(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20231110BHJP
【FI】
H01L21/302 105Z
(21)【出願番号】P 2020026863
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 誠一
(72)【発明者】
【氏名】成重 和樹
(72)【発明者】
【氏名】林欣禾
(72)【発明者】
【氏名】徐建峰
(72)【発明者】
【氏名】黄▲藝▼豪
(72)【発明者】
【氏名】梁振康
(72)【発明者】
【氏名】呂育駿
(72)【発明者】
【氏名】葉秋華
(72)【発明者】
【氏名】趙斌
(72)【発明者】
【氏名】蔡財進
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 雄仁
(72)【発明者】
【氏名】河村 浩司
(72)【発明者】
【氏名】小松 賢次
(72)【発明者】
【氏名】金 麗
(72)【発明者】
【氏名】陳▲偉▼▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】劉達立
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-192668(JP,A)
【文献】特開2016-66593(JP,A)
【文献】特開2014-39060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバにおける基板処理方法であって、
前記チャンバは、基板を載置する載置台と、前記載置台に対向する上部電極と、前記チャンバ内に処理ガスを供給するためのガス供給口とを備え、
a)前記載置台に基板を提供する工程と、
b)前記チャンバ内に第1の処理ガスを供給する工程と、
c)前記上部電極に負の直流電圧を連続的に供給しながら、RF信号を連続的に供給することにより、前記第1の処理ガスからプラズマを生成する工程と、
d)前記上部電極に負の直流電圧を連続的に供給しながら、パルス状のRF信号を供給することにより、前記第1の処理ガスからプラズマを生成する工程と
を含み、
前記c)と前記d)とは交互に繰り返し実行され、
前記c)の1回あたりの期間は30秒以下である、基板処理方法。
【請求項2】
前記d)の1回あたりの期間は60秒以下である、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記d)において、
前記パルス状のRF信号の1周期に対する前記RF信号が供給される期間の比は、90%以上である、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記d)において、
前記パルス状のRF信号の1周期の期間は、50ミリ秒以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記d)において、
前記パルス状のRF信号の周波数は20Hz以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記d)において、
前記パルス状のRF信号のデューティ比は90%以上である、請求項1から5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記d)において、
前記RF信号の供給が遮断されている期間に前記上部電極に供給される負の直流電圧の絶対値は、前記RF信号が供給されている期間に前記上部電極に供給される負の直流電圧の絶対値より大きい、請求項1から
6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記基板は、導電膜と、前記導電膜上に設けられた絶縁膜と、前記絶縁膜上に設けられ、予め定められたパターンが形成されたマスク膜とを有する、請求項1から
7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記絶縁膜は、酸化膜であり、
前記導電膜は、シリコンまたはタングステンの膜である、請求項
8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記第1の処理ガスには、
炭素およびフッ素を含有するガス、酸素含有ガス、および希ガスが含まれる、請求項1から
9のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記炭素およびフッ素を含有するガスは、C
4F
8ガスまたはC
4F
6ガスであり、
前記酸素含有ガスは、O
2ガスまたはCOガスであり、
前記希ガスは、Arガスである、請求項
10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
e)前記c)および前記d)の繰り返しの後に実行される、前記チャンバ内に窒素含有ガスおよび希ガスを含む第2の処理ガスを供給する工程と、
f)前記チャンバ内に前記RF信号を供給することにより前記第2の処理ガスからプラズマを生成し、前記c)および前記d)によって前記基板に形成されたホール内に残存するポリマーを除去する工程と
をさらに含む、請求項
10または
11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記窒素含有ガスは、N
2ガスであり、
前記希ガスは、Arガスである、請求項
12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記c)および前記d)において、
前記パルス状のRF信号の電圧のピークツーピークの大きさが予め定められた範囲内となるように制御される、請求項1から
13のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項15】
a)チャンバに配置された基板載置台に基板を提供する工程と、
b)前記チャンバ内に第1の処理ガスを供給する工程と、
c)前記基板載置台に対向するように設けられた上部電極に負の直流電圧を連続的に供給しながら、RF信号を前記チャンバに連続的に供給することにより、前記チャンバ内で前記第1の処理ガスからプラズマを生成する工程と、
d)前記上部電極に負の直流電圧を連続的に供給しながら、パルス状のRF信号を供給することにより、前記第1の処理ガスからプラズマを生成する工程と、
を含み、
前記c)と前記d)とは交互に繰り返し実行され、
前記c)の処理期間が前記d)の処理期間よりも短い、基板処理方法。
【請求項16】
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられた上部電極と、
前記上部電極に対向し、基板を載置する載置台と、
RF信号を供給するRF信号供給部と、
前記上部電極に負の直流電圧を供給する電圧供給部と、
制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
a)前記載置台に前記基板を提供する工程と、
b)前記チャンバ内に第1の処理ガスを供給する工程と、
c)前記上部電極に負の直流電圧を連続的に供給しながら、前記チャンバ内にRF信号を連続的に供給することにより、前記第1の処理ガスからプラズマを生成する工程と、
d)前記上部電極に負の直流電圧を連続的に供給しながら、パルス状の前記RF信号を供給することにより、前記第1の処理ガスからプラズマを生成する工程と
を含み、
前記c)と前記d)とは交互に繰り返し実行され、
前記c)の1回あたりの期間は30秒以下である、基板処理装置。
【請求項17】
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられた上部電極と、
前記上部電極に対向し、基板を載置する載置台と、
RF信号を供給するRF信号供給部と、
前記上部電極に負の直流電圧を供給する電圧供給部と、
制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
a)チャンバに配置された基板載置台に基板を提供する工程と、
b)前記チャンバ内に第1の処理ガスを供給する工程と、
c)前記基板載置台に対向するように設けられた上部電極に負の直流電圧を連続的に供給しながら、RF信号を前記チャンバに連続的に供給することにより、前記チャンバ内で前記第1の処理ガスからプラズマを生成する工程と、
d)前記上部電極に負の直流電圧を連続的に供給しながら、パルス状のRF信号を供給することにより、前記第1の処理ガスからプラズマを生成する工程と、
を含み、
前記c)と前記d)とは交互に繰り返し実行され、
前記c)の処理期間が前記d)の処理期間よりも短い、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の種々の側面および実施形態は、基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる高さに位置する複数の下地層と、複数の下地層の上に形成された対象膜とを有する基板を用意し、各下地層の上方に位置する複数の開口を有するマスクを用いて対象膜に深さの異なるホールをエッチングにより形成する技術が知られている(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、エッチングの過程におけるアーキングの発生を抑制することができる基板処理方法および基板処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面は、チャンバにおける基板処理方法であって、チャンバは、基板を載置する載置台と、載置台に対向する上部電極と、チャンバ内に処理ガスを供給するためのガス供給口とを備え、下記a)~d)を含む。a)は、載置台に基板を提供する工程である。b)は、チャンバ内に第1の処理ガスを供給する工程である。c)は、上部電極に負の直流電圧を連続的に供給しながら、RF信号を連続的に供給することにより、第1の処理ガスからプラズマを生成する工程である。d)は、上部電極に負の直流電圧を連続的に供給しながら、パルス状のRF信号を供給することにより、第1の処理ガスからプラズマを生成する工程である。c)とd)とは交互に繰り返し実行される。また、c)の1回あたりの期間は30秒以下である。
【発明の効果】
【0006】
本開示の種々の側面および実施形態によれば、エッチングの過程におけるアーキングの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態におけるエッチング装置の一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、エッチング前の基板の断面の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、エッチング後の基板の断面の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、プラズマエッチングにおけるチャンバ内の電子の動きの一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、RF信号の供給を停止した場合のチャンバ内の電子の動きの一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、RF信号および直流電圧の制御の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1のエッチング工程と第2のエッチング工程の実行タイミングの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、エッチング時間に対するV
ppの大きさの変化の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、エッチング時間に対する導電膜のエッチング量の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、エッチングが終了した直後のホールの状態の一例を示す模式図である。
【
図11】
図11は、導電膜が浸食された状態の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、本実施形態により形成されたホールの状態の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、エッチング方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、基板処理方法および基板処理装置の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、開示される基板処理方法および基板処理装置が限定されるものではない。
【0009】
ところで、近年の半導体装置の微細化に伴い、半導体装置に用いられる基板に形成されるホールのアスペクト比が大きくなる傾向にある。アスペクト比が大きいホールをプラズマエッチングにより基板に形成する場合、エッチングの時間が長くなるため、基板の帯電量が大きくなる場合がある。基板の帯電量が大きくなると、ギャップが小さい構造がある基板の箇所等で放電(アーキング)が発生する場合がある。アーキングが発生すると、基板が損傷したり、アーキングにより飛散した材料がパーティクルとなって基板の他の領域に付着し、欠陥となる場合がある。
【0010】
そこで、本開示は、エッチングの過程におけるアーキングの発生を抑制することができる技術を提供する。
【0011】
[エッチング装置1の構成]
図1は、本開示の一実施形態におけるエッチング装置1の一例を示す概略断面図である。エッチング装置1は、装置本体10と、装置本体10を制御する制御装置11とを備える。装置本体10は、容量結合型平行平板プラズマエッチング装置であり、表面が陽極酸化処理されたアルミニウム等により形成された略円筒状のチャンバ12を有する。チャンバ12は保安接地されている。エッチング装置1は、基板処理装置の一例である。
【0012】
チャンバ12は、静電チャック18および上部電極30を備える。チャンバ12内の底部には、絶縁材料によって形成された略円筒状の支持部14が配置されている。支持部14は、アルミニウム等の金属によって形成された基台16を支持している。基台16は、チャンバ12内に設けられている。本実施形態において、基台16は、下部電極としても機能する。
【0013】
基台16の上面には、静電チャック18が設けられている。静電チャック18は、載置台の一例である。静電チャック18は、導電膜である電極20を一対の絶縁膜または絶縁シート間に配置した構造を有する。電極20には、直流電源22が電気的に接続されている。静電チャック18は、直流電源22から供給された直流電圧により生じたクーロン力等の静電気力によって基板Wを静電チャック18の上面に吸着保持する。
【0014】
基台16の上面であって、静電チャック18の周囲には、エッジリングERが配置されている。エッジリングERは、エッチングの均一性を向上させるために設けられている。エッジリングERは、エッチングされる膜の材料によって適宜選択される材料によって形成される。本実施形態において、エッジリングERは、例えばシリコンまたは石英によって構成されている。
【0015】
基台16の内部には、流路24が形成されている。流路24には、外部に設けられたチラーユニットから配管26aおよび26bを介して予め定められた温度に制御された冷媒が循環供給される。冷媒は、例えば冷却水である。流路24内を循環する冷媒の温度を制御することにより、静電チャック18上に載置された基板Wの温度が制御される。
【0016】
静電チャック18および基台16には、配管28が設けられている。配管28は、例えばHeガス等の伝熱ガスの供給源に接続されている。伝熱ガスの供給源から供給された伝熱ガスは、配管28を介して、静電チャック18と基板Wの間に供給される。
【0017】
上部電極30は、下部電極として機能する基台16の上方において、基台16と上部電極30とが、互いに略平行になるように配置されている。上部電極30は、静電チャック18に対向している。上部電極30と基台16との間には、プラズマが生成される処理空間Sが画成されている。
【0018】
上部電極30は、絶縁性遮蔽部材32を介して、チャンバ12の上部に支持されている。上部電極30は、電極板34および電極支持体36を含む。電極板34の下面は処理空間Sに面している。電極板34には、電極板34の厚さ方向に貫通する複数のガス吐出孔34aが形成されている。ガス吐出孔34aは、チャンバ12内に処理ガスを供給するためのガス供給口の一例である。
【0019】
電極支持体36は、例えばアルミニウム等の導電性材料によって形成され、電極板34を着脱自在に支持する。電極支持体36は、水冷構造を有していてもよい。電極支持体36の内部には、拡散室36aが設けられている。拡散室36aは、複数のガス流通孔36bを介してガス吐出孔34aに連通している。また、電極支持体36には、拡散室36aに処理ガスを導くガス導入口36cが設けられている。ガス導入口36cには、配管38が接続されている。
【0020】
電極支持体36には、スイッチ67およびLPF(Low Pass Filter)66を介して可変直流電源65が接続されている。可変直流電源65は、負の直流電圧を電極支持体36に供給する。可変直流電源65から電極支持体36に供給される負の直流電圧の絶対値の大きさは、制御装置11によって制御される。LPF66は、電極支持体36に供給される負の直流電圧の高周波成分を除去する。スイッチ67は、可変直流電源65から電極支持体36への負の直流電圧の供給および供給遮断を切り替える。スイッチ67は、制御装置11によって制御される。可変直流電源65は、電圧供給部の一例である。
【0021】
配管38には、スプリッタ43、バルブ42a~42e、および流量制御器44a~44eを介して、ガス供給源40a~40eが接続されている。流量制御器44a~44eは、例えばMFC(Mass Flow Controller)やFCS(Flow Control System)等である。ガス供給源40aおよび流量制御器44bは、例えば炭素およびフッ素を含有するガスの供給源である。本実施形態において、ガス供給源40aは、例えばC4F8ガスを供給し、ガス供給源40bは、例えばC4F6ガスを供給する。ガス供給源40cは、例えば酸素含有ガスの供給源である。本実施形態において、酸素含有ガスは、例えばO2ガスである。なお、酸素含有ガスは、COガス等であってもよい。ガス供給源40dは、例えば希ガスの供給源である。本実施形態において、希ガスは、例えばArガスである。ガス供給源40eは、窒素含有ガスの供給源である。本実施形態において、窒素含有ガスは、例えばN2ガスである。
【0022】
ガス供給源40a~40eから供給されたガスは、流量制御器44a~44e、バルブ42a~42e、スプリッタ43、および配管38を介して、拡散室36a内に供給される。拡散室36a内に供給されたガスは、拡散室36a内を拡散し、ガス流通孔36bおよびガス吐出孔34aを介して処理空間S内にシャワー状に供給される。
【0023】
また、チャンバ12の上部には、チャンバ12の側壁から上部電極30の高さ位置よりも上方に延びるように導体12aが設けられている。導体12aは、チャンバ12を介して接地されている。
【0024】
また、装置本体10には、チャンバ12の内壁に沿ってデポシールド46が着脱自在に設けられている。デポシールド46は、支持部14の外周にも設けられている。デポシールド46は、チャンバ12にエッチングの副生成物(いわゆるデポ)が付着することを防止する。デポシールド46は、例えばアルミニウム等によって形成され、その表面がY2O3等のセラミックスによって被覆されている。
【0025】
チャンバ12の底部側には、支持部14とチャンバ12の内壁との間にバッフル板48が設けられている。バッフル板48は、例えばアルミニウム等によって形成され、その表面がY2O3等のセラミックスによって被覆されている。チャンバ12内においてバッフル板48の下方には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管52を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプを有しており、チャンバ12内を予め定められた真空度まで減圧することができる。排気装置50は、チャンバ12内を例えば15~40mTorrの真空度に維持する。また、チャンバ12の側壁には基板Wを搬入および搬出するための開口部12gが形成されており、開口部12gはゲートバルブ54により開閉可能となっている。
【0026】
チャンバ12の内壁には、グランドにDC的に接続されている導電性部材56が設けられている。導電性部材56は、高さ方向において基板Wと略同じ高さの位置に設けられている。導電性部材56により、異常放電が防止される。なお、導電性部材56は、プラズマが生成される領域内に設けられていればよく、その設置位置は
図1に示される位置に限られるものではない。例えば、導電性部材56は、基台16の周囲等、基台16付近に設けられてもよい。また、導電性部材56は、上部電極30の近傍に、上部電極30の外側にリング状に設けられてもよい。
【0027】
下部電極を構成する基台16には、基台16にRF(Radio Frequency)信号を供給するための給電棒58が接続されている。給電棒58は、同軸二重管構造を有しており、棒状導電部材58aおよび筒状導電部材58bを含む。棒状導電部材58aは、チャンバ12外からチャンバ12の底部を貫通してチャンバ12内まで略鉛直方向に延在している。棒状導電部材58aの上端は、基台16に接続されている。筒状導電部材58bは、棒状導電部材58aの周囲を囲むように棒状導電部材58aと同軸に設けられている。筒状導電部材58bは、チャンバ12の底部に支持されている。棒状導電部材58aおよび筒状導電部材58bの間には、略環状の絶縁部材58cが配置されている。絶縁部材58cにより、棒状導電部材58aと筒状導電部材58bとが電気的に絶縁される。
【0028】
棒状導電部材58aおよび筒状導電部材58bには、スイッチ64を介して、整合器60および整合器61が接続されている。整合器60には、第1のRF電源62が接続されており、整合器61には、第2のRF電源63が接続されている。第1のRF電源62および第2のRF電源63は、RF信号供給部の一例である。
【0029】
第1のRF電源62は、プラズマ生成用の第1のRF信号を発生する電源であり、27~100MHzの周波数、一例においては40MHzの周波数のRF信号を発生する。また、第1のRF信号の電力は、一例においては100~2000Wである。
【0030】
第2のRF電源63は、基台16に高周波バイアスを供給し、基板Wにイオンを引き込むための第2のRF信号を発生する。第2のRF信号の周波数は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数であり、一例においては3MHzである。また、第2のRF信号の電力は、一例においては100~5000Wである。
【0031】
スイッチ64は、第1のRF信号および第2のRF信号の棒状導電部材58aおよび筒状導電部材58bへの供給および供給遮断を切り替える。これにより、第1のRF信号および第2のRF信号がパルス状に基台16に供給される。スイッチ64は、制御装置11によって制御される。なお、以下では、第1のRF信号および第2のRF信号を区別せずに総称する場合にRF信号と記載する。
【0032】
制御装置11は、メモリ、プロセッサ、および入出力インターフェイスを有する。メモリ内には、レシピ等のデータやプログラムが格納される。メモリは、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、またはSSD(Solid State Drive)等である。プロセッサは、メモリから読み出されたプログラムを実行することにより、メモリ内に格納されたレシピ等のデータに基づいて、入出力インターフェイスを介して装置本体10の各部を制御する。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)またはDSP(Digital Signal Processor)等である。
【0033】
エッチング装置1によってプラズマエッチングが行われる場合、ゲートバルブ54が開けられ、図示しない搬送ロボットにより基板Wが静電チャック18上に載置される。そして、排気装置50によってチャンバ12内のガスが排気され、ガス供給源40a~40dからのガスがそれぞれ予め定められた流量でチャンバ12内に供給され、チャンバ12内の圧力が予め定められた圧力に調整される。
【0034】
そして、第1のRF電源62からの第1のRF信号および第2のRF電源63からの第2のRF信号が基台16に供給され、可変直流電源65からの負の直流電圧が上部電極30に供給される。これにより、上部電極30と基台16との間にRFの電界が形成され、処理空間Sに供給されたガスからプラズマが生成される。そして、処理空間S内に生成されたプラズマに含まれるイオンやラジカル等によって基板Wがエッチングされる。
【0035】
[基板Wの構造]
次に、
図1で説明されたエッチング装置1によってエッチングされる基板Wの構造について説明する。本実施形態における基板Wは、例えば三次元構造の多層膜を有するNAND型フラッシュメモリの構造を形成するために用いられる。
図2は、エッチング前の基板Wの断面の一例を示す図である。
【0036】
絶縁膜102内には、絶縁膜102の厚さ方向と交差する方向に異なる長さを有する複数の導電膜104a~104cが形成されている。本実施形態において、絶縁膜102は、例えば酸化膜(シリコン酸化膜)であり、導電膜104a~104cのそれぞれは、例えばシリコンまたはタングステンである。絶縁膜102上には、マスク膜100が設けられており、マスク膜100には、予め定められたホールに対応するパターンPa~Pcが形成されている。
図2の例において、絶縁膜102の厚さ方向において、パターンPaの下方には導電膜104aが配置され、パターンPbの下方には導電膜104bが配置され、パターンPcの下方には導電膜104cが配置されている。導電膜104a~104cのそれぞれは、絶縁膜102がエッチングされる際のエッチングストップ層としても機能する。なお、以下では、導電膜104a~104cのそれぞれを区別せずに総称する場合に導電膜104と記載する。
【0037】
マスク膜100をマスクとして、絶縁膜102がエッチングされることにより、例えば
図3に示されるように絶縁膜102にホールHa~Hcが形成される。
図3は、エッチング後の基板Wの断面の一例を示す図である。ホールHa~Hc内に金属が埋め込まれることにより、導電膜104a~104cのそれぞれに個別に接続された配線が形成される。
【0038】
[プラズマ中の電子の挙動]
図4は、プラズマエッチングにおけるチャンバ12内の電子の動きの一例を示す模式図である。第1のRF電源62からの第1のRF信号および第2のRF電源63からの第2のRF信号が基台16に供給されることにより、チャンバ12内に供給されたガスからプラズマが生成される。プラズマ中にはイオン200やラジカル等が含まれる。チャンバ12内にプラズマが生成されることにより、基台16付近にシース203が発生する。シース203により、プラズマに含まれるイオン200が基板Wに引き込まれ、基板Wがエッチングされる。
【0039】
また、イオン200が基板Wに過剰に引き込まれると、基板Wにダメージを与える場合がある。そのため、上部電極30に負の直流電圧が供給される。これにより、上部電極30付近にシース201が発生し、プラズマ中のイオン200の一部が上部電極30に引き込まれる。これにより、基板Wに衝突するイオン200が低減され、基板Wのダメージが低減される。また、上部電極30に引き込まれたイオン200によって上部電極30から電子202が放出される。
【0040】
ここで、プラズマエッチングが行われると、基板Wに引き込まれたイオン200により基板Wが帯電する。上部電極30に引き込まれたイオン200によって上部電極30から電子202が放出されるが、放出された電子202は、例えば
図4に示されるように、シース203によって基板Wへの到達が妨げられる。そのため、電子202によって基板Wの帯電を中和することができない。従って、プラズマエッチングの時間が長くなると、基板Wでアーキングが発生する場合がある。実験では、プラズマエッチングが30秒以上継続されると、基板Wにアーキングが発生する場合があった。
【0041】
ここで、例えば
図5に示されるように、RF信号の基台16への供給が遮断された場合、基台16付近のシース203がなくなる。そのため、上部電極30に引き込まれたイオン200によって上部電極30から放出された電子202が基板Wに到達しやすくなる。これにより、基板Wの帯電量が減少する。
図5は、RF信号の供給を停止した場合のチャンバ12内の電子202の動きの一例を示す模式図である。
【0042】
この時、上部電極30に供給される負の直流電圧の絶対値を大きくすると、上部電極30付近のシース201が厚くなり上部電極30に引き込まれるイオン200の量が増加する。これにより、上部電極30に引き込まれたイオン200によって上部電極30から放出される電子202の量も増加する。これにより、基板Wに到達する電子202の量が多くなり、基板Wの帯電量が早期に減少する。
【0043】
そこで、RF信号および負の直流電圧を例えば
図6に示されるように制御することが考えられる。
図6は、RF信号および直流電圧の制御の一例を示す図である。
【0044】
RF信号は、例えば
図6(a)に示されるように、予め定められた周期毎に供給(ON)および供給遮断(OFF)される。これにより、RF信号が供給されている第1の期間ΔT
1においてエッチングが進行し、RF信号の供給が遮断されている第2の期間ΔT
2において、基板Wの帯電が中和される。
【0045】
本実施形態において、RF信号の供給および供給遮断を含む1周期ΔT0の長さは、例えば50ミリ秒以下であることが好ましい。即ち、RF信号の供給および供給遮断の周波数は、例えば20Hz以上であることが好ましい。
【0046】
また、本実施形態において、RF信号のデューティ比は90%以上であることが好ましい。RF信号のデューティ比とは、RF信号の供給および供給遮断を含む1周期ΔT0に対する、RF信号が供給される第1の期間ΔT1の比である。
【0047】
また、例えば
図6(b)に示されるように、RF信号の供給が遮断されている第2の期間ΔT
2では、RF信号が供給されている第1の期間ΔT
1において供給される負の直流電圧V
1の絶対値よりも大きい絶対値の負の直流電圧V
2が供給される(|V
1|<|V
2|)。具体的には、第2の期間ΔT
2における負の直流電圧V
2は、例えば-1000Vであり、第1の期間ΔT
1における負の直流電圧V
1は、例えば-200Vである。これにより、第2の期間ΔT
2において基板Wに十分な量の電子を供給することができ、基板Wの帯電量を迅速に減少させることができる。
【0048】
ここで、
図6に示すようなRF信号および負の直流電圧の制御を行えば、基板Wのアーキングを低減することが可能である。しかし、
図6に示されたRF信号の制御において、RF信号の供給が遮断される第2の期間ΔT
2では、導電膜104上にポリマーが形成されない。そのため、絶縁膜102に対する導電膜104の選択比が低下し、導電膜104がエッチングされやすくなってしまう。そのため、
図6に示されたRF信号の制御では、導電膜104におけるエッチングストップ層の機能が低下し、ホールが導電膜104を突き抜けて形成される場合がある。これにより、設計通りに基板Wにホールを形成することが困難になる。
【0049】
そこで、本実施形態では、例えば
図7に示されるように、第1のエッチング工程と第2のエッチング工程とが交互に切り替えて繰り返し実行される。第1のエッチング工程では、RF信号および負の直流電圧が連続的に供給された状態でエッチングが行われる。第2のエッチング工程では、
図6に例示されたRF信号および負の直流電圧の制御によりエッチングが行われる。これにより、基板Wのアーキングを抑制しつつ、導電膜104のエッチング量を低減することができる。
【0050】
[RF信号のVpp]
また、RF信号の電圧のピークツーピーク(Vpp)の大きさは、チャンバ12内の状態によって変化する。例えば、プラズマエッチングの実行時間が長くなると、チャンバ12の内壁に付着したデポの影響や、チャンバ12内の部品の消耗等により、チャンバ12とプラズマとの間のインピーダンスが変化する。これにより、整合器60および61の制御量が変化し、RF信号のVppの大きさが変化する場合がある。RF信号のVppの大きさが変化すると、導電膜104上に形成されるポリマーの量が変化する。
【0051】
例えば、RF信号のVppが小さくなると、導電膜104上に形成されるポリマーの量が少なくなる。導電膜104上に形成されるポリマーの量が少なくなると、絶縁膜102に対する導電膜104の選択比が低下する。これにより、導電膜104がエッチングされやすくなってしまう。
【0052】
これを回避するために、本実施形態では、第1のエッチング工程および第2のエッチング工程において、RF信号のVppが予め定められた範囲内の大きさとなるように制御される。これにより、導電膜104上に十分な量のポリマーを形成することができ、絶縁膜102に対する導電膜104の選択比を向上させ、導電膜104のエッチング量を低減することができる。
【0053】
図8は、エッチング時間に対するV
ppの大きさの変化の一例を示す図である。RF信号のV
ppの調整が行われない場合、
図8の比較例に示されるように、エッチング時間の経過に伴って、RF信号のV
ppが小さくなっている。
【0054】
これに対し、本実施形態では、RF信号のV
ppが予め定められた範囲内の大きさとなるように制御される。これにより、例えば
図8に示されるように、エッチング時間が350hrを超えても、RF信号のV
ppの大きさの変動が約8V以内に抑えられている。
【0055】
図9は、エッチング時間に対する導電膜104のエッチング量の一例を示す図である。RF信号のV
ppの調整が行われない場合、
図9の比較例に示されるように、エッチング時間の経過に伴って、導電膜104のエッチング量が多くなっている。導電膜104のエッチング量が100%に達した状態は、ホールが導電膜104を貫通した状態を意味する。
【0056】
これに対し、本実施形態では、RF信号のV
ppが予め定められた範囲内の大きさとなるように制御されることにより、例えば
図9に示されるように、導電膜104のエッチング量の増加が抑えられている。
図9の例では、エッチング時間が300hrを超えても、導電膜104のエッチング量が30%未満に抑えられている。このように、本実施形態では、RF信号のV
ppが予め定められた範囲内の大きさとなるように制御されることにより、導電膜104上に十分な量のポリマーを形成することができる。そのため、絶縁膜102に対する導電膜104の選択比を向上させ、導電膜104のエッチング量を低減することができる。
【0057】
[ポリマーの除去]
図10は、エッチングが終了した直後のホールHの状態の一例を示す模式図である。エッチングが終了した直後は、例えば
図10に示されるように、ホールHの底部にポリマー106が形成されている。ポリマー106と導電膜104との間には、酸素含有ガスとの反応によって酸化膜108が形成されている。
【0058】
ここで、
図10に示された状態の基板Wが大気に晒されると、大気中に含まれる水分とポリマー106とが反応してホールHの底部にフッ酸が生成される。これにより、ホールHの底部が、例えば
図11に示されるようにさらに浸食される。
図11は、導電膜104が浸食された状態の一例を示す図である。これにより、導電膜104が設計値よりも過剰にエッチングされてしまう。
【0059】
そこで、本実施形態では、基板Wのエッチングが終了した
図10の状態の基板Wが、窒素含有ガスのプラズマに晒される。これにより、例えば
図12に示されるように、ホールHの底部に残存するポリマー106が除去される。
図12は、本実施形態により形成されたホールHの状態の一例を示す図である。この後、アッシングにより酸化膜108が除去され、次の工程の処理が行われる。これにより、基板Wに設計値に近い形状のホールHを形成することができる。
【0060】
[エッチング方法]
図13は、エッチング方法の一例を示すフローチャートである。
図13に例示されたエッチング方法は、例えば、制御装置11のプロセッサが制御装置11のメモリに格納されたプログラムを読み出して実行し、制御装置11の入出力インターフェイスを介して装置本体10の各部を制御することによって実現される。
図13に例示されたエッチング方法は、基板処理方法の一例である。
【0061】
まず、基板Wがチャンバ12内に搬入される(S10)。ステップS10では、ゲートバルブ54が開けられ、図示しない搬送ロボットにより基板Wがチャンバ12内に搬入され、静電チャック18上に載置される。そして、ゲートバルブ54が閉じられる。ステップS10は、a)の工程の一例である。
【0062】
次に、チャンバ12内に処理ガスが供給される(S11)。ステップS11では、排気装置50によってチャンバ12内のガスが排気される。そして、ガス供給源40aからのC4F8ガス、ガス供給源40bからのC4F6ガス、ガス供給源40cからのO2ガス、およびガス供給源40dからのArガスが、それぞれ予め定められた流量でチャンバ12内に供給される。そして、チャンバ12内の圧力が予め定められた圧力に調整される。以下では、C4F8ガス、C4F6ガス、O2ガス、およびArガスを含むガスを第1の処理ガスと記載する。ステップS11は、b)の工程の一例である。
【0063】
次に、第1のエッチング工程が実行される(S12)。第1のエッチング工程では、上部電極30に負の直流電圧が連続的に供給されながら、チャンバ12内にRF信号が連続的に供給される。これにより、チャンバ12内に供給された第1の処理ガスからプラズマが生成され、第1の処理ガスのプラズマにより静電チャック18に載置された基板Wがエッチングされる。ステップS12は、c)の工程の一例である。
【0064】
第1のエッチング工程における主な処理条件は、以下の通りである。
圧力:10~30mTorr
第1のRF信号の電力:1000~2000W
第2のRF信号の電力:3000~6000W
負の直流電圧:-300~-100V
C4F8ガス:20~40sccm
C4F6ガス:5~20sccm
O2ガス:10~30sccm
Arガス:300~600sccm
【0065】
次に、第1のエッチング工程を開始してから予め定められた時間t1が経過したか否かが判定される(S13)。本実施形態において、時間t1は、例えば30秒である。時間t1が経過していない場合(S13:No)、エッチングを開始してから予め定められた時間t0が経過したか否かが判定される(S14)。時間t0が経過していない場合(S14:No)、再びステップS12に示された処理が実行される。一方、時間t0が経過した場合(S14:Yes)、後述するステップS18の処理が実行される。時間t0は、トータルのエッチング時間であり、最も深いホールの形成に要する時間である。
【0066】
一方、時間t1が経過した場合(S13:Yes)、第2のエッチング工程が実行される(S15)。第2のエッチング工程では、上部電極30に負の直流電圧を連続的に供給しながら、RF信号の供給および供給遮断を予め定められた周期で繰り返すことにより、静電チャック18に載置された基板Wがエッチングされる。また、第2のエッチング工程では、RF信号の供給が行われる第1の期間ΔT1に絶対値が小さい負の直流電圧V1が上部電極30に供給され、RF信号の供給が遮断される第2の期間ΔT2に絶対値が大きい負の直流電圧V2が上部電極30に供給される。第1の期間ΔT1では、例えば-200Vの負の直流電圧V1が上部電極30に供給され、第2の期間ΔT2では、例えば-1000Vの負の直流電圧V2が上部電極30に供給される。第2のエッチング工程において、RF信号の供給が断続する点と、負の直流電圧の絶対値が切り替わる点以外の主な処理条件は、第1のエッチング工程における主な処理条件と同一である。ステップS15は、d)の工程の一例である。
【0067】
次に、第2のエッチング工程を開始してから予め定められた時間t2が経過したか否かが判定される(S16)。本実施形態において、時間t2は、例えば60秒である。時間t2が経過していない場合(S16:No)、エッチングを開始してから予め定められた時間t0が経過したか否かが判定される(S17)。時間t0が経過していない場合(S17:No)、再びステップS14に示された処理が実行される。
【0068】
一方、時間t0が経過した場合(S17:Yes)、チャンバ12内に第2の処理ガスが供給される(S18)。ステップS18では、排気装置50によってチャンバ12内のガスが排気される。そして、ガス供給源40dからのArガスおよびガス供給源40eからのN2ガスが、それぞれ予め定められた流量でチャンバ12内に供給され、チャンバ12内の圧力が予め定められた圧力に調整される。以下では、ArガスおよびN2ガスを含むガスを第2の処理ガスと記載する。ステップS18は、e)の工程の一例である。
【0069】
次に、除去工程が実行される(S19)。除去工程では、チャンバ12内にRF信号が連続的に供給される。これにより、チャンバ12内に供給された第2の処理ガスからプラズマが生成され、第2の処理ガスのプラズマによりホール内のポリマーが除去される。ステップS19は、f)の工程の一例である。
【0070】
除去工程の主な処理条件は、以下の通りである。
圧力:10~30mTorr
第1のRF信号の電力:200~2000W
第2のRF信号の電力:100~1000W
N2ガス:50~200sccm
Arガス:100~500sccm
処理時間:5~20秒
【0071】
そして、排気装置50によってチャンバ12内のガスが排気され、ゲートバルブ54が開けられ、図示しない搬送ロボットにより基板Wがチャンバ12内から搬出される(S18)。そして、本フローチャートに示されたエッチング方法が終了する。
【0072】
以上、一実施形態について説明した。上記したように、本実施形態における基板処理方法は、チャンバ12における基板処理方法であって、チャンバ12は、基板Wを載置する静電チャック18と、静電チャック18に対向する上部電極30と、チャンバ12内に処理ガスを供給するためのガス吐出孔34aとを備え、下記a)~d)を含む。a)は、静電チャック18に基板を提供する工程である。b)は、チャンバ12内に第1の処理ガスを供給する工程である。c)は、上部電極30に負の直流電圧を連続的に供給しながら、RF信号を連続的に供給することにより、第1の処理ガスからプラズマを生成する工程である。d)は、上部電極30に負の直流電圧を連続的に供給しながら、パルス状のRF信号を供給することにより、第1の処理ガスからプラズマを生成する工程である。c)とd)とは交互に繰り返し実行される。また、c)の1回あたりの期間は30秒以下である。これにより、エッチングの過程におけるアーキングの発生を抑制することができる。
【0073】
また、上記した実施形態において、d)の工程の1回あたりの期間は60秒以下である。これにより、過剰なエッチングを抑制することができる。
【0074】
また、上記した実施形態のd)の工程において、パルス状のRF信号1周期に対するRF信号が供給される期間の比は90%以上である。これにより、d)の工程においても、アーキングの発生を抑えながらエッチングを進めることができる。
【0075】
また、上記した実施形態のd)の工程において、パルス状のRF信号の1周期の期間は、50ミリ秒以下である。これにより、d)の工程においても、アーキングの発生を抑えることができる。
【0076】
また、上記した実施形態のd)の工程において、RF信号の供給が遮断されている第2の期間ΔT2に上部電極30に供給される負の直流電圧V2の絶対値は、RF信号が供給されている第1の期間ΔT1に上部電極30に供給される負の直流電圧V1の絶対値より大きい。これにより、短期間で効率よく基板Wを除電することができる。
【0077】
また、上記した実施形態において、基板Wは、導電膜104と、導電膜104上に設けられた絶縁膜102と、絶縁膜102上に設けられ、予め定められたパターンPが形成されたパターンPR膜とを有する。また、絶縁膜102は、例えば酸化膜(シリコン酸化膜)であり、導電膜104は、シリコンまたはタングステンの膜である。このような構造の基板Wのエッチングにおいて、アーキングの発生を抑制することができる。
【0078】
また、上記した実施形態において、第1の処理ガスには、炭素およびフッ素を含有するガス、酸素含有ガス、および希ガスが含まれる。炭素およびフッ素を含有するガスは、C4F8ガスまたはC4F6ガスであり、酸素含有ガスは、O2ガスまたはCOガスであり、希ガスは、Arガスである。これにより、第1の処理ガスからプラズマが生成され、生成されたプラズマにより基板Wをエッチングすることができる。
【0079】
また、上記した実施形態における基板処理方法には、e)およびf)の工程がさらに含まれる。e)の工程は、c)およびd)の繰り返しの後に実行され、チャンバ12内に窒素含有ガスおよび希ガスを含む第2の処理ガスを供給する工程である。f)の工程は、チャンバ12内にRF信号が供給されることにより第2の処理ガスからプラズマが生成され、生成されたプラズマにより、c)およびd)の工程によって基板Wに形成されたホールH内に残存するポリマーが除去される。窒素含有ガスは、N2ガスであり、希ガスは、Arガスである。これにより、基板Wに設計値に近い形状のホールHを形成することができる。
【0080】
また、上記した実施形態のc)およびd)の工程において、パルス状のRF信号の電圧のVppの大きさが予め定められた範囲内となるように制御される。これにより、導電膜104上に十分な量のポリマーを形成することができ、絶縁膜102に対する導電膜104の選択比を向上させ、導電膜104のエッチング量を低減することができる。
【0081】
また、上記した実施形態におけるエッチング装置1は、チャンバ12と、チャンバ12内に設けられた上部電極30と、上部電極30に対向し、基板Wを載置する静電チャック18と、RF信号を供給する第1のRF電源62および第2のRF電源63と、上部電極30に負の直流電圧を供給する可変直流電源65と、制御装置11とを備える。制御装置11は、以下のa)~d)の工程を実行する。a)の工程は、静電チャック18に基板Wを提供する工程である。b)の工程は、チャンバ12内に第1の処理ガスを供給する工程である。c)の工程は、上部電極30に負の直流電圧を連続的に供給しながら、チャンバ12内にRF信号を連続的に供給することにより、第1の処理ガスからプラズマを生成する工程である。d)の工程は、上部電極30に負の直流電圧を連続的に供給しながら、パルス状のRF信号供給することにより、第1の処理ガスからプラズマを生成する工程である。c)の工程とd)の工程とは交互に繰り返し実行される。c)の工程の1回あたりの期間は30秒以下である。これにより、エッチングの過程におけるアーキングの発生を抑制することができる。
【0082】
[その他]
なお、本願に開示された技術は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0083】
例えば、上記した各実施形態では、容量結合型プラズマ(CCP)をプラズマ源として用いるエッチング装置1を例に説明したが、プラズマ源はこれに限られない。容量結合型プラズマ以外のプラズマ源としては、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)、マイクロ波励起表面波プラズマ(SWP)、電子サイクロトン共鳴プラズマ(ECP)、およびヘリコン波励起プラズマ(HWP)等が挙げられる。
【0084】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0085】
ER エッジリング
H ホール
P パターン
S 処理空間
W 基板
1 エッチング装置
10 装置本体
11 制御装置
12 チャンバ
12a 導体
12e 排気口
12g 開口部
14 支持部
16 基台
18 静電チャック
20 電極
22 直流電源
24 流路
26 配管
28 配管
30 上部電極
32 絶縁性遮蔽部材
34 電極板
34a ガス吐出孔
36 電極支持体
36a 拡散室
36b ガス流通孔
36c ガス導入口
38 配管
40 ガス供給源
42 バルブ
43 スプリッタ
44 流量制御器
46 デポシールド
48 バッフル板
50 排気装置
52 排気管
54 ゲートバルブ
56 導電性部材
58 給電棒
58a 棒状導電部材
58b 筒状導電部材
58c 絶縁部材
60 整合器
61 整合器
62 第1のRF電源
63 第2のRF電源
64 スイッチ
65 可変直流電源
66 LPF
67 スイッチ
100 マスク膜
102 絶縁膜
104 導電膜
106 ポリマー
108 酸化膜
200 イオン
201 シース
202 電子
203 シース