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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】トランジスタ内負荷変調
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/02 20060101AFI20231110BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20231110BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
H03F1/02 188
H01L27/04 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021556730
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-30
(86)【国際出願番号】 US2020023128
(87)【国際公開番号】W WO2020197852
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】16/367,631
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592054856
【氏名又は名称】ウルフスピード インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】WOLFSPEED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モクティー、ズラーズミ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】トラン、フランク
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ヘドン
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/114698(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/035396(WO,A1)
【文献】特表2006-525749(JP,A)
【文献】特開2012-199746(JP,A)
【文献】特開2015-220680(JP,A)
【文献】特表2016-528782(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0271329(US,A1)
【文献】特開2003-282724(JP,A)
【文献】特開2018-125526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/02
H01L 21/822
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ダイを備える電力増幅器であって、
前記半導体ダイが、第1のトランジスタを含む主増幅器と、前記第1のトランジスタとは異なる第2のトランジスタを含むピーキング増幅器とを備え、
前記ピーキング増幅器が、前記第1及び第2のトランジスタのそれぞれのゲートに印加された共通ゲート・バイアスに応答して前記主増幅器の負荷インピーダンスを変調させるように構成されている、電力増幅器。
【請求項2】
前記共通ゲート・バイアスに基づき、前記半導体ダイ上の前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタとが、前記電力増幅器への入力信号の異なる電力レベルに応答して順にオンになるように構成されている、請求項1に記載の電力増幅器。
【請求項3】
前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタは、それぞれ異なる第1の閾値電圧及び第2の閾値電圧を有する、請求項1に記載の電力増幅器。
【請求項4】
前記半導体ダイが、
前記半導体ダイ上の前記主増幅器の入力と前記ピーキング増幅器の入力とを電気的に接続して入力信号をそれらに与える入力伝送線路、及び/又は
前記半導体ダイ上の前記主増幅器の出力と前記ピーキング増幅器の出力とを電気的に接続する出力伝送線路
をさらに備える、請求項1から3までのいずれか一項に記載の電力増幅器。
【請求項5】
前記入力伝送線路又は前記出力伝送線路のうちの少なくとも一方が、前記入力信号の周波数成分に基づき、所定の位相ずれを間に伴って、前記それぞれの入力に信号を与えるように、又は前記それぞれの出力からの信号を与えるように構成されている電気長を有する、請求項4に記載の電力増幅器。
【請求項6】
前記第1及び第2のトランジスタの前記それぞれのゲートが、それぞれの細長ゲート・フィンガを備え、前記入力伝送線路が、前記第1及び第2のトランジスタの前記それぞれの細長ゲート・フィンガを電気的に接続して前記共通ゲート・バイアスをそれらに与えるゲート・ランナを備える、請求項5に記載の電力増幅器。
【請求項7】
前記第1及び第2のトランジスタが、前記それぞれの細長ゲート・フィンガの対の間に延在するそれぞれの細長ドレイン・コンタクトをさらに備え、前記出力伝送線路が、前記第1及び第2のトランジスタの前記それぞれの細長ドレイン・コンタクトに電気的に接続するドレイン・ランナを備える、請求項6に記載の電力増幅器。
【請求項8】
前記入力伝送線路の前記電気長が、前記第1及び第2のトランジスタの前記それぞれの細長ゲート・フィンガ間に延在する前記ゲート・ランナの一部によって画定され、及び/又は
前記出力伝送線路の前記電気長が、前記第1及び第2のトランジスタの前記それぞれの細長ドレイン・コンタクト間に延在する前記ドレイン・ランナの一部によって画定されている、
請求項に記載の電力増幅器。
【請求項9】
前記ゲート・ランナの前記一部及び/又は前記ドレイン・ランナの前記一部には、前記第1及び第2のトランジスタへの電気的な接続がない
、請求項8に記載の電力増幅器。
【請求項10】
前記第1及び第2のトランジスタの前記それぞれの細長ゲート・フィンガが、前記ゲート・ランナの前記一部の両端におけるそれぞれ第1のゲート・バス及び第2のゲート・バスによって前記ゲート・ランナに接続され、前記第1及び第2のトランジスタの前記それぞれの細長ドレイン・コンタクトが、前記ドレイン・ランナの前記一部の両端におけるそれぞれ第1のドレイン・バス及び第2のドレイン・バスによって前記ドレイン・ランナに接続されている、請求項8又は9に記載の電力増幅器。
【請求項11】
前記第1のトランジスタの前記それぞれの細長ゲート・フィンガが、前記半導体ダイ上の前記第2のトランジスタの前記それぞれの細長ゲート・フィンガとは材料が異なり、ドーパント濃度が異なり、厚みが異なり、及び/又はそれぞれのチャネル領域に対する深さが異なる、請求項8乃至10のいずれか一項に記載の電力増幅器。
【請求項12】
前記電気長が、前記入力信号の周波数成分に対応する波長の1/4で構成されている
、請求項5から11までのいずれか一項に記載の電力増幅器。
【請求項13】
前記入力伝送線路又は前記出力伝送線路のうちの少なくとも一方が、前記半導体ダイに分布素子回路を含み、そして集中素子がない、請求項5から11までのいずれか一項に記載の電力増幅器。
【請求項14】
前記半導体ダイが、前記第1及び第2の閾値電圧とは異なる第3の閾値電圧を有する第3のトランジスタを含む第3の増幅器をさらに備える、請求項5から11までのいずれか一項に記載の電力増幅器。
【請求項15】
前記主増幅器の前記第1のトランジスタは、複数の前記第1のトランジスタを含み、前記ピーキング増幅器の前記第2のトランジスタは、前記複数の第1のトランジスタよりも個数が多い複数の前記第2のトランジスタを含む、請求項5から11までのいずれか一項に記載の電力増幅器。
【請求項16】
前記第1及び第2のトランジスタは、高電子移動度トランジスタ(HEMT)又は金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を含む、請求項5から11までのいずれか一項に記載の電力増幅器。
【請求項17】
前記第3の増幅器は、前記電力増幅器への前記入力信号を受信するように構成された入力と、前記第1及び第2のトランジスタの前記それぞれのゲートのうちの1つ又は複数に結合された出力と、を有するドライバ増幅器を含む、請求項14に記載の電力増幅器。
【請求項18】
半導体ダイと、
前記半導体ダイ上の第1の増幅器であって、第1の閾値電圧を有し第1のゲート・フィンガを備える複数の第1のトランジスタを備える、第1の増幅器と、
前記半導体ダイ上の第2の増幅器であって、前記第1の閾値電圧とは異なる第2の閾値電圧を有し第2のゲート・フィンガを備える複数の第2のトランジスタを備える、第2の増幅器と、
前記半導体ダイ上のゲート・ランナであって、前記第1の増幅器と前記第2の増幅器とに共通ゲート・バイアスを印加するように前記第1のゲート・フィンガと前記第2のゲート・フィンガとを電気的に接続する、ゲート・ランナと、を備え、
前記第1のゲート・フィンガと前記第2のゲート・フィンガとの間に延在する前記ゲート・ランナの一部が、前記第1及び第2の増幅器への無線周波数(RF)入力信号の周波数成分に基づいている電気長を有する、半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年3月28日に米国特許商標庁に出願された米国特許出願第16/367,631号の優先権の利益を主張するものであり、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示は、マイクロ電子デバイスに関し、より詳細には、高出力電界効果トランジスタに関する。
【背景技術】
【0003】
近年、無線周波数(500MHz)、Sバンド(3GHz)、及びXバンド(10GHz)などの高周波で動作しながら高耐電力特性を必要とする電気回路が益々普及してきている。高出力、高周波の回路の増加により、無線周波数やマイクロ波周波数で確実に動作することができる一方で、なお高電力負荷に対処することができる半導体素子の需要が付随して高まってきている。
【0004】
通信システムにおける無線周波数(RF)電力増幅器は、無線通信に必要な高電力を発生させる役割を担うことができる。電力増幅器(PA)は、1つ又は複数の能動トランジスタと入力及び出力ネットワークにおける受動整合ネットワークとを含み得る。RF電力用途が異なれば、例えば、出力電力や効率に関して、電力増幅器に対する要件も異なる場合がある。例えば、基地局で使用されるRF PAは、ピーク電力だけでなく、ピーク電力よりも数デシベル(dB)低いことがある平均電力においても効率的である必要があり得る。しかし、ピーク効率がほぼピーク電力で達する可能性があるため、この目標を達成するのは難しいことであり得る。バックオフ電力時や平均電力時には、効率が急激に下がる傾向にある。
【0005】
バックオフ電力の効率化を図るために、ドハティ実装を含む、いくつかのPAアーキテクチャ・ソリューションが提案されている。様々なドハティ増幅器の実装形態が、Pengellyらによる米国特許第6,700,444号、Pengellyらによる米国特許第6,737,922号、Pengellyらによる米国特許第6,791,417号、Pengellyらによる米国特許第7,193,473号、Pribbleらによる米国特許第9,407,214号、及びGustafssonらによる「A Wideband and Compact GaN MMIC Doherty Amplifier for Microwave Link Applicalions」、IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques,Vol.61,No.2(2013年2月)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第6,700,444号
【文献】米国特許第6,737,922号
【文献】米国特許第6,791,417号
【文献】米国特許第7,193,473号
【文献】米国特許第9,407,214号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Gustafssonらによる「A Wideband and Compact GaN MMIC Doherty Amplifier for Microwave Link Applicalions」、IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques,Vol.61,No.2(2013年2月)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のいくつかの実施例によれば、電力増幅器は、主増幅器及びピーキング増幅器を有する半導体ダイを含む。主増幅器は、少なくとも1つの第1のトランジスタを含み、ピーキング増幅器は、第1のトランジスタとは異なる少なくとも1つの第2のトランジスタを含む。ピーキング増幅器は、第1及び第2のトランジスタのそれぞれのゲートに印加される共通ゲート・バイアスに応答して、主増幅器の負荷インピーダンスを変調させるように構成されている。
【0009】
いくつかの実施例では、共通ゲート・バイアスに基づいて、半導体ダイ上の第1のトランジスタと第2のトランジスタとは、電力増幅器への入力信号の異なる電力レベルに応答して順にオンになるように構成され得る。
【0010】
いくつかの実施例では、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタは、それぞれ第1の閾値電圧及び第2の閾値電圧を有し得る。第1の閾値電圧は、第2の閾値電圧とは異なるものであり得る。例えば、第1の閾値電圧は、第2の閾値電圧より低くてもよい。
【0011】
いくつかの実施例では、半導体ダイは、半導体ダイ上の主増幅器の入力とピーキング増幅器の入力とを電気的に接続して入力信号をそれらに与える入力伝送線路をさらに含み得る。
【0012】
いくつかの実施例では、半導体ダイは、半導体ダイ上の主増幅器の出力とピーキング増幅器の出力とを電気的に接続する出力伝送線路をさらに含み得る。
【0013】
いくつかの実施例では、入力伝送線路又は出力伝送線路のうちの少なくとも一方は、入力信号の周波数成分に基づき、所定の位相ずれを間に伴って、それぞれの入力に信号を与えるように、又はそれぞれの出力からの信号を与えるように構成されている電気長を有する。
【0014】
いくつかの実施例では、第1のトランジスタのゲートと第2のトランジスタのゲートとは、それぞれの細長ゲート・フィンガを含み得る。入力伝送線路は、第1のトランジスタの細長ゲート・フィンガと第2のトランジスタの細長ゲート・フィンガとを電気的に接続して、それらに共通ゲート・バイアスを与えるゲート・ランナであり得る。
【0015】
いくつかの実施例では、第1のトランジスタと第2のトランジスタとは、それぞれの細長ゲート・フィンガの対の間に延在するそれぞれの細長ドレイン・コンタクトをさらに含み得る。出力伝送線路は、第1のトランジスタの細長ドレイン・コンタクトと第2のトランジスタの細長ドレイン・コンタクトとを電気的に接続するドレイン・ランナであり得る。
【0016】
いくつかの実施例では、入力伝送線路の電気長は、第1のトランジスタの細長ゲート・フィンガと第2のトランジスタの細長ゲート・フィンガとの間に延在するゲート・ランナの一部によって画定され得る。
【0017】
いくつかの実施例では、出力伝送線路の電気長は、第1のトランジスタの細長ドレイン・コンタクトと第2のトランジスタの細長ドレイン・コンタクトとの間に延在するドレイン・ランナの一部によって画定され得る。
【0018】
いくつかの実施例では、ゲート・ランナの一部及び/又はドレイン・ランナの一部は、第1及び第2のトランジスタへの電気的な接続がないことがあり得る。
【0019】
いくつかの実施例では、第1のトランジスタの細長ゲート・フィンガ及び第2のトランジスタの細長ゲート・フィンガは、ゲート・ランナの一部の両端におけるそれぞれ第1のゲート・バス及び第2のゲート・バスによって、ゲート・ランナに接続され得る。
【0020】
いくつかの実施例では、第1のトランジスタの細長ドレイン・コンタクト及び第2のトランジスタの細長ドレイン・コンタクトは、ドレイン・ランナの一部の両端におけるそれぞれ第1のドレイン・バス及び第2のドレイン・バスによって、ドレイン・ランナに接続され得る。
【0021】
いくつかの実施例では、第1のトランジスタのそれぞれの細長ゲート・フィンガは、半導体ダイ上の第2のトランジスタのそれぞれの細長ゲート・フィンガとは材料が異なり、ドーパント濃度が異なり、厚みが異なり、及び/又はそれぞれのチャネル領域に対する深さが異なり得る。
【0022】
いくつかの実施例では、電気長は、入力信号の周波数成分に対応する波長の1/4であり得る。
【0023】
いくつかの実施例では、入力伝送線路又は出力伝送線路のうちの少なくとも一方が、半導体ダイに分布素子回路を含み得る。
【0024】
いくつかの実施例では、入力伝送線路又は出力伝送線路のうちの少なくとも一方には、集中素子がないことがあり得る。
【0025】
いくつかの実施例では、半導体ダイは、第1及び第2の閾値電圧とは異なる第3の閾値電圧を有する第3のトランジスタを含む第3の増幅器をさらに含み得る。
【0026】
いくつかの実施例では、第3の増幅器は、電力増幅器への入力信号を受信するように構成された入力と、第1又は第2のトランジスタのそれぞれのゲートのうちの1つ又は複数に結合された出力と、を有するドライバ増幅器であり得る。
【0027】
いくつかの実施例では、第1のトランジスタは、主増幅器の複数の第1のトランジスタ中にあり得、第2のトランジスタは、ピーキング増幅器の複数の第2のトランジスタ中にあり得る。複数の第2のトランジスタは、複数の第1のトランジスタよりも個数が多くてもよい。
【0028】
いくつかの実施例では、第1及び第2のトランジスタは、高電子移動度トランジスタ(HEMT)又は金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)であり得る。
【0029】
本開示のいくつかの実施例によれば、電力増幅器を製造する方法は、第1のトランジスタを含む主増幅器と、第1のトランジスタとは異なる第2のトランジスタを含むピーキング増幅器と、を含む半導体ダイを形成することを含む。ピーキング増幅器は、第1及び第2のトランジスタのそれぞれのゲートに印加される共通ゲート・バイアスに応答して、主増幅器の負荷インピーダンスを変調させるように構成されている。
【0030】
いくつかの実施例では、共通ゲート・バイアスに基づいて、半導体ダイ上の第1のトランジスタと第2のトランジスタとは、電力増幅器への入力信号の異なる電力レベルに応答して順にオンになるように構成され得る。
【0031】
いくつかの実施例では、半導体ダイを形成することは、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタが、それぞれ異なる第1の閾値電圧及び第2の閾値電圧を有するように形成することを含むことができる。
【0032】
いくつかの実施例では、半導体ダイを形成することは、半導体ダイ上の主増幅器の入力とピーキング増幅器の入力とを電気的に接続して入力信号をそれらに与える入力伝送線路を形成することを含みことができる。
【0033】
いくつかの実施例では、半導体ダイを形成することは、半導体ダイ上の主増幅器の出力とピーキング増幅器の出力を電気的に接続する、出力伝送線路を形成することを含むことができる。
【0034】
いくつかの実施例では、半導体ダイを形成することは、入力信号の周波数成分に基づき、所定の位相ずれを間に伴って、それぞれの入力に信号を与えるように、又はそれぞれの出力からの信号を与えるように構成されている電気長を有するように、入力伝送線路又は出力伝送線路の少なくとも一方を形成することを含むことができる。
【0035】
いくつかの実施例では、半導体ダイを形成することは、第1のトランジスタのゲートと第2のトランジスタのゲートとを、それぞれの細長ゲート・フィンガを含むように形成することを含むことができる。入力伝送線路は、第1のトランジスタの細長ゲート・フィンガと第2のトランジスタの細長ゲート・フィンガとを電気的に接続して共通ゲート・バイアスをそれらに与えるゲート・ランナであり得る。
【0036】
いくつかの実施例では、半導体ダイを形成することは、第1のトランジスタと第2のトランジスタとを、それぞれの細長ゲート・フィンガの対の間に延在するそれぞれの細長ドレイン・コンタクトをさらに含むように形成することを含むことができる。出力伝送線路は、第1のトランジスタの細長ドレイン・コンタクトと第2のトランジスタの細長ドレイン・コンタクトとを電気的に接続するドレイン・ランナであり得る。
【0037】
いくつかの実施例では、半導体ダイを形成することは、第1のトランジスタのそれぞれのゲートを、半導体ダイ上の第2のトランジスタのそれぞれのゲートとは材料が異なり、ドーパント濃度が異なり、厚みが異なり、及び/又はそれぞれのチャネル領域に対する深さが異なる状態で形成することを含むことができる。
【0038】
いくつかの実施例では、半導体ダイを形成することは、主増幅器及びピーキング増幅器をその上に含む半導体ダイを、半導体ウエハから単一化することを含むことができる。
【0039】
本開示のいくつかの実施例によれば、半導体素子は、半導体ダイと、半導体ダイ上の第1の増幅器であって、第1の閾値電圧を有し第1のゲート・フィンガを備える複数の第1のトランジスタを備える、第1の増幅器と、半導体ダイ上の第2の増幅器であって、第1の閾値電圧とは異なる第2の閾値電圧を有し第2のゲート・フィンガを備える複数の第2のトランジスタを備える、第2の増幅器と、半導体ダイ上のゲート・ランナであって、第1のゲート・フィンガと第2のゲート・フィンガを電気的に接続して、第1の増幅器と第2の増幅器とに共通ゲート・バイアスを印加する、ゲート・ランナと、を含む。第1ゲート・フィンガと第2ゲート・フィンガとの間に延在するゲート・ランナの一部には、第1及び第2の増幅器への無線周波数(RF:Radio Frequency)入力信号の周波数成分に基づいている電気長がある。
【0040】
いくつかの実施例では、共通ゲート・バイアスに基づいて、第1の増幅器と第2の増幅器とは、RF入力信号の異なる電力レベルに応答して順にオンになるように構成され得る。
【0041】
いくつかの実施例では、半導体素子は、半導体ダイにドレイン・ランナをさらに含み得、ドレイン・ランナは、第1のトランジスタの第1のドレイン・フィンガと第2のトランジスタの第2のドレイン・フィンガとを電気的に接続する。第1のドレイン・フィンガと第2のドレイン・フィンガとの間に延在するドレイン・ランナの一部には、電気長があり得る。
【0042】
いくつかの実施例では、ゲート・ランナの一部及び/又はドレイン・ランナの一部は、第1及び第2のトランジスタへの電気的接続がないことがあり得る。
【0043】
いくつかの実施例では、第1のゲート・フィンガ及び第2のゲート・フィンガは、ゲート・ランナの一部の両端におけるそれぞれ第1のゲート・バス及び第2のゲート・バスによって、ゲート・ランナに接続され得る。
【0044】
いくつかの実施例では、第1のドレイン・フィンガと第2のドレイン・フィンガとは、ドレイン・ランナの両端におけるそれぞれ第1のドレイン・バス、第2のドレイン・バスによって、ドレイン・ランナに接続され得る。
【0045】
いくつかの実施例では、電気長は、RF入力信号の周波数成分に対応する波長の1/4であり得る。
【0046】
本開示のいくつかの実施例によれば、負荷変調増幅器を動作させる方法は、半導体ダイ上の主増幅器とピーキング増幅器とに共通のバイアスをもたらすことを含む。ピーキング増幅器は、共通バイアスに応答して主増幅器の負荷インピーダンスを変調させるように構成されている。
【0047】
本発明のさらなる理解をもたらすために含まれ、本出願に組み込まれ、その一部を成す添付図面は、本発明の特定の実施例を説明するものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】従来のマルチセル・トランジスタ素子の平面図である。
図2A】本開示のいくつかの実施例によるPAの回路図である。
図2B図2AのPAの回路動作を示す図である。
図2C図2AのPAの回路動作を示す図である。
図3】本開示のいくつかの実施例による、同じ半導体ダイ上のPAを示す図である。
図4】本開示のいくつかの実施例による、同じ半導体ダイ上のPAを示す図である。
図5図4に示されたPAの等価回路図である。
図6】従来のB級又はAB級の電力増幅器及び本開示のいくつかの実施例によるPAの効率性能を示すグラフである。
図7】本開示のいくつかの実施例による、同じ半導体ダイ上の入力ドライバを含むPAを示す図である。
図8】本開示のいくつかの実施例による、同じ半導体ダイ上の3段PAを示す図である。
図9A】本開示のいくつかの実施例による、ユニット・セル・トランジスタとして使用され得る高電子移動度トランジスタ(HEMT)セルの断面図である。
図9B】本開示のいくつかの実施例による、ユニット・セル・トランジスタとして使用され得る横方向拡散金属酸化物半導体(LDMOS: Laterally Diffused Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ素子のユニット・セルの断面図である。
図10A】本開示のいくつかの実施例による、入力及び/又は出力伝送線路に使用され得る分布素子回路を示す断面図である。
図10B】本開示のいくつかの実施例による、入力及び/又は出力伝送線路に使用され得る分布素子回路を示す断面図である。
図11】本開示のいくつかの実施例による、それぞれが単一のバイアス負荷変調増幅器回路を含むそれぞれの半導体ダイを提供するように単一化され得る半導体ウエハを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本明細書に記載のいくつかの実施例は、ドハティ構成など、バックオフ電力又は平均電力で動作するときに効率を維持することができる電力増幅器構成を対象とし、このドハティ構成は、共通の半導体構造体(例えば、より大きなウエハからダイシング又は単一化された同じ半導体ダイ)に製造され、電気的に接続されている、高電力トランジスタ構造体を含む。具体的には、本明細書に記載の実施例は、第1の増幅器と、単一のゲート・バイアス又は共通ゲート・バイアス(本明細書では共通バイアスとも呼ぶ)に応答して第1の増幅器の負荷インピーダンスを変調させるように構成されている第2の増幅器とを同じ半導体ダイに具体化するRFトランジスタ構造体を含み得る。
【0050】
本明細書に記載のいくつかの電力増幅器構成は、共通の半導体ダイに製造される複数の「ユニット・セル」トランジスタを使用して具体化され得る。各ユニット・セル・トランジスタは、半導体材料にソース領域、ドレイン領域、及びチャネル領域を含み得、チャネル領域はソース領域とドレイン領域との間にある。図1に概略的に示されているように、細長ゲート・フィンガとして具体化され得るゲート電極又はゲート端子(又は「ゲート」)は、チャネル領域の上に形成され、ソース・コンタクトとドレイン・コンタクトとの間を平行に延在する。
【0051】
図1に示されるように、半導体ダイ10のユニット・セル・トランジスタが、ボックス40に示され、隣り合うソース・フィンガ26とドレイン・フィンガ36との間に延在する導電性ゲート・フィンガ16を含む。ゲート・フィンガ16は、第1の方向(例えば、図1ではx方向)に沿って互いに間隔を空け、第2の方向(例えば、図1ではy方向)に延在する(例えば、平行に)。ゲート・フィンガ16は、ゲート・バス14を通して互いに電気的に接続されている。導電性ソース・コンタクトすなわち導電性ソース・フィンガ26が、第1の方向に沿って互いに間隔を空け、第2の方向に延在する。ソース・フィンガ26は、ビア又は他の構造体(図1では見えない)を通して互いに電気的に接続され得る。いくつかの実施例では、ソース・フィンガ26は、ダイ10の底面のソース・コンタクト(図1では見えない)に電気的に接続され得る。導電性ドレイン・コンタクトすなわち導電性ドレイン・フィンガ36は、第1の方向に沿って互いに同様に間隔を空け、第2の方向に延在し、ドレイン・バス34を通して互いに接続されている。ゲート16、ソース26、及びドレイン・フィンガ36はそれぞれ、金属又は金属合金などのそれぞれの伝導性材料を備え得る。各ゲート・フィンガ16は、一対の隣り合うソース26とドレイン36との間にy方向に沿って延在する。「ゲート長」とは、x方向におけるゲート金属被膜加工の距離(ソース26とフィンガ36との間の)を指し、一方、「ゲート幅」は、ゲート・フィンガ16とソース・コンタクト26及びドレイン・コンタクト36とがy方向に重なり合っている距離である。すなわち、ゲート・フィンガの「幅」とは、隣り合うソース/ドレイン・コンタクト26、36に平行に延在するゲート・フィンガ16の寸法(y方向に沿った間隔)を指す。半導体素子10の耐電力特性は、その「ゲート周辺」に比例するものであり得る。半導体素子10のゲート周辺は、そのユニット・セル・トランジスタ40ごとのゲート・フィンガ16ごとのゲート幅の和を指すものであり得る。
【0052】
図2Aは、本開示のいくつかの実施例による、共通ゲート・バイアスに応答して、オンダイ・トランジスタ構造体によって具体化され得るドハティ構成におけるPA200の回路図であり、図2B及び2Cは、回路動作を示す。図2Aに示されるように、PA200は、同じ半導体ダイ210に並列に電気的に接続されている、搬送波(又は「主」)増幅器220と少なくとも1つのピーキング増幅器230として示される少なくとも2つのデバイスを含む。主増幅器220は、B級モード又はAB級モードで動作するようにバイアスが印加され得る一方、ピーキング増幅器230は、共通バイアス225によってC級モードで動作するようにバイアスが印加され得る。パワー・スプリッタ回路すなわちパワー・ディバイダ回路214が、入力電力信号(例えば、RF入力信号又は他のAC入力信号)を受信し、主増幅器220及びピーキング増幅器230の入力にそれぞれの信号を出力するように構成されている。いくつかの実施例では、パワー・スプリッタ214は、主増幅器220の入力とピーキング増幅器230の入力とをつなげる入力伝送線路として具体化され得る。インピーダンス・インバータ回路234が、主増幅器220の出力をピーキング増幅器230の出力に、例えば出力合成用ノード250においてつなげる。いくつかの実施例では、インピーダンス・インバータ回路234及び合成用ノード250は、主増幅器220の出力とピーキング増幅器230の出力とをつなげる出力伝送線路として具体化され得る。
【0053】
パワー・スプリッタ214は、主増幅器220及びピーキング増幅器230のそれぞれの出力に与えられた出力信号が同位相であるような、位相ずれ又は位相遅れを主増幅器220及びピーキング増幅器230の入力に与えられたそれぞれの信号間に導入するように構成され得る。例えば、パワー・スプリッタ214には、ピーキング増幅器230への信号入力に所定の位相ずれをもたらして(例えば、入力信号の周波数成分に対応する波長に基づき)、主増幅器220の出力における信号にインピーダンス・インバータ234の電気長によって導入された同様の位相ずれを補償するように構成されている電気長があり得る(位相長とも呼ばれる)。例えば、入力ノード205におけるRF出力信号に応答して、パワー・スプリッタ214が、それぞれ主増幅器220及びピーキング増幅器230への入力として90度互いに位相を異にする2つの出力を発生させ得る。90度位相ずれがインピーダンス・インバータ234によって導入された後、ピーキング増幅器230の出力が、主増幅器220の出力と同相であるような90度位相スプリット(PA200の動作周波数の1/4波長に対応する)が使用され得る。インピーダンス・インバータ234を通過した後、主増幅器220の出力が、合成用ノード250において、ピーキング増幅器230の出力と合成される。
【0054】
いくつかの実施例では、負荷整合回路が、出力合成ノード250につなげられ、負荷にRF出力信号を与えるように構成され得る。いくつかの実施例では、増幅器は、多段増幅器を具体化するのに、1つ又は複数の入力ドライバ270(入力電力信号を受信するように構成され、出力がパワー・ディバイダ214の入力につなげられているとして示される)をさらに含み得る。追加として又は代替として、それぞれの入力ドライバ270が、主増幅器220の出力及びピーキング増幅器の出力につなげられ得る。入力ドライバ270は、例えば、A級増幅器又はB級増幅器であり得、全体的な利得を上げるのに使用され得る。
【0055】
本明細書に記載の実施例は、主増幅器220と、共通バイアス225(例えば、共通のバイアス印加ノード又は回路を介して与えられ得る同じDCバイアス電流又は電圧信号)に応答して主増幅器220の負荷インピーダンスを変調させるように構成されているピーキング増幅器230と、を含み得る。図2A~2Cに示されるように、主増幅器220は、ピーキング増幅器230が電源切れ状態で、入力ノード205における入力電力信号(例えば、RF入力信号)に応答してピーキング増幅器230よりも早く動作する(すなわち、オンになる)ように構成されている。主増幅器220がその圧縮(増幅器の利得が一定程度、例えば1dB、そのピーク利得から減っている入力電力レベル)近くのピーク効率又は最大効率に達すると、ピーキング増幅器230は、オンになるように構成されている。パワー・スプリッタ214は、主増幅器220とピーキング増幅器230との間の入力信号の比率を定めることができる。いくつかの実施例では、パワー・スプリッタ214は、共通バイアス信号が印加される主増幅器220とピーキング増幅器230とについての共通のバイアス印加ノード又はバイアス印加回路としての役割を果たすこともできる。ピーキング増幅器230は、主増幅器220が受ける負荷を変調させながら、さらなる総出力電力を与え、後にそのピーク効率である数dBの出力電力に達することができる。具体的には、図2Cに示されるように、主増幅器220の負荷インピーダンス233は、ピーキング増幅器230の動作231及びインピーダンス・インバータ234のインピーダンスに応答して変動する。ピーキング増幅器230の負荷インピーダンス235も変調する。これは、総ピーク電力において、並びにピーク電力の数dB下(例えば、等しいサイズのデバイス/対称構成では6dB)において全体として効率の良いPAをもたらすことができる。
【0056】
このように、図2Aに示されるPA200の動作は、図2B及び2Cに示されるように、第1のデバイス220がそのピーク効率に達する点から始まる第1のデバイスの動的負荷変調によってもたらされる。第1のデバイス220のピーク効率点における又はその近くでの第2のデバイス230の動作によって、第1のデバイス220が受ける負荷インピーダンス233が下がり始め、これにより、第1のデバイス220に圧縮を止めさせ、電力を数dB増やさせる(同じサイズのデバイス/対称構成では3dB)。インピーダンス・インバータ234は、第2のデバイスがバックオフするにつれて、第1のデバイス220に与えられる負荷インピーダンスを上げ、第2のデバイス230の動作が第1のデバイス220の負荷を変調させるように構成される原因となる回路配置をもたらし得る。
【0057】
図2Aに示されるPA200の構成は、(i)一方(デバイス230)が他方(デバイス220)よりも後にオンになるような第1のデバイス220及び第2のデバイス230にバイアスを印加する共通バイアス225をもたらすことと、(ii)入力電力を分けるが(等しいサイズのデバイスの場合は同等に)、所定の位相ずれ(例えば、互いに90°)に各デバイス220、230への入力電力を位相調整するダイ210上のパワー・スプリッタ214をもたらすことと、(iii)デバイス220、230の出力間にインピーダンス・インバータ(例えば、1/4波長ライン)を設けて、所定の位相ずれをもたらすことと、のうちの1つ又は複数によって、本明細書に記載のいくつかの実施例によるのと同じ半導体ダイ210において具体化され得る。すなわち、本明細書に記載の実施例は、ウエハ・レベルにおいて(例えば、それぞれが電力分割、電力合成、及び負荷変調をもたらすように構成されている各自の半導体ダイ1110を与えるようにダイシングされ得る図11に示されるのと同じ半導体ウエハ1100のそれぞれの部分1110において)半導体製造工程を使用して、それぞれの負荷変調増幅器を画定するために、第1のデバイス220及び第2のデバイス230と、パワー・スプリッタ214と、インピーダンス・インバータ234と、コンバイナ250と、それら間の接続と、を製造することができる。したがって、同じダイ200上に具体化されるとの同じような電力分割及び電力合成を伴って、第1のデバイス220及び第2のデバイス230を画定するそれぞれのトランジスタに単一のゲート・バイアスが印加され得、外部(例えば、オフダイ210)スプリッタ回路及び/又はコンバイナ回路のないドハティ構成のPA200をもたらす。
【0058】
本明細書に記載のいくつかの実施例では、共通バイアス225に基づき、一方(デバイス230)が他方(デバイス220)の後に続けてオンになるような、異なる特性を有するトランジスタをその同じダイに作り出すことによって、図2Aに示されるような1つのトランジスタ・ダイ210において負荷変調機構200を具体化することができる。図3は、本明細書に記載のいくつかの実施例による、同じ半導体ダイ310上に異なる動作、構造、及び/又は材料特性を有するユニット・セル・トランジスタ340a、350b(まとめて「340」)を使用して具体化された、主増幅器320及びピーキング増幅器33を含むDotherty構成のPA300を示す。図3のPA300は、図2A及び2Bの図を参照して上に述べたのと同様に動作することができる。
【0059】
図3に示されるように、ユニット・セル・トランジスタ340a、340bは、隣り合うソース・フィンガ326とドレイン・フィンガ336との間に延在する、各自の導電性ゲート・フィンガ316a、316b(まとめて「316」)を含む。ゲート・フィンガ316は、第1の方向(例えば、図3ではx方向)に互いに間隔を空け、第2の方向(例えば、図3ではy方向)に延在する。ゲート・フィンガ316は、ゲート・ランナ314又は入力伝送線路を通して互いに電気的に接続されている。導電性ソース・コンタクトすなわち導電性ソース・フィンガ326は、第1の方向に沿って互いに間隔を空け、第2の方向に延在する。ソース・フィンガ326は、互いに又は他の構造体(図3では見えない)に電気的に接続され得る。いくつかの実施例では、ソース・フィンガ326は、ビア328によって、半導体ダイ310の底面のソース・コンタクト(図3では見えない)に電気的に接続され得る。導電性ドレイン・コンタクトすなわち導電性ドレイン・フィンガ336は、同じように、第1の方向に沿って間隔を空け、第2の方向に延在し、ドレイン・ランナ334又は出力伝送線路を通して互いに電気的に接続されている。
【0060】
いくつかの実施例では、1つのトランジスタ・ダイ310に、2つ以上の別個の閾値電圧を有するトランジスタ340a、350bを作り出すことによって本明細書に記載のような負荷変調を具体化することができる。図3にさらに示されるように、ゲート・フィンガ316は、第1のゲート・フィンガ316a及び第2のゲート・フィンガ316bを含み得る。半導体ダイ310の第1の領域におけるゲート・フィンガ316aは、主増幅器320を画定し、半導体ダイ310の第2の領域におけるゲート・フィンガ316bは、ピーキング増幅器330を画定する。ゲート・ランナ314は、主増幅器320のゲート316aとピーキング増幅器330の316bとを電気的に接続し、PA300用の入力ノード305を画定し得る。ドレイン・ランナ314は、主増幅器320のドレイン・フィンガ336とピーキング増幅器330のドレイン・フィンガ336とを電気的に接続し、PA300用の出力ノード350を画定し得る。主増幅器320のユニット・セル・トランジスタ340a(すなわち、ゲート・フィンガ316aを含むユニット・セル・トランジスタ)には、例えば、各ゲート・フィンガ316aの幅に沿って、それぞれ第1の閾値電圧値VTH-1を有し得る。ピーキング増幅器330のユニット・セル・トランジスタ340b(すなわち、ゲート・フィンガ316bを含むユニット・セル・トランジスタ)には、例えば、各ゲート・フィンガ316bの幅に沿って、それぞれ第2の閾値電圧値VTH-2を有し得る。第2の閾値電圧値VTH-2は、第1の閾値電圧値VTH-1よりも大きいことがあり得る。
【0061】
ダイ310の第1の領域におけるユニット・セル・トランジスタ340aと第2の領域におけるユニット・セル・トランジスタ340bとは、異なる材料、形状、及び/若しくはドーピング濃度の使用により異なるゲート・フィンガ316aと318bとを形成すること、並びに/又はゲート・フィンガ426a対316bの基礎となる、組成、ドービング濃度及び/若しくは一層若しくは複数層の厚みを変えること(例えば、基礎となるチャネル領域に対して異なる深さでそれぞれのゲート凹部にゲート・フィンガ316aと316bとを形成することによって)を含む様々な方法で、多様に2つ以上の異なる閾値電圧を有するように、作り出され得る。様々な閾値電圧でトランジスタを画定する際のいくつかの製造工程が、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれているLiuらによる米国特許出願第15/628,932号に記載されている。説明の便宜上、第1の閾値電圧値VTH-1を有するユニット・セル・トランジスタ340aのゲート・フィンガ316a(すなわち、主増幅器320を画定し、閾値電圧が低い方のトランジスタ340a)は、図3では第1のクロスハッチング形態を用いて示されている一方、第2の閾値電圧値VTH-2を有するユニット・セル・トランジスタ340bのゲート・フィンガ316b(すなわち、ピーキング増幅器330を画定し、閾値電圧が高い方のトランジスタ340b)は、第2のクロスハッチング形態を用いて示されている。この同じ約束事が、本明細書に記載のさらなる実施例を描写する図にも使用される。ただし、様々な閾値電圧値をもたらすのに使用される製造技法によっては、ゲート・フィンガ(例えば、ゲート・フィンガ316aと316b)に同じ組成であってもよく、同じ組成でなくてもよいことが分かるであろう。
【0062】
このように、第2の閾値電圧VTH-2を有するトランジスタ340bを含むダイ310のある部分は、第1の閾値電圧VTH-1を有するトランジスタ340aを含むダイ310の別の部分よりも遅くオンになるように動作され得、第2の増幅器330のトランジスタ340bの動作により第1の増幅器320のトランジスタ340aの出力における負荷インピーダンスが変調するような単一のゲート・バイアス(例えば、共通のバイアス印加ノード又は回路314を介して印加される同じDCバイアスで電圧信号)に応答して2つの異なるゲート・バイアスを有する効果をエミュレートする。第1の閾値電圧と第2の閾値電圧との差(VTH-2-VTH-1)が、少なくとも0.1ボルトであり得る実施例がある。VTH-2-VTH-1が、少なくとも0.5ボルトであり得る実施例もある。またさらに、VTH-2-VTH-1が、少なくとも0.05ボルト又は0.1~1.25ボルトであり得る実施例もある。同じデバイス(例えば、主増幅器320又はピーキング増幅器330)を具体化するのに使用されているユニット・セル・トランジスタには、それぞれ、ほぼ同じ閾値電圧を有し得る。例えば、主増幅器320のユニット・セル・トランジスタ340aは、いくつかの実施例では互いに0.025ボルト内である閾値電圧を有し得る(ピーキング増幅器330のユニット・セル・トランジスタ340bもまた同様)。他の実施例では、同じデバイスを具体化するのに使用されているユニット・セル・トランジスタは、互いに0.01ボルト内である閾値電圧を有し得る。
【0063】
従来のトランジスタ増幅器によっては、単一のゲート・バイアスに応答しての負荷インピーダンスが、主増幅器とピーキング増幅器とのゲート・バイアス要件の違いに起因して起こり得ないことがある。このような従来のトランジスタ増幅器では、各トランジスタがゲートに個々にバイアスが印加され得、入力と出力とにおいて個々に整合され得、電力分割及び電力合成が、トランジスタ・ダイ又はトランジスタ・パッケージの外側で実施され得る。
【0064】
それと対照的に、本明細書に記載のいくつかの実施例による、Dotherty PA300のパワー・スプリッタ態様とインピーダンス・インバータ態様とは、それぞれ、ゲート・ランナ314と、ドレイン・ランナ334とによって同じ半導体ダイ310において具体化されている。具体的には、ゲート・ランナ314には、主増幅器320の出力におけるドレイン・ランナ334の電気長によって導入された同様な位相ずれを補償するように、ピーキング増幅器330への信号入力に所定の位相ずれをもたらすように構成されている電気長を有し得る(例えば、入力信号の周波数成分に対応する波長λに基づくか又はその関数として)。単に例として、ゲート・ランナ314及び/又はドレイン・ランナ334は、ダイ310にそれぞれの1/4波長伝送線路によって具体化され得、すなわち、PA300の動作周波数の波長λの1/4、又はλ/4に対応するそれぞれの電気長がある。図3に示されるように、望ましい電気長/位相ずれを画定するゲート・ランナ314の部分とドレイン・ランナ334の部分とは、主増幅器320のトランジスタ340aとピーキング増幅器のトランジスタ340bとの間に延在し得るが、電気的な接続(例えば、他の増幅器又はトランジスタのゲート・フィンガ316及び/又はドレイン・フィンガ336への)がない可能性がある。
【0065】
負荷変調は、ドレイン・ランナ334によってもたらされた加算/出力ノード350とインピーダンス・インバータとの電流合成に起因して起こる。出力電力合成ノード350では、主増幅器320から分かる有効な負荷インピーダンスが増幅するような電力をピーキング増幅器330が与え始めると、主増幅器320からの電流とピーキング増幅器330からの電流とが合成される。主増幅器320から分かる有効な負荷インピーダンスは、電力合成ノード350における電圧を主増幅器320からの電流(本明細書では主電流とも呼ばれる)で割ったものによって規定され得る。電力合成ノード350における電圧は、主電流がその一部に相当する負荷への各電流(主増幅器320とピーキング増幅器330とからの)によって定められる。主増幅器320から分かる負荷インピーダンスは、ピーキング増幅器330が導電し始めるにつれて事実上増加し、増加した負荷インピーダンスは、インピーダンス・インバータ334によって反転され、それにより主増幅器負荷を減少し、有効な負荷変調をもたらす。主増幅器負荷が減少するのに従って、主電流が増え、変調された負荷により出力電力の増加をもたらす。
【0066】
したがって、本明細書に記載の実施例では、第2の閾値電圧VTH-2を有するトランジスタ340bを含むピーキング増幅器330がある程度遅れて(第1の閾値電圧VTH-1を有するトランジスタ340aを含む主増幅器320の動作に対して)オンになるように動作すると、ピーキング増幅器330からの電流が、主増幅器320が受ける負荷インピーダンスを事実上増加させ、インピーダンス・インバータ334によって反転させられ、主増幅器320の負荷インピーダンスの変調をもたらす。
【0067】
いくつかの実施例では、本明細書に記載のゲート・ランナ素子及び/又はドレイン・ランナ素子の少なくとも一部が各自の位相ずれ及び/又は高調波除去をもたらすように構成されている1つ又は複数の分布素子によって具体化され得る。例えば、ゲート・ランナ314及び/又はドレイン・ランナ314は、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、Trangらによる米国特許出願第16/165,846号に記載のような、複数の導電性ビアによって各自のゲート・フィンガ316及び/又はドレイン・フィンガ336に接続され得る、ダイ310の1層又は複数層上の(例えば、ゲート・フィンガ316又はドレイン・フィンガ336の上又は下の)金属及び/又は配線層によって具体化されたインダクタとキャパシタとの組合せとして具体化され得る。図10A及び10Bの断面図に例として示されるように、分布素子回路235又は255は、1つ又は複数の誘電層237によって隔てられた、配線層242と接地線GCとの間に形成されたそれぞれ静電容量C1又はC2を含み得る。静電容量C1又はC2は、それぞれ、ダイ310上の異なる層におけるゲート・ランナ314又はドレイン・ランナ334に、それぞれの導電性ビアによってつなげられ得る。追加として又は代替として、それぞれ、各自の導電性ビアによって静電容量C1若しくはC2に及び/又はゲート・ランナ314若しくはドレイン・ランナ334に電気的に接続されている(直列又は並列に)誘導性素子L1又はL2を設けるように配線層242がさらに形成され得る。誘電層237としては、本明細書に記載の実施例がそれに限定されるわけではないが、配線層242と接地線GCとの間に静電容量を形成するのに相応しい電気特性を備える1つ又は複数の誘電体又は層、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、高誘電体、又はそれらの組合せを含むことができる。すなわち、ランナ314及び/又は334の一部は、望ましい位相ずれをもたらすように分布素子回路245及び/又は255によって具体化され得る。それにより、ランナ314及び/又は334(またいくつかの実施例では、PA300全体)は、いくつかの実施例では集中素子も受動素子もないことがある。また、フィンガ316又は336の各自の端部に電気的な接続を設けるとして示されているが、ランナ314又は334は、フィンガ316又は336の上又は下の層に延在して、フィンガ316又は336をそれぞれのビア接続によって電気接触させることなどよって、それぞれ、フィンガ316又は336の他の部分に電気的な接続を設けることができる。
【0068】
図3には、主増幅器320とピーキング増幅器330とが、同じ耐電力特性をもたらすように同じ個数のユニット・セル・トランジスタ340a及び340bを含む、対称型ドハティPA配置に関して示されているが、本明細書に記載の実施例が、このような配置に限定されるものではないことが分かるであろう。すなわち、図3では、隣接するドレイン・フィンガ336に沿って延在する2つの異なる閾値電圧を有するゲート・フィンガ316aと316bと(主増幅器320、ピーキング増幅器30がそれぞれ、2つのユニット・セル・トランジスタ340a、340bをそれぞれ含むような)を示し得るが、いくつかの実施例は、主増幅器320とピーキング増幅器330とがそれぞれ異なる個数のユニット・セル・トランジシタ(例えば、図4では、xがyの値よりも大きい又は小さい場合で示されるように)を含む、非対称型Dotherty負荷変調増幅器配置又は他の負荷変調増幅器配置を含み得る。例えば、ピーキング増幅器330は、より高い電力能力をもたらすように、主増幅器320よりもっとユニット・セル・トランジスタ340を含み得る。
【0069】
図4は、本明細書に記載のいくつかの実施例による、同じ半導体ダイ410において動作、構造、及び/又は材料特性が異なるユニット・セル・トランジスタを使用して具体化された主増幅器420とピーキング増幅器430とを含むDotherty構成のPA600を示す。図4のPA400は、図3のPA300と同様であるが、主増幅器420を画定するのに、第1の群の第1の(例えば、低い方の)閾値電圧VTH-1がある第1のゲート・フィンガ416a(ユニット・セル・トランジスタ440a…440aに含まれる)を設け、ピーキング増幅器430を画定するのに、第2の群の第2の(例えば、低い方の)閾値電圧VTH-2がある第2のゲート・フィンガ416b(ユニット・セル・トランジスタ440b…440bに含まれる)を設ける。
【0070】
図3を参照して上に同様に述べたように、ユニット・セル・トランジスタ440a…440a、440b…440b(まとめて「440」)は、隣り合うソース・フィンガ426とドレイン・フィンガ436との間に延在するそれぞれのゲート・フィンガ416a、416b(まとめて「416」)を含む。ゲート・フィンガ416は、第1の方向(例えば、図4ではx方向)に沿って互いに間隔を空け、第2の方向(例えば、図4ではy方向)に延在する(例えば、並列に)。xの値、yの値は、それぞれ、主増幅器420におけるユニット・セル・トランジスタ440(又はゲート・フィンガ416)の個数、ピーキング増幅器430におけるユニット・セル・トランジスタ440(又はゲート・フィンガ416)の個数、を示す。いくつかの実施例では、主増幅器420とピーキング増幅器430とがそれぞれ、対称構成で同じ個数のゲート・フィンガ416/ユニット・セル・トランジスタ440を含むような値でxの値とyの値とが、等しいことがある。いくつかの実施例では、主増幅器420とピーキング増幅器430とがそれぞれ、非対称構成で異なる個数のゲート・フィンガ416/ユニット・セル・トランジスタ440を含むような値でxの値とyの値とが、異なることがある(例えば、xの値がyの値よりも大きい又は小さいことがある)。
【0071】
ゲート・フィンガ416は、所定の電気長(例えば、λ/4)があるゲート・ランナ414又は入力伝送線路によって互いに電気的に接続されている。より具体的には、第1の群420のゲート・フィンガ416aは、ゲート・バス424aによって電気的に接続され、第2の群430のゲート・フィンガ416bは、ゲート・バス424bによって電気的に接続され、ゲート・バス424a及び424bは、ゲート・ランナ414に電気的に接続されている。すなわち、ゲート・ランナ414は、増幅器420のゲート・バス424bに、また増幅器430のゲート・バス446bに入力ノード405において与えられる入力信号を、それら増幅器間の位相ずれを伴って分けるか又は分散させるように(第1の群420の出力においてドレイン・ランナ434によって誘発される同様の位相ずれを補うために)構成され得る。各群420及び430のドレイン・コンタクトすなわちドレイン・フィンガ436は、同じように、第1の方向に沿って間隔を空け、第2の方向に延在し、それぞれ、ドレイン・バス442a、446bによって互いに電気的に接続されている。ドレイン・バス446a及び446bは、出力ノード405における増幅器420からの出力信号と増幅器430からの出力信号とを合成するのに使用される、所定の電気長(例えば、λ/4)があるドレイン・ランナ434又は出力伝送線路に電気的に接続されている。図4に示されるように、望ましい電気長/位相ずれを画定するゲート・ランナ424の部分とドレイン・ランナ434の部分とは、それぞれ、ゲート・バス424aと424bとの間、ドレイン・バス446aと446bとの間に電気的な接続(例えば、他の増幅器又はトランジスタのゲート・フィンガ416及びドレイン・フィンガ436への)がない場合がある。ソース・コンタクトすなわちソース・フィンガ426は、第1の方向に沿って互いに間隔を空け、第2の方向に延在し、また互いに又は他の構造体に(例えば、デバイス410の底面のソース・コンタクトに)ビア428を介して電気的に接続され得る。
【0072】
本明細書に記載の際、大型の周辺電力機器には、本明細書に記載の実施例によって説明され得る、ドレイン-ソース間容量(CDS)及び/又はゲート-ソース間容量(CGS)などの無視できない寄生成分がある得ることが分かるであろう。例えば、いくつかの実施例では、出力インピーダンス・インバータ434(及び/又は入力遅延線414)が寄生成分と相まってそれぞれの電気長(例えば、1/4波長)を画定するように構成され得る。すなわち、ゲート・ランナ414及び/又はドレイン・ランナ434が、電気長全体(寄生成分を含む)が完全1/4波長を画定するような、1/4波長よりも短い/1/4波長の一部である電気長があるように構成され得る。本明細書に記載のさらなる実施例において、寄生成分が、インピーダンス・インバータ434及び/又はランナ414にほぼ完全1/4波長の各自の電気長があり得る場合、補われ得る。この補償は、位相非反転補償であってもよく、位相反転補償であってもよい(電力合成ノード450がダイ410の上面角に、例えば主増幅器420の出力に設けられ得、入力ノード405がダイ410の底面角に、例えばピーキング増幅器430の入力に設けられ得る場合)。なおさらなる実施例において、電力合成ノード450を出力に接続する(最終)ライン(例えば、この合成ノード450を負荷につなげる負荷整合回路)が、電力合成ノード・インピーダンスを出力ノード・インピーダンスに、これらのインピーダンスが異なる場合に変換させるように設計又は構成され得る。
【0073】
図4のPA400は、図3のPA300を参照して上に述べたのと同様に機能することができる。したがって、ゲート・ランナ414は、ダイ410上の複数のゲート416に共通のバイアス印加ノード又はバイアス印加回路としての役割を果たすことができ、第2の閾値電力VTH-2がある第2の群430のトランジスタ440b…440bは、共通のバイアス印加ノードへの同じゲート・バイアスの印加に基づき第1の閾値電圧VTH-1がある第1の群420のトランシスタ440a…440aよりも後にオンになるように(より高い入力信号ドライブ・レベルに応答して)動作され得る。それにより、異なるトランジスタ群420と430との異なる閾値電圧VTH-1とVTH-2とは、第2のトランジスタ群430の動作(例えば、ノード405におけるRF入力信号に応答した)により第1のトランジスタ群420の出力における負荷インピーダンスが変調するような、単一のゲート・バイアスに応答して2つの異なるゲート・バイアスを有する効果をエミュレートすることができる。
【0074】
図5は、図4に示されるPA400の構成を備えるPA500を示す等価回路図である。このように、PA500は、主増幅器520を画定するのに第1の群の第1の(例えば、低い方の)の閾値電圧VTH-1がある第1のユニット・セル・トランジスタ540aと、ピーキング増幅器530を画定するのに第2の群の第2の(例えば、高い方の)閾値電圧VTH-2があるユニット・セル・トランジスタ540bとを同じ半導体ダイ上に並列段として含む。PA増幅器500は、所定の電気長(例えば、λ/4)があるゲート・ランナ514をさらに含み、ゲート・ランナ514は、入力ノード505に与えられた入力信号を、それぞれ、ゲート・バス524aを通してトランジスタ540aに、ゲート・バス524bを通してトランジスタ540bに分配し、また、PA増幅器500は、所定の電気長(例えば、λ/4)があるドレイン・ランナ534を含み、ドレイン・ランナ534は、それぞれ、ドレイン・バス546aを通して出力ノード550におけるトランジスタ540aのドレイン電極536からの、ドレイン・バス546bを通して出力ノード550におけるトランジスタ540bのドレイン電極536からの、それぞれの出力信号を合成する。ゲート・ランナ514は、ピーキング増幅器530のトランジスタ540bの動作(例えば、ノード505におけるRF信号に応答して)により、単一のゲート・バイアスに基づき、主増幅器520のトランジスタ540aの出力における負荷インピーダンスが変調するような、同じダイ上の閾値電圧VTH-1を有するトランジスタ540aとそれと異なる閾値電圧VTH-2を有するトランジスタ540bとについての共通のバイアス印加ノード又はバイアス印加回路としての役割を果たすことができる。
【0075】
図6は、従来のドハティPA及び本開示のいくつかの実施例によるPAの効率対出力電力(dBm単位)を示すグラフである。図6に示される細線610は、従来のB級又はAB級電力増幅器の効率性能を示す。図6に示される太線600は、本明細書に記載の実施例による、異なる閾値電圧を有するトランジスタを含む、単一ダイ、単一バイアスの負荷ドハティPA(上記のPA200、300、400、500など)の効率性能を示す。このように、図6は、本明細書に記載の実施例による単一ダイ、単一バイアスのドハティPAが、より低い出力電力レベル(例えば、バックオフ電力又は平均電力で)で向上した効率を備える一方で、ピーク電力において、従来のB級電力増幅器又はAB級電力増幅器と同じ又は同様の効率を実現することを示す。
【0076】
本明細書に記載の実施例のいくつかの利点により、同じ半導体ダイに、異なる閾値電圧を有するトランジスタを使用して主増幅器とピーキング増幅器とを具体化することによって、負荷変調増幅器への単一のゲート・バイアスの使用が可能になる。すなわち、本明細書に記載の実施例では、主増幅器のトランジスタとピーキング増幅器のトランジスタとが同じ半導体ダイに製造されるが、負荷変調をもたらすという独立したバイアス要件がない(すなわち、主増幅器とピーキング増幅器とが、動作に対して同じゲート・バイスに頼っている)。これと対照的に、ドハティ増幅器又は負荷変調増幅器のいくつかの従来の実装形態では、同じ半導体ダイ上のトランジスタには、ダイ全体にわたってほぼ同一の特性(例えば、ゲート・フィンガ特性及びドレイン・フィンガ特性)があり、それにより、主増幅器とピーキング増幅器のトランジスタは、ピーキング増幅器の遅れたオンをもたらして、主増幅器の負荷を変調させるために、異なるゲート・バイアス要件があり得ることから、少なくとも2回のゲート・バイアスが必要とされ得る。
【0077】
本明細書に記載のさらなる実施例では、多段PAを具体化するのに特性が異なるユニット・トランジスタを利用することができる。例えば、図7は、本明細書に記載のいくつかの実施例による、同じ半導体ダイ710に、動作特性、構造特性、及び/又は材料特性が異なるユニット・セル・トランジスタを使用して具体化された主増幅器720とピーキング増幅器730とを含む、ドハティ構成のPA700を示す。図7のPA700は、図4のPA400のいくつかの態様において同様であり、図2Aの実例に示されるオプションのドライバ270と同様な、主増幅器720及び/又はピーキング増幅器730の入力を接続する、入力ノード705とゲート・ランナ714との間につなげられたドライバ増幅器770をさらに含む。図7にさらに示されるように、ドライバ増幅器の出力と、ドライバ増幅器770のドレイン・バイアスが主増幅器720及びピーキング増幅器730のゲートに直に接続され得ないような、主増幅器720とピーキング増幅器730とへの入力との間にDCブロッキング・キャパシタ775が設けられている。例えば、DCブロッキング・キャパシタ775は、それらの間に誘電層がある伝導性フィンガ要素によって及び/又は本明細書に記載のような様々な分布素子回路を使用して具体化され得る。いくつかの実施例では、DCブロッキング・キャパシタ775は、金属-絶縁膜-金属(MIM)キャパシタなどの様々な型式のオンウエハ・キャパシタによって具体化され得る。このように、PA700は、主増幅器720を画定するのに第1の群の第1の(例えば、低い方の)閾値電圧VTH-1がある第1のユニット・セル・トランジスタ740a…740a(それぞれのゲート716a、ソース726、及びドレイン・フィンガ736を含む)と、同じ半導体ダイ710上のピーキング増幅器730を画定するのに、第2の群の第2の(例えば、高い方の)閾値電圧VTH-2がある第2のユニット・セル・トランジスタ740b…740b(それぞれのゲート716b、ソース726、及びドレイン・フィンガ736を含む)と、を含む。半導体ダイ710上のドライバ増幅器770のトランジスタ740c…740c(それぞれのゲート716c、ソース726、及びドレイン・フィンガ736を含む)には、互いにほぼ同様である第3の閾値電圧(例えば、VTH-3)があり得る。第3の閾値電圧VTH-3は、第1の閾値電圧VTH-1及び/又は第2の閾値電圧VTH-2と同じであっても異なっていてもよい。追加として又は代替として、例えば、ゲート・ランナ714と、ゲート・バス724aとゲート・バス724bとへのそれぞれの入力との間に、同様なドライバ段が設けられてもよい。
【0078】
図8は、本明細書に記載のいくつかの実施例による、同じ半導体ダイ810に、動作特性、構造特性、及び/又は材料特性が異なるユニット・セル・トランジスタを使用して具体化された主増幅器820と第1のピーキング増幅器830とを含むドハティ構成のPA800を示す。図8のPA800は、3段構成をもたらすように、ゲート・ランナ814につなげられた入力及びドレイン・ランナ843につなげられた出力を有する第2のピーキング増幅器860をさらに含む3ウェイ・ドハティ配置として示されている。このように、PA800は、主増幅器820を画定するのに、第1の群の第1の閾値電圧VTH-1がある第1のユニット・セル・トランジスタ840a…840a(それぞれのゲート816a、ソース826、及びドレイン・フィンガ836を含む)と、第1のピーキング増幅器830を画定するのに、第2の群の第2の閾値電圧VTH-2(例えば、VTH-1よりも高い)がある第2のユニット・セル・トランジスタ840b…840b(それぞれのゲート816b、ソース826、及びドレイン・フィンガ836を含む)と、第2のピーキング増幅器860を画定するのに、第3の群の第3の閾値電圧VTH-3(例えば、VTH-2よりも高い)がある第3のユニット・セル・トランジスタ840c…840c(それぞれのゲート816c、ソース826、及びドレイン・フィンガ836を含む)と、を含む。
【0079】
ゲート・ランナ814は、同じ半導体ダイ810上の、それぞれの閾値電圧が異なる、閾値電圧VTH-1を有するトランジスタ840a、閾値電圧VTH-2を有するトランジスタ840b、及び閾値電圧VTH-3を有するトランジスタ840cに共通のバイアス印加ノード又はバイアス印加回路としての役割を果たすことができ、主増幅器820と第1のピーキング増幅器830とのそれぞれの出力にドレイン・ランナ834のそれぞれの区画の電気長(λ/4とも示される)によって導入されたそれぞれの出力信号に対する位相ずれと整合させる位相を与えるために、主増幅器820、第1のピーキング増幅器830、及び第2のピーキング増幅器860の入力に与えられたそれぞれの信号間に位相ずれを導入するように構成されているそれぞれの電気長(λ/4とも示される)を有する区画を画定し得る。主増幅器820の出力と第1のピーキング増幅器830の出力との間のドレイン・ランナ834の区画は、第1のピーキング増幅器830の出力と第2のピーキング増幅器860の出力との間のドレイン・ランナ834の区画とは異なることがある(例えば、幅が異なる)。いくつかの実施例では、この差は、異なる分布素子回路255と256とを使用して具体化され得る。また、図4のランナ414、433に参照して上に述べたように、それぞれのランナ区画814、834は、非補償の寄生部分対象の寄生成分とまとまって/相まって望ましい電気長(例えば、1/4波長)を画定し得る。すなわち、それぞれのランナ区画814、834は、それぞれ90度位相ずれのある程度の部分をもたらすことができ、90度位相ずれの残りは、寄生成分によってもたらされ得る。さらなる実施例において、非位相反転補償済み寄生成分では、ランナ814、834のそれぞれの区画は、完全1/4波長をもたらし得る。位相反転寄生補償済み素子では、電力合成ノード850がダイ80の上面角に、例えば主増幅器820の出力に設けられ得、入力ノード805が、ダイ810の底面角に、例えばピーキング増幅器860の出力に設けられ得る。なおさらなる実施例において、電力合成ノード・インピーダンスが出力ノード・インピーダンスとは異なる場合、電力合成ノード850を出力に接続する(最終)ライン(例えば、この合成ノード850を負荷につなげる負荷整合回路)が、電力合成ノード・インピーダンスを出力ノード・インピーダンスに転換させるように、設計又は構成され得る。
【0080】
したがって、入力ノード805におけるRF入力信号に応答して、第1のピーキング増幅器830のトランジスタ840bの動作により、主増幅器820のトランジスタ840aの出力における負荷インピーダンスが変調し、第2のピーキング増幅器860のトランジスタ840cの動作により、単一のゲート・バイアスに基づき、主増幅器820のトランジスタ840aの出力に、また第1のピーキング増幅器830のトランジスタ840bの出力における負荷インピーダンスが変調する。すなわち、主増幅器820、第1のピーキング増幅器830、及び第2のピーキング増幅器860の3つすべてが飽和時にオンにされ、バックオフ点ででは、効率向上又は最大効率がもたらされるように、主増幅器820のみオンにされ、また中間の効率をもたらすには主増幅器820も第1のピーキング増幅器830もオンにされる(第2のピーキング増幅器860がオフにされるのを伴って)。
【0081】
本明細書に記載の実例は、非限定的なものであり、共通ゲート・バイアスに応答して負荷変調をもたらすように2つ以上の異なる閾値電圧を有するトランジスタによって具体化された他の単一ダイ、多段の増幅器配置も本開示の範囲に含まれる。例えば、図8には、3ウェイ・ドハティ配置800を参照して示されているが、いくつかの実施例では、2つより多いピーキング増幅器830及び860が含まれ、N-1個のピーキング増幅器(ここで、Nは、1よりも大きい整数)によるN方向配置をもたらすことができる。また、いくつかの実施例では、複数のドハティPA400又は800が、同じダイ410又は810に並列に具体化され得る。本開示の実施例はまた、本明細書に記載のようなオンダイ負荷変調増幅器アーキテクチャを具体化するのに如何なる高電力RFトランジスタも使用され得るような、トランジスタ・テクノロジとは無関係であり得る。例えば、図3のユニット・セル・トランジスタ340のドレイン・フィンガ336(例えば、ドレイン電極)、ソース・コンタクト326、ゲート・フィンガ316は、それぞれ、半導体ベースのトランジスタ・ユニット・セルの様々な実施例のドレイン領域、ソース領域、チャネル領域に結合され得る。いくつかの実施例では、ドレイン・フィンガ336、ソース・コンタクト326、及びゲート・フィンガ316は、本開示がそれに限定されるわけではないが、高電子移動度トランジスタ(HEMT)実施例及び/又は横方向拡散MOSFET(LDMOS)実施例につながれ得る。
【0082】
具体的には、本明細書に記載のいくつかの実施例は、バックオフ出力電力における効率が、例えば、窒化ガリウム系テクノロジ(HEMTなど)だけではなくケイ素系テクノロジ(LDMOSなど)にとっても重要又は望ましいものであり得る、高電力RFトランジスタのドライバ段階及び/又は最終段階で具体化され得る。図9A及び9Bは、本明細書に記載のような単一ダイ、単一のバイアス負荷変調増幅器を具体化するのに、ユニット・セル・トランジスタ(ユニット・セル340、440、540、740、840のいずれかなど)として使用され得る、それぞれ、高電子移動度トランジスタ(「HEMT」)素子の構成例、LDMOS素子の構成例を示す。図9A及び9Bに示される断面図は、図3のトランジスタ・ユニット・セル340のうちの1つのI-I’線に沿って取られたものであり得る。
【0083】
図9Aは、トランジスタ・ユニット・セル340がHEMTトランジスタ・セルである実装形態を示す。図9Aに示されるように、HEMTトランジスタ・セル340は、例えば4H-SiC又は6H-SiCが含まれ得る基板121を含む半導体ダイ310を含み得る。基板材料として炭化ケイ素が使用され得るが、本明細書に記載の実施例では、サファイア、ダイヤモンド、窒化アルミニウム、窒化アルミニウム・ガリウム、窒化ガリウム、ケイ素、GaAs、LGO、ZnO、LAO、InPなど、適した如何なる基板も利用することができる。基板121にはエピタキシャル構造が形成されている。エピタキシャル構造は、基板121上に形成されているチャネル層124、及びチャネル層124上に形成されている隔壁層126を含み得る。チャネル層124及び隔壁層126としては、III族窒化物系材料を挙げることができ、隔壁層126の材料は、チャネル層124の材料よりもバンドギャップが大きい。例えば、チャネル層124は、GaNで構成され得る一方、隔壁層126は、AlGaNで構成され得る。チャネル124及び隔壁装126は、単層構造として示されているが、チャネル層124及び/又は隔壁層126のいずれか又は両方が多層構造として具体化され得ることが分かるであろう。例えば、緩衝層、歪み平衡層、移行層などのさらなる層も基板121に設けられるエピタキシャル構造の一部として含まれ得ることも分かるであろう。
【0084】
隔壁層126の材料とチャネル層124の材料とのバンドギャップの差及び隔壁層126とチャネル層124との界面(例えば、チャネル領域110)における圧電効果に起因して、チャネル層124と隔壁層126との接合部におけるチャネル層124に二次元電子ガス(2DEG:Two Dimensional Electon Gas)が誘導される。2DEGは、ソース・コンタクト区画326の下にある素子のソース領域と、ドレイン・フィンガ336の下にある素子のドレイン領域115との間の伝導を可能にする高伝導層としての役割を果たす。ソース・コンタクト区画326及びドレイン・フィンガ336が、隔壁層126上に形成されている。ゲート・フィンガ316がドレイン・フィンガ336とソース・コンタクト区画326との間で隔壁層126上に形成されている。
【0085】
図9Bは、トランジスタ・セルが金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)セル、具体的にはLDMOSである、図3のトランジスタ・セル340の実装形態を示す。LDMOSは、半導体ダイ310に形成されているソース領域105、チャネル領域110、及びドレイン領域115を有する3端子トランジスタ素子である。半導体ダイ310は、基板121(例えば、p型伝導性の)、及び基板121上のドリフト層123(例えば、n型伝導性の)を含む。基板121としては、例えば、サファイア、ダイヤモンド、窒化アルミニウム、窒化アルミニウム・ガリウム、窒化ガリウム、ケイ素、炭化ケイ素、GaAs、LGO、ZnO、LAO、InPなどを含む、半導体基板及び非半導体基板を挙げることができる。LDMOSトランジスタ・セル340は、ソース領域105及びドレイン領域115をもたらすドープウエル領域を含み得る。LDMOSトランジスタ・セル340のソース領域105、ドレイン領域115、及びチャネル領域110は、LDMOSトランジスタ・セルの動作用のコンタクトにつなげられ得る。例えば、チャネル領域は、ゲート・フィンガ316に電気的につなげられ得(例えば、ゲート電極として)、ドレイン領域115は、ドレイン・フィンガ336に電気的につなげられ得(例えば、ドレイン電極として)、ソース領域105は、ソース・コンタクト326に電気的につなげられ得る。
【0086】
チャネル領域110は、絶縁層129(例えば、SiO)によって伝導チャネル(例えば、ゲート・フィンガ316)から絶縁されている。ソース領域105に対してチャネル領域110に正電圧を印加すると、ソース領域105とドレイン領域115との間に反転層(例えば、チャネル)を形成することによって、電流がドレイン領域115及びソース領域105を流れることができる。LDMOS FETは、「エンハンスメント・モード」で動作することができ、これは、ドレイン-ソース間電流が、印加正ゲート電圧がドレイン領域115とソース領域105との間のチャネルを増大させるまで、流れることができないことを意味する。
【0087】
図9A及び9Bは、コンタクト326がソース領域105の上部表面に接続された状態のトランジスタ構造を示すが、他の実施例もあり得ることが分かるであろう。例えば、いくつかの実施例では、素子340の底面のコンタクトにソース領域105を接続するのに、ビア領域又は他の接続領域が設けられ得る。図9AのHEMT素子及び図9BのLDMOS素子は、トランジスタ・ユニット・セルのあり得る構成に実例として含まれるが、本開示の実施例の範囲を逸脱せずに、他のセル構成が本発明で利用されてもよいことが分かるであろう。例えば、同じ半導体ダイ上の閾値電圧及び/又は他の動作特性が異なる他のトランジスタ・セルと組み合わせられ得る如何なる構成のトランジスタ・ユニットも本開示の実施例から利益を得ることができる。したがって、本発明は、HEMTトランジスタ・セル及びLDMOSトランジスタ・セルに限定されるものではない。
【0088】
本明細書に記載の主増幅器のトランジスタとピーキング増幅器のトランジスタとで異なる閾値電圧は、様々な技法で実現され得るが、本明細書に記載の実施例は、如何なる特定の技法にも限定されるものではない。例えば、閾値電圧は、主増幅器のゲート・フィンガ316(及び/又は同じゲート・フィンガの様々な部分)とピーキング増幅器のゲート・フィンガ316(及び/又は同じゲート・フィンガの様々な部分)とを形成するのに、異なる材料(例えば、異なる金属、又は金属合金)、異なる形状(例えば、平面図及び/又は断面におけるゲート・フィンガ形状)、異なる構造(例えば、異なる厚み又は深さ)及び/又はドーピング濃度を使用することによって、同じ半導体の様々な領域に形成されたトランジスタにおいて閾値電圧を変え得る。追加として又は代替として、様々な閾値電圧は、主増幅器とピーキング増幅器のゲート・フィンガと下層のチャネル領域110の間の1つ又は複数の層126、123の組成、ドーピング濃度及び/又は厚みを変えることによって具体化され得る。
【0089】
例えば、図9Aに示されるようなHEMT素子では、主増幅器用のユニット・セル・トランジスタ340のゲート・フィンガ316の下の隔壁層126は、ピーキング増幅器用のユニット・セル・トランジスタ340の隔壁層126とは材料組成及び/又は材料厚が異なり得る。例えば、隔壁層126は、AlGa1-nN層で構成され得、ここで、「n」の値は、主増幅器のユニット・セル・トランジスタ340対ピーキング増幅器のユニット・セル・トランジスタ340で、閾値電圧値が異なるように、様々であり得る。追加として又は代替として、隔壁層126は、主増幅器のユニット・セル・トランジスタ340対ピーキング増幅器のユニット・セル・トランジスタ340で、z方向の厚みが異なり得る。例えば、隔壁層126は、主増幅器のユニット・セル・トランジスタ340とピーキング増幅器のユニット・セル・トランジスタ340とで深さの異なる凹部dを含み得る。隔壁層126における凹部dの深さが異なることによって、ゲート・フィンガ316aの底面の高さは、ゲート・フィンガ316bの底面よりチャネル層110に近くなり得る。結果として、ゲート・フィンガ316aの場合の閾値電圧値VTH-1は、ゲート・フィンガ316bの場合の閾値電圧値VTH-2よりも小さくなり得る。他の実施例において、閾値電圧が変わるように、ダイの領域によって隔壁層126及び/又はチャネル層124のドーピング濃度を変え得る。
【0090】
別の実例において、図9Bに示されるようなLDMOS素子では、様々なゲート・フィンガ316及び//又はゲート・フィンガ316の様々な部分の下の閾値電圧を変化するように、チャネル層110の一部がドーピングされ得る。例えば、様々なゲート・フィンガ316の下にあるそれぞれのチャネル層110は、主増幅器のユニット・セル・トランジスタ340対ピーキング増幅器のユニット・セル・トランジスタ340でドーパント濃度が異なり得る。主増幅器のユニット・セル・トランジスタ340対ピーキング増幅器のユニット・セル・トランジスタ340で望ましい閾値電圧のバラツキを達成するようにドーピング濃度が選択され得る。
【0091】
本明細書に記載の様々な閾値電圧及び/又は他の特性とは、それぞれのフィンガ、ランナ、及び/又は本明細書に記載の他の要素に対する製造バラツキを超える測定可能な差を指すことが分かるであろう。具体的には、トランジスタの様々な閾値電圧のバラツキは、本明細書に記載のものと同様な特性又は他の回路構造を有するトランジスタ間で容認できるバラツキの範囲の外であり得る。例えば、図11に示されるように、半導体成長技法及び半導体処理技法のバラツキに起因して半導体ウエハ100にわたる閾値電圧に、ある程度のバラツキがあり得る。通常のバラツキは、0.1~0.4ボルトの範囲であり得る。しかし、ウエハ1100に多数のマルチセル半導体ダイ100が形成されると仮定すると、如何なる特定の半導体ダイ110のフットプリント内の処理バラツキにも起因する閾値電圧のバラツキは、0.0001~0.0004ボルトの範囲など、より小さくなり得る。このような小さなバラツキは、素子のオンの分散には基本的に関係しない。これまで述べたように、本発明の実施例によれば、0.05~1.0ボルト、又は0.05~3ボルト以上程度のバラツキなど、閾値電圧値のより大きなバラツキが素子設計に画策され得る。このようなバラツキを使用して、同じ半導体ダイ1110上の様々な増幅器がオンになる閾値電圧を分散させることができ、それにより、本明細書に記載のような単一ダイ、単一のバイアスの負荷変調増幅器の製造が可能になる。
【0092】
第1の、第2のなどの用語が、本明細書では、様々な要素を記述するのに使用されていることがあるが、これらの要素がこれらの用語に限定されるものではないことが分かるであろう。これらの用語は、ある要素を別の要素と区別する際にのみ使用される。例えば、本発明の範囲を逸脱せずに、第1の要素が第2の要素と言われてもよく、同様に、第2の要素が第1の要素と言われてもよい。本明細書に使用される際、「and/or(及び/又は)」という用語は、挙げられた対応する項目のうちの1つ又は複数のありとあらゆる組合せを含む。
【0093】
本明細書に使用される用語は、単に特定の実施例を記述するためのものであり、本発明を限定することを目的とするものではない。本明細書に使用される際「a」、「an」、及び「the」という用語は、文脈上はっきりそうではないことが分からない限り、複数形も含めることが意図されている。さらに、本明細書で使用される際。「備える(comprises)」、「含む(includes)」及び/又は「含んでいる(including)」という用語は、述べた特徴、完全体、ステップ、工程、要素、及び/又は構成要素の存在を明示するが、1つ又は複数の他の特徴、完全体、ステップ、工程、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではない。
【0094】
別段の定めがない限り、本明細書で使用されているすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する当技術分野の当業者が通常理解しているのと同じ意味をもつ。さらに、本明細書で使用されている用語が、本明細書及び関連技術の背景におけるそれらの意味と一致する意図をもつと解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、観念的な意味合い又は過度に形式的な意味合いで解釈されることはないことが分かるであろう。
【0095】
ある層、領域、又は基板などの要素が、別の要素「上に(on)」、又は別の要素「へ(onto)」延在すると言われる場合、それは別の要素に直にあるか若しくは他の要素へ直に延在することであり得、又は介在する要素がある場合もあることが分かるであろう。それと対照的に、ある要素が別の要素「に直に(directly on)」あるか又は「へ直に(directly onto)」延在すると言われる場合は、介在する要素は何もない。また、ある要素が別の要素に「接続されている(connected)」又は「結合されている(coupled)」と言われる場合、その要素が他の要素に直に接続若しくは結合されていることであり得、又は介在する要素がある場合もあることも分かるであろう。対照的に、ある要素が別の要素に「直に接続されている(directly connected)」又は「直に結合されている(directly coupled)」と言われる場合、介在する要素は何もない。
【0096】
「の下に(below)」若しくは「の上に(above)」、又は「上部の(upper)」若しくは「下部の(lower)」、又は「水平の(horizontal)」若しくは「横方向に(lateral)」若しくは「垂直の(vertical)」などの相対語が、本明細書では、ある要素、層、又は領域の別の要素、層、又は領域に対する関係を図に示されているように記述するのに使用されている場合がある。これらの用語が、図に描写されている向きの他に、デバイスの様々な向きにも及ぶことが意図されていることが分かるであろう。
【0097】
本発明の実施例は、本発明の理想的な実施例(及び中間構造)の概略図である断面図に関連して本明細書に説明されている。図面上の層及び領域の厚さは、分かりやすくするために誇張されている場合がある。さらに、例えば製造技法及び/又は製造公差の結果として、図の形状とは異なることが予想されることになる。したがって、本発明の実施例は、本明細書に図示された領域の特定の形状に限定されると解釈されるべきではなく、例えば、製造に起因する形状の逸脱を含む。図示された実施例では、点線で示された要素は、場合によるものであり得る。
【0098】
全体を通して、同じ番号は、同じ要素を指す。したがって、同一又は同様の番号は、述べられていなくても、対応する図面に描写されていなくても、他の図面を参照して述べられていることがある。また、参照番号で示されていない要素は、他の図面を参照して述べられていることがある。
【0099】
図面及び明細書では、本発明の典型的な実施例が開示されており、特定の用語が採用されているが、それらは、汎用的、説明的な意味合いでのみ使用されており、限定を目的としたものではなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲に明示されている。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11