(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】複数周波数による電磁波センシング範囲決定法
(51)【国際特許分類】
G01N 22/00 20060101AFI20231113BHJP
G01N 22/04 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
G01N22/00 S
G01N22/00 X
G01N22/00 W
G01N22/04 Z
(21)【出願番号】P 2020093271
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀部 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】昆 盛太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡部 謙一
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-161597(JP,A)
【文献】特開2002-131209(JP,A)
【文献】国際公開第2013/147038(WO,A1)
【文献】特開平03-008253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 22/00-G01N 22/04
G01N 24/00-G01N 24/14
G01R 33/28-G01R 33/64
AgriKnowledge
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に対して所定の周波数の電磁波を照射し前記測定対象物から反射または前記測定対象物を透過した電磁波を検出することにより測定した
、照射した電磁波と検出した電磁波と間の振幅比及び位相差と、前記測定対象物に含有される特定物質の
量の前記測定対象物の量に対する割合である含有量を複数の範囲に分割した前記含有量の範囲毎及び前記測定対象物に照射される電磁波の周波数毎に、前記振幅比及び前記位相差に基づく計算値と前
記含有量との関係を示す検量線とを格納する格納部と、
前記含有量の範囲毎及び前記測定対象物に照射される電磁波の周波数毎に、前記計算値、前記検量線に基づいて前記含有量を算出し、前記含有量の範囲毎に算出された前記含有量のばらつきを算出し、算出された前記ばらつきが前記含有量の範囲毎にあらかじめ定められた所定値未満である前記含有量の範囲を決定し、決定された前記含有量の範囲の前記検量線に基づいて、前記含有量を算出する制御部と、
を備える解析装置。
【請求項2】
前記制御部は、決定された前記含有量の範囲の1つの前記検量線に基づいて、前記含有量を算出する、
請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
前記制御部は、決定された前記含有量の範囲の複数の前記検量線によって算出される前記含有量の平均値を、前記含有量として算出する、
請求項1に記載の解析装置。
【請求項4】
測定対象物に対して所定の周波数の電磁波を照射し前記測定対象物から反射または前記測定対象物を透過した電磁波を検出することにより測定した
、照射した電磁波と検出した電磁波と間の振幅比及び位相差と、前記測定対象物に含有される特定物質の
量の前記測定対象物の量に対する割合である含有量を複数の範囲に分割した前記含有量の範囲毎及び前記測定対象物に照射される電磁波の周波数毎に、前記振幅比及び前記位相差に基づく計算値と前
記含有量との関係を示す検量線とを記憶装置に格納するコンピュータが、
前記含有量の範囲毎及び前記測定対象物に照射される電磁波の周波数毎に、前記計算値、前記検量線に基づいて前記含有量を算出し、前記含有量の範囲毎に算出された前記含有量のばらつきを算出し、算出された前記ばらつきが前記含有量の範囲毎にあらかじめ定め
られた所定値未満である前記含有量の範囲を決定し、決定された前記含有量の範囲の前記検量線に基づいて、前記含有量を算出する、
ことを実行する解析方法。
【請求項5】
測定対象物に対して所定の周波数の電磁波を照射し前記測定対象物から反射または前記測定対象物を透過した電磁波を検出することにより測定した
、照射した電磁波と検出した電磁波と間の振幅比及び位相差と、前記測定対象物に含有される特定物質の
量の前記測定対象物の量に対する割合である含有量を複数の範囲に分割した前記含有量の範囲毎及び前記測定対象物に照射される電磁波の周波数毎に、前記振幅比及び前記位相差に基づく計算値と前
記含有量との関係を示す検量線とを記憶装置に格納するコンピュータが、
前記含有量の範囲毎及び前記測定対象物に照射される電磁波の周波数毎に、前記計算値、前記検量線に基づいて前記含有量を算出し、前記含有量の範囲毎に算出された前記含有量のばらつきを算出し、算出された前記ばらつきが前記含有量の範囲毎にあらかじめ定められた所定値未満である前記含有量の範囲を決定し、決定された前記含有量の範囲の前記検量線に基づいて、前記含有量を算出する、
ことを実行するための解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析装置、解析方法、解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
植物、食品、木材などの対象物(物質)の水分量を非接触かつ非破壊で測定する技術がある(例えば、特許文献1)。特許文献1の技術では、105Hzから1012Hzまでの範囲にある所定周波数の電磁波を照射する電磁波送信手段と、透過又は反射した電磁波を受信する電磁波受信手段と、送受信波の位相と振幅を測定する測定器と、測定器での測定から振幅変化と位相差を検出して解析する解析装置とを備える水分量測定装置が開示されている。この解析装置は、あらかじめ既知の水分量の物質について振幅変化と位相差とを検出し、振幅変化と位相差との関係を直線近似した直線の傾きを求める。さらに、傾きと水分量との関係を示す検量線を求めて記憶手段に記憶しておき、処理ラインを流れる物質に所定周波数の電磁波を照射して検出した振幅変化と位相差との組の複数の関係を直線近似した直線の傾きを求め、当該傾きと水分量との関係を示す検量線に当てはめることにより水分量を検出するものである。この技術では、対象物の空気等との混合率(体積充填率)に影響されずに、対象物の水分量を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-223611号公報
【文献】特許第6253096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この技術は、直線近似できるような結果が得られ、検量線の線形性を維持できる周波数での測定が前提となっており、求める特定物質(例えば水分)の含有量の精度が低いという問題点がある。また、測定範囲(水分量の範囲)を限定し、適切な周波数を選択することで、当該測定範囲において、高精度な測定を実現することができる。しかし、不明な測定範囲(水分量の範囲)では、測定結果(水分量)は数値として得られるものの、その数値の真偽については知ることが困難である。
【0005】
本発明は、物質に含まれる特定物質の含有量の範囲が不明な場合においても、当該含有量の精度の高い測定が可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
即ち、第1の態様は、
測定対象物に対して所定の周波数の電磁波を照射し前記測定対象物から反射または前記測定対象物を透過した電磁波を検出することにより測定した照射した電磁波と検出した電磁波と間の振幅比及び位相差と、前記測定対象物に含有される特定物質の含有量を複数の範囲に分割した前記含有量の範囲毎及び前記測定対象物に照射される電磁波の周波数毎に、前記振幅比及び前記位相差に基づく計算値と前記測定対象物に含有される特定物質の含有量との関係を示す検量線とを格納する格納部と、
前記含有量の範囲毎及び前記測定対象物に照射される電磁波の周波数毎に、前記計算値、前記検量線に基づいて前記含有量を算出し、前記含有量の範囲毎に算出された前記含有量のばらつきを算出し、算出された前記ばらつきが前記含有量の範囲毎にあらかじめ定められた所定値未満である前記含有量の範囲を決定し、決定された前記含有量の範囲の前記
検量線に基づいて、前記含有量を算出する制御部と、
を備える解析装置とする。
【0007】
開示の態様は、プログラムが情報処理装置によって実行されることによって実現されてもよい。即ち、開示の構成は、上記した態様における各手段が実行する処理を、情報処理装置に対して実行させるためのプログラム、或いは当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として特定することができる。また、開示の構成は、上記した各手段が実行する処理を情報処理装置が実行する方法をもって特定されてもよい。開示の構成は、上記した各手段が実行する処理を行う情報処理装置を含むシステムとして特定されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、物質に含まれる特定物質の含有量の範囲が不明な場合においても、当該含有量の精度の高い測定が可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、検量線により求めた木片の水分量のグラフの例1を示す図である。
【
図2】
図2は、検量線により求めた木片の水分量のグラフの例2を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態の測定システムの構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態の解析装置100における水分量算出の動作フローの例を示す図である。
【
図5】
図5は、木片の水分量(既知)と、各水分量の範囲の検量線群により算出した水分量のばらつきとの関係のグラフの例1を示す図である。
【
図6】
図6は、木片の水分量(既知)と、各水分量の範囲の検量線群により算出した水分量のばらつきとの関係のグラフの例2を示す図である。
【
図7】
図7は、木片の水分量(既知)と、各水分量の範囲の検量線群により算出した水分量のばらつきとの関係のグラフの例3を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。実施形態の構成は例示であり、発明の構成は、開示の実施形態の具体的構成に限定されない。発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0011】
〔実施形態〕
(検量線)
特許文献1では、例えば、水分量が既知である米に対して所定の周波数の電磁波を照射して、照射した電磁波に対する透過電磁波(または反射電磁波)の振幅変化(振幅比)及び位相差を、所定時間、測定し、位相差と振幅変化との関係を直線近似した際の傾きが求められる。当該傾きは、米の水分量に依存するとされる。当該傾きは、振幅変化(振幅比)と位相差とに基づく計算値の一例である。さらに、同様にして、既知のさまざまな水分量を有する米に対して、当該傾きが求められる。検量線は、当該傾きと水分量との関係式として算出される。よって、水分量が未知である米に対して、所定の周波数の電磁波を照射し位相差と振幅変化との関係を直線近似した際の傾きを求め、当該傾きを当該周波数の検量線に当てはめることにより、当該米の水分量を算出することができる。また、振幅変化および位相差に代えて、複素数表記の実数部及び虚数部の変化の比でも同様の解析を可能とする。
【0012】
この技術において、位相差と振幅変化との関係を直線近似できるような測定結果を得られ、水分量と直線との傾きとが線形関係を維持できるような周波数は、米などの対象となる物質や、物質の水分量の範囲等により異なる。即ち、検量線は、測定対象物(例えば、
米)、特定物質の含有量(例えば、水分量)、及び、照射する電磁波の周波数などに依存する。例えば、ある物質についての水分量を求める場合に、水分量が第1範囲内であれば第1周波数による第1検量線、水分量が第1範囲と異なる第2範囲内であれば第2周波数による第2検量線を使用すれば、正確な水分量を求められることが判明していたとする。ここで、水分量が第1範囲または第2範囲であることが既知であるならば、範囲に応じた周波数を選択して、正確な水分量を算出することができる。しかし、水分量の範囲が未知である場合、第1周波数による第1検量線を用いた結果と、第2周波数による第2検量線を用いた結果とを得たとしても、どちらの結果が正しいかを判定することは困難である。
【0013】
図1及び
図2は、検量線により求めた木片の水分量のグラフの例を示す図である。各図のグラフの横軸は既存の方法で測定した木片の水分量(既知の水分量とみなす)であり、縦軸は木片に電磁波を照射して当該電磁波の周波数の検量線により求めた木片の水分量である。
図1のグラフで使用される検量線は、水分量80%未満の木片に周波数2.03GHzの電磁波を照射して得られた検量線である。
図2のグラフで使用される検量線は、水分量120%以上の木片に周波数0.458GHzの電磁波を照射して得られた検量線である。ここで、水分量は、母材の質量に対する母材に含まれる水分の質量の割合である。よって、水分量は100%を超えることもある。各図のグラフ内の実線は、横軸の値と縦軸の値とが一致する場合を示す直線である。実線に近いプロットほど、検量線による水分量が既知の水分量に近いことを示す。
【0014】
図1のグラフは、照射する電磁波の周波数を2.03GHzとした場合である。
図2のグラフは、照射する電磁波の周波数を0.458GHzとした場合である。
図1のグラフでは、既知の水分量が80%未満であるときに、既知の水分量と2.03GHzの検量線による水分量とが近似する。即ち、
図1のグラフでは、既知の水分量が80%未満であるときに、2.03GHzの検量線による水分量は、概ね既知の水分量の-20%から+20%までの範囲に収まっている。しかし、既知の水分量が80%以上であるときは、既知の水分量と2.03GHzの検量線による水分量とが乖離する。
図2のグラフでは、既知の水分量が120%以上であるときに、既知の水分量と0.458GHzの検量線による水分量とが近似する。即ち、
図2のグラフでは、既知の水分量が120%以上であるときに、0.458GHzの検量線による水分量は、概ね既知の水分量の-20%から+20%までの範囲に収まっている。しかし、既知の水分量が120%未満であるときは、既知の水分量と0.458GHzの検量線による水分量とが乖離する。よって、この例では、木片の水分量が80%未満であるときは、2.03GHzの電磁波を照射して水分量を算出することが好ましく、木片の水分量が120%以上であるときは、0.458GHzの電磁波を照射して水分量を算出することが好ましい。
【0015】
例えば、木片の水分量が80%未満である場合、木片の水分量が120%以上であるときに適切な0.458GHzの電磁波を照射して0.458GHzの検量線を使用して水分量を求めると、不正確な水分量を算出することになる。具体的には、木片の既知の水分量が60%である場合、2.03GHzの電磁波を照射して、2.03GHzの検量線により水分量を求めると、水分量は約60%と求まる(
図1)。これに対し、木片の既知の水分量が60%である場合、0.458GHzの電磁波を照射して、0.458GHzの検量線により水分量を求めると、水分量は約120%と求まり、実際の水分量(60%)と異なる値となる(
図2)。木片の水分量を求めるには、適切な電磁波周波数を使用し、適切な水分量範囲の検量線を使用して水分量を算出することが求められるが、木片の水分量が未知である場合には、適切な検量線を選択することは困難である。
【0016】
(構成例)
図3は、本実施形態の測定システムの構成例を示す図である。本実施形態の測定システム10は、解析装置100、測定装置200を含む。解析装置100は、制御部102、
メモリ104、格納部106、通信部108を含む。測定装置200は、送信部202、受信部204、通信部206を含む。解析装置100は、測定装置200と通信可能に接続される。測定装置200は、測定対象物に対して、所定の周波数の電磁波を照射(送信)し、測定対象物からの反射波または測定対象物の透過波を受信し、送信波及び受信波に基づく測定結果を、解析装置100に送信する。解析装置100は、測定装置200による測定結果に基づいて、測定対象物の特定物質の含有量(例えば、木片の水分量)を算出する。
【0017】
ここでは、測定対象物を木片、含有量を測定する特定物質を水(水分)としているが、測定対象物、特定物質は、これらに限られるものではない。測定対象物は、農産物、食品などであってもよい。特定物質は、糖分、塩分、アルコール、尿素、脂肪分などであってもよい。
【0018】
解析装置100は、PC(Personal Computer)、ワークステーション(WS、Work Station)のような専用または汎用のコンピュータ、あるいは、コンピュータを搭載した電
子機器を使用して実現可能である。
【0019】
解析装置100の制御部102は、解析装置100において制御、演算を行うプロセッサである。解析装置100の各処理、各動作は、制御部102によって制御される。制御部102は、格納部106に記憶されたプログラムをメモリ104の作業領域に実行可能に展開し、プログラムの実行を通じて周辺機器の制御を行うことで所定の目的に合致した機能を提供する。制御部102は、単一のプロセッサであっても、マルチプロセッサであってもよい。
【0020】
メモリ104は、制御部102がプログラムやデータをキャッシュしたり、作業領域を展開したりする記憶媒体である。メモリ104は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリである。メモリ104に格納される情報は、格納部106に格納されてもよい。
【0021】
格納部106は、制御部102等により実行されるプログラム、動作の設定情報などを記憶する記憶媒体である。格納部106は、例えば、HDD(Hard-disk Drive)、SS
D(Solid State Drive)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ、USBメモリ、SD(Secure Digital)メモリカード等である。格納部106に格納される情報は、メモリ104に格納されてもよい。格納部106は、位相差及び振幅の関係と特定物質の含有量との関係を示す検量線等を格納する。格納部106は、記憶装置の一例である。
【0022】
通信部108は、測定装置200等の外部装置との間の通信のための通信インタフェースである。通信部108は、LAN(Local Area Network)インタフェースボード、無線通信のための無線通信回路、有線通信のための通信回路である。通信部108は、測定装置200と通信可能に接続され、測定装置200から測定結果を受信する。
【0023】
測定装置200の送信部202は、測定対象物に対して、電磁波を照射する。送信部202は、電磁波を送信する送信ユニットである。電磁波の周波数は、例えば、105Hzから1012Hzまでである。当該電磁波は、測定対象物で反射または透過する。電磁波の周波数として、解析の際に使用する検量線に対応する電磁波の周波数が使用される。
【0024】
受信部204は、測定対象物によって反射または透過した電磁波を受信する。また、受信部204は、送信部202による送信信号と受信部204による受信信号との位相差、送信信号の振幅に対する受信信号の振幅の比である振幅比(振幅変化、減衰量)を測定す
る。即ち、受信部204は、測定対象物から反射または測定対象物を透過した電磁波を検出することにより、照射した電磁波と検出した電磁波と間の振幅比及び位相差を測定する。受信部204は、送信部202で照射された電磁波の周波数と同一の周波数の電磁波を受信する。受信部204は、電磁波を受信する受信ユニットである。送信部202及び受信部204は、一体化してもよい。
【0025】
通信部206は、解析装置100等の外部装置との間の通信のための通信インタフェースである。通信部206は、LAN(Local Area Network)インタフェースボード、無線通信のための無線通信回路、有線通信のための通信回路である。通信部206は、受信部204による測定結果を解析装置100に送信する。通信部206は、例えば、振幅と位相差とを送信結果として、解析装置100に送信する。
【0026】
(動作例)
図4は、本実施形態の解析装置100における水分量算出の動作フローの例を示す図である。本実施形態の測定システム10は、測定対象物の特定物質の含有量を算出するが、具体的には、ここでは、木片の水分量を算出する。測定システム10の測定装置200は、木片に所定の電磁波を照射し透過または反射された電磁波を測定する。測定装置200は、測定結果を解析装置100に送信する。解析装置100は、測定結果に基づいて、木片の水分量を算出する。
【0027】
ここでは、例えば、木片の水分量を、80%未満の第1範囲、80%以上120%未満の第2範囲、120%以上の第3範囲の複数の範囲に分割する。あらかじめ、それぞれの範囲において、水分量を測定するのに最適な周波数が決定され、それぞれの範囲の最適な周波数の検量線が作成されているとする。最適な周波数の決定には周知の方法が使用され得る。例えば、第1範囲の水分量の木片、第2範囲の水分量の木片、第3範囲の水分量の木片に対して、様々な周波数の電磁波を照射して様々な周波数の検量線を水分量の範囲ごとに作成し、最も精度よく水分量を算出できる周波数を最適な周波数として決定することができる。また、あらかじめ、それぞれの水分量の範囲の最適な周波数を中心として20MHzから600MHzまで程度の範囲で、10点から100点程度の異なる周波数を抽出し、抽出した周波数において、それぞれ、検量線を作成する。最適な周波数の周囲の周波数により作成した検量線は、それぞれの対象の水分量の範囲で最適な周波数の検量線とほぼ同様の結果が得られる。水分量の各範囲に、それぞれ、複数の検量線が生成される。生成された各検量線は、解析装置100の格納部106に格納されている。水分量のそれぞれの範囲の複数の検量線をまとめて検量線群ともいう。例えば、第1範囲の最適な周波数により作成した検量線と、第1範囲の最適な周波数の周囲の周波数により作成した検量線とを、まとめて、第1範囲の検量線群ともいう。
【0028】
測定装置200の送信部202は、測定対象物(木片)に対して、電磁波を照射する。電磁波の周波数は、第1範囲の水分量を算出する各検量線に対応する周波数、第2範囲の水分量を算出する各検量線に対応する周波数、第3範囲の水分量を算出する各検量線に対応する周波数である。送信部202は、各周波数の電磁波を、それぞれ、所定時間以上照射する。測定装置200の受信部204は、測定対象物によって反射または透過した各周波数の電磁波を受信する。測定装置200の受信部204は、送信信号と受信信号との振幅比(送信信号の振幅に対する受信信号の振幅の比(減衰量、振幅変化))、送信信号と受信信号との位相差を、所定時間、測定する。振幅比及び位相差は時間変化し得る。測定装置200の通信部206は、受信部204による測定結果である、各周波数の電磁波を照射し受信した際の位相差及び振幅比を、解析装置100に送信する。
【0029】
ここでは、第1範囲の検量線群に対応する周波数として2.02-2.07GHz、第2範囲の検量線群に対応する周波数として0.39-0.52GHz、第3範囲の検量線
群に対応する周波数として0.38-0.47GHzが使用される。使用される電磁波の周波数はここに記載したものに限定されるものではない。
【0030】
S101では、解析装置100の制御部102は、通信部108を介して、測定装置200から、測定対象物(木片)に対する測定結果を受信する。制御部102は、受信した測定結果を、格納部106に格納する。測定結果には、各水分量の範囲の各検量線に対応して照射した電磁波の周波数毎の、振幅比及び位相差が含まれる。
【0031】
S102では、解析装置100の制御部102は、各水分量の範囲の各検量線に対応する周波数毎に、振幅比と位相差との関係を直線近似した際の傾きを算出する。具体的には、制御部102は、例えば、位相差を横軸、振幅比を縦軸として、測定した所定時間の位相差と振幅比との関係をグラフにプロットし、直線近似し当該直線の傾きを算出する。また、制御部102は、算出した傾きを、対応する検量線に当てはめて水分量を算出する。このようにして、制御部102は、各水分量の範囲の検量線毎に、水分量を算出する。さらに、制御部102は、水分量の範囲毎に、水分量のばらつき(標準偏差)を算出する。制御部102は、例えば、水分量の範囲毎に水分量が正規分布すると仮定して、水分量の範囲毎に水分量の標準偏差を算出する。制御部102は、例えば、水分量の範囲が3つに分けられる場合、3つの水分量のばらつきを算出する。制御部102は、算出した水分量、水分量の標準偏差を格納部106に格納する。
【0032】
図5、
図6、
図7は、木片の水分量(既知)と、各水分量の範囲の検量線群により算出した水分量のばらつきとの関係のグラフの例を示す図である。各図のグラフの横軸は木片の水分量(既知)であり、縦軸は算出した水分量のばらつき(標準偏差)である。なお、縦軸の目盛は対数スケールである。ここでは、水分量が0%以上200%未満である木片が使用されている。
図5は、水分量が第1範囲(80%未満)の検量線で算出した水分量のばらつきを示すグラフである。
図6は、水分量が第2範囲(80%以上120%未満)の検量線で算出した水分量のばらつきを示すグラフである。
図7は、水分量が第3範囲(120%以上)の検量線で算出した水分量のばらつきを示すグラフである。
【0033】
図5のグラフでは、水分量が80%未満の木片に対して、水分量のばらつきが第1所定値(点線)未満となっている。また、
図5のグラフでは、水分量が80%以上の木片に対して、水分量のばらつきが第1所定値(点線)以上となっている。
図6のグラフでは、水分量が80%以上120%未満の木片に対して、水分量のばらつきが第2所定値(点線)未満となっている。また、
図6のグラフでは、水分量が80%未満の木片及び水分量が120%以上の木片に対して、水分量のばらつきが第2所定値(点線)以上となっている。
図7のグラフでは、水分量が120%以上の木片に対して、水分量のばらつきが第3所定値(点線)未満となっている。また、
図7のグラフでは、水分量が120%未満の木片に対して、水分量のばらつきが第3所定値(点線)以上となっている。木片の実際の水分量が、検量線が対応する水分量の範囲に含まれている場合、水分量のばらつきは小さい。よって、例えば、水分量が50%である木片の場合、第1範囲の検量線では水分量のばらつきが第1所定値未満になるが、第2範囲の検量線では第2所定値以上、第3範囲の検量線では第3所定値以上となる。すなわち、水分量が50%である木片に対して、第2範囲の検量線や第3範囲の検量線を用いて水分量を算出すると、水分量のばらつきが大きくなり、正確な水分量を求めることが難しい。これに対し、水分量が50%である木片に対して、第1範囲の検量線を用いると、水分量のばらつきが小さくなる。即ち、水分量が50%である木片に対して、第1範囲のどの検量線を用いても、同様の水分量の値を算出することができることがわかる。各グラフの点線で示される所定値は、各検量線に対応する水分量の範囲との水分量のばらつきと、それ以外の水分量の範囲の水分量のばらつきとを分ける値として、実測に基づいて、各グラフに示すように、水分量の範囲ごとに、予め設定されている。第1所定値、第2所定値、第3所定値は、格納部106に格納されている。
【0034】
S103では、制御部102は、木片の水分量の範囲を決定する。制御部102は、S102で算出した、第1範囲の水分量のばらつき及び第1所定値、第2範囲の水分量のばらつき及び第2所定値、第3範囲の水分量のばらつき及び第3所定値を、それぞれ比較する。制御部102は、水分量のばらつきがそれぞれの所定値未満である水分量の範囲を、木片の水分量の範囲として決定する。制御部102は、例えば、ある木片について、第1範囲の水分量のばらつきが第1所定値未満であるとき、木片の水分量の範囲を第1範囲(80%未満)と決定する。このとき、当該木片について、第2範囲の水分量のばらつきは第2所定値以上であり、第3範囲の水分量のばらつきは第3所定値以上である。制御部102は、ある木片について、第2範囲の水分量のばらつきが第2所定値未満であるとき、木片の水分量の範囲を第2範囲(80%以上120%未満)と決定する。制御部102は、ある木片について、第3範囲の水分量のばらつきが第3所定値未満であるとき、木片の水分量の範囲を第3範囲(120%以上)と決定する。ここでは、制御部102は、水分量のばらつきがそれぞれの水分量の範囲で定められる所定値未満である水分量の範囲を、木片の水分量の範囲として決定しているが、各ばらつきのうち最も小さいものの水分量の範囲を、木片の水分量の範囲として決定してもよい。このとき、それぞれの水分量の範囲に所定値を定めなくてもよい。
【0035】
S104では、制御部102は、木片の水分量を算出する。制御部102は、S102で算出した水分量のうち、S103で決定した水分量の範囲の検量線により算出した水分量を、格納部106から抽出する。制御部102は、例えば、S103で決定した水分量の範囲が第1範囲である場合、S102で算出した水分量のうち第1範囲の検量線により算出した水分量を抽出する。制御部102は、抽出した水分量の平均値を、木片の水分量として算出する。これにより、1つの検量線による水分量が外乱などの影響でノイズを含む場合であっても平均値を取ることで、ノイズの影響を軽減することができる。また、制御部102は、S103で決定した水分量の範囲の最適な周波数の検量線により算出した水分量を、木片の水分量としてもよい。これにより、計算負荷が抑制される。
【0036】
(実施形態の作用、効果)
測定システム10の測定装置200は、木片などの測定対象物に対して、所定の周波数の電磁波を照射(送信)し、測定対象物からの反射波または測定対象物の透過波を受信し、送信波及び受信波に基づく測定結果を、解析装置100に送信する。解析装置100は、測定装置200による測定結果に基づいて、測定対象物の特定物質の含有量(例えば、木片の水分量)を算出する。解析装置100は、測定対象物に対して照射した周波数毎に、特定物質の含有量を算出する。解析装置100は、含有量の範囲毎に、含有量のばらつきを算出し、含有量のばらつきが各範囲に定められた所定値未満である含有量の範囲を抽出する。解析装置100は、含有量のばらつきが最も小さい範囲の検量線を用いて、含有量を算出する。解析装置100によれば、含有量の範囲ごとのばらつきに基づいて含有量の範囲を抽出することで、含有量が未知である試料であっても、特定物質の含有量を算出することができる。
【0037】
上記の構成は、可能な限りこれらを組み合わせて実施され得る。
【0038】
〈コンピュータ読み取り可能な記録媒体〉
コンピュータその他の機械、装置(以下、コンピュータ等)に上記いずれかの機能を実現させるプログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。そして、コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【0039】
ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報
を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体内には、CPU、メモリ等のコンピュータを構成する要素を設け、そのCPUにプログラムを実行させてもよい。
【0040】
また、このような記録媒体のうちコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R/W、DVD、DAT、8mmテープ、メモリカード等がある。
【0041】
また、コンピュータ等に固定された記録媒体としてハードディスクやROM等がある。
【符号の説明】
【0042】
10: 測定システム
100: 解析装置
102: 制御部
104: メモリ
106: 格納部
108: 通信部
202: 送信部
204: 受信部
206: 通信部