(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】豆発酵食品用グラノーラ及びその製法並びに豆発酵食品含有用時調製用食品
(51)【国際特許分類】
A23L 7/122 20160101AFI20231109BHJP
A23L 11/50 20210101ALI20231109BHJP
【FI】
A23L7/122
A23L11/50 209Z
(21)【出願番号】P 2021574584
(86)(22)【出願日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 JP2021000389
(87)【国際公開番号】W WO2021153189
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2020014405
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(73)【特許権者】
【識別番号】317006214
【氏名又は名称】株式会社Mizkan
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】水野 達也
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04880645(US,A)
【文献】Mintel GNPD [online], ID# 6477011, Garden Granola Juices Granola,2019年04月,[Retrieved on 2021.2.2]
【文献】簡単!本格!グラノーラ by Lazycatxx 【クックパッド】簡単おいしいみんなのレシピが346万品 [online],2018年09月15日,[Retrieved on 2021.02.02],https://cookpad.com/recipe/5251871
【文献】Mintel GNPD [online], ID# 4695627, Wonderfully Nutty Granola,2017年03月,[Retrieved on 2021.02.02]
【文献】グラノーラ×納豆がベストマッチ!?さっぱりおいしいグラノーラ茶漬け #Omezaトーク|ダイエット、フィット,2018年06月04日,[Retrieved on 2021.02.02],https://fytte.jp/diet/20638/
【文献】納豆の食べ方-グラノーラ♪レシピ・作り方 by nyan260|楽天レシピ[online],2013年07月13日,[Retrieved on 2021.02.02],https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1810009944/
【文献】梅納豆グラノーラで朝食を レシピ・作り方 by yumemeojo|楽天レシピ,2012年07月21日,[Retrieved on 2021.02.02],https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1840006164/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング層で被覆されたシリアルを含
むグラノーラ
と、豆発酵食品とを含む食品であって、
前記グラノーラ
が下記(a)~(b)を満たすと共に、更に(g1)~(g3)の少なくとも何れか1つを満たす、食品。
(a)前記グラノーラにおける、目開き5.6mmメッシュオンのグラノーラの質量割合が10%以上70%以下、目開き5.6mmメッシュパス目開き4.0mmメッシュオンのグラノーラの質量割合が5%以上50%以下、目開き4.0mmメッシュパス目開き2.36mmメッシュオンのグラノーラの質量割合が10%以上50%以下、及び、目開き2.36mmメッシュパス目開き1.7mmメッシュオンの質量割合が5%以上35%以下である。
(b)前記グラノーラの食塩含量が2.5質量%以下、且つ、Brix値が12以上45以下である。
(g1)フルフラール含量(x)が130μg/kg以上2000μg/kg以下である。
(g2)5-メチル-2-フルアルデヒド含量(y)が4μg/kg以上50μg/kg以下である。
(g3)2-アセチルフラン含量(z)が8μg/kg以上100μg/kg以下である。
【請求項2】
前記グラノーラが更に下記を満たす
、請求項1に記載の
食品。
(c)前記シリアルが、長辺粒径1.5mmを超え12mm未満の小粒径シリアル、及び、長辺粒径が12mmを超え20mm未満の大粒径シリアルを含む。
【請求項3】
前記グラノーラが更に下記を満たす
、請求項2に記載の
食品。
(d)前記小粒径シリアルが前記グラノーラ全体の30質量%以上90質量%以下を占め、前記大粒径シリアルが前記グラノーラ全体の10質量%以上70質量%以下を占める。
【請求項4】
前記グラノーラが更に下記を満たす
、請求項2又は3に記載の
食品。
(c’)前記小粒径シリアルが、長辺粒径1.5mmを超え5mm未満の第1の小粒径シリアルと、長辺粒径が8mmを超え12mm未満の第2の小粒径シリアルを含む。
【請求項5】
前記グラノーラが更に下記を満たす
、請求項4に記載の
食品。
(d’)前記第1の小粒径シリアルが前記グラノーラ全体の10質量%以上70質量%以下を占め、前記第2の小粒径シリアルが前記グラノーラ全体の20質量%以上80質量%以下を占める。
【請求項6】
前記グラノーラが更に下記を満たす
、請求項3~5の何れか一項に記載の
食品。
(e)前記小粒径シリアルが穀類から選択される原料に由来し、大粒径シリアルが種実類から選択される原料に由来する。
【請求項7】
前記グラノーラが更に下記を満たす
、請求項1~6の何れか一項に記載の
食品。
(f)前記シリアルのコーティング層が果汁を含み、前記グラノーラ全体に占める果汁の割合が10%質量以上40質量%以下である。
【請求項8】
更に以下を満たす、請求項1~
7の何れか一項に記載の
食品。
(h)当該グラノーラと豆発酵食品との質量比率が1:1~1:8となるように混合して喫食される。
【請求項9】
更に以下を満たす、請求項1~
8の何れか一項に記載の
食品。
(i)豆発酵食品が納豆である。
【請求項10】
更に以下を満たす、請求項1~
9の何れか一項に記載の
食品。
(j)以下の[条件A]で測定される豆発酵食品の曳糸性が0.5mm以上50mm以下である。
[条件A]検体の豆発酵食品の豆二粒を密着して押さえつけた状態から、一粒のみを100mm/分の速度で上方に引き上げた際に、二粒の豆の間に生じたγーポリグルタミン酸を主体とする糸が切れるまでの距離。
【請求項11】
更に調味液を含み、前記調味液を前記豆発酵食品及び前記グラノーラを混合して喫食される、請求項
1~10の何れか一項に記載の
食品。
【請求項12】
請求項1~10の何れか一項に記載の食品に使用されるグラノーラであって、
下記(a)~(b)を満たすと共に、更に(g1)~(g3)の少なくとも何れか1つを満たす、グラノーラ。
(a)前記グラノーラにおける、目開き5.6mmメッシュオンのグラノーラの質量割合が10%以上70%以下、目開き5.6mmメッシュパス目開き4.0mmメッシュオンのグラノーラの質量割合が5%以上50%以下、目開き4.0mmメッシュパス目開き2.36mmメッシュオンのグラノーラの質量割合が10%以上50%以下、及び、目開き2.36mmメッシュパス目開き1.7mmメッシュオンの質量割合が5%以上35%以下である。
(b)前記グラノーラの食塩含量が2.5質量%以下、且つ、Brix値が12以上45以下である。
(g1)フルフラール含量(x)が130μg/kg以上2000μg/kg以下である。
(g2)5-メチル-2-フルアルデヒド含量(y)が4μg/kg以上50μg/kg以下である。
(g3)2-アセチルフラン含量(z)が8μg/kg以上100μg/kg以下である。
【請求項13】
請求項
12に記載のグラノーラを製造するための方法であって、
長辺粒径1.5mmを超え12mm未満の小粒径シリアル
、及び
、長辺粒径が12mmを超え20mm未満の大粒径シリアルの混合物を、果汁を含有する加熱した溶液に浸漬させ、冷却することにより、果汁を含有するコーティング層で前記小粒径及び大粒径シリアルを被覆する工程を含む方法。
【請求項14】
前記の果汁を含有する溶液が、更に塩分を含む溶液である、請求項
13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は豆発酵食品、特に低曳糸性の豆発酵食品と共に食されるグラノーラ、斯かるグラノーラの製造方法、並びに斯かる豆発酵食品及びグラノーラを含む用時調製用食品に関する。
【背景技術】
【0002】
納豆等の豆発酵食品は、独自の風味や曳糸性等の特徴を生かすため、通常はパックに同包された納豆たれ等の調味液を混合して喫食される。しかし近年では、嗜好の多様性を反映して、曳糸性を抑えた低曳糸性の豆発酵食品が開発されている。また、ソースをかけて喫食する等、その食べ方も多様化している。
【0003】
ところが、下味のない豆発酵食品にソースなどをかけて喫食すると、(1)豆発酵食品が口残りしやすいにもかかわらず、ソースの味が流れてしまい、後半の味わいが豆の味だけになってしまう、(2)豆発酵食品のグニュグニュした食感が最後まで口残りし、食後感が良くない、(3)豆発酵食品特有の苦味やエグミが口残りし、後半の味わいが好ましくない、(4)全体的に単調な食感となり、味わいが好ましくない等、種々の課題が生じる。こうした課題を改善する一案として、穀物の加熱加工品に糖衣を施したグラノーラ等のシリアル食品を豆発酵食品と混合して喫食することが考えられる。
【0004】
シリアル食品に関する技術として、特許文献1(特開2015-109807号公報)は、乾燥シリアル原料にアルギニンを添加することで食感を改善したシリアル食品を開示する。しかし、本技術は食味の改善には至らない。豆発酵食品との組み合わせによる食感の改善に資するものではない。
【0005】
糖衣食品に関する技術として、特許文献2(特開2015-126702号公報)は、多孔質原料を、糖質と油脂とを含む糖衣液の液掛けと、微粉末と粗粉末との粉掛けとによるソフト糖衣層で被覆する、ソフト糖衣食品を提供する。しかし、油脂が必須であり摂取カロリーが高くなる。豆発酵食品との組み合わせによる食感の改善に資するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-109807号公報
【文献】特開2015-126702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の背景から、豆発酵食品と混合して喫食される食品であって、低曳糸性豆発酵食品の食味、特に単調な食感、後味の苦み、えぐみ等を改善することが可能な食品が求められている。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、豆発酵食品と混合して喫食される食品であって、低曳糸性豆発酵食品の食味、特に単調な食感、後味の苦み、えぐみ等を改善することが可能な食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は鋭意検討の結果、コーティング層で被覆されたシリアルを含むグラノーラであって、目開き5.6mmメッシュオン、目開き5.6mmメッシュパス目開き4.0mmメッシュオン、目開き4.0mmメッシュパス目開き2.36mmメッシュオン、及び、目開き2.36mmメッシュパス目開き1.7mmメッシュオンの各グラノーラの質量割合をそれぞれ所定範囲内に調整すると共に、食塩含量及びコーティング溶出液のBrixをそれぞれ所定範囲内に調整したグラノーラを、豆発酵食品と混合して喫食することで、豆発酵食品の食味、特に単調な食感、後味の苦み、えぐみ等を改善することが可能となることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明の趣旨は、例えば以下に関する。
・項[1]コーティング層で被覆されたシリアルを含み、豆発酵食品と共に食されるグラノーラであって、以下を満たすグラノーラ。
(a)前記グラノーラにおける、目開き5.6mmメッシュオンのグラノーラの質量割合が10%以上、又は10.5%以上、又は15%以上、また、70%以下、又は69%以下、又は68.7%以下であり、目開き5.6mmメッシュパス目開き4.0mmメッシュオンのグラノーラの質量割合が5%以上、又は6%以上、又は15%以上、また、50%以下、又は49%以下、又は48%以下であり、目開き4.0mmメッシュパス目開き2.36mmメッシュオンのグラノーラの質量割合が10%以上、又は11%以上、又は12%以上、また、50%以下、又は49%以下、又は48%以下であり、及び、目開き2.36mmメッシュパス目開き1.7mmメッシュオンの質量割合が5%以上、又は5.1%以上、又は5.2%以上、また、35%以下、又は33%以下、又は31.9%以下である。
(b)前記グラノーラの食塩含量が0質量%以上、又は0.15質量%以上、又は0.3質量%以上、また、2.5質量%以下、又は2.3質量%以下、又は2.0質量%以下であり、且つ、Brix値が12以上、又は14以上、又は15以上、また、45以下、又は40以下、又は35以下である。
・項[2]更に下記を満たす項[1]に記載のグラノーラ。
(c)前記シリアルが、長辺粒径1.5mmを超え12mm未満の小粒径シリアル、及び、長辺粒径が12mmを超え20mm未満の大粒径シリアルを含む。
・項[3]更に下記を満たす項[2]に記載のグラノーラ。
(d)前記小粒径シリアルが前記グラノーラ全体の30質量%以上、又は36質量%以上、又は42質量%以上、また、90質量%以下、又は89.5質量%以下、又は89質量%以下を占め、前記大粒径シリアルが前記グラノーラ全体の10質量%以上、又は10.5質量%以上、又は11質量%以上、また、70質量%以下、又は50質量%以下、又は30質量%以下を占める。
・項[4]更に下記を満たす項[2]又は[3]に記載のグラノーラ。
(c’)前記小粒径シリアルが、長辺粒径1.5mmを超え5mm未満の第1の小粒径シリアルと、長辺粒径が8mmを超え12mm未満の第2の小粒径シリアルを含む。
・項[5]更に下記を満たす項[4]に記載のグラノーラ。
(d’)前記第1の小粒径シリアルが前記グラノーラ全体の10質量%以上、又は11質量%以上、又は12質量%以上、また、70質量%以下、又は50質量%以下、又は40質量%以下を占め、前記第2の小粒径シリアルが前記グラノーラ全体の20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、また、80質量%以下、又は78質量%以下、又は75質量%以下を占める。
・項[6]更に下記を満たす項[3]~[5]の何れか一項に記載のグラノーラ。
(e)前記小粒径シリアルが穀類から選択される原料に由来し、大粒径シリアルが種実類から選択される原料に由来する。
・項[7]更に下記を満たす項[1]~[6]の何れか一項に記載のグラノーラ。
(f)前記シリアルのコーティング層が果汁を含み、前記グラノーラ全体に占める果汁の割合が10%質量以上、又は11質量%以上、また、40質量%以下、又は39.1質量%以下である。
・項[8]更に下記の少なくとも何れか1つを満たす項[1]~[7]の何れか一項に記載のグラノーラ。
(g1)フルフラール含量(x)が130μg/kg以上、又は140μg/kg以上、又は150μg/kg以上、また、2000μg/kg以下、又は1500μg/kg以下、又は1200μg/kg以下である。
(g2)5-メチル-2-フルアルデヒド含量(y)が4μg/kg以上、又は5μg/kg以上、又は6μg/kg以上、また、50μg/kg以下、又は35μg/kg以下、又は25μg/kg以下である。
・項[9]更に下記を満たす項[1]~[8]の何れか一項に記載のグラノーラ。
(g3)2-アセチルフラン含量(z)が8μg/kg以上、又は9μg/kg以上、又は10μg/kg以上、また、100μg/kg以下、又は75μg/kg以下、又は60μg/kg以下である。
・項[10]更に以下を満たす、項[1]~[9]の何れか一項に記載のグラノーラ。
(h)当該グラノーラと豆発酵食品との質量比率が1:1以上、又は1:1.5以上、又は1:2以上、また、1:8以下、又は1:7以下、又は1:6以下となるように混合して喫食される。
・項[11]更に以下を満たす、項[1]~[10]の何れか一項に記載のグラノーラ。
(i)豆発酵食品が納豆である。
・項[12]更に以下を満たす、項[1]~[11]の何れか一項に記載のグラノーラ。
(j)以下の[条件A]で測定される豆発酵食品の曳糸性が0.5mm以上、又は0.7mm以上、又は1.0mm以上、また、50mm以下、又は40mm以下、又は35mm以下である。
[条件A]検体の豆発酵食品の豆二粒を密着して押さえつけた状態から、一粒のみを100mm/分の速度で上方に引き上げた際に、二粒の豆の間に生じたγーポリグルタミン酸を主体とする糸が切れるまでの距離。
・項[13]更に以下を満たす、項[1]~[12]の何れか一項に記載のグラノーラ。
(l)更に調味液と混合して喫食される。
・項[14]豆発酵食品と、項[1]~[13]の何れか一項に記載のグラノーラとを含み、前記豆発酵食品と前記グラノーラとを混合して喫食される、用時調製用食品。
・項[15]更に調味液を含み、前記調味液を前記豆発酵食品及び前記グラノーラを混合して喫食される、項[14]に記載の用時調製用食品。
・項[16]項[1]~[13]の何れか一項に記載のグラノーラを製造するための方法であって、前記の小粒径シリアル及び大粒径シリアルの混合物を、果汁を含有する加熱した溶液に浸漬させ、冷却することにより、果汁を含有するコーティング層で前記小粒径及び大粒径シリアルを被覆する工程を含む方法。
・項[17]前記の果汁を含有する溶液が、更に塩分を含む溶液である、項[16]に記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のグラノーラによれば、豆発酵食品と混合して喫食することで、豆発酵食品の単調な食感、後味の苦み、えぐみ等を改善することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体的な実施の形態に即して詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
【0013】
[グラノーラ]
本発明の第一の側面は、納豆等の豆発酵食品と共に食されるグラノーラ(以下適宜「本発明のグラノーラ」と称する。)に関する。本発明において「グラノーラ」とは、穀物の加工食品である「シリアル」に糖を含ませて焼いた食品を意味する。本発明のグラノーラは、コーティング層で被覆されたシリアルを含むと共に、以下の特徴を有する。
【0014】
[サイズ分布]
本発明のグラノーラは、特定目開きのメッシュパス及びメッシュオンのグラノーラの質量割合が、以下の範囲を満たすことを特徴とする。
【0015】
具体的に、本発明のグラノーラにおける、目開き5.6mmメッシュオンの極大粒径のグラノーラの質量割合は、その下限が10質量%以上である。中でも10.5質量%以上、更には15質量%以上であることが好ましい。また、その上限は70質量%以下である。中でも69質量%以下、更には68.7質量%以下であることが好ましい。斯かる極大粒径のグラノーラの質量割合が前記下限に満たないと、大粒径のグラノーラの質量割合に対して小粒径のグラノーラの比率が相対的に過剰となり、豆発酵食品との食感の差異がなく単調な食感となる場合がある。一方、斯かる極大粒径のグラノーラの含有量が前記上限を超えると、小粒径のグラノーラに対して大粒径のグラノーラの比率が相対的に過剰となり、豆発酵食品とのバランスが崩れて食べづらくなる場合がある。
【0016】
本発明のグラノーラにおける、目開き5.6mmメッシュパス目開き4.0mmメッシュオンの比較的大粒径のグラノーラの質量割合は、その下限が5質量%以上である。中でも6質量%以上、更には15質量%以上であることが好ましい。また、その上限は50質量%以下である。中でも49質量%以下、更には48質量%以下であることが好ましい。斯かる比較的大粒径のグラノーラの質量割合が前記下限に満たないと、大粒径のグラノーラの質量割合に対して小粒径のグラノーラの比率が相対的に過剰となり、豆発酵食品との食感の差異がなく単調な食感となる場合がある。一方、斯かる比較的大粒径のグラノーラの含有量が前記上限を超えると、小粒径のグラノーラに対して大粒径のグラノーラの比率が相対的に過剰となり、豆発酵食品とのバランスが崩れて食べづらくなる場合がある。
【0017】
本発明のグラノーラにおける、目開き4.0mmメッシュパス目開き2.36mmメッシュオンの比較的小粒径のグラノーラの質量割合は、その下限が10質量%以上である。中でも11質量%以上、更には12質量%以上であることが好ましい。また、その上限は50質量%以下である。中でも49質量%以下、更には48質量%以下であることが好ましい。斯かる比較的小粒径のグラノーラの含有量が前記下限に満たないと、小粒径のグラノーラに対して大粒径のグラノーラの比率が相対的に過剰となり、豆発酵食品とのバランスが崩れて食べづらくなる場合がある。一方、斯かる比較的小粒径のグラノーラの含有量が前記上限を超えると、大粒径のグラノーラに対して小粒径のグラノーラの比率が相対的に過剰となり、豆発酵食品との食感の差異がなく単調な食感となる場合がある。
【0018】
本発明のグラノーラにおける、目開き2.36mmメッシュパス目開き1.7mmメッシュオンの極小粒径のグラノーラの質量割合は、その下限が5質量%以上である。中でも5.1質量%以上、更には5.2質量%以上であることが好ましい。また、その上限は35質量%以下である。中でも33質量%以下、更には31.9質量%以下であることが好ましい。斯かる極小粒径のグラノーラの含有量が前記下限に満たないと、小粒径のグラノーラに対して大粒径のグラノーラの比率が相対的に過剰となり、豆発酵食品とのバランスが崩れて食べづらくなる場合がある。一方、斯かる極小粒径のグラノーラの含有量が前記上限を超えると、大粒径のグラノーラに対して小粒径のグラノーラの比率が相対的に過剰となり、豆発酵食品との食感の差異がなく単調な食感となる場合がある。
【0019】
[小粒径シリアル及び大粒径シリアル]
本発明のグラノーラは、コーティング層で被覆されたシリアルを含むと共に、前記シリアルが小粒径シリアル及び大粒径シリアルを含むことが好ましい。本発明において「小粒径シリアル」とは、長辺粒径が1.5mmを超え12mm未満のシリアルをいい、「大粒径シリアル」とは、長辺粒径が12mmを超え20mm未満のシリアルをいう。なお、シリアルの長辺粒径は、当該グラノーラをシリアルごとに区分した後、その長辺をノギス等を用いて計測するという手法で測定することが可能である。
【0020】
本発明のグラノーラにおける小粒径シリアルの含有量は、制限されるものではないが、グラノーラ全体の通常30質量%以上、中でも36質量%以上、更には42質量%以上を占めることが好ましく、また、通常90質量%以下、中でも89.5質量%以下、更には89質量%以下を占めることが好ましい。小粒径シリアルの含有量が前記下限に満たないと、小粒径シリアルに対して大粒径シリアルの比率が相対的に過剰となり、豆発酵食品とのバランスが崩れて食べづらくなる場合がある。一方、小粒径シリアルの含有量が前記上限を超えると、大粒径シリアルに対して小粒径シリアルの比率が相対的に過剰となり、豆発酵食品との食感の差異がなく単調な食感となる場合がある。
【0021】
本発明のグラノーラにおける大粒径シリアルの含有量は、制限されるものではないが、グラノーラ全体の通常10質量%以上、中でも10.5質量%以上、更には11質量%以上を占めることが好ましく、また、通常70質量%以下、中でも50質量%以下、更には30質量%以下を占めることが好ましい。大粒径シリアルの含有量が前記下限に満たないと、大粒径シリアルに対して小粒径シリアルの比率が相対的に過剰となり、豆発酵食品との食感の差異がなく単調な食感となる場合がある。一方、大粒径シリアルの含有量が前記上限を超えると、小粒径シリアルに対して大粒径シリアルの比率が相対的に過剰となり、豆発酵食品とのバランスが崩れて食べづらくなる場合がある。
【0022】
即ち、本発明のグラノーラでは、小粒径シリアル及び大粒径シリアルの各含有量をそれぞれ前記範囲内に調整することにより、咀嚼時の抵抗が段階的に変化して良好な食感となるので好ましい。
【0023】
本発明のグラノーラにおいて、小粒径シリアル及び大粒径シリアルは、それぞれ1種類のシリアルからなるものであってもよいが、2種類以上のシリアルの混合物であってもよい。小粒径シリアル又は大粒径シリアルの何れかが2種類以上のシリアルの混合物である場合、それらの組み合わせ及び比率も制限されず、任意である。但し、本発明のグラノーラの好適な態様によれば、小粒径シリアルは、長辺粒径の異なる少なくとも2種類の小粒径シリアルを含むことが好ましい。斯かる態様については次項において詳述する。
【0024】
[第1の小粒径シリアル及び第2の小粒径シリアル]
前述のように、本発明のグラノーラの好適な態様によれば、小粒径シリアルは、長辺粒径の異なる少なくとも2種類の小粒径シリアル(それぞれ第1及び第2の小粒径シリアルとする)を含むことが好ましい。本態様において「第1の小粒径シリアル」とは、長辺粒径が1.5mmを超え5mm未満のシリアルをいい、「第2の小粒径シリアル」とは、長辺粒径が8mmを超え12mm未満のシリアルをいう。
【0025】
本態様のグラノーラにおける第1の小粒径シリアルの含有量は、制限されるものではないが、グラノーラ全体の通常10質量%以上、中でも11質量%以上、更には12質量%以上を占めることが好ましく、また、通常70質量%以下、中でも50質量%以下、更には40質量%以下を占めることが好ましい。第1の小粒径シリアルの含有量が前記下限に満たないと、大粒径シリアルとの粒径の差が小さな第2の小粒径シリアルの比率が相対的に過剰となり、シリアルと豆発酵食品との食感の差異がなく単調な食感となる場合がある。一方、第1の小粒径シリアルの含有量が前記上限を超えると、大粒径シリアルとの粒径の差が大きな第1の小粒径シリアルの比率が相対的に過剰となり、豆発酵食品とのバランスが崩れて食べづらくなる場合がある。
【0026】
本態様のグラノーラにおける第2の小粒径シリアルの含有量は、制限されるものではないが、グラノーラ全体の通常20質量%以上、中でも25質量%以上、更には30質量%以上を占めることが好ましく、また、通常80質量%以下、中でも78質量%以下、更には75質量%以下を占めることが好ましい。第2の小粒径シリアルの含有量が前記下限に満たないと、大粒径シリアルとの粒径の差が大きな第1の小粒径シリアルの比率が相対的に過剰となり、豆発酵食品とのバランスが崩れて食べづらくなる場合がある。一方、第2の小粒径シリアルの含有量が前記上限を超えると、大粒径シリアルとの粒径の差が小さな第2の小粒径シリアルの比率が相対的に過剰となり、シリアルと豆発酵食品との食感の差異がなく単調な食感となる場合がある。
【0027】
即ち、本態様のグラノーラでは、小粒径シリアル及び大粒径シリアルの各含有量をそれぞれ前記範囲内に調整することに加えて、第1の小粒径シリアル及び第2の小粒径シリアルの各含有量もそれぞれ前記範囲内に調整することにより、咀嚼時の抵抗がより複雑に変化して良好な食感となるのでより好ましい。
【0028】
本態様のグラノーラにおいて、第1及び第2の小粒径シリアルは、それぞれ1種類のシリアルからなるものであってもよいが、2種類以上のシリアルの混合物であってもよい。第1又は第2の小粒径シリアルの何れかが2種類以上のシリアルの混合物である場合、それらの組み合わせ及び比率も制限されず、任意である。
【0029】
[シリアルの原料穀物]
本発明のグラノーラにおいて、小粒径シリアル及び大粒径シリアルの原料となる穀物は制限されず、任意の穀物とすることが可能である。なお、本明細書において「穀物」とは、主にデンプン質の種子を食用とする食用植物の総称を意味する。例としては、穀類(例えばイネ科、ヒユ科、タデ科、キノア科、アカザ科等)、豆類(マメ科の食用植物の種子全般)、種実類(例えばバラ科、クルミ科、カバノキ科、ウルシ科等)が挙げられる。穀類の具体例としてはイネ、小麦、大麦、オーツ麦、きび、はとむぎ、キヌア、ひえ、あわ、アマランサス、きび、はとむぎ、トウモロコシ等が挙げられる。豆類の具体例としては、大豆(エダマメを含む)、小豆が挙げられる。種実類の具体例としては、アーモンド、クルミ、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、カシューナッツ等が挙げられる。穀物の加工態様も特に制限されない。例としては加熱(ロースト、ボイル等)、薄片化(フレーク化)、パフ化(膨化)、膜化後粉砕、及びこれらのうち2以上の加工の組合せが挙げられる。
【0030】
但し、本発明のグラノーラでは、小粒径シリアルが穀類から選択される原料に由来し、大粒径シリアルが種実類(好ましくはアーモンド等)から選択される原料に由来することが好ましい。小粒径シリアルの原料となる穀類としては、キヌア、オーツ麦、大麦、小麦、ひえ、あわ、アマランサス、等が挙げられる。大粒径シリアルの原料となる種実類としては、アーモンド、クルミ、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、カシューナッツ等が挙げられる。
【0031】
また、小粒径シリアルが第1及び第2の小粒径シリアルを含む前記の態様では、第1及び第2の小粒径シリアルが共に穀類から選択される原料に由来することが好ましい。第1の小粒径シリアルの原料となる穀類としては、種子の粒径が比較的小さいキヌア、ひえ、あわ、アマランサス等が挙げられる。第2の小粒径シリアルの原料となる穀類としては、オーツ麦、大麦等が挙げられる。
【0032】
[シリアルのコーティング層]
本発明のグラノーラにおけるシリアルは、コーティング層を有する。コーティング層は、果汁を含むことが好ましい。シリアルの周囲に果汁を含むコーティング層を形成することで、甘味だけでなく複雑な香気と酸味による良好な風味を付与することが可能となる。一方、果汁を用いず、例えば糖液等のみでコーティング層を形成した場合、甘味がべたつき、摂食時に甘味が後に残る場合がある。
【0033】
シリアルのコーティング層が含有する果汁の種類は限定されるものではないが、例としてはブドウ、リンゴ、パイナップル、ミカン、デーツ、オレンジ、もも、ライチ、イチゴ、パッションフルーツ、マンゴー等の果汁が挙げられる。これらは1種単独でもよく、任意の2種以上を任意の比率で組み合わせてもよい。
【0034】
シリアルのコーティング層が、果汁を含む場合、その他の比率は特に制限されない。但し、本発明の加工後のグラノーラ全体に占める果汁の割合が、通常10%質量以上、中でも11質量%以上、また、通常40質量%以下、中でも39.1質量%以下となるように、コーティング層における果実の比率を調整することが好ましい。果汁の割合が前記下限を下回ると、果汁による甘味がべたつき、摂食時に甘味が後に残る場合がある。なお、添加する果汁の濃縮率は問わないが、濃縮果汁を用いると果汁単独で適当な糖分を付与できるため好ましい。
【0035】
シリアルのコーティング層がその他に含んでいてもよい成分としては、塩分(例えば食塩等)、油脂(例えばオリーブオイル、ごま油、サラダ油、バター等)、糖分(例えばブドウ糖、果糖、砂糖等)等の他、後記[他の成分]に挙げる各成分が挙げられる。これらは1種単独でもよく、任意の2種以上を任意の比率で組み合わせてもよい。
【0036】
[食塩含量]
本発明のグラノーラは、食塩含量が所定範囲内であることを、特徴の一つとする。
【0037】
具体的に、本発明のグラノーラの食塩含量の下限は、0質量%以上である。中でも0.15質量%以上、更には0.3質量%以上であることが好ましい。食塩含有量が前記下限を下回ると、グラノーラの風味に満足感が得られない場合がある。
【0038】
一方、本発明のグラノーラの食塩含量の上限は、2.5質量%以下である。中でも2.3質量%以下、更には2.0質量%以下であることが好ましい。食塩含有量が前記上限を超えると、甘味とのバランスが崩れて良好な呈味が得られない場合がある。
【0039】
なお、本発明において、グラノーラの食塩含量の測定は、測定するグラノーラに9倍の質量の水を加えて希釈し、5分以上攪拌した後、ろ紙を用いてろ過し、ろ液をモール法による塩化物イオンが測定可能な塩分計にて測定し、得られた測定値を10倍に換算する、という方法により行うものとする。塩分計はモール法により塩化物イオンを測定できるものであれば、特に制限はないが、例えばSAT-210(東亜ディーケーケー製)を挙げることができる。
【0040】
[Brix値]
本発明のグラノーラは、後述の方法で測定したBrix値が所定範囲内であることを、特徴の一つとする。
【0041】
具体的に、本発明のグラノーラのBrix値の下限は、12以上である。中でも14以上、更には15以上であることが好ましい。Brix値が前記下限を下回ると、豆発酵食品の苦みが十分にマスキングできなくなる場合がある。
【0042】
一方、本発明のグラノーラのBrix値の上限は、45以下である。中でも40以下、更には35以下であることが好ましい。Brix値が前記上限を超えると、甘味がべたついて後に残ってしまい、食味を損なう場合がある。
【0043】
なお、本発明において、グラノーラのBrix値の測定は、測定するグラノーラに2倍の質量の水を加え、十分に混合して糖分を水に溶出させた状態でBrix値を測定し、得られた測定値を3倍に換算する、という方法により行うものとする。Brix値の測定に使用する機器に制限はないが、糖度計(PR-201R(アタゴ))などを用いることができる。
【0044】
[糖塩比]
本発明のグラノーラは、食塩含量のBrix値に対する比(食塩含量/Brix値:適宜「糖塩比」と呼ぶ場合がある。)が所定範囲内であることが好ましい。具体的に、本発明のグラノーラの糖塩比の下限は、通常0以上、中でも0.01以上、更には0.03以上であることが好ましい。前記糖塩比が前記下限値に満たないと、塩分に対して糖分が過多となり、甘味がべたついて後に残ってしまい、食味を損なう場合がある。一方、前記糖濃度の上限は、通常0.2以下、中でも0.15以下、更には0.11以下であることが好ましい。前記糖塩比が前記上限値を超えると、塩分に対して糖分が過少となり、豆発酵食品の苦みが十分にマスキングできなくなる場合がある。
【0045】
[特定香気成分含量]
本発明のグラノーラは、フルフラール、5-メチル-2-フルアルデヒド、及び2-アセチルフラン(これらを適宜「特定香気成分」と総称する)のうち少なくとも何れか1種、好ましくは少なくとも何れか2種、より好ましくは3種全ての含量が、以下に説明する所定範囲内であることが好ましい。
【0046】
特定香気成分の測定は、ダイレクトヘッドスペース法でGC-MSに注入する方法で測定する。使用する機器の例としては、ゲステル社1次元2次元切替GC-MS(GC部:HP7890 Series GC SystemにLTM series IIを連結(ともにAgilent社製)、注入口:TDU2/CIS4(ゲステル社)、オートサンプラー:MPS(ゲステル社))を挙げることができる。
【0047】
具体的に、本発明のグラノーラのフルフラール含量(x)は、通常130μg/kg以上、中でも140μg/kg以上、更には150μg/kg以上であることが好ましく、また、通常2000μg/kg以下、中でも1500μg/kg以下、更には1200μg/kg以下であることが好ましい。フルフラール含量(x)が前記下限に満たないと、特定香気成分による焼成風味の付与が十分でなく、豆発酵食品の不快な風味が残る場合がある。一方、フルフラール含量(x)が前記上限を超えると、特定香気成分自体の香りが強くなりすぎ、焦げ臭くなってしまう場合がある。
【0048】
また、本発明のグラノーラの5-メチル-2-フルアルデヒド含量(y)は、通常4μg/kg以上、中でも5μg/kg以上、更には6μg/kg以上であることが好ましく、また、通常50μg/kg以下、中でも35μg/kg以下、更には25μg/kg以下であることが好ましい。5-メチル-2-フルアルデヒド含量(y)が前記下限に満たないと、特定香気成分による焼成風味の付与が十分でなく、豆発酵食品の不快な風味が残る場合がある。一方、5-メチル-2-フルアルデヒド含量(y)が前記上限を超えると、特定香気成分自体の香りが強くなりすぎ、焦げ臭くなってしまう場合がある。
【0049】
また、本発明のグラノーラの2-アセチルフラン含量(z)は、通常8μg/kg以上、中でも9μg/kg以上、更には10μg/kg以上であることが好ましく、また、通常100μg/kg以下、中でも75μg/kg以下、更には60μg/kg以下であることが好ましい。2-アセチルフラン含量(z)が前記下限に満たないと、特定香気成分による焼成風味の付与が十分でなく、豆発酵食品の不快な風味が残る場合がある。一方、2-アセチルフラン含量(z)が前記上限を超えると、特定香気成分自体の香りが強くなりすぎ、焦げ臭くなってしまう場合がある。
【0050】
即ち、これらの特定香気成分含量をそれぞれ前記範囲内とすることで、良好な焼成風味を適度に付与することができ、焦げ臭さを感じさせることなく、発酵食品の不快な風味を抑えることが可能となる。
【0051】
[他の成分]
本発明のグラノーラは、その他の成分を含有していてもよい。例としては、これらに限定されるものではないが、食塩、上白糖等の糖類、味噌、酢、みりん、醤油等の基本調味料、畜産物、農産物、水産物等から得られる天然調味料、水、アルコール、旨味調味料、甘味料、香辛料、品質改良剤、香料、保存料、安定剤、着色剤、乳化剤、酸化防止剤等が挙げられる。これらの成分は、何れか1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、個々のグラノーラが接触して粉砕された極小粒径となった粉砕片が入っていてもよい。
【0052】
[グラノーラの製造方法]
本発明のグラノーラの製造方法は制限されず、任意の方法で製造可能である。例としては、小粒径シリアル(前記の第1及び第2の小粒径シリアルを含む態様の場合には、第1及び第2の小粒径シリアル)及び大粒径シリアルの混合物を、コーティング層の成分を含有する加熱した溶液(コーティング用溶液)に浸漬させ、冷却することにより、これを固化させてコーティング層を形成し、シリアルを被覆する方法が挙げられる。前記コーティング用溶液は、コーティング層の成分として、少なくとも糖分を含んでいればよいが、更に塩分等の他の成分等を含んでいてもよい。こうした方法を採用することにより、発酵食品の後味の苦みやえぐみを改善することが可能となる。斯かる本発明のグラノーラの製造方法も、本発明の一側面を構成する。
【0053】
前記コーティング用溶液は、果汁に塩分を溶解させた溶液であることが好ましい。このような果汁に塩分を溶解させた溶液は、通常は塩分に加えて糖分を含むところ、斯かる溶液の塩分及び糖分の各含量を調整することにより、得られるシリアルのコーティング層の塩分及び糖分の各含量を調整することができ、惹いてはグラノーラ全体の塩分及び糖分の各含量を調整することが可能となる。また、斯かる果汁に塩分を溶解させた溶液を用いることで、特定の香気成分の調整が容易になる。
【0054】
なお、斯かるコーティング層でシリアルを被覆する工程の他に、また、斯かる必要に応じて、グラノーラの水分量を概ね3~5%に減らすために、加熱、滅菌、乾燥等の追加の工程を実施してもよい。
【0055】
[豆発酵食品]
本発明のグラノーラは、豆発酵食品と共に食される。本発明のグラノーラを豆発酵食品と共に喫食することで、豆発酵食品の不快な風味をマスキングすると共に、良好な風味を増強することが可能となる。
【0056】
本発明のグラノーラと共に食される豆発酵食品の種類は限定されないが、納豆、テンペ、味噌等が挙げられる。発酵に使用する微生物の種類にも限定はなく、例えば、納豆菌、乳酸菌、コウジカビが例示できる。発酵に使用する豆類の種類にも限定はなく、例えば、大豆、ヒヨコマメ、小豆が例示できる。中でも風味の調和の点から納豆が好ましい。
【0057】
本発明のグラノーラと共に食される豆発酵食品は、低曳糸性であることが好ましい。通常の高曳糸性の納豆では、グラノーラと混合しても粘りが残り、間食などで気軽に摂食できない場合があるのに対し、低曳糸性の豆発酵食品は、間食やオフィスでの昼食などのシーンにも適することから好適である。
【0058】
低曳糸性豆発酵食品は、従来の豆発酵食品と比較して曳糸性が抑えられたものであればよいが、具体的には、以下の[条件A]で測定される低曳糸性納豆の曳糸性が、所定範囲内であることが好ましい。
【0059】
[条件A]検体の豆発酵食品の豆二粒を密着して押さえつけた状態から、一粒のみを100mm/分の速度で上方に引き上げた際に、二粒の豆の間に生じたγ-ポリグルタミン酸を主体とする糸が切れるまでの距離。
【0060】
具体的に、豆発酵食品の曳糸性の上限は、通常50mm以下、中でも40mm以下、更には35mm以下であることが好ましい。前記曳糸性が前記上限値を超えると、本発明のグラノーラと混合しても粘りが残り、間食などで気軽に摂食できない場合がある。一方、曳糸性の下限は制限されるものではないが、豆発酵食品の独自の食味を維持する観点からは、通常0.5mm以上、中でも0.7mm以上、更には1.0mm以上であることが好ましい。
【0061】
このような低曳糸性豆発酵食品の具体例として、納豆菌による発酵をごく短時間で行い低曳糸性に調製した納豆のほか、本出願人が育種選抜した納豆製造時に糸引きが弱くなる納豆菌を用いた低曳糸性納豆が挙げられる。具体的には、バシルス・サチリス(Bacillus subtilis)MIZ-21800株及び同MIZ-21801株で製造した納豆が挙げられる。両菌株はいずれも自社保有の納豆菌株から、自社で育種選抜して得られた納豆菌株であり、2019年11月27日付で独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD)(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、それぞれ受託番号NITE BP-03082(識別の表示:MIZ-21800)及びNITE BP-03083(識別の表示:MIZ-21801)として、国際寄託されている(両菌株を適宜「特定菌株」と呼ぶ場合がある)。これらの特定菌株を使用すると、通常の発酵時間で納豆を製造した場合でも、低曳糸性の納豆を容易に製造することができる。
【0062】
なお、上述のように納豆菌による発酵を極短時間で行って製造した場合は、大豆の青臭さが抜けきらず未熟な風味となるため、前記の特定菌株のような納豆製造時に低曳糸性となるように調整した納豆の方が呈味が良い。
【0063】
また、曳糸性の異なる豆発酵食品を混合して所望の曳糸性を有する豆発酵食品を調製してもよい。
【0064】
本発明のグラノーラと豆発酵食品との混合比率は制限されないが、所定の質量比となるように混合して喫食されることが好ましい。具体的に、(本発明のグラノーラの質量):(低曳糸性豆発酵食品の質量)の比が、通常1:1以上、中でも1:1.5以上、更には1:2以上であることが好ましい。前記質量比が前記下限値に満たないと、グラノーラに対して豆発酵食品の量が過剰となり、豆の不快な後味が残ってしまう場合がある。一方、前記質量比の上限は、通常1:8以下、中でも1:7以下、更には1:6以下であることが好ましい。前記質量比が前記上限値を超えると、豆発酵食品に対してグラノーラの量が過剰となり、豆の良好な風味が十分に感じられない場合がある。
【0065】
[調味液]
本発明のグラノーラは、豆発酵食品に加えて、更に調味液と混合して喫食されるものであってもよい。調味液の組成は限定されないが、その成分としては、調味料等の成分を水に溶解させた水溶液が挙げられる。斯かる調味液の成分の例としては、食塩、上白糖等の糖類、味噌、酢、みりん、醤油等の基本調味料、畜産物、農産物、水産物等から得られる天然調味料、水、アルコール、旨味調味料、甘味料、香辛料、品質改良剤、香料、保存料、安定剤、着色剤、乳化剤、酸化防止剤等が挙げられる。これらの成分は、何れか1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。かかる調味液については、豆発酵食品含有物全体にまとまりをもたせるため、適度に粘度がついているもの、見た目の改善のため明度、彩度が明るいものが好ましい。このような調味液として例えば、トマト、とうもろこし、リンゴなどの野菜類・果実類を主体とした調味液、乳類、豆乳類を主体とした調味液が挙げられる。
【0066】
[用時調製用食品]
本発明の別の一側面は、本発明のグラノーラ及び豆発酵食品(及び任意により調味液)を含み、前記グラノーラ及び前記豆発酵食品(及び任意により調味液)を混合して喫食される、用時調製用食品(適宜「本発明の用時調製用食品」と称する。)に関する。
【0067】
本発明のグラノーラ、豆発酵食品、及び調味液の詳細や、これらの混合比率は、先に説明したとおりである。
【0068】
本発明のグラノーラ及び豆発酵食品(及び任意により調味液)は、通常はそれぞれ個別の容器に包装され、更に必要に応じて単一の容器に包装された状態で、本発明の用時調製用食品として提供されることが好ましい。喫食時には、本発明のグラノーラ及び豆発酵食品(及び任意により調味液)をそれぞれ容器から取り出して、混合して喫食される。
【0069】
本発明の用時調製用食品は、更に任意の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば麺類、野菜固形物等が挙げられる。斯かる任意の他の成分は、さらに別の容器に包装された状態であってもよく、本発明のグラノーラ又は豆発酵食品(又は任意により調味液)と一緒に包装されていてもよい。
【0070】
本発明の用時調製用食品は、本発明のグラノーラ及び豆発酵食品(及び任意により調味液)の取り出し・混合・喫食方法に関する説明の表示を、何れかの容器の上に有していてもよく、別途インサートとして容器内に含んでいてもよい。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
【0072】
[試料の調製]
(グラノーラ試料の調製)
下記表1に示す組成に従い、以下に示す手順により、実施例a1~a11及び比較例b1~b5のグラノーラ試料を調製した。
【0073】
なお、比較例b1に関しては、市販のグラノーラ試料(フルグラ(登録商標)(カルビー社))をそのまま用いたため、詳細な組成比は不明であった。但し、製造メーカーのインターネットウェブサイトの記載によれば、その原材料は以下のとおりである。
「オーツ麦、ライ麦粉、砂糖、乾燥果実(パパイヤ、レーズン、りんご、いちご)、小麦粉、ココナッツ、マルトデキストリン、植物油、米粉、水溶性食物繊維、コーンフラワー、かぼちゃの種、アーモンド、食塩、小麦ふすま、玄米粉/グリセリン、加工デンプン、クエン酸鉄Na、乳化剤、酸味料、酸化防止剤(ビタミンE、ローズマリー抽出物)、ナイアシン、パントテン酸Ca、カゼインNa(乳由来)、ビタミンA、ビタミンB6、ビタミンB1、葉酸、ビタミンD、ビタミンB12」
【0074】
(1)キヌアパフ(粒径2~3mmが主体)、オーツ麦(粒径5~7mmが主体)、及びアーモンド(粒径10~15mmが主体)の乾燥品を、それぞれ下記表1の質量比率となるように組み合わせて混合した。
【0075】
(2)ブドウ果汁及びオリーブオイルの混合液に食塩を溶かした糖塩液(果汁、オリーブオイル、及び食塩の質量比は下記表1参照)を混合後、ガスコンロで加熱し水分が約10%減少するまで煮詰めた。(水分の減少量は下記表1参照)
【0076】
(3)前記(1)のグラノーラ素材に、60℃に加温した前記(2)の糖塩液を吹き付けながら1分間ドラム混合することにより、グラノーラ素材の表面に糖塩液を絡めた。
【0077】
(4)前記(3)の糖塩液を含浸させたグラノーラ素材を、120~130℃に調節したオーブンで20分以上30分以下の範囲で焼成した。
【0078】
また、実施例a9~a11に関しては、焼成後のグラノーラに、水で高濃度に希釈した特定香気成分を、下記表1に示す濃度になるように添加した。特定香気成分としては、それぞれ下記の標準物質を使用した。
・フルフラール(CAS No.98-01-1;東京化成工業製)
・5-メチル-2-フルアルデヒド(CAS No.620-02-0;東京化成工業製)
・2-アセチルフラン(CAS RN 1192-62-7;東京化成工業製)
【0079】
【0080】
(豆発酵食品試料の調製)
以下に示す手順により、調製例1~3の納豆(豆発酵食品)試料を調製した。
【0081】
まず、原料の極小粒の乾燥丸大豆を、軽く水洗し、常温(約25℃)の水に一昼夜浸漬を行うことで大豆に水を十分に吸水させた後、水を切った。
【0082】
続いて、浸漬大豆を蒸煮工程に供した。具体的には、浸漬大豆を金属製容器に入れ、蒸煮釜(原田産業製テスト用蒸煮釜)に入れ、98℃達温まで加熱後、0.08MPaで10分間維持、その後6分間で0.20MPaに達するように加圧し、0.20MPaで30秒維持し、さらに0.14MPaまで14分間かけて脱圧した後、大気圧まで脱圧する条件で蒸煮を行った。
【0083】
上記の手順で蒸煮完了した後の蒸煮大豆それぞれについて、以下の手順で納豆醗酵を行った。納豆菌としては、市販の納豆菌(純粋培養の納豆菌(宮城野菌)(宮城野納豆製造所製))、及び、低曳糸性の納豆が容易に製造可能な育種選抜株バシルス・サチリス(Bacillus subtilis)MIZ-21800株(NITE BP-03082)を用いた。
【0084】
これらの納豆菌株を、下記表2の胞子形成培地(YE)10mL/試験管に植菌し、37℃、150rpm、24時間振盪培養した。得られた胞子懸濁培養液そのものを納豆菌スターターとして用い、蒸煮大豆1gあたり納豆菌胞子が5000個となるように希釈して植菌した。
【0085】
【0086】
こうして納豆菌胞子が植菌された蒸煮大豆45gずつをポリスチレン製納豆容器に入れて蓋をして、納豆醗酵室(原田産業製テスト用醗酵室)内で発酵を行った。発酵室の設定温度及び時間は、調製例1についてはまず50℃で11時間、続いて60℃で1.5時間とし、調製例2及び3については39℃で18時間とした。
【0087】
醗酵工程終了後の各試料を、4℃の冷蔵庫で3日以上冷却して熟成させることにより、調製例1~3の納豆試料とした。また、調製例1及び3の納豆試料を後述の表4の割合で混合して、調製例4~9の納豆試料を調製した。
【0088】
得られた調製例1~9の納豆試料を、後述の曳糸性の測定、及び、グラノーラ試料と混合した状態での官能試験に供した。
【0089】
[物性・特性の測定]
(長辺粒径種別に基づくシリアルの混合比率の測定)
各実施例・比較例のグラノーラ試料を、シリアル素材の種類ごとに区分し、その長辺の長さ(長辺粒径)から、第1の小粒径シリアル(長辺粒径1.5mm超5mm未満)、第2の小粒径シリアル(長辺粒径8mm超12mm未満)、及び大粒径シリアル(長辺粒径12mm超20mm未満)の何れかに分類した。また、粒径毎に分類したシリアル素材の種類毎に質量を測定して、質量比率を算出した。
【0090】
(メッシュサイズに基づくシリアルの混合比率の測定)
各実施例・比較例のグラノーラ試料を、目開き5.6mm(3.5メッシュ)、目開き4.0mm(4.7メッシュ)、目開き2.36mm(7.5メッシュ)、目開き1.7mm(10メッシュ)の金属ふるいに順次通過させ、各ふるい上に残ったグラノーラの質量を測定して、メッシュサイズ毎の質量比率を算出した。なお、ふるいは全て、JIS Z 8801-1における当該メッシュサイズに適合した、野中理化器製作所製の試験用ふるいを用いた。
【0091】
(Brix値の測定)
グラノーラ試料の糖含量は、固体のままでは測定できないため、以下の手順で測定した。各実施例・比較例のグラノーラ試料に対し、質量比2倍量の水を加えて十分に混合し、糖分を水に溶出させてから、得られた溶液を用いてBrix値を測定した値を3倍に換算した。Brix値の測定は糖度計PR201-R(アタゴ)を用いた。
【0092】
(食塩含量の測定)
各実施例・比較例のグラノーラ試料を以下の方法で調製することにより、試料から溶出させた水中の塩化物イオン含量を測定し、食塩含量に換算した。
【0093】
即ち、測定するグラノーラに9倍の質量の水を加えて希釈した後、5分以上攪拌後、ろ紙(No.2)でろ過し、ろ液中の塩分をモール法による塩化物イオンが測定可能な塩分計SAT-210(東亜ディーケーケー製)で測定した値を10倍に換算した。
【0094】
(香気成分の測定)
各実施例・比較例のグラノーラ試料をダイレクトヘッドスペース法でGC-MSに注入する方法で測定することにより、試料中の特定香気成分(フルフラール、5-メチル-2-フルアルデヒド、及び2-アセチルフラン)含量を測定した。
【0095】
測定機器は、ゲステル社1次元2次元切替GC-MS(GC部:HP7890 Series GC SystemにLTM series IIを連結(ともにAgilent社製)、注入口:TDU2/CIS4(ゲステル社)、オートサンプラー:MPS(ゲステル社))を用いた。
【0096】
サンプルの機器への注入は、ダイレクトヘッドスペース法で実施した。具体的には、検体各1.5gを10mL平底のバイアルに計り取った後に密閉し、60mLの窒素ガスパージによって揮発させた試料を、分析成分の性質に応じた吸着樹脂(Tenaxカラム)で吸着した後、加熱脱着システムを用いて、以下の条件の下で注入処理を行った。
【0097】
[GC-MS条件(DHS(dynamic head space)注入法)]
・装置:Agilent社製7890B(GC)、5977B(MS)、ゲステル社製オートサンプラーMPS(MultiPurpose Sampler)
・吸着樹脂:Tenax
・インキュベーション温度:80℃
・窒素ガスパージ量:60mL
・窒素ガスパージ流量:10mL/分
【0098】
なお、キャピラリーカラムとしては、一次元カラムとしてDB-WAX(長さ30m、内径250μm、膜厚0.25μm、LTM用)(Agilent社製)を使用した。キャリアガスとしてはヘリウムを用いた。
【0099】
サンプルの注入条件は、次のとおりとした。
・CIS4:
10℃で0.5分保持、その後720℃/分で240℃まで昇温。
・TDU2:
30℃で0.2分保持、その後240℃/分で240℃まで昇温。
【0100】
測定は、上記注入条件で注入を行った後、一次元カラムで分離を行い、選択イオン検出(SIM)モードに供した。なお、DB-WAX(一次元カラム)のカラムオーブン条件は以下のとおりとした。
・DB-WAX(一次元カラム):
40℃で3分保持、その後5℃/分で240℃まで昇温、7分間保持。
【0101】
各測定検体は、選択イオン検出(SIM)モードにより、下記表3に示す成分の標準物質を水で希釈した溶液2mLを検体と同様に測定した際の定量イオンの面積から測定検体の濃度を絶対検量線法で算出した。標準物質としては、実施例a9~a11の試料への添加に使用したものと同じ標準物質を使用した。
【0102】
【0103】
(曳糸性の測定)
各調製例の納豆(豆発酵食品)試料の曳糸性の測定は、常温の条件下で、各試料の豆二粒を密着して押さえつけた状態から、一粒のみを100mm/分の速度で上方に引き上げた際に、二粒の豆の間に生じたγ-ポリグルタミン酸を主体とする糸が切れるまでの距離を測定することにより行った。測定には、デジタルフォースゲージ(型番FGP-0.5(日本電産シンポ株式会社製))、及び、フォースケージスタンド(型番FGP-50E(日本電産シンポ株式会社製))を使用した。
【0104】
[官能評価]
(官能検査員の選定)
各官能評価は、以下の訓練を行った官能検査員3名で実施した。
【0105】
官能検査員は、下記A)及びB)の識別訓練を実施し、特に成績が優秀な者を選定した。
A)五味(甘味:砂糖の味、酸味:酒石酸の味、旨み:グルタミン酸ナトリウムの味、塩味:塩化ナトリウムの味、苦味:カフェインの味)について、各成分の閾値に近い濃度の水溶液を各1つずつ作製し、これに蒸留水2つを加えた計7つのサンプルから、それぞれの味のサンプルを正確に識別する味質識別試験。
B)濃度がわずかに異なる5種類の食塩水溶液、酢酸水溶液の濃度差を正確に識別する濃度差識別試験。
【0106】
(官能検査の項目)
実施例a1~a11及び比較例b1~b5のグラノーラ試料と、調製例1~9の豆発酵食品試料とを、後述の表6の試験区aa1~aa15及びbb1~bb5に示す組み合わせで混合した混合試料を作製し、官能検査に供した。官能評価の項目は以下とした。何れの項目も、各官能検査員が各混合試料を1~5の範囲内で0.5点刻みで評価した結果を平均し、得られた平均点の小数第二位を四捨五入し、最終的な評点とした。
【0107】
・豆発酵食品・グラノーラ混合試料の後味:
5 豆発酵食品特有の後味の苦み、えぐみが全く感じられず非常に好ましい。
4 豆発酵食品特有の後味の苦み、えぐみがわずかであり好ましい。
3 豆発酵食品特有の後味の苦み、えぐみが一定程度感じられる。
2 豆発酵食品特有の後味の苦み、えぐみがやや強く感じられて好ましくない。
1 豆発酵食品特有の後味の苦み、えぐみを強く感じ非常に好ましくない。
【0108】
・豆発酵食品・グラノーラ混合試料の食感:
5 咀嚼時の抵抗の段階的変化が強く感じられて非常に好ましい。
4 咀嚼時の抵抗の段階的変化が明らかに感じられる。
3 咀嚼時の抵抗の段階的変化にやや感じられる。
2 咀嚼時の抵抗の段階的変化がほとんど感じられず好ましくない。
1 咀嚼時の抵抗の段階的変化が全く感じられず食感が単調で非常に好ましくない。
なお、「咀嚼時の抵抗の段階的変化」とは、一般的な豆発酵食品と異なる食感を有する食品素材が複数含まれることによって感じられる、咀嚼時の抵抗の段階的変化を意味する。
【0109】
[結果]
実施例a1~a11及び比較例b1~b5のグラノーラ試料の組成・物性を下記表4に、調製例1~9の納豆(豆発酵食品)試料の製法・組成・物性を下記表5に、これらを混合した各混合試料の配合比率及び官能評価結果を下記表6にそれぞれ示す。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
表6から明らかなように、実施例a1~a11と調製例1、3、8の組み合わせである試験区aa1~aa15の評価は、両評価項目とも3点以上となり優れていた。一方、比較例b1~b5と調製例1の組み合わせである試験区bb1~bb5の評価は、両評価項目の少なくとも一方が3点未満となった。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、豆発酵食品全般の嗜好性向上に広く適用でき、その利用価値は極めて大きい。