IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧

特許7383206熱伝導性フィルム状接着剤用組成物及び熱伝導性フィルム状接着剤、並びに、熱伝導性フィルム状接着剤を用いた半導体パッケージ及びその製造方法
<>
  • 特許-熱伝導性フィルム状接着剤用組成物及び熱伝導性フィルム状接着剤、並びに、熱伝導性フィルム状接着剤を用いた半導体パッケージ及びその製造方法 図1
  • 特許-熱伝導性フィルム状接着剤用組成物及び熱伝導性フィルム状接着剤、並びに、熱伝導性フィルム状接着剤を用いた半導体パッケージ及びその製造方法 図2
  • 特許-熱伝導性フィルム状接着剤用組成物及び熱伝導性フィルム状接着剤、並びに、熱伝導性フィルム状接着剤を用いた半導体パッケージ及びその製造方法 図3
  • 特許-熱伝導性フィルム状接着剤用組成物及び熱伝導性フィルム状接着剤、並びに、熱伝導性フィルム状接着剤を用いた半導体パッケージ及びその製造方法 図4
  • 特許-熱伝導性フィルム状接着剤用組成物及び熱伝導性フィルム状接着剤、並びに、熱伝導性フィルム状接着剤を用いた半導体パッケージ及びその製造方法 図5
  • 特許-熱伝導性フィルム状接着剤用組成物及び熱伝導性フィルム状接着剤、並びに、熱伝導性フィルム状接着剤を用いた半導体パッケージ及びその製造方法 図6
  • 特許-熱伝導性フィルム状接着剤用組成物及び熱伝導性フィルム状接着剤、並びに、熱伝導性フィルム状接着剤を用いた半導体パッケージ及びその製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】熱伝導性フィルム状接着剤用組成物及び熱伝導性フィルム状接着剤、並びに、熱伝導性フィルム状接着剤を用いた半導体パッケージ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20231110BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20231110BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231110BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20231110BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20231110BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J7/35
C09J11/06
C09J11/04
H01L21/52 E
H01L21/78 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023547073
(86)(22)【出願日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2023012170
【審査請求日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2022055427
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100141771
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 宏和
(74)【代理人】
【識別番号】100164345
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100118809
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 育男
(74)【代理人】
【識別番号】100198328
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】森田 稔
(72)【発明者】
【氏名】大淵 俊弥
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特許第7042986(JP,B1)
【文献】国際公開第2013/187303(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/172433(WO,A1)
【文献】特開2005-171206(JP,A)
【文献】特開2018-134779(JP,A)
【文献】国際公開第2017/191801(WO,A1)
【文献】特開2019-21829(JP,A)
【文献】特開2021-50305(JP,A)
【文献】特開2022-27972(JP,A)
【文献】特許第7178529(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
H01L 21/52
H01L 21/58
H01L 21/78- 21/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともエポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、高分子成分(C)、多面体状アルミナフィラー(D)、及びシランカップリング剤(E)を含有し、
前記多面体状アルミナフィラー(D)の全体のメジアン径(d50)が0.1~6.0μmであり、
前記多面体状アルミナフィラー(D)は真球状アルミナフィラーを含んでもよく、前記多面体状アルミナフィラー(D)の全量中の前記真球状アルミナフィラーの含有量が50質量%以下であり、
前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)、前記高分子成分(C)、前記多面体状アルミナフィラー(D)、及び前記シランカップリング剤(E)の各含有量の合計に占める前記多面体状アルミナフィラー(D)の割合が20~70体積%であり、
下記(式I)で示されるシランカップリング剤配合倍数が1.0~10である熱伝導性フィルム状接着剤用組成物であって、
前記熱伝導性フィルム状接着剤用組成物により得られた熱伝導性フィルム状接着剤の25℃におけるダイシェア強度が20MPa以上である、熱伝導性フィルム状接着剤用組成物。

(式I)
シランカップリング剤配合倍数=シランカップリング剤(E)配合量(g)/シランカップリング剤(E)必要量(g)

(式II)
シランカップリング剤(E)必要量(g)=[多面体状アルミナフィラー(D)配合量(g)×多面体状アルミナフィラー(D)の比表面積(m/g)]/シランカップリング剤(E)の最小被覆面積(m/g)
【請求項2】
少なくともエポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、高分子成分(C)、多面体状アルミナフィラー(D)、及びシランカップリング剤(E)を含有し、
前記多面体状アルミナフィラー(D)の全体のメジアン径(d50)が0.1~6.0μmであり、
前記多面体状アルミナフィラー(D)は真球状アルミナフィラーを含んでもよく、前記多面体状アルミナフィラー(D)の全量中の前記真球状アルミナフィラーの含有量が50質量%以下であり、
前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)、前記高分子成分(C)、前記多面体状アルミナフィラー(D)、及び前記シランカップリング剤(E)の各含有量の合計に占める前記多面体状アルミナフィラー(D)の割合が50~70体積%であり、
下記(式I)で示されるシランカップリング剤配合倍数が1.0~10である、熱伝導性フィルム状接着剤用組成物。

(式I)
シランカップリング剤配合倍数=シランカップリング剤(E)配合量(g)/シランカップリング剤(E)必要量(g)

(式II)
シランカップリング剤(E)必要量(g)=[多面体状アルミナフィラー(D)配合量(g)×多面体状アルミナフィラー(D)の比表面積(m/g)]/シランカップリング剤(E)の最小被覆面積(m/g)
【請求項3】
前記熱伝導性フィルム状接着剤用組成物により得られた熱伝導性フィルム状接着剤を25℃から5℃/分の昇温速度で昇温したとき、120℃における溶融粘度が250~10000Pa・sの範囲に達し、
前記熱伝導性フィルム状接着剤の熱伝導率が1.0W/m・K以上である、請求項1に記載の熱伝導性フィルム状接着剤用組成物。
【請求項4】
前記熱伝導性フィルム状接着剤用組成物により得られた熱伝導性フィルム状接着剤を25℃から5℃/分の昇温速度で昇温したとき、120℃における溶融粘度が250~10000Pa・sの範囲に達し、
前記熱伝導性フィルム状接着剤の熱伝導率が1.0W/m・K以上である、請求項2に記載の熱伝導性フィルム状接着剤用組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の熱伝導性フィルム状接着剤用組成物により得られてなる熱伝導性フィルム状接着剤。
【請求項6】
厚みが1~80μmの範囲である、請求項5に記載の熱伝導性フィルム状接着剤。
【請求項7】
表面に半導体回路が形成された半導体ウェハの裏面に、請求項5に記載の熱伝導性フィルム状接着剤を熱圧着して接着剤層を設け、この接着剤層を介してダイシングフィルムを設ける第1の工程と、
前記半導体ウェハと前記接着剤層とを一体にダイシングすることにより、前記ダイシングフィルム上に、フィルム状接着剤片と半導体チップとを備える接着剤層付き半導体チップを得る第2の工程と、
前記接着剤層付き半導体チップを前記ダイシングフィルムから剥離して前記接着剤層付き半導体チップと配線基板とを前記接着剤層を介して熱圧着する第3の工程と、
前記接着剤層を熱硬化する第4の工程と、
を含む、半導体パッケージの製造方法。
【請求項8】
前記熱伝導性フィルム状接着剤の厚みが1~80μmの範囲である、請求項7に記載の半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性フィルム状接着剤用組成物及び熱伝導性フィルム状接着剤、並びに、熱伝導性フィルム状接着剤を用いた半導体パッケージ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップを多段に積層したスタックドMCP(Multi Chip Package)が普及しており、携帯電話、携帯オーディオ機器用のメモリパッケージとして搭載されている。また、携帯電話等の多機能化に伴い、パッケージの高密度化・高集積化も推し進められている。これに伴い、半導体チップの多段積層化が進行している。
【0003】
このようなメモリパッケージの製造過程における配線基板と半導体チップとの接着や半導体チップ間の接着には、熱硬化性のフィルム状接着剤(ダイアタッチフィルム、ダイボンドフィルム)が使用されている。チップの多段積層化に伴い、ダイアタッチフィルムはより薄型状に形成することが求められている。また、ウェハ配線ルールの微細化に伴い、半導体素子表面には熱が発生しやすくなっている。それゆえ、熱をパッケージ外部へ逃がすために、ダイアタッチフィルムには熱伝導性のフィラーが配合され、高熱伝導性を実現している。
【0004】
いわゆるダイアタッチフィルム用途を意図した熱硬化性のフィルム状接着剤の材料として、例えば、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂の硬化剤、高分子化合物及び無機充填材(無機フィラー)を組み合わせた組成が知られている(例えば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014―234482号公報
【文献】国際公開第2021/033368号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高熱伝導性ダイアタッチフィルムを実現する手段の一つとして、熱伝導性の無機充填材をより多く配合することが考えられる。本発明者らが、無機充填材を含有する接着剤用組成物について、無機充填材の種類、形状に着目してさらに検討したところ、多面体状アルミナフィラーを用いると、特許文献1及び2で使用されている真球状のアルミナフィラーを用いた場合に比較して熱伝導率をより高めることができることが分かってきた。一方で、多面体状アルミナフィラーの配合は安定した接着力の発現を難しくし、被着体との間で十分な接着力が得られない問題があることが分かってきた。
【0007】
本発明は、無機充填材として多面体状アルミナフィラーを含有し、優れた熱伝導性に加え、被着体との間で優れた接着力を示す熱伝導性フィルム状接着剤、及び、このフィルム状接着剤の調製に好適な熱伝導性フィルム状接着剤用組成物を提供することを課題とする。また本発明は、上記熱伝導性フィルム状接着剤を用いた半導体パッケージ及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、及び高分子成分に対して、多面体状アルミナフィラーを含有させた接着剤用組成物において、シランカップリング剤を多面体状アルミナフィラーに対して特定範囲の過剰量で含有させることにより、上記課題を解決できることを見出した。
本発明は上記知見に基づきさらに検討を重ねて完成されるに至ったものである。
【0009】
本発明の上記課題は下記の手段により解決される。
〔1〕
少なくともエポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、高分子成分(C)、多面体状アルミナフィラー(D)、及びシランカップリング剤(E)を含有し、
前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)、前記高分子成分(C)、前記多面体状アルミナフィラー(D)、及び前記シランカップリング剤(E)の各含有量の合計に占める前記多面体状アルミナフィラー(D)の割合が20~70体積%であり、
下記(式I)で示されるシランカップリング剤配合倍数が1.0~10である、熱伝導性フィルム状接着剤用組成物。

(式I)
シランカップリング剤配合倍数=シランカップリング剤(E)配合量(g)/シランカップリング剤(E)必要量(g)

(式II)
シランカップリング剤(E)必要量(g)=[多面体状アルミナフィラー(D)配合量(g)×多面体状アルミナフィラー(D)の比表面積(m/g)]/シランカップリング剤(E)の最小被覆面積(m/g)
〔2〕
前記熱伝導性フィルム状接着剤用組成物により得られた熱伝導性フィルム状接着剤を25℃から5℃/分の昇温速度で昇温したとき、120℃における溶融粘度が250~10000Pa・sの範囲に達し、
前記熱伝導性フィルム状接着剤の熱伝導率が1.0W/m・K以上である、〔1〕に記載の熱伝導性フィルム状接着剤用組成物。
〔3〕
前記熱伝導性フィルム状接着剤の25℃におけるダイシェア強度が20MPa以上である、〔1〕又は〔2〕に記載の熱伝導性フィルム状接着剤用組成物。
〔4〕
前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)、前記高分子成分(C)、前記多面体状アルミナフィラー(D)、及び前記シランカップリング剤(E)の各含有量の合計に占める前記多面体状アルミナフィラー(D)の割合が50~70体積%である、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の熱伝導性フィルム状接着剤用組成物。
〔5〕
〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の熱伝導性フィルム状接着剤用組成物により得られてなる熱伝導性フィルム状接着剤。
〔6〕
厚みが1~80μmの範囲である、〔5〕に記載の熱伝導性フィルム状接着剤。
〔7〕
表面に半導体回路が形成された半導体ウェハの裏面に、〔5〕又は〔6〕に記載の熱伝導性フィルム状接着剤を熱圧着して接着剤層を設け、この接着剤層を介してダイシングフィルムを設ける第1の工程と、
前記半導体ウェハと前記接着剤層とを一体にダイシングすることにより、前記ダイシングフィルム上に、フィルム状接着剤片と半導体チップとを備える接着剤層付き半導体チップを得る第2の工程と、
前記接着剤層付き半導体チップを前記ダイシングフィルムから剥離して前記接着剤層付き半導体チップと配線基板とを前記接着剤層を介して熱圧着する第3の工程と、
前記接着剤層を熱硬化する第4の工程と、
を含む、半導体パッケージの製造方法。
〔8〕
〔7〕に記載の製造方法により得られる、半導体パッケージ。
【0010】
本発明において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱伝導性フィルム状接着剤は、無機充填材として多面体状アルミナフィラーを含有し、優れた熱伝導性に加え、被着体との間で優れた接着力を示す。本発明の熱伝導性フィルム状接着剤用組成物は、上記熱伝導性フィルム状接着剤を得るのに好適である。
本発明の半導体パッケージの製造方法によれば、熱伝導性に優れ、接着信頼性にも優れた半導体パッケージを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の半導体パッケージの製造方法の第1の工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
図2図2は、本発明の半導体パッケージの製造方法の第2の工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
図3図3は、本発明の半導体パッケージの製造方法の第3の工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
図4図4は、本発明の半導体パッケージの製造方法のボンディングワイヤーを接続する工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
図5図5は、本発明の半導体パッケージの製造方法の多段積層実施形態例を示す概略縦断面図である。
図6図6は、本発明の半導体パッケージの製造方法の別の多段積層実施形態例を示す概略縦断面図である。
図7図7は、本発明の半導体パッケージの製造方法により製造される半導体パッケージの好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[熱伝導性フィルム状接着剤用組成物]
本発明の熱伝導性フィルム状接着剤用組成物(以下、本発明の接着剤用組成物ともいう)は、本発明の熱伝導性フィルム状接着剤(以下、本発明のフィルム状接着剤という)の形成に好適な組成物である。
本発明の接着剤用組成物は、少なくともエポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、高分子成分(C)、多面体状アルミナフィラー(D)及びシランカップリング剤(E)を含有する。また、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、高分子成分(C)、多面体状アルミナフィラー(D)、及びシランカップリング剤(E)の各含有量の合計に占める多面体状アルミナフィラー(D)の割合が20~70体積%に制御される。さらに、シランカップリング剤(E)の含有量が、下記(式I)で示されるシランカップリング剤配合倍数が1.0~10となるように制御される。

(式I)
シランカップリング剤配合倍数=シランカップリング剤(E)配合量(g)/シランカップリング剤(E)必要量(g)

(式II)
シランカップリング剤(E)必要量(g)=(多面体状アルミナフィラー(D)配合量(g)×多面体状アルミナフィラー(D)の比表面積(m/g))/シランカップリング剤(E)の最小被覆面積(m/g)

多面体状アルミナフィラー(D)の比表面積は、Brunauer-Emmett-Teller法(BET法)にて、JIS Z 8830:2013(ISO 9277:2010)の「キャリアガス法」に準拠して、窒素ガスを使用して、測定される値である。測定条件は実施例に記載の条件を採用できる。
シランカップリング剤(E)の最小被覆面積は、シランカップリング剤(E)1gが材料表面上にて反応、吸着等したときに、シランカップリング剤(E)が材料表面を被覆する面積を意味する。具体的には次式により算出される。

最小被覆面積(m/g)=6.02×1023×13×10-20/シランカップリング剤の分子量

本発明の接着剤組成物は、硬化前の状態にある。よって、上記(式I)で示されるシランカップリング剤配合倍数及びシランカップリング剤(E)配合量は、いずれも硬化前の本発明の接着剤組成物における値である。「硬化前」の意味は、後述する「熱伝導性フィルム状接着剤」についての「硬化前」の意味と同様である。
【0014】
シランカップリング剤配合倍数が上記範囲にあることにより、多面体状アルミナフィラー(D)の広い接触面積に起因する優れた熱伝導性を引き出しながら、被着体に対する接着力もより高めることができる。また、本発明のフィルム状接着剤を半導体パッケージに組み込んだ際には、被着体との間にボイドを生じにくいものとできる。
シランカップリング剤配合倍数は、1.1~9.0が好ましく、1.3~8.0がより好ましく、1.5~7.0がさらに好ましく、1.5~4.0が特に好ましく、1.6~2.5が最も好ましい。
また、上記のシランカップリング剤(E)必要量は、0.20~3.50gが好ましく、0.40~3.20gがより好ましく、0.60~3.10gがさらに好ましく、0.60~3.00gがさらに好ましく、0.80~2.00gがさらに好ましく、0.90~1.55gが特に好ましい。上記のシランカップリング剤(E)必要量は、0.90~3.20gとすることもでき、1.40~3.10gとすることもできる。
【0015】
以下、接着剤用組成物に含まれる各成分について説明する。
【0016】
<エポキシ樹脂(A)>
上記エポキシ樹脂(A)は、エポキシ基を持つ熱硬化型の樹脂であり、エポキシ当量は500g/eq以下であることが好ましい。エポキシ樹脂(A)は液体、固体又は半固体のいずれであってもよい。本発明において液体とは、軟化点が25℃未満であることをいい、固体とは、軟化点が60℃以上であることをいい、半固体とは、軟化点が上記液体の軟化点と固体の軟化点との間(25℃以上60℃未満)にあることをいう。本発明で使用するエポキシ樹脂(A)としては、好適な温度範囲(例えば60~120℃)で低溶融粘度に到達することができるフィルム状接着剤を得る観点から、軟化点が100℃以下であることが好ましい。なお、本発明において、軟化点とは、軟化点試験(環球式)法(測定条件:JIS-K7234:1986に準拠)により測定した値である。
【0017】
本発明で使用するエポキシ樹脂(A)において、熱硬化体の架橋密度を高める観点から、エポキシ当量は150~450g/eqであることが好ましい。なお、本発明において、エポキシ当量とは、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(g/eq)をいう。
エポキシ樹脂(A)の重量平均分子量は、通常、10000未満が好ましく、5000以下がより好ましい。下限値に特に制限はないが、300以上が実際的である。
重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)分析による値である(以下、特に断らない場合には他の樹脂についても同様)。
【0018】
エポキシ樹脂(A)の骨格としては、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、クレゾールノボラック型、ジシクロペンタジエン型、ビフェニル型、フルオレンビスフェノール型、トリアジン型、ナフトール型、ナフタレンジオール型、トリフェニルメタン型、テトラフェニル型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型、トリメチロールメタン型等が挙げられる。このうち、樹脂の結晶性が低く、良好な外観を有するフィルム状接着剤を得られるという観点から、トリフェニルメタン型、ビスフェノールA型、クレゾールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型が好ましい。
【0019】
エポキシ樹脂(A)の含有量は、本発明の接着剤用組成物のうち、フィルム状接着剤を構成する成分(具体的には溶媒以外の成分、すなわち固形分)の総含有量100質量部中、3~70質量部が好ましく、5~50質量部が好ましく、8~30質量部がより好ましく、8~20質量部とすることも好ましい。
【0020】
<エポキシ樹脂硬化剤(B)>
上記エポキシ樹脂硬化剤(B)としては、アミン類、酸無水物類、多価フェノール類等の任意の硬化剤を用いることができる。本発明では、低溶融粘度で、かつある温度を超える高温で硬化性を発揮し、速硬化性を有し、さらに、室温での長期保存が可能な保存安定性の高いフィルム状接着剤とする観点から、潜在性硬化剤を用いることが好ましい。
潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド化合物、イミダゾール化合物、硬化触媒複合系多価フェノール化合物、ヒドラジド化合物、三弗化ホウ素-アミン錯体、アミンイミド化合物、ポリアミン塩、及びこれらの変性物やマイクロカプセル型のものを挙げることができる。これらは1種を単独で用いても、もしくは2種以上を組み合わせて用いてもよい。より優れた潜在性(室温での安定性に優れ、かつ、加熱により硬化性を発揮する性質)を有し、硬化速度がより速い観点から、イミダゾール化合物を用いることがより好ましい。
【0021】
接着剤用組成物中のエポキシ樹脂硬化剤(B)の含有量は、硬化剤の種類、反応形態に応じて適宜に設定すればよい。例えば、エポキシ樹脂(A)100質量部に対して0.5~100質量部とすることができ、1~80質量部としてもよく、2~50質量部としてもよく、4~20質量部とすることも好ましい。また、エポキシ樹脂硬化剤(B)としてイミダゾール化合物を用いる場合には、エポキシ樹脂(A)100質量部に対してイミダゾール化合物を0.5~10質量部とすることが好ましく、2~9質量部とすることがより好ましい。エポキシ樹脂硬化剤(B)の含有量を上記好ましい下限値以上とすることにより硬化時間をより短くすることができ、他方、上記好ましい上限値以下とすることにより、過剰の硬化剤のフィルム状接着剤中への残留を抑えることができる。結果、残留硬化剤の水分の吸着が抑えられ、半導体装置の信頼性の向上を図ることができる。
【0022】
<高分子成分(C)>
上記高分子成分(C)としては、フィルム状接着剤を形成した際に、常温(25℃)でのフィルムタック性(少しの温度変化でもフィルム状態が変化しやすい性質)を抑制し、十分な接着性および造膜性(フィルム形成性)を付与する成分であればよい。天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6-ナイロンや6,6-ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらの高分子成分(C)は単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。高分子成分(C)としては、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、及びポリウレタン樹脂が好ましい。
【0023】
高分子成分(C)の質量平均分子量は、10000以上である。上限値に特に制限はないが、5000000以下が実際的である。
上記高分子成分(C)の質量平均分子量は、GPC〔ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)〕によるポリスチレン換算で求めた値である。以降、具体的な高分子成分(C)の質量平均分子量の値も同義である。
また、上記高分子成分(C)のガラス転移温度(Tg)は、100℃未満が好ましく、90℃未満がより好ましい。下限は、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましい。
上記高分子成分(C)のガラス転移温度は、昇温速度0.1℃/分でDSCにより測定されたガラス転移温度である。以降、具体的な高分子成分(C)のガラス転移温度の値も同義である。
なお、本発明においてエポキシ樹脂(A)と高分子成分(C)のうちフェノキシ樹脂等のエポキシ基を有し得る樹脂とは、エポキシ当量が500g/eq以下である樹脂がエポキ樹脂(A)に、該当しないものが成分(C)に、それぞれ分類される。
【0024】
(フェノキシ樹脂)
フェノキシ樹脂は、エポキシ樹脂(A)と構造が類似していることから相溶性が良好な点で、高分子成分(C)として好ましい。フェノキシ樹脂を含有すると、接着性にも優れた効果を発揮することができる。
フェノキシ樹脂は常法により得ることができる。例えば、フェノキシ樹脂は、ビスフェノールもしくはビフェノール化合物とエピクロルヒドリンのようなエピハロヒドリンとの反応、液状エポキシ樹脂とビスフェノールもしくはビフェノール化合物との反応で得ることができる。
【0025】
フェノキシ樹脂の質量平均分子量は、10000以上が好ましく、10000~100,000がより好ましい。
また、フェノキシ樹脂中に僅かに残存するエポキシ基の量は、エポキシ当量で、5000g/eq以上が好ましい。
【0026】
フェノキシ樹脂のガラス転移温度(Tg)は、100℃未満が好ましく、90℃未満がより好ましい。下限は、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましい。
【0027】
((メタ)アクリル樹脂)
(メタ)アクリル樹脂に特に制限はなく、フィルム状接着剤のフィルム成分として公知の(メタ)アクリル共重合体からなる樹脂を広く用いることができる。
上記(メタ)アクリル樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系あるいはその誘導体が挙げられる。例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートなどをモノマー成分とする共重合体が挙げられる。
また、環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル:例えば、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートなどをモノマーとして用いた共重合体も好ましい。
また、アルキル基の炭素数が1~18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル:例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル及び(メタ)アクリル酸ブチル、等もモノマー成分として好ましい。
また酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン等と共重合されていてもよい。
(メタ)アクリル樹脂は水酸基を有している方が、エポキシ樹脂との相溶性の点で好ましい。
【0028】
(メタ)アクリル共重合体の質量平均分子量は10,000~2,000,000であることが好ましく、100,000~1,500,000であることがより好ましい。上記質量平均分子量を上記好ましい範囲内とすることにより、タック性を低減でき、溶融粘度の上昇も抑制することができる。
(メタ)アクリル共重合体のガラス転移温度は、好ましくは-35℃~50℃、より好ましくは-10℃~50℃、さらに好ましくは0℃~40℃、特に好ましくは0℃~30℃の範囲にある。上記ガラス転移温度を上記好ましい範囲内とすることにより、タック性を低減でき、半導体ウェハとフィルム状接着剤との間等におけるボイドの発生を抑制することができる。
【0029】
(ポリウレタン樹脂)
ポリウレタン樹脂は、主鎖中にウレタン(カルバミド酸エステル)結合を持つ重合体である。ポリウレタン樹脂は、ポリオール由来の構成単位と、ポリイソシアネート由来の構成単位とを有し、さらにポリカルボン酸由来の構成単位を有していてもよい。ポリウレタン樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリウレタン樹脂のTgは通常は100℃以下であり、60℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、45℃以下であることも好ましい。
【0030】
ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は特に制限されず、通常は5000~500000の範囲内にあるものが用いられる。
【0031】
ポリウレタン樹脂は、常法により合成でき、また、市場から入手することもできる。ポリウレタン樹脂として適用できる市販品として、ダイナレオVA-9320M、ダイナレオVA-9310MF、ダイナレオVA-9303MF(いずれもトーヨーケム社製)などを挙げることができる。
【0032】
エポキシ樹脂(A)100質量部に対する高分子成分(C)の含有量は、1~40質量部が好ましく、5~35質量部がより好ましく、10~30質量部がさらに好ましい。含有量をこのような範囲とすることで、硬化前の熱伝導性フィルム状接着剤の剛性と柔軟性を調整することができる。フィルム状態が良好(フィルムタック性が低減)となり、フィルム脆弱性も抑制することができる。
【0033】
<多面体状アルミナフィラー(D)>
多面体状アルミナフィラー(D)は、アルミナ(酸化アルミニウム)無機粉末であって、その形状が多面体状である。本発明において、「多面体」とは、複数の平面を有する立体をいう。多面体は少なくとも2つの平面を有していればよく、4つ以上の平面を有していることが好ましく、8つ以上の平面を有していることがより好ましい。多面体を構成する平面の数の上限は特に限定されないが、例えば20程度が実際的である。平面の形状は、特に限定されず、多角形(三角形、四角形、五角形、六角形など)を挙げることができる。多面体は、平面に加えて曲面を有していてもよい。多面体は、板状、柱状、角柱、円柱、正多面体等が挙げられる。多面体状アルミナフィラー(D)には、真球状アルミナフィラーが、上記成分(A)~(E)の各含有量の合計に占める真球状アルミナフィラーの割合として1~50体積%程度であれば含まれていてもよい。すなわち、多面体状アルミナフィラー(D)には、多面体状のアルミナフィラーと球状のアルミナフィラーとが含まれていてもよく、このような場合には、多面体状のアルミナフィラーと球状のアルミナフィラーとを合わせて、多面体状アルミナフィラー(D)という。多面体アルミナフィラー(D)中に含まれる真球状アルミナフィラーは、上記割合として40体積%以下とすることができ、30体積%以下とすることができ、10体積%以下とすることができ、5体積%以下とすることもできる。多面体状アルミナフィラー(D)中に含まれる真球状アルミナフィラーは、多面体状アルミナフィラー(D)の全量の80質量%以下とでき、50質量%以下とでき、30質量%とでき、20質量%以下とでき、10質量%以下とできる。また、多面体状アルミナフィラー(D)中に含まれるすべてのアルミナフィラーを多面体状のアルミナフィラーとすることもできる。後述する多面体状アルミナフィラー(D)の平均粒径の好ましい範囲は、真球状アルミナフィラーの平均粒径にも妥当するものである。
多面体状アルミナフィラーの形状は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することにより確認することができ、平面を2つ以上確認できる場合に「多面体」であると判断できる。
多面体状アルミナフィラー(D)を用いることにより、フィラー間の接触面積の増大などに起因して、真球状のアルミナフィラーを用いた場合に比較して、同じ充填量であっても熱伝導性を向上させることが可能となる。
【0034】
多面体状アルミナフィラー(D)の平均粒径(d50)は特に限定されないが、フィルム状接着剤の薄型化の観点から、0.01~6.0μmが好ましく、0.01~5.0μmが好ましく、0.1~4.0μmがより好ましく、0.3~3.5μmがさらに好ましい。平均粒径(d50)とは、いわゆるメジアン径であり、レーザー回折・散乱法により粒度分布を測定し、累積分布において粒子の全体積を100%としたときに50%累積となるときの粒径を意味する。
多面体状アルミナフィラー(D)は、複数種類の異なる平均粒径(d50)のものを組み合わせて使用することが好ましく、2種類の異なる平均粒径(d50)のものを組み合わせて使用することがより好ましい。このようにすることで、接着剤層中の多面体状アルミナフィラー(D)の含有量をより高めて熱伝導性を向上させることができる。
多面体状アルミナフィラー(D)として、2種類の異なる平均粒径(d50)を組み合わせて用いる場合、例えば、平均粒径(d50)が相対的に大きい多面体状アルミナフィラー(D1)の平均粒径は1.0~8.0μmが好ましく、2.0~6.0μmがより好ましく、2.5~5.0μmがさらに好ましく、2.5~4.0μmがさらに好ましい。平均粒径(d50)が相対的に小さい多面体状アルミナフィラー(D2)の平均粒径(d50)は、0.10~0.80μmが好ましく、0.20~0.70μmがより好ましく、0.30~0.70μmがさらに好ましく、0.35~0.65μmがさらに好ましい。
さらに、平均粒径(d50)が相対的に小さい多面体状アルミナフィラー(D2)の含有量に対する、平均粒径(d50)が相対的に大きい多面体状アルミナフィラー(D1)の含有量の比の値(D1/D2)(質量比)は、2~6が好ましく、3~5がより好ましい。
多面体状アルミナフィラー(D)として、複数種類の異なる平均粒径(d50)のアルミナフィラーを組み合わせて使用する場合、少なくとも1種を真球状アルミナフィラーとすることができる。例えば、平均粒径(d50)が相対的に大きい多面体状アルミナフィラーに代えて、平均粒径(d50)が相対的に大きい真球状アルミナフィラーを使用することができ、平均粒径(d50)が相対的に小さい多面体状アルミナフィラーに代えて、平均粒径(d50)が相対的に小さい真球状アルミナフィラーを使用することができる。
本発明において、「真球状」とは、上記「多面体」に該当せず、真球度が0.5~1.0であること(好ましくは0.6~1.0、より好ましくは0.7~1.0、さらに好ましくは0.8~1.0であること)をいう。真球度は、走査電子顕微鏡を用いてアルミナフィラーを観察し、その面積と周囲長に基づき求めることができる。具体的な方法は以下の通りである。
(アルミナフィラーの真球度)
アルミナフィラーをガラスプレート上に少量載せて、走査電子顕微鏡(型番:FlexSEM 1000II、日立ハイテク社製)にて倍率を10000倍として観察する。観察画像に基づき、粒子解析ソフトを用いて、個々のアルミナフィラーについて、それぞれの面積と周囲長を測定し、下記式(1)及び(2)により個々の無機充填材の凹凸度を算出する。
アルミナフィラーの凹凸度=(周囲長2×面積)×1/4π・・・(1)
アルミナフィラーの真球度=1/アルミナフィラーの凹凸度・・・(2)
観察画像内にあるアルミナフィラーを無作為に10個観察し、10個のアルミナフィラーの真球度の算術平均値を、アルミナフィラーの真球度とする。
【0035】
多面体状アルミナフィラー(D)は、表面処理や表面改質されていてもよく、このような表面処理や表面改質に用いる表面処理剤としては、シランカップリング剤やリン酸もしくはリン酸化合物、界面活性剤が挙げられ、本明細書において記載する事項以外は、例えば、国際公開第2018/203527号における熱伝導フィラーの項又は国際公開第2017/158994号の窒化アルミニウム充填材の項における、シランカップリング剤、リン酸もしくはリン酸化合物及び界面活性剤の記載を適用することができる。
【0036】
シランカップリング剤としては、無機充填材の表面処理に使用されるものを特に制限なく使用することができる。
【0037】
本発明では、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、高分子成分(C)、多面体状アルミナフィラー(D)、及びシランカップリング剤(E)の各含有量の合計に占める前記多面体状アルミナフィラー(D)の割合が、20~70体積%である。上記多面体状アルミナフィラー(D)の含有割合が上記下限値以上であると、フィルム状接着剤に所望とする熱伝導率及び溶融粘度を付与することができ、半導体パッケージからの放熱効果が得られる。また、上記上限値以下であると、フィルム状接着剤に所望とする溶融粘度を付与することができ、被着体との接着力を高めることができる。
成分(A)~(E)の各含有量の合計に占める上記多面体状アルミナフィラー(D)の割合は、40~70体積%が好ましく、45~70体積%がより好ましく、50~70体積%がさらに好ましく、55~70体積%がさらに好ましく、55~65体積%であることがさらに好ましい。
上記多面体状アルミナフィラー(D)の含有量(体積%)は、各成分(A)~(E)の含有質量と比重から算出することができる。
【0038】
<シランカップリング剤(E)>
本発明の接着剤用組成物は、シランカップリング剤(E)を含有している。本発明においては、多面体状アルミナフィラー(D)の表面処理に用いたシランカップリング剤(配合する多面体状アルミナフィラー(D)の表面にすでに結合ないし吸着しているシランカップリング剤)は、シランカップリング剤(E)に含めないものとする。
シランカップリング剤とは、ケイ素原子にアルコキシ基、アリールオキシ基のような加水分解性基が少なくとも1つ結合したものであり、これに加えて、アルキル基、アルケニル基、アリール基が結合してもよい。アルキル基は、アミノ基、アルコキシ基、エポキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基を置換基として有するものが好ましく、アミノ基(好ましくはフェニルアミノ基)、アルコキシ基(好ましくはグリシジルオキシ基)、(メタ)アクリロイルオキシ基を置換基として有するものがより好ましく、アミノ基を置換基として有するものが特に好ましい。
シランカップリング剤は、例えば、2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロイルオキプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロイルオキプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0039】
シランカップリング剤(E)は、上述の(式I)で表されるシランカップリング剤配合倍数を満たすように配合される。
【0040】
(その他の添加物)
本発明の接着剤用組成物は、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、高分子成分(C)、多面体状アルミナフィラー(D)、及びシランカップリング剤(E)の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、有機溶媒(メチルエチルケトン等)、イオントラップ剤(イオン捕捉剤)、硬化触媒、粘度調整剤、酸化防止剤、難燃剤、着色剤等の、その他の添加物をさらに含有していてもよい。例えば、国際公開第2017/158994号に記載された、「その他の添加物」を含むことができる。
【0041】
本発明の接着剤用組成物中に占める、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、高分子成分(C)、多面体状アルミナフィラー(D)及びシランカップリング剤(E)の各含有量の合計の割合は、例えば、60質量%以上とすることができ、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上とすることもできる。また、上記割合は100質量%でもよく、95質量%以下とすることもできる。
本発明の接着剤用組成物は、本発明のフィルム状接着剤を得るために好適に用いることができる。ただし、フィルム状接着剤に限定されず、例えば、液状ないしペースト状の接着剤を得るためにも好適に用いることができる。
【0042】
本発明の接着剤用組成物は、上記各成分を、エポキシ樹脂(A)が事実上、硬化しない温度において混合することにより得ることができる。混合の順は特に限定されない。エポキシ樹脂(A)、高分子成分(C)等の樹脂成分を必要に応じて溶媒と共に混合し、その後、多面体状アルミナフィラー(D)、エポキシ樹脂硬化剤(B)及びシランカップリング剤(E)を混合してもよい。この場合、エポキシ樹脂硬化剤(B)の存在下での混合を、エポキシ樹脂(A)が事実上、硬化しない温度で行えばよく、エポキシ樹脂硬化剤(B)の非存在下での樹脂成分の混合はより高い温度で行ってもよい。
【0043】
本発明の接着剤用組成物は、エポキシ樹脂(A)の硬化を抑制する観点から、使用前(フィルム状接着剤とする前)には10℃以下の温度条件下で保管されることが好ましい。
【0044】
[熱伝導性フィルム状接着剤]
本発明の熱伝導性フィルム状接着剤は、本発明の接着剤用組成物より得られてなるフィルム状の接着剤である。したがって、上述の、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、高分子成分(C)、多面体状アルミナフィラー(D)及びシランカップリング剤(E)を含有してなる。その他、本発明の接着剤用組成物においてその他の添加物として記載する添加物のうち、有機溶媒以外の添加物を含有していてもよい。
【0045】
より具体的には、本発明の熱伝導性フィルム状接着剤は次の通り特定されるものである。
少なくともエポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、高分子成分(C)、多面体状アルミナフィラー(D)、及びシランカップリング剤(E)を含有し、
前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)、前記高分子成分(C)、前記多面体状アルミナフィラー(D)、及び前記シランカップリング剤(E)の各含有量の合計に占める前記多面体状アルミナフィラー(D)の割合が20~70体積%であり、
下記(式I)で示されるシランカップリング剤配合倍数が1.0~10である、熱伝導性フィルム状接着剤。
(式I)
シランカップリング剤配合倍数=シランカップリング剤(E)配合量(g)/シランカップリング剤(E)必要量(g)

(式II)
シランカップリング剤(E)必要量(g)=[多面体状アルミナフィラー(D)配合量(g)×多面体状アルミナフィラー(D)の比表面積(m/g)]/シランカップリング剤(E)の最小被覆面積(m/g)
【0046】
有機溶媒を含有する接着剤用組成物を用いて本発明のフィルム状接着剤を形成する場合は、溶媒は通常、乾燥により接着剤用組成物から除去される。したがって、本発明のフィルム状接着剤中の溶媒の含有量は1000ppm(ppmは質量基準)以下であり、通常は0.1~1000ppmである。
ここで、本発明において「フィルム」とは、厚み200μm以下の薄膜を意味する。形状、大きさ等は、特に制限されず、使用態様にあわせて適宜調整することができる。
本発明のフィルム状接着剤は硬化前の状態、すなわちBステージの状態にある。
【0047】
本発明において、硬化前のフィルム状接着剤とは、エポキシ樹脂(A)が熱硬化する前の状態にあるものをいう。熱硬化前のフィルム状接着剤とは、具体的には、フィルム状接着剤を調製後、25℃以上の温度条件に72時間以上曝されておらず、かつ、30℃を越える温度条件に曝されていないフィルム状接着剤を意味する。一方、硬化後のフィルム状接着剤とは、エポキシ樹脂(A)が熱硬化した状態にあるものをいう。なお、上記の説明は、本発明の接着剤用組成物の特性を明確にするためのものであり、本発明のフィルム状接着剤が、25℃以上の温度条件に72時間以上曝されておらず、かつ、30℃を越える温度条件に曝されていないものに限定されるものではない。
【0048】
本発明のフィルム状接着剤は、半導体製造工程においてダイアタッチフィルムとして好適に用いることができる。
【0049】
本発明のフィルム状接着剤は、ダイアタッチ性を高める観点から、熱硬化前のフィルム状接着剤を25℃から5℃/分の昇温速度で昇温したとき、120℃における溶融粘度が250~10000Pa・sの範囲にあることが好ましく、500~10000Pa・sの範囲にあることがより好ましく、600~9200Pa・sの範囲にあることがより好ましく、700~8000Pa・sの範囲にあることがさらに好ましく、2000~7200Pa・sの範囲にあることが特に好ましい。
溶融粘度は、後述する実施例に記載の方法により決定することができる。
溶融粘度は、多面体状アルミナフィラー(D)の含有量、さらには、多面体状アルミナフィラー(D)の粒径に加え、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、高分子成分(C)及びシランカップリング剤(E)等の、共存する化合物もしくは樹脂の種類やこれらの含有量により適宜に制御できる。
【0050】
本発明のフィルム状接着剤は、熱伝導率が1.0W/m・K以上であることが好ましく、1.0~5.0W/m・Kがより好ましく、1.5~4.5W/m・Kがより好ましく、1.7~4.5W/m・Kがさらに好ましく、2.3~4.2W/m・Kが特に好ましい。
【0051】
本発明における熱伝導率は、実施例に記載の方法により決定されるものである。すなわち、フィルム状接着剤を介して2枚のシリコンチップを接着して、シリコンチップ/フィルム状接着剤/シリコンチップ構造とした上でフィルム状接着剤を熱硬化させて模擬半導体パッケージの形態とする。模擬半導体パッケージ形態におけるフィルム状接着剤の熱抵抗を、Mentor Graphics 社製 DynTIM Tester (+T3Ster)を用いて、測定する。熱抵抗の測定条件は、実施例に記載の測定条件を用いることができる。
ここで、一般的に熱伝導率はサンプルの厚みと熱抵抗の値より下記式(3)により算出できる。
式(3)
λ(W/m・K、熱伝導率)=L(m、サンプル厚み)/R(m・K/W、サンプル熱抵抗)
本発明では、フィルム状接着剤の厚みを10μm、20μm、及び50μmとして、各厚みにおける熱抵抗を測定し、得られた各厚みにおける熱抵抗を厚みに対してプロットして、最小二乗法により近似直線を得、その傾きの逆数として熱伝導率(パッケージ形態熱伝導率)を算出する。このようにすることにより、測定に用いた機器(フィルム状接着剤の上下に配したシリコンチップを含む)による熱抵抗をキャンセルでき、フィルム状接着剤それ自体の熱伝導率を正確に測定することができる。
上記測定方法によれば、実際の使用環境(実装状態)により近い状態で、フィルム状接着剤そのものの熱伝導性を評価することができる。
【0052】
本発明のフィルム状接着剤は、25℃におけるダイシェア強度が20MPa以上であることが好ましい。ダイシェア強度が上記範囲にあると、被着体に半導体チップを確実に接着できる点で好ましい。
ダイシェア強度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0053】
本発明のフィルム状接着剤は、厚みが1~80μmであることが好ましく、1~50μmであることがより好ましく、1~20μmであることがより好ましい。
フィルム状接着剤の厚みは、接触・リニアゲージ方式(卓上型接触式厚み計測装置)により測定することができる。
【0054】
本発明のフィルム状接着剤は、本発明の接着剤用組成物(ワニス)を調製し、この組成物を、離型処理された基材フィルム上に塗布し、必要に応じて乾燥させて形成することができる。接着剤用組成物は、通常は有機溶媒を含有する。
離型処理された基材フィルムとしては、得られるフィルム状接着剤のカバーフィルムとして機能するものであればよく、公知のものを適宜採用することができる。例えば、離型処理されたポリプロピレン(PP)、離型処理されたポリエチレン(PE)、離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。
塗工方法としては、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、ロールナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リバースコーター等を用いた方法が挙げられる。
乾燥は、エポキシ樹脂(A)を硬化せずに、接着剤用組成物から有機溶媒を除去してフィルム状接着剤とできればよく、例えば、80~150℃の温度で1~20分保持することにより行うことができる。
【0055】
本発明のフィルム状接着剤は、本発明のフィルム状接着剤単独で構成されていてもよく、フィルム状接着剤の少なくとも一方の面に上述の離型処理された基材フィルムが貼り合わされてなる形態であってもよい。さらに、ダイシングフィルムと一体として、ダイシング・ダイアタッチフィルムの形態としてもよい。また、本発明のフィルム状接着剤は、フィルムを適当な大きさに切り出した形態であってもよく、フィルムをロール状に巻いてなる形態であってもよい。
【0056】
本発明のフィルム状接着剤は、エポキシ樹脂(A)の硬化を抑制する観点から、使用前(硬化前)には10℃以下の温度条件下で保管されることが好ましい。
【0057】
[半導体パッケージ及びその製造方法]
次いで、図面を参照しながら本発明の半導体パッケージ及びその製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図1図7は、本発明の半導体パッケージの製造方法の各工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
【0058】
本発明の半導体パッケージの製造方法においては、先ず、第1の工程として、図1に示すように、表面に少なくとも1つの半導体回路が形成された半導体ウェハ1の裏面(すなわち、半導体ウェハ1の半導体回路が形成されていない面)に、本発明のフィルム状接着剤2(ダイアタッチフィルム2)を熱圧着して接着剤層(フィルム状接着剤2)を設け、次いで、この接着剤層(フィルム状接着剤2)を介して、ダイシングフィルム3(ダイシングテープ3)を設ける。図1では、フィルム状接着剤2をダイシングフィルム3よりも小さく示しているが、両フィルムの大きさ(面積)は、目的に応じて適宜に設定される。熱圧着の条件は、エポキシ樹脂(A)が事実上熱硬化しない温度で行う。例えば、70℃程度で、圧力0.3MPa程度の条件が挙げられる。
半導体ウェハ1としては、表面に少なくとも1つの半導体回路が形成された半導体ウェハを適宜用いることができ、例えば、シリコンウェハ、SiCウェハ、GaAsウェハ、GaNウェハが挙げられる。本発明のフィルム状接着剤(ダイアタッチフィルム)を半導体ウェハ1の裏面に設けるには、例えば、ロールラミネーター、マニュアルラミネーターのような公知の装置を適宜用いることができる。
上記においては、ダイアタッチフィルムとダイシングフィルムとを別々に貼り付けているが、本発明のフィルム状接着剤がダイシング・ダイアタッチフィルムの形態である場合には、フィルム状接着剤とダイシングフィルムとを一体に貼り付けることができる。
【0059】
次いで、第2の工程として、図2に示すように、半導体ウェハ1と接着剤層(ダイアタッチフィルム2)とを一体にダイシングすることにより、ダイシングフィルム3上に、半導体ウェハが個片化された半導体チップ4と、フィルム状接着剤2が個片化されたフィルム状接着剤片2とを備える接着剤層付き半導体チップ5を得る。ダイシング装置は特に制限されず、通常のダイシング装置を適宜に用いることができる。
【0060】
次いで、第3の工程として、接着剤層付き半導体チップ5をダイシングフィルム3から剥離する。この際、必要によりダイシングフィルムをエネルギー線で硬化して粘着力を低減してもよい。剥離は、接着剤層付き半導体チップ5をピックアップすることにより行うことができる。次いで、図3に示すように、接着剤層付き半導体チップ5と配線基板6とをフィルム状接着剤片2を介して熱圧着し、配線基板6に接着剤層付き半導体チップ5を実装する。配線基板6としては、表面に半導体回路が形成された基板を適宜用いることができ、例えば、プリント回路基板(PCB)、各種リードフレーム、及び、基板表面に抵抗素子やコンデンサー等の電子部品が搭載された基板が挙げられる。
このような配線基板6に接着剤層付き半導体チップ5を実装する方法としては特に制限されず、従来の熱圧着による実装方法を適宜に採用することができる。
【0061】
次いで、第4の工程として、フィルム状接着剤片2を熱硬化させる。熱硬化の温度としては、フィルム状接着剤片2の熱硬化開始温度以上であれば特に制限がなく、使用するエポキシ樹脂(A)、高分子成分(C)及びエポキシ硬化剤(B)の種類により適宜に調整される。例えば、100~180℃が好ましく、より短時間で硬化させる観点からは140~180℃がより好ましい。温度が高すぎると、硬化過程中にフィルム状接着剤片2中の成分が揮発して発泡しやすくなる傾向にある。この熱硬化処理の時間は、加熱温度に応じて適宜に設定すればよく、例えば、10~120分間とすることができる。
【0062】
本発明の半導体パッケージの製造方法では、図4に示すように、配線基板6と接着剤層付き半導体チップ5とをボンディングワイヤー7を介して接続することが好ましい。このような接続方法としては特に制限されず、従来公知の方法、例えば、ワイヤーボンディング方式の方法、TAB(Tape Automated Bonding)方式の方法等を適宜採用することができる。
【0063】
また、搭載された半導体チップ4の表面に、別の半導体チップ4を熱圧着、熱硬化し、再度ワイヤーボンディング方式により配線基板6と接続することにより、複数個積層することもできる。例えば、図5に示すように半導体チップをずらして積層する方法、もしくは図6に示すように2層目以降のフィルム状接着剤片2を厚くすることで、ボンディングワイヤー7を埋め込みながら積層する方法等がある。
【0064】
本発明の半導体パッケージの製造方法では、図7に示すように、封止樹脂8により配線基板6と接着剤層付き半導体チップ5とを封止することが好ましく、このようにして半導体パッケージ9を得ることができる。封止樹脂8としては特に制限されず、半導体パッケージの製造に用いることができる適宜公知の封止樹脂を用いることができる。また、封止樹脂8による封止方法としても特に制限されず、通常行われている方法を採用することができる。
本発明の半導体パッケージは、上述の半導体パッケージの製造法により製造され、半導体チップと配線基板、又は半導体チップ間の少なくとも1か所が、本発明のフィルム状接着剤の熱硬化体により接着されている。
【実施例
【0065】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例において、室温とは25℃を意味し、MEKはメチルエチルケトン、IPAはイソプロピルアルコール、PETはポリエチレンテレフタレートである。「%」、「部」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0066】
(実施例1)
トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(商品名:EPPN-501H、重量平均分子量:1000、軟化点:55℃、固体、エポキシ当量:167g/eq、日本化薬(株)製)56質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:YD-128、重量平均分子量:400、軟化点:25℃以下、液体、エポキシ当量:190g/eq、新日化エポキシ製造(株)製)49質量部、及び、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(商品名:YP-50、重量平均分子量:70000、Tg:84℃、新日化エポキシ製造(株)製)30質量部、MEK 67質量部を1000mlのセパラブルフラスコ中において、温度110℃で2時間加熱攪拌し、樹脂ワニスを得た。
次いで、この樹脂ワニスの全量(202質量部)を800mlのプラネタリーミキサーに移し、多面体状アルミナフィラー(商品名:AA-3、平均粒径(d50):3.5μm、比表面積:0.6m/g、住友化学(株)製)205質量部、イミダゾール型硬化剤(商品名:2PHZ-PW、四国化成(株)製)8.5質量部、シランカップリング剤(3-グリシジルオキシトリメトキシシラン、商品名:KBM-403、シランカップリング剤最小被覆面積:330m/g、信越化学工業(株)製)3.0質量部を加えて室温において1時間攪拌混合後、真空脱泡して混合ワニス(接着剤用組成物)を得た。
次いで、得られた混合ワニスを厚さ38μmの離型処理されたPETフィルム上に塗布して加熱乾燥(130℃で10分間保持)し、フィルム状接着剤の厚さが10μm、20μm、又は50μmである剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。
【0067】
(実施例2)
多面体状アルミナフィラーの配合量を319質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして接着剤用組成物及び剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。
【0068】
(実施例3)
多面体状アルミナフィラーの配合量を478質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして接着剤用組成物及び剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。
【0069】
(実施例4)
フィラーとして、多面体状アルミナフィラー(商品名:AA-3、平均粒径(d50):3.5μm、比表面積:0.6m/g、住友化学(株)製)383質量部及び多面体状アルミナフィラー(商品名:AA-05、平均粒径(d50):0.58μm、比表面積:3.2m/g、住友化学(株)製)96質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして接着剤用組成物及び剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。
【0070】
(実施例5)
シランカップリング剤の配合量を4.5質量部とし、フィラーとして、多面体状アルミナフィラー(商品名:AA-3、平均粒径(d50):3.5μm、比表面積:0.6m/g、住友化学(株)製)580質量部及び多面体状アルミナフィラー(商品名:AA-05、平均粒径(d50):0.58μm、比表面積:3.2m/g、住友化学(株)製)145質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして接着剤用組成物及び剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。
【0071】
(実施例6)
シランカップリング剤の配合量を5.5質量部とし、フィラーとして、多面体状アルミナフィラー(商品名:AA-3、平均粒径(d50):3.5μm、比表面積:0.6m/g、住友化学(株)製)725質量部及び多面体状アルミナフィラー(商品名:AA-05、平均粒径(d50):0.58μm、比表面積:3.2m/g、住友化学(株)製)181質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして接着剤用組成物及び剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。
【0072】
(実施例7)
シランカップリング剤として、シランカップリング剤(ビニルトリメトキシシラン、商品名:KBM-1003、シランカップリング剤最小被覆面積:515m/g、信越化学工業(株)製)3.0質量部を使用したこと以外は、実施例4と同様にして接着剤用組成物及び剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。
【0073】
(実施例8)
シランカップリング剤として、シランカップリング剤(3-アミノプロピルトリメトキシシラン、商品名:KBM-903、シランカップリング剤最小被覆面積:353m/g、信越化学工業(株)製)3.0質量部を使用したこと以外は、実施例4と同様にして接着剤用組成物及び剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。
【0074】
(実施例9)
シランカップリング剤として、シランカップリング剤(3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、商品名:KBM-402、シランカップリング剤最小被覆面積:354m/g、信越化学工業(株)製)3.0質量部を使用したこと以外は、実施例4と同様にして接着剤用組成物及び剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。
【0075】
(実施例10)
フェノキシ樹脂に代えて、ウレタン樹脂溶液(商品名:ダイナレオVA-9310MF、重量平均分子量:110000、Tg:27℃、貯蔵弾性率:289MPa、溶媒:MEK/IPA混合溶媒、トーヨーケム(株)製)120質量部(うちウレタン樹脂30質量部)を配合したこと以外は、実施例4と同様にして接着剤用組成物及び剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。
【0076】
(実施例11)
フェノキシ樹脂に代えて、アクリル樹脂(商品名:SG-280EK23、重量平均分子量:800000、Tg:-29℃、貯蔵弾性率:6.5MPa、ナガセケムテックス(株)製)30質量部を配合し、シクロヘキサノン90質量部を配合したこと以外は、実施例4と同様にして接着剤用組成物及び剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。
【0077】
(実施例12)
フィラーとして、多面体状アルミナフィラー(商品名:AA-3、平均粒径(d50):3.5μm、比表面積:0.6m/g、住友化学(株)製)383質量部及び真球状アルミナフィラー(商品名:AO502、平均粒径(d50):0.2μm、比表面積:8.0m/g、真球度0.99、アドマテックス社製)96質量部を配合し、シランカップリング剤の配合量を5.0質量部としたこと以外は、実施例4と同様にして接着剤用組成物及び剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。実施例12において、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、高分子成分、シランカップリング剤、及び無機充填材の各含有量の合計に占める真球状アルミナフィラーの割合(体積%)は、10体積%であった。
【0078】
(実施例13)
フィラーとして、真球状アルミナフィラー(商品名:AZ2-75、平均粒径(d50):3.0μm、比表面積:1.3m/g、真球度:0.99、日鉄ケミカル&マテリアル社製)383質量部及び多面体状アルミナフィラー(商品名:AA-05、平均粒径(d50):0.58μm、比表面積:3.2m/g、住友化学(株)製)96質量部を配合し、シランカップリング剤の配合量を5.0質量部としたこと以外は、実施例4と同様にして接着剤用組成物及び剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。実施例13において、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、高分子成分、シランカップリング剤、及び無機充填材の各含有量の合計に占める真球状アルミナフィラーの割合(体積%)は、40体積%であった。
【0079】
(比較例1)
多面体状アルミナフィラーの配合量を470質量部とし、シランカップリング剤の配合量を0.4質量部としたこと以外は、実施例3と同様にして接着剤用組成物及び剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。
【0080】
(比較例2)
フィラーとして、多面体状アルミナフィラー(商品名:AA-3、平均粒径(d50):3.5μm、比表面積:0.6m/g、住友化学(株)製)375質量部及び多面体状アルミナフィラー(商品名:AA-05、平均粒径(d50):0.58μm、比表面積:3.2m/g、住友化学(株)製)94質量部を配合し、シランカップリング剤を使用しなかったこと以外は、実施例4と同様にして接着剤用組成物及び剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。
【0081】
(比較例3)
フィラーとして、多面体状アルミナフィラー(商品名:AA-3、平均粒径(d50):3.5μm、比表面積:0.6m/g、住友化学(株)製)568質量部及び多面体状アルミナフィラー(商品名:AA-05、平均粒径(d50):0.58μm、比表面積:3.2m/g、住友化学(株)製)142質量部を配合し、シランカップリング剤の配合量を1.2質量部としたこと以外は、実施例5と同様にして接着剤用組成物及び剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。
【0082】
(比較例4)
フィラーとして、多面体状アルミナフィラー(商品名:AA-3、平均粒径(d50):3.5μm、比表面積:0.6m/g、住友化学(株)製)428質量部及び多面体状アルミナフィラー(商品名:AA-05、平均粒径(d50):0.58μm、比表面積:3.2m/g、住友化学(株)製)107質量部を配合し、シランカップリング剤の配合量を20.0質量部としたこと以外は、実施例8と同様にして接着剤用組成物及び剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。
【0083】
(比較例5)
フィラーとして、多面体状アルミナフィラー(商品名:AA-3、平均粒径(d50):3.5μm、比表面積:0.6m/g、住友化学(株)製)1160質量部及び多面体状アルミナフィラー(商品名:AA-05、平均粒径(d50):0.58μm、比表面積:3.2m/g、住友化学(株)製)290質量部を配合し、シランカップリング剤4.5質量部を使用したこと以外は、実施例8と同様にして接着剤用組成物及び剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。
【0084】
(比較例6)
フィラーとして、多面体状アルミナフィラー(商品名:AA-3、平均粒径(d50):3.5μm、比表面積:0.6m/g、住友化学(株)製)377質量及び多面体状アルミナフィラー(商品名:AA-05、平均粒径(d50):0.58μm、比表面積:3.2m/g、住友化学(株)製)94質量部を配合し、シランカップリング剤の配合量を0.8質量部としたこと以外は、実施例4と同様にして接着剤用組成物及び剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。
【0085】
(参考例1)
フィラーとして、真球状アルミナフィラー(商品名:AZ2-75、平均粒径(d50):3.0μm、比表面積:1.3m/g、真球度:0.99、日鉄ケミカル&マテリアル社製)378質量部及び真球状アルミナフィラー(商品名:ASFP-05S、平均粒径(d50):0.6μm、比表面積:3.6m/g、真球度:0.99、デンカ社製)95質量部を用い、シランカップリング剤の配合量を1.3質量部としたこと以外は、実施例4と同様にして接着剤用組成物及び剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。
【0086】
(参考例2)
フィラーとして、真球状アルミナフィラー(商品名:AZ2-75、平均粒径(d50):3.0μm、比表面積:1.3m/g、真球度:0.99、日鉄ケミカル&マテリアル社製)570質量部及び真球状アルミナフィラー(商品名:ASFP-05S、平均粒径(d50):0.6μm、比表面積:3.6m/g、真球度:0.99、デンカ社製)143質量部を用い、シランカップリング剤の配合量を2.0質量部としたこと以外は、実施例5と同様にして接着剤用組成物及び剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。
【0087】
(参考例3)
フィラーとして、真球状アルミナフィラー(商品名:AZ2-75、平均粒径(d50):3.0μm、比表面積:1.3m/g、真球度:0.99、日鉄ケミカル&マテリアル社製)708質量部及び真球状アルミナフィラー(商品名:ASFP-05S、平均粒径(d50):0.6μm、比表面積:3.6m/g、真球度:0.99、デンカ社製)177質量部を用い、シランカップリング剤の配合量を2.4質量部としたこと以外は、実施例6と同様にして接着剤用組成物及び剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。
【0088】
(参考例4)
フィラーとして、多面体状アルミナフィラー(商品名:AA-3、平均粒径(d50):3.5μm、比表面積:0.6m/g、住友化学(株)製)201質量部を用い、シランカップリング剤の配合量を0.2質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして接着剤用組成物及び剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。
【0089】
(参考例5)
フィラーとして、真球状アルミナフィラー(商品名:AZ2-75、平均粒径(d50):3.0μm、比表面積:1.3m/g、真球度:0.99、日鉄ケミカル&マテリアル社製)202質量部を用い、シランカップリング剤の配合量を0.4質量部としたこと以外は、参考例4と同様にして接着剤用組成物及び剥離フィルム付フィルム状接着剤を得た。
【0090】
各実施例、比較例、及び参考例で作成されたフィルム状接着剤の組成を表1~3に示す。空欄は、その成分を含有していないことを意味する。
表1~3中に示された「無機充填材含有量」は、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、高分子成分、シランカップリング剤、及び無機充填材の各含有量の合計に占める無機充填材の割合(体積%)を示す。
【0091】
[試験例]
【0092】
各実施例、比較例、及び参考例において、無機充填材の比表面積の測定、フィルム状接着剤の120℃における溶融粘度の測定、バルク熱伝導率の測定、ダイシェア強度の測定、パッケージ組立性評価、熱伝導率(パッケージ形態)の評価は、それぞれ以下の通りに実施した。
【0093】
(無機充填材の比表面積の測定)
各実施例、比較例、及び参考例に用いた無機充填材の比表面積は、BET法にてJIS Z 8830:2013(ISO 9277:2010)に則り、下記条件により測定した。

測定機器:4連式比表面積・細孔分布測定装置 NOVA-TOUCH型(Quantachrome社製)
使用ガス:窒素ガス
冷媒(温度):液体窒素(77.35K)
前処理条件:110℃、6時間以上真空脱気
測定相対圧力:0.05<P/P<0.3
【0094】
(溶融粘度の測定)
各実施例、比較例、及び参考例において得られた10μmのフィルム状接着剤を縦5.0cm×横5.0cmのサイズの正方形に切り取って、剥離フィルムを剥がしてからフィルム状接着剤同士を積層し、70℃のステージ上で、ハンドローラーにて貼り合わせて、厚さが約1.0mmである試験片を得た。この試験片について、レオメーター(RS6000(商品名)、Haake社製)を用い、温度範囲20~250℃、昇温速度5℃/分での粘性抵抗の変化を測定し、得られた温度-粘性抵抗曲線から、120℃における溶融粘度(Pa・s)を算出した。
【0095】
(バルク熱伝導率の測定)
本試験は、フィルム状接着剤単体の熱伝導性を評価する試験である。
各実施例、比較例、及び参考例において得られた厚さ10μmのフィルム状接着剤を一辺50mm以上の四角片に切り取り、切り取った四角片(フィルム状接着剤)を厚みが5mm以上になるように積層して積層体を得た。得られた積層体を、直径50mm、厚さ5mmの円盤状金型の上に置き、圧縮プレス成型機を用いて温度150℃、圧力2MPaにおいて10分間加熱して取り出した後、さらに乾燥機中において温度180℃で1時間加熱することによりフィルム状接着剤を熱硬化させ、直径50mm、厚さ5mmの円盤状試験片を得た。
この試験片について、熱伝導率測定装置(商品名:HC-110、英弘精機(株)製)を用いて、熱流計法(JIS A 1412:2016に準拠)により熱伝導率(W/(m・K))を測定した。
本試験では、エポキシ樹脂を完全に硬化させるため、上記高温条件で熱硬化させた。
【0096】
(ダイシェア強度評価)
各実施例、比較例、及び参考例において得られた10μmの剥離フィルム付フィルム状接着剤を、先ず、マニュアルラミネーター(商品名:FM-114、テクノビジョン社製)を用いて、温度70℃、圧力0.3MPaの条件で、ダミーシリコンウェハ(8インチサイズ、厚さ365μm)の一方の面に接着させた。その後、フィルム状接着剤から剥離フィルムを剥離した後、同マニュアルラミネーターを用いて、室温、圧力0.3MPaの条件で、フィルム状接着剤の前記ダミーシリコンウェハとは反対側の面上にダイシングテープ(商品名:K-13、古河電気工業(株)製)及びダイシングフレーム(商品名:DTF2-8-1H001、DISCO社製)を接着させた。次いで、2軸のダイシングブレード(Z1:NBC-ZH2050(27HEDD)、DISCO社製/Z2:NBC-ZH127F-SE(BC)、DISCO社製)が設置されたダイシング装置(商品名:DFD-6340、DISCO社製)を用いて2mm×2mmのサイズの正方形になるようにダミーシリコンウェハ側からダイシングを実施して、ダイシングフィルム上に、個片化されたフィルム状接着剤(接着剤層)付きのダミーチップ(半導体チップ)を得た。
別途、ダミーシリコンウェハ(8インチサイズ、厚さ365μm)の実装面とは反対側の面に、マニュアルラミネーターを用いて、室温、圧力0.3MPaの条件で、ダイシングテープ(商品名:K-8、古河電気工業(株)製)及びダイシングフレーム(商品名:DTF2-8-1H001、DISCO社製)を接着させた。次いで、2軸のダイシングブレード(Z1:NBC-ZH2050(27HEDD)、DISCO社製/Z2:NBC-ZH127F-SE(BC)、DISCO社製)が設置されたダイシング装置(商品名:DFD-6340、DISCO社製)を用いて12mm×12mmのサイズの正方形になるようにシリコンウェハ側からダイシングを実施して、ダイシングフィルム上に、個片化されたシリコンチップを得た。
次いで、ダイボンダー(商品名:DB-800、(株)日立ハイテクノロジーズ製)にて、前記フィルム状接着剤付ダミーチップをダイシングテープからピックアップし、120℃、圧力0.5MPa(荷重200gf)、時間1.0秒の条件において、前記フィルム状接着剤付きダミーチップのフィルム状接着剤側と、12mm×12mmサイズのシリコンチップの実装面側(凹凸のある面)とを貼り合わせるように、熱圧着した。この際、12mm×12mmサイズのシリコンチップの実装面側に、上記2mm×2mmのサイズのフィルム状接着剤付きダミーチップが2個、離間して配置されるようにした。こうして、2個のフィルム状接着剤付きダミーチップを1つの12mm×12mmのシリコンチップ上に実装したサンプルを得た。各実施例、比較例、及び参考例につきこのサンプルを4個作製した。これらのサンプルを乾燥機中に配置して温度120℃で2時間加熱することによりフィルム状接着剤を熱硬化させた。本試験では、熱硬化工程中のボイド発生を抑制する観点から、バルク熱硬化試験よりも、低温度かつ長時間の条件で熱硬化させた。
その後、前記フィルム状接着剤付ダミーチップの対シリコン表面に対するダイシェア強度をボンドテスター(商品名:4000万能型ボンドテスター、デージ(株))を用いて測定した。8個のフィルム状接着剤付ダミーチップについてダイシェア強度を測定し、さらにそれらの平均値を算出し(平均ダイシェア強度)、下記基準にて評価した。

--評価基準--
AA:平均ダイシェア強度が20MPa以上であり、8個全てのフィルム状接着剤付ダミーチップのダイシェア強度が20MPa以上である。
A:平均ダイシェア強度が20MPa以上であるが、ダイシェア強度が20MPa以上のフィルム状接着剤付ダミーチップが5~7個である。
B:平均ダイシェア強度が20MPa未満である。
【0097】
(パッケージ組立性試験)
本試験は、フィルム状接着剤付ダミーチップを、フィルム状接着剤を介してシリコンチップに接着することによって、半導体パッケージの組み立てを模擬的に再現し、フィルム状接着剤とシリコンチップ(基板)との界面におけるボイドを指標にパッケージ組立性を評価する試験である。
各実施例、比較例、及び参考例において得られた厚さ10μmの剥離フィルム付フィルム状接着剤を、先ず、マニュアルラミネーター(商品名:FM-114、テクノビジョン社製)を用いて、温度70℃、圧力0.3MPaの条件で、ダミーシリコンウェハ(8インチサイズ、厚さ365μm)の一方の面に接着させた。その後、フィルム状接着剤から剥離フィルムを剥離した後、同マニュアルラミネーターを用いて室温、圧力0.3MPaの条件で、フィルム状接着剤の前記ダミーシリコンウェハとは反対側の面上にダイシングテープ(商品名:K-13、古河電気工業(株)製)及びダイシングフレーム(商品名:DTF2-8-1H001、DISCO社製)を接着させた。次いで、2軸のダイシングブレード(Z1:NBC-ZH2050(27HEDD)、DISCO社製/Z2:NBC-ZH127F-SE(BC)、DISCO社製)が設置されたダイシング装置(商品名:DFD-6340、DISCO社製)を用いて10mm×10mmのサイズの正方形になるようにダミーシリコンウェハ側からダイシングを実施して、ダイシングフィルム上に、個片化されたフィルム状接着剤付ダミーチップを得た。
別途、ダミーシリコンウェハ(8インチサイズ、厚さ365μm)の実装面とは反対側の面に、マニュアルラミネーターを用いて、室温、圧力0.3MPaの条件で、ダイシングテープ(商品名:K-8、古河電気工業(株)製)及びダイシングフレーム(商品名:DTF2-8-1H001、DISCO社製)を接着させた。次いで、2軸のダイシングブレード(Z1:NBC-ZH2050(27HEDD)、DISCO社製/Z2:NBC-ZH127F-SE(BC)、DISCO社製)が設置されたダイシング装置(商品名:DFD-6340、DISCO社製)を用いて12mm×12mmのサイズの正方形になるようにシリコンウェハ側からダイシングを実施して、ダイシングフィルム上に、個片化されたシリコンチップを得た。
次いで、ダイボンダー(商品名:DB-800、(株)日立ハイテクノロジーズ製)にて、前記フィルム状接着剤付ダミーチップをダイシングテープからピックアップし、120℃、圧力1.0MPa(荷重1000gf)、時間1.5秒の条件において、前記フィルム状接着剤付きダミーチップのフィルム状接着剤側と、12mm×12mmサイズのシリコンチップの実装面側とを貼り合わせるように、熱圧着した。この際、12mm×12mmサイズのシリコンチップの実施面内の中央に、10mm×10mmのフィルム状接着剤付ダミーチップが配置されるようにした。これを乾燥機中に配置して温度120℃で2時間加熱することによりフィルム状接着剤を熱硬化させた。本試験では、熱硬化工程中のボイド発生を抑制する観点から、バルク熱硬化試験よりも、低温度かつ長時間の条件で熱硬化させた。このようにしてダミーチップとシリコンチップとをフィルム状接着剤を介して積層した模擬半導体パッケージを得た。
このようにして得られた模擬半導体パッケージについて、超音波探傷装置(SAT)(日立パワーソリューションズ製 FS300III(商品名))を用いて、フィルム状接着剤とシリコンチップ実装面との界面におけるボイドの有無を観察した。観察は、周波数100MHzのプローブ又は周波数50MHzのプローブを用いて行った。5個の模擬半導体パッケージについて観察を行い、下記評価基準に基づいて、評価を行った。周波数100MHzのプローブの方が、周波数50MHzのプローブよりも小さなボイドを観察することができる。本試験において、評価ランク「A」が合格レベルである。

--評価基準--
AA:周波数100MHzプローブを用いて観察した際に、5個の模擬半導体パッケージの全てにおいてボイドが観察されない。
A:上記「AA」の基準を満たさないが、周波数50MHzプローブを用いて観察した際に、5個の模擬半導体パッケージの全てにおいてボイドが観察されない。
B:周波数50MHzプローブを用いて観察した際に、1~4個の模擬半導体パッケージにおいてボイドが観察される。
C:周波数50MHzプローブを用いて観察した際に、5個の模擬半導体パッケージの全てにおいてボイドが観察される。
【0098】
(パッケージ形態熱伝導率試験)
本試験は、フィルム状接着剤付ダミーチップを、フィルム状接着剤を介してシリコンチップに接着することにより、フィルム状接着剤が2枚のシリコンチップで挟持された、模擬半導体パッケージの形態(シリコンチップ(上述のダミーチップ)/フィルム状接着剤/シリコンチップ)とし、この形態におけるフィルム状接着剤の熱伝導率を評価する試験である。
各実施例、比較例、及び参考例において作製した、フィルム状接着剤の厚みを10μm、20μm、及び50μmとした3種類の剥離フィル付きフィルム状接着剤について、これらをそれぞれ上記パッケージ組立性試験と同方法にて模擬半導体パッケージの形態とした。これら模擬半導体パッケージをMentor Graphics 社製 DynTIM Tester (+T3Ster)を用いて、各模擬半導体パッケージにおけるフィルム状接着剤の熱抵抗を下記条件にて測定した。

雰囲気:大気中
測定方向:厚み方向
測定温度:23℃(低温側ベース温度)
温度上昇:5~15℃(サンプルの上下面温度差)

本試験においては、得られた熱抵抗の値を厚みに対してプロットして、その傾きの逆数としてパッケージ形態熱伝導率を算出した。こうすることにより、測定に用いた機器(フィルム状接着剤の上下に配した半導体チップ及びシリコンチップを含む)による熱抵抗をキャンセルし、フィルム状接着剤それ自体の熱伝導率を測定した。
このようにして得られたパッケージ形態熱伝導率を、下記評価基準に基づいて、評価した。

--評価基準--
AAA:パッケージ形態熱伝導率が2.5W/m・K以上
AA:パッケージ形態熱伝導率が1.5W/m・K以上2.5W/m・K未満
A:パッケージ形態熱伝導率が1.0W/m・K以上1.5W/m・K未満
B:パッケージ形態熱伝導率が0.5W/m・K以上1.0W/m・K未満
C:パッケージ形態熱伝導率が0.5W/m・K未満
【0099】
上記の各試験結果を下表に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
【表3】
【0103】
<表の注>
上記表において、「エポキシ樹脂」、「高分子成分」、「無機充填材」、「シランカップリング剤」及び「硬化剤」欄に記載の数値の単位は、いずれも、「質量部」である。
【0104】
参考例1~3に示されるように、真球状アルミナフィラーを用いた場合には、真球状アルミナフィラーの配合量を50体積%以上に高めても、上記ダイシェア強度評価において、半数以上のサンプルにおいてダイシェア強度20MPa以上であり、ダイシェア強度の平均値も高く、良好な接着力を示している。
さらに、参考例4及び5に示されるように、真球状アルミナフィラー及び多面体状アルミナフィラーのいずれを用いた場合であっても、配合量は30体積%程度であれば、接着力は良好である。
一方で、多面体状アルミナフィラーを用いて、その配合量を50体積%以上に高めると、平均ダイシェア強度は20MPa未満となり、接着力に劣る結果となることがわかる(比較例1~6)。
これに対して、本発明の規定を満たす実施例1~13の接着剤用組成物を用いて形成されたフィルム状接着剤は、平均ダイシェア強度が20MPa以上であり、パッケージ形態熱伝導率も1.0W/m・K以上であった。無機充填材として多面体状アルミナフィラーを50体積%以上含有する実施例3~11においてもダイシェア強度及びパッケージ形態熱伝導率に優れている。本発明の接着剤用組成物を用いれば、無機充填材としての多面体状アルミナフィラーを含有していても、被着体との接着力が高く、熱伝導性に優れたフィルム状接着剤を形成できることがわかる。
さらに、実施例1~13のフィルム状接着剤は、被着体との界面においてボイドを形成しにくく、パッケージ組立性にも優れることも分かる。
【0105】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0106】
本願は、2022年3月30日に日本国で特許出願された特願2022-055427に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
【符号の説明】
【0107】
1 半導体ウェハ
2 接着剤層(フィルム状接着剤)
3 ダイシングフィルム(ダイシングテープ)
4 半導体チップ
5 フィルム状接着剤片付き半導体チップ
6 配線基板
7 ボンディングワイヤー
8 封止樹脂
9 半導体パッケージ

【要約】
エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、高分子成分(C)、多面体状アルミナフィラー(D)、及びシランカップリング剤(E)を含有し、前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)、前記高分子成分(C)、前記多面体状アルミナフィラー(D)、及び前記シランカップリング剤(E)の各含有量の合計に占める前記多面体状アルミナフィラー(D)の割合が20~70体積%であり、シランカップリング剤配合倍数が1.0~10である、熱伝導性フィルム状接着剤用組成物、これを用いたフィルム状接着剤、半導体パッケージ及びその製造方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7