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特許7383559光学フィルムの検査方法及び光学フィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】光学フィルムの検査方法及び光学フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20231113BHJP
【FI】
G01N21/892 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020084469
(22)【出願日】2020-05-13
(65)【公開番号】P2020190553
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2019091996
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】川上 武志
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 麻耶
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 里恵
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-065309(JP,A)
【文献】特開2015-129706(JP,A)
【文献】特開2006-078426(JP,A)
【文献】特開2019-070617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G02B 5/30
G01B 11/00 - G01B 11/30
G01N 21/00 - G01N 21/61
G01M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1位相差層と第2位相差層と前記第1位相差層及び第2位相差層の間に配置される第1接着層とを有する光学フィルムの検査面に、前記検査面側に配置された光源部から検査光を照射するとともに、前記光源部から照射され前記光学フィルムで反射した光を、前記検査面側に配置された検出部によって検出する検出工程と、
前記検出部によって検出された光の輝度に基づいて、前記光学フィルムにおける断面に沿った輝度分布を取得し、前記輝度分布に基づいて光学フィルムが良品か否かを判定する判定工程と、
を備え、
前記検出工程では、前記光源部からの前記検査光を、第1偏光フィルターを通して前記検査面に照射するとともに、前記光源部から前記光学フィルムに照射され前記光学フィルムで反射した光を、第2偏光フィルターを通して、前記検出部によって検出し、
互いに直交するx軸及びy軸を前記検査面に仮想的に設定し、前記検査面側からみて前記x軸及び前記y軸の一方を基準軸とし、前記基準軸に対して反時計回りを正の角度方向と称した場合において、
前記第1偏光フィルターの第1吸収軸及び前記第2偏光フィルターの第2吸収軸が、下記条件(A)の条件を満たすように、前記第1偏光フィルター及び前記第2偏光フィルターが前記光学フィルムに対して配置されている、
光学フィルムの検査方法。
(A)+70°<θ6<+110°(θ6は、前記第1吸収軸と前記第2吸収軸との間の角度)
【請求項2】
前記光学フィルムを搬送しながら検出工程及び判定工程を行う、
請求項1に記載の光学フィルムの検査方法。
【請求項3】
前記断面は、光学フィルムの幅方向における断面である、
請求項1又は2に記載の光学フィルムの検査方法。
【請求項4】
前記第1位相差層および前記第2位相差層のうち一方は1/2波長層であり、他方は1/4波長層であり、
前記第1位相差層の第1遅相軸及び前記第2位相差層の第2遅相軸が下記条件(1)~(3)を満たすように、前記光学フィルムにおいて、前記第1位相差層及び前記第2位相差層が配置されており、
前記第1偏光フィルターの第1吸収軸及び前記第2偏光フィルターの第2吸収軸が、下記条件(4)及び(5)の条件を満たすように、前記第1偏光フィルター及び前記第2偏光フィルターが前記光学フィルムに対して配置されている、
請求項1~3の何れか1項に記載の光学フィルムの検査方法。
(1)-40°<θ1<-10°(θ1は、前記第1遅相軸と前記基準軸との間の角度)
(2)+15°<θ2<+50°(θ2は、前記第2遅相軸と前記基準軸との間の角度)
(3)+55°<θ3<+65°(θ3は、前記第1遅相軸と前記第2遅相軸との間の角度)
(4)-20°<θ4<+20°(θ4は、前記第1吸収軸と及び前記第2吸収軸のうちの一方と前記基準軸との間の角度)
(5)+70°<θ5<+110°(θ5は、前記第1吸収軸と及び前記第2吸収軸のうちの他方と前記基準軸との間の角度)
【請求項5】
前記光学フィルムは、
積層方向において、前記1/2波長層からみて前記1/4波長層と反対側に位置する偏光板と、
前記偏光板と前記1/2波長層との間に位置する第2接着層と、
を有する、
請求項4に記載の光学フィルムの検査方法。
【請求項6】
前記第1接着層は、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化層である、
請求項1~5の何れか一項に記載の光学フィルムの検査方法。
【請求項7】
前記光学フィルムを搬送しながら前記検出工程を実施する、
請求項1~6の何れか一項に記載の光学フィルムの検査方法。
【請求項8】
前記検査光のピーク波長は、400nm~750nmの範囲内である、
請求項1~7の何れか一項に記載の光学フィルムの検査方法。
【請求項9】
前記光学フィルムを支持板の主面上に配置した状態で前記検出工程を実施し、
前記主面の正反射率が45%以下である、
請求項1~8の何れか一項に記載の光学フィルムの検査方法。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の光学フィルムの検査方法を含む、光学フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムの検査方法及び光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学フィルムとして、第1位相差層と第2位相差層とを有する位相差積層体がある。位相差積層体において、第1位相差層と第2位相差層とは接着層(例えば紫外線硬化樹脂接着剤で形成される層)を介して接合されている。位相差積層体の例は、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)画像表示装置に適用される円偏光板である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-17996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1位相差層、接着層及び第2位相差層をこの順に有する光学フィルムを例えば画像表示装置に適用する場合には、上記光学フィルムの干渉ムラを低減することが求められている。そのため、光学フィルムを形成した後、光学フィルムの干渉ムラの程度に応じた良否検査を行う。この良否検査は、通常、光学フィルムに光を照射し、目視検査で行われていた。しかしながら、目視検査では、光学フィルムの良否が、検査者の主観、体調などに依存し易いため、光学フィルムの性能の信頼性が低下し易い。
【0005】
そこで、本発明は、性能信頼性の向上を図ることができる光学フィルムの検査方法及び光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る光学フィルムの検査方法は、第1位相差層と第2位相差層と上記第1位相差層及び第2位相差層の間に配置される第1接着層とを有する光学フィルムの検査面に、上記検査面側に配置された光源部から検査光を照射するとともに、上記光源部から照射され上記光学フィルムで反射した光を、上記検査面側に配置された検出部によって検出する検出工程と、上記検出部によって検出された光の輝度に基づいて、上記光学フィルムにおける断面に沿った輝度分布を取得し、上記輝度分布に基づいて光学フィルムが良品か否かを判定する判定工程と、を備える。
【0007】
上記検査方法では、検出部によって検出された光の輝度に基づいて、上記光学フィルムにおける断面に沿った輝度分布を取得し、上記輝度分布に基づいて光学フィルムを良品か否かを判定する。そのため、客観的に光学フィルムの良否を判定できることから、光学フィルムの性能信頼性が向上する。
【0008】
上記光学フィルムを搬送しながら検出工程及び判定工程を行ってもよい。
【0009】
上記断面は、光学フィルムの幅方向における断面であってよい。
【0010】
上記検出工程では、上記光源部からの上記検査光を、第1偏光フィルターを通して上記検査面に照射するとともに、上記光源部から上記光学フィルムに照射され上記光学フィルムで反射した光を、第2偏光フィルターを通して、上記検出部によって検出してもよい。この場合、例えば、第1偏光フィルター及び第2偏光フィルターの配置関係を調整することで、光学フィルムの表面反射の影響を低減でき、より正確に光学フィルムを検査できる。
【0011】
上記第1位相差層および上記第2位相差層のうち一方は1/2波長層であり、他方は1/4波長層であり、互いに直交するx軸及びy軸を上記検査面に仮想的に設定し、上記検査面側からみて上記x軸及び上記y軸の一方を基準軸とし、上記基準軸に対して反時計回りを正の角度方向と称した場合において、上記第1位相差層の第1遅相軸及び上記第2位相差層の第2遅相軸が下記条件(1)~(3)を満たすように、上記光学フィルムにおいて、上記第1位相差層及び上記第2位相差層が配置されており、上記第1偏光フィルターの第1吸収軸及び上記第2偏光フィルターの第2吸収軸が、下記条件(4)、(5)及び(6)の条件を満たすように、上記第1偏光フィルター及び上記第2偏光フィルターが上記光学フィルムに対して配置されていてもよい。
(1)-40°<θ1<-10°(θ1は、上記第1遅相軸と上記基準軸との間の角度)
(2)+15°<θ2<+50°(θ2は、上記第2遅相軸と上記基準軸との間の角度)
(3)+55°<θ3<+65°(θ3は、上記第1遅相軸と上記第2遅相軸との間の角度)
(4)-20°<θ4<+20°(θ4は、上記第1吸収軸と及び上記第2吸収軸のうちの一方と上記基準軸との間の角度)
(5)+70°<θ5<+110°(θ5は、上記第1吸収軸と及び上記第2吸収軸のうちの他方と上記基準軸との間の角度)
(6)+70°<θ6<+110°(θ6は、上記第1吸収軸と上記第2吸収軸との間の角度)
【0012】
上記構成では、光学フィルムの表面反射を一層低減できる。
【0013】
上記光学フィルムは、積層方向において、上記1/2波長層からみて上記1/4波長層と反対側に位置する偏光板と、上記偏光板と上記1/2波長層との間に位置する第2接着層と、を有してもよい。
【0014】
上記第1接着層は、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化層でもよい。
【0015】
上記光学フィルムを搬送しながら上記検出工程を実施してもよい。
【0016】
上記検査光のピーク波長は、400nm~750nmの範囲内でもよい。
【0017】
上記光学フィルムを支持板の主面上に配置した状態で上記検出工程を実施し、上記主面の正反射率が45%以下でもよい。この場合、支持板の主面での反射の影響を低減できるので、光学フィルムの良否を正確に判定し易い。
【0018】
本発明の他の側面に係る光学フィルムの製造方法は、本発明に係る上記光学フィルムの検査方法を含む。
【0019】
上記検査方法では、上記検出部によって検出された光の輝度に基づいて、上記光学フィルムにおける断面に沿った輝度分布を取得し、上記輝度分布に基づいて光学フィルムを良品か否かを判定する。そのため、客観的に光学フィルムの良否を判定できることから、光学フィルムの性能信頼性が向上する。その結果、性能信頼性の向上した光学フィルムを製造できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、性能信頼性の向上を図ることができる光学フィルムの検査方法及び光学フィルムの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、一実施形態に係る検査方法を含む光学フィルムの製造方法のフローチャートである。
図2図2は、一実施形態に係る光学フィルムの製造方法で製造される光学フィルムの概略構成を示す模式図である。
図3図3は、光学フィルムの変形例の概略構成を示す模式図である。
図4図4は、一実施形態に係る光学フィルムの検査方法を説明するための図面である。
図5図5は、光学フィルムが有する第1位相差層及び第2位相差層の配置関係を説明する図面である。
図6図6は、光学フィルムに対する第1偏光フィルター及び第2偏光フィルターの配置関係を説明する図面である。
図7図7は、実験例で使用したサンプルS1~S4の検出結果を示す図表である。
図8図8は、目視検査に使用した光学フィルムの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0023】
図1は、一実施形態に係る検査方法を含む光学フィルムの製造方法のフローチャートである。光学フィルムの製造方法は、光学フィルムの形成工程S01と、光学フィルムの検査工程S02と、光学フィルムの形成条件の変更工程S03と、良品である光学フィルムの回収工程S04とを有する。
【0024】
[形成工程]
形成工程S01では、図2に示した光学フィルム10を形成する。光学フィルム10は、円偏光板であり、例えば、有機エレクトロルミネッセンス装置に適用され得る。
【0025】
光学フィルム10は、位相差積層体11を有する。位相差積層体11は、第1位相差層12と、第2位相差層13と、それらを接着する第1接着層14とを有する。通常、光学フィルム10は、位相差積層体11を保護する第1保護層15及び第2保護層16の少なくとも一方を有する。以下では、断らない限り、光学フィルム10が第1保護層15と第2保護層16を有する場合を説明する。
【0026】
<第1位相差層>
第1位相差層12は、例えば、λ/2の位相差を与えるλ/2板(1/2波長層)である。第1位相差層12の厚さの例は、1μm~3μmである。第1位相差層12の面内位相差(R0)の例は、236nm±4nm、234nm±5nm及び240nm±5nmを含む。上記面内位相差の例は、例えば波長550nmに対する例である。本実施形態における面内位相差は、例えばAxoScan(Axometrics社製)によって測定され得る。
【0027】
第1位相差層12は、1/2波長層である場合、透光性を有する熱可塑性樹脂のフィルムに、λ/2の位相差を与えるように延伸処理等を施すことによって製造され得る。この場合、第1位相差層12は、複屈折性フィルムである。熱可塑性樹脂の例は、トリアセチルセルロース等のセルロースエステル系樹脂である。
【0028】
第1位相差層12は、基材フィルム上に、λ/2の位相差を与える第1液晶層、第1配向層等を形成することで製造されてもよい。この場合、第1液晶層、第1配向層等が第1位相差層12に相当する。基材フィルムは、第1位相差層12を形成した後、剥離されてもよい。或いは、上記基材フィルムも第1位相差層12の構成要素であってもよい。基材フィルムの例は、第1保護層15と同じである。第1保護層15が基材フィルムを兼ねてもよい。
【0029】
<第2位相差層>
第2位相差層13は、例えば、λ/4の位相差を与えるλ/4板(1/4波長層)である。第2位相差層13の厚さの例は、0.1μm~2μmである。第2位相差層13の面内位相差(R0)の例は、116nm±4nm及び120nm±5nmを含む。第1位相差層12の面内位相差が、236nm±4nm又は234nm±5nmである場合、第2位相差層13の面内位相差は、116nm±4nmであり得る。第1位相差層12の面内位相差が、240nm±5nmである場合、第2位相差層13の面内位相差は、116nm±4nmであり得る。上記面内位相差の例は、例えば波長550nmに対する例である。第2位相差層13の遅相軸(後述する第2遅相軸13a)と第1位相差層12の遅相軸(後述する第1遅相軸12a)とのなす角度は、光学フィルム10が円偏光板として機能するように配置されていればよく、通常60°±1°である。
【0030】
第2位相差層13は、1/4波長層である場合、透光性を有する熱可塑性樹脂のフィルムに、λ/4の位相差を与えるように延伸処理等が施すことによって製造され得る。この場合、第2位相差層13は、複屈折性フィルムである。熱可塑性樹脂の例は、第1位相差層12の場合と同様である。
【0031】
第2位相差層13は、基材フィルム上に、λ/4の位相差を与える液晶層、配向層等を形成することで製造されてもよい。この場合、第2液晶層、第2配向層等が第2位相差層13に相当する。基材フィルムは、第2位相差層13を形成した後、剥離されてもよい。或いは、上記基材フィルムも第2位相差層13の構成要素であってもよい。基材フィルムの例は、第2保護層16と同じである。第2保護層16が基材フィルムを兼ねてもよい。
【0032】
第1位相差層12及び第2位相差層13は、位相差を与える層であれば特に限定されず、それぞれ1/2波長層、1/4波長層、ポジティブC層等であってもよく、逆波長分散性を示す逆位相差層であってもよい。
ポジティブC層の面内位相差値Re(550)は通常0~10nmの範囲、好ましくは0~5nmの範囲であり、厚さ方向の位相差値Rthは通常-10~-300nmの範囲、好ましくは-20~-200nmの範囲である。
【0033】
光学フィルム10は、第1位相差層12が上記λ/4層であり、第2位相差層13が上記λ/2層である光学フィルムであってもよい。
光学フィルム10は、上記第1位相差層12が上記λ/4層であり、第2位相差層13がポジティブC層である光学フィルムであってもよいし、上記第1位相差層12がポジティブC層であり、第2位相差層13がλ/4層である光学フィルムであってもよい。
光学フィルム10は、上記第1位相差層12、第2位相差層13に加え、更に位相差層を含む光学フィルムであってよい。例えば、上記第1位相差層12が上記λ/2層であり、第2位相差層13が上記λ/4層である場合、更に、ポジティブC層や逆位相差層を含んでもよい。
【0034】
<第1接着層>
第1接着層14は、第1位相差層12と第2位相差層13との間に配置され、第1位相差層12及び第2位相差層13を接着する層である。第1接着層14の厚さの例は、0.1μm~5.0μmであり、好ましくは0.5μm~4.0μmであり、更に好ましくは1.0μm~3.0μmである。第1接着層14は、粘着剤または接着剤によって形成することができる。第1接着層14の例は、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化層である。活性エネルギー線硬化接着剤は、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射によって硬化する接着剤である。
【0035】
第1接着層14は、硬化性の樹脂成分を水に溶解又は分散させた公知の水系接着剤で形成されてもよい。水系接着剤に含有される樹脂成分としては、ポリビニルアルコール系樹脂やウレタン樹脂等が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂を含む水系組成物は、硬化性成分や架橋剤を更に含有することができる。ウレタン樹脂を含む水系組成物としては、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物とを含む水系組成物が挙げられる。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とは、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。
【0036】
上記粘着剤としては、アクリル系共重合体及び架橋剤を含むアクリル系粘着剤を使用することができる。上記アクリル系共重合体は、炭素数1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体と、架橋可能な官能基を有する重合性単量体をラジカル重合させて製造することができる。上記(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを意味する。
上記炭素数1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体の具体的な例としては、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、 n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどを挙げることができ、これらの中でn-ブチルアクリレート、メチルアクリレートまたはこれらの混合物が好ましい。これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
上記架橋可能な官能基を有する重合性単量体は、下記架橋剤との化学結合によって粘着剤の凝集力または粘着強度を補強して耐久性と切断性を付与するための成分として、例えば、ヒドロキシ基を有する単量体、カルボキシ基を有する単量体、アミド基を有する単量体、3次アミン基を有する単量体などを挙げることができ、これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
架橋剤は、共重合体を適切に架橋することで粘着剤の凝集力を強化するための成分として、その種類は特に限定されない。例えば、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物などを挙げることができ、これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
上記粘着剤を構成する各成分を酢酸エチルなどの適当な溶剤に溶解させて粘着剤組成物を得て、該粘着剤組成物を基材上に塗布した後に乾燥させて、接着層が形成される。一部溶剤に溶解しない成分がある場合には、それらは系中に分散した状態であってもよい。
【0037】
本実施形態において、第1保護層15及び第2保護層16は、位相差積層体11の両面に設けられている。具体的には、第1保護層15は、第1位相差層12からみて第1接着層14と反対側に設けられている。第2保護層16は、第2位相差層13からみて第1接着層14と反対側に設けられている。
【0038】
第1保護層15及び第2保護層16の材料の例は、環状ポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等の酢酸セルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂フィルム;(メタ)アクリル系樹脂;ポリプロピレン系樹脂等、当分野において材料を挙げることができる。第1保護層15及び第2保護層16の厚さの例は、30μm~100μmである。第1保護層15及び第2保護層16の厚さは異なっていてもよい。
【0039】
光学フィルム10は、各層を準備した後、それらを積層することによって形成され得る。各層は、形成工程S01で製造してもよいし、購入品を使用してもよい。光学フィルム10を形成する際、例えば、第1位相差層12と第2位相差層13とを第1接着層14を介して貼合することによって位相差積層体11を形成した後、位相差積層体11に第1保護層15及び第2保護層16を貼合してもよい。或いは、第1位相差層12に第1保護層15を貼合するとともに、第2位相差層13に第2保護層16を貼合した後、第1位相差層12と第2位相差層13とを第1接着層14を介して貼合してもよい。
【0040】
形成工程S01で製造する光学フィルム10は、図3に示した光学フィルム10Aでもよい。光学フィルム10Aは、第1位相差層12上に、第2接着層18を介して偏光板17が積層されている点で、主に光学フィルム10と相違する。この相違点を中心に光学フィルム10Aを説明する。
【0041】
<偏光板>
偏光板17は、直線偏光板である。偏光板17は、直線偏光特性を有する偏光子を有する。偏光板は、偏光子の片面又は両面に積層された熱可塑性樹脂フィルムを有してもよい。
【0042】
偏光子は、例えば、吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルム(又は延伸層)である。吸収異方性を有する色素としては、例えば、二色性色素が挙げられる。二色性色素として、具体的には、ヨウ素や二色性の有機染料が用いられる。偏光子の材料の例は、ポリビニルアルコール系樹脂である。偏光子は、吸収異方性を有する色素を基材フィルムに塗布し硬化させてなる層等でもよい。基材フィルムは、偏光子の一部でもよいし、偏光子を形成した後に剥離されてもよい。基材フィルムの材料は、熱可塑性樹脂フィルムと同じであり、熱可塑性樹脂フィルムが基材フィルムを兼ねてもよい。
【0043】
偏光子の厚みは、通常30μm以下であり、好ましくは18μm以下、より好ましくは15μm以下である。偏光子の厚みは、通常1μm以上であり、例えば5μm以上であってよい。
【0044】
熱可塑性樹脂フィルムの材料の例は、第1保護層15(又は第2保護層16)の材料の例と同様とし得る。熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、好ましくは5μm以上150μm以下、より好ましくは5μm以上100μm以下、さらに好ましくは10μm以上50μm以下である。
【0045】
偏光板17の吸収軸と第1位相差層12の遅相軸(後述する第1遅相軸12a)との角度は、好ましくは71°~74°である。
【0046】
<第2接着層>
第2接着層18は、第1接着層14と同じ接着剤又は粘着剤から形成された層であっても良いし、異なる接着剤又は粘着剤から形成された層であっても良い。第2接着層18は、粘着剤によって形成された層でもよい。粘着剤の例は、(メタ)アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等を主成分とする粘着剤組成物である。第2接着層18の厚さは、例えば0.1μm~10μmである。
【0047】
光学フィルム10Aは、偏光板17上に、第1保護層15Aを有してもよい。第1保護層15Aの材料の例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)を含む。第1保護層15Aの厚さの例は、30μm~100μmである。
【0048】
光学フィルム10Aは、光学フィルム10の場合と同様に、各層を準備した後、それらを積層することによって製造され得る。各層は、形成工程S01で製造されてもよいし、購入品を使用してもよい。
【0049】
以下では、断らない限り、形成工程S01で光学フィルム10を形成し、それを検査する場合を説明する。
【0050】
[検査工程]
検査工程S02では、第1接着層14と第1位相差層12の屈折率差及び第1接着層14と第2位相差層13の屈折率差の少なくとも一方に起因する界面反射、第1接着層14の厚さの均一性などの影響で生じる干渉ムラの程度が許容範囲か否かを検査する。
【0051】
図4は、光学フィルム10を検査する検査方法を説明するための図面である。本実施形態では、第1位相差層12側の面(図2の構成では、第1保護層15の表面)を検査面10aとし、光源部21及び検出部22を有する検査光学系20を利用して光学フィルム10を検査する。検査光学系20は、光源部21及び検出部22が、光学フィルム10に対して同じ側に位置する反射光学系である。検査方法は、図1に示したように、検出工程S02Aと、判定工程S02Bとを有する。
【0052】
<検出工程>
検出工程S02Aでは、光学フィルム10を図4の白抜き矢印方向に搬送しながら、検査面10aに、光源部21から検査光L1を照射するとともに、光源部21から照射され光学フィルム10で反射した光(以下、「反射光L2」と称す)を、検出部22によって検出する。
光学フィルム10が枚葉状である場合、光学フィルム10は、例えばベルトコンベアで搬送され得る。光学フィルム10が長尺である場合、光学フィルム10は、例えば搬送ロールなどで搬送され得る。以下、光学フィルム10の幅方向(搬送方向に直交する方向)をTD方向と称し、光学フィルム10の搬送方向をMD方向と称す。搬送速度の例は、1m/min~100m/minである。
【0053】
検査光学系20が有する光源部21及び検出部22を説明する。
【0054】
光源部21は、検査光L1を出力する。検査光L1のピーク波長は、例えば400nm~750nmであり、好ましくは500nm~700nmであり、より好ましくは550nm~680nmであり、更に好ましくは600nm~650nmである。
【0055】
検査光L1の光源部21における照度は、光源部21からの距離が15mmの位置において、通常1000~25000[lx]となる範囲であり、好ましくは1000~15000[lx]となる範囲であり、より好ましくは50,00~10000[lx]となる範囲である。
【0056】
検査光L1は、検査面10a上の1点に照射されてもよいし、フィルム幅全体にわたって照射されてもよい。
【0057】
光源部21は、例えば、複数のLEDがライン状に配置されたラインLED光源である。この場合、光源部21の延在方向は、光学フィルム10の法線nに直交するとともに、例えばMD方向に直交する方向である。
【0058】
光源部21は、検査面10a側に配置されている。光源部21と検査面10aとの間の距離d1は、通常、100mm~2000mmである。距離d1は、例えば光源部21の光出射面と検査面10aとの間の距離である。光源部21の光軸と、検査面10aの法線n(光学フィルム10の厚さ方向)との角度α1[°]は、通常、1°~60°であり、好ましくは5°~50°であり、更に好ましくは10°~45°である。
【0059】
検出部22は、検査面10aからの反射光L2を受光する。検出部22は2次元輝度計である。検出部22の例は、エリアセンサカメラ(2次元センサカメラ)であり、エリアセンサカメラの例は、CCDカメラである。検出部22は、ライン状の輝度計(例えば、ラインセンサカメラ)でもよい。
【0060】
検出部22は、検査面10a側において、光学フィルム10によって検査光L1が反射した反射光L2を受光可能に配置されている。検出部22の光軸と検査面10aの法線nとのなす角度α2の大きさは、角度α1の大きさと実質的に同じである。検出部22と検査面10aとの間の距離d2の例は、100mm~2000mmである。検出部22と検査面10aとの間の距離d2は、検出部22の受光面と検査面10aとの距離であり得る。
【0061】
本実施形態の検出工程S02Aでは、第1偏光フィルター23及び第2偏光フィルター24を使用する。第1偏光フィルター23及び第2偏光フィルター24は検査光学系20の一部でもよい。
【0062】
第1偏光フィルター23及び第2偏光フィルター24は、直線偏光特性を有するフィルターである。第1偏光フィルター23は、光源部21と光学フィルム10の間に配置されている。第2偏光フィルター24は、光学フィルム10と検出部22との間に配置されている。したがって、光源部21から出力された検査光L1は、第1偏光フィルター23を通過して直線偏光光として光学フィルム10に照射される。光学フィルム10で反射された検査光L1である反射光L2は、第2偏光フィルター24を介して検出部22に入射する。第1偏光フィルター23は検査光L1の光路上に配置されており、第2偏光フィルター24は反射光L2の光路上に配置されていれば、第1偏光フィルター23及び第2偏光フィルター24の配置位置は限定されない。ただし、第1偏光フィルター23は、光源部21から発せられる熱の影響を加味し、光源部21から距離を置いた方がより好ましい。光源部21から第1偏光フィルター23までの距離は、50mm以上が好ましい。
【0063】
図5及び図6を利用して、検査工程S02Aでの光学フィルム10、第1偏光フィルター23及び第2偏光フィルター24の配置関係を説明する。配置関係の説明において、第1位相差層12の面内位相差は、236nm±4nm又は234nm±5nmであり、第2位相差層13の面内位相差は、116nm±4nmである。或いは、第1位相差層12の面内位相差が240nm±5nmであり、第2位相差層13の面内位相差は120nm±4nmである。
【0064】
図5は、光学フィルム10が有する第1位相差層12及び第2位相差層13の配置関係を説明する図面である。図5では、第1位相差層12が有する第1遅相軸12aと、第2位相差層13が有する第2遅相軸13aとの関係で、第1位相差層12と第2位相差層13の配置関係を示している。
【0065】
図5中のx軸及びy軸は、検査面10aに設定した仮想的な軸である。x軸及びy軸は互いに直交していれば任意に設定され得る。一例として、x軸方向はMD方向である。第1遅相軸12a及び第2遅相軸13aの角度を規定するために、y軸を基準軸RAとする。基準軸RAに対する角度を規定する場合、光学フィルム10を検査面10a側からみた場合に基準軸RAに対して反時計回り(左回り)を正の角度方向とし、時計回り(右回り)を負の角度方向とする。
【0066】
図5に示したように、第1遅相軸12aと基準軸RAとの間の角度をθ1とし、第2遅相軸13aと基準軸RAとの間の角度をθ2とし、第1遅相軸12aと第2遅相軸13aとの間の角度をθ3としたとき、第1位相差層12及び第2位相差層13は、角度θ1、角度θ2及び角度θ3が下記の条件(1)~条件(3)を満たすように、配置されている。
(1)-40°<θ1<―10°
(2)+15°<θ2<+50°
(3)+55°<θ3<+65°
図5では、θ1及びθ2の許容範囲をハッチングで示している。条件(3)を満たすことで、光学フィルム10が円偏光板として機能する。
【0067】
図6は、光学フィルム10に対する第1偏光フィルター23及び第2偏光フィルター24の配置関係を説明する図面である。図6では、第1偏光フィルター23が有する第1吸収軸23aと、第2偏光フィルター24が有する第2吸収軸24aとの関係で、第1偏光フィルター23と第2偏光フィルター24の配置関係を示している。図6中のx軸及びy軸は、図5中のx軸及びy軸と同じである。換言すれば、図6中の第1吸収軸23aは、図4において、第1偏光フィルター23を、法線nと直交する位置まで移動(角度α1が0°になるように回転)させた状態で、第1偏光フィルター23の第1吸収軸23aを検査面10aに投影した軸に相当する。図6中の第2吸収軸24aについても同様である。
【0068】
図6に示したように、第1吸収軸23aと基準軸RAとの間の角度をθ4とし、第2吸収軸24aと基準軸RAとの間の角度をθ5とし、第1吸収軸23aと第2吸収軸24aとの間の角度をθ6としたとき、第1偏光フィルター23及び第2偏光フィルター24は、角度θ4、角度θ5及び角度θ6が下記の条件(4)~条件(6)を満たすように、配置されている。
(4)-20°<θ4<+20°
(5)+70°<θ5<+110°
(6)+70°<θ6<+110°
図6では、θ4及びθ5の許容範囲をハッチングで示している。条件(6)は、第1偏光フィルター23及び第2偏光フィルター24がクロスニコル状態にある点を、第1吸収軸23a及び第2吸収軸24aが理想的に直交している状態に対して一定の許容範囲を考慮して表した式である。以下、説明の便宜のため、条件(6)を満たす第1偏光フィルター23及び第2偏光フィルター24の配置関係を、クロスニコル状態と称す。
【0069】
条件(1)~条件(6)の角度θ1~角度θ6は、共通の基準軸RAに対して規定されているため、条件(1)~条件(6)は、検出工程S02Aにおける第1位相差層12、第2位相差層13、第1偏光フィルター23及び第2偏光フィルター24の配置関係を規定している。図5及び図6を利用した条件(1)~条件(6)の関係の説明では、y軸を基準軸RAとした。しかしながら、基準軸RAはx軸でもよい。換言すれば、光学フィルム10を±90°又は180°回転させてもよいし、第1偏光フィルター23及び第2偏光フィルター24の配置関係を反転させてもよい。
【0070】
光学フィルム10の形成時における第1位相差層12及び第2位相差層13の配置関係並びに光学フィルム10の検査時における光学フィルム10、第1偏光フィルター23及び第2偏光フィルター24の配置関係を調整することによって、条件(1)~条件(6)の角度θ1~角度θ6が実現され得る。
【0071】
図4に示したように、光学フィルム10は、背面板(支持板)25上に配置されていてもよい。背面板25の主面25a(光学フィルム10側の面)の正反射率は、例えば45%以下である。背面板25は、上記例示した範囲の正反射率を有する材料で形成された板を使用してもよいし、板部材の表面に上記例示した範囲の正反射率を有する材料の例えばシートを貼合した構成を有してもよい。
【0072】
<判定工程>
判定工程S02Bでは、検出部22によって検出された反射光L2の輝度に基づいて、光学フィルム10における幅方向(TD方向)の断面に沿った輝度分布を取得する。次いで、輝度分布に基づいて光学フィルム10を良品か否かを判定する。上記輝度分布は、例えば、解析装置で検出部22によって取得した輝度データに基づいて作成され得る。解析装置は、例えば、検出方法を実施するための専用の装置でもよいし、解析用のプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータでもよい。
【0073】
判定工程S02Bでは、輝度分布に表される干渉縞(振幅の変化)において、干渉ムラを判定可能な指標(判定指標)に従って判定すればよい。例えば、輝度分布における最大輝度に対する最小輝度の比([最小輝度/最大輝度](%))を判定指標として判定を行ってもよいし、最大輝度と、輝度分布の平均値(平均輝度)との差([最大輝度-平均輝度]を判定指標として判定を行ってもよい。光学フィルム10が良品か否かは、判定方法に応じて例えば予め実験などに応じて基準を設定すればよい。
【0074】
判定工程S02Bで、光学フィルム10が不良品と判定された場合(判定工程S02Bで「NO」)、変更工程S03を実施する。
【0075】
[変更工程]
変更工程S03では、光学フィルム10の形成条件を変更する。形成条件の変更は、例えば、第1接着層14の厚さの変更、第1接着層14の下地となる部材の平坦性の調整、第1接着層14の材料である接着剤の特性などの調整を含む。
【0076】
変更工程S03を実施した場合、再度形成工程S01を実施する。判定工程S02Bで光学フィルム10が良品と判定されるまで、形成工程S01、検査工程S02及び変更工程S03を繰り返せばよい。
【0077】
判定工程S02Bで、光学フィルム10が良品と判定された場合(判定工程S02Bで「YES」)、回収工程S04を実施する。
【0078】
[回収工程]
回収工程S04では、検査用の光学フィルム10を形成した場合と同じ条件で、光学フィルム10を形成し、形成された光学フィルム10を回収すればよい。例えば、光学フィルム10が長尺であり、検査工程S02を、形成工程S01で形成した光学フィルム10を搬送しながら実施する場合、検査工程S02を経た光学フィルム10を、例えば巻き取ることで光学フィルム10を回収してもよい。
【0079】
本実施形態の検査方法では、上記のように、光源部21から検査光L1を光学フィルム10に照射し、その反射光L2を検出部22で検出する。検出部22で検出された反射光L2の輝度データに基づいて光学フィルム10のTD方向における断面の輝度分布を取得し、その輝度分布に基づいて光学フィルム10の良否を判定する。そのため、客観的に光学フィルム10の良否を判定できる。
【0080】
例えば目視検査を行う場合、検査結果は、検査者間の個人差(見る角度の違いなども含む)、同じ検査者の状態(例えば体調、検査中の疲れ等)、及び光学フィルム10の製造工場間の違い等が生じる可能性がある。これに対して、本実施形態の光学フィルムの検査方法では、検査光学系20と光学フィルム10の配置関係及び使用する検査光L1等が固定されており且つ輝度分布に基づいて判定を行うため、検査者間(或いは同一検査者間)の違い、工場間の検査方法の違いなどが除去されている。そのため、客観的に光学フィルム10の良否を判定できる。
【0081】
光学フィルム10の製造方法では、上記検査方法で、光学フィルム10の良否を客観的に判定することから、良品の光学フィルム10を効率的に製造できる。その結果、光学フィルム10の製造歩留まりが向上する。
【0082】
光学フィルム10の製造方法では、上述の検出工程S02Aと判定工程S02Bを、光学フィルム10を搬送しながら自動的に行うことが可能なので、不良品の発生を直ぐに検出することができる。その結果、良品の光学フィルム10を更に効率的に製造できる。
【0083】
判定工程S02Bで使用する輝度分布は、反射光L2の干渉縞を現している。したがって、輝度分布に基づいて干渉ムラを評価可能である。
【0084】
輝度分布における最大輝度に対する最小輝度の比を、判定指標として使用する場合、光学フィルム10の材料などの違いの影響を低減できる。そのため、上記最大輝度に対する最小輝度の比は、汎用性を有し得る。
【0085】
第1偏光フィルター23及び第2偏光フィルター24を使用する場合、検査面10aでの表面反射の影響を低減できる。光学フィルム10、第1偏光フィルター23及び第2偏光フィルター24が上記条件(1)~条件(6)を満たすように配置された場合に、表面反射の影響を一層低減できるので、第1接着層14の影響(第1接着層14に隣接する層の界面の影響も含む)で生じる干渉ムラをより正確に評価できる。そのため、光学フィルム10、第1偏光フィルター23及び第2偏光フィルター24が上記条件(1)~条件(6)を満たすように配置して、検出工程S02Aを実施することで、光学フィルム10の良否を一層正確に判定できる。
【0086】
光源部21から出力される検査光L1のピーク波長が、例えば400nm~750nm、好ましくは500nm~700nm、より好ましくは600nm~650nmの範囲である場合、波長領域が限定されていることから、干渉ムラを検知し易い。更に、輝度分布の最大値と最小値がデータ上、より明確になる。この観点でも干渉ムラをより検知しやすい。その結果、より正確に光学フィルム10の良否を判定できる。
【0087】
光源部21と光学フィルム10の間の距離d1が100mm~2000mmである場合、検査光学系20の設置スペースを縮小できる。更に、反射光L2の輝度が向上しやすい。同様に、光学フィルム10と検出部22との間の距離d2が100mm~2000mmである場合、検査光学系20の設置スペースを縮小できる。
【0088】
背面板25の正反射率が45%以下であれば、背面板25からの反射の影響を低減できる。その結果、より正確に光学フィルム10の良否を判定できる。
【0089】
以下、光学フィルム10のサンプルを用いた実験例を説明する。
【0090】
[実験例]
実験例では、光学フィルム10の具体的なサンプルとして、サンプルS1、サンプルS2、サンプルS3及びサンプルS4を準備した。各サンプルの幅は1340mmであった。
【0091】
(サンプルS1)
サンプルS1は、図2に示した構成を有していた。すなわち、サンプルS1は、第2保護層16、第2位相差層13、第1接着層14、第1位相差層12及び第1保護層15を有し、第2位相差層13、第1接着層14、第1位相差層12及び第1保護層15が、この順に第2保護層16上に積層されていた。サンプルS1の平面視形状は矩形であった。
【0092】
第1保護層15及び第2保護層16は、トリアセチルセルロース樹脂フィルムであった。第1保護層15及び第2保護層16の厚さは、80μmであった。
【0093】
第1位相差層12はλ/2板であった。面内位相差は236nmであった。第2位相差層13はλ/4板であった。面内位相差は116nmであった。第1位相差層12の第1遅相軸12aと第2位相差層13の第2遅相軸13aとの間の角度θ3(図5参照)は60°であった。第1位相差層12の厚さは2μm、第2位相差層13の厚さは、1μmであった。
【0094】
第1接着層14の材料はエポキシ樹脂系紫外線硬化性接着剤(波長589nmでの屈折率が1.54)であった。第1接着層14の厚さは、3.0μmであった。
【0095】
(サンプルS2)
サンプルS2は、第1接着層14の厚さが、2.5μmであった点以外は、サンプルS1と同じ構成を有していた。
(サンプルS3)
サンプルS3は、第1接着層14の厚さが、2.0μmであった点以外は、サンプルS1と同じ構成を有していた。
(サンプルS4)
サンプルS4は、第1接着層14の材料としてエポキシ樹脂系紫外線硬化性接着剤(波長589nmでの屈折率が1.51)を使用した点、及び、第1接着層14の厚さが1.5μmであった点以外は、サンプルS1と同じ構成を有していた。
【0096】
準備したサンプルS1~S4に対して、図4を用いて説明した検出工程S02Aを実施した。検査対象が異なる点以外の条件は同じであったため、サンプルS1~S4をサンプルSと称して、実験例における検出工程S02Aを具体的に説明する。
【0097】
光源部21として、複数の赤色LEDが配置されたライン光源を用いた。光源部21は、検査対象のフィルム(サンプルS)における幅中央部に検査光L1が照射されるよう設置した。検査光L1のピーク波長は、600nm~650nmであった。光源部21の光軸と検査面10aとの法線nとの間の角度α1は20°であった。同様に、検査面10aとの法線nと検出部22の法線nとの間の角度α2は、20°であった。光源部21と検査面10aとの間の距離は135mmであった。検査面10aと検出部22との間の距離d2は760mmであった。なお、検査光L1の照度は、光源部21からの距離が15mmの位置において6570[lx]となる照度で行った。
【0098】
検出工程S02Aでは、エリアスキャンカメラ(商品名:G0-5000M-PGE、JAI社製)、第1偏光フィルター23及び第2偏光フィルター24を使用した。条件(1)~条件(6)を満たすように、サンプルS、第1偏光フィルター23及び第2偏光フィルター24を配置した。具体的には、角度θ1~角度θ6は次のとおりであった。
角度θ1:-26.5°
角度θ2: 33.5°
角度θ3: 60°
角度θ4: 0°
角度θ5: 90°
角度θ6: 90°
サンプルSを搬送速度500mm/sで搬送しながら、検出工程S02Aを実施した。
【0099】
図7は、サンプルS1~S4の検出結果を示す図表である。図中の輝度分布は、サンプルS1~S4の短手方向(幅方向)の中央部における断面の輝度分布(幅方向に沿った輝度分布)である。輝度分布の横軸は幅方向の位置(単位:mm、検出箇所の一端での位置を0mmとして表示)を示し、縦軸は輝度を示している。
【0100】
図7に示した輝度分布において、最大輝度に対する最小輝度の比([最小輝度/最大輝度])(%)を判定指標とし、目視評価との関係を検証した。
【0101】
目視評価には、次のサンプルS1a、サンプルS2a、サンプルS3a及びサンプルS4aを使用した。サンプルS1a、サンプルS2a、サンプルS3a及びサンプルS4aは、サンプルS1、サンプルS2、サンプルS3及びサンプルS4の目視評価用のサンプルに対応する。
【0102】
(サンプルS1a)
図8に示したように、サンプルS1aとして、第3接着層32、第2位相差層13、第1接着層14、第1位相差層12、第2接着層18及び偏光板33からなる光学フィルム30を作製した。
【0103】
サンプルS1aを構成する第2位相差層13、第1接着層14及び第1位相差層12は、サンプルS1の対応する層と同じであった。第2接着層18(厚み5μm)及び第3接着層32(厚み25μm)の材料はアクリル系粘着剤であった。すなわち、第2接着層18及び第3接着層32は粘着層であった。偏光板33は、図3を利用して説明した偏光板17と同様の直線偏光板であった。偏光板33の吸収軸と第1位相差層12の第1遅相軸12aとの間の角度は72.1°~72.9°であった。
【0104】
目視評価の際には、サンプルS1aを支持するために、第3接着層32の面を、支持体としての黒アクリル板31上に配置した。更に、偏光板33の表面の色むらを低減するために、偏光板33の面上に順に水層34(厚み約1mm)及びガラス板35(厚み1.1mm)を積層した(図8参照)。
【0105】
(サンプルS2a~S4a)
サンプルS2a~S4aとしての光学フィルムの構成は、サンプルS2~S4とサンプルS1との違いと同じ違いを有する点以外は、光学フィルム30の構成と同じであった。サンプルS2a~S4aを目視評価する際にも、サンプルS1aの場合と同様に、サンプルS2a~S4aを黒アクリル板31上に配置し、サンプルS2a~S4aが有する偏光板33の面上に、水層34及びガラス板35を積層した。
【0106】
目視評価は、目視の結果を1~4で評価した(数字が大きい方が高評価)。目視評価は、4人が予め定めていた目視評価方法に従って行い、各サンプルS1a~S4aに対する4人の平均を各サンプルS1a~S4aの目視評価結果として採用した。サンプルS1a~サンプルS4aをサンプルSaと称した場合、目視評価は次のように行った。すなわち、サンプルSaを、水平面に対して傾けて配置した。上記水平面に直交する方向からサンプルSaに3波長蛍光灯から光を照射した。傾けられたサンプルSaをその表面に垂直な方向から見て、上記蛍光灯からサンプルSaに入射し反射した光による干渉ムラを目視観察した。サンプルS1a~サンプルS4aは、サンプルS1~S4の違いと同じ違いを有する点以外の構成は同じであった。そのため、サンプルS1a~サンプルS4aの目視評価の違いは、サンプルS1~S4の目視評価の違いに相当する。
【0107】
目視評価と、定量評価(検出工程S02Aでの輝度データを用いた評価)との関係は表1のとおりであった。表1の結果より、目視評価と、輝度分布に基づいた評価(定量評価)との間に、高い相関関係を有することがわかった。すなわち、検出工程S02Aを実施して得られる輝度分布に基づいて、客観的に光学フィルム10の良否を判定できることが検証できた。
【表1】
【0108】
以上説明した実施形態とともに、種々の変形例を説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態及び種々の変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0109】
例えば、光学フィルム10の検査面10aは、第2位相差層13側の面(図2及び図3に示した構成では、第2保護層16の表面)であってもよい。光学フィルム10を用いて、検査工程S02以降を説明したが、光学フィルム10の代わりに光学フィルム10Aを用いてもよい。光学フィルムは、第1位相差層と第2位相差層と、それらを接着する接着層とを有していればよい。
【0110】
第1位相差層はλ/2の位相差を与える層に限定されず、第2位相差層は、λ/4の位相差を与える層に限定されない。第1位相差層及び第2位相差層が与える位相差は、それらを含む光学フィルムの所望の光学特性を実現できるように設定された位相差であればよい。第1位相差層及び第2位相差層がそれぞれλ/2及びλ/4の位相差を与える層でない場合、条件(1)~条件(6)に相当する条件は、第1位相差層及び第2位相差層が与える位相差に応じ、光学フィルムの良否判定に適したように設定されればよい。
【0111】
検出工程では、光学フィルムを搬送しなくてもよい。
【0112】
本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した種々の実施形態及び変形例は、適宜、組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0113】
10,10A…光学フィルム、10a…検査面、11…位相差積層体、12…第1位相差層、12a…第1遅相軸、13…第2位相差層、13a…第2遅相軸、14…第1接着層、15,15A…第1保護層、16…第2保護層、17…偏光板、18…第2接着層、20…検査光学系、21…光源部、22…検出部、23…第1偏光フィルター、23a…第1吸収軸、24…第2偏光フィルター、24a…第2吸収軸、25…背面板、25a…背面板の主面。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8