(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】乳化組成物及び化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/896 20060101AFI20231109BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20231109BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20231109BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20231109BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
A61K8/896
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/891
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2021019904
(22)【出願日】2021-02-10
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】伊能 博臣
(72)【発明者】
【氏名】入船 真治
(72)【発明者】
【氏名】安藤 裕司
【審査官】▲高▼橋 明日香
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-193209(JP,A)
【文献】特開2011-102354(JP,A)
【文献】特表2009-545649(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105326663(CN,A)
【文献】酸化チタン含有シリコーンポリマーの開発と化粧品への応用,J.Soc.Cosmet.Chem.Japan.,1999年,Vol.33,No.4,p.354-363
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
C08G 77/00-77/62
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化組成物であって、
(A):チタン原子含有シリコーン樹脂
(B):前記(A)成分が可溶な25℃で液状の炭化水素油、エステル油及びシリコーン油からなる群より選ばれる1種以上の油剤
(C):水
を含有し、界面活性剤を含まないものである
乳化組成物であって、
前記(A)成分が下記組成式:
【化1】
(式中、Rは独立に、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基及び炭素数1~8のフッ素置換アルキル基から選ばれる基であり、aは0.01~0.7、bは0~0.9、cは0.01~0.7、dは0.01~0.3であり、a+b+c+dは1.0である。)
で表されるチタン原子含有シリコーン樹脂であることを特徴とする乳化組成物。
【請求項2】
前記(A)成分を0.1~30.0質量%含有するものであることを特徴とする請求項
1に記載の乳化組成物。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載の乳化組成物を含むものであることを特徴とする化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化組成物及び該乳化組成物を含有する化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコーン樹脂は、被膜形成能があり、耐水性、耐汗性、耐皮脂性に優れることから、ファンデーション、口紅、アイシャドー、マスカラ等のメークアップ化粧料、紫外線防御用化粧料、頭髪用化粧料等の化粧品用原料として使用されている。例えば、平均式RnSiO4-n/2の単位からなる有機シリコーン樹脂と、揮発性炭化水素油とを含む皮膚化粧料(特許文献1)、R3SiO1/2単位とSiO4/2単位からなる樹脂と、揮発性シリコーン油とを含有する皮膚化粧料(特許文献2)、R2SiO2/2単位、RSiO3/2単位、SiO4/2単位を2種類以上含み、任意で末端をR3SiO1/2単位で封鎖したシリコーン樹脂、揮発性油剤と紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤を配合した日焼け防止化粧料(特許文献3)等が知られており、これらは耐水性に優れる被膜が得られることを開示している。
【0003】
さらに、シリコーン樹脂は界面活性剤を用いて水との乳化組成物を形成することができる。シリコーン樹脂を乳化組成物とすることにより、化粧料として用いた場合、みずみずしく滑らかな感触を付与することができることがよく知られている。通常乳化組成物は、経時安定性を保証するために、界面活性剤を使用することが必須とされているが、界面活性剤由来のぬめり感やべたつき感があり、使用感の改善が求められている。
【0004】
近年では、シリコーン樹脂への更なる機能性を付与するため、撥水性、撥油性に優れる異種金属含有有機シリコーン樹脂が開発されている(特許文献4)。チタン原子を有するシリコーン樹脂は紫外線吸収能を有し、それを含有する化粧料は、肌への密着性が良く、化粧効果持続性や転写防止効果に優れていることを開示している。また、従来からの乳化技術を用いて乳化型化粧料とすることも示唆してはいるが、「従来からの乳化技術」=「界面活性剤を用いること」を前提としており、同様に界面活性剤由来の使用感の問題は残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭61-158910号公報
【文献】特開昭61-65808号公報
【文献】特開昭62-234012号公報
【文献】特開平11-193209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、界面活性剤を用いることなく、安定性、使用性に優れた乳化組成物、及び上記乳化組成物を含有する化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、
乳化組成物であって、
(A):チタン原子含有シリコーン樹脂
(B):前記(A)成分が可溶な25℃で液状の炭化水素油、エステル油及びシリコーン油からなる群より選ばれる1種以上の油剤
(C):水
を含有し、界面活性剤を含まないものである乳化組成物を提供する。
【0008】
このような乳化組成物であれば、界面活性剤を用いることなく安定性、使用性に優れた乳化組成物となる。
【0009】
また、前記(A)成分が下記組成式:
【化1】
(式中、Rは独立に、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基及び炭素数1~8のフッ素置換アルキル基から選ばれる基であり、aは0.01~0.7、bは0~0.9、cは0.01~0.7、dは0.01~0.3であり、a+b+c+dは1.0である。)
で表されるチタン原子含有シリコーン樹脂であることが好ましい。
【0010】
上記(A)成分がこのようなものであれば、より容易に界面活性剤を用いることなく安定性、使用性に優れた乳化組成物を得ることができる。
【0011】
更に、前記(A)成分を0.1~30.0質量%含有するものであることが好ましい。
【0012】
上記(A)成分の比率がこのようなものであれば、より容易に乳化することができる。
【0013】
加えて、上記乳化組成物を含むものである化粧料を提供する。
【0014】
このような化粧料であれば、界面活性剤を含まないことによって、乳化化粧料として用いた場合、界面活性剤由来のぬめり感やべたつき感がなく、使用感の優れた化粧料を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特定の構成単位を有するチタン原子含有シリコーン樹脂を使用することで、界面活性剤を使うことなく安定性、使用性に優れた乳化組成物が得られる。また、塗布後、紫外線吸収効果を有する被膜を形成することができる。更に、本発明の乳化組成物を用いることで使用性に優れた化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例及び比較例で合成したシリコーン樹脂のIRスペクトルの一例である。
【
図2】実施例及び比較例で合成したシリコーン樹脂のUVスペクトルの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上述のように、界面活性剤を用いることなく、安定性、使用性に優れた乳化組成物を得ることが求められていた。
【0018】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の構成単位を有するチタン原子含有シリコーン樹脂を使用することで、界面活性剤を使うことなく安定性、使用性に優れた乳化組成物が得られることを見出し、本発明を成すに至った。
【0019】
即ち、本発明は、
乳化組成物であって、
(A):チタン原子含有シリコーン樹脂
(B):前記(A)成分が可溶な25℃で液状の炭化水素油、エステル油及びシリコーン油からなる群より選ばれる1種以上の油剤
(C):水
を含有し、界面活性剤を含まないものである乳化組成物である。
【0020】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
[(A)チタン原子含有シリコーン樹脂]
本発明の(A)成分はチタン原子含有シリコーン樹脂であり、具体的には、例えばチタノキサン単位(TiO
4/2単位)を分子中に有するシリコーン樹脂である。中でも、
【化2】
で表されるチタン原子含有シリコーン樹脂が好ましい。
【0022】
上記Rは独立して、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基及び炭素数1~8のフッ素置換アルキル基から選ばれる基である。
【0023】
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が挙げられる。炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基及びトリル基等が挙げられる。炭素数1~8のフッ素置換アルキル基としては、トリフロロプロピル基等が挙げられる。
【0024】
中でも、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0025】
上記aは0.01~0.7の数であり、0.1~0.7が好ましく、0.2~0.6がより好ましい。aが0.01以上であれば製造時にゲル化する恐れがなく、0.7以下であれば、樹脂皮膜がべたついたり、液状になってしまったりする恐れがない。
【0026】
上記bは0~0.9の数であり、0~0.8が好ましく、b=0がより好ましい。bが0.9以下であればゲル化の恐れがない。
【0027】
上記cは0.01~0.7の数であり、0.2~0.7が好ましく、0.3~0.6がより好ましい。0.01以上であれば樹脂皮膜がべたついたり、液状になったりしてしまう恐れがなく、0.7以下であればゲル化の恐れがない。
【0028】
上記dは0.01~0.3であり、0.04~0.2が好ましく、0.05~0.15が更に好ましい。0.01以上であれば、確実に乳化安定性を得ることができ、0.3以下であればゲル化の恐れがない。また、より高い乳化安定性を得る観点からは、dの値は大きい方が好ましい。
【0029】
また、上記a、上記b、上記c、上記dについて、a+b+c+dは1.0である。
【0030】
特に、上記組成式(1)において、Rがメチル基である下記組成式(2)で示されるチタン原子含有シリコーン樹脂が好ましい。
【化3】
(式中、a、b、c、及びdは上記と同じである)
【0031】
本発明におけるチタン原子含有シリコーン樹脂の重量平均分子量は、500~20,000が好ましく、1,000~8,000がより好ましい。この範囲内であれば、油剤との相溶性が良く、べたつきのない硬い被膜が得られるため好ましい。なお、本発明において、重量平均分子量は、下記条件によるポリスチレンを標準物質としたGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)分析による値である。
【0032】
[測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.6mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-H
TSKgel SuperHM-N(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2500(6.0mmI.D.×15cm×1)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:50μL(濃度0.3質量%のTHF溶液)
【0033】
[(B)油剤]
(B)成分の油剤は、上記(A)成分が可溶な25℃で液状の炭化水素油、エステル油及びシリコーン油からなる群より選ばれる1種以上の油剤である。
【0034】
炭化水素油としては、流動パラフィン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン、スクワラン、スクワレン、プリスタン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、テトラデセン、イソヘキサデカン、イソドデカン、αオレフィンオリゴマー等を挙げることができる。好ましくは、イソドデカンが挙げられる。
【0035】
エステル油としては、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、2-エチルヘキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸イソセチル、2-エチルへキサン酸ステアリル、2-エチルへキサン酸イソステアリル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸2-ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソセチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル、ピバリン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、エルカ酸オクチルドデシル、ジデカン酸ネオペンチルグリコール、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、アジピン酸ジデシル、イソステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸バチル、モノヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油、ラノリン脂肪酸イソステアリル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸オクチルドデシル、リシノレイン酸セチル、コハク酸ジオクチル、乳酸セチル、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジノナン酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリグリセリド、動植物油などが挙げられる。トリグリセリドとしてはグリセリンとカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、2-エチルヘキサン酸、イソトリデカン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、エイコサン酸、オレイン酸などのトリグリセリドが挙げられる。動植物油脂としてはオリーブ油、ヒマワリ油、サフラワー油、ヒマシ油、ツバキ油などが挙げられる。
【0036】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、トリストリメチルシロキシメチルシラン、カプリリルメチコン、フェニルトリメチコン、テトラキストリメチルシロキシシラン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルヘキシルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等の低粘度から高粘度の直鎖又は分岐状のオルガノポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン等の環状オルガノポリシロキサン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、ピロリドン変性オルガノポリシロキサン、ピロリドンカルボン酸変性オルガノポリシロキサン、ステアロキシシリコーン等の高級アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、長鎖アルキル変性シリコーン、アミノ酸変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
【0037】
[(C)水]
(C)成分の水は特に限定はされないが、例えば、精製水などを挙げることができる。
【0038】
[乳化組成物]
本発明の乳化組成物は、(A)~(C)成分を含むものである。
【0039】
本発明の乳化組成物中、(A)、(B)成分が油層を形成し、(C)成分が水層を形成する。本発明の乳化組成物の形態としては特に限定はされず、例えば油滴が水中に分散したO/Wエマルションであっても、水滴が油中に分散したW/Oエマルションであってもよい。また、油層中において(A)成分と(B)成分の比率は均一であってもよいし、油層の表面側に(A)成分が偏在していてもよい。
【0040】
油層を形成する(A)成分と(B)成分の比率は特に限定はされないが、(A)成分:(B)成分の値が0.1:19.9から10:10であることが好ましく、0.2:19.8から7.5:12.5であることがより好ましく、0.5:19.5から5:15であることが更に好ましく、1:19から3:17が極めて好ましい。
【0041】
本発明の乳化組成物において、前記(A)~(C)成分の配合の質量比は以下が好ましい。
(A):0.1~30質量%、好ましくは0.1~20質量%、更に好ましくは0.1~10質量%。
(B):1.0~40質量%、好ましくは1.0~20質量%、更に好ましくは1.0~10質量%
(C):50.0~99.0質量%、好ましくは70.0~99.0、更に好ましくは80~99.0質量%
【0042】
本発明の乳化組成物は、界面活性剤を含まないことが特徴である。このように界面活性剤を用いることなく乳化組成物ができるのは、(A)成分のチタン原子含有シリコーン樹脂を含有することの効果による。
【0043】
<化粧料>
本発明の乳化組成物は、例えば、保湿クリーム、乳化ファンデーション、日焼け止め乳液、ヘアクリーム、クリーム製剤などの乳化化粧料などに応用することができる。界面活性剤を含まないことによって、これら乳化化粧料として用いた場合、界面活性剤由来のぬめり感やべたつき感がなく、使用感の優れた化粧料を得ることができるため好ましい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、「%」は質量%を示す。また、(CH3)3SiO1/2単位をM単位、CH3SiO3/2単位をT単位、SiO4/2単位をQ単位、TiO4/2単位をTi単位と記載する。
【0045】
[実施例1]
ヘキサメチルジシロキサン26.18g、テトラエトキシシラン74.68g及びイソプロピルアルコール(以下、IPA)64gを反応器に仕込み、メタンスルフォン酸0.64gを添加して10~20℃に冷却し、撹拌しながら水47.54gを滴下した。滴下終了後、50~80℃で5時間加熱して加水分解・縮合反応を行い、シリコーン樹脂溶液を得た。
【0046】
次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液1.03g及び炭酸カルシウム0.13gを加えて酸を中和した後、イソドデカン100gを添加して、90~115℃まで加熱し、生成したエタノール、IPA、過剰な水を除去して冷却した後、撹拌しながらオルトチタン酸テトライソプロピル3.96gを滴下し、2時間攪拌後、130℃で3時間加熱して、生成したIPA及び水を除去した後、冷却した。さらに、減圧留去した後、油剤としてデカメチルシクロペンタシロキサンでシリコーン樹脂濃度が60%になるよう希釈調整後、濾過することにより、M単位:Q単位:Ti単位のモル比率が0.46:0.52:0.02の60%シリコーン樹脂デカメチルシクロペンタシロキサン溶液を得た。
【0047】
[実施例2]
ヘキサメチルジシロキサン26.18g、テトラエトキシシラン74.68g及びIPA64gを反応器に仕込み、メタンスルフォン酸0.64gを添加して10~20℃に冷却し、撹拌しながら水47.54gを滴下した。滴下終了後、50~80℃で5時間加熱して加水分解・縮合反応を行い、シリコーン樹脂溶液を得た。
【0048】
次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液1.03g及び炭酸カルシウム0.13gを加えて酸を中和した後、イソドデカン100gを添加して、90~115℃まで加熱し、生成したエタノール、IPA、過剰な水を除去して冷却した後、撹拌しながらオルトチタン酸テトライソプロピル3.96gを滴下し、2時間攪拌後、130℃で3時間加熱して、生成したIPA及び水を除去した後、冷却した。さらに、減圧留去した後、油剤としてイソドデカンでシリコーン樹脂濃度が60%になるよう希釈調整後、濾過することにより、M単位:Q単位:Ti単位のモル比率が0.46:0.52:0.02の60%シリコーン樹脂イソドデカン溶液を得た。
【0049】
[実施例3]
ヘキサメチルジシロキサン26.18g、テトラエトキシシラン74.68g及びIPA64gを反応器に仕込み、メタンスルフォン酸0.64gを添加して10~20℃に冷却し、撹拌しながら水47.54gを滴下した。滴下終了後、50~80℃で5時間加熱して加水分解・縮合反応を行い、シリコーン樹脂溶液を得た。
【0050】
次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液1.03g及び炭酸カルシウム0.13gを加えて酸を中和した後、イソドデカン100gを添加して、90~115℃まで加熱し、生成したエタノール、IPA、過剰な水を除去して冷却した後、撹拌しながらオルトチタン酸テトライソプロピル8.08gを滴下し、2時間攪拌後、130℃で3時間加熱して、生成したIPA及び水を除去した後、冷却した。さらに、減圧留去した後、油剤としてデカメチルシクロペンタシロキサンでシリコーン樹脂濃度が60%になるよう希釈調整後、濾過することにより、M単位:Q単位:Ti単位のモル比率が0.46:0.50:0.04の60%シリコーン樹脂デカメチルシクロペンタシロキサン溶液を得た。
【0051】
[実施例4]
ヘキサメチルジシロキサン26.18g、テトラエトキシシラン74.68g及びIPA64gを反応器に仕込み、メタンスルフォン酸0.64gを添加して10~20℃に冷却し、撹拌しながら水47.54gを滴下した。滴下終了後、50~80℃で5時間加熱して加水分解・縮合反応を行い、シリコーン樹脂溶液を得た。
【0052】
次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液1.03g及び炭酸カルシウム0.13gを加えて酸を中和した後、イソドデカン100gを添加して、90~115℃まで加熱し、生成したエタノール、IPA、過剰な水を除去して冷却した後、撹拌しながらオルトチタン酸テトライソプロピル8.08gを滴下し、2時間攪拌後、130℃で3時間加熱して、生成したIPA及び水を除去した後、冷却した。さらに、減圧留去した後、油剤としてイソドデカンでシリコーン樹脂濃度が60%になるよう希釈調整後、濾過することにより、M単位:Q単位:Ti単位のモル比率が0.46:0.50:0.04の60%シリコーン樹脂イソドデカン溶液を得た。
【0053】
[実施例5]
ヘキサメチルジシロキサン26.18g、テトラエトキシシラン74.68g及びIPA64gを反応器に仕込み、メタンスルフォン酸0.64gを添加して10~20℃に冷却し、撹拌しながら水47.54gを滴下した。滴下終了後、50~80℃で5時間加熱して加水分解・縮合反応を行い、シリコーン樹脂溶液を得た。
【0054】
次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液1.03g及び炭酸カルシウム0.13gを加えて酸を中和した後、イソドデカン100gを添加して、90~115℃まで加熱し、生成したエタノール、IPA、過剰な水を除去して冷却した後、撹拌しながらオルトチタン酸テトライソプロピル12.37gを滴下し、2時間攪拌後、130℃で3時間加熱して、生成したIPA及び水を除去した後、冷却した。さらに、減圧留去した後、油剤としてデカメチルシクロペンタシロキサンでシリコーン樹脂濃度が60%になるよう希釈調整後、濾過することにより、M単位:Q単位:Ti単位のモル比率が0.45:0.49:0.06の60%シリコーン樹脂デカメチルシクロペンタシロキサン溶液を得た。
【0055】
[実施例6]
ヘキサメチルジシロキサン26.18g、テトラエトキシシラン74.68g及びIPA64gを反応器に仕込み、メタンスルフォン酸0.64gを添加して10~20℃に冷却し、撹拌しながら水47.54gを滴下した。滴下終了後、50~80℃で5時間加熱して加水分解・縮合反応を行い、シリコーン樹脂溶液を得た。
【0056】
次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液1.03g及び炭酸カルシウム0.13gを加えて酸を中和した後、イソドデカン100gを添加して、90~115℃まで加熱し、生成したエタノール、IPA、過剰な水を除去して冷却した後、撹拌しながらオルトチタン酸テトライソプロピル12.37gを滴下し、2時間攪拌後、130℃で3時間加熱して、生成したIPA及び水を除去した後、冷却した。さらに、減圧留去した後、油剤としてイソドデカンでシリコーン樹脂濃度が60%になるよう希釈調整後、濾過することにより、M単位:Q単位:Ti単位のモル比率が0.45:0.49:0.06の60%シリコーン樹脂イソドデカン溶液を得た。
【0057】
[実施例7]
ヘキサメチルジシロキサン23.27g、テトラエトキシシラン74.68g及びIPA64gを反応器に仕込み、メタンスルフォン酸0.64gを添加して10~20℃に冷却し、撹拌しながら水47.54gを滴下した。滴下終了後、50~80℃で5時間加熱して加水分解・縮合反応を行い、シリコーン樹脂溶液を得た。
【0058】
次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液1.03g及び炭酸カルシウム0.13gを加えて酸を中和した後、イソドデカン100gを添加して、90~115℃まで加熱し、生成したエタノール、IPA、過剰な水を除去して冷却した後、撹拌しながらオルトチタン酸テトライソプロピル15.97gを滴下し、2時間攪拌後、130℃で3時間加熱して、生成したIPA及び水を除去した後、冷却した。さらに、減圧留去した後、油剤としてイソドデカンでシリコーン樹脂濃度が60%になるよう希釈調整後、濾過することによりM単位:Q単位:Ti単位のモル比率が0.41:0.51:0.08の60%シリコーン樹脂イソドデカン溶液を得た。
【0059】
[実施例8]
ヘキサメチルジシロキサン26.18g、トリエトキメチルシシラン12.78g、テトラエトキシシラン59.75g及びIPA64gを反応器に仕込み、メタンスルフォン酸0.64gを添加して10~20℃に冷却し、撹拌しながら水47.54gを滴下した。滴下終了後、50~80℃で5時間加熱して加水分解・縮合反応を行い、シリコーン樹脂溶液を得た。
【0060】
次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液1.03g及び炭酸カルシウム0.13gを加えて酸を中和した後、イソドデカン100gを添加して、90~115℃まで加熱し、生成したエタノール、IPA、過剰な水を除去して冷却した後、撹拌しながらオルトチタン酸テトライソプロピル21.54gを滴下し、2時間攪拌後、130℃で3時間加熱して、生成したIPA及び水を除去した後、冷却した。さらに、減圧留去した後、油剤としてイソドデカンでシリコーン樹脂濃度が60%になるよう希釈調整後、濾過することにより、M単位:T単位:Q単位:Ti単位のモル比率が0.43:0.09:0.38:0.10の60%シリコーン樹脂イソドデカン溶液を得た。
【0061】
[比較例1]
ヘキサメチルジシロキサン26.18g、テトラエトキシシラン74.68g及びIPA64gを反応器に仕込み、メタンスルフォン酸0.64gを添加して10~20℃に冷却し、撹拌しながら水47.54gを滴下した。滴下終了後、50~80℃で5時間加熱して加水分解・縮合反応を行い、シリコーン樹脂溶液を得た。
【0062】
次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液1.03g及び炭酸カルシウム0.13gを加えて酸を中和した後、イソドデカン100gを添加して、130℃で3時間加熱し、生成したエタノール、IPA、過剰な水を除去して冷却した。さらに、減圧留去した後、油剤としてイソドデカンでシリコーン樹脂濃度が60%になるよう希釈調整後、濾過することにより、M単位:Q単位のモル比率が0.47:0.53の60%シリコーン樹脂イソドデカン溶液を得た。
【0063】
[比較例2]
ヘキサメチルジシロキサン26.18g、トリエトキシメチルシラン6.39g、テトラエトキシシラン67.23g及びIPA64gを反応器に仕込み、メタンスルフォン酸0.64gを添加して10~20℃に冷却し、撹拌しながら水47.54gを滴下した。滴下終了後、50~80℃で5時間加熱して加水分解・縮合反応を行い、シリコーン樹脂溶液を得た。
【0064】
次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液1.03g及び炭酸カルシウム0.13gを加えて酸を中和した後、イソドデカン100gを添加して、130℃で3時間加熱し、生成したエタノール、IPA、過剰な水を除去して冷却した。さらに、減圧留去した後、油剤としてイソドデカンでシリコーン樹脂濃度が60%になるよう希釈調整後、濾過することにより、M単位:T単位:Q単位のモル比率が0.47:0.05:0.48の60%シリコーン樹脂イソドデカン溶液を得た。
【0065】
上記例で得られた各シリコーン樹脂の構成単位のモル比率、屈折率、動粘度等を下記表1に示す。なお、下記屈折率と粘度は、それぞれ表中記載の濃度の樹脂溶液として測定した値である。
【表1】
※組成のモル比率は、原料の仕込み比率から算出したもの
※屈折率はJIS K 0062:1992記載の測定したアッベ屈折率計を用いて測定した25℃での値(n
D)
※動粘度はJIS Z 8803:2011記載のキャノン-フェンスケ粘度計を用いて測定した25℃での値
D5:デカメチルシクロペンタシロキサン
ID:イソドデカン
【0066】
[赤外線吸収特性]
赤外分光光度計Nicolet iS50(Thermo Scientific社製)を用いて、KBrセル上に実施例、比較例で得られたシリコーン樹脂溶液を塗布してIRスペクトルを測定した。測定結果を
図1に示す。Aは比較例1、Bは実施例4、Cは実施例7のIRスペクトルである。
【0067】
チタン原子含有シリコーン樹脂を配合した実施例4と7では、チタン原子を含まないシリコーン樹脂を配合した比較例1では確認できなかったTi-O-Siに由来するピーク(945cm-1付近)を確認した。
【0068】
[紫外線吸収特性]
紫外分光光度計UV-2200(島津製作所製)を用いて、実施例、比較例で得られたシリコーン樹脂溶液を用い、シリコーン樹脂濃度が1g/Lになるようにイソプロパノールで希釈した溶液のUVスペクトルを、厚さ10mmの石英ガラスセルを用いて測定した。測定結果を
図2に示す。Aは比較例1、Bは実施例2、Cは実施例4、Dは実施例6、Eは実施例7のUVスペクトルの結果である。
【0069】
樹脂中のチタン原子含有量が多いほど紫外線吸収能の増加を確認した。また、チタン原子含有シリコーン樹脂は紫外線吸収能を有するため、チタン原子含有シリコーン樹脂を乳化剤として得られた乳化物を塗布することで紫外線カット効果を有する被膜が得られる。
【0070】
[乳化特性]
上記例で得られたシリコーン樹脂溶液を使って乳化特性を確認した。配合量を表2に示す。
【表2】
*油剤は樹脂合成時に溶液に使用した油剤
【0071】
各シリコーン樹脂と油剤を容器にとり、ホモディスパー(PRIMIX社製)を使って500rpmで1分間攪拌した後、攪拌しながら水を徐々に添加した。水を添加後、1,000rpmで5分間攪拌して乳化物を作製した。25℃の恒温乾燥機に置き、一晩放置し、目視にて乳化物の安定性を確認した。その結果を表3に示す。
【表3】
(注1)信越化学工業(株)製:KF-6017
(注2)信越化学工業(株)製:KSG-320
【0072】
チタン原子を含まないシリコーン樹脂を使用した比較例1、2では、乳化物が得られなかったが、チタン原子含有シリコーン樹脂を使用した実施例1から8では乳化物が得られ、乳化剤を使用せずとも乳化組成物が得られた。更に、チタン原子含有量の増加に伴い、乳化に必要な樹脂量が減少し、乳化能が向上することが分かった。また、シリコーン系の乳化剤であるポリエーテル変性シリコーンよりも乳化性能が高かった。
【0073】
上記例で得られたチタン原子含有シリコーン樹脂溶液を使って、乳化組成物を調製し、使用感(べたつき)を評価した。
【0074】
[使用性評価]
下記配合表5によって得られた乳化組成物について、50名の女性の専門パネラーに、塗布時の延び(展延性)、べたつき感、さっぱり感を、下記表4に示す評価基準により評価し、その評価結果の平均点を算出した。
【表4】
【0075】
得られた評価結果の平均点に基づき、結果を下記に基づいて表5に示す。
◎:平均点が4.0点以上
○:平均点が3.0点以上4.0点未満
△:平均点が2.0点以上3.0点未満
×:平均点が2.0点未満
【0076】
【0077】
表5から明らかなように、本発明の化粧料は、比較例に比べ、全ての評価項目において優れていた。
【0078】
よって、チタン原子含有シリコーン樹脂を用いることにより、べたつきのない使用感を有した乳化組成物が得られることがわかった。
【0079】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。