(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】画像検出装置、パルス照明装置、およびパルス照明方法
(51)【国際特許分類】
G02B 21/06 20060101AFI20231113BHJP
G02B 21/36 20060101ALI20231113BHJP
G02B 21/26 20060101ALI20231113BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20231113BHJP
G03B 15/03 20210101ALI20231113BHJP
G03B 15/02 20210101ALI20231113BHJP
G03B 3/04 20210101ALI20231113BHJP
【FI】
G02B21/06
G02B21/36
G02B21/26
G02B7/04 Z
G03B15/03 W
G03B15/02 G
G03B3/04
(21)【出願番号】P 2019164435
(22)【出願日】2019-09-10
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 頼乙
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 佑旗
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-223651(JP,A)
【文献】特開平04-161916(JP,A)
【文献】特開2015-191000(JP,A)
【文献】特開2008-032645(JP,A)
【文献】特開2015-127769(JP,A)
【文献】特開2002-311496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00 - 21/36
G02B 7/02 - 7/16
G03B 15/00 - 15/16
G01B 11/00 - 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点位置が周期的に変化する液体共振式のレンズシステムと、前記レンズシステムを通して対象物の画像を検出する画像検出部と、前記焦点位置に同期して前記対象物をパルス照明するパルス照明部と、前記パルス照明部を制御する照明制御部と、を有し、
前記パルス照明部は、主照明部と、補助照明部と、を有し、
前記照明制御部は、前記主照明部により、所定期間の間に複数回にわたって、周期的に変化する前記焦点位置の所定の位相角で前記対象物をパルス照明するとともに、前記主照明部による前記対象物の照度が所定の閾値以下の状態で、前記補助照明部により前記対象物の照度を補填することを特徴とする画像検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像検出装置において、前記補助照明部は連続照明を行うことを特徴とする画像検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像検出装置において、前記主照明部は落射照明装置であり、前記補助照明部はリング照明装置であることを特徴とする画像検出装置。
【請求項4】
焦点位置が周期的に変化する液体共振式のレンズシステムを用いて対象物を撮像する際に、前記対象物のパルス照明を行うパルス照明装置であって、
前記焦点位置に同期して前記対象物をパルス照明するパルス照明部と、前記パルス照明部を制御する照明制御部と、を有し、
前記パルス照明部は、主照明部と、補助照明部と、を有し、
前記照明制御部は、前記主照明部により、所定期間の間に複数回にわたって、周期的に変化する前記焦点位置の所定の位相角で前記対象物をパルス照明するとともに、前記主照明部による前記対象物の照度が所定の閾値以下の状態で、前記補助照明部により前記対象物の照度を補填することを特徴とするパルス照明装置。
【請求項5】
焦点位置が周期的に変化する液体共振式のレンズシステムを用いて対象物を撮像する際に、前記対象物のパルス照明を行うパルス照明方法であって、
通常は主照明部により、所定期間の間に複数回にわたって、周期的に変化する前記焦点位置の所定の位相角で前記対象物をパルス照明するとともに、
前記主照明部による前記対象物の照度が所定の閾値以下の状態で、補助照明部により前記対象物の照度を補填することを特徴とするパルス照明方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像検出装置、パルス照明装置、およびパルス照明方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焦点距離可変レンズとして、液体共振式のレンズシステムが開発されている。このレンズシステムにパルス照明装置を組み合わせ、被写体の任意の位置に焦点が合った画像を検出する画像検出装置が開発されている(特許文献1参照)。
液体共振式のレンズシステムでは、周期的な駆動信号により内部の液体に定在波を生じさせ、レンズとしての焦点位置を周期的に変化させている。
画像検出装置では、レンズシステムを駆動する駆動信号の所定の位相角にパルス照明を同期させることで、位相角に対応した焦点位置となる撮像面における画像を検出できる。パルス照明が同期する位相角を一周期内に複数設定することで、被写体の複数焦点画像を検出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した画像検出装置では、撮像面に表れる被写体の表面状態に応じて、パルス照明の光量を調整する必要がある。
例えば、ICチップが被写体である場合、ICチップには、黒い樹脂パッケージ表面のような反射が少ない面もあれば、配線用の金属ピンのような反射が大きな面もある。このため、通常の光量一定の照明では、反射の少ない面で明瞭な画像が得られず、反射が大きな面では白飛びを生じるなどの問題がある。
従って、焦点位置が変化した際に、焦点位置がある撮像面の状態に応じてパルス照明の光量を増減させる必要がある。とくに、複数焦点画像を検出する場合、複数の焦点位置のそれぞれで、パルス照明の光量を増減させる必要がある。
【0005】
ところが、液体共振式のレンズシステムは、焦点が高速で変化しているため、パルス照明で所定の焦点位置の撮像面の画像を切り出すためには、パルス照明の間隔をマイクロ秒単位、パルス幅は数十ナノ秒単位とすることが必要となる。このような条件のパルス照明では、パルス発光時間のデューティー比が小さくなり、照明としての光量が不足するという問題がある。
さらに、高速で時間幅の短いパルス照明を同期させることは電気回路的にも困難なことから、発光素子を増やすことによる光量の増加も見込めず、液体共振式のレンズシステムのような高速の焦点距離可変レンズを用いた画像検出装置およびそのパルス照明における光量不足の改善が求められていた。
【0006】
本発明の目的は、液体共振式のレンズシステムを用いて画像検出しつつ十分な光量を確保できる画像検出装置、パルス照明装置、およびパルス照明方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像検出装置は、焦点位置が周期的に変化する液体共振式のレンズシステムと、前記レンズシステムを通して対象物の画像を検出する画像検出部と、前記焦点位置に同期して前記対象物をパルス照明するパルス照明部と、前記パルス照明部を制御する照明制御部と、を有し、前記パルス照明部は、主照明部と、補助照明部と、を有し、前記照明制御部は、前記主照明部で前記対象物をパルス照明するとともに、前記主照明部による前記対象物の照度が所定の閾値以下の状態で、前記補助照明部により前記対象物の照度を補填することを特徴とする。
【0008】
このような本発明では、レンズシステムの焦点位置を周期的に変化させた状態で、画像検出部によりレンズシステムを通して対象物の画像を検出する。その間に、照明制御部でパルス照明部を制御し、焦点位置に同期して対象物をパルス照明することで、所望の焦点位置の撮像面における画像を検出することができる。
パルス照明部は、通常は主照明部により対象物をパルス照明するとともに、主照明部による対象物の照度が所定の閾値以下のとき、補助照明部により対象物の照度を補填する。これにより、パルス照明としての光量を十分に確保しつつ、高速動作にも対応できる。すなわち、パルス照明部は、パルス照明に必要な光量変化および高速動作は主照明部で担保し、大光量は補助照明部で担保する、という分担により、パルス照明部の全体として高速動作と大光量とを兼ね備えることができる。
このように、本発明の画像検出装置においては、液体共振式のレンズシステムを用いて画像検出しつつ、十分な光量を確保することができる。
【0009】
本発明の画像検出装置において、前記補助照明部は連続照明を行うことが好ましい。
このような本発明では、補助照明部についてはパルス照明としてのタイミング制御が不要になり、制御構成の簡素化が図れる。補助照明部は連続照明とした場合でも、補助照明部による対象物の照度が所定値以下であれば、検出画像への影響を避けることができる。
なお、補助照明部についてもパルス照明を行うようにしてもよく、主なパルス照明タイミングが主照明部で確保されていれば、補助照明部のパルス照明タイミングの精度を緩和でき、制御の簡素化が可能である。
【0010】
本発明の画像検出装置において、前記主照明部は落射照明装置であり、前記補助照明部はリング照明装置であることが好ましい。
このような本発明では、主照明部を落射照明装置とすることで、検出画像においてパルス照明が優先され、パルス照明のタイミング制御による焦点位置の精度を高めることができる。一方、補助照明部をリング照明装置とすることで、対象物の周囲から全体的な照度を高める照明とすることができ、対象物の照度を補填しつつ、主照明部によるパルス照明への影響を避けることができる。
【0011】
本発明のパルス照明装置は、液体共振式のレンズシステムを用いて対象物を撮像する際に、前記対象物のパルス照明を行うパルス照明装置であって、前記対象物をパルス照明するパルス照明部と、前記パルス照明部を制御する照明制御部と、を有し、前記パルス照明部は、主照明部と、補助照明部と、を有し、前記照明制御部は、前記主照明部による前記対象物の照度が所定の閾値以下の状態で、前記補助照明部により前記対象物の照度を補填することを特徴とする。
【0012】
本発明のパルス照明方法は、液体共振式のレンズシステムを用いて対象物を撮像する際に、前記対象物のパルス照明を行うパルス照明方法であって、通常は主照明部により前記対象物をパルス照明するとともに、前記主照明部による前記対象物の照度が所定の閾値以下の状態で、補助照明部により前記対象物の照度を補填することを特徴とする。
【0013】
このような本発明では、パルス照明としての光量を十分に確保しつつ、高速動作にも対応できる。すなわち、パルス照明に必要な光量変化および高速動作は主照明部で担保し、大光量は補助照明部で担保する、という分担により、全体として高速動作と大光量とを兼ね備えることができる。
以上により、本発明のパルス照明装置およびパルス照明方法においては、液体共振式のレンズシステムを用いた画像検出にあたり、十分な光量を確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、液体共振式のレンズシステムを用いて画像検出しつつ十分な光量を確保できる画像検出装置、パルス照明装置、およびパルス照明方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態の全体構成を示すブロック図。
【
図3】前記実施形態の主照明部だけで照明したときの照度を示すグラフ。
【
図4】前記実施形態の補助照明部を用いたときの照度を示すグラフ。
【
図5】前記実施形態の補助照明部の発光特性を示すグラフ。
【
図6】前記実施形態の主照明部の落射照明だけの照明状態を示す図。
【
図7】前記実施形態の補助照明部のリング照明を併せた照明状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の一実施形態である画像検出装置1の全体構成が示されている。
画像検出装置1は、焦点距離を周期的に変化させつつ撮像領域におかれた測定対象物9の表面の画像を検出するものであり、当該表面に交差する同じ光軸A上に配置された対物レンズ2、レンズシステム3および画像検出部4を備えている。
さらに、画像検出装置1は、測定対象物9の表面をパルス照明するパルス照明部5と、レンズシステム3およびパルス照明部5の動作を制御するレンズ制御部6と、レンズ制御部6を操作するための制御用PC7とを備えている。
【0017】
対物レンズ2は、既存の凸レンズで構成される。
レンズシステム3は、液体共振式の焦点距離可変レンズであり、レンズ制御部6から入力される駆動信号Cfに応じて屈折率が変化する。駆動信号Cfは、レンズシステム3に定在波を発生させる周波数の交流であって、正弦波状の交流信号である。
画像検出装置1において、焦点位置Pfまでの焦点距離Dfは、対物レンズ2の焦点距離を基本としつつ、レンズシステム3の屈折率を変化させることで、任意に変化させることができる。
【0018】
画像検出装置1においては、駆動信号Cfは正弦波状の交流信号であり、焦点位置Pfおよび焦点距離Dfも正弦波状に周期的に変動する。
この際、焦点位置Pfの振動波形の任意の時点で焦点位置Pfにある測定対象物9をパルス照明し、その時点で照明された画像を検出すれば、焦点位置Pfの画像が得られることになる。
【0019】
画像検出部4は、既存のCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサあるいは他の形式のカメラ等で構成され、入射される画像Lgを所定の信号形式の検出画像Imとして制御用PC7へ出力することができる。
パルス照明部5は、LED(Light Emitting Diode)などの発光素子で構成され、レンズ制御部6から発光信号Ciが入力された際に、所定時間だけ照明光Liを発光させ、測定対象物9の表面に対するパルス照明を行うことができる。
【0020】
画像検出装置1において、レンズシステム3の駆動、パルス照明部5の発光および画像検出部4の画像検出は、レンズ制御部6からの駆動信号Cfおよび発光信号Ciおよび画像検出信号Ccにより制御される。これらを制御するレンズ制御部6の設定などを操作するために、制御用PC7が接続されている。
【0021】
図2には、本実施形態のレンズ制御部6および制御用PC7の構成が示されている。
レンズ制御部6は、レンズシステム3およびパルス照明部5の動作を制御するハードウェアで構成された専用ユニットであり、レンズシステム3に駆動信号Cfを出力する駆動制御部61と、パルス照明部5に発光信号Ciを出力する照明制御部62と、画像検出部4に画像検出信号Ccを出力する画像検出制御部63とを有する。
【0022】
駆動制御部61は、レンズシステム3に駆動信号Cfを出力するとともに、駆動信号Cfに基づいてレンズシステム3が振動した際に、レンズシステム3に加えられる有効電力あるいは駆動電流から、レンズシステム3の振動状態Vfを検出する。そして、レンズシステム3の振動状態Vfを参照して駆動信号Cfの周波数を調整することで、レンズシステム3の現在の共振周波数にロックすることができる。なお、振動状態Vfは、レンズシステム3に設置した振動センサで検出することもできる。
【0023】
照明制御部62は、パルス照明部5に発光信号Ciを出力し、撮像領域の測定対象物9をパルス照明させる。発光信号Ciの発光タイミングは、駆動信号Cfに同期され、焦点位置Pfに対して所定の位相角に設定されている。
画像検出制御部63は、画像検出部4に画像検出信号Ccを出力し、画像検出のオンオフを制御する。なお、画像検出オンからオフまでの期間に画像検出部4で検出された1フレーム分の検出画像Imは、制御用PC7に送られて処理される。
【0024】
本実施形態では、画像検出信号Ccは所定の期間継続され、その間に複数回にわたって焦点位置Pfの所定の位置(変動周期における位相角)で測定対象物9をパルス照明することで、照明時点での焦点位置Pfの画像を検出する。発光タイミングを指定する発光信号Ciは、焦点位置Pfの変動範囲内に複数設定することで、各焦点位置Pfに合焦した複数の画像が重畳された多焦点画像を検出することができる。
【0025】
制御用PC7は、レンズ制御部6に各種設定操作などを行うレンズ操作部71と、画像検出部4から検出画像Imを取り込んで処理する画像処理部72と、画像検出装置1に対するユーザの操作を受け付ける操作インターフェイス73とを有する。
制御用PC7は、汎用のパーソナルコンピュータで構成され、専用のソフトウェアを実行することで、所期の機能を実現している。すなわち、レンズ操作ソフトウェアを実行することで、レンズ制御部6を制御するレンズ操作部71の機能が実現される。また、画像処理ソフトウェアを実行することで、画像検出部4からの検出画像Imを処理する画像処理部72の機能が実現される。これらのレンズ操作ソフトウェアおよび画像処理ソフトウェアは、制御用PC7の表示画面および入力装置を用いた操作インターフェイス73を介してユーザが操作することができる。
【0026】
本実施形態において、パルス照明部5は、LED発光式の落射照明装置を用いた主照明部51と、LED発光式のリング照明装置を用いた補助照明部52と、の2種類の光源装置を備えている。
本実施形態において、照明制御部62は、前述した通り画像検出のためのパルス照明を行う際に、通常は主照明部51により測定対象物9をパルス照明するとともに、主照明部51による測定対象物9の照度が所定の閾値以下の状態で、補助照明部52により測定対象物9の照度を補填する制御機能を有する。
照明制御部62は、閾値判定する測定対象物9の照度として、制御用PC7の画像処理部72で得られた測定対象物9の検出画像Imにおける照度を用いる。所定の閾値としては、画像検出部4で検出画像Imを検出するのに十分な照度とする。
【0027】
図3において、測定対象物9がパルス照明されている状態では、パルス状の照明光Liに対応して、測定対象物9の照度Eはパルス状の波形を示す。
主照明部51によるパルス照明だけで測定対象物9のパルス照明を行ったとすると、測定対象物9の表面反射率が比較的大きい場合など、照度閾値Erを超える十分な照度E1が得られる。一方、測定対象物9の表面反射率が比較的小さい場合など、主照明部51のパルス照明だけでは照度E2が照度閾値Erに対して不足することがある。
本実施形態の照明制御部62は、主照明部51のパルス照明だけの照度E2が照度閾値Erに対して不足した際に、補助照明部52を用いて照度を補填する。
【0028】
図4において、主照明部51のパルス照明による測定対象物9の照度E2が照度閾値Erより小さくても、補助照明部52による照度Eaが追加されることで、合算された照度E3は照度閾値Erより大きな値とすることができる。
この際、補助照明部52による補助照明は、照度Eaが得られる光量で連続照明とすればよい。照度Eaが照度閾値Erより小さければ、画像検出部4で画像として検出されることを避けられる。
【0029】
補助照明部52による照度の補填を行う際、照明制御部62は、制御用PC7の画像処理部72で得られた検出画像Imから測定対象物9の反射光レベルを検出し、その値に基づいて補助照明部52の補助照明レベルを調整する。
図5に示すように、照明制御部62による補助照明部52の出力調整は、反射光レベルVrと補助照明レベルVaとが概略反比例する曲線に基づいて行われる。
反射光レベルVrが十分に大きければ、補助照明レベルVaは0とされ、主照明部51のみのパルス照明により照度E1が得られる(
図4左側)。
反射光レベルVrが小さくなるにつれ、補助照明レベルVaは増加され、主照明部51のパルス照明に補助照明部52の連続照明が追加され、照度E2に照度Eaが加算された照度E3が得られる(
図4右側)。
【0030】
このような本実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
本実施形態の画像検出装置1では、レンズシステム3の焦点位置Pfを周期的に変化させた状態で、画像検出部4によりレンズシステム3を通して測定対象物9の画像を検出する。その間に、照明制御部62でパルス照明部5を制御し、焦点位置Pfに同期して測定対象物9をパルス照明することで、所望の焦点位置Pfの撮像面における検出画像Imを検出することができる。
【0031】
パルス照明部5は、通常は主照明部51により測定対象物9をパルス照明するとともに、主照明部51による測定対象物9の照度E2が所定の照度閾値Er以下のとき、補助照明部52により測定対象物9の照度を補填する。これにより、パルス照明としての光量を十分に確保しつつ、高速動作にも対応できる。すなわち、パルス照明部5は、パルス照明に必要な光量変化および高速動作は主照明部51で担保し、大光量は補助照明部52で担保する、という分担により、パルス照明部5の全体として高速動作と大光量とを兼ね備えることができる。
このように、本実施形態の画像検出装置1においては、液体共振式のレンズシステム3を用いて画像検出しつつ、十分な光量を確保することができる。
【0032】
本実施形態の画像検出装置1では、主照明部51によるパルス照明に対して、補助照明部52が連続照明を行うようにした。このため、補助照明部52についてはパルス照明としてのタイミング制御が不要になり、制御構成を簡素化できる。一方、補助照明部52を連続照明とした場合でも、補助照明部52による測定対象物9の照度Eaが所定の照度閾値Er以下であれば、検出画像への影響を避けることができる。
例えば、本実施形態の画像検出装置1で、パルス照明する位相角を掃引して複数焦点一の各画像を合成した全焦点画像では、連続光によりピンボケ部分が含まれる可能性があるが、本実施形態の補助照明部52では光量を抑制されているため、固定焦点位置の純粋な光量の増加が見込まれる。
【0033】
本実施形態の画像検出装置1では、主照明部51として落射照明装置を用い、補助照明部52としてリング照明装置を用いた。主照明部51を落射照明装置とすることで、検出画像Imにおいてパルス照明が優先され、パルス照明のタイミング制御による焦点位置Pfの精度を高めることができる。一方、補助照明部52をリング照明装置とすることで、測定対象物9の周囲から全体的な照度を高める照明とすることができ、測定対象物9の照度を補填しつつ、主照明部51によるパルス照明への影響を避けることができる。
【0034】
さらに、主照明部51の落射照明装置と、補助照明部52のリング照明装置とでは、各々からの照明光Liの入射角度が異なることになり、主照明部51だけではコントラストが取れなかった測定対象物9の領域を観察しながら任意の固定焦点画像の取得ができる。
ただし、このような補助照明部52を用いる場合、補助照明部52の連続光により主照明部51のパルス照明によるコントラストが失われ、固定焦点画像の画質が損なわれる可能性がある。そのため、主照明部51によるパルス照明において十分なコントラストが得られるように、補助照明部52の光量の調整することが重要である。
【0035】
図6において、主照明部51の落射照明の光束Li1が測定対象物9に照射された場合、測定対象物9の表面のうち水平に近い領域91は、光束Li1の入射角が小さく明るく照明される。一方、測定対象物9の表面のうち垂直に近い領域92は、光束Li1の入射角が大きく、暗い状態となる。従って、測定対象物9の表面の形状によるコントラストが大きくなる。
図7において、主照明部51の落射照明の光束Li1と、補助照明部52のリング照明の光束Li2とが測定対象物9に照射された場合、測定対象物9の表面のうち垂直に近い領域92が光束Li2で明るく照明され、水平に近い領域91とのコントラストが縮小する。従って、補助照明部52の光量を調整し、適切なコントラストを確保することが好ましい。
【0036】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前記実施形態では、補助照明部52は連続照明を行うとしたが、補助照明部52についても主照明部51に準じたパルス照明を行うようにしてもよい。主なパルス照明タイミングが主照明部51で確保されていれば、補助照明部52のパルス照明タイミングの精度を緩和でき、制御の簡素化が可能である。
【0037】
前記実施形態では、主照明部51を落射照明装置とし、補助照明部52をリング照明装置としたが、主照明部51および補助照明部52をともに落射照明またはリング照明としてもよい。ただし、主照明部51は十分な光量でパルス照明を行うために落射照明とすることが望ましく、設置スペースの関係から補助照明部52は落射照明ではなくリング照明とすることが望ましい。
【0038】
前記実施形態では、レンズシステム3の駆動および制御を行うために、レンズ制御部6と制御用PC7との組み合わせを用いたが、これらはレンズシステム3の駆動、制御ないし操作までを一括して行う一体の装置としてもよい。しかし、前記実施形態のように、レンズ制御部6と制御用PC7との組み合わせとすることで、レンズシステム3の駆動および制御に必要なハードウェアを専用のレンズ制御装置として独立させることができる。また、レンズ制御部6の操作や設定調整、さらには画像の取り込みまでを汎用性の高いパーソナルコンピュータを用いて実現することができる。
【0039】
前記実施形態では、駆動信号Cfを正弦波とし、焦点位置Pfを正弦波振動させたが、これは三角波、鋸歯状波、矩形波その他の波形であってもよい。
レンズシステム3の具体的構成は適宜変更してよく、前述した特許文献1に記載の構成に限らず、パッケージの形状寸法あるいは共振させる液体の属性も適宜選択することができる。
画像検出部4は、CCDイメージセンサのほか、CMOS(相補型金属酸化物半導体)センサなど、他の固体撮像素子を利用したイメージセンサとしてもよい。
パルス照明部5は、LEDのほか、LD(レーザーダイオード)あるいはSLD(Super Luminescent Diode)など、高速スイッチングが可能な他の発光素子としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は画像検出装置、パルス照明装置、およびパルス照明方法に利用できる。
【符号の説明】
【0041】
1…画像検出装置、2…対物レンズ、3…レンズシステム、4…画像検出部、5…パルス照明部、51…主照明部、52…補助照明部、6…レンズ制御部、61…駆動制御部、62…照明制御部、63…画像検出制御部、7…制御用PC、71…レンズ操作部、72…画像処理部、73…操作インターフェイス、9…測定対象物、91,92…領域、Cc…画像検出信号、Cf…駆動信号、Ci…発光信号、Df…焦点距離、E…照度、E1,E2…主照明部による照度、E3…加算された照度、Ea…補助照明部による照度、Er…照度閾値、Im…検出画像、Lg…画像、Li…照明光、Li1,Li2…光束、Pf…焦点位置、Vf…振動状態、Va…補助照明レベル、Vr…反射光レベル。