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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】内視鏡用オーバーチューブデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
A61B1/00 650
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019227600
(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公開番号】P2021094216
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(73)【特許権者】
【識別番号】501292795
【氏名又は名称】株式会社工販
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 清一
(72)【発明者】
【氏名】梅原 智
(72)【発明者】
【氏名】栗山 真一
(72)【発明者】
【氏名】出口 治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕也
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/122474(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/003308(WO,A1)
【文献】特開2003-210398(JP,A)
【文献】特開2000-014663(JP,A)
【文献】実開平01-101541(JP,U)
【文献】特開平03-136630(JP,A)
【文献】実開昭63-174802(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第03106078(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡が挿通される第1チャネルと、処置具が挿通される第2チャネルとを含み、前記第1チャネルおよび前記第2チャネルが開口している前端面および後端面を有するオーバーチューブを備え、
前記第2チャネルは、前記第1チャネルの中心軸に直交する第1方向において前記第1チャネルと並んで配置されており、
前記オーバーチューブは、前記第2チャネルに面しておりかつ前記第1チャネル側を向いた第1傾斜面を有しており、
前記第1傾斜面は、前記第1チャネルの前記中心軸を通りかつ前記第1方向に沿った断面において後側から前側に向かうにつれて前記第1チャネルの前記中心軸に近づくように前記第1チャネルの前記中心軸に対して傾斜しており、
前記断面において、前記第1傾斜面の前端部と後端部とを通る直線は、前記前端面よりも前側において前記第1チャネルの前記中心軸と交差し、
前記前端面は、前記第1チャネルの中心軸に直交する面に対して傾斜しており、
前記前端面は、前記前端面のうち最も後側に位置する第1面部と、前記前端面のうち最も前側に位置する第2面部とを有し、
前記断面において、前記第2チャネルは、前記第1チャネルに対して前記第1面部側に配置されている、内視鏡用オーバーチューブデバイス。
【請求項2】
内視鏡が挿通される第1チャネルと、処置具が挿通される第2チャネルとを含み、前記第1チャネルおよび前記第2チャネルが開口している前端面および後端面を有するオーバーチューブを備え、
前記第2チャネルは、前記第1チャネルの中心軸に直交する第1方向において前記第1チャネルと並んで配置されており、
前記オーバーチューブは、前記第2チャネルに面しておりかつ前記第1チャネル側を向いた第1傾斜面を有しており、
前記第1傾斜面は、前記第1チャネルの前記中心軸を通りかつ前記第1方向に沿った断面において後側から前側に向かうにつれて前記第1チャネルの前記中心軸に近づくように前記第1チャネルの前記中心軸に対して傾斜しており、
前記断面において、前記第1傾斜面の前端部と後端部とを通る直線は、前記前端面よりも前側において前記第1チャネルの前記中心軸と交差し、
前記第1チャネルよりも後側に配置されておりかつ前記第1チャネルと連通している第3チャネルと、前記第2チャネルよりも後側に配置されておりかつ前記第2チャネルと連通している第4チャネルとを含む把持部をさらに備え、
前記断面において、前記第3チャネルの後側の開口部と前記第4チャネルの後側の開口部との間の前記第1方向の距離は、前記第3チャネルの前側の開口部と前記第4チャネルの前側の開口部との間の前記第1方向の距離よりも長く、
前記把持部は、前記第4チャネルに面しておりかつ前記第3チャネル側を向いた第2傾斜面と、前記第2傾斜面と前記第1方向に対向する対向面とを有しており、
前記第2傾斜面は、前記断面において前側から後側に向かうにつれて前記第3チャネルの前記中心軸から遠ざかるように前記第3チャネルの前記中心軸に対して傾斜しており、
前記第2傾斜面と前記対向面との間の前記第1方向の距離は、前側から後側に向かうにつれて長くなるように設けられている、内視鏡用オーバーチューブデバイス。
【請求項3】
内視鏡が挿通される第1チャネルと、処置具が挿通される第2チャネルとを含み、前記第1チャネルおよび前記第2チャネルが開口している前端面および後端面を有するオーバーチューブを備え、
前記第2チャネルは、前記第1チャネルの中心軸に直交する第1方向において前記第1チャネルと並んで配置されており、
前記オーバーチューブは、前記第2チャネルに面しておりかつ前記第1チャネル側を向いた第1傾斜面を有しており、
前記第1傾斜面は、前記第1チャネルの前記中心軸を通りかつ前記第1方向に沿った断面において後側から前側に向かうにつれて前記第1チャネルの前記中心軸に近づくように前記第1チャネルの前記中心軸に対して傾斜しており、
前記断面において、前記第1傾斜面の前端部と後端部とを通る直線は、前記前端面よりも前側において前記第1チャネルの前記中心軸と交差し、
前記第1チャネルよりも後側に配置されておりかつ前記第1チャネルと連通している第3チャネルと、前記第2チャネルよりも後側に配置されておりかつ前記第2チャネルと連通している第4チャネルとを含む把持部をさらに備え、
前記断面において、前記第3チャネルの後側の開口部と前記第4チャネルの後側の開口部との間の前記第1方向の距離は、前記第3チャネルの前側の開口部と前記第4チャネルの前側の開口部との間の前記第1方向の距離よりも長く、
前記把持部は、前記第4チャネルに面しておりかつ前記第3チャネル側を向いた第2傾斜面と、前記第2傾斜面と前記第1方向に対向する対向面とを有しており、
前記第2傾斜面は、前記断面において前側から後側に向かうにつれて前記第3チャネルの前記中心軸から遠ざかるように前記第3チャネルの前記中心軸に対して傾斜しており、
前記第2傾斜面と前記対向面との間の前記第1方向の距離は、前側から後側に向かうにつれて長くなるように設けられており、
前記把持部は、前記第3チャネルを介した脱気を抑制する第1脱気抑制部材と、前記第4チャネルを介した脱気を抑制する第2脱気抑制部材とをさらに含み、
前記第1脱気抑制部材および前記第2脱気抑制部材は同一部材として構成されている、内視鏡用オーバーチューブデバイス。
【請求項4】
前記第1チャネルおよび前記第3チャネルに挿通され、かつ前記内視鏡が挿通される第5チャネルを含むインナーチューブをさらに備える、請求項に記載の内視鏡用オーバーチューブデバイス。
【請求項5】
前記第3チャネルよりも後側に配置されておりかつ前記第3チャネルと連通している第6チャネルを含むアダプターをさらに備え、
前記アダプターは、前記把持部に対して着脱可能であり、
前記アダプターは、前記把持部に取り付けられたときに前記第6チャネルを介した脱気を抑制する第3脱気抑制部材を含み、
前記第1脱気抑制部材は、前記把持部に取り付けられた前記アダプターに接触し、
前記第3脱気抑制部材は、前記第6チャネルに挿通された前記内視鏡に接触する、請求項に記載の内視鏡用オーバーチューブデバイス。
【請求項6】
前記アダプターは、前記把持部に取り付けられたときに前記第1脱気抑制部材と接触する部分よりも後側に配置され、かつ前記第6チャネルの前記中心軸および前記第1方向の各々と交差する第2方向に突出している突出部をさらに含み、
前記把持部は、前記把持部に取り付けられた前記アダプターの前記突出部を収容する収容部と、前記収容部よりも後側に配置されておりかつ前記第3チャネルの前記中心軸に沿って前記突出部を前記収容部にガイドする第1ガイド部と、前記収容部および前記第1ガイド部に対して前記第1方向に相対的に移動するスライダとをさらに含み、
前記スライダが前記収容部と前記第1ガイド部との間を区画している第1状態と、前記スライダが前記収容部と前記第1ガイド部との間を区画していない第2状態とが切り換えられ、
前記アダプターは、前記第1状態において、前記把持部に取り付けられる、請求項に記載の内視鏡用オーバーチューブデバイス。
【請求項7】
前記スライダは、前記第1状態において、前記第4チャネルよりも後側に配置されかつ前記処置具を前記第4チャネルにガイドする第2ガイド部を有している、請求項に記載の内視鏡用オーバーチューブデバイス。
【請求項8】
前記オーバーチューブは、前記第1チャネルと前記第2チャネルとを区画する壁部をさらに含み、
前記前端面側に位置する前記壁部の前端部は、前記第1傾斜面の後端部よりも後側に配置されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の内視鏡用オーバーチューブデバイス。
【請求項9】
前記断面において、前記第1チャネルの前記中心軸に対する前記直線の傾斜角は、3度以上12度以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の内視鏡用オーバーチューブデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用オーバーチューブデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食道、胃、および大腸等の消化管の内腔に面する粘膜層またはその下層である粘膜下層に生じたがん等の病変を除去する手技として、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が知られている。ESDは、消化管の内腔に内視鏡および処置具を挿入し、病変を内視鏡で確認しながら、該病変を処置具を用いて切除および剥離等するというものである。
【0003】
ESDでは、内視鏡および処置具が消化管に出し入れされるが、その際に内視鏡および処置具が消化管を損傷または穿孔してしまうことを防止するために、オーバーチューブが用いられる。オーバーチューブは、内視鏡および処置具が挿通されるチャネルが内部に形成された筒状部材である。
【0004】
一方で、従来のESDでは、剥離されるべき部分が牽引(トラクション)されていない状態で、当該部分を処置具により切除および剥離する必要があったため、術者には高い技術が必要とされた。
【0005】
そこで、本発明者らは、先端部が剥離されるべき部分を把持した処置具を回旋させることにより剥離されるべき部分が牽引されている状態を実現する新たなESD(トルネードESD)と、トルネードESDに用いられる内視鏡用オーバーチューブデバイスの開発を進めてきた(例えば、国際公開第2015/122474号参照)。
【0006】
上記内視鏡用オーバーチューブデバイスは、消化管に挿入される前端面と消化管に挿入されない後端面とを有するオーバーチューブと、オーバーチューブの後端面に接続されて術者が把持する把持部とを備える。オーバーチューブおよび把持部の内部に内視鏡が挿通されるメインチャネルと処置具が挿通されるサイドチャネルとが形成されている。オーバーチューブの軸方向に垂直な断面において、サイドチャネルは、メインチャネルよりも外側に配置されている。上記内視鏡用オーバーチューブデバイスがトルネードESDに用いられる場合には、その全体が回旋されることにより、サイドチャネルに挿通された処置具も回旋されて、剥離されるべき部分が牽引される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2015/122474号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記内視鏡用オーバーチューブデバイスでは、サイドチャネルが上記前端面と上記後端面との間をオーバーチューブの軸方向に沿って延びている。そのため、サイドチャネルに挿通された処置具の先端部は、上記前端面から上記軸方向に沿って突き出される。その結果、処置具の先端部が消化管を傷付けるおそれがある。
【0009】
本発明の主たる目的は、内視鏡が挿通されるメインチャネルと処置具が挿通されるサイドチャネルとを備えながらも、上述した従来のオーバーチューブデバイスと比べて、サイドチャネルに挿通された処置具の先端部が消化管を傷付けにくいように設けられた内視鏡用オーバーチューブデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る内視鏡用オーバーチューブデバイスは、内視鏡が挿通される第1チャネルと、処置具が挿通される第2チャネルとを含み、第1チャネルおよび第2チャネルが開口している前端面および後端面を有するチューブを備える。第2チャネルは、第1チャネルの中心軸に直交する第1方向において第1チャネルと並んで配置されている。第1チャネルの中心軸を通りかつ第1方向に沿った断面において、第2チャネルは、第1チャネル側を向いておりかつ後側から前側に向かうにつれて第1チャネルの中心軸に近づくように第1チャネルの中心軸に対して傾斜している第1傾斜面を有している。断面において、第1傾斜面の前端部と後端部とを通る直線は、前端面よりも前側において第1チャネルの中心軸と交差する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内視鏡が挿通されるメインチャネルと処置具が挿通されるサイドチャネルとを備えながらも、上述した従来のオーバーチューブデバイスと比べて、サイドチャネルに挿通された処置具の先端部が消化管を傷付けにくいように設けられた内視鏡用オーバーチューブデバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係る内視鏡用オーバーチューブデバイスの斜視図である。
図2図1に示される内視鏡用オーバーチューブデバイスの斜視断面図である。
図3図1に示される内視鏡用オーバーチューブデバイスの断面図である。
図4図3中の矢印IV-IVから視た断面図である。
図5図3中の矢印V-Vから視た断面図である。
図6図1に示される内視鏡用オーバーチューブデバイスの分解斜視図である。
図7図1に示される内視鏡用オーバーチューブデバイスのサブチャネルに挿入された処置具の先端部がオーバーチューブの前端部から突き出された状態の部分断面図である。
図8図1に示される内視鏡用オーバーチューブデバイスの第4チャネルに処置具が挿入されるときに、第4チャネル内で処置具にたわみが生じた状態を示す部分断面図である。
図9】実施の形態2に係る内視鏡用オーバーチューブデバイスのメインチャネルに、内視鏡が挿通された使用例の一工程を示す断面図である。
図10】実施の形態2に係る内視鏡用オーバーチューブデバイスのメインチャネルに、フードが取り付けられた内視鏡が挿通された使用例の、図9に示される一工程後の一工程を示す断面図である。
図11図10中の矢印XI-XIから視た部分断面図である。
図12】実施の形態2に係る内視鏡用オーバーチューブデバイスのメインチャネルに、フードが取り付けられた内視鏡が挿通された使用例の、図10に示される一工程後の一工程を示す断面図である。
図13図12中の矢印XIII-XIIIから視た部分断面図である。
図14】実施の形態2に係る内視鏡用オーバーチューブデバイスが第1状態にあるときの背面図である。
図15図14に示される内視鏡用オーバーチューブデバイスの部分断面斜視図である。
図16】実施の形態2に係る内視鏡用オーバーチューブデバイスが第2状態にあるときの背面図である。
図17図16に示される内視鏡用オーバーチューブデバイスの部分断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0014】
<オーバーチューブデバイスの主な構成>
図1図3に示されるように、本実施の形態に係る内視鏡用オーバーチューブデバイス100(以下、オーバーチューブデバイス100)は、オーバーチューブ1と、把持部2とを主に備える。
【0015】
オーバーチューブ1は、オーバーチューブデバイス100の使用時に、消化管の内腔に挿入される部分である。オーバーチューブ1は、長手方向を有しかつ該長手方向に延在する管状部材である。以下では、オーバーチューブ1の長手方向をX方向とし、該長手方向と直交する第1方向をZ方向、長手方向および第1方向と直交する第2方向をY方向とする。
【0016】
図2および図3に示されるように、オーバーチューブ1は、内視鏡200(図13参照)が挿通される第1チャネルCH1と、処置具210(図7参照)が挿通される第2チャネルCH2と、第1チャネルCH1と第2チャネルCH2とを区画する第1壁部10とを含む。
【0017】
把持部2は、オーバーチューブデバイス100の使用時に、消化管の内腔に挿入されない部分であり、術者が把持し得る部分である。把持部2は、オーバーチューブ1の後側に配置されている。
【0018】
なお、本明細書で用いられる用語「前端」および「前側」の「前」は、オーバーチューブ1が消化管の内腔に挿入されるときの挿入方向における前を意味する。また、本明細書で用いられる用語「後端」および「後側」の「後」は、上記挿入方向における後を意味する。また、本明細書で用いられる用語「上側」の「上」は、Z方向においてサイドチャネルSCHがメインチャネルMCHに対して位置する方向を意味する。用語「下側」の「下」は、Z方向においてメインチャネルMCHがサイドチャネルSCHに対して位置する方向を意味する。
【0019】
図2および図3に示されるように、把持部2は、内視鏡200が挿通される第3チャネルCH3と、処置具210が挿通される第4チャネルCH4と、第3チャネルCH3と第4チャネルCH4とを区画する第2壁部20とを含む。第3チャネルCH3は、第1チャネルCH1の後側に配置されており、かつ第1チャネルCH1と連なっている。第4チャネルCH4は、第2チャネルCH2の後側に配置されており、かつ第2チャネルCH2と連なっている。第2壁部20は、第1壁部10の後側に配置されており、かつ第1壁部10と連なっている。
【0020】
第1チャネルCH1および第3チャネルCH3は、オーバーチューブデバイス100において内視鏡が挿通されるメインチャネルMCHを構成している。第2チャネルCH2および第4チャネルCH4は、オーバーチューブデバイス100において処置具が挿通されるサイドチャネルSCHを構成している。
【0021】
<オーバーチューブの構成>
図2および図3に示されるように、オーバーチューブ1は、X方向の一端面である前端面1Aと、X方向の他端面である後端面1Bと、前端面1Aと後端面1Bとの間をX方向に延びている外周面1Cとを有している。前端面1Aは、上記X方向が消化管の延在方向に沿うようにオーバーチューブ1が消化管の内腔に挿入されるときに、オーバーチューブ1において当該挿入方向の最も前に配置される先端面である。後端面1Bは、X方向において前端面1Aとは反対側に位置し、把持部2と接続されている。外周面1Cは、X方向に沿って延びている。外周面1Cの前端部は前端面1Aに接続されており、外周面1Cの後端部は後端面1Bに接続されている。
【0022】
図2および図3に示されるように、第1チャネルCH1および第2チャネルCH2は、前端面1Aおよび後端面1Bの各々に開口している。第1チャネルCH1は、X方向に沿って延びている。第2チャネルCH2は、X方向に沿って延びている後側領域と、X方向と交差する方向に沿って延びている前側領域とを有している。第2チャネルCH2の前側領域および後側領域の各々は、Z方向において第1チャネルCH1と並んで配置されている。第2チャネルCH2は第1チャネルCH1よりも上側に配置されている。第1壁部10は、X方向に沿って延びている。第1壁部10の前端部10Aは、前端面1Aよりも後側に配置されている。第1壁部10の後端部10Bは、後端面1B上に配置されている。第1壁部10は、第1チャネルCH1と第2チャネルCH2の上記後側領域とを区画しているが、第1チャネルCH1と第2チャネルCH2の上記前側領域とを区画していない。第2チャネルCH2の上記後側領域は第1壁部10によって第1チャネルCH1と区画されているが、第2チャネルCH2の上記前側領域は第1チャネルCH1と連通されている。第2チャネルCH2の上記前側領域は、前端面1Aよりも後側であって第1壁部10の前端部10Aよりも前側に配置されている。
【0023】
図4および図5に示されるように、X方向に直交する断面において、第1チャネルCH1の開口面積は、例えば第2チャネルCH2の開口面積よりも大きい。第1チャネルCH1のZ方向の開口幅は、例えば第2チャネルCH2のZ方向の開口幅よりも広い。第1チャネルCH1のY方向の開口幅は、例えば第2チャネルCH2のY方向の開口幅よりも広い。
【0024】
オーバーチューブ1は、第1チャネルCH1に面している内周面11と、第2チャネルCH2の上記後側領域に面している内周面12と、第2チャネルCH2の上記前側領域に面している第1傾斜面13とをさらに有している。
【0025】
内周面11および内周面12は、X方向に沿って延びている。内周面11の前端部は前端面1Aに接続されている。内周面11の後端部は後端面1Bに接続されている。内周面12の前端部は第1傾斜面13の後端部13Bに接続されている。内周面12の後端部は後端面1Bに接続されている。第1傾斜面13の前端部13Aは、例えば前端面1Aよりも後側に配置されている。X方向に直交する断面において、外周面1C,内周面11および内周面12の各々は、例えば円形である。
【0026】
図3および図5に示されるように、第1傾斜面13は、第1チャネルCH1の中心軸C1を向いた面である。第1傾斜面13は、X方向およびZ方向に沿った断面において、後側から前側に向かうにつれて第1チャネルCH1の中心軸C1に近づくように、該中心軸C1に対して傾斜している。第1傾斜面13の前端部13Aと第1チャネルCH1の中心軸C1との間の距離は、第1傾斜面13の後端部13Bと第1チャネルCH1の中心軸C1との間の距離よりも短い。なお、第1傾斜面13の後端部13Bと第1チャネルCH1の中心軸C1との間の距離は、内周面12と第1チャネルCH1の中心軸C1との間の最長距離と等しい。
【0027】
第1チャネルCH1の中心軸C1は、X方向に直交する断面において、第1チャネルCH1の内周面11を外形線とする図形の図心を通る軸である。図4および図5に示されるように、上記断面において内周面11が円形状である場合、中心軸C1は当該円の中心を通る軸である。
【0028】
図3および図5に示される軸C2は、第2チャネルCH2の上記後方領域の中心軸であって上記前側領域に延ばしたものである。第1傾斜面13は、X方向およびZ方向に沿った断面において、後側から前側に向かうにつれて第2チャネルCH2の上記後側領域の中心軸C2に近づくように、該中心軸C2に対して傾斜している。第1傾斜面13の前端部13Aは、例えば第2チャネルCH2の上記後側領域の中心軸C2よりも上側に配置されている。
【0029】
図3に示されるように、X方向およびZ方向に沿った断面において、第1傾斜面13の前端部13Aと後端部13Bとを通る仮想直線VLは、前端面1Aよりも前側において第1チャネルCH1の中心軸C1と交差する。好ましくは、上記断面において、第1チャネルCH1の中心軸C1に対して上記仮想直線VLが成す第1傾斜角は、第2チャネルCH2の上記前側領域に挿通された処置具210の中心軸が第1チャネルCH1の中心軸C1に対して成す第2傾斜角が1度以上10度以下となるように設定されている。より好ましくは、上記第1傾斜角は、上記第2傾斜角が1度以上5度以下となるように設定されている。上記第1傾斜角は、好ましくは3度以上12度以下であり、より好ましくは3度以上7度以下である。
【0030】
図3に示されるように、第1傾斜面13の前端部13Aと後端部13Bとの間のX方向の距離は、第2チャネルCH2の上記後側領域のZ方向の開口幅よりも長く、上記後側領域と第1壁部10によって区画された第1チャネルCH1のZ方向の開口幅よりも短い。第1傾斜面13の前端部13Aと後端部13Bとの間のZ方向の距離は、例えば第1壁部10のZ方向の厚み以下である。第1傾斜面13の前端部13Aと後端部13Bとの間のZ方向の距離は、例えば第2チャネルCH2の上記後側領域のZ方向の開口幅(内径)の半分未満である。
【0031】
図5に示されるように、第1傾斜面13は、例えば平面である。図5に示される断面において、第1傾斜面13のY方向の中心を通る第1傾斜面13の垂線は、例えば第1チャネルCH1の中心軸C1と交差する。第1傾斜面13のY方向の幅は、例えば後端部13B側から前端部13A側に向かうにつれて徐々に広くなっている。第1傾斜面13の外形状は、例えば三角形状である。なお、第1傾斜面13は、曲面であってもよい。第1傾斜面13は、X方向に直交する断面において、曲率中心が第1傾斜面13よりも下方に配置された曲面であってもよい。
【0032】
図2図3および図5に示されるように、第1傾斜面13の後端部13Bは、第1壁部10の前端部10Aよりも前側に配置されている。第1傾斜面13は、Z方向において、第1壁部10と対向せず、内周面11と対向する。
【0033】
オーバーチューブ1は、消化管の内腔に挿入されるための可撓性と、内視鏡および処置具によって穿孔されない程度の強度とを有している。オーバーチューブ1を構成する材料は、例えばポリ塩化ビニル、シリコーンおよびポリウレタンからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0034】
図1図3に示されるように、好ましくは、前端面1Aは、X方向に直交する面に対して傾斜している。前端面1Aは、前端面1Aのうち最も後側に位置する第1面部1A1と、前端面1Aのうち最も前側に位置する第2面部1A2とを有している。第1面部1A1は、前端面1Aのうち最も上側に位置する部分である。第2面部1A2は、前端面1Aのうち最も下側に位置する部分である。第1チャネルCH1は、第2チャネルCH2に対して第2面部1A2側に配置されている。第2チャネルCH2は、第1チャネルCH1に対して第1面部1A1側に配置されている。
【0035】
オーバーチューブ1は、任意の方法によって製造され得るが、例えば、図1に示されるチューブ本体14に、第1傾斜面13を構成する部品であるチューブ部品15が固定されることにより、製造される。この場合、まず、第1チャネルCH1に加工される第1貫通孔と、第2チャネルCH2に加工される第2貫通孔とが形成されている管状部材が、押し出し成型により製造される。次に、該管状部材が、その延在方向(X方向)に直交する面に対して斜めに切断される。該切断面は、最終的にオーバーチューブ1の前端面1Aとなる。次に、第1貫通孔と第2貫通孔との間の領域のうち、上記切断面と上記切断面からX方向に距離Lを隔てた位置との間に位置する部分が、上記管状部材から切除される。上記距離Lは、チューブ部品15のX方向の幅、すなわち第1傾斜面13の前端部13Aと後端部13Bとの間のX方向の距離よりも長くなるように、設定される。これにより、第1壁部10の前端部10Aが該切断面よりも後側に形成され、チューブ本体14が製造される。次に、第1傾斜面13を有するチューブ部品15が例えば射出成型により製造される。次に、チューブ部品15の前端と前端面1Aのうち最も後側に位置する第1面部1A1とが一致するように、チューブ部品15がチューブ本体14に対して位置決めされた後、チューブ部品15がチューブ本体14に固定される。固定方法は、特に制限されないが、例えば接着剤を用いた接着である。このようにして、オーバーチューブ1は製造され得る。
【0036】
<把持部の構成>
図2および図3に示されるように、把持部2は、第3チャネルCH3の前側の第1開口部OP1、第3チャネルCH3の後側の第2開口部OP2、第4チャネルCH4の前側の第3開口部OP3、および第4チャネルCH4の後側の第4開口部OP4を有している。
【0037】
第3チャネルCH3の前側の第1開口部OP1は、後端面1Bに形成された第1チャネルCH1の後側の開口部に接続されている。第3チャネルCH3の後側の第2開口部OP2は、オーバーチューブデバイス100において内視鏡が挿入される挿入口を構成している。図3に示されるように、第3チャネルCH3は、X方向に沿って延びている。第3チャネルCH3の前側の第1開口部OP1は、X方向において第3チャネルCH3の後側の第2開口部OP2と重なるように設けられている。第3チャネルCH3の中心軸C3は、X方向において第1チャネルCH1の中心軸C1と重なるように設けられている。
【0038】
第4チャネルCH4の前側の第3開口部OP3は、後端面1Bに形成された第2チャネルCH2の後側の開口部に接続されている。第4チャネルCH4の後側の第4開口部OP4は、オーバーチューブデバイス100において処置具が挿入される挿入口を構成している。第4チャネルCH4は、X方向およびZ方向に沿って延びている。第4チャネルCH4の前側の第3開口部OP3は、X方向において第4チャネルCH4の後側の第4開口部OP4と重なるように設けられていない。
【0039】
図3に示されるように、X方向およびZ方向に沿った断面において、第3チャネルCH3の後側の第2開口部OP2と第4チャネルCH4の後側の第4開口部OP4との間のZ方向の距離D1は、第3チャネルCH3の前側の第1開口部OP1と第4チャネルCH4の前側の第3開口部OP3との間のZ方向の距離D2よりも長い。第4チャネルCH4の前側の第3開口部OP3のZ方向の開口幅は、第2チャネルCH2の後側の開口部のZ方向の開口幅と等しい。なお、本明細書に使用される用語「等しい」は、各比較対象が厳密に等しい構成に加え、各比較対象の違いが製造誤差の範囲内である構成を意味する。第4チャネルCH4の前側の第3開口部OP3のZ方向の開口幅は、例えば第2チャネルCH2の後側の開口部のZ方向の開口幅に対して+5%の範囲内にある。第4チャネルCH4の後側の第4開口部OP4のZ方向の開口幅は、前側の第3開口部OP3のZ方向の開口幅以上である。
【0040】
図3に示されるように、把持部2は、第4チャネルCH4の前側の第3開口部OP3と後側の第4開口部OP4との間に、Z方向の開口幅が前側から後側に向かうにつれて広くなるように設けられた拡幅部21を有している。さらに把持部2は、第4チャネルCH4の拡幅部21に面している第2傾斜面22および対向面23を有している。第2傾斜面22は、上記断面において前側から後側に向かうにつれて第3チャネルCH3の中心軸C3から遠ざかるように該中心軸C3に対して傾斜している。第2傾斜面22と対向面23との間のZ方向の距離は、前側から後側に向かうにつれて長くなるように設けられている。
【0041】
図3に示されるように、第2傾斜面22は、例えば相対的に前側に配置されておりかつX方向およびZ方向に沿った断面における曲率中心が第2傾斜面22よりも上側に配置されている第3面部22Aと、第3面部22Aよりも後側に配置されておりかつ上記断面における曲率中心が第2傾斜面22よりも下側に配置されている第4面部22Bとを有している。
【0042】
第2傾斜面22に垂直な断面において、第2傾斜面22の形状は例えば半円形状である。対向面23は、例えばX方向およびY方向に延びる平面である。なお、上記拡幅部21が形成されている限りにおいて、対向面23も、上記断面において前側から後側に向かうにつれて第3チャネルCH3の中心軸C3から遠ざかるように該中心軸C3に対して傾斜していてもよい。対向面23は、上記第2壁部20の上面として構成されている。
【0043】
第2壁部20、拡幅部21、第2傾斜面22および対向面23は、同一部材として構成されていてもよいし、複数部材が組み立てられた一体物として構成されていてもよい。以下では、第2壁部20、拡幅部21、第2傾斜面22および対向面23を有する一体物を、本体部24とよぶ。
【0044】
図3および図6に示されるように、把持部2は、第3チャネルCH3(メインチャネルMCH)を介した脱気を抑制する第1脱気抑制部材25と、第4チャネルCH4(サイドチャネルSCH)を介した脱気を抑制する第2脱気抑制部材26とをさらに含む。本明細書で用いられる用語「脱気」は、例えばESDにおいて消化管の内腔を膨らませるために内腔の気圧が体外(手術室内)の気圧よりも高く設定された場合に、内腔内の気体がメインチャネルMCHまたはサイドチャネルSCHを通じて体外に漏れることを意味する。第1脱気抑制部材25および第2脱気抑制部材26は、弾性体により構成されている。
【0045】
第1脱気抑制部材25は、第3チャネルCH3に面しておりかつ環状に設けられた第5開口部OP5を有している。第5開口部OP5は、第3チャネルCH3に挿通された内視鏡の外周面と接触するように設けられている。これにより、第1脱気抑制部材25は、第1脱気抑制部材25が設けられていない場合と比べて第3チャネルCH3を介した脱気を抑制する。第1脱気抑制部材25は、例えば第3チャネルCH3において相対的に後側に配置されている。第5開口部OP5は、第1開口部OP1よりも後側であって第2開口部OP2よりも前側に配置されている。
【0046】
第2脱気抑制部材26は、第4チャネルCH4に面しておりかつスリット状に設けられた第6開口部OP6を有している。第6開口部OP6のZ方向の幅は、例えば第6開口部OP6のY方向の幅および処置具のZ方向の幅よりも広い。第6開口部OP6のY方向の幅は、処置具のY方向の幅よりも短い。第6開口部OP6は、例えば第4チャネルCH4に処置具が挿通されている状態において、処置具の外周面と接触するように設けられている。第6開口部OP6は、例えば第4チャネルCH4に処置具が挿通されていない状態において、第4チャネルCH4を閉口するように設けられている。第2脱気抑制部材26は、例えば第4チャネルCH4において第3開口部OP3および上記拡幅部21よりも後側であって第4開口部OP4よりも前側に配置されている。
【0047】
好ましくは、第1脱気抑制部材25および第2脱気抑制部材26は、同一部材として構成されている。図3に示されるように、把持部2は、一部が第1脱気抑制部材25を構成しており、他の一部が第2脱気抑制部材26を構成している脱気抑制部材27を含んでいる。
【0048】
図3に示されるように、把持部2は、例えば、第3チャネルCH3および第4チャネルCH4の各一部が内部に設けられている本体部24、脱気抑制部材27、本体部24および脱気抑制部材27を内部に収容する枠体28,29を含んでいる。この場合、第3チャネルCH3の前側の第1開口部OP1および第4チャネルCH4の前側の第3開口部OP3は、本体部24に形成されている。第3チャネルCH3の後側の第2開口部OP2および第4チャネルCH4の後側の第4開口部OP4は、枠体29に形成されている。
【0049】
本体部24は、上述した第3チャネルCH3の前側の第1開口部OP1および第4チャネルCH4の前側の第3開口部OP3と、これらよりも後側に配置されておりかつ第3チャネルCH3に面する第7開口部OP7および第4チャネルCH4に面する第8開口部OP8とを有している。第7開口部OP7は、第3チャネルCH3において第1開口部OP1と第5開口部OP5との間に形成されている。第8開口部OP8は、第4チャネルCH4において第3開口部OP3と第6開口部OP6との間に形成されている。
【0050】
図3に示されるように、脱気抑制部材27は、本体部24の上記後端面と気密に接続されている部分27Aと、当該部分27Aの外周縁に接続されておりかつ当該部分27Aよりも前側に突出している部分27Bとを有している。部分27Bは、本体部24の後側部分に嵌め合わされている。
【0051】
枠体28には、後端面1Bを含むオーバーチューブ1の後側部分が挿通されている開口部28Aと、開口部28Aよりも後側に位置する開口部28Bと、開口部28Aと開口部28Bとの間に配置されておりかつオーバーチューブ1の上記後側部分、本体部24、および脱気抑制部材27を収容する空間28Cとが形成されている。オーバーチューブ1の後端面1Bと本体部24の上記前端面とは、枠体28の上記収容部内にて気密に接続されている。本体部24の上記後端面と脱気抑制部材27とは、枠体28の上記収容部内にて気密に接続されている。
【0052】
枠体29は、枠体28の開口部28Bを閉止する。上述のように、枠体29には、第3チャネルCH3の後側の第2開口部OP2および第4チャネルCH4の後側の第4開口部OP4が形成されている。図2、7~図10に示されるように、第2開口部OP2内には、第1脱気抑制部材25の第5開口部OP5が露出している。第4開口部OP4内には、第2脱気抑制部材26の第6開口部OP6が露出している。
【0053】
図1図3図6、および図8に示される把持部2は、上記以外の構成として、枠体29の第1部29A、第2部29B、第3部29C,収容部30、第1ガイド部31、およびスライダ32をさらに含んでいる。なお、実施の形態1に係るオーバーチューブデバイス100は、これらの構成を備えていてもよいし、備えてなくてもよい。これらの構成については、後述する実施の形態2にて説明する。
【0054】
把持部2は、任意の方法によって製造され得るが、例えば射出成型により製造された各部材が組み立てられることにより、製造される。
【0055】
<内視鏡等の構成>
内視鏡200は、消化管の内腔に挿入される医療用の軟性内視鏡である。内視鏡200の先端部には、スコープ等の光学部品が取り付けられている。処置具210は、消化管の内腔に対して、牽引、切除、洗浄、薬剤の注入・散布等の任意の処置を施すことができる処置具である。処置具210は、例えば牽引用のデバイスである。なお、上記オーバーチューブデバイス100は、先端部に筒状のフード201(図13参照)が取り付けられてない内視鏡200が用いられるESDに好適である。このようなESDでは、後述するインナーチューブ3およびアダプター4が不要である。
【0056】
<作用効果>
オーバーチューブデバイス100は、内視鏡が挿通されるメインチャネルMCHと処置具が挿通されるサイドチャネルSCHとを備えている。さらに、オーバーチューブデバイス100では、オーバーチューブ1が第1傾斜面13を有している。図7に示されるように、処置具210は、第2チャネルCH2の上記後側領域から第2チャネルCH2の上記前側領域を経てオーバーチューブ1の前端面1Aよりも前側に突き出される。このとき、処置具210は、上記前側領域に面する第1傾斜面13に案内されて、折り曲げられる。前端面1Aよりも前側に突き出された処置具210の先端部は、その軸方向が後側から前側に向かうにつれて第1チャネルの中心軸C1に近づくように該中心軸C1に対して傾斜する。言い換えると、オーバーチューブ1の前端面1Aよりも前側に突き出された処置具210と消化管の粘膜層との間の最短距離は、オーバーチューブ1内に挿通された処置具210と消化管の粘膜層との間の最短距離よりも、長くなる。なお、オーバーチューブ1内に挿通された処置具210と消化管の粘膜層との間の最短距離は、オーバーチューブ1の内周面12と外周面1Cとの間の最短距離以上となる。その結果、オーバーチューブデバイス100は、上述した従来のオーバーチューブデバイスと比べて、サイドチャネルSCHに挿通された処置具210の先端部が消化管を傷付けにくいように設けられている。
【0057】
オーバーチューブデバイス100のオーバーチューブ1は、第1チャネルCH1と第2チャネルCH2とを区画する第1壁部10をさらに含む。前端面1A側に位置する第1壁部10の前端部10Aは、第1傾斜面13の後端部13Bよりも後側に配置されている。
【0058】
仮に、第1壁部10の前端部10Aが第1傾斜面13の後端部13Bよりも前側に配置されている場合には、第2チャネルCH2のうち第1壁部10と第1傾斜面13との間に挟まれた領域は他の領域と比べて局所的に狭くなり、処置具210は第2チャネルCH2を移動しにくくなる。この場合に第2チャネルCH2内での処置具210の移動をスムーズにするには、第1壁部10と第1傾斜面13との間のZ方向の距離を長くする必要が生じ、オーバーチューブ1のZ方向の幅が広くなる。これに対し、上記オーバーチューブデバイス100では、第2チャネルCH2の上記前側領域が処置具210の移動を妨げないように設けられていながらも、オーバーチューブ1のZ方向の幅は広くはならない。
【0059】
オーバーチューブ1が上記構成を備える場合、図7に示されるように、処置具210は、例えば第1壁部10の前端部10Aを湾曲開始点として湾曲し、第1傾斜面13のうち前端部13Aにのみ接触する。処置具210と第1傾斜面13の後端部13Bとの間には、隙間が形成される。この場合、第1チャネルCH1の中心軸C1に対し処置具210の中心軸が成す第2傾斜角は、第1チャネルCH1の中心軸C1に対する上記仮想直線VLが成す第1傾斜角未満となる。上述のように、上記第2傾斜角は、好ましくは1度以上10度以下であり、より好ましくは1度以上5度以下である。この場合、上記第1傾斜角は、好ましくは3度以上12度以下であり、より好ましくは3度以上7度以下である。図7に示される構成例では、上記第1傾斜角は5.7度であり、上記第2傾斜角は3度である。
【0060】
好ましくは、オーバーチューブデバイス100のオーバーチューブ1では、前端面1AがX方向に直交する面に対して傾斜している。第1チャネルCH1は、第2チャネルCH2に対して第2面部1A2側に配置されている。第2チャネルCH2は、第1チャネルCH1に対して第1面部1A1側に配置されている。言い換えると、第2チャネルCH2の前側の開口部は、第1チャネルCH1の前側の開口部よりも後側に配置されている。このようなオーバーチューブ1では、第2チャネルCH2が第1チャネルCH1に対して第2面部1A2側に配置されている場合と比べて、オーバーチューブ1を消化管の内腔に挿入する際に消化管の組織と第1傾斜面13との摩擦による消化管の損傷が起きにくい。
【0061】
オーバーチューブデバイス100の把持部2は、第4チャネルCH4に面しておりかつ第3チャネルCH3側を向いた第2傾斜面22と、第2傾斜面22とZ方向に対向する対向面23とを有している。第2傾斜面22は、X方向およびZ方向に沿った断面において前側から後側に向かうにつれて第3チャネルCH3の中心軸C3から遠ざかるように第3チャネルCH3の中心軸C3に対して傾斜している。第2傾斜面22と対向面23との間のZ方向の距離は、前側から後側に向かうにつれて長くなるように設けられている。
【0062】
図8に示されるように、処置具210が第4チャネルCH4に挿通される際に、処置具210の先端部が第2傾斜面22に案内される。さらに第4チャネルCH4内に送られると、処置具210の先端部は対向面23に接触するが、このときの処置具210の先端部は、図8中の鎖線で示されるように対向面23に対して傾斜している。処置具210の先端部を第3開口部OP3に通すためには、処置具210の先端部が対向面23に対して成す傾斜角を十分に小さくする必要がある。これに対し、把持部2は拡幅部21を含むため、処置具210が図8中の鎖線で示される状態からさらに第4チャネルCH4内に送られると、処置具210の先端部よりも後側の部分が拡幅部21内にて湾曲し、処置具210の先端部の中心軸が対向面23に対して成す傾斜角を十分に小さくすることができる。その結果、オーバーチューブデバイス100では、処置具210をサイドチャネルSCHに挿通する作業が、スムーズに行われ得る。
【0063】
特に、図8中の鎖線で示される処置具210の先端部が対向面23に対して成す角度は、第3開口部OP3と第4開口部OP4との間のX方向の距離が短いほど、大きくなる。一方で、第3開口部OP3と第4開口部OP4との間のX方向の距離は、把持部2の操作性を高める観点から、短く設定されるのが好ましい。上記把持部2では、第3開口部OP3と第4開口部OP4との間のX方向の距離が短くされても、処置具210が拡幅部21内で湾曲することにより、処置具210は第4チャネルCH4から第2チャネルCH2にスムーズに送られる。その結果、オーバーチューブデバイス100では、把持部2の操作性と、処置具210をサイドチャネルSCHに挿通する作業性とが高いレベルで両立されている。
【0064】
オーバーチューブデバイス100の把持部2は、第3チャネルCH3を介した脱気を抑制する第1脱気抑制部材25と、第4チャネルCH4を介した脱気を抑制する第2脱気抑制部材26とをさらに含む。第1脱気抑制部材25および第2脱気抑制部材26は同一部材として構成されている。
【0065】
このような把持部2は、本体部24、脱気抑制部材27、および枠体28,29を組み立てることにより製造される。上記把持部2は、本体部24、互いに別部材として構成された第1脱気抑制部材25および第2脱気抑制部材26、ならびに枠体28,29を組み立てることにより製造される把持部2と比べて、容易に製造される。
【0066】
(実施の形態2)
実施の形態2に係るオーバーチューブデバイス101は、実施の形態1に係るオーバーチューブデバイス100と基本的に同様の構成を備えるが、インナーチューブ3(図9参照)およびアダプター4(図10図13参照)をさらに備えている点で、オーバーチューブデバイス100とは異なる。このようなオーバーチューブデバイス101は、メインチャネルMCHに挿通される内視鏡200の先端部に筒状のフード201が取り付けられる場合に、好適である。
【0067】
フード201は内視鏡200の先端部を囲むように配置されている。フード201の先端部は内視鏡200の先端部よりも前側に突出しており、フード201の外縁部は内視鏡200の先端部よりも外側に突出している。この場合、メインチャネルMCHを構成する第1チャネルCH1および第3チャネルCH3は、内視鏡200およびフード201が挿通されるように設けられる。そのため、メインチャネルMCHに挿通された内視鏡200のうちフード201が取り付けられていない部分の外周面とメインチャネルMCHの内周面との間には、隙間が形成される。この隙間は、オーバーチューブデバイス100を消化管の内腔に挿入する際に、特に問題となる。
【0068】
具体的には、オーバーチューブデバイス100を消化管の内腔に挿入する際には、まず、メインチャネルMCHに挿通された内視鏡200のみが、消化管の内腔に挿入される。次に、オーバーチューブデバイス100が、内視鏡200に案内されて消化管の内腔に挿入される。そのため、内視鏡200およびフード201が挿通されるように設けられたメインチャネルMCHを備えるオーバーチューブデバイス100を消化管の内腔に挿入する時には、上記隙間が形成されて、消化管の組織が上記隙間に巻き込まれやすくなり、消化管が穿孔しやすくなる。
【0069】
インナーチューブ3は、オーバーチューブデバイス100の挿入時に上記隙間の少なくとも一部を埋めるための部材である。インナーチューブ3は、長手方向を有しかつ該長手方向に延在する管状部材である。インナーチューブ3の長手方向は、X方向に沿っている。
【0070】
図9に示されるように、インナーチューブ3は、第1チャネルCH1および第3チャネルCH3に挿通される。この場合の第1チャネルCH1および第3チャネルCH3は、内視鏡200およびインナーチューブ3が同時に挿通されるように設けられている。インナーチューブ3の外周面は、例えば第1チャネルCH1および第3チャネルCH3の内周面と接触している。インナーチューブ3のZ方向の最大幅は、例えば、第1チャネルCH1および第3チャネルCH3のZ方向の各開口幅のZ方向の最大幅に等しい。インナーチューブ3のY方向の最大幅は、例えば、第1チャネルCH1および第3チャネルCH3のY方向の各開口幅のY方向の最大幅に等しい。
【0071】
インナーチューブ3は、内視鏡200のうちオーバーチューブデバイス101のメインチャネルMCHに挿通され得る部分が挿通される第5チャネルCH5を含む。X方向に直交する断面において、第5チャネルCH5の開口面積は、第1チャネルCH1および第3チャネルCH3の開口面積よりも小さい。第5チャネルCH5のZ方向の最大幅は、第1チャネルCH1および第3チャネルCH3のZ方向の最大幅よりも狭い。
【0072】
なお、インナーチューブ3は、オーバーチューブデバイス101が消化管に挿入された後、フード201が取り付けられた内視鏡200をオーバーチューブデバイス101に対して前後に移動しやすくするために、メインチャネルMCHから抜き取られる。インナーチューブ3が抜き取られた後のメインチャネルMCH内には、上記隙間が再び形成される。この場合の上記隙間は、上記脱気の経路となる。
【0073】
アダプター4は、インナーチューブ3がメインチャネルMCHから抜き取られた後の上記隙間の少なくとも一部を埋めて、インナーチューブ3がメインチャネルMCHから抜き取られた後の上記脱気を低減するための部材である。
【0074】
図10図13に示されるように、アダプター4は、把持部2に取り付けられる。アダプター4は第3チャネルCH3の第2開口部OP2内に挿通されて、アダプター4の前端部4Aは第1脱気抑制部材25と気密に接続される。アダプター4は、把持部2に取り付けられたときに内視鏡200およびフード201が挿通される第6チャネルCH6と、第6チャネルCH6の外郭を成す外殻部材40と、把持部2に取り付けられたときに第6チャネルCH6を介した脱気を抑制する第3脱気抑制部材41とを含む。
【0075】
第6チャネルCH6は、第3チャネルCH3と連通している。つまり、アダプター4が把持部2に取り付けられたオーバーチューブデバイス100では、第1チャネルCH1、第3チャネルCH3および第6チャネルCH6が、メインチャネルMCHを構成している。
【0076】
第3脱気抑制部材41は、第6チャネルCH6に面しておりかつ環状に設けられた第9開口部OP9を有している。第9開口部OP9は、第6チャネルCH6に挿通された内視鏡200の外周面と接触するように設けられている。これにより、第3脱気抑制部材41は、アダプター4が把持部2に取り付けられていない場合と比べて、インナーチューブ3が抜き取られた後のメインチャネルMCHを介した脱気を抑制する。なお、アダプター4は、例えば第3脱気抑制部材41を保持する保持部材44をさらに含む。保持部材44は、例えば外郭部材40の後端部に固定されている。第3脱気抑制部材41は、例えば外郭部材40の後端部と保持部材44との間に挟持されている。
【0077】
アダプター4は、把持部2に対して着脱可能とされている。着脱に係る把持部2およびアダプター4の構成は、以下の通りである。
【0078】
図11および図13に示されるように、アダプター4の外郭部材40は、把持部2に取り付けられたときに第2開口部OP2内に挿入される部分42と、当該部分42の外周面に対してY方向に突出している突出部43を含む。上記部分42は、第1脱気抑制部材25と接触する前端部4Aを有している。突出部43は、例えば第3脱気抑制部材41よりも前側に配置されている。突出部43の前側に位置する部分は、例えば第1脱気抑制部材25と接触する前端部4Aの一部を構成している。
【0079】
図10図17に示されるように、把持部2は、把持部2に取り付けられたアダプター4の突出部43を収容するように設けられている収容部30と、収容部30よりも後側に配置されておりかつ第3チャネルCH3の中心軸C3に沿って突出部43を収容部30にガイドする第1ガイド部31と、収容部30および第1ガイド部31に対してZ方向に相対的に移動するスライダ32とをさらに含む。
【0080】
オーバーチューブデバイス101では、枠体29、把持部2の第2開口部OP2、収容部30、および第1ガイド部31が、アダプター4のY方向およびZ方向への移動を制限し、かつアダプター4のX方向への移動を許容するように設けられている。一方で、スライダ32が、アダプター4のX方向への移動を制限するように設けられている。これにより、オーバーチューブデバイス101では、スライダ32が収容部30と第1ガイド部31との間を区画している第1状態と、スライダ32が収容部30と第1ガイド部31との間を区画していない第2状態とが切り換えられる。なお、図10図11図14および図15は、上記第2状態を示している。図12図13図16および図17は、上記第1状態を示している。
【0081】
第2状態では、第1ガイド部31に収容された突出部43は、X方向において前側に移動して、収容部30に収容される。これにより、アダプター4の上記部分42は第2開口部OP2に挿入される。このとき、アダプター4のY方向およびZ方向への移動は、枠体29、把持部2の第2開口部OP2、収容部30、および第1ガイド部31により制限される。第2状態から第1状態への切り換えは、スライダ32のZ方向への移動のみによって行われる。
【0082】
第1状態では、収容部30に収容された突出部43は、X方向において第1脱気抑制部材25とスライダ32との間に挟まれることにより、X方向への移動が制限される。これにより、アダプター4のX方向への移動も制限される。第1状態でのアダプター4と、枠体29、把持部2の第2開口部OP2、収容部30、および第1ガイド部31との相対的な位置関係は、第2状態での当該位置関係から変化しないため、第1状態においてもアダプター4のY方向およびZ方向への移動は、枠体29、把持部2の第2開口部OP2、収容部30、および第1ガイド部31により制限される。これにより、アダプター4は、上記第1状態において把持部2に対する相対的な移動が制限され、把持部2に取り付けられる。
【0083】
このように、オーバーチューブデバイス101では、アダプター4が把持部2に容易に取り付けられる。
【0084】
また、第1状態から第2状態への切り替えも、スライダ32のZ方向への移動のみによって行われる。そのため、オーバーチューブデバイス101がトルネードESDに用いられる場合であって、術者がオーバーチューブデバイス101を回旋させる際に把持部2ではなく誤ってアダプター4を回旋させた場合にも、アダプター4が把持部2から脱離してメインチャネルMCHからの脱気が生じることを防止できる。
【0085】
図14および図16に示されるように、スライダ32は、上記第1状態において、第4チャネルCH4よりも後側に配置されかつ処置具210を第4チャネルCH4にガイドする第2ガイド部33を有している。第2ガイド部33は、例えば後側から見て第4開口部OP4の開口端に沿ってU字形状に設けられている。第2ガイド部33は、上記第1状態において、第4開口部OP4から第4チャネルCH4に挿通される処置具210と干渉しないように設けられている。これにより、術者は処置具210の先端部を第4チャネルCH4に容易に挿入できる。
【0086】
図6図11および図13に示されるように、枠体29は、スライダ32のX方向およびY方向への移動を制限する。枠体29は、例えば第2開口部OP2に面しておりかつ第2開口部OP2をY方向に挟むように対向して配置されている1組の第1部29Aと、各第1部29Aに接続されておりかつX方向において互いに間隔を隔てて配置されている第2部29Bおよび第3部29Cとを有している。第2部29Bおよび第3部29Cは、第1部29AよりもY方向の内側に配置されている。第2部29Bは、第3部29Cよりも前側に配置されている。第1部29A、第2部29B、および第3部29Cは、X方向において第2開口部OP2と重ならないように設けられている。
【0087】
収容部30は、Y方向において1組の第1部29Aよりも内側に形成されている。収容部30は、Y方向において内側を向いて開口しており、第2開口部OP2と連なっている。収容部30は、突出部43がその内部に収容された状態において、アダプター4の前端部4Aが第1脱気抑制部材25と気密に接続されるように、設けられている。
【0088】
第1ガイド部31は、X方向において収容部30と重なるように設けられている。第1ガイド部31は、第3部29Cに形成されている。第1ガイド部31は、Y方向において内側を向いて開口している。
【0089】
スライダ32は、上記第1状態および上記第2状態において、突出部43が収容部30に収容されたアダプター4と干渉しないように設けられている。スライダ32は、Y方向において1組の第1部29A間に形成されておりかつX方向において第2部29Bと第3部29Cとの間に形成された空間に収容され得る部分34と、当該空間に収容されない部分33および部分35とを有している。
【0090】
部分34のX方向の幅は、第2部29Bと第3部29Cとの間のX方向の間隔以下である。部分34のY方向の幅は、1組の第1部29A間の間隔以下である。部分34は、第1状態においてのみ上記空間内に配置される領域と、第2状態においてのみ上記空間内に配置される領域と、第1状態および第2状態において上記空間内に配置される領域とを有している。部分34の一部の領域は、第1状態および第2状態のいずれにおいても、上記空間内に配置される。これにより、スライダ32のX方向への移動およびスライダ32のY方向への移動が制限される。
【0091】
部分34には、例えばX方向に貫通する貫通孔34Hが形成されている。アダプター4は、第1状態および第2状態において、貫通孔32H内に配置される。
【0092】
部分33はZ方向における部分34の上側部分に接続されている。部分33は、例えば上記第2ガイド部33として構成されている。部分35はZ方向における部分32Aの下側部分に接続されている。部分33および部分35の各々のX方向の幅は、第2部29Bと第3部29Cとの間のX方向の間隔よりも広い。部分33および部分35は、第1状態および第2状態のいずれにおいても、上記空間内に配置され得ない。第1状態においては、部分35の上面が第2部29Bおよび第3部29Cの下面に接触して、スライダ32の上側への移動が制限される。第2状態においては部分33の下面が第2部29Bおよび第3部29Cの上面に接触して、スライダ32の下側への移動が制限される。
【0093】
なお、突出部43、収容部30、および第1ガイド部31の各々は、少なくとも1つ設けられていれば良いが、例えば複数設けられている。各収容部30は、各第1ガイド部31とX方向に並んで配置されており、各突出部43を収容するように設けられている。スライダ32は、上記第1状態においてX方向に並んで配置された複数組の収容部30と第1ガイド部31との間を同時に区画するように設けられており、かつ上記第2状態において上記複数組の収容部30と第1ガイド部31との間を区画しないように設けられている。
【0094】
複数の突出部43は、例えば第6チャネルCH6に対してY方向の一方の側に突出している突出部43と、第6チャネルCH6に対してY方向の他方の側に突出している突出部43とを含む。複数の収容部30は、例えば第3開口部OP3に対してY方向の一方の側に凹んでいる収容部30と、第3開口部OP3に対してY方向の他方の側に凹んでいる収容部30とを含む。複数の第1ガイド部31は、例えば第3開口部OP3に対してY方向の一方の側に凹んでいる第1ガイド部31と、第3開口部OP3に対してY方向の他方の側に凹んでいる第1ガイド部31とを含む。
【0095】
把持部2に対するアダプター4の着脱は以下のように行われる。まず、オーバーチューブデバイス100は図14および図15に示される上記第2状態とされる。次に、図10および図11に示されるように、アダプター4が第2開口部OP2内に挿入され、アダプター4の突出部43が第1ガイド部31を通って収容部30に収容される。次に、部分35の上面が第2部29Bおよび第3部29Cの下面に接触するまで、スライダ32が上側に移動する。これにより、オーバーチューブデバイス100は図12および図13に示される上記第1状態とされる。
【0096】
なお、上述のように、図1図8に示されるオーバーチューブデバイス100の把持部2は、図9図17に示される実施の形態2に係るオーバーチューブデバイス101の把持部2と同様の構成を備えているが、これに限られるものではない。異なる観点から言えば、オーバーチューブデバイス101は、インナーチューブ3およびアダプター4を備えているが、インナーチューブ3およびアダプター4は必ずしも使用されなくてもよい。オーバーチューブデバイス101は、フード201が取り付けられていない内視鏡200を用いたESDにも利用可能である。
【0097】
また、オーバーチューブデバイス100,101は、ESDまたはトルネードESD用オーバーチューブデバイスに限られるものではなく、病変を内視鏡で確認しながら、該病変に対し牽引、切除、洗浄、薬剤の注入・散布等の処置を施す任意の手技にも好適である。
【0098】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、上述の実施の形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0099】
1 オーバーチューブ、1A 前端面、1A1 第1面部、1A2 第2面部、1B 後端面、1C 外周面、2 把持部、3 インナーチューブ、4 アダプター、4A,10A,13A 前端部、10 第1壁部、10B,13B 後端部、11,12 内周面、13 第1傾斜面、14 チューブ本体、15 チューブ部品、20 第2壁部、21 拡幅部、22 第2傾斜面、22A 第3面部、22B 第4面部、23 対向面、24 本体部、25 第1脱気抑制部材、26 第2脱気抑制部材、27 脱気抑制部材、28,29 枠体、28A,28B 開口部、28C 空間、29A 第1部、29B 第2部、29C 第3部、30 収容部、31 第1ガイド部、32 スライダ、33 第2ガイド部、34H 貫通孔、41 第3脱気抑制部材、43 突出部、100,101 オーバーチューブデバイス、200 内視鏡、201 フード、210 処置具、MCH メインチャネル、CH1 第1チャネル、CH3 第3チャネル、CH5 第5チャネル、SCH サイドチャネル、CH2 第2チャネル、CH4 第4チャネル、CH6 第6チャネル、OP1 第1開口部、OP2 第2開口部、OP3 第3開口部、OP4 第4開口部、OP5 第5開口部、OP6 第6開口部、OP7 第7開口部、OP8 第8開口部、OP9 第9開口部。
図1
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