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特許7382812ポンプ設備の制御盤監視システム、制御盤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】ポンプ設備の制御盤監視システム、制御盤
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/00 20220101AFI20231110BHJP
   G01J 5/10 20060101ALI20231110BHJP
   G01J 5/48 20220101ALI20231110BHJP
   E03F 5/22 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
G01J5/00 101Z
G01J5/10 C
G01J5/48 A
E03F5/22
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019220843
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2021089245
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】佐野 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】小林 精司
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-315930(JP,A)
【文献】特開2012-014682(JP,A)
【文献】特表2005-526235(JP,A)
【文献】実開昭57-168277(JP,U)
【文献】特開2019-050703(JP,A)
【文献】特開2012-257343(JP,A)
【文献】特開昭62-081927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 5/00 - G01J 5/90
G01N 25/00 - G01N 25/72
G01R 31/00 - G01R 31/01
H01H 45/00 - H01H 45/14
H01H 50/00 - H01H 50/92
H02B 3/00
E03F 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ設備と、
前記ポンプ設備を制御する制御盤と、
前記制御盤を監視する監視装置と、を備え、
前記制御盤は、複数の継電器を備えており、
前記監視装置は、
前記継電器の温度を計測するための非接触式温度計測装置と、
前記非接触式温度計測装置を移動させ、当該非接触式温度計測装置を前記複数の継電器の一つずつと対向させる移動装置と、
前記非接触式温度計測装置の移動及び計測を、前記ポンプ設備の運転シーケンスに基づく前記複数の継電器の励磁または消磁の動作タイミングに連動させる、運転時監視モードを有する動作司令部と、を備え、
前記複数の継電器の少なくとも一部は、前記ポンプ設備の運動シーケンスに基づく励磁順に並んでおり、
前記動作司令部は、前記運転時監視モードにおいて、前記励磁順に、前記非接触式温度計測装置を移動させる、ことを特徴とするポンプ設備の制御盤監視システム。
【請求項2】
前記動作司令部は、前記運転時監視モードにおいて、計測対象の前記継電器が励磁する前に、予め、当該継電器と対向する位置に前記非接触式温度計測装置を移動させる、ことを特徴とする請求項1に記載のポンプ設備の制御盤監視システム。
【請求項3】
前記動作司令部は、前記非接触式温度計測装置を移動させ、常時励磁している前記継電器の温度を巡回して計測する常時監視モードを有する、ことを特徴とする請求項1または2に記載のポンプ設備の制御盤監視システム。
【請求項4】
前記複数の継電器は、複数の列を成しており、
前記複数の列ごとに、前記非接触式温度計測装置及び前記移動装置が設けられている、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のポンプ設備の制御盤監視システム。
【請求項5】
前記非接触式温度計測装置及び前記移動装置は、前記複数の継電器を収容する前記制御盤の筐体の開閉扉の内側に設けられている、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のポンプ設備の制御盤監視システム。
【請求項6】
前記非接触式温度計測装置は、赤外線カメラであって、
前記複数の継電器の少なくとも一部は、前記赤外線カメラに対する焦点距離を揃えるスペーサを備えている、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のポンプ設備の制御盤監視システム。
【請求項7】
前記複数の継電器のそれぞれの間に、遮熱板が設けられている、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のポンプ設備の制御盤監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ設備の制御盤監視システム、制御盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポンプ設備として、例えば、大雨等に湛水防除の目的で稼働するポンプ機場が知られている。このようなポンプ機場では、洪水時において確実な稼働が必要であり、設備全体の健全性を確認することが必要不可欠である。特に、ポンプ機場の制御盤は、設備全体の制御(コントロール)を担う重要な盤であり、制御の中核を担う継電器が異常を起こした場合、設備全体の機能停止につながるリスクがある。このため、従来から制御盤の定期的な点検が行われているが、制御盤の扉を開いて複数の継電器を点検する作業は、非常に手間と時間がかかり、大きな負担になっていた。
【0003】
下記特許文献1には、点検作業者の負荷を軽減して、点検作業の効率化を図った電力機器の温度監視装置が開示されている。温度監視装置は、監視対象を撮影する可視画像撮像装置と、監視対象の温度を計測する赤外線受光装置と、撮影時に監視対象領域を照明するランプと、を備えている。温度監視装置は、配電盤のケースの扉に着脱可能に取り付けられており、監視対象の温度が所定の閾値を越えたときに警報を発し、LANあるいはピアツーピアで通信をして、扉を開けずに点検作業者が携帯する携帯端末装置に計測結果を送信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3210706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記温度監視装置は、配電盤のケースの扉に取り付けられ、定位置から、ある程度の広い範囲で監視対象の温度を計測している。したがって、この温度監視装置による温度の計測精度は低く、上述した継電器の瞬間的な温度計測には向かない、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、継電器の瞬間的な温度計測を精度よく行うと共に、制御盤の点検作業の負荷を軽減して、点検作業の効率化を図ったポンプ設備の制御盤監視システム、制御盤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るポンプ設備の制御盤監視システムは、ポンプ設備と、前記ポンプ設備を制御する制御盤と、前記制御盤を監視する監視装置と、を備え、前記制御盤は、複数の継電器を備えており、前記監視装置は、前記継電器の温度を計測するための非接触式温度計測装置と、前記非接触式温度計測装置を移動させ、当該非接触式温度計測装置を前記複数の継電器の一つずつと対向させる移動装置と、前記非接触式温度計測装置の移動及び計測を、前記ポンプ設備の運転シーケンスに基づく前記複数の継電器の励磁または消磁の動作タイミングに連動させる、運転時監視モードを有する動作司令部と、を備えている。
【0008】
上記ポンプ設備の制御盤監視システムにおいて、前記動作司令部は、前記運転時監視モードにおいて、計測対象の前記継電器が励磁する前に、予め、当該継電器と対向する位置に前記非接触式温度計測装置を移動させてもよい。
【0009】
上記ポンプ設備の制御盤監視システムにおいて、前記複数の継電器の少なくとも一部は、前記ポンプ設備の運動シーケンスに基づく励磁順に並んでおり、前記動作司令部は、前記運転時監視モードにおいて、前記励磁順に、前記非接触式温度計測装置を移動させてもよい。
【0010】
上記ポンプ設備の制御盤監視システムにおいて、前記動作司令部は、前記非接触式温度計測装置を移動させ、常時励磁している前記継電器の温度を巡回して計測する常時監視モードを有してもよい。
【0011】
上記ポンプ設備の制御盤監視システムにおいて、前記複数の継電器は、複数の列を成しており、前記複数の列ごとに、前記非接触式温度計測装置及び前記移動装置が設けられていてもよい。
【0012】
上記ポンプ設備の制御盤監視システムにおいて、前記非接触式温度計測装置及び前記移動装置は、前記複数の継電器を収容する前記制御盤の筐体の開閉扉の内側に設けられていてもよい。
【0013】
上記ポンプ設備の制御盤監視システムにおいて、前記非接触式温度計測装置は、赤外線カメラであって、前記複数の継電器の少なくとも一部は、前記赤外線カメラに対する焦点距離を揃えるスペーサを備えていてもよい。
【0014】
上記ポンプ設備の制御盤監視システムにおいて、前記複数の継電器のそれぞれの間に、遮熱板が設けられていてもよい。
【0015】
本発明の一態様に係る制御盤は、複数の継電器を備えており、前記複数の継電器のそれぞれの間に、遮熱板が設けられている。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明の態様によれば、継電器の瞬間的な温度計測を精度よく行うと共に、制御盤の点検作業の負荷を軽減して、点検作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係るポンプ設備の全体構成図である。
図2】一実施形態に係る立軸ポンプの始動時のポンプ設備の運動シーケンスを説明するブロック図である。
図3】一実施形態に係る立軸ポンプの始動時のポンプ設備の運動シーケンスを説明するブロック図である。
図4】一実施形態に係る立軸ポンプの停止時のポンプ設備の運動シーケンスを説明するブロック図である。
図5】一実施形態に係る立軸ポンプの非常停止時のポンプ設備の運動シーケンスを説明するブロック図である。
図6】一実施形態に係るポンプ設備を制御する制御盤の正面図である。
図7図6に示す制御盤の開閉扉を締めたときの継電器と赤外線カメラとの位置関係を示す平断面図である。
図8】一実施形態に係るポンプ設備の制御盤監視システムの機能ブロック図である。
図9】一実施形態に係る動作司令部の運転時監視モードを説明するフロー図である。
図10】一実施形態に係る運転時監視モードでの赤外線カメラの動きを説明する平断面図である。
図11】一実施形態に係る継電器の並びの一例を示す平断面図である。
図12】一実施形態に係る動作司令部の常時監視モードの一例を説明するフロー図である。
図13】一実施形態に係る常時監視モードでの赤外線カメラの動きを説明する平断面図である。
図14】一実施形態に係る動作司令部の常時監視モードの一例を説明するフロー図である。
図15】一実施形態に係る遮熱板を設けた場合に計測対象の継電器が受ける熱の影響を示した熱解析の模式図である。
図16】一実施形態に係る比較例として遮熱板を設けない場合に計測対象の継電器が受ける熱の影響を示した熱解析の模式図である。
図17】一実施形態の変形例に係るポンプ設備を制御する制御盤の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明では、本発明の適用例として、大雨時等に湛水防除の目的で稼働するポンプ設備(排水機場)において、当該ポンプ設備を制御する制御盤の制御盤監視システムについて例示する。
【0019】
図1は、一実施形態に係るポンプ設備1の全体構成図である。
図1に示すポンプ設備1は、立軸ポンプ10(主ポンプ)と、複数台の補機20と、を備えている。ポンプ設備1は、立軸ポンプ10(1号機)のほか、図示しない2号機(ないし3号機)の立軸ポンプを備えている。なお、ポンプ設備1は、立軸ポンプ10の代わりに、横軸ポンプを備えていても構わない。
【0020】
立軸ポンプ10は、鉛直下方に延びる下端の吸込口10aが吸込水槽2内に配置されている。立軸ポンプ10は、鉛直方向に延びる図示しないポンプ軸を備え、該ポンプ軸の下端に図示しない羽根車が固定されている。ポンプ軸の上端は、減速機5と接続されている。減速機5は、回転機4の回転軸4aに連結され、回転軸4aの回転を所定の減速比で減速してポンプ軸に伝達する。なお、回転機4は、ディーゼルエンジンなどの内燃機関からなり、消音器4bが接続されている。
【0021】
回転機4の駆動によって減速機5を介してポンプ軸が回転すると、吸込水槽2内で羽根車が回転し、吸込口10aを介して吸込水槽2内の水が揚水される。揚水された水は、立軸ポンプ10の上端に接続された吐出し管11を介して図示しない吐出水槽に吐出される。なお、吐出し管11には、吐出し弁12が設けられている。また、吸込水槽2には、水位を計測する水位計2aが設けられている。
【0022】
ポンプ設備1は、立軸ポンプ10を稼働させる補機20として、潤滑油ポンプ21、燃料移送ポンプ22、空気圧縮機23、冷却水ポンプ24、及び潤滑水ポンプ25を備えている。潤滑油ポンプ21は、減速機5に接続された潤滑油循環冷却管30に設けられている。この潤滑油循環冷却管30には、さらに圧力スイッチ31及びクーラー32が設けられている。潤滑油ポンプ21は、潤滑油循環冷却管30で潤滑油を循環冷却しながら、減速機5に潤滑油を供給する。
【0023】
燃料移送ポンプ22は、回転機4に接続された燃料移送管40に設けられている。この燃料移送管40は、貯油槽41及び燃料小出槽42と接続されている。燃料小出槽42には、燃料の水位を計測する水位計42aが設けられている。燃料移送ポンプ22は、水位計42aの結果に基づいて、貯油槽41内の燃料(重油)を汲み上げ、燃料小出槽42に移送する。そして、燃料小出槽42から回転機4に燃料が供給される。
【0024】
空気圧縮機23は、回転機4に接続された空気供給管50に設けられている。この空気供給管50は、空気槽51と接続されている。この空気槽51には、圧力を計測する圧力計51aが設けられている。また、空気供給管50には、始動電磁弁52が設けられている。空気圧縮機23は、圧力計51aの結果に基づいて、圧縮空気を空気槽51に充気する。そして、始動電磁弁52を開くと、空気槽51から回転機4に圧縮空気(始動用空気)が供給される。
【0025】
冷却水ポンプ24は、回転機4及びクーラー32に接続された冷却水供給管60に設けられている。冷却水ポンプ24は、冷却水槽61内の冷却水を汲み上げる。冷却水槽61には、水位を計測する水位計61aが設けられている。また、冷却水供給管60には、冷却水電磁弁62が設けられている。この冷却水供給管60は、冷却水電磁弁62より下流側において、回転機4に接続された第1配管60Aと、クーラー32に接続された第2配管60Bとに分岐している。そして、冷却水電磁弁62を開くと、回転機4及びクーラー32に冷却水が供給される。
【0026】
回転機4に供給された冷却水は、第3配管60Cから排水管60Eを介して冷却水槽61に回収され、または排水される。また、クーラー32に供給された冷却水は、第4配管60Dから排水管60Eを介して冷却水槽61に回収され、または排水される。これら第3配管60C及び第4配管60Dには、それぞれフロー/リレースイッチ63が設けられている。
【0027】
潤滑水ポンプ25は、立軸ポンプ10の図示しない軸受や軸封部に接続された潤滑水供給管70に設けられている。潤滑水ポンプ25は、潤滑水槽71の冷却水を汲み上げる。潤滑水槽71には、水位を計測する水位計71aが設けられている。また、潤滑水供給管70には、潤滑水電磁弁72及びフロー/リレースイッチ73が設けられている。そして、潤滑水電磁弁72を開くと、立軸ポンプ10に潤滑水が供給される。
【0028】
続いて、上記ポンプ設備1の主な運動シーケンスについて、いくつか説明する。
【0029】
図2及び図3は、一実施形態に係る立軸ポンプ10の始動時のポンプ設備1の運動シーケンスを説明するブロック図である。
図2に示すように、ポンプ設備1においては始動時において、切替スイッチ(COS)によって、現場(排水機場)での立軸ポンプ10の単独運転と、図示しない中央管理室での立軸ポンプ10の連動運転とに切り替えることができる。なお、以下の説明では、立軸ポンプ10の連動運転を例示する。
【0030】
立軸ポンプ10の連動運転では、各種の始動条件が満たされると、始動準備完了(ステップS1)となる。なお、始動条件には、吸込水槽2の水位正常(水位計2aの結果)、冷却水槽61の水位正常(水位計61aの結果)、潤滑水槽71の水位正常(水位計71aの結果)、燃料小出槽42の油面正常(水位計42aの結果)、空気槽51の圧力正常(圧力計51aの結果)、吐出し弁12が全閉、保護継電器が動作していない、冷却水ポンプ24が「連動」になっている、潤滑水ポンプ25が「連動」になっている、などが含まれている。これら始動条件が満たされ、始動の操作スイッチ(CS)が入ると、ポンプ設備1が始動(ステップS2)する。
【0031】
ポンプ設備1が始動すると、冷却水電磁弁62が開き(ステップS3)、冷却水ポンプ24が始動する(ステップS4)。冷却水ポンプ24が始動すると、冷却水供給管60のフロー/リレースイッチ63が動作し(ステップS5)、タイマのカウントが開始される(ステップS6)。また、ポンプ設備1が始動すると、潤滑水電磁弁72が開き(ステップS7)、潤滑水ポンプ25が始動する(ステップS8)。潤滑水ポンプ25が始動すると、潤滑水供給管70のフロー/リレースイッチ73が動作し(ステップS9)、タイマのカウントが開始される(ステップS10)。
【0032】
また、ポンプ設備1が始動すると、潤滑油ポンプ21が始動し(ステップS11)、潤滑油循環冷却管30の圧力スイッチ31が動作する(ステップS12)。
上述したステップS3~ステップS6のシーケンス、ステップS7~ステップS10のシーケンス、及びステップS11~ステップS12のシーケンスは、並列で行われる。これら並列のシーケンスが完了すると、始動渋滞タイマが「ON」になる(ステップS13)。
【0033】
次に、図3に示すシーケンスに続き、始動電磁弁52が開いて(ステップS14)、回転機4(エンジン)が始動する(ステップS15)。回転機4が始動し、回転機4の低速度スイッチが動作すると(ステップS16)、その後は回転機4が自動で吸気するため、役目を終えた始動電磁弁52を閉じる(ステップS17)。これにより、立軸ポンプ10の運転が開始される(ステップS18)。また、タイマのカウントが開始される(ステップS19)。
【0034】
そうすると、ステップS13で「ON」となっていた始動渋滞タイマが「OFF」になる(ステップS20)。また、上述した切替スイッチ(COS)が「連動」の場合は、吐出し弁12が開いて(ステップS21)、吐出し弁12が全開になる(ステップS22)。なお、切替スイッチ(COS)が「単独」の場合は、吐出し弁12用の操作スイッチ(CS)を入れると、吐出し弁12が開き(ステップS21)、吐出し弁12が全開になる(ステップS22)。また、保護回路が形成されると共に(ステップS23)、潤滑油ポンプ21が停止する(ステップS24)。
以上が、立軸ポンプ10の始動時のポンプ設備1の運動シーケンスである。
【0035】
図4は、一実施形態に係る立軸ポンプ10の停止時のポンプ設備1の運動シーケンスを説明するブロック図である。
図4に示すように、ポンプ設備1においては停止時において、切替スイッチ(COS)によって、現場(排水機場)での立軸ポンプ10の単独運転と、図示しない中央管理室での立軸ポンプ10の連動運転とに切り替えることができる。なお、以下の説明でも、立軸ポンプ10の連動運転を例示する。
【0036】
停止の操作スイッチ(CS)が入ると、先ず、吐出し弁12が閉じると共に(ステップS30)、潤滑油ポンプ21が始動する(ステップS31)。次に、吐出し弁12が全閉になる(ステップS32)。吐出し弁12が全閉になると、図示しない停止電磁弁が開き(ステップS33)、回転機4(エンジン)が停止する(ステップS34)。また、タイマのカウントが開始され(ステップS35)、停止電磁弁が閉まる(ステップS36)。
【0037】
また、上述したステップS33~ステップS36のシーケンスと並列で、別のタイマのカウントが開始され(ステップS37)、冷却水電磁弁62が閉まり(ステップS38)、冷却水ポンプ24が停止する(ステップS39)。また、潤滑水電磁弁72が閉まり(ステップS40)、潤滑水ポンプ25が停止する(ステップS41)。さらに、潤滑油ポンプ21が停止する(ステップS42)。
以上が、立軸ポンプ10の停止時のポンプ設備1の運動シーケンスである。
【0038】
図5は、一実施形態に係る立軸ポンプ10の非常停止時のポンプ設備1の運動シーケンスを説明するブロック図である。
図5に示すように、ポンプ設備1においては、非常停止の操作スイッチ(CS)が入る、若しくは、ステップS23で形成した保護回路のリレーが動作すると、非常停止の運動シーケンスが実行される。
【0039】
非常停止の運動シーケンスでは、先ず、吐出し弁12が閉じ(ステップS50)、その後、吐出し弁12が全閉になる(ステップS51)。また、図示しない停止電磁弁が開き(ステップS52)、回転機4(エンジン)が停止する(ステップS53)。また、タイマのカウントが開始され(ステップS54)、停止電磁弁が閉まる(ステップS55)。
【0040】
また、上述したステップS50~S51及びステップS52~S55のシーケンスと並列で、別のタイマのカウントが開始され(ステップS56)、冷却水電磁弁62が閉まり(ステップS56)、冷却水ポンプ24が停止する(ステップS57)。また、潤滑水電磁弁72が閉まり(ステップS58)、潤滑水ポンプ25が停止する(ステップS59)。さらに、潤滑油ポンプ21が停止する(ステップS60)。
以上が、立軸ポンプ10の非常停止時のポンプ設備1の運動シーケンスである。
【0041】
なお、ポンプ設備1の運動シーケンスには、上述した立軸ポンプ10(主ポンプ)と連動しない、補機20の動作も含まれる。例えば、燃料移送ポンプ22は、水位計42aによって燃料小出槽42の水位が低位レベルになったことを検知したら自動で始動し、燃料小出槽42の水位が高位レベルになったら自動で停止する。また、例えば、空気圧縮機23は、圧力計51aによって空気槽51の圧力が低位レベルになったことを検知したら自動で始動し、空気槽51の圧力が高位レベルになったら自動で停止する。
【0042】
続いて、上述したポンプ設備1を制御する制御盤100の構成、及び、制御盤100を監視するポンプ設備1の制御盤監視システム200の構成について説明する。
図6は、一実施形態に係るポンプ設備1を制御する制御盤100の正面図である。図7は、図6に示す制御盤100の開閉扉102を締めたときの継電器110と赤外線カメラ131との位置関係を示す平断面図である。図8は、一実施形態に係るポンプ設備1の制御盤監視システム200の機能ブロック図である。
【0043】
図6に示すように、ポンプ設備1の制御盤100は、継電器110を含む各種制御機器を収容する筐体101を備えている。筐体101は、矩形の箱状に形成され、正面に開閉扉102が設けられている。筐体101の内部には、収容棚103が設けられている。収容棚103には、複数の棚104が設けられ、各棚104に各種制御機器が水平方向に列を成して収容されている。なお、図6(以下の図でも同様)では、監視対象となる継電器110が、各棚104に5個ずつ収納されているが、継電器110の個数は限定されるものではない。また、継電器110には、補助継電器(所謂リレー)が含まれる。
【0044】
開閉扉102の内側には、監視装置130が取り付けられている。監視装置130は、継電器110の温度を計測するための赤外線カメラ131(非接触式温度計測装置)と、赤外線カメラ131を移動させ、当該赤外線カメラ131を複数の継電器110の一つずつと対向させる移動装置132と、図8に示すように、赤外線カメラ131の移動及び計測を制御する制御装置133と、を備えている。赤外線カメラ131としては、図7に示すように、開閉扉102を閉じたときに、継電器110と隙間をあけて対向できる小型のカメラが好ましい。また、移動装置132としては、赤外線カメラ131を棚104の端から端まで移動させることができるレール付きのモータスライダーを例示することができる。
【0045】
図6に示すように、赤外線カメラ131及び移動装置132は、筐体101の開閉扉102の内側に設けられている。また、上述したように、複数の継電器110は、各棚104に対応して複数の列を成している。このため、本実施形態では、赤外線カメラ131及び移動装置132が、継電器110の各列に対応して複数設けられている。なお、移動装置132は、水平方向のみならず、鉛直方向にも赤外線カメラ131を移動させる構成であっても構わない。この場合は、一台の赤外線カメラ131及び移動装置132で、継電器110の全体を監視できる。
【0046】
図7に示すように、複数の継電器110には、サイズの異なる複数種の継電器110A,110Bが含まれている。本実施形態では、複数の継電器110の少なくとも一部(小型の継電器110A)が、赤外線カメラ131に対する焦点距離Lを揃えるスペーサ111を備えている。スペーサ111は、赤外線カメラ131に対向する継電器110Aの端面110aを、継電器110Bの端面110aと同じ位置に揃える。これにより、赤外線カメラ131の温度計測の精度を向上させることができる。
【0047】
また、図7に示すように、複数の継電器110のそれぞれの間には、遮熱板120が設けられている。遮熱板120は、継電器110の左右両側面を覆うと共に、継電器110の端面110aよりも前側(赤外線カメラ131側)まで突出している。遮熱板120としては、アルミ板を例示することができる。なお、アルミ板の表面を鏡面加工し、赤外線の反射率を向上させてもよい。また、遮熱板120としては、隣り合う継電器110の間の熱の影響を遮断ないし抑制できるものであれば、その材料は問わない。
【0048】
図8に示すように、制御装置133は、動作司令部134と、データ収集・解析部135と、通知部136、とを備えている。制御装置133は、例えば、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)から構成されている。この制御装置133は、赤外線カメラ131及び移動装置132と同様に、制御盤100の筐体101の内部に設けられていてもよいし、制御盤100の外部(例えば中央管理室など)から遠隔で赤外線カメラ131及び移動装置132を制御しても構わない。
【0049】
動作司令部134は、赤外線カメラ131及び移動装置132を制御するものであり、後述する運転時監視モードと、常時監視モードと、を備えている。データ収集・解析部135は、これら監視モードで計測した継電器110の温度データを収集し、その温度の変化を解析することにより、継電器110の異常及びその異常の予兆を検知する。通知部136は、継電器110の異常及びその異常の予兆を検知した場合、その検知結果を管理者に通知する。通知部136は、例えば、中央管理室での盤面表示(モニター表示)、メール、警報などを行う。
【0050】
図9は、一実施形態に係る動作司令部134の運転時監視モードを説明するフロー図である。図10は、一実施形態に係る運転時監視モードでの赤外線カメラ131の動きを説明する平断面図である。
図9に示す運転時監視モードでは、赤外線カメラ131の移動及び計測を、ポンプ設備1の運転シーケンスに基づく複数の継電器110の励磁または消磁の動作タイミングに連動させる。なお、継電器110の励磁または消磁の動作タイミングは、上述した図2に示す通りであり、また、上述した図3図5においても同様である。これらの動作タイミングは、図8に示すように、制御盤100から動作司令部134に入力される。
【0051】
図9に示すように、立軸ポンプ10(主ポンプ)の運転指令が入力されると(ステップS100)、自動で運転時監視モードに切り替わる(ステップS101)。なお、制御盤100側(立軸ポンプ10側)では、上述した図2に示すように運転シーケンスが実行される(ステップS1)。動作司令部134は、上述したポンプ設備1の運転シーケンスに基づき、赤外線カメラ131を移動させる(ステップS102)。
【0052】
具体的に、動作司令部134は、図10(a)に示すように、計測対象の継電器110が励磁する前に、予め、当該継電器110と対向する位置(プリセット1)に赤外線カメラ131を移動させる。そして、プリセット1にて赤外線カメラ131が温度計測を開始する(ステップS103)。赤外線カメラ131は、図10(a)に示す継電器110の消磁状態から、図10(b)に示す継電器110の励磁状態までの温度変化を計測する。
【0053】
なお、制御盤100側では、上述したポンプ設備1の運転シーケンスに基づき、ステップS104、S105に示すように、次々と継電器110が励磁していくので、当該継電器110の温度計測が完了したら(ステップS106)、次の計測対象の継電器110が励磁する前に、予め、当該継電器110と対向する位置(プリセット2)に赤外線カメラ131を移動させる(ステップS107)。そして、同様に、プリセット2にて赤外線カメラ131が温度計測を開始する(ステップS108)。これを継電器N(Nは自然数)まで繰り返し、且つ、立軸ポンプ10の始動が完了したら(図3に示すステップS22)、当該運転時監視モードが終了する。
【0054】
なお、この運転時監視モードにおいて、赤外線カメラ131による継電器110の温度計測をより効率的に行うために、図11に示す構成を採用してもよい。
【0055】
図11は、一実施形態に係る継電器110の並びの一例を示す平断面図である。
図11に示すように、制御盤100の筐体101の内部に収容された複数の継電器110の少なくとも一部は、上述したポンプ設備1の運動シーケンスに基づく励磁順に並んでいるとよい。そして、動作司令部134は、上述した運転時監視モードにおいて、上記励磁順に、赤外線カメラ131を移動させる。これにより、赤外線カメラ131の移動量(往復移動)を少なくし、効率的に継電器110の温度計測を行える。
【0056】
なお、ここでいう「複数の継電器110の少なくとも一部」とは、例えば、図2に示すステップS3~S5において順に励磁される継電器110群、同図に示すステップS7~S9において順に励磁される継電器110群、同図に示すステップS11~S12において順に励磁される継電器110群、図3に示すステップS14~S17において順に励磁される継電器110群などを例示することができる。これらの継電器110は、励磁順に並び、且つ、並列のシーケンスは、図6に示す収容棚103において別の棚104にそれぞれ列を成しているとよい。
【0057】
また、上述した運転時監視モードは、立軸ポンプ10の始動時だけでなく、上述した立軸ポンプ10の停止時、及び非常停止時の運動シーケンスでも同様に実行できる。
なお、停止時において、上述した「複数の継電器110の少なくとも一部」とは、例えば、図4に示すステップS30、S32において順に励磁される継電器110群、同図に示すステップS33、S34において順に励磁される継電器110群、同図に示すステップS38、S39において順に励磁される継電器110群、同図に示すステップS40、S41において順に励磁される継電器110群などを例示することができる。これらの継電器110は、励磁順に並び、且つ、並列のシーケンスは、図6に示す収容棚103において別の棚104にそれぞれ列を成しているとよい。
【0058】
また、非常停止時において、上述した「複数の継電器110の少なくとも一部」とは、例えば、図5に示すステップS50、S51において順に励磁される継電器110群、同図に示すステップS52、S53において順に励磁される継電器110群、同図に示すステップS56、S57において順に励磁される継電器110群、同図に示すステップS58、S59において順に励磁される継電器110群などを例示することができる。これらの継電器110は、励磁順に並び、且つ、並列のシーケンスは、図6に示す収容棚103において別の棚104にそれぞれ列を成しているとよい。
【0059】
図12は、一実施形態に係る動作司令部134の常時監視モードの一例を説明するフロー図である。図13は、一実施形態に係る常時監視モードでの赤外線カメラ131の動きを説明する説明図である。
図12に示す常時監視モードは、立軸ポンプ10の始動完了後に切り替わる監視モードであって、赤外線カメラ131を移動させ、常時励磁している継電器110の温度を巡回して計測する。
【0060】
図12に示すように、立軸ポンプ10の始動が完了すると(ステップS22)、自動で常時監視モードに切り替わる(ステップS110)。常時監視モードに切り替わると、タイマのカウントが開始され(ステップS111)、継電器110の巡回計測が開始される(ステップS112)。この巡回計測では、立軸ポンプ10の始動完了後に、常時励磁している継電器110(例えば、図2のステップS1及び図3のステップS20にて消磁する継電器110を除いた、励磁状態の継電器110)が計測対象になる。
【0061】
巡回計測では、図13(a)に示すように、常時励磁している継電器110の温度を計測する(ステップS113)。計測が完了したら、タイマのカウントが開始され(ステップS114)、図13(b)に示すように移動し、常時励磁している次の継電器110の温度計測を開始する。常時監視モードでは、この巡回計測を繰り返しており、立軸ポンプ10の停止指令が入ったら終了となる。
【0062】
図14は、一実施形態に係る動作司令部134の常時監視モードの一例を説明するフロー図である。
図14に示す常時監視モードは、立軸ポンプ10の停止後に継電器110を定期的に監視する監視モードである。なお、この常時監視モードでも、上述した立軸ポンプ10の始動完了後の常時監視モードと同様に、赤外線カメラ131を移動させ、常時励磁している継電器110の巡回計測を行う。
【0063】
図14に示すように、立軸ポンプ10が停止すると(ステップS120)、自動で常時監視モードに切り替わる、若しくは、手動で常時監視モードに切り替えてもよい(ステップS121)。常時監視モードに切り替わると、タイマのカウントが開始され(ステップS122)、常時励磁している継電器110の巡回計測が開始される(ステップS123)。この巡回計測では、立軸ポンプ10の停止後に、常時励磁している継電器110(例えば、図2に示すステップS1で消磁する継電器110など)が計測対象になる。
【0064】
巡回計測では、図13(a)と同じように、常時励磁している継電器110の温度を計測する。そして、タイマのカウントが開始され(ステップS124)、図13(b)に示すように移動し、常時励磁している次の継電器110の温度計測を開始する。立軸ポンプ10の停止時の常時監視モードでは、この巡回計測を繰り返しており、立軸ポンプ10の始動指令、若しくは、タイマないし手動で常時監視モードが切られたら終了となる。
【0065】
上述したように、本実施形態のポンプ設備1の制御盤監視システム200によれば、ポンプ設備1と、ポンプ設備1を制御する制御盤100と、制御盤100を監視する監視装置130と、を備え、制御盤100は、複数の継電器110を備えており、監視装置130は、継電器110の温度を計測するための赤外線カメラ131と、赤外線カメラ131を移動させ、当該赤外線カメラ131を複数の継電器110の一つずつと対向させる移動装置132と、赤外線カメラ131の移動及び計測を、ポンプ設備1の運転シーケンスに基づく複数の継電器110の励磁または消磁の動作タイミングに連動させる、運転時監視モードを有する動作司令部134と、を備えている。
【0066】
この構成によれば、図10に示すように、赤外線カメラ131を移動させ、当該赤外線カメラ131を複数の継電器110の一つずつと対向させて温度計測を行うため、従来のような広角で温度計測を行うよりも継電器110の温度の計測精度が高くなる。また、赤外線カメラ131の移動及び計測を、図9に示すように、ポンプ設備1の運転シーケンスに基づく複数の継電器110の励磁または消磁の動作タイミングに連動させるため、継電器110の瞬間的な温度変化を正確に捉えることができる。
したがって、本実施形態によれば、継電器110の瞬間的な温度計測を精度よく行うと共に、制御盤100の点検作業の負荷を軽減して、点検作業の効率化を図ることができる。
【0067】
また、本実施形態では、動作司令部134は、図9及び図10に示すように、運転時監視モードにおいて、計測対象の継電器110が励磁する前に、予め、当該継電器110と対向する位置に赤外線カメラ131を移動させるので、継電器110の消磁状態から励磁状態までの温度変化を計測することができる。これにより、継電器110の異常及び異常の予兆の検知精度を向上させることができる。
【0068】
また、本実施形態では、複数の継電器110の少なくとも一部は、図11に示すように、ポンプ設備1の運動シーケンスに基づく励磁順に並んでおり、動作司令部134は、運転時監視モードにおいて、上記励磁順に、赤外線カメラ131を移動させるので、赤外線カメラ131の移動量(往復移動)を少なくし、効率的に継電器110の温度計測を行えるようになる。
【0069】
また、本実施形態では、動作司令部134は、図12に示すように、赤外線カメラ131を移動させ、常時励磁している継電器110の温度を巡回して計測する常時監視モードを有しているので、立軸ポンプ10が始動した後、あるいは立軸ポンプ10が停止した後の定常状態においても、励磁している継電器110を常時監視できる。
【0070】
また、本実施形態では、図6に示すように、複数の継電器110は、複数の列を成しており、複数の列ごとに、赤外線カメラ131及び移動装置132が設けられているので、ポンプ設備1の運動シーケンスの少なくとも一部が並列に流れている場合であっても、複数台の赤外線カメラ131で継電器110の瞬間的な温度変化を正確に捉えることができる。また、この構成によれば、1台の赤外線カメラ131で継電器110の温度計測を行うよりも、赤外線カメラ131の1台当たりに移動量を少なくすることができる。
【0071】
また、本実施形態では、同図に示すように、赤外線カメラ131及び移動装置132は、複数の継電器110を収容する制御盤100の筐体101の開閉扉102の内側に設けられているので、開閉扉102を開ければ、継電器110の正面から赤外線カメラ131及び移動装置132を移動させることができる。このため、赤外線カメラ131及び移動装置132が邪魔にならず、管理者が開閉扉102を開けて故障した継電器110(または故障する前段階の継電器110)を容易に交換することができる。
【0072】
また、本実施形態では、図7に示すように、複数の継電器110の少なくとも一部は、赤外線カメラ131に対する焦点距離Lを揃えるスペーサ111を備えているので、赤外線カメラ131の温度計測の精度を高めることができる。なお、赤外線カメラ131がオートフォーカス機能を備えている場合、焦点距離Lを揃えなくても温度計測は可能であるが、焦点距離Lが一定であればオートフォーカスに要する時間を短縮若しくは削減できるので、赤外線カメラ131の計測時間を短縮し、素早く移動させることができる。また、小型の赤外線カメラ131の場合、焦点を合わせる機能が低い場合があるので、このような場合に、複数の継電器110の高さをスペーサ111で揃えるとよい。
【0073】
また、本実施形態では、同図に示すように、複数の継電器110のそれぞれの間に、遮熱板120が設けられているので、隣の継電器110からの熱の影響を受けずに、計測対象の継電器110の温度を計測できるので、計測対象ごとの計測精度が向上する。特に、継電器110がミニチュアリレーの場合、互いに近接して配置され、隣の熱の影響を受け易いため、このように遮熱板120を設けるとよい。
【0074】
図15は、一実施形態に係る遮熱板120を設けた場合に計測対象の継電器110Cが受ける熱の影響を示した熱解析の模式図である。図16は、比較例として遮熱板120を設けない場合に計測対象の継電器110Cが受ける熱の影響を示した熱解析の模式図である。計測対象の継電器110Cは、電流を流しても励磁しない故障した継電器を例示する。対して、継電器110Cの周囲の継電器110は、励磁状態である。
この状態で、遮熱板120が無い場合、図16に示すように、計測対象の継電器110Cが、周囲の継電器110の熱の影響を受け、あたかも励磁しているかのように熱せられる。これでは、継電器110Cが異常であるか検知することが困難になる。
一方で、図15に示すように、遮熱板120が有る場合、計測対象の継電器110Cが受ける周囲の継電器110からの熱が緩和され、継電器110Cの温度が低温であることが分かる。このため、継電器110Cが異常であるか否かを検知することが容易になる。
【0075】
このように、上記構成の制御盤100によれば、複数の継電器110を備えており、複数の継電器110のそれぞれの間に、遮熱板120が設けられているので、仮に、人手による定期的な点検であっても、継電器110の温度計測を精度よく行えるので、制御盤100の点検作業の負荷を軽減して、点検作業の効率化を図ることができる。
【0076】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【0077】
例えば、上記実施形態では、赤外線カメラ131の移動及び計測を、継電器110が励磁する動作タイミングに連動させる形態について例示したが、赤外線カメラ131の移動及び計測を、継電器110が消磁する動作タイミング(例えば、図2のステップS1及び図3のステップS20にて消磁する継電器110)に連動させる形態であっても構わない。
【0078】
例えば、上記実施形態では、赤外線カメラ131の移動及び計測を、立軸ポンプ10の始動、停止、または非常停止の運動シーケンスに連動させる形態について例示したが、立軸ポンプ10と連動しない、補機20の動作に連動させても構わない。例えば、燃料移送ポンプ22は、水位計42aによって燃料小出槽42の水位が低位レベルになったことを検知したら自動で始動し、燃料小出槽42の水位が高位レベルになったら自動で停止するので、水位計42aから燃料移送ポンプ22の動作タイミングを読み取り、燃料移送ポンプ22の始動時に励磁する継電器110が励磁する前に、予め、当該継電器110と対向する位置に赤外線カメラ131を移動させることも可能である。また、空気圧縮機23においても、燃料移送ポンプ22と同様に動作するので、空気圧縮機23の始動時に励磁する継電器110の温度計測も可能である。
【0079】
例えば、上記実施形態では、図6に示すように、赤外線カメラ131及び移動装置132が、継電器110の各列に対応して複数設けられている構成を例示したが、図17に示す構成であっても構わない。図17に示す移動装置132のレールは、公知のライディング・ダクトレール構造となっており、継電器110の各列に対応した各レールの端部が上下で接続されている。この構成によれば、1台の赤外線カメラ131で上述した温度計測を行えると共に、レールを介して赤外線カメラ131に無線で電源を供給、及び、データの送受信を行える。
【0080】
例えば、上記実施形態では、非接触式温度計測装置として赤外線カメラを例示したが、それに限らず放射温度計などの赤外線温度計も含まれる。
【0081】
例えば、上記実施形態では、ポンプ設備として排水機場を例示したが、それに限らず揚水機場(渦巻ポンプ、電動機駆動)も含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1 ポンプ設備
100 制御盤
101 筐体
102 開閉扉
110 継電器
111 スペーサ
120 遮熱板
130 監視装置
131 赤外線カメラ(非接触式温度計測装置)
132 移動装置
134 動作司令部
200 制御盤監視システム
L 焦点距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17