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特許7382798極性基含有オレフィン共重合体、及び極性基含有オレフィン共重合体組成物
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  • 特許-極性基含有オレフィン共重合体、及び極性基含有オレフィン共重合体組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】極性基含有オレフィン共重合体、及び極性基含有オレフィン共重合体組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/00 20060101AFI20231110BHJP
   C08F 4/80 20060101ALI20231110BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
C08F210/00
C08F4/80
C08F2/38
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019201878
(22)【出願日】2019-11-07
(65)【公開番号】P2020105490
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2018210126
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018248305
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「極性基含有ポリプロピレン:触媒開発と樹脂設計」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】303061270
【氏名又は名称】日本ポリケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】野崎 京子
(72)【発明者】
【氏名】田谷野 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】ワン シャオミン
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-041541(JP,A)
【文献】特表2020-515553(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0208309(US,A1)
【文献】特開2018-141138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 210/00- 210/18
C08F 4/80
C08F 2/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン及び炭素数3~20のオレフィンから選ばれる1種以上のモノマーに由来する構造単位(A)と、
下記一般式(1)で表される極性基含有オレフィンモノマー(b-1)及び下記一般式(2)で表される極性基含有オレフィンモノマー(b-2)から選ばれる1種以上のモノマーに由来する構造単位(B)と、
下記一般式(3)で表される極性基含有カルベンモノマーから選ばれる1種以上のモノマーに由来する構造単位(C)と、を含むことを特徴とする極性基含有オレフィン共重合体。
【化1】
(一般式(1)中、RとRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、シアノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミド基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いイミノ基、炭素数1~30のハロゲン置換炭化水素基、又は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む官能基で置換されていても良い炭素数1~30の炭化水素基であり、RとRの少なくとも一つは、酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種を含む基である。)
【化2】
(一般式(2)中、R~R10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1~20の炭化水素基である。nは0又は正の整数を示し、nが2以上の場合には、R~R10は、それぞれの繰り返し単位の中で、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R11~R14は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、シアノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミド基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いイミノ基、又は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む官能基で置換されていても良い炭素数1~30の炭化水素基であり、R11~R14の少なくとも一つは、酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種を含む基である。R11及びR12、並びに、R13及びR14は、各々一体化して2価の有機基を形成してもよく、R11又はR12と、R13又はR14とは、互いに環を形成していてもよい。)
【化3】
(一般式(3)中、XとYは、それぞれ独立して、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミノ基、シアノ基、炭素数1~30のアルコキシ基、又は、炭素数6~30のアリールオキシ基である。)
【請求項2】
前記極性基含有オレフィン共重合体が、末端の構造単位の合計100mol%に対して前記構造単位(C)の末端を20mol%以上含むことを特徴とする、請求項1に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
【請求項3】
前記極性基含有オレフィン共重合体は、構造単位全体100mol%に対して前記構造単位(C)を、0.001mol%以上5mol%以下含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
【請求項4】
前記極性基含有オレフィン共重合体において、前記構造単位(C)の50mol%以上が、末端に位置することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
【請求項5】
前記極性基含有オレフィン共重合体は、
前記構造単位(A)のmol分率[A]と前記構造単位(B)のmol分率[B]が、[A]≧{([A]+[B])×80%}を満たすことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
【請求項6】
前記一般式(3)で表される極性基含有カルベンモノマーが、下記一般式(100)~(103)で表されるモノマーから選択される少なくとも1種に由来するカルベンモノマーであることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
【化4】
(一般式(100)~一般式(103)中、XおよびYは前記一般式(3)と同義であり、Lはハロゲン原子を示す。)
【請求項7】
前記一般式(3)で表される極性基含有カルベンモノマーが、2-ジアマロン酸ジメチル、2-ジアマロン酸ジエチル、2-ジアマロン酸ジプロピル、2-ジアマロン酸ジブチル、2-ジアシアノ酢酸メチル、2-ジアシアノ酢酸エチル、2-ジアシアノ酢酸プロピル、2-ジアシアノ酢酸ブチル、及び2-ジアマロノニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種に由来するカルベンモノマーであることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
【請求項8】
前記一般式(1)において、Rが水素原子であることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
【請求項9】
前記一般式(1)において、Rが水素原子であり、Rが炭素数1~30のエステル基、シアノ基、シアノメチル基、シアノエチル基アシルオキシメチル基、又はアシルオキシエチル基であることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
【請求項10】
前記一般式(1)で表される極性基含有オレフィンモノマー(b-1)が、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、酢酸ビニル、酢酸アリル、3-酢酸ブテニル、アクリロニトリル、及び3-シアノプロペンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
【請求項11】
前記一般式(2)において、nは0または1であり、R~R10はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
【請求項12】
前記一般式(2)で表される極性基含有オレフィンモノマー(b-2)が、5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチル、5-ノルボルネン-2-カルボン酸エチル、5-ノルボルネン-2-カルボン酸プロピル、5-ノルボルネン-2-カルボン酸ブチル、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸ジメチル、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、2-ヒドロキシ-5-ノルボルネン、5-ノルボルネン-2-メタノール、5-ノルボルネン-2-メチルアミン、2-アセトキシ-5-ノルボルネン、 2-シアノメチル-5-ノルボルネン、及び5-ノルボルネン-2-カルボニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
【請求項13】
ニッケル、パラジウム、及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の遷移金属と、請求項1~12のいずれか1項に記載の極性基含有オレフィン共重合体とを含有する、極性基含有オレフィン共重合体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、新規な極性基含有オレフィン共重合体に関し、詳しくは、特定の極性基が末端に選択的に導入されている新規な極性基含有オレフィン共重合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンの末端に官能基が導入された末端官能基化ポリオレフィンは、ポリオレフィンの性質を改善することが期待され、産業界から希求されている。
例えば、末端官能基化ポリオレフィンを通常のポリオレフィンに混ぜると、疎水性相互作用の結果、官能基はポリオレフィン界面に現れやすい。その結果、官能基化されたポリオレフィン界面では、従来ポリオレフィンの弱点とされていた加工、成形、塗装などの特性が改良される。また、末端官能基化ポリオレフィンをコンパウンドに応用すると、フィラーや繊維や添加剤を強固に保持する界面があることで、より安定なコンパウンドを形成することができる。すなわち末端官能基化ポリオレフィンは、ポリオレフィンコンパウンドの製造範囲およびまたは製造経路を拡張できる。
【0003】
また、末端官能基化ポリオレフィンは、ジブロックポリマーの原料となり得る。末端官能基化ポリオレフィンの末端官能基から異種の重合を開始することにより、異種の樹脂を接合することができる。例えば、末端にハロゲンを導入されたポリオレフィンは、ラジカル重合の開始剤となり、その先にアクリル樹脂やポリスチレンを接合することができる。更に、このようにして得られるジブロックポリマーを、前述のようにポリオレフィンに混合してポリオレフィンの特性を改良するなど、ポリオレフィンコンパウンドの製造に用いることができる。
【0004】
従来のポリオレフィンの末端に選択的に官能基を導入する方法としては、例えば、ポリオレフィンの末端の二重結合に対し、反応性の高い有機金属試薬を反応させて活性末端を作り、それを所望の官能基を有する化合物と反応させる方法が挙げられる(例えば、特許文献1)。
しかしながら、当該方法は、工程が多すぎること、有機金属試薬を大量に消費するため不経済であること、更には歩留りが悪いことに問題があった。
【0005】
また、ポリオレフィンの末端に選択的に官能基を導入する他の方法としては、ポリオレフィンのリビング重合を行い、その後、成長末端を所望の官能基を有する化合物と反応させる方法も挙げられる(例えば、非特許文献1)。
しかしながら、このようなリビング重合はそもそもポリオレフィンの工業化に向いていないという問題がある。オレフィンをリビング重合できる触媒はほとんど知られていないし、いずれも生産性で非リビング重合触媒に遠くおよばず、しかも高価であり、そこから製造できるポリオレフィンの範囲も非常に狭いからである。
【0006】
また、非特許文献2では、連鎖移動剤として2-ビニルフランを用い、オレフィン重合を行い、末端にフリル基を有するポリオレフィンを得たことが開示されている。しかしながら、非特許文献2ではポリオレフィン末端へフリル基の導入が成功しているだけである。末端フリル基ポリオレフィンでは、上述のような産業界で求められているポリオレフィンの性質を改善するための末端官能基化ポリオレフィンとして、十分でない。
【0007】
一方で、非特許文献3では、アルキルジアゾアセテート(N=CHCOOR、R=エチル基、又はメチル基)を重合モノマーとして用いて単独重合を行い、ポリアルコキシカルボニルメチレンが得られたことが開示されている。
また、非特許文献4では、ロジウム系触媒の存在下で、特定の構造のカルベン(N=CHCOOR、R=エチル基)とエチレンを共重合することにより、カルベン単独重合体に交じって、わずかにエチレン・カルベン共重合体が得られた旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第7897709号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】Macromolecules 2003, 36, 3085-3100
【文献】Angew. Chem. Int. Ed. 2016, 55, 14378-14383
【文献】Macromolecules 2003, 36, 36-41
【文献】Dalton Trans. 2013, 42, 9058-9068
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、従来のポリオレフィンの末端に選択的に官能基を導入する方法は、多段階、低効率、煩雑であり問題があった。また、単なるオレフィンと極性基含有モノマーのランダム共重合では、極性モノマーは選択的に末端に導入されない。すなわち、オレフィンと極性基含有モノマーのランダム共重合では、主鎖にも導入され、分子構造の制御が困難であった。
上述のような産業界で求められているポリオレフィンの性質を改善するために有用な官能基が、末端に選択的に導入されている新規な極性基含有オレフィン共重合体が求められている。
【0011】
本願は、かかる従来技術の状況に鑑み、特定の極性基が末端に選択的に導入されている新規な極性基含有オレフィン共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の極性基含有オレフィン共重合体は、
エチレン及び炭素数3~20のオレフィンから選ばれる1種以上のモノマーに由来する構造単位(A)と、
下記一般式(1)で表される極性基含有オレフィンモノマー(b-1)及び下記一般式(2)で表される極性基含有オレフィンモノマー(b-2)から選ばれる1種以上のモノマーに由来する構造単位(B)と、
下記一般式(3)で表される極性基含有カルベンモノマーから選ばれる1種以上のモノマーに由来する構造単位(C)と、を含むことを特徴とする。
【0013】
【化1】
(一般式(1)中、RとRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、シアノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミド基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いイミノ基、炭素数1~30のハロゲン置換炭化水素基、又は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む官能基で置換されていても良い炭素数1~30の炭化水素基であり、RとRの少なくとも一つは、酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種を含む基である。)
【0014】
【化2】
(一般式(2)中、R~R10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1~20の炭化水素基である。nは0又は正の整数を示し、nが2以上の場合には、R~R10は、それぞれの繰り返し単位の中で、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R11~R14は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、シアノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミド基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いイミノ基、又は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む官能基で置換されていても良い炭素数1~30の炭化水素基であり、R11~R14の少なくとも一つは、酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種を含む基である。R11及びR12、並びに、R13及びR14は、各々一体化して2価の有機基を形成してもよく、R11又はR12と、R13又はR14とは、互いに環を形成していてもよい。)
【0015】
【化3】
(一般式(3)中、XとYは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、炭素数1~30のアルキルチオ基、シアノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミド基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いイミノ基、又は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む官能基で置換されていても良い炭素数1~30の炭化水素基であり、XとYの少なくとも一つは酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種を含む基である。XとYは環を形成してよく、その場合に形成される環は5~7員環である。)
【0016】
本開示の極性基含有オレフィン共重合体においては、末端の構造単位の合計100mol%に対して前記構造単位(C)の末端を20mol%以上含むことが、この重合体の末端をさらに化学変換する場合の変換効率の点から好ましい。
【0017】
本開示の極性基含有オレフィン共重合体においては、構造単位全体100mol%に対して前記構造単位(C)を、0.001mol%以上5mol%以下含むことが、構造単位(C)由来の末端の比率を高く保つという観点から好ましい。
【0018】
本開示の極性基含有オレフィン共重合体においては、前記構造単位(C)の50mol%以上が、末端に位置することが、この重合体の末端をさらに化学変換する場合の変換効率の点から好ましい。
【0019】
本開示の極性基含有オレフィン共重合体においては、前記構造単位(A)のmol分率[A]と前記構造単位(B)のmol分率[B]が、[A]≧{([A]+[B])×80%}を満たすことが、共重合体が例えば疎水性のようなオレフィンとしての特性も維持するためには好ましい。
【0020】
本開示の極性基含有オレフィン共重合体においては、前記一般式(3)において、XとYがそれぞれ独立して、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミノ基、シアノ基、炭素数1~30のアルコキシ基、又は、炭素数6~30のアリールオキシ基であることが、共重合体の製造効率および連鎖移動効率の点から好ましい。
【0021】
本開示の極性基含有オレフィン共重合体においては、前記一般式(3)で表される極性基含有カルベンモノマーが、下記一般式(100)~(103)で表されるモノマーから選択される少なくとも1種に由来するカルベンモノマーであることが、取扱いの容易性の点から好ましい。
【0022】
【化4】
(一般式(100)~一般式(103)中、XおよびYは前記一般式(3)と同義であり、Lはハロゲン原子を示す。)
【0023】
本開示の極性基含有オレフィン共重合体においては、前記一般式(100)~(103)において、XとYが、それぞれ独立して、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミノ基、シアノ基、炭素数1~30のアルコキシ基、又は、炭素数6~30のアリールオキシ基であることが、共重合体の製造効率および連鎖移動効率の点から好ましい。
【0024】
本開示の極性基含有オレフィン共重合体においては、前記一般式(3)で表される極性基含有カルベンモノマーが、2-ジアマロン酸ジメチル、2-ジアマロン酸ジエチル、2-ジアマロン酸ジプロピル、2-ジアマロン酸ジブチル、2-ジアシアノ酢酸メチル、2-ジアシアノ酢酸エチル、2-ジアシアノ酢酸プロピル、2-ジアシアノ酢酸ブチル、及び2-ジアマロノニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種に由来するカルベンモノマーであることが、入手の容易性および取扱いの容易性の点から好ましい。
【0025】
本開示の極性基含有オレフィン共重合体においては、前記一般式(1)において、Rが水素原子であることが、共重合体の製造効率、共重合体の分子量、並びに前記モノマー(A)及び前記モノマー(C)との共重合性の点から好ましい。
【0026】
本開示の極性基含有オレフィン共重合体においては、前記一般式(1)において、Rが水素原子であり、Rが炭素数1~30のエステル基、シアノ基、シアノメチル基、シアノエチル基アシルオキシメチル基、又はアシルオキシエチル基であることが、共重合体の製造効率、共重合体の分子量、並びに前記モノマー(A)及び前記モノマー(C)との共重合性の点から好ましい。
【0027】
本開示の極性基含有オレフィン共重合体においては、前記一般式(1)で表される極性基含有オレフィンモノマー(b-1)が、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、酢酸ビニル、酢酸アリル、3-酢酸ブテニル、アクリロニトリル、及び3-シアノプロペンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが、共重合体の製造効率、共重合体の分子量、並びに前記モノマー(A)及び前記モノマー(C)との共重合性の点から好ましい。
【0028】
本開示の極性基含有オレフィン共重合体においては、前記一般式(2)において、nは0または1であり、R~R10はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基であることが、共重合体の製造効率、共重合体の分子量、並びに前記モノマー(A)及び前記モノマー(C)との共重合性の点から好ましい。
【0029】
本開示の極性基含有オレフィン共重合体においては、前記一般式(2)で表される極性基含有オレフィンモノマー(b-2)が、5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチル、5-ノルボルネン-2-カルボン酸エチル、5-ノルボルネン-2-カルボン酸プロピル、5-ノルボルネン-2-カルボン酸ブチル、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸ジメチル、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、2-ヒドロキシ-5-ノルボルネン、5-ノルボルネン-2-メタノール、5-ノルボルネン-2-メチルアミン、2-アセトキシ-5-ノルボルネン、 2-シアノメチル-5-ノルボルネン、及び5-ノルボルネン-2-カルボニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが、共重合体の製造効率、共重合体の分子量、並びに前記モノマー(A)及び前記モノマー(C)との共重合性の点から好ましい。
【0030】
本開示の極性基含有オレフィン共重合体組成物は、ニッケル、パラジウム、及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の遷移金属と、前記本開示の極性基含有オレフィン共重合体とを含有する。
【発明の効果】
【0031】
本開示によれば、特定の極性基が末端に選択的に導入されている新規な極性基含有オレフィン共重合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、実施例5の極性基含有オレフィン共重合体5のH-NMR測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
1.極性基含有オレフィン共重合体
以下、本開示の極性基含有オレフィン共重合体について、項目毎に詳細に説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸の各々を示し、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を示す。また、本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0034】
本開示の極性基含有オレフィン共重合体は、エチレン及び炭素数3~20のオレフィンから選ばれる1種以上のモノマーに由来する構造単位(A)と、
下記一般式(1)で表される極性基含有オレフィンモノマー(b-1)及び下記一般式(2)で表される極性基含有オレフィンモノマー(b-2)から選ばれる1種以上のモノマーに由来する構造単位(B)と、
下記一般式(3)で表される極性基含有カルベンモノマーから選ばれる1種以上のモノマーに由来する構造単位(C)と、を含むことを特徴とする。
本開示の極性基含有オレフィン共重合体では、前記構造単位(A)及び構造単位(B)に、更に下記一般式(3)で表される極性基含有カルベンモノマーから選ばれる1種以上のモノマーに由来する構造単位(C)を有する、新規な多元系極性基含有オレフィン共重合体である。
本開示の極性基含有オレフィン共重合体では、前記極性基含有カルベンモノマーから選ばれる1種以上のモノマーに由来する構造単位(C)が選択的にポリオレフィンの末端に導入されやすい。具体的には、重合体中に含まれる構造単位(C)の合計100mol%に対して、末端に位置する構造単位(C)が、好ましくは50mol%以上、より好ましくは65mol%以上、更に好ましくは70mol%以上、より更に好ましくは80mol%以上、特に好ましくは90mol%以上、95mol%以上、99mol%以上の極性基含有オレフィン重合体を得ることができる。さらに、重合体中に含まれる構造単位(C)の合計100mol%に対して、重合停止末端に位置する構造単位(C)が、好ましくは50mol%以上、より好ましくは60mol%以上、更に好ましくは70mol%以上、より更に好ましくは80mol%以上の極性基含有オレフィン重合体を得ることができる。
また、構造単位(C)が選択的にポリオレフィンの末端に導入されやすいことから、当該構造単位(C)が有する特定の極性基がポリオレフィンの末端に高い割合で導入されやすい。具体的には、重合体の末端(両末端)の構造単位の合計100mol%に対して前記構造単位(C)の末端を20mol%以上、更には30mol%以上含む極性基含有オレフィン共重合体、重合停止末端(重合体の片末端)の構造単位の合計100mol%に対して前記構造単位(C)の末端を50mol%以上含む極性基含有オレフィン共重合体を得ることができる。
【0035】
本開示の極性基含有オレフィン共重合体の製造で用いられる極性基含有カルベンモノマーは、カルベン炭素に2つの置換基を有し、当該2つの置換基の少なくとも1つに極性基を含有する二置換カルベンである。このような二置換カルベンが、重合時に遷移金属を含む触媒の遷移金属に配位(重合反応)して重合体(ポリマー鎖)に挿入されると、二置換カルベンの4級炭素による立体障害のために、次のモノマー配位が起こり難くなり、次のモノマーの配位よりも速く連鎖移動(β-水素脱離等)が生じると考えられる。このような機構により、本開示で用いられる二置換カルベンの極性基含有カルベンモノマーは連鎖移動剤として働き、また末端修飾剤として機能していると考えられる。
本開示で用いられる極性基含有カルベンモノマーは、1,1-付加反応することが特徴的である。このような1,1-付加反応する場合には、前記非特許文献2の2-ビニルフランの1,2-付加反応する場合と比べて、より大きな立体障害となる官能基を有していても配位および挿入反応が進行し、その一方で次のモノマーの配位や挿入反応は抑制されると考えている。その結果、当該カルベンモノマー挿入後にβ-水素脱離が起こり、オレフィン共重合体の末端(重合停止末端)に当該カルベンモノマーに由来する極性基をより確実に導入できると考える。
本開示によれば、通常のオレフィン重合を行い、その成長末端を所望の極性基を有する連鎖移動剤である二置換カルベンと反応させることで、ポリオレフィンの末端に特定の極性基を選択的に導入でき、従来より高効率で導入できるため、末端極性基含有オレフィン共重合体を効率よく製造することができる。
【0036】
本開示で用いられる極性基含有カルベンモノマーは、カルベン炭素に2つの置換基を有し、当該2つの置換基の少なくとも1つに極性基を含有する二置換カルベンであることから、末端に導入されると、末端に2つの極性基を同時に導入することもできる。すなわち、本開示の極性基含有オレフィン共重合体では、末端に-C(X)(Y)(ここで、XおよびYは後述する一般式(3)と同義)を有する末端極性基含有オレフィン共重合体を得ることができる。
【0037】
また、従来技術の非特許文献2の末端のフラン環は、化学反応性が極めて乏しいために他の官能基を誘導する起点になりにくいと考えられる。それに対し、本開示の極性基含有オレフィン共重合体は、従来ポリオレフィンの弱点とされていた加工、成形、塗装などの特性を改良するのに適した極性基を適宜選択して導入可能なので、ポリオレフィンの特性を改良するのに有効であり、更にはポリオレフィンコンパウンドの製造範囲およびまたは製造経路を拡張したり、ジブロックポリマーの原料となるなど、多方面への応用が期待されるものである。
【0038】
(1)構造単位(A)
構造単位(A)は、エチレン及び炭素数3~20のオレフィンから選ばれる1種以上のモノマー(A)に由来する構造単位である。
本開示に用いられるモノマー(A)は、エチレン及び炭素数3~20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種である。炭素数3~20のオレフィンは、鎖状オレフィンであっても環状オレフィンであっても良く、炭素数3~20のα-オレフィン及び炭素数4~20の環状オレフィンから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
本開示に用いられる炭素数3~20のα-オレフィンは、構造式:CH=CHR18で表される炭素数3~20のα-オレフィン(R18は炭素数1~18の炭化水素基であり、直鎖構造であっても分岐を有していてもよい)、より好ましくは、炭素数3~12のα-オレフィンである。
また、炭素数4~20の環状オレフィンは、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン等が挙げられる。
モノマー(A)の具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、及びノルボルネン等が挙げられる。モノマー(A)としては、重合体の製造効率の点から、中でも、エチレン、プロピレン、1-ブテン、及びノルボルネンからなる群から選択される1種以上であることが好ましく、更に、エチレンであることが好ましい。
また、構造単位(A)は、1種単独であってもよいし、2種以上であっても良い。
【0039】
二種の組み合わせとしては、エチレン-プロピレン、エチレン-1-ブテン、エチレン-1-ヘキセン、エチレン-1-オクテン、プロピレン-1-ブテン、プロピレン-1-ヘキセン、プロピレン-1-オクテン、エチレン-ノルボルネンなどに由来する構造単位が挙げられる。
三種の組み合わせとしては、エチレン-プロピレン-1-ブテン、エチレン-プロピレン-1-ヘキセン、エチレン-プロピレン-1-オクテン、プロピレン-1-ブテン-ヘキセン、プロピレン-1-ブテン-1-オクテンに由来する構造単位などが挙げられる。
【0040】
本開示においては、構造単位(A)に用いられるモノマー(A)としては、好ましくは、エチレンを必須で含み、必要に応じて1種以上の炭素数3~20のα-オレフィンをさらに含んでも良い。
モノマー(A)中のエチレンは、モノマー(A)全体100mol%に対して、65~100mol%であってもよく、70~100mol%であってもよい。
【0041】
(2)構造単位(B)
構造単位(B)は、下記一般式(1)で表される極性基含有オレフィンモノマー(b-1)、及び下記一般式(2)で表される極性基含有オレフィンモノマー(b-2)から選ばれる1種以上のモノマー(B)に由来する構造単位である。
【0042】
【化5】
(一般式(1)中、RとRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、シアノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミド基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いイミノ基、炭素数1~30のハロゲン置換炭化水素基、又は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む官能基で置換されていても良い炭素数1~30の炭化水素基であり、RとRの少なくとも一つは、酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種を含む基である。)
【0043】
【化6】
(一般式(2)中、R~R10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1~20の炭化水素基である。nは0又は正の整数を示し、nが2以上の場合には、R~R10は、それぞれの繰り返し単位の中で、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R11~R14は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、シアノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミド基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いイミノ基、又は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む官能基で置換されていても良い炭素数1~30の炭化水素基であり、R11~R14の少なくとも一つは、酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種を含む基である。R11及びR12、並びに、R13及びR14は、各々一体化して2価の有機基を形成してもよく、R11又はR12と、R13又はR14とは、互いに環を形成していてもよい。)
【0044】
(2-1)極性基含有オレフィンモノマー(b-1)
一般式(1)中、炭素数1~30のエステル基は、-COORで示される1価の基であり、ここでRは、炭素数1~30の炭化水素基を示す。当該エステル基における炭素数は、カルボニル基の炭素数は含まれず、前記Rにおける炭素数をいい、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
における炭素数1~30の炭化水素基としては、例えば、直鎖、分岐、環状の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの組み合わせが挙げられ、例えば、下記炭素数1~30のアルキル基の例の他、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等のアルケニル基、フェニル基、メチルフェニル基、n-プロピルフェニル基、i-プロピルフェニル基、n-ブチルフェニル基、i-ブチルフェニル基、s-ブチルフェニル基、t-ブチルフェニル基、n-ヘキシルフェニル基、トリメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基、トリル基、ベンジル基等を好適に挙げることができる。
また、炭素数1~30のアルキル基としては、例えば、直鎖、分岐、環状のいずれであっても良く、メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、1-ノニル基、1-デシル基、t-ブチル基、トリシクロヘキシルメチル基、イソプロピル基、1-ジメチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,1-ジエチルプロピル基、イソブチル基、1,1-ジメチルブチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、4-ヘプチル基、2-プロピルヘプチル基、2-オクチル基、3-ノニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ノルボルニル基、等を好適に挙げることができる。
当該炭化水素基は、更に置換基を有していても良く、当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子、エポキシ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミノ基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、水酸基等が挙げられる。なお、置換基に含まれる炭素数は、前記炭素数に含まれないものとする。
前記Rにおける炭化水素基は、中でも炭素数1~8の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~6の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1~6の無置換の炭化水素基であることがより更に好ましい。
炭素数1~30のエステル基の具体例としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、シクロヘキシロキシカルボニル基、2-エチルヘキシロキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等を好適に挙げることができる。
【0045】
一般式(1)中、炭素数1~30のアシルオキシ基は、-OCORで示される1価の基であり、ここでRは、炭素数1~30の炭化水素基を示す。当該アシルオキシ基における炭素数は、カルボニル基の炭素数は含まれず、前記Rにおける炭素数をいい、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
炭素数1~30の炭化水素基としては、前記Rと同様のものを挙げることができる。
炭素数1~30のアシルオキシ基の具体例としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等を好適に挙げることができる。
【0046】
一般式(1)中、炭素数1~30のアルコキシ基は、-ORで示される1価の基であり、ここでRは、炭素数1~30のアルキル基を示す。当該アルコキシ基における炭素数は、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
における炭素数1~30のアルキル基は、前記Rと同様のものを挙げることができる。
炭素数1~30のアルコキシ基の具体例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基,i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペントキシ基、n-ヘキソキシ基、シクロプロポキシ基、シクロペントキシ基、シクロヘキシロキシ基、n-オクトキシ基、n-デトキシ基等を好適に挙げることができる。
また、炭素数6~30のアリールオキシ基は、-ORc’で示される1価の基であり、ここでRc’は、炭素数6~30のアリール基を示す。当該アリール基における炭素数は、下限値が6以上であればよく、8以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、12以下であってもよい。
c’における炭素数6~30のアリール基は、前記Rのうち、炭素数6~30のアリール基に相当するものを挙げることができる。
炭素数6~30のアリールオキシ基の具体例としては、例えば、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、ブチルフェノキシ基、ナフチルオキシ基、フルオレニルオキシ基、アントラセニルオキシ基等を挙げることができる。
【0047】
一般式(1)中、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミノ基は、-NRで示される1価の基であり、ここでR及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1~30の炭化水素基を示す。当該置換アミノ基に置換される炭化水素基の炭素数は、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
及びRにおける炭素数1~30の炭化水素基は、前記Rと同様のものを挙げることができる。
炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミノ基の具体例としては、例えば、アミノ基(-NH)、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モノイソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、モノフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基等を好適に挙げることができる。
【0048】
一般式(1)中、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミド基は、-CONRまたは-NRCORで示される1価の基であり、ここでR及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1~30の炭化水素基を示す。当該置換アミド基に置換される炭化水素基の炭素数は、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
及びRにおける炭素数1~30の炭化水素基は、前記Rと同様のものを挙げることができる。
炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミド基の具体例としては、例えば、-CONH、-CONH(CH)、-CON(CH、-CONH(C)、-CON(C、-CONH(i-C)、-CON(i-C、-CONH(Ph)、-CON(Ph)、-NHCOCH、-NHCOC等を好適に挙げることができる。なお、本明細書において、Phはフェニル基を示す。
【0049】
一般式(1)中、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いイミノ基は、-N=CRで示される1価の基であり、ここでR及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1~30の炭化水素基を示す。当該置換イミノ基に置換される炭化水素基の炭素数は、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
及びRにおける炭素数1~30の炭化水素基は、前記Rと同様のものを挙げることができる。
炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いイミノ基の具体例としては、例えば、-N=CH(CH)、-N=CHC等を好適に挙げることができる。
【0050】
一般式(1)中、炭素数1~30のハロゲン置換炭化水素基は、炭素数1~30の炭化水素基において、少なくとも1つの水素原子がハロゲンに置換された基である。当該炭素数1~30の炭化水素基としては、前記Rと同様のものを挙げることができる。ハロゲンとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
当該炭素数1~30のハロゲン置換炭化水素基の炭素数は、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
炭素数1~30のハロゲン置換炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基の水素原子の1~3個がハロゲン原子で置換されているハロメチル基、γ-クロロプロピル基、3,3’,3”-トリフルオロプロピル基、パーフルオロフェニル基、ジクロロフェニル基等が挙げられ、前記ハロメチル基としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、フルオロメチル基、ジクロロメチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0051】
一般式(1)中、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む官能基で置換されていても良い炭素数1~30の炭化水素基における炭素数1~30の炭化水素基としては、前記Rと同様のものを挙げることができる。
酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む官能基としては、例えば、水酸基、エポキシ基、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、シアノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミド基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いイミノ基、アルキルチオ基、炭素数1~30のチオエステル基、炭素数1~30のスルホニル基、炭素数1~30のスルホキシド基、炭素数1~30のスルホン酸エステル基、炭素数1~30のホスファイト基、炭素数1~30のホスフェート基、炭素数1~30のリンイリド基等が挙げられる。
【0052】
炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、シアノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミド基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いイミノ基については、前記と同様であって良い。
【0053】
前記炭素数1~30のアルキルチオ基は、-SRで示される1価の基であり、ここでRは、炭素数1~30のアルキル基を示す。当該アルキルチオ基における炭素数は、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
における炭素数1~30のアルキル基は、前記Rと同様のものを挙げることができる。
炭素数1~30のアルキルチオ基の具体例としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等を好適に挙げることができる。
【0054】
前記炭素数1~30のチオエステル基は、-C(=S)ORまたは-C(=O)SRで示される1価の基であり、ここでR及びRはそれぞれ炭素数1~30の炭化水素基を示す。当該チオエステル基の炭素数は、チオカルボニル基又はカルボニル基の炭素数は含まれず、前記R又はRにおける炭素数をいい、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
及びRにおける炭素数1~30の炭化水素基は、前記Rと同様のものを挙げることができる。
炭素数1~30のチオエステル基の具体例としては、例えば、-C(=S)OCH、-C(=O)SCH、-C(=S)OPh、-C(=O)SPh、等を好適に挙げることができる。
【0055】
前記炭素数1~30のスルホニル基は、-SOで示される1価の基であり、ここでRは炭素数1~30の炭化水素基を示す。当該スルホニル基の炭素数は、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
における炭素数1~30の炭化水素基は、前記Rと同様のものを挙げることができる。
炭素数1~30のスルホニル基の具体例としては、例えば、-SOCH、-SOPh等を好適に挙げることができる。
【0056】
前記炭素数1~30のスルホキシド基は、-SORで示される1価の基であり、ここでRは炭素数1~30の炭化水素基を示す。当該スルホキシド基の炭素数は、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
における炭素数1~30の炭化水素基は、前記Rと同様のものを挙げることができる。
炭素数1~30のスルホキシド基の具体例としては、例えば、-SOCH、-SOPh等を好適に挙げることができる。
【0057】
前記炭素数1~30のスルホン酸エステル基は、-OSOで示される1価の基であり、ここでRは炭素数1~30の炭化水素基を示す。当該スルホン酸エステル基の炭素数は、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
における炭素数1~30の炭化水素基は、前記Rと同様のものを挙げることができる。
炭素数1~30のスルホン酸エステル基の具体例としては、例えば、-SOCH、-SOPh等を好適に挙げることができる。
【0058】
前記炭素数1~30のホスファイト基は、-P(ORで示される1価の基であり、ここでRはそれぞれ独立に、炭素数1~30の炭化水素基を示す。当該ホスファイト基の炭素数は、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
における炭素数1~30の炭化水素基は、前記Rと同様のものを挙げることができる。
炭素数1~30のホスファイト基の具体例としては、例えば、-P(OPh)、-P(OCH等を好適に挙げることができる。
【0059】
前記炭素数1~30のホスフェート基は、-P(=O)(ORで示される1価の基であり、ここでRはそれぞれ独立に、炭素数1~30の炭化水素基を示す。当該ホスフェート基の炭素数は、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
における炭素数1~30の炭化水素基は、前記Rと同様のものを挙げることができる。
炭素数1~30のホスフェート基の具体例としては、例えば、-P(=O)(OPh)、-P(=O)(OCH等を好適に挙げることができる。
【0060】
前記炭素数1~30のリンイリド基は、-P=CRで示される1価の基であり、ここでR及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1~30の炭化水素基を示し、少なくとも1つは前記炭化水素基である。当該リンイリド基に置換される炭化水素基の炭素数は、P=Cの炭素数は含まれず、前記R又はRにおける炭素数をいい、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
における炭素数1~30の炭化水素基は、前記Rと同様のものを挙げることができる。
炭素数1~30のリンイリド基の具体例としては、例えば、-P=CHCH、-P=CHPh,-P=CHCHPh等を好適に挙げることができる。
【0061】
とRの少なくとも一つは、酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種を含む基である。前記酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種を含む基としては、例えば、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、シアノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミド基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いイミノ基、並びに、酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種を含む置換基で置換されている炭素数1~30の炭化水素基が挙げられる。当該炭素数1~30の炭化水素基の酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種を含む置換基としては、水酸基、エポキシ基、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、シアノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミド基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いイミノ基、炭素数1~30のチオエステル基、炭素数1~30のスルホニル基、炭素数1~30のスルホキシド基、炭素数1~30のスルホン酸エステル基、炭素数1~30のホスファイト基、及び炭素数1~30のホスフェート基等が挙げられる。
【0062】
前記一般式(1)で表される極性基含有オレフィンモノマー(b-1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルが好適に用いられる。
(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸-2-アミノエチル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸-2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、4-(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジル)アクリレート等が挙げられる。
また、前記一般式(1)で表される極性基含有オレフィンモノマー(b-1)としては、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ビニルアミド、酢酸ビニル、酢酸アリル、3-酢酸ブテニル、3-シアノプロペン、メチルビニルエーテル、3-クロロプロペン、N-プロピリデンエテンアミン、3-(メチルチオ)-1-プロペン、3-(メチルスルフィニル)-1-プロペン、3-(メチルスルホニル)-1-プロペン、2-プロペン-1-スルホン酸メチル、及び2-プロペニルホスホン酸ジメチル等が挙げられる。
【0063】
前記一般式(1)において、Rが水素原子である場合には、重合体の製造効率、重合体の分子量、並びに前記モノマー(A)及び前記モノマー(C)との共重合性の点から好ましい。
また、前記一般式(1)において、Rが水素原子で、Rが炭素数1~30のエステル基、シアノ基、シアノメチル基、シアノエチル基アシルオキシメチル基、又はアシルオキシエチル基であることが、重合体の製造効率、重合体の分子量、並びに前記モノマー(A)及び前記モノマー(C)との共重合性の点から好ましい。
【0064】
前記一般式(1)で表される極性基含有オレフィンモノマー(b-1)としては、中でも、ヘテロ原子の占める重量比率が高い点、後周期遷移金属触媒への副作用が小さい点、重合体の製造効率、重合体の分子量、並びに、前記モノマー(A)及び前記モノマー(C)との共重合性の点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、酢酸ビニル、酢酸アリル、3-酢酸ブテニル、アクリロニトリル、及び3-シアノプロペンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0065】
(2-2)極性基含有オレフィンモノマー(b-2)
一般式(2)中、R~R10におけるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
~R10における炭素数1~20の炭化水素基としては、一般式(1)における前記Rのうち、炭素数1~20の炭化水素基と同様のものを挙げることができる。中でも、メチル基、エチル基およびプロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基およびシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基およびプロペニル基等のアルケニル基などが挙げられる。
nは0又は正の整数を示すが、2以下であることが好ましく、1以下であることが好ましい。
【0066】
一般式(2)中、R11~R14における、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基、炭素数1~30のアルコキシ基、シアノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミド基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いイミノ基、又は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む官能基で置換されていても良い炭素数1~30の炭化水素基は、それぞれ、一般式(1)における、RとRにおいて説明したものと同様であってよい。
【0067】
一般式(2)中、R11~R14の少なくとも一つは、酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種を含む基であるが、当該酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種を含む基についても、一般式(1)における、RとRにおいて説明したものと同様であってよい。
【0068】
11及びR12、並びに、R13及びR14は、各々一体化して2価の有機基を形成してもよい。ここで有機基とは少なくとも炭素原子を含む基をいう。各々一体化して2価の有機基を形成している場合は、2価の炭化水素基であることが好ましく、当該炭化水素基には、-CO-、-O(CO)-、-COO-、-C(=O)OC(=O)-、-C(=O)NRC(=O)-、-SO2-、-O-等の連結基が含まれていても良い。なお、ここでのRは、前記と同様である。
【0069】
11又はR12と、R13又はR14とは、各々相互に結合して環を形成していてもよいが、炭素環または複素環を形成してもよく、該炭素環または複素環は単環でも多環であってもよい。例えば、R11又はR12と、R13又はR14とは、各々相互に結合して-CO-O-CO-基を形成していてもよい。
【0070】
前記一般式(2)において、nが0または1であり、R~R10が水素原子又はメチル基であることが、極性モノマー自体の合成の容易性の点から好ましい。
【0071】
前記一般式(2)で表される極性基含有オレフィンモノマー(b-2)としては、中でも、後周期遷移金属触媒への副作用が小さい点、重合体の製造効率、重合体の分子量、並びに、前記モノマー(A)及び前記モノマー(C)との共重合性の点から、5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチル、5-ノルボルネン-2-カルボン酸エチル、5-ノルボルネン-2-カルボン酸プロピル、5-ノルボルネン-2-カルボン酸ブチル、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸ジメチル、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、2-ヒドロキシ-5-ノルボルネン、5-ノルボルネン-2-メタノール、5-ノルボルネン-2-メチルアミン、2-アセトキシ-5-ノルボルネン、 2-シアノメチル-5-ノルボルネン、及び5-ノルボルネン-2-カルボニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、更に、5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチル、5-ノルボルネン-2-カルボン酸エチル、5-ノルボルネン-2-カルボン酸プロピル、5-ノルボルネン-2-カルボン酸ブチル、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、及び5-ノルボルネン-2-メタノール、からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0072】
(3)構造単位(C)
構造単位(C)は、下記一般式(3)で表される極性基含有カルベンモノマーから選ばれる1種以上のモノマー(C)に由来する構造単位である。
【0073】
【化7】
(一般式(3)中、XとYは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、炭素数1~30のアルキルチオ基、シアノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミド基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いイミノ基、又は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む官能基で置換されていても良い炭素数1~30の炭化水素基であり、XとYの少なくとも一つは酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種を含む基である。XとYは環を形成してよく、その場合に形成される環は5~7員環である。)
【0074】
一般式(3)において、ハロゲン原子、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、炭素数1~30のアルキルチオ基、シアノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミド基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いイミノ基、又は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む官能基で置換されていても良い炭素数1~30の炭化水素基は、それぞれ、一般式(1)における、RとRにおいて説明したものと同様であってよい。
【0075】
XとYは環を形成してよく、その場合に形成される環は5~7員環である。このような構造としては、例えば、以下の構造で示されるもの等を好適に挙げることができる。
【0076】
【化8】
【0077】
XとYにおける炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のアルキルチオ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミド基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いイミノ基、又は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む官能基で置換されていても良い炭素数1~30の炭化水素基における炭素数は、重合体の製造効率および後続の化学変換がより容易であることから、中でも、1~10であることが好ましく、更に1~6であることが好ましい。
【0078】
前記一般式(3)で表される極性基含有カルベンモノマーとしては、下記一般式(100)~(103)で表されるモノマーから選択される少なくとも1種に由来するカルベンモノマーであることが、入手の容易性および取扱いの容易性の点から好ましく、中でも下記一般式(100)で表される化合物から選択される少なくとも1種に由来するカルベンモノマーであることが好ましい。
【0079】
【化9】
(一般式(100)~一般式(103)中、XおよびYは前記一般式(3)と同義であり、Lはハロゲン原子を示す。)
【0080】
Lにおけるハロゲン原子は、一般式(1)における、RとRにおいて説明したものと同様であってよい。
【0081】
前記一般式(100)~(103)においては、中でも、XとYが、それぞれ独立して、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミノ基、シアノ基、炭素数1~30のアルコキシ基、又は、炭素数6~30のアリールオキシ基であることが、ポリオレフィン末端に導入された場合に後続の化学変換がより容易である点、並びに、重合体の製造効率および連鎖移動効率の点から好ましい。
XとYの組み合わせとしては、いずれも炭素数1~30のエステル基、シアノ基と炭素数1~30のエステル基、いずれもシアノ基、炭素数1~30のエステル基と炭素数1~30の炭化水素基で置換されていても良いアミノ基、炭素数1~30のエステル基と炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のエステル基と炭素数6~30のアリールオキシ基、シアノ基と炭素数1~30のアルコキシ基、シアノ基と炭素数6~30のアリールオキシ基、いずれも炭素数1~30のアルコキシ基、いずれも炭素数6~30のアリールオキシ基等である場合が挙げられ、中でも、いずれも炭素数1~30のエステル基、シアノ基と炭素数1~30のエステル基、いずれもシアノ基である場合が、ポリオレフィン末端に導入された場合に後続の化学変換の効率の点から好ましい。
【0082】
前記一般式(3)で表される極性基含有カルベンモノマーとしては、具体的には、2-ジアマロン酸ジメチル、2-ジアマロン酸ジエチル、2-ジアマロン酸ジプロピル、2-ジアマロン酸ジブチル、2-ジアシアノ酢酸メチル、2-ジアシアノ酢酸エチル、2-ジアシアノ酢酸プロピル、2-ジアシアノ酢酸ブチル、2-ジアマロノニトリル、2-ジアプロピオン酸メチル、2-ジアプロピオン酸エチル、2-ジアプロピオン酸ブチル、2-ジアブタン酸メチル、2-ジアブタン酸エチル、2-ジアブタン酸ブチル、2,2-ジフルオロマロン酸ジメチル、2,2-ジフルオロマロン酸ジエチル、2,2-ジフルオロマロン酸ジブチル、2,2-ジフルオロシアノ酢酸メチル、2,2-ジフルオロシアノ酢酸エチル、2,2-ジフルオロシアノ酢酸ブチル、2,2-ジフルオロマロノニトリル、2,2-ジフルオロプロピオン酸メチル、2,2-ジフルオロプロピオン酸エチル、2,2-ジフルオロプロピオン酸ブチル、2,2-ジフルオロブタン酸メチル、2,2-ジフルオロブタン酸エチル、2,2-ジフルオロブタン酸ブチル、テトラ(メトキシカルボニル)エチレン、テトラ(エトキシカルボニル)エチレン、テトラシアノエチレン、ジシアノジ(メトキシカルボニル)エチレン、ジシアノジ(エトキシカルボニル)エチレン等に由来するカルベンモノマーが挙げられる。
【0083】
記一般式(3)で表される極性基含有カルベンモノマーとしては、中でも、2-ジアマロン酸ジメチル、2-ジアマロン酸ジエチル、2-ジアマロン酸ジプロピル、2-ジアマロン酸ジブチル、2-ジアシアノ酢酸メチル、2-ジアシアノ酢酸エチル、2-ジアシアノ酢酸プロピル、2-ジアシアノ酢酸ブチル、及び2-ジアマロノニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種に由来するカルベンモノマーであることが、入手の容易性および取扱いの容易性の点から好ましい。
【0084】
(4)極性基含有オレフィン共重合体
本開示の極性基含有オレフィン共重合体は、エチレン及び炭素数3~20のオレフィンから選ばれる1種以上のモノマー(A)に由来する構造単位(A)と、前記特定の極性基含有オレフィンモノマーから選ばれる1種以上のモノマー(B)に由来する構造単位(B)と、前記一般式(3)で表される極性基含有カルベンモノマーから選ばれる1種以上のモノマー(C)に由来する構造単位(C)とを含むものである。
モノマー(A)、モノマー(B)、及びモノマー(C)はそれぞれ、単独で用いられていても良いし、2種以上混合して用いられていても良い。
すなわち、本開示の極性基含有オレフィン共重合体は、構造単位(A)、構造単位(B)、構造単位(C)をそれぞれ1種以上含有し、合計3種以上のモノマー単位を含むことが必要である。
【0085】
本開示において、極性基含有オレフィン共重合体中の構造単位(A)は、所望の物性に応じて適宜選択されれば良いが、構造単位全体100mol%に対して、通常下限値が60mol%以上であり、好ましくは65.5mol%以上、より好ましくは76mol%以上、更に好ましくは87mol%以上であることが挙げられる。一方、通常上限値は99.989mol%以下、好ましくは99.945mol%以下、より好ましくは99.89mol%以下、さらに好ましくは99.45mol%以下である。
極性基含有オレフィン共重合体中の構造単位(B)は、所望の物性に応じて適宜選択されれば良いが、構造単位全体100mol%に対して、通常下限値が0.01mol%以上であり、好ましくは0.05mol%以上、より好ましくは0.1mol%以上、更に好ましくは0.5mol%以上であることが挙げられる。一方、通常上限値は35mol%以下、好ましくは30mol%以下、より好ましくは20mol%以下、さらに好ましくは10mol%以下である。
極性基含有オレフィン共重合体中の構造単位(C)は、平均分子量や所望の物性に応じて適宜選択されれば良いが、構造単位全体100mol%に対して、通常下限値が0.001mol%以上であり、好ましくは0.005mol%以上、より好ましくは0.01mol%以上、更に好ましくは0.05mol%以上であることが挙げられる。一方、通常上限値は5mol%以下、好ましくは4.5mol%以下、より好ましくは4mol%以下、さらに好ましくは3mol%以下である。
【0086】
なお、前記モノマー(A)、前記モノマー(B)、および前記モノマー(C)それぞれ1分子に由来する構造を、極性基含有オレフィン共重合体中の1構造単位と定義する。
そして、極性基含有オレフィン共重合体中の構造単位全体を100mol%とした時に各構造単位の比率をmol%で表したものが構造単位量である。
【0087】
本開示の極性基含有オレフィン共重合体では、構造単位(A)、(B)、(C)のランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等が挙げられる。これらの中では、構造単位(B)を多く含むことが可能なランダム共重合体であってもよい。
【0088】
本開示の極性基含有オレフィン共重合体においては末端(両末端)の構造単位の合計100mol%に対して前記構造単位(C)の末端を20mol%以上含むことが好ましく、20mol%超過で含むことがより好ましく、更に25mol%以上、28mol%以上、30mol%以上含むことがより好ましい。
【0089】
また、本開示の製造方法で得られる極性基含有オレフィン共重合体においては、前記構造単位(C)の50mol%以上が、末端に位置することが好ましい。更に、前記構造単位(C)の65mol%以上、70mol%以上、80mol%以上、90mol%以上、95mol%以上、99mol%以上が、末端に位置することが好ましい。
【0090】
また、本開示の極性基含有オレフィン共重合体においては、前記構造単位(A)のmol分率[A]と前記構造単位(B)のmol分率[B]が、[A]≧{([A]+[B])×80%}を満たすことが、共重合体が例えば疎水性のようなオレフィンとしての特性も維持するためには好ましい。
【0091】
また、本開示の極性基含有オレフィン共重合体においては、前記構造単位(C)由来の末端及び前記構造単位(B)由来の末端の合計が、末端全体100mol%に対して、30mol%以上であることが好ましく、更に35mol%以上、より更に40mol%以上であることが好ましい。
【0092】
また、本開示の極性基含有オレフィン共重合体においては、不飽和末端の構造単位の合計100mol%に対して前記構造単位(C)の不飽和末端を50mol%以上含むことが好ましく、50mol%超過で含むことがより好ましく、更に55mol%以上、65mol%以上含むことがより好ましい。不飽和末端は、モノマー挿入後にβ-水素脱離が起こり、重合が停止することにより、形成される構造であり、重合停止末端に相当する。本開示では、構造単位(C)由来の不飽和末端が重合体全体の不飽和末端において、多く存在していることが好ましい。なお重合開始末端は、通常、飽和末端となる。
本開示の極性基含有オレフィン共重合体においては、重合停止末端(片末端)の構造単位の合計100mol%に対して、前記構造単位(C)の重合停止末端を50mol%以上含むことが好ましく、50mol%超過で含むことがより好ましく、更に55mol%以上、65mol%以上含むことがより好ましい。
【0093】
また、本開示の極性基含有オレフィン共重合体においては、構造単位(C)由来の不飽和末端及び前記構造単位(B)由来の不飽和末端の合計が、不飽和末端の構造単位の合計100mol%に対して、65mol%以上であることが好ましく、更に70mol%以上であることが好ましい。
【0094】
なお、構造単位量は、触媒の選択や、重合時に添加するモノマー(A)、モノマー(B)及びモノマー(C)の量、重合時の圧力や温度で制御することが可能である。共重合体中のモノマー(B)及びモノマー(C)に由来する構造単位量を増加させる具体的手段としては、重合時に添加するモノマー(B)及びモノマー(C)の量の増加、重合時のオレフィン圧力の低減、重合温度の増加が有効である。例えば、これらの因子を調節して、目的とするコポリマー領域に制御することが求められる。
【0095】
本開示における極性基含有オレフィン共重合体中の構造単位量はH-NMRスペクトル及び13C-NMRスペクトルを用いて求められる。NMRスペクトルは以下の方法によって測定する。
極性基含有オレフィン共重合体を1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2に加熱溶解して均一な溶液としてNMR測定する。H-NMRスペクトルは極性基含有オレフィン共重合体5質量%溶液とし、13C-NMRスペクトルは、極性基含有オレフィン共重合体15質量%溶液とする。
NMR測定は、例えばBRUKER(株)製Ascend500を用いて120℃で行う。
13C-NMRは緩和試薬としてクロム(III)アセチルアセトナートを用い、逆ゲート付きデカップリング法を用いて測定(9.0マイクロ秒の90°パルス、スペクトル幅:31kHz、緩和時間:10秒、取り込み時間:10秒、FIDの積算回数5,000~10,000回)し、定量分析を行う。
【0096】
本開示における極性基含有オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、通常1,000~2,000,000、好ましくは10,000~1,500,000、更に好ましくは20,000~1,000,000、好適なのは31,000~800,000、より好適なのは35,000~800,000の範囲である。Mwが1,000未満では機械的強度や耐衝撃性などの物性が充分ではない恐れがあり、Mwが2,000,000を超えると溶融粘度が非常に高くなり、成形加工が困難となる恐れがある。
【0097】
本開示における極性基含有オレフィン共重合体の数平均分子量(Mn)は、通常1,000~2,000,000、好ましくは5,000~1,500,000、更に好ましくは10,000~1,000,000、好適なのは10,000~800,000、より好適なのは20,000~600,000の範囲である。Mnが1,000未満では機械的強度や耐衝撃性などの物性が充分ではない恐れがあり、Mnが2,000,000を超えると溶融粘度が非常に高くなり、成形加工が困難となる恐れがある。
【0098】
本開示における極性基含有オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、通常1.5~4.0、好ましくは1.6~3.3、更に好ましくは1.7~3.0の範囲である。Mw/Mnが1.5未満では成形を始めとして各種加工性が充分でない恐れがあり、4.0を超えると機械物性が劣るものとなる恐れがある。
また、本開示においては(Mw/Mn)を分子量分布パラメーターと表現することがある。
【0099】
本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる。
本開示におけるGPCの測定方法の一例は以下の通りである。
数平均分子量及び重量平均分子量は、東ソー(株)製、TSKgel GMHHR-H(S)HTカラム(7.8mmI.D.×30cmを2本直列)を備えた東ソー(株)製高温GPC装置、HLC-8321GPC/HTを用い、ポリスチレンを分子量の標準物質とするサイズ排除クロマトグラフィー(溶媒:1,2-ジクロロベンゼン、温度:145度)により算出することができる。
【0100】
本開示における極性基含有オレフィン共重合体の、示差走査熱量測定(DSC)により観測される融点(Tm、℃)は、特に限定されない。融点は50℃超140℃以下であることが好ましく、60℃~138℃であることが更に好ましく、70℃~135℃がより更に好ましい。この範囲を満たすと耐熱性と耐衝撃性や接着性等が優れたものとなる。
融点は、例えば、セイコー電子工業株式会社製「EXSTAR6000」を使用し、40℃で1分等温、10℃/分で40℃から160℃までの昇温、160℃で10分等温、10℃/分で160℃から10℃まで降温、10℃で5分等温後、10℃/分で10℃から160℃までの昇温時の測定により求めることができる。
【0101】
(5)極性基含有オレフィン共重合体の製造方法
(5-1)触媒
本開示における極性基含有オレフィン共重合体は、その分子構造を直鎖状とする観点から、遷移金属を含む触媒の存在下で重合してもよい。
本開示に用いられる遷移金属を含む触媒としては、前記モノマー(A)と前記モノマー(B)とを、連鎖移動剤として前記モノマー(C)を用いて重合させることが可能なものであれば特に限定されないが、例えば、キレート性配位子を有する第5~11族の遷移金属化合物が挙げられる。
好ましい遷移金属の具体例として、バナジウム原子、ニオビウム原子、タンタル原子、クロム原子、モリブデン原子、タングステン原子、マンガン原子、鉄原子、白金原子、ルテニウム原子、コバルト原子、ロジウム原子、ニッケル原子、パラジウム原子、銅原子などが挙げられる。これらの中で好ましくは、第8~11族の遷移金属であり、さらに好ましくは第10族遷移金属であり、当該第10族遷移金属としては、ニッケル、パラジウム、又は白金が挙げられ、特に好ましくはニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)である。これらの金属は、単一であっても複数を併用してもよい。
キレート性配位子は、P、N、O、及びSからなる群より選択される少なくとも2個の原子を有しており、二座配位(bidentate)又は多座配位(multidentate)であるリガンドを含み、電子的に中性又は陰イオン性である。Brookhartらによる総説に、その構造が例示されている(Chem.Rev.,2000,100,1169)。
好ましくは、二座アニオン性P、O配位子として例えば、リンスルホン酸、リンカルボン酸、リンフェノール、リンエノラートが挙げられ、他に、二座アニオン性N、O配位子として例えば、サリチルアルドイミナ-トやピリジンカルボン酸が挙げられ、他に、ジイミン配位子、ジフェノキサイド配位子、ジアミド配位子が挙げられる。
【0102】
本開示の極性基含有オレフィン重合体の製造方法に用いられる遷移金属を含む触媒としては、重合体の製造効率、重合体の分子量、並びに前記モノマー(A)及び前記モノマー(C)との共重合性の点から、第8族~第10族遷移金属から選ばれる後周期遷移金属を含む触媒であることが好ましく、中でも、第10族遷移金属を含む触媒であることが好ましく、更に、第10族遷移金属を含む触媒であり、当該10族遷移金属への配位点として一つ以上のリン原子を含むキレート配位子を有することが好ましい。
【0103】
本開示の極性基含有オレフィン共重合体の製造方法に用いられる遷移金属を含む触媒としては、重合体の製造効率、重合体の分子量、並びに前記モノマー(A)及び前記モノマー(C)との共重合性の点から、中でも、第10族遷移金属を含む触媒であり、下記一般式(104)で表される化合物から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0104】
【化10】
(一般式(104)中、Mは第10族遷移金属を示し、QはA[-S(=O)-O-]M、A[-C(=O)-O-]M、A[-O-]M、又はA[-S-]Mの「[ ]」の中に示される2価の基を示す(ただし、両側のA、Mは基の結合方向を示すために記載している)。Aは、Qとリン原子を連結する炭素数1~30の2価の炭化水素基で官能基を有していてもよく、Lは金属から脱離可能な0価の配位子を示し、R15とR16とR17は官能基を有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基を示す。R15とLは環を形成してもよく、R16とR17は環を形成してもよく、R16又はR17はAと結合して環を形成してもよい。)
【0105】
一般式(104)中、Mは第10族遷移金属を示し、中でも、Ni、Pdであることが好ましい。
Qは、-S(=O)-O-、-C(=O)-O-、-P(=O)(-OH)-O-、または-S-で示される2価の基を表し、Mに1電子配位する部位である。前記各式の左側がQに結合し、右側がMに結合している。これらの中でも触媒活性の面から-S(=O)-O-が特に好ましい。
【0106】
Aは、Qとリン原子を連結する炭素数1~30の2価の炭化水素基であり、当該炭化水素基は、官能基を有していてもよい。
炭素原子数1~30の2価の炭化水素基としては、好ましくは、炭素原子数1~12の2価の炭化水素基であり、好ましくはアルキレン基、アリーレン基等が挙げられ、特にアリーレン基が好ましい。
【0107】
Aにおける炭化水素基の官能基としては、例えば、ハロゲン原子、-OR、-CO、-COM’、-CON(R、-COR、-SR、-SO、-SOR、-OSO、-PO(OR2-y(R、-CN、-NHR、-N(R、-Si(OR3-x(R、-OSi(OR3-x(R、-NO、-SOM’、-POM’、-P(O)(ORM’、またはエポキシ含有基等が挙げられる(ここで、Rは、水素原子または炭素数1~20の炭化水素基を表し、Rは、炭素数1~20の炭化水素基を表し、M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウム又はフォスフォニウムを表し、xは0~3の整数を表し、yは0~2の整数を表す)。
ここでの炭素数1~20の炭化水素基は、前記一般式(1)のRと同様のものを挙げることができる。
【0108】
Aにおける炭素原子数1~30の2価の炭化水素基としては、例えば、下記式(a-1)~(a-7)が挙げられる。下記式において、R104は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~30の炭化水素基、又は官能基である。R104における、炭素数1~30の炭化水素基は、前記一般式(1)のRと同様のものを挙げることができる。当該炭素数1~30の炭化水素基は、中でも1~20の炭化水素基が好ましく、1~10の炭化水素基が更に好ましい。
Aにおける炭素原子数1~30の2価の炭化水素基としては、中でも、Qにおける炭素原子数1~30の2価の炭化水素基としては、触媒活性の面から、下記式(a-7)であることが好ましい。
【0109】
【化11】
【0110】
Lは金属から脱離可能な0価の配位子を示す。
Lは、電子供与性基を有し、金属原子Mに配位して金属錯体を安定化させることのできる化合物であることが好ましい。Lは、配位結合可能な原子として、酸素、窒素、硫黄、リンを有する炭素数1~20の炭化水素化合物、或いは、遷移金属に配位可能な炭素-炭素不飽和結合を有する炭化水素化合物(ヘテロ原子を含有していてもよい)も使用することができる。好ましくは、Lの炭素数は1~16であり、更に好ましくは1~10である。
【0111】
好ましいLとしては、ピリジン類、ピペリジン類、アルキルエーテル類、アリールエーテル類、アルキルアリールエーテル類、環状エーテル類、アルキルニトリル誘導体、アリールニトリル誘導体、アルコール類、アミド類、脂肪族エステル類、芳香族エステル類、アミン類、ホスフィン類、ホスフィンオキシド類、亜ホスフィン酸エステル類、ホスフィン酸エステル類、亜ホスホン酸エステル類、ホスホン酸エステル類、亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、環状不飽和炭化水素類などを挙げることができる。
Lは、硫黄原子を有するものとしてジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられる。窒素原子を有するものとして、アルキル基の炭素原子数1~10のトリアルキルアミン、アルキル基の炭素原子数1~10のジアルキルアミン、ピリジン、2,6-ジメチルピリジン(別名:2,6-ルチジン)、アニリン、2,6-ジメチルアニリン、2,6-ジイソプロピルアニリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)、アセトニトリル、ベンゾニトリル、キノリン、2-メチルキノリンなどが挙げられる。酸素原子を有するものとして、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタンが挙げられる。リン原子を有するものとして、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィンオキシドが挙げられる。錯体の安定性及び触媒活性の観点から、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ピリジン、2,6-ジメチルピリジン(別名:2,6-ルチジン)、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)が好ましく、ジメチルスルホキシド(DMSO)、2,6-ジメチルピリジン(別名:2,6-ルチジン)がより好ましい。
なお、R15とLは環を形成してもよい。そのような例として、シクロオクタ-1-エニル基を挙げることができ、これも本開示における好ましい様態である。
【0112】
15とR16とR17は官能基を有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基を示す。
15とR16とR17における炭素数1~30の炭化水素基としては、前記一般式(1)のRと同様のものを挙げることができる。
15とR16とR17における官能基は、前記Qにおける官能基と同様であって良い。
【0113】
15としては、好ましくは炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のハロゲン置換炭化水素基、アルコキシ基又はアリールオキシ基で置換された炭素原子数1~20の炭化水素基であり、前記炭化水素基の炭素数はより好ましくは1~10である。R15としては、具体的には、より好ましくは、炭素数1~3のアルキル基、ベンジル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、1-(メトキシメチル)エチル基、1-(エトキシメチル)エチル基、1-(フェノキシメチル)エチル基、または1-(2,6-ジメチルフェノキシ基メチル)エチル基であり、より更に好ましくはメチル基又はベンジル基である。
一般式(104)中,R15はPに対して、シス又はトランスいずれの位置に存在してもよく、シスの位置であることが好ましい。
【0114】
16及びR17は、遷移金属Mの近傍にあって、立体的及び/又は電子的に遷移金属Mに相互作用を及ぼす。こうした効果を及ぼすためには、R16及びR17は嵩高い方が好ましい。R16及びR17の好ましい炭素数は3~30、より更に好ましくは6~20である。
【0115】
16及びR17はそれぞれ、官能基を有していても良い炭素原子数3~10のアルキル基、官能基を有していても良い炭素原子数6~20のシクロアルキル基、官能基を有していても良い炭素原子数6~20のアリール基であることが好ましい。
16及びR17における前記炭素原子数3~10のアルキル基としては、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基が好ましい。
【0116】
16及びR17における官能基を有していても良い炭素原子数6~20のシクロアルキル基としては、官能基を有していても良く、炭素原子数3~10の直鎖又は分岐アルキル基が置換されていても良いシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
また、例えば特開2018-141138号公報の段落0104~0113に記載されているシクロアルキル基(特開2018-141138号公報の段落0104~0113におけるXは、本開示の一般式(104)においてP(リン原子)の結合位置を示す)であってもよい。
16及びR17は、中でも、重合体分子量制御および極性モノマー共重合性制御の点から、炭素原子数3~10の直鎖又は分岐アルキル基が置換されていても良いシクロヘキシル基であることが好ましく、炭素原子数3~10の直鎖又は分岐アルキル基が置換されているシクロヘキシル基であることがより好ましい。中でも、2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキシル基(メンチル基)であることが好ましい。
【0117】
また、R16及びR17における官能基を有していても良い炭素原子数6~20のアリール基としては、官能基を有していても良く、炭素原子数3~10の直鎖又は分岐アルキル基が置換されていても良いフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。当該炭素原子数6~20のアリール基は酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種を含む基が置換されていることが好ましい。当該炭素原子数6~20のアリール基が酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種を含む基で置換されている場合、当該官能基は、リンに結合した炭素に対してオルト位に置換されていることが好ましい。このようにすることによって、R16及びR17中の酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種が遷移金属Mと相互作用を持つように空間的配置をとることができるからである。
【0118】
好ましいR16及びR17の具体例としては、2,6-ジメトキシフェニル基、2,4
,6-トリメトキシフェニル基、4-メチル-2,6-ジメトキシフェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジメトキシフェニル基、1,3-ジメトキシ-2-ナフチル基、2,6-ジエトキシフェニル基、2,4,6-トリエトキシフェニル基、4-メチル-2,6-ジエトキシフェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジエトキシフェニル基、1,3-ジエトキシ-2-ナフチル基、2,6-ジフェノキシフェニル基、2,4,6-トリフェノキシフェニル基、4-メチル-2,6-ジフェノキシフェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジフェノキシフェニル基、1,3-ジフェノキシ-2-ナフチル基、2,6-ジメトキシメチルフェニル基、2,4,6-トリメトキシメチルフェニル基、4-メチル-2,6-ジメトキシメチルフェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジメトキシメチルフェニル基、1,3-ジメトキシメチル-2-ナフチル基、2,6-ジフェノキシメチルフェニル基、2,4,6-トリフェノキシメチルフェニル基、4-メチル-2,6-ジフェノキシメチルフェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジフェノキシメチルフェニル基、1,3-ジフェノキシメチル-2-ナフチル基、2,6-ジ(2-メトキシエチル)フェニル基、2,4,6-トリ(2-メトキシエチル)フェニル基、4-メチル-2,6-ジ(2-メトキシエチル)フェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジ(2-メトキシエチル)フェニル基、1,3-ジ(2-メトキシエチル)-2-ナフチル基、2,6-ジ(2-フェノキシエチル)フェニル基、2,4,6-トリ(2-フェノキシエチル)フェニル基、4-メチル-2,6-ジ(2-フェノキシエチル)フェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジ(2-フェノキシエチル)フェニル基、1,3-ジ(2-フェノキシエチル)-2-ナフチル基などを挙げることができる。
【0119】
16またはR17は、Aと結合して環構造を形成してもよい。具体的には例えば特開2018-141138号公報の段落0120~0121に記載されている構造(なお、ここでの例は、置換基R16とAが結合して環構造を形成している場合を示しており、PとQは本開示の一般式(104)と同義である。)が挙げられる。
【0120】
本開示の一般式(104)で表される化合物の中でも、下記一般式(105)で表される化合物であることが、重合体の製造効率の点から好ましい。
【0121】
【化12】
(一般式(105)中、M、L、R15、R16及びR17は、それぞれ前記一般式(104)と同義であり、R111、R112、R113及びR114はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~30の炭化水素基、又は官能基である。)
【0122】
一般式(105)中、R111、R112、R113及びR114における炭素数1~30の炭化水素基及び官能基は、前記Aに説明したものと同様のものであって良い。
中でも、R111は、嵩高い方が、高分子量の重合体を与える傾向にあり、t-ブチル基、トリメチルシリル基、フェニル基、9-アントラセニル基、4-t-ブチルフェニル基、2,4-ジ-t-ブチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基等の官能基を適宜選択されてもよい。
【0123】
本開示に用いられる遷移金属錯体は、従来公知の方法で調製することができる。
また、本開示に用いられる遷移金属を含む触媒は、前記の遷移金属錯体を主要な触媒成分とするものであり、必要により、活性化剤、担体などを併用することができる。上記活性化剤としては、メタロセン触媒で使用される助触媒であるアルキルアルモキサンやホウ素含有化合物が例示される。
【0124】
また、担体としては、本発明の主旨をそこなわない限りにおいて、任意の担体を用いることができる。一般に、無機酸化物やポリマー担体が好適に使用できる。
具体的には、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThOなど又はこれらの混合物が挙げられ、SiO-Al、SiO-V、SiO-TiO、SiO-MgO、SiO-Crなどの混合酸化物も使用することができ、無機ケイ酸塩、ポリエチレン担体、ポリプロピレン担体、ポリスチレン担体、ポリアクリル酸担体、ポリメタクリル酸担体、ポリアクリル酸エステル担体、ポリエステル担体、ポリアミド担体、ポリイミド担体などが使用可能である。これらの担体については、粒径、粒径分布、細孔容積、比表面積などに特に制限はなく、任意のものが使用可能である。
【0125】
(5-2)極性基含有オレフィン共重合体の製造方法に使用される重合方法:
本開示における極性基含有オレフィン共重合体の重合方法は限定されない。
媒体中に全ての生成重合体が溶解する溶液重合、媒体中で少なくとも一部の生成重合体がスラリーとなるスラリー重合、液化したモノマー自身を媒体とするバルク重合、又は、高温高圧で液化したモノマーに生成重合体の少なくとも一部が溶解する高圧イオン重合などが用いられる。
重合形式としては、バッチ重合、セミバッチ重合、連続重合のいずれの形式でもよい。
具体的な製造プロセス及び条件については、例えば、特開2010-260913号公報、特開2010-202647号公報に開示されている。
【0126】
未反応モノマーや媒体は、生成重合体から分離し、リサイクルして使用してもよい。リサイクルの際、これらのモノマーや媒体は、精製して再使用してもよいし、精製せずに再使用してもよい。生成重合体と未反応モノマー及び媒体との分離には、従来の公知の方法が使用できる。例えば、濾過、遠心分離、溶媒抽出、貧溶媒を使用した再沈などの方法が使用できる。
【0127】
共重合温度、共重合圧力及び共重合時間に特に制限はないが、通常は、以下の範囲から生産性やプロセスの能力を考慮して、最適な設定を行うことができる。
即ち、共重合温度は、通常-20℃から290℃、好ましくは0℃から250℃、より好ましくは0℃~200℃、さらに好ましくは10℃~150℃、特に好ましくは20℃~100℃である。共重合圧力は、0.1MPaから100MPa、好ましくは、0.3MPaから90MPa、より好ましくは0.5MPa~80MPa、さらに好ましくは1.0MPa~70MPa、特に好ましくは1.3MPa~60MPaである。共重合時間は、0.1分から50時間、好ましくは、0.5分から40時間、更に好ましくは1分から30時間の範囲から選ぶことができる。
本発明において、重合は、一般に不活性ガス雰囲気下で行われる。例えば、窒素、アルゴン雰囲気が使用でき、窒素雰囲気が好ましく使用される。
【0128】
重合反応器への触媒とモノマーの供給に関しても特に制限はなく、目的に応じて様々な供給法をとることができる。例えばバッチ重合の場合、予め所定量のモノマーを共重合反応器に供給しておき、そこに触媒を供給する手法をとることが可能である。この場合、追加のモノマーや追加の触媒を共重合反応器に供給してもよい。また、連続重合の場合、所定量のモノマーと触媒を共重合反応器に連続的に、又は間歇的に供給し、共重合反応を連続的に行う手法をとることができる。
【0129】
共重合体の組成の制御に関しては、モノマーの供給比率を変えることによって制御する方法を一般に用いることができる。その他、触媒の構造の違いによるモノマー反応性比の違いを利用して共重合組成を制御する方法や、モノマー反応性比の重合温度依存性を利用して共重合組成を制御する方法が挙げられる。
共重合体の分子量制御には、従来公知の方法を使用することができる。即ち、重合温度を制御して分子量を制御する方法、モノマー濃度を制御して分子量を制御する方法、遷移金属錯体中の配位子構造の制御により分子量を制御するなどが挙げられる。
本開示においては、特にモノマー(C)を連鎖移動剤として用いるので、モノマー(C)の含有量使用量を制御する方法、遷移金属錯体中の配位子構造の制御により分子量を制御する方法、重合温度を制御して分子量を制御する方法、およびそれらの方法の組み合わせにより、特定の官能基の末端修飾化の含有割合を適宜調整すると共に、分子量を制御することができる。
【0130】
2.極性基含有オレフィン共重合体組成物
本開示の極性基含有オレフィン共重合体組成物は、ニッケル、パラジウム、及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の遷移金属と、前記本開示の極性基含有オレフィン共重合体とを含有する。
前記本開示の極性基含有オレフィン共重合体は、遷移金属触媒を用いて製造されたものであることが好ましく、精製条件によっては残留触媒を含有している場合があり、遷移金属を含有する場合がある。
前記本開示の極性基含有オレフィン共重合体は、ニッケル、パラジウム、及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の遷移金属を含む遷移金属触媒を用いて製造されたものであることが好ましいため、本開示の極性基含有オレフィン共重合体組成物は、ニッケル、パラジウム、及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の遷移金属と、前記本開示の極性基含有オレフィン共重合体とを含有する。
【0131】
本開示の極性基含有オレフィン共重合体組成物において、残留触媒由来のニッケル、パラジウム、及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の遷移金属は、極性基含有オレフィン共重合体100質量%に対して、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。本開示の極性基含有オレフィン共重合体組成物における前記遷移金属含有量の下限値は、当該遷移金属の測定方法の検出限界値であって良い。
本開示の極性基含有オレフィン共重合体組成物における前記遷移金属の測定方法としては、エネルギー分散型蛍光エックス線分析(EDX)、波長分散型蛍光エックス線分析(WDX)、誘導結合プラズマ発光分析(ICP-AES)、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)、原子吸光分析、等の公知の方法が挙げられる。これらのうち、精度の面から誘導結合プラズマ発光分析(ICP-AES)、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)、を用いることがより好ましい。また、いずれの場合でも重合体を灰化や抽出などの前処理法で処理することで有機物を除去することが望ましい。
また、本開示の極性基含有オレフィン共重合体組成物における前記遷移金属含有量は、重合活性と仕込みの触媒量から、以下のように概算することもできる。例えば、「重合に使用した触媒のモル数(mol)×触媒の遷移金属の原子量(g/mol)÷重合から得られたポリマーの収量(g)=ポリマーに含まれる金属含量(質量%)」というように、質量保存則を根拠とした理論値を得ることができる。
遷移金属の含有量の下限値としては、分析装置の測定下限に依るが、極性基含有オレフィン共重合体100質量%に対して、0.00005質量%や、0.0001質量%、0.001質量%などが挙げられる。
【実施例
【0132】
次に本開示を実施例によって具体的に説明するが、本開示はその要旨を逸脱しない限りこれらの実施例によって制約を受けるものではない。なお、極性基含有オレフィン共重合体等の物性等は、以下の方法で測定した。
【0133】
[極性基含有オレフィン共重合体中の構造単位量]
極性基含有オレフィン共重合体の構造は、BRUKER(株)製Ascend500を用いたH-NMR及び13C-NMR解析により決定した。
NMR測定は、溶媒として1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2を用い、H-NMR測定の重合体濃度は5質量%、13C-NMRの重合体濃度は15質量%として、120度で行った。
13C-NMRの一部は緩和試薬としてクロム(III)アセチルアセトナートを用い、逆ゲート付きデカップリング法を用いて測定(9.0マイクロ秒の90°パルス、スペクトル幅:31kHz、緩和時間:10秒、取り込み時間:10秒、FIDの積算回数5,000~10,000回)し、定量分析を行った。
【0134】
[数平均分子量及び重量平均分子量]
東ソー(株)製、TSKgel GMHHR-H(S)HTカラム(7.8mmI.D.×30cmを2本直列)を備えた東ソー(株)製高温GPC装置、HLC-8321GPC/HTを用い、ポリスチレンを分子量の標準物質とするサイズ排除クロマトグラフィー(溶媒:1,2-ジクロロベンゼン、温度:145度)により算出した。
[ポリマー中の金属含量の分析]
本願のポリマー中の金属含量は、「重合に使用した触媒のmol数×触媒の遷移金属の原子量(g/mol)÷重合から得られたポリマーの収量(g)×100=ポリマーに含まれる金属含量(質量%)」の計算値から求めた。
【0135】
[遷移金属錯体の合成]
(合成例1)
下記化学式(A)において、Rがいずれも2-メトキシフェニルで、Lutが2,6-ジメチルピリジンで示される遷移金属錯体(I)は、特開2007-046032号公報に記載の通りに合成した。
【0136】
【化13】
【0137】
(合成例2)
前記化学式(A)において、Rがいずれもシクロヘキシルで、Lutが2,6-ジメチルピリジンで示される遷移金属錯体(II)は、特開2011-068881号公報に記載の通りに合成した。
【0138】
(合成例3)
前記化学式(A)において、Rがいずれもメンチル(2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキシル)で、Lutが2,6-ジメチルピリジンで示される遷移金属錯体(III)は、特開2017-031300号公報に記載の通りに合成した。
【0139】
(実施例1)
50mLオートクレーブに、窒素雰囲気中で、触媒としての遷移金属錯体(I)(6.5mg、0.010mmol)、溶媒としてのトルエン(8mL)、連鎖移動剤(モノマー(C))としてのジメチル-2-ジアマロネート(316.2mg、2.0mmol)、極性基含有モノマーとしての酢酸アリル(モノマー(B))(2mL)を順次加えた。当該オートクレーブをエチレン(モノマー(A))(3.0MPa)で加圧しつつ、反応温度80℃で12時間撹拌した。当該オートクレーブを室温に戻し、メタノール(20mL)を加えた。析出した固体を、濾過により回収し、メタノールで洗浄し、減圧乾燥した。得られた極性基含有オレフィン共重合体1は165mgであった。極性基含有オレフィン共重合体100質量%に対して、Pdが0.65質量%含まれていた。
当該極性基含有オレフィン共重合体1の各種分析結果を表1および2に示した。
【0140】
(実施例2)
モノマー(B)をアクリル酸メチル(2.0mL)とした以外は全て実施例1と同様に実施した。得られた極性基含有オレフィン共重合体2は610mgであった。極性基含有オレフィン共重合体100質量%に対して、Pdが0.18質量%含まれていた。
当該極性基含有オレフィン共重合体2の各種分析結果を表1および2に示した。
【0141】
(実施例3)
触媒を遷移金属錯体(II)(5.8mg,0.010mmol)、モノマー(B)をアクリル酸メチル(2.0mL)とした以外は全て実施例1と同様に実施した。得られた極性基含有オレフィン共重合体3は1188mgであった。極性基含有オレフィン共重合体100質量%に対して、Pdが0.096質量%含まれていた。
当該極性基含有オレフィン共重合体3の各種分析結果を表1および2に示した。
【0142】
(実施例4)
触媒を遷移金属錯体(II)(5.8mg,0.010mmol)とした以外は全て実施例1と同様に実施した。得られた極性基含有オレフィン共重合体4は274mgであった。極性基含有オレフィン共重合体100質量%に対して、Pdが0.39質量%含まれていた。
当該極性基含有オレフィン共重合体4の各種分析結果を表1および2に示した。
【0143】
(実施例5)
触媒を遷移金属錯体(III)(6.9mg,0.010mmol)とした以外は全て実施例1と同様に実施した。得られた極性基含有オレフィン共重合体5は78mgであった。
当該極性基含有オレフィン共重合体5の各種分析結果を表1および2に示した。極性基含有オレフィン共重合体100質量%に対して、Pdが1.40質量%含まれていた。
図1は、実施例5の極性基含有オレフィン共重合体5のH-NMR測定結果を示す。
【0144】
(実施例6)
触媒を遷移金属錯体(III)(6.9mg,0.010mmol)、溶媒をトルエン(5mL)、モノマー(C)をジメチル-2-ジアマロネート(158.1mg、1.0mmol)、モノマー(B)を酢酸アリル(5.0mL)とした以外は全て実施例1と同様に実施した。得られた極性基含有オレフィン共重合体6は56mgであった。極性基含有オレフィン共重合体100質量%に対して、Pdが1.90質量%含まれていた。
当該極性基含有オレフィン共重合体6の各種分析結果を表1および2に示した。
【0145】
(実施例7)
触媒を遷移金属錯体(III)(6.9mg,0.010mmol)、モノマー(C)をジメチル-2-ジアマロネート(158.1mg、1.0mmol)、反応温度を50℃とした以外は全て実施例1と同様に実施した。得られた極性基含有オレフィン共重合体7は230mgであった。極性基含有オレフィン共重合体100質量%に対して、Pdが0.47質量%含まれていた。
当該極性基含有オレフィン共重合体7の各種分析結果を表1および2に示した。
【0146】
(実施例8)
触媒を遷移金属錯体(III)(6.9mg,0.010mmol)、モノマー(C)をジメチル-2-ジアマロネート(158.1mg、1.0mmol)、モノマー(B)を塩化アリル(2.0mL)、反応温度を50℃とした以外は全て実施例1と同様に実施した。得られた極性基含有オレフィン共重合体8は103mgであった。極性基含有オレフィン共重合体100質量%に対して、Pdが1.00質量%含まれていた。
当該極性基含有オレフィン共重合体8の各種分析結果を表1および2に示した。
【0147】
(実施例9)
触媒を遷移金属錯体(III)(6.9mg,0.010mmol)、モノマー(C)をジメチル-2-ジアマロネート(158.1mg、1.0mmol)、モノマー(B)を塩化アリル(2.0mL)とした以外は全て実施例1と同様に実施した。得られた極性基含有オレフィン共重合体9は84mgであった。極性基含有オレフィン共重合体100質量%に対して、Pdが1.30質量%含まれていた。
当該極性基含有オレフィン共重合体9の各種分析結果を表1および2に示した。
【0148】
(実施例10)
触媒を遷移金属錯体(III)(6.9mg,0.010mmol)、モノマー(C)をジメチル-2-ジアマロネート(158.1mg、1.0mmol)、モノマー(B)をアクリル酸メチル(2.0mL)とした以外は全て実施例1と同様に実施した。得られた極性基含有オレフィン共重合体10は449mgであった。極性基含有オレフィン共重合体100質量%に対して、Pdが0.24質量%含まれていた。
当該極性基含有オレフィン共重合体10の各種分析結果を表1および2に示した。
【0149】
(実施例11)
触媒を遷移金属錯体(III)(6.9mg,0.010mmol)、溶媒をトルエン(5.0mL)、モノマー(C)をジメチル-2-ジアマロネート(158.1mg、1.0mmol)、モノマー(B)をアクリル酸メチル(5.0mL)とした以外は全て実施例1と同様に実施した。得られた極性基含有オレフィン共重合体11は450mgであった。極性基含有オレフィン共重合体100質量%に対して、Pdが0.24質量%含まれていた。
当該極性基含有オレフィン共重合体11の各種分析結果を表1および2に示した。
【0150】
(実施例12)
触媒を遷移金属錯体(III)(6.9mg,0.010mmol)、溶媒をトルエン(5.0mL)、モノマー(C)をジメチル-2-ジアマロネート(158.1mg、1.0mmol)、モノマー(B)を酢酸3-ブテニル(5.0mL)とした以外は全て実施例1と同様に実施した。得られた極性基含有オレフィン共重合体12は203mgであった。極性基含有オレフィン共重合体100質量%に対して、Pdが0.53質量%含まれていた。
当該極性基含有オレフィン共重合体12の各種分析結果を表1および2に示した。
【0151】
(比較例1)
触媒を遷移金属錯体(II)(5.0mg、0.010mmol)、溶媒をトルエン(12.0mL)、モノマー(C)を用いず、モノマー(B)を酢酸アリル(3.0mL)とした以外は、全て実施例1と同様に実施した。得られた極性基含有オレフィン共重合体C1は1740mgであった。極性基含有オレフィン共重合体100質量%に対して、Pdが0.061質量%含まれていた。
当該極性基含有オレフィン共重合体C1の各種分析結果を表1および2に示した。
【0152】
【表1】
表1において、AAcは酢酸アリル、MAはアクリル酸メチル、ACは塩化アリル、3BAは酢酸3-ブテニルである。
【0153】
【表2】
各表において,「<1」は「0」,「>99」は「100」として各数値の計算に用いた。また、数値は四捨五入を行い、「構造単位(C)由来の末端/末端」+「構造単位(B)由来の末端/末端」+「構造単位(A)由来の末端/末端」=末端(100mol%)とした。
【0154】
なお、表1および2において、
「構造単位(C)/全構造単位」とは、重合体の構造単位全体(構造単位(A)+構造単位(B)+構造単位(C))を100mol%とした場合の構造単位(C)の含有割合を意味する。
「構造単位(B)/全構造単位」とは、重合体の構造単位全体を100mol%とした場合の構造単位(B)の含有割合を意味する。
「構造単位(C)飽和末端/全構造単位(C)」とは、重合体中に含まれる構造単位(C)の合計を100mol%とした場合の、構造単位(C)由来の飽和末端の含有割合を意味する。
「構造単位(C)不飽和末端/全構造単位(C)」とは、重合体中に含まれる構造単位(C)の合計を100mol%とした場合の、構造単位(C)由来の不飽和末端の含有割合を意味する。
「構造単位(C)飽和末端/重合体の全飽和末端」とは、重合体に含まれる飽和末端の構造単位の合計を100mol%とした場合の、重合体末端に位置する構造単位(C)由来の飽和末端の含有割合を意味する。
「構造単位(B)飽和末端/重合体の全飽和末端」とは、重合体に含まれる飽和末端の構造単位の合計を100mol%とした場合の、重合体末端に位置する構造単位(B)由来の飽和末端の含有割合を意味する。
「構造単位(A)飽和末端/重合体の全飽和末端」とは、重合体に含まれる飽和末端の構造単位の合計を100mol%とした場合の、重合体末端に位置する構造単位(A)由来の飽和末端の含有割合を意味する。
「構造単位(C)不飽和末端/全不飽和末端」とは、重合体に含まれる不飽和末端の構造単位の合計を100mol%とした場合の、重合体末端に位置する構造単位(C)由来の不飽和末端の含有割合を意味する。
「構造単位(B)不飽和末端/全不飽和末端」とは、重合体に含まれる不飽和末端の構造単位の合計を100mol%とした場合の、重合体末端に位置する構造単位(B)由来の不飽和末端の含有割合を意味する。
「構造単位(A)不飽和末端/全不飽和末端」とは、重合体に含まれる不飽和末端の構造単位の合計を100mol%とした場合の、重合体末端に位置する構造単位(A)由来の不飽和末端の含有割合を意味する。
「構造単位(C)由来の末端/末端」とは、オレフィン共重合体に含まれる末端の構造単位の合計を100mol%とした場合の、重合体の末端に位置する構造単位(C)由来の末端の含有割合を意味する。((飽和末端含有割合+不飽和末端含有割合)/2で算出される。)
「構造単位(B)由来の末端/末端」とは、オレフィン共重合体に含まれる末端の構造単位の合計を100mol%とした場合の、重合体の末端に位置する構造単位(B)由来の末端の含有割合を意味する。
「構造単位(A)由来の末端/末端」とは、オレフィン共重合体に含まれる末端の構造単位の合計を100mol%とした場合の、重合体の末端に位置する構造単位(A)由来の末端の含有割合を意味する。
【0155】
本開示によれば、通常のオレフィン重合を行い、その成長末端を所望の極性基を有する連鎖移動剤である二置換カルベンと反応させることで、末端に特定の極性基が選択的に、高い割合で導入されている新規な極性基含有オレフィン重合体を提供可能なことが示された。
本開示によれば、重合停止末端の半分を超える量で所望の極性基を有する極性基含有オレフィン共重合体を得ることができ、更には、重合停止末端の99mol%に所望の極性基を有する極性基含有オレフィン共重合体を得ることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本開示の特定の極性基が末端に選択的に導入されている新規な極性基含有オレフィン重合体は、ポリオレフィンの特性を改良するのに有効であり、ポリオレフィンコンパウンドの製造範囲およびまたは製造経路を拡張したり、ジブロックポリマーの原料となるなど、多方面への応用が期待される。
図1