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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】原料供給装置及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20231110BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20231110BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20231110BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
C23C16/455
H01L21/205
H01L21/285 C
H01L21/28 301R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020074360
(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公開番号】P2021172829
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】木元 大寿
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 紀之
(72)【発明者】
【氏名】成嶋 健索
(72)【発明者】
【氏名】関戸 幸一
(72)【発明者】
【氏名】川口 拓哉
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-145458(JP,A)
【文献】特表2019-519098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/455
H01L 21/205
H01L 21/285
H01L 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内に原料ガスを供給する原料供給路と、
前記原料供給路に介設されたバルブと、
前記原料供給路内の圧力を検出する圧力センサと、
前記原料供給路に接続され、前記原料供給路内の前記原料ガスを排気する原料排気路と、
前記原料排気路に介設され、開度が調整されることにより前記原料供給路内の圧力を制御する開度調整機構と、
前記圧力センサの検出値に基づいて前記開度調整機構の前記開度を調整する制御部と、
を有
前記開度調整機構は、
空気圧により弁体を開閉するエアオペレートバルブと、
前記エアオペレートバルブに導入される空気圧を調整する電空レギュレータと、
を含み、
前記エアオペレートバルブは、ALDバルブである、
原料供給装置。
【請求項2】
前記原料供給路に介設され、前記原料ガスを貯留する貯留タンクを更に有する、
請求項1に記載の原料供給装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記原料排気路を介して前記原料ガスを排気しながら前記圧力センサの検出値が目標値に到達して安定化するように前記開度調整機構の開度を調整するよう構成される、
請求項1又は2に記載の原料供給装置。
【請求項4】
前記目標値は、前記処理容器内に前記原料ガスを供給して前記処理容器内で処理を実行しているときの前記圧力センサの検出値に基づいて定められる、
請求項3に記載の原料供給装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記処理容器内に基板を収容した状態で、前記開度調整機構の開度を調整するよう構成される、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の原料供給装置。
【請求項6】
前記バルブは、ALDバルブである、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の原料供給装置。
【請求項7】
前記原料ガスは、固体原料の昇華又は液体原料の蒸発により生成される、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の原料供給装置。
【請求項8】
処理容器と、
前記処理容器内に原料ガスを供給する原料供給装置と、
を備え、
前記原料供給装置は、
前記処理容器内に前記原料ガスを供給する原料供給路と、
前記原料供給路に介設されたバルブと、
前記原料供給路内の圧力を検出する圧力センサと、
前記原料供給路に接続され、前記原料供給路内の前記原料ガスを排気する原料排気路と、
前記原料排気路に介設され、開度が調整されることにより前記原料供給路内の圧力を制御する開度調整機構と、
前記圧力センサの検出値に基づいて前記開度調整機構の前記開度を調整する制御部と、
を有
前記開度調整機構は、
空気圧により弁体を開閉するエアオペレートバルブと、
前記エアオペレートバルブに導入される空気圧を調整する電空レギュレータと、
を含み、
前記エアオペレートバルブは、ALDバルブである、
成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原料供給装置及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
処理容器内に原料ガスを間欠的に供給して膜を成膜する際、成膜に先立って原料ガスを処理容器内に供給することなく間欠的に排気する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-52346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、成膜開始時の原料ガスの流量を短時間で安定化できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による原料供給装置は、処理容器内に原料ガスを供給する原料供給路と、前記原料供給路に介設されたバルブと、前記原料供給路内の圧力を検出する圧力センサと、前記原料供給路に接続され、前記原料供給路内の前記原料ガスを排気する原料排気路と、前記原料排気路に介設され、開度が調整されることにより前記原料供給路内の圧力を制御する開度調整機構と、前記圧力センサの検出値に基づいて前記開度調整機構の前記開度を調整する制御部と、を有前記開度調整機構は、空気圧により弁体を開閉するエアオペレートバルブと、前記エアオペレートバルブに導入される空気圧を調整する電空レギュレータと、を含み、前記エアオペレートバルブは、ALDバルブである
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、成膜開始時の原料ガスの流量を短時間で安定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の原料供給装置を備える成膜装置の一例を示す概略図
図2】実施形態の成膜方法の一例を示す図
図3】初期流量安定化工程及び成膜工程におけるタンク圧の変化の一例を示す図
図4】成膜工程におけるガス供給シーケンスの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〔成膜装置〕
図1を参照し、実施形態の原料供給装置を備える成膜装置について説明する。図1は、実施形態の原料供給装置を備える成膜装置の一例を示す概略図である。実施形態の成膜装置は、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法による成膜及び化学的気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法による成膜が実施可能な装置として構成されている。
【0010】
成膜装置は、処理容器1、載置台2、シャワーヘッド3、排気部4、ガス供給部5、制御部6、バルブ開度制御部120等を備える。
【0011】
処理容器1は、アルミニウム等の金属により構成され、略円筒状を有する。処理容器1は、基板の一例である半導体ウエハ(以下「ウエハW」という。)を収容する。処理容器1の側壁には、ウエハWを搬入又は搬出するための搬入出口11が形成されている。搬入出口11は、ゲートバルブ12により開閉される。処理容器1の本体の上には、断面が矩形状をなす円環状の排気ダクト13が設けられている。排気ダクト13には、内周面に沿ってスリット13aが形成されている。排気ダクト13の外壁には、排気口13bが形成されている。排気ダクト13の上面には、処理容器1の上部開口を塞ぐように天壁14が設けられている。排気ダクト13と天壁14との間は、シールリング15で気密に封止されている。
【0012】
載置台2は、処理容器1内でウエハWを水平に支持する。載置台2は、ウエハWよりも大きい円板状を有し、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料や、アルミニウムやニッケル合金等の金属材料で構成されている。載置台2の内部には、ウエハWを加熱するためのヒータ21が埋め込まれている。ヒータ21は、ヒータ電源(図示せず)から給電されて発熱する。そして、載置台2の上面の近傍に設けられた熱電対(図示せず)の温度信号によりヒータ21の出力を制御することにより、ウエハWが所定の温度に制御される。載置台2には、上面の外周領域及び側面を覆うようにアルミナ等のセラミックスにより形成されたカバー部材22が設けられている。
【0013】
載置台2は、支持部材23に支持されている。支持部材23は、載置台2の底面中央から処理容器1の底壁に形成された孔部を貫通して処理容器1の下方に延び、その下端が昇降機構24に接続されている。載置台2は、昇降機構24により、図1で示す処理位置と、その下方の二点鎖線で示すウエハWの搬送が可能な搬送位置との間で昇降する。支持部材23の処理容器1の下方には、鍔部25が取り付けられている。処理容器1の底面と鍔部25との間には、ベローズ26が設けられている。ベローズ26は、処理容器1内の雰囲気を外気と区画し、載置台2の昇降動作にともなって伸縮する。
【0014】
処理容器1の底面近傍には、昇降板27aから上方に突出するように3本(2本のみ図示)のウエハ支持ピン27が設けられている。ウエハ支持ピン27は、処理容器1の下方に設けられた昇降機構28により昇降板27aを介して昇降する。ウエハ支持ピン27は、搬送位置にある載置台2に設けられた貫通孔2aに挿通されて載置台2の上面に対して突没可能となっている。ウエハ支持ピン27を昇降させることにより、搬送ロボット(図示せず)と載置台2との間でウエハWの受け渡しが行われる。
【0015】
シャワーヘッド3は、処理容器1内に処理ガスをシャワー状に供給する。シャワーヘッド3は、例えば金属材料により形成され、載置台2に対向して配置されている。シャワーヘッド3は、載置台2とほぼ同じ直径を有する。シャワーヘッド3は、本体部31及びシャワープレート32を含む。本体部31は、天壁14の下面に固定されている。シャワープレート32は、本体部31の下に接続されている。本体部31とシャワープレート32との間には、ガス拡散空間33が形成されている。ガス拡散空間33には、天壁14及び本体部31の中央を貫通するようにガス導入孔36が設けられている。シャワープレート32の周縁部には、下方に突出する環状突起部34が形成されている。シャワープレート32における環状突起部34の内側の平坦面には、多数のガス吐出孔35が形成されている。
【0016】
載置台2が処理位置に移動した状態では、載置台2とシャワープレート32との間に処理空間37が形成され、カバー部材22の上面と環状突起部34とが近接して環状隙間38が形成される。
【0017】
排気部4は、処理容器1の内部を排気する。排気部4は、排気配管41及び排気機構42を含む。排気配管41は、排気口13bに接続されている。排気機構42は、排気配管41に接続されており、真空ポンプ、圧力制御バルブ等を含む。排気機構42は、排気ダクト13及び排気配管41を介して、処理容器1内のガスを排気する。
【0018】
ガス供給部5は、シャワーヘッド3に各種のガスを供給する。ガス供給部5は、原料ガス供給機構51、第1の還元ガス供給源52、第2の還元ガス供給源53、第1のパージガス供給源54、第2のパージガス供給源55及び第3の還元ガス供給源56を含む。
【0019】
原料ガス供給機構51は、処理容器1内に、ガス供給ライン61を介して原料ガスの一例である六塩化タングステン(WCl)ガスを供給する。ガス供給ライン61は、原料ガス供給機構51から延びる原料供給路である。
【0020】
ガス供給ライン61には、原料ガス供給機構51側から順に、バルブ96a、バルブ96b、流量計97、貯留タンク80及びバルブ73が介設されている。
【0021】
バルブ96a,96bは、ガス供給ライン61における成膜原料タンク91の近傍に設けられている。
【0022】
流量計97は、ガス供給ライン61を流れるWClガスの流量を検出する。流量計97は、例えば質量流量計(MFM:Mass Flow Meter)である。
【0023】
貯留タンク80は、WClガスを一時的に貯留する。貯留タンク80が設けられていることにより、処理容器1内に短時間で大流量のWClガスを供給できる。貯留タンク80は、バッファタンク、フィルタンクとも称される。貯留タンク80には、内部の圧力を検出する圧力センサ80aが設けられている。圧力センサ80aは、貯留タンク80内の圧力を検出し、検出値をバルブ開度制御部120に送信する。圧力センサ80aは、例えばキャパシタンスマノメータである。
【0024】
バルブ73は、ALDの際にガスの供給及び停止を切り替えるためのバルブである。バルブ73は、例えば高速で開閉可能なALDバルブである。ALDバルブは、0.5秒以下の間隔で開閉可能であることが好ましく、0.01秒以下の間隔で開閉可能であることがより好ましい。
【0025】
原料ガス供給機構51は、成膜原料タンク91を含む。成膜原料タンク91は、常温で固体の固体原料であるWClを収容する。成膜原料タンク91の周囲には、ヒータ91aが設けられている。ヒータ91aは、成膜原料タンク91内のWClを適宜の温度に加熱して、WClを昇華させる。WClが昇華すると、WClガスが生成される。成膜原料タンク91内には、ガス供給ライン61が上方から挿入されている。
【0026】
原料ガス供給機構51には、成膜原料タンク91内に上方からキャリアガス配管92の一端が挿入されている。キャリアガス配管92の他端は、キャリアガス供給源93に接続されている。キャリアガス供給源93は、キャリアガス配管92にキャリアガスの一例である窒素(N)ガスを供給する。
【0027】
キャリアガス配管92には、キャリアガス供給源93側から順に、流量制御器94、バルブ95a及びバルブ95bが介設されている。流量制御器94は、キャリアガス配管92を流れるNガスの流量を制御する。流量制御器94は、例えば質量流量制御器(MFC:Mass Flow Controller)である。
【0028】
キャリアガス配管92におけるバルブ95aとバルブ95bとの間の位置と、ガス供給ライン61におけるバルブ96aとバルブ96bとの間の位置とを繋ぐように、バイパス配管98が設けられている。バイパス配管98は、キャリアガス供給源93からキャリアガス配管92に供給されるキャリアNガスを、成膜原料タンク91を経由することなくガス供給ライン61に供給する配管である。バイパス配管98には、バルブ99が介設されている。バルブ95b,96aを閉じてバルブ95a,99,96bを開くことにより、キャリアガス供給源93から供給されるNガスがキャリアガス配管92及びバイパス配管98を経て、ガス供給ライン61に供給される。これにより、ガス供給ライン61をパージできる。
【0029】
ガス供給ライン61におけるバルブ96bと流量計97との間には、希釈ガスの一例であるNガスを供給する希釈ガス供給ライン100の一端が合流している。希釈ガス供給ライン100の他端には、Nガスの供給源である希釈ガス供給源101が設けられている。希釈ガス供給ライン100には、希釈ガス供給源101側から順に、流量制御器102及びバルブ103が介設されている。流量制御器102は、希釈ガス供給ライン100を流れるNガスの流量を制御する。流量制御器102は、例えば質量流量制御器(MFC)である。
【0030】
ガス供給ライン61における貯留タンク80とバルブ73との間には、原料排気路104の一端が接続されている。原料排気路104の他端は、排気配管41に接続されている。これにより、排気機構42により、原料排気路104を介して貯留タンク80内を排気できる。原料排気路104は、エバックライン(Evacuation Line)とも称される。
【0031】
原料排気路104には、ガス供給ライン61側から順に開度調整機構105及びバルブ106が介設されている。
【0032】
開度調整機構105は、開度が調整されることにより、原料排気路104のコンダクタンスを制御し、原料排気路104を流れるWClガスの流量を制御する。これにより、貯留タンク80を含むガス供給ライン61内の圧力が制御される。開度調整機構105の開度は、バルブ開度制御部120により制御される。開度調整機構105は、エアオペレートバルブ105a及び電空レギュレータ105bを含む。エアオペレートバルブ105aは、空気圧により弁体を開閉することにより、原料排気路104のコンダクタンスを制御する。エアオペレートバルブ105aは、エアオペバルブ、エアオペレーションバルブとも称される。電空レギュレータ105bは、バルブ開度制御部120が出力する電気信号に比例してエアオペレートバルブ105aに導入する空気圧を制御する。このように開度調整機構105がエアオペレートバルブ105a及び電空レギュレータ105bを含む場合、バルブの開閉を短時間で行うことができるので、バルブの開閉に伴う遅延時間(ディレイタイム)を短くできる。また、エアオペレートバルブ105aは、該遅延時間を特に短くできるという観点から、高速で開閉可能なALDバルブであることが好ましい。ALDバルブは、0.5秒以下の間隔で開閉可能であることが好ましく、0.01秒以下の間隔で開閉可能であることがより好ましい。なお、開度調整機構105は、ハンドルを回転させることで弁体を開閉するマニュアルバルブと、マニュアルバルブのハンドルを回転させるモータと、を含む構成であってもよい。
【0033】
バルブ106は、原料排気路を開閉するためのバルブである。バルブ106を開くことで、原料排気路104内が排気機構42により排気される。
【0034】
第1の還元ガス供給源52は、処理容器1内に、ガス供給ライン62を介して還元ガスの一例である水素(H)ガスを供給する。ガス供給ライン62は、第1の還元ガス供給源52から延びるラインである。ガス供給ライン61及びガス供給ライン62は合流配管72に合流しており、合流配管72はガス導入孔36に接続されている。ガス供給ライン62には、第1の還元ガス供給源52側から順に、流量制御器82、貯留タンク81及びバルブ74が介設されている。
【0035】
流量制御器82は、ガス供給ライン62を流れるHガスの流量を制御する。流量制御器82は、例えば質量流量制御器(MFC)である。
【0036】
貯留タンク81は、Hガスを一時的に貯留する。貯留タンク81が設けられていることにより、処理容器1内に短時間で大流量のHガスを供給できる。貯留タンク81は、バッファタンク、フィルタンクとも称される。
【0037】
バルブ74は、ALDの際にガスの供給及び停止を切り替えるためのバルブである。バルブ74は、例えば高速で開閉可能なALDバルブである。ALDバルブは、0.01秒から1.0秒の間隔で開閉可能であることが好ましい。
【0038】
第2の還元ガス供給源53は、処理容器1内に、ガス供給ライン63を介して還元ガスの一例であるHガスを供給する。ガス供給ライン63は、第2の還元ガス供給源53から延びるラインである。ガス供給ライン63には、第2の還元ガス供給源53側から順に、流量制御器83、バルブ88及びバルブ75が介設されている。流量制御器83は、ガス供給ライン63を流れるHガスの流量を制御する。流量制御器83は、例えば質量流量制御器(MFC)である。バルブ88及びバルブ74は、ALDの際にガスの供給及び停止を切り替えるためのバルブである。バルブ88及びバルブ74は、例えば高速で開閉可能なALDバルブである。ALDバルブは、0.01秒から1.0秒の間隔で開閉可能であることが好ましい。
【0039】
第1のパージガス供給源54は、処理容器1内に、ガス供給ライン64を介してパージガスの一例であるNガスを供給する。ガス供給ライン64は、第1のパージガス供給源54から延び、ガス供給ライン61側にNガスを供給するラインである。ガス供給ライン64は、ALD法による成膜中に常にNガスを供給するガス供給ライン66と、パージステップのときのみNガスを供給するガス供給ライン67とに分岐している。ガス供給ライン66及びガス供給ライン67は第1の接続ライン70に接続され、第1の接続ライン70はガス供給ライン61に接続されている。ガス供給ライン66には、第1のパージガス供給源54側から順に、流量制御器84及びバルブ76が介設されている。ガス供給ライン67には、第1のパージガス供給源54側から順に、流量制御器85及びバルブ77が介設されている。流量制御器84,85は、ガス供給ライン66,67を流れるNガスの流量を制御する。流量制御器84,85は、例えば質量流量制御器(MFC)である。バルブ76,77は、ALDの際にガスの供給及び停止を切り替えるためのバルブである。バルブ76,77は、例えば高速で開閉可能なALDバルブである。ALDバルブは、0.01秒から1.0秒の間隔で開閉可能であることが好ましい。
【0040】
第2のパージガス供給源55は、処理容器1内に、ガス供給ライン65を介してパージガスの一例であるNガスを供給する。ガス供給ライン65は、第2のパージガス供給源55から延び、ガス供給ライン62側にNガスを供給するラインである。ガス供給ライン65は、ALD法による成膜中に常にNガスを供給するガス供給ライン68と、パージステップのときのみNガスを供給するガス供給ライン69とに分岐している。ガス供給ライン68及びガス供給ライン69は第2の接続ライン71に接続され、第2の接続ライン71はガス供給ライン62に接続されている。ガス供給ライン68には、第2のパージガス供給源55側から順に、流量制御器86及びバルブ78が介設されている。ガス供給ライン69には、第2のパージガス供給源55側から順に、流量制御器87及びバルブ79が介設されている。流量制御器86,87は、ガス供給ライン68,69を流れるNガスの流量を制御する。流量制御器86,87は、例えば質量流量制御器(MFC)である。バルブ78,79は、ALDの際にガスの供給及び停止を切り替えるためのバルブである。バルブ78,79は、例えば高速で開閉可能なALDバルブである。ALDバルブは、0.01秒から1.0秒の間隔で開閉可能であることが好ましい。
【0041】
第3の還元ガス供給源56は、処理容器1内に、ガス供給ライン63aを介して還元ガスの一例であるモノシラン(SiH)ガスを供給する。ガス供給ライン63aは、第3の還元ガス供給源56から延び、ガス供給ライン63に接続されている。ガス供給ライン63aには、第3の還元ガス供給源56側から順に、流量制御器83a及びバルブ88aが介設されている。流量制御器83aは、ガス供給ライン63aを流れるSiHガスの流量を制御する。流量制御器83aは、例えば質量流量制御器(MFC)である。
【0042】
制御部6は、各構成部、具体的にはバルブ、電源、ヒータ、ポンプ等を制御するマイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えたプロセスコントローラ、ユーザーインターフェース及び記憶部を有する。プロセスコントローラには、成膜装置の各構成部が電気的に接続されて制御される構成となっている。ユーザーインターフェースは、プロセスコントローラに接続されており、オペレータが成膜装置の各構成部を管理するためにコマンドの入力操作などを行うキーボードや、成膜装置の各構成部の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなっている。記憶部もプロセスコントローラに接続されている。記憶部には、成膜装置で実行される各種処理をプロセスコントローラの制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて成膜装置の各構成部に所定の処理を実行させるための制御プログラム、即ち処理レシピや、各種データベース等が格納されている。処理レシピは、記憶部の中の記憶媒体(図示せず)に記憶されている。記憶媒体は、例えばハードディスク、CDROM、DVD、半導体メモリであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介して処理レシピを適宜伝送させるようにしてもよい。必要に応じて、ユーザーインターフェースからの指示等にて所定の処理レシピを記憶部から呼び出してプロセスコントローラに実行させることで、プロセスコントローラの制御の下、成膜装置での所望の処理が行われる。
【0043】
バルブ開度制御部120は、圧力センサ80aの検出値、即ち、貯留タンク80内の圧力(以下「タンク圧」ともいう。)に基づいて、開度調整機構105の開度を調整する。例えばバルブ開度制御部120は、処理容器1内にWClガスを供給することなく、原料排気路104を介してWClガスを排気しながら圧力センサ80aの検出値が目標値に到達して安定化する(定常状態となる)ように開度調整機構105の開度を調整する。目標値は、例えば処理容器1内にWClガスを供給して処理容器1内で処理を実行しているときの圧力センサ80aの検出値に基づいて定められる。
【0044】
〔成膜方法〕
図1から図4までを参照し、実施形態の成膜方法として、図1に示される成膜装置を用いてALD法によりウエハW上にタングステン膜を成膜する場合を例に挙げて説明する。図2は、実施形態の成膜方法の一例を示す図である。
【0045】
図2に示されるように、実施形態の成膜方法は、搬入工程、初期流量安定化工程、成膜工程及び搬出工程を含む。以下の説明では、搬入工程を開始する前の時点において、成膜装置のバルブ73~79,88,88a,99が閉じられており、バルブ95a,95b,96a,96b,103,106が開かれており、開度調整機構105が「全閉」であるものとする。
【0046】
搬入工程では、処理容器1内にウエハWを搬入する。搬入工程では、載置台2を搬送位置に下降させた状態でゲートバルブ12を開き、搬送ロボット(図示せず)によりウエハWを、搬入出口11を介して処理容器1内に搬入し、ヒータ21により所定温度に加熱された載置台2上に載置する。続いて、載置台2を処理位置まで上昇させ、処理容器1内を所定圧力まで減圧する。
【0047】
初期流量安定化工程は、搬入工程が終了した後に実行される。初期流量安定化工程では、載置台2上のウエハWの温度を安定化させる。例えば、バルブ76,78を開くことにより、第1のパージガス供給源54及び第2のパージガス供給源55から処理容器1内にNガスを供給して圧力を上昇させ、載置台2上のウエハWの温度を安定させる。
【0048】
また、初期流量安定化工程では、処理容器1内にWClガスを供給することなく、原料排気路104を介してWClガスを排気しながら、貯留タンク80内の圧力が目標値に到達して安定化する(定常状態となる)ように開度調整機構105の開度を調整する。貯留タンク80内の圧力は、圧力センサ80aにより検出される。
【0049】
図3は、初期流量安定化工程及び成膜工程におけるタンク圧の変化の一例を示す図である。図3中、横軸は時間を示し、縦軸はタンク圧を示す。初期流量安定化工程では、図3の時刻tにおいて、バルブ開度制御部120は、開度調整機構105の開度を「閉」から「全開」に制御する。これにより、貯留タンク80内のWClガスが原料排気路104を介して排気機構42により排気されてタンク圧が低下する。
【0050】
続いて、タンク圧が目標値Pよりも低くなった後、例えば図3の時刻tから所定時間が経過した時刻tにおいて、バルブ開度制御部120は、タンク圧が目標値Pに到達して安定化するように開度調整機構105の開度を「閉」と「全開」との間で調整する。
【0051】
目標値Pは、例えば処理容器1内にWClガスを供給して処理容器1内で処理を実行しているときのタンク圧に基づいて定められる。初期流量安定化工程が1回目の場合には、目標値Pは、例えば該初期流量安定化工程に先立って実行されるダミー工程におけるタンク圧に基づいて定められる。ダミー工程は、例えば処理容器1内の載置台2上にダミーウエハを載置した状態で、後述する成膜工程と同じガス供給シーケンスで処理容器1内にWClガスを供給する工程である。初期流量安定化工程が2回目以降の場合には、目標値Pは、例えば前回の成膜工程において設定された目標値であることが好ましい。これにより、ウエハW間ばらつき(W2W:wafer-to-wafer variation)を低減できる。
【0052】
目標値Pは、例えば図3に示されるように、処理容器1内にWClガスを供給して処理容器1内で処理を実行しているときの最大タンク圧Pmaxよりも所定圧力だけ小さい圧力であることが好ましい。所定圧力は、初期流量安定化工程から成膜工程への切り替える際、即ち、WClガスを供給する先を原料排気路104からガス供給ライン61に切り替える際に生じる開度調整機構105及びバルブ73の開閉に伴う遅延時間に応じて定められる。ただし、バルブ73及び開度調整機構105がALDバルブであり、該遅延時間がほとんどない場合には、目標値Pは処理容器1内にWClガスを供給して処理容器1内で処理を実行しているときの最大タンク圧Pmaxと同じ圧力であってよい。
【0053】
このように、初期流量安定化工程では、載置台2上のウエハWの温度安定化と並行して、タンク圧が目標値Pに到達して安定化するように開度調整機構105の開度を調整する。これにより、タンク圧を目標値Pに安定化させる処理の追加に伴う生産性の低下を回避できる。
【0054】
成膜工程は、初期流量安定化工程が終了した後に実行される。成膜工程では、ウエハWにタングステン膜を成膜する成膜処理を行う。初期流量安定化工程においてタンク圧が目標値Pに安定化した後、例えば図3の時刻tにおいて、バルブ開度制御部120は開度調整機構105の開度を「全閉」に制御し、制御部6はバルブ73を開く。これにより、貯留タンク80内に貯留されたWClガスは、原料排気路104を介して排気されることなく、処理容器1内に供給されてタンク圧が低下する。このとき、開度調整機構105とバルブ73の開閉タイミングを同期させることが好ましい。これにより、初期流量安定化工程から成膜工程に切り替える際のタンク圧の変動を小さくできる。例えば、開度調整機構105及びバルブ73としてALDバルブを用いることにより、開度調整機構105とバルブ73の開閉タイミングを同期させることができる。バルブ73が開かれてから所定時間Topenが経過した時刻tにおいて、制御部6はバルブ73を閉じる。これにより、処理容器1内へのWClガスの供給が停止されるため、貯留タンク80内にWClガスが貯留されてタンク圧が高くなる。なお、所定時間Topenは、処理レシピ等により定められる時間である。
【0055】
続いて、バルブ73が閉じられてから所定時間Tcloseが経過した時刻tにおいて、制御部6はバルブ73を開く。これにより、貯留タンク80内に貯留されたWClガスが処理容器1内に供給されてタンク圧が低下する。なお、所定時間Tcloseは、処理レシピ等により定められる時間である。
【0056】
以降、バルブ73の開閉を繰り返すことにより、処理容器1内にWClガスを間欠的に供給する。なお、図3において、時刻t、t、t10はバルブ73を閉じるタイミングを示し、時刻t、tはバルブ73を開くタイミングを示す。
【0057】
ところで、成膜工程は、初期流量安定化工程の後に実行されるので、成膜工程の開始時においてタンク圧が目標値Pに安定化されている。これにより、成膜開始時(時刻t)のタンク圧は、成膜中(時刻t、t、t)のタンク圧と略同じ値となる。
【0058】
また、成膜工程では、バルブ73の開閉を繰り返しているときのタンク圧に基づいて、次回の初期流量安定化工程で用いる目標値を設定する。例えば、バルブ73の開閉を繰り返しているときの末期の所定回数(例えば10回)の最大タンク圧Pmaxの平均値に基づいて、次回の初期流量安定化工程で用いる目標値を設定する。
【0059】
図4は、成膜工程におけるガス供給シーケンスの一例を示す図である。図4に示されるように、成膜工程では、原料ガス供給ステップ、第1パージステップ、還元ガス供給ステップ及び第2パージステップを含む一連の動作を1サイクルとし、サイクル数を制御することで所望の膜厚のタングステン膜を成膜する。
【0060】
原料ガス供給ステップは、原料ガスであるWClガスを処理空間37に供給するステップである。原料ガス供給ステップでは、まず、バルブ76,78を開いた状態で、第1のパージガス供給源54及び第2のパージガス供給源55から、ガス供給ライン66及びガス供給ライン68を経てNガスを供給し続ける。また、バルブ73を開くことにより、原料ガス供給機構51からガス供給ライン61を経てWClガスを処理空間37に供給する。また、原料ガス供給ステップでは、第2の還元ガス供給源53から延びるガス供給ライン63を経て還元ガスとしてHガスを処理容器1内に供給してもよい。原料ガス供給ステップにおいてWClガスと同時に還元ガスを供給することにより、供給されたWClガスが活性化され、その後の還元ガス供給ステップの際の成膜反応が生じやすくなる。そのため、高いステップカバレッジを維持し、且つ1サイクルあたりの堆積膜厚を厚くして成膜速度を大きくすることができる。還元ガスの流量としては、原料ガス供給ステップにおいてCVD反応が生じない程度の流量とすることができる。
【0061】
第1パージステップは、処理空間37の余剰のWClガス等をパージするステップである。第1パージステップでは、ガス供給ライン66及びガス供給ライン68を介してのNガスの供給を継続した状態で、バルブ73を閉じてWClガスの供給を停止する。また、バルブ77,79を開くことにより、ガス供給ライン67及びガス供給ライン69からもNガス(フラッシュパージNガス)を供給し、大流量のNガスにより、処理空間37の余剰のWClガス等をパージする。ただし、フラッシュパージNガスは供給しなくてもよい。
【0062】
還元ガス供給ステップは、還元ガスであるHガスを処理空間37に供給するステップである。還元ガス供給ステップでは、バルブ77,79を閉じてガス供給ライン67及びガス供給ライン69からのNガスの供給を停止する。また、ガス供給ライン66及びガス供給ライン68を介してのNガスの供給を継続した状態で、バルブ74を開く。これにより、第1の還元ガス供給源52からガス供給ライン62を経て還元ガスとしてのHガスを処理空間37に供給する。このとき、Hガスは、貯留タンク81に一旦貯留された後に処理容器1内に供給される。還元ガス供給ステップにより、ウエハW上に吸着したWClガスが還元される。このときのHガスの流量は、十分に還元反応が生じる量とすることができる。
【0063】
第2パージステップは、処理空間37の余剰のHガスをパージするステップである。第2パージステップでは、ガス供給ライン66及びガス供給ライン68を介してのNガスの供給を継続した状態で、バルブ74を閉じてガス供給ライン62からのHガスの供給を停止する。また、バルブ77,79を開き、ガス供給ライン67及びガス供給ライン69からもNガス(フラッシュパージNガス)を供給し、大流量のNガスにより、処理空間37の余剰のHガスをパージする。ただし、フラッシュパージNガスは供給しなくてもよい。
【0064】
以上に説明した原料ガス供給ステップ、第1パージステップ、還元ガス供給ステップ及び第2パージステップを含む一連の動作を1サイクルとし、サイクル数を制御することで、所望の膜厚のタングステン膜を成膜できる。
【0065】
搬出工程は、成膜工程が終了した後に実行される。搬出工程では、載置台2を搬送位置まで下降させた状態でゲートバルブ12を開き、搬送ロボット(図示せず)によりウエハWを、搬入出口11を介して処理容器1外に搬出する。
【0066】
また、次に処理するウエハWがある場合には、搬出工程の後、再び搬入工程に戻り、初期流量安定化工程、成膜工程及び搬出工程を実行する。これにより、次のウエハWに対して所望の膜厚のタングステン膜を成膜できる。
【0067】
以上、実施形態によれば、処理容器1内にWClガスを供給してタングステン膜を成膜する際、成膜に先立って原料排気路104を介してWClガスを排気しながらタンク圧が目標値に到達して安定化するように開度調整機構105の開度を調整する。そして、目標値は、処理容器1内にWClガスを供給して処理容器1内で処理を実行しているときのタンク圧に基づいて定められる。これにより、成膜開始時のタンク圧は、成膜中のタンク圧と略同じ値となる。言い換えると、成膜開始時のタンク圧を成膜中のタンク圧に合わせることができる。そのため、成膜開始直後のタンク圧と成膜中のそれ以降の期間のタンク圧との間の差(ばらつき)が小さくなる。その結果、成膜開始直後のWClガスの流量と成膜中のそれ以降の期間のWClガスの流量との間の差(ばらつき)を小さくできる。このように、実施形態によれば、成膜開始時のWClガスの流量を短時間で安定化できる。
【0068】
また、実施形態によれば、タングステン膜の成膜を複数のウエハWに対して続けて行う場合、例えば初期流量安定化工程が2回目以降の場合には、目標値は前回の成膜工程において設定された目標値とすることができる。これにより、成膜開始時のタンク圧を直近の成膜工程に基づくタンク圧に合わせることができる。その結果、成膜開始時のWClガスの流量を直近の成膜工程におけるWClガスの流量に合わせることができるので、ウエハW間のWClガスの流量のばらつきを低減できる。特に、直近の成膜工程における末期の所定回数のタンク圧の平均値に基づいて初期流量安定化工程で用いる目標値を設定することにより、成膜開始時のタンク圧を直近の成膜工程の終了時のタンク圧に合わせることができる。その結果、ウエハW間のWClガスの流量のばらつきを特に低減できる。
【0069】
また、実施形態によれば、開度調整機構105の開度を調整することにより原料排気路104のコンダクタンスを制御して貯留タンク80内の圧力を制御する。このため、貯留タンク80内の圧力の調整幅が広い。また、外部から原料排気路104内にガスを導入して圧力を調整するものではないため、原料排気路104内のガス流の乱れの影響を低減できる。
【0070】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0071】
上記の実施形態では、搬入工程が終了した後に初期流量安定化工程を開始する場合を例示したが、本開示はこれに限定されない。初期流量安定化工程を開始するタイミングは、成膜工程を開始する前であればよい。例えば、初期流量安定化工程は、搬入工程を開始する前から開始してもよく、搬入工程の開始と同時に開始してもよく、搬入工程の途中から開始してもよい。このように、搬入工程が終了する前に初期流量安定化工程を開始することで、搬入工程と初期流量安定化工程とを同時進行させることができるので、成膜工程を開始するまでの時間を短縮でき、生産性が向上する。
【0072】
また、上記の実施形態では、バルブ開度制御部120が開度調整機構105の開度を調整する場合を例示して説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、バルブ開度制御部120に代えて制御部6が開度調整機構105の開度を調整するようしてもよい。
【0073】
また、上記の実施形態では、バルブ開度制御部120がガス供給ライン61内の圧力としての貯留タンク80内の圧力に基づいて開度調整機構105の開度を調整する場合を例示して説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、ガス供給ライン61に貯留タンク80が介設されていない場合、バルブ開度制御部120はガス供給ライン61に圧力センサを設け、該圧力センサの検出値に基づいて開度調整機構105を調整するようにしてもよい。
【0074】
また、上記の実施形態では、原料ガスとしてWClガスを用いてタングステン膜を成膜する場合を例に挙げて説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、WClガス等の他の塩化タングステンガスを用いることができ、WClガスを用いてもWClガスとほぼ同じ挙動を示す。WClガスを用いる場合、成膜原料としては常温で固体のWClを使用できる。また、例えば塩化モリブデンガスを用いてモリブデン膜を成膜する場合や、塩化タンタルガスを用いてタンタル膜を成膜する場合にも本発明を適用できる。これらの場合、成膜原料としては常温で固体の塩化モリブデンや塩化タンタルを使用できる。また、上記の実施形態では、固体原料を昇華させて原料ガスを生成していたが、液体原料を蒸発させて原料ガスを生成してもよい。
【0075】
また、上記の実施形態では、還元ガスとしてHガスを用いる場合を例に挙げて説明したが、本開示はこれに限定されない。還元ガスとしては、Hガスの他に、例えばSiHガス、Bガス、NHガス等を用いることもできる。Hガス、SiHガス、Bガス及びNHガスのうち2つ以上を供給できるようにしてもよい。また、これら以外の他の還元ガス、例えばPHガス、SiHClガスを用いてもよい。膜中の不純物をより低減して低抵抗値を得る観点からは、Hガスを用いることが好ましい。さらに、パージガス及びキャリアガスとしてNガスの代わりにArガス等の他の不活性ガスを用いることもできる。
【0076】
また、上記の実施形態では、基板として半導体ウエハを例に挙げて説明したが、半導体ウエハはシリコンウエハであってもよく、GaAs、SiC、GaN等の化合物半導体ウエハであってもよい。さらに、基板は半導体ウエハに限定されず、液晶表示装置等のFPD(フラットパネルディスプレイ)に用いるガラス基板や、セラミック基板等にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 処理容器
61 ガス供給ライン
73 バルブ
80 貯留タンク
80a 圧力センサ
104 原料排気路
105 開度調整機構
120 バルブ開度制御部
目標値
W ウエハ
図1
図2
図3
図4