(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】研削室の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B24B 55/06 20060101AFI20231113BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20231113BHJP
B24B 55/00 20060101ALI20231113BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20231113BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
B24B55/06
B24B7/04 A
B24B55/00
B23Q11/00 N
H01L21/304 631
(21)【出願番号】P 2019228955
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】山中 聡
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-199146(JP,A)
【文献】特開平05-259060(JP,A)
【文献】実開昭56-098379(JP,U)
【文献】特開2015-036162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 55/06
B24B 7/04
B24B 55/00
B23Q 11/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削装置の研削室の洗浄方法であって、
円環状のホイール基台と該ホイール基台の一面側に環状に配置された砥石部とを有する研削ホイールと、該研削ホイールが装着されるスピンドルと、を備える研削ユニットの該砥石部に対して、研削水供給源から該ホイール基台の内部を通過して研削水を供給すると共に、該スピンドルを回転させることで、該研削ホイールが収容されている研削室の内壁に対して、該砥石部に供給された該研削水を遠心力により飛散させる飛散ステップと、
該研削ユニットを上下方向に移動させる移動ユニットで、該研削ホイールを該研削室内で上方向及び下方向の少なくともどちらかの方向に移動させることで、該研削室の内壁に対して該研削水が着水する高さを変更する着水高さ変更ステップと、
を備え
、
該研削装置の保持テーブルへ被加工物を搬送する前における該研削装置のウォームアップ時に、該飛散ステップ及び該着水高さ変更ステップを行うことを特徴とする研削室の洗浄方法。
【請求項2】
該飛散ステップを行いながら、該着水高さ変更ステップを行うことを特徴とする請求項1に記載の研削室の洗浄方法。
【請求項3】
該スピンドルの回転速度を変更する回転速度変更ステップを更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の研削室の洗浄方法。
【請求項4】
該研削水供給源から該砥石部に供給される研削水の流量を変更する流量変更ステップを更に備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の研削室の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削装置において研削ホイールが収容されている研削室を洗浄する研削室の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等の被加工物を研削する研削装置は、被加工物を研削するための研削ユニットを備える。研削ユニットは、鉛直方向に略平行に配置されたスピンドルと、スピンドルの下端に固定されたホイールマウントとを備え、ホイールマウントの下面には円環状の研削ホイールが装着される。
【0003】
研削ホイールは、円環状のホイール基台と、ホイール基台の底面側においてホイール基台の周方向に沿って離散的に装着された複数の研削砥石とを備える。研削装置には、純水等の研削水が貯留された研削水供給源が接続されている。
【0004】
また、スピンドル、ホイールマウント及び研削ホイールには、研削水が通過するための流路が形成されている。被加工物を研削する場合、研削水は、研削水供給源から研削ホイールに形成されている流路の開口を経て被加工物へ供給される。
【0005】
研削装置は、被加工物を吸引して保持する保持テーブルと、保持テーブル及び研削ホイールを収容する研削室とを更に備える。研削室の空間は、板状のカバー部材により規定されている。カバー部材の天板にはスピンドルが貫通するための開口が形成されており、カバー部材の天板及び側板により研削ホイールの上方及び側方が覆われる。
【0006】
被加工物を研削装置で研削するときには、まず、保持テーブルで被加工物の一面側を保持する。そして、保持テーブルと研削ホイールとを同じ方向に回転させた状態で、研削ホイールに研削水を供給しながら、研削ユニットを鉛直方向に沿って下方に加工送りする。
【0007】
被加工物の研削に伴い、研削屑(加工屑)を含んだ研削水が周囲に飛散する。研削屑を含んだ研削水は、飛散した結果、カバー部材の内壁に付着する場合や、霧状になって研削室を漂う場合がある。
【0008】
例えば、研削屑を含んだ研削水は、研削室の内壁に付着する。研削室の内壁が研削屑を含んだ水滴で汚れていると、この汚れが被加工物の研削に影響する可能性があるので、研削室の内壁を定期的に清掃する必要がある。
【0009】
研削室の清掃時の工数を低減するために、研削時に研削室の洗浄を行うことができる特殊なホイール基台が知られている(例えば、特許文献1参照)。このホイール基台には、内側面から外側面まで略横方向にそれぞれ貫通する複数の貫通孔が、ホイール基台の周方向に沿って離散的に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この貫通孔付きホイール基台を用いれば、被加工物の研削時に貫通孔から外側へ純水等の研削水を飛散させることで、研削室の内壁を洗浄できる。しかし、貫通孔付きホイール基台は、通常のホイール基台に複数の貫通孔を形成する特殊な加工が必要であり、製造の手間が掛かる。
【0012】
更に、貫通孔付きホイール基台を用いる場合、研削ホイールに供給される研削水が、洗浄用の第1研削水と、加工用の第2研削水とに分けられる。第1研削水は、研削砥石を経由せずに貫通孔から直接外側へ飛散し、第2研削水は、被加工物と研削砥石との接触領域(即ち、加工領域)に供給される。
【0013】
それゆえ、被加工物の研削時には、加工用の第2研削水に加えて、洗浄用の第1研削水が常に必要となり、通常のホイール基台を用いる場合に比べて、研削時における研削水の使用量が増加するという問題がある。
【0014】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、内側面から外側面まで略横方向に貫通する貫通孔が形成されたホイール基台を備える研削ホイールに比べて、研削水の使用量を低減可能な研削室の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によれば、研削装置の研削室の洗浄方法であって、円環状のホイール基台と該ホイール基台の一面側に環状に配置された砥石部とを有する研削ホイールと、該研削ホイールが装着されるスピンドルと、を備える研削ユニットの該砥石部に対して、研削水供給源から該ホイール基台の内部を通過して研削水を供給すると共に、該スピンドルを回転させることで、該研削ホイールが収容されている研削室の内壁に対して、該砥石部に供給された該研削水を遠心力により飛散させる飛散ステップと、該研削ユニットを上下方向に移動させる移動ユニットで、該研削ホイールを該研削室内で上方向及び下方向の少なくともどちらかの方向に移動させることで、該研削室の内壁に対して該研削水が着水する高さを変更する着水高さ変更ステップと、を備え、該研削装置の保持テーブルへ被加工物を搬送する前における該研削装置のウォームアップ時に、該飛散ステップ及び該着水高さ変更ステップを行う研削室の洗浄方法が提供される。
【0016】
好ましくは、該飛散ステップを行いながら、該着水高さ変更ステップを行う。
【0017】
また、好ましくは、研削室の洗浄方法は、該スピンドルの回転速度を変更する回転速度変更ステップを更に備える。
【0018】
また、好ましくは、研削室の洗浄方法は、該研削水供給源から該砥石部に供給される研削水の流量を変更する流量変更ステップを更に備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様に係る研削室の洗浄方法の飛散ステップでは、研削室の内壁に対して、砥石部に供給された研削水を遠心力により飛散させることにより研削室を洗浄する。この様に、研削水を洗浄用と加工用とに分けないので、研削水を分ける場合に比べて、研削時における研削水の使用量を低減できる。
【0020】
更に、着水高さ変更ステップでは、移動ユニットで研削ユニットを上下方向に沿って移動させることで、研削室の内壁に対して研削水が着水する高さを変更できる。それゆえ、通常の研削ホイールを使用した場合であっても、研削室の内壁を広範囲に渡って洗浄できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図4】
図4(A)は研削ホイールを上昇させる様子を示す図であり、
図4(B)は研削ホイールを下降させる様子を示す図である。
【
図5】
図5(A)はスピンドルを第1回転速度で回転させる様子を示す図であり、
図5(B)はスピンドルを第2回転速度で回転させる様子を示す図である。
【
図6】粗研削ホイールの高さに応じてスピンドルの回転速度を変化させる一例を示す図である。
【
図7】
図7(A)は研削水を第1流量で供給する様子を示す図であり、
図7(B)は研削水を第2流量で供給する様子を示す図である。
【
図8】
図8(A)は粗研削ホイールの高さに応じて研削水の流量を変化させる一例を示す図であり、
図8(B)は粗研削ホイールの高さに応じて研削水の流量を変化させる他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1は、研削装置2の斜視図である。研削装置2は、略直方体形状の基台4を備える。なお、
図1では、研削装置2の構成要素の一部を機能ブロックで示す。また、X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向(上下方向、鉛直方向、加工送り方向)は互いに直交する。
【0023】
基台4の前方(Y軸方向の一方)には凹部4aが形成されており、この凹部4aには搬送ロボット6が設けられている。凹部4aのX軸方向の一方にはカセット載置領域8aがあり、凹部4aのX軸方向の他方にはカセット載置領域8bがある。
【0024】
カセット載置領域8a上には、加工前の1以上の被加工物(不図示)を収容しているカセット10aが載置される。また、カセット載置領域8b上には、加工後の1以上の被加工物を収容するカセット10bが載置される。
【0025】
カセット載置領域8aの後方(Y軸方向の他方)には、搬送ロボット6により搬出された被加工物の位置を決める位置決めテーブル12が設けられている。位置決めテーブル12のX軸方向の他方には、ローディングアーム14が設けられている。
【0026】
ローディングアーム14の後方にはXY平面上で回転可能な円盤状のターンテーブル16が設けられている。ターンテーブル16の上面側には、円周方向に略120度離れる態様で3個の保持テーブル(チャックテーブル)18が設けられている。
【0027】
ローディングアーム14に最も近い搬入搬出領域Aと、搬入搬出領域Aから上面視で反時計回りに略120度進んだ粗研削領域Bとの各々には、1つの保持テーブル18が配置されている。また、搬入搬出領域Aから上面視で時計回りに略120度進んだ仕上げ研削領域Cにも、1つの保持テーブル18が配置されている。
【0028】
各保持テーブル18は、セラミックス等で形成された円盤状の枠体を有する。枠体の上面側には、円盤状の凹部が形成されており、この凹部には多孔質材料で形成された略円盤状のポーラス板が固定されている。
【0029】
ポーラス板の下面側は枠体内に形成されている流路(不図示)の一端に接続されており、この流路の他端にはエジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されている。吸引源を動作させるとポーラス板の上面(保持面18a(
図3参照))には負圧が生じる。
【0030】
保持テーブル18の下方(Z軸方向の一方)にはモーター等を有する回転駆動源20が設けられている(
図3参照)。回転駆動源20は、保持テーブル18の下部に連結された回転軸20aを有する。回転駆動源20を動作させれば、保持テーブル18は回転軸20aを中心として回転する。
【0031】
ターンテーブル16の後方には、基台4の上面から突出する態様で、四角柱状の支持構造22aが設けられている。支持構造22aの前面側には研削送りユニット(移動ユニット)24が設けられている。
【0032】
研削送りユニット24は、支持構造22aの前面に固定されたZ軸方向に概ね平行な一対のZ軸ガイドレール26を有する。一対のZ軸ガイドレール26には、Z軸移動プレート28がスライド可能に取り付けられている。
【0033】
Z軸移動プレート28の後方(裏面)側には、ナット部30(
図3参照)が設けられている。ナット部30には、Z軸ボールネジ32が回転可能な態様で連結している。Z軸ボールネジ32は、一対のZ軸ガイドレール26の間においてZ軸方向に沿って設けられている。
【0034】
Z軸ボールネジ32の上端部には、Z軸パルスモーター34が連結されている。Z軸パルスモーター34でZ軸ボールネジ32を回転させれば、Z軸移動プレート28は、Z軸ガイドレール26に沿ってZ軸方向に移動する。
【0035】
Z軸ガイドレール26の近傍には、Z軸に沿ってリニアスケールが設けられている(
図3参照)。また、Z軸移動プレート28の裏面側には、カメラ等の読み取りユニット(不図示)が設けられている。
【0036】
Z軸移動プレート28の前面には、粗研削ユニット36aが固定されている。粗研削ユニット36aは、Z軸移動プレート28に固定されている円筒状の保持部材38を有する。保持部材38の内部には、Z軸方向に略平行に配置された円筒状のスピンドルハウジング40(
図3参照)が設けられている。
【0037】
スピンドルハウジング40内には、Z軸方向に略平行に配置された円柱状のスピンドル42(
図3参照)の一部が回転可能な状態で収容されている。スピンドル42の上端部には、スピンドルモーター44が連結されている。
【0038】
図3に示す様に、スピンドル42内には、研削水46aを供給するための第1流路42aが形成されている。第1流路42aには、研削水供給源46が接続されている。研削水供給源46は、純水等が貯留されている貯留槽(不図示)、貯留槽から第1流路42aへ純水を供給するためのポンプ(不図示)等を有する。
【0039】
スピンドル42の下端部は、スピンドルハウジング40及び保持部材38の下端部よりも下方に突出しており、スピンドル42の下端部には円盤状のホイールマウント48が固定されている。ホイールマウント48の上面の略中央から、ホイールマウント48の厚さ方向に沿って所定の深さまで、中央流路が形成されている。
【0040】
中央流路は、ホイールマウント48の上面側で第1流路42aに接続している。中央流路の下端は、複数の第2流路48aに接続している。各第2流路48aは、ホイールマウント48内の所定の深さに形成され、ホイールマウント48の中心から径方向に沿って放射状に延びている。
【0041】
更に、第2流路48aの外周側の端部から、ホイールマウント48の厚さ方向に沿ってホイールマウント48の下面まで、複数の外側流路が形成されている。各外側流路の上端は、ホイールマウント48の内部で第2流路48aに接続しており、各外側流路の下端は、ホイールマウント48の下面に達している。
【0042】
ホイールマウント48の下面には、ネジ等の固定部材(不図示)により、円環状の粗研削ホイール50aが装着されている。つまり、粗研削ホイール50aは、ホイールマウント48を介してスピンドル42の下端部に装着されている。
【0043】
粗研削ホイール50aの直下は、上述の粗研削領域B(
図1参照)に対応する。粗研削ホイール50aは、ステンレス鋼等の金属材料で形成された円環状のホイール基台52aと、ホイール基台52aの下面(一面)側に装着された複数の粗研削砥石54a(砥石部)とを有する。
【0044】
本実施形態のホイール基台52aは、外側から内側に向かって段階的に厚さが薄くなる形状を有する。ホイール基台52aは、粗研削砥石54aが装着される第1円環部と、第1円環部よりも内側に位置し第1円環部よりも厚さが薄い第2円環部とを含む。
【0045】
第1円環部と第2円環部との上面は面一となっており、第1円環部の下面と第2円環部の下面とは、環状の傾斜面で接続されている。第2円環部には、第2円環部の上面から下面まで各々貫通する複数の貫通孔52cが、第2円環部の周方向に沿って離散的に形成されている。
【0046】
各貫通孔52cは、第2円環部の上面で、ホイールマウント48の外側流路に接続する。研削水供給源46から研削水46aが供給されると、研削水46aは、第1流路42a、中央流路、第2流路48a、外側流路及び貫通孔52cを通過して、第2円環部の下面、環状の傾斜面及び第1円環部の下面を通り、複数の粗研削砥石54aへ供給される。
【0047】
複数の粗研削砥石54aは、ホイール基台52aの下面の円周に沿って、隣り合う粗研削砥石54a同士の間に間隙が設けられる態様で環状に配列されている。粗研削砥石54aは、例えば、金属、セラミックス、樹脂等の結合材に、ダイヤモンド、cBN(cubic boron nitride)等の砥粒を混合して形成される。なお、結合材や砥粒の材料に特段の制限はなく、粗研削砥石54aの仕様に応じて適宜選択できる。
【0048】
ここで、
図1に戻る。支持構造22aのX軸方向の他方には、四角柱状の支持構造22bが設けられている。支持構造22bの前方には、支持構造22aと同様に、研削送りユニット24が設けられている。支持構造22bの研削送りユニット24には、仕上げ研削ユニット36bが連結されている。
【0049】
仕上げ研削ユニット36bも、粗研削ユニット36aと同様に、保持部材38、スピンドルハウジング40、スピンドル42、スピンドルモーター44及びホイールマウント48を有する。但し、スピンドル42には、ホイールマウント48を介して円環状の仕上げ研削ホイール50bが装着されている。
【0050】
仕上げ研削ホイール50bの直下は、上述の仕上げ研削領域Cに対応する。仕上げ研削ホイール50bは、ホイール基台52aと同じ構造を有するホイール基台52bと、ホイール基台52bの下面側に装着された複数の仕上げ研削砥石54bとを備える。
【0051】
複数の仕上げ研削砥石54bは、ホイール基台52bの下面の円周に沿って、隣り合う仕上げ研削砥石54b同士の間に間隙が設けられる態様で環状に配列されている。仕上げ研削砥石54bの砥粒は、粗研削砥石54aの砥粒よりも平均粒径が小さい。但し、仕上げ研削砥石54bの結合材や砥粒の材料に特段の制限はなく、仕上げ研削砥石54bの仕様に応じて適宜選択できる。
【0052】
支持構造22bの前方、且つ、ローディングアーム14のX軸方向の他方には、アンローディングアーム56が設けられている。アンローディングアーム56の後方には、研削後の被加工物を洗浄及び乾燥するためのスピンナ洗浄ユニット58が設けられている。
【0053】
研削装置2は、位置決めテーブル12、ローディングアーム14、ターンテーブル16、保持テーブル18、粗研削ユニット36a、仕上げ研削ユニット36b、アンローディングアーム56、スピンナ洗浄ユニット58等を制御する、制御部60を備える。
【0054】
制御部60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリー、ハードディスクドライブ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。補助記憶装置に記憶されるソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御部60の機能が実現される。
【0055】
次に、
図2及び
図3を参照して、研削装置2の研削室について説明する。
図2は、研削装置2の部分拡大図である。研削装置2は、粗研削ホイール50aを収容する第1研削室62aを備える。
図3は、第1研削室62a等の一部断面側面図である。なお、
図3でも、構成要素の一部を機能ブロックで示す。
【0056】
第1研削室62aは、金属製のカバー部材で形成されている。カバー部材は、スピンドル42が貫通する開口を有する天板64aと、支持構造22a側に位置する後方側板64bと、後方側板64bよりも前方に位置する前方側板64cとを含む。
【0057】
天板64a、後方側板64b及び前方側板64cのX軸方向の一方の端部には、第1側板64dが設けられている。更に、搬入搬出領域A及び粗研削領域Bの間には第2側板64eが設けられ、粗研削領域B及び仕上げ研削領域Cの間には第3側板64fが設けられている。
【0058】
第2研削室62bには、仕上げ研削ホイール50bが収容されている。第2研削室62bの形状は、Y軸に平行な直線に対して第1研削室62aと略線対称である点を除いて第1研削室62aと略同じであるので、説明を省略する。
【0059】
次に、第1の実施形態に係る研削装置2の研削室(第1研削室62a、第2研削室62b)の洗浄方法について説明する。なお、以下では、第1研削室62aを洗浄する場合を説明するが、第2研削室62bも同様の手法で洗浄できるので、第2研削室62bの洗浄については説明を省略する。
【0060】
被加工物を研削する前には、保持面18aで被加工物を保持しない状態で、研削装置2のウォームアップ(即ち、アイドリング、暖機運転とも称される)が、例えば、30分間行われる。
【0061】
ウォームアップ時には、研削水供給源46から研削水46aを、例えば、2(l/min)以上5(l/min)以下の所定の流量で供給すると共に、スピンドルモーター44でスピンドル42を回転させる。
【0062】
また、ウォームアップ時には、例えば、被加工物を研削するときと同じ回転速度でスピンドル42を回転させる。粗研削ホイール50aの直径が200mmである場合、研削時に使用される回転速度(一例において、2500rpmから5000rpmの所定の値)で、スピンドル42を回転させる。
【0063】
粗研削ホイール50aの直径が300mmである場合、研削時に使用される回転速度(一例において、1400rpmから3000rpmの所定の値)で、スピンドル42を回転させる。
【0064】
スピンドル42を所定の回転速度で回転させると、複数の粗研削砥石54aに供給された研削水46aが遠心力により第1研削室62aの内壁へ飛散する(飛散ステップ(S10))。この様に、ウォームアップ時に第1研削室62aの内壁を洗浄できるので、第1研削室62aの内壁を定期的に清掃する際の洗浄の工数を低減できる。
【0065】
なお、ホイール基台の内側面から外側面まで略横方向に貫通する貫通孔が形成された特殊なホイール基台を使用する場合、ウォームアップ時にも被加工物の研削時にも、研削水46aが洗浄用の第1研削水と加工用の第2研削水とに分けられる。
【0066】
これに対して、本実施形態の飛散ステップ(S10)では、研削水46aを洗浄用の第1研削水と加工用の第2研削水とに分けない。それゆえ、上述の特殊なホイール基台を使用する場合に比べて、研削時における研削水46aの使用量を低減できる。
【0067】
本実施形態では、飛散ステップ(S10)を行いながら、研削送りユニット24で粗研削ユニット36aを上下方向に沿って移動させることにより、第1研削室62aの内壁に対して研削水46aが着水する高さを変更する(着水高さ変更ステップ(S20))。
【0068】
この様に、研削送りユニット24で粗研削ユニット36aを上下方向に沿って移動させることで、上述の特殊なホイール基台を使用することなく、着水する高さを変更できる。つまり、通常のホイール基台52aを使用する場合でも、第1研削室62aの内壁を広範囲に渡って洗浄できる。
【0069】
着水高さ変更ステップ(S20)では、粗研削ホイール50aを上下方向に沿って移動させる。例えば、保持面18aの近傍に位置し被加工物の研削開始時に粗研削ホイール50aが位置付けられる下方位置と、天板64aの近傍に位置し粗研削ホイール50aの最大上昇位置(上方位置)との間で、粗研削ホイール50aを移動させる。
【0070】
下方位置から上方位置までの距離は、例えば、40mmから150mmまでの所定の値である。なお、粗研削ホイール50aのZ軸方向の位置は、Z軸ガイドレール26近傍のリニアスケールの目盛りを読み取りユニットで検出することにより、制御部60により把握される。
【0071】
着水高さ変更ステップ(S20)では、例えば、粗研削ホイール50aを下方位置から上方位置まで上方向に移動(即ち、上昇)させる。
図4(A)は、粗研削ホイール50aを上昇させる様子を示す図である。
【0072】
これに代えて、粗研削ホイール50aを上方位置から下方位置まで下方向に移動(即ち、下降)させてもよい。
図4(B)は、粗研削ホイール50aを下降させる様子を示す図である。
【0073】
粗研削ホイール50aを下降させる場合、ウォームアップ終了時に粗研削ホイール50aを加工開始位置に配置できるので、粗研削領域Bに被加工物が配置された後、速やかに研削を開始できる。従って、粗研削ホイール50aを上昇させて最終的に上方位置に配置する場合に比べて、ウォームアップと被加工物の研削とを併せた作業時間を短縮できる。
【0074】
なお、粗研削ホイール50aを上方位置と下方位置との間で、上昇及び下降させてもよい。例えば、粗研削ホイール50aを下方位置から上方位置まで上昇させた後、上方位置から下方位置まで下降させてもよい。
【0075】
ウォームアップの後、被加工物の研削等が行われる。具体的には、まず、搬送ロボット6がカセット10aから位置決めテーブル12へ1つの被加工物を搬送する。位置決めテーブル12で位置が調整された後、ローディングアーム14が位置決めテーブル12から搬入搬出領域Aに位置する保持テーブル18へ被加工物を搬送する。
【0076】
その後、被加工物が保持された保持テーブル18は、粗研削領域Bへ移動する。被加工物が粗研削ユニット36aで所定厚さだけ粗研削された後、粗研削された被加工物を保持した保持テーブル18は、仕上げ研削領域Cへ移動する。
【0077】
被加工物が仕上げ研削された後、仕上げ研削された被加工物を保持した保持テーブル18は、搬入搬出領域Aへ移動する。次に、アンローディングアーム56が搬入搬出領域Aからスピンナ洗浄ユニット58へ被加工物を搬送し、スピンナ洗浄ユニット58は被加工物を洗浄及び乾燥する。その後、搬送ロボット6がスピンナ洗浄ユニット58からカセット10bへ被加工物を搬入する。
【0078】
第1の実施形態では、研削前のウォームアップ時に、第1研削室62aの内壁に対して、複数の粗研削砥石54aに供給された研削水46aを遠心力により飛散させることにより第1研削室62aを洗浄する。それゆえ、研削水46aを洗浄用の第1研削水と加工用の第2研削水とに分ける場合に比べて、研削水46aの使用量を低減できる。
【0079】
更に、研削送りユニット24で粗研削ユニット36aを上下方向に沿って移動させることで、第1研削室62aの内壁に対して研削水46aが着水する高さを変更できる。それゆえ、通常のホイール基台52aを使用した場合であっても、第1研削室62aの内壁を広範囲に渡って洗浄できる。
【0080】
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、ウォームアップ時にスピンドル42の回転速度を変更する回転速度変更ステップ(S30)を更に備える。
図5(A)は、粗研削ホイール50aを所定の高さで固定し、スピンドル42を第1回転速度E1で回転させる様子を示す図である。
【0081】
これに対して、
図5(B)は、粗研削ホイール50aを所定の高さで固定し、スピンドル42を第1回転速度E1よりも高い第2回転速度E2で回転させる様子を示す図である。回転速度が高いほど遠心力が高くなるので、第2回転速度E2とする場合、第1回転速度E1に比べて内壁のより上方に研削水46aを飛散させることができる。
【0082】
一例として、飛散ステップ(S10)を行いながら粗研削ホイール50aを上下方向に沿って移動させ(着水高さ変更ステップ(S20))、且つ、粗研削ホイール50aの高さに応じてスピンドル42の回転速度を変化させる(回転速度変更ステップ(S30))。
図6は、粗研削ホイール50aの高さに応じてスピンドル42の回転速度を変化させる一例を示す図である。
【0083】
図6に示す例では、所定の流量で研削水46aを飛散させながら、粗研削ホイール50aの下端(例えば、粗研削砥石54aの下面)を上方位置Daから、上方中間位置Db及び下方中間位置Dcを経て、下方位置Ddまで下降させる。
【0084】
例えば、10分間かけて、上方位置Daから上方中間位置Dbまで粗研削ホイール50aを下降させる。この間、スピンドル42の回転速度をウォームアップ時において最も高い第3回転速度E3とする。
【0085】
その後、例えば10分間かけて、上方中間位置Dbから下方中間位置Dcまで粗研削ホイール50aを下降させる。この間、スピンドル42の回転速度を、第3回転速度E3よりも低い第2回転速度E2とする。
【0086】
更にその後、例えば10分間かけて、下方中間位置Dcから下方位置Ddまで粗研削ホイール50aを下降させる。この間、スピンドル42の回転速度を、第2回転速度E2よりも低い第1回転速度E1とする。
【0087】
図6に示す例では、上方位置Daから上方中間位置Dbまで粗研削ホイール50aが下降する間、スピンドル42の回転速度を、第1回転速度E1で一定とする場合に比べて、研削水46aがより上方へ飛散する。それゆえ、内壁のより広い範囲を洗浄できる。
【0088】
加えて、ウォームアップ終了時に粗研削ホイール50aを加工開始位置に配置できる。また、第1回転速度E1を、被加工物を研削するときと同じ回転速度とすれば、粗研削ホイール50aが下方位置Dd近傍にある時間帯では、研削時と同じ条件でウォームアップできる。
【0089】
なお、第1回転速度E1が研削時に使用する回転速度である場合、第2回転速度E2及び第3回転速度E3でウォームアップすることにより、第1回転速度E1のみでウォームアップを行う場合に比べて、ウォームアップに要する時間を短縮してもよい。
【0090】
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、ウォームアップ時に研削水46aの流量を変化させる流量変更ステップ(S40)を更に備える。
図7(A)は、研削水46aを第1流量F1で供給する様子を示す図である。
【0091】
これに対して、
図7(B)は、粗研削ホイール50aの高さ及び回転速度を
図7(A)に示す例と同じとし、研削水46aを第1流量F1よりも多い第2流量F2で供給する様子を示す図である。流量が多いほどより多くの研削水46aを内壁に供給でき、洗浄効果を高めることができる。
【0092】
一例として、飛散ステップ(S10)を行いながら粗研削ホイール50aを上下方向に沿って移動させ(着水高さ変更ステップ(S20))、且つ、研削水46aの流量を変化させる(流量変更ステップ(S40))。
図8(A)は、粗研削ホイール50aの高さに応じて研削水46aの流量を変化させる一例を示す図である。
【0093】
図8(A)に示す例では、例えば10分間かけて、上方位置Daから上方中間位置Dbまで粗研削ホイール50aを下降させる。このとき、研削水46aの流量を第3流量F3とする。その後、例えば10分間かけて、上方中間位置Dbから下方中間位置Dcまで粗研削ホイール50aを下降させる。このとき、研削水46aの流量を、第3流量F3よりも低い第2流量F2とする。
【0094】
更にその後、例えば10分間かけて、下方中間位置Dcから下方位置Ddまで粗研削ホイール50aを下降させる。このとき、研削水46aの流量を、第2流量F2よりも低い第1流量F1とする。なお、スピンドル42の回転速度は、ウォームアップ中、一定(第1回転速度E1)とする。
【0095】
図8(A)に示す例では、上方位置Daから下方位置Ddまで粗研削ホイール50aが下降する間、研削水46aの流量を、第1流量F1で一定とする場合に比べて、上方の内壁の洗浄効果を高めることができる。
【0096】
図8(B)は、粗研削ホイール50aの高さに応じて研削水46aの流量を変化させる他の例を示す図である。
図8(B)に示す例では、粗研削ホイール50aの高さ位置に応じて、スピンドル42の回転速度と、研削水46aの流量とを変化させる。
【0097】
図8(B)に示す例では、飛散ステップ(S10)を行いながら着水高さ変更ステップ(S20)を行い、併せて、回転速度変更ステップ(S30)及び流量変更ステップ(S40)も行う。
【0098】
図8(B)に示す例では、例えば10分間かけて、上方位置Daから上方中間位置Dbまで粗研削ホイール50aを下降させる。このとき、スピンドル42の回転速度を第3回転速度E3とし、研削水46aの流量を第3流量F3とする。
【0099】
その後、例えば10分間かけて、上方中間位置Dbから下方中間位置Dcまで粗研削ホイール50aを下降させる。このとき、スピンドル42の回転速度を第3回転速度E3よりも低い第2回転速度E2とし、研削水46aの流量を第3流量F3よりも低い第2流量F2とする。
【0100】
更にその後、例えば10分間かけて、下方中間位置Dcから下方位置Ddまで粗研削ホイール50aを下降させる。このとき、スピンドル42の回転速度を第2回転速度E2よりも低い第1回転速度E1とし、研削水46aの流量を第2流量F2よりも低い第1流量F1とする。
【0101】
図8(B)に示す例では、上方位置Daから下方位置Ddまで粗研削ホイール50aが下降する間、スピンドル42の回転速度を、第1回転速度E1で一定とする場合に比べて、上方の内壁の洗浄効果をより高めることができる。
【0102】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。上述の各実施形態では、飛散ステップ(S10)を行いながら着水高さ変更ステップ(S20)を行った。
【0103】
しかし、飛散ステップ(S10)を第1の所定時間行った後、研削水46aの供給を一時停止して、第2の所定時間をかけて着水高さ変更ステップ(S20)を行ってもよい。つまり、飛散ステップ(S10)と着水高さ変更ステップ(S20)とを交互に行い、粗研削ホイール50aを上方位置Daと下方位置Ddとの間で移動させてもよい。
【0104】
なお、第2及び第3の実施形態において、飛散ステップ(S10)と着水高さ変更ステップ(S20)とを交互に行ってもよい。また、研削室の洗浄は、保持面18aで被加工物を保持しない状態で行ってよく、保持面18aで被加工物を保持した状態で行ってもよい。
【符号の説明】
【0105】
2 :研削装置
4 :基台
4a :凹部
6 :搬送ロボット
8a,8b :カセット載置領域
10a,10b :カセット
12 :位置決めテーブル
14 :ローディングアーム
16 :ターンテーブル
18 :保持テーブル(チャックテーブル)
18a :保持面
20 :回転駆動源
20a :回転軸
22a,22b :支持構造
24 :研削送りユニット(移動ユニット)
26 :Z軸ガイドレール
28 :Z軸移動プレート
30 :ナット部
32 :Z軸ボールネジ
34 :Z軸パルスモーター
36a :粗研削ユニット
36b :仕上げ研削ユニット
38 :保持部材
40 :スピンドルハウジング
42 :スピンドル
42a :第1流路
44 :スピンドルモーター
46 :研削水供給源
46a :研削水
48 :ホイールマウント
48a :第2流路
50a :粗研削ホイール
50b :仕上げ研削ホイール
52a,52b :ホイール基台
52c :貫通孔
54a :粗研削砥石
54b :仕上げ研削砥石
56 :アンローディングアーム
58 :スピンナ洗浄ユニット
60 :制御部
62a :第1研削室
62b :第2研削室
64a :天板
64b :後方側板
64c :前方側板
64d :第1側板
64e :第2側板
64f :第3側板
A :搬入搬出領域
B :粗研削領域
C :仕上げ研削領域
Da :上方位置
Db :上方中間位置
Dc :下方中間位置
Dd :下方位置
E1 :第1回転速度
E2 :第2回転速度
E3 :第3回転速度
F1 :第1流量
F2 :第2流量
F3 :第3流量