーリング層は、畳み込み層から出力された特徴マップを縮小して新たな特徴マップとする。全結合層は、直前の層(ここではプーリング層)のノードの全てを結合する。畳み込み層は、画像からのエッジ抽出等の特徴抽出の役割を担い、プーリング層は抽出された特徴が、平行移動等による影響を受けないようにロバスト性を与える役割を担う。なお、中間層62には、畳み込み層とプーリング層とを1セットとする場合に限らず、畳み込み層が連続してもよいし、正規化層が含まれてもよい。
【0039】
出力層64は、中間層62により抽出された特徴に基づき肺がんを検出する認識結果を出力する層である。また、検出した肺がんが良性及び悪性のいずれかを分類する認識結果を出力してもよい。
【0040】
学習済みの計算処理部40は、脳梗塞を分類する場合、例えば「悪性」、「良性」、「その他」の3つのカテゴリに分類し、認識結果は「悪性」、「良性」、「その他」に対応する3つのスコアとして出力する。3つのスコアの合計は100%である。
【0041】
学習前の計算処理部40の各畳み込み層に適用されるフィルタの係数、オフセット値、全結合層における次の層との接続の重みは、任意の初期値がセットされる。
【0042】
計算処理部40は、出力層64から出力される認識結果と正解データとの誤差に基づいて、誤差逆伝播法により脳梗塞AIの重みパラメータが調整される。このパラメータの調整処理を繰り返し行い、脳梗塞AIの出力と正解データとの差が小さくなるまで繰り返し学習が行われる。
【0043】
計算処理部40は、実現したい認識処理によっては正解データを用いなくてもよい。また、計算処理部40は、エッジ抽出等のあらかじめ設計したアルゴリズムで特徴を抽出し、その情報を用いてサポートベクターマシン等で学習してもよい。
【0044】
脳梗塞AIは、CT画像とCT画像以外の画像とを使用して学習し、CT画像を使用して認識処理を行ってもよい。すなわち、認識処理に使用する入力データは、学習処理に使用した入力データの部分集合であってもよい。
【0045】
<医療行為のオーダー管理方法>
図5は、医療行為のオーダー管理システム30による医療行為のオーダー管理方法を示すフローチャートである。病院内の検査予約管理は、医療行為のオーダー管理システム30と検査予約システム12との双方によって行われる。また、病院内の検査予約管理は、ユーザによる操作と半自動処理とによって管理される。
【0046】
ステップS1(医療行為管理工程の一例)では、医療行為管理部36は、計算処理情報管理部から、処理の実行に必要なデータ情報を取得する。計算処理情報管理部は、AI処理に必要なリソースを管理する計算処理部(例えばAI処理コンピュータ14)に搭載される。計算処理部は、クラウド上に配置されてもよい。ここでは、医療行為管理部36は、処理の実行に必要なデータ情報として
図2に示したテーブル16を取得する。
【0047】
ステップS2(対象部位取得工程の一例)では、対象部位取得部32は、患者の症状、及び医師の指示をもとに、対象部位を取得する。対象部位とは、医療行為を行う人体の部位を指す。ここでは、対象部位として「胸部」を取得したものとする。
【0048】
ステップS3では、医療行為管理部36は、ステップS2で取得した対象部位から計算処理対象を絞り込み、絞り込んだ計算処理対象に必要なデータ情報を取得する。ここでは、対象部位が「胸部」であるため、
図2に示すように、胸部を対象部位とする「骨転移AI」、「乳がんAI」、「肺がんAI」、「心筋梗塞AI」が計算処理対象である。
【0049】
また、
図2に示すように、「骨転移AI」は、第1の医療行為がCT画像の撮影であり、第2の医療行為がPET画像の撮影である。この「CT画像」が、「骨転移AI」の計算処理に必要なデータ情報に相当する。
【0050】
同様に、「乳がんAI」、「肺がんAI」、「心筋梗塞AI」は、第1の医療行為がそれぞれCT画像の撮影、CR画像の撮影、心電図測定であり、第2の医療行為がそれぞれMG画像の撮影、CT画像の撮影、4DCT(4Dimension Computed Tomography)画像の撮影である。ここでは、「CT画像」、「CR画像」、「心電図波形データ」が計算処理に必要なデータ情報に相当する。
【0051】
ステップS4では、医療行為管理部36は、絞り込んだ計算処理対象に複数のデータが必要か否かを判定する。複数のデータが必要な場合は、医療行為のオーダー管理システム30は、ステップS5の処理を行う。複数のデータが必要でない場合は、医療行為のオーダー管理システム30は、ステップS6の処理を行う。ここでは、CT画像、CR画像、心電図波形データが必要であるため、複数のデータが必要であると判断される。
【0052】
ステップS5(オーダー管理工程の一例)では、医療行為管理部36は、計算処理に必要なデータの作成順を計算処理の優先度から計算する。計算処理の効果及び優先度は、計算処理情報管理部に記憶されている。
【0053】
ステップS6(オーダー管理工程の一例)では、オーダー管理部38は、第1の医療行為のオーダーを発行し、発行したオーダーをデータ作成装置20に依頼する。第1の医療行為について複数のデータが必要な場合は、ステップS5で計算したデータの作成順に則ってオーダーを依頼する。また、ステップS7(オーダー管理工程の一例)では、オーダー管理部38は、第2の医療行為のオーダーを発行し、発行したオーダーをデータ作成装置20に依頼する。オーダー管理部38は、第2の医療行為のオーダーを、疾病のガイドラインなどに応じて自動で連動して管理してもよい。
【0054】
図6と
図7とは、本実施形態に係る患者についてオーダー管理部38が発行する時刻毎のオーダーを示す表である。
【0055】
図6に示すように、CT画像のオーダーが13時00分の予約1Aとして発行されている。これは、骨転移AIの第1の医療行為と、乳がんAIの第1の医療行為のオーダーである。
【0056】
CR画像のオーダーが13時30分の予約2Aとして発行されている。これは、肺がんAIの第1の医療行為のオーダーである。また、心電図波形データのオーダーが14時00分の予約3Aとして発行されている。これは、心筋梗塞AIの第1の医療行為のオーダーである。
【0057】
このように、まず複数の第1の医療行為のデータ作成のオーダーが発行される。これにより、第2の医療行為よりも複数の計算処理を優先して行うことができる。ここでは第1の医療行為のデータ作成の優先度順は、CT画像、CR画像、心電図波形データの順である。これにより、優先度の高い計算処理を優先することができる。
【0058】
また、PET画像のオーダーが14時30分の予約1Bとして発行されている。これは、骨転移AIの第2の医療行為のオーダーである。また、MG画像のオーダーが15時00分の予約1Cとして発行されている。これは、乳がんAIの第2の医療行為のオーダーである。
【0059】
さらに、CT画像のオーダーが15時30分の予約2Bとして発行されている。これは、肺がんAIの第2の医療行為のオーダーである。また、4DCT画像のオーダーが16時00分の予約3Bとして発行されている。これは、心筋梗塞AIの第2の医療行為のオーダーである。
【0060】
このように、第1の医療行為のデータ作成のオーダーの後に、第2の医療行為のデータ作成のオーダーが発行される。後述するように、第2の医療行為よりも複数の計算処理を優先して行うことで、複数の第2の医療行為のうち不要な第2の医療行為を実施してしまうことを防止することができる。
【0061】
データ作成装置20は、発行されたオーダーに従って順にデータを作成する。AI処理コンピュータ14は、作成されたデータについてそれぞれ対応する計算処理部40によって計算処理を行う。例えば、13時00分の予約1Aによって作成されたCT画像について、骨転移AIと乳がんAIとによりそれぞれ計算処理する。
【0062】
ステップS8(計算処理結果取得工程の一例)では、計算処理結果取得部34は、データ作成装置20で作成されたデータに対する計算処理の計算処理結果を取得する。ここでは最初に、13時00分の予約1Aによって作成されたCT画像について骨転移AIと乳がんAIとによりそれぞれ計算処理された計算処理結果を取得する。
【0063】
ステップS9では、オーダー管理部38は、計算処理結果に基づいてデータ作成が継続して必要か否か、すなわち第2の医療行為の要否を判定する。第2の医療行為が不要な場合は、医療行為のオーダー管理システム30は、ステップS10の処理を行う。また、第2の医療行為が必要な場合は、医療行為のオーダー管理システム30は、ステップS11の処理を行う。
【0064】
ここでは、骨転移AIの計算処理結果が陽性であり、乳がんAIの計算処理結果が陰性であってものとする。この場合、オーダー管理部38は、骨転移については第2の医療行為が必要と判断し、乳がんについては第2の医療行為が不要と判断する。
【0065】
ステップS10では、オーダー管理部38は、紐付けられているデータ作成のオーダーをキャンセルする。ここでは、
図7に示すように、オーダー管理部38は、乳がんAIの第2の医療行為のオーダーであるMG画像の予約1Cをキャンセルする。したがって、不要な第2の医療行為であるMG画像のデータ作成を実施してしまうことを防止することができる。
【0066】
なお、骨転移については第2の医療行為が必要であるため、オーダー管理部38は、骨転移AIの第2の医療行為のオーダーであるPET画像の予約1Bを維持する。また、肺がんAIの第2の医療行為のオーダーであるCT画像の予約2Bが15時30分にオーダーされているが、13時00分の予約1Aにおいて取得されたCT画像を用いることで、予約2Bをキャンセルしてもよい。
【0067】
ステップS11では、オーダー管理部38は、第1の医療行為のデータ作成が残っているか否かを判定する。第1の医療行為のデータ作成が残っている場合は、計算処理結果取得部34はステップS8の処理を行う。第1の医療行為のデータ作成が残っていない場合は、医療行為のオーダー管理システム30は本フローチャートの処理を終了する。
【0068】
ここでは、計算処理結果取得部34は、再びステップS8の処理を行う。すなわち、計算処理結果取得部34は、予約2Aにおいて取得されたCR画像について、肺がんAIによる計算処理の計算処理結果を取得する。また、計算処理結果取得部34は、その後再びステップS8の処理を行う際に、予約3Aにおいて取得された心電図波形データについて、心筋梗塞AIによる計算処理の計算処理結果を取得する。
【0069】
以上のように、医療行為のオーダー管理システム30は、患者の検査対象となる対象部位を取得し、取得した対象部位における第1の医療行為と第2の医療行為とのオーダーを発行し、第1の医療行為の結果に基づいて実行された疾病に関する計算処理の計算処理結果を取得し、計算処理結果に基づいて第2の医療行為の要否を判断する。これにより、患者の検査対象となる対象部位に対応した医療行為のオーダーを発行することができるので、医療行為のオーダーを適切に管理することができる。ここでは、計算処理結果が疾病について陰性である場合に第2の医療行為のオーダーをキャンセルする。これにより、不要な医療行為の実施を防止し、データ量を削減することができる。なお、計算処理結果に応じて第2の医療行為を追加予約してもよい。
【0070】
<その他>
上記の医療行為のオーダー管理方法は、各工程をコンピュータに実現させるためのプログラムとして構成し、このプログラムを記憶したCD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory)等の非一時的な記録媒体を構成することも可能である。
【0071】
ここまで説明した実施形態において、例えば、医療行為のオーダー管理システム30の各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、画像処理に特化したプロセッサであるGPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0072】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサ(例えば、複数のFPGA、或いはCPUとFPGAの組み合わせ、又はCPUとGPUの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、サーバ及びクライアント等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0073】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0074】
本発明の技術的範囲は、上記の実施形態に記載の範囲には限定されない。各実施形態における構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各実施形態間で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0075】
10…病院内システム
12…検査予約システム
14…AI処理コンピュータ
16…テーブル
18…検査予約コンピュータ
20…データ作成装置
22…ネットワーク
30…医療行為のオーダー管理システム
32…対象部位取得部
34…計算処理結果取得部
36…医療行為管理部
38…オーダー管理部
40…計算処理部
60…入力層
62…中間層
64…出力層
S1~S11…医療行為のオーダー管理方法の各ステップ