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特許7382796ピエゾバルブ、流体制御装置、及び、ピエゾバルブ診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】ピエゾバルブ、流体制御装置、及び、ピエゾバルブ診断方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/02 20060101AFI20231110BHJP
   G01R 31/50 20200101ALI20231110BHJP
【FI】
F16K31/02 A
G01R31/50
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019200831
(22)【出願日】2019-11-05
(65)【公開番号】P2021076131
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】ランズデル ジェフリー
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-117461(JP,A)
【文献】特開2018-206387(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0356845(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102012005994(DE,A1)
【文献】特開2009-016799(JP,A)
【文献】特表2006-522574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/02
G01R 31/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座と、
前記弁座に対して接触する全閉位置と、全開位置との間で移動可能に設けられた弁体と、
弁体を駆動するピエゾアクチュエータと、
ピエゾ制御信号が入力され、当該ピエゾ制御信号に応じた駆動電圧を前記ピエゾアクチュエータに出力する駆動回路と、
前記駆動回路が前記弁体を前記全閉位置又は前記全開位置へ駆動する定格最大電圧以上を駆動電圧として前記ピエゾアクチュエータに出力している状態において、前記ピエゾアクチュエータのリーク電流を検出するリーク電流検出器と、を備え、
前記リーク電流検出器が前記ピエゾアクチュエータのリーク電流を検出している状態又はその直前の状態で、前記弁座と前記弁体との間に流体が流れており、
前記駆動回路が、
入力された前記ピエゾ制御信号を増幅し、前記駆動電圧として前記ピエゾアクチュエータに出力する増幅器と、
前記ピエゾアクチュエータと、グラウンドとの間に設けられた第1スイッチング素子と、を具備し、
前記リーク電流検出器が、
前記第1スイッチング素子と並列に設けられた第2スイッチング素子と、
前記第2スイッチング素子に直列に設けられ、前記第1スイッチング素子がオフかつ前記第2スイッチング素子がオンの状態で前記リーク電流が流れ込むように構成された検出抵抗と、
前記検出抵抗に発生する電圧を検出する第1電圧検出部と、を具備することを特徴とするピエゾバルブ。
【請求項2】
前記リーク電流検出器が、前記駆動回路が定格最大電圧よりも大きい駆動電圧を所定時間出力している状態でリーク電流を検出する請求項1記載のピエゾバルブ。
【請求項3】
前記駆動回路が前記定格最大電圧以上の駆動電圧を出力している場合に、前記第1スイッチング素子をオフとし、前記第2スイッチング素子をオンとする第1診断タイミング制御部をさらに備えた請求項1又は2記載のピエゾバルブ。
【請求項4】
前記駆動回路が前記ピエゾアクチュエータに駆動電圧を出力していない状態において、前記ピエゾアクチュエータのキャパシタンスを検出するキャパシタンス検出器をさらに備えた請求項1乃至いずれかに記載のピエゾバルブ。
【請求項5】
前記キャパシタンス検出器が、前記ピエゾアクチュエータにテスト電流を所定時間供給し、そのときの電圧変化に基づいて当該ピエゾアクチュエータのキャパシタンスを検出する請求項記載のピエゾバルブ。
【請求項6】
前記キャパシタンス検出器が、
前記ピエゾアクチュエータにテスト電流を供給する電流供給部と、
前記ピエゾアクチュエータに印加されている電圧の変化を検出する第2電圧検出部と、を備えた請求項4又は5記載のピエゾバルブ。
【請求項7】
前記駆動回路が駆動電圧を出力していない場合に、前記電流供給部にテスト電流を出力させる第2診断タイミング制御部をさらに備えた請求項記載のピエゾバルブ。
【請求項8】
請求項1乃至いずれかに記載のピエゾバルブと、
前記ピエゾバルブの開度を制御するバルブ制御部と、を備えた流体制御装置。
【請求項9】
弁座と、前記弁座に対して接触する全閉位置と、全開位置との間で移動可能に設けられた弁体と、弁体を駆動するピエゾアクチュエータと、ピエゾ制御信号が入力され、当該ピエゾ制御信号に応じた駆動電圧を前記ピエゾアクチュエータに出力する駆動回路と、を備えたピエゾバルブの診断方法であって、
前記駆動回路が前記弁体を前記全閉位置又は前記全開位置へ駆動する定格最大電圧以上を駆動電圧として前記ピエゾアクチュエータに出力している状態において、前記ピエゾアクチュエータのリーク電流を検出することと、
前記ピエゾアクチュエータのリーク電流を検出している状態又はその直前の状態で、前記弁座と前記弁体との間に流体が流れていることと、
前記ピエゾアクチュエータとグラウンドとの間に設けた第1スイッチング素子がオフ、かつ当該第1スイッチング素子と並列に設けた第2スイッチング素子がオンの状態で、前記第2スイッチング素子に直列に設けた検出抵抗に前記リーク電流が流れ込むようにし、当該検出抵抗に発生する電圧を検出することで、前記リーク電流を検出することと、
増幅器により、入力された前記ピエゾ制御信号を増幅し、当該増幅された前記ピエゾ制御信号を前記駆動電圧として前記ピエゾアクチュエータに出力することを特徴とするピエゾバルブ診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体製造プロセスにおいて用いられるピエゾバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスではプロセスガスの流量や圧力を高速で制御するために応答性のよいピエゾアクチュエータを具備するピエゾバルブが用いられる。例えばALD(Atomic Layer Deposition)プロセスにおいては、原子1個分の層を形成するためにピエゾバルブを高速でオンオフを繰り返す事が行われる(特許文献1参照)。
【0003】
ピエゾバルブを使用し続けると、例えば上記のような動作によってピエゾアクチュエータに故障の原因になる損傷や劣化が少しずつ生じる。そのため、正確な流量や圧力の制御を保証するには、完全な故障が発生する時期を正確に予測できることが望まれている。
【0004】
しかしながら、現在のところピエゾバルブの寿命を正確に予測することは難しく、十分に寿命が残っていると考えられる期間内であっても、早期にピエゾバルブを交換することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-016799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、ピエゾアクチュエータの寿命を正確に予測することが可能となるピエゾバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係るピエゾバルブは、弁座と、前記弁座に対して接触する全閉位置と、全開位置との間で移動可能に設けられた弁体と、弁体を駆動するピエゾアクチュエータと、ピエゾ制御信号が入力され、当該ピエゾ制御信号に応じた駆動電圧を前記ピエゾアクチュエータに出力する駆動回路と、前記駆動回路が前記弁体を前記全閉位置又は前記全開位置へ駆動する定格最大電圧以上を駆動電圧として前記ピエゾアクチュエータに出力している状態において、前記ピエゾアクチュエータのリーク電流を検出するリーク電流検出器と、を備え、前記リーク電流検出器が前記ピエゾアクチュエータのリーク電流を検出している状態又はその直前の状態で、前記弁座と前記弁体との間に流体が流れていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るピエゾバルブ診断方法は、弁座と、前記弁座に対して接触する全閉位置と、全開位置との間で移動可能に設けられた弁体と、弁体を駆動するピエゾアクチュエータと、ピエゾ制御信号が入力され、当該ピエゾ制御信号に応じた駆動電圧を前記ピエゾアクチュエータに出力する駆動回路と、を備えたピエゾバルブの診断方法であって、前記駆動回路が前記弁体を前記全閉位置又は前記全開位置へ駆動する定格最大電圧以上を駆動電圧として前記ピエゾアクチュエータに出力している状態において、前記ピエゾアクチュエータのリーク電流を検出することと、前記ピエゾアクチュエータのリーク電流を検出している状態又はその直前の状態で、前記弁座と前記弁体との間に流体が流れていることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、前記ピエゾバルブが動作しており、実際に圧力や流量を制御されているプロセス期間中においても前記ピエゾアクチュエータのリーク電流をモニタリングすることができる。このため、前記ピエゾアクチュエータの状態を例えばプロセスが停止している期間だけでなく、ほぼ常時診断することが可能となり、従来よりも寿命の予測精度を高めることができるようになる。
【0010】
また、プロセス中においてピエゾバルブが全閉又は全開しており、定格最大電圧以上の駆動電圧が前記駆動回路から出力されているときに前記リーク電流検出器はリーク電流の検出を行うので、リーク電流の検出によって圧力や流量の制御には影響が発生しない。
【0011】
前記ピエゾバルブが全閉又は全開している状態において、前記ピエゾアクチュエータのリーク電流をより正確に検出できるようにするには、前記リーク電流検出器が、前記駆動回路が定格最大電圧よりも大きい駆動電圧を所定時間出力している状態でリーク電流を検出するものであればよい。すなわち、ピエゾバルブに印加される駆動電圧は許容電圧よりも所定値だけ小さい定格最大電圧に抑えて余裕をもたせてあるため、全閉又は全開時にリーク電流が発生していたとしてもその値が小さく検出しにくい可能性がある。したがって、例えば定格最大電圧と許容電圧との間で通常よりも大きい電圧を全閉又は全開時に前記ピエゾアクチュエータに所定時間印加することで圧力や流量の制御性能を低下させずにリーク電流の検出精度を高めることができる。
【0012】
リーク電流が検出されるタイミングのみ、前記ピエゾアクチュエータに対してリーク電流を検出するための検出抵抗が作用するようにして、通常の動作時には前記検出抵抗が制御に悪影響を与えないようにするには、前記駆動回路が、入力された前記ピエゾ制御信号を増幅し、前記駆動電圧として前記ピエゾアクチュエータに出力する増幅器と、前記ピエゾアクチュエータと、グラウンドとの間に設けられた第1スイッチング素子と、を具備し、前記リーク電流検出器が、前記第1スイッチング素子と並列に設けられた第2スイッチング素子と、前記第2スイッチング素子に直列に設けられ、前記第1スイッチング素子がオフかつ前記第2スイッチング素子がオンの状態で前記リーク電流が流れ込むように構成された検出抵抗と、前記検出抵抗に発生する電圧を検出する第1電圧検出部と、を具備すればよい。
【0013】
例えばユーザにより設定される設定圧力や設定流量において前記ピエゾアクチュエータに定格最大電圧が印加されるタイミングでのみ、前記リーク電流検出器が動作して、リーク電流をモニタリングできるようにするには、前記駆動回路が前記定格最大電圧以上の駆動電圧を出力している場合に、前記第1スイッチング素子をオフとし、前記第2スイッチング素子をオンとする第1診断タイミング制御部をさらに備えたものであればよい。
【0014】
前記ピエゾアクチュエータのキャパシタンスの変化から損傷や劣化を検知し、さらに精度よく寿命予測ができるようにするには、前記駆動回路が前記ピエゾアクチュエータに駆動電圧を出力していない状態において、前記ピエゾアクチュエータのキャパシタンスを検出するキャパシタンス検出器をさらに備えたものであればよい。
【0015】
前記ピエゾアクチュエータに印加されている電圧前記ピエゾアクチュエータにテスト電流を所定時間供給し、そのときの電圧変化に基づいて当該ピエゾアクチュエータのキャパシタンスを検出するものが挙げられる。
【0016】
前記ピエゾアクチュエータのキャパシタンスを測定するための具体的な態様としては、前記キャパシタンス検出器が、前記ピエゾアクチュエータにテスト電流を供給する電流供給部と、前記ピエゾアクチュエータに印加されている電圧の変化を検出する第2電圧検出部と、を備えたものが挙げられる。
【0017】
前記駆動回路から駆動電圧が出力され、圧力や流量の制御が行われている間にはテスト電流が加えられないようにするとともに、テスト電流による前記ピエゾアクチュエータに発生する電圧の変化を捉えやすくするには、前記駆動回路が駆動電圧を出力していない場合に、前記電流供給部にテスト電流を出力させる第2診断タイミング制御部をさらに備えたものであればよい。
【0018】
本発明に係るピエゾバルブと、前記ピエゾバルブの開度を制御するバルブ制御部と、を備えた流体制御装置であれば、前記ピエゾバルブで流体の流量や圧力を制御しながら、当該ピエゾバルブの状態をほぼ常時モニタリングできる。したがって、前記ピエゾバルブの寿命を正確に予測して、従来よりも交換頻度を減らしたり、メンテナンスに必要となる時間を短縮したりすることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
このようなものであれば、前記弁座と前記弁体との間に流体が流れており、前記駆動回路から出力される駆動電圧で流体の制御が行われている間でも前記リーク電流検出器によって前記ピエゾアクチュエータのリーク電流をモニタリングできる。したがって、ピエゾバルブが稼働中かどうかに関わりなく、前記ピエゾアクチュエータの状態をほぼ常時モニタリングできるので、寿命予測精度を従来よりも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態におけるピエゾバルブを備えた流体制御装置の使用例を示す模式図。
図2】同実施形態におけるピエゾバルブ及び流体制御装置を示す模式図。
図3】同実施形態におけるピエゾバルブの構造を示す模式的断面図。
図4】同実施形態における診断機構の構成を示す機能ブロック図。
図5】同実施形態における診断機構を構成する回路を示す模式的回路図。
図6】同実施形態におけるリーク電流及びキャパシタンスをモニタリングするタイミングを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態における、ピエゾバルブ4及び流体制御装置100について各図を参照しながら説明する。
【0022】
図1に示す本実施形態の流体制御装置100はいわゆるマスフローコントローラであって、例えばチャンバに供給されるガスの流量を制御するために用いられるものである。なお、流体制御装置100は流体を制御するものであり、本実施形態のようにガスを制御するものではなく、液体を制御するものであってもよい。
【0023】
まず、流体制御装置100の概略について説明し、その後ピエゾバルブ4の詳細について説明する。
【0024】
図1に示すように流体制御装置100は、チャンバCNに接続されている流路上に設けられ、チャンバCNに供給されるガスの流量を制御する。また、本実施形態では流体制御装置100の上流側及び下流側のそれぞれには開閉バルブVが設けられている。チャンバCNに対して流量制御されたガスが連続的又は間欠的に供給され、各種プロセスが実施されるプロセス期間中にはこれらの開閉バルブVは開放される。一方、チャンバCNに対してガスの供給が所定期間以上停止されるオフ期間では各開閉バルブVは閉止される。
【0025】
本実施形態では流体制御装置100に用いられている図1及び図2に示されるピエゾバルブ4の損傷や劣化の程度を把握する、あるいは、ピエゾバルブ4の寿命を予測するためにピエゾバルブ4に用いられているピエゾアクチュエータ41のリーク電流とキャパシタンスがモニタリングされる。このモニタリングは、チャンバCNへのガスの供給が行われていないオフ期間だけでなく、チャンバCNへのガスの供給が行われているプロセス期間中にも行われる。言い換えると、流体制御装置100は流体の制御を行いつつ、ピエゾバルブ4自体の状態をほぼ常時把握できるように構成されている。
【0026】
図2に示すように流体制御装置100は、内部に流路Cが形成されたボディ1と、ピエゾバルブ4と、流量センサ2と、制御等を司る制御ボードBと、を備えたものである。ピエゾバルブ4と流量センサ2はボディ1の上面に対して取り付けられ、制御ボードB等がボディ1の上面に被せられるカバー内に収容されている。このように流体制御装置100は、流量制御に必要なセンサ、制御器、アクチュエータがパッケージ化されたものである。
【0027】
流量センサ2は圧力式の流量センサであり、流路Cに設けられた層流素子23と、層流素子23の上流側の圧力を測定できるように設けられた第1圧力センサ21と、層流素子23の下流側の圧力を測定できるように設けられた第2圧力センサ22と、第1圧力センサ21と第2圧力センサ22で測定された第1圧力、第2圧力に基づいて流路を流れる流体の流量を算出する流量算出部24と、から構成される。なお、第1実施形態では圧力式の流量センサを用いているが、例えば熱式の流量センサを用いても構わない。
【0028】
制御ボードBは、CPU、メモリ、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、各種入出力手段を備えたコンピュータであって、メモリに格納されているプログラムが実行され、各種機器と協業することによって各種機能が実現される。すなわち、制御ボードBは、少なくとも前述した流量算出部24と、バルブ制御部3としての機能を発揮する。また、ピエゾバルブ4の一部を構成する診断機構6の論理演算についても制御ボードBの計算資源を用いて実現される。
【0029】
バルブ制御部3は、外部から入力される設定流量と、流量センサ2で測定される測定流量とに基づいてピエゾバルブ4の開度を制御する。より具体的にはバルブ制御部3は、設定流量と測定流量の偏差が小さくなるようにピエゾバルブ4の開度を制御する。すなわち、設定流量と測定流量の偏差と、設定されている制御係数であるPID係数に基づいてPID演算を行い、その結果に応じたピエゾ制御信号を駆動回路5に対して出力する。なお、本実施形態ではピエゾバルブ4を全開状態にする場合に状況に応じて2種類のピエゾ制御信号のいずれかが出力される。具体的には、バルブ制御部3は、例えば設定流量において最大流量を維持する時間が所定時間以内の場合には、後述する駆動回路5から定格最大電圧である100%の駆動電圧に対応するピエゾ制御信号を出力する。また、バルブ制御部3は設定流量において最大流量を維持する時間が所定時間よりも長い場合には、駆動回路5から定格最大電圧よりも大きい電圧のリーク電流検出用電圧に対応するピエゾ制御信号を出力する。ここで、リーク電流検出用電圧は例えば定格最大電圧が100%に対して120%に設定される。なお、ピエゾアクチュエータ41が故障せずに動作できる許容電圧は例えば140%である。
【0030】
ピエゾバルブ4は、図3に示すようにボディ1の上面において内部流路Cが開口する部分の周囲に形成された弁座42と、当該弁座42に対して接離可能に設けられた弁体43と、弁座42に対する弁体43の位置を変更する駆動力を発揮するピエゾアクチュエータ41と、弁体43とピエゾアクチュエータ41との間を接続するプランジャ44及び変位反転機構45を備えている。すなわち、ピエゾバルブ4はノーマルクローズタイプのバルブとして構成されており、変位反転機構45の作用によってピエゾアクチュエータ41が伸びると弁体43が弁座42に対して引き上げられるように構成されている。
【0031】
具体的には内部流路Cの開口の周囲に形成される弁座42に対して、弁体43は弁座42に対して接触する全閉位置と弁座42に対して所定距離離れた全開位置との間で移動可能に設けられている。弁体43は全閉位置と全開位置と間の任意の位置に配置される。そして、弁座42と弁体43との間に形成されるオリフィスの大きさが変更され、対応する流量が実現される。
【0032】
本実施形態ではピエゾバルブ4は、ピエゾアクチュエータ41の状態を診断するための機能を備えている。具体的にはピエゾバルブ4は、図2に示すようにピエゾアクチュエータ41に対して駆動電圧を出力する駆動回路5と、ピエゾアクチュエータ41のリーク電流及びキャパシタンスを検出し、当該ピエゾアクチュエータ41の状態を診断する診断機構6と、をさらに備えている。なお、本実施形態では駆動回路5及び診断機構6は、独立した電気回路として構成されているが、流体制御装置100の制御ボードBの機能を利用して構成されてもよい。
【0033】
駆動回路5は、図2に示すようにバルブ制御部3からピエゾ制御信号が入力され、当該ピエゾ制御信号に応じた駆動電圧をピエゾアクチュエータ41に出力する。図4に示すように駆動回路5は、入力されるピエゾ制御信号を増幅して、駆動電圧を生成する増幅器51を備えたものであり、増幅器51の出力端子がピエゾアクチュエータ41に接続されている。また、駆動回路5はピエゾアクチュエータ41とグラウンドとの間に第1スイッチング素子52をさらに備えており、ピエゾアクチュエータ41と第1スイッチング素子52との間からは診断機構6に接続されるテストノードを分岐させてある。
【0034】
診断機構6は、各開閉弁Vが閉止されており流体制御装置100がチャンバCNに対してガスの供給を行っていないオフ期間だけを診断期間とするのではなく、流体制御装置100がガスの流量を制御し、チャンバCNへのガスの供給が行われているプロセス期間も診断期間とする。具体的には診断機構6は、図4図5に示すようにピエゾアクチュエータ41のリーク電流を検出するリーク電流検出器61と、ピエゾアクチュエータのキャパシタンスを検出するキャパシタンス検出器65と、を備えている。さらに本実施形態では診断機構6は、リーク電流検出器61がリーク電流を検出するタイミングを制御する第1診断タイミング制御部68と、キャパシタンス検出器65がキャパシタンスを検出するタイミングを制御する第2診断タイミング制御部69と、リーク電流検出器61とキャパシタンス検出器65の検出結果に基づいてピエゾアクチュエータ41の寿命を予測する寿命予測部6Aとを備えている。
【0035】
リーク電流検出器61は、図4に示すようにテストノードを介してピエゾアクチュエータ41に対して第1スイッチング素子52と並列に設けられた第2スイッチング素子63と、第2スイッチング素子63に直列に設けられ、第1スイッチング素子52がオフかつ前記第2スイッチング素子63がオンの状態でピエゾアクチュエータ41のリーク電流が流れ込むように構成された検出抵抗62と、検出抵抗62に発生する電圧を検出する第1電圧検出部64と、第1電圧検出部64が検出した電圧からリーク電流を算出するリーク電流算出部(図示しない)と、を具備する。なお、リーク電流によって検出抵抗62に発生する電圧はリーク電流に対してほぼ比例するので、例えば検出された電圧を検出抵抗62の抵抗値で割ることでリーク電流を算出することができる。
【0036】
ここで、リーク電流検出器61がリーク電流を検出するタイミングは、第1診断タイミング制御部68が第1スイッチング素子52及び第2スイッチング素子63のオンオフの切り替えられることで制御される。
【0037】
具体的には図5に記載の第1診断タイミング制御部68は、バルブ制御部3から出力されているピエゾ制御信号又はユーザによって入力されるタイミング指令に基づいて、リーク電流を検出するタイミングを制御する。例えば図6に示すようにプロセス期間において駆動回路5から定格最大電圧以上の電圧が所定時間以上継続して出力され、ピエゾバルブ4が所定時間全開状態に維持されている場合にリーク電流の検出が行われる。なお、所定時間とは例えば1~2秒程度の間、全開状態が維持されている時間である。
【0038】
ここで、通常の流量制御時には第1スイッチング素子52はオン、第2スイッチング素子63はオフとして、検出抵抗62は回路的に切り離されている。一方、上述したようにプロセス期間においてリーク電流を検出するのに適した定格最大電圧以上の電圧が駆動回路5から出力されている場合には、第1診断タイミング制御部68は第1スイッチング素子52をオフとし、第2スイッチング素子63をオンとする。この結果、ピエゾアクチュエータ41から検出抵抗62を介してグラウンドへ電流が流れるように切り替えられる。
【0039】
本実施形態ではピエゾバルブ4の開度が全開であり、それ以上電圧を大きくしても開度変化が生じないタイミングにおいて全開に相当する定格最大電圧よりも大きい電圧が印加されるようにして、リーク電流の検出を行っても流量変化は生じないように構成されている。なお、プロセス期間中においてピエゾバルブ4の全閉状態が解除されると、第1診断タイミング制御部68は第1スイッチング素子52をオン、第2スイッチング素子63をオフの状態に戻す。
【0040】
一方、各開閉バルブVが全閉されているオフ期間においては例えばユーザがピエゾバルブ4の診断を実施するために設定する所定のタイミング指令に基づいて、図6に示すように駆動回路5は定格最大電圧よりも大きい電圧を出力するとともに、第1診断タイミング制御部68は第1スイッチング素子52をオフ、第2スイッチング素子63をオンの状態にする。
【0041】
このようにしてリーク電流検出器61は、プロセス期間中、オフ期間中のそれぞれにおいてピエゾアクチュエータ41のリーク電流を検出する。すなわちリーク電流検出器61は、プロセスを継続しながらほぼリアルタイムでピエゾバルブ4のリーク電流の状態をモニタリングすることができる。
【0042】
次にキャパシタンス検出器65について説明する。キャパシタンス検出器65は、ピエゾバルブ4を全閉状態とするために駆動回路5から駆動電圧が出力されていない状態でピエゾアクチュエータ41のキャパシタンスを検出するものである。具体的にはキャパシタンス検出器65は、ピエゾアクチュエータ41に対して駆動電圧が印加されていない状態においてピエゾアクチュエータ41にテスト電流を所定時間供給し、そのときの電圧変化に基づいてピエゾアクチュエータ41のキャパシタンスを検出する。
【0043】
図4に示すようにキャパシタンス検出器65は、テストノードを介してピエゾアクチュエータ41にテスト電流を供給する電流供給部66と、ピエゾアクチュエータ41に印加されている電圧の変化を検出する第2電圧検出部67と、第2電圧検出部67で検出される電圧に基づいてピエゾアクチュエータのキャパシタンスを算出するキャパシタンス算出部(図示しない)と、を備えている。電流供給部66は一定の電流値のテスト電流を例えば1秒程度ピエゾアクチュエータ41に流す。キャパシタンス算出部は、ピエゾアクチュエータ41のキャパシタンスをC、テスト電流の電流値をi、電流を流した時間をt、第2電圧検出部67で検出される電圧Vとすると、C=it/Vからキャパシタンスを算出する。
【0044】
ここで、電流供給部66がピエゾアクチュエータ41に対してテスト電流を供給するタイミングは、第2診断タイミング制御部69により制御される。具体的には第2診断タイミング制御部69は、駆動回路5が駆動電圧を出力していない場合に、電流供給部66にテスト電流を出力させる。すなわち、第2診断タイミング制御部69は、図6に示すようにプロセス期間中において駆動回路5から駆動電圧が出力されておらず、所定時間全閉状態が保たれている場合に電流供給部66からテスト電流を供給させる。例えば全閉状態が1~2秒間維持される場合に第2診断タイミング制御はテスト電流を供給させる。なお、テスト電流の電流値は十分に小さい値であり、ピエゾアクチュエータ41に発生する電圧は弁座42から弁体43が離れて全閉状態が解除されないようにしてある。
【0045】
また、オフ期間ではユーザにより設定されるタイミング指令に基づき、第2診断制御部は、ピエゾバルブ4が全閉している状態において任意のタイミングで電流供給部66にテスト電流の供給を行わせる。
【0046】
このようにしてキャパシタンス検出器65は、プロセス期間中、オフ期間中のそれぞれにおいてピエゾアクチュエータ41のキャパシタンスを検出する。
【0047】
寿命予測部6Aは、リーク電流検出器61で検出されるリーク電流の変化、又は、キャパシタンス検出器65で検出されるキャパシタンスの変化に基づいて、ピエゾバルブ4の寿命を予測する。例えばピエゾバルブ4の劣化等に起因してリーク電流が増大し、予め定めた閾値を超えた場合には、寿命予測部6Aはピエゾバルブ4が寿命に至る直前であると判定する。あるいは、ピエゾアクチュエータ41のキャパシタンスが低下し予め定めた閾値を下回った場合には、寿命予測部6Aはピエゾバルブ4が寿命に至る直前であると判定する。
【0048】
このように本実施形態の流体制御装置100及びピエゾバルブ4によれば、プロセス期間中においても定格最大電圧以上の電圧が印加されるタイミングでリーク電流の検出を行うので、ほぼ常時ピエゾアクチュエータ41のリーク電流の変化をモニタリングすることができる。同様にピエゾアクチュエータ41のキャパシタンスも、プロセス期間においても検出されるので、ほぼ常時その変化をモニタリングすることができる。
【0049】
したがって、ピエゾバルブ4の劣化等の影響を受けるパラメータであるリーク電流とキャパシタンスをほぼ常時モニタリングできるので、リアルタイムでのピエゾバルブ4の寿命予測が可能となるとともに、その予測精度を従来よりも向上させることができる。
【0050】
またプロセス期間中のリーク電流の検出は、ピエゾバルブ4が全開にされる場合に全開に相当する定格最大電圧よりも高い電圧がピエゾアクチュエータ41に印加されることで行われる。したがって、リーク電流を検出するための動作によってピエゾバルブ4の開度が変化することはなく、流量制御には影響を与えない。
【0051】
その他の実施形態について説明する。
【0052】
流体制御装置は、寿命予測部がリーク電流又はキャパシタンスが閾値を超える、又は、下回った場合に、オペレータやホスト端末に対してその旨を報知する報知部を備えていてもよい。
【0053】
診断機構は、ピエゾアクチュエータのリーク電流のみを検出するものであってもよい。すなわち、プロセス期間中においてピエゾアクチェエータに定格最大電圧以上の電圧が印加されている場合にリーク電流検出器が動作し、リーク電流を検出するものであればよい。また、前記実施形態ではノーマルクローズタイプのピエゾバルブにおいてピエゾアクチュエータのリーク電流を検出していたが、ノーマルオープンタイプのピエゾバルブに本発明を適用してもよい。すなわち、定格最大電圧が印加されている場合に全閉状態となるピエゾバルブでは、リーク電流検出器は全閉時にリーク電流を検出するものであればよい。この場合には、リーク電流検出器はプロセス期間において直前まで弁座と弁体との間に流体が流れており、全閉された後の所定期間を利用してリーク電流の検出を行うことになる。
【0054】
流体制御装置は、流量を制御するものに限られず、圧力を制御するものであってもよい。リーク電流検出器又はキャパシタンス検出器がそれぞれリーク電流やキャパシタンスを検出するタイミングも前記実施形態に示したものに限られない。また、各パラメータが検出されるタイミングは、予め設定された条件を満たした診断機構が判定した場合に自動的に設定されるものであってもよいし、ユーザがマニュアルで設定するものであってもよい。
【0055】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、実施形態の一部を変更したり、様々な実施形態の一部同士を組み合わせたりしてもかまわない。
【符号の説明】
【0056】
100・・・流体制御装置
4 ・・・ピエゾバルブ
41 ・・・ピエゾアクチュエータ
42 ・・・弁座
43 ・・・弁体
5 ・・・駆動回路
51 ・・・増幅器
52 ・・・第1スイッチング素子
6 ・・・診断機構
61 ・・・リーク電流検出器
62 ・・・検出抵抗
63 ・・・第2スイッチング素子
64 ・・・第1電圧検出部
65 ・・・キャパシタンス検出器
66 ・・・電流供給部
67 ・・・第2電圧検出部
68 ・・・第1診断タイミング制御部
69 ・・・第2診断タイミング制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6