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特許7382503感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、パターン形成方法、レジスト膜、電子デバイスの製造方法、化合物、化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、パターン形成方法、レジスト膜、電子デバイスの製造方法、化合物、化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/039 20060101AFI20231109BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20231109BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20231109BHJP
   C07C 309/17 20060101ALI20231109BHJP
   C07C 381/12 20060101ALI20231109BHJP
   C07C 303/22 20060101ALI20231109BHJP
   C07C 309/06 20060101ALI20231109BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
G03F7/039 601
G03F7/038 601
G03F7/004 503A
C07C309/17
C07C381/12
C07C303/22
C07C309/06
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022527592
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2021016156
(87)【国際公開番号】W WO2021241086
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2020094485
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】後藤 研由
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 暁
(72)【発明者】
【氏名】牛山 愛菜
(72)【発明者】
【氏名】小島 雅史
(72)【発明者】
【氏名】白川 三千紘
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-114822(JP,A)
【文献】特開2000-034274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/039
G03F 7/038
G03F 7/004
C07C 309/17
C07C 381/12
C07C 303/22
C07C 309/06
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸の作用により分解して極性が増大する基を有する繰り返し単位を有する樹脂を含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、前記樹脂とは別に、一般式(1)で表されるカチオンを少なくとも1つ有する化合物を更に含むか、又は、
前記樹脂が、前記繰り返し単位とは別に、一般式(1)で表されるカチオンを有する繰り返し単位を更に有する、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】

一般式(1)中、Xd1は、硫黄原子又はヨウ素原子を表す。Rd1は、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルケニル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を表す。また、mが2を表す場合、2つのRd1は互いに結合して、環を形成していてもよい。Ld1は、単結合又は2価の連結基を表す。Ard1は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基を表す。Xd2は、一般式(1-1)で表される基、又は、酸の作用により脱離する脱離基を表す。
一般式(1-1) *-Ld2-Rd2
一般式(1-1)中、Ld2は、単結合又は2価の連結基を表す。Rd2は、酸の作用により分解して極性が増大する基を表す。*は、結合位置を表す。
d1が硫黄原子を表す場合、nは1~3の整数を表し、mは0~2の整数を表し、m+nは3である。Xd1がヨウ素原子を表す場合、nは1又は2を表し、mは0又は1を表し、m+nは2である。pは1~5の整数を表す。
但し、前記一般式(1)中、nが2~3の整数を表すか、又は、pが2~5の整数を表す。
【請求項2】
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、前記一般式(1)で表されるカチオンを少なくとも1つ有する化合物を含み、
前記一般式(1)で表されるカチオンを少なくとも1つ有する化合物が、一般式(2)で表される化合物、及び、一般式(3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
一般式(2) Z
一般式(2)中、Z は、前記一般式(1)で表されるカチオンを表す。Y は、1価の有機アニオンを表す。
【化2】

一般式(3)中、Z はカチオンを表し、Z の少なくとも1つが前記一般式(1)で表されるカチオンを表す。Y は、アニオン性官能基を表す。Lは、q価の連結基を表す。qは2以上の整数を表す。
【請求項3】
d1が硫黄原子である、請求項1又は2に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
前記一般式(1)中、酸の作用により分解して極性が増大する基が、一般式(a-1)で表される基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化3】

一般式(a-1)中、Ra1は、酸の作用により脱離する脱離基を表す。*は結合位置を表す。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成された、レジスト膜。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を露光する工程と、
現像液を用いて、前記露光されたレジスト膜を現像し、パターンを形成する工程と、を有するパターン形成方法。
【請求項7】
請求項に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、パターン形成方法、レジスト膜、電子デバイスの製造方法、化合物、及び化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit、集積回路)及びLSI(Large Scale Integrated circuit、大規模集積回路)等の半導体デバイスの製造プロセスにおいては、感光性組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。
リソグラフィーの方法として、感光性組成物によりレジスト膜を形成した後、得られた膜を露光して、その後、現像する方法が挙げられる。
特許文献1では、感光性組成物に使用される酸発生剤として所定の化合物が開示されており、例えば、以下の化合物が例示されている。
【0003】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-019028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に開示されている上記化合物などの特性について具体的に検討したところ、特許文献1に記載の化合物を含む感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、得られるパターンのLWR(line width roughness)性能に改善の余地があることが分かった。
【0006】
そこで、本発明は、LWR性能に優れるパターンを得られる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する、レジスト膜、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法、化合物、及び化合物の製造方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
(1) 酸の作用により分解して極性が増大する基を有する繰り返し単位を有する樹脂を含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、樹脂とは別に、後述する一般式(1)で表されるカチオンを少なくとも1つ有する化合物を更に含むか、又は、
樹脂が、繰り返し単位とは別に、後述する一般式(1)で表されるカチオンを有する繰り返し単位を更に有する、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
(2) 感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、一般式(1)で表されるカチオンを少なくとも1つ有する化合物を含み、
一般式(1)で表されるカチオンを少なくとも1つ有する化合物が、後述する一般式(2)で表される化合物、及び、後述する一般式(3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、(1)に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
(3) Xd1が硫黄原子である、(1)又は(2)に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
(4) 一般式(1)中、酸の作用により分解して極性が増大する基が、後述する一般式(a-1)で表される基である、(1)~(3)のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
(5) 一般式(1)中、nが2~3の整数、又はpが2~5の整数を表す、(1)~(4)のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
(6) (1)~(5)のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成された、レジスト膜。
(7) (1)~(5)のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、
レジスト膜を露光する工程と、
現像液を用いて、露光されたレジスト膜を現像し、パターンを形成する工程と、を有するパターン形成方法。
(8) (7)に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
(9) 後述する一般式(1)で表されるカチオンを少なくとも1つ有する化合物。
(10) 後述する一般式(2)で表される化合物、又は、後述する一般式(3)で表される化合物である、(9)に記載の化合物。
(11) Xd1が硫黄原子である、(9)又は(10)に記載の化合物。
(12) 一般式(1)中、酸の作用により分解して極性が増大する基が、後述する一般式(a-1)で表される基である、(9)~(11)のいずれかに記載の化合物。
(13) 一般式(1)中、nが2~3の整数、又はpが2~5の整数である、(9)~(12)のいずれかに記載の化合物。
(14) (9)~(13)のいずれかに記載の一般式(1)で表されるカチオンを少なくとも1つ有する化合物の製造方法であって、
塩基性化合物の存在下、後述する一般式(4)で表されるカチオンを少なくとも1つ有する化合物と、後述する一般式(5)で表される化合物とを反応させて、一般式(1)で表されるカチオンを少なくとも1つ有する化合物を製造する、化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、LWR性能に優れるパターンを得られる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を提供できる。
また、本発明によれば、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する、レジスト膜、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法、化合物、及び化合物の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態の一例を説明する。
本明細書における「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換又は無置換を記していない表記は、置換基を有していない基と共に置換基を有する基をも含む。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも含む。
置換基は、特に断らない限り、1価の置換基が好ましい。
本明細書中における「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
【0011】
本明細書におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0012】
本明細書における表記される2価の基の結合方向は、特に断らない限り制限されない。例えば、「X-Y-Z」なる一般式で表される化合物中の、Yが-COO-である場合、Yは、-CO-O-であってもよく、-O-CO-であってもよい。また、上記化合物は「X-CO-O-Z」であってもよく「X-O-CO-Z」であってもよい。
【0013】
本明細書における「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを含む総称であり、「アクリル及びメタクリルの少なくとも1種」を意味する。同様に「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種」を意味する。
【0014】
本明細書における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光: Extreme Ultraviolet)、X線、及び電子線(EB:Electron Beam)等を意味する。本明細書における「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。
本明細書における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザー(ArFエキシマレーザー等)に代表される遠紫外線、X線、及びEUV光等による露光のみならず、電子線、及びイオンビーム等の粒子線による描画も含む。
【0015】
本明細書における樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(以下、「分子量分布」ともいう。)(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー製HLC-8120GPC)によるGPC測定(溶剤:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μL、カラム:東ソー社製TSK gel Multipore HXL-M、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率検出器(Refractive Index Detector))によるポリスチレン換算値として定義される。
【0016】
1Åは1×10-10mである。
【0017】
本明細書中における酸解離定数(pKa)とは、水溶液中でのpKaを表し、具体的には、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求められる値である。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示す。
【0018】
ソフトウェアパッケージ1: Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)。
【0019】
一方で、pKaは、分子軌道計算法によっても求められる。具体的には、熱力学サイクルに基づいて、溶剤中におけるH解離自由エネルギーを計算して算出する手法が挙げられる。(なお、本明細書において、上記溶剤としては、通常は水を使用し、水ではpKaを求められない場合には、DMSO(ジメチルスルホキシド)を使用する。)
解離自由エネルギーの計算方法については、例えば、DFT(密度汎関数法)により計算できるが、他にも様々な手法が文献等で報告されており、これに制限されるものではない。なお、DFTを実施できるソフトウェアは複数存在するが、例えば、Gaussian16が挙げられる。
【0020】
本明細書におけるpKaとは、上述した通り、ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を計算により求められる値を指すが、この手法によりpKaが算出できない場合には、DFT(密度汎関数法)に基づいてGaussian16により得られる値を採用するものとする。
【0021】
[感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物]
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以下、「レジスト組成物」ともいう。)について説明する。
本発明のレジスト組成物は、ポジ型のレジスト組成物であってもよく、ネガ型のレジスト組成物であってもよい。また、アルカリ現像用のレジスト組成物であってもよく、有機溶剤現像用のレジスト組成物であってもよい。
本発明の組成物は、典型的には、化学増幅型のレジスト組成物である。
【0022】
本発明のレジスト組成物は、酸の作用により分解して極性が増大する基を有する繰り返し単位(以下、「酸分解性基を有する繰り返し単位」ともいう。)を有する樹脂(以下、「酸分解性樹脂」ともいう。)を含む、レジスト組成物であって、レジスト組成物が、酸分解性樹脂とは別に、後述する一般式(1)で表されるカチオン(以下、「特定カチオン」ともいう。)を少なくとも1つ有する化合物(以下、「特定化合物」ともいう。)を更に含むか、又は、酸分解性樹脂が、酸分解性基を有する繰り返し単位とは別に、後述する一般式(1)で表されるカチオンを有する繰り返し単位(以下、「特定繰り返し単位」ともいう。)を更に有する、レジスト組成物である。
言い換えると、本発明のレジスト組成物は、酸分解性樹脂及び特定化合物を含むか、又は、特定繰り返し単位を有する酸分解性樹脂を含む。
【0023】
このような構成で本発明の課題が解決されるメカニズムは明らかではないが、以下のように、推測される。なお、以下では特定化合物を使用する態様を例にして説明する。
特定化合物は、通常、光酸発生剤として作用する。特定化合物は、所定の位置に硫黄原子を含むため、カチオンの極性が特許文献1に記載される化合物よりも低減され、特定化合物同士の凝集などが抑制され、酸分解性樹脂との相溶性にも優れているため、形成されたパターンのLWR性能が良好となる。特に、酸分解性樹脂から生じる極性基と共に、特定化合物が有する酸分解性基が分解して極性基を生じることにより、露光部のアルカリ現像液に対する溶解性の向上、及び有機溶剤現像液に対する溶解液の低下がみられ、ポジ型及びネガ型のいずれにおいてもLWR性能が向上する傾向がある。
以下、本明細書において、LWR性能により優れるパターンを得られることを、本発明の効果が優れるともいう。
【0024】
〔レジスト組成物〕
以下、レジスト組成物が含み得る成分について詳述する。
【0025】
<一般式(1)で表されるカチオンを少なくとも1つ有する化合物>
本発明のレジスト組成物は、特定化合物を含むか、後述する特定繰り返し単位を有する酸分解性樹脂を含む。以下では、まず、特定化合物について詳述する。
【0026】
特定化合物は、光酸発生剤又は酸拡散抑制剤として作用する。光酸発生剤は、活性光線又は放射線(好ましくはEUV光又はArF)の照射(露光)により酸を発生する化合物である。酸拡散制御剤は、光酸発生剤から生じた酸をトラップするクエンチャーとして作用し、レジスト膜中における酸の拡散現象を制御する化合物である。
【0027】
特定化合物が光酸発生剤として作用する場合、特に制限されないが、特定化合物から発生する酸のpKaが、レジスト組成物中の後述する酸拡散制御剤から発生する酸のpKaよりも小さい場合が多い。特定化合物が光酸発生剤として作用する場合、後述する酸分解性樹脂を、酸の作用により分解できる場合が多い。
特定化合物が酸拡散制御剤として作用する場合、特に制限されないが、特定化合物から発生する酸のpKaが、レジスト組成物中に別途含まれる光酸発生剤から発生する酸のpKaよりも大きい場合が多い。特定化合物が酸拡散制御剤として作用する場合、後述する酸分解性樹脂を、酸の作用により分解できない場合が多い。
つまり、特定化合物は他のレジスト組成物に含まれる成分との相対関係によって光酸発生剤又は酸拡散制御剤として作用できる。
【0028】
特定化合物より発生する酸の体積は特に制限されないが、露光で発生した酸の非露光部への拡散を抑制し、解像性を良好にする点から、240Å以上が好ましく、305Å以上がより好ましく、350Å以上が更に好ましく、400Å以上が特に好ましい。なお、感度又は塗布溶剤への溶解性の点から、特定化合物より発生する酸の体積は、1500Å以下が好ましく、1000Å以下がより好ましく、700Å以下が更に好ましい。
上記体積の値は、富士通株式会社製の「WinMOPAC」を用いて求める。上記体積の値の計算は、まず、各例に係る酸の化学構造を入力し、次に、この構造を初期構造としてMM(Molecular Mechanics)3法を用いた分子力場計算により、各酸の最安定立体配座を決定し、その後、これら最安定立体配座についてPM(Parameterized Model number)3法を用いた分子軌道計算を行って、各酸の「accessible volume」を計算できる。
【0029】
特定化合物は、露光により、酸(好ましくは、有機酸)を発生する化合物であることが好ましい。
上記酸として、例えば、スルホン酸(脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸、及び、カンファースルホン酸等)、カルボン酸(脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、及び、アラルキルカルボン酸等)、カルボニルスルホニルイミド酸、ビス(アルキルスルホニル)イミド酸、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチド酸等が挙げられる。
【0030】
特定化合物より発生する酸の構造は特に制限されないが、酸の拡散を抑制し、解像性を良好にする点で、特定化合物より発生する酸と後述する酸分解性樹脂との間の相互作用が強いことが好ましい。この点から、光酸発生剤より発生する酸が有機酸である場合、有機酸は、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、カルボニルスルホニルイミド酸基、ビススルホニルイミド酸基、及びトリススルホニルメチド酸基等の有機酸基以外に、更に極性基を有するのが好ましい。
極性基としては、例えば、エーテル基、エステル基、アミド基、アシル基、スルホ基、スルホニルオキシ基、スルホンアミド基、チオエーテル基、チオエステル基、ウレア基、カーボネート基、カーバメート基、水酸基、及びメルカプト基が挙げられる。
発生する酸が有する極性基の数は特に制限されないが、1個以上が好ましく、2個以上がより好ましい。ただし、過剰な現像を抑制する点から、極性基の数は、6個未満が好ましく、4個未満がより好ましい。
【0031】
特定化合物は、一般式(1)で表されるカチオンを少なくとも1つ有する化合物である。
特定化合物が有する一般式(1)で表されるカチオンの数は特に制限されず、1つ以上であればよく、2つ以上であってもよい。
特定化合物が一般式(1)で表されるカチオンを2つ以上有する場合、その数は2~3つが好ましい。
【0032】
【化2】
【0033】
一般式(1)中、Xd1は、硫黄原子又はヨウ素原子を表す。
なかでも、本発明の効果が優れる点で、Xd1は、硫黄原子が好ましい。
【0034】
d1が硫黄原子を表す場合、nは1~3の整数を表し、mは0~2の整数を表し、m+nは3である。Xd1がヨウ素原子を表す場合、nは1又は2を表し、mは0又は1を表し、m+nは2である。
【0035】
pは1~5の整数を表す。
なかでも、本発明の効果が優れる点で、pは1~4の整数が好ましく、1~3の整数がより好ましく、1が更に好ましい。
なお、nが2以上の場合、複数のpは同一であっても異なっていてもよい。
また、本発明の効果がより優れる点で、nは2~3、又はpは2~5が好ましく、nは2~3、又はpは2~3がより好ましい。
【0036】
d1は、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルケニル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。
なかでも、Rd1は、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基が好ましく、置換基を有していてもよいアリール基がより好ましい。
d1で表される置換基を有していてもよいアリール基は、単環又は多環であってもよい。なかでも、上記アリール基は、単環が好ましい。また、上記アルキル基、又はアルケニル基は、環状が好ましい。
d1は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。
d1が有する置換基は、ヘテロ原子を有していてもよいアルキル基が好ましく、酸素原子及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも1種を有するアルキル基がより好ましい。
d1で表される基の炭素数は、30以下が好ましく、25以下がより好ましく、20以下が更に好ましい。上記炭素数の下限は特に制限されないが、3以上が好ましい。
mが2を表す場合、2つのRd1は互いに結合して、環を形成していてもよい。上記によって形成される環の環員数は、5又は6が好ましい。Rd1が互いに結合して形成する環は、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又はカルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置換されていてもよい。
【0037】
d1は、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、Ld1は単結合が好ましい。
d1で表される2価の連結基としては、例えば、-O-、-CO-、-COO-、-S-、-NH-、CS-、-SO-、―SO-、置換基を有していてもよい炭化水素基(例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、及びアリーレン基等)、及びこれらの複数が連結した連結基等が挙げられる。
なかでも、上記2価の連結基は、置換基を有していてもよい炭化水素基を有することが好ましく、メチレン基、エチレン基、又はプロピレン基を有することがより好ましい。
【0038】
Ard1は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基を表す。
芳香族炭化水素環基は、単環又は多環であってもよい。なかでも、単環が好ましい。
Ard1で表される芳香族炭化水素環基としては、例えば、ベンゼン環基、ナフタレン環基、及びアントラセン環基が挙げられる。なかでも、上記芳香族炭化水素環基は、ベンゼン環基、又はナフタレン環基が好ましく、ベンゼン環基がより好ましい。
Ard1で表される芳香族炭化水素環基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。なかでも、上記芳香族炭化水素環基は、無置換が好ましい。
上記芳香族炭化水素環基が有する置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、及びハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基が挙げられる。なかでも、上記置換基としては、無置換の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。
【0039】
d2は、一般式(1-1)で表される基、又は、酸の作用により脱離する脱離基を表す。一般式(1-1)中、*は結合位置を表す。
一般式(1-1) *-Ld2-Rd2
一般式(1-1)中、Ld2は、単結合又は2価の連結基を表す。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、Ld2は2価の連結基が好ましい。
d2で表される2価の連結基としては、上述したLd1で例示した2価の連結基が挙げられる。
【0040】
d2は、酸の作用により分解して極性が増大する基(以下、「酸分解性基」ともいう。)を表す。
酸分解性基とは、酸の作用により分解して極性基を生じる基をいう。酸分解性基は、酸の作用により脱離する脱離基によって、極性基が保護された構造を有することが好ましい。つまり、特定化合物は、酸の作用により分解し、極性基を生じる基を有する。酸の作用により極性が増大してアルカリ現像液に対する溶解度が増大し、有機溶剤に対する溶解度が減少する。
【0041】
極性基としては、アルカリ可溶性基が好ましく、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及びトリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基が挙げられる。
なかでも、極性基としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、フェノール性水酸基、及びスルホン酸基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、カルボキシル基、ヒドロキシル基、又はフェノール性水酸基がより好ましい。
【0042】
酸の作用により脱離する脱離基としては、例えば、一般式(S1)~(S3)で表される基が挙げられる。
一般式(S1):-C(RxS1)(RxS2)(RxS3
一般式(S2):-C(=O)OC(RxS1)(RxS2)(RxS3
一般式(S3):-C(RS1)(RS2)(ORS3
【0043】
一般式(S1)及び(S2)中、RxS1~RxS3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基(単環若しくは多環)、又は、置換基を有していてもよいアリール基(単環若しくは多環)を表す。
なかでも、RxS1~RxS3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、RxS1~RxS3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい直鎖状のアルキル基がより好ましい。
RxS1~RxS3のうち、2つが結合して、単環又は多環を形成してもよい。
RxS1~RxS3のアルキル基としては、tert-ブチル基、tert-ペプチル基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、及びイソブチル基等の炭素数1~10のアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又はノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
RxS1~RxS3のうち、2つが結合して形成される環としては、シクロアルキル基が好ましい。RxS1~RxS3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基若しくはシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又はノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、若しくはアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましく、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基がより好ましい。
RxS1~RxS3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、フッ素原子以外の酸素原子等のヘテロ原子、又はカルボニル基等のフッ素原子以外のヘテロ原子を有する基で置換されていてもよい。
【0044】
一般式(S3)中、RS1~RS3は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。RS2~RS3は、互いに結合して環を形成してもよい。1価の有機基としては、置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及び置換基を有していてもよいシクロアルキル基が挙げられる。RS1としては、水素原子も好ましい。
なお、上記アルキル基、及び上記シクロアルキル基には、酸素原子等のヘテロ原子及び/又はカルボニル基等のヘテロ原子を有する基が含まれていてもよい。例えば、上記アルキル基、及び上記シクロアルキル基は、例えば、メチレン基の1つ以上が、酸素原子等のヘテロ原子及び/又はカルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置換されていてもよい。
また、RS3は、繰り返し単位の主鎖が有する別の置換基と互いに結合して、環を形成してもよい。
【0045】
酸分解性基としては、一般式(a-1)~(a-5)で表される基が好ましく、一般式(a-1)又は(a-2)で表される基がより好ましく、一般式(a-1)で表される基が更に好ましい。
【0046】
【化3】
【0047】
一般式(a-1)中、Ra1は、酸の作用により脱離する脱離基を表す。*は結合位置を表す。
酸の作用により脱離する脱離基としては、上述した、一般式(S1)~(S3)で表される基が挙げられる。
なかでも、Ra1は、置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表すことが好ましい。
【0048】
a1で表される置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基は、本発明の効果がより優れる点で、置換基を有していてもよい分岐鎖状のアルキル基が好ましい。
上記アルキル基は、置換基を有する直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基であってもよく、無置換の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基であってもよい。上記アルキル基が有する置換基としては、酸素原子等のヘテロ原子、又は酸素原子等のヘテロ原子を含むアルキル基が好ましい。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、上記アルキル基としては、無置換の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましい。
上記アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、2~10がより好ましく、2~8が更に好ましい。
【0049】
a1で表されるアルキル基としては、例えば、tert-ブチル基、tert-ヘプチル基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、n-オクチル基、1-メチルヘプチル基、及び2-エチルヘキシル基が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、Ra1で表されるアルキル基は、tert-ブチル基、又はtert-ヘプチル基が好ましい。
【0050】
a1で表される置換基を有していてもよいシクロアルキル基は、単環又は多環であってもよい。
上記シクロアルキル基は、置換基を有するシクロアルキル基であってもよく、無置換のシクロアルキル基であってもよい。なかでも、置換基を有するシクロアルキル基が好ましい。
上記シクロアルキル基が有する置換基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキル基、及び置換基を有していてもよいアリール基が挙げられる。
なかでも、炭素数1~6のアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基が好ましく、メチル基、又はエチル基がより好ましい。
上記シクロアルキル基の炭素数は、4~25が好ましく、4~20がより好ましく、4~15が更に好ましい。
【0051】
a1で表されるシクロアルキル基としては、例えば、メチルシクロペンチル基若しくはエチルシクロペンチル基等のシクロペンチル基、及びメチルシクロヘキシル基若しくはエチルシクロヘキシル基等のシクロヘキシル基;シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びメチルアダマンチル基若しくはエチルアダマンタン基等のアダマンタン基が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、Ra1で表されるシクロアルキル基は、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びアダマンタン基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、メチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、メチルアダマンチル基、又はエチルアダマンタン基がより好ましい。
【0052】
【化4】
【0053】
一般式(a-2)中、*は結合位置を表す。Ra2は、置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。
【0054】
a2で表される置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基としては、上述したRa1で表される置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基と同義である。
a2で表される置換基を有していてもよいシクロアルキル基としては、例えば、上述したRa1で表される置換基を有していてもよいシクロアルキル基が挙げられる。
【0055】
a3は、水素原子、置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。
【0056】
a3で表される置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基としては、上述したRa1で表される置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基と同義である。
a3で表される置換基を有していてもよいシクロアルキル基としては、上述したRa1で表される置換基を有していてもよいシクロアルキル基と同義である。
【0057】
a2及びRa3は、互いに結合して環を形成していてもよい。
a2及びRa3が互いに結合して形成される環は、単環又は多環であってもよい。なかでも、単環が好ましい。
a2及びRa3が互いに結合して形成される単環としては、例えば、炭素数3~6のシクロアルカンが挙げられる。より具体的には、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、及びシクロへキサン環が挙げられる。上記環中の炭素原子の一部は、酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0058】
【化5】
【0059】
一般式(a-3)中、*は結合位置を表す。
a4は、酸の作用により脱離する脱離基を表す。
脱離基としては、例えば、上述した、一般式(S1)~(S3)で表される基が挙げられる。
【0060】
【化6】
【0061】
一般式(a-4)中、*は結合位置を表す。
a5及びRa6は、それぞれ独立に、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。
a5及びRa6は、互いに結合して、単環(例えば、脂肪族炭化水素環)又は多環を形成してもよい。
【0062】
【化7】
【0063】
一般式(a-5)中、*は結合位置を表す。
a7及びRa8は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。
【0064】
d2で表される酸の作用により脱離基の種類は特に制限されず、公知の脱離基が挙げられる。なお、一般式(1)中の-S-Xd2で表される基から、Xd2で表される酸の作用により脱離基が脱離した際には、SH基(チオ―ル基)が形成される。
脱離基としては、例えば、上述した、一般式(S1)~(S3)で表される基が挙げられる。
【0065】
(有機アニオン)
特定化合物は、有機アニオンを含むことが好ましい。
有機アニオンとしては、1又は2価以上の有機アニオンであってもよい。なかでも、有機アニオンは、1~3価が好ましい。
有機アニオンとは、求核反応を起こす能力が著しく低いアニオンが好ましく、具体的には非求核性アニオンが挙げられる。
【0066】
非求核性アニオンとしては、例えば、スルホン酸アニオン(脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、及びカンファースルホン酸アニオン等)、カルボン酸アニオン(脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、及びアラルキルカルボン酸アニオン等)、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、及びトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンが挙げられる。
【0067】
脂肪族スルホン酸アニオン、及び脂肪族カルボン酸アニオンにおける脂肪族部位は、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基であってもよく、シクロアルキル基であってもよい。炭素数1~30の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数3~30のシクロアルキル基が好ましい。
上記アルキル基は、例えば、フルオロアルキル基(パーフルオロアルキル基でもよい)でもよい。
【0068】
芳香族スルホン酸アニオン及び芳香族カルボン酸アニオンにおけるアリール基としては、炭素数6~14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、トリル基、及びナフチル基が挙げられる。
【0069】
上記アルキル基、上記シクロアルキル基、及び上記アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては特に制限されないが、具体的には、ニトロ基、フッ素原子、及び塩素原子等のハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~15)、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~15)、アリール基(好ましくは炭素数6~14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~7)、アシル基(好ましくは炭素数2~12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2~7)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1~15)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1~15)、アルキルイミノスルホニル基(好ましくは炭素数1~15)、及びアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数6~20)等が挙げられる。
【0070】
アラルキルカルボン酸アニオンにおけるアラルキル基としては、炭素数7~14のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及び、ナフチルブチル基が挙げられる。
【0071】
スルホニルイミドアニオンとしては、例えば、サッカリンアニオンが挙げられる。
【0072】
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、及びトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンにおけるアルキル基としては、炭素数1~5のアルキル基が好ましい。これらのアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、及びシクロアルキルアリールオキシスルホニル基が挙げられる。
なかでも、フッ素原子又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
また、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンにおけるアルキル基は、互いに結合して環構造を形成してもよい。これにより、酸強度が増加する。
【0073】
その他の非求核性アニオンとしては、例えば、フッ素化燐(例えば、PF )、フッ素化ホウ素(例えば、BF )、及びフッ素化アンチモン(例えば、SbF )が挙げられる。
【0074】
非求核性アニオンとしては、スルホン酸の少なくともα位がフッ素原子で置換された脂肪族スルホン酸アニオン、フッ素原子若しくはフッ素原子を有する基で置換された芳香族スルホン酸アニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、又は、アルキル基がフッ素原子で置換されたトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンが好ましい。なかでも、パーフルオロ脂肪族スルホン酸アニオン(好ましくは炭素数4~8)、又は、フッ素原子を有するベンゼンスルホン酸アニオンがより好ましく、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、パーフルオロオクタンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸アニオン、又は3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホン酸アニオンが更に好ましい。
【0075】
非求核性アニオンとしては、下記式(AN1)で表されるアニオンも好ましい。
【0076】
【化8】
【0077】
一般式(AN1)中、
oは、1~3の整数を表す。pは、0~10の整数を表す。qは、0~10の整数を表す。
【0078】
Xfは、フッ素原子、又は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。このアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロアルキル基が好ましい。
Xfは、フッ素原子又は炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子又はCFであることがより好ましい。特に、双方のXfがフッ素原子であることが更に好ましい。
【0079】
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R及びRが複数存在する場合、R及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
及びRで表されるアルキル基は、置換基を有していてもよく、炭素数1~4が好ましい。R及びRは、好ましくは水素原子である。
少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基の具体例及び好適な態様は一般式(AN1)中のXfの具体例及び好適な態様と同じである。
【0080】
Lは、2価の連結基を表す。Lが複数存在する場合、Lは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
2価の連結基としては、例えば、-O-CO-O-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)、及び、これらの複数を組み合わせた2価の連結基等が挙げられる。なかでも、-O-CO-O-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-O-、-SO-、-O-CO-O-アルキレン基-、-アルキレン基-O-CO-O-、-COO-アルキレン基-、-OCO-アルキレン基-、-CONH-アルキレン基-、又は、-NHCO-アルキレン基-が好ましく、-O-CO-O-、-O-CO-O-アルキレン基-、-アルキレン基-O-CO-O-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-SO-、-COO-アルキレン基-、又は、-OCO-アルキレン基-がより好ましい。
【0081】
Wは、環状構造を含む有機基を表す。なかでも、環状の有機基であることが好ましい。
環状の有機基としては、例えば、脂環基、アリール基、及び、複素環基が挙げられる。
脂環基は、単環であってもよく、多環であってもよい。単環の脂環基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及び、シクロオクチル基等の単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環の脂環基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が挙げられる。なかでも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の炭素数7以上の嵩高い構造を有する脂環基が好ましい。
【0082】
アリール基は、単環であってもよく、多環であってもよい。このアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、及び、アントリル基が挙げられる。
複素環基は、単環であってもよく、多環であってもよい。多環の方がより酸の拡散を抑制可能である。また、複素環基は、芳香族性を有していてもよいし、芳香族性を有していなくてもよい。芳香族性を有している複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、及び、ピリジン環が挙げられる。芳香族性を有していない複素環としては、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環、スルトン環、及び、デカヒドロイソキノリン環が挙げられる。複素環基における複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、又は、デカヒドロイソキノリン環が特に好ましい。
【0083】
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよく、炭素数1~12が好ましい)、シクロアルキル基(単環、多環、及び、スピロ環のいずれであってもよく、炭素数3~20が好ましい)、アリール基(炭素数6~14が好ましい)、水酸基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、及び、スルホン酸エステル基が挙げられる。なお、環状の有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であってもよい。
【0084】
一般式(AN1)で表されるアニオンとしては、SO -CF-CH-OCO-(L)q’-W、SO -CF-CHF-CH-OCO-(L)q’-W、SO -CF-COO-(L)q’-W、SO -CF-CF-CH-CH-(L)q-W、又は、SO -CF-CH(CF)-OCO-(L)q’-Wが好ましい。ここで、L、q及びWは、一般式(AN1)と同様である。q’は、0~10の整数を表す。
【0085】
非求核性アニオンとしては、下記の式(AN2)で表されるアニオンも好ましい。
【0086】
【化9】
【0087】
一般式(AN2)中、
B1及びXB2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、フッ素原子を有さない1価の有機基を表す。XB1及びXB2は、水素原子であることが好ましい。
B3及びXB4は、それぞれ独立に、水素原子、又は、1価の有機基を表す。XB3及びXB4の少なくとも一方がフッ素原子又はフッ素原子を有する1価の有機基であることが好ましく、XB3及びXB4の両方がフッ素原子又はフッ素原子を有する1価の有機基であることがより好ましい。XB3及びXB4の両方が、フッ素原子で置換されたアルキル基であることが更に好ましい。
L、q及びWは、一般式(AN1)と同様である。
【0088】
非求核性アニオンとしては、下記式(AN3)で表されるアニオンが好ましい。
【0089】
【化10】
【0090】
一般式(AN3)において、Xaは、それぞれ独立に、フッ素原子、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。Xbは、それぞれ独立に、水素原子、又は、フッ素原子を有さない有機基を表す。o、p、q、R、R、L、及び、Wの定義及び好ましい態様は、一般式(AN1)と同様である。
【0091】
非求核性アニオンとしては、下記式(AN4)で表されるアニオンも好ましい。
【0092】
【化11】
【0093】
一般式(AN4)中、R及びRは、それぞれ独立に、電子求引性基ではない置換基又は水素原子を表す。
上記電子求引性基ではない置換基としては、炭化水素基、水酸基、オキシ炭化水素基、オキシカルボニル炭化水素基、アミノ基、炭化水素置換アミノ基、及び、炭化水素置換アミド基等が挙げられる。
また、電子求引性基ではない置換基としては、それぞれ独立に、-R’、-OH、-OR’、-OCOR’、-NH、-NR’、-NHR’、又は、-NHCOR’が好ましい。R’は、1価の炭化水素基である。
【0094】
上記R’で表される1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などの1価の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基;シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、ノルボルネニル基等のシクロアルケニル基などの1価の脂環炭化水素基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、メチルアントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、アントリルメチル基等のアラルキル基等の1価の芳香族炭化水素基が挙げられる。
なかでも、R及びRは、それぞれ独立に、炭化水素基(好ましくはシクロアルキル基)又は水素原子が好ましい。
【0095】
一般式(AN4)中、Lは、1つ以上の連結基Sと1つ以上の置換基を有していてもよいアルキレン基との組み合わせからなる2価の連結基、又は、1つ以上の連結基Sからなる2価の連結基を表す。
連結基Sは、*-O-CO-O-*、*-CO-*、*-CO-O-*、*-O-CO-*、*-O-*、*-S-*、及び、*-SO-*からなる群から選択される基である。
ただし、Lが、「1つ以上の連結基Sと1つ以上の置換基を有していてもよいアルキレン基との組み合わせからなる2価の連結基」の一形態である、「1つ以上の連結基Sと1つ以上の置換基を有さないアルキレン基との組み合わせからなる2価の連結基」である場合、連結基Sは、*-O-CO-O-*、*-CO-*、*-O-CO-*、*-O-*、*-S-*、及び、*-SO-*からなる群から選択される基であるのが好ましい。言い換えると、「1つ以上の連結基Sと1つ以上の置換基を有していてもよいアルキレン基との組み合わせからなる2価の連結基」における、アルキレン基が、いずれも無置換アルキレン基である場合、連結基Sは、*-O-CO-O-*、*-CO-*、*-O-CO-*、*-O-*、*-S-*、及び、*-SO-*からなる群から選択される基であるのが好ましい。
は、一般式(AN4)におけるR側の結合位置を表し、*は、一般式(AN4)における-SO 側の結合位置を表す。
【0096】
1つ以上の連結基Sと1つ以上の置換基を有していてもよいアルキレン基との組み合わせからなる2価の連結基において、連結基Sは1つだけ存在していてもよく、2つ以上存在していてもよい。同様に、置換基を有していてもよいアルキレン基は1つだけ存在していてもよく、2つ以上存在していてもよい。上記連結基Sが複数存在する場合、複数存在する連結基Sは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。上記アルキレン基が複数存在する場合、複数存在するアルキレン基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
なお、連結基S同士が連続して結合してもよい。ただし、*-CO-*、*-O-CO-*、及び、*-O-*からなる群から選択される基が連続して結合して「*-O-CO-O-*」が形成されないことが好ましい。また、*-CO-*及び*-O-*からなる群から選択される基が連続して結合して「*-O-CO-*」及び「*-CO-O-*」のいずれも形成されないことが好ましい。
【0097】
1つ以上の連結基Sからなる2価の連結基においても、連結基Sは1つだけ存在していてもよく、2つ以上存在していてもよい。連結基Sが複数存在する場合、複数存在する場合の連結基Sは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
この場合も、*-CO-*、*-O-CO-*、及び、*-O-*からなる群から選択される基が連続して結合して「*-O-CO-O-*」が形成されないことが好ましい。また、*-CO-*及び*-O-*からなる群から選択される基が連続して結合して「*-O-CO-*」及び「*-CO-O-*」のいずれも形成されないことが好ましい。
【0098】
ただし、いずれの場合においてもL中において、-SO に対してβ位の原子は、置換基としてフッ素原子を有する炭素原子ではない。
なお、上記β位の原子が炭素原子である場合、上記炭素原子にはフッ素原子が直接置換していなければよく、上記炭素原子はフッ素原子を有する置換基(例えば、トリフルオロメチル基等のフルオロアルキル基)を有していてもよい。
また、上記β位の原子とは、言い換えると、一般式(AN4)における-C(R)(R)-と直接結合するL中の原子である。
【0099】
なかでも、Lは、連結基Sを1つだけ有するのが好ましい。
つまり、Lは、1つの連結基Sと1つ以上の置換基を有していてもよいアルキレン基との組み合わせからなる2価の連結基、又は、1つの連結基Sからなる2価の連結基を表すのが好ましい。
【0100】
Lは、例えば、下記式(AN4-2)で表される基であるのが好ましい。
-(CR2a -Q-(CR2b -* (AN4-2)
【0101】
一般式(AN4-2)中、*は、一般式(AN4)におけるRとの結合位置を表す。
は、一般式(AN4)における-C(R)(R)-との結合位置を表す。
X及びYは、それぞれ独立に、0~10の整数を表し、0~3の整数が好ましい。
2a及びR2bは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
2a及びR2bがそれぞれ複数存在する場合、複数存在するR2a及びR2bは、それぞれ同一でも異なっていてもよい、
ただし、Yが1以上の場合、一般式(AN4)における-C(R)(R)-と直接結合するCR2b におけるR2bは、フッ素原子以外である。
Qは、*-O-CO-O-*、*-CO-*、*-CO-O-*、*-O-CO-*、*-O-*、*-S-*、又は、*-SO-*を表す。
ただし、一般式(AN4-2)中のX+Yが1以上かつ、一般式(AN4-2)中のR2a及びR2bのいずれもが全て水素原子である場合、Qは、*-O-CO-O-*、*-CO-*、*-O-CO-*、*-O-*、*-S-*、又は、*-SO-*を表す。
は、一般式(AN4)におけるR側の結合位置を表し、*は、一般式(AN4)における-SO 側の結合位置を表す。
【0102】
一般式(AN4)中、Rは、有機基を表す。
上記有機基は、炭素原子を1以上有していれば制限はなく、直鎖状の基(例えば、直鎖状のアルキル基)でも、分岐鎖状の基(例えば、t-ブチル基等の分岐鎖状のアルキル基)でもよく、環状構造を有していてもよい。上記有機基は、置換基を有していても有していなくてもよい。上記有機基は、ヘテロ原子(酸素原子、硫黄原子、及び/又は、窒素原子等)を有していても有してなくてもよい。
【0103】
なかでも、Rは、環状構造を有する有機基であるのが好ましい。上記環状構造は、単環でも多環でもよく、置換基を有していてもよい。環状構造を含む有機基における環は、一般式(AN4)中のLと直接結合しているのが好ましい。
上記環状構造を有する有機基は、例えば、ヘテロ原子(酸素原子、硫黄原子、及び/又は、窒素原子等)を有していても有してなくてもよい。ヘテロ原子は、環状構造を形成する炭素原子の1つ以上と置換していてもよい。
上記環状構造を有する有機基は、環状構造の炭化水素基、ラクトン環基、又は、スルトン環基が好ましい。なかでも、上記環状構造を有する有機基は、環状構造の炭化水素基が好ましい。
上記環状構造の炭化水素基は、単環又は多環のシクロアルキル基が好ましい。これらの基は、置換基を有していてもよい。
上記シクロアルキル基は、単環(シクロヘキシル基等)でも多環(アダマンチル基等)でもよく、炭素数は5~12が好ましい。
上記ラクトン基及びスルトン基としては、例えば、後述の一般式(LC1-1)~(LC1-21)で表される構造、及び、一般式(SL1-1)~(SL1-3)で表される構造のいずれかにおいて、ラクトン構造又はスルトン構造を構成する環員原子から、水素原子を1つ除いてなる基が好ましい。
【0104】
非求核性アニオンとしては、ベンゼンスルホン酸アニオンであってもよく、分岐鎖状のアルキル基又はシクロアルキル基によって置換されたベンゼンスルホン酸アニオンであることが好ましい。
【0105】
非求核性アニオンとしては、下記式(AN5)で表される芳香族スルホン酸アニオンも好ましい。
【0106】
【化12】
【0107】
一般式(AN5)中、
Arは、アリール基(フェニル基等)を表し、スルホン酸アニオン及び-(D-B)基以外の置換基を更に有していてもよい。更に有してもよい置換基としては、フッ素原子及び水酸基等が挙げられる。
【0108】
nは、0以上の整数を表す。nとしては、1~4の整数が好ましく、2~3の整数がより好ましく、3が更に好ましい。
【0109】
Dは、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸エステル基、エステル基、及び、これらの2種以上の組み合わせからなる基等が挙げられる。
【0110】
Bは、炭化水素基を表す。
【0111】
Bは、脂肪族炭化水素構造が好ましく、イソプロピル基、シクロヘキシル基、又は置換基を有してもよいアリール基(トリシクロヘキシルフェニル基等)がより好ましい。
【0112】
非求核性アニオンとしては、ジスルホンアミドアニオンも好ましい。
ジスルホンアミドアニオンは、例えば、N(SO-Rで表されるアニオンが挙げられる。
は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、フルオロアルキル基が好ましく、パーフルオロアルキル基がより好ましい。2個のRは互いに結合して環を形成してもよい。2個のRが互いに結合して形成される基は、置換基を有していてもよいアルキレン基が好ましく、フルオロアルキレン基がより好ましく、パーフルオロアルキレン基が更に好ましい。上記アルキレン基の炭素数は2~4が好ましい。
【0113】
また、上記アニオンとしては、下記式(d1-1)~(d1-3)で表されるアニオンも挙げられる。
上記アニオンとして下記式(d1-1)~(d1-3)で表されるアニオンを有する特定化合物は、後述する酸拡散制御剤としての機能を持つこともできる。
【0114】
【化13】
【0115】
一般式(d1-1)中、R51は置換基(例えば、水酸基)を有していてもよい炭化水素基(例えば、フェニル基等のアリール基)を表す。
一般式(d1-2)中、Z2cは置換基を有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基(ただし、Sに隣接する炭素原子にはフッ素原子が置換されない)を表す。
2cにおける上記炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、環状構造を有していてもよい。また、上記炭化水素基における炭素原子(好ましくは、上記炭化水素基が環状構造を有する場合における、環員原子である炭素原子)は、カルボニル炭素(-CO-)であってもよい。上記炭化水素基としては、例えば、置換基を有していてもよいノルボルニル基を有する基が挙げられる。上記ノルボルニル基を形成する炭素原子は、カルボニル炭素であってもよい。
また、一般式(d1-2)中の「Z2c-SO 」は、上述の式(AN1)~(AN5)で表されるアニオンとは異なるのが好ましい。例えば、Z2cは、アリール基以外が好ましい。また、例えば、Z2cにおける、-SO に対してα位及びβ位の原子は、置換基としてフッ素原子を有する炭素原子以外の原子が好ましい。例えば、Z2cは、-SO に対してα位の原子及び/又はβ位の原子は環状基中の環員原子であるのが好ましい。
一般式(d1-3)中、R52は有機基(好ましくはフッ素原子を有する炭化水素基)を表し、Yは直鎖状、分岐鎖状、若しくは、環状のアルキレン基、アリーレン基、又は、カルボニル基を表し、Rfは炭化水素基を表す。
【0116】
アニオンとしては、以下が例示される。
【0117】
【化14】
【0118】
【化15】
【0119】
上述したように、特定化合物は、一般式(1)で表されるカチオンを1つ以上有する。
特定化合物が有する有機アニオンの数は特に制限されないが、特定化合物が有する一般式(1)で表されるカチオンの数が1つの場合、有機アニオンの数は1つが好ましい。
【0120】
(一般式(2)で表される化合物)
特定化合物としては、本発明の効果がより優れる点で、一般式(2)で表される化合物が好ましい。一般式(2)で表される化合物は、一般式(1)で表されるカチオンを1つと、有機アニオンを1つとを有する塩化合物に該当する。
一般式(2) Z
一般式(2)中、Z は、上記一般式(1)で表されるカチオンを表す。一般式(1)で表されるカチオンの定義は、上述した通りである。
は、1価の有機アニオンを表す。1価の有機アニオンとしては、上述した有機アニオンのうち1価のものを意図する。
【0121】
(一般式(S-1)で表される化合物)
特定化合物(一般式(2)で表される化合物)としては、一般式(S-1)で表される化合物が好ましい。
【0122】
【化16】
【0123】
一般式(S-1)中、Y は、1価の有機アニオンを表す。1価の有機アニオンとしては、上述した有機アニオンのうち1価のものを意図する。
【0124】
S1~RS3は、それぞれ独立に、一般式(T-1)で表される基を表す。なかでも、RS1~RS3は、同じ基を表すことが好ましい。
一般式(T-1)中、*は結合位置を表す。
一般式(T-1) *-S-Xd2
【0125】
一般式(T-1)中、Xd2は、上述した一般式(1-1)で表される基、又は、酸の作用により脱離する脱離基を表す。
d2で表される各基の定義は、上述した通りである。
【0126】
b1~Rb3は、それぞれ独立に、一般式(T-1)で表される基以外の置換基を表す。上記置換基としては、例えば、置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、及び置換基を有していてもよいアリール基が挙げられる。
上記アルキル基及び上記シクロアルキル基の炭素数は特に制限されないが、炭素数1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。
上記置換基としては、置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、ヘテロ原子を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基がより好ましい。
なお、Rb1およびRb2、Rb2およびRb3、Rb1およびRb3は、それぞれ互いに結合して、単結合を形成してもよいし、2価の連結基(例えば、-O-)を形成してもよい。
【0127】
a1は1~5の整数を表し、a2は0~5の整数を表し、a3は0~5の整数を表す。
b1は0~4の整数を表し、b2は0~5の整数を表し、b3は0~5の整数を表す。
a1とb1との合計は1~5の整数を表し、a2とb2との合計は0~5の整数を表し、a3とb3との合計は0~5の整数を表す。
なかでも、a1~a3は、それぞれ独立に、1~3の整数を表すことが好ましく、それぞれ独立に、1~2の整数を表すことがより好ましい。
また、a1とa2とa3との合計は、1~5の整数が好ましく、1~3の整数がより好ましい。
b1~b3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表すことが好ましく、それぞれ独立に、0~2の整数を表すことがより好ましい。
また、b1とb2とb3との合計は、0~5の整数が好ましく、0~3の整数がより好ましい。
【0128】
特定化合物としては、2つ以上のカチオン部位、及び、上記カチオン部位と同数のアニオン部位を有し、上記カチオン部位の少なくとも1つが特定カチオンである化合物(以下、単に「化合物W」ともいう。)が挙げられる。
カチオン部位とは、正電荷を帯びた原子又は原子団を含む構造部位である。上述したように、化合物Wにおいては、2つ以上のカチオン部位の少なくとも1つは特定カチオンである。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、化合物Wに含まれる2つ以上のカチオン部位の全てが、特定カチオンであることが好ましい。
なお、化合物Wにおいては、2つ以上のカチオン部位の少なくとも1つは特定カチオンであればよく、特定カチオン以外の有機カチオンが含まれていてもよい。特定カチオン以外の有機カチオンとしては、例えば、特定カチオン以外のスルホニウムカチオン、及び、ヨードニウムイオンが挙げられる。
【0129】
アニオン部位とは、負電荷を帯びた原子又は原子団を含む構造部位であり、例えば、化合物W中に存在し得るアニオン性官能基をアニオン部位としてもよい。
化合物Wは、化合物Wが有するカチオン部位と同数のアニオン性官能基を有する有機アニオンを有するのが好ましい。
上述の通り、化合物Wは、2つ以上(好ましくは2~3つ)のカチオン部位、及び、上記カチオン部位と同数のアニオン部位を有する。
つまり、化合物Wは、2つ以上(好ましくは2~3つ)のアニオン部位(好ましくはアニオン性官能基)を有する。複数のアニオン性官能基は、単結合又は連結基で連結されていてもよい。
【0130】
上記アニオン性官能基としては、例えば、-SO 及び-SO を一部分として有する基、-COO及び-COOを一部分として有する基、-N-を一部分として有する基、並びに、カルボアニオン(-C<)を一部分として有する基が挙げられる。
アニオン性官能基の具体例としては、後述する一般式(B-1)~(B-13)で表される基が好ましい。
【0131】
【化17】
【0132】
一般式(B-1)~(B-13)中、*は結合位置を表す。
なお、一般式(B-12)における*は、-CO-及び-SO-のいずれでもない基に対する結合位置であるのも好ましい。
【0133】
一般式(B-1)~(B-5)、及び(B-12)中、RX1は、有機基を表す。
X1としては、直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基が好ましい。
上記アルキル基の炭素数は1~15が好ましく、1~10がより好ましい。
上記アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、フッ素原子、又はシアノ基が好ましい。上記アルキル基が置換基としてフッ素原子を有する場合、パーフルオロアルキル基であってもよい。
また、上記アルキル基は、炭素原子がカルボニル基で置換されていてもよい。
【0134】
上記アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
上記アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、フッ素原子、パーフルオロアルキル基(炭素数1~10が好ましく、炭素数1~6がより好ましい。)、又はシアノ基が好ましい。
【0135】
なお、一般式(B-5)においてRX1中の、Nと直接結合する原子は、-CO-における炭素原子、及び-SO-における硫黄原子のいずれでもないのも好ましい。
なお、一般式(B-3)におけるRX1は、フッ素原子を含まないことが好ましい。
【0136】
一般式(B-7)及び(B-11)中、RX2は、水素原子、又は、フッ素原子及びパーフルオロアルキル基以外の置換基を表す。
X2で表されるフッ素原子及びパーフルオロアルキル基以外の置換基としては、パーフルオロアルキル基以外のアルキル基(直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれでもよい)が好ましい。
上記アルキル基の炭素数は1~15が好ましく、1~10がより好ましい。
上記アルキル基はフッ素原子を有さないのが好ましい。すなわち、上記アルキル基が置換基を有する場合、フッ素原子以外の置換基が好ましい。
【0137】
一般式(B-8)中、RXF1は、水素原子、フッ素原子、又はパーフルオロアルキル基を表す。ただし、複数のRXF1のうち、少なくとも1つはフッ素原子又はパーフルオロアルキル基を表す。
XF1で表されるパーフルオロアルキル基の炭素数は1~15が好ましく、1~10がより好ましく、1~6が更に好ましい。
【0138】
一般式(B-10)中、RXF2は、フッ素原子、又はパーフルオロアルキル基を表す。
XF2で表されるパーフルオロアルキル基の炭素数は1~15が好ましく、1~10がより好ましく、1~6が更に好ましい。
【0139】
一般式(B-9)中、nは、0~4の整数を表す。
【0140】
11 及びA12 で表されるアニオン性官能基の組み合わせとしては特に制限されないが、例えば、A11 が一般式(B-8)又は(B-10)で表される基である場合、A12 で表されるアニオン性官能基としては、一般式(B-1)~(B-7)、(B-9)、又は(B-11)~(B-13)で表される基が挙げられ、A11 が一般式(B-7)で表される基である場合、A12 で表されるアニオン性官能基としては、一般式(B-6)で表される基が挙げられ、A11 が一般式(B-9)で表される基である場合、A12 で表されるアニオン性官能基としては、一般式(B-6)で表される基が挙げられ、A11 が一般式(B-1)で表される基である場合、A12 で表されるアニオン性官能基としては、一般式(B-3)で表される基が挙げられる。
【0141】
なかでも、化合物Wがアニオン部位として、アニオン部位A (アニオン性官能基A )を有するのが好ましい。
アニオン部位A (アニオン性官能基A )は、一般式(BX-1)~(BX-4)のいずれかで表される基である。
【0142】
【化18】
【0143】
一般式(BX-1)~(BX-4)中、*は、結合位置を表す。
一般式(BX-1)~(BX-4)中、Rは、有機基を表す。
における有機基の例としては、一般式(B-1)~(B-5)、及び(B-12)におけるRX1の有機基の例が同様に挙げられる。
【0144】
また、化合物Wは、アニオン部位として、上記アニオン部位A (アニオン性官能基A )に加えて、更に、アニオン部位A (アニオン性官能基A )を有するのが好ましい。
アニオン部位A (アニオン性官能基A )は、一般式(AX-1)~(AX-2)のいずれかで表される基である。
【0145】
【化19】
【0146】
一般式(AX-1)~(AX-2)中、*は、結合位置を表す。
一般式(AX-2)中、Rは、有機基を表す。
は、アルキル基が好ましい。
上記アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
上記アルキル基の炭素数は1~10が好ましく、1~5がより好ましい。
上記アルキル基が有してもよい置換基は、フッ素原子が好ましい。
置換基としてフッ素原子を有する上記アルキル基は、パーフルオロアルキル基となっていてもよいし、ならなくてもよい。
【0147】
化合物Wは、アニオン部位として、上記アニオン部位A (アニオン性官能基A )、及び、上記アニオン部位A (アニオン性官能基A )に加えて、更なるアニオン部位(好ましくは更なるアニオン性官能基)を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0148】
化合物Wとしては、一般式(3)で表される化合物が好ましい。
【0149】
【化20】
【0150】
一般式(3)中、Z はカチオンを表し、Z の少なくとも1つが一般式(1)で表されるカチオンを表す。
一般式(1)で表されるカチオンの定義は、上述した通りである。一般式(1)で表されるカチオン以外のカチオンは特に制限されず、公知のスルホニウムカチオン及びヨードニウムカチオンが挙げられる。
複数のZのうち少なくとも1つのZが特定カチオンであればよく、本発明の効果がより優れる点で、2以上のZが特定カチオンであることが好ましく、全てのZが特定カチオンであることがより好ましい。
【0151】
は、アニオン性官能基を表す。アニオン性官能基の定義は、上述した通りである。複数存在するY は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
複数存在するY は、例えば、「一般式(B-8)又は(B-10)で表される基と、一般式(B-1)~(B-7)、(B-9)、又は(B-11)~(B-13)で表される基」を少なくとも有していてもよく、「一般式(B-7)で表される基と、一般式(B-6)で表される基」を少なくとも有していてもよく、「一般式(BX-1)~(BX-4)のいずれかで表される基と、一般式(AX-1)~(AX-2)のいずれかで表される基」を少なくとも有していてもよい。
【0152】
qは、2以上の整数を表す。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、qは2~5の整数が好ましく、2~3の整数がより好ましい。
【0153】
Lは、q価の連結基を表す。
例えば、qが2の場合、Lは2価の連結基を表す。
上記2価の連結基としては、例えば、-COO-、-CONH-、-CO-、-O-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6。直鎖状でも分岐鎖状でもよい)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)、及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基等が挙げられる。
上記シクロアルキレン基のシクロアルカン環を構成するメチレン基の1個以上が、カルボニル炭素及び/又はヘテロ原子(酸素原子等)で置き換わっていてもよい。
これらの2価の連結基は、更に、-S-、-SO-、-SO-、及び、-NR-(Rは水素原子又は置換基)からなる群から選択される基を有するのも好ましい。
3価以上の連結基としては、例えば、単結合及び/又は上記2価の連結基がとり得る各基と、-CR<、-N<、>C<、3価以上の炭化水素環基、及び/又は、3価以上の複素環基とが組み合わせられた基が挙げられる。Rは水素原子又は置換基を表す。
【0154】
特定化合物としては、後述する化合物(I-A)~(III-A)も好ましい。
【0155】
(化合物(I-A))
以下において、化合物(I-A)について説明する。
化合物(I-A):下記構造部位Xと下記構造部位Yとを各々1つずつ有する化合物であって、活性光線又は放射線の照射によって、下記構造部位Xに由来する下記第1の酸性部位と下記構造部位Yに由来する下記第2の酸性部位とを含む酸を発生する化合物
構造部位X:アニオン部位A とカチオン部位M とからなり、かつ活性光線又は放射線の照射によってHAで表される第1の酸性部位を形成する構造部位
構造部位Y:アニオン部位A とカチオン部位M とからなり、かつ活性光線又は放射線の照射によって、上記構造部位Xにて形成される上記第1の酸性部位とは異なる構造のHAで表される第2の酸性部位を形成する構造部位
ただし、カチオン部位M 及びカチオン部位M の少なくとも1つは特定カチオンである。
【0156】
また、化合物(I-A)は、下記条件Iを満たす。
条件I:上記化合物(I-A)において上記構造部位X中の上記カチオン部位M 及び上記構造部位Y中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなる化合物PIが、上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1と、上記構造部位Y中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数a2を有し、かつ上記酸解離定数a1よりも上記の酸解離定数a2の方が大きい。
なお、酸解離定数a1及び酸解離定数a2は、上述した方法により求められる。化合物PIの酸解離定数a1及び酸解離定数a2とは、より具体的に説明すると、化合物PIの酸解離定数を求めた場合において、化合物PI(化合物PIは、「HAとHAを有する化合物」に該当する。)が「A とHAを有する化合物」となる際のpKaが酸解離定数a1であり、上記「A とHAを有する化合物」が「A とA を有する化合物」となる際のpKaが酸解離定数a2である。
また、上記化合物PIとは、化合物(I-A)に活性光線又は放射線を照射することにより発生する酸に該当する。
【0157】
本発明の効果がより優れる点で、上記化合物PIにおいて、酸解離定数a1と上記酸解離定数a2との差は、2.0以上が好ましく、3.0以上がより好ましい。なお、酸解離定数a1と上記酸解離定数a2との差の上限値は特に制限されないが、15.0以下が好ましい。
【0158】
また、本発明の効果がより優れる点で、上記化合物PIにおいて、酸解離定数a2は、例えば6.5以下であり、レジスト組成物内での化合物(I-A)のカチオン部位の安定性がより優れる点で、上記化合物PIにおいて、2.0以下が好ましく、1.0以下がより好ましい。なお、酸解離定数a2の下限値としては、-5.0以上が好ましく、-3.5以上がより好ましく、-2.0以上が更に好ましい。
【0159】
また、本発明の効果がより優れる点で、上記化合物PIにおいて、酸解離定数a1は、2.0以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、-0.1以下が更に好ましい。なお、酸解離定数a1の下限値としては、-15.0以上が好ましい。
【0160】
化合物(I-A)としては特に制限されないが、例えば、下記一般式(Ia)で表される化合物が挙げられる。
11 11 -L-A12 12 (Ia)
【0161】
一般式(Ia)中、「M11 11 」及び「A12 12 」は、各々、構造部位X及び構造部位Yに該当する。化合物(Ia)は、活性光線又は放射線の照射によって、HA11-L-A21Hで表される酸を発生する。つまり、「M11 11 」は、HA11で表される第1の酸性部位を形成し、「A12 12 」は、上記第1の酸性部位とは異なる構造のHA12で表される第2の酸性部位を形成する。
【0162】
一般式(Ia)中、M11 及びM12 は、それぞれ独立に、カチオン(特定カチオン、又は、特定カチオン以外の有機カチオン)を表す。
11 及びM12 の少なくとも一方(好ましくは両方)が、特定カチオンである。
11 及びA12 は、それぞれ独立に、アニオン性官能基を表す。ただし、A12 は、A11 で表されるアニオン性官能基とは異なる構造を表す。
は、2価の連結基を表す。
ただし、上記一般式(Ia)において、M11 及びM12 で表される特定カチオンをHに置き換えてなる化合物PIa(HA11-L-A12H)において、A12Hで表される酸性部位に由来する酸解離定数a2は、HA11で表される酸性部位に由来する酸解離定数a1よりも大きい。なお、酸解離定数a1と酸解離定数a2の好適値については、上述した通りである。
【0163】
一般式(Ia)中、M11 及びM12 は、それぞれ独立に、カチオン(特定カチオン、又は、特定カチオン以外の有機カチオン)を表す。
11 及びM12 の少なくとも一方(好ましくは両方)が、特定カチオンである。
特定カチオンについては上述の通りである。
特定カチオン以外の有機カチオンについては上述の通りである。
【0164】
一般式(Ia)中、A11 及びA12 は、それぞれ独立に、アニオン性官能基を表す。ただし、A12 は、A11 で表されるアニオン性官能基とは異なる構造を表す。
アニオン性官能基については上述の通りである。
11 及びA12 のアニオン性官能基は、それぞれ独立に、上述した一般式(B-1)~(B-13)で表される基が好ましい。
11 及びA12 で表されるアニオン性官能基の組み合わせとしては特に制限されないが、例えば、A11 が一般式(B-8)又は(B-10)で表される基である場合、A12 で表されるアニオン性官能基としては、一般式(B-1)~(B-7)、(B-9)、又は(B-11)~(B-13)で表される基が挙げられ、A11 が一般式(B-7)で表される基である場合、A12 で表されるアニオン性官能基としては、一般式(B-6)で表される基が挙げられる。
【0165】
一般式(Ia)中、Lで表される2価の連結基としては特に制限されず、-CO-、-NRL1-、-CO-、-O-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6。直鎖状でも分岐鎖状でもよい)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)、2価の脂肪族複素環基(少なくとも1つのN原子、O原子、S原子、又はSe原子を環構造内に有する5~10員環が好ましく、5~7員環がより好ましく、5~6員環が更に好ましい。)、2価の芳香族複素環基(少なくとも1つのN原子、O原子、S原子、又はSe原子を環構造内に有する5~10員環が好ましく、5~7員環がより好ましく、5~6員環が更に好ましい。)、2価の芳香族炭化水素環基(6~10員環が好ましく、6員環が更に好ましい。)、及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基等が挙げられる。上記RL1は、水素原子又は1価の有機基が挙げられる。1価の有機基としては特に制限されないが、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1~6)が好ましい。
これらの2価の連結基は、更に、-S-、-SO-、及び-SO-からなる群から選択される基を含んでいてもよい。
また、上記アルキレン基、上記シクロアルキレン基、上記アルケニレン基、上記2価の脂肪族複素環基、2価の芳香族複素環基、及び2価の芳香族炭化水素環基は、置換基で置換されていてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)が挙げられる。
【0166】
なかでも、化合物(I-A)としては一般式(Ib)で表される化合物が好ましい。
-L-B (Ib)
【0167】
一般式(Ib)中、M 及びM は、それぞれ独立に、カチオン(特定カチオン、又は、特定カチオン以外の有機カチオン)を表す。
及びM のうち少なくとも一方(好ましくは両方)は特定カチオンを表す。
特定カチオンについては上述の通りである。
特定カチオン以外の有機カチオンについても上述の通りである。
【0168】
一般式(Ib)中、Lは、2価の有機基を表す。
上記2価の有機基としては、-COO-、-CONH-、-CO-、-O-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6。直鎖状でも分岐鎖状でもよい)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)、及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基等が挙げられる。
上記シクロアルキレン基のシクロアルカン環を構成するメチレン基の1個以上が、カルボニル炭素及び/又はヘテロ原子(酸素原子等)で置き換わっていてもよい。
これらの2価の連結基は、更に、-S-、-SO-、及び-SO-からなる群から選択される基を有するのも好ましい。
【0169】
なかでも、Lは、下記一般式(L)で表される基であるのが好ましい。
*A-LA-LB-LC-LD-LE-*B (L)
【0170】
一般式(L)中、*Aは、一般式(Ib)におけるAとの結合位置を表す。
一般式(L)中、*Bは、一般式(Ib)におけるBとの結合位置を表す。
【0171】
一般式(L)中、LAは、-(C(RLA1)(RLA2))XA-を表す。
上記XAは、1以上の整数を表し、1~10の整数が好ましく、1~3の整数がより好ましい。
LA1及びRLA2は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
LA1及びRLA2の置換基としては、それぞれ独立に、フッ素原子又はフルオロアルキル基が好ましく、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基がより好ましく、フッ素原子又はパーフルオロメチル基が更に好ましい。
XAが2以上の場合、XA個存在するRLA1は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
XAが2以上の場合、XA個存在するRLA2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
-(C(RLA1)(RLA2))-は、-CH-、-CHF-、-CH(CF)-、又は-CF-が好ましい。
なかでも、一般式(Ib)中のAと直接結合する-(C(RLA1)(RLA2))-は、-CH-、-CHF-、-CH(CF)-、又は-CF-が好ましい。
一般式(Ib)中のAと直接結合する-(C(RLA1)(RLA2))-以外の-(C(RLA1)(RLA2))-は、それぞれ独立に、-CH-、-CHF-、又は-CF-が好ましい。
【0172】
一般式(L)中、LBは、単結合、エステル基(-COO-)、又はスルホニル基(-SO-)を表す。
【0173】
一般式(L)中、LCは、単結合、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はこれらを組み合わせてなる基(「-アルキレン基-シクロアルキレン基-」等)を表す。
上記アルキレン基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
上記アルキレン基の炭素数は、1~5が好ましく、1~2がより好ましく、1が更に好ましい。
上記シクロアルキレン基の炭素数は、3~15が好ましく、5~10がより好ましい。
上記シクロアルキレン基は単環でも多環でもよい。
上記シクロアルキレン基としては、例えば、ノルボルナンジイル基、及びアダマンタンジイル基が挙げられる。
上記シクロアルキレン基が有してもよい置換基としては、アルキル基(直鎖状でも分岐鎖状でもよい。好ましくは炭素数1~5)が好ましい。
上記シクロアルキレン基のシクロアルカン環を構成するメチレン基の1個以上が、カルボニル炭素及び/又はヘテロ原子(酸素原子等)で置き換わっていてもよい。
LCが、「-アルキレン基-シクロアルキレン基-」の場合、アルキレン基部分は、LB側に存在するのが好ましい。
LBが単結合の場合、LCは、単結合又はシクロアルキレン基が好ましい。
【0174】
一般式(L)中、LDは、単結合、エーテル基(-O-)、カルボニル基(-CO-)、又はエステル基(-COO-)を表す。
【0175】
一般式(L)中、LEは、単結合又は-(C(RLE1)(RLE2))XE-を表す。
上記-(C(RLE1)(RLE2))XE-におけるXEは、1以上の整数を表し、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
LE1及びRLE2は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
XEが2以上の場合、XE個存在するRLE1は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
XEが2以上の場合、XE個存在するRLE2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
なかでも、-(C(RLE1)(RLE2))-は、-CH-又は-CF-が好ましい。
一般式(L)中、LB、LC、及びLDが単結合の場合、LEも単結合であるのが好ましい。
【0176】
一般式(Ib)中、A及びBは、それぞれ独立に、アニオン性官能基を表す。
アニオン性官能基については上述の通りである。
なかでも、Aは、一般式(AX-1)~(AX-2)のいずれかで表される基であるのが好ましい。
は、一般式(BX-1)~(BX-4)のいずれかで表される基を表すのが好ましい。
及びBは、それぞれ異なる構造であるのが好ましい。
なかでも、Aが、一般式(AX-1)で表される基であり、かつ、Bが、一般式(BX-1)~(BX-4)のいずれかで表される基であるか、又は、Aが、一般式(AX-2)で表される基であり、かつ、Bが、一般式(BX-1)、一般式(BX-3)、及び一般式(BX-4)のいずれかで表される基であるのが好ましい。
【0177】
ただし、一般式(Ib)で表される化合物のM 及びM がそれぞれ水素原子で置換されたHA-L-BHで表される化合物において、HAで表される基のpKaは、BHで表される基のpKaよりも低い。
より具体的には、HA-L-BHで表される化合物について酸解離定数を求めた場合において、「HA-L-BH」が「A-L-BH」となる際のpKaを「HAで表される基のpKa」とし、更に、「A-L-BH」が「A-L-B」となる際のpKaを「BHで表される基のpKa」とする。
「HAで表される基のpKa」及び「BHで表される基のpKa」は、それぞれ、「ソフトウェアパッケージ1」又は「Gaussian16」を用いて求める。
例えば、HAで表される基のpKaは、上述の酸解離定数a1に相当し、好ましい範囲も同様である。
BHで表される基のpKaは、上述の酸解離定数a2に相当し、好ましい範囲も同様である。
HBで表される基のpKaとHAで表される基のpKaとの差(「HBで表される基のpKa」-「HAで表される基のpKa」)は、上述の酸解離定数a1と上記酸解離定数a2との差に相当し、好ましい範囲も同様である。
【0178】
次に、化合物(II-A)について説明する。
化合物(II-A):上記構造部位Xを2つ以上と上記構造部位Yとを有する化合物であって、活性光線又は放射線の照射によって、上記構造部位Xに由来する上記第1の酸性部位を2つ以上と上記構造部位Yに由来する上記第2の酸性部位とを含む酸を発生する化合物
ただし、カチオン部位M 及びカチオン部位M の少なくとも1つは特定カチオンである。
【0179】
また、化合物(II-A)は、下記条件IIを満たす。
条件II:上記化合物(II-A)において上記構造部位X中の上記カチオン部位M 及び上記構造部位Y中のカチオン部位M をHに置き換えてなる化合物PIIが、上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1と、上記構造部位Y中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数a2を有し、かつ上記酸解離定数a1よりも上記酸解離定数a2の方が大きい。
酸解離定数a1及び酸解離定数a2は、上述した方法により求められる。
ここで、化合物PIIの酸解離定数a1及び酸解離定数a2について、より具体的に説明する。化合物(II-A)が、例えば、上記構造部位Xに由来する上記第1の酸性部位を2つと、上記構造部位Yに由来する上記第2の酸性部位を1つ有する酸を発生する化合物である場合、化合物PIIは「2つのHAと1つのHAを有する化合物」に該当する。この化合物PIIの酸解離定数を求める場合、化合物PIIが「1つのA と1つのHAと1つのHAとを有する化合物」となる際のpKaが酸解離定数a1であり、「2つのA と1つのHAとを有する化合物」が「2つのA と1つのA を有する化合物」となる際のpKaが酸解離定数a2である。つまり、化合物PIIが、上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数を複数有する場合、その最も小さい値を酸解離定数a1とみなす。
【0180】
また、上記化合物PIIとは、化合物(II-A)に活性光線又は放射線を照射することにより発生する酸に該当する。
なお、化合物(II-A)は、上記構造部位Yを複数有していてもよい。
【0181】
本発明の効果がより優れる点で、上記化合物PIIにおいて、酸解離定数a1と上記酸解離定数a2との差は、2.0以上が好ましく、3.0以上がより好ましい。なお、酸解離定数a1と上記酸解離定数a2との差の上限値は特に制限されないが、例えば、15.0以下である。
【0182】
また、上記化合物PIIにおいて、酸解離定数a2は、6.5以下が好ましく、レジスト組成物内での化合物(II-A)のカチオン部位の安定性がより優れる点で、2.0以下がより好ましく、1.0以下が更に好ましい。なお、酸解離定数a2の下限値としては、-2.0以上が好ましい。
【0183】
また、本発明の効果がより優れる点で、上記化合物PIIにおいて、酸解離定数a1は、2.0以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、-0.1以下が更に好ましい。なお、酸解離定数a1の下限値としては、-15.0以上が好ましい。
【0184】
化合物(II-A)としては特に制限されず、例えば、下記一般式(IIa)で表される化合物が挙げられる。
【0185】
【化21】
【0186】
一般式(IIa)中、「M21 21 」及び「A22 22 」は、各々、構造部位X及び構造部位Yに該当する。化合物(IIa)は、活性光線又は放射線の照射によって、下記一般式(IIa-1)で表される酸を発生する。つまり、「M21 21 」は、HA21で表される第1の酸性部位を形成し、「A22 22 」は、上記第1の酸性部位とは異なる構造のHA22で表される第2の酸性部位を形成する。
【0187】
【化22】
【0188】
一般式(IIa)中、M21 及びM22 は、それぞれ独立に、カチオン(特定カチオン、又は、特定カチオン以外の有機カチオン)を表す。
21 及びM22 の少なくとも一方(好ましくは両方)は特定カチオンを表す。
21 及びA22 は、それぞれ独立に、アニオン性官能基を表す。ただし、A22 は、A21 で表されるアニオン性官能基とは異なる構造を表す。
は、(n1+n2)価の有機基を表す。
n1は、2以上の整数を表す
n2は、1以上の整数を表す。
ただし、上記下記一般式(IIa)において、M21 及びM22 で表されるカチオンをHに置き換えてなる化合物PIIa(上記一般式(IIa-1)で表される化合物に該当する。)において、A22Hで表される酸性部位に由来する酸解離定数a2は、HA21で表される酸性部位に由来する酸解離定数a1よりも大きい。なお、酸解離定数a1と酸解離定数a2の好適値については、上述した通りである。
【0189】
上記一般式(IIa)中、M21 、M22 、A21 、及びA22 は、各々上述した一般式(Ia)中のM11 、M12 、A11 、及びA12 と同義であり、好適態様も同じである。
上記一般式(IIa)中、n1個のM21 同士、n1個のA21 同士は、各々互いに同一の基を表す。
【0190】
上記一般式(IIa)中、Lで表される(n1+n2)価の有機基としては特に制限されず、例えば、下記一般式(A1)及び(A2)で表される基等が挙げられる。なお、下記一般式(A1)及び(A2)中、*のうち少なくとも2個はA21 との結合位置を表し、*のうち少なくとも1個はA22 との結合位置を表す。
【0191】
【化23】
【0192】
上記一般式(A1)及び(A2)中、Tは、3価の炭化水素環基、又は3価の複素環基を表し、Tは、炭素原子、4価の炭化水素環基、又は4価の複素環基を表す。
【0193】
上記炭化水素環基は、芳香族炭化水素環基であっても、脂肪族炭化水素環基であってもよい。上記炭化水素環基に含まれる炭素数は、6~18が好ましく、6~14がより好ましい。
上記複素環基は、芳香族複素環基であっても、脂肪族複素環基であってもよい。上記複素環は、少なくとも1つのN原子、O原子、S原子、又はSe原子を環構造内に有する5~10員環であることが好ましく、5~7員環がより好ましく、5~6員環が更に好ましい。
【0194】
また、上記一般式(A1)及び(A2)中、L21及びL22は、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
21及びL22で表される2価の連結基としては、上記一般式(Ia)中のLで表される2価の連結基と同義であり、好適態様も同じである。
n1は、2以上の整数を表す。上限は特に制限されないが、例えば、6以下の整数であり、4以下の整数が好ましく、3以下の整数がより好ましい。
n2は、1以上の整数を表す。上限は特に制限されないが、例えば、3以下の整数であり、2以下の整数が好ましい。
【0195】
(化合物(III-A))
次に、化合物(III-A)について説明する。
化合物(III-A):上記構造部位Xを2つ以上と、下記構造部位Zとを有する化合物であって、活性光線又は放射線の照射によって、上記構造部位Xに由来する上記第1の酸性部位を2つ以上と上記構造部位Zとを含む酸を発生する化合物
構造部位Z:酸を中和可能な非イオン性の有機部位
ただし、カチオン部位M の少なくとも1つは特定カチオンである。
【0196】
構造部位Z中の酸を中和可能な非イオン性の部位としては特に制限されず、例えば、プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基を含む部位であることが好ましい。
プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基としては、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基、又はπ共役に寄与しない非共有電子対を持った窒素原子を有する官能基等が挙げられる。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0197】
【化24】
【0198】
プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基の部分構造としては、例えば、クラウンエーテル構造、アザクラウンエーテル構造、1~3級アミン構造、ピリジン構造、イミダゾール構造、及びピラジン構造等が挙げられ、なかでも、1~3級アミン構造が好ましい。
【0199】
上記化合物(III-A)において上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなる化合物PIIIにおいて、上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1は、本発明の効果がより優れる点で、2.0以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、-0.1以下が更に好ましい。なお、酸解離定数a1の下限値としては、-15.0以上が好ましい。
なお、化合物PIIIが、上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数を複数有する場合、その最も小さい値を酸解離定数a1とみなす。
つまり、化合物(III-A)が、例えば、上記構造部位Xに由来する上記第1の酸性部位を2つと上記構造部位Zとを有する酸を発生する化合物である場合、化合物PIIIは「2つのHAを有する化合物」に該当する。この化合物PIIIの酸解離定数を求めた場合、化合物PIIIが「1つのA と1つのHAとを有する化合物」となる際のpKaが酸解離定数a1である。つまり、化合物PIIIが、上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数を複数有する場合、その最も小さい値を酸解離定数a1とみなす。
なお、上記化合物(III-A)において上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなる化合物PIIIとは、例えば、化合物(III-A)が後述する化合物(IIIa)で表される化合物である場合、HA31-L-N(R2X)-L-A31Hが該当する。
【0200】
化合物(III-A)としては特に制限されないが、例えば、下記一般式(IIIa)で表される化合物が挙げられる。
【0201】
【化25】
【0202】
一般式(IIIa)中、「M31 31 」は、構造部位Xに該当する。化合物(IIIa)は、活性光線又は放射線の照射によって、HA31-L-N(R2X)-L-A31Hで表される酸を発生する。つまり、「M31 31 」は、HA31で表される第1の酸性部位を形成する。
【0203】
一般式(IIIa)中、M31 は、特定カチオンを表す。
31 は、アニオン性官能基を表す。
及びLは、それぞれ独立に、2価の連結基を表す。
2Xは、1価の有機基を表す。
【0204】
上記一般式(IIIa)中、M31 、及びA31 は、各々上述した一般式(Ia)中のM11 、及びA11 と同義であり、好適態様も同じである。
上記一般式(IIIa)中、L及びLは、各々上述した一般式(Ia)中のLと同義であり、好適態様も同じである。
上記一般式(IIIa)中、2個のM31 同士、及び2個のA31 同士は、各々互いに同一の基を表す。
【0205】
一般式(IIIa)中、R2Xで表される1価の有機基としては特に制限されず、例えば、-CH-が、-CO-、-NH-、-O-、-S-、-SO-、及び-SO-よりなる群より選ばれる1種又は2種以上の組み合わせで置換されていてもよい、アルキル基(好ましくは炭素数1~10。直鎖状でも分岐鎖状でもよい)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~15)、又はアルケニル基(好ましくは炭素数2~6)等が挙げられる。
また、上記アルキレン基、上記シクロアルキレン基、及び上記アルケニレン基は、置換基で置換されていてもよい。
【0206】
上記化合物(I-A)~(III-A)で表される化合物の分子量は300~3000が好ましく、500~2000がより好ましく、700~1500が更に好ましい。
【0207】
特定化合物の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0208】
【化26】
【0209】
【化27】
【0210】
本発明の組成物において、特定化合物の含有量は、組成物の全固形分に対して、1.0~70.0質量%が好ましく、5.0~70.0質量%がより好ましく、10.0~60.0質量%が更に好ましく、10.0~60.0質量%が特に好ましい。
なお、固形分とは、組成物中の溶剤を除いた成分を意図し、溶剤以外の成分であれば液状成分であっても固形分とみなす。
また、特定化合物は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0211】
<酸の作用により分解して極性が増大する基を有する繰り返し単位を有する樹脂(樹脂(A))>
【0212】
本発明の組成物は、酸の作用により分解して極性が増大する基を有する繰り返し単位を有する樹脂(以下、「酸分解性樹脂」又は「樹脂(A)」ともいう。)を含む。
つまり、本発明のパターン形成方法において、典型的には、現像液としてアルカリ現像液を採用した場合には、ポジ型パターンが好適に形成され、現像液として有機系現像液を採用した場合には、ネガ型パターンが好適に形成される。
樹脂(A)は、酸の作用により分解し極性が増大する基(以下、「酸分解性基」ともいう。)を有する繰り返し単位を含む。
【0213】
上述したように、樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位とは別に、上述した一般式(1)で表されるカチオン(特定カチオン)を有する繰り返し単位(特定繰り返し単位)を更に有する場合がある。
特定繰り返し単位が有する特定カチオンの定義は、上述した通りである。
特定繰り返し単位の構造は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、一般式(U)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0214】
【化28】
【0215】
一般式(U)中、RU1は水素原子又は置換基を表す。置換基の種類は特に制限されないが、アルキル基及びハロゲン原子が挙げられる。
U1は、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、-O-、-OC-、-CO-、-COO-、-OCO-、-S-、-N-、CS-、-SO-、―SO-、置換基を有していてもよい炭化水素基(例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、及びアリーレン基等)、及びこれらの複数が連結した連結基等が挙げられる。
は、アニオン性官能基を表す。アニオン性官能基の定義は、上述した通りである。
は特定カチオンを表す。Z の定義は、上述した一般式(3)中のZ と同義である。
【0216】
樹脂(A)が特定繰り返し単位を有する場合、特定繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、10~90モル%が好ましく、20~80モル%がより好ましく、30~70モル%が更に好ましい。
【0217】
(酸分解性基を有する繰り返し単位)
酸分解性基とは、酸の作用により分解して極性基を生じる基をいう。酸分解性基は、酸の作用により脱離する脱離基で極性基が保護された構造を有することが好ましい。つまり、樹脂(A)は、酸の作用により分解し、極性基を生じる基を有する繰り返し単位を有する。この繰り返し単位を有する樹脂は、酸の作用により極性が増大してアルカリ現像液に対する溶解度が増大し、有機溶剤に対する溶解度が減少する。
【0218】
極性基としては、アルカリ可溶性基が好ましく、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基、並びに、アルコール性水酸基等が挙げられる。
なかでも、極性基としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、又は、スルホン酸基が好ましい。
【0219】
酸の作用により脱離する脱離基としては、例えば、一般式(Y1)~(Y4)で表される基が挙げられる。
一般式(Y1):-C(Rx)(Rx)(Rx
一般式(Y2):-C(=O)OC(Rx)(Rx)(Rx
一般式(Y3):-C(R36)(R37)(OR38
一般式(Y4):-C(Rn)(H)(Ar)
【0220】
一般式(Y1)及び(Y2)中、Rx~Rxは、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)又はシクロアルキル基(単環若しくは多環)、アルケニル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、又は、アリール基(単環若しくは多環)を表す。なお、Rx~Rxの全てがアルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)である場合、Rx~Rxのうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
なかでも、Rx~Rxは、それぞれ独立に、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表すことが好ましく、Rx~Rxは、それぞれ独立に、直鎖状のアルキル基を表すことがより好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して、単環又は多環を形成してもよい。
Rx~Rxのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び、t-ブチル基等の炭素数1~5のアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びにノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのアリール基としては、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及び、アントリル基等が挙げられる。
Rx~Rxのアルケニル基としては、ビニル基が好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成される環としては、シクロアルキル基が好ましい。Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、若しくは、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、若しくは、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましく、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基がより好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基、又は、ビニリデン基で置き換わっていてもよい。また、これらのシクロアルキル基は、シクロアルカン環を構成するエチレン基の1つ以上が、ビニレン基で置き換わっていてもよい。
一般式(Y1)又は(Y2)で表される基は、例えば、Rxがメチル基又はエチル基であり、RxとRxとが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0221】
一般式(Y3)中、R36~R38は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。R37とR38とは、互いに結合して環を形成してもよい。1価の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基等が挙げられる。R36は水素原子であることも好ましい。
なお、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アリール基、及び、上記アラルキル基には、酸素原子等のヘテロ原子及び/又はカルボニル基等のヘテロ原子を有する基が含まれていてもよい。例えば、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アリール基、及び、上記アラルキル基は、例えば、メチレン基の1つ以上が、酸素原子等のヘテロ原子及び/又はカルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
また、R38は、繰り返し単位の主鎖が有する別の置換基と互いに結合して、環を形成してもよい。R38と繰り返し単位の主鎖が有する別の置換基とが互いに結合して形成する基は、メチレン基等のアルキレン基が好ましい。
【0222】
一般式(Y3)としては、下記式(Y3-1)で表される基が好ましい。
【0223】
【化29】
【0224】
ここで、L及びLは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とアリール基とを組み合わせた基)を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、ヘテロ原子を含んでいてもよいアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいシクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基、アルデヒド基、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)を表す。
アルキル基及びシクロアルキル基は、例えば、メチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
なお、L及びLのうち一方は水素原子であり、他方はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は、アルキレン基とアリール基とを組み合わせた基であることが好ましい。
Q、M、及び、Lの少なくとも2つが結合して環(好ましくは、5員環若しくは6員環)を形成してもよい。
パターンの微細化の点では、Lが2級又は3級アルキル基であることが好ましく、3級アルキル基であることがより好ましい。2級アルキル基としては、イソプロピル基、シクロヘキシル基又はノルボルニル基が挙げられ、3級アルキル基としては、tert-ブチル基又はアダマンタン基が挙げられる。これらの態様では、Tg(ガラス転移温度)及び活性化エネルギーが高くなるため、膜強度の担保に加え、かぶりの抑制ができる。
【0225】
一般式(Y4)中、Arは、芳香環基を表す。Rnは、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アリール基を表す。RnとArとは互いに結合して非芳香族環を形成してもよい。Arはより好ましくはアリール基である。
【0226】
繰り返し単位の酸分解性が優れる点から、極性基を保護する脱離基において、極性基(又はその残基)に非芳香族環が直接結合している場合、上記非芳香族環中の、上記極性基(又はその残基)と直接結合している環員原子に隣接する環員原子は、置換基としてフッ素原子等のハロゲン原子を有さないのも好ましい。
【0227】
酸の作用により脱離する脱離基は、他にも、3-メチル-2-シクロペンテニル基のような置換基(アルキル基等)を有する2-シクロペンテニル基、及び、1,1,4,4-テトラメチルシクロヘキシル基のような置換基(アルキル基等)を有するシクロヘキシル基でもよい。
【0228】
酸分解性基を有する繰り返し単位としては、一般式(A)で表される繰り返し単位も好ましい。
【0229】
【化30】
【0230】
は、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい2価の連結基を表し、Rはフッ素原子、ヨウ素原子、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基、又は水素原子を表し、Rは酸の作用によって脱離し、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい脱離基を表す。ただし、L、R、及び、Rのうち少なくとも1つは、フッ素原子又はヨウ素原子を有する。
は、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい2価の連結基を表す。フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい2価の連結基としては、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい炭化水素基(例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基等)、及び、これらの複数が連結した連結基等が挙げられる。なかでも、Lとしては、-CO-、又は、-アリーレン基-フッ素原子若しくはヨウ素原子を有するアルキレン基-が好ましい。
アリーレン基としては、フェニレン基が好ましい。
アルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルキレン基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
フッ素原子又はヨウ素原子を有するアルキレン基に含まれるフッ素原子及びヨウ素原子の合計数は特に制限されないが、2以上が好ましく、2~10がより好ましく、3~6が更に好ましい。
【0231】
は、フッ素原子、ヨウ素原子、フッ素原子若しくはヨウ素原子が有していてもよいアルキル基、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基、又は水素原子を表す。
アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
フッ素原子又はヨウ素原子を有するアルキル基に含まれるフッ素原子及びヨウ素原子の合計数は特に制限されないが、1以上が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。
上記アルキル基は、ハロゲン原子以外の酸素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0232】
は、酸の作用によって脱離し、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい脱離基を表す。
なかでも、脱離基としては、一般式(Z1)~(Z4)で表される基が挙げられる。
一般式(Z1):-C(Rx11)(Rx12)(Rx13
一般式(Z2):-C(=O)OC(Rx11)(Rx12)(Rx13
一般式(Z3):-C(R136)(R137)(OR138
一般式(Z4):-C(Rn)(H)(Ar
【0233】
一般式(Z1)及び(Z2)中、Rx11~Rx13は、それぞれ独立に、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基(単環若しくは多環)、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアルケニル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、又は、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基(単環若しくは多環)を表す。なお、Rx11~Rx13の全てがアルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)である場合、Rx11~Rx13のうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
Rx11~Rx13は、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい点以外は、上述した(Y1)、(Y2)中のRx~Rxと同じであり、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、及び、アリール基の定義及び好適範囲と同じである。
【0234】
一般式(Z3)中、R136~R138は、それぞれ独立に、水素原子、又は、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよい1価の有機基を表す。R137とR138とは、互いに結合して環を形成してもよい。フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい1価の有機基としては、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよいアリール基、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよいアラルキル基、及び、これらを組み合わせた基(例えば、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよいアルキル基とフッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基とを組み合わせた基)が挙げられる。
なお、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アリール基、及び、上記アラルキル基には、フッ素原子及びヨウ素原子以外に、酸素原子等のヘテロ原子が含まれていてもよい。つまり、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アリール基、及び、上記アラルキル基は、例えば、メチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
また、R138は、繰り返し単位の主鎖が有する別の置換基と互いに結合して、環を形成してもよい。この場合、R138と繰り返し単位の主鎖が有する別の置換基とが互いに結合して形成する基は、メチレン基等のアルキレン基が好ましい。
【0235】
一般式(Z3)としては、下記式(Z3-1)で表される基が好ましい。
【0236】
【化31】
【0237】
ここで、L11及びL12は、それぞれ独立に、水素原子;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群から選択されるヘテロ原子を有していてもよいアルキル基;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群から選択されるヘテロ原子を有していてもよいシクロアルキル基;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群から選択されるヘテロ原子を有していてもよいアリール基;又はこれらを組み合わせた基(例えば、フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群から選択されるヘテロ原子を有していてもよいアルキル基と、フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群から選択されるヘテロ原子を有していてもよいシクロアルキル基と、を組み合わせた基)を表す。
は、単結合又は2価の連結基を表す。
は、フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群から選択されるヘテロ原子を有していてもよいアルキル基;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群から選択されるヘテロ原子を有していてもよいシクロアルキル基;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群から選択されるアリール基;アミノ基;アンモニウム基;メルカプト基;シアノ基;アルデヒド基;又はこれらを組み合わせた基(例えば、フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群から選択されるヘテロ原子を有していてもよいアルキル基と、フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群から選択されるヘテロ原子を有していてもよいシクロアルキル基と、を組み合わせた基)を表す。
【0238】
一般式(Y4)中、Arは、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい芳香環基を表す。Rnは、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基、又は、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基を表す。RnとArとは互いに結合して非芳香族環を形成してもよい。
【0239】
酸分解性基を有する繰り返し単位としては、一般式(AI)で表される繰り返し単位も好ましい。
【0240】
【化32】
【0241】
一般式(AI)において、
Xaは、水素原子、又は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
Tは、単結合、又は、2価の連結基を表す。
Rx~Rxは、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、シクロアルキル基(単環若しくは多環)、アルケニル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、又は、アリール(単環若しくは多環)基を表す。ただし、Rx~Rxの全てがアルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)である場合、Rx~Rxのうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して、単環又は多環(単環又は多環のシクロアルキル基等)を形成してもよい。
【0242】
Xaにより表される、置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基又は-CH-R11で表される基が挙げられる。R11は、ハロゲン原子(フッ素原子等)、水酸基又は1価の有機基を表し、例えば、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数5以下のアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数5以下のアシル基、及び、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数5以下のアルコキシ基が挙げられ、炭素数3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。上記アルキル基の炭素数の下限は、1以上が好ましい。Xaとしては、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、又は、ヒドロキシメチル基が好ましい。
【0243】
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、芳香環基、-COO-Rt-基、及び、-O-Rt-基等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基、又は、シクロアルキレン基を表す。
Tは、単結合又は-COO-Rt-基が好ましい。Tが-COO-Rt-基を表す場合、Rtは、炭素数1~5のアルキレン基が好ましく、-CH-基、-(CH-基、又は、-(CH-基がより好ましい。
【0244】
Rx~Rxのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び、t-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのアリール基としては、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及び、アントリル基等が挙げられる。
Rx~Rxのアルケニル基としては、ビニル基が好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基が好ましく、その他にも、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。なかでも、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基、又は、ビニリデン基で置き換わっていてもよい。また、これらのシクロアルキル基は、シクロアルカン環を構成するエチレン基の1つ以上が、ビニレン基で置き換わっていてもよい。
一般式(AI)で表される繰り返し単位は、例えば、Rxがメチル基又はエチル基であり、RxとRxとが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0245】
上記各基が置換基を有する場合、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1~4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1~4)、カルボキシル基、及び、アルコキシカルボニル基(炭素数2~6)等が挙げられる。置換基中の炭素数は、8以下が好ましい。下限は、1以上が好ましい。
【0246】
一般式(AI)で表される繰り返し単位としては、好ましくは、酸分解性(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル系繰り返し単位(Xaが水素原子又はメチル基を表し、かつ、Tが単結合を表す繰り返し単位)である。
【0247】
酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、15~80モル%が好ましく、20~70モル%がより好ましく、20~65モル%が更に好ましい。
【0248】
酸分解性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。なお、式中、XaはH、F、CH、CF、及び、CHOHのいずれかの基を表し、Rxa及びRxbはそれぞれ独立に炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表す。
【0249】
【化33】
【0250】
【化34】
【0251】
【化35】
【0252】
【化36】
【0253】
【化37】
【0254】
樹脂(A)は、不飽和結合を含む酸分解性基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
不飽和結合を含む酸分解性基を有する繰り返し単位としては、一般式(B)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0255】
【化38】
【0256】
一般式(B)において、
Xbは、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
Lは、単結合、又は置換基を有してもよい2価の連結基を表す。
Ry~Ryは、それぞれ独立に、直鎖状、分岐鎖状のアルキル基、単環状、多環状のシクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、単環若しくは多環のアリール基を表す。ただし、Ry~Ryのうち少なくとも1つはアルケニル基、アルキニル基、単環若しくは多環のシクロアルケニル基、又は、単環若しくは多環のアリール基を表す。
Ry~Ryの2つが結合して、単環又は多環(単環又は多環のシクロアルキル基、シクロアルケニル基等)を形成してもよい。
【0257】
Xbにより表される、置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基又は-CH-R11で表される基が挙げられる。R11は、ハロゲン原子(フッ素原子等)、水酸基又は1価の有機基を表し、例えば、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアルキル基、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアシル基、及びハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアルコキシ基が挙げられ、炭素数3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。炭素数の下限は、1以上が好ましい。Xbとしては、水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、又はヒドロキシメチル基が好ましい。
【0258】
Lの置換基を有してもよい2価の連結基としては、-Rt-基、-CO-基、-COO-Rt-基、-COO-Rt-CO-基、-Rt-CO-基、及び-O-Rt-基が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基、シクロアルキレン基、又は芳香環基を表し、芳香環基が好ましい。
Lとしては、-Rt-基、-CO-基、-COO-Rt-CO-基、又は、-Rt-CO-基が好ましい。Rtは、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基等の置換基を有していてもよい。芳香族基が好ましい。
【0259】
Ry~Ryのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及びt-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
Ry~Ryのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又はノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Ry~Ryのアリール基としては、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
Ry~Ryのアルケニル基としては、ビニル基が好ましい。
Ry~Ryのアルキニル基としては、エチニル基が好ましい。
Ry~Ryのシクロアルケニル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基の一部に二重結合を含む構造が好ましい。
Ry~Ryの2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基が好ましく、その他にも、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。なかでも、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基が好ましい。
Ry~Ryの2つが結合して形成されるシクロアルキル基、又はシクロアルケニル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、カルボニル基、-SO-基、-SO-基等のヘテロ原子を有する基、又はビニリデン基、又はそれらの組み合わせで置き換わっていてもよい。また、これらのシクロアルキル基、又はシクロアルケニル基は、シクロアルカン環、又はシクロアルケン環を構成するエチレン基の1つ以上が、ビニレン基で置き換わっていてもよい。
一般式(B)で表される繰り返し単位は、例えば、Ryがメチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、又はアリール基であり、RyとRxとが結合して上述のシクロアルキル基、又はシクロアルケニル基を形成している態様が好ましい。
【0260】
上記各基が置換基を有する場合、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1~4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1~4)、カルボキシル基、及びアルコキシカルボニル基(炭素数2~6)等が挙げられる。置換基中の炭素数は、8以下が好ましい。炭素数の下限は、1以上が好ましい。
【0261】
一般式(B)で表される繰り返し単位としては、好ましくは、酸分解性(メタ)アクリル酸3級エステル系繰り返し単位(Xbが水素原子又はメチル基を表し、且つ、Lが-CO-基を表す繰り返し単位)、酸分解性ヒドロキシスチレン3級アルキルエーテル系繰り返し単位(Xbが水素原子又はメチル基を表し、且つ、Lがフェニル基を表す繰り返し単位)、酸分解性スチレンカルボン酸3級エステル系繰り返し単位(Xbが水素原子又はメチル基を表し、且つ、Lが-Rt-CO-基(Rtは芳香族基)を表す繰り返し単位)である。
【0262】
不飽和結合を含む酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、15モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上が更に好ましい。また、その上限値としては、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましく、60モル%以下が更に好ましい。
【0263】
不飽和結合を含む酸分解性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。なお、式中、Xb及びLは上記記載の置換基及び連結基のいずれかを表し、Arは芳香族基を表し、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アシロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、エステル基(-OCOR’’’又は-COOR’’’:R’’’は炭素数1~20のアルキル基又はフッ素化アルキル基)、又は、カルボキシル基等の置換基を表し、R’は直鎖状、分岐鎖状のアルキル基、単環状、多環状のシクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又は単環若しくは多環のアリール基を表し、Qは酸素原子等のヘテロ原子、カルボニル基、-SO-基、-SO-基等のヘテロ原子を有する基、ビニリデン基、又はそれらの組み合わせを表し、n及びmは0以上の整数を表す。
【0264】
【化39】
【0265】
【化40】
【0266】
【化41】
【0267】
【化42】
【0268】
樹脂(A)は、上述した繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。
例えば、樹脂(A)は、以下のA群からなる群から選択される少なくとも1種の繰り返し単位、及び/又は以下のB群からなる群から選択される少なくとも1種の繰り返し単位を含んでいてもよい。
A群:以下の(20)~(29)の繰り返し単位からなる群。
(20)後述する、酸基を有する繰り返し単位
(21)後述する、フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位
(22)後述する、ラクトン基、スルトン基、又は、カーボネート基を有する繰り返し単位
(23)後述する、光酸発生基を有する繰り返し単位
(24)後述する、一般式(V-1)又は下記一般式(V-2)で表される繰り返し単位
(25)後述する、式(A)で表される繰り返し単位
(26)後述する、式(B)で表される繰り返し単位
(27)後述する、式(C)で表される繰り返し単位
(28)後述する、式(D)で表される繰り返し単位
(29)後述する、式(E)で表される繰り返し単位
B群:以下の(30)~(32)の繰り返し単位からなる群。
(30)後述する、ラクトン基、スルトン基、カーボネート基、水酸基、シアノ基、及び、アルカリ可溶性基から選択される少なくとも1種類の基を有する繰り返し単位
(31)後述する、脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位
(32)後述する、水酸基及びシアノ基のいずれも有さない、一般式(III)で表される繰り返し単位
【0269】
本発明の組成物がEUV用の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物として用いられる場合、樹脂(A)は上記A群からなる群から選択される少なくとも1種の繰り返し単位を有することが好ましい。
また、組成物がEUV用の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物として用いられる場合、樹脂(A)は、フッ素原子及びヨウ素原子の少なくとも一方を含むことが好ましい。樹脂(A)がフッ素原子及びヨウ素原子の両方を含む場合、樹脂(A)は、フッ素原子及びヨウ素原子の両方を含む1つの繰り返し単位を有していてもよいし、樹脂(A)は、フッ素原子を有する繰り返し単位とヨウ素原子を含む繰り返し単位との2種を含んでいてもよい。
また、組成物がEUV用の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物として用いられる場合、樹脂(A)が、芳香族基を有する繰り返し単位を有するのも好ましい。
本発明の組成物がArF用の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物として用いられる場合、樹脂(A)は上記B群からなる群から選択される少なくとも1種の繰り返し単位を有することが好ましい。
なお、本発明の組成物がArF用の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物として用いられる場合、樹脂(A)は、フッ素原子及び珪素原子のいずれも含まないことが好ましい。
また、組成物がArF用の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物として用いられる場合、樹脂(A)は、芳香族基を有さないことが好ましい。
【0270】
(酸基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、酸基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
酸基としては、pKaが13以下の酸基が好ましい。上記酸基の酸解離定数は、上記のように、13以下が好ましく、3~13がより好ましく、5~10が更に好ましい。
酸基としては、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、スルホン酸基、スルホンアミド基、又は、イソプロパノール基が好ましい。
樹脂(A)が、pKaが13以下の酸基を有する場合、樹脂(A)中における酸基の含有量は特に制限されないが、0.2~6.0mmol/gの場合が多い。なかでも、0.8~6.0mmol/gが好ましく、1.2~5.0mmol/gがより好ましく、1.6~4.0mmol/gが更に好ましい。酸基の含有量が上記範囲内であれば、現像が良好に進行し、形成されるパターン形状に優れ、解像性にも優れる。
【0271】
また、上記ヘキサフルオロイソプロパノール基は、フッ素原子の1つ以上(好ましくは1~2つ)が、フッ素原子以外の基(アルコキシカルボニル基等)で置換されてもよい。このように形成された-C(CF)(OH)-CF-も、酸基として好ましい。また、フッ素原子の1つ以上がフッ素原子以外の基に置換されて、-C(CF)(OH)-CF-を含む環を形成してもよい。
酸基を有する繰り返し単位は、上述の酸の作用により脱離する脱離基で極性基が保護された構造を有する繰り返し単位、及び、後述するラクトン基、スルトン基、又は、カーボネート基を有する繰り返し単位とは異なる繰り返し単位であるのが好ましい。
【0272】
酸基を有する繰り返し単位は、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい。
【0273】
酸基を有する繰り返し単位としては、式(B)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0274】
【化43】
【0275】
は、水素原子、又は、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよい1価の有機基を表す。
フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい1価の有機基としては、-L-Rで表される基が好ましい。Lは、単結合、又は、エステル基を表す。Rは、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基、又は、これらを組み合わせた基を表す。
【0276】
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、又は、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基を表す。
【0277】
は、単結合、又は、エステル基を表す。
は、(n+m+1)価の芳香族炭化水素環基、又は、(n+m+1)価の脂環炭化水素環基を表す。芳香族炭化水素環基としては、ベンゼン環基、及び、ナフタレン環基が挙げられる。脂環炭化水素環基としては、単環であっても、多環であってもよく、例えば、シクロアルキル環基が挙げられる。
は、水酸基、又は、フッ素化アルコール基(好ましくは、ヘキサフルオロイソプロパノール基)を表す。なお、Rが水酸基の場合、Lは(n+m+1)価の芳香族炭化水素環基であることが好ましい。
は、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又は、ヨウ素原子が挙げられる。
mは、1以上の整数を表す。mは、1~3の整数が好ましく、1~2の整数が好ましい。
nは、0又は1以上の整数を表す。nは、1~4の整数が好ましい。
なお、(n+m+1)は、2~5の整数が好ましい。
【0278】
酸基を有する繰り返し単位としては、以下の繰り返し単位が挙げられる。
【0279】
【化44】
【0280】
酸基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(I)で表される繰り返し単位も好ましい。
【0281】
【化45】
【0282】
一般式(I)中、
41、R42及びR43は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。ただし、R42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。
は、単結合、-COO-、又は、-CONR64-を表し、R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
は、単結合又はアルキレン基を表す。
Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。
nは、1~5の整数を表す。
【0283】
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、及び、ドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基が好ましく、炭素数8以下のアルキル基がより好ましく、炭素数3以下のアルキル基が更に好ましい。炭素数の下限は、1以上が好ましい。
【0284】
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のシクロアルキル基としては、単環でも、多環でもよい。なかでも、シクロプロピル基、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の炭素数3~8個で単環のシクロアルキル基が好ましい。
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のアルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R41、R42、R43におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
【0285】
上記各基における好ましい置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、及び、ニトロ基が挙げられる。置換基の炭素数は8以下が好ましい。炭素数の下限は、1以上が好ましい。
【0286】
Arは、(n+1)価の芳香環基を表す。nが1である場合における2価の芳香環基は、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、及び、アントラセニレン基等の炭素数6~18のアリーレン基、又は、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾピロール環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、トリアゾール環、チアジアゾール環、及び、チアゾール環等のヘテロ環を含む2価の芳香環基が好ましい。なお、上記芳香環基は、置換基を有していてもよい。
【0287】
nが2以上の整数である場合における(n+1)価の芳香環基の具体例としては、2価の芳香環基の上記した具体例から、(n-1)個の任意の水素原子を除してなる基が挙げられる。
(n+1)価の芳香環基は、更に置換基を有していてもよい。
【0288】
上述したアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルキレン基、及び、(n+1)価の芳香環基が有し得る置換基としては、例えば、一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43で挙げたアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、及び、ブトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基等のアリール基;等が挙げられる。
により表される-CONR64-(R64は、水素原子又はアルキル基を表す)におけるR64のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、及び、ドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、炭素数8以下のアルキル基が好ましい。炭素数の下限は、1以上が好ましい。
としては、単結合、-COO-、又は、-CONH-が好ましく、単結合、又は、-COO-がより好ましい。
【0289】
におけるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、及び、オクチレン基等の炭素数1~8のアルキレン基が好ましい。
Arとしては、炭素数6~18の芳香環基が好ましく、ベンゼン環基、ナフタレン環基、又は、ビフェニレン環基がより好ましい。
一般式(I)で表される繰り返し単位は、ヒドロキシスチレン構造を備えていることが好ましい。即ち、Arは、ベンゼン環基であることが好ましい。
【0290】
一般式(I)で表される繰り返し単位としては、下記一般式(1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0291】
【化46】
【0292】
一般式(1)中、
Aは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基を表す。
Rは、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基を表し、Rが複数個ある場合には同じであっても異なっていてもよい。複数のRを有する場合には、互いに共同して環を形成していてもよい。Rとしては水素原子が好ましい。
aは1~3の整数を表す。
bは0~(5-a)の整数を表す。
【0293】
以下、酸基を有する繰り返し単位を例示する。式中、aは1又は2を表す。
【0294】
【化47】
【0295】
【化48】
【0296】
【化49】
【0297】
なお、上記繰り返し単位のなかでも、以下に具体的に記載する繰り返し単位が好ましい。式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、aは2又は3を表す。
【0298】
【化50】
【0299】
【化51】
【0300】
酸基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、10~70モル%が好ましく、10~60モル%がより好ましく、10~50モル%が更に好ましい。
【0301】
(フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、上述した<酸分解性基を有する繰り返し単位>及び<酸基を有する繰り返し単位>とは別に、フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位を有していてもよい。また、ここでいう<フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位>は、後述の<ラクトン基、スルトン基、又は、カーボネート基を有する繰り返し単位>、及び、<光酸発生基を有する繰り返し単位>等の、A群に属する他の種類の繰り返し単位とは異なるのが好ましい。
【0302】
フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位としては、式(C)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0303】
【化52】
【0304】
は、単結合、又は、エステル基を表す。
は、水素原子、又は、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基を表す。
10は、水素原子、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基、又は、これらを組み合わせた基を表す。
【0305】
フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位を以下に例示する。
【0306】
【化53】
【0307】
フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、0~60モル%が好ましく、5~60モル%がより好ましく、10~60モル%が更に好ましい。
なお、上述したように、フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位には、<酸分解性基を有する繰り返し単位>及び<酸基を有する繰り返し単位>は含まれないことから、上記フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位の含有量も、<酸分解性基を有する繰り返し単位>及び<酸基を有する繰り返し単位>を除いたフッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位の含有量を意図する。
【0308】
樹脂(A)の繰り返し単位のうち、フッ素原子及びヨウ素原子の少なくとも一方を含む繰り返し単位の合計含有量は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、1~100モル%が好ましく、5~80モル%がより好ましく、10~60モル%が更に好ましい。
なお、フッ素原子及びヨウ素原子の少なくとも一方を含む繰り返し単位としては、例えば、フッ素原子又はヨウ素原子を有し、かつ、酸分解性基を有する繰り返し単位、フッ素原子又はヨウ素原子を有し、かつ、酸基を有する繰り返し単位、及び、フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位が挙げられる。
【0309】
(ラクトン基、スルトン基、又は、カーボネート基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、ラクトン基、スルトン基、及び、カーボネート基からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位(以下、総称して「ラクトン基、スルトン基、又は、カーボネート基を有する繰り返し単位」ともいう。)を有していてもよい。
ラクトン基、スルトン基、又は、カーボネート基を有する繰り返し単位は、ヘキサフルオロプロパノール基等の酸基を有さないのも好ましい。
【0310】
ラクトン基又はスルトン基としては、ラクトン構造又はスルトン構造を有していればよい。ラクトン構造又はスルトン構造は、5~7員環ラクトン構造又は5~7員環スルトン構造が好ましい。なかでも、ビシクロ構造若しくはスピロ構造を形成する形で5~7員環ラクトン構造に他の環構造が縮環しているもの、又は、ビシクロ構造若しくはスピロ構造を形成する形で5~7員環スルトン構造に他の環構造が縮環しているもの、がより好ましい。
樹脂(A)は、下記一般式(LC1-1)~(LC1-21)のいずれかで表されるラクトン構造、又は、下記一般式(SL1-1)~(SL1-3)のいずれかで表されるスルトン構造の環員原子から、水素原子を1つ以上引き抜いてなるラクトン基又はスルトン基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
また、ラクトン基又はスルトン基が主鎖に直接結合していてもよい。例えば、ラクトン基又はスルトン基の環員原子が、樹脂(A)の主鎖を構成してもよい。
【0311】
【化54】
【0312】
上記ラクトン構造又はスルトン構造部分は、置換基(Rb)を有していてもよい。好ましい置換基(Rb)としては、炭素数1~8のアルキル基、炭素数4~7のシクロアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、及び、酸分解性基等が挙げられる。n2は、0~4の整数を表す。n2が2以上の時、複数存在するRbは、異なっていてもよく、また、複数存在するRb同士が結合して環を形成してもよい。
【0313】
一般式(LC1-1)~(LC1-21)のいずれかで表されるラクトン構造又は一般式(SL1-1)~(SL1-3)のいずれかで表されるスルトン構造を有する基を有する繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(AI)で表される繰り返し単位等が挙げられる。
【0314】
【化55】
【0315】
一般式(AI)中、Rbは、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1~4のアルキル基を表す。
Rbのアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、及び、ハロゲン原子が挙げられる。
Rbのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられる。Rbは、水素原子又はメチル基が好ましい。
Abは、単結合、アルキレン基、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有する2価の連結基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カルボキシル基、又は、これらを組み合わせた2価の基を表す。なかでも、単結合、又は、-Ab-CO-で表される連結基が好ましい。Abは、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又は、単環若しくは多環のシクロアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、又は、ノルボルニレン基が好ましい。
Vは、一般式(LC1-1)~(LC1-21)のいずれかで表されるラクトン構造の環員原子から水素原子を1つ引き抜いてなる基、又は、一般式(SL1-1)~(SL1-3)のいずれかで表されるスルトン構造の環員原子から水素原子を1つ引き抜いてなる基を表す。
【0316】
ラクトン基又はスルトン基を有する繰り返し単位に、光学異性体が存在する場合、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体を混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)は90以上が好ましく、95以上がより好ましい。上限は、100以下が好ましい。
【0317】
カーボネート基としては、環状炭酸エステル基が好ましい。
環状炭酸エステル基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(A-1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0318】
【化56】
【0319】
一般式(A-1)中、R は、水素原子、ハロゲン原子、又は、1価の有機基(好ましくはメチル基)を表す。
nは0以上の整数を表す。
は、置換基を表す。nが2以上の場合、複数存在するR は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Aは、単結合又は2価の連結基を表す。上記2価の連結基としては、アルキレン基、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有する2価の連結基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カルボキシル基、又は、これらを組み合わせた2価の基が好ましい。
Zは、式中の-O-CO-O-で表される基と共に単環又は多環を形成する原子団を表す。
【0320】
ラクトン基、スルトン基、又は、カーボネート基を有する繰り返し単位を以下に例示する。
【0321】
【化57】
【0322】
【化58】
【0323】
【化59】
【0324】
ラクトン基、スルトン基、又は、カーボネート基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、1~70モル%が好ましく、5~65モル%がより好ましく、5~60モル%が更に好ましい。
【0325】
(光酸発生基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、上記以外の繰り返し単位として、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基(以下、「光酸発生基」ともいう。)を有する繰り返し単位を有していてもよい。
この場合、この光酸発生基を有する繰り返し単位が、後述する活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、「光酸発生剤」ともいう。)にあたると考えることができる。
このような繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(4)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0326】
【化60】
【0327】
41は、水素原子又はメチル基を表す。L41は、単結合、又は、2価の連結基を表す。L42は、2価の連結基を表す。R40は、活性光線又は放射線の照射により分解して側鎖に酸を発生させる構造部位を表す。
【0328】
一般式(4)で表される繰り返し単位としては、例えば、特開2014-041327号公報の段落[0094]~[0105]に記載された繰り返し単位、及び、国際公開第2018/193954号公報の段落[0094]に記載された繰り返し単位が挙げられる。
【0329】
光酸発生基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、1~40モル%が好ましく、5~35モル%がより好ましく、5~30モル%が更に好ましい。
【0330】
(一般式(V-1)又は(V-2)で表される繰り返し単位)
樹脂(A)は、下記一般式(V-1)、又は、下記一般式(V-2)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
下記一般式(V-1)、及び、下記一般式(V-2)で表される繰り返し単位は上述の繰り返し単位とは異なる繰り返し単位であるのが好ましい。
【0331】
【化61】
【0332】
式中、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アシロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、エステル基(-OCOR又は-COOR:Rは炭素数1~6のアルキル基又はフッ素化アルキル基)、又は、カルボキシル基を表す。アルキル基としては、炭素数1~10の、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が好ましい。
は、0~6の整数を表す。
は、0~4の整数を表す。
は、メチレン基、酸素原子、又は、硫黄原子である。
一般式(V-1)又は(V-2)で表される繰り返し単位を以下に例示する。
【0333】
【化62】
【0334】
(主鎖の運動性を低下させるための繰り返し単位)
樹脂(A)は、発生酸の過剰な拡散又は現像時のパターン崩壊を抑制できる観点から、ガラス転移温度(Tg)が高い方が好ましい。Tgは、90℃より大きいことが好ましく、100℃より大きいことがより好ましく、110℃より大きいことが更に好ましく、125℃より大きいことが特に好ましい。なお、過度な高Tg化は現像液への溶解速度低下を招くため、Tgは400℃以下が好ましく、350℃以下がより好ましい。
なお、本明細書において、樹脂(A)等のポリマーのガラス転移温度(Tg)は、以下の方法で算出する。まず、ポリマー中に含まれる各繰り返し単位のみからなるホモポリマーのTgを、Bicerano法によりそれぞれ算出する。以後、算出されたTgを、「繰り返し単位のTg」という。次に、ポリマー中の全繰り返し単位に対する、各繰り返し単位の質量割合(%)を算出する。次に、Foxの式(Materials Letters 62(2008)3152等に記載)を用いて各質量割合におけるTgを算出して、それらを総和して、ポリマーのTg(℃)とする。
Bicerano法はPrediction of polymer properties, Marcel Dekker Inc, New York(1993)等に記載されている。またBicerano法によるTgの算出は、ポリマーの物性概算ソフトウェアMDL Polymer(MDL Information Systems, Inc.)を用いて行うことができる。
【0335】
樹脂(A)のTgを大きくする(好ましくは、Tgを90℃超とする)には、樹脂(A)の主鎖の運動性を低下させることが好ましい。樹脂(A)の主鎖の運動性を低下させる方法は、以下の(a)~(e)の方法が挙げられる。
(a)主鎖への嵩高い置換基の導入
(b)主鎖への複数の置換基の導入
(c)主鎖近傍への樹脂(A)間の相互作用を誘発する置換基の導入
(d)環状構造での主鎖形成
(e)主鎖への環状構造の連結
なお、樹脂(A)は、ホモポリマーのTgが130℃以上を示す繰り返し単位を有することが好ましい。
なお、ホモポリマーのTgが130℃以上を示す繰り返し単位の種類は特に制限されず、Bicerano法により算出されるホモポリマーのTgが130℃以上である繰り返し単位であればよい。なお、後述する式(A)~式(E)で表される繰り返し単位中の官能基の種類によっては、ホモポリマーのTgが130℃以上を示す繰り返し単位に該当する。
【0336】
(式(A)で表される繰り返し単位)
上記(a)の具体的な達成手段の一例としては、樹脂(A)に式(A)で表される繰り返し単位を導入する方法が挙げられる。
【0337】
【化63】
【0338】
式(A)、Rは、多環構造を有する基を表す。Rは、水素原子、メチル基、又は、エチル基を表す。多環構造を有する基とは、複数の環構造を有する基であり、複数の環構造は縮合していても、縮合していなくてもよい。
式(A)で表される繰り返し単位の具体例としては、国際公開第2018/193954号公報の段落[0107]~[0119]に記載のものが挙げられる。
【0339】
(式(B)で表される繰り返し単位)
上記(b)の具体的な達成手段の一例としては、樹脂(A)に式(B)で表される繰り返し単位を導入する方法が挙げられる。
【0340】
【化64】
【0341】
式(B)中、Rb1~Rb4は、それぞれ独立に、水素原子又は有機基を表し、Rb1~Rb4のうち少なくとも2つ以上が有機基を表す。
また、有機基の少なくとも1つが、繰り返し単位中の主鎖に直接環構造が連結している基である場合、他の有機基の種類は特に制限されない。
また、有機基のいずれも繰り返し単位中の主鎖に直接環構造が連結している基ではない場合、有機基の少なくとも2つ以上は、水素原子を除く構成原子の数が3つ以上である置換基である。
式(B)で表される繰り返し単位の具体例としては、国際公開第2018/193954号公報の段落[0113]~[0115]に記載のものが挙げられる。
【0342】
(式(C)で表される繰り返し単位)
上記(c)の具体的な達成手段の一例としては、樹脂(A)に式(C)で表される繰り返し単位を導入する方法が挙げられる。
【0343】
【化65】
【0344】
式(C)中、Rc1~Rc4は、それぞれ独立に、水素原子又は有機基を表し、Rc1~Rc4のうち少なくとも1つが、主鎖炭素から原子数3以内に水素結合性の水素原子を有する基である。なかでも、樹脂(A)の主鎖間の相互作用を誘発する上で、原子数2以内(より主鎖近傍側)に水素結合性の水素原子を有することが好ましい。
式(C)で表される繰り返し単位の具体例としては、国際公開第2018/193954号公報の段落[0119]~[0121]に記載のものが挙げられる。
【0345】
(式(D)で表される繰り返し単位)
上記(d)の具体的な達成手段の一例としては、樹脂(A)に式(D)で表される繰り返し単位を導入する方法が挙げられる。
【0346】
【化66】
【0347】
式(D)中、「cylic」は、環状構造で主鎖を形成している基を表す。環の構成原子数は特に制限されない。
式(D)で表される繰り返し単位の具体例としては、国際公開第2018/193954号公報の段落[0126]~[0127]に記載のものが挙げられる。
【0348】
(式(E)で表される繰り返し単位)
上記(e)の具体的な達成手段の一例としては、樹脂(A)に式(E)で表される繰り返し単位を導入する方法が挙げられる。
【0349】
【化67】
【0350】
式(E)中、Reは、水素原子又は有機基を表す。有機基としては、置換機を有してもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基等が挙げられる。
「cylic」は、主鎖の炭素原子を含む環状基である。環状基に含まれる原子数は特に制限されない。
式(E)で表される繰り返し単位の具体例としては、国際公開第2018/193954号公報の段落[0131]~[0133]に記載のものが挙げられる。
【0351】
式(E)で表される繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましい。また、その上限値としては、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましい。
【0352】
(ラクトン基、スルトン基、カーボネート基、水酸基、シアノ基、及び、アルカリ可溶性基から選択される少なくとも1種類の基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、ラクトン基、スルトン基、カーボネート基、水酸基、シアノ基、及び、アルカリ可溶性基から選択される少なくとも1種類の基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
樹脂(A)が有するラクトン基、スルトン基、又は、カーボネート基を有する繰り返し単位としては、上述した<ラクトン基、スルトン基、又は、カーボネート基を有する繰り返し単位>で説明した繰り返し単位が挙げられる。好ましい含有量も上述した<ラクトン基、スルトン基、又は、カーボネート基を有する繰り返し単位>で説明した通りである。
【0353】
樹脂(A)は、水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位を有していてもよい。これにより基板密着性、現像液親和性が向上する。
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位は、水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位であることが好ましい。
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位は、酸分解性基を有さないことが好ましい。水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位としては、国際公開第2020/004306号公報の段落[0153]~[0158]に記載のものが挙げられる。
【0354】
樹脂(A)は、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
アルカリ可溶性基としては、カルボキシル基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、ビスルスルホニルイミド基、α位が電子求引性基で置換された脂肪族アルコール(例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール基)が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。樹脂(A)がアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を含むことにより、コンタクトホール用途での解像性が増す。
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸及びメタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、又は、連結基を介して樹脂の主鎖にアルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位が挙げられる。なお、連結基は、単環又は多環の環状炭化水素構造を有していてもよい。
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸又はメタクリル酸による繰り返し単位が好ましい。
【0355】
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、0モル%以上が好ましく、3モル%以上がより好ましく、5モル%以上が更に好ましい。その上限値としては、20モル%以下が好ましく、15モル%以下がより好ましく、10モル%以下が更に好ましい。
【0356】
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。具体例中、RxはH、CH、CHOH、又は、CFを表す。
【0357】
【化68】
【0358】
ラクトン基、水酸基、シアノ基、及び、アルカリ可溶性基から選択される少なくとも1種類の基を有する繰り返し単位として、ラクトン基、水酸基、シアノ基、及び、アルカリ可溶性基から選択される少なくとも2つを有する繰り返し単位が好ましく、シアノ基とラクトン基を有する繰り返し単位がより好ましく、一般式(LC1-4)で表されるラクトン構造にシアノ基が置換した構造を有する繰り返し単位が更に好ましい。
【0359】
(脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位)
樹脂(A)は、脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を有してもよい。これにより液浸露光時にレジスト膜から液浸液への低分子成分の溶出が低減できる。このような繰り返し単位として、例えば、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、ジアマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、又は、シクロヘキシル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位等が挙げられる。
【0360】
(水酸基及びシアノ基のいずれも有さない、一般式(III)で表される繰り返し単位)
樹脂(A)は、水酸基及びシアノ基のいずれも有さない、一般式(III)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
【0361】
【化69】
【0362】
一般式(III)中、Rは少なくとも一つの環状構造を有し、水酸基及びシアノ基のいずれも有さない炭化水素基を表す。
Raは水素原子、アルキル基又は-CH-O-Ra基を表す。式中、Raは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。
【0363】
が有する環状構造には、単環炭化水素基及び多環炭化水素基が含まれる。単環炭化水素基としては、例えば、炭素数3~12(より好ましくは炭素数3~7)のシクロアルキル基、又は、炭素数3~12のシクロアルケニル基が挙げられる。
一般式(III)中の各基の詳細な定義、及び、繰り返し単位の具体例としては、国際公開第2020/004306号公報の段落[0169]~[0173]に記載のものが挙げられる。
【0364】
(その他の繰り返し単位)
更に、樹脂(A)は、上述した繰り返し単位以外の繰り返し単位を有してもよい。
例えば樹脂(A)は、オキサチアン環基を有する繰り返し単位、オキサゾロン環基を有する繰り返し単位、ジオキサン環基を有する繰り返し単位、及び、ヒダントイン環基を有する繰り返し単位からなる群から選択される繰り返し単位を有していてもよい。
このような繰り返し単位を以下に例示する。
【0365】
【化70】
【0366】
樹脂(A)は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性、標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、解像力、耐熱性、及び、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有していてもよい。
【0367】
樹脂(A)としては、(特に、組成物がArF用の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物として用いられる場合)繰り返し単位の全てが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されるのも好ましい。この場合、繰り返し単位の全てがメタクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位の全てがアクリレート系繰り返し単位であるもの、及び、繰り返し単位の全てがメタクリレート系繰り返し単位とアクリレート系繰り返し単位とによるもののいずれのものでも用いることができ、アクリレート系繰り返し単位が全繰り返し単位の50モル%以下であることが好ましい。
【0368】
樹脂(A)は、常法に従って(例えばラジカル重合)合成できる。
GPC法によりポリスチレン換算値として、樹脂(A)の重量平均分子量は、1000~200000が好ましく、3,000~20000がより好ましく、5,000~15000が更に好ましい。樹脂(A)の重量平均分子量を、1000~200000とすることにより、耐熱性及びドライエッチング耐性の劣化をより一層抑制できる。また、現像性の劣化、及び、粘度が高くなって製膜性が劣化することもより一層抑制できる。
樹脂(A)の分散度(分子量分布)は、通常1~5であり、1~3が好ましく、1.20~3.00がより好ましく、1.20~2.00が更に好ましい。分散度が小さいものほど、解像度、及び、レジスト形状がより優れ、更に、レジストパターンの側壁がよりスムーズであり、ラフネス性にもより優れる。
【0369】
本発明の組成物において、樹脂(A)の含有量は、組成物の全固形分に対して、50~99.9質量%が好ましく、60~99.0質量%がより好ましい。
なお、固形分とは、組成物中の溶剤を除いた成分を意図し、溶剤以外の成分であれば液状成分であっても固形分とみなす。
また、樹脂(A)は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0370】
<その他の光酸発生剤>
レジスト組成物は、特定化合物には該当しないその他の光酸発生剤(特定化合物に該当しない、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物)を含んでいてもよい。その他の光酸発生剤は、露光(好ましくはEUV光及び/又はArFの露光)により酸を発生する化合物である。
その他の光酸発生剤は、低分子化合物の形態であってもよく、重合体の一部に組み込まれた形態であってもよい。また、低分子化合物の形態と重合体の一部に組み込まれた形態を併用してもよい。
その他の光酸発生剤が、低分子化合物の形態である場合、分子量は3000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1000以下が更に好ましい。下限は、50以上が好ましい。
その他の光酸発生剤が、重合体の一部に組み込まれた形態である場合、樹脂(A)の一部に組み込まれてもよく、樹脂(A)とは異なる樹脂に組み込まれてもよい。
本発明において、光酸発生剤が、低分子化合物の形態であるのが好ましい。
その他の光酸発生剤は特に限定されず、なかでも、有機酸を発生する化合物が好ましく、
上記有機酸としては、特定化合物が発生し得る有機酸として説明した有機酸が同様に挙げられる。
【0371】
その他の光酸発生剤としては、例えば、「M」で表される化合物(オニウム塩)が挙げられる。
「M」で表される化合物において、Yは、1価の有機アニオンを表す。
「M」におけるYとしては、上述した特定化合物に含まれる有機アニオンのうちの1価の有機アニオンが挙げられる。
「M」で表される化合物において、Mは、1価の有機カチオンを表す。
上記1価の有機カチオンは、それぞれ独立に、一般式(ZaI)で表されるカチオン(カチオン(ZaI))又は一般式(ZaII)で表されるカチオン(カチオン(ZaII))が好ましい。
ただし、一般式(ZaI)で表されるカチオンは、特定化合物(一般式(1)~(3)で表される化合物)におけるカチオン(Y以外の部分)とは異なる。
【0372】
【化71】
【0373】
上記一般式(ZaI)において、
201、R202、及びR203は、それぞれ独立に、有機基を表す。
201、R202、及びR203としての有機基の炭素数は、通常1~30であり、1~20が好ましい。また、R201~R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203の内の2つが結合して形成する基としては、例えば、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)、及び-CH-CH-O-CH-CH-が挙げられる。
【0374】
一般式(ZaI)におけるカチオンとしては、例えば、後述するカチオン(ZaI-1)が挙げられる。
【0375】
カチオン(ZaI-1)は、上記一般式(ZaI)のR201~R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウムカチオンである。
アリールスルホニウムカチオンは、R201~R203の全てがアリール基でもよいし、R201~R203の一部がアリール基であり、残りがアルキル基又はシクロアルキル基であってもよい。
また、R201~R203のうちの1つがアリール基であり、R201~R203のうちの残りの2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203のうちの2つが結合して形成する基としては、例えば、1つ以上のメチレン基が酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、及び/又はカルボニル基で置換されていてもよいアルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基、又は-CH-CH-O-CH-CH-)が挙げられる。
アリールスルホニウムカチオンとしては、例えば、トリアリールスルホニウムカチオン、ジアリールアルキルスルホニウムカチオン、アリールジアルキルスルホニウムカチオン、ジアリールシクロアルキルスルホニウムカチオン、及びアリールジシクロアルキルスルホニウムカチオンが挙げられる。
【0376】
アリールスルホニウムカチオンに含まれるアリール基は、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有するヘテロ環構造を有するアリール基であってもよい。ヘテロ環構造としては、例えば、ピロール残基、フラン残基、チオフェン残基、インドール残基、ベンゾフラン残基、及びベンゾチオフェン残基等が挙げられる。アリールスルホニウムカチオンが2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウムカチオンが必要に応じて有しているアルキル基又はシクロアルキル基は、炭素数1~15の直鎖状アルキル基、炭素数3~15の分岐鎖状のアルキル基、又は、炭素数3~15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、又はシクロヘキシル基がより好ましい。
【0377】
201~R203のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基は、それぞれ独立に、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~14)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキルアルコキシ基(例えば炭素数3~15)、ハロゲン原子(例えばフッ素、ヨウ素)、水酸基、カルボキシル基、エステル基、スルフィニル基、スルホニル基、アルキルチオ基、又はフェニルチオ基が好ましい。
上記置換基は可能な場合は更に置換基を有していてもよく、例えば、上記アルキル基が置換基としてハロゲン原子を有して、トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基となっていてもよい。
上記置換基は任意の組み合わせにより、酸分解性基を形成することも好ましい。酸分解性基とは、酸の作用により分解して極性基を生じる基であり、酸分解性基は、酸の作用により脱離する脱離基で極性基が保護された構造を有することが好ましい。極性基、脱離基、及び、酸分解性基の例示としては、上述した特定化合物で例示したものが挙げられる。
【0378】
他の光酸発生剤としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0379】
【化72】
【0380】
レジスト組成物中がその他の光酸発生剤を含む場合、その含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、組成物の全固形分に対して、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が更に好ましい。また、上記含有量は、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
光酸発生剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0381】
<溶剤>
レジスト組成物は、溶剤を含んでいてもよい。
溶剤は、(M1)プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、並びに、(M2)プロピレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸エステル、酢酸エステル、アルコキシプロピオン酸エステル、鎖状ケトン、環状ケトン、ラクトン、及び、アルキレンカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの少なくとも一方を含んでいるのが好ましい。なお、この溶剤は、成分(M1)及び(M2)以外の成分を更に含んでいてもよい。
【0382】
本発明者らは、このような溶剤と上述した樹脂とを組み合わせて用いると、組成物の塗布性が向上すると共に、現像欠陥数の少ないパターンが形成可能となることを見出している。その理由は必ずしも明らかではないが、これら溶剤は、上述した樹脂の溶解性、沸点及び粘度のバランスが良いため、組成物膜の膜厚のムラ及びスピンコート中の析出物の発生等を抑制できることに起因していると本発明者らは考えている。
成分(M1)及び成分(M2)の詳細は、国際公開第2020/004306号公報の段落[0218]~[0226]に記載される。
【0383】
溶剤は、成分(M1)及び(M2)以外の成分を更に含んでいてもよい。この場合、成分(M1)及び(M2)以外の成分の含有量は、溶剤の全量に対して、5~30質量%が好ましい。
【0384】
レジスト組成物中の溶剤の含有量は、固形分濃度が0.5~30質量%となるように定めるのが好ましく、1~20質量%となるように定めるのがより好ましい。こうすると、レジスト組成物の塗布性を更に向上させられる。
なお、固形分とは、溶剤以外の全ての成分を意味する。
【0385】
<酸拡散制御剤>
レジスト組成物は、酸拡散制御剤を更に含んでいてもよい。酸拡散制御剤は、光酸発生剤から生じた酸をトラップするクエンチャーとして作用し、レジスト膜中における酸の拡散現象を制御する役割を果たす。
酸拡散制御剤は、例えば、塩基性化合物が挙げられる。
塩基性化合物は、下記一般式(A)~(E)で示される構造を有する化合物が好ましい。
【0386】
【化73】
【0387】
一般式(A)及び一般式(E)中、R200、R201及びR202は、同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)、又はアリール基(好ましくは炭素数6~20)を表し、ここで、R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0388】
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基は、炭素数1~20のアミノアルキル基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1~20のシアノアルキル基が好ましい。
203、R204、R205及びR206は、同一でも異なってもよく、炭素数1~20のアルキル基を表す。
これら一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、無置換が好ましい。
【0389】
レジスト組成物は、酸拡散制御剤として、プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下若しくは消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する化合物(以下、「化合物(PA)」ともいう。)を含んでいてもよい。
【0390】
プロトンアクセプター性官能基とは、プロトンと静電的に相互作用し得る基、又は電子を有する官能基であって、例えば、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基、又は、π共役に寄与しない非共有電子対を持った窒素原子を有する官能基を意味する。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記一般式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0391】
【化74】
【0392】
酸拡散制御剤としては、国際公開第2020/004306号公報の段落[0238]~[0271]に記載される化合物が挙げられる。
【0393】
レジスト組成物が酸拡散制御剤を含む場合、酸拡散制御剤の含有量は、レジスト組成物の全固形分に対して、0.001~15質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましい。
【0394】
酸拡散制御剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
また、レジスト組成物が式(d1-1)~(d1-3)のいずれかで表されるアニオンを有する特定化合物及び/又は式(d1-1)~(d1-3)のいずれかで表されるアニオンを有するその他の光酸発生剤(以下、これらを総称して「d1系光酸発生剤」ともいう。)を含む場合、d1系光酸発生剤にも酸拡散制御剤としての役割を持たせることもできる。レジスト組成物がd1系光酸発生剤を含む場合、レジスト組成物が酸拡散制御剤を実質的に含まないのも好ましい。ここで酸拡散制御剤を実質的に含まないとは、酸拡散制御剤の含有量が、d1系光酸発生剤の合計含有量に対して5質量%以下であることを意図する。
また、レジスト組成物がd1系光酸発生剤と酸拡散制御剤との両方を含む場合、その合計含有量は、1~30質量%が好ましく、3~20質量%がより好ましい。
【0395】
光酸発生剤と酸拡散制御剤とのレジスト組成物中の使用割合は、光酸発生剤/酸拡散制御剤(モル比)=2.0~300が好ましい。感度及び解像度の点からモル比は2.0以上が好ましい。上限は特に制限されないが、露光後加熱処理までの経時でのレジストパターンの太りによる解像度の低下抑制の点からモル比は300以下が好ましい。光酸発生剤/酸拡散制御剤(モル比)は、2.0~200がより好ましく、2.0~150が更に好ましい。
【0396】
酸拡散制御剤としては、例えば、特開2013-11833号公報の段落[0140]~[0144]に記載の化合物(アミン化合物、アミド基含有化合物、ウレア化合物、及び含窒素複素環化合物等)も挙げられる。
【0397】
<疎水性樹脂>
レジスト組成物は、上記樹脂(A)とは別に、樹脂(A)とは異なる疎水性樹脂を含んでいてもよい。
疎水性樹脂はレジスト膜の表面に偏在するように設計されるのが好ましいが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性物質及び非極性物質の均一な混合に寄与しなくてもよい。
疎水性樹脂の添加による効果として、水に対するレジスト膜表面の静的及び動的な接触角の制御、並びに、アウトガスの抑制等が挙げられる。
【0398】
疎水性樹脂は、膜表層への偏在化の点から、“フッ素原子”、“珪素原子”、及び“樹脂の側鎖部分に含まれたCH部分構造”のいずれか1種以上を有することが好ましく、2種以上を有することがより好ましい。また、上記疎水性樹脂は、炭素数5以上の炭化水素基を有することが好ましい。これらの基は樹脂の主鎖中に有していても、側鎖に置換していてもよい。
疎水性樹脂としては、国際公開第2020/004306号公報の段落[0275]~[0279]に記載される化合物が挙げられる。
【0399】
レジスト組成物が疎水性樹脂を含む場合、疎水性樹脂の含有量は、レジスト組成物の全固形分に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.1~15質量%がより好ましい。
【0400】
<界面活性剤>
レジスト組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。
界面活性剤を含む場合、密着性により優れ、現像欠陥のより少ないパターンを形成できる。
界面活性剤は、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤が好ましい。
界面活性剤としては、国際公開第2020/004306号公報の段落[0281]~[0282]に記載される化合物が挙げられる。
【0401】
界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を使用してもよい。
【0402】
レジスト組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.0001~2質量%が好ましく、0.0005~1質量%がより好ましく、0.05~0.5が更に好ましい。
【0403】
<その他の添加剤>
レジスト組成物は、溶解阻止化合物、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、及び/又は現像液に対する溶解性を促進させる化合物(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、又はカルボン酸基を有する脂環族若しくは脂肪族化合物)を更に含んでいてもよい。
【0404】
レジスト組成物は、溶解阻止化合物を更に含んでいてもよい。ここで「溶解阻止化合物」とは、酸の作用により分解して有機系現像液中での溶解度が減少する、分子量3000以下の化合物である。
【0405】
本発明のレジスト組成物は、EUV光用感光性組成物として好適に用いられる。
EUV光は波長13.5nmであり、ArF(波長193nm)光等に比べて、より短波長であるため、同じ感度で露光された際の入射フォトン数が少ない。そのため、確率的にフォトンの数がばらつく“フォトンショットノイズ”の影響が大きく、LERの悪化およびブリッジ欠陥を招く。フォトンショットノイズを減らすには、露光量を大きくして入射フォトン数を増やす方法があるが、高感度化の要求とトレードオフとなる。
【0406】
下記式(1)で求められるA値が高い場合は、レジスト組成物より形成されるレジスト膜のEUV光及び電子線の吸収効率が高くなるなり、フォトンショットノイズの低減に有効である。A値は、レジスト膜の質量割合のEUV光及び電子線の吸収効率を表す。
式(1):A=([H]×0.04+[C]×1.0+[N]×2.1+[O]×3.6+[F]×5.6+[S]×1.5+[I]×39.5)/([H]×1+[C]×12+[N]×14+[O]×16+[F]×19+[S]×32+[I]×127)
A値は0.120以上が好ましい。上限は特に制限されないが、A値が大きすぎる場合、レジスト膜のEUV光及び電子線透過率が低下し、レジスト膜中の光学像プロファイルが劣化し、結果として良好なパターン形状が得られにくくなるため、0.240以下が好ましく、0.220以下がより好ましい。
【0407】
なお、式(1)中、[H]は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の全固形分の全原子に対する、全固形分由来の水素原子のモル比率を表し、[C]は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の全固形分の全原子に対する、全固形分由来の炭素原子のモル比率を表し、[N]は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の全固形分の全原子に対する、全固形分由来の窒素原子のモル比率を表し、[O]は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の全固形分の全原子に対する、全固形分由来の酸素原子のモル比率を表し、[F]は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の全固形分の全原子に対する、全固形分由来のフッ素原子のモル比率を表し、[S]は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の全固形分の全原子に対する、全固形分由来の硫黄原子のモル比率を表し、[I]は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の全固形分の全原子に対する、全固形分由来のヨウ素原子のモル比率を表す。
例えば、レジスト組成物が酸の作用により極性が増大する樹脂(酸分解性樹脂)、光酸発生剤、酸拡散制御剤、及び溶剤を含む場合、上記樹脂、上記光酸発生剤、及び上記酸拡散制御剤が固形分に該当する。つまり、全固形分の全原子とは、上記樹脂由来の全原子、上記光酸発生剤由来の全原子、及び、上記酸拡散制御剤由来の全原子の合計に該当する。例えば、[H]は、全固形分の全原子に対する、全固形分由来の水素原子のモル比率を表し、上記例に基づいて説明すると、[H]は、上記樹脂由来の全原子、上記光酸発生剤由来の全原子、及び、上記酸拡散制御剤由来の全原子の合計に対する、上記樹脂由来の水素原子、上記光酸発生剤由来の水素原子、及び、上記酸拡散制御剤由来の水素原子の合計のモル比率を表すことになる。
【0408】
A値の算出は、レジスト組成物中の全固形分の構成成分の構造、及び、含有量が既知の場合には、含有される原子数比を計算し、算出できる。また、構成成分が未知の場合であっても、レジスト組成物の溶剤成分を蒸発させて得られたレジスト膜に対して、元素分析等の解析的な手法によって構成原子数比を算出可能である。
【0409】
〔レジスト膜、パターン形成方法〕
上記レジスト組成物を用いたパターン形成方法の手順は特に制限されないが、以下の工程を有するのが好ましい。
工程1:レジスト組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程
工程2:レジスト膜を露光する工程
工程3:現像液を用いて、露光されたレジスト膜を現像し、パターンを形成する工程
以下、上記それぞれの工程の手順について詳述する。
【0410】
<工程1:レジスト膜形成工程>
工程1は、レジスト組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程である。
レジスト組成物の定義は、上述の通りである。
【0411】
レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する方法としては、例えば、レジスト組成物を基板上に塗布する方法が挙げられる。
なお、塗布前にレジスト組成物を必要に応じてフィルター濾過することが好ましい。フィルターのポアサイズは、0.1μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.03μm以下が更に好ましい。また、フィルターは、ポリテトラフルオロエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製が好ましい。
【0412】
レジスト組成物は、集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン、二酸化シリコン被覆)上に、スピナー又はコーター等の適当な塗布方法により塗布できる。塗布方法は、スピナーを用いたスピン塗布が好ましい。スピナーを用いたスピン塗布をする際の回転数は、1000~3000rpmが好ましい。
レジスト組成物の塗布後、基板を乾燥し、レジスト膜を形成してもよい。なお、必要により、レジスト膜の下層に、各種下地膜(無機膜、有機膜、及び反射防止膜)を形成してもよい。
【0413】
乾燥方法としては、例えば、加熱して乾燥する方法が挙げられる。加熱は通常の露光機、及び/又は、現像機に備わっている手段で実施でき、ホットプレート等を用いて実施してもよい。加熱温度は80~150℃が好ましく、80~140℃がより好ましく、80~130℃が更に好ましい。加熱時間は30~1000秒が好ましく、60~800秒がより好ましく、60~600秒が更に好ましい。
【0414】
レジスト膜の膜厚は特に制限されないが、より高精度な微細パターンを形成できる点から、10~65nmが好ましく、15~50nmがより好ましい。
【0415】
なお、レジスト膜の上層にトップコート組成物を用いてトップコートを形成してもよい。
トップコート組成物は、レジスト膜と混合せず、更にレジスト膜上層に均一に塗布できるのが好ましい。
トップコートは、特に限定されず、従来公知のトップコートを、従来公知の方法によって形成でき、例えば、特開2014-059543号公報の段落[0072]~[0082]の記載に基づいてトップコートを形成できる。
例えば、特開2013-61648号公報に記載されたような塩基性化合物を含むトップコートを、レジスト膜上に形成するのが好ましい。トップコートが含み得る塩基性化合物の具体的な例は、レジスト組成物が含んでいてもよい塩基性化合物が挙げられる。
また、トップコートは、エーテル結合、チオエーテル結合、水酸基、チオール基、カルボニル結合、及び、エステル結合からなる群から選択される基又は結合を少なくとも一つ含む化合物を含むのも好ましい。
【0416】
<工程2:露光工程>
工程2は、レジスト膜を露光する工程である。
露光の方法としては、例えば、形成したレジスト膜に所定のマスクを通してEUV光を照射する方法が挙げられる。
【0417】
露光後、現像を行う前にベーク(加熱)を行うのが好ましい。ベークにより露光部の反応が促進され、感度及びパターン形状がより良好となる。
加熱温度は80~150℃が好ましく、80~140℃がより好ましく、80~130℃が更に好ましい。
加熱時間は10~1000秒が好ましく、10~180秒がより好ましく、30~120秒が更に好ましい。
加熱は通常の露光機及び/又は現像機に備わっている手段で実施でき、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
この工程は露光後ベークともいう。
【0418】
<工程3:現像工程>
工程3は、現像液を用いて、露光されたレジスト膜を現像し、パターンを形成する工程である。
現像液は、アルカリ現像液であっても、有機溶剤を含有する現像液(以下、「有機系現像液」ともいう。)であってもよい。
【0419】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止して現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、及び、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)が挙げられる。
また、現像を行う工程の後に、他の溶剤に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
現像時間は未露光部の樹脂が十分に溶解する時間であれば特に制限はなく、10~300秒が好ましく、20~120秒がより好ましい。
現像液の温度は0~50℃が好ましく、15~35℃がより好ましい。
【0420】
アルカリ現像液は、アルカリを含むアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。アルカリ水溶液の種類は特に制限されないが、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに代表される4級アンモニウム塩、無機アルカリ、1級アミン、2級アミン、3級アミン、アルコールアミン、又は、環状アミン等を含むアルカリ水溶液が挙げられる。なかでも、アルカリ現像液は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)に代表される4級アンモニウム塩の水溶液であるのが好ましい。アルカリ現像液には、アルコール類、界面活性剤等を適当量添加してもよい。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常、0.1~20質量%である。また、アルカリ現像液のpHは、通常、10.0~15.0である。
【0421】
有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び、炭化水素系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有する現像液であるのが好ましい。
【0422】
<他の工程>
上記パターン形成方法は、工程3の後に、リンス液を用いて洗浄する工程を含むのが好ましい。
【0423】
アルカリ現像液を用いて現像する工程の後のリンス工程に用いるリンス液としては、例えば、純水が挙げられる。なお、純水には、界面活性剤を適当量添加してもよい。
リンス液には、界面活性剤を適当量添加してもよい。
【0424】
有機系現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液は、パターンを溶解しないものであれば特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用できる。リンス液は、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及び、エーテル系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有するリンス液を用いるのが好ましい。
炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及びエーテル系溶剤の例としては、有機溶剤を含む現像液において説明したものと同様のものが挙げられる。
【0425】
リンス工程の方法は特に限定されず、例えば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、及び基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
また、本発明のパターン形成方法は、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含んでいてもよい。本工程により、ベークによりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。また、本工程により、レジストパターンがなまされ、パターンの表面荒れが改善される効果もある。リンス工程の後の加熱工程は、通常40~250℃(好ましくは90~200℃)で、通常10秒間~3分間(好ましくは30秒間~120秒間)行う。
【0426】
また、形成されたパターンをマスクとして、基板のエッチング処理を実施してもよい。つまり、工程3にて形成されたパターンをマスクとして、基板(又は、下層膜及び基板)を加工して、基板にパターンを形成してもよい。
基板(又は、下層膜及び基板)の加工方法は特に限定されないが、工程3で形成されたパターンをマスクとして、基板(又は、下層膜及び基板)に対してドライエッチングを行うことにより、基板にパターンを形成する方法が好ましい。
ドライエッチングは、1段のエッチングであっても、複数段からなるエッチングであってもよい。エッチングが複数段からなるエッチングである場合、各段のエッチングは同一の処理であっても異なる処理であってもよい。
エッチングは、公知の方法をいずれも使用でき、各種条件等は、基板の種類又は用途等に応じて、適宜、決定される。例えば、国際光工学会紀要(Proc.of SPIE)Vol.6924,692420(2008)、特開2009-267112号公報等に準じて、エッチングを実施できる。また、「半導体プロセス教本 第4版 2007年刊行 発行人:SEMIジャパン」の「第4章 エッチング」に記載の方法に準ずることもできる。
なかでも、ドライエッチングは、酸素プラズマエッチングが好ましい。
【0427】
レジスト組成物、及び本発明のパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、トップコート形成用組成物等)は、金属等の不純物を含まないのが好ましい。これら材料に含まれる不純物の含有量は、1質量ppm以下が好ましく、10質量ppb以下がより好ましく、100質量ppt以下が更に好ましく、10質量ppt以下が特に好ましく、1質量ppt以下が最も好ましい。ここで、金属不純物としては、例えば、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Al、Li、Cr、Ni、Sn、Ag、As、Au、Ba、Cd、Co、Pb、Ti、V、W、及びZn等が挙げられる。
【0428】
各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いた濾過が挙げられる。フィルターを用いた濾過の詳細は、国際公開第2020/004306号公報の段落[0321]に記載される。
【0429】
また、各種材料に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、例えば、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する方法、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う方法、及び、装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う方法等が挙げられる。
【0430】
フィルター濾過の他、吸着材による不純物の除去を行ってもよく、フィルター濾過と吸着材とを組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を使用でき、例えば、シリカゲル及びゼオライト等の無機系吸着材、並びに、活性炭等の有機系吸着材を使用できる。上記各種材料に含まれる金属等の不純物を低減するためには、製造工程における金属不純物の混入を防止する必要がある。製造装置から金属不純物が十分に除去されたかどうかは、製造装置の洗浄に使用された洗浄液中に含まれる金属成分の含有量を測定して確認できる。使用後の洗浄液に含まれる金属成分の含有量は、100質量ppt(parts per trillion)以下が好ましく、10質量ppt以下がより好ましく、1質量ppt以下が更に好ましい。
【0431】
リンス液等の有機系処理液には、静電気の帯電、引き続き生じる静電気放電に伴う、薬液配管及び各種パーツ(フィルター、O-リング、及びチューブ等)の故障を防止するため、導電性の化合物を添加してもよい。導電性の化合物は特に制限されないが、例えば、メタノールが挙げられる。添加量は特に制限されないが、好ましい現像特性又はリンス特性を維持する点で、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
薬液配管としては、例えば、SUS(ステンレス鋼)、又は、帯電防止処理の施されたポリエチレン、ポリプロピレン、若しくは、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、又は、パーフロオロアルコキシ樹脂等)で被膜された各種配管を使用できる。フィルター及びO-リングに関しても同様に、帯電防止処理の施されたポリエチレン、ポリプロピレン、又は、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、又は、パーフロオロアルコキシ樹脂等)を使用できる。
【0432】
本発明の方法により形成されるパターンに対して、パターンの表面荒れを改善する方法を適用してもよい。パターンの表面荒れを改善する方法としては、例えば、国際公開第2014/002808号に開示された水素を含有するガスのプラズマによってパターンを処理する方法が挙げられる。その他にも、特開2004-235468号公報、米国特許出願公開第2010/0020297号明細書、特開2008-83384号公報、及び、Proc. of SPIE Vol.8328 83280N-1”EUV Resist Curing Technique for LWR Reduction and Etch Selectivity Enhancement”に記載されている公知の方法が挙げられる。
【0433】
形成されるパターンがライン状である場合、パターン高さをライン幅で割った値で求められるアスペクト比が、2.5以下が好ましく、2.1以下がより好ましく、1.7以下が更に好ましい。
形成されるパターンがトレンチ(溝)パターン状又はコンタクトホールパターン状である場合、パターン高さをトレンチ幅又はホール径で割った値で求められるアスペクト比が、4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、3.0以下が更に好ましい。
【0434】
本発明のパターン形成方法は、DSA(Directed Self-Assembly)におけるガイドパターン形成(例えば、ACS Nano Vol.4 No.8 Page4815-4823参照)にも使用できる。
【0435】
また、上記の方法によって形成されたパターンは、例えば、特開平3-270227号公報、及び、特開2013-164509号公報に開示されたスペーサープロセスの芯材(コア)として使用できる。
【0436】
〔特定化合物の製造方法〕
特定化合物の製造方法は特に制限されないが、塩基性化合物の存在下、一般式(4)で表されるカチオンを少なくとも1つ有する化合物と、一般式(5)で表される化合物とを反応させて、特定化合物を製造する工程を有する製造方法が好ましい。
以下では、まず、上記製造方法で使用される材料について詳述し、その後、製造方法の手順について詳述する。
【0437】
<一般式(4)で表されるカチオンを有する化合物>
特定化合物の製造方法において、一般式(4)で表されるカチオンを少なくとも1つ有する化合物を用いる。
【0438】
【化75】
【0439】
一般式(4)中、Xd1、Rd1、Ld1、Ard1、n、m、及びpの定義は、それぞれ上述した一般式(1)中のXd1、Rd1、Ld1、Ard1、n、m、及びpの定義と同じである。
d3は、ハロゲン原子を表す。
d3で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、Rd3は、フッ素原子が好ましい。
【0440】
一般式(4)で表されるカチオンを少なくとも1つ有する化合物としては、一般式(4-1)で表される化合物、又は、一般式(4-2)で表される化合物が好ましい。
一般式(4-1) Z
一般式(4-1)中、Z は、一般式(4)で表されるカチオンを表す。
は、1価の有機アニオンを表す。1価の有機アニオンとしては、上述した有機アニオンのうち1価のものを意図する。
【0441】
【化76】

一般式(4-2)中、Z はカチオンを表し、Z の少なくとも1つが一般式(4)で表されるカチオンを表す。一般式(4)で表されるカチオン以外のカチオンは特に制限されず、公知のスルホニウムカチオン及びヨードニウムカチオンが挙げられる。
は、アニオン性官能基を表す。アニオン性官能基の定義は、上述した通りである。
Lは、q価の連結基を表す。qは2以上の整数を表す。L及びqの定義は、一般式(3)中のL及びqの定義と同じである。
【0442】
一般式(4)で表される化合物は、一般式(U-1)で表される化合物が好ましい。
【0443】
【化77】
【0444】
一般式(U-1)中、Y は、1価の有機アニオンを表す。1価の有機アニオンとしては、上述した有機アニオンのうち1価のものを意図する。
【0445】
U1~RU3は、それぞれ独立に、ハロゲン原子を表す。
【0446】
U11~RU13は、それぞれ独立に、有機基を表す。
U11~RU13は、一般式(S-1)中のRb1~Rb3と同義である。
【0447】
一般式(U-1)中のa1~a3、及びb1~b3は、それぞれ一般式(S-1)中のa1~a3、及びb1~b3と同義である。
【0448】
<一般式(5)で表される化合物>
特定化合物の製造方法において、一般式(5)で表される化合物を用いる。
【0449】
一般式(5) HS-Xd2
【0450】
一般式(5)中、Xd2は、一般式(1-1)で表される基、又は、酸の作用により脱離する脱離基を表す。
式(1-1) *-Ld2-Rd2
式(1-1)中、Ld2は、単結合又は2価の連結基を表す。Rd2は、酸の作用により分解して極性が増大する基を表す。*は、結合位置を表す。
【0451】
一般式(5)中のXd2、並びに、一般式(1-1)中、Ld2、及びRd2の定義は、上述した通りである。
【0452】
<塩基性化合物>
特定化合物の製造方法において、塩基性化合物を用いる。
塩基性化合物としては、有機化合物又は無機化合物であってもよい。
塩基性化合物としては、例えば、1~4級アミン化合物、金属塩、及び、アルコシキ金属化合物等の有機金属化合物が挙げられる。また、塩基性化合物としては、酸拡散制御剤としての塩基性化合物を用いることもできる。なかでも、塩基性化合物は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩又は水酸化物が好ましい。
【0453】
有機化合物としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、及びトリエチレンテトラミン等のアミン化合物、並びにその誘導体;無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、及びN-メチルピペラジン等のピペラジン化合物、並びにその誘導体;ピリジン、ピリミジン、キノリン、及びアクリジン等のピリジン化合物、並びにその誘導体;イミダゾール、及びトリアゾール等のアゾール化合物、並びにその誘導体;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、及び水酸化テトラブチルアンモニウム等のアンモニウム化合物、並びにその誘導体;グアニジンが挙げられる。
【0454】
無機化合物としては、例えば、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩;水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、及び水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;水素化リチウム、及び水素化ナトリウム等のアルカリ金属の水素化物;水素化マグネシウム、及び水素化カルシウム等のアルカリ土類金属の水素化物が挙げられる。
【0455】
塩基性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を使用してもよい。
【0456】
<溶剤>
特定化合物の製造方法において、溶剤を用いてもよい。
溶剤としては、使用する材料を溶解させる溶剤であれば特に制限されない。溶剤としては、上述したレジスト組成物が含む溶剤も使用できる。
溶剤としては、有機溶剤又は水系溶剤であってもよい。
【0457】
溶剤としては、例えば、メタノール、及びエタノール等のアルコール系溶剤;ヘキサン、シクロヘキサン、及びヘプタン等のアルカン系溶剤;のエステル系溶剤、シクロヘキサノン、及びメチル-2-n-アミルケトン等のケトン系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、及びジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、及び酢酸等のエステル系溶剤;γ-ブチロラクトン等のラクトン系溶剤が挙げられる。
なかでも、溶剤Aとしては、メタノール、及びエタノール等のアルコール系溶剤が好ましく、メタノール、又はエタノールがより好ましい。
【0458】
溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を使用してもよい。
【0459】
<手順>
製造方法の手順は、塩基性化合物の存在下、一般式(4)で表される化合物と一般式(5)で表される化合物とを反応させることができれば、特に制限されない。
例えば、塩基性化合物の存在している反応系に、一般式(4)で表される化合物と一般式(5)で表される化合物とを添加して、反応させてもよい。
【0460】
一般式(4)で表される化合物の使用量に対する、一般式(5)で表される化合物の使用量の比(一般式(5)で表される化合物の使用量/一般式(4)で表される化合物の使用量)は特に制限されず、特定化合物の収率が優れる点で、3.0~1.0が好ましく、2.0~1.0がより好ましい。
一般式(5)で表される化合物の使用量に対する、塩基性化合物の使用量の比(塩基性化合物の使用量/一般式(5)で表される化合物の使用量)は特に制限されず、特定化合物の収率が優れる点で、5.0~1.0が好ましく、3.0~1.0がより好ましい。
【0461】
反応温度は、特に制限されないが、-50℃~100℃が好ましく、-30℃~50℃がより好ましく、-10℃~10℃が更に好ましい。
反応時間は、特に制限されないが、1分間~24時間が好ましく、10分間~1時間がより好ましい。
【0462】
また、本発明は、上記したパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法、及びこの製造方法により製造された電子デバイスにも関する。
本発明の電子デバイスは、電気電子機器(家電、OA(Office Automation)、メディア関連機器、光学用機器、及び通信機器等)に、好適に搭載されるものである。
【実施例
【0463】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例に限定されない。
【0464】
〔レジスト組成物(感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物)の製造〕
以下に、実施例又は比較例で用いたレジスト組成物が含む成分及び製造の手順を示す。
【0465】
<特定化合物>
(合成例1:化合物B-1合成)
化合物B-1を下記スキームに従い合成した。
【0466】
【化78】
【0467】
三口フラスコにブロモ酢酸tert-ブチル(25g)、及び、アセトン(125g)を加えて、三口フラスコ内にチオ酢酸ナトリウム(17.5g)を加え、得られた溶液を室温で2時間攪拌した。その後、得られた溶液に水(100ml)と酢酸エチル(150g)を加え、有機相を分離し、得られた有機相を水(100g)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(100g)で順次洗浄した。その後、有機相を濃縮することで、目的の化合物B-1Aを23g得た。
H-NMR、400MHz、δ(CDCl) ppm:1.46(9H、s)、3.62(3H、s)
【0468】
化合物B-1Bを、以下の論文を参考にして合成した。
Imazeki, Shigeaki; Sumino, Motoshige; Fukasawa, Kazuhito; Ishihara, Masami; Akiyama, Takahiko [Synthesis, 2004, # 10, p. 1648 - 1654
【0469】
三口フラスコに化合物B-1A(4.0g)、メタノール(50g)、及び、炭酸カリウム(12.3g)を加えて、得られた溶液を0℃で30分間攪拌した。その後、得られた溶液に4-フルオロフェニルジフェニルスルホニウムブロミド(化合物B-1B、7.6g)を添加し、更に、得られた溶液を0℃で30分間攪拌した。その後、得られた溶液に水(100g)とジクロロメタン(150g)とを加え、有機相を分離し、水(50g)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(50g)で順次洗浄した。その後、有機相を濃縮することで、目的の化合物B-1C(9.2g)得た。化合物B-1Cはこれ以上の精製は行わず速やかに以降の工程に使用した。
【0470】
三口フラスコに化合物B-1C(9.2g)、ジクロロメタン(50g)、及び、水(30g)を加え、得られた溶液を室温で30分間攪拌した。その後、化合物B-1D(8.2g)を添加し、更に、得られた溶液を0℃で30分間攪拌した。その後、有機相を分離し、0.01N塩酸水(50g)で洗浄した後、水(30g)で5回有機相を洗浄した。その後、有機相を濃縮して得られた固体を、ジイソプロピルエーテル(50g)で洗浄し目的の化合物B-1(13.3g)を得た。
H-NMR、400MHz、δ(CDCl) ppm:1.40-2.05(24H、m)、3.72(2H、s)、4.80(2H、t)、4.41(2H、brt)、4.53(2H、td)、7.1―7.83(14H、m)。
【0471】
(合成例2:化合物B-12合成)
【0472】
【化79】
【0473】
化合物B-12Aを、以下の論文を参考にして合成した。
Imazeki, Shigeaki; Sumino, Motoshige; Fukasawa, Kazuhito; Ishihara, Masami; Akiyama, Takahiko [Synthesis, 2004, # 10, p. 1648 - 1654.
【0474】
三口フラスコに化合物B-1A(15.3g)及びメタノール(50g)を加えて、0℃で攪拌を開始した後に、得られた溶液に炭酸カリウム(15.0g)を加えて30分間攪拌した。その後、トリス(4-フルオロフェニル)スルホニウムブロミド(10g、化合物B-12A)を添加し、更に、得られた溶液を0℃で30分間攪拌した。その後、得られた溶液に水(100ml)とクロロホルム(100ml)を加えて有機相を分離し、水(100g)で洗浄した。その後、有機相を濃縮することで、目的の化合物B-12Bを18.3g得た。
H-NMR、400MHz、δ(CDCl) ppm:1.46(27H、s)、3.68(6H、s)、7.52(6H,d)、7.76(6H,d)。
【0475】
三口フラスコに化合物B-12B(7.8g)、化合物B-12C(3.4g)、クロロホルム(50g)、及び、水(30g)を加えて、室温で30分間攪拌した。その後、有機相を分離し、0.01N塩酸水(30g)で洗浄した後、水(30g)で5回有機相を洗浄した。その後、有機相を濃縮して得られた固体を、シクロペンチルメチルエーテル50gで洗浄し目的の化合物B-12(9.8g)を得た。
H-NMR、400MHz、δ(CDCl) ppm:1.43(27H、s)、3.72(6H、s)、7.48(6H,d)、7.80(6H,d)。
【0476】
(合成例3:化合物B-17合成)
【0477】
【化80】
【0478】
三口フラスコに化合物B-12A(7.5g)、化合物B-17A(2.5g)、ジクロロメタン(100g)、及び、水(90g)を加えて、室温で30分間攪拌した。その後、有機相を分離し、0.01N塩酸水(50g)で洗浄した後、水(50g)で5回有機相を洗浄した。その後、有機相を濃縮して得られた粘稠性液体を、ジイソプロピルエーテル(50g)でデカント洗浄し目的の化合物B-17(8.7g)を得た。
H-NMR、400MHz、δ(CDCl) ppm:1.43(81H、s)、3.69(18H、s)、6.91(2H,d)、7.49(18H,d)、7.55(18H,d)、7.86(2H,d)。
【0479】
上記特定化合物B-1、B-12、又はB-17と同様の合成方法で、他の特定化合物を合成した。
【0480】
下記スキームに従って、比較用化合物B-12A’の合成を試みたが、中間体のB-12A”を単離及び精製ができず、比較用化合物B-12A’を合成できなかった。
【0481】
【化81】
【0482】
以下に、実施例で用いた特定化合物B-1~B-26を示す。
【0483】
【化82】
【0484】
【化83】
【0485】
以下に、比較用化合物Z-1を示す。
【0486】
【化84】
【0487】
<酸分解性樹脂(樹脂(A))>
(合成例1:樹脂A-1の合成)
樹脂A-1を下記スキームに従い合成した。
【0488】
【化85】
【0489】
シクロヘキサノン(113g)を窒素気流下にて80℃に加熱した。この液を攪拌しながら、下記式M-1で表されるモノマー(25.5g)、下記式M-2で表されるモノマー(31.6g)、シクロヘキサノン(210g)、及び2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル〔V-601、和光純薬工業(株)製〕(6.21g)の混合溶液を6時間かけて滴下し、反応液を得た。滴下終了後、反応液を80℃にて更に2時間攪拌した。得られた反応液を放冷後、多量のメタノール/水(質量比9:1)で再沈殿した後、ろ過し、得られた固体を真空乾燥することで、樹脂A-1を52g得た。
【0490】
上記樹脂A-1の合成方法を参考に、樹脂A-2~A-30を合成した。
【0491】
表1に、後掲に示される各繰り返し単位の組成比(モル比;左から順に対応)、重量平均分子量(Mw)、及び分散度(Mw/Mn)を示す。
なお、樹脂A-1~A-30の重量平均分子量(Mw)、及び分散度(Mw/Mn)はGPC(キャリア:テトラヒドロフラン(THF))により測定した(ポリスチレン換算量である)。また、樹脂の組成比(モル%比)は、13C-NMR(nuclear magnetic resonance)により測定した。
【0492】
【表1】
【0493】
以下に、樹脂A-1~A-30を示す。*は結合位置を表す。
【0494】
【化86】
【0495】
【化87】

【0496】
【化88】
【0497】
<酸拡散制御剤>
以下に、酸拡散制御剤C-1~C-9を示す。
【0498】
【化89】
【0499】
以下に、上記以外の酸拡散制御剤D-1~D-11を示す。
【0500】
【化90】
【0501】
<疎水性樹脂及びトップコート用樹脂>
表2に従って疎水性樹脂(E-1~E-11)、及びトップコート用樹脂(PT-1~PT-3)は合成した。
また、疎水性樹脂(E-1~E-11)及びトップコート用樹脂(PT-1~PT-3)における繰り返し単位のモル比率、重量平均分子量(Mw)、及び分散度(Mw/Mn)を表2に示す。
なお、疎水性樹脂E-1~E-11、又はトップコート用樹脂PT-1~PT-3の重量平均分子量(Mw)、及び分散度(Mw/Mn)はGPC(キャリア:テトラヒドロフラン(THF))により測定した(ポリスチレン換算量である)。また、樹脂の組成比(モル%比)は、13C-NMR(nuclear magnetic resonance)により測定した。
【0502】
【表2】
【0503】
表2に示される疎水性樹脂E-1~E-11、及び表2に示されるトップコート用樹脂PT-1~PT-3の合成に用いたモノマーME-1~ME-20を以下に示す。
【0504】
【化91】
【0505】
<レジスト組成物の調製>
(ArF露光試験用のレジスト組成物の調製(Re-1~Re-16))
表3に示した各成分を固形分濃度が4質量%となるように混合した。次いで、得られた混合液を、最初に孔径50nmのポリエチレン製フィルター、次に孔径10nmのナイロン製フィルター、最後に孔径5nmのポリエチレン製フィルターの順番で濾過することにより、レジスト組成物を調製した。なお、レジスト組成物において、固形分とは、溶剤以外の全ての成分を意味する。得られたレジスト組成物を、実施例及び比較例で使用した。
なお、表3において、各成分の含有量(質量%)は、全固形分に対する含有量を意味する。
【0506】
(EUV露光試験用のレジスト組成物の調製(Re-17~Re-41))
表4に示した各成分を固形分濃度が2質量%となるように混合した。次いで、得られた混合液を、最初に孔径50nmのポリエチレン製フィルター、次に孔径10nmのナイロン製フィルター、最後に孔径5nmのポリエチレン製フィルターの順番で濾過することにより、レジスト組成物を調製した。なお、レジスト組成物において、固形分とは、溶剤以外の全ての成分を意味する。得られたレジスト組成物を、実施例及び比較例で使用した。
【0507】
以下に、各レジスト組成物の配合を示す。
【0508】
【表3】
【0509】
【表4】
【0510】
<界面活性剤>
レジスト組成物が界面活性剤を含む場合、下記界面活性剤を使用した。
H-1:メガファックF176(DIC(株)製、フッ素系界面活性剤)
H-2:メガファックR08(DIC(株)製、フッ素及びシリコン系界面活性剤)
H-3:PF656(OMNOVA社製、フッ素系界面活性剤)
【0511】
<溶剤>
レジスト組成物が含む溶剤を下記に示す。
F-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
F-2:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
F-3:プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)
F-4:シクロヘキサノン
F-5:シクロペンタノン
F-6:2-ヘプタノン
F-7:乳酸エチル
F-8:γ-ブチロラクトン
F-9:プロピレンカーボネート
【0512】
〔トップコート組成物の製造〕
以下に、表5に示すトップコート組成物に含まれる各種成分を示す。
<樹脂>
表5に示される樹脂としては、表2に示した樹脂PT-1~PT-3を用いた。
【0513】
<トップコート組成物の調製>
表5に示した各成分を固形分濃度が3質量%となるように混合して、次いで、得られた混合液を、最初に孔径50nmのポリエチレン製フィルター、次に孔径10nmのナイロン製フィルター、最後に孔径5nmのポリエチレン製フィルターの順番で濾過することにより、トップコート組成物を調製した。なお、ここでいう固形分とは、溶剤以外の全ての成分を意味する。得られたトップコート組成物を、実施例で使用した。
【0514】
【表5】

<添加剤>
表5に示される添加剤の構造を以下に示す。
【0515】
【化92】
【0516】
<界面活性剤>
表5に示される界面活性剤としては、上記界面活性剤H-3を用いた。
【0517】
<溶剤>
表5に示される溶剤を以下に示す。
FT-1:4-メチル-2-ペンタノール(MIBC)
FT-2:n-デカン
FT-3:ジイソアミルエーテル
【0518】
〔パターン形成(1):ArF液浸露光、有機溶剤現像〕
シリコンウエハ上に有機反射防止膜形成用組成物ARC29SR(Brewer Science社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークして、膜厚98nmの反射防止膜を形成した。その上に、表3に示すレジスト組成物(レジスト組成物の組成については表3及び4を参照。)を塗布し、100℃で60秒間ベークして、膜厚90nmのレジスト膜(感活性光線性又は感放射線性膜)を形成した。なお、実施例1-5、実施例1-6、及び実施例1-12については、レジスト膜の上層にトップコート膜を形成した。トップコート膜の膜厚は、いずれにおいても100nmとした。
レジスト膜に対して、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製;XT1700i、NA1.20、Dipole、アウターシグマ0.950、インナーシグマ0.850、Y 偏光)を用いて、線幅45nmの1:1ラインアンドスペースパターンの6%ハーフトーンマスクを介して露光した。液浸液は、超純水を使用した。
露光後のレジスト膜を90℃で60秒間ベークした後、酢酸n-ブチルで30秒間現像し、次いで4-メチル-2-ペンタノールで30秒間リンスした。その後、これをスピン乾燥してネガ型のパターンを得た。
【0519】
<欠陥評価>
上記線幅45nmのパターンを形成後、その後、UVision5(AMAT社製)で、シリコンウエハ上における欠陥分布を検出し、SEMVisionG4(AMAT社製)を用いて、欠陥の形状を観察した。シリコンウエハ1枚当たりの欠陥数を数えて、以下の評価基準に従って、評価した。欠陥数が少ないほど良好な結果を示す。評価結果を下記表6に示す。
「A」:欠陥数が100個以下
「B」:欠陥数が100個超300個以下
「C」:欠陥数が300個超500個以下
「D」:欠陥数が500個超
【0520】
<LWR評価>
ライン幅が平均45nmのラインパターンを解像する時の最適露光量にて解像した45nm(1:1)のラインアンドスペースのパターンに対して、測長走査型電子顕微鏡(SEM((株)日立製作所S-9380II))を使用してパターン上部から観察する際、線幅を任意のポイントで観測し、その測定ばらつきを3σで評価した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。なお、LWR(nm)は、2.8nm以下が好ましく、2.5nm以下がより好ましく、2.3nm以下が更に好ましく、2.0nm以下が特に好ましい。評価結果を下記表6に示す。
【0521】
表6中、「Xd2」欄において、「A」はXd2が一般式(1-1)で表される基であることを表し、「B」はXd2が酸の作用により脱離する脱離基であることを表す。
表6中、「酸分解性基種類」は、「Xd2」欄が「A」である態様において、酸分解性基が一般式(a-1)~一般式(a-5)で表される基のいずかに該当するかを表す。なお、「(a-1)/(a-1)」の表記は、特定化合物が2種使用されている場合に、その特定化合物に含まれる酸分解性基がいずれの基に該当するかを示す。
表6中、「数」欄は、特定化合物に含まれる酸分解性基又は酸の作用により脱離する脱離基の数を表す。
【0522】
【表6】
【0523】
表6に示される通り、ArF露光をして、有機溶剤現像でパターンを得る場合において、本発明のレジスト組成物は、LWR性能に優れるパターンを形成できることが確認された。
なかでも、実施例1-3、1-4、1-7、1-8と他の実施例との比較より、酸分解性基が一般式(a-1)で表される基である場合、より優れた効果が得られることが確認された。
また、実施例1-7と他の実施例との比較より、Xd1が表す原子が硫黄原子の場合、より優れた効果が得られることが確認された。
また、実施例1-6、1-10、及び、1-14との比較より、酸分解性基の数及び酸の作用により脱離する脱離基の数が2以上の場合、より優れた効果が得られることが確認された。
【0524】
〔パターン形成(2):ArF液浸露光、アルカリ水溶液現像〕
シリコンウエハ上に有機反射防止膜形成用組成物ARC29SR(Brewer Science社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークして、膜厚98nmの反射防止膜を形成した。その上に、表6に示す樹脂組成物(樹脂組成物の組成については表3を参照。)を塗布し、100℃で60秒間ベークして、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。なお、実施例2-5及び実施例2-6については、レジスト膜の上層にトップコート膜を形成した。トップコート膜の膜厚は、いずれにおいても100nmとした。
レジスト膜に対して、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製;XT1700i、NA1.20、Dipole、アウターシグマ0.950、インナーシグマ0.890、Y偏向)を用いて、線幅45nmの1:1ラインアンドスペースパターンの6%ハーフトーンマスクを介して露光した。液浸液は、超純水を使用した。
露光後のレジスト膜を90℃で60秒間ベークした後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)で30秒間現像し、次いで純水で30秒間リンスした。その後、これをスピン乾燥してポジ型のパターンを得た。
得られたポジ型のパターンに対して、上述した〔パターン形成(1):ArF液浸露光、有機溶剤現像〕で実施した<欠陥評価>及び<LWR評価>と同様の評価をした。評価結果を下記表7に示す。
【0525】
表7中、「Xd2」欄において、「A」はXd2が一般式(1-1)で表される基であることを表し、「B」はXd2が酸の作用により脱離する脱離基であることを表す。
表7中、「酸分解性基種類」は、「Xd2」欄が「A」である態様において、酸分解性基が一般式(a-1)~一般式(a-5)で表される基のいずかに該当するかを表す。なお、「(a-1)/(a-1)」の表記は、特定化合物が2種使用されている場合に、その特定化合物に含まれる酸分解性基がいずれの基に該当するかを示す。
表7中、「数」欄は、特定化合物に含まれる酸分解性基又は酸の作用により脱離する脱離基の数を表す。
【0526】
【表7】
【0527】
表7に示される通り、ArF露光をして、アルカリ水溶液現像でパターンを得る場合において、本発明のレジスト組成物は、LWR性能に優れるパターンを形成できることが確認された。
また、〔パターン形成(1):ArF液浸露光、有機溶剤現像〕の結果と同様の傾向が確認された。
【0528】
〔パターン形成(3):EUV露光、有機溶剤現像〕
シリコンウエハ上に下層膜形成用組成物AL412(Brewer Science社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークして、膜厚20nmの下地膜を形成した。その上に、表8に示す樹脂組成物(樹脂組成物の組成については表4を参照。)を塗布し、100℃で60秒間ベークして、膜厚30nmのレジスト膜を形成した。
EUV露光装置(Exitech社製、Micro Exposure Tool、NA0.3、Quadrupol、アウターシグマ0.68、インナーシグマ0.36)を用いて、得られたレジスト膜を有するシリコンウエハに対してパターン照射を行った。なお、レクチルとしては、ラインサイズ=20nmであり、かつライン:スペース=1:1であるマスクを用いた。
露光後のレジスト膜を90℃で60秒間ベークした後、酢酸n-ブチルで30秒間現像し、これをスピン乾燥してネガ型のパターンを得た。
【0529】
<欠陥評価>
上記線幅20nmのパターンを形成後、その後、UVision5(AMAT社製)で、シリコンウエハ上における欠陥分布を検出し、SEMVisionG4(AMAT社製)を用いて、欠陥の形状を観察した。シリコンウエハ1枚当たりの欠陥数を数えて、以下の評価基準に従って、評価した。欠陥数が少ないほど良好な結果を示す。評価結果を下記表8示す。
「A」:欠陥数が100個以下
「B」:欠陥数が100個超300個以下
「C」:欠陥数が300個超500個以下
「D」:欠陥数が500個超
【0530】
<LWR評価>
ライン幅が平均20nmのラインパターンを解像する時の最適露光量にて解像した20nm(1:1)のラインアンドスペースのパターンに対して、測長走査型電子顕微鏡(SEM((株)日立製作所S-9380II))を使用してパターン上部から観察する際、線幅を任意のポイントで観測し、その測定ばらつきを3σで評価した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。なお、LWR(nm)は、4.2nm以下が好ましく、3.8nm以下がより好ましく、3.5nm以下が更に好ましく、3.2nm以下が特に好ましく、3.0nm以下が最も好ましく、2.9nm以下が特に最も好ましい。評価結果を下記表8に示す。
【0531】
表8中、「Xd2」欄において、「A」はXd2が一般式(1-1)で表される基であることを表し、「B」はXd2が酸の作用により脱離する脱離基であることを表す。
表8中、「酸分解性基種類」は、「Xd2」欄が「A」である態様において、酸分解性基が一般式(a-1)~一般式(a-5)で表される基のいずかに該当するかを表す。なお、「(a-1)/(a-1)」の表記は、特定化合物が2種使用されている場合に、その特定化合物に含まれる酸分解性基がいずれの基に該当するかを示す。
表8中、「数」欄は、特定化合物に含まれる酸分解性基又は酸の作用により脱離する脱離基の数を表す。
【0532】
【表8】
【0533】
表8に示される通り、EUV露光をして、有機溶剤現像でパターンを得る場合において、本発明のレジスト組成物は、LWR性能に優れるパターンを形成できることが確認された。
実施例3-7、3-14と他の実施例との比較から、一般式(1)中、Xd1が硫黄原子である場合、より効果が優れることが確認された。
実施例3-3、3-7、3-8、及び3-12との比較から、一般式(1)中、酸の作用により分解して極性が増大する基が、一般式(a-1)で表される基である場合、より効果が優れることが確認された。
上記表8の結果より、酸分解性基の数及び酸の作用により脱離する脱離基の数が2以上の場合、より優れた効果が得られることが確認された。
【0534】
〔パターン形成(4):EUV露光、アルカリ水溶液現像〕
シリコンウエハ上に下層膜形成用組成物AL412(Brewer Science社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークして、膜厚20nmの下地膜を形成した。その上に、表9(樹脂組成物の組成については表4を参照。)に示す樹脂組成物を塗布し、100℃で60秒間ベークして、膜厚30nmのレジスト膜を形成した。
EUV露光装置(Exitech社製、Micro Exposure Tool、NA0.3、Quadrupol、アウターシグマ0.68、インナーシグマ0.36)を用いて、得られたレジスト膜を有するシリコンウエハに対してパターン照射を行った。なお、レクチルとしては、ラインサイズ=20nmであり、かつライン:スペース=1:1であるマスクを用いた。
露光後のレジスト膜を90℃で60秒間ベークした後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)で30秒間現像し、次いで純水で30秒間リンスした。その後、これをスピン乾燥してポジ型のパターンを得た。
得られたポジ型のパターンに対して、上述した〔パターン形成(3):EUV露光、有機溶剤現像〕で実施した<欠陥評価>及び<LWR評価>と同様の評価をした。評価結果を下記表9に示す。
【0535】
【表9】
【0536】
表9に示される通り、EUV露光をして、アルカリ水溶液現像でパターンを得る場合において、本発明のレジスト組成物は、LWR性能に優れるパターンを形成できることが確認された。
また、〔パターン形成(3):EUV露光、有機溶剤現像〕の結果と同様の傾向が確認された。