(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20231109BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20231109BHJP
F21V 9/38 20180101ALI20231109BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20231109BHJP
【FI】
H01L33/50
F21S2/00 311
F21V9/38
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2022184083
(22)【出願日】2022-11-17
(62)【分割の表示】P 2020154909の分割
【原出願日】2020-09-15
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 誠
(72)【発明者】
【氏名】板東 篤史
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-531324(JP,A)
【文献】特表2018-511386(JP,A)
【文献】特開2018-182028(JP,A)
【文献】特開2016-063001(JP,A)
【文献】特開2017-216438(JP,A)
【文献】特開2015-115507(JP,A)
【文献】特開2020-057777(JP,A)
【文献】特開2020-136619(JP,A)
【文献】特開2020-098855(JP,A)
【文献】国際公開第2019/105885(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0083409(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110753568(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
F21S 2/00
F21V 9/00 - 9/45
F21Y 115/00 - 115/30
C09K 11/00 - 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子を被覆する蛍光体を含む蛍光部材と、を備えた
一つの発光装置であって、
前記発光素子と、前記蛍光体と、前記発光装置の発光スペクトルにおける下記式(1)に基づき導き出されるメラノピック比と、特殊演色評価数R9が、下記条件(A)、(B)及び(C)のいずれかを満たす、発光装置。
(前記式(1)中、波長が380nm以上730nm以下の範囲内において、「Lamp×Circadian」は、発光装置の分光分布に含まれるサーカディアン応答であり、「Lamp×Visual」は、発光装置の分光分布に含まれる視感度応答であり、「Lamp」は発光装置の分光分布であり、「Circadian」は、哺乳類の網膜にある光受容体である内因性光感受性網膜神経節細胞の感度曲線であり、「Visual」は、ヒトの明所視における視感度曲線であり、「1.218」は、定数(lux factor)である。)
条件(A)前記発光装置の発光の相関色温度が4500K以上7500K以下の範囲内、
前記発光素子の発光ピーク波長が、410nm以上440nm以下の範囲内、
前記蛍光部材
に含まれる蛍光体が、下記式(i)で表される組成を有する蛍光体及び下記式(ii)で表される組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種である第一蛍光体と、
下記式(iii)で表される組成を有する蛍光体、下記式(iv)で表される組成を有する蛍光体、下記式(v)で表される組成を有する蛍光体、下記式(vi)で表される組成を有する蛍光体、及び下記式(vii)で表される組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種である第二蛍光体と、
下記式(viii)で表される組成を有する第三蛍光体と、
からなり、
前記メラノピック比が1.0以上1.4以下の範囲内、
特殊演色評価数R9が50以上
かつ、特殊演色評価数R12が70以上
条件(B)前記発光装置の発光の相関色温度が、2500K以上4500K未満の範囲内、
前記発光素子の発光ピーク波長が、410nm以上440nm以下の範囲内、
前記蛍光部材
に含まれる蛍光体が、下記式(i)で表される組成を有する蛍光体及び下記式(ii)で表される組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種である第一蛍光体と、
下記式(iii)で表される組成を有する蛍光体及び下記式(iv)で表される組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種である第二蛍光体と、
下記式(v)で表される組成を有する蛍光体、下記式(vi)で表される組成を有する蛍光体、及び下記式(vii)で表される組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種である第三蛍光体と、
下記式(viii)で表される組成を有する第四蛍光体と、
からなり、
前記メラノピック比が0.7以上1.1以下の範囲内、
特殊演色評価数R9が50以上
条件(C)前記発光装置の発光の相関色温度が、2500K以上3000K以下の範囲内、
前記発光素子の発光ピーク波長が、440nm以上470nm以下の範囲内、
前記蛍光部材
に含まれる蛍光体が、下記式(iii)で表される組成を有する蛍光体及び下記式(iv)で表される組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種である第一蛍光体と、
下記式(v)で表される組成を有する蛍光体、下記式(vi)で表される組成を有する蛍光体、及び下記式(vii)で表される組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種である第二蛍光体と、
下記式(viii)で表される組成を有する第三蛍光体と、
からなり、
前記メラノピック比が0.48以上1.10以下の範囲内、
特殊演色評価数R9が40以上。
M
1
10(PO
4)
6Cl
2:Eu (i)
(式(i)中、M
1は、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。)
M
2MgAl
10O
17:Mn,Eu (ii)
(式(ii)中、M
2は、Ba及びSrからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。)
M
3
8MgSi
4O
16Cl
2:Eu (iii)
(式(iii)中、M
3は、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。)
Sr
4Al
14O
25:Eu (iv)
M
4
3M
5
5O
12:Ce (v)
(式(v)中、M
4は、Y及びGdからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、M
5は、Al及びGaからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。)
Lu
3M
6
5O
12:Ce (vi)
(式(vi)中、M
6は、Al及びGaからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。)
Si
6-zAl
zO
zN
8-z:Eu (vii)
(式(vii)中、zは、0<z≦4.2を満たす。)
M
7AlSiN
3:Eu (viii)
(式(viii)中、M
7は、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。)
【請求項2】
前記条件(A)を満たし、発光スペクトルにおける前記メラノピック比が1.15以上1.4以下である、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第一蛍光体が、430nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、前記第二蛍光体が、480nm以上580nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、前記第三蛍光体が、600nm以上650nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する、請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記条件(A)を満たし、発光の平均演色評価数が90以上であり、発光の特殊演色評価数R12が80以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記条件(B)を満たし、発光スペクトルにおける前記メラノピック比が0.8以上1.1以下である、請求項1に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第一蛍光体が、430nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、前記第二蛍光体が、480nm以上530nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、前記第三蛍光体が、500nm以上580nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、前記第四蛍光体が、600nm以上650nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する、請求項1又は5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記条件(B)を満たし、発光の平均演色評価数が85以上であり、特殊演色評価数R12が50以上である、請求項1、5又は6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記条件(C)を満たし、発光スペクトルにおける前記メラノピック比が0.5以上1.1以下である、請求項1に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第一蛍光体が、430nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、前記第二蛍光体が、480nm以上580nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、前記第三蛍光体が、600nm以上650nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する、請求項1又は8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記条件(C)を満たし、平均演色評価数が85以上であり、特殊演色評価数R12が80以上である、請求項1、8又は9に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)のような発光素子を用いる発光装置として、青色に発光する発光素子と、発光素子からの光に励起されて、発光する蛍光体を用いて混色光を発光する発光装置が知られている。このような発光装置は、例えば一般照明、車載照明、ディスプレイ、液晶用バックライト等の幅広い分野で使用されている。
【0003】
発光装置から発せられる光は、照射されたものの見え方に影響を与える。発光装置又は照明装置は、使用環境に応じて、黒体放射軌跡周辺で異なる色温度又は相関色温度の光を発する照明装置が求められる。黒体放射軌跡は、黒体の温度が変化したとき黒体放射の色度座標がたどる色度図上の曲線である(JIS Z8725)。色度図は、CIE(国際照明委員会:Commission Internationale de l’Eclairage)が規定したCIE1931色度図をいう。色温度が低い場合には、黄色みを帯びた白色光となり、色温度が高い場合には、青色みがかった白色光となる。CIE1931色度図の色度座標(x、y)を色度と表す場合もある。
【0004】
例えば、特許文献1には、黒体放射軌跡上に位置する色度を有する白色光と、発光素子から出射される青色の単色光を組み合わせた発光装置及び照明装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光は、ものの見え方に影響を与えるだけではなく、ヒトの概日リズム(Circadian Rhythm)にも影響を与える。サーカディアン(Circadian)とは、ラテン語で「約」を表す「Circa」と「1日」を表す「Dies」を連ねた造語である。哺乳類の網膜上には、杆体や錐体とは別に、内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC:intrinsically photosensitive Retinal Ganglion Cell)という光受容体が存在する。ipRGCは、メラノプシンという視物質を有し、哺乳類のサーカディアンリズムを統率する視交叉上核に光刺激を与え、神経応答を行う。サーカディアンリズムに影響を与える神経応答を適切に刺激する光がヒトの概日リズムに沿って照射されると、ヒトは快適さを感じることができる。この照射される光がサーカディアンリズムに与える影響の大きさを評価する指標として、メラノピック比が挙げられる。メラノピック比の詳細は後述する。また、光に照射されたものの見え方が、より自然光に近似して見えることがヒトにとって好ましい。
本発明の一態様は、演色性に優れ、特定のメラノピック比を有する発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、発光素子と、蛍光体を含む蛍光部材と、を備えた発光装置であって、前記発光素子と、前記蛍光体と、前記発光装置の発光スペクトルにおける下記式(1)に基づき導き出されるメラノピック比と、前記蛍光部材に含まれる蛍光体の総量に対する下記第一蛍光体の含有率が、下記条件(A)、(B)及び(C)のいずれかを満たす、発光装置である。
(前記式(1)中、波長が380nm以上730nm以下の範囲内において、「Lamp×Circadian」は、発光装置の分光分布に含まれるサーカディアン応答であり、「Lamp×Visual」は、発光装置の分光分布に含まれる視感度応答であり、「Lamp」は発光装置の分光分布であり、「Circadian」は、哺乳類の網膜にある光受容体である内因性光感受性網膜神経節細胞の感度曲線であり、「Visual」は、ヒトの明所視における視感度曲線であり、「1.218」は、定数(lux factor)である。)
条件(A)前記発光装置の発光の相関色温度が4500K以上7500K以下の範囲内、前記発光素子の発光ピーク波長が、410nm以上440nm以下の範囲内、前記蛍光部材が、下記式(i)で表される組成を有する蛍光体及び下記式(ii)で表される組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種である第一蛍光体と、下記式(iii)で表される組成を有する蛍光体、下記式(iv)で表される組成を有する蛍光体、下記式(v)で表される組成を有する蛍光体、下記式(vi)で表される組成を有する蛍光体、及び下記式(vii)で表される組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種である第二蛍光体と、下記式(viii)で表される組成を有する第三蛍光体と、を含み、前記第一蛍光体の含有率が、29質量%以上90質量%以下の範囲内、前記メラノピック比が1.0以上1.4以下の範囲内
条件(B)前記発光装置の発光の相関色温度が、2500K以上4500K未満の範囲内、前記発光素子の発光ピーク波長が、410nm以上440nm以下の範囲内、前記蛍光部材が、下記式(i)で表される組成を有する蛍光体及び下記式(ii)で表される組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種である第一蛍光体と、下記式(iii)で表される組成を有する蛍光体及び下記式(iv)で表される組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種である第二蛍光体と、下記式(v)で表される組成を有する蛍光体、下記式(vi)で表される組成を有する蛍光体、及び下記式(vii)で表される組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種である第三蛍光体と、下記式(viii)で表される組成を有する第四蛍光体と、を含み、前記第一蛍光体の含有率が、25質量%以上90質量%以下の範囲内、前記メラノピック比が0.7以上1.1以下の範囲内
条件(C)前記発光装置の発光の相関色温度が、2500K以上3000K以下の範囲内、前記発光素子の発光ピーク波長が、440nm以上470nm以下の範囲内、前記蛍光部材が、下記式(iii)で表される組成を有する蛍光体及び下記式(iv)で表される組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種である第一蛍光体と、下記式(v)で表される組成を有する蛍光体、下記式(vi)で表される組成を有する蛍光体、及び下記式(vii)で表される組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種である第二蛍光体と、下記式(viii)で表される組成を有する第三蛍光体と、を含み、前記第一蛍光体の含有率が、20質量%以上90質量%以下の範囲内、前記メラノピック比が0.48以上1.10以下の範囲内。
M
1
10(PO
4)
6Cl
2:Eu (i)
(式(i)中、M
1は、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。)
M
2MgAl
10O
17:Mn,Eu (ii)
(式(ii)中、M
2は、Ba及びSrからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。)
M
3
8MgSi
4O
16Cl
2:Eu (iii)
(式(iii)中、M
3は、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。)
Sr
4Al
14O
25:Eu (iv)
M
4
3M
5
5O
12:Ce (v)
(式(v)中、M
4は、Y及びGdからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、M
5は、Al及びGaからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。)
Lu
3M
6
5O
12:Ce (vi)
(式(vi)中、M
6は、Al及びGaからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。)
Si
6-zAl
zO
zN
8-z:Eu (vii)
(式(vii)中、zは、0<z≦4.2を満たす。)
M
7AlSiN
3:Eu (viii)
(式(viii)中、M
7は、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。)
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様によれば、演色性に優れ、特定のメラノピック比を有する発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、発光装置の第一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、発光装置の第二例を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、哺乳類の網膜にある光受容体である内因性光感受性網膜神経節細胞の感度曲線(Circadian)と、ヒトの明所視における視感度曲線(Visual)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る発光装置を実施形態に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具現化するための例示であって、本発明は、以下の発光装置に限定されない。なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係は、JIS Z8110に従う。また、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分が該当する物質が複数存在する場合は、特に断りのない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
【0011】
発光装置
発光装置は、発光素子と、蛍光体を含む蛍光部材と、を備える。発光装置の一例を図面に基づいて説明する。
図1は、発光装置の第一例を示し、発光装置100を示す概略断面図である。
図2は、発光装置の第二例を示し、第一例とは、発光装置100に含まれる蛍光体の種類が異なる。
【0012】
発光装置100は、発光素子10と、発光素子10からの光により励起されて発光する少なくとも一種の蛍光体70を含む蛍光部材50と、を備える。発光装置100は、成形体40を備え、成形体40は、第一リード20及び第二リード30と、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含む樹脂部42と、が一体的に成形されてなるものである。成形体40は底面と側面を持つ凹部を形成しており、凹部を画定する上向きの面に発光素子10が載置されている。発光素子10は一対の正負の電極を有しており、その一対の正負の電極はそれぞれ第一リード20及び第二リード30とそれぞれワイヤ60を介して電気的に接続されている。第一リード20及び第二リード30を介して、発光素子10が外部から電力の供給を受けて発光装置100を発光させることができる。
【0013】
発光素子10は、励起光源として用いられる。発光素子10は、380nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する。発光素子10は、410nm以上440nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有するものであってもよく、440nm以上470nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有するものであってもよい。発光素子10の発光スペクトルにおける発光ピークの半値幅は、例えば30nm以下でもよく、25nm以下でもよく、20nm以下でもよい。発光素子10は、例えば、窒化物系半導体を用いた半導体発光素子であることが好ましい。発光素子として、半導体発光素子を用いることによって、高効率で入力に対するリニアリティが高く機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。本明細書において、半値幅は、発光スペクトルにおける発光ピークの半値全幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)をいう。半値幅は、発光スペクトルにおける発光ピークの最大値の50%の値を示す発光ピークの波長幅をいう。
【0014】
発光素子10は蛍光部材50により被覆されている。蛍光部材50は、発光素子10からの光を波長変換する蛍光体70と封止材料を含む。蛍光体70は、発光素子からの光により励起されて特定の波長範囲に少なくとも一つの発光ピーク波長を有する。蛍光部材50には、蛍光体70として、第一蛍光体71、第二蛍光体72及び第三蛍光体73を含む場合がある。蛍光部材50は、蛍光体70として、第一蛍光体71、第二蛍光体72、第三蛍光体73及び第四蛍光体74を含む場合がある。
図1には、第一例として、蛍光部材50中に、蛍光体70として、第一蛍光体71、第二蛍光体72及び第三蛍光体73を含む発光装置を記載した。
図2には、第二例として、蛍光部材50中に、蛍光体70として、第一蛍光体71、第二蛍光体72、第三蛍光体73及び第四蛍光体74を含む発光装置を記載した。
【0015】
蛍光部材50に含まれる封止材料は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂から選ばれる樹脂を用いることができる。封止材料として用いられる樹脂は、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。蛍光部材50は、蛍光体70及び封止材料の他に、フィラー、光安定剤、着色剤等のその他の成分を含んでいてもよい。フィラーとしては、例えばシリカ、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム等を挙げることができる。蛍光部材中の、蛍光体及び封止材料以外のその他の成分の含有量は、目的とする発光装置の大きさ、相関色温度、色調に基づいて、好適範囲に設定することができる。例えば、蛍光部材中の蛍光体及び封止材料以外のその他の成分の含有量は、封止材料100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下とすることができる。
【0016】
蛍光体
本発明の一実施形態の発光装置は、以下の式(i)で表される組成を有する蛍光体、式(ii)で表される組成を有する蛍光体、式(iii)で表される組成を有する蛍光体、式(iv)で表される組成を有する蛍光体、式(v)で表される組成を有する蛍光体、式(vi)で表される組成を有する蛍光体、式(vii)で表される組成を有する蛍光体及び式(viii)で表される組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも三種以上を含む。
【0017】
M1
10(PO4)6Cl2:Eu (i)
(式(i)中、M1は、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。)
前記式(i)で表される組成を有する蛍光体は、430nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、演色性が高く、特定のメラノピック比を有する発光を得るために、半値幅が30nm以上80nm以下の範囲内であればよく、40nm以上60nm以下の範囲であることが好ましい。
【0018】
M2MgAl10O17:Mn,Eu (ii)
(式(ii)中、M2は、Ba及びSrからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。)
前記式(ii)で表される組成を有する蛍光体は、430nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、演色性が高く、特定のメラノピック比を有する発光を得るために、半値幅が50nm以上90nm以下の範囲内であればよく、60nm以上80nm以下の範囲であることが好ましくい。
【0019】
M3
8MgSi4O16Cl2:Eu (iii)
(式(iii)中、M3は、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。)
前記式(iii)で表される組成を有する蛍光体は、480nm以上580nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していてもよく、480nm以上530nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していてもよい。前記式(iii)で表される組成を有する蛍光体の半値幅は、演色性が高く、特定のメラノピック比を有する発光を得るために、50nm以上80nm以下の範囲内であればよく、50nm以上70nm以下の範囲内でもよく、60nm以上80nm以下の範囲内でもよい。
【0020】
Sr4Al14O25:Eu (iv)
前記式(iv)で表される組成を有する蛍光体は、480nm以上580nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していてもよく、480nm以上530nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していてもよい。前記式(iv)で表される組成を有する蛍光体の半値幅は、演色性が高く、特定のメラノピック比を有する発光を得るために、60nm以上100nm以下の範囲内であればよく、70nm以上90nm以下の範囲であることが好ましい。
【0021】
M4
3M5
5O12:Ce (v)
(式(v)中、M4は、Y及びGdからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、M5は、Al及びGaからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。)
前記式(v)で表される組成を有する蛍光体は、480nm以上580nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していてもよく、500nm以上580nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していてもよい。前記式(v)で表される組成を有する蛍光体の半値幅は、演色性が高く、特定のメラノピック比を有する発光を得るために、80nm以上140nm以下の範囲内であればよく、90nm以上130nm以下の範囲であることが好ましい。
【0022】
Lu3M6
5O12:Ce (vi)
(式(vi)中、M6は、Al及びGaからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。)
前記式(vi)で表される組成を有する蛍光体は、480nm以上580nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していてもよく、500nm以上580nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していてもよい。前記式(vi)で表される組成を有する蛍光体の半値幅は、演色性が高く、特定のメラノピック比を有する発光を得るために、80nm以上140nm以下の範囲内であればよく、90nm以上130nm以下の範囲であることが好ましい。
【0023】
Si6-zAlzOzN8-z:Eu (vii)
(式(vii)中、zは、0<z≦4.2を満たす。)
前記式(vii)で表される組成を有する蛍光体は、480nm以上580nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していてもよく、500nm以上580nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していてもよい。前記式(vii)で表される組成を有する蛍光体の半値幅は、演色性が高く、特定のメラノピック比を有する発光を得るために、70nm以上110nm以下の範囲内であればよく、80nm以上100nm以下の範囲内であることが好ましい。
【0024】
M7AlSiN3:Eu (viii)
(式(viii)中、M7は、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。)
前記式(viii)で表される組成を有する蛍光体は、600nm以上650nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、演色性が高く、特定のメラノピック比を有する発光を得るために、半値幅が70nm以上110nm以下の範囲内であればよく、80nm以上100nm以下の範囲であることが好ましい。
【0025】
ヒトの網膜の光受容細胞(視細胞)であり、視物質であるメラノプシンを含むipRGCは、単体でも光刺激に神経応答を示し、また、錐体や桿体からも入力を受けて、光刺激に対して神経応答を示し、ヒトのサーカディアンリズムに影響を及ぼしている。ipRGCの神経応答は、睡眠促進ホルモンであるメラトニンの分泌又は抑制に関与する。ヒトのサーカディアンリズムに影響を与える神経応答を刺激する光が照射されると、メラトニンの分泌が抑制されて覚醒が促進したり、逆にメラトニンの分泌が促進されて睡眠に誘導したりする。照射される光の色温度によって、ヒトのサーカディアンリズムに影響を与える神経応答も異なる。
図3は、国際照明委員会(CIE)によって規定されている哺乳類の網膜にある光受容体であるipRGCの感度曲線(サーカディアン作用曲線)と、ヒトの健康を評価する建築物の認証制度であるWELL認証(Well Building Standard)によって提唱されているヒトの明所視の視感度曲線におけるピーク波長は555nmであり、ipRGCから出力されるメラノプシンは、480nmから500nm付近にその感度のピーク波長を有する。
【0026】
発光装置から出射された光のヒトのサーカディアンリズムへの影響は、下記式(1)から導き出されるメラノピック比から推測することができる。
【0027】
【0028】
前記式(1)中、波長が380nm以上730nm以下の範囲内において、「Lamp×Circadian」は、発光装置の分光分布に含まれるサーカディアン応答であり、「Lamp×Visual」は、発光装置の分光分布に含まれる視感度応答であり、「Lamp」は発光装置の分光分布であり、「Circadian」は、哺乳類の網膜にある光受容体であるipRGCの感度曲線(サーカディアン作用曲線)であり、「Visual」は、ヒトの明所視における視感度曲線であり、「1.218」は、定数(lux factor)である。発光装置の分光分布(発光スペクトル)は、分光測光装置(例えばPMA-11、浜松ホトニクス株式会社製)及び積分球を組み合わせた光計測システム用いて測定することができる。
【0029】
前記式(1)には、ipRGCの感度曲線(サーカディアン作用曲線)と、ヒトの視感度曲線が含まれており、メラノピック比の数値から、発光装置から出射された分光分布がヒトのサーカディアンリズムに及ぼす影響を推測することができる。メラノピック比が高い数値を示す光ほど、ヒトのサーカディアンリズムを強く刺激する。ヒトの視環境において、快適に使用される光は、自然光に近い光である。また、発光装置から出射される光の分光分布から求められるメラノピック比の数値が、低すぎたり高すぎたりせず、特定の範囲内であると、ヒトのサーカディアンリズムが乱されることがない。使用環境に応じて適切なメラノピック比となる光が発光装置から出射されれば、視環境においてヒトは快適さを感じると推測される。
【0030】
発光装置の発光は、使用状況等に応じて要求される相関色温度が異なる。JIS Z9112では、発光装置の光源色と相関色温度の範囲の関係について、2600Kから3250Kを電球色、3250Kから3800Kを温白色、3800Kから4500Kを白色、4600Kから5500Kを昼白色、5700Kから7100Kを昼光色と定義している。発光装置の相関色温度が2000K以上7500K以下の範囲であると、JIS Z9112で定義された、電球色、温白色、白色、昼白色、昼光色の光源色を発光する発光装置とすることができる。例えば発光装置の発光の相関色温度が4500K以上7500K以下の範囲内であると、朝から正午付近の太陽光に近くなる。また、発光装置の発光の相関色温度が2500Kから4500K以下の範囲内であると、午後から日没にかけての光に近くなる。また、発光装置の発光の相関色温度が2500K以上3000K以下の範囲内であると、夕方から日没にかけての光に近くなる。例えば職場や学校における照明は、4500K以上7500K以下の高い相関色温度を有する光が要求される。例えば住宅、ホテル、レストランにおける照明は、2500K以上4500K未満の相関色温度を有する光が要求される、また、例えば、リビングのように、くつろぎが求められる場所の照明には、2500K以上3000K以下の相関色温度を有する暖かみを感じる色合いの光が求められる。
【0031】
相関色温度によって、ヒトのサーカディアンリズムに影響を及ぼすメラノピック比の範囲も異なる。例えば発光装置の発光の相関色温度が4500K以上7500K以下の範囲内であり、朝から正午付近の太陽光に近い光の場合は、ipRGCを比較的強く刺激する比較的高いメラノピック比であると、ヒトが覚醒されやすく、学校や職場において快適に感じられる。また、例えば発光装置の発光の相関色温度が2500K以上4500K未満の範囲内である場合には、ipRGCを強く刺激すぎない比較的低めのメラノピック比であると、ヒトの覚醒が促されすぎることがなく、落ち着いた照明によって、住宅、ホテル、レストランにおいて、快適に感じられる。また、例えば発光装置の発光の相関色温度が2500K以上3000K以下の範囲内である場合には、低いメラノピック比であると、ipRGCが必要以上に刺激されず、ヒトの覚醒が促されず、くつろいだ雰囲気を要求されるリビングにおいて、ヒトは快適さを感じると考えられる。
【0032】
発光装置は、相関色温度の範囲によってメラノピック比が設定されていれば、ヒトが快適さを感じると推測される光を出射すことができる。
【0033】
本発明の第一実施形態の発光装置は、発光素子と、蛍光体を含む蛍光体部材と、を備え、次の条件(A)を満たす。
条件(A)は、発光装置の発光の相関色温度が4500K以上7500K以下の範囲内であり、発光素子の発光ピーク波長が410nm以上440nm以下の範囲内であり、蛍光部材が、前記式(i)で表される組成を有する蛍光体及び前記式(ii)で表される組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種の第一蛍光体と、前記式(iii)で表される組成を有する蛍光体、前記式(iv)で表される組成を有する蛍光体、前記式(v)で表される組成を有する蛍光体、前記式(vi)で表される組成を有する蛍光体、及び前記式(vii)で表される組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種の第二蛍光体と、前記式(viii)で表される組成を有する蛍光体である第三蛍光体と、を含み、蛍光部材に含まれる蛍光体の総量に対する第一蛍光体の含有量が29質量%以上90質量%以下の範囲内であり、前記発光装置の発光スペクトルにおける前記式(1)に基づき導き出されるメラノピック比が1.0以上1.4以下の範囲内である。
【0034】
発光装置は、条件(A)を満たし、発光装置の発光の相関色温度が4500K以上7500K以下の範囲内であるときに、蛍光部材中に含まれる蛍光体の総量に対する第一蛍光体の含有量を29質量%以上90質量%以下の範囲内として、発光装置の発光スペクトルにおける前記式(1)に基づき導き出されるメラノピック比が1.0以上1.4以下の範囲内であると、ipRGCが比較的強く刺激され、ヒトの覚醒が促される。そのため、職場や学校において、発光装置からヒトが快適さを感じると推測される光が出射される。蛍光部材中に含まれる蛍光体の総量は、前記第一蛍光体、第二蛍光体及び第三蛍光体の合計量をいう。
【0035】
条件(A)を満たす発光装置は、発光装置の発光スペクトルにおける前記式(1)に基づき導き出されるメラノピック比が1.0以上1.4以下の範囲内であり、1.15以上1.4以下の範囲内であることが好ましい。発光装置の発光装置の発光スペクトルにおける前記式(1)に基づき導き出されるメラノピック比が1.0以上1.4以下の範囲内であると、ipRGCが較的強く刺激され、ヒトの覚醒が促される。そのため、職場や学校において、発光装置からヒトが快適さを感じると推測される光が出射される。
【0036】
条件(A)を満たす発光装置は、蛍光部材に含まれる蛍光体の総量に対して、第二蛍光体の含有量が、9質量%以上70質量%以下の範囲内であることが好ましい。条件(A)を満たす発光装置は、蛍光部材に含まれる蛍光体の総量に対して、第三蛍光体含有量が、1質量%以上10質量%以下の範囲内であることが好ましい。
【0037】
条件(A)を満たす発光装置は、蛍光部材中に含まれる蛍光体の総量に対して、第一蛍光体の含有量が40質量%以上85質量%以下の範囲内であり、第二蛍光体の含有量が14質量%以上59質量%以下の範囲内であり、第三蛍光体の含有量が1質量%以上8質量%以下の範囲内であってもよい。
【0038】
条件(A)を満たす発光装置は、蛍光部材中に含まれる蛍光体の総量に対して、第一蛍光体の含有量が50質量%以上80質量%以下の範囲内であり、第二蛍光体の含有量が19質量%以上49質量%以下の範囲内であり、第三蛍光体の含有量が1質量%以上6質量%以下の範囲内であってもよい。
【0039】
条件(A)を満たす発光装置は、第一蛍光体が前記式(i)で表される組成を有する蛍光体であり、第二蛍光体が前記式(v)で表される組成を有する蛍光体であってもよい。
【0040】
条件(A)を満たす発光装置は、第一蛍光体が前記式(i)で表される組成を有する蛍光体であり、第二蛍光体が前記式(v)で表される組成を有する蛍光体であり、第三蛍光体が前記式(viii)で表される組成を有する蛍光体であり、蛍光部材中に含まれる蛍光体の総量に対して、第一蛍光体の含有量が50質量%以上80質量%以下の範囲内であり、第二蛍光体の含有量が19質量%以上49質量%以下の範囲内であり、第三蛍光体の含有量が1質量%以上6質量%以下の範囲内であってもよい。
【0041】
条件(A)を満たす発光装置は、第一蛍光体が前記式(i)で表される組成を有する蛍光体であり、第二蛍光体が前記式(v)で表される組成を有する蛍光体であり、第三蛍光体が前記式(viii)で表される組成を有する蛍光体であり、蛍光部材中に含まれる蛍光体の総量に対して、第一蛍光体の含有量が50質量%以上80質量%以下の範囲内であり、第二蛍光体の含有量が19質量%以上49質量%以下の範囲内であり、第三蛍光体の含有量が1質量%以上6質量%以下の範囲内であり、発光装置の発光スペクトルにおける前記式(1)に基づき導き出されるメラノピック比が1.15以上1.4以下の範囲内であってもよい。
【0042】
条件(A)を満たす発光装置に含まれる蛍光体において、第一蛍光体が、430nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、第二蛍光体が、480nm以上580nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、第三蛍光体が、600nm以上650nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する、ことが好ましい。第一蛍光体、第二蛍光体、及び第三蛍光体は、発光ピーク波長が410nm以上440nm以下の範囲内である発光素子からの光を吸収し、相関色温度が4500K以上7500K以下の範囲内の混色光を発光することができる。
【0043】
光に照射されたものの見え方は、色の再現性が影響する。光に照射されたものの色の再現性(演色性)は、演色評価数によって表される。演色評価数が100の数値に近い値であるほど、自然光を表す基準光源に近似した優れた演色性を有する光である。
JIS Z9112の蛍光ランプ・LEDの光源色及び演色性による区分によれば、LEDの演色性は、普通形と高演色形に区分され、高演色形の平均演色評価数Raが80以上であることが規定されている。CIEの指針によれば、使用される場所に応じた好ましい平均演色評価数Raは、一般作業を行う場所では60以上80未満であり、例えば、住宅、ホテル、レストラン、精密作業を行う場所などでは80以上90未満であり、高い演色性が求められる美術館、博物館、臨床検査を行う場所などでは90以上とされている。発光装置の平均演色評価数Raが80以上であると、ヒトが快適さを感じる演色性を有する照明として使用可能である。
【0044】
ここで、光源の演色性の評価手順は、JIS Z8726によって、所定の反射率特性を有する試験色(R1からR15)を、試験光源と基準光源とでそれぞれ測色した場合の色差ΔEi(iは1から15の整数)を数値計算して演色評価数を算出して行うと定められている。演色評価数Ri(iは1から15の整数)の上限は100である。つまり、光源とそれに対応する色温度の基準光源の色差が小さいほど、演色評価数は100に近づき高くなる。演色評価数のうち、R1からR8の平均値は平均演色評価数Raと呼ばれ、R9からR15は特殊演色評価数と呼ばれる。特殊演色評価数について、R9は赤色、R10は黄色、R11は緑色、R12は青色、R13は西洋人の肌の色、R14は木の葉の色、R15は日本人の肌の色とされている。演色性を高めるために、例えば、前記特許文献1には、緑色から黄色に発光する蛍光体に加え、赤色に発光する蛍光体を用いた発光装置が提案されている。基準光源は、色温度によって異なり、相関色温度が5000K未満の場合には、黒体放射体の光が基準光源となる。相関色温度が5000Kを超える場合には、CIE昼光(CIE標準イルミナントD65)が基準光源となる(JIS Z8781-2)。
【0045】
条件(A)を満たす発光装置の発光は、平均演色評価数Raが80以上であることが好ましく、85以上であることがより好ましく、90以上であることがさらに好ましい。条件(A)を満たす発光装置の発光の平均演色評価数Raが80以上であると、快適な演色性を有する照明として使用可能である。条件(A)を満たす発光装置の発光の平均演色評価数Raが90以上であると、高い演色性が求められる場所で快適な演色性を有する照明として使用可能である。
【0046】
条件(A)を満たす発光装置の発光は、特殊演色評価数R9が50以上であるか、又は特殊演色評価数R12が80以上であることが好ましい。特殊演色評価数R9は赤色を表す。条件(A)を満たす発光装置の発光は、特殊演色評価数R9が50以上であれば、相関色温度が4500K以上7500K以下の範囲内の青色を帯びた白色の発光であっても、赤色成分が少なくなることなく、発光装置を使用することができる。条件(A)を満たす発光装置の発光は、特殊演色評価数R9が55以上であってもよく、60以上であってもよい。特殊演色評価数R12は青色を表す。条件(A)を満たす発光装置の発光は、特殊変色評価数R12が60以上であれば、発光装置の発光は、440nmを超えて500nm以下の波長範囲の青色成分から青緑色成分の発光が少なくなることなく、基準光源に近い青色成分を維持した発光を得ることができ、発光装置から出射した光に照らされたものの見え方をより改善することができる。条件(A)を満たす発光装置の発光は、特殊変色評価数R12が70以上であってもよく、80以上であってもよい。
【0047】
条件(A)を満たす発光装置の発光は、特殊演色評価数R10が80以上であるか、90以上であってもよい。条件(A)を満たす発光装置の発光は、特殊演色評価数R11が80以上であるか、90以上であってもよい。条件(A)を満たす発光装置の発光は、特殊演色評価数R13が80以上であるか、90以上であってもよい。条件(A)を満たす発光装置の発光は、特殊演色評価数R14が80以上であるか、90以上であってもよい。条件(A)を満たす発光装置の発光は、特殊演色評価数R15が80以上であるか、90以上であってもよい。条件(A)を満たす発光装置の発光が、特殊演色評価数R10、R11、R13、R14及びR15のいずれも80以上であると、基準光源に近い優れた演色性を有する混色光が得られる。
【0048】
本発明の第二実施形態の発光装置は、発光素子と、蛍光体を含む蛍光体部材と、を備え、次の条件(B)を満たす。
条件(B)は、前記発光装置の発光の相関色温度が2500K以上4500K未満の範囲内であり、前記発光素子の発光ピーク波長が410nm以上440nm以下の範囲内であり、前記蛍光部材が、前記式(i)で表される組成を有する蛍光体及び前記式(ii)で表される組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種の第一蛍光体と、前記式(iii)で表される組成を有する蛍光体、及び前記式(iv)で表される組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種の第二蛍光体と、前記式(v)で表される組成を有する蛍光体、前記式(vi)で表される組成を有する蛍光体及び前記式(vii)で表される組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種の第三蛍光体と、前記式(viii)で表される組成を有する蛍光体である第四蛍光体と、を含み、蛍光部材に含まれる蛍光体の総量に対する第一蛍光体の含有量が25質量%以上90質量%以下の範囲内であり、前記発光装置の発光スペクトルにおける前記式(1)に基づき導き出されるメラノピック比が0.7以上1.1以下の範囲内である。
【0049】
発光装置は、条件(B)を満たし、発光装置の発光の相関色温度が2500K以上4500K未満の範囲内であるときに、蛍光部材中に含まれる蛍光体の総量に対する第一蛍光体の含有量を25質量%以上90質量%以下の範囲内として、発光装置の発光スペクトルにおける前記式(1)に基づき導き出されるメラノピック比が0.7以上1.1以下の範囲内であると、ipRGCが比較的弱く刺激され、ヒトの覚醒が促されすぎることなく、落ち着いた光の照明によって、発光装置からヒトが快適さを感じると推測される光が出射される。蛍光部材中に含まれる蛍光体の総量は、第一蛍光体、第二蛍光体、第三蛍光体及び第四蛍光体の合計量をいう。
【0050】
条件(B)を満たす発光装置は、発光装置の発光スペクトルにおける前記式(1)に基づき導き出されるメラノピック比が0.7以上1.1以下の範囲内であり、0.8以上1.1以下の範囲内であることが好ましい。発光装置の発光装置の発光スペクトルにおける前記式(1)に基づき導き出されるメラノピック比が0.7以上1.1以下の範囲内であると、ipRGCが較的強く刺激され、ヒトの覚醒が促される。そのため、職場や学校において、発光装置からヒトが快適さを感じると推測される光が出射される。
【0051】
条件(B)を満たす発光装置は、蛍光部材中に含まれる蛍光体の総量に対して、第二蛍光体の含有量が、1質量%以上40質量%以下の範囲内であることが好ましい。条件(B)を満たす発光装置は、蛍光部材中に含まれる蛍光体の総量に対して、第三蛍光体の含有量が、8質量%以上60質量%以下の範囲内であることが好ましい。条件(B)を満たす発光装置は、蛍光部材中に含まれる蛍光体の総量に対して、第四蛍光体の含有量が、1質量%以上10質量%以下の範囲内であることが好ましい。
【0052】
条件(B)を満たす発光装置は、蛍光部材中に含まれる蛍光体の総量に対して、第一蛍光体の含有量が28質量%以上80質量%以下の範囲内であり、第二蛍光体の含有量が5質量%以上38質量%以下の範囲内であり、第三蛍光体の含有量が14質量%以上55質量%以下の範囲内であり、第四蛍光体の含有量が1質量%以上8質量%以下の範囲内であってもよい。
【0053】
条件(B)を満たす発光装置は、蛍光部材中に含まれる蛍光体の総量に対して、第一蛍光体の含有量が28質量%以上75質量%以下の範囲内であり、第二蛍光体の含有量が8質量%以上35質量%以下の範囲内であり、第三蛍光体の含有量が15質量%以上50質量%以下の範囲内であり、第四蛍光体の含有量が2質量%以上7質量%以下の範囲内であってもよい。
【0054】
条件(B)を満たす発光装置は、第一蛍光体が前記式(i)で表される組成を有する蛍光体であり、第二蛍光体が前記式(iv)で表される組成を有する蛍光体であり、第三蛍光体が前記式(v)で表される組成を有する蛍光体であってもよい。
【0055】
条件(B)を満たす発光装置は、第一蛍光体が前記式(i)で表される組成を有する蛍光体であり、第二蛍光体が前記式(iv)で表される組成を有する蛍光体であり、第三蛍光体が前記式(v)で表される組成を有する蛍光体であり、第四蛍光体が前記式(viii)で表される組成を有する蛍光体であり、蛍光部材中に含まれる蛍光体の総量に対して、第一蛍光体の含有量が28質量%以上75質量%以下の範囲内であり、第二蛍光体の含有量が8質量%以上35質量%以下の範囲内であり、第三蛍光体の含有量が15量%以上50質量%以下の範囲内であり、第四蛍光体の含有量が2質量%以上7質量%以下の範囲内であってもよい。
【0056】
条件(B)を満たす発光装置は、第一蛍光体が前記式(i)で表される組成を有する蛍光体であり、第二蛍光体が前記式(iv)で表される組成を有する蛍光体であり、第三蛍光体が前記式(v)で表される組成を有する蛍光体であり、第四蛍光体が前記式(viii)で表される組成を有する蛍光体であり、蛍光部材中に含まれる蛍光体の総量に対して、第一蛍光体の含有量が28質量%以上75質量%以下の範囲内であり、第二蛍光体の含有量が8質量%以上35質量%以下の範囲内であり、第三蛍光体の含有量が15量%以上50質量%以下の範囲内であり、第四蛍光体の含有量が2質量%以上7質量%以下の範囲内であり、発光装置の発光スペクトルにおける前記式(1)に基づき導き出されるメラノピック比が0.8以上1.1以下の範囲内であってもよい。
【0057】
条件(B)を満たす発光装置に含まれる蛍光体において、第一蛍光体が、430nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、第二蛍光体が、480nm以上530nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、第三蛍光体が、500nm以上580nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、第四蛍光体が、600nm以上650nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する、ことが好ましい。第一蛍光体、第二蛍光体、第三蛍光体及び第四蛍光体は、発光ピーク波長が410nm以上440nm以下の範囲内である発光素子からの光を吸収し、相関色温度が2500K以上4500K未満の範囲内の混色光を発光することができる。
【0058】
条件(B)を満たす発光装置の発光は、平均演色評価数Raが80以上であることが好ましく、85以上であることがより好ましく、86以上であってもよい。条件(B)を満たす発光装置の発光の平均演色評価数Raが85以上であると、ヒトが快適さを感じる演色性を有する照明として使用可能である。
【0059】
条件(B)を満たす発光装置の発光は、特殊演色評価数R9が50以上であるか、又は特殊演色評価数R12が50以上であることが好ましい。特殊演色評価数R9が50以上であれば、赤色成分が十分得られる発光である。条件(B)を満たす発光装置の発光は、特殊演色評価数R9が60以上であってもよく、70以上であってもよい。条件(B)を満たす発光装置の発光は、特殊変色評価数R12が50以上であれば、発光装置から発せられる光が、410nm以上440nm以下の青色成分から青緑色成分が少なくなることなく、基準光源に近い青色成分を維持した発光を得ることができ、発光装置から出射した光に照らされたものの見え方をより改善することができる。条件(B)を満たす発光装置の発光は、特殊変色評価数R12が52以上であってもよく、54以上であってもよい。
【0060】
条件(B)を満たす発光装置の発光は、特殊演色評価数R10が50以上であるか、60以上であってもよい。条件(B)を満たす発光装置の発光は、特殊演色評価数R11が60以上であるか、70以上であってもよい。条件(B)を満たす発光装置の発光は、特殊演色評価数R13が70以上であるか、80以上であってもよい。条件(B)を満たす発光装置の発光は、特殊演色評価数R14が80以上であるか、90以上であってもよい。条件(B)を満たす発光装置の発光は、特殊演色評価数R15が80以上であるか、90以上であってもよい。条件(B)を満たす発光装置の発光が、特殊演色評価数R10、R11、R13、R14及びR15が上記範囲内であると、高い演色性を有する混色光が得られる。
【0061】
本発明の第一実施形態の発光装置は、発光素子と、蛍光体を含む蛍光体部材と、を備え、次の条件(C)を満たす。
条件(C)は、発光装置の発光の相関色温度が2500K以上3000K以下の範囲内であり、発光素子の発光ピーク波長が440nm以上470nm以下の範囲内であり、蛍光部材が、前記式(i)で表される組成を有する蛍光体及び前記式(ii)で表される組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種の第一蛍光体と、前記式(iii)で表される組成を有する蛍光体、前記式(iv)で表される組成を有する蛍光体、前記式(v)で表される組成を有する蛍光体、前記式(vi)で表される組成を有する蛍光体、及び前記式(vii)で表される組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種の第二蛍光体と、前記式(viii)で表される組成を有する蛍光体である第三蛍光体と、を含み、蛍光部材に含まれる蛍光体の総量に対する第一蛍光体の含有量が20質量%以上90質量%以下の範囲内であり、前記発光装置の発光スペクトルにおける前記式(1)に基づき導き出されるメラノピック比が0.48以上1.1以下の範囲内である。
【0062】
条件(C)を発光装置は、発光装置の発光スペクトルにおける前記式(1)に基づき導き出されるメラノピック比が0.48以上1.1以下の範囲内であり、0.5以上1.1以下の範囲内であることが好ましい。条件(C)を満たす発光装置のメラノピック比が0.48以上1.1以下の範囲内であると、ipRGCが必要以上に刺激されず、くつろいだ雰囲気を要求される、例えばリビングにおいて、発光装置を快適に使用することができる。
【0063】
条件(C)を満たす発光装置は、蛍光部材に含まれる蛍光体の総量に対して、第二蛍光体の含有量が、9質量%以上70質量%以下の範囲内であることが好ましい。条件(C)を満たす発光装置は、蛍光部材に含まれる蛍光体の総量に対して、第三蛍光体含有量が、1質量%以上10質量%以下の範囲内であることが好ましい。
【0064】
条件(C)を満たす発光装置は、蛍光部材中に含まれる蛍光体の総量に対して、第一蛍光体の含有量が25質量%以上80質量%以下の範囲内であり、第二蛍光体の含有量が12質量%以上60質量%以下の範囲内であり、第三蛍光体の含有量が2質量%以上9質量%以下の範囲内であってもよい。
【0065】
条件(C)を満たす発光装置は、蛍光部材中に含まれる蛍光体の総量に対して、第一蛍光体の含有量が26質量%以上75質量%以下の範囲内であり、第二蛍光体の含有量が20質量%以上55質量%以下の範囲内であり、第三蛍光体の含有量が5質量%以上8質量%以下の範囲内であってもよい。
【0066】
条件(C)を満たす発光装置は、第一蛍光体が前記式(iii)で表される組成を有する蛍光体であり、第二蛍光体が前記式(v)で表される組成を有する蛍光体であってもよい。
【0067】
条件(C)を満たす発光装置は、第一蛍光体が前記式(iii)で表される組成を有する蛍光体であり、第二蛍光体が前記式(v)で表される組成を有する蛍光体であり、第三蛍光体が前記式(viii)で表される組成を有する蛍光体であり、蛍光部材中に含まれる蛍光体の総量に対して、第一蛍光体の含有量が26質量%以上75質量%以下の範囲内であり、第二蛍光体の含有量が20質量%以上55質量%以下の範囲内であり、第三蛍光体の含有量が5質量%以上8質量%以下の範囲内であってもよい。
【0068】
条件(C)を満たす発光装置は、第一蛍光体が前記式(iii)で表される組成を有する蛍光体であり、第二蛍光体が前記式(v)で表される組成を有する蛍光体であり、第三蛍光体が前記式(viii)で表される組成を有する蛍光体であり、蛍光部材中に含まれる蛍光体の総量に対して、第一蛍光体の含有量が26質量%以上75質量%以下の範囲内であり、第二蛍光体の含有量が20質量%以上55質量%以下の範囲内であり、第三蛍光体の含有量が5質量%以上8質量%以下の範囲内であり、発光装置の発光スペクトルにおける前記式(1)に基づき導き出されるメラノピック比が0.5以上1.1以下の範囲内であってもよい。
【0069】
条件(C)を満たす発光装置に含まれる蛍光体において、第一蛍光体が、430nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、第二蛍光体が、480nm以上580nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、第三蛍光体が、600nm以上650nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有することが好ましい。第一蛍光体、第二蛍光体、及び第三蛍光体は、発光ピーク波長が440nm以上470nm以下の範囲内である発光素子からの光を吸収し、相関色温度が2500K以上3000K以下の範囲内の混色光を発光することができる。
【0070】
条件(C)を満たす発光装置の発光は、平均演色評価数Raが80以上であることが好ましく、85以上であることがさらに好ましく、90以上であってもよい。条件(C)を満たす発光装置の発光の平均演色評価数Raが85以上であると、ヒトが快適さを感じる演色性を有する照明として使用可能である。
【0071】
条件(C)を満たす発光装置の発光は、特殊演色評価数R9が40以上であるか、又は特殊演色評価数R12が80以上であることが好ましい。特殊演色評価数R9が40以上であれば、暖色系の照明においても赤色が見えにくくなることがない。条件(C)を満たす発光装置の発光は、特殊演色評価数R9が42以上であってもよく、45以上であってもよい。条件(C)を満たす発光装置の発光は、特殊変色評価数R12が80以上であれば、発光装置から発せられる光が、440nm以上470nm以下の青色成分から青緑色成分が少なくなることなく、基準光源に近い青色成分を有する発光を得ることができ、発光装置から出射した光に照らされたものの見え方をより改善することができる。条件(C)を満たす発光装置の発光は、特殊変色評価数R12が82以上であってもよく、83以上であってもよい。
【0072】
条件(C)を満たす発光装置の発光は、特殊演色評価数R10が80以上であるか、85以上であってもよい。条件(C)を満たす発光装置の発光は、特殊演色評価数R11が85以上であるか、90以上であってもよい。条件(C)を満たす発光装置の発光は、特殊演色評価数R13が85以上であるか、85以上であってもよい。条件(C)を満たす発光装置の発光は、特殊演色評価数R14が90以上であるか、95以上であってもよい。条件(B)を満たす発光装置の発光は、特殊演色評価数R15が80以上であるか、85以上であってもよい。条件(B)を満たす発光装置の発光が、特殊演色評価数R10、R11、R13、R14及びR15がいずれも80以上であると、優れた演色性を有する混色光が得られる。
【0073】
発光装置の製造方法
第一例及び第二例に示す発光装置は、以下の製造方法によって製造することができる。第一リード及び第二リードを一体成形してなる成形体は、金型内に第一リード及び第二リードを配置し、金型内に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を入れて硬化させ、底面と側面とを有する凹部を有する成形体を形成する。発光素子は、凹部を確定する上向きの面を有する第一リードに配置され、ワイヤによって電気的に接続する。蛍光部材を形成する樹脂中に蛍光体を入れ、蛍光部材用組成物を形成する。蛍光部材用組成物を成形体の凹部内に注入し、樹脂を硬化させ、蛍光部材を形成して、発光装置を製造することができる。前記条件(A)を満たす発光装置、前記条件(B)を満たす発光装置及び前記条件(C)を満たす発光装置が、前記第一例又は前記第二例の発光装置である場合には、いずれも同様の方法で発光装置を製造することができる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0075】
蛍光体
実施例及び比較例で使用する蛍光体を表1に記載した。
【0076】
発光ピーク波長
蛍光体の発光ピーク波長及び半値幅は、分光蛍光光度計(製品名:QE-2000、大塚電子株式会社製、もしくは製品名:F-4500、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定した発光スペクトルから求めた。第一蛍光体は、励起波長405nmの光を照射して発光スペクトル測定した。第二蛍光体と第三蛍光体は励起波長450nmの光を照射して発光スペクトルを測定した。
【0077】
【0078】
実施例1
第一蛍光体として前記式(i)で表される組成を有する蛍光体((i)CCA)を用い、第二蛍光体として前記式(v)で表される組成を有する蛍光体((v)YAG)を用い、第三蛍光体として前記式(viii)で表される組成を有する蛍光体((viii)SCASN-1)を用いた。発光素子は、発光ピーク波長が420nmであるものを用いた。蛍光部材を形成する樹脂としてシリコーン樹脂を用いた。第一蛍光体、第二蛍光体及び第三蛍光体の総量100質量%に対して、各蛍光体の含有量が表2に示す割合となり、発光装置の発光の相関色温度が6500K付近になるように、各蛍光体をシリコーン樹脂に添加し、混合分散した後、脱泡して蛍光部材を形成する蛍光部材用組成物を製造した。第一リード及び第二リードを一体成形してなる成形体の凹部内に発光素子を配置し、ワイヤで第一リード及び第二リードに電気的に接続した。蛍光部材用組成物を、発光素子の上に注入して、成形体の凹部に充填し、さらに150℃で3時間加熱し、蛍光部材用組成物を硬化させて、蛍光部材を形成し、
図1に示される第一例の発光装置と同様の形態の実施例1の発光装置を製造した。実施例1に係る発光装置は、発光の相関色温度が6500Kであり、蛍光部材が、前記式(i)で表される組成を有する蛍光体である第一蛍光体と、前記式(v)で表される組成を有する蛍光体である第二蛍光体と、前記式(viii)で表される組成を有する蛍光体である第三蛍光体と、を含み、蛍光部材に含まれる蛍光体の総量に対する第一蛍光体の含有量が78質量%であり、後述する測定方法で測定した発光装置の発光スペクトルにおける前記式(1)に基づき導き出されるメラノピック比が1.18であり、条件(A)を満たしている。
【0079】
実施例2及び3
蛍光部材に含まれる蛍光体の総量に対する、第一蛍光体、第二蛍光体、及び第三蛍光体の含有量を表2に示すようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2及び3の発光装置を製造した。実施例2及び3に係る発光装置は、発光の相関色温度が6500Kであり、蛍光部材が、前記式(i)で表される組成を有する蛍光体である第一蛍光体と、前記式(v)で表される組成を有する蛍光体である第二蛍光体と、前記式(viii)で表される組成を有する蛍光体である第三蛍光体と、を含み、蛍光部材に含まれる蛍光体の総量に対する第一蛍光体の含有量が表2に表されるとおりであり、後述する測定方法で測定した発光装置の発光スペクトルにおける前記式(1)に基づき導き出されるメラノピック比が表3に表されるとおりであり、条件(A)を満たしている。
【0080】
比較例1
発光ピーク波長が450nmである発光素子を用い、第一蛍光体を使用することなく、第二蛍光体として前記式(iv)で表される組成を有する蛍光体((iv)SAE)、前記式(v)で表される組成を有する蛍光体((v)YAG)及び前記式(vi)で表される組成を有する蛍光体((vi)LAG)を用い、及び第三蛍光体として前記式(viii)で表される組成を有する蛍光体((viii)SCASN-2、(viii)SCASN-3)を用い、蛍光体の総量に対する各蛍光体の含有量を、表2に示すようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の発光装置を製造した。
【0081】
発光スペクトル及びメラノピック比
実施例及び比較例の各発光装置から発せられる混色光の発光スペクトル(分光分布)を分光測光装置(PMA-11、浜松ホトニクス株式会社製)及び積分球を組み合わせた光計測システム用いて測定した。発光装置の分光分布と、WELL認証によって提唱されている哺乳類の網膜にある光受容体であるipRGCの感度曲線(サーカディアン作用曲線)と、国際照明委員会(CIE)によって規定されているヒトを含む哺乳類の明所視における視感度曲線から前記式(1)に基づきメラノピック比を導き出した。実施例において、2個以上の複数個の発光装置を製造し、複数個の発光装置の平均値を表中に記載した。
【0082】
相関色温度、平均演色評価数Ra、特殊演色評価数R9からR15
実施例及び比較例の各発光装置について、マルチチャンネル分光器と積分球を組み合わせた光計測システムで、JIS Z8725に準拠して相関色温度(Tcp;K)、JIS Z8726に準拠して平均演色評価数Ra、特殊演色評価数R9からR15を測定した。JIS Z8781に準拠して、相関色温度が5000K未満の場合には、黒体放射体の光を基準光源とし、相関色温度が5000Kを超える場合には、CIE昼光(CIE標準イルミナントD65)を基準光源とした。実施例において、2個以上の複数個の発光装置を製造し、複数個の発光装置の平均値を表中に記載した。
【0083】
【0084】
【0085】
相関色温度が6500Kであり、条件(A)を満たす実施例1から3に係る発光装置の発光は、メラノピック比が1.0以上1.4以下の範囲内であり、ipRGCを比較的強く刺激してヒトの覚醒を促進することができ、職場や学校において、発光装置からヒトが快適さを感じると推測される光が出射される。また、実施例1から3に係る発光装置の発光は、平均演色評価数Raが90以上であり、より厳密な色の見え方が要求される色検査、美術館、博物館、臨床検査を行う場所などで好適に使用可能である。また、実施例1から3に係る発光装置の発光は、特殊演色評価数R9が60以上であり、特殊演色評価数R12が80以上であった。実施例1から3に係る発光装置の発光は、相関色温度が6500Kの青色を帯びた白色の発光であっても、赤色成分が少なくなることなく、照らされたものの見え方をより改善することができる。
【0086】
比較例1に係る発光装置は、第一蛍光体を含んでおらず、条件(A)を満たしていない。比較例1に係る発光装置の発光は、メラノピック比が1.0未満となり、ipRGCへの刺激が少ない。また、比較例1に係る発光装置の発光は、特殊演色評価数R9が8.5と極端に少なくなった。
【0087】
実施例4
第一蛍光体として前記式(i)で表される組成有する蛍光体((i)CCA)を用い、第二蛍光体として前記式(iv)で表される組成を有する蛍光体((iv)SAE)を用いて、第三蛍光体として前記式(v)で表される組成を有する蛍光体((v)GYAG)を用い、第四蛍光体として前記式(viii)で表される組成を有する蛍光体((viii)SCASN-1)を用いた。第一蛍光体、第二蛍光体、第三蛍光体及び第四蛍光体の総量100質量%に対して、各蛍光体の含有量が表4に示す割合となり、発光装置の発光の相関色温度が4000K付近になるように、各蛍光体をシリコーン樹脂に添加して蛍光部材用組成物を製造したこと以外は、実施例1と同様にして、
図2に示される第二例と同様の形態の実施例4の発光装置を製造した。実施例4に係る発光装置は、発光の相関色温度が4000Kであり、蛍光部材が、前記式(i)で表される組成を有する蛍光体である第一蛍光体と、前記式(iv)で表される組成を有する蛍光体である第二蛍光体と、前記式(v)で表される組成を有する蛍光体である第三蛍光体と、前記式(viii)で表される組成を有する蛍光体である第四蛍光体と、を含み、蛍光部材に含まれる蛍光体の総量に対する第一蛍光体の含有量が62質量%であり、前述した測定方法で測定した発光装置の発光スペクトルにおける前記式(1)に基づき導き出されるメラノピック比が0.88であり、条件(B)を満たしている。
【0088】
実施例5から7
蛍光部材に含まれる蛍光体の総量に対する、第一蛍光体、第二蛍光体、第三蛍光体及び第四蛍光体の各含有量を表4に示すようにしたこと以外は、実施例4と同様にして、実施例5から7の発光装置を製造した。実施例5から7に係る各発光装置は、発光の相関色温度が4000Kであり、蛍光部材が、前記式(i)で表される組成を有する蛍光体である第一蛍光体と、前記式(iv)で表される組成を有する蛍光体である第二蛍光体と、前記式(v)で表される組成を有する蛍光体である第三蛍光体と、前記式(viii)で表される組成を有する蛍光体である第四蛍光体と、を含み、蛍光部材に含まれる蛍光体の総量に対する第一蛍光体の含有量が表4に示すとおりであり、前述した測定方法で測定した発光装置の発光スペクトルにおける前記式(1)に基づき導き出されるメラノピック比が表5に示すとおりであり、条件(B)を満たしている。
【0089】
比較例2
発光ピーク波長が450nmである発光素子を用い、第一蛍光体及び第二蛍光体を使用することなく、第三蛍光体として前記式(v)で表される組成を有する蛍光体((v)YAG)を用い、第四蛍光体として前記式(viii)で表される組成を有する蛍光体((viii)SCASN-2、(viii)SCASN-3)を用いた。第二蛍光体、及び第三蛍光体の種類と、蛍光体の総量に対する各蛍光体の含有率を、表4に示すようにして、第二蛍光体、及び第三蛍光体を配合したこと以外は、実施例4と同様にして、比較例2の発光装置を製造した。
【0090】
【0091】
【0092】
相関色温度が4000Kであり、条件(B)を満たす実施例4から7に係る発光装置の発光は、メラノピック比が0.70以上1.1以下の範囲内であり、ipRGCが比較的弱く刺激され、ヒトの覚醒が促されすぎることなく、落ち着いた光の照明によって、例えば、住宅、ホテル、レストラン、店舗等の作業を伴う生活環境において、発光装置からヒトが快適さを感じると推測される光が出射される。実施例4から7に係る発光装置の発光は、平均演色評価数Raが85以上であり、生活環境においてヒトが快適さを感じる演色性を有する照明として使用可能である。実施例4から7に係る発光装置の発光は、特殊演色評価数R9が50以上であり、特殊演色評価数R12が50以上であった。
【0093】
比較例2に係る発光装置は、第一蛍光体及び第二蛍光体を含んでおらず、条件(B)を満たしていない。比較例2に係る発光装置の発光は、メラノピック比が0.7未満であり、ipRGCへの刺激が少ない。また、比較例2に係る発光装置の発光は、特殊演色評価数R9が9.7と極端に少なくなった。
【0094】
実施例8
第一蛍光体として前記式(iii)で表される組成有する蛍光体((iii)SAE)を用い、第二蛍光体として前記式(v)で表される組成を有する蛍光体((v)YAG)を用い、第三蛍光体として前記式(viii)で表される組成を有する蛍光体((viii)SCASN-1、(viii)SCASN-3)を用いた。発光素子は、発光ピーク波長が452nmであるものを用いた。第一蛍光体、第二蛍光体及び第三蛍光体の総量100質量%に対して、各蛍光体の含有量が表6に示す割合となり、発光装置の発光の相関色温度が2700K付近になるように、各蛍光体をシリコーン樹脂に添加して蛍光部材用組成物を製造したこと以外は、実施例1と同様にして、
図1に示される第一例と同様の形態の実施例8の発光装置を製造した。実施例8に係る発光装置は、発光の相関色温度が2700Kであり、蛍光部材が、前記式(iii)で表される組成を有する蛍光体である第一蛍光体と、前記式(v)で表される組成を有する蛍光体である第二蛍光体と、前記式(viii)で表される組成を有する蛍光体である第三蛍光体と、を含み、蛍光部材に含まれる蛍光体の総量に対する第一蛍光体の含有量が56質量%であり、前述した測定方法で測定した発光装置の発光スペクトルにおける前記式(1)に基づき導き出されるメラノピック比が0.52であり、条件(C)を満たしている。
【0095】
実施例9及び10
蛍光部材に含まれる蛍光体の総量に対する、第一蛍光体、第二蛍光体、及び第三蛍光体の含有量を表6に示すようにしたこと以外は、実施例8と同様にして、実施例9及び10の発光装置を製造した。実施例9及び10に係る発光装置は、発光の相関色温度が2700Kであり、蛍光部材が、前記式(iii)で表される組成を有する蛍光体である第一蛍光体と、前記式(v)で表される組成を有する蛍光体である第二蛍光体と、前記式(viii)で表される組成を有する蛍光体である第三蛍光体と、を含み、蛍光部材に含まれる蛍光体の総量に対する第一蛍光体の含有量が表6に記載のとおりであり、前述した測定方法で測定した発光装置の発光スペクトルにおける前記式(1)に基づき導き出されるメラノピック比が表7に記載のとおりであり、条件(C)を満たしている。
【0096】
比較例3
発光ピーク波長が450nmである発光素子を用い、第一蛍光体を使用することなく、第二蛍光体として前記式(v)で表される組成を有する蛍光体((v)YAG)を用い、及び第三蛍光体として前記式(viii)で表される組成を有する蛍光体((viii)SCASN-2、(viii)SCASN-3)を用い、蛍光体の総量に対する各蛍光体の含有量を、表6に示すようにしたこと以外は、実施例8と同様にして、比較例3の発光装置を製造した。
【0097】
【0098】
【0099】
相関色温度が2700Kであり、前記条件(C)を満たす実施例8から10に係る発光装置の発光は、メラノピック比が0.48以上1.1以下の範囲内であり、ipRGCが必要以上に刺激されず、くつろいだ雰囲気を要求されるリビング等の生活環境において、発光装置からヒトが快適さを感じると推測される光が出射される。実施例8から10に係る発光装置の発光は、平均演色評価数Raが85以上であり、生活環境において、ヒトが快適さを感じる演色性を有する照明として使用することができる。実施例8から10に係る発光装置の発光は、特殊演色評価数R9が40以上であり、特殊演色評価数R12が80以上であった。
【0100】
比較例3に係る発光装置は、第一蛍光体を含んでおらず、条件(C)を満たしていない。比較例3に係る発光装置の発光は、メラノピック比が0.48未満であり、メラトニンの分泌を抑制することができず、眠気を誘われる照明となる場合がある。また、比較例3に係る発光装置の発光は、特殊演色評価数R9が9.0と極端に少なくなった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の一実施形態の発光装置は、例えば、照明器具として利用することができる。
【符号の説明】
【0102】
10:発光素子、20:第一リード、30:第二リード、40:成形体、50:蛍光部材、70、71、72、73、74:蛍光体、100:発光装置。