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特許7382041豆発酵食品用調味液及びその製法並びに豆発酵食品含有用時調製用食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】豆発酵食品用調味液及びその製法並びに豆発酵食品含有用時調製用食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20231109BHJP
   A23L 11/50 20210101ALI20231109BHJP
【FI】
A23L27/00 D
A23L11/50 209Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021574585
(86)(22)【出願日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 JP2021000390
(87)【国際公開番号】W WO2021153190
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2020014407
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(73)【特許権者】
【識別番号】317006214
【氏名又は名称】株式会社Mizkan
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】小宮 裕介
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-123817(JP,A)
【文献】特開2015-029435(JP,A)
【文献】特開2005-261216(JP,A)
【文献】特開昭60-019466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(o)を満たす低曳糸性豆発酵食品と共に食ための調味液であって、下記(a)及び(b)を満たす調味液。
(o)以下の[条件A]で測定される低曳糸性豆発酵食品の曳糸性が0.5mm以上50mm以下である。
[条件A]検体の低曳糸性豆発酵食品の豆二粒を密着して押さえつけた状態から、一粒のみを100mm/分の速度で上方に引き上げた際に、二粒の豆の間に生じたγ-ポリグルタミン酸を主体とする糸が切れるまでの距離。
(a)当該調味液をB型粘度計により20℃、12rpmで測定した粘度(x)が5000cp以上41000cp以下である。
(b)当該調味液を水で10倍希釈後、目開き0.177mmの樹脂製メッシュでろ過したろ過液のヘイズ値が25以上90以下である。
【請求項2】
更に以下を満たす、請求項1に記載の調味液。
(c)当該調味液をB型粘度計により20℃、6rpmで測定した粘度(y)が7000cp以上61000cp以下である。
【請求項3】
更に以下を満たす、請求項1又は2に記載の調味液。
(d)当該調味液をB型粘度計により20℃、30rpmで測定した粘度(z)が2000cp以上である。
【請求項4】
更に以下を満たす、請求項1~3の何れか一項に記載の調味液。
(e)当該調味液のL色空間における明度L*が20以上90以下である。
【請求項5】
更に以下を満たす、請求項1~4の何れか一項に記載の調味液。
(f)食塩濃度(x)が0.3%(w/w)以上4%(w/w)以下である。
(g)Brix(y)が8以上30以下である。
【請求項6】
更に以下を満たす、請求項1~5の何れか一項に記載の調味液。
(h)当該調味液中の具材の生換算含有量が57%(w/w)以下である。
【請求項7】
更に以下を満たす、請求項1~6の何れか一項に記載の調味液。
(i)粘度調整剤を含有しない。
【請求項8】
更に以下を満たす、請求項1~7の何れか一項に記載の調味液。
(j)当該調味液中の糖塩比(y/x)が4以上30以下である。
【請求項9】
更に以下を満たす、請求項1~8の何れか一項に記載の調味液。
(k)当該調味液中の油分含量が1%(w/w)以上35%(w/w)以下である。
【請求項10】
更に以下を満たす、請求項1~9の何れか一項に記載の調味液。
(l)当該調味液25gと低曳糸性豆発酵食品40gとを混合した混合物の透過方式によるL色空間における表色(L ,a ,b )と、当該低曳糸性豆発酵食品自体のL色空間における表色(L ,a ,b )から、以下の式で換算される色差ΔE abが15以上50以下である。
【数1】
【請求項11】
更に以下を満たす、請求項1~10の何れか一項に記載の調味液。
(m)当該調味液と低曳糸性豆発酵食品との質量比率が1:0.3~1:3となるように混合して喫食される。
【請求項12】
更に以下を満たす、請求項1~11の何れか一項に記載の調味液。
(n)低曳糸性豆発酵食品が低曳糸性納豆である。
【請求項13】
低曳糸性豆発酵食品と、請求項1~12の何れか一項に記載の調味液とを含み、前記豆発酵食品と前記調味液とを混合して喫食される、用時調製用食品。
【請求項14】
低曳糸性豆発酵食品が低曳糸性納豆である、請求項13に記載の用時調製用食品。
【請求項15】
請求項1~10の何れか一項に記載の調味液を製造するための方法であって、
少なくとも前記の(a)及び(b)を満たすように、具材を油分中に分散させる工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は豆発酵食品、特に低曳糸性の豆発酵食品と共に食される調味液、斯かる調味液の製造方法、並びに斯かる豆発酵食品及び調味液を含む用時調製用食品に関する。
【背景技術】
【0002】
納豆等の豆発酵食品は、単独で喫食すると食感が単調で飽きやすいことから、通常はパックに同包された納豆たれ等の調味液を添加して混合してから喫食される。しかし、斯かる調味液には、納豆が有する独自の風味や曳糸性等の特徴に伴う課題が存在する。例えば、調味液の粘度が低すぎると、豆発酵食品への液絡み不足や容器への液残りが生じ、食べた後の容器汚れも多くなるため、調味液にはある程度の粘度を付与する必要がある。しかし、調味液の粘度が過度となると、豆発酵食品と混ぜた際に団子状となり、喫食時の見た目が悪くなる上に、食べにくくなり、更には食味も悪化してしまうという課題があった。
【0003】
特に近年では、嗜好の多様性を反映して、納豆の曳糸性を抑えた低曳糸性の豆発酵食品が開発されているが、斯かる低曳糸性の豆発酵食品では、その食味を維持しつつ、見た目や食べ易さを改善することは更に困難となる。
【0004】
納豆用調味液に関する技術として、特許文献1(特開2014-155466号公報)は、粘度及び納豆との質量比を所定範囲内に調整することにより、納豆独特の曳糸感や風味を損なうことなく、納豆との混ぜ合わせを容易とした粘度調整剤入り調味液を開示する。しかし、本技術は、食味の改善を行うものではない上に、通常の曳糸性を有する納豆用の調味液であるため、低曳糸性豆発酵食品の喫食に伴う見た目や食べ易さ等の課題を十分に解決できるものではない。
【0005】
納豆用ではないが、魚介類や肉類用調味液に関する技術として、特許文献2(特開2014-108085号公報)は、粘度、食塩濃度、タマネギ具材の含有率、硬度等を所定範囲内に調整することにより、大きなタマネギ具材を多量に含むにもかかわらず形状が様々な魚介類又は肉類と和え易くした調味液を開示する。しかし、本技術は、豆発酵食品に最適化した調味液ではなく、低曳糸性豆発酵食品の喫食に伴う食味、見た目、食べ易さ等の課題を解決できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-155466号公報
【文献】特開2014-108085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の背景から、低曳糸性豆発酵食品の喫食時における食味を損なうことなく、見た目や食べ易さを改善することが可能な調味液が求められている。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、低曳糸性豆発酵食品と混合して喫食される調味液であって、低曳糸性豆発酵食品の食味を損なうことなく、混合時の見た目や食べ易さを改善することが可能な調味液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は鋭意検討の結果、低曳糸性豆発酵食品と混合して食される調味液について、常温(20℃)低攪拌(12rpm)条件下で測定される粘度(x)を所定の範囲内に調整すると共に、水希釈後ろ過した場合のろ過液のヘイズ値が所定の範囲内となるように調整することにより、低曳糸性豆発酵食品の食味を損なうことなく、混合時の見た目や食べ易さを改善することが可能となるのを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明の趣旨は、例えば以下に関する。
[項1]低曳糸性豆発酵食品と共に食される調味液であって、以下を満たす調味液。
(a)当該調味液をB型粘度計により20℃、12rpmで測定した粘度(x)が5000cp以上、又は5200cp以上、又は5500cp以上、また、41000cp以下、又は39000cp以下、又は38000cp以下である。
(b)当該調味液を水で10倍希釈後、目開き0.177mmの樹脂製メッシュでろ過したろ過液のヘイズ値が25以上、又は30以上、又は40以上、また、90以下、又は89以下、又は88以下である。
[項2]更に以下を満たす、項1に記載の調味液。
(c)当該調味液をB型粘度計により20℃、6rpmで測定した粘度(y)が7000cp以上、又は7150cp以上、又は7240cp以上、また、61000cp以下、又は57000cp以下、又は50000cp以下である。
[項3]更に以下を満たす、項1又は2に記載の調味液。
(d)当該調味液をB型粘度計により20℃、30rpmで測定した粘度(z)が2000cp以上、又は2500cp以上、又は5000cp以上である。
[項4]更に以下を満たす、項1~3の何れか一項に記載の調味液。
(e)当該調味液のL色空間における明度L*が20以上、又は25以上、又は30以上、また、90以下、又は89以下、又は88以下である。
[項5]更に以下を満たす、項1~4の何れか一項に記載の調味液。
(f)食塩濃度(x)が0.3%(w/w)以上、又は0.4%(w/w)以上、又は0.5%(w/w)以上、また、4%(w/w)以下、又は3.5%(w/w)以下、又は3%(w/w)以下である。
(g)Brix(y)が8以上、又は9以上、又は13以上、また、30以下、又は29以下、又は28以下である。
[項6]更に以下を満たす、項1~5の何れか一項に記載の調味液。
(h)当該調味液中の具材の生換算含有量が0%(w/w)以上、又は10%(w/w)以上、又は20%(w/w)以上、また、57%(w/w)以下、又は56%(w/w)以下、又は55%(w/w)以下である。
[項7]更に以下を満たす、項1~6の何れか一項に記載の調味液。
(i)粘度調整剤を含有しない。
[項8]更に以下を満たす、項1~7の何れか一項に記載の調味液。
(j)当該調味液中の糖塩比(y/x)が4以上、又は5以上、又は6以上、また、30以下、又は29以下、又は28以下である。
[項9]更に以下を満たす、項1~8の何れか一項に記載の調味液。
(k)当該調味液中の油分含量が1%(w/w)以上、又は2%(w/w)以上、又は5%(w/w)以上、また、35%(w/w)以下、又は30%(w/w)以下、又は23%(w/w)以下である。
[項10]更に以下を満たす、項1~9の何れか一項に記載の調味液。
(l)当該調味液25gと低曳糸性豆発酵食品40gとを混合した混合物の透過方式によるL色空間における表色(L ,a ,b )と、当該低曳糸性豆発酵食品自体のL色空間における表色(L ,a ,b )から、以下の式で換算される色差ΔE abが15以上、又は16以上、又は16.5以上、また、50以下、又は40以下、又は38以下である。
【数1】
[項11]更に以下を満たす、項1~10の何れか一項に記載の調味液。
(m)当該調味液と低曳糸性豆発酵食品との質量比率が1:0.3以上、又は1:0.33以上、又は1:0.5以上、また、1:3以下、又は1:2.5以下、又は1:2以下となるように混合して喫食される。
[項12]更に以下を満たす、項1~11の何れか一項に記載の調味液。
(n)低曳糸性豆発酵食品が低曳糸性納豆である。
[項13]更に以下を満たす、項12に記載の調味液。
(o)以下の[条件A]で測定される低曳糸性豆発酵食品の曳糸性が0.5mm以上、又は0.7mm以上、又は1.0mm以上、また、50mm以下、又は40mm以下、又は35mm以下である。
[条件A]検体の豆発酵食品の豆二粒を密着して押さえつけた状態から、一粒のみを100mm/分の速度で上方に引き上げた際に、二粒の豆の間に生じたγ-ポリグルタミン酸を主体とする糸が切れるまでの距離。
[項14]豆発酵食品と、項1~13の何れか一項に記載の調味液とを含み、前記豆発酵食品と前記調味液とを混合して喫食される、用時調製用食品。
[項15]項1~10の何れか一項に記載の調味液を製造するための方法であって、
少なくとも前記の(a)及び(b)を満たすように、具材を油分中に分散させる工程を含む方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の調味液によれば、低曳糸性豆発酵食品と混合して喫食する際に、その食味を損なうことなく、混合時の見た目や食べ易さを改善することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体的な実施の形態に即して詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
【0013】
[調味液]
本発明の第一の側面は、納豆等の豆発酵食品、特に低曳糸性豆発酵食品と共に食される調味液(以下適宜「本発明の調味液」と称する。)に関する。
【0014】
[粘度]
本発明の調味液は、B型粘度計により異なる回転数の攪拌条件で測定した常温下の粘度及びその比が、以下の条件を満たすことを特徴とする。
【0015】
具体的には、温度20℃の下、B型粘度計を用いて、回転数12rpmで測定した粘度を粘度(x)、回転数6rpmで測定した粘度を粘度(y)、回転数30rpmで測定した粘度を粘度(z)とする。ここで、回転数が小さい条件下で測定された粘度ほど、静的状態下での物性を反映した値となり、回転数が大きい条件下で測定された粘度ほど、動的状態下での物性を反映した値となる。即ち、前記の粘度(x)、(y)、(z)のうち、粘度(z)が最も動的な状態下、即ち擾乱下での物性を反映した粘度であり、粘度(y)が最も静的な状態下での物性を反映した粘度であり、粘度(x)はその中間にあたる弱攪乱状態下での物性を反映した粘度である。
【0016】
本発明の調味液の粘度(x)の下限は、5000cp以上である。中でも5200cp以上であることが好ましく、更には5500cp以上であることがより好ましい。粘度(x)が前記下限に満たないと、弱擾乱時の粘度が過小で滑りやすくなり、豆発酵食品と混ぜにくくなる場合がある。一方、粘度(x)の上限は、41000cp以下である。中でも39000cp以下であることが好ましく、更には38000cp以下であることがより好ましい。粘度(x)が前記上限を超えると、弱擾乱時の粘度が過大で抵抗力が大きくなり、豆発酵食品と混ぜにくくなる場合がある。
【0017】
本発明の調味液の粘度(y)は、制限されるものではないが、その下限は7000cp以上であることが好ましい。中でも7150cp以上、更には7240cp以上であることがより好ましい。粘度(y)が前記下限に満たないと、静置時の粘度が過小で滑りやすくなり、豆発酵食品と混ぜにくくなる場合がある。一方、粘度(y)の上限は、61000cp以下であることが好ましい。中でも57000cp以下、更には50000cp以下であることがより好ましい。粘度(y)が前記上限を超えると、静置時の粘度が過大で抵抗力が大きくなり、豆発酵食品と混ぜにくくなる場合がある。
【0018】
本発明の調味液の粘度(z)は、制限されるものではないが、その下限は2000cp以上であることが好ましい。中でも2500cp以上、更には5000cp以上であることがより好ましい。粘度(z)が前記下限に満たないと、攪拌時の粘度が過小で滑りやすくなり、豆発酵食品と混ぜにくくなる場合がある。
【0019】
このように、前記の粘度(x)、(y)、(z)が上記の各条件を満たすように調整することで、低曳糸性豆発酵食品と混合しやすい好適な調味液を得ることが可能となる。
【0020】
[ヘイズ値]
本発明の調味液は、所定粒径の具材を除いた状態で測定したヘイズ値が、所定範囲内であることを特徴の一つとする。具体的には、本発明の調味液を水で10倍希釈後、目開き0.177mmの樹脂製メッシュでろ過したろ過液のヘイズ値の下限が、25以上である。前記ヘイズ値は、中でも30以上、更には40以上であることが好ましい。前記ヘイズ値が前記下限値に満たないと、粉っぽい食感となる場合がある。一方、前記ヘイズ値の上限は、90以下である。中でも89以下、更には88以下であることが好ましい。前記ヘイズ値が前記上限値を超えると、重たい味残りがする場合がある。前記ヘイズ値を前記下限値と前記上限値との間に納めることで、味伸びが改善された好適な調味液を得ることが可能となる。なお、調味液のヘイズ値の測定は、当該調味液を水で10倍希釈後、目開き0.177mm(80メッシュ)の樹脂製メッシュ(例えば、PPLS工業用高精細ナイロンメッシュ、ナイロンネット#80、1m幅×5m(株式会社ペパレス製作所))でろ過したろ過液を用いて、積分球式光電光度法による濁度測定器(例えばWA6000T(日本電色工業株式会社製)))により行うことができる。なお、メッシュサイズの規定はJIS Z 8801-1に従う。
【0021】
[表色]
本発明の調味液は、L色空間における明度が、所定の条件を満たすことが好ましい。具体的には、調味液のL色空間における明度Lの下限が、通常20以上、中でも25以上、更には30以上であることが好ましい。前記明度Lが前記下限値に満たないと、豆発酵食品の見た目の暗さを十分にカバーできない場合がある。また、前記の明度Lの上限は、通常90以下、中でも89以下、更には88以下であることが好ましい。前記明度Lが前記上限値を超えると、豆発酵食品との混合時に人工的な見栄えになってしまう場合がある。
【0022】
また、本発明の調味液は、低曳糸性豆発酵食品と混合した状態でのL色空間における表色と低曳糸性豆発酵食品自体のL色空間における表色との色差が、所定の条件を満たすことが好ましい。具体的には、低曳糸性豆発酵食品自体のL色空間における表色(L ,a ,b )と、当該調味液25gと低曳糸性豆発酵食品40gとを混合した混合物のL色空間における表色(L ,a ,b )とを測定し、これらの表色から以下に示すCIE1976計算式(ΔE76)により求められる色差ΔE abが、所定の範囲内であることが好ましい。
【0023】
【数2】
【0024】
前記色差ΔE abの下限は、通常15以上、中でも16以上、更には16.5以上であることが好ましい。当該色差ΔE abが前記下限値に満たないと、豆発酵食品の見た目の暗さを十分にカバーできない場合がある。また、前記色差ΔE abの上限は、通常50以下、中でも40以下、更には38以下であることが好ましい。当該色差ΔE abが前記上限値を超えると、人工的な見栄えになってしまう場合がある。
【0025】
なお、調味液及び調味液と低曳糸性豆発酵食品との混合物のL色空間における表色の測定は、色差計(例えばSD-3000(日本電色工業株式会社)等)により行うことができる。
【0026】
[食塩濃度]
本発明の調味液は、食塩濃度が所定範囲内であることが好ましい。具体的に、本発明の調味液の食塩濃度の下限は、通常0.3%(w/w)以上、中でも0.4%(w/w)以上、更には0.5%(w/w)以上であることが好ましい。前記食塩濃度が前記下限値に満たないと、豆発酵食品の食味が勝ちすぎるとなる場合がある。一方、前記食塩濃度の上限は、通常4%(w/w)以下、中でも3.5%(w/w)以下、更には3%(w/w)以下であることが好ましい。前記食塩濃度が前記上限値を超えると、豆発酵食品を摂食する際に違和感を与える場合がある。なお、調味液の食塩濃度の測定は、モール法に準じた塩化物イオンの測定が可能な塩分計により行う。塩分系の例としては、SAT-210(東亜ディーケーケー製)等を挙げることができる。
【0027】
[Brix値]
本発明の調味液は、Brix値が所定範囲内であることが好ましい。具体的に、本発明の調味液のBrix値の下限は、通常8以上、中でも9以上、更には13以上であることが好ましい。前記Brix値が前記下限値に満たないと、低曳糸性の豆発酵食品との調和に必要な自然な物性が得られない場合がある。一方、前記Brix値の上限は、通常30以下、中でも29以下、更には28以下であることが好ましい。前記Brix値が前記上限値を超えると、甘味が強すぎて豆発酵食品の風味が十分に感じられない場合がある。なお、調味液のBrix値の測定は、糖度計(例えばPR201-R (アタゴ製)等)により行うことができる。
【0028】
[糖塩比]
本発明の調味液は、食塩含量のBrix値に対する比(食塩含量/Brix値:適宜「糖塩比」と呼ぶ場合がある。)が所定範囲内であることが好ましい。具体的に、本発明の調味液の糖塩比の下限は、通常4以上、中でも5以上、更には6以上であることが好ましい。前記糖塩比が前記下限値に満たないと、塩分に対して糖が過少となり、粘性が足りなくなって豆発酵食品と混ざりにくくなる場合がある。一方、前記糖塩比の上限は、通常30以下、中でも29以下、更には28以下であることが好ましい。前記糖塩比が前記上限値を超えると、塩分に対して糖が過多となり、塩分と甘みのバランスが崩れて食味を損なう場合がある。
【0029】
[具材]
本発明の調味液は、具材を含有することが好ましい。具材は、後述の方法で液部と分離できるものであれば、その種類は制限されないが、各種食材を適宜破砕、粒子化、凝集等して適切なサイズに調整したものが挙げられる。サイズ調整後の具材に対しては、乾燥、凍結などの加工を行うことも制限はないが、具材含有量を測定する際は水戻しをするなどして生の状態にしてから固形物と液部の分離作業を行う。具材の原料となる食材としては、制限されるものではないが、タマネギ、ネギ、ダイコン、ニンジン、ビーツ、パプリカ、コーン、リンゴ等の植物性食材、豚肉、牛肉、鶏肉、等の動物性食材が挙げられる。
【0030】
中でも、ヴィーガンを含めた誰でも摂食できるという観点で、植物性食材が好ましい。
【0031】
本発明の調味液は、具材含有量が所定範囲内であることが好ましい。具体的に、本発明の調味液における具材の生換算含有量は、通常0%(w/w)以上、中でも10%(w/w)以上、更には20%(w/w)以上であることが好ましい。前記具材含有量が前記下限値に満たないと、調味液を豆発酵食品と混合した場合にその食感を改善できない場合がある。一方、前記具材の生換算含有量の上限は、通常57%(w/w)以下、中でも56%(w/w)以下、更には55%(w/w)以下であることが好ましい。前記具材含有量が前記上限値を超えると、調味液が豆発酵食品とうまく混合できなくなる場合がある。なお、調味液の具材の生換算含有量の測定は、目開き1.41mm(線径0.45mm)の直径22cm取っ手付き金属製メッシュ上に水で5倍希釈した調味液を添加し、取っ手を持って上下動を10回繰り返すことで液部と固形分を分け、固形分の質量を測定する方法により行うことができる。
【0032】
[粘度調整剤]
本発明の調味液は、低曳糸性豆発酵食品と混合して喫食される際の豆発酵食品の曳糸性が増強されることがないように、粘度調整剤を含まないのが好ましい。特にペクチン、カラギナン、グァーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガムといった、増粘多糖類は豆発酵食品と類似した粘度特性を有するため、含まないのが好ましい。
【0033】
[油分]
本発明の調味液は、油分を含有することが好ましい。油分の種類は制限されないが、例えばオリーブオイル、ごま油、サラダ油等の植物性油分、バター、ラード、ヘット等の動物性油分、MCTオイル等の人工油分等が挙げられる。中でも、常温で液状で自然な風味のある植物性油分が好ましい。
【0034】
本発明の調味液は、油分含量が所定範囲内であることが好ましい。具体的に、本発明の調味液の油分含量の下限は、通常1%(w/w)以上、中でも2%(w/w)以上、更には5%(w/w)以上であることが好ましい。前記油分含量が前記下限値に満たないと、豆発酵食品と混ぜた際に豆の青臭みを抑制できない場合がある。一方、前記油分含量の上限は、通常35%(w/w)以下、中でも30%(w/w)以下、更には23%(w/w)以下であることが好ましい。前記油分含量が前記上限値を超えると、調味液の油分が水相と分離したり、豆発酵食品と混ざりにくくなる場合がある。前記油分含量を前記下限値と前記上限値との間に納めることで、豆発酵食品との混合適性に優れると共に、豆の青臭みを抑えることが可能な、好適な調味液を得ることが可能となる。なお、調味液の油分の測定は、ソックスレー抽出管を用いたエーテル抽出法により行うことができる。
【0035】
[他の成分]
本発明の調味液は、その他の成分を含有していてもよい。例としては、これらに限定されるものではないが、食塩、上白糖等の糖類、味噌、酢、みりん、醤油等の基本調味料、畜産物、農産物、水産物等から得られる天然調味料、水、アルコール、旨味調味料、甘味料、香辛料、品質改良剤、香料、保存料、安定剤、着色剤、乳化剤、酸化防止剤等が挙げられる。これらの成分は、何れか1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0036】
但し、本発明の調味液は、粘度調整剤を実質的に含有しないことが好ましい。粘度調整剤を含有すると、調味液を豆発酵食品と混合した場合に、豆発酵食品の食感が増強されてしまう場合がある。
【0037】
[調味液の製造方法]
本発明の調味液の製造方法は制限されず、任意の方法で製造可能である。例としては、調味料の原材料、好ましくは具材及び油分、並びに任意により用いられるその他の成分を、前記の各特性、特に前記の粘度特性及びヘイズ値特性、並びに任意により調整されるその他の特性を満たすように混合し、分散させることを含む方法が挙げられる。混合・分散の手法や各成分の混合・分散順は特に制限されない。また、必要に応じて加熱、加圧等の追加の工程を実施してもよい。なお、斯かる本発明の調味液の製造方法も、本発明の一側面を構成する。
【0038】
[低曳糸性豆発酵食品]
本発明の調味液は、豆発酵食品と共に食される。豆発酵食品の種類は限定されないが、納豆、テンペ、味噌等が挙げられる。発酵に使用する微生物の種類にも限定はなく、例えば、納豆菌、乳酸菌、コウジカビが例示できる。発酵に使用する豆類の種類にも限定はなく、例えば、大豆、ヒヨコマメ、小豆が例示できる。中でも風味の調和の点から納豆が好ましい。
【0039】
本発明の調味液は、特に低曳糸性豆発酵食品と共に食される。低曳糸性豆発酵食品は、間食やオフィスでの昼食などのシーンにも適することから好ましい。
【0040】
低曳糸性豆発酵食品は、従来の納豆と比較して曳糸性が抑えられたものであればよいが、具体的には、以下の[条件A]で測定される低曳糸性豆発酵食品の曳糸性が、所定範囲内であることが好ましい。
【0041】
[条件A]検体の豆発酵食品の豆二粒を密着して押さえつけた状態から、一粒のみを100mm/分の速度で上方に引き上げた際に、二粒の豆の間に生じたγ-ポリグルタミン酸を主体とする糸が切れるまでの距離。
【0042】
具体的に、豆発酵食品の曳糸性の上限は、通常50mm以下、中でも40mm以下、更には35mm以下であることが好ましい。前記曳糸性が前記上限値を超えると、本発明の調味液と混合しても粘りが残り、間食などで気軽に摂食できない場合がある。一方、曳糸性の下限は制限されるものではないが、豆発酵食品の独自の食味を維持する観点からは、通常0.5mm以上、中でも0.7mm以上、更には1.0mm以上であることが好ましい。
【0043】
このような低曳糸性豆発酵食品の具体例として、納豆菌による発酵をごく短時間で行い低曳糸性に調製した納豆のほか、本出願人が育種選抜した納豆製造時に糸引きが弱くなる納豆菌を用いた低曳糸性納豆が挙げられる。具体的には、バシルス・サチリス(Bacillus subtilis)MIZ-21800株及び同MIZ-21801株で製造した納豆が挙げられる。両菌株はいずれも自社保有の納豆菌株から、自社で育種選抜して得られた納豆菌株であ り、2019年11月27日付で独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD)(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、それぞれ受託番号NITE BP-03082(識別の表示:MIZ-21800)及びNITE BP-03083(識別の表示:MIZ-21801)として、国際寄託されている(両菌株を適宜「特定菌株」と呼ぶ場合がある)。これらの特定菌株を使用すると、通常の発酵時間で納豆を製造した場合でも、低曳糸性の納豆を容易に製造することができる。
【0044】
なお、上述のように納豆菌による発酵を極短時間で行って製造した場合は、大豆の青臭さが抜けきらず未熟な風味となるため、前記の特定菌株のような納豆製造時に低曳糸性となるように調整した納豆の方が呈味が良い。
【0045】
また、曳糸性の異なる豆発酵食品を混合して所望の曳糸性を有する豆発酵食品を調製してもよい。
【0046】
本発明の調味液と低曳糸性豆発酵食品との混合比率は制限されないが、所定の質量比となるように混合して喫食されることが好ましい。具体的に、(本発明の調味液の質量):(低曳糸性豆発酵食品の質量)の比が、通常1:0.3以上、中でも1:0.33以上、更には1:0.5以上であることが好ましい。前記質量比が前記下限値に満たないと、調味液に対して豆発酵食品の量が過剰となり、発酵食品の食味が出過ぎてしまう場合がある。一方、前記質量比の上限は、通常1:3以下、中でも1:2.5以下、更には1:2以下であることが好ましい。前記糖質量比が前記上限値を超えると、豆発酵食品に対して調味液の量が過剰となり、調味液の味が濃厚すぎる場合がある。
【0047】
[用時調製用食品]
本発明の別の一側面は、本発明の調味液と豆発酵食品とを含み、前記調味液と前記豆発酵食品とを混合して喫食される、用時調製用食品(適宜「本発明の用時調製用食品」と称する。)に関する。本発明の調味液の詳細については、先に説明したとおりである。豆発酵食品としては、低曳糸性豆発酵食品、特に低曳糸性納豆が好ましい。低曳糸性豆発酵食品や、本発明の調味液と低曳糸性豆発酵食品との混合比率についても、先に説明したとおりである。
【0048】
本発明の調味液及び豆発酵食品は、通常はそれぞれ個別の容器に包装され、更に必要に応じて単一の容器に包装された状態で、本発明の用時調製用食品として提供されることが好ましい。喫食時には、本発明の調味液及び豆発酵食品をそれぞれ容器から取り出して、混合して喫食される。
【0049】
本発明の用時調製用食品は、更に任意の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えばグラノーラなどの穀物含有食品、麺類、野菜固形物等が挙げられる。斯かる任意の他の成分は、さらに別の容器に包装された状態であってもよく、本発明の調味液又は豆発酵食品と一緒に包装されていてもよい。
【0050】
本発明の用時調製用食品は、本発明の調味液及び豆発酵食品の取り出し・混合・喫食方法に関する説明の表示を、何れかの容器の上に有していてもよく、別途インサートとして容器内に含んでいてもよい。
【実施例
【0051】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
[試料の調製]
(調味液試料の調製)
以下に示す手順により、実施例a1~a12及び比較例b1~b3の調味液試料を調製した。即ち、下記表1に示す組成に従い、調味液原料全量(全体で500gになるように調製)を十分混合するまで攪拌した後、90℃、10分間加熱処理してから樹脂パウチに充填した。
【0053】
【表1】
【0054】
(豆発酵食品試料の調製)
以下に示す手順により、調製例1~3の納豆(豆発酵食品)試料を調製した。
【0055】
まず、原料の極小粒の乾燥丸大豆を、軽く水洗し、常温(約25℃)の水に一昼夜浸漬を行うことで大豆に水を十分に吸水させた後、水を切った。
【0056】
続いて、浸漬大豆を蒸煮工程に供した。具体的には、浸漬大豆を金属製容器に入れ、蒸煮釜(原田産業製テスト用蒸煮釜)に入れ、98℃達温まで加熱後、0.08MPaで10分間維持、その後6分間で0.20MPaに達するように加圧し、0.20MPaで30秒維持し、さらに0.14MPaまで14分間かけて脱圧した後、大気圧まで脱圧する条件で蒸煮を行った。
【0057】
上記の手順で蒸煮完了した後の蒸煮大豆それぞれについて、以下の手順で納豆醗酵を行った。納豆菌としては、市販の納豆菌(純粋培養の納豆菌(宮城野菌)(宮城野納豆製造所製))、及び、低曳糸性の納豆が容易に製造可能な育種選抜株バシルス・サチリス(Bacillus subtilis)MIZ-21800株(NITE BP-03082)を用いた。
【0058】
これらの納豆菌株を、下記表2の胞子形成培地(YE)10mL/試験管に植菌し、37℃、150rpm、24時間振盪培養した。得られた胞子懸濁培養液そのものを納豆菌スターターとして用い、蒸煮大豆1gあたり納豆菌胞子が5000個となるように希釈して植菌した。
【0059】
【表2】
【0060】
こうして納豆菌胞子が植菌された蒸煮大豆45gずつをポリスチレン製納豆容器に入れて蓋をして、納豆醗酵室(原田産業製テスト用醗酵室)内で発酵を行った。発酵室の設定温度及び時間は、調製例1についてはまず50℃で11時間、続いて60℃で1.5時間とし、調製例2及び3については39℃で18時間とした。
【0061】
醗酵工程終了後の各試料を、4℃の冷蔵庫で3日以上冷却して熟成させることにより、調製例1~3の納豆試料とした。また、調製例1及び3の納豆試料を後述の表4の割合で混合して、調製例4~9の納豆試料を調製した。
【0062】
得られた調製例1~9の納豆試料を、後述の曳糸性の測定、及び、調味液試料と混合した状態での官能試験に供した。
【0063】
[物性・特性の測定]
(粘度測定)
調味液試料の粘度は、BII形粘度計BMII(東機産業株式会社製)を用いて測定した。測定時の温度は20℃とし、ローターNo.4又はローターNo.3を用い、下記表3に示す各回転数で回転開始後20秒後の値を計測した。なお、ローターNo.4はローターNo.3の測定が上限値を超過した場合に使用した。なお、実施例a4と比較例b2は、30rpmにおける測定時に、ローターNo.4を使用しても測定上限値(20000cp)を超過した。
【0064】
(ヘイズ値の測定)
ヘイズ値は当該調味液を水で10倍希釈後、80メッシュ(目開き0.177mm、線型0.14mm)のナイロンフィルター(2071PPLS工業用高精細ナイロンメッシュ、ナイロンネット#80、1m幅×5m(株式会社ペパレス製作所))でろ過したろ過液を測定した。具体的には、ろ過液を積分球式光電光度法による濁度測定器WA6000T(日本電色工業株式会社製)を用いて定法に従って測定した検体を光路長5mmの石英セルに入れ、水を対照として拡散透過率、全光線透過率を測定し、ヘイズ値については拡散透過率を全光線透過率で割り返すことで算出した。
【0065】
(表色の測定)
調味液試料のL色空間における彩度は、SD-3000(日本電色工業株式会社)を用いて測定を行った。透過方式により測定したL値、a値及びb値から、調味液の明度は調味液25gを測定したL値をそのまま、色差ΔE abは、各調味液試料25gと調製例1の納豆(豆発酵食品)試料40gとを混合した混合物のL色空間における表色(L ,a ,b )と、当該低曳糸性豆発酵食品試料自体のL色空間における表色(L ,a ,b )を測定し、以下の式により算出した。
【0066】
【数3】
【0067】
(具材量の測定)
具材量の測定は、目開き1.41mm(線径0.45mm)の直径22cm取っ手付き金属製メッシュ上に水で5倍希釈した調味液を添加し、取っ手を持って上下動を10回繰り返すことで液部と固形分を分け、固形分の質量を測定する方法により行った。
【0068】
(食塩濃度の測定)
検体の食塩濃度は、塩分計AT-210(東亜ディーケーケー製)で、塩化物イオンを測定することにより算出した。
【0069】
(Brix値の測定)
検体のBrix値は糖度計PR201-R (アタゴ製)で測定した。
【0070】
(油分含量の測定)
調味料中の油分の測定は、常法に従いソックスレー抽出管を用いたエーテル抽出法によって算出される脂質分量を測定することによって算出した。
【0071】
(曳糸性の測定)
豆発酵食品試料の曳糸性の測定は、豆発酵食品試料の豆二粒を密着して押さえつけた状態から、一粒のみを100mm/分の速度で上方に引き上げた際に、二粒の豆の間に生じたγ-ポリグルタミン酸を主体とする糸が切れるまでの距離を測定することで測定した。測定には、デジタルフォースゲージ(型番FGP-0.5(日本電産シンポ株式会社製))、及び、フォースケージスタンド(型番FGP-50E(日本電産シンポ株式会社製))を使用した。
【0072】
[官能評価]
(官能検査員の選定)
各官能評価は、以下の訓練を行った官能検査員4名で実施した。
官能検査員は、下記A)及びB)の識別訓練を実施し、特に成績が優秀な者を選定した。
A)五味(甘味:砂糖の味、酸味:酒石酸の味、旨み:グルタミン酸ナトリウムの味、塩味:塩化ナトリウムの味、苦味:カフェインの味)について、各成分の閾値に近い濃度の水溶液を各1つずつ作製し、これに蒸留水2つを加えた計7つのサンプルから、それぞれの味のサンプルを正確に識別する味質識別試験。
B)濃度がわずかに異なる5種類の食塩水溶液、酢酸水溶液の濃度差を正確に識別する濃度差識別試験。
【0073】
(官能検査の項目)
実施例a1~a12及び比較例b1~b3の調味液試料と、調製例1~9の納豆(豆発酵食品)試料とを、下記表5に示す組み合わせで混合した混合試料を作製し、官能検査に供した。官能評価の項目は以下とした。何れの項目も、各官能検査員が各混合試料を1~5で評価した結果を平均し、得られた平均点の小数第一位を四捨五入し、最終的な評点とした。
【0074】
・豆発酵食品・調味液混合試料の喫食時の味伸び:
5 後味の味伸びが明らかに強く感じられて非常に好ましい
4 後味の味伸びが明らかに感じられて好ましい
3 後味の味伸びがやや感じられる
2 後味の味伸びがほとんど感じられず好ましくない
1 後味の味伸びが全く感じられず非常に好ましくない
【0075】
・豆発酵食品・調味液混合試料の見た目:
5 見た目が明らかに華やかに感じられて非常に好ましい
4 見た目が華やかに感じられて好ましい
3 見た目がやや華やかに感じられる
2 見た目がやや地味で暗くじられ好ましくない
1 見た目が明らかに地味で暗く感じられ非常に好ましくない
【0076】
・豆発酵食品・調味液混合試料の食感:
5 食感のバラツキが強く感じられて非常に好ましい
4 食感のバラツキが明らかに感じられる
3 食感のバラツキがやや感じられる
2 食感のバラツキがほとんど感じられず好ましくない
1 食感のバラツキが全く感じられず食感が単調で非常に好ましくない
【0077】
[結果]
実施例a1~a12及び比較例b1~b3の調味液試料の組成・物性を下記表3に、調製例1~9の納豆(豆発酵食品)試料の製法・組成・物性を下記表4に、これらを混合した各混合試料の配合比率及び官能評価結果を下記表5にそれぞれ示す。
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
表5から明らかなように、実施例の調味液試料と調製例の納豆(豆発酵食品)試料の組み合わせである試験区aa1~aa16の混合試料の評価は、何れの評価項目も3点以上となり優れていた。一方、比較例の調味液試料と調製例の組み合わせである試験区bb1~bb3の評価は、両評価項目の少なくとも何れかが3点未満となった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、低曳糸性の豆発酵食品の風味改善に広く適用でき、その利用価値は極めて大きい。