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特許7382870ワイヤハーネスの分岐部保護構造、保護シート及び分岐部保護方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】ワイヤハーネスの分岐部保護構造、保護シート及び分岐部保護方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20231110BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
H02G3/04
B60R16/02 623T
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020049680
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021151113
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】春日井 裕美子
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-039782(JP,A)
【文献】特開平09-117034(JP,A)
【文献】実開平03-003116(JP,U)
【文献】特開2019-114364(JP,A)
【文献】特開2014-107919(JP,A)
【文献】特開2013-126264(JP,A)
【文献】特開2017-011813(JP,A)
【文献】特開2007-288898(JP,A)
【文献】特開2018-038182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスの分岐部を保護シートで覆うワイヤハーネスの分岐部保護構造であって、
前記保護シートが、1枚のシート材で構成されるとともに、それぞれ1つずつの本体シート部と巻き付け部の2つの領域に区分され、
前記本体シート部が、前記分岐部のひとつながりの側面を覆い、
前記巻き付け部が、平面に直線状のスリットを入れて得られる形状であって、前記本体シート部における前記ひとつながりの側面を有する部分とは別の枝線が存在する側に設けられた複数本の帯部を有するとともに、
前記帯部が、前記ワイヤハーネス及び前記本体シート部の上に巻回されて、前記帯部の先端部に設けられた粘着剤によって固定され、
複数の前記帯部のうちの一部の前記帯部が、前記ワイヤハーネスに巻回されずに前記本体シート部に折り重ねられた
ワイヤハーネスの分岐部保護構造。
【請求項2】
前記本体シート部と前記巻き付け部との境界が、前記ひとつながりの側面を有する部分とは別の枝線の基部に当接している
請求項1に記載のワイヤハーネスの分岐部保護構造。
【請求項3】
ワイヤハーネスの分岐部を覆うワイヤハーネス分岐部の保護シートであって、
1枚のシート材で構成されるとともに、それぞれ1つずつの本体シート部と巻き付け部の2つの領域に区分され、
前記本体シート部が、前記分岐部のひとつながりの側面を覆う大きさであり、
前記巻き付け部が、平面に直線状のスリットを入れて得られる形状であって、前記本体シート部から延びる複数本の帯部を有するとともに、前記帯部の片面における少なくとも先端部に粘着剤層が設けられ、
請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネスの分岐部保護構造に用いられる
ワイヤハーネス分岐部の保護シート。
【請求項4】
前記本体シート部と前記巻き付け部との境界が直線状であるとともに、
前記巻き付け部の前記帯部が、前記巻き付け部における前記本体シート部と反対側の辺から延びる1本以上のスリットで形成された
請求項3に記載のワイヤハーネス分岐部の保護シート。
【請求項5】
当該保護シートが四辺形に形成され、
前記本体シート部と前記巻き付け部との境界が四辺形を構成するいずれかの辺に平行である
請求項3に記載のワイヤハーネス分岐部の保護シート。
【請求項6】
当該保護シートが長方形又は正方形であるとともに、
前記本体シート部と前記巻き付け部との境界が4つの辺のうちいずれかの辺に平行であり、
前記巻き付け部の前記帯部が、前記巻き付け部における前記本体シート部と反対側の辺から延びる1本以上のスリットで形成された
請求項3に記載のワイヤハーネス分岐部の保護シート。
【請求項7】
前記スリットが複数本設けられ、
前記スリットの間隔と長さがすべて一定である
請求項4から請求項6のうちいずれか一項に記載のワイヤハーネス分岐部の保護シート。
【請求項8】
ワイヤハーネスの分岐部を保護シートで覆うワイヤハーネスの分岐部保護方法であって、
1枚のシート材で構成されるとともに、それぞれ1つずつの本体シート部と巻き付け部の2つの領域に区分され、
前記本体シート部が、前記分岐部のひとつながりの側面を覆う大きさであり、
前記巻き付け部が、平面に直線状のスリットを入れて得られる形状であって、前記本体シート部から延びる複数本の帯部を有するとともに、前記帯部の片面における少なくとも先端部に粘着剤層が設けられた保護シートを用い、
前記帯部を前記本体シート部における前記ひとつながりの側面を有する部分とは別の枝線が存在する側に延ばした状態で、前記本体シート部を前記ワイヤハーネスにおける前記ひとつながりの側面に沿わせて、前記本体シート部で前記分岐部の側面を覆ったのち、
前記帯部を前記ワイヤハーネス及び前記本体シート部の上に巻回して固定し、
前記本体シート部で前記ワイヤハーネスの側面を覆う前段において、前記帯部のうちの一部の前記帯部を、前記本体シート部方向に折り重ねる
ワイヤハーネスの分岐部保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載されるワイヤハーネスの分岐部を保護するための保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネスの分岐部を保護する構造として、下記特許文献1に開示されたような保護シートを分岐部に固定することが行われている。
【0003】
保護シートは、適用する分岐部の形態に応じて構成されており、特許文献1の保護シートは、T字状の分岐部に対して使用するものである。この保護シートは、正方形又は四角形のシート本体に、複数種類のスリットを形成して構成されている。そのスリットは、左右一対の横スリットと、これらに直交する方向の縦スリットである。横スリットは、シート本体の中央部を残して上下のフラップ部に分離する位置に形成されている。縦スリットは、一方のフラップ部における左右方向に延びる辺の中央に形成されており、一対の縦スリットの間隔は、分岐した枝線の幅以下の間隔である。
【0004】
このような形状の保護シートでは、縦スリットを有するフラップで分岐部の直線状部分を被覆するとともに、他方のフラップで分岐した枝線を被覆する。
【0005】
これまでの保護シートは、特許文献1を例に述べたように、固定される分岐部の形態に合わせた専用の形状に形成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-199992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、分岐部の形態、つまり分岐する枝線の数や方向は多様である。分岐部のワイヤハーネス(幹線、枝線)の太さもまちまちである。
このため、ワイヤハーネスの分岐部を保護するためには複数種類の保護シートが必要であった。
【0008】
1枚の保護シートを多様な形態の分岐部に適用できるようにするためには、特許文献1のような特異な形のスリットを持たない長方形のシートで保護シートを構成することが考えられる。
【0009】
しかしながら、このような構成の保護シートでは、分岐部を覆った際に角に出る余分な部分を折り曲げたりする整形作業が必要である。そのうえ、その形状を保つために粘着テープを巻き付けたりする作業も必要となる。これでは作業性が良くないばかりか、分岐部の保護構造が肥大化してしまう。分岐部分が大きいと、ワイヤハーネスの取り付けに悪影響がでる。
【0010】
そこでこの発明は、簡素な構成の保護シートを用いながらも様々な形態の分岐部に対してコンパクトな形状の保護態様を得られるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのための手段は、ワイヤハーネスの分岐部を保護シートで覆うワイヤハーネスの分岐部保護構造であって、前記保護シートが、1枚のシート材で構成されるとともに、それぞれ1つずつの本体シート部と巻き付け部の2つの領域に区分され、前記本体シート部が、前記分岐部のひとつながりの側面を覆い、前記巻き付け部が、平面に直線状のスリットを入れて得られる形状であって、前記本体シート部における前記ひとつながりの側面を有する部分とは別の枝線が存在する側に設けられた複数本の帯部を有するとともに、前記帯部が、前記ワイヤハーネス及び前記本体シート部の上に巻回されて、前記帯部の先端部に設けられた粘着剤によって固定され、複数の前記帯部のうちの一部の前記帯部が、前記ワイヤハーネスに巻回されずに前記本体シート部に折り重ねられたワイヤハーネスの分岐部保護構造である。
【0012】
この構成では、本体シート部がワイヤハーネスの分岐部のひとつながりの側面を覆い、巻き付け部の複数本の帯部がそれぞれ枝線の態様に応じて巻き付く。帯部は、本体シート部で被覆されていない部分があればその部分を被覆しつつ、本体シート部をワイヤハーネスに固定する。帯部は、平面に直線状のスリットを入れて得られる形状であるので、変形の自由度が高く、巻回される位置によって形態を様々に変形可能であって、分岐部の形態に関わりなく保護し得る。
【0013】
また、前記帯部が、前記帯部の先端部に設けられた粘着剤によって固定されているため、平面に直線状のスリットを入れて得られる形状である帯部が、巻回される位置によって形態を様々に変えるうえに、帯部の先端部に設けられた粘着剤で固定がなされるので、分岐部の形態に応じた多様な巻回が可能である。
【0014】
また、複数の前記帯部のうちの一部の前記帯部が、前記ワイヤハーネスに巻回されずに前記本体シート部方向に折り重ねられている。このように帯部が本体シート部方向に折り重ねられることによって、巻き付け部の形状が巻き付けや所望の保護に適した形に変形される。この変形によって、帯部がもてあまされることを回避できるとともに、コンパクトで体裁の良い巻回を実現できる。
【0015】
この発明の態様として、前記本体シート部と前記巻き付け部との境界が、前記ひとつながりの側面を有する部分とは別の枝線の基部に当接しているワイヤハーネスの分岐部保護構造としてもよい。
【0016】
この構成では、巻き付け部の基部が枝線の基部で位置決めされるので、複数本の帯部を巻き付けて固定する態様とあいまって、振動等で位置ずれすることのないしっかりとした固定が可能である。
【0017】
課題を解決するための別の手段は、ワイヤハーネスの分岐部を覆うワイヤハーネス分岐部の保護シートであって、1枚のシート材で構成されるとともに、それぞれ1つずつの本体シート部と巻き付け部の2つの領域に区分され、前記本体シート部が、前記分岐部のひとつながりの側面を覆う大きさであり、前記巻き付け部が、平面に直線状のスリットを入れて得られる形状であって、前記本体シート部から延びる複数本の帯部を有するとともに、前記帯部の片面における少なくとも先端部に粘着剤層が設けられ、前記のワイヤハーネスの分岐部保護構造に用いられるワイヤハーネス分岐部の保護シートである。
【0018】
この構成では、ワイヤハーネスの分岐部のひとつながりの側面を覆った本体シート部が、巻き付け部の複数本の帯部による巻き付けによって、分岐部に固定される。複数本の帯部は、それぞれ枝線の態様に応じて巻き付いて、本体シート部で被覆されていない部分があれば帯部で被覆する。帯部の形状は、平面に直線状のスリットを入れて得られる形状であるので、変形の自由度が高く、巻回される位置によって形態を様々に変形可能であって、保護シートは様々な形状の分岐部に適用され得る。
また本体シート部と巻き付け部のみからなる保護シートは、構造が簡素である。
【0019】
さらに、前記帯部の片面における先端部に粘着剤層が設けられているため、帯部を巻き付けて巻き付け位置の調整をしてから先端部の粘着剤層を利用して固定することができるので、作業性が良い。
【0020】
この発明の態様として、前記本体シート部と前記巻き付け部との境界が直線状であるとともに、前記巻き付け部の前記帯部が、前記巻き付け部における前記本体シート部と反対側の辺から延びる1本以上のスリットで形成されたワイヤハーネス分岐部の保護シートとしてもよい。
【0021】
この構成では、本体シート部と巻き付け部を区分する直線状の境界が、保護シートの構造をより簡素にする。また適宜設定され得る保護シートの形状ではあるが、巻き付け部における本体シート部と反対側の1辺又は2辺以上の辺から延びる1本以上のスリットで帯部が形成されるので、この点からも保護シートの構造は簡素である。
【0022】
この発明の態様として、当該保護シートが四辺形に形成され、前記本体シート部と前記巻き付け部との境界が四辺形を構成するいずれかの辺に平行であるワイヤハーネス分岐部の保護シートとしてもよい。
【0023】
この構成では、保護シートが例えば長方形、正方形、台形、平行四辺形、ひし形などの形であるため、全体として単純な形状であって、製造が容易で歩留まりも良好である。
【0024】
この発明の態様として、当該保護シートが長方形又は正方形であるとともに、前記本体シート部と前記巻き付け部との境界が4つの辺のうちいずれかの辺に平行であり、前記巻き付け部の前記帯部が、前記巻き付け部における前記本体シート部と反対側の辺から延びる1本以上のスリットで形成されたワイヤハーネス分岐部の保護シートとしてもよい。
この構成では、保護シートの形状がより単純な形状であって、直状の境界及びスリットと相まって、より簡素な構造にできる。
【0025】
この発明の態様として、前記スリットが複数本設けられ、前記スリットの間隔と長さがすべて一定であるワイヤハーネス分岐部の保護シートとしてもよい。
この構成では、少なくとも中間側に位置する帯部の太さと長さが同一であるので、取り扱いの画一化がはかれる。
【0026】
課題を解決するための別の手段は、ワイヤハーネスの分岐部を保護シートで覆うワイヤハーネスの分岐部保護方法であって、1枚のシート材で構成されるとともに、それぞれ1つずつの本体シート部と巻き付け部の2つの領域に区分され、前記本体シート部が、前記分岐部のひとつながりの側面を覆う大きさであり、前記巻き付け部が、平面に直線状のスリットを入れて得られる形状であって、前記本体シート部から延びる複数本の帯部を有するとともに、前記帯部の片面における少なくとも先端部に粘着剤層が設けられた保護シートを用い、前記帯部を前記本体シート部における前記ひとつながりの側面を有する部分とは別の枝線が存在する側に延ばした状態で、前記本体シート部を前記ワイヤハーネスにおける前記ひとつながりの側面に沿わせて、前記本体シート部で前記分岐部の側面を覆ったのち、前記帯部を前記ワイヤハーネス及び前記本体シート部の上に巻回して固定し、前記本体シート部で前記ワイヤハーネスの側面を覆う前段において、前記帯部のうちの一部の前記帯部を、前記本体シート部方向に折り重ねるワイヤハーネスの分岐部保護方法である。
【0027】
この構成では、本体シート部と巻き付け部の2つに区分された保護シートを用いて、本体シート部を分岐部の側面にあてて覆ったのち、巻き付け部の帯部を枝線の態様に応じて巻き付けて固定する。このため、保護のための固定作業は2段階に分かれるものの、巻き付け部が複数本の帯部で構成されていること、巻き付け部の変形自由度が高いことと相まって、作業性が良好である。しかも、分岐部の形態に関わりなく、適切な被覆と固定ができる。
【0028】
また、前記本体シート部で前記ワイヤハーネスの側面を覆う前段において、前記帯部のうちの一部の前記帯部を、前記本体シート部方向に折り重ねる。このように、本体シート部で分岐部の側面を被覆するのに先立って、一部の帯部を本体シート部方向に折り重ねるので、巻き付け部の形状を巻き付けや所望の保護に適した形に変形し得る。この変形によって、邪魔になる帯部の発生をなくしつつ、コンパクトで体裁の良い巻回を実現できる。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、保護シートは、本体シート部と巻き付け部に二分された巻き付け部に直線状のスリットが形成されるだけの簡素な構成である。巻き付け部の帯部の扱いを変えることによって、様々な形態の分岐部を、肥大化させることなくコンパクトな形状に覆うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】保護シートと分岐部保護構造を示す斜視図。
図2】保護シートの斜視図。
図3】分岐部保護方法を示す説明図。
図4】分岐部保護方法を示す説明図。
図5】分岐部保護方法を示す説明図。
図6】分岐部保護方法を示す説明図。
図7】分岐部保護方法を示す説明図。
図8】他の例に係る保護シートの平面図。
図9】他の例に係る保護シートの平面図。
図10】他の例に係る保護シートの平面図。
図11】他の例に係る保護シートの平面図。
図12】他の例に係る保護シートの平面図。
図13】他の例に係る保護シートの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1に、ワイヤハーネス11の分岐部12を覆って外力や振動等から分岐部12を保護するワイヤハーネス分岐部の保護シート31と、この保護シート31を用いた分岐部保護構造11aの斜視図を示す。この図に示すように、この発明の保護シート31は形態の異なる複数種類の分岐部12に対して使用可能である。
【0032】
ワイヤハーネス11の分岐部12は、幹線21から1本位以上の枝線22を分岐して、又は幹線21を2本以上の枝線22に分岐して構成される。幹線21や枝線22の太さは分岐部12の位置などに応じてさまざまであるとともに、枝線22の数や向きも多様である。
【0033】
図1の(a)に示した分岐部12はT字状の分岐部12を示している。この分岐部12は幹線21からその長手方向と直交する方向に延びる1本の枝線22を有した形状、又は幹線21の先にこの幹線21と同じ方向に延びる枝線22aと、幹線21に直交する方向に延びる1本の枝線22bを有した形状である。図1の(b)に示した分岐部12は、T字状の分岐部12よりも枝線22が多い分岐部12を示している。この分岐部12は、幹線21からその長手方向と交差する方向に延びる3本の枝線22e,22f,22gを有した形状、又は幹線21の先にその幹線21と同じ方向に延びる1本の枝線22aと、幹線21に交差する方向に延びる3本の枝線22b,22c,22dを有した形状である。
【0034】
保護シート31は、図2に示したように、1枚のシート材で構成されている。シート材は、折り曲げ可能な材料からなり、必要に応じて鋏やカッターなどで適宜に切断可能なものであるとよい。より好ましくは、保護シート31は、合成樹脂シートや合成ゴムシート、天然ゴムシートなどを用いるとよい。そのほか、使用環境や要求性能により、アラミドクロスなどの繊維布や不織布を用いてもよい。シールド効果を発揮させる目的で、カーボンクロスなどの導電性を有する材料を用いてもよい。また織物や不織布などの繊維布に合成樹脂やゴムなどを積層した防水布などのような複合材利用を用いることもできる。
【0035】
保護シート31の構成について説明すると、保護シート31は、それぞれ1つずつの本体シート部32と巻き付け部33の2つの領域に区分されている。つまり、保護シート31は本体シート部32と巻き付け部33のみを有している。
【0036】
本体シート部32は、分岐部12のひとつながりの側面12a(図1参照)を覆う大きさであり、巻き付け部33は、複数本の帯部34を有している。帯部34は、平面に直線状のスリット35を入れて得られる形状であり、帯部34は本体シート部32から延びている。
【0037】
なお、前述した「分岐部12のひとつながりの側面12a」とは、幹線21における分岐部12を中心に幹線21の長手方向に広がる部分、又は分岐部12の幹線21から連続する一つの枝線22aに広がる部分である。
【0038】
保護シート31、本体シート部32及び巻き付け部33の平面視形状は適宜設定され得る。図1図2では、保護シート31が四辺形、詳しくは長方形である例を示している。そして本体シート部32と巻き付け部33との境界(図2の仮想線B参照)が直線状であるとともに、境界Bは保護シート31の四辺形・長方形の輪郭を構成するいずれかの辺に平行である。
【0039】
本体シート部32と巻き付け部33との境界Bは、長方形をなす保護シート31の短辺と平行である。保護シート31における境界Bの位置、つまり保護シート31の輪郭を構成する長辺上の位置は適宜設定し得るが、図1図2に示したように長手方向の中間であるとよい。
【0040】
巻き付け部33の帯部34は、巻き付け部33における本体シート部32と反対側の辺(一方の短辺)から延びる1本以上の直線状のスリット35で形成されている。スリット35は保護シート31の輪郭を構成する短辺を4等分する3か所に形成され、すべて同じ長さである。つまり、スリット35の間隔と長さがすべて一定であるとともに、保護シート31の輪郭を構成する長辺とこれらと隣接するスリット35との間隔はスリット35の間隔と同じであり、すべての帯部34が一定幅である。
【0041】
このような帯部34の片面、つまり使用するときにワイヤハーネス11側になる内面における先端部に粘着剤層36が形成される。粘着剤層36の範囲は、帯部34の全体であっても良いが、例えば図2に示したように帯部34の長手方向の中間よりも先端側であれば足りる。
【0042】
粘着剤層36は、粘着剤があらかじめ塗布されて離型紙(図示せず)を貼り付けたものであっても、固定に際して塗布されるものであってもよい。なお、本明細書において、粘着剤には接着剤の概念も含むものとし、粘着剤の材質については、アクリル系またはゴム系などが好ましく、保護シート31の材質に応じて決定される。例えば保護シート31が塩化ビニルシート等の可塑剤を含有する材質の場合は、粘着剤の材質は可塑剤への耐性を有する材質であることが好ましい。また、保護シート31が繊維布や不織布等の場合は、粘着剤は例えば粘度の高い材質を用いることが、粘着剤が繊維布や不織布等の隙間を通過して漏れることを防ぐ観点で好ましい。
【0043】
このような構成の保護シート31は、シート材を輪郭位置とスリット形成位置で裁断することで製造できる。
【0044】
また、このような構成の保護シート31で覆うワイヤハーネス11の分岐部保護構造11aは、次のように構成される。すなわち、まず、前述の本体シート部32でワイヤハーネス11の分岐部12におけるひとつながりの側面12aを覆う。つぎに、巻き付け部33の帯部34の先端を分岐部12におけるひとつながりの側面12aを有する部分とは別の枝線22b,22c,22d,22e,22f,22gが存在する側に向けて、ワイヤハーネス11及び本体シート部32の上に巻回して固定する。
【0045】
図1の(a)に示したワイヤハーネス11の分岐部保護構造11aは、本体シート部32が分岐部12のひとつながりの側面12aを被覆する。また、巻き付け部33を構成する2本の帯部34が巻回されて、この状態が粘着剤層36の粘着剤によって固定されている。これによって、T字状の分岐部12に対する本体シート部32と巻き付け部33の固定状態が維持される。図1の(b)に示したワイヤハーネス11の分岐部保護構造11aも同様である。すなわち、本体シート部32が分岐部12のひとつながりの側面12aを被覆するとともに、巻き付け部33を構成するすべての帯部34が巻回されて、この状態が粘着剤層36の粘着剤によって固定されている。これによって、3本又は4本の枝線22a,22b,22c,22d,22e,22f,22gを有する分岐部12に対する本体シート部32と巻き付け部33の固定状態が維持される。
【0046】
このような分岐部保護構造11aを得るワイヤハーネス11の分岐部保護方法は、前述の保護シート31を用い、次の被覆工程と巻回工程を有する。被覆工程はまず、帯部34を本体シート部32におけるひとつながりの側面12aを有する部分とは別の枝線22b,22c,22d,22e,22f,22gが存在する側に延ばした状態にする。つぎに、本体シート部32をワイヤハーネス11における前記ひとつながりの側面12aに沿わせて、本体シート部32で分岐部12の側面を覆う。このあとの巻回工程は、帯部34をワイヤハーネス11及び本体シート部32の上に巻回して固定する。そして巻回工程で作業が完結する。
本実施形態のワイヤハーネス11の分岐部保護方法は、簡単な作業で完結するため省力化につながり、かつ加熱等の工程がないため、ワイヤハーネス11の品質劣化を防ぐ効果もある。
【0047】
形態の異なる4つの分岐部12に対する分岐部保護方法及び分岐部保護構造11aを、図3図7を用いて説明する。
図3は、図1の(a)と同様のT字状の分岐部12を保護する例を示している。
【0048】
まず、図3の(a)に示したように保護シート31が分岐部12に添えられる。このとき、本体シート部32を分岐部12のひとつながりの側面12aにあてて、ひとつながりの側面12aを有する部分とは別の枝線22,22bが存在する側に帯部34をのばす。帯部34の基部、つまり本体シート部32と巻き付け部33との境界であって、3本のスリット35のうちの中間のスリット35の本体シート部32側の端部35aを、図3の(b)に示したように上記別の枝線22,22bの基部に位置合わせする。
【0049】
つづいて、本体シート部32における巻き付け部33と反対側の部分を上記別の枝線22,22bに向けて折り返すようにして、図3の(c)に示したように本体シート部32で分岐部12のひとつながりの側面12aを覆う。このとき、余剰部分があれば、余った端部を内側に折り込む。これで、被覆工程が完了する。
【0050】
このあと、本体シート部32と巻き付け部33との境界のうちの中間位置(中間のスリット35の本体シート部32側の端部35a)を上記別の枝線22,22bの基部にあてて係止する。この状態で、巻き付け部33の4本すべての帯部34を主に本体シート部32の上に適宜巻回する。巻回された帯部34は、先端部の粘着剤層36を利用して固定される(巻回工程。図3の(d))。4本の帯部34のうち上記別の枝線22,22bを挟む位置の帯部34は、互いに交差するように斜めに巻回される。
【0051】
図4は、図1の(a)と同様にT字状の分岐部12を保護する例を示している。
まず、図4の(a)に示したように保護シート31が分岐部12に添えられるが、これに先立って、帯部折り重ね工程がなされる。つまり、本体シート部32でワイヤハーネス11の側面を覆う前段において、帯部34のうちの一部の帯部34aを本体シート部32の内面に折り重ねる。
【0052】
折り重ねる帯部34aは、上記別の枝線22,22bに対応する位置の帯部34aである。上記別の枝線22,22bの太さに対応する又は略対応する幅にわたって帯部34aが折り込まれる。図4の例では中間に位置する2本の帯部34のうちの一方の帯部34aだけが折り込まれる。図1の(a)は、4本の帯部34のうちの中間に位置する2本の帯部34が折り込まれた例である。
【0053】
このような前処理をしたのちに保護シート31が分岐部12に添えられる。このとき、前述と同様に、本体シート部32を分岐部12のひとつながりの側面12aにあてて、ひとつながりの側面12aを有する部分とは別の枝線22,22bが存在する側に帯部34をのばす。また、帯部34の基部、つまり本体シート部32と巻き付け部33との境界であって、帯部折り重ね工程で折り重ねた帯部34の基部34bを、図4の(b)に示したように上記別の枝線22,22bの基部に位置合わせする。
【0054】
つづいて、本体シート部32における巻き付け部33と反対側の部分を上記別の枝線22,22bに向けて折り返すようにして、図4の(c)に示したように本体シート部32で分岐部12のひとつながりの側面12aを覆う。このとき、余剰部分があれば、余った端部を内側に折り込む。これで、被覆工程が完了する。
【0055】
このあと、折り重ねられた帯部34aの基部34bを上記別の枝線22,22bの基部にあてて係止した状態で、巻き付け部33の他の3本の帯部34を主に本体シート部32の上に適宜巻回する。巻回した帯部34は、先端部の粘着剤層36を利用して固定される(巻回工程。図4の(d))。
【0056】
複数の帯部34のうち上記別の枝線22,22bに対応する位置の帯部34は、ワイヤハーネス11に巻回されずに本体シート部32に折り重ねられ、本体シート部32とワイヤハーネス11との間に整然と収まる。
【0057】
図5は、図1の(b)と同じ形態の分岐部12を保護する例を示している。
まず、図5の(a)に示したように保護シート31が分岐部12に添えられる。このとき、本体シート部32を分岐部12のひとつながりの側面12aにあてて、ひとつながりの側面12aを有する部分とは別の枝線22b,22c,22d,22e,22f,22gが存在する側に帯部34をのばす。帯部34の基部、つまり本体シート部32と巻き付け部33との境界であって、3本のスリット35のうちの中間のスリット35の本体シート部32側の端部35aを、図5の(b)に示したように上記別の枝線22b,22c,22d,22e,22f,22gのうちの中間の枝線22b,22eの基部に位置合わせする。
【0058】
つづいて、本体シート部32における巻き付け部33と反対側の部分を上記別の枝線22b,22c,22d,22e,22f,22gに向けて折り返すようにして、図5の(c)に示したように本体シート部32で分岐部12のひとつながりの側面12aを覆う。このとき、余剰部分があれば、余った端部を内側に折り込む。これで、被覆工程が完了する。
【0059】
このあと、本体シート部32と巻き付け部33との境界を上記別の枝線22b,22c,22d,22e,22f,22gの基部にあてて係止した状態にする。つづいて、巻き付け部33の4本すべての帯部34をそれぞれ、枝線22b,22c,22d,22e,22f,22g同士の間、また枝線22c,22dと幹線21との間に通して、主に本体シート部32の上に適宜巻回する。巻回した帯部34は、帯部34の先端部の粘着剤層36で固定される(巻回工程。図5の(d))。
【0060】
図6は、幹線21から相反する2方向に枝線22h,22iを有する分岐部12、より具体的には、幹線21と2本の枝線22h,22i又は3本の枝線22a,22h,22iによって十字状をなしている分岐部12を保護する例を示している。分岐部12は十字状であるので、上記別の枝線22h,22iは相反する2方向に延びている。
【0061】
この保護方法では、図4に示した例と同様に、前処理として帯部折り重ね工程を有している。つまり、本体シート部32でワイヤハーネス11の側面を覆う前段において、帯部34のうちの一部の帯部34を本体シート部32に折り重ねる。
【0062】
折り重ねる帯部34は、上記別の枝線22h,22iに対応する位置の帯部34である。上記別の枝線22h,22iの太さに対応する又は略対応する幅にわたって帯部34が折り込まれる。図6の例では中間に位置する2本の帯部34のうちの一方の帯部34aだけが折り込まれる。
【0063】
このような前処理をしたのちに保護シート31が分岐部12に添えられる。このとき、前述と同様に、本体シート部32を分岐部12のひとつながりの側面12aにあてて、ひとつながりの側面12aを有する部分とは別の枝線22h,22iが存在する側に帯部34をのばす。前述のように十字状の分岐部12は上記別の枝線22h,22iとして2本の枝線22h,22iを有するので、そのうちの一方の枝線22hが存在する側に帯部34をのばす。
【0064】
また、帯部34の基部、つまり本体シート部32と巻き付け部33との境界であって、帯部折り重ね工程で折り重ねた帯部34aの基部34bを、図6の(b)に示したように選定した一方の、上記別の枝線22hの基部に位置合わせする。このとき、本体シート部32に余剰部分があれば、余った端部を内側に折り込む。これで、被覆工程が完了する。
【0065】
このあと、帯部折り重ね工程で折り重ねた帯部34aの基部34bが、選定された一方の上記別の枝線22hの基部にあてられて係止した状態で、巻き付け部33の3本の帯部34を直接ワイヤハーネス11の上に、また本体シート部32の上に適宜巻回する。巻回した帯部34は、帯部34の先端部の粘着剤層36を利用して固定される(巻回工程。図6の(c))。3本の帯部34のうち選定された一方の上記別の枝線22hを挟む位置の帯部34は、互いに交差するように斜めに巻回される。
【0066】
図7は、T字状の分岐部12と同様の形態であるが分岐する方向に違いがあるY字状の分岐部12を保護する例を示している。
まず、図7の(a)に示したように保護シート31が分岐部12に添えられる。このとき、本体シート部32を分岐部12の曲がりを有するひとつながりの側面12aにあてて、ひとつながりの側面12aを有する部分とは別の枝線22,22bが存在する側に帯部34をのばす。帯部34の基部、つまり本体シート部32と巻き付け部33との境界であって、3本のスリット35のうちの中間のスリット35の本体シート部32側の端部35aを、図7の(b)に示したように上記別の枝線22,22bの基部に位置合わせする。
【0067】
つづいて、本体シート部32における巻き付け部33と反対側の部分を上記別の枝線22,22bに向けて折り返すようにして、図7の(c)に示したように本体シート部32で分岐部12のひとつながりの側面12aを覆う。このとき、余剰部分があれば、余った端部を内側に折り込む。これで、被覆工程が完了する。
【0068】
このあと、本体シート部32と巻き付け部33との境界のうちの中間位置を上記別の枝線22,22bの基部にあてて係止した状態で、巻き付け部33の4本すべての帯部34を主に本体シート部32の上に適宜巻回する。巻回した帯部34は、帯部34の先端部の粘着剤層36を利用して固定される(巻回工程。図7の(d))。4本の帯部34のうち上記別の枝線22,22bを挟む位置の帯部34は、互いに交差するように斜めに巻回されるとよい。
【0069】
以上のような構成の保護シート31を用いた分岐部保護構造11aでは、保護シート31の構成が、それぞれ一つずつの本体シート部32と巻き付け部33に区分されて、巻き付け部33の帯部34が直線状のスリット35を入れて形成されるので、至って簡素である。このため、製造も容易で製造コストも抑えられる。
【0070】
特に、前述のように保護シート31を長方形にするとともに、本体シート部32と巻き付け部33との境界がいずれかの辺に平行であると、構成が簡素であるほか、製造に際しての歩留まりも良いという利点を有する。
【0071】
そのうえ、図3図7に例示したように、保護シート31は様々な形態の分岐部12に対して使用することができる。すなわち、巻き付け部33は分岐部12のひとつながりの側面12aを覆った本体シート部32を固定するとともに分岐部12を覆うが、この際に、平面に直線状のスリット35を入れて得られる形状の帯部34は変形自由度が高い。このため、複数本の帯部34がそれぞれ適宜に変形可能であり、所望の保護状態を得るために適した態様に自由な巻き付けが行える。つまり巻き付け部33は分岐部12の形態に応じた多様な巻回が可能であり、このため前述のように分岐部12の形態に関わりなく保護し得る。
この結果、一種類の保護シート31によって、多様に分岐して延びる一つのワイヤハーネス11の分岐部12を保護することも可能になる。
【0072】
また、帯部34の巻き付けに際しては、巻き付けの自由度が高いので、帯部34同士が過剰に重なり合うことや帯部34の不本意な変形によって、嵩高くなることを抑制することができる。巻き付け形態を整えることもできる。このため、巻き付けによる分岐部12の肥大化が起こらないようにして、分岐部12をコンパクトで美麗な外観にすることができる。
【0073】
このように分岐部12の肥大化を防止できることは、前述したような分岐部12の形態に応じて適切な保護形態を得られることと相まって、短くしたい要求のあるワイヤハーネス11のスリムな配策にも大いに貢献する。
【0074】
さらに、帯部34の固定は、先端部に備えた粘着剤層36によって行うので、固定のための別の部材が不要である。また、粘着剤層36は少なくとも先端部に有するので、帯部34の巻き付け位置の調整も可能である。このため、巻き付けから固定に際しての作業性が良いうえに、好ましい巻き付け状態を得やすい。
【0075】
帯部34の巻き付けに際して、不要な一部の帯部34aを本体シート部32に折り重ねておけば、巻き付け部33の形状を巻き付けや所望の保護に適した形態に即座に変更できる。このため、より良い所望の保護形態が得られる。しかも、折り重ねられた帯部34aは本体シート部32と分岐部12の間に整然と存在して、緩衝性を増すとともに、いたずらに嵩張ったりすることはない。このため、全体としてコンパクトにまとまった保護形態が得られる。
【0076】
また、本体シート部32と巻き付け部33との境界がひとつながりの側面12aを有する部分とは別の枝線22,22b,22c,22d,22e,22f,22g,22h,22iの基部に当接しているので、本体シート部32の位置決めができる。このため、複数本の帯部34を巻き付けて固定する態様と相まって、振動等で位置ずれすることのない強固な取り付け状態、つまり保護状態を得られる。
【0077】
以下、保護シート31のその他の例について説明する。この説明において、前述の構成と同一の部位については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
図8は他の例に係る保護シート31の平面図である。図8の保護シート31は、図1図2に例示した保護シート31とは、帯部34の本数と太さ(幅寸法)を違えた例を示している。図8の(a)は7本の帯部34を有し、太さは図1の帯部34よりも太い。図8の(b)は(a)の帯部34よりも細い帯部34を有し、帯部34の本数は(a)と同じ7本である。いずれの保護シート31も、すべての帯部34は同一の太さである。
【0078】
このように7本の帯部34を有する保護シート31は、例えば図1の(b)と図5に示したような形態の分岐部12の保護に際して使用する際に、一部の帯部34を本体シート部32に折り重ねて使用するのに好適である。つまり、幹線21からその長手方向と交差する方向に延びる3本の枝線22b,22c,22d又は幹線21の先に幹線21と同じ方向に延びる1本の枝線22aのほかの、幹線21に交差する方向に延びる3本の枝線22e,22f,22gに対応する部位の帯部34(帯部同士に挟まれた3本の帯部34)を本体シート部32に折り重ねて使用される。
このほか、図8に示した例の保護シート31は、枝線の本数が3本又は4本より多い分岐部12の保護に使用できる。
【0079】
図9は、輪郭形状が台形をなす保護シート31の平面図である。この保護シート31は等脚台形に形成されており、互いに平行な2辺のうちの短辺側に本体シート部32が、長辺側に巻き付け部33が形成されている。巻き付け部33には長辺から本体シート部32に向けて3本のスリット35が形成されている。スリット35の間隔と長さはすべて同一である。ただし、保護シート31が台形であるので、両端の帯部34cの太さ及び形状は、それらの間の2本の帯部34dの太さ及び形状とは異なる。
このような構成の保護シート31では、両端に位置する帯部34cの先端部、つまり粘着剤層36が広いので、強固な固定状態を得ることに貢献できる。
【0080】
図10は、すべての帯部34の太さが同一でない例を示す保護シート31の平面図である。つまり、巻き付け部33に間隔と長さが同一のスリット35を形成する場合でも、両端からの距離をスリット35の間隔と違えることによって、両端に位置する帯部34cの太さを中間側に位置する帯部34dの太さと違えることができる。
【0081】
図10の(a)は、両端に位置する帯部34cの太さを、中間側に位置する帯部34dの太さよりも太くした例である。図10の(b)は、両端に位置する帯部34cの太さを、中間側に位置する帯部34dの太さより細くした例である。
【0082】
図11は、スリット構造の他の例を示す保護シート31の平面図である。この保護シート31は、スリット35における本体シート部32側の端、つまり帯部34の基部に対応する位置に丸い穴部37を有している。穴部37の大きさは適宜設定される。穴部37の形状は円形以外であってもよい。
【0083】
このような構成の保護シート31では、穴部37の存在によって、使用に際して巻き付け時に強く引っ張っても、荷重が分散されて、裂けが生じるのを防止できる。また、帯部34をクロスさせるように斜めに延ばす際に、変形により生じる凹凸の発生を抑制できる。
【0084】
図12は、スリット構造の他の例を示す保護シート31の平面図である。この保護シート31は、スリット35が形成される位置にミシン目35bを有している。すなわち、使用に際して必要に応じて裂いて使用できる構成である。
このような構成の保護シート31では、帯部が必要以上にばらばらになることを防止でき、分岐部12への被覆に際して分岐部12の形態に最適な保護を選択できる。
【0085】
図13は、分断しての使用が可能な他の例を示す保護シート31の平面図である。この保護シート31は、本体シート部32における一部のスリット35の延長線上に、分断のためのミシン目38を有している。分断のためのミシン目38の位置や本数は、適宜設定するとよい。
【0086】
このような構成の保護シート31では、必要であれば帯部34の本数などが適切になるように、また保護シート31の幅寸法が適切になるように、ミシン目38で分離して使用できるので、分岐部12の形態に最適な保護を選択できる。
【0087】
以上の構成はこの発明を実施するための一形態の構成であって、この発明は、前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することもできる。
たとえば、保護シート31の輪郭形状は、前述例のほかに、例えば平面視形状を、正方形や半円形、三角形、多角形など、その他の形状とするものであってもよい。
【0088】
また、図12を用いてスリットは後付けとするものでもよいことを示したが、スリット35は必要と考えられる長さよりも短くして、その先にミシン目を形成してもよい。切り込みや引き裂きのための構造は、ミシン目のほかハーフカットなどであってもよい。
帯部34の折り重ね態様について、前述の例では本体シート部32に対して折り返す例を示したが、帯部34のなかだけで折り返す態様であってもよい。
【符号の説明】
【0089】
11…ワイヤハーネス
11a…分岐部保護構造
12…分岐部
12a…ひとつながりの側面
21…幹線
22…枝線
31…保護シート
32…本体シート部
33…巻き付け部
34…帯部
35…スリット
36…粘着剤層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13