(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20231110BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20231110BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20231110BHJP
B24B 47/22 20060101ALI20231110BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
H01L21/78 C
B24B27/06 M
B24B49/12
B24B47/22
B23Q17/24 B
(21)【出願番号】P 2020000538
(22)【出願日】2020-01-06
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 芳昌
(72)【発明者】
【氏名】名嘉眞 惇
(72)【発明者】
【氏名】花島 聡
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-23256(JP,A)
【文献】特開平10-64981(JP,A)
【文献】特開2005-223270(JP,A)
【文献】特開2019-186447(JP,A)
【文献】特開2017-117924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 27/06
B24B 49/12
B24B 47/22
B23Q 17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する回転可能なチャックテーブルを有する保持ユニットと、該チャックテーブルに保持された被加工物を加工する加工ユニットと、該保持ユニットをX軸方向に加工送りする加工送りユニットと、Y軸方向に該加工ユニットを割り出し送りする割り出し送りユニットと、該チャックテーブルに保持された被加工物を撮影する割り出し送り方向に移動可能なカメラと、各構成要素を制御する制御ユニットと、を含む加工装置であって、
該加工送りユニットは、
被加工物を該加工ユニットで加工する加工領域と、該加工領域からX軸方向に所定距離離れた位置で被加工物を該カメラで撮影する撮影領域との間で該保持ユニットをガイドレールに沿って移動させ、
該制御ユニットは、
該チャックテーブルを加工送りしつつ該加工ユニットで被加工物に直線状の加工痕を作成後、該チャックテーブルを該撮影領域に移動させて該加工痕を該カメラで撮影し、1本の該加工痕の加工送り方向に離れた2点のY座標から、Y軸方向の補正値又は該チャックテーブルの補正角度を算出する補正量算出部と、を備え、
該撮影領域で該チャックテーブルを加工送りする際に該カメラの位置をY方向に補正又は該チャックテーブルを該補正角度回転させる加工装置。
【請求項2】
該チャックテーブルは、被加工物を保持する保持面に透明部材を有し、
該カメラは、該透明部材を挟んで上下となる位置に、該加工ユニット近傍の第1のカメラと、該第1のカメラより該加工ユニットから遠い第2のカメラとを有し、
該制御ユニットは、該第1のカメラで撮影した領域に第2のカメラを位置付けて該第1のカメラと該第2のカメラの位置ずれをX、Y座標で記憶する座標記憶部と、をさらに備え、該座標記憶部に記憶されたX、Y座標に基づいて該第1のカメラで撮影した領域に該第2のカメラを位置づける請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
該第1のカメラで撮影した第1の画像と、該第2のカメラで撮影した第2の画像を表示する表示ユニットをさらに備え、
該表示ユニットには、一方の該画像が加工送り方向が反転した状態で、該第1の画像及び該第2の画像を重ねて、又は加工送り方向に並んで表示する請求項2に記載の加工装置。
【請求項4】
被加工物を保持する回転可能なチャックテーブルを有する保持ユニットと、該チャックテーブルに保持された被加工物を加工する加工ユニットと、該保持ユニットをX軸方向に加工送りする加工送りユニットと、Y軸方向に該加工ユニットを割り出し送りする割り出し送りユニットと、該チャックテーブルに保持された被加工物を撮影するY軸方向に移動可能なカメラと、各構成要素を制御する制御ユニットと、を含み構成される加工装置であって、
該加工送りユニットは、
被加工物を該加工ユニットで加工する加工領域と、該加工領域から所定距離離れた位置で被加工物を該カメラで撮影する撮影領域との間で該保持ユニットをガイドレールに沿って移動させ、
該カメラは、該加工ユニット近傍の第1のカメラと、該第1のカメラより該加工ユニットから離れた第2のカメラとを有し、
該制御ユニットは、
該第1のカメラで被加工物又は該チャックテーブルの直線状のマークを撮影し、該チャックテーブルを回転させて該マークの向きを該加工送り方向と平行に調整した後に、該チャックテーブルを該撮影領域に移動させて該マークを該第2のカメラで撮影し、該マークの該加工送り方向に離れた2点のX、Y座標から、Y軸方向の補正値又は補正角度を算出する補正量算出部と、を備え、
該撮影領域で該チャックテーブルを加工送りして撮影する際に該補正値に基づいて該カメラを割り出し送り又は該チャックテーブルを回転させる加工装置。
【請求項5】
該チャックテーブルは、被加工物を保持する保持面に透明部材を有し、
該カメラは、該透明部材を挟んで上下となる位置に、該加工ユニット近傍の第1のカメラと、該第1のカメラより該加工ユニットから遠い第2のカメラとを有し、
該制御ユニットは、該第1のカメラで撮影した領域に第2のカメラを位置付けて該第1のカメラと該第2のカメラの位置ずれをX、Y座標で記憶する座標記憶部と、をさらに備え、該座標記憶部に記憶されたX、Y座標に基づいて該第1のカメラで撮影した領域に該第2のカメラを位置づける請求項4に記載の加工装置。
【請求項6】
該第1のカメラで撮影した第1の画像と、該第2のカメラで撮影した第2の画像を表示する表示ユニットをさらに備え、
該表示ユニットには、一方の該画像が加工送り方向が反転した状態で、該第1の画像及び該第2の画像を重ねて、又は加工送り方向に並んで表示する請求項5に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンやサファイヤ、ガリウムヒ素、SiC(炭化ケイ素)等、各種デバイスがストリートに区画された領域に形成されたデバイスウエーハなどの被加工物をストリートに沿って加工する加工装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の加工装置は、切削ブレードをスピンドルに装着してストリートを切削する切削装置や、レーザー光線をストリートに集光しレーザー加工溝や内部に改質層を形成するレーザー加工装置である。
【0003】
前述した加工装置では、被加工物はチャックテーブルに保持され、ガイドレールに沿って加工送り方向(X軸方向)に移動しながら加工される。この際、チャックテーブルを回転させて、ストリートの向きをX軸方向に平行することで、チャックテーブルを移動させればストリートに沿った加工が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した加工装置では、チャックテーブルは、保持ユニット(移動基台)がガイドレールに沿って移動する直動アクチュエータで移動するが、この直動アクチュエータの直進性は、両端を除いた保証範囲のみ保証されており、ガイドレールの両端付近は、保証範囲に比べ、直進性が悪く、平面視(カメラから見て)でチャックテーブルが僅かに回転してしまったり、回転した状態のまま加工送りされたりする。この両端の領域で被加工物をアライメント(加工位置を決定)したり、カーフチェック(カット位置の位置ずれを測定、調整)すると、誤った位置を加工してしまい、加工精度が低下する恐れがある。しかし、保証範囲を両端まで拡げたり、保証範囲を拡げるために直動アクチュエータの長さを長くすると、直動アクチュエータのコストが上昇したり設置面積が大きくなってします。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、コストの上昇を抑制しながらも加工精度の低下を抑制することができる加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加工装置は、被加工物を保持する回転可能なチャックテーブルを有する保持ユニットと、該チャックテーブルに保持された被加工物を加工する加工ユニットと、該保持ユニットをX軸方向に加工送りする加工送りユニットと、Y軸方向に該加工ユニットを割り出し送りする割り出し送りユニットと、該チャックテーブルに保持された被加工物を撮影する割り出し送り方向に移動可能なカメラと、各構成要素を制御する制御ユニットと、を含む加工装置であって、該加工送りユニットは、被加工物を該加工ユニットで加工する加工領域と、該加工領域からX軸方向に所定距離離れた位置で被加工物を該カメラで撮影する撮影領域との間で該保持ユニットをガイドレールに沿って移動させ、該制御ユニットは、該チャックテーブルを加工送りしつつ該加工ユニットで被加工物に直線状の加工痕を作成後、該チャックテーブルを該撮影領域に移動させて該加工痕を該カメラで撮影し、1本の該加工痕の加工送り方向に離れた2点のY座標から、Y軸方向の補正値又は該チャックテーブルの補正角度を算出する補正量算出部と、を備え、該撮影領域で該チャックテーブルを加工送りする際に該カメラの位置をY方向に補正又は該チャックテーブルを該補正角度回転させることを特徴とする。
【0008】
前記加工装置において、該チャックテーブルは、被加工物を保持する保持面に透明部材を有し、該カメラは、該透明部材を挟んで上下となる位置に、該加工ユニット近傍の第1のカメラと、該第1のカメラより該加工ユニットから遠い第2のカメラとを有し、該制御ユニットは、該第1のカメラで撮影した領域に第2のカメラを位置付けて該第1のカメラと該第2のカメラの位置ずれをX、Y座標で記憶する座標記憶部と、をさらに備え、該座標記憶部に記憶されたX、Y座標に基づいて該第1のカメラで撮影した領域に該第2のカメラを位置づけても良い。
【0009】
前記加工装置において、該第1のカメラで撮影した第1の画像と、該第2のカメラで撮影した第2の画像を表示する表示ユニットをさらに備え、該表示ユニットには、一方の該画像が加工送り方向が反転した状態で、該第1の画像及び該第2の画像を重ねて、又は加工送り方向に並んで表示しても良い。
【0010】
本発明の加工装置は、被加工物を保持する回転可能なチャックテーブルを有する保持ユニットと、該チャックテーブルに保持された被加工物を加工する加工ユニットと、該保持ユニットをX軸方向に加工送りする加工送りユニットと、Y軸方向に該加工ユニットを割り出し送りする割り出し送りユニットと、該チャックテーブルに保持された被加工物を撮影するY軸方向に移動可能なカメラと、各構成要素を制御する制御ユニットと、を含み構成される加工装置であって、該加工送りユニットは、被加工物を該加工ユニットで加工する加工領域と、該加工領域から所定距離離れた位置で被加工物を該カメラで撮影する撮影領域との間で該保持ユニットをガイドレールに沿って移動させ、該カメラは、該加工ユニット近傍の第1のカメラと、該第1のカメラより該加工ユニットから離れた第2のカメラとを有し、該制御ユニットは、該第1のカメラで被加工物又は該チャックテーブルの直線状のマークを撮影し、該チャックテーブルを回転させて該マークの向きを該加工送り方向と平行に調整した後に、該チャックテーブルを該撮影領域に移動させて該マークを該第2のカメラで撮影し、該マークの該加工送り方向に離れた2点のX、Y座標から、Y軸方向の補正値又は補正角度を算出する補正量算出部と、を備え、該撮影領域で該チャックテーブルを加工送りして撮影する際に該補正値に基づいて該カメラを割り出し送り又は該チャックテーブルを回転させることを特徴とする。
【0011】
前記加工装置において、該チャックテーブルは、被加工物を保持する保持面に透明部材を有し、該カメラは、該透明部材を挟んで上下となる位置に、該加工ユニット近傍の第1のカメラと、該第1のカメラより該加工ユニットから遠い第2のカメラとを有し、該制御ユニットは、該第1のカメラで撮影した領域に第2のカメラを位置付けて該第1のカメラと該第2のカメラの位置ずれをX、Y座標で記憶する座標記憶部と、をさらに備え、該座標記憶部に記憶されたX、Y座標に基づいて該第1のカメラで撮影した領域に該第2のカメラを位置づけても良い。
【0012】
前記加工装置において、該第1のカメラで撮影した第1の画像と、該第2のカメラで撮影した第2の画像を表示する表示ユニットをさらに備え、該表示ユニットには、一方の該画像が加工送り方向が反転した状態で、該第1の画像及び該第2の画像を重ねて、又は加工送り方向に並んで表示しても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、コストの上昇を抑制しながらも加工精度の低下を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る加工装置の要部を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された加工装置の加工対象の被加工物の斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された加工装置の保持ユニットと第2のカメラを示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示された加工装置の加工領域と撮影領域を模式的に示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示された加工装置の表示ユニットが表示する第1の画像及び第2の画像の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、
図1に示された加工装置の表示ユニットが表示する第1の画像及び第2の画像の他の例を示す図である。
【
図7】
図7は、
図1に示された加工装置の補正量算出部が補正量を算出する際に切削溝を形成する被加工物の斜視図である。
【
図8】
図8は、
図1に示された加工装置の補正量算出部が
図7に示された被加工物に切削溝を作成する状態を模式的に示す平面図である。
【
図9】
図9は、
図1に示された加工装置の補正量算出部が
図7に示された被加工物に切削溝を作成した状態を模式的に示す平面図である。
【
図10】
図10は、
図1に示された加工装置の第1のカメラが切削溝の一端部を撮影して得た第1の画像を示す図である。
【
図11】
図11は、
図1に示された加工装置の第1のカメラが切削溝の他端部を撮影して得た第1の画像を示す図である。
【
図12】
図12は、
図1に示された加工装置の補正量算出部が切削溝を形成した被加工物を撮影領域まで移動する状態を模式的に示す平面図である。
【
図14】
図14は、
図1に示された加工装置の第2のカメラが切削溝の一端部を撮影して得た第2の画像を示す図である。
【
図15】
図15は、
図1に示された加工装置の第2のカメラが切削溝の他端部を撮影して得た第2の画像を示す図である。
【
図16】
図16は、
図1に示された加工装置の表示ユニットが第1の画像と第2の画像とを並べて表示する状態を示す図である。
【
図17】
図17は、
図1に示された加工装置の表示ユニットが第1の画像と第2の画像とを重ねて表示する状態を示す図である。
【
図18】
図18は、実施形態2に係る加工装置の要部の構成を示す斜視図である。
【
図19】
図19は、
図18に示された加工装置の保持ユニットと第2のカメラを示す斜視図である。
【
図20】
図20は、
図2に示された被加工物の裏面にテープが貼着した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0016】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る加工装置を図面に基いて説明する。
図1は、実施形態1に係る加工装置の要部を示す斜視図である。
図2は、
図1に示された加工装置の加工対象の被加工物の斜視図である。
図3は、
図1に示された加工装置の保持ユニットと第2のカメラを示す斜視図である。
図4は、
図1に示された加工装置の加工領域と撮影領域を模式的に示す平面図である。
図5は、
図1に示された加工装置の表示ユニットが表示する第1の画像及び第2の画像の一例を示す図である。
図6は、
図1に示された加工装置の表示ユニットが表示する第1の画像及び第2の画像の他の例を示す図である。
図7は、
図1に示された加工装置の補正量算出部が補正量を算出する際に切削溝を形成する被加工物の斜視図である。
【0017】
実施形態1に係る加工装置1は、
図2に示す被加工物200を切削(加工に相当する)する切削装置である。
図1に示された加工装置1の加工対象の被加工物200は、シリコン、サファイヤ、ガリウムヒ素、又はSiC(炭化ケイ素)等などを基板201とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等のウェーハである。被加工物200は、基板201の表面202に複数のストリート203によって格子状に区画された領域にデバイス204が形成されている。
【0018】
デバイス204は、例えば、IC(Integrated Circuit)、又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサである。実施形態1では、被加工物200は、基板201の表面202の裏側の裏面205に金属膜206が形成されている。被加工物200は、裏面205に金属膜206が形成されているので、裏面205側から赤外線カメラで撮影しても、ストリート203を検出することができないものである。
【0019】
また、被加工物200は、デバイス204に被加工物200と加工装置1の切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメント時に検出対象となるキーパターン207が形成されている。キーパターン207は、例えば、デバイス204中の回路の特徴的な部分が利用される。実施形態1では、キーパターン207は、ストリート203と平行でかつ互いに交差した2つの直線状のマーク208,209からなる十字状に形成されている。実施形態1において、被加工物200は、外周縁に環状フレーム210が装着されたテープ211に表面202が貼着されて、環状フレーム210に支持されて、裏面205側の金属膜206を上方に向けている。
【0020】
図1に示された加工装置1は、被加工物200を保持ユニット10のチャックテーブル12で保持しストリート203に沿って切削ブレード21で切削して、個々のデバイス204に分割する切削装置である。加工装置1は、
図1に示すように、保持ユニット10と、切削ユニット20と、保持ユニット10を水平方向と平行なX軸方向に加工送りする加工送りユニット30と、水平方向と平行でかつX軸方向に対して直交するY軸方向に切削ユニット20を割り出し送りする割り出し送りユニット40と、X軸方向とY軸方向との双方と直交するZ軸方向に切削ユニット20を切り込み送りする図示しない切り込み送りユニットと、カメラ50と、制御ユニット100とを含み構成されている。
【0021】
保持ユニット10は、
図1及び
図3に示すように、加工送りユニット30によりX軸方向に移動される筐体11と、筐体11上に回転可能に設けられたチャックテーブル12と、チャックテーブル12をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転ユニット13と、を有する。
【0022】
チャックテーブル12は、被加工物200を保持面124上に保持するとともにZ軸方向と平行な軸心回りに回転可能なものである。チャックテーブル12は、円盤状に形成され、円板状に形成され上面の中央に凹部121を設けた枠体122と、枠体122の凹部121に嵌め込まれた円板状の透明部材123とを備える。
【0023】
枠体122は、ステンレス鋼等の金属により構成されかつ回転ユニット13によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転される。透明部材123は、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、サファイア、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム等の透明な物質から構成されており、上面が多数の図示しない細孔が開口した保持面124である。チャックテーブル12は、保持面124上にテープ211を介して被加工物200の表面202側が載置される。
【0024】
チャックテーブル12は、凹部121内の空間が図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源により吸引されることで、保持面124に載置された被加工物200を吸引保持する。実施形態1では、チャックテーブル12は、テープ211を介して被加工物200の表面202側を吸引保持する。なお、実施形態1では、チャックテーブル12に被加工物200が吸引保持されると、テープ211及び環状フレーム210がチャックテーブル12の外周側にはみ出る。
【0025】
回転ユニット13は、チャックテーブル12をZ軸方向と平行な軸心回りに回転するものである。回転ユニット13は、チャックテーブル12を軸心回りに180度を超え、360度未満の範囲で回転する。回転ユニット13は、加工送りユニット30によりX軸方向に加工送りされる筐体11に設置されている。回転ユニット13は、筐体11の側面に固定されたモータ131と、モータ131の出力軸に連結されたプーリ132と、チャックテーブル12の外周に巻回されかつプーリ132により軸心回りに回転されるベルト133とを備えている。回転ユニット13は、モータ131を回転すると、プーリ132及びベルト133を介してチャックテーブル12を軸心回りに回転する。また、実施形態1では、回転ユニット13は、軸心回りの一方向と、一方向の逆方向の他方向との双方において、チャックテーブル12を220度回転させることが可能である。
【0026】
切削ユニット20は、チャックテーブル12に保持された被加工物200を切削ブレード21で切削する加工ユニットである。切削ユニット20は、チャックテーブル12に保持された被加工物200に対して、割り出し送りユニット40によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、切り込み送りユニットによりZ軸方向に移動自在に設けられている。切削ユニット20は、割り出し送りユニット40及び切り込み送りユニットなどを介して、装置本体2から立設した支持フレームに設けられている。
【0027】
切削ユニット20は、割り出し送りユニット40及び切り込み送りユニットにより、チャックテーブル12の保持面124の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。切削ユニット20は、切削ブレード21と、割り出し送りユニット40及び切り込み送りユニットによりY軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられたスピンドルハウジング22と、スピンドルハウジング22に軸心回りに回転自在に設けられかつモータにより回転されるとともに先端に切削ブレード21が装着されるスピンドル23とを備える。
【0028】
切削ブレード21は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。実施形態1において、切削ブレード21は、円環状の円形基台と、円形基台の外周縁に配設されて被加工物200を切削する円環状の切り刃とを備える所謂ハブブレードである。切り刃は、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、金属や樹脂等のボンド材(結合材)とからなり所定厚みに形成されている。なお、本発明では、切削ブレード21は、切り刃のみで構成された所謂ワッシャーブレードでもよい。
【0029】
スピンドル23は、モータにより軸心回りに回転することで、切削ブレード21を軸心回りに回転させる。なお、切削ユニット20の切削ブレード21及びスピンドル23の軸心は、Y軸方向と平行である。
【0030】
加工送りユニット30は、チャックテーブル12と切削ユニット20とをX軸方向に相対的に移動させるものであり、実施形態1では、チャックテーブル12をX軸方向に移動させるものである。このように、本発明では、加工送りとは、チャックテーブル12をX軸方向に移動させることをいう。加工送りユニット30は、
図1及び
図3に示すように、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ31、ボールねじ31を軸心回りに回転させる周知のパルスモータ32、筐体11をX軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレール33とを備える。ボールねじ31とガイドレール33とは、X軸方向と平行である。
【0031】
加工送りユニット30は、チャックテーブル12が保持した被加工物200を切削ユニット20で切削する加工領域3(
図4に示す)と、加工領域3からX軸方向に所定距離4(
図4に示す)離れた位置で被加工物200をカメラ50で撮影する撮影領域5(
図4に示す)との間で、筐体11を介して保持ユニット10をガイドレール33に沿って移動させる。
【0032】
実施形態1において、加工領域3は、保持した被加工物200のX軸方向の
図4中右側の一端が切削ユニット20により切削されるチャックテーブル12(
図4中に実線で示す)と、保持した被加工物200のX軸方向の
図4中左側の他端が切削ユニット20により切削されるチャックテーブル12(
図4中に破線で示す)とを含む領域である。撮影領域5は、加工領域3から所定距離4、
図4中右側に離れた領域である。また、加工領域3は、ガイドレール33によるチャックテーブル12の直進性が、被加工物200を個々のデバイス204に分割するのに必要とされる精度を有する保証範囲であり、撮影領域5は、ガイドレール33によるチャックテーブル12の直進性が、被加工物200を個々のデバイス204に分割するのに必要とされる精度を有しない非保証範囲である。なお、ガイドレール33によるチャックテーブル12の直進性とは、ガイドレール33によるチャックテーブルの移動軌跡のX軸方向からのズレである。
【0033】
割り出し送りユニット40は、チャックテーブル12と切削ユニット20とをY軸方向に相対的に移動させるものであり、実施形態1では、割り出し送りユニット40は、切削ユニット20をY軸方向に移動する。切り込み送りユニットは、チャックテーブル12と切削ユニット20とをZ軸方向に相対的に移動させるものであり、実施形態1では、切り込み送りユニットは、切削ユニット20をZ軸方向に移動する。割り出し送りユニット40及び切り込み送りユニットは、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のパルスモータ、切削ユニット20をY軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールとを備える。
【0034】
カメラ50は、チャックテーブル12に保持された被加工物200を撮影するとともに、Y軸方向に移動可能なものである。カメラ50は、
図1に示すように、透明部材123を挟んで上下となる位置で、切削ユニット20近傍に設けられた第1のカメラ51と、第1のカメラ51より切削ユニット20から遠く離れた第2のカメラ52とを有している。
【0035】
第1のカメラ51は、チャックテーブル12に保持された被加工物200を保持面124よりも上方から撮影するものである。実施形態1では、第1のカメラ51は、切削ユニット20と一体的に移動するように、切削ユニット20のスピンドルハウジング22に固定されて、切削ユニット20の近傍に配置されている。また、第1のカメラ51は、切削ユニット20のスピンドルハウジング22に固定されていることで、割り出し送りユニット40によりY軸方向に移動可能となっている。実施形態1では、第1のカメラ51は、撮影範囲の中心が切削ブレード21とX軸方向に並ぶ位置に配置されている。
【0036】
第1のカメラ51は、保証範囲である加工領域3に位置する保持ユニット10に保持された被加工物200を上方から撮影する撮像素子を備えている。このために、第1のカメラ51は、保証範囲に設置されている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。第1のカメラ51は、チャックテーブル12に保持された被加工物200を上方から撮影し、撮影した得た第1の画像301(
図5及び
図6に示す)を制御ユニット100に出力する。
【0037】
第2のカメラ52は、チャックテーブル12に保持された被加工物200を保持面124よりも下方から保持面124越しに撮影するものである。実施形態1では、第2のカメラ52は、加工送りユニット30よりも
図1中の奥側に配置されて、第1のカメラ51より切削ユニット20から遠くに配置されている。また、第2のカメラ52は、装置本体2上に設けられたY軸移動ユニット53によりY軸方向に移動される移動プレート54上に配置されることで、Y軸移動ユニット53によりY軸方向に移動可能となっている。第2のカメラ52は、移動プレート54上に設けられたZ軸移動ユニット55によりZ軸方向に移動可能となっている。
【0038】
Y軸移動ユニット53及びZ軸移動ユニット55は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のパルスモータ、移動プレート54又は第2のカメラ52をY軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールとを備える。
【0039】
第2のカメラ52は、非保証範囲である撮影領域5に位置する保持ユニット10に保持された被加工物200を下方から透明部材123越しに撮影する撮像素子を備えている。このため、第2のカメラ52は、非保証範囲に設置されている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。第2のカメラ52は、チャックテーブル12に保持された被加工物200を下方から透明部材123越しに撮影し、撮影した得た第2の画像302(
図5及び
図6に示す)を制御ユニット100に出力する。なお、実施形態1では、第2の画像302は、アライメントを遂行するためにも用いられる。
【0040】
制御ユニット100は、加工装置1の上述した各構成要素をそれぞれ制御して、被加工物200に対する加工動作を加工装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理装置が演算処理を実施して、加工装置1を制御するための制御信号を入出力インターフェース装置を介して加工装置1の上述した構成要素に出力する。
【0041】
また、加工装置1は、制御ユニット100に接続されかつ加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニット110と、制御ユニット100に接続されかつオペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニットとに接続されている。実施形態1において、入力ユニットは、表示ユニット110に設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0042】
表示ユニット110は、第1のカメラ51で撮影した第1の画像301と、第2のカメラ52で撮影した第2の画像302とを表示画面に表示する。表示ユニット110は、制御ユニット100が入力ユニットを介してオペレータからの操作を受け付け、制御ユニット100からのオペレータからの操作通りの制御信号に基づいて、第1の画像301と第2の画像302とを
図5に示すようにX軸方向に並んで表示したり、第1の画像301と第2の画像302とを
図6に示すように重ねて表示する。
【0043】
なお、表示ユニット110は、第1の画像301と第2の画像302とを表示する際には、第1の画像301と第2の画像302の一方をX軸方向に反転した状態で表示する。なお、第1の画像301と第2の画像302の一方をX軸方向に反転した状態とは、第1の画像301と第2の画像302との双方が、チャックテーブル12に保持された被加工物200を上方から撮影した画像となること、又はチャックテーブル12に保持された被加工物200を下方から撮影した画像となることをいう。実施形態1では、表示ユニット110は、第1の画像301と第2の画像302との双方をチャックテーブル12に保持された被加工物200を上方から撮影した画像となるように表示画面に表示する。また、実施形態1では、表示ユニット110は、画像301,302をX軸方向に並んで表示することと、画像301,302を重ねて表示することとの双方が可能であるが、本発明では、少なくとも一方が可能であれば良い。
【0044】
また、加工装置1は、チャックテーブル12のX軸方向の位置を検出するためX軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のY軸方向の位置を検出するためのY軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出するためのZ軸方向位置検出ユニットと、チャックテーブル12の軸心回りの回転角度を検出するための角度検出ユニットとを備える。X軸方向位置検出ユニット及びY軸方向位置検出ユニットは、X軸方向、又はY軸方向と平行なリニアスケールと、加工送りユニット又は割り出し送りユニット140によりX軸方向又はY軸方向に移動自在に設けられかつリニアスケールの目盛を読み取る読み取りヘッドとにより構成することができる。Z軸方向位置検出ユニットは、ボールねじを軸心回りに回転させるパルスモータのパルス数で切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出する構成とすることができる。また、加工装置1は、第2のカメラ52のY軸方向の位置を検出するための第2Y軸方向位置検出ユニットを備える。各検出ユニットは、検出結果を制御ユニット100に出力する。
【0045】
また、制御ユニット100は、
図7に示す被加工物200(以下、符号200-1で示す)を吸引保持したチャックテーブル12を加工領域3から撮影領域5に向かってX軸方向に移動しつつ切削ユニット20で被加工物200に直線状の加工痕である切削溝4000(
図4、
図8及び
図9に示す)を作成する補正量算出部101と、第1の画像301と第2の画像302から切削溝400を検出し、切削溝400の中心401のX座標及びY座標を算出する座標算出部102と、座標算出部102が算出した画像301,302の切削溝400の中心401のX座標及びY座標を記憶する座標記憶部103と、画像制御部104と、撮影範囲制御部105を備える。
【0046】
実施形態1では、
図7に示された被加工物200-1は、表面202にデバイス204及び裏面205に金属膜206が形成されていない、基板201のみで構成された所謂ダミーウエーハである。被加工物200-1の加工装置1の加工対象の被加工物200と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。被加工物200-1は、加工装置1の加工対象の被加工物200と同様に、
図7に示すように、外周縁に環状フレーム210が装着されたテープ211に表面202が貼着されて、環状フレーム210に支持されて、チャックテーブル12に吸引保持される。また、切削溝400は、被加工物200の基板201を裏面205から表面202に亘って貫通しているとともに、加工領域3が保証範囲であるので、X軸方向に沿って直線状に形成されている。
【0047】
座標算出部102は、カメラ51,52が撮影して取得した画像301,302から切削溝400を抽出する。座標算出部102は、X軸方向位置検出ユニットと、Y軸方向位置検出ユニットとの検出結果から第1の画像301の切削溝400の中心401のX軸方向のX座標とY軸方向のY座標とを算出する。また、座標算出部102は、X軸方向位置検出ユニットと、第2Y軸方向位置検出ユニットとの検出結果から第2の画像302の切削溝400の中心401のX軸方向のX座標とY軸方向のY座標とを算出する。なお、実施形態1では、座標算出部102は、X座標を保持面124上の予め定められた基準位置からのX軸方向の距離を示し、Y座標を保持面124上の予め定められた基準位置からのY軸方向の距離を示す。
【0048】
なお、第2の画像302から抽出された
図13中に実線で示す切削溝400は、撮影領域5が非保証範囲であるので、平面視において、第1の画像301から抽出された
図13に破線で示す切削溝400に対して傾いている。このため、第1のカメラ51で撮影した第1の画像301における各位置と、第2のカメラ52で撮影した第2の画像302における各位置とは、X軸方向及びY軸方向にずれている。
【0049】
補正量算出部101と、座標算出部102と、座標記憶部103と、画像制御部104は、第1のカメラ51で撮影した第1の画像301における各位置と、第2のカメラ52で撮影した第2の画像302における各位置との補正量を算出する補正量の算出動作を実施して、第1のカメラ51と第2のカメラ52とがチャックテーブル12に保持された被加工物200の同一の位置を撮影可能とするためのものである。なお、この補正量の算出動作は、加工装置1の工場出荷時、工場出荷から定期的(例えば、1年ごと)等に実施される。
【0050】
次に、制御ユニット100の各構成要素を説明しながら補正量の算出動作を説明する。
図8は、
図1に示された加工装置の補正量算出部が
図7に示された被加工物に切削溝を作成する状態を模式的に示す平面図である。
図9は、
図1に示された加工装置の補正量算出部が
図7に示された被加工物に切削溝を作成した状態を模式的に示す平面図である。
図10は、
図1に示された加工装置の第1のカメラが切削溝の一端部を撮影して得た第1の画像を示す図である。
図11は、
図1に示された加工装置の第1のカメラが切削溝の他端部を撮影して得た第1の画像を示す図である。
図12は、
図1に示された加工装置の補正量算出部が切削溝を形成した被加工物を撮影領域まで移動する状態を模式的に示す平面図である。
図13は、
図12に示された撮影領域の被加工物を下方からみた平面図である。
図14は、
図1に示された加工装置の第2のカメラが切削溝の一端部を撮影して得た第2の画像を示す図である。
図15は、
図1に示された加工装置の第2のカメラが切削溝の他端部を撮影して得た第2の画像を示す図である。
図16は、
図1に示された加工装置の表示ユニットが第1の画像と第2の画像とを並べて表示する状態を示す図である。
図17は、
図1に示された加工装置の表示ユニットが第1の画像と第2の画像とを重ねて表示する状態を示す図である。
【0051】
補正量の算出動作では、オペレータが、被加工物200をテープ211を介して保持ユニット10のチャックテーブル12の保持面124に載置する。その後、加工装置1は、オペレータからの開始指示を制御ユニット100が受け付けると、補正量の算出動作を開始する。
【0052】
補正量の算出動作では、制御ユニット100は、切削ユニット20の切削ブレード21を回転し、保持ユニット10のチャックテーブル12の保持面124にテープ211を介して被加工物200を吸引保持する。補正量算出部101が、
図8に実線で示すチャックテーブル12を破線で示す位置を介して加工領域3から撮影領域5に向けてX軸方向に沿って移動させつつ切削ブレード21をテープ211に到達するまで切り込ませる。補正量算出部101が、被加工物200-1に
図8及び
図9に示す切削溝400を作成し、作成後の切削溝400の両端部402,403の予め定められた位置を第1のカメラ51に撮像させる。
【0053】
補正量算出部101は、
図9に示す切削溝400の作成後、第1のカメラ51が切削溝400の一端部402を撮像して得た
図10に示す第1の画像301(以下、符号301-2で示す)と、第1のカメラ51が切削溝400の他端部403を撮影して得た
図11に示す第1の画像301(以下、符号301-3で示す)とを取得する。
【0054】
座標算出部102が第1の画像301-2の切削溝400の中心401のX座標(X1)及びY座標(Y1)を算出して、座標記憶部103が、第1の画像301-2の切削溝400の中心401の座標(X1、Y1)を記憶する。座標算出部102が第1の画像301-3の切削溝400の中心401のX座標(X2)及びY座標(Y1)を算出して、座標記憶部103が、第1の画像301-3の切削溝400の中心401の座標(X2、Y1)を記憶する。こうして、座標算出部102は、加工領域3おける切削溝400の一端部402の中心401の座標(X1、Y1)と、加工領域3における切削溝400の他端部403の中心401の座標(X2、Y1)とを算出し、座標記憶部103が記憶する。
【0055】
すると、チャックテーブル12が
図8に破線で示すように撮影領域5に差し掛かることとなる。補正量算出部101は、チャックテーブル12が
図12中に破線で示すように撮影領域5に差し掛かった後、チャックテーブル12を更に撮影領域5に向けて移動させて切削溝400の両端部402,403(
図13に示す)の予め定められた位置(第1のカメラ51の撮影位置と同じ位置)を第2のカメラ52に撮影させる。補正量算出部101は、第2のカメラ52が切削溝400の一端部402を撮像して得た
図14に示す第2の画像302(以下、符号302-2で示す)と、第2のカメラ52が切削溝400の他端部403を撮影して得た
図15に示す第2の画像302(以下、符号302-3で示す)とを取得する。
【0056】
座標算出部102が第2の画像302-2の切削溝400の中心401のX座標(X1)及びY座標(Y2)を算出して、座標記憶部103が、第2の画像302-2の切削溝400の中心401の座標(X1、Y2)を記憶する。座標算出部102が第2の画像302-3の切削溝400の中心401のX座標(X2)及びY座標(Y3)を算出して、座標記憶部103が、第2の画像302-3の切削溝400の中心401の座標(X2、Y3)を記憶する。こうして、座標算出部102は、撮影領域5おける切削溝400の一端部402の中心401の座標(X1、Y2)と、切削溝400の他端部403の中心401の座標(X2、Y3)とを算出し、座標記憶部103が記憶する。
【0057】
補正量算出部101が、前述した座標(X1、Y1)、(X2、Y1)、(X1、Y2)、(X2、Y3)とから第2の画像302から抽出された
図13中に実線で示す切削溝400と
図13に破線で示す第1の画像301から抽出された切削溝400とのなす角度θを算出する。具体的には、角度θを以下の式1により算出する。
【0058】
θ=Tan-1((Y3-Y2)/(X2-X1))・・・式1
【0059】
補正量算出部101は、式1により算出した角度θを補正値であるチャックテーブル12の補正角度として、座標記憶部103に記憶する。
【0060】
また、補正量算出部101は、前述した座標(X1、Y1)、(X2、Y1)、(X1、Y2)、(X2、Y3)とから加工領域3と撮影領域5との保持面124上の同一位置の各X座標に対するY座標の差を算出する。具体的には、座標(X1)の位置では、Y座標の差を(Y2-Y1)と算出し、座標(X2)の位置では、Y座標の差を(Y3-Y1)と算出し、座標(X1)と座標(X2)との間の各位置のY座標の差を、前述したY座標の差(Y2-Y1)と、Y座標の差(Y3-Y1)と、上記角度θとを用いて算出する。
【0061】
補正量算出部101は、前述したY座標の差(Y2-Y1)と、Y座標の差(Y3-Y1)と、座標(X1)と座標(X2)との間の各位置のY座標の差とを撮影領域5におけるY軸方向の補正値として、座標記憶部103に記憶する。こうして、補正量算出部101は、撮影領域5におけるY軸方向の補正値をX軸方向に所定値mm加工送りして、Y軸方向に第2所定値mmずれるという形で算出し、座標記憶部103に記憶する。
【0062】
こうして、補正量算出部101は、1本の切削溝400のX軸方向に離れた2点である両端部402,403の切削溝400の中心401のY座標(Y1)、(Y2)、(Y3)等から撮影領域5におけるY軸方向の補正値及びチャックテーブル12の補正角度を算出して、座標記憶部103に記憶する。なお、実施形態1では、補正量算出部101は、Y軸方向の補正値とチャックテーブル12の補正角度との双方を算出して、座標記憶部103に記憶したが、本発明では、少なくとも一方を算出して、記憶すれば良い。
【0063】
また、座標記憶部103は、第1のカメラ51で撮影した領域である切削溝400の両端部402,403の下方に第2のカメラ52を位置付けて撮影して、補正量算出部101が算出した座標(X1)におけるY座標の差(Y2-Y1)と、座標(X2)におけるY座標の差(Y3-Y1)と、座標(X1)と座標(X2)との間の各位置のY座標の差を記憶することにより、第1のカメラ51の撮影範囲と第2のカメラ52の撮影範囲の位置ずれをX座標及びY座標で記憶する。このように、座標(X1)におけるY座標の差(Y2-Y1)と、座標(X2)におけるY座標の差(Y3-Y1)と、座標(X1)と座標(X2)との間の各位置のY座標の差は、第1のカメラ51の撮影範囲と第2のカメラ52の撮影範囲の位置ずれをX座標及びY座標で示すものである。
【0064】
また、補正量の算出動作において、画像制御部104は、入力ユニットを介してオペレータからの操作を受け付け、オペレータからの操作通りの制御信号を表示ユニット110に出力して、表示ユニット110に第1の画像301と第2の画像302とを
図16に示すようにX軸方向に並んで表示したり、第1の画像301と第2の画像302とを
図17に示すように重ねて表示する。なお、
図16及び
図17は、表示ユニット110が他端部403の画像301-3,302-3を表示する例を示している。補正量の制御動作は、座標記憶部103が、Y軸方向の補正値とチャックテーブル12の補正角度を記憶すると終了する。
【0065】
撮影範囲制御部105は、加工装置1の加工動作において、第2のカメラ52がチャックテーブル12に保持された被加工物200を撮影してアライメントを遂行するために、撮影領域5でチャックテーブル12をX軸方向に移動する際に、座標記憶部103に記憶したY軸方向の補正値に基づいて、被加工物200の第2のカメラ52が第1のカメラ51と同一位置を撮影できるように、Y軸移動ユニット53を制御して第2のカメラ52のY軸方向の位置を補正する。または、撮影範囲制御部105は、アライメントを遂行するために、撮影領域5でチャックテーブル12をX軸方向に移動する際に、座標記憶部103に記憶したチャックテーブル12の補正角度に基づいて、被加工物200の第2のカメラ52が第1のカメラ51と同一位置を撮影できるように、回転ユニット13を制御してチャックテーブル12を補正角度に応じて軸心回りに回転する。
【0066】
具体的には、撮影範囲制御部105は、アライメントを遂行するために、撮影領域5でチャックテーブル12をX軸方向に移動する際に、座標記憶部103に記憶したY軸方向の補正値が被加工物200の同一位置が加工領域3よりも撮影領域5の方が
図12の上側に位置することを示す値であると、記憶したY軸方向の補正値分、Y軸移動ユニット53を制御して、第2のカメラ52を
図12の下側に移動させる。勿論、撮影範囲制御部105は、アライメント時に座標記憶部103に記憶したY軸方向の補正値が被加工物200の同一位置が加工領域3よりも撮影領域5の方が
図12の下側に位置することを示す値であると、記憶したY軸方向の補正値分、第2のカメラ52を
図12の上側に移動させる。
【0067】
また、撮影範囲制御部105は、アライメントを遂行するために、撮影領域5でチャックテーブル12をX軸方向に移動する際に、座標記憶部103に記憶したチャックテーブル12の補正角度が被加工物200の同一位置が加工領域3よりも撮影領域5の方が
図12の矢印501側に位置することを示す値であると、記憶した補正角度分、回転ユニット13を制御して、チャックテーブル12を
図12の矢印502側に回転する。勿論、撮影範囲制御部105は、アライメント時に座標記憶部103に記憶したチャックテーブル12の補正角度が被加工物200の同一位置が加工領域3よりも撮影領域5の方が
図12の矢印502側に位置することを示す値であると、記憶した補正角度分、チャックテーブル12を
図12の矢印501側に回転させる。
【0068】
また、撮影範囲制御部105は、加工装置1の加工動作において、第1のカメラ51で切削溝400を上方から撮影し、第2のカメラ52で切削溝400を下方から撮影して、被加工物200に形成した切削溝400の所望の位置からのズレ及び切削溝400の両縁に生じるチッピングの大きさ等が所定の範囲内であるか否かを判定するカーフチェックを遂行する際にも、第2のカメラ52のY軸方向の位置を補正する。なお、カーフチェックは、所定本数の切削溝400を形成した毎、所定枚数の被加工物200を切削した毎などの所定のタイミングで実施される。
【0069】
撮影範囲制御部105は、カーフチェックを遂行する際には、第1のカメラ51の撮影範囲と第2のカメラ52の撮影範囲の位置ずれとして座標記憶部103が記憶した座標(X1)におけるY座標の差(Y2-Y1)と、座標(X2)におけるY座標の差(Y3-Y1)と、座標(X1)と座標(X2)との間の各位置のY座標の差とを用いて、被加工物200の第2のカメラ52が第1のカメラ51と同一位置を撮影できるように、Y軸移動ユニット53を制御して第2のカメラ52のY軸方向の位置を補正する。
【0070】
具体的には、撮影範囲制御部105は、カーフチェックを遂行するために、第1のカメラ51で被加工物200を撮影した後、座標記憶部103に記憶したY軸方向の補正値が被加工物200の同一位置が加工領域3よりも撮影領域5の方が
図12の上側に位置することを示す値であると、記憶したY軸方向の補正値分、Y軸移動ユニット53を制御して、第2のカメラ52を
図12の下側に移動させてから第2のカメラ52で被加工物200を撮影する。勿論、撮影範囲制御部105は、カーフチェック時に、第1のカメラ51で被加工物200を撮影した後、座標記憶部103に記憶したY軸方向の補正値が被加工物200の同一位置が加工領域3よりも撮影領域5の方が
図12の下側に位置することを示す値であると、記憶したY軸方向の補正値分、第2のカメラ52を
図12の上側に移動させてから第2のカメラ52で被加工物200を撮影する。
【0071】
なお、補正量算出部101、座標算出部102、画像制御部104及び撮影範囲制御部105の各機能は、制御ユニット100の記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムを演算処理装置が実行することで実現される。座標記憶部103の機能は、制御ユニット100の記憶装置により実現される。
【0072】
次に、加工装置1の加工動作を説明する。まず、加工動作では、オペレータが、加工内容情報を制御ユニット100に登録し、切削加工前の被加工物200をテープ211を介して保持ユニット10のチャックテーブル12の保持面124に載置する。その後、加工装置1は、オペレータからの加工動作の開始指示を制御ユニット100が受け付けると加工動作を開始する。
【0073】
加工動作では、加工装置1は、制御ユニット100が各構成要素を制御して、チャックテーブル12の保持面124にテープ211を介して被加工物200を吸引保持した後、切削ユニット20の切削ブレード21を回転し、チャックテーブル12を撮影領域5まで移動させて、撮影領域5でチャックテーブル12を停止する。加工装置1は、撮影範囲制御部105が座標記憶部103に記憶したY軸方向の補正値及びチャックテーブル12の補正角度に基づいて第2のカメラ52のY軸方向の位置及びチャックテーブル12の軸心回りの向きを調整する。
【0074】
加工動作では、加工装置1は、制御ユニット100が各構成要素を制御して、第2のカメラ52でチャックテーブル12上の被加工物200を下方から撮影して、被加工物200と切削ブレード21との位置合わせを行うアライメントを遂行する。加工動作では、チャックテーブル12と切削ユニット20の切削ブレード21とをストリート203に沿って相対的に移動させながらストリート203に切削ブレード21をテープ211に到達するまで切り込ませる。加工装置1は、切削ユニット20がチャックテーブル12で保持された被加工物200をストリート203に沿って切削し、被加工物200のストリート203に切削溝を形成する。
【0075】
また、加工動作では、加工装置1は、所定のタイミングでカーフチェックを遂行する。加工動作では、加工装置1は、被加工物200の全てのストリート203を切削すると加工動作を終了する。
【0076】
以上説明した実施形態1に係る加工装置1は、第1のカメラ51で切削溝400の両端部402,403を撮影した第1の画像301-2,301-3から算出した切削溝400の中心401の座標(X1、Y1)及び(X2、Y1)と、第2のカメラ52で切削溝400の両端部402,403を撮影した第2の画像302-2,302-3から算出した切削溝400の中心401の座標(X1、Y2)及び(X2、Y3)とから撮影領域5におけるY軸方向の補正値とチャックテーブル12の補正角度を算出する補正量算出部101を備えている。
【0077】
また、加工装置1は、アライメントを遂行する際に補正量算出部101が算出したY軸方向の補正値とチャックテーブル12の補正角度とに基づいて、第1のカメラ51と第2のカメラ52とが被加工物200の同一位置を撮影するように、第2のカメラ52をY軸方向に移動させチャックテーブル12を軸心回りに回転する撮影範囲制御部105とを備えている。
【0078】
このために、加工装置1は、チャックテーブル12に保持された被加工物200を非保証範囲に設置された第2のカメラ52で撮影してアライメントを遂行する際に、第1のカメラ51と第2のカメラ52とがチャックテーブル12に保持された被加工物200の同一位置を撮影するように、第2のカメラ52を位置付けることとなる。したがって、加工装置1は、正確にアライメントを遂行することができ、加工動作において誤った位置を加工することを抑制することができる。
【0079】
また、加工装置1は、チャックテーブル12に保持された被加工物200を非保証範囲に設置された第2のカメラ52で撮影しても、正確にアライメントを遂行できるので、正確にアライメントを遂行させるために、ガイドレール33のコストを高騰させたり、ガイドレール33が長くなることを抑制できる。
【0080】
その結果、加工装置1は、コストの上昇を抑制しながらも加工精度の低下を抑制することができるという効果を奏する。
【0081】
また、加工装置1は、カーフチェックを遂行する際に、座標記憶部103が記憶した第1のカメラ51の撮影範囲と第2のカメラ52の撮影範囲の位置ずれのX座標及びY座標、即ち座標(X1)におけるY座標の差(Y2-Y1)と、座標(X2)におけるY座標の差(Y3-Y1)と、座標(X1)と座標(X2)との間の各位置のY座標の差とを用いて、被加工物200の第2のカメラ52が第1のカメラ51と同一位置を撮影できるように、Y軸移動ユニット53を制御して第2のカメラ52のY軸方向の位置を補正する。
【0082】
このために、加工装置1は、カーフチェックを遂行する際に、保証範囲に設置された第1のカメラ51と非保証範囲に設置された第2のカメラ52とで被加工物200の同一位置を撮影することができる。したがって、加工装置1は、被加工物200の上方と下方との双方から正確にカーフチェックを遂行することができ、加工動作において加工結果を誤って判定することを抑制することができる。
【0083】
その結果、加工装置1は、アライメントを遂行する際に加え、コストの上昇を抑制しながらも正確にカーフチェックを遂行することができるという効果を奏する。
【0084】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る加工装置を図面に基いて説明する。
図18は、実施形態2に係る加工装置の要部の構成を示す斜視図である。
図19は、
図18に示された加工装置の保持ユニットと第2のカメラを示す斜視図である。なお、
図18及び
図19は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0085】
実施形態2に係る加工装置1-2は、チャックテーブル12の保持面124に直線状のマーク61を形成し、補正量の算出動作では、補正量算出部101が第1のカメラ51と第2のカメラ52とがマーク61を撮影して、Y軸方向の補正値、第1のカメラ51の撮影範囲と第2のカメラ52の撮影範囲の位置ずれ及びチャックテーブル12の補正角度を算出し、座標記憶部103が補正量算出部101が算出した第1のカメラ51と第2のカメラ52との位置ずれを記憶すること以外、実施形態1と同じである。
【0086】
実施形態2では、
図18及び
図19に示すように、チャックテーブル12の保持面124に直線状のマーク61に加え、マーク61の直交しかつマーク61に重なる第2のマーク62を形成して、マーク61,62からなる目印63を形成している。
【0087】
実施形態2では、補正量の算出動作では、制御ユニット100は、切削ユニット20の切削ブレード21を回転することなく、保持ユニット10のチャックテーブル12の保持面124にテープ211を介して被加工物200を吸引保持し、チャックテーブル12を加工領域3に位置付けて、マーク61と第1のカメラ51とをZ軸方向に対面させる。補正量の算出動作では、補正量算出部101が、第1のカメラ51でチャックテーブル12の直線状のマーク61を撮影し、チャックテーブル12を回転してマーク61の長手方向の向きをX軸方向と平行に調整する。
【0088】
補正量の算出動作では、補正量算出部101は、チャックテーブル12を加工領域3から撮影領域5に向けてX軸方向に沿って移動させつつマーク61の両端部の予め定められた位置を第1のカメラ51に撮像させて、第1のカメラ51がマーク61の一端部を撮像して得た第1の画像301(以下、符号301-4で示す)と、第1のカメラ51がマーク61の他端部を撮影して得た第1の画像301(以下、符号301-5で示す)とを取得する。
【0089】
座標算出部102が第1の画像301-4からマーク61を抽出し、マーク61の中心のX座標(X1)及びY座標(Y1)を算出して、座標記憶部103が、第1の画像301-4のマーク61の中心の座標(X1、Y1)を記憶する。座標算出部102が第1の画像301-5からマーク61を抽出して、マーク61の中心のX座標(X2)及びY座標(Y1)を算出して、座標記憶部103が、第1の画像301-5のマーク61の中心の座標(X2、Y1)を記憶する。こうして、座標算出部102は、加工領域3おけるマーク61の一端部の中心の座標(X1、Y1)と、マーク61の他端部の中心の座標(X2、Y1)とを算出し、座標記憶部103が記憶する。
【0090】
補正量算出部101は、チャックテーブル12が撮影領域5に差し掛かった後、チャックテーブル12を更に撮影領域5に向けて移動させてマーク61の両端部の予め定められた位置(第1のカメラ51の撮影位置と同じ位置)を第2のカメラ52に撮影させる。補正量算出部101は、第2のカメラ52がマーク61の一端部を撮像して得た第2の画像302(以下、符号302-4で示す)と、第2のカメラ52がマーク61の他端部を撮影して得た第2の画像302(以下、符号302-5で示す)とを取得する。
【0091】
座標算出部102が第2の画像302-4からマーク61を抽出し、マーク61の中心のX座標(X1)及びY座標(Y2)を算出して、座標記憶部103が、第2の画像302-4のマーク61の中心の座標(X1、Y2)を記憶する。座標算出部102が第2の画像302-5からマーク61を抽出し、マーク61の中心のX座標(X2)及びY座標(Y3)を算出して、座標記憶部103が、第2の画像302-5のマーク61の中心の座標(X2、Y3)を記憶する。こうして、座標算出部102は、撮影領域5おけるマーク61の一端部の中心の座標(X1、Y2)と、マーク61の他端部の中心の座標(X2、Y3)とを算出し、座標記憶部103が記憶する。
【0092】
補正量算出部101が、前述した座標(X1、Y1)、(X2、Y1)、(X1、Y2)、(X2、Y3)とから第2の画像302から抽出されたマーク61と第1の画像301から抽出されたマーク61とのなす角度θを実施形態1と同様に式1により算出し、算出した角度θを補正値であるチャックテーブル12の補正角度として、座標記憶部103に記憶する。
【0093】
また、補正量算出部101は、前述した座標(X1、Y1)、(X2、Y1)、(X1、Y2)、(X2、Y3)とから加工領域3と撮影領域5との保持面124上の同一位置の各X座標に対するY座標の差を実施形態1と同様に算出する。
【0094】
補正量算出部101は、実施形態1と同様に算出したY座標の差(Y2-Y1)と、Y座標の差(Y3-Y1)と、座標(X1)と座標(X2)との間の各位置のY座標の差とを撮影領域5におけるY軸方向の補正値として、座標記憶部103に記憶する。
【0095】
こうして、補正量算出部101は、1本のマーク61のX軸方向に離れた2点である両端部のマーク61の中心のY座標(Y1)、(Y2)、(Y3)等から撮影領域5におけるY軸方向の補正値及びチャックテーブル12の補正角度を算出して、座標記憶部103に記憶する。なお、実施形態2では、補正量算出部101は、Y軸方向の補正値とチャックテーブル12の補正角度との双方を算出して、座標記憶部103に記憶したが、本発明では、実施形態1と同様に、少なくとも一方を算出して、記憶すれば良い。
【0096】
また、座標記憶部103は、第1のカメラ51で撮影した領域であるマーク61の両端部の下方に第2のカメラ52を位置付けて撮影して、補正量算出部101が算出した座標(X1)におけるY座標の差(Y2-Y1)と、座標(X2)におけるY座標の差(Y3-Y1)と、座標(X1)と座標(X2)との間の各位置のY座標の差を記憶することにより、第1のカメラ51の撮影範囲と第2のカメラ52の撮影範囲の位置ずれをX座標及びY座標で記憶する。
【0097】
実施形態2に係る加工装置1-2は、補正量算出部101が撮影領域5におけるY軸方向の補正値及びチャックテーブル12の補正角度、第1のカメラ51の撮影範囲と第2のカメラ52の撮影範囲の位置ずれを算出し、座標記憶部103が記憶した後は、実施形態1と同様に、動作する。
【0098】
以上説明した実施形態2に係る加工装置1-2は、補正量算出部101が撮影領域5におけるY軸方向の補正値及びチャックテーブル12の補正角度、第1のカメラ51の撮影範囲と第2のカメラ52の撮影範囲の位置ずれを算出し、座標記憶部103が記憶し、実施形態1と同様に動作するので、実施形態1と同様に、コストの上昇を抑制しながらも加工精度の低下を抑制することができるという効果を奏する。
【0099】
また、本発明は、実施形態2において、
図20に示すように、被加工物200が裏面205側にテープ211が貼着されてデバイス204を上方に向いている場合には、加工装置1は、チャックテーブル12の保持面124にテープ211を介して被加工物200を吸引保持しても良い。この場合、加工装置1は、例えば、キーパターン207の一方のマーク208の両端部を第1のカメラ51と第2のカメラ52とで撮影して、補正量算出部101が撮影領域5におけるY軸方向の補正値及びチャックテーブル12の補正角度、第1のカメラ51の撮影範囲と第2のカメラ52の撮影範囲の位置ずれを算出し、座標記憶部103が記憶し、実施形態1と同様に動作しても良い。
【0100】
なお、
図20は、
図2に示された被加工物の裏面にテープが貼着した状態を示す斜視図である。なお、
図20は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0101】
また、本発明は、切削溝400、マーク61,208を第1のカメラ51と第2のカメラ52とで撮影して撮影領域5におけるY軸方向の補正値及びチャックテーブル12の補正角度、第1のカメラ51の撮影範囲と第2のカメラ52の撮影範囲の位置ずれを算出した後、チャックテーブル12を90度軸心回りに回転して確認しても良い。具体的には、補正量算出部101が、切削溝400、マーク61,208を第1のカメラ51と第2のカメラ52とで撮影して撮影領域5におけるY軸方向の補正値及びチャックテーブル12の補正角度、第1のカメラ51の撮影範囲と第2のカメラ52の撮影範囲の位置ずれを算出した後、チャックテーブル12を90度軸心回りに回転して、切削溝400、マーク61,208がY軸方向に沿っているかを確認する。また、実施形態2の場合には、マーク62,209がX軸方向に沿っていることを確認するのが望ましい。
【0102】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。なお。実施形態では、加工装置1,1-2は、被加工物200,200-1を切削する切削装置であったが、本発明では、切削装置に限定されずに、例えば、被加工物200,200-1に対して吸収性又は透過性を有する波長のレーザービームを照射するレーザー加工装置でもよい。加工装置1,1-2がレーザー加工装置である場合、レーザー加工装置のレーザービームを照射するレーザービーム照射ユニットが特許請求の範囲の加工ユニットに相当し、被加工物200,200-1に形成されたレーザー加工溝又は改質層が特許請求の範囲の加工痕に相当する。また、本発明では、第1のカメラ51及び第2のカメラ52は、赤外線カメラでも良い。
【符号の説明】
【0103】
1,1-2 加工装置
3 加工領域
4 所定距離
5 撮影領域
10 保持ユニット
12 チャックテーブル
20 切削ユニット(加工ユニット)
30 加工送りユニット
33 ガイドレール
40 割り出し送りユニット
50 カメラ
51 第1のカメラ
52 第2のカメラ
61 マーク
100 制御ユニット
101 補正量算出部
103 座標記憶部
110 表示ユニット
123 透明部材
124 保持面
200,200-1 被加工物
208 マーク
301,301-2,301-3,301-4,301-5 第1の画像
302,302-2,302-3,302-4,302-5 第2の画像
400 切削溝(加工痕)
402,403 両端部(2点)
X 加工送り方向
Y 割り出し送り方向