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特許7382497電磁弁異常検出装置、それを用いた医用自動分析装置および電磁弁異常検出方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】電磁弁異常検出装置、それを用いた医用自動分析装置および電磁弁異常検出方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20231109BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
F16K31/06 320A
G01N35/00 F
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022522529
(86)(22)【出願日】2021-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2021007844
(87)【国際公開番号】W WO2021229895
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2020083774
(32)【優先日】2020-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】周 広斌
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悟郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 一啓
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-197772(JP,A)
【文献】特公平6-33730(JP,B2)
【文献】特開2015-233054(JP,A)
【文献】特開2014-92068(JP,A)
【文献】国際公開第2018/055931(WO,A1)
【文献】特開2016-121923(JP,A)
【文献】特開2001-234768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06-31/11
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流センサが検出した電磁弁の電磁弁開に伴う駆動電流パターンから、前記電磁弁の異常を検出する電磁弁異常検出装置であって、
あらかじめ定められた検出期間における前記電磁弁の電磁弁開に伴う駆動電流パターンの特徴量を求める特徴量抽出部と、
前記電磁弁の飽和電流値から前記電磁弁の電磁弁温度を推定し、前記特徴量抽出部で求めた特徴量の値を、推定された前記電磁弁温度に基づき基準温度での値に補正する特徴量補正部と、
前記電磁弁の電磁弁開に伴う駆動電流パターンの特徴量から前記電磁弁の開き状態を推定する推定モデルと前記特徴量補正部で補正された前記特徴量の値とを用いて、前記電磁弁の開き状態を推定する開き状態推定部とを有する電磁弁異常検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記特徴量抽出部は、前記電磁弁の電磁弁開に伴う駆動電流パターンの特徴量の一つとして、前記検出期間における所定の経過時間での電流値を抽出し、
前記特徴量補正部は、前記基準温度での値に補正した前記所定の検出時間における電流値から前記電磁弁が配置された流路の流路内圧力を推定し、前記基準温度での値に補正した前記特徴量の値を、推定された前記流路内圧力に基づき基準圧力での値に補正する電磁弁異常検出装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記所定の経過時間は、前記電磁弁のプランジャーの移動が停止した後、前記電磁弁の駆動電流が飽和電流値に達するまでの時間として設定される電磁弁異常検出装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記検出期間は、前記電流センサが検出する電流値が所定の値になったタイミングから定義される電磁弁異常検出装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記電磁弁の電磁弁温度を推定するための前記電磁弁温度と前記電磁弁の駆動電流の飽和電流値との関係、及び前記特徴量抽出部で求めた特徴量の値を前記基準温度での値に補正するための前記電磁弁温度と前記特徴量との関係を記憶するデータ記憶部を有する電磁弁異常検出装置。
【請求項6】
請求項2において、
前記電磁弁の電磁弁温度を推定するための前記電磁弁温度と前記電磁弁の駆動電流の飽和電流値との関係、前記電磁弁が配置された流路の流路内圧力を推定するための前記流路内圧力と前記基準温度下での前記所定の経過時間における電流値との関係、前記特徴量抽出部で求めた特徴量の値を前記基準温度での値に補正するための前記電磁弁温度と前記特徴量との関係、及び前記基準温度での特徴量の値を前記基準圧力での値に補正するための前記流路内圧力と前記特徴量との関係を記憶するデータ記憶部を有する電磁弁異常検出装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2において、
前記特徴量補正部及び前記開き状態推定部で推定された、前記電磁弁に関する状態に基づき、アラーム信号を出力する異常判定部を有する電磁弁異常検出装置。
【請求項8】
流路と、前記流路に配置された前記電磁弁とを備える送液ユニットを有する医用自動分析装置であって、
前記電磁弁を駆動する電磁弁駆動回路と、
請求項7に記載された電磁弁異常検出装置とを有し、
前記電磁弁異常検出装置が前記アラーム信号を出力したとき、操作画面にアラームまたは警告メッセージを表示する医用自動分析装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記電磁弁駆動回路は、前記電磁弁異常検出装置からの前記アラーム信号を受けて、前記電磁弁の回復動作を実行させる医用自動分析装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記回復動作は、前記アラーム信号が出力された前記電磁弁に関する状態に応じて異なる医用自動分析装置。
【請求項11】
請求項8において、
前記送液ユニットは、複数の前記電磁弁を備え、
前記電磁弁駆動回路は、直流電源と、複数の前記電磁弁に対応して設けられ、前記直流電源からの駆動電流の前記電磁弁への供給を制御する複数のリレーと、前記複数のリレーを開閉させるリレー回路とを備える医用自動分析装置。
【請求項12】
請求項11において、
前記電流センサは、前記直流電源と前記複数のリレーとの間に流れる電流値を検出する医用自動分析装置。
【請求項13】
請求項11において、
前記電流センサは、前記複数のリレーのいずれかと当該リレーに接続される電磁弁との間に流れる電流値を検出する医用自動分析装置。
【請求項14】
流路と、前記流路に配置された電磁弁とを備える送液ユニットを有する医用自動分析装置における前記電磁弁の異常を検出する電磁弁異常検出方法であって、
あらかじめ定められた検出期間における前記電磁弁の電磁弁開に伴う駆動電流パターンの特徴量を求め、
前記電磁弁の飽和電流値から前記電磁弁の電磁弁温度を推定し、前記特徴量の値を、推定された前記電磁弁温度に基づき基準温度での値に補正し、
前記電磁弁の電磁弁開に伴う駆動電流パターンの特徴量から前記電磁弁の開き状態を推定する推定モデルと前記基準温度での値に補正された前記特徴量の値とを用いて、前記電磁弁の開き状態を推定し、
推定された前記電磁弁の電磁弁温度または前記電磁弁の開き状態に基づき、異常と判定される場合にはアラーム信号を出力する電磁弁異常検出方法。
【請求項15】
流路と、前記流路に配置された電磁弁とを備える送液ユニットを有する医用自動分析装置における前記電磁弁の異常を検出する電磁弁異常検出方法であって、
あらかじめ定められた検出期間における前記電磁弁の電磁弁開に伴う駆動電流パターンの特徴量を求め、
前記電磁弁の電磁弁開に伴う駆動電流パターンの特徴量の一つとして、前記検出期間における所定の経過時間での電流値を抽出し、
前記電磁弁の飽和電流値から前記電磁弁の電磁弁温度を推定し、前記特徴量の値を、推定された前記電磁弁温度に基づき基準温度での値に補正し、
前記基準温度での値に補正した前記所定の経過時間における電流値から前記電磁弁が配置された流路の流路内圧力を推定し、前記基準温度での値に補正された特徴量の値を、推定された前記流路内圧力に基づき基準圧力での値に補正し、
前記電磁弁の電磁弁開に伴う駆動電流パターンの特徴量から前記電磁弁の開き状態を推定する推定モデルと前記基準温度及び前記基準圧力での値に補正された前記特徴量の値とを用いて、前記電磁弁の開き状態を推定し、
推定された前記電磁弁の電磁弁温度、前記流路内圧力または前記電磁弁の開き状態に基づき、異常と判定される場合にはアラーム信号を出力する電磁弁異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用自動分析装置などの流路開閉を行なう電磁弁の状態を監視する電磁弁異常検出装置、それを用いた医用自動分析装置および電磁弁異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療技術の急速な進歩に伴い、病院や検査センターなどの臨床検査室においては、体液中の特定成分の濃度を自動的に測定する各種医用自動分析装置が導入されており、中でも血液や尿中の成分で内臓の疾患を把握できる医用自動分析装置は、規模に問わず、医療施設にとって必要不可欠な装置になっている。医用自動分析装置の分析部は、試料分注、試薬分注、攪拌、測光、反応セルの洗浄、濃度換算等のデータ処理の順番に実施される。これら一連の動作には、駆動電流をON/OFFすることにより、流路内流体を止めたり、流したりする電磁弁が多数使われており、開閉動作の高信頼性や通過流体の高精度制御が要求される。
【0003】
電磁弁は流体を制御する必要のある装置で広く使用されている。特許文献1には、新たに位置センサや振動センサなどのセンサを追加せず、電磁弁の駆動電流を用いて電磁弁の開閉状態を推定する方法が開示されている。また、特許文献2には、電磁弁の駆動電流情報に基づき流路内圧力を推定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-141019号公報
【文献】特開2014-92068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現状の医用自動分析装置には、電磁弁の開閉異常を検出するセンサや手段が搭載されておらず、電磁弁に異常が生じた場合、分析結果から装置故障が判明するまで、患者の検体を無駄にしてしまうおそれがある。
【0006】
医用自動分析装置には多数の電磁弁が使用されているため、これらに対して逐一異常を検出するセンサを設けることはできず、先行技術文献のような電磁弁の駆動電流情報から異常検出することが望ましい。一方、従来の方法では、流量が大きく、電磁弁の駆動電流もかなり大きな電磁弁を対象としていると考えられ、それら開示の方法をそのまま適用することはできない。例えば、先行技術文献では完全な弁開または弁閉の状態を推定しているが、医用自動分析装置に用いられる電磁弁の駆動電流波形は小さく、駆動電流波形に様々な影響を与える要因が重畳されることによって、駆動電流波形の特徴が分かりにくくなっている。このため、電磁弁の駆動電流から電磁弁の状態を推定することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施態様である電磁弁異常検出装置は、電流センサが検出した電磁弁の電磁弁開に伴う駆動電流パターンから、電磁弁の異常を検出する電磁弁異常検出装置であって、あらかじめ定められた検出期間における電磁弁の電磁弁開に伴う駆動電流パターンの特徴量を求める特徴量抽出部と、電磁弁の飽和電流値から電磁弁の電磁弁温度を推定し、特徴量抽出部で求めた特徴量の値を、推定された電磁弁温度に基づき基準温度での値に補正する特徴量補正部と、電磁弁の電磁弁開に伴う駆動電流パターンの特徴量から電磁弁の開き状態を推定する推定モデルと特徴量補正部で補正された特徴量の値とを用いて、電磁弁の開き状態を推定する開き状態推定部とを有する。
【発明の効果】
【0008】
電磁弁の駆動電流情報に基づく特徴量を用いて電磁弁の開き状態を精度よく推定することが可能となる。
【0009】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電磁弁制御システムのブロック図である。
図2】非ダイアフラム式電磁弁の概略構造を示す図である。
図3】電磁弁開時の電磁弁駆動電流変化を示す図である。
図4】電磁弁温度Tごとの、電磁弁開時の電磁弁駆動電流変化を示す図である。
図5】電磁弁温度と飽和電流値との関係を示す図である。
図6】異物厚さFごとの、電磁弁開時の電磁弁駆動電流変化を示す図である。
図7図6の電流1次微分(勾配)を示す図である。
図8】異物厚さの推定方法について説明する図である。
図9A】異常判定フローチャートである。
図9B】電磁弁温度と特徴量(説明変数)との関係の例を示す図である。
図10】流路内圧力Pごとの、電磁弁開時の電磁弁駆動電流変化を示す図である。
図11】流路内圧力と経過時間C3における電磁弁駆動電流との関係を示す図である。
図12A】異常判定フローチャートである。
図12B】流路内圧力と特徴量(説明変数)との関係の例を示す図である。
図13】電磁弁制御システムのブロック図である。
図14】電磁弁制御システムのブロック図である。
図15図14の電磁弁制御システムの電磁弁異常検出装置を示す図である。
図16】医用自動分析装置の概略図である。
図17】電磁弁制御システムの別の実装例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合などを除き、必須のものではない。なお、各実施例に対応する図面において、同一構成物には同一の符号を付して、重複する説明については省略するものとする。
【0012】
図1は電磁弁制御システム101のブロック図である。電磁弁制御システム101は、主要な構成として、医用自動分析装置に搭載されている複数の電磁弁10、電磁弁駆動装置20、電磁弁異常検出装置30、電流センサ31を備えている。さらに、電磁弁駆動装置20は、主要な構成として、直流電源21、複数の電磁弁10に対応して設けられる複数のリレー23、リレー23を開閉させるリレー回路22、電磁弁開閉制御部24を備えている。
【0013】
リレー23の開閉に応じて、直流電源21からの電流が電磁弁10へ供給/遮断される。電磁弁10に接続されるリレー23は、電磁弁開閉制御部24によりリレー回路22を通じて制御され、電磁弁10は直流電源21からの電流により駆動される。電磁弁開閉制御部24は、CPU、DSP、RAM、ROM等、一般的なコンピュータとしてのハードウェアを備えており、ROMには、CPUによって実行される制御プログラム、DSPによって実行されるマイクロプログラムおよび各種データ等が格納されている。
【0014】
〈電磁弁の動作説明〉
医用自動分析装置には、ダイアフラム式と非ダイアフラム式の電磁弁が実装されている。ダイアフラム式電磁弁は、流路の開閉を行うバルブ部分と、それを動かす駆動部分とに分ける膜(ダイアフラム)があり、分析装置のサンプリング部分や医用機器、また金属を腐食させるような酸、化学薬品などのハンドリングに適している。非ダイアフラム電磁弁は、内部にダイアフラムがない電磁弁であり、開閉による内部体積の変化がなく、流路内脈動が小さく、耐圧性に優れる特徴がある。図2に非ダイアフラム式電磁弁の構造を示す。コイル11に電流が流れる(電圧印加)と、ポールピース12とプランジャー(可動鉄芯)13が磁化され、互いの吸引力によりプランジャー13が駆動される。この駆動方法は、ダイアフラム式電磁弁でも同じである。この駆動力がスプリング14の反発力より大きくなると、プランジャー13にセットされるゴム15は弁座16から離れ、流路中の流体が流れるようになる(電磁弁開状態)。なお、電磁弁全開までの移動距離はストローク17である。一方、電磁弁コイル11への電流印加を遮断することにより、駆動力が失われ、スプリング14の反発力により、プランジャー13およびゴム15を弁座16に戻して流路が閉じられ、流路中の流体が流れなくなる(電磁弁閉状態)。
【0015】
図3に電磁弁開に伴う電磁弁駆動電流の変化を示す。電源から電磁弁に供給される駆動電流は、電流供給開始後から上昇し、弁が開き始める、すなわち弁座を塞いでいるプランジャーにセットされたゴムが弁座から離れる、と同時に減少する。そして、プランジャーがポールピースに当たって吸着されると、電磁弁の駆動電流は、変曲点を経て再び上昇し、最終的には所定電流値に安定(飽和状態)する。飽和電流Isは、直流電源21の直流電圧Eをコイル抵抗Rで割った値となる。図中、プランジャー移動開始期間Daは駆動電流を供給開始してからプランジャーが移動を開始するまでの期間、プランジャー移動期間Dbはプランジャーが移動を開始してから指定ストローク移動して停止するまでの期間、吸引期間Dは、プランジャー移動開始期間Daとプランジャー移動期間Dbとの和である。
【0016】
図に示されるように、例えば、電磁弁に異物挟み込みが生じた場合には、電磁弁開動作時(立ち上がり)の駆動電流変動パターン(破線パターン)は、正常時の電磁弁開動作時の駆動電流変動パターン(実線パターン)とは異なるものとなる。また、電磁弁がコイル短絡などの理由により過熱が生じた場合の飽和電流量(破線パターン)は、正常時の飽和電流量(直線パターン)よりも低下する。このように、電磁弁開に伴う電磁弁の駆動電流パターンは電磁弁の状態に応じて変動し、また、複数の異常が生じた場合には、それぞれの異常に起因する駆動電流パターンの変動が重畳されて現れる。このことを利用して、本実施例では、電磁弁開に伴う電磁弁駆動電流パターンの変化から電磁弁に関する状態、具体的には電磁弁温度、流路内圧力、電磁弁開き状態を推定し、電磁弁の異常を検出する。
【0017】
〈電磁弁異常検出装置の構成〉
電磁弁異常検出装置30は、主要な構成として、特徴量抽出部32、特徴量補正部33、開き状態推定部34、電磁弁の異常検出に必要なデータを記憶するデータ記憶部35、異常判定部36を備えている。電磁弁異常検出装置30の各構成における動作の説明および処理内容については、後述する。
【0018】
〈電磁弁温度推定方法〉
電磁弁駆動電流パターンの変化から電磁弁温度を推定する方法について説明する。一般によく知られているように、電磁弁10のコイル抵抗値は、電磁弁温度によって変動する。ここで、基準温度T0として所定の温度を定め、基準温度T0における抵抗値などのパラメータをその「基準値」とする。電磁弁10に温度上昇が生じると、電磁弁コイルの抵抗値が大きくなる。電磁弁温度Tと電磁弁コイル抵抗値RTとの関係は、(式1)で表せる。
RT=R0×(1+α0(T-T0)) ・・・(式1)
ここで、α0は基準温度T0における電磁弁コイル銅線の抵抗温度係数であり、R0は電磁弁コイル抵抗基準値、すなわち基準温度T0における電磁弁コイル抵抗値である。
【0019】
(式1)によれば、例えば、基準温度T0に対して40℃の温度上昇が生じると、電磁弁コイル抵抗値RTは電磁弁コイル抵抗基準値R0の約1.15倍になる。なお、コイル素材がアルミ線などであっても、同じ計算式が適用できる。
【0020】
図4は、電磁弁温度T(T0<T1<T2)ごとに、電磁弁開に伴う電磁弁駆動電流の変化を示した図である。図から読み取れるように、基準温度T0における電磁弁駆動電流に比べ、より高い電磁弁温度のT1およびT2における電磁弁駆動電流は、(式1)に従って低下している。
【0021】
本実施例では、検出期間(この例では検出期間C1-C2)を定め、電磁弁開に伴う電磁弁駆動電流パターンを検出期間における駆動電流の特徴量として把握する。特徴量としては、検出期間における電流または電流微分の最大値、最小値、平均値、標準偏差、飽和電流値、変曲点値などが考えられる。このように検出期間を定めるのは、以下のような理由による。例えば、図4の例では、電磁弁駆動電流の立ち上がりでは電磁弁温度による電流量の違いはほとんどない。このような期間の電流値まで含めて駆動電流の特徴量を算出すると、特徴が希釈されてしまうおそれがある。また、電磁弁温度以外にも異常が生じていると図4のように電磁弁温度のみが変化する場合と異なり、その他の異常の影響も重畳されることにより、電磁弁駆動電流パターンそのものから駆動電流の特徴量を算出する期間を特定することは困難である。このため、電磁弁ごとに、電磁弁開に伴う電磁弁駆動電流パターンにおいて、電磁弁温度の影響が顕著に表れる期間を検出期間としてあらかじめ定めておく。なお、本実施例において「電磁弁ごと」、というのは、電磁弁開に伴う電磁弁駆動電流パターンが同一とみなされる電磁弁ごと、という意味であり、例えば同じ型番の電磁弁であれば、同一の検出期間を定めることができる。
【0022】
検出期間の両端であるC1、C2は正常動作時の電磁弁駆動電流パターンにおいて、電磁弁温度の影響が表れる期間を選択すればよいが、検出期間C1-C2には変曲点(吸引期間Dの終点)が含まれている必要があり、始点C1はプランジャー移動開始期間Daに含まれるタイミング、終点C2は駆動電流量が飽和電流値に達したタイミングに設定することが望ましい。
【0023】
また、検出期間C1-C2の時間計測の起点を電磁弁の駆動電流がトリガー電流I0となった時点として定義する。これにより、電磁弁異常検出装置30では、電磁弁駆動電流だけをモニターしながら、検出期間を特定し、検出期間における駆動電流の特徴量を算出できる利点がある。もちろん、電磁弁開閉制御部24によるリレー回路22の制御信号を受けて、トリガーとすることも可能である。
【0024】
図5は、電磁弁温度と電磁弁駆動電流の飽和電流値との関係を示す図である。飽和電流値Is=E/RTであり、直流電圧Eは一定、電磁弁コイル抵抗値RTは(式1)の関係を有することから、電磁弁駆動電流の飽和電流値Isは、(式2)に表されるような、電磁弁温度Tと反比例(電磁弁温度が高いほうが電磁弁駆動電流の飽和電流値が小さい)の関係になっている。
Is=k1T+b1 ・・・(式2)
(式2)において、k1は比例係数、b1は定数である。
【0025】
なお、検出期間C1-C2図4のように設定した場合、電磁弁駆動電流の飽和電流値は、電磁弁駆動電流の最大値に他ならない。したがって、検出期間C1-C2における電磁弁駆動電流の特徴量(この例では、最大値)から、温度センサを追加することなく、電磁弁温度を推定することができる。さらに、本実施例では、後述するように、電磁弁駆動電流情報から電磁弁温度以外の目的変数(電磁弁開き状態や流路内圧力)を推定するが、その目的変数に相関する特徴量を推定された温度に基づき補正することにより、電磁弁駆動電流情報から電磁弁温度の影響を排して、より正確に目的変数を推定することが可能になる。
【0026】
〈電磁弁開き状態推定〉
電磁弁駆動電流パターンの変化から電磁弁開き状態を推定する方法について説明する。図2に示した電磁弁において、ポールピース12とプランジャー13との間に異物が挟み込まれた場合、異物厚さが大きいと電磁弁開き度が小さくなり、その結果、流路内流体の流量が少なくなるという異常が発生する。そこで、電磁弁駆動電流パターンの検出期間における駆動電流の特徴量から電磁弁の開き状態、すなわち、挟み込んだ異物の厚さの推定を実施する。
【0027】
図6は、挟み込んだ異物の厚さF(F0<F1<F2)ごとに、電磁弁開に伴う電磁弁駆動電流の変化を示した図である。いずれの場合も電磁弁温度は同じである。図7は、図6の電磁弁駆動電流の1次微分(勾配)を示す図である。電磁弁の開き状態に大きな影響を受ける変曲点の位置や大きさは電磁弁駆動電流よりも、電磁弁駆動電流の1次微分に顕著に表れる。電磁弁駆動電流は、異物厚さの増大(F0<F1<F2)につれて、プランジャー移動に伴う駆動電流の低下は小さくなり、より早く飽和に至る。
【0028】
電磁弁の開き状態(異物厚さ)の推定は、あらかじめ電磁弁ごとに検出期間における駆動電流の特徴量に基づいて作成した推定モデルを用いる。具体的には、異物厚さFに対して、検出期間における駆動電流の特徴量に基づき、多変量解析などの手法により推定モデルを構築する。ここで、推定モデルは、特徴量と異物厚さとの対応関係を表す演算式である。例えば、一般化線形モデルによる推定モデルは、(式3)のように表せる。
Y=m0+m1V1+m2V2+・・・+mnVn ・・・(式3)
ここで、Yは推定モデルから推定される異物厚さ(目的変数)、V1~Vnは検出期間における駆動電流の特徴量(説明変数)、m0~mnは定数である。定数m0~mnは、電磁弁ごとに異なる値となる。なお、特徴量(説明変数)には異物厚さ(目的変数)と相関関係のある特徴量を用い、nの数も任意であるが、できるだけ少ない種類の説明変数で推定モデルを構築した方が推定モデルの誤差を少なくできる。
【0029】
図8は、一般化線形モデル手法を用いた異物厚さの推定方法について説明する図である。横軸は異物厚さの計測値、縦軸は推定モデルから推定される異物厚さYである。真の異物厚さ(計測値)は、精度100%の場合(推定誤差やバラツキのない場合)の推定線801の近傍に分布する。実運用における異物厚さ(流路開き度と反比例)の限界値M1は送液精度や送液量などにより決められる。推定誤差やバラツキがなければ、推定異物厚さYの上限をM1に対応する推定線801上のY1と設定できるが、実際には推定誤差やバラツキを無視できないため、推定異物厚さの上限をY2と設定する。つまり、推定異物厚さYが上限Y2を超えると、電磁弁を通過する流体量が要求送液精度より低下し、送液不足となるおそれがあるとする。
【0030】
ここでは、一般化線形モデル手法を推定モデルの構築手法の例として説明したが、異物厚さと駆動電流から抽出した特徴量との関係を示すモデル構築手法であれば、統計手法を用いたモデルなど、一般化線形モデル手法以外のモデル手法を用いてもよい。なお、上述したように、推定モデルに用いる説明変数V1~Vnは推定温度に基づく補正後の値を用いる。これにより、異物厚さ(目的変数)をより高精度に推定することが可能となる。
【実施例1】
【0031】
図9Aは、電磁弁異常検出装置30が実行する異常判定フローチャートである。この異常判定ルーチンは、電磁弁が稼働する医用自動分析装置が動作している間、所定のサンプリング周期ごとに実行される。これにより、医用自動分析装置の動作中に電磁弁に異常が生じた場合でも遅滞なくアラームが出力され、電磁弁異常による影響を最小限に抑制することができる。
【0032】
図9Aにおいて、電磁弁異常検出ルーチンが開始し(START)、電磁弁駆動電流計測が実行される(ステップS2)。具体的には、電磁弁異常検出装置30(図1参照)の特徴量抽出部32は、電流センサ31から電磁弁駆動電流値Iの入力を受け、電流値Iがトリガー電流I0となった時点からタイマによるカウントを開始し、あらかじめ定められた検出期間C1-C2における電磁弁駆動電流値Iを取得する。
【0033】
特徴量抽出部32は、取得した検出期間C1-C2の電磁弁駆動電流値Iのノイズ除去、微分処理などの処理を実施し(ステップS3)、所定の検出期間の電流および電流微分の最大値、最小値、平均値、標準偏差、変曲点値などの特徴量を算出する(ステップS4)。なお、ここに挙げた特徴量は例示であり、後続の電磁弁温度の推定や電磁弁の開き状態(異物厚さ)の推定に用いる特徴量についてのみ算出すればよい。
【0034】
次に、特徴量補正部33は、算出した電磁弁温度に相関する特徴量、具体的には検出期間C1-C2における電磁弁駆動電流値Iの最大値、を用いて電磁弁温度を推定し(ステップS5)、推定温度が設定限界温度より高い場合には、異常判定部36が電磁弁加熱アラーム信号を外部に出力する(ステップS6)。設定限界温度はデータ記憶部35に記憶されている。推定された温度が許容範囲にあれば、異物厚さ推定に用いる特徴量を温度補正する(ステップS7)。
【0035】
データ記憶部35には、あらかじめ電磁弁ごと、特徴量(説明変数)Viごとに、電磁弁温度に依存する特徴量(説明変数)Viの変化量の情報が記憶されている。例えば、図9Bに示すように、電磁弁温度に依存する特徴量(説明変数)Viの変化量が(式4)の関係として記憶されているとする。
Vi=k2T+b2 ・・・(式4)
(式4)において、k2は比例係数、b2は定数である。
【0036】
このとき、電磁弁温度の推定値がTe、特徴量(説明変数)Viの測定値がVieであるとすると、基準温度T0相当値に補正した特徴量(説明変数)ViであるVicは、(式5)により算出される。
Vic=Vie+k2(Te-T0) ・・・(式5)
以上は一例であって、補正方法を限定するものではない。あらかじめ、電磁弁ごとに、正常に動作する状態において、電磁弁温度を変化させて、所定の検出区間における電磁弁駆動電流の特徴量の変化を実測あるいはシミュレーションにより求め、電磁弁温度と電磁弁駆動電流の特徴量との関係を関係式あるいはテーブルとしてデータ記憶部35に格納し、関係式あるいはテーブルに応じた方法で温度補正を行う。
【0037】
次に、開き状態推定部34は、前述した推定モデルに基づき、特徴量抽出部32から取得した温度補正を行った電磁弁駆動電流の特徴量、および推定モデルの定数を用いて、(式3)の演算を実行して異物厚さを算出する(ステップS8)。推定モデルは、データ記憶部35に記憶されている。
【0038】
次に、異常判定部36は、推定モデルにより推定された異物厚さとデータ記憶部35に記憶されている基準値データとを比較する。推定異物厚さYが、基準値データである上限値Y2より大きいことを判定した場合(ステップS8がYES)、異常判定部36は、電磁弁に許容範囲を超えた異物が挟まれていることを表す異物挟みアラーム信号を外部に出力する(ステップS9)。
【0039】
異常判定されなかった場合(ステップS6またはステップS8がNO)は、本ルーチンの処理を終了する(END)。
【0040】
〈実施例1の効果〉
以上のように電磁弁の駆動電流値に基づく特徴量を用いて電磁弁温度を推定し、電磁弁の開き状態を精度よく推定することが可能となる。また、電磁弁に関する状態を可視化することにより、故障電磁弁の特定や電磁弁メンテナンスの省力化を実現できる。異種電磁弁が混在する構成であっても、電磁弁ごとに異常判定に必要な情報が記憶されているため、正しく判定が可能である。
【0041】
なお、前記電磁弁異常検出装置は、電磁弁駆動装置20のボード上に搭載してもよく、電磁弁駆動装置20の外付け装置として構成してもよい。また、検出期間の特徴量演算は、必要に応じてサンプリング周波数や演算量を調整してもよい。これにより、データ量を目的変数により大幅に削減でき、分析、診断作業も容易となる。さらに、蓄積されたデータに機械学習などを導入して、異物厚さ推定モデルの精度を高めることもできる。
【実施例2】
【0042】
実施例2では、電磁弁温度に加え、電磁弁駆動電流から、電磁弁が配置された流路の流路内圧力を算出し、算出した流路内圧力によって補正した所定の検出期間における電磁弁駆動電流値の特徴量を用いて電磁弁の開き状態を推定する。以下の説明においては、上述した実施例1に相当する部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略し、異なる内容を中心に説明する。
【0043】
図10は、流路内圧力(P-1<P0<P1)ごとに、電磁弁開に伴う電磁弁駆動電流の変化を示した図である。いずれの場合も電磁弁温度は同じとする。ここで、電磁弁駆動電流が変曲点(吸引期間Dの終点)から飽和電流値に達する前のある経過時間C3での駆動電流量に着目する。流路内圧力に依存して、変曲点(吸引期間Dの終点)近傍では電磁弁駆動電流パターンは大きく変化するものの、変曲点から同じ飽和電流値に収束するまでの間に次第に変曲点に達する時点のずれの影響は低減され、駆動電流の違いは流路内圧力の違いが支配的になってくる。
【0044】
図11は、流路内圧力と図10に示した経過時間C3における電磁弁駆動電流との関係を示す図である。図に示されるように、経過時間C3における電磁弁駆動電流IC3は、(式6)に示すような、流路内圧力Pと反比例(流路内圧力が高いほうが経過時間C3における電磁弁駆動電流が小さい)の関係になっている。
IC3=k3P+b3 ・・・(式6)
(式6)において、k3は比例係数、b3は定数である。実施例2では、経過時間C3における電磁弁駆動電流IC3を、検出区間C1-C2における電磁弁駆動電流値の特徴量として抽出する。そして、電磁弁開き状態を推定するにあたり、推定モデルに用いる特徴量を流路内圧力について基準圧力P0での値に補正した値とする。これにより、流路内圧力の影響を排してより高精度な電磁弁に関する状態の推定が可能になる。
【0045】
図12Aは、電磁弁異常検出装置30が実行する異常判定フローチャートである。この異常判定ルーチンは、電磁弁が稼働する医用自動分析装置が動作している間、所定のサンプリング周期ごとに実行される。
【0046】
図12Aにおいて、異常判定ルーチンの開始から温度補正(ステップS7)は図9Aのフローと同様である。ただし、特徴量抽出(ステップS4)には、流路内圧力の推定に必要な特徴量、具体的には経過時間C3における電磁弁駆動電流IC3の抽出が含まれ、温度補正(ステップS7)では、推定温度に基づく電磁弁駆動電流IC3の補正も含まれている。
【0047】
特徴量補正部33は、抽出した流路内圧力に相関する特徴量、具体的には、温度補正された、経過時間C3における電磁弁駆動電流IC3を用いて流路内圧力を推定し(ステップS10)、推定流路内圧力が設定限界圧力よりも高いあるいは低い場合には、異常判定部36が流路内圧力アラーム信号を外部に出力する(ステップS12)。設定流路内圧力はデータ記憶部35に記憶されている。推定された流路内圧力が許容範囲にあれば、異物厚さ推定に用いる特徴量(温度補正済)を基準圧力P0での値に圧力補正する(ステップS11)。
【0048】
データ記憶部35には、あらかじめ電磁弁ごと、特徴量(説明変数)Viごとに、流路内圧力に依存する特徴量(説明変数)Viの変化量の情報が記憶されている。例えば、図12Bに示すように、流路内圧力に依存する特徴量(説明変数)Viの変化量が(式7)の関係として記憶されているとする。なお、この相関は、電磁弁温度が基準温度T0下で求められたものである。
Vi=k4P+b4 ・・・(式7)
(式7)において、k4は比例係数、b4は定数である。
【0049】
このとき、流路内圧力の推定値がPe、特徴量(説明変数)Viの測定値がVieであるとすると、基準流路内圧力P0相当値に補正した特徴量(説明変数)ViであるVicは、(式8)により算出される。
Vic=Vie+k4(Pe-P0) ・・・(式8)
以上は一例であって、補正方法を限定するものではない。あらかじめ、電磁弁ごとに、基準温度T0下で、正常に動作する状態において、流路内圧力を変化させて、所定の検出区間における電磁弁駆動電流の特徴量の変化を実測あるいはシミュレーションにより求め、流路内圧力と電磁弁駆動電流の特徴量との関係を関係式あるいはテーブルとしてデータ記憶部35に格納し、関係式あるいはテーブルに応じた方法で圧力補正を行う。
【0050】
以下、異物厚さの算出(ステップS8)から異常判定ルーチンの終了は図9Aのフローと同様である。ただし、異物厚さの算出(ステップS8)では、特徴量抽出部32から取得した温度補正及び圧力補正を行った電磁弁駆動電流の特徴量が用いられる。
【0051】
〈実施例2の効果〉
以上のように実施例2ではさらに、電磁弁の駆動電流値に基づく特徴量を用いて流路内圧力を推定し、さらに電磁弁の開き状態を精度よく推定することが可能となる。
【0052】
以下、実施例1または実施例2として示した電磁弁制御システムの変形例について説明する。
【0053】
図13に示す電磁弁制御システム102では、電磁弁異常検出装置30は、アラーム信号を電磁弁開閉制御部24に供給する。供給されたアラーム信号に応じて、電磁弁開閉制御部24は、該当する電磁弁に対する回復動作を実行する。例えば、電磁弁過熱アラームを受けた場合には、次回稼働までの時間を遅らせることによって、電磁弁過熱故障を防ぐことが可能となる。また、異物挟み込みアラームを受けた場合には、電磁弁開閉を繰り返し実施することにより、一時的に挟まれた異物を流路内に流すことが可能となる。このように、電磁弁故障による分析装置の停止を防ぐため、電磁弁制御システム102は自動的に、検出された電磁弁の不具合を解消させる動作を実行する。
【0054】
図14に示す電磁弁制御システム103は、電流センサ31が電磁弁ごとに設けられる。すなわち、電磁弁10-i(i=1~N)に流れる電流値Iiを電流センサ31-iが検出する。一方、図15に示されるように、電磁弁異常検出装置301は電磁弁ごとに駆動電流Iiに基づき異常検出可能に構成され、実施例1または実施例2で説明した異常検出方法によって電磁弁iの異常を検出する。本構成により、複数の電磁弁が同時に開閉動作される場合であっても、それぞれの電磁弁駆動電流情報によって、電磁弁の異常を推定することが可能となる。
【0055】
図16に、本実施例の電磁弁制御システムを組み込んだ医用自動分析装置の概略図を示す。医用自動分析装置110は、流路と流路に配置される電磁弁とを備える送液ユニット111に組み込まれる電磁弁の異常を検出可能な電磁弁制御システムが組み込まれている。電磁弁制御システムは、ここでは実施例1または実施例2の構成を示しているが、変形例、あるいは実施例と変形例の組み合わせであってもよい。
【0056】
電磁弁異常検出装置30からのアラーム信号に応じて、自動分析装置110の制御操作画面(パネル)にアラームまたは警告メッセージを表示する。医用自動分析装置の電磁弁の電流情報に基づき、電磁弁の異常状態を推定することにより、電磁弁それぞれの交換時期の最適化やメンテナンスの省力化をより効率的に実現できる。
【0057】
図17を用いて、本実施例の電磁弁制御システムの別の実装例を説明する。産業用コントローラ130は、ネットワークで結合された医用自動分析装置120と連携し、各装置の制御や各種センサからのデータの収集と、上位の情報システム150とのシームレスな垂直統合とを実現する。また、産業用コンピュータの機能とPLC(Programmable Logic Controller)のオープン統合開発環境を一台に集約している。医用自動分析装置120を個々に制御するだけでなく、各装置からの情報を収集・分析することで、複数の医用自動分析装置120を利用して検査を実施している臨床検査室全体の最適化を図る。
【0058】
そのような垂直統合がなされた環境において、産業用コントローラ130は、情報収集部131、電磁弁異常検出部132を備えている。医用自動分析装置120はそれぞれ、電磁弁10-1~Nを備えている。産業用コントローラ130の情報収集部131は、各自動分析装置120の電磁弁駆動装置20から電磁弁駆動電流値Iを収集する。産業用コントローラ130の電磁弁異常検出部132は、実施例あるいは変形例として説明した電磁弁異常検出装置と同様の構成を有し、電磁弁の異常を検出する。
【0059】
このように、ネットワークに接続される複数の医用自動分析装置について、産業用コントローラにおいて各医用自動分析装置が保有する複数の電磁弁のそれぞれについて異常状態を推定することが可能となるため、それぞれの医用分析装置のそれぞれの電磁弁の交換時期の最適化やメンテナンスの省力化をより効率的に実現できる。
【0060】
本発明は、前述した実施例、変形例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。前述した実施例、あるいは変形例は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0061】
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について削除し、もしくは他の構成を追加・置換をすることが可能である。
【0062】
また、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆どすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10:電磁弁、11:コイル、12:ポールピース、13:プランジャー(可動鉄芯)、14:スプリング、15:ゴム、16:弁座、17:ストローク、20:電磁弁駆動装置、21:直流電源、22:リレー回路、23:リレー、24:電磁弁開閉制御部、30:電磁弁異常検出装置、31:電流センサ、32:特徴量抽出部、33:特徴量補正部、34:開き状態推定部、35:データ記憶部、36:異常判定部、101~103:電磁弁制御システム、110, 120:医用自動分析装置、111:送液ユニット、130:産業用コントローラ、131:情報収集部、132:電磁弁異常検出部、150:クラウド・上位システム、301:電磁弁異常検出装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17