(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】発光モジュール、画像表示装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20231109BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20231109BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20231109BHJP
【FI】
H01L33/50
G02F1/13357
F21S2/00 439
F21S2/00 431
F21S2/00 482
F21S2/00 481
(21)【出願番号】P 2021102792
(22)【出願日】2021-06-21
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】森川 武
(72)【発明者】
【氏名】簑手 恵理
(72)【発明者】
【氏名】塩田 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】木島 直人
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-219277(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0341055(US,A1)
【文献】特開2018-137321(JP,A)
【文献】特開2017-157721(JP,A)
【文献】特開2021-068548(JP,A)
【文献】特開2019-174563(JP,A)
【文献】特開2020-105283(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0070344(KR,A)
【文献】欧州特許出願公開第03454384(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
G02F 1/13357
F21S 2/00
F21V 8/00
C09K 11/00 - 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
440nm以上460nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、発光ピークの半値全幅が25nm以下である発光素子と、
620nm以上640nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、発光ピークの半値全幅が25nm以下であり、前記発光素子が発する光の一部を吸収して該光とは異なる波長の光を発する波長変換部材と、を備え、
色度座標値がCIEで規定する色度座標値xと色度座標値yにおいて、0.19≦x≦0.23かつ0.03≦y≦0.10の範囲内の光を発し、
波長380nm以上555nm以下の波長に亘る放射エネルギー強度の積分値E1と波長555nm以上780nm以下の波長に亘る放射エネルギー強度の積分値E2が0.1≦E2/E1≦0.4の範囲内であり、
波長500nm以上600nm以下の波長の範囲内の最大放射エネルギー強度が波長380nm以上780nm以下の波長の範囲内の最大放射エネルギー強度の10%以下である、発光装置
と、
前記発光装置が発する光の一部を吸収して該光とは異なる波長の光を発する量子ドット含有部材と、を有し、
前記量子ドット含有部材は、515nm以上535nm以下に発光ピーク波長を有し、発光ピークの半値全幅が30nm以下であるペロブスカイト構造又はカルコパイライト構造の量子ドットを含有する、発光モジュール。
【請求項2】
前記発光素子は、Ga、In、及びNを含有する発光ダイオードであり、
前記波長変換部材は、Mn
4+で賦活されるフッ化物蛍光体を含有する、請求項1に記載の
発光モジュール。
【請求項3】
前記波長変換部材は、式(I)で表される組成を有するフッ化物蛍光体を含有する、請求項2に記載の
発光モジュール。
A
1
a[M
1
1-bMn
bF
c] (I)
(式(I)中、A
1は、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を含む。M
1は、少なくともSi及びAlを含み、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。bは0<b<0.2を満たし、aは[M
1
1-bMn
bF
c]イオンの電荷の絶対値であり、cは5<c<7を満たす。)
【請求項4】
前記波長変換部材は、式(II)で表される組成を有するフッ化物蛍光体を含有する、請求項2に記載の
発光モジュール。
A
2
d[M
2
1-eMn
eF
f] (II)
(式(II)中、式(II)中、A
2は、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を含む。M
2は、少なくともSi及びGeの少なくとも一方を含み、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。eは0<e<0.2を満たし、dは[M
2
1-eMn
eF
f]イオンの電荷の絶対値であり、fは5<f<7を満たす。)
【請求項5】
前記発光素子は複数有し、複数の前記発光素子が線状に配置された線状の発光装置である、請求項1から4のいずれか1項に記載の
発光モジュール。
【請求項6】
前記発光素子は複数有し、複数の前記発光素子が面状に配置された面状の発光装置である、請求項1から4のいずれか1項に記載の
発光モジュール。
【請求項7】
前記発光装置は、前記発光素子が配置された面に光反射性部材を備える基板を有する、請求項5又6に記載の
発光モジュール。
【請求項8】
前記発光装置は、前記発光素子からの光が導光する導光部材を有する、請求項5から7のいずれか1項に記載の
発光モジュール。
【請求項9】
前記量子ドット含有部材は、シート状である、請求項
1から8のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項10】
前記量子ドット含有部材は、前記量子ドットを含有する第1シートが前記量子ドットを含有しない第2シートに挟まれた積層構造である、請求項
9に記載の発光モジュール。
【請求項11】
請求項
1から
10のいずれか1項に記載の発光モジュールと、
赤色画素、緑色画素、及び青色画素を有するカラーフィルタと、
前記発光モジュールと前記カラーフィルタとの間の光路上に配置され、前記カラーフィルタに入射する光を制御する光透過制御部材と、を有する画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光モジュール、及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード等の光源を有する発光装置が知られている。一例として、所定の赤色に発光する発光装置が挙げられる。この発光装置は、発光源として、420nm以上480nm以下に第1発光ピーク波長を持つ第1発光素子と、610nm以上750nm以下に第2発光ピーク波長を持つ少なくとも1種の蛍光体と、を主に含み、CIE1931の色度図において、色度座標がx=0.666、y=0.334である第一の点、色度座標がx=0.643、y=0.334である第二の点、色度座標がx=0.576、y=0.291である第三の点及び色度座標がx=0.737、y=0.263である第四の点について、第一の点及び第二の点を結ぶ第一の直線と、第二の点及び第三の点を結ぶ第二の直線と、第三の点及び第四の点を結ぶ第三の直線と、第四の点及び第一の点を結ぶ色度図の曲線とで囲まれる範囲の光を発する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、バックライト用光源に適した所望の色度の発光をする発光装置を用いた発光モジュール、及びこの発光モジュールを用いた画像表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態に係る発光モジュールは、440nm以上460nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、発光ピークの半値全幅が25nm以下である発光素子と、620nm以上640nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、発光ピークの半値全幅が25nm以下であり、前記発光素子が発する光の一部を吸収して該光とは異なる波長の光を発する波長変換部材と、を備え、色度座標値がCIEで規定する色度座標値xと色度座標値yにおいて、0.19≦x≦0.23かつ0.03≦y≦0.10の範囲内の光を発し、波長380nm以上555nm以下の波長に亘る放射エネルギー強度の積分値E1と波長555nm以上780nm以下の波長に亘る放射エネルギー強度の積分値E2が0.1≦E2/E1≦0.4の範囲内であり、波長500nm以上600nm以下の波長の範囲内の最大放射エネルギー強度が波長380nm以上780nm以下の波長の範囲内の最大放射エネルギー強度の10%以下である、発光装置と、前記発光装置が発する光の一部を吸収して該光とは異なる波長の光を発する量子ドット含有部材と、を有し、前記量子ドット含有部材は、515nm以上535nm以下に発光ピーク波長を有し、発光ピークの半値全幅が30nm以下であるペロブスカイト構造又はカルコパイライト構造の量子ドットを含有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一実施形態によれば、バックライト用光源に適した所望の色度の発光をする発光装置を用いた発光モジュール、及びこの発光モジュールを用いた画像表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す斜視図(その1)である。
【
図2】第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す斜視図(その2)である。
【
図3】第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る発光装置の変形例を模式的に示す斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係る発光装置100の発光スペクトルの一例である。
【
図7】第1実施形態に係る発光装置が発する光の色度座標(CIE1931)を示す色度図の一部である。
【
図8】第1実施形態に係る発光装置100Aを用いた発光モジュールを例示する断面図である。
【
図9】第1実施形態に係る発光装置100Aを用いた発光モジュールを例示する部分斜視図である。
【
図10】量子ドット含有部材の一例を示す断面図である。
【
図11】量子ドット含有部材の発光スペクトルの一例である。
【
図12】第1実施形態に係る発光モジュール300Aを用いた画像表示装置を例示する断面図である。
【
図13】第2実施形態に係る発光装置を模式的に示す斜視図である。
【
図14】第2実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図である。
【
図15】第2実施形態に係る発光装置の変形例1を模式的に示す平面図である。
【
図16】第2実施形態に係る発光装置の変形例2を模式的に示す断面図である。
【
図17】第2実施形態に係る発光装置の変形例2を模式的に示す平面図である。
【
図18】第2実施形態に係る発光装置200Aを用いた発光モジュールを例示する断面図である。
【
図19】実施例に係る発光装置の発光スペクトルである。
【
図20】実施例に係る発光モジュールの発光スペクトルである。
【
図21】実施例に係る画像表示装置を構成する液晶パネルの透過スペクトルである。
【
図22】実施例に係る画像表示装置の青色画素、緑色画素、及び赤色画素の発光スペクトルである。
【
図23】実施例に係る画像表示装置全体の発光スペクトルである。
【
図24】CIE1931色度座標における包含率のシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。又、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
【0009】
また、本開示において「平行」とは、特に他の言及がない限り、2つの直線、辺、面等が0°から±5°程度の範囲にある場合を含む。また、本開示において「垂直」または「直交」とは、特に他の言及がない限り、2つの直線、辺、面等が90°から±5°程度の範囲にある場合を含む。
【0010】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光装置等を例示するものであって、本発明を以下に限定するものではない。又、以下に記載されている構成部品の寸法、材料、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。又、一の実施形態において説明する内容は、他の実施形態や変形例にも適用可能である。又、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。さらに、図面が過度に複雑になることを避けるために、一部の要素の図示を省略した模式図を用いたり、断面図として切断面のみを示す端面図を用いたりすることがある。
【0011】
また、本開示において、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。具体的には、380nm~410nmが紫色、410nm~455nmが青紫色、455nm~485nmが青色、485nm~495nmが青緑色、495nm~548nmが緑色、548nm~573nmが黄緑色、573nm~584nmが黄色、584nm~610nmが黄赤色、610nm~780nmが赤色である。
【0012】
また、本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0013】
(第1実施形態)
〔発光装置100〕
図1は、第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す斜視図(その1)である。
図2は、第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す斜視図(その2)である。
図3は、第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図である。
図1~
図3には、説明の便宜のために、互いに直交するX方向、Y方向及びZ方向を示す矢印があわせて図示されている。なお、本開示の他の図面においてもこれらの方向を示す矢印を図示することがある。本開示においては、図中のX方向を第1方向と呼ぶことがある。
【0014】
図3は、発光装置100の中央付近で発光装置100をZX面に平行に切断したときの模式的な断面図に相当する。
図3に示すように、発光装置100は、第1発光素子121及び第2発光素子122を含む。第1発光素子121は、上面121a及び側面121cを有する。同様に、第2発光素子122は、上面122a及び側面122cを有する。第1発光素子121及び第2発光素子122は、それぞれの上面とは反対側の下面に電極24を有している。
図3は、第1方向を含み、かつ、第1発光素子121の上面121aに垂直な断面における発光装置100の構造を示している。本明細書では、ZX断面を第1断面と呼ぶことがある。
【0015】
発光装置100は、さらに、これら発光素子を支持する基板110を有する。基板110は、上面110aを有し、第1発光素子121及び第2発光素子122は、基板110の上面110a上に配置されている。ここでは2つの発光素子が配置された発光装置を用いて説明する。また2つに限るものではなく、複数の発光素子が線状に配置された線状の発光装置であってもよい。
【0016】
図1~
図3に例示する構成において、発光装置100は、第1発光素子121、第2発光素子122及び基板110に加えて、第1透光性部材131Aと、第2透光性部材132Aと、光反射性部材140Aとを含む。
【0017】
第1透光性部材131Aは、上面131a及び下面131bと、上面131aと下面131bとの間に位置する側面131cとを有し、第1発光素子121の上面121aの上方に位置している。ここでは、図中のZ方向は、第1発光素子121から第1透光性部材131Aに向かう方向であり、第1発光素子121の上面121aの法線は、Z方向に概ね平行である。
【0018】
第2透光性部材132Aも第1透光性部材131Aと同様に、上面132a、下面132b及び側面132cを有する。
図3に例示する構成において、第2透光性部材132Aは、第2発光素子122の上面122aの上方に位置している。ここでは、第2接合部材152の一部が、第2発光素子122の側面122c上に位置している。
【0019】
図3に示すように、この例では、第1透光性部材131Aの上面131aの全体が第1面31に相当し、第2透光性部材132Aの上面132aの全体が第2面32に相当する。第1面31は、第1発光素子121の上面121aの上方に位置し、第2面32は、第2発光素子122の上面122aの上方に位置する。
図1~
図3に示す例において、第1面31及び第2面32のそれぞれは、断面視において凹状である。第1面31及び第2面32のそれぞれは概ね平坦な面であってもよい。
【0020】
図3に模式的に示すように、第1透光性部材131Aと第1発光素子121との間に、第1波長変換部材161及び透光性の第1接合部材151が介在している。第1接合部材151の一部は、第1発光素子121の側面121c上に位置し得る。また、第2透光性部材132Aと第2発光素子122との間に、第2波長変換部材162及び透光性の第2接合部材152が介在している。第2接合部材152の一部は、第2発光素子122の側面122c上に位置し得る。なお、本明細書における「透光性」及び「透光」の用語は、入射した光に対して拡散性を示すことをも包含するように解釈され、「透明」であることに限定されない。例えば第1透光性部材131Aは、母材とは異なる屈折率を有する光拡散材が分散されてもよく、分散されていなくてもよい。
【0021】
第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162は、母材と、波長変換材料を含有し、第1波長変換部材161中の波長変換材料は、第1発光素子121から出射された光の少なくとも一部を吸収して第1発光素子121からの光の波長とは異なる波長の光を発する。同様に、第2波長変換部材162中の波長変換材料は、第2発光素子122から出射された光の少なくとも一部を吸収して第2発光素子122からの光の波長とは異なる波長の光を発する。
【0022】
このように、波長変換部材が透光性部材と発光素子との間に介在することにより、波長変換部材を介して、発光素子からの光を透光性部材に導入させることが可能になる。これにより、透光性部材には、発光素子から出射された光と、発光素子から出射された光の少なくとも一部を吸収して発光素子からの光の波長とは異なる波長の光とが入射することになり、透光性部材内部でこれらの光が混色させることとなる。透光性部材に光拡散材が分散させられてる場合は、これらの光を透光性部材内部で拡散させることができる。このように、透光性部材内で、光を混色させること、また混色し拡散させることにより、輝度ムラの抑制された例えばマゼンタ色の光を第1面31または第2面32から発光装置100の外部に取り出すことができる。なお、第1波長変換部材161を透過した光及び第2波長変換部材162を透過した光を単一の透光性部材に導入する構成としてもよい。この構成によれば、第1波長変換部材161を透過した光及び第2波長変換部材162を透過した光を単一の透光性部材中で混合でき、輝度ムラを抑制した発光装置を得るために有利である。
【0023】
光反射性部材140Aは、第1発光素子121及び第2発光素子122を取り囲むようにして基板110上に有し、基板110の上面110aの一部を覆う。第1透光性部材131Aの上面131aの一部または全部、及び、第2透光性部材132Aの上面132aの一部または全部は、光反射性部材140Aから露出されている。透光性部材(ここでは第1透光性部材131A及び第2透光性部材132A)の上面のうち光反射性部材140Aから露出された部分は、発光素子からの光が取り出される光出射面を構成する。
【0024】
光反射性部材140Aは、第1部分141を有する。第1部分141は、光反射性部材140Aのうち、第1面31及び第2面32よりも上側に位置する部分であって、かつ、図中のX方向において第1面31と第2面32との間に位置する部分である。例えば
図3に示すように、この例では、第1部分141の表面は、第1面31及び第2面32に概ね平行かつ平坦な第1頂部141tを有している。ここで、「頂部」とは、光反射性部材140Aのうち透光性部材(
図3に示す例においては第1透光性部材131A及び第2透光性部材132A)から図のZ方向に最も離れた部分を指す。
【0025】
光反射性部材140Aの第1部分141の表面は、少なくとも1つの凹状の曲面を含んでいてもよい。
図3に示すように、ここでは、第1部分141の表面は、ZX断面(すなわち第1断面)において、第1曲面41及び第2曲面42をその一部に含んでいる。第1曲面41は、第1部分141の第1頂部141tと、第1透光性部材131Aの第1面31との間に位置する。第2曲面42は、第1部分141の第1頂部141tと第2透光性部材132Aの第2面32との間に位置する。第1部分141の表面が少なくとも1つの凹状の曲面を含むことにより、発光装置100からの光をより有効に利用して、導光板に対する発光装置100の光結合効率を向上させることが可能になる。
【0026】
図1~
図3に例示する構成において、光反射性部材140Aは、さらに、図のX方向における両端部に、第1透光性部材131Aの第1面31(ここでは上面131aの全体)及び第2透光性部材132Aの第2面32(ここでは上面132aの全体)よりもY方向において上側に位置する第2部分142及び第3部分143を有している。
図3に示すように、光反射性部材140Aの第2部分142は、図のX方向において第1面31の位置を基準に第1部分141とは反対側に位置する。他方、光反射性部材140Aの第3部分143は、図のX方向において第2面32の位置を基準に第1部分141とは反対側に位置する。換言すれば、
図3に示す断面において、第1透光性部材131Aの第1面31は、光反射性部材140Aの第1部分141と第2部分142とに挟まれた位置にあり、第2透光性部材132Aの第2面32は、光反射性部材140Aの第1部分141と第3部分143とに挟まれた位置にある。
【0027】
なお、第1部分141、第2部分142、及び第3部分143は、必要に応じて設ければよく、なくてもよい。光反射性部材140Aが第1部分141、第2部分142、及び第3部分143を有していない場合は、光反射性部材140Aの第1部分141、第2部分142、及び第3部分143が設けられていた領域は、例えば、平坦な面となる。さらに、この平坦な面は、第1透光性部材131Aの上面131aおよび第2透光性部材132Aの上面132aが平坦であって、これらすべての面が、面一の平坦な面であってもよい。
【0028】
図4に示す発光装置100Aのように、複数の発光装置100が基板185に配置されていてもよい。
図4では、基板185は細長状であって、基板の長手方向に3つの発光装置100が配置されている。また、複数の発光装置100が線状に配置されて一体化した構造としてもよい。この場合、発光装置は、第1発光素子121と第2発光素子122からなる組が複数組線状に配置された構造としてもよい。発光装置100Aは、エッジ型のバックライト用の光源として好適である。
【0029】
図5は、第1実施形態に係る発光装置100の発光スペクトルの一例である。
図5において、矢印e1で示す波長380nm以上555nm以下の範囲は、第1発光素子121及び第2発光素子122の発光スペクトルであり、矢印e2で示す波長555nm以上780nm以下の範囲は、第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162の発光スペクトルである。
【0030】
図5に示すように、第1発光素子121及び第2発光素子122は、440nm以上460nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、発光ピークの半値全幅が25nm以下である。第1発光素子121及び第2発光素子122の発光ピーク波長は、第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162の励起波長とおおよそ一致する。第1発光素子121及び第2発光素子122の発光ピークの半値全幅は、狭い方が好ましい。第1発光素子121及び第2発光素子122の発光ピークの半値全幅が狭いほど、第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162の発光ロスを減らすことができる。そして、発光装置100から外部に放出される第1発光素子121及び第2発光素子122からの光の量を減らすことができる。その結果、所定の色に発光する高輝度の発光装置100を実現できる。
【0031】
第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162は、620nm以上640nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、発光ピークの半値全幅が25nm以下である。第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162の発光ピークの半値全幅は、10nm以下であることが好ましい。第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162の発光ピークの半値全幅が狭いほど、発光装置100を画像表示装置に使用したときに、発光効率が特に高い画像表示装置を得ることが可能となる。
【0032】
ここで、第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162の発光ピークの半値全幅とは、
図5の一部を拡大した
図6に示すように、第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162の発光スペクトルにおいて、発光ピークPに対して放射エネルギーが半分の値となる波長範囲であり、
図6のFWHMで示す部分の幅である。半値全幅は、1nm程度の分解能を有する高精度の測定装置で測定した発光スペクトルに基づいて特定される。すなわち、発光スペクトルは、
図6における発光ピークPと、発光ピークPよりも長波長側に存在する第2ピークとを分離することが可能な測定装置で測定する必要がある。
【0033】
発光装置100において、矢印e1で示す波長380nm以上555nm以下の波長に亘る放射エネルギー強度の積分値をE1、矢印e2で示す波長555nm以上780nm以下の波長に亘る放射エネルギー強度の積分値をE2とすると、積分値E1と積分値E2が0.1≦E2/E1≦0.4の範囲内である。また、発光装置100は、波長500nm以上600nm以下の波長の範囲内の最大放射エネルギー強度が波長380nm以上780nm以下の波長の範囲内の最大放射エネルギー強度の10%以下である。これにより、発光装置100を画像表示装置に使用したときに、画像表示装置の色再現範囲を向上できる。
【0034】
図7は、第1実施形態に係る発光装置が発する光の色度座標(CIE1931)を示す色度図の一部である。
図7において、矩形で示す範囲は、発光装置100が発する光の範囲である。
図7における各矢印は、矩形の4つの頂点の各々の色度座標値を示している。
図7に示すように、発光装置100は、色度座標値がCIEで規定する色度座標値xと色度座標値yにおいて、0.19≦x≦0.23かつ0.03≦y≦0.10の範囲内の光を発する。これは言い換えれば、マゼンタ色の発光をする発光装置であることを指す。
【0035】
このように、発光装置100において、第1発光素子121及び第2発光素子122は440nm以上460nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、発光ピークの半値全幅が25nm以下であり、第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162は620nm以上640nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、発光ピークの半値全幅が25nm以下である。そして、色度座標値がCIEで規定する色度座標値xと色度座標値yにおいて、0.19≦x≦0.23かつ0.03≦y≦0.10の範囲内の光を発し、上記のE1及びE2が0.1≦E2/E1≦0.4の範囲内であり、波長500nm以上600nm以下の波長の範囲内の最大放射エネルギー強度が波長380nm以上780nm以下の波長の範囲内の最大放射エネルギー強度の10%以下である。
【0036】
このような特性を有する発光装置100は、515nm以上535nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し発光ピークの半値全幅が30nm以下である量子ドット含有部材を含む発光モジュールとすることで、所望の白色の発光が可能な発光モジュールを得ることができる。さらに、このような特性を有する発光装置100は、515nm以上535nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し発光ピークの半値全幅が30nm以下である量子ドット含有部材を含む発光モジュールを得ることで、画像表示装置のバックライト用光源に適した所望の色度の発光をすることができる。すなわち、発光装置100をこのような画像表示装置のバックライト用光源に使用することにより、画像表示装置の色域規格であるRec2020に対してCIE色度座標xy値の包含率で90%以上、さらには95%以上の色再現範囲を示す画像表示装置を得ることが可能となる。
【0037】
なお、発光装置100において、色度座標値xと色度座標値yの範囲やE2/E1の値は、第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162における波長変換材料の含有量や波長変換材料の粒径等により調整可能である。
【0038】
以下、発光装置100に含まれる部材について詳説する。
【0039】
[基板110]
基板110は、第1発光素子121及び第2発光素子122が実装される支持体である。第1方向(図のX方向)に沿って第1発光素子121及び第2発光素子122が実装されることに対応して、基板110の上面110aは、典型的には、図のY方向と比較してX方向に長い長方形状を有する。
図1~
図3に示すように、基板110は、全体として概ね直方体状である。
【0040】
図3に例示する構成において、基板110は、上面及び下面を有する基材10と、第1配線11と、第2配線12と、基材10内部に配置された導電性部材15とを含む。基材10の上面は、基板110の上面110aに含まれ、基材10の下面は、基板110において上面110aの反対側に位置する下面110bに含まれる。第1配線11及び第2配線12は、それぞれ、基板110の上面110a側及び下面110b側に位置する。導電性部材15は、基材10を貫通して第1配線11と第2配線12とを互いに電気的に接続している。
【0041】
基材10は、第1配線11及び第2配線12が配置される概ね直方体状の支持体である。基材10の材料の例は、樹脂、セラミックスまたはガラス等の絶縁体である。基材10は、繊維強化樹脂等の複合材料から形成されてもよく、例えばガラスエポキシ基板を基材10に適用してもよい。基材10の母材には、エポキシ、ビスマレイミドトリアジン(BT)、ポリイミド等を用いることができる。セラミックスとしては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、酸化チタン、窒化チタン、または、これらの1種以上の混合物を適用できる。これらの材料のうち、発光素子に近い線膨張係数を有する材料を基材10の材料に用いると有利である。
【0042】
図2に例示するように、基材10は、それぞれが、基材10の下面と底面10mとに開口する1以上の窪み10Rを有し得る。ここで、基材10の底面10mは、基材10の上面と下面との間に位置する面であって、バックライトへの適用において配線基板の上面に対向させられる面である。
【0043】
基板110は、窪み10Rの内壁を覆う第3配線13をさらに有する。第3配線13は、基板110の下面110b上の第2配線12と連続して基材10の表面上に配置されることにより、第2配線12と電気的接続を有する。バックライトへの適用においては、これら窪み10R内に位置するようにはんだを配置することにより、発光装置100を配線基板に実装できる。
【0044】
第1配線11、第2配線12及び第3配線13の材料としては、銅、鉄、ニッケル、タングステン、クロム、アルミニウム、銀、白金、金、チタン、パラジウム、ロジウム、または、これらの1種以上を含有する合金を用いることができる。放熱性の観点からは、これらの配線の材料に銅または銅合金を適用することが有利である。第1配線11、第2配線12及び第3配線13は、単層膜の形で基材10に形成されてもよく、積層膜の形で基材10に形成されてもよい。これらの配線の最表面が、銀、白金、アルミニウム、ロジウムもしくは金、または、これらの1種以上を含有する合金から形成されていると、高い光反射性と、半田等に対する良好な濡れ性が得られるので有益である。
【0045】
導電性部材15の材料にも、第1配線11、第2配線12または第3配線13の材料と同様の材料を適用できる。導電性部材15は、基材10に形成された貫通孔内部の全体を占めていてもよいし、貫通孔内部の一部、例えば貫通孔の表面上に配置された導電膜であってもよい。さらに、導電膜に囲まれた領域には、例えばエポキシ樹脂などの絶縁材料が充填されてもよい。
【0046】
[第1発光素子121及び第2発光素子122]
第1発光素子121及び第2発光素子122は、電流の供給により発光する素子である。第1発光素子121及び第2発光素子122の基本的な構造は、概ね共通であり得る。第1発光素子121及び第2発光素子122は、440nm以上460nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、発光ピークの半値全幅が25nm以下であれば、互いに特性が異なっていてもよい。以下では、第1発光素子121の構造を主に説明し、第2発光素子122に関する説明を省略する。
【0047】
図3を参照しながら説明したように、第1発光素子121は、上面121aとは反対側の下面に位置する電極24を有する。電極24は、正極及び負極の組を含む。電極24の材料の例は、金、銀、錫、白金、ロジウム、チタン、アルミニウム、タングステン、パラジウム、ニッケル、または、これらの1種以上を含む合金である。第1発光素子121は、半田等の接合部材によって電極24が基板110の第1配線11に接続及び固定されることにより、基板110上に実装される。
【0048】
第1発光素子121には半導体発光素子を用いることが好ましい。半導体発光素子は高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強く、安定しているからである。第1発光素子121は、例えば、Ga、In、及びNを含有する発光ダイオードであってもよい。具体的には、第1発光素子121として、例えば、窒化物系半導体(InXAlyGa1-X-yN、0≦x、0≦y、x+y≦1)を用いた青紫色や青色に発光する発光ダイオードを用いることができる。第1発光素子121は主に青紫色や青色を発し、紫外線の成分をほとんど含まないため、発光装置100の構成部品の劣化を抑えることができ、人体への悪影響が小さい。
【0049】
第1発光素子121は、例えば、n型半導体層及びp型半導体層と、これらに挟まれた活性層とを含む半導体積層構造を有する。半導体積層構造は、サファイアまたは窒化ガリウム等の支持基板上に形成され得る。第1発光素子121がその一部に支持基板を含む場合、支持基板の上面が第1発光素子121の上面121aを構成する。上述の電極24は、半導体積層構造の、支持基板とは反対側の表面に設けられる。電極24は、半導体積層構造との間に電気的接続を有し、半導体積層構造に所定の電流を供給する機能を有する。
【0050】
[第1透光性部材131A、第2透光性部材132A]
第1透光性部材131A及び第2透光性部材132Aは、それぞれ第1発光素子121の上方及び第2発光素子122の上方に配置される概ね板状の部材である。第1透光性部材131A及び第2透光性部材132Aは、第1発光素子121及び第2発光素子122の保護層として機能する。
【0051】
第1透光性部材131A及び第2透光性部材132Aは、例えば、シリコーン樹脂等を母材とする樹脂材料から形成される。典型的には、第1透光性部材131Aは、第1発光素子121の発光ピーク波長を有する光に対して、60%以上の透過率を有する。第2透光性部材132Aについても同様のことがいえる。光を有効に利用する観点から、発光素子の発光ピーク波長における透光部材(第1透光性部材131A、第2透光性部材132A)の透過率が70%以上であると有益であり、80%以上であるとより有益である。
【0052】
第1透光性部材131A及び第2透光性部材132Aの母材には、シリコーン樹脂のほか、例えば、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルペンテン樹脂もしくはポリノルボルネン樹脂、または、これらの2種以上を含む材料を適用し得る。第1透光性部材131A及び第2透光性部材132Aの材料として、ガラスを選択することも可能である。
【0053】
母材とは異なる屈折率を有する光拡散材を母材中に分散させることにより、第1透光性部材131A及び第2透光性部材132Aに光拡散機能を与えてもよい。光拡散材としては、例えば、母材と屈折率の異なる樹脂の粒子、または、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムもしくは酸化亜鉛の粒子等を用いることができる。母材中に分散させる光拡散材として、D50で定義される粒径が1nm以上100nm以下であるようなナノ粒子を用いることにより、透光性部材中の散乱を増大させることができる。
【0054】
[第1波長変換部材161、第2波長変換部材162]
第1波長変換部材161は、第1発光素子121の上面121aと第1透光性部材131Aの下面131bとの間に位置する概ね板状の部材である。同様に、第2波長変換部材162は、第2発光素子122の上面122aと第2透光性部材132Aの下面132bとの間に位置する概ね板状の部材である。
【0055】
第1波長変換部材161は、第1発光素子121が発する光の一部を吸収して該光とは異なる波長の光を発する。第2波長変換部材162は、第2発光素子122が発する光の一部を吸収して該光とは異なる波長の光を発する。第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162は、620nm以上640nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、発光ピークの半値全幅が25nm以下であれば、互いに特性が異なっていてもよい。
【0056】
第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162は、母材と、母材中に分散された、波長変換材料の粒子等を含有する。第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162の母材の例は、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、トリメチルペンテン樹脂、ポリノルボルネン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂もしくはフッ素樹脂、または、これらの2種以上を含む樹脂である。第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162の母材として、ガラスを選択することも可能である。第1透光性部材131Aに効率的に光を導入する観点からは、第1波長変換部材161の材料が第1透光性部材131Aの材料よりも低い屈折率を有すると有益である。同様に、第2波長変換部材162の材料が第2透光性部材132Aの材料よりも低い屈折率を有すると有益である。第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162は、単層であってもよいし、例えば複数の樹脂層の積層構造を含んでいてもよい。
【0057】
第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162中に分散させる波長変換材料には、例えば、蛍光体を用いることができる。ここでは、第1発光素子121及び第2発光素子122からの光を吸収し、620nm以上640nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発する蛍光体を少なくとも1種使用する。この蛍光体は、主に赤色を発光する。
【0058】
蛍光体は、Mn4+で賦活されるフッ化物蛍光体であることが好ましい。Mn4+で賦活されるフッ化物蛍光体は、例えば、式(I)で表される組成を有するものであってもよい。
【0059】
A1
a[M1
1-bMnbFc]・・・(I)
式(I)中、A1は、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を含む。M1は、少なくともSi及びAlを含み、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。bは0<b<0.2を満たし、aは[M1
1-bMnbFc]イオンの電荷の絶対値であり、cは5<c<7を満たす。)が挙げられる。
【0060】
また、式(I)で表される組成として、好ましくは次のものが挙げられる。A1は少なくともKを含む。M1は、少なくともSi及びAlを含み、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。bは0<b<0.2を満たし、aは[M1
1-bMnbFc]イオンの電荷の絶対値であり、cは5.9<c<6.1を満たす。これはKSAFと呼ばれることがある。具体例としては、K2Si0.99Al0.01F5.99:Mnがある。
【0061】
Mn4+で賦活されるフッ化物蛍光体は、例えば、式(II)で表される組成を有するものであってもよい。
【0062】
A2
d[M2
1-eMneFf]・・・(II)
式(II)中、A2は、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を含む。M2は、少なくともSi及びGeの少なくとも一方を含み、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。eは0<e<0.2を満たし、dは[M2
1-eMneFf]イオンの電荷の絶対値であり、fは5<f<7を満たす。)が挙げられる。
【0063】
また、式(II)で表される組成として、好ましくは次のものが挙げられる。A2はアルカリ金属を示し、少なくともKを含む。M2は、少なくともSi及びGeの少なくとも一方を含み、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。eは0<e≦0.2を満たし、dは[M2
1-eMneFf]イオンの電荷の絶対値であり、fは5.9<f<6.1を満たす。これはKSFと呼ばれることがある。具体例としては、例えば、K2SiF6:Mnがある。
【0064】
第1発光素子121及び第2発光素子122がGa、In、及びNを含有する発光ダイオードであり、第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162が波長変換材料としてMn4+で賦活されるフッ化物蛍光体を含有する場合、発光装置100を515nm以上535nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し発光ピークの半値全幅が30nm以下である量子ドット含有部材を含む画像表示装置に使用することにより、Rec2020に対してCIE色度座標xy値の包含率で90%以上、さらには95%以上の色再現範囲を示す画像表示装置を得ることが可能となる共に、発光効率が特に高い画像表示装置を得ることが可能となる。特に、第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162中が波長変換材料として式(I)又は式(II)で表される組成を有するMn4+で賦活されるフッ化物蛍光体を含有すれば、発光効率が特に高く、かつ、面内の色度偏差の小さい画像表示装置を得ることが可能となる。
【0065】
第1波長変換部材161中における波長変換材料の含有量(質量%)は、走査型電子顕微鏡を用い、発光装置100の断面に対して電子ビームを照射したとき放出される特性X線を測定することで求められる。同様に、第2波長変換部材162中における波長変換材料の含有量(質量%)は、走査型電子顕微鏡を用い、発光装置100の断面に対して電子ビームを照射したとき放出される特性X線を測定することで求められる。波長変換材料の含有量(質量%)は、例えば、走査型電子顕微鏡S-4700(日立製作所製)を用いて測定される。
【0066】
第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162中に分散させる波長変換材料の平均粒径は、特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。波長変換材料の平均粒径は、発光効率の観点から、1μm以上20μm以下であることが好ましく、5μm以上15μm以下であることがより好ましい。
【0067】
第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162中に分散させる波長変換材料は、量子ドット蛍光体であってもよい。第1波長変換部材161または第2波長変換部材162中には、量子ドット蛍光体や上記のフッ化物蛍光体のうちの1種を単体で含有させてもよいし、あるいは、これらの波長変換材料のうち2種以上を組み合わせて含有させてもよい。
【0068】
第1波長変換部材161と第2波長変換部材162とは、母材中に分散させる波長変換材料が同じでもよく、異なっていてもよい。また、第1波長変換部材161と第2波長変換部材162の材料に母材とは屈折率の異なる材料を含んでもよく、含んでいなくてもよい。
【0069】
[第1接合部材151、第2接合部材152]
第1接合部材151及び第2接合部材152は、それぞれ、第1発光素子121の側面121cの一部及び第2発光素子122の側面122cの一部に少なくとも接する透光性の部材である(
図3参照)。さらに、第1接合部材151及び第2接合部材152は、それぞれ、第1発光素子121と第1波長変換部材161との間、第2発光素子122と第2波長変換部材162との間にも位置する。上述の第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162は、それぞれ、第1接合部材151及び第2接合部材152によって第1発光素子121及び第2発光素子122に接合される。第2接合部材152の詳細は、第1接合部材151とほぼ同様であるので、以下では、主に第1接合部材151の詳細を説明し、第2接合部材152の詳細に関する説明を省略する。
【0070】
このように第1接合部材151を設けることにより、第1発光素子121が発する光のうち、側面121cから出る光の一部を第1接合部材151に入射させることができる。第1接合部材151に入射した光は、第1接合部材151の外面151cの位置で第1透光性部材131Aに向けて反射され、第1透光性部材131Aを介して発光装置100の外部に向けて出射する。したがって、第1接合部材151を設けることにより、光の取出し効率を向上させることができる。
【0071】
第1接合部材151の材料としては、透明な樹脂を母材として含む樹脂材料を用いることができる。第1接合部材151の母材としては、例えば第1透光性部材131Aの母材と同様の材料を用いることができる。母材とは異なる屈折率を有する光拡散材が分散させられることにより、第1接合部材151が光拡散機能を有していてもよい。
【0072】
断面視における第1接合部材151の外面151cの形状は、
図3では直線状である。ただし第1接合部材151の外面151cの形状は、
図3に示すような直線状に限定されない。断面視における外面151cの形状は、折れ線状、凹状、凸状等であってもよい。第1接合部材151の外面151cの断面視における形状が、凹状であると、第1発光素子121の側面121cから出射され、第1接合部材151を通過した光のより多くをより効率的に第1透光性部材131A側に導き得る。よって、より有利に光取り出し効率を向上させ得る。
【0073】
[光反射性部材140A]
光反射性部材140Aは、基板110の上面110a上において第1発光素子121及び第2発光素子122を取り囲むように形成され、第1透光性部材131Aの第1面31及び第2透光性部材132Aの第2面32を除いて、基板110の上面110a上の構造を覆っている。
図3に示す例では、光反射性部材140Aは、第1透光性部材131Aの側面131c及び第2透光性部材132Aの側面132c(
図3参照)に加えて、第1波長変換部材161の側面161c及び第2波長変換部材162の側面162cにも接している。
【0074】
光反射性部材140Aは、例えば、光拡散材が分散された樹脂材料から形成される。光反射性部材140Aの母材としては、例えば、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂もしくはこれらの変性樹脂、または、これらの2種以上を含む樹脂を用いることができる。光拡散材としては、母材よりも高い屈折率を有する、無機材料もしくは有機材料の粒子を用いることができる。光拡散材の例は、酸化チタン、酸化マグネシウム、二酸化ジルコニウム、チタン酸カリウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライト、酸化ニオブ、硫酸バリウム、酸化ケイ素、各種希土類酸化物(例えば、酸化イットリウム、酸化ガドリニウム)等の粒子である。光反射性部材140Aが白色を呈していると有益である。
【0075】
本明細書において、「光反射性」とは、発光素子(第1発光素子121または第2発光素子122)の発光ピーク波長における反射率が60%以上であることを指す。光反射性部材140Aの、発光素子の発光ピーク波長における反射率が70%以上であるとより有益であり、80%以上であるとさらに有益である。
【0076】
〔発光モジュール300A〕
図8は、第1実施形態に係る発光装置100Aを用いた発光モジュールを例示する断面図である。
図9は、第1実施形態に係る発光装置100Aを用いた発光モジュールを例示する部分斜視図である。
図9では、
図8の発光装置100Aと光学板310Aのみを図示している。
【0077】
図8及び
図9に示すように、発光モジュール300Aは、発光装置100Aと、発光装置100Aに隣接して配置された光学板310Aと、光学板310Aの光出射側に配置された量子ドット含有部材320とを有する。発光装置100Aは、複数の発光装置100が基板185に、線状に配置された発光装置であり、光学板310Aの光入射側の面に沿って配置することができる。発光モジュール300Aは、例えば、エッジ型のバックライトとして使用できる。
【0078】
発光モジュール300Aは、発光装置100A、光学板310A、及び量子ドット含有部材320の他に、目的に応じて、反射板330、光拡散フィルム340、及びプリズムシート350の何れか1つ以上を有してもよい。また、発光モジュール300Aは、さらに輝度上昇フィルム(BEF)や反射型偏光フィルム(DBEF)等を有してもよい。
【0079】
反射板330は、光学板310Aからの光の放出方向と反対側に配置される。光拡散フィルム340及びプリズムシート350は、光学板310Aからの光の放出方向に配置される。反射板330、光拡散フィルム340及びプリズムシート350を備える構成とすることで、正面輝度、視野角のバランス等に優れたバックライトとすることができる。
【0080】
発光モジュール300Aのように、発光装置100がエッジ型のバックライトに使用される場合、光学板310Aは、発光装置100で放出された一次光を導光するための光学部材であり、いわゆる導光板である。導光板は、例えば、少なくとも一つの面を光入射面とし、これと略直交する一方の面を光出射面とするように成形された略平板状の形状からなる。
【0081】
導光板は、主としてアクリルや、ポリカーボネートなどを母材とする樹脂からなる。導光板は、必要に応じて母材の樹脂と屈折率の異なる樹脂粒子が添加されていてもよい。導光板の各面には、シボパターンや切欠きを、規則的に、または不規則的に有していてもよい。
【0082】
量子ドット含有部材320は、発光装置100が発する光の一部を吸収して該光とは異なる波長の光を発する部材である。量子ドット含有部材320に含有される量子ドットは、典型的には、3nm~12nmの直径を有する半導体ナノ結晶である。この範囲において、量子ドットの物理的直径はバルク励起ボーア半径より小さく、量子閉じ込め効果を優勢にしている。その結果、量子ドットの電子状態、すなわちバンドギャップは、量子ドットの組成及び物理的直径の関数である。すなわち、量子ドット含有部材320において、吸収及び発光の色は量子ドットの径に関連する。
【0083】
量子ドットの光学的品質は、量子ドットの組成及び物理的直径の均一性に直接関連する。より単分散な量子ドットにより、より小さな半値全幅が得られる。量子ドットがボーア半径より大きい径に達すると、量子閉じ込め効果は妨げられ、励起子再結合のための非放射経路が支配的になることがあり、この場合、量子ドットはもはや発光性でないことがある。したがって、量子ドットは、特にその径及び径分布によって画定される、ナノ結晶の特定のサブグループである。量子ドットの特性はこれらのパラメータに直接関連し、それらとナノ結晶を区別する。
【0084】
量子ドット含有部材320は、例えば量子ドットを含有するシート状の部材であるが、量子ドットを含有する棒状の部材であってもよい。量子ドット含有部材320がシート状の部材である場合、量子ドット含有部材320は、厚さを超える長さ及び幅を有している。量子ドット含有部材320は、厚さの10倍以上の長さ及び幅を有してもよい。
【0085】
図10は、量子ドット含有部材の一例を示す断面図である。
図10に示す量子ドット含有部材320はシート状であり、例えば、量子ドットを含有する第1シート321が量子ドットを含有しない第2シート322及び323に挟まれた積層構造であってもよい。この構造では、例えば、第1シート321は発光層となり、第2シート322及び323はバリア層となる。
【0086】
バリア層は、温度20~50℃、相対湿度90%、及び大気圧での水蒸気透過速度が0.2(g・mm)/(m2・day)未満であることが好ましい。バリア層は、バリア層がなければ暴露される発光層の表面に設けることが好ましい。特に、そのようなバリア層は、水に暴露されることに反応して発光層内の発光結晶が分解することを回避するために、低い水蒸気透過速度を有してもよい。
【0087】
バリア層は、酸素について透過性を有してもよく、不透過性でもよい。バリア層は光の透過性が高いことが好ましい。バリア層は、単一の層の形態で、又は多層フィルムの形態で存在してもよい。バリア層は、例えば、有機ポリマー及び/又は無機材料を含む。有機ポリマーは、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、環状オレフィンコポリマー(COC)、高密度ポリエチレン(HDPE)からなる群から選択してもよい。また、無機材料は、金属酸化物、SiOx、SixNyからなる群から選択してもよい。最も好ましくは、バリア層は、PVdC及びCOCの群から選択される材料を含む。
【0088】
量子ドット含有部材320は、バリア層を1層有してもよいし、複数層有してもよい。
図10の例のように、量子ドット含有部材320が発光層となる第1シート321を上下から挟むバリア層となる第2シート322及び323を有する構造では、量子ドット含有部材320の耐候性を向上できる。
【0089】
図10に例示する構造の量子ドット含有部材320は、特に制限はなく量子ドット含有部材を購入して準備してもよいし、製造して準備してもよい。製造する場合は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、紫外線硬化開始剤等を含有するアクリル樹脂等の紫外線硬化性を有し、かつ、常温で流動性を有するアクリルモノマー等に対して量子ドットを0.01重量%以上5重量%以下の比率で混合して、量子ドットとアクリルモノマー等の混合スラリーを調整する。
【0090】
アクリルモノマー等の中に添加する必要の有る量子ドットの重量は、この量子ドットと樹脂を含有するシートを含む発光装置から発せられる発光色の色度座標値を所望の数値となるように調整される。なお、紫外線硬化性を有しかつ常温で流動性を有する樹脂としては、可視光を透過する各種紫外線硬化性樹脂が使用できる。例えばアクリル樹脂等の紫外線硬化性樹脂を挙げることができる。
【0091】
このようにして得られた混合スラリーを第2シート322上に塗布し、更に第2シート323によって覆い、紫外線LEDランプ等により紫外線を照射する。これにより、量子ドット含有のアクリル等からなる第1シート321と、第1シート321を上下から挟む第2シート322及び323とを有する量子ドット含有部材320を得ることができる。
【0092】
図11は、量子ドット含有部材の発光スペクトルの一例である。
図11に示すように、量子ドット含有部材320は、515nm以上535nm以下に発光ピーク波長を有し、発光ピークの半値全幅が30nm以下であることが好ましい。そのような特性を実現するために、量子ドット含有部材320は、ペロブスカイト構造又はカルコパイライト構造の量子ドットを含有することが好ましい。
【0093】
ペロブスカイト構造の量子ドットとしては、例えば、(M3A3)aM4
bXcが挙げられる。ここで、A3は、アンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム及びプロトン化チオウレアからなる群から選ばれた1又は2種以上の有機カチオンを表す。また、M3は、Cs、Rb、K、Na及びLiから選ばれた1又は2種以上のアルカリ金属カチオンを表し、M4は、Ge、Sn、Pb、Sb、Te及びBiからなる群から選ばれた1又は2種以上の金属カチオンを表す。また、Xは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン、チオシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン及び硫化物イオンからなる群から選ばれた1または2種以上のアニオンを表す。また、aは1~4を表し、bは1~2を表し、cは3~9を表す。
【0094】
カルコパイライト構造の量子ドットとしては、例えば、AgGaxIn(1-x)S2が挙げられる。このカルコパイライト構造の量子ドットは、Ag、In、Ga及びSを含み、InとGaの原子数の比が0.95以下であり、500nm以上590nm未満の範囲に発光ピークを有し、発光ピークの半値全幅が70nm以下である光を発し、平均粒径が10nm以下の半導体ナノ粒子である。AgとInとGaの原子数の合計に対するAgの原子数の比は、0.05以上0.55以下である。
【0095】
このように、発光モジュール300Aは、発光装置100Aと、515nm以上535nm以下に発光ピーク波長を有し、発光ピークの半値全幅が30nm以下であるペロブスカイト構造又はカルコパイライト構造の量子ドットを含有する量子ドット含有部材320とを有する構造とすることができる。この構造の発光モジュール300Aを用いることにより、Rec2020に対してCIE色度座標xy値の包含率で90%以上、さらには95%以上の色再現範囲を示す画像表示装置を得ることが可能となる。
【0096】
〔画像表示装置400〕
図12は、第1実施形態に係る発光モジュール300Aを用いた画像表示装置を例示する断面図である。
図12に示すように、画像表示装置400は、発光モジュール300Aと、発光モジュール300Aの光出射側に配置された表示パネル410とを有する。
【0097】
表示パネル410は、例えば、赤色画素、緑色画素、及び青色画素を有するカラーフィルタと、発光モジュール300Aとカラーフィルタとの間の光路上に配置され、カラーフィルタに入射する光を制御する光透過制御部材とを有する。画像表示装置400は、発光モジュール300Aと表示パネル410とを有していれば、その構成は特に制限されず、通常用いられる画像表示装置の構成から適宜選択することができる。
【0098】
カラーフィルタとしては、特に限定されず、例えば、一般的に液晶表示装置等のカラーフィルタとして公知のものを購入して用いることができる。カラーフィルタは、通常、赤色、緑色及び青色の各色の透光性着色模様が平面配置されて構成され、それら各透光性着色模様は、着色剤が溶解又は分散、好ましくは顔料微粒子が分散された樹脂組成物から構成される。
【0099】
光透過制御部材は、発光モジュール300Aからの光を表示すべき画像に応じて透過又は非透過することでカラーフィルタに入射する光を制御する。光透過制御部材は通常用いられる部材から適宜選択され、例えば、液晶層を有する液晶セルを用いることができる。この場合、表示パネル410は液晶パネルであり、画像表示装置400は、液晶表示装置である。
【0100】
画像表示装置400では、発光モジュール300Aから照射された光がカラーフィルタを透過することで表示画像がカラー表示される。画像表示装置400は、発光モジュール300Aと、発光モジュール300Aのスペクトルと適合するカラーフィルタとを有することにより、Rec2020に対してCIE色度座標xy値の包含率で90%以上、さらには95%以上の色再現範囲を実現可能となる。
【0101】
(第2実施形態)
〔発光装置200〕
図13は、第2実施形態に係る発光装置を模式的に示す斜視図である。
図14は、第2実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図である。
図13及び
図14に示すように、発光装置200は、リードフレーム210と、発光素子220と、樹脂成形体240と、接合部材250と、波長変換部材260と、ワイヤ280とを有する。
【0102】
発光装置200において、一対の板状のリードフレーム210の一部は、樹脂成形体240に埋め込まれている。樹脂成形体240は、底面と側面を持つ凹部を形成しており、凹部の底面は一対のリードフレーム210の一部で構成され、側面は、所定の傾斜角度を有する反射面241が形成されている。
【0103】
一対のリードフレーム210の間は、樹脂成形体240を構成する樹脂組成物によって埋められ、樹脂成形体240の底面の一部を構成する。樹脂成形体240は、平面視において四角形である。樹脂成形体240の下面には、一対のリードフレーム210の一部が外部端子部として露出している。
【0104】
発光素子220は、凹部の底面を構成する一対のリードフレーム210の一方に載置されている。発光素子220は、例えば、接合部材250により、リードフレーム210に固定されている。発光素子220は波長変換部材260により被覆されている。波長変換部材260は、母材と、波長変換材料を含有し、波長変換部材260中の波長変換材料は、発光素子220から出射された光の少なくとも一部を吸収して発光素子220からの光の波長とは異なる波長の光を発する。
【0105】
発光素子220は一対の正負の電極を有しており、一対の正負の電極は一対のリードフレーム210とそれぞれワイヤ280を介して電気的に接続されている。一対のリードフレーム210を介して、外部からの電力の供給を受けて発光装置200を発光させることができる。
【0106】
以下、発光装置200に含まれる部材について詳説する。
【0107】
[リードフレーム210]
リードフレーム210を構成する母材としては、例えば、銅、アルミニウム、金、銀、タングステン、鉄及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の金属、又は、鉄-ニッケル合金、燐青銅などの合金やクラッド材からなる板状体を用いることができる。リードフレーム210の表面には、発光素子220からの光を効率よく取り出すために、銀、アルミニウム、金及びこれらの合金からなる膜(例えばめっきによる膜)が形成されていてもよい。リードフレーム210の表面に形成される金属の膜は、単層膜でもよく、多層膜でもよい。
【0108】
[樹脂成形体240]
樹脂成形体240は、一対のリードフレーム210を一体的に保持する樹脂組成物からなる部材である。樹脂成形体240の平面視形状は、
図13に示すような四角形であってもよいし、多角形やそれらを組み合わせた形状であってもよい。樹脂成形体240が凹部を有する場合、凹部の反射面241は、
図14に示すような底面に対して傾斜した角度で設けた傾斜面を有してもよく、略垂直な角度であってもよく、段差面を有していてもよい。また、その高さや開口部の形状などについても、目的や用途に応じて適宜選択することができる。
【0109】
樹脂成形体240は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を用いることができる。特に、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を用いるのが好ましい。熱硬化性樹脂を含む組成物としては、波長変換部材260に用いられる樹脂に比してガス透過性の低い樹脂が好ましく、具体的にはエポキシ樹脂組成物、シリコーン樹脂組成物、シリコーン変性エポキシ樹脂などの変性エポキシ樹脂組成物、エポキシ変性シリコーン樹脂などの変性シリコーン樹脂組成物、ポリイミド樹脂組成物、変性ポリイミド樹脂組成物、ウレタン樹脂、変性ウレタン樹脂組成物などを挙げることができる。樹脂成形体240を構成する樹脂組成物には、充填材(フィラー)として、酸化チタン、酸化マグネシウム、二酸化ジルコニウム、チタン酸カリウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライト、酸化ニオブ、硫酸バリウム、酸化ケイ素、各種希土類酸化物(例えば、酸化イットリウム、酸化ガドリニウム)等の無機粒子を含有してもよい。樹脂成形体240を構成する樹脂組成物に、フィラーとして無機粒子が含まれることによって、樹脂成形体240の光の透過率を調整することができる。
【0110】
なお、樹脂成形体240の他に、リードフレーム210を保持する部材としては、セラミックスやガラスや金属などの無機物で形成されてもよい。これにより、劣化などが少なく、信頼性の高い発光装置200とすることができる。
【0111】
[接合部材250]
接合部材250は、発光素子220をリードフレーム210に固定し実装する部材である。導電性の接合部材250の材料として、銀、金、パラジウムを含む導電性ペースト、金-スズ、スズ-銀-銅などの共晶はんだ材料、低融点金属などのろう材、銅、銀、金粒子、銀又は銀合金などを用いることができる。絶縁性の接合部材250としては、エポキシ樹脂組成物、シリコーン樹脂組成物、ポリイミド樹脂組成物やその変性樹脂、ハイブリッド樹脂などを用いることができる。
【0112】
[ワイヤ280]
ワイヤ280は発光素子220とリードフレーム210とを接続する。ワイヤ280の材料は、金、アルミニウム、銅、銀など及びこれらの合金が好適に用いられる。また、ワイヤ280は、コアの表面にコアと別の材料で被覆層を設けたもの、例えば、銅のコアの表面にパラジウムやパラジウム金合金などを被覆層として設けたものを用いることができる。銀又は銀合金を用いる場合は、ワイヤ280は保護層によって被覆されることが好ましい。
【0113】
[発光素子220、波長変換部材260]
発光素子220は、発光装置100で説明した第1発光素子121及び第2発光素子122と同様の構成とすることができる。すなわち、発光素子220は、第1発光素子121及び第2発光素子122と同様に、440nm以上460nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、発光ピークの半値全幅が25nm以下である。
【0114】
波長変換部材260は、発光装置100で説明した第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162と同様の構成とすることができる。すなわち、波長変換部材260は、第1波長変換部材161及び第2波長変換部材162と同様に、620nm以上640nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、発光ピークの半値全幅が25nm以下であり、発光素子220が発する光の一部を吸収して該光とは異なる波長の光を発する。
【0115】
そして、発光装置200は、発光装置100と同様に、色度座標値がCIEで規定する色度座標値xと色度座標値yにおいて、0.19≦x≦0.23かつ0.03≦y≦0.10の範囲内の光を発し、波長380nm以上555nm以下の波長に亘る放射エネルギー強度の積分値E1と波長555nm以上780nm以下の波長に亘る放射エネルギー強度の積分値E2が0.1≦E2/E1≦0.4の範囲内であり、波長500nm以上600nm以下の波長の範囲内の最大放射エネルギー強度が波長380nm以上780nm以下の波長の範囲内の最大放射エネルギー強度の10%以下である。
【0116】
このような特性を有する発光装置200は、515nm以上535nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し発光ピークの半値全幅が30nm以下である量子ドット含有部材を含む発光モジュールとすることで、所望の白色の発光が得られる発光モジュールを得ることができる。さらに、このような特性を有する発光装置200は、515nm以上535nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し発光ピークの半値全幅が30nm以下である量子ドット含有部材を含む発光モジュールを得ることで、画像表示装置のバックライト用光源に適した所望の色度の発光をすることができる。すなわち、発光装置200をこのような画像表示装置のバックライト用光源に使用することにより、画像表示装置の色域規格であるRec2020に対してCIE色度座標xy値の包含率で90%以上、さらには95%以上の色再現範囲を示す画像表示装置を得ることが可能となる。後述の発光装置200A及び200Bについても同様である。
【0117】
なお、
図15に示す発光装置200Aのように、複数の発光装置200が面状に配置されて一体化した構造としてもよい。発光装置200Aは、1つの基板285に、複数の発光素子220が面状に配置された面状の発光装置である。
図15では、複数の発光素子が行列状に配置されている。行列状に限らず規則的に配置されていてもよい。後述の
図18に示すように、基板285の発光素子220が配置された面に光反射性部材288を備えてもよい。また、
図15及び
図18に示す発光装置200Aにおいて、複数の発光素子220を直接基板285に載置されていてもよい。発光装置200Aは、直下型のバックライト用の光源として好適である。
【0118】
また、複数の発光素子が基板に載置され、その載置された基板の表面に一体の導光部材が複数の発光素子を覆って配置されてた発光装置としてもよい。例えば、
図16及び
図17に示す発光装置200Bのように、発光素子からの光が導光する導光部材を有する構造であってよい。具体的には、平面視で面状に配置された、よし詳細には行列状に配置された複数の発光素子220が、導光部材290に固定された構造としてもよい。発光装置200Bにおいて、導光部材290は、上面側に開口する平面視で格子状の溝290xを有している。平面視で溝290xが形成する格子に囲まれた領域に、発光素子220が配置されている。発光素子220の上方に位置する導光部材290の上面には、光調整部材295が配置されている。光調整部材は、発光素子からの光のうち、一部を透過し、一部を反射する部材であって、例えば酸化チタンを含む樹脂などを用いることができる。光調整部材295を設けることで、発光素子220から出射して導光部材290を導光した光の上方への出射光量を減らし、側方への出射光量を増やすことができる。導光部材290は、発光素子220が配置された面に光反射性部材を備えてもよい。これにより、発光素子220が光取り出し側とは反対方向に発した光を光取り出し側に向かわせることができる。さらに、発光装置200Bは、基板を有し、基板に複数の発光素子が面状に配置され、複数の発光素子を覆うように一体の導光部材を有する構造であってもよい。この場合も発光素子220の上方に位置する導光部材290の上面には、光調整部材295が配置されている。このような、発光装置200Bは、直下型のバックライト用の光源として好適である。
【0119】
〔発光モジュール300B〕
図18は、第2実施形態に係る発光装置200Aを用いた発光モジュールを例示する断面図である。
図18に示すように、発光モジュール300Bは、発光装置200Aと、発光装置200Aの光出射側に配置された量子ドット含有部材320とを有する。発光モジュール300Bは、例えば、直下型のバックライトとして使用できる。
【0120】
発光モジュール300Bは、発光装置200Aと量子ドット含有部材320との間に配置された光学板310Bを有してもよい。発光モジュール300Bのように、直下型のバックライトに使用される場合、光学板310Bは、発光装置200Aの個々の発光素子が配置された領域と配置されていない領域との輝度むらを見えにくくするための光拡散性を有する光学部材(光拡散材)である。光拡散材としては、例えば、厚み1~3mm程度の乳白色の樹脂板が挙げられる。
【0121】
発光モジュール300Bは、発光装置200A、光学板310B、及び量子ドット含有部材320の他に、目的に応じて、反射板330、光拡散フィルム340、及びプリズムシート350の何れか1つ以上を有してもよい。また、発光モジュール300Bは、さらに輝度上昇フィルム(BEF)や反射型偏光フィルム(DBEF)等を有してもよい。
【0122】
このように、発光モジュール300Bは、発光装置200Aと、515nm以上535nm以下に発光ピーク波長を有し、発光ピークの半値全幅が30nm以下であるペロブスカイト構造又はカルコパイライト構造の量子ドットを含有する量子ドット含有部材320とを有する構造とすることができる。この構造の発光モジュール300Bを用いることにより、Rec2020に対してCIE色度座標xy値の包含率で90%以上、さらには95%以上の色再現範囲を示す画像表示装置を得ることが可能となる。
【0123】
〔実施例〕
以下、実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0124】
まず、
図1~3に示す構成の発光装置を作製し、得られた発光装置の発光スペクトルを測定する。発光素子としては、Ga、In、及びNを含有する発光ダイオードを用いる。また、Mn
4+で賦活されるフッ化物蛍光体を含有する波長変換部材を用いる。シミュレーションにより測定した結果を
図19に示す。
図19より、発光素子の発光ピーク波長は約450nmであり、発光ピークの半値全幅は25nm以下である。また、波長変換部材の発光ピーク波長は約630nmであり、発光ピークの半値全幅は25nm以下である。また、波長380nm以上555nm以下の波長に亘る放射エネルギー強度の積分値E1と波長555nm以上780nm以下の波長に亘る放射エネルギー強度の積分値E2との比E2/E1は約0.17である。また、波長500nm以上600nm以下の波長の範囲内の最大放射エネルギー強度は、波長380nm以上780nm以下の波長の範囲内の最大放射エネルギー強度の10%以下である。
【0125】
次に、得られた発光装置を用いて
図8に示す構成の発光モジュールを作製し、得られた発光モジュールの発光スペクトルを測定する。ここでは、ペロブスカイト構造の量子ドットを含有する量子ドット含有部材を用いる。シミュレーションにより測定した結果を
図20に示す。
図20より、量子ドット含有部材の発光ピーク波長は約525nmであり、発光ピークの半値全幅は30nm以下である。
【0126】
次に、得られた発光モジュールを用いて
図12に示す構成の画像表示装置を作製する。表示パネルとしては、カラーフィルタと、光透過制御部材である液晶セルとを含む液晶パネルを用いる。用いた液晶パネルの透過スペクトルを
図21に示す。画像表示装置の発光スペクトルを確認したところ、青色画素、緑色画素、及び赤色画素については、
図22に示す特性が得られる。また、画像表示装置全体としては、
図23に示す特性が得られる。
【0127】
次に、上記で得られた発光装置、発光モジュール、及び画像表示装置の発する光について色度座標をシミュレーションにより求めた。なお、画像表示装置の色度座標については、カラーフィルタの青色画素からの透過光の色度座標CF(青)、緑色画素からの透過光の色度座標CF(緑)、赤色画素からの透過光の色度座標CF(赤)、カラーフィルタ全体からの透過光の色度座標CF(白)を求める。
【0128】
また、画像表示装置のカラーフィルタ全体からの透過光について、CIE1931色度座標(x,y色度座標)及びCIE1976色度座標(u',v'色度座標)におけるRec.2020の色域の包含率をシミュレーションにより求めた。
【0129】
【0130】
シミュレーションにより測定した結果を表1に示す。また、CIE1931色度座標における包含率のシミュレーション結果を
図24に示す。
図24において、実線で示す範囲がRec.2020の色域、破線で示す範囲が実施例に係る画像表示装置の色域である。表1及び
図24より、実施例に係る画像表示装置では、Rec2020に対してCIE色度座標xy値の包含率で90%以上の色再現範囲を包含できている。
【0131】
すなわち、
図19に示す発光スペクトルを有する発光装置を所定の量子ドット含有部材及びカラーフィルタと組み合わせることで、Rec.2020の色域の90%以上を包含できることが分かった。
図19に示す発光スペクトルを有する発光装置は、バックライト用光源に適した所望の色度の発光をすることができる。
【0132】
また、発明者らのさらなる検討の結果、発光装置が以下の第1~第4の条件を満たせば、515nm以上535nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し発光ピークの半値全幅が30nm以下である量子ドット含有部材を含む画像表示装置に使用することにより、Rec2020に対してCIE色度座標xy値の包含率で90%以上の色再現範囲を示す画像表示装置を得られることが分かった。
【0133】
第1に、440nm以上460nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、発光ピークの半値全幅が25nm以下である発光素子と、620nm以上640nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、発光ピークの半値全幅が25nm以下である波長変換部材とを備える。
【0134】
第2に、色度座標値がCIEで規定する色度座標値xと色度座標値yにおいて、0.19≦x≦0.23かつ0.03≦y≦0.10の範囲内の光を発する。
【0135】
第3に、波長380nm以上555nm以下の波長に亘る放射エネルギー強度の積分値E1と波長555nm以上780nm以下の波長に亘る放射エネルギー強度の積分値E2が0.1≦E2/E1≦0.4の範囲内である。
【0136】
第4に、波長500nm以上600nm以下の波長の範囲内の最大放射エネルギー強度が波長380nm以上780nm以下の波長の範囲内の最大放射エネルギー強度の10%以下である。
【0137】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0138】
31 第1透光性部材の第1面
32 第2透光性部材の第2面
41 光反射性部材の第1曲面
42 光反射性部材の第2曲面
43 光反射性部材の第3曲面
44 光反射性部材の第4曲面
100,100A,200,200A,200B 発光装置
110 基板
121 第1発光素子
122 第2発光素子
131A 第1透光性部材
132A 第2透光性部材
140A 光反射性部材
141 光反射性部材の第1部分
141t 第1部分の第1頂部
142 光反射性部材の第2部分
142t 第2部分の第2頂部
143 光反射性部材の第3部分
143t 第3部分の第3頂部
161 第1波長変換部材
162 第2波長変換部材
185 基板
210 リードフレーム
220 発光素子
240 樹脂成形体
241 反射面
250 接合部材
260 波長変換部材
280 ワイヤ
285 基板
288 光反射性部材
290 導光部材
290x 溝
295 光調整部材
300A,300B
310A,310B 光学板
320 量子ドット含有部材
321 第1シート
322,323 第2シート
330 反射板
340 光拡散フィルム
350 プリズムシート
400 画像表示装置
410 表示パネル