(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】試料固定装置及び試料固定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
G01N1/28 W
G01N1/28 F
(21)【出願番号】P 2019185121
(22)【出願日】2019-10-08
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(73)【特許権者】
【識別番号】599112582
【氏名又は名称】公益財団法人高輝度光科学研究センター
(73)【特許権者】
【識別番号】504194878
【氏名又は名称】国立研究開発法人海洋研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100180817
【氏名又は名称】平瀬 実
(72)【発明者】
【氏名】武井 将志
(72)【発明者】
【氏名】女池 竜二
(72)【発明者】
【氏名】上椙 真之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 元雄
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-054433(JP,A)
【文献】特開2007-010351(JP,A)
【文献】特開2009-198417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 - 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が保持材を介して配置された試料台
を含む試料体を保持する保持台部と、
前記試料を前記保持材に押圧するための部材であって、押圧方向と逆の方向に配置されることによって前記保持台部と互いに対向する押圧部材と、
前記押圧方向と交差する第1軸方向に間隔を空けて対置される部材であって
、前記保持台部及び前記押圧部材のそれぞれの第1外縁部及び第2外縁部が収容される
一対の収容部を含み、当該
一対の収容部の前記第1軸方向の間隔を変えるように移動する一対の挟持部材とを備え、
前記
一対の収容部は
、収容された前記第2外縁部と前記押圧方向に対して傾斜した傾斜面で係わり合うことによって、互いに近接するに従って前記第2外縁部を押圧して
前記試料を前記押圧方向に次第に移動させる
ことを特徴とする試料固定装置。
【請求項2】
前記
一対の収容
部は、当該
一対の収容部に収容された前記第2外縁部を押圧するための
一対の外縁押圧部を含み、
前記第2外縁
部は、当該第2外縁部を収容した前記収容部の前記
一対の外縁押圧部によって押圧される被押圧部を含み、
前記
一対の外縁押圧部と前記被押圧部との少なくとも一方は、前記傾斜面を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の試料固定装置。
【請求項3】
前記
一対の外縁押圧部と前記被押圧部とは、前記押圧方向に対して同じ角度で傾斜した前記傾斜面を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の試料固定装置。
【請求項4】
前記
一対の収容部は、前記第1軸方向に互いに対向して、前記第1外縁部及び前記第2外縁部を各々に収容する
ことを特徴とする請求項
2又は3に記載の試料固定装置。
【請求項5】
前記
一対の外縁押圧部は、前記保持台部に配置される前記試料台の中心を通る前記押圧方向の第1中心軸を中心とした所定の角度範囲に対称に設けられる
ことを特徴とする請求項
2から4のいずれか1項に記載の試料固定装置。
【請求項6】
前記角度範囲は、前記第1中心軸と交差する第1軸を中心として、左回り及び右回りのそれぞれに35度以上の範囲である
ことを特徴とする請求項5に記載の試料固定装置。
【請求項7】
前記角度範囲は、前記第1中心軸と交差する前記第1軸を中心として、左回り及び右回りのそれぞれに45度の範囲である
ことを特徴とする請求項6に記載の試料固定装置。
【請求項8】
前記
一対の収容
部は、当該
一対の収容部に収容された前記第1外縁部を支持するための
一対の外縁支持部を含み、
前記第1外縁
部は、当該第1外縁部を収容した前記
一対の収容部の前記
一対の外縁支持部によって支持される被支持部を含み、
前記
一対の外縁支持部と前記被支持部との少なくとも一方は、前記傾斜面を有する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の試料固定装置。
【請求項9】
前記
一対の外縁支持部と前記被支持部とは、前記押圧方向(下方)に対して同じ角度で傾斜した前記傾斜面を有する
ことを特徴とする請求項8に記載の試料固定装置。
【請求項10】
前記
一対の収容部によって押圧される前の前記押圧部材と前記試料との間にすき間を設けるための弾性を有する部材であって、前記保持台部と前記押圧部材との間に設けられる弾性部材をさらに備える
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の試料固定装置。
【請求項11】
前記
一対の収容部は、前記第1軸方向に対向する部位に、前記収容された第2外縁部との間にすき間を形成する
一対の非接触部をさらに含む
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の試料固定装置。
【請求項12】
前記押圧部材は、前記試料を外部から観察するための透光部を含む
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の試料固定装置。
【請求項13】
前記保持台部は、前記押圧部材が対置される第1対置面部に、前記試料台を嵌め込んで前記保持台部の中央の押圧位置と前記試料台が着脱される着脱位置との間を移動させるための移動溝部を含み、
前記試料固定装置は、
前記押圧位置に位置付けられた前記試料台の前記着脱位置への移動を規制するための移動規制部材をさらに備える
ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の試料固定装置。
【請求項14】
前記移動規制部材は、前記
第1対置面部に載せ置かれる平板状の部材であって、前記試料台を内部に配置するための貫通孔部を有する
ことを特徴とする請求項13項に記載の試料固定装置。
【請求項15】
前記貫通孔部は、前記
第1対置面部から離れる方向に突き出ている
ことを特徴とする請求項14に記載の試料固定装置。
【請求項16】
前記保持台部に対して固定した位置で前記第1軸方向に離間しており、各々が前記押圧方向に延びる一対の軸部をさらに備え、
前記
一対の挟持部
材は、前記収容部の一端から延びる
一対の第1延在部をさらに含み、
前記
一対の第1延在
部は、前記
一対の軸部に回転可能に嵌まる
一対の嵌合穴部を含む
ことを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の試料固定装置。
【請求項17】
前記
一対の挟持部
材は、前記収容部の他端から延びる
一対の第2延在部を含み、
前記試料固定装置は、
前記
一対の第2延在部の間を前記第1軸方向に締結することによって、前記
一対の収容部の前記間隔を変えるように
前記一対の挟持部材を移動させる締結機構部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の試料固定装置。
【請求項18】
前記
一対の第2延在
部は、前記第1軸方向に貫通するとともに、先端に向かって開放した溝を形成する
一対のボルト配置溝部を含み、
前記締結機構部は、
前記
一対のボルト配置溝部に配置されることによって前記
一対の第2延在部の間に延在し、少なくとも一端が前記
一対の第2延在部の一方の外端面よりも外方へ突き出すボルト部と、
当該ボルト部がネジ作用で嵌る雌ネジ部と、
前記ボルト部及び前記雌ネジ部の一方を前記外端面に係止する係止部とを含み、
前記ボルト部及び前記雌ネジ部の他方は、前記
一対の第2延在部の他方に、押圧方向の回転軸を中心として回転可能に設けられる
ことを特徴とする請求項17に記載の試料固定装置。
【請求項19】
試料が保持材を介して配置された試料台
を含む試料体を保持台部に保持させることと、
前記試料を前記試料台に押圧する押圧部材を押圧方向に沿って前記保持台部に対置させることと、
前記押圧方向と交差する第1軸方向に間隔を空けて対置される一対の挟持部材の
一対の収容部に、前記保持台部及び前記押圧部材のそれぞれの第1外縁部及び第2外縁部を収容させることと、
前記
一対の収容部の前記間隔を変えるように前記一対の挟持部材を移動させることとを含み、
前記一対の挟持部材を移動させることでは、前記
一対の収容部
が収容された前記第2外縁部と前記押圧方向に対して傾斜した傾斜面で係わり合うことによって、互いに近接するに従って前記第2外縁部を押圧して
前記試料を前記押圧方向に次第に移動させる
ことを特徴とする試料固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料固定装置及び試料固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)装置、電子顕微鏡などで試料を分析、観察などする場合に、試料が、金箔などの保持材を介してピンスタブなどの試料台に取り付けられることがある。このような分析、観察などに供される試料は、一般的に微小であることがあり、このような場合、保持材に試料を圧着して分析、観察などを行うことが多い。
【0003】
試料を保持材に圧着するための装置は一般的に知られておらず、手作業で試料を保持材に圧着することが多い。詳細には例えば、試料を載せた保持材をアルミ箔などの薄いシートに挟んで平らな台に設置し、ガラス棒の先端で試料をシートの上から押し付けることによって試料を保持材に圧着することが行われている。そして、シートを剥がして、ピンセットなどで試料が圧着した保持材を取り出した後に、試料は保持材とともに試料台に載せ置かれる。
【0004】
ここで、試料を試料台に取り付けるために試料を加圧する試料マウント装置が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の試料マウント装置は、ファインセラミックスや金属などの薄板や小サイズの試料を加工(切断、研磨など)するにあたって、両面に接着剤層を有するラバーシートを介して試料を試料台に貼り付けるための装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、手作業では、試料及び保持材をシートに挟む際に、シートが試料に擦れることなどで、保持材の上で試料の位置が大きくズレてしまうことや、試料が飛んでしまって試料を紛失することがある。
【0007】
試料及び保持材をシートで挟めたとしても、押し付けた際に試料が保持材とシートとの両方に圧着することがある。このような場合、シートを剥がす際に、試料が保持材とシートとに引っぱられて破損することがある。
【0008】
さらに、シートを剥がしてみると保持材に皺が生じていることがある。保持材の皺は、その後の分析に影響する可能性がある。
【0009】
このように、手作業では手間が掛かるだけではなく、試料を保持材に安定して確実に圧着することが難しい。特に、宇宙探査機が宇宙で採取したような貴重な試料である場合、試料を無駄なく分析などに利用することが強く望まれるため、試料を保持材に安定して確実に圧着することが重要である。
【0010】
また、接着剤などの試料を保持材に固定するための固定用物質は、試料の分析結果、観察などに影響を及ぼす可能性があるので、分析、観察などに供される試料の固定に固定用物質を利用することは避けた方が望ましい。特許文献1に記載の試料マウント装置は、試料とラバーシートの間、ラバーシートと試料台の間のそれぞれを接着剤層で張り付けるための装置である。そのため、当該試料マウント装置では、接着剤などを利用せずに試料を保持材に安定して確実に圧着することは難しいと考えられる。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、試料を保持材に安定して確実に圧着することが可能な試料固定装置などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る試料固定装置は、
試料が保持材を介して配置された試料台を含む試料体を保持する保持台部と、
前記試料を前記試料台に押圧するための部材であって、押圧方向と逆の方向に配置されることによって前記保持台部と互いに対向する押圧部材と、
前記押圧方向と交差する第1軸方向に間隔を空けて対置される部材であって、前記保持台部及び前記押圧部材のそれぞれの第1外縁部及び第2外縁部が収容される一対の収容部を含み、当該一対の収容部の前記第1軸方向の間隔を変えるように移動する一対の挟持部材とを備え、
前記一対の収容部は、収容された前記第2外縁部と前記押圧方向に対して傾斜した傾斜面で係わり合うことによって、互いに近接するに従って前記第2外縁部を押圧して前記試料を前記押圧方向に次第に移動させる。
【0013】
本発明に係る試料固定方法は、
試料が保持材を介して配置された試料台を含む試料体を保持台部に保持させることと、
前記試料を前記試料台に押圧する押圧部材を押圧方向に沿って前記保持台部に対置させることと、
前記押圧方向と交差する第1軸方向に間隔を空けて対置される一対の挟持部材の一対の収容部に、前記保持台部及び前記押圧部材のそれぞれの第1外縁部及び第2外縁部を収容させることと、
前記一対の収容部の前記間隔を変えるように前記一対の挟持部材を移動させることとを含み、
前記一対の挟持部材を移動させることでは、前記一対の収容部が収容された前記第2外縁部と前記押圧方向に対して傾斜した傾斜面で係わり合うことによって、互いに近接するに従って前記第2外縁部を押圧して前記試料を前記押圧方向に次第に移動させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、試料を保持材に安定して確実に圧着することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る試料固定装置の分解斜視図である。
【
図3】一実施の形態に係る支柱部が一体に形成された保持台部の斜視図である。
【
図4】一実施の形態に係る左方の挟持部材及び軸部材を、当該挟持部材の凹みが設けられる方向から見た側面図である。
【
図5】試料体が着脱位置に配置された状態の一実施の形態に係る試料固定装置の斜視図である。
【
図6】試料体が押圧位置に配置された状態の一実施の形態に係る試料固定装置の斜視図である。
【
図7】試料体が押圧位置に固定された状態の一実施の形態に係る試料固定装置の斜視図である。
【
図8】押圧部材が保持台部に配置された状態の一実施の形態に係る試料固定装置の斜視図である。
【
図9】保持台部及び押圧部材が収容部に収容された状態の一実施の形態に係る試料固定装置の斜視図である。
【
図10】保持台部及び押圧部材が収容部に収容された状態の一実施の形態に係る試料固定装置の平面図である。
【
図12】
図11の一点鎖線C1で囲まれた部分の拡大断面図である。
【
図13】
図10のXIII-XIII線における断面図である。
【
図14】
図13の一点鎖線D1で囲まれた部分の拡大断面図である。
【
図15】
図13の一点鎖線D2で囲まれた部分の拡大断面図である。
【
図16】
図13の一点鎖線D3で囲まれた部分の拡大断面図である。
【
図17】試料が圧着された状態の一実施の形態に係る試料固定装置の断面図であって、
図10のXI-XI線に相当する線における断面を示す。
【
図18】
図17の一点鎖線E1で囲まれた部分の拡大断面図である。
【
図19】試料が圧着された状態の一実施の形態に係る試料固定装置の断面図であって、
図10のXIII-XIII線に相当する線における断面を示す。
【
図20】
図19の一点鎖線F1で囲まれた部分の拡大断面図である。
【
図21】
図19の一点鎖線F2で囲まれた部分の拡大断面図である。
【
図22】
図19の一点鎖線F3で囲まれた部分の拡大断面図である。
【
図23】保持台部及び押圧部材が収容部に収容された状態の一変形例に係る試料固定装置の断面図であって、
図10のXI-XI線に相当する線における断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。全図を通じて同一の要素には同一の符号を付す。また、本発明の実施の形態の説明及び図面では、上・下・前・後・左・右の用語を用いるが、これらは、方向を説明するために用いるのであって、本発明を限定する趣旨ではない。
【0017】
なお、以下の説明及び図面での「下方」は「押圧方向」に相当し、「上方」は「押圧方向と逆の方向」に相当する。「左右方向」は、押圧方向と交差する「第1軸方向」の一例である。
【0018】
<<試料固定装置100の構成>>
本発明の一実施の形態に係る試料固定装置100は、
図1の分解斜視図に示すように、試料101を保持材102に固定するための装置である。試料固定装置100は、ベース部103と、支柱部104と、保持台部105と、左右で対をなす軸部材106と、押圧部材107と、弾性部材108と、移動規制部材109と、左右で対をなす挟持部材110と、締結機構部111とを備える。試料固定装置100は、後述する透光部129を除いて、例えば金属で作られる。
【0019】
試料101は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)装置、電子顕微鏡などで分析、観察などを行う対象物である。試料101の例として、有機物の微小片、無機物の微小片、宇宙探査機が宇宙で採取したものを挙げることができる。試料101は、
図2の斜視図に示すように、保持材102を介して試料台112に配置された試料体113として試料固定装置100に着脱される。
【0020】
保持材102は、試料固定装置100によって試料101が圧着される円形の金箔である。なお、保持材102は、金箔以外の各種の金属箔、樹脂シートなどの試料101が押圧によって圧着される物であればよく、その素材や形状は分析方法や観察方法に応じて適宜選択されるとよい。
【0021】
試料台112は、SIMS装置、電子顕微鏡などの装置に試料を配置するためのピンスタブである。試料台112は、側面に周方向の嵌合溝114が設けられた円板状の台部115と、台部115の下面の概ね中央から延びる棒状のピン116とを含む。
【0022】
台部115の上面には、保持材102を配置するための凹み部が設けられている。凹み部は、保持材102の概ね同じ大きさの円形の極めて浅い窪みを形成しており、その深さは、保持材102の厚さ以下であることが望ましい。
【0023】
なお、試料台112は、ピンスタブに限られず、分析、観察などを行う装置に応じて適宜選択されるとよい。
【0024】
ベース部103は、
図1に示すように、グローブボックスなどの作業場所に置かれる平板状の部位である。
【0025】
支柱部104は、
図1及び
図3の斜視図に示すように、下端がベース部103に固定されて上方へ延びる円柱状の部位である。本実施の形態に係る支柱部104の下面部には、ベース部103にボルトで固定するための雌ネジ穴が設けられている。なお、支柱部104は、ベース部103に固定されていればよく、溶接などで固定されてもよい。
【0026】
保持台部105は、試料101が押圧される押圧位置に試料体113を保持する部位であって、本実施の形態では支柱部104と一体に形成され、下端が支柱部104の上端に固定されている。
【0027】
保持台部105は、概ね、押圧部材107が対置される第1対置面部117と、第1対置面部117の周囲から下方に延びる第1側面部118と、第1側面部118と支柱部104との間を接続する第1傾斜面部119とから構成される。
【0028】
本実施の形態では、第1対置面部117は上方から見て円形であり、第1側面部118は円柱状の側周面を形成する。そして、第1傾斜面部119は、第1中心軸Pを中心として下方へ次第に縮径する円錐台状の傾斜面を形成している。
【0029】
ここで、第1中心軸Pは、第1対置面部117の中心を通る仮想的な軸であって上下方向を向く軸である(
図10参照)。
【0030】
すなわち、第1傾斜面部119は、第1側面部118の下端から下方へ向かって一定の割合で次第に縮小しており、上下軸(上下方向を向く軸)に対して一定の角度で傾斜した傾斜面を形成する。
【0031】
なお、第1対置面部117を上方から見た形状は、円形に限られず、例えば多角形などであってもよく、左右対称であることが望ましい。例えば、第1対置面部117が、上方から見て左右対称な正多角形である場合、第1側面部118は正多角柱状の側面を形成すればよい。また、第1傾斜面部119は、第1中心軸Pに対して一定の角度で傾斜した円錐台状或いは正多角錐台状の傾斜面を形成すればよい。
【0032】
詳細には、保持台部105は、
図1に示すように、第1対置面部117に、環状溝部120と固定用凹部121と保持部122とを含む。保持台部105はさらに、
図3に示すように、第1側面部118及び第1傾斜面部119に、第1外縁部123を含む。
【0033】
環状溝部120は、第1対置面部117の外縁に沿った環状の溝を形成する。
【0034】
固定用凹部121は、環状溝部120の内方に凹みを形成する。本実施の形態に係る固定用凹部121は、上方から見て第1対置面部117と同心の円形の浅い凹みを形成する。
【0035】
保持部122は、第1対置面部117の概ね中央の押圧位置に試料台112を保持するための凹みを形成する部位であって、固定用凹部121の底面から下方に接続する。
【0036】
本実施の形態に係る保持部122は、上述の押圧位置における凹みを含む移動溝部124と、嵌合突部125とを含む。
【0037】
移動溝部124は、試料台112をピン116を下方に向けて嵌め込んで、押圧位置とその後方の着脱位置との間で移動させるための前後に長い溝を形成している。なお、着脱位置は、後方に限らず、押圧位置に対して予め定められた方向に設けられてよい。
【0038】
本実施の形態に係る移動溝部124は、浅溝部、深溝部及び膨出部を含む。
【0039】
浅溝部と深溝部とは、台部115とピン116とのそれぞれが嵌って移動する溝を形成する部位であって、固定用凹部121の底面から段差を介して下方へ連続して設けられる。これによって、浅溝部と深溝部とは、固定用凹部121が形成する凹みと連続した深さが異なる溝を形成する。
【0040】
詳細には、浅溝部の幅は、試料台112の台部115が緩やかに嵌るように台部115の直径よりも大きい。浅溝部の深さは、台部115の下面から嵌合溝114の上端までの長さ以下である。
【0041】
深溝部は、上方から見て浅溝部の内方に設けられ、左右方向には浅溝部の概ね中央に設けられる。深溝部の幅は、試料台112のピン116が緩やかに嵌るようにピン116の太さよりも大きく、その深さは、試料台112のピン116の長さよりも長い。
【0042】
なお、本実施の形態では、深溝部は、下方に貫通するが、有底の溝であってもよい。
【0043】
膨出部は、着脱位置にて浅溝部が形成する溝から連続して左右それぞれに突き出た空間を形成する。膨出部を設けることによって、ピンセットなどで試料台112を左右から挟んで着脱位置に着脱できるので、試料台112の着脱を容易にすることが可能になる。
【0044】
嵌合突部125は、浅溝部の上端にて内方へ突き出た部位である。嵌合突部125は、浅溝部の前端の上方から見て半円状の部位から内方へ突き出す部分と、当該部分の左右の各後端から後方に着脱位置での台部115の着脱を阻害しない長さで延びる部分とから構成される。嵌合突部125の上面は、浅溝部の底面と面一に形成される。嵌合突部125の突き出す長さは、嵌合溝114の深さよりも短い。これによって、嵌合突部125は、押圧位置に位置付けられた台部115の嵌合溝114に嵌まることができる。
【0045】
第1外縁部123は、詳細後述する挟持部材110の各々の収容部139に収容される部分である。第1外縁部123は、第1側面部118及び第1傾斜面部119の一部であって、本実施の形態では第1中心面を介して左右対称な2つの部分から構成される。ここで、第1中心面は、第1中心軸Pを含んで前後に延びる仮想的な面である。
【0046】
第1外縁部123は、収容部139によって支持される被支持部126を含む。
【0047】
被支持部126は、第1外縁部123のそれぞれに含まれる第1傾斜面部119の一部又は全部であって、第1中心面を介して左右対称な2つの部分から構成される。本実施の形態では、第1傾斜面部119は上述したような円錐台状の傾斜面を形成するので、被支持部126は上下軸(本実施の形態では第1中心軸P)に対して一定の角度で傾斜した傾斜面を形成する。
【0048】
左右の軸部材106は、
図1及び4に示すように、支柱部104の後方において、第1中心面を介して左右対称にベース部103に固定された部材であって、左右の挟持部材110のそれぞれの回転の中心となる。
【0049】
ここで、
図4は、左方の挟持部材110及び軸部材106を、当該挟持部材110の収容部139に設けられる凹み(詳細後述)が設けられる方向から見た側面図である。
【0050】
軸部材106の各々は、段差を介して接続した軸基部127と軸部128とを含んで一体的に概ね同様に形成されている。
【0051】
軸基部127は、円柱状の部位であって、例えばネジ止め、溶接によってベース部103に固定される。軸部128は、軸基部127より小径の円柱状の部位であって、軸基部127の上端に接続して上方へ延びる。
【0052】
このように、本実施の形態に係る軸部128は、ベース部103に固定される軸基部127と一体に形成されることによって、保持台部105に対して固定した位置で左右方向に離間して、各々が上下方向に延びる。
【0053】
押圧部材107は、
図1に示すように、試料101を試料台112に向けて押圧するための部材である。押圧部材107は、保持台部105の上方に配置されることによって保持台部105と互いに対向する。
【0054】
本実施の形態に係る押圧部材107は、透光部129と、第2対置面部130と、第2側面部131と、上面部132と、第2傾斜面部133とを含む。そして、押圧部材107は、第2側面部131及び第2傾斜面部133に、第2外縁部134を含む。
【0055】
透光部129は、試料101を押圧するときなどに試料101を外部から観察するための透光性を有する部位であって、押圧部材107の概ね中央で上下方向に貫通する。
【0056】
第2対置面部130は、第1対置面部117と対置される下面を形成する部位である。
【0057】
詳細には、第2対置面部130は、
図11に示すように、試料101を押圧するための押圧面部を概ね中央に含む。本実施の形態に係る押圧面部は、透光部129の下面部の一部(当該下面部の外縁近傍を除いた部分)である。
【0058】
第2対置面部130は、さらに、上下方向の段差を介して押圧面部に接続する内側環状部と、上下方向の段差を介して内側環状部の外縁に接続する外側環状部とを含む。内側環状部と外側環状部との各々は、平らな一定の幅の環状平面を形成し、外側環状部は、内側環状部よりも上外方に位置する。
【0059】
第2側面部131は、第2対置面部130(外側環状部)の外縁から上方に延びる。本実施の形態に係る第2側面部131は、円柱状の側周面を形成しており、上方から見て第1側面部118と概ね同径である。
【0060】
上面部132は、押圧部材107の上端面を形成する部位であって、概ね、円形の観察窓が中央に設けられた円環帯状をなす。透光部129の上面部の一部(当該上面部の外縁近傍を除いた部分)である観察面部が、観察窓を通じて外部に露出する。
【0061】
第2傾斜面部133は、第2側面部131の上端と上面部132との間で延びる傾斜面を形成する。本実施の形態に係る第2傾斜面部133は、第2中心軸を中心として上方へ次第に縮径する円錐台状の傾斜面を形成している。
【0062】
ここで、第2中心軸は、第2対置面部130の中心を通る仮想的な軸であって上下方向を向く軸である。
【0063】
すなわち、第2傾斜面部133は、第2側面部131の上端から上方へ向かって一定の割合で次第に縮小しており、上下軸に対して一定の角度で傾斜した傾斜面を形成する。
【0064】
なお、第2対置面部130を上方から見た形状は、円形に限られず、例えば多角形などであってもよく、第1対置面部117と同じ大きさ及び形状であることが望ましい。例えば、第2対置面部130が、上方から見て左右対称な正多角形であってもよく、この場合、第2側面部131は正多角柱状の側面を形成すればよい。また、第2傾斜面部133は、第2側面部131の上端から上内方へ向かって一定の割合で次第に縮小すればよく、第2中心軸に対して一定の角度で傾斜した円錐台状或いは正多角錐台状の傾斜面を形成すればよい。
【0065】
第2外縁部134は、保持台部105と押圧部材107とが対置された状態で、第1外縁部123とともに、詳細後述する挟持部材110の各々の収容部139に収容される部分である。第2外縁部134は、第2側面部131及び第2傾斜面部133の一部であって、本実施の形態では第2中心面を介して左右対称な2つの部分から構成される。ここで、第2中心面は、第2中心軸を含んで前後に延びる仮想的な面である。
【0066】
第2外縁部134は、収容部139によって押圧される被押圧部135を含む。
【0067】
被押圧部135は、第2外縁部134のそれぞれに含まれる第2傾斜面部133の一部又は全部であって、第2中心面を介して左右対称な2つの部分から構成される。
【0068】
本実施の形態では、第2傾斜面部133は上述したような円錐台状の傾斜面を形成するので、被押圧部135は上下軸(本実施の形態では第2中心軸)に対して傾斜した傾斜面を形成する。また本実施の形態では、詳細後述するように、収容部139が非接触部144を含むので、被押圧部135は、第2外縁部134のそれぞれに含まれる第2傾斜面部133の一部である。
【0069】
このような押圧部材107は、本実施の形態では、透光部129としての円柱状のサファイアガラスと、外枠部と、円形の観察窓が設けられた円板状の抑え部と、4本のボルトを組み立てることで構成されている。
【0070】
詳細には、サファイアガラスが、外枠部の中央の上下貫通孔に嵌め込まれて、下端が係止されている。また、抑え部が、透光部129の外縁近傍を上方から抑えてボルトで外枠部に固定されている。
【0071】
これにより、第2対置面部130は、透光部129の押圧面部と外枠部の下面部とによって構成される。第2側面部131及び第2傾斜面部133は、外枠部によって構成される。上面部132は、抑え部によって構成される。
【0072】
なお、透光部129は、円柱状に限られず、多角柱などであってもよい。また、透光部129の材料は、試料101を押圧できる硬度と、外部から試料101を観察できる透光性とを有すればよく、サファイアガラスに限られず、その他のガラス、樹脂などであってもよい。
【0073】
弾性部材108は、弾性を有する部材である。弾性部材108は、保持台部105と押圧部材107との間に設けられることによって、試料101を押圧する前の押圧部材107(押圧面部)と試料101との間にすき間を設ける。
【0074】
本実施の形態に係る弾性部材108は、
図1に示すように、環状溝部120に嵌められるゴム製のOリングである。保持台部105に対置された押圧部材107は、上述した第2対置面部130の外側環状部で弾性部材108と接触する。そして、押圧部材107に外力が加わっていない状態では、弾性部材108の厚みによって、押圧部材107(押圧面部)と試料101との間にすき間が形成される。
【0075】
移動規制部材109は、押圧位置に位置付けられた試料台112の着脱位置への移動を規制するための部材である。
【0076】
本実施の形態に係る移動規制部材109は、固定用凹部121に嵌め込まれる円形平板状の部材である。移動規制部材109は、試料台112を内部に配置するための貫通孔部136と、着脱を容易にするために外縁に設けられた切欠き部137とを含む。
【0077】
貫通孔部136は、試料台112が緩やかに嵌る程度の大きさであり、反り返るように湾曲する。移動規制部材109は、貫通孔部136が第1対置面部117(固定用凹部121の底面)から離れる上方向に突き出すように、固定用凹部121に配置される。
【0078】
なお、移動規制部材109は、試料台112が押圧位置から移動することを規制できればよく、例えば押圧位置に位置付けられた試料台112と移動溝部124とのすき間を埋める部材であってもよい。
【0079】
左右の挟持部材110は、
図1及び4に示すように、左右方向に間隔を空けて対置される部材であって、上下方向に対置された保持台部105及び押圧部材107を左右から挟む。
【0080】
左右の挟持部材110は、概ね左右対称な形状であり、それぞれが、第1延在部138と、収容部139と、第2延在部140とを含んで一体的に形成されている。なお、挟持部材110は後述するように回転移動できるが、保持台部105及び押圧部材107が収容部139に収容された状態(
図9参照)における方向に従って、挟持部材110の形状を説明する。
【0081】
左右の第1延在部138の各々は、後端から概ね前方へ延びる平板状或いは角柱状の部位であって、後端近傍に嵌合穴部141を含む。嵌合穴部141の各々は、軸部128が貫通して設けられる上下方向の貫通孔を形成しており、その下端は、軸基部127と軸部128との間の段差に係止される。
【0082】
これによって、挟持部材110の各々は、ベース部103に対して概ね同じ高さ(上下方向の位置)で軸部128を中心に回転する。第1延在部138の各々の後端は、回転時に互いに干渉しないように、上方から見て円弧状に形成されている。
【0083】
左右の収容部139は、それぞれの後端が第1延在部138の前端に接続しており、当該後端から湾曲して延びる角柱状の部位である。左右の収容部139は、左右方向へ互いに離れる方向へ膨出して延びており、本実施の形態では円弧状に湾曲して延びている。左右の収容部139は、軸部128を中心に左右の挟持部材110が回転すると、左右方向の間隔を変えるように移動する。
【0084】
なお、収容部139は、円弧状に限られず、例えば前後方向に真っ直ぐに延びる角柱状であってもよい。また、収容部139は、左右方向の距離を変えるように移動できればよく、左右方向にスライド移動することによって左右方向の距離を変えてもよい。
【0085】
収容部139の各々には、左右方向に互いに対向する部分に凹みが設けられている。左右の収容部139が互いに近接したとき、それぞれの凹みに、第1外縁部123及び第2外縁部134が収容される。収容部139は、左右方向に互いに近接するに従って、各々に収容された第1外縁部123を支持しつつ第2外縁部134を下方に次第に強い力で押圧する。これにより、押圧部材107は次第に下方に移動する。
【0086】
詳細には、収容部139の各々は、凹みを形成する部位に、外縁支持部142と外縁押圧部143と非接触部144とを含む。
【0087】
外縁支持部142は、被支持部126を支持するための部位である。
【0088】
本実施の形態に係る外縁支持部142は、上下軸に対して一定の角度で傾斜した傾斜面を形成し、第1外縁部123に含まれる第1傾斜面部119の全体を被支持部126として支持する。なお、外縁支持部142は、第1外縁部123に含まれる第1傾斜面部119の一部を被支持部126として支持してもよい。
【0089】
本実施の形態に係る外縁支持部142及び被支持部126の各々の傾斜面は、上下軸に対して同じ角度で傾斜する。そのため、外縁支持部142は、被支持部126と点や線ではなく面で接触してそれを支持することができる。
【0090】
外縁押圧部143は、被押圧部135を押圧するための部位である。
【0091】
本実施の形態に係る外縁押圧部143は、被押圧部135を押圧するための、上下軸に対して一定の角度で傾斜した傾斜面を形成し、第2外縁部134に含まれる第2傾斜面部133の一部を被押圧部135として押圧する。なお、外縁押圧部143は、第2外縁部134に含まれる第2傾斜面部133の全部を被押圧部135として押圧するように構成されてもよい。
【0092】
本実施の形態に係る外縁押圧部143と被押圧部135との各々の傾斜面は、上下軸に対して同じ角度で傾斜する。そのため、外縁押圧部143は、被押圧部135と点や線ではなく面で接触して支持することができる。
【0093】
非接触部144は、左右軸に沿って対向する部位に、第2外縁部134との間にすき間を形成する。本実施の形態に係る非接触部144は、外縁押圧部143の前方及び後方のそれぞれで、上方へ切り欠かれた部位である。
【0094】
本実施の形態では非接触部144を設けることによって、上述したように、外縁押圧部143は、第2外縁部134に含まれる第2傾斜面部133の一部を被押圧部135として押圧する。
【0095】
より詳細には、非接触部144を設けることによって、外縁押圧部143は、第1中心軸Pを中心とした所定の角度範囲に対称に設けられる。本実施の形態では、外縁押圧部143は、左右対称に設けられる。そして、外縁押圧部143が設けられる角度範囲は、第1対置面部117の中心を通る左右軸Qを中心とした左回り及び右回りのそれぞれにθ度とした場合(
図10参照)、例えばθ≧35であることが望ましく、特にθ=45であることが望ましい。
【0096】
第2延在部140の各々は、収容部139の前端から概ね真っ直ぐに延びる角柱状の部位であって、先端(前端)にU字溝部145を含む。また、左方の第2延在部140は、先端近傍に軸受穴部146を含む。なお、軸受穴部146は、第2延在部140のいずれか一方に設けられればよい。
【0097】
U字溝部145は、第2延在部140の各々の前端に、左右方向に貫通するとともに前方へ向けて開放したU字状の溝を形成する。U字溝部145の各々は、第2延在部140の後方へ同じ大きさで突き出す(すなわち、同じ深さの溝を形成する)。
【0098】
軸受穴部146は、左方の第2延在部140の前端近傍に、U字溝部145を上下方向に貫通する穴を形成する。なお、軸受穴部146は、U字溝部145の互いに対向する内面部の各々に上下軸に沿った穴を形成すればよく、例えばいずれか一方が貫通していなくてもよい。
【0099】
締結機構部111は、左右の第2延在部140の間を左右方向に締結することによって、左右軸に沿った収容部139の間隔を変えるように一対の挟持部材110を移動させる。
【0100】
なお、第1延在部138が軸部128を中心に回転することに代えて、例えば、第1延在部138が第2延在部140と同様に構成されて、締結機構部111によって締結されてもよい。
【0101】
本実施の形態に係る締結機構部111は、ボルト部147と、蝶ナット148とから構成される。
【0102】
ボルト部147は、回転部149と雄ネジ部150とを含む。
【0103】
回転部149は、上下軸に沿って配置される丸棒状の部位であって、上下の各端部が軸受穴部146に嵌まることで回転可能に設けられる。雄ネジ部150は、ネジ山が設けられた棒状の部位である。雄ネジ部150の一端は、回転部149の上下方向の概ね中央に例えば溶接によって固定されている。
【0104】
これによって、雄ネジ部150は、左方のU字溝部145と干渉しない範囲で、左方の第2延在部140に対して上下方向の回転軸を中心として回転可能に設けられる。そして、左右の第2延在部140が予め定められた距離よりも近接すると、雄ネジ部150は、ボルト配置溝部としてのU字溝部145の各々の中に配置されることで、左右の第2延在部140の間で延在する。このとき、雄ネジ部150の他端は、右方の第2延在部140の外端面よりも外方へ突き出す。
【0105】
ここで、一方の第2延在部140の外端面とは、当該第2延在部140の外方に位置する端面であり、外方は、他方の第2延在部140から離れる方向を意味する。従って、右方の第2延在部140では、その外方は右方を意味し、その外端面は当該第2延在部140の右端面を意味する。
【0106】
蝶ナット148は、雌ネジ部151と操作部152とを含んで一体に形成される。
【0107】
雌ネジ部151は、雄ネジ部150の他端近傍とネジ作用で嵌る雌ネジが設けられた貫通孔を含む部位である。雌ネジ部151は、外縁がU字溝部145の幅(上下方向の長さ)よりも大きい係止部153を含む。係止部153によって、雌ネジ部151は、右方の第2延在部140よりも外方へ突き出た雄ネジ部150に捻じ込んでも、U字溝部145の中へ移動しないように右方の第2延在部140の外端面に係止される。従って、雌ネジ部151を雄ネジ部150に捻じ込むことによって、一対の挟持部材110を次第に近接させることができる。
【0108】
なお、係止部153は、雌ネジ部151と第2延在部140との間に設けられる座金などであってもよい。
【0109】
操作部152は、雄ネジ部150から離間する方向へ突き出た蝶羽根状の部位である。操作部152を回転させることによって、雌ネジ部151を直接的に回転操作するよりも大きなトルクで雌ネジ部151を容易に回転させることができる。従って、雌ネジ部151を雄ネジ部150に捻じ込んで、一対の挟持部材110を容易に近接させることが可能になる。
【0110】
なお、締結機構部111は、雌ネジ部と蝶ボルトとから構成されてもよい。この場合、雌ネジ部は、回転部149に相当する棒状の部材であって、概ね中央に雌ネジが設けられた貫通孔を含むものであればよい。そして、蝶ボルトは、一端が雌ネジ部の雌ネジに嵌まるとともに、他端に操作部152が設けられたボルトであればよい。
【0111】
これによっても、蝶ボルトは、上下軸に沿った回転軸を中心として回転することができる。また、左右の第2延在部140が近接すると、左右の第2延在部140の間で延在するようにU字溝部145の各々の中に位置付け、雄ネジ部150の他端を、右方の第2延在部140の外端面から外方へ突き出させることができる。そして、操作部を操作することでボルトを容易に捻じ込むことができる。このとき、操作部の一部又は座金を係止部として、右方の第2延在部140の外端面に係止させることによって、一対の挟持部材110を近接させることができる。
【0112】
これまで、本発明の一実施の形態に係る試料固定装置100の構成について説明した。ここから、本発明の一実施の形態に係る試料固定方法について、図を参照して説明する。
【0113】
<<試料固定方法>>
本実施の形態に係る試料固定方法は、試料101を保持材102に固定するための方法である。試料固定方法は、例えばグローブボックス内で試料固定装置100を用いて行われる。以下で説明する各工程は、ピンセット、試料台112を置くケースなど適宜の器具を用いて行われるとよく、必要に応じて顕微鏡下で行われてもよい。
【0114】
支柱部104、保持台部105及び軸部材106が一体となったベース部103と、軸部材106の軸部128のそれぞれに嵌合穴部141が嵌め込まれた一対の挟持部材110とがグローブボックス内に準備される。このとき、左方の挟持部材110には回転部149が軸受穴部146に嵌め込まれることでボルト部147が予め回転可能に設けられ、蝶ナット148は雄ネジ部150の他端から予め嵌め込まれ、弾性部材108は、環状溝部120に予め嵌め込まれているとよい。
【0115】
また、試料101、保持材102、試料台112、移動規制部材109、押圧部材107のそれぞれがグローブボックス内に準備される。
【0116】
(試料体113の作製工程)
グローブボックス内で、保持材102が試料台112の凹み部に配置され、その保持材102の概ね中央に試料101が載せ置かれる。これによって、
図2に示すような試料体113が作製される。
【0117】
(試料体113の保持工程)
試料体113が、保持台部105に保持される。
【0118】
(試料体113の保持工程のうちの着脱位置への配置工程)
詳細には、
図5に示すように、試料体113が移動溝部124の着脱位置に配置される。これにより、着脱位置にて、ピン116が深溝部に嵌まるとともに、台部115が浅溝部に嵌まる。
【0119】
なお、
図5では、移動規制部材109、押圧部材107も図示しているが、これらは、他の部位とは離間して準備されていることを表しており、
図6においても同様である。
【0120】
(試料体113の保持工程のうちの押圧位置への配置工程)
試料体113を移動溝部124に沿って前方へ移動させることによって、
図6に示すように、試料体113が移動溝部124の押圧位置に配置される。このとき、嵌合突部125が嵌合溝114に嵌まるので、押圧位置に位置付けられた試料台112は、上方への移動が抑制される。
【0121】
(試料体113の保持工程のうちの押圧位置での固定工程)
図7に示すように、移動規制部材109が、保持台部105に配置される。このとき、移動規制部材109は、全体が固定用凹部121(
図1参照)の中に嵌まるとともに、押圧位置の台部115が貫通孔部136の中に位置付けられるように、保持台部105に配置される。
【0122】
なお、
図7では、押圧部材107も図示しているが、これは、押圧部材107が保持台部105から離間して準備されていることを意味する。
【0123】
本実施の形態では、貫通孔部136が上方向に反り返っているので、移動規制部材109が嵌合溝114の中に入り込むことは通常生じない(
図11参照)。これにより、押圧位置で前後方向に移動しないように試料体113を確実に固定することが可能になる。
【0124】
これによって、試料体113は、移動しないように保持台部105に保持される。
【0125】
(押圧部材107の配置工程)
図8に示すように、押圧部材107が、上下方向に保持台部105に対置される。
【0126】
詳細には、押圧部材107は、第2対置面部130が第1対置面部117と互いに上下方向に対向するように、保持台部105の上に載せ置かれる。より詳細には、第2対置面部130は、移動規制部材109を介して第1対置面部117に対置する。このとき、第2対置面部130の外側環状部と弾性部材108とが互いに接触しているが、透光部129(押圧面部)と試料101との間にはすき間がある。
【0127】
(収容工程)
左右の押圧部材107を軸部材106の軸部128を中心に回転させることによって、左右の収容部139を左右方向に互いに近接させる。これによって、左方の第1外縁部123及び第2外縁部134が左方の収容部139に収容されるとともに、右方の第1外縁部123及び第2外縁部134が右方の収容部139に収容される。
【0128】
また、左右の押圧部材107の回転に伴って、
図9に示すように、左右の第2延在部140は、左方のU字溝部145から右方のU字溝部145に雄ネジ部150を延在させることができる程度に近づく。雄ネジ部150は、回転部149を中心に回転することによって右方のU字溝部145の中に配置されて、右方の第2延在部140の外端面よりも右方へ突き出す。
【0129】
操作部152を例えば手で回すことで蝶ナット148が捻じ込まれると、係止部153が右方の第2延在部140の外端面と接触して、第2延在部140は概ね平行に前後方向に延びるように位置づけられる。これによって、
図9の斜視図及び
図10~16に示すように、左右の収容部139のそれぞれに、左右の第1外縁部123及び第2外縁部134が収容される。
【0130】
ここで、
図10は、収容部139の各々に第1外縁部123及び第2外縁部134が収容された状態の試料固定装置100の平面図である。
図11は、
図10のXI-XI線における断面図であり、
図12は、
図11の一点鎖線C1で囲まれた部分の拡大断面図である。
図13は、
図10のXIII-XIII線における断面図であり、
図14~
図16は、それぞれ、
図13の一点鎖線D1~D3で囲まれた部分の拡大断面図である。
【0131】
第1外縁部123及び第2外縁部134が収容された状態(以下、単に「収容状態」ともいう。)では、
図11~14を参照すると分かるように、弾性部材108の上端部と第2対置面部130の外側環状部とは、試料101及び保持材102を含む台部115の上方部分の周囲を囲って概ね環状にすき間なく接触する。押圧面部と台部115の上方部分とは、上下方向に対して概ね垂直な方向で互いに平行に配置される。
【0132】
また、
図13,15~16に示すように、非接触部144は、第2外縁部134と接触しないが、
図11に示すように、外縁支持部142及び外縁押圧部143のそれぞれは、被支持部126及び被押圧部135と傾斜面で接触する。
【0133】
詳細には、左方の収容部139では、左方の外縁支持部142が左方の被支持部126と傾斜面で互いに接触するとともに、左方の外縁押圧部143が左方の被押圧部135と傾斜面で互いに接触する。右方の収容部139においても同様に、右方の外縁支持部142が右方の被支持部126と傾斜面で互いに接触するとともに、右方の外縁押圧部143が右方の被押圧部135と傾斜面で互いに接触する。
【0134】
そして、
図11,13に示すように、弾性部材108は上下方向に殆ど潰れていない。
【0135】
すなわち、収容工程では、被支持部126及び被押圧部135は、下方への力を殆ど受けずに、左右のそれぞれで外縁支持部142及び外縁押圧部143の間に嵌まる。これにより、収容工程では、透光部129(押圧面部)と試料101との間のすき間を保った状態で、押圧部材107は、第1中心軸Pと第2中心軸とがある程度一致するようにスライド移動する。
【0136】
ここで、スライド移動とは、スライド方向の移動を意味し、スライド方向とは、押圧方向に垂直な面内における方向を意味し、すなわちスライド方向は、前後方向及び左右方向という2軸に沿った方向に分解して表すことができる。以下においても同様である。
【0137】
仮に押圧面部が試料101と接触してスライド移動すると、試料101のズレや破損、保持材102の皺などいった試料体113の不良が生じる可能性がある。しかし、本実施の形態に係る収容工程では、押圧面部と試料101との間のすき間があるので、このような試料体113の不良をほぼ生じさせずに第1中心軸Pと第2中心軸とをある程度一致させることができる。
【0138】
また、弾性部材108は試料101の周囲を囲んで設けられるため、押圧面部と試料101との間にすき間があっても、分析、観察などに影響するような異物が試料101の上やその近傍に侵入する可能性を低減することができる。
【0139】
従って、弾性部材108を設けない場合よりも、異物の侵入を防ぎつつ第1中心軸Pと第2中心軸とをある程度一致させることができるので、試料101を保持材102に安定して確実に圧着することが可能になる。
【0140】
(第1近接工程)
その後、蝶ナット148を締め付けることによって締結機構部111の締結力を強くすると、左右の挟持部材110が回転して、収容部139が左右方向に互いに近接する。
【0141】
収容部139は、各々に収容された第1外縁部123を支持するとともに第2外縁部134と傾斜面で係わり合っているので、近接するに従って、各々に収容された被押圧部135を下方に次第に強い力で押圧する。その結果、押圧部材107は、外側環状部で弾性部材108を上方から押し潰しながら、下方へ移動して保持台部105に近づき、やがて押圧面部が試料101に接触する。
【0142】
このとき、収容工程と同様に押圧部材107がスライド移動するので、第1中心軸Pと第2中心軸とのズレはさらに低減する。しかし、押圧面部と試料101との間のすき間があるので、第1近接工程での押圧部材107のスライド移動によって試料体113の不良が生じることは殆どない。
【0143】
(第2近接工程)
さらに蝶ナット148を締め付けて締結機構部111の締結力を強くすると、左右の挟持部材110が回転して、収容部139が左右方向に互いにさらに近接する。
【0144】
収容部139は、第1近接工程と同様に、各々に収容された第1外縁部123を支持するとともに第2外縁部134と傾斜面で係わり合っているので、近接するに従って、各々に収容された第2外縁部134を下方に次第にさらに強い力で押圧する。
【0145】
その結果、押圧部材107は、外側環状部では弾性部材108を上方からさらに押し潰しつつ、また押圧面部では試料101を押圧しつつ、下方へ移動して保持台部105に近づく。やがて、押圧面部が保持材102に接触する程度になると、試料101は保持材102に埋まる(
図17~20参照)。このような圧着によって、試料101は、保持材102に固定される。
【0146】
このとき、観察窓から透光部129を通じて試料101が保持材102にどの程度埋没しているかを観察しながら、蝶ナット148が締め付けられるとよい。また、試料101が微小である場合などには、この観察は顕微鏡を用いて行われるとよい。これにより、蝶ナット148の締め付け不足による試料101の圧着不良や、過剰な締め付けによる試料固定装置100の破損などを防ぐことができる。従って、透光部129を設けない場合よりも、試料101を保持材102に安定して確実に圧着することが可能になる。
【0147】
ここで、試料101が圧着された状態(以下、単に「圧着状態」ともいう。)の試料固定装置100を
図17~22に示す。
図17は、圧着状態の試料固定装置100の断面図であって、
図10のXI-XI線に相当する位置での断面を示す。
図18は、
図17の一点鎖線E1で囲まれた部分の拡大断面図である。
図19は、圧着状態の試料固定装置100の断面図であって、
図10のXIII-XIII線に相当する位置での断面を示す。
図20~
図22は、それぞれ、
図19の一点鎖線F1~F3で囲まれた部分の拡大断面図である。
【0148】
図19,21~22に示すように、非接触部144は、第2外縁部134と接触しないが、
図17に示すように、外縁支持部142及び外縁押圧部143のそれぞれは、被支持部126及び被押圧部135と傾斜面で接触する。
【0149】
すなわち、収容部139は、収容状態から圧着状態に至るまで概ね同様に第1外縁部123及び第2外縁部134と傾斜面で係わり合って、被支持部126を支持しつつ被押圧部135を押圧する。
【0150】
そのため、第2近接工程においても、押圧部材107は、外縁押圧部143の傾斜面で左右から挟まれて力を受けるので、下方に移動して試料101を下方に押圧するだけでなく、スライド方向の力を受けて、僅かにスライド移動することがある。
【0151】
特に、第2近接工程では、押圧面部は、下方への強い力が加わった状態で試料101及び保持材102と接触している。また、スライド移動の開始前とその後とでは、押圧面部と試料101及び保持材102との間の摩擦力が大きく変化し、押圧面部が移動を開始すると急激に移動することがある。そのため、第2近接工程では、押圧面部のスライド移動が極めて僅かな大きさであっても、試料101のズレや破損、保持材102の皺などいった試料体113の不良が生じる可能性がある。
【0152】
本実施の形態では、挟持部材110は左右方向の間隔を空けて設けられているので、収容部139も左右方向の間隔を空けて設けられる。さらに本実施の形態では、収容部139に非接触部144が設けられるので、外縁押圧部143は、さらに大きな左右方向の間隔を空けて設けられる。このように、外縁押圧部143が左右方向の間隔が空けて設けられるので、第2近接工程で押圧部材107に加わるスライド方向の力は、左右方向の成分に比べて前後方向の成分が小さくなる。
【0153】
その結果、押圧部材107にスライド方向の全方位から力を加えるよりも、押圧部材107の前後方向のスライド移動を低減することができるので、押圧部材107の全体的なスライド移動を低減することができる。
【0154】
このような本実施の形態によれば、試料101は、第1中心軸Pと第2中心軸とが主に前後方向に僅かにズレた状態で、押圧部材107に押される可能性がある。しかし、第1中心軸Pと第2中心軸とは、上述した通り第1近接工程までにある程度一致するので、これらの微小なズレは、試料101の圧着には殆ど影響しない。
【0155】
つまり、左右方向の間隔を空けて挟持部材110を設けることで、スライド移動を低減しつつ、圧着に十分な押圧力で試料101を下方に押圧することができる。従って、試料体113の不良の発生を抑制しつつ試料101を圧着できるので、試料101を保持材102に安定して確実に圧着することが可能になる。
【0156】
そして、非接触部144を設けることで、スライド移動をさらに低減しつつ、圧着に十分な押圧力で試料101を下方に押圧することができる。従って、試料体113の不良の発生をさらに抑制しつつ試料101を圧着できるので、試料101を保持材102にさらに安定して確実に圧着することが可能になる。
【0157】
このような第2近接工程にて試料101を圧着する際の動作から理解されると考えられるが、試料101を保持材102に強く押し付けるには、外縁押圧部143を設ける角度範囲θは大きい方が望ましい。その一方で、圧着する際の押圧部材107のスライド移動を低減するには、当該角度範囲θは小さい方が望ましい。
【0158】
このような観点から外縁押圧部143を設ける角度範囲θは適宜定められるとよいが、実際に当該角度範囲θが45度の試料固定装置100で検証したところ、試料101の分析、観察などを行うために十分な程度にスライド移動を低減して試料101を保持材102に圧着することができた。また、この検証では、θ≧70度の範囲で外縁押圧部143に押し付け痕が生じた。そのため、外縁押圧部143を設ける角度範囲θは、上述したように、35度以上が望ましく、特にθ=45であることが望ましい。
【0159】
本実施の形態では、試料体113は、移動規制部材109によって保持台部105に対する移動が規制されているので、これによっても、試料101を保持材102に安定して確実に圧着することが可能になる。
【0160】
(試料体113の取り外し工程)
その後、蝶ナット148を緩めて、挟持部材110を左右に離間させた後に、押圧部材107及び移動規制部材109が保持台部105の上から取り除かれる。そして、試料101が保持材102に固定された試料体113は、着脱位置まで後方に移動させて保持台部105から取り外される。
【0161】
本実施の形態では、押圧面部がガラスであるので、第2近接工程での押圧によって試料101や保持材102に付着し難い。そのため、押圧部材107を取り外す際の試料101の破損を防ぐことができる。従って、透光部129に押圧面部を設けることによって、試料101を保持材102により安定して確実に圧着することが可能になる。
【0162】
本実施の形態では、台部115は、嵌合突部125が嵌合溝114に嵌まることで、上方への移動が抑制されている。そのため、仮に押圧面部が第2近接工程での押圧によって試料101や保持材102に付着したとしても、これらを互いに緩やかに引き剥がすことができる。従って、嵌合突部125が嵌合溝114に嵌まることによって、試料101を保持材102にさらに安定して確実に圧着することが可能になる。
【0163】
本実施の形態では、外縁押圧部143と被押圧部135とが、上下軸に対して同じ角度で傾斜した傾斜面で係わり合うので、押圧部材107に加える力を緩やかに次第に大きくすることができる。また、互いに接触したときに傷が付くことなどによる外縁押圧部143及び被押圧部135の損傷を低減することができる。従って、試料101を保持材102に繰り返し安定して確実に圧着することが可能になる。
【0164】
本実施の形態では、外縁支持部142と被支持部126とが、上下軸に対して同じ角度で傾斜した傾斜面で係わり合う。これにより、互いに接触したときに傷が付くことなどによる外縁支持部142及び被支持部126の損傷を低減することができる。従って、試料101を保持材102に繰り返し安定して確実に圧着することが可能になる。
【0165】
本実施の形態では、左右の第1延在部138の嵌合穴部141が、左右の軸部128のそれぞれに嵌まって、左右の挟持部材110が回転可能に設けられる。これにより、収容部139を容易に近接又は離間させることができる。従って、試料101を保持材102に安定して確実かつ容易に圧着し、試料101が保持材102に圧着した試料体113を容易に着脱することが可能になる。
【0166】
本実施の形態では、試料固定装置100は、第2延在部140の間を左右方向に締結することによって、収容部139の左右方向の間隔を変えるように左右の挟持部材110を移動させる締結機構部111をさらに備える。これにより、収容部139を容易に近接又は離間させることができる。従って、試料101を保持材102に安定して確実かつ容易に圧着し、試料101が保持材102に圧着した試料体113を容易に着脱することが可能になる。
【0167】
本実施の形態では、第2延在部140の各々がU字溝部145を含む。そして、締結機構部111が、上下方向の回転軸を中心として回転可能に左方の第2延在部140に設けられたボルト部147と、係止部153を含む雌ネジ部151とから構成される。
【0168】
例えば、軸部128を設けずに、雄ネジ部150に相当する部材が、左右の第2延在部140のそれぞれの外端面から左右に突き出すように、左右のU字溝部145の中に配置されてもよい。この場合、その部材の両端の各々に蝶ナット148が嵌めることによって、第2延在部140の間を左右方向に締結することができる。
【0169】
しかし、本実施の形態のように、左方の第2延在部140に回転可能にボルト部147を設けることによって、雄ネジ部150をU字溝部145に容易に配置することができる。また、1つの蝶ナット148を操作することで第2延在部140の間を左右方向に移動させることができる。このように、雄ネジ部150をU字溝部145に容易に配置し、また第2延在部140の間を左右方向に容易に移動させることができる。
【0170】
従って、試料101を保持材102に安定して確実かつ極めて容易に圧着し、試料101が保持材102に圧着した試料体113を極めて容易に着脱することが可能になる。
【0171】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は以下のように変形されてもよい。
【0172】
(変形例)
例えば、外縁支持部と被支持部とは、上下軸に対して異なる角度で傾斜していてもよい。また例えば、外縁支持部と被支持部との一方のみが、上下軸に対して傾斜した傾斜面を形成していてもよく、この場合例えば、外縁支持部と被支持部との他方は、上下軸に平行な側面と上下軸に対して垂直な平面とで形成される角部であってもよい。
【0173】
図23は、一変形例に係る試料固定装置200の断面図であって、外縁支持部242が角部で構成される例を示す。外縁支持部242を除いて、試料固定装置200は、実施の形態に係る試料固定装置100と同様に構成される。
【0174】
このように、外縁支持部と被支持部とは、上下軸に対して傾斜した傾斜面で係わり合えばよい。これによっても、外縁支持部が被支持部を支持することができ、試料101を保持材102安定して確実に圧着することが可能になる。
【0175】
また、外縁押圧部と被押圧部についても同様である。例えば、外縁押圧部と被押圧部とは、上下軸に対して異なる角度で傾斜していてもよい。また例えば、外縁押圧部と被押圧部との一方のみが、上下軸に対して傾斜した傾斜面を形成していてもよく、この場合例えば、外縁押圧部と被押圧部との他方は、上下軸に平行な側面と上下軸に対して垂直な平面とで形成される角部であってもよい。
【0176】
このように、外縁押圧部と被押圧部とは、上下軸に対して傾斜した傾斜面で係わり合えばよい。これによっても、収容部139が左右方向に互いに近接するに従って、外縁押圧部は、下方に次第に強い力で被押圧部を押圧することができる。従って、試料101を保持材102に安定して確実に圧着することが可能になる。
【0177】
以上、本発明の一実施の形態、変形例などについて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。本発明は、例えば、実施の形態に変更を加えた態様、実施の形態と変形例とを適宜組み合わせた態様、これらの態様に適宜変更を加えた態様などを含む。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明は、各種の分析、顕微鏡観察などに供される試料を保持材に圧着によって固定するための装置及び方法に有用である。
【符号の説明】
【0179】
100,200 試料固定装置,101 試料,102 保持材,103 ベース部,104 支柱部,105 保持台部,106 軸部材,107 押圧部材,108 弾性部材,109 移動規制部材,110 挟持部材,111 締結機構部,112 試料台,113 試料体,114 嵌合溝,115 台部,116 ピン,117 第1対置面部,118 第1側面部,119 第1傾斜面部,120 環状溝部,121 固定用凹部,122 保持部,123 第1外縁部,124 移動溝部,125 嵌合突部,126 被支持部,127 軸基部,128 軸部,129 透光部,130 第2対置面部,131 第2側面部,132 上面部,133 第2傾斜面部,134 第2外縁部,135 被押圧部,136 貫通孔部,137 切欠き部,138 第1延在部,139 収容部,140 第2延在部,141 嵌合穴部,142,242 外縁支持部,143 外縁押圧部,144 非接触部,145 U字溝部,146 軸受穴部,147 ボルト部,148 蝶ナット,149 回転部,150 雄ネジ部,151 雌ネジ部,152 操作部,153 係止部