(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】リン酸処理液の再生装置、基板処理装置、リン酸処理液の再生方法、及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20231110BHJP
C23F 1/46 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
H01L21/306 J
C23F1/46
(21)【出願番号】P 2022500360
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2021004167
(87)【国際公開番号】W WO2021161897
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2020021625
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】樋口 倫太郎
【審査官】早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-282869(JP,A)
【文献】特開2006-315931(JP,A)
【文献】特開2014-209581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306-21/308
H01L 21/311
H01L 21/3213
C02F 1/60
C23F 1/46
B01D 9/00-9/04
B01D 11/00-11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の処理に使用された使用済みのリン酸処理液からシリコンを除去する、リン酸処理液の再生装置であって、
前記使用済みの前記リン酸処理液を回収する回収ラインと、
前記回収ラインによって回収した前記リン酸処理液と、前記リン酸処理液からシリコンを抽出する抽出剤
であるシランカップリング剤と、前記
シランカップリング剤を溶解する有機溶媒とを混合させる混合槽と、
前記回収ラインの途中又は前記混合槽にて、前記リン酸処理液のリン酸濃度を下げる希釈液を、前記リン酸処理液に対して供給する希釈液供給部と、を有する、再生装置。
【請求項2】
前記回収ラインの途中又は前記混合槽にて、前記リン酸処理液のリン酸濃度を測定するリン酸濃度計と、
前記リン酸濃度計によって前記リン酸濃度を測定し、前記リン酸濃度が設定濃度以下になるように前記希釈液供給部を制御し、前記希釈液の供給量を制御する制御装置と、を有する、請求項1に記載の再生装置。
【請求項3】
前記回収ラインの途中にて、前記リン酸処理液を貯留するバッファ槽を有し、
前記希釈液供給部、及び前記リン酸濃度計は、前記バッファ槽に接続される、請求項2に記載の再生装置。
【請求項4】
前記混合槽は、前記リン酸処理液と前記
シランカップリング剤と前記有機溶媒を撹拌する撹拌槽と、前記撹拌槽によって撹拌したものを、前記リン酸処理液を含む下層と、前記
シランカップリング剤及び前記有機溶媒を含む上層とに分離する分離槽と、を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の再生装置。
【請求項5】
前記混合槽は、前記分離槽にて形成される前記下層の前記リン酸処理液を、前記分離槽から前記撹拌槽に戻す返還ラインを含む、請求項4に記載の再生装置。
【請求項6】
前記混合槽は、前記リン酸処理液を含む下層と、前記
シランカップリング剤及び前記有機溶媒を含む上層とを形成する循環槽と、前記
シランカップリング剤及び前記有機溶媒を含む抽出液を、前記上層から抜き取って前記下層に供給する循環ラインと、を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の再生装置。
【請求項7】
前記混合槽にて、前記下層の前記リン酸処理液のシリコン濃度を測定するシリコン濃度計を有する、請求項4~6のいずれか1項に記載の再生装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の再生装置と、
前記リン酸処理液を前記基板に対して供給する液処理装置と、
前記再生装置によって再生された前記リン酸処理液を前記液処理装置に送る送液ラインと、を備える、基板処理装置。
【請求項9】
前記送液ラインの途中にて、前記リン酸処理液に添加剤を供給する添加剤供給部を備える、請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
基板の処理に使用された使用済みのリン酸処理液からシリコンを除去する、リン酸処理液の再生方法であって、
前記リン酸処理液と、前記リン酸処理液からシリコンを抽出する抽出剤
であるシランカップリング剤と、前記
シランカップリング剤を溶解する有機溶媒とを混合させることを有し、
前記リン酸処理液のリン酸濃度が設定濃度よりも高い場合には、前記リン酸処理液のリン酸濃度を下げる希釈液を、前記リン酸処理液に対して供給することを有する、再生方法。
【請求項11】
前記リン酸処理液と前記
シランカップリング剤と前記有機溶媒との混合前又は混合中に、前記リン酸処理液のリン酸濃度を下げる希釈液を前記リン酸処理液に対して供給することを有する、請求項10に記載の再生方法。
【請求項12】
前記リン酸処理液と前記
シランカップリング剤と前記有機溶媒との混合前に、前記リン酸処理液のリン酸濃度を測定することと、
前記測定した前記リン酸濃度に基づき前記希釈液を前記リン酸処理液に対して供給し、前記リン酸濃度を設定濃度以下に制御することと、を含む、請求項11に記載の再生方法。
【請求項13】
前記リン酸処理液のシリコン濃度を測定することを含む、請求項10~12のいずれか1項に記載の再生方法。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか1項に記載の再生方法で再生した前記リン酸処理液を前記基板に供給し、前記基板を処理することを含む、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リン酸処理液の再生装置、基板処理装置、リン酸処理液の再生方法、及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の基板液処理装置は、液処理部と、リン酸水溶液供給部と、排出ラインと、戻しラインと、再生ラインとを備える。リン酸水溶液供給部は、液処理部にリン酸水溶液を供給する。排出ラインは、前記液処理部からリン酸水溶液を排出する。戻しラインは、排出ラインによって排出するリン酸水溶液を液処理部に戻す。再生ラインは、排出ラインによって排出するリン酸水溶液を、液処理部に戻す前に再生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、使用済みのリン酸処理液からシリコンを除去する効率を向上する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るリン酸処理液の再生装置は、基板の処理に使用された使用済みのリン酸処理液からシリコンを除去する。前記再生装置は、回収ラインと、混合槽と、希釈液供給部とを有する。前記回収ラインは、前記使用済みの前記リン酸処理液を回収する。前記混合槽は、前記回収ラインによって回収した前記リン酸処理液と、前記リン酸処理液からシリコンを抽出する抽出剤であるシランカップリング剤と、前記シランカップリング剤を溶解する有機溶媒とを混合させる。前記希釈液供給部は、前記回収ラインの途中又は前記混合槽にて、前記リン酸処理液のリン酸濃度を下げる希釈液を、前記リン酸処理液に対して供給する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、使用済みのリン酸処理液からシリコンを除去する効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る基板処理装置を示す図である。
【
図2】
図2(A)は基板の処理開始前の状態の一例を示す断面図、
図2(B)は
図2(A)に示す基板の処理完了後の状態の一例を示す断面図である。
【
図3】
図3(A)はリン酸処理液の層の一例を示す図、
図3(B)は抽出液の層の一例を示す図、
図3(C)は撹拌の一例を示す図、
図3(D)は分離の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、撹拌前後のリン酸濃度の変化の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、撹拌によるシリコン除去率の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る液処理装置を示す図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る再生方法の一部を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図7に続いて、一実施形態に係る再生方法の残部を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、分離槽にて形成される上層の抽出液の後処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、変形例に係る基板処理装置を示す図である。
【
図11】
図11は、変形例に係る再生方法の一部を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、
図11に続いて、変形例に係る再生方法の残部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0009】
図1に示す基板処理装置1は、基板Wをリン酸処理液L1で処理する液処理装置2を備える。基板Wは、例えば、
図2(A)に示すようにシリコンウェハWaと、シリコン酸化膜Wbと、シリコン窒化膜Wcとを含む。シリコン酸化膜Wbとシリコン窒化膜Wcとは、交互に繰り返し積層され、積層膜を形成する。積層膜とシリコンウェハWaとの間には、不図示の導電膜などが形成される。積層膜は、積層膜を厚さ方向に貫通する貫通穴Wdを含む。
【0010】
リン酸処理液L1は、リン酸を含む溶液であり、例えばリン酸を含む水溶液である。リン酸処理液L1は、積層膜の貫通穴Wdに入り込み、
図2(B)に示すようにシリコン酸化膜Wb及びシリコン窒化膜Wcのうちのシリコン窒化膜Wcを選択的にエッチングし、除去する。エッチングの選択比は、リン酸処理液L1中のシリコン濃度Dなどで決まる。シリコン濃度Dが高いほど、選択比が向上する。一方で、シリコン濃度Dが飽和濃度を超えてしまうと、シリカなどのシリコン化合物が析出してしまう。
【0011】
基板Wの処理が進むにつれ、基板Wからリン酸処理液L1にシリコンが溶出し、シリコン濃度Dが高くなる。そこで、液処理装置2にて、シリコン濃度Dを許容範囲に維持すべく、リン酸処理液L1の入れ替えが行われる。具体的には、使用済みのリン酸処理液L1が液処理装置2から外部に排出され、使用済みのリン酸処理液L1よりも低いシリコン濃度Dのリン酸処理液L1が外部から液処理装置2に供給される。
【0012】
基板処理装置1は、リン酸処理液L1の廃棄量を低減すべく、再生装置3と、送液ライン8とを備える。再生装置3は、液処理装置2にて使用済みのリン酸処理液L1からシリコンを除去し、リン酸処理液L1を再生する。送液ライン8は、再生装置3によって再生したリン酸処理液L1を、液処理装置2に送る。再生したリン酸処理液L1を基板Wの処理に使用でき、リン酸処理液L1の廃棄量を低減できる。
【0013】
次に、
図3を参照して、リン酸処理液の再生方法について説明する。先ず、撹拌槽32aは、
図3(A)に示すように、使用済みのリン酸処理液L1を貯留する。リン酸処理液L1は、
図3(A)等に白丸で示すシリコン含む。シリコンは、リン酸に溶解するので、フィルター等では除去できない。
【0014】
次に、撹拌槽32aは、
図3(B)に示すように、リン酸処理液L1を含む層の上に、抽出液L2を含む層を形成する。抽出液L2は、
図3(B)等に黒丸で示す抽出剤と、抽出剤を溶解する有機溶媒とを含む。
【0015】
抽出液L2の有機溶媒は、例えば、ヘキサンである。有機溶媒は、抽出剤を溶解し、リン酸と混和せず、且つリン酸と反応しないものであればよく、ヘキサンには限定されない。例えば、有機溶媒は、オクタン、トルエン、又はキシレンなどであってもよい。有機溶媒は、リン酸とは混和しないので、また、リン酸よりも小さい密度を有するので、リン酸処理液L1の上に層を形成する。
【0016】
抽出液L2の抽出剤は、リン酸処理液L1からシリコンを抽出するものである。抽出剤としては、例えばシランカップリング剤が用いられる。シランカップリング剤は、例えばアルキル基を有するトリアルコキシシラン系化合物である。具体例として、ヘキシルトリメトキシシラン(CH3(CH2)5Si(OCH3)3)、n-オクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。抽出剤は、有機溶媒に可溶で、リン酸に溶解したシリコンと結合し、リン酸からシリコン化合物を析出させるものであればよく、シランカップリング剤には限定されない。例えば、抽出剤は、有機リン酸系化合物であってもよい。
【0017】
なお、リン酸処理液L1、有機溶媒、及び抽出剤を撹拌槽32aに供給する順番は、特に限定されない。例えば、有機溶媒及び抽出剤の供給後に、リン酸処理液L1が供給されてもよい。また、有機溶媒と抽出剤とは別々に撹拌槽32aに供給されてもよい。
【0018】
次に、撹拌槽32aは、
図3(C)に示すように、リン酸処理液L1と抽出液L2とを撹拌する。撹拌によって、リン酸処理液L1の液滴と抽出液L2の液滴とを細かく分散でき、リン酸処理液L1と抽出液L2の接触面積を増大でき、リン酸処理液L1中のシリコンと抽出液L2中の抽出剤との反応を促進できる。以下、抽出剤がアルキル基を有するトリアルコキシシラン系化合物である場合の反応について説明する。
【0019】
先ず、下記の式(1)に示すように、抽出液L2中の抽出剤がリン酸処理液L1中の水によって加水分解され、シラノール基が生じる。
R-Si(OCH3)3+3H2O→R-Si(OH)3+3CH3OH・・・(1)
上記の式(1)中、Rはアルキル基である。
【0020】
次に、下記の式(2)に示すように、シラノール基と、シリコン表面のOH基との脱水縮合反応が生じ、シロキサン結合(Si-O-Si)が生じる。
R-Si(OH)3+Si-OH→R-Si(OH)2-O-Si+H2O・・・(2)
上記の式(2)の脱水縮合反応によって、リン酸処理液L1中のシリコンが析出する。
【0021】
なお、上記の式(2)に示す反応の他に、下記の式(3)に示す自己縮合反応も生じる。
R-Si(OH)3+R-Si(OH)3→R-Si(OH)2-O-(OH)2Si-R↓+H2O・・・(3)
上記の式(3)の自己縮合反応によって、凝集による沈殿物が形成される。
【0022】
次に、撹拌槽32aによって撹拌したリン酸処理液L1と抽出液L2は、分離槽32bに送られ、
図3(D)に示すように二層に分離される。下層は主にリン酸処理液L1を含み、上層は主に抽出液L2を含む。
【0023】
下層と上層との間には、中間層が形成される。中間層は、式(2)に示す脱水縮合反応によってリン酸処理液L1から析出したシリコン化合物を含む。また、中間層は、式(3)に示す自己縮合反応によって生じた沈殿物を含む。
【0024】
中間層がリン酸処理液L1から析出したシリコン化合物を含むので、下層はシリコン濃度Dの低いリン酸処理液L1を含む。下層のリン酸処理液L1を分離槽32bから取り出せば、リン酸処理液L1を再生できる。
【0025】
本発明者は、シリコンの除去効率を向上すべく、リン酸処理液L1のリン酸濃度Cに着目した。リン酸濃度Cが低いほど、リン酸処理液L1の粘度が低い。それゆえ、リン酸濃度Cが低いほど、リン酸処理液L1の液滴の微細化が可能であり、リン酸処理液L1と抽出液L2の接触面積を増大でき、反応を促進できると考えられる。
【0026】
図4及び
図5に、リン酸処理液L1中のリン酸濃度Cと、シリコンの除去率との関係を調べた実験の結果を示す。この実験では、先ず、ガラス製のバイアル瓶に3mLのリン酸処理液L1と3mLの抽出液L2とを入れ、バイアル瓶の内部をマグネチックスターラーによって24℃で60分間撹拌した。
【0027】
なお、抽出液L2は、有機溶媒としてのヘキサンと、抽出剤としてのヘキシルトリメトキシシランとを含むものを用意した。より詳細には、抽出液L2として、抽出剤の濃度が9mM、18mM、38mM、46mMの4種類のものを用意した。1mMは、1mol/m3である。
【0028】
次に、撹拌を停止した状態で120分間放置し、リン酸処理液L1と抽出液L2とを二層に分離した。下層と上層の間には、シリコン化合物等の析出物を含む中間層が形成された。その後、分離したリン酸処理液L1のシリコン濃度Dを測定した。
【0029】
図4に、撹拌前後のリン酸濃度Cの変化を示す。なお、
図4において、リン酸濃度Cが低いほど、撹拌前のシリコン濃度Dが低いのは、ある一つのリン酸処理液を複数の瓶に小分けし、瓶ごとにリン酸処理液に対する水の添加割合を変えて、撹拌前のリン酸濃度Cを調整したからである。調整後のリン酸処理液L1を3mL秤量し、ガラス製のバイアル瓶に入れた。
【0030】
図4の実験では、抽出剤の濃度が46mMの抽出液L2を用いた。
図4から明らかなように、リン酸濃度Cが概ね90質量%以下であると、撹拌によってシリコン濃度Dが有意に低下することが分かる。なお、
図4において、リン酸濃度Cが96質量%の場合に、撹拌後に撹拌前よりもシリコン濃度Dが高いのは、抽出剤に含まれるシリコンの影響である。
【0031】
図5に、撹拌によるシリコン除去率を示す。
図5の実験では、抽出剤の濃度が9mM、18mM、38mMの抽出液L2を用いた。
図5から明らかなように、リン酸濃度Cが概ね90質量%以下であると、撹拌によるシリコンの除去が可能なことが分かる。特に、リン酸濃度Cが85質量%以下であると、高いシリコン除去率が得られることが分かる。
【0032】
次に、
図6を参照して、液処理装置2について説明する。
図6において、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向及びY軸方向は水平方向、Z軸方向は鉛直方向である。
【0033】
液処理装置2は、例えば複数枚の基板Wを同時にリン酸処理液L1で処理するバッチ式であって、処理槽21を有する。処理槽21はリン酸処理液L1を貯留し、複数枚の基板Wは処理槽21の内部でリン酸処理液L1に浸漬され、リン酸処理液L1によって処理される。
【0034】
処理槽21は、例えば二重槽であって、リン酸処理液L1を貯留する内槽21aと、内槽21aからオーバーフローしたリン酸処理液L1を回収する外槽21bとを有する。複数枚の基板Wは、内槽21aの内部でリン酸処理液L1に浸漬され、リン酸処理液L1によって処理される。
【0035】
液処理装置2は循環ライン22を有し、循環ライン22は外槽21bから取り出したリン酸処理液L1を、内槽21aに送る。また、液処理装置2は、循環ライン22の途中に、循環ポンプ23と、温調器24と、循環フィルター25とを有する。循環ポンプ23は、リン酸処理液L1を圧送する。温調器24は、リン酸処理液L1の温度を調節する。例えば、温調器24は、リン酸処理液L1を加熱するヒータを含む。リン酸処理液L1の温度は、例えばリン酸処理液L1の沸点に設定される。なお、温調器24は、リン酸処理液L1を冷却するクーラーをさらに含んでもよい。循環フィルター25は、リン酸処理液L1に含まれるパーティクルを捕集する。
【0036】
液処理装置2は内槽21aの内部に水平管26を有し、水平管26は循環ライン22から送られるリン酸処理液L1を、内槽21aの内部に供給する。水平管26は、X軸方向に延びており、Y軸方向に間隔をおいて複数本設けられる。複数本の水平管26はその長手方向に間隔をおいて複数の吐出口を有し、複数の吐出口はそれぞれ真上に向けてリン酸処理液L1を吐出する。これにより、カーテン状の上昇流を内槽21aの内部に形成できる。
【0037】
液処理装置2は基板保持部27を有し、基板保持部27は複数枚の基板WをX軸方向に間隔をおいて保持しながら、待機位置と処理位置との間で昇降する。待機位置は、複数枚の基板Wを不図示の搬送装置に対して受け渡す位置であり、処理位置の上方に設定される。処理位置は、複数枚の基板Wをリン酸処理液L1に浸漬する位置である。基板保持部27は、待機位置で処理前の基板Wを搬送装置から受け取り、次いで処理位置まで下降し、所定時間経過後に再び待機位置まで上昇し、待機位置で処理後の基板Wを搬送装置に渡す。
【0038】
基板Wの処理が進むにつれ、基板Wからリン酸処理液L1にシリコンが溶出し、シリコン濃度Dが高くなる。そこで、液処理装置2にて、シリコン濃度Dを許容範囲に維持すべく、リン酸処理液L1の入れ替えが行われる。
【0039】
液処理装置2は、シリコン濃度Dの低いリン酸処理液L1を外部から液処理装置2に供給する液供給部28を有する。液供給部28は、例えば再生装置3によって再生したリン酸処理液L1を液処理装置2に供給する。なお、液供給部28は、未使用のリン酸処理液L1を液処理装置2に供給してもよい。液供給部28は例えば開閉弁と流量制御器とを有し、開閉弁が開放されると、シリコン濃度Dの低いリン酸処理液L1が液処理装置2に供給される。その供給量は、流量制御器によって制御される。
【0040】
また、液処理装置2は、シリコン濃度Dの高い使用済みのリン酸処理液L1を液処理装置2から外部に排出する排液部29を有する。排液部29は、
図6に示すように内槽21aの底壁から外部にリン酸処理液L1を排出してもよいし、循環ライン22の途中から外部にリン酸処理液L1を排出してもよい。排液部29は例えば開閉弁と流量制御器とを有し、開閉弁が開放されると、使用済みのリン酸処理液L1が液処理装置2から外部に排出される。その排出量は、流量制御器によって制御される。排液部29によって排出されたリン酸処理液L1の少なくとも一部は、再生装置3に送られる。
【0041】
なお、本実施形態の液処理装置2は、バッチ式であるが、枚葉式であってもよい。枚葉式の液処理装置は、例えば、基板Wを水平に保持するスピンチャックと、スピンチャックによって回転される基板Wに対してリン酸処理液L1を供給するノズルとを含む。
【0042】
次に、
図1を再度参照して、再生装置3について説明する。再生装置3は、回収ライン31と、混合槽32と、希釈液供給部33とを有する。回収ライン31は、液処理装置2にて使用済みのリン酸処理液L1を回収する。混合槽32は、回収ライン31によって回収したリン酸処理液L1と、リン酸処理液L1からシリコンを抽出する抽出剤と、抽出剤を溶解する有機溶媒とを混合させる。抽出剤と有機溶媒とで抽出液L2が構成される。希釈液供給部33は、回収ライン31の途中にて、リン酸処理液L1のリン酸濃度Cを下げる希釈液を、リン酸処理液L1に対して供給する。希釈液は、リン酸処理液L1の溶媒であって、例えばDIW(脱イオン水)等の水である。リン酸濃度Cを低下させることで、リン酸処理液L1の粘度を低下でき、リン酸処理液L1の液滴を微細化できる。従って、リン酸処理液L1と抽出液L2の接触面積を増大でき、反応を促進でき、シリコンの除去効率を向上できる。
【0043】
回収ライン31は、液処理装置2の排液部29と、混合槽32とを接続する。回収ライン31の途中には、例えば、第1バッファ槽34が設けられる。第1バッファ槽34は、リン酸処理液L1を貯留する。第1バッファ槽34には、希釈液供給部33とリン酸濃度計35が接続される。希釈液供給部33は、第1バッファ槽34に希釈液を供給する。リン酸処理液L1と抽出液L2の混合前に、予めリン酸濃度Cを低下できる。リン酸濃度計35は、第1バッファ槽34にて、リン酸濃度Cを測定する。リン酸処理液L1と抽出液L2の混合前に、予めリン酸濃度Cを測定できる。
【0044】
なお、希釈液供給部33は、回収ライン31の途中ではなく、混合槽32にて希釈液をリン酸処理液L1に対して供給してもよい。リン酸処理液L1と抽出液L2との混合完了前に、リン酸処理液L1のリン酸濃度Cを低下すれば、リン酸処理液L1の粘度を低下でき、リン酸処理液L1の液滴を微細化できる。従って、リン酸処理液L1と抽出液L2の接触面積を増大でき、反応を促進でき、シリコンの除去効率を向上できる。
【0045】
また、リン酸濃度計35は、回収ライン31の途中ではなく、混合槽32にてリン酸濃度Cを測定してもよい。例えば、混合槽32がリン酸処理液L1と抽出液L2のうち、リン酸処理液L1のみを溜めた状態であれば、リン酸濃度Cを測定できる。また、混合槽32にてリン酸処理液L1と抽出液L2とが二層に分離した状態であれば、リン酸濃度Cを測定できる。
【0046】
制御装置9は、リン酸濃度計35によってリン酸濃度Cを測定し、リン酸濃度Cが設定濃度である上限値Cmax以下になるように希釈液供給部33を制御し、希釈液の供給量を制御する。制御装置9によってリン酸濃度Cを自動で調節できる。なお、制御装置9は、
図1では再生装置3とは別に設けられるが、再生装置3の一部であってもよい。
【0047】
制御装置9は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)91と、メモリなどの記憶媒体92とを備える。記憶媒体92には、基板処理装置1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御装置9は、記憶媒体92に記憶されたプログラムをCPU91に実行させることにより、基板処理装置1の動作を制御する。
【0048】
再生装置3は、回収ライン31の途中に、リン酸処理液L1の温度を、希釈液の沸点よりも低い温度に冷却する冷却器36を有してもよい。冷却器36は、例えば、液処理装置2の排液部29と、第1バッファ槽34の間に配置される。リン酸処理液L1を希釈液で希釈する前に、リン酸処理液L1の温度を希釈液の沸点よりも低い温度に冷却でき、希釈時の沸騰を防止できる。
【0049】
冷却器36は、リン酸処理液L1の温度を、抽出液L2の沸点よりも低い温度に冷却してもよい。リン酸処理液L1と抽出液L2の混合前に、リン酸処理液L1の温度を抽出液L2の沸点よりも低い温度に冷却でき、シリコン抽出時の沸騰を防止できる。この効果は、冷却器36が第1バッファ槽34と混合槽32との間に配置される場合にも得られる。
【0050】
混合槽32は、例えば、撹拌槽32aと、分離槽32bと、送液ライン32cとを有する。撹拌槽32aは、リン酸処理液L1と抽出剤と有機溶媒を撹拌する。撹拌槽32aには、抽出剤供給部37と、有機溶媒供給部38とが接続される。抽出剤供給部37は、抽出液L2の抽出剤を撹拌槽32aに供給する。同様に、有機溶媒供給部38は、抽出液L2の有機溶媒を撹拌槽32aに供給する。撹拌槽32aは、リン酸処理液L1と抽出液L2とを撹拌する。分離槽32bは、撹拌槽32aによって撹拌したものを、リン酸処理液L1を含む下層と、抽出液L2を含む上層とに分離する。下層と上層の間には、シリコン化合物等の析出物を含む中間層が形成される。送液ライン32cは、撹拌槽32aによって撹拌したものを、撹拌槽32aから分離槽32bに送る。送液ライン32cの途中には、ポンプなどが設けられる。撹拌と分離を別々の槽で実施するので、撹拌と分離を同一の槽で実施する場合に比べて、撹拌効率と分離効率を向上できる。撹拌に適した槽構造と、分離に適した槽構造を採用できるからである。例えば、撹拌槽32aの内部には撹拌翼が設置され、分離槽32bの内部には撹拌翼が設置されない。
【0051】
混合槽32は、分離槽32bにて形成される下層のリン酸処理液L1を、分離槽32bから撹拌槽32aに戻す返還ライン32dを更に有してもよい。返還ライン32dの途中には、フィルター及びポンプ等が設けられる。返還ライン32dによって、撹拌と分離を繰り返し実施できる。撹拌と分離を繰り返す過程で、抽出剤がシリコンと結合して消費されるので、抽出剤供給部37が新たな抽出剤を混合槽32に補給し、抽出液L2中の抽出剤濃度を許容範囲に維持してもよい。
【0052】
返還ライン32dは、下層のリン酸処理液L1のみならず、上層の抽出液L2をも分離槽32bから撹拌槽32aに戻してもよい。抽出液L2を繰り返し使用できる。なお、リン酸処理液L1用の返還ライン32dと、抽出液L2用の返還ラインとは、別々に設けられてもよい。
【0053】
返還ライン32dは、中間層の析出物を、分離槽32bから撹拌槽32aに戻さなくてよい。中間層の析出物は、返還ライン32dの途中のフィルターで捕集される。あるいは、中間層の析出物は、廃棄ライン40を介して廃棄されてもよい。廃棄ライン40は、使用済みの抽出液L2の廃棄にも使用できる。
【0054】
再生装置3は、分離槽32bにて形成される下層のリン酸処理液L1のシリコン濃度Dを測定するシリコン濃度計41を有する。シリコン濃度計41によって、シリコンの除去が十分に実施されたか否かを確認できる。シリコン濃度Dが上限値Dmaxを超える場合、シリコンの除去が不十分であるので、下層のリン酸処理液L1は撹拌槽32aに戻され、撹拌と分離が再び行われる。一方、シリコン濃度Dが上限値Dmax以下である場合、シリコンの除去が十分であるので、リン酸処理液L1の再生が終了する。
【0055】
再生装置3は、再生済みのリン酸処理液L1を貯蔵する第2バッファ槽42と、再生済みのリン酸処理液L1を混合槽32から第2バッファ槽42に送る送液ライン43とを備える。送液ライン43は、
図1では混合槽32の返還ライン32dに接続されるが、分離槽32bに接続されてもよい。
【0056】
再生装置3は、再生済みのリン酸処理液L1に対して、添加剤を供給する添加剤供給部45を有してもよい。添加剤は、一般的なものであってよく、例えば、基板Wの処理中にシリカの析出を抑制する析出抑制剤、又はシリコン濃度Dを調整する濃度調整剤等である。添加剤供給部45は、
図1では第2バッファ槽42に接続されるが、不図示の第3バッファ槽に接続されてもよい。第3バッファ槽は、第2バッファ槽42と液処理装置2とを接続する送液ライン8の途中に設けられる。なお、添加剤供給部45は、無くてもよい。
【0057】
次に、
図7~
図8を参照して、リン酸処理液L1の再生方法について説明する。
図7~
図8に示す各工程は、制御装置9による制御下で実施される。
【0058】
先ず、
図7のS101では、回収ライン31が、液処理装置2にて使用済みのリン酸処理液L1を回収する。
【0059】
次に、S102では、冷却器36が、リン酸処理液L1の温度を、希釈液の沸点よりも低い温度に冷却する。冷却器36は、リン酸処理液L1の温度を、抽出液L2の沸点よりも低い温度に冷却してもよい。
【0060】
次に、S103では、第1バッファ槽34が、使用済みのリン酸処理液L1を貯留する。
【0061】
次に、S104では、リン酸濃度計35が、リン酸処理液L1のリン酸濃度Cを測定する。
【0062】
次に、S105では、リン酸濃度Cが設定濃度である上限値Cmax以下になるように、制御装置9が希釈液の供給量を算出する。上限値Cmaxは、例えば90質量%、好ましくは85質量%である。なお、上限値Cmaxだけでなく、下限値Cminも設定されてもよい。下限値Cminを設定することで、再生後にリン酸処理液L1を濃縮する手間を省ける。下限値Cminは、例えば70質量%、好ましくは75質量%である。リン酸濃度Cが下限値Cmin以上、上限値Cmax以下になるように、制御装置9が希釈液の供給量を算出する。
【0063】
次に、S106では、希釈液供給部33が、S105で算出した供給量の希釈液を、リン酸処理液L1に供給する。
【0064】
次に、S107では、リン酸濃度計35が、リン酸処理液L1のリン酸濃度Cを再び測定する。
【0065】
次に、S108では、制御装置9が、リン酸濃度Cが設定濃度である上限値Cmax以下であるか否かをチェックする。
【0066】
リン酸濃度Cが上限値Cmaxを超える場合(S108、NO)、リン酸処理液L1の粘度が高く、リン酸処理液L1の液滴の微細化が困難であるので、制御装置9はS105に戻り、S105以降の工程を再び実施する。
【0067】
一方、リン酸濃度Cが上限値Cmax以下である場合(S108、YES)、リン酸処理液L1の粘度が低く、リン酸処理液L1の液滴の微細化が可能であるので、制御装置9はS109を実施する。S109では、回収ライン31が、第1バッファ槽34から撹拌槽32aにリン酸処理液L1を送る。
【0068】
次に、
図8のS110では、抽出剤供給部37が抽出液L2の抽出剤を撹拌槽32aに供給し、且つ、有機溶媒供給部38が抽出液L2の有機溶媒を撹拌槽32aに供給する。なお、上記の通り、リン酸処理液L1と、抽出剤と、有機溶媒の供給の順番は、特に限定されない。
【0069】
次に、S111では、撹拌槽32aが、リン酸処理液L1と抽出剤と有機溶媒を撹拌する。抽出剤と有機溶媒を含む抽出液L2の液滴と、リン酸処理液L1の液滴とが分散され、上記の式(1)~(3)に示す反応が始まる。
【0070】
次に、S112では、送液ライン32cが、撹拌槽32aによって撹拌したものを、撹拌槽32aから分離槽32bに送る。
【0071】
次に、S113では、分離槽32bが、撹拌槽32aによって撹拌したものを、リン酸処理液L1を含む下層と、抽出液L2を含む上層とに分離する。
【0072】
次に、S114では、シリコン濃度計41が、下層のリン酸処理液L1のシリコン濃度Dを測定する。
【0073】
次に、S115では、制御装置9が、シリコン濃度Dが上限値Dmax以下であるか否かをチェックする。上限値Dmaxは、液処理装置2にて基板Wの処理中にシリカが析出しないように、予め実験等で決定される。
【0074】
シリコン濃度Dが上限値Dmaxを超える場合(S115、NO)、シリコンの除去が不十分であり、液処理装置2にて基板Wの処理中にシリカが析出し得るので、制御装置9はS116を実施する。S116では、返還ライン32dが、下層のリン酸処理液L1を、分離槽32bから撹拌槽32aに戻す。その後、制御装置9は、S110に戻り、S110以降の工程を再び実施する。
【0075】
なお、2回目以降のS110では、返還ライン32dが、上層の抽出液L2を、分離槽32bから撹拌槽32aに戻してもよい。戻した抽出液L2は抽出剤を消費済みであるので、抽出剤供給部37が新たな抽出剤を撹拌槽32aに供給してもよい。
【0076】
一方、シリコン濃度Dが上限値Dmax以下である場合(S115、YES)、シリコンの除去が十分であり、液処理装置2にて基板Wの処理中にシリカが析出しないので、制御装置9はS117を実施する。S117では、送液ライン43が、再生済みのリン酸処理液L1を混合槽32から第2バッファ槽42に送る。
【0077】
次に、S118では、添加剤供給部45が、再生済みのリン酸処理液L1に対して、添加剤を供給する。なお、添加剤の供給は、なくてもよい。再生済みのリン酸処理液L1は、液処理装置2に供給され、基板Wの処理に用いられる。
【0078】
次に、
図9を参照して、分離槽32bにて形成される上層の抽出液L2の後処理について説明する。
図9に示す各工程は、制御装置9による制御下で実施される。
【0079】
先ず、
図9のS121では、制御装置9が、抽出液L2の使用回数が設定値以下か否かをチェックする。使用回数とは、抽出液L2のリン酸処理液L1との撹拌回数のことである。
【0080】
抽出液L2の使用回数が設定値を超える場合(S121、NO)、抽出液L2が劣化しているので、制御装置9はS123を実施する。S123では、廃棄ライン40が、上層の抽出液L2を廃棄する。
【0081】
一方、抽出液L2の使用回数が設定値以下である場合(S121、YES)、抽出液L2の再使用が可能であるので、制御装置9はS122を実施する。S122では、返還ライン32dが、上層の抽出液L2を、分離槽32bから撹拌槽32aに戻す。
【0082】
次に、
図10を参照して、再生装置3の変形例について説明する。以下、
図1に示す再生装置3との相違点について主に説明する。本変形例の再生装置3の混合槽32は、循環槽32eと、循環ライン32fとを有する。循環槽32eは、リン酸処理液L1を含む下層と、抽出液L2を含む上層とを形成する。循環ライン32fは、上層から抜き取った抽出液L2を下層に供給する。下層に供給した抽出液L2の液滴は、リン酸処理液L1と混和しないので、また、リン酸処理液L1よりも小さい密度を有するので、上層に向けて浮上する。その間、抽出液L2中の抽出剤がリン酸処理液L1中のシリコンと結合し、シリコン化合物等の析出物が生成する。析出物は、上層と下層の中間層に蓄積する。循環ライン32fの途中には、ポンプなどが設けられる。循環ライン32fは、循環槽32eの底部に設置される不図示のシャワープレート又は多孔質プレートから、下層に対して抽出液L2を供給してもよい。シャワープレート等によって、抽出液L2の液滴を微細化でき、抽出液L2とリン酸処理液L1の接触面積を増大でき、析出物の生成を促進できる。
【0083】
混合槽32には、抽出剤供給部37と、有機溶媒供給部38とが接続される。抽出剤供給部37は、抽出液L2の抽出剤を、循環ライン32fに供給するが、循環槽32eに供給してもよい。同様に、有機溶媒供給部38は、抽出液L2の有機溶媒を、循環ライン32fに供給するが、循環槽32eに供給してもよい。なお、リン酸処理液L1は、循環槽32eに供給されるが、循環ライン32fに供給されてもよい。
【0084】
シリコン濃度計41は、循環槽32eにて形成される下層のリン酸処理液L1のシリコン濃度Dを測定する。シリコン濃度計41によって、シリコンの除去が十分に実施されたか否かを確認できる。シリコン濃度Dが上限値Dmaxを超える場合、シリコンの除去が不十分であるので、抽出液L2の循環が継続される。一方、シリコン濃度Dが上限値Dmax以下である場合、シリコンの除去が十分であるので、抽出液L2の循環が停止される。
【0085】
次に、
図11~
図12を参照して、リン酸処理液L1の再生方法の変形例について説明する。
図11~
図12に示す各工程は、制御装置9による制御下で実施される。以下、
図8~9に示す再生方法との相違点について主に説明する。
【0086】
図11のS108では、制御装置9が、リン酸濃度Cが設定濃度である上限値Cmax以下であるか否かをチェックする。
【0087】
リン酸濃度Cが上限値Cmaxを超える場合(S108、NO)、リン酸処理液L1の粘度が高く、リン酸処理液L1中に抽出液L2の液滴を細かく分散することが困難であるので、制御装置9はS105に戻り、S105以降の工程を再び実施する。
【0088】
一方、リン酸濃度Cが上限値Cmax以下である場合(S108、YES)、リン酸処理液L1の粘度が低く、リン酸処理液L1中に抽出液L2の液滴を細かく分散すること可能であるので、制御装置9はS131を実施する。S131では、回収ライン31が、第1バッファ槽34から循環槽32eにリン酸処理液L1を送る。
【0089】
次に、
図12のS132では、抽出剤供給部37が抽出液L2の抽出剤を循環ライン32fに供給し、且つ、有機溶媒供給部38が抽出液L2の有機溶媒を循環ライン32fに供給する。
【0090】
循環槽32eは、リン酸処理液L1を含む下層と、抽出液L2を含む上層とを形成する。なお、上記の通り、リン酸処理液L1と、抽出剤と、有機溶媒の供給の順番は、特に限定されない。
【0091】
次に、S133では、循環ライン32fが、上層から抜き取った抽出液L2を下層に供給する。下層に供給した抽出液L2の液滴は、リン酸処理液L1と混和しないので、また、リン酸処理液L1よりも小さい密度を有するので、上層に向けて浮上する。その間、抽出液L2中の抽出剤がリン酸処理液L1中のシリコンと結合し、シリコン化合物等の析出物が生成する。析出物は、上層と下層の中間層に蓄積する。
【0092】
次に、S134では、シリコン濃度計41が、下層のリン酸処理液L1のシリコン濃度Dを測定する。
【0093】
次に、S135では、制御装置9が、シリコン濃度Dが上限値Dmax以下であるか否かをチェックする。上限値Dmaxは、液処理装置2にて基板Wの処理中にシリカが析出しないように、予め実験等で決定される。
【0094】
シリコン濃度Dが上限値Dmaxを超える場合(S135、NO)、シリコンの除去が不十分であり、液処理装置2にて基板Wの処理中にシリカが析出し得るので、制御装置9はS133に戻り、S133以降の工程を再び実施する。
【0095】
なお、時間の経過と共に、抽出剤がシリコンと結合して消費されるので、抽出剤供給部37が新たな抽出剤を混合槽32に補給し、抽出液L2中の抽出剤濃度を許容範囲に維持してもよい。
【0096】
一方、シリコン濃度Dが上限値Dmax以下である場合(S135、YES)、シリコンの除去が十分であり、液処理装置2にて基板Wの処理中にシリカが析出しないので、制御装置9はS136を実施する。S136では、循環ライン32fが、抽出液L2の循環を停止する。
【0097】
次に、S137では、循環槽32eが、抽出液L2が下層から上層に浮上するのを待ち、抽出液L2とリン酸処理液L1を二層に分離する。その後、S117以降の工程が実施される。
【0098】
以上、本開示に係るリン酸処理液の再生装置、基板処理装置、リン酸処理液の再生方法及び基板処理方法の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【0099】
上記実施形態の基板WはシリコンウェハWa、シリコン酸化膜Wb及びシリコン窒化膜Wcを含むが、基板Wの構成は特に限定されない。例えば、基板Wは、シリコンウェハWaの代わりに、炭化珪素基板、酸化ガリウム基板、窒化ガリウム基板、サファイア基板、又はガラス基板などを含んでもよい。
【0100】
本出願は、2020年2月12日に日本国特許庁に出願した特願2020-021625号に基づく優先権を主張するものであり、特願2020-021625号の全内容を本出願に援用する。
【符号の説明】
【0101】
3 再生装置
31 回収ライン
32 混合槽
33 希釈液供給部
L1 リン酸処理液
L2 抽出液