(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】ロボットシステム、デバイス製造装置、デバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20231113BHJP
B25J 9/22 20060101ALN20231113BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J9/22 Z
(21)【出願番号】P 2021211988
(22)【出願日】2021-12-27
(62)【分割の表示】P 2018222631の分割
【原出願日】2018-11-28
【審査請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0026049
(32)【優先日】2018-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 洋一
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-94554(JP,A)
【文献】特開2015-199192(JP,A)
【文献】特開2008-141098(JP,A)
【文献】特開2014-99576(JP,A)
【文献】特開平11-85236(JP,A)
【文献】特開2013-45817(JP,A)
【文献】特開2002-313872(JP,A)
【文献】特開平9-252039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアーム部と、前記ロボットアーム部に回転可能に連結されたロボットハンド部と、を含むロボットと、
前記ロボットの動作を制御する制御部と、を備えたロボットシステムであって、
前記制御部は、前記ロボットの動作の制御に用いられるティーチング位置に関する情報を複数記憶する記憶部を含み、
前記制御部は、前記ロボットハンド部が所定位置にセットされた状態で測定された前記ロボットハンド部の位置に関する情報に基づいて、前記記憶部に記憶された複数の前記ティーチング位置に関する情報のうち前記所定位置とは別の位置の他の複数の前記ティーチング位置に関する情報のうちの少なくとも2つをそれぞれ補正
し、
前記ロボットハンド部には、前記ロボットハンド部を貫く仮想軸線を中心とした前記ロボットハンド部の回転角を測定するのに用いられるマーク部が設けられており、
前記マーク部は、前記ロボットハンド部の前記ロボットアーム部との連結部から前記ロボットハンド部の自由端部に向かう方向に沿って設けられた第1マーク及び第2マークを含むことを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記ロボットハンド部が所定位置に設置された状態で、前記マーク部を用いて測定された前記ロボットハンド部の位置に関する第1情報を、前記記憶部に記憶しておくことを特徴とする請求項
1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記第1情報と、前記制御部が前記ロボットハンド部を前記所定位置に設置するための制御を行った状態で前記マーク部を用いて再び測定された前記ロボットハンド部の位置に関する第2情報とに基づいて、前記ロボットハンド部を貫く仮想軸線を中心とした回転角方向、前記仮想軸線と交差する第1方向、及び前記仮想軸線及び前記第1方向と交差する第2方向における位置ずれ量を算出することを特徴とする請求項
2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1方向、前記第2方向及び前記回転角方向のうち、少なくとも一つ以上の方向における前記位置ずれ量が該当方向に対する所定の閾値を超える場合、該当
方向における前記位置ずれ量に基づいて、前記記憶部に記憶された複数の前記ティーチング位置に関する情報を補正することを特徴とする請求項
3に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記制御部は、前記ロボットハンド部が所定位置に設置された状態で前記ロボットハンド部の位置を測定するための測定手段によって測定された前記ロボットハンド部の前記回転角に関する情報を含む情報に基づいて、前記記憶部に記憶された複数の前記ティーチング位置に関する情報のうち前記所定位置とは別の位置の他の複数の前記ティーチング位置に関する情報のうちの少なくとも2つをそれぞれ補正することを特徴とする請求項
1に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記制御部は、補正された複数の前記ティーチング位置に関する情報に基づいて、前記ロボットの動作を制御することを特徴とする請求項
4または
5に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記所定位置は、前記複数のティーチング位置の中のいずれか1つであることを特徴とする請求項
2~
6のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項8】
前記所定位置に該当する前記ティーチング位置は、複数の前記ティーチング位置のうち、前記ロボットアーム部及び前記ロボットハンド部が最も伸びた状態に対応する位置であることを特徴とする請求項
7に記載のロボットシステム。
【請求項9】
前記ロボットハンド部の前記マーク部を検出するための検出手段をさらに含むことを特徴とする請求項
1~
8のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項10】
前記検出手段は、前記マーク部に対応して複数配置されており、
前記制御部は、複数の前記検出手段によって前記マーク部を検出して取得した情報に基づいて、前記ロボットハンド部の位置ずれ量を算出することを特徴とする請求項
9に記載のロボットシステム。
【請求項11】
前記検出手段は、2つの検出手段を含むことを特徴とする請求項
9又は
10に記載のロボットシステム。
【請求項12】
前記検出手段は、撮像手段であることを特徴とする請求項
9~
11のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項13】
前記検出手段は、前記マーク部に対応して配置された撮像手段を含み、
前記制御部は、前記撮像手段によって撮像された前記マーク部の撮像画像を画像処理し、前記ロボットハンド部の位置ずれ量を算出することを特徴とする請求項
9~
12のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項14】
複数のチャンバーと、
前記複数のチャンバーのうちのいずれか1つのチャンバーから他のチャンバーに被搬送体を搬送するための請求項1~
13のいずれか1項に記載のロボットシステムと、を備えることを特徴とするデバイス製造装置。
【請求項15】
請求項1に記載のロボットシステムを用いてデバイスを製造するデバイス製造方法であって、
基板が搬送されるべき複数の搬送位置を含む複数のティーチング位置を前記記憶部に記憶させる工程と、
所定位置に設置された前記ロボットハンド部のマーク部を検出して測定された、前記ロ
ボットハンド部の位置に関する第1情報を前記記憶部に記憶させる工程と、
前記ロボットハンド部を前記所定位置に設置するための制御を行った状態で前記ロボットハンド部の前記マーク部を再検出して、前記ロボットハンド部の位置を再び測定する工程と、
前記記憶部に記憶された前記第1情報と、再び測定された前記ロボットハンド部の位置に関する第2情報とに基づいて、第1方向、前記第1方向と交差する第2方向、前記第1方向及び前記第2方向とそれぞれ交差する第3方向を回転軸とする回転角方向における、前記ロボットハンド部の位置ずれ量を測定する工程と、
前記第1方向、前記第2方向及び前記回転角方向のうち、少なくとも1つ以上の方向における前記位置ずれ量が、該当方向に対する所定の閾値を超える場合、該当方向における前記位置ずれ量に基づいて、複数の前記ティーチング位置を補正する工程と、を含むことを特徴とするデバイス製造方法。
【請求項16】
請求項1に記載のロボットシステムを用いてデバイスを製造するデバイス製造方法であって、
前記デバイスの製造に用いられる基板を搬送するロボットであって、ロボットアーム部と、前記ロボットアーム部に連結され、マーク部が設けられたロボットハンド部と、を含むロボットを用い、
前記基板が搬送されるべき複数の搬送位置を含む複数のティーチング位置を前記記憶部に記憶させる工程と、
前記ロボットハンド部を所定位置に設置した状態で、前記ロボットハンド部に設けられた前記マーク部を測定手段によって検出して前記ロボットハンド部の回転角を測定する工程と、
測定された前記ロボットハンド部の前記回転角に関する情報を含む情報に基づいて、前記記憶部に記憶された複数の前記ティーチング位置に関する情報のうち前記所定位置とは別の位置の他の複数の前記ティーチング位置に関する情報のうちの少なくとも2つをそれぞれ補正する工程と、を含むことを特徴とするデバイス製造方法。
【請求項17】
前記所定位置は、前記複数のティーチング位置の中のいずれか1つであることを特徴とする請求項
15又は
16に記載のデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネル表示装置として脚光を浴びている有機EL表示装置の製造ラインでは、リンク構造の多関節アームにハンドが連結されているロボットを用いて、基板及びマスクの少なくとも一方を処理室(例えば、成膜室)、パス室、バッファ室、マスクストックチャンバーなどに搬送する。
【0003】
ロボットを製造ラインに最初に設置する際、ロボットアーム又はロボットハンドをメンテナンスのために交換した時には、このようなロボットが基板又はマスクを正確な目標位置に搬送できるようにするために、搬送動作の開始前にロボットの搬送動作の起点と手順(搬送軌道)を教示するためのティーチング(teaching)作業が行われる。
【0004】
ロボットのティーチング方法としては、作業者がロボットハンドを直接動かしながら待機位置又は基板やマスクの搬送位置などを直接教示する方法、作業者がロボットを操作パネルによって操作し、搬送動作の起点となる位置を順次的に指定していく方法などが一般的に知られている。
【0005】
ティーチング作業によって教示されたロボットハンドの待機位置及び搬送位置に関する情報は、ロボットの制御手段に記憶され、実際の搬送動作の際にロボットは、記憶された待機位置と搬送位置情報に従って、搬送動作を行う。
【0006】
通常は、ロボットハンドの待機位置や基板やマスクの受け渡しを行う搬送位置についての教示は、作業者によって手動で行われる。つまり、作業者がロボットの動きを視覚的に確認しながら手動でティーチング作業を行うため、作業者に高い熟練度が要求され、ティーチング作業に時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の技術では、ロボットにおけるロボットハンド部のX方向、Y方向の位置を計測しているが、ロボットの制御を精度良くできなかった。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためのものであり、制御を精度良くできるロボット、ロボットシステム、デバイス製造装置、これを用いるデバイス製造方法及びティーチング位置の調整方法、プログラム、及び記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様によるロボットシステムは、
ロボットアーム部と、前記ロボットアーム部に回転可能に連結されたロボットハンド部と、を含むロボットと、
前記ロボットの動作を制御する制御部と、を備えたロボットシステムであって、
前記制御部は、前記ロボットの動作の制御に用いられるティーチング位置に関する情報を複数記憶する記憶部を含み、
前記制御部は、前記ロボットハンド部が所定位置にセットされた状態で測定された前記ロボットハンド部の位置に関する情報に基づいて、前記記憶部に記憶された複数の前記ティーチング位置に関する情報のうち前記所定位置とは別の位置の他の複数の前記ティーチング位置に関する情報のうちの少なくとも2つをそれぞれ補正し、
前記ロボットハンド部には、前記ロボットハンド部を貫く仮想軸線を中心とした前記ロボットハンド部の回転角を測定するのに用いられるマーク部が設けられており、
前記マーク部は、前記ロボットハンド部の前記ロボットアーム部との連結部から前記ロボットハンド部の自由端部に向かう方向に沿って設けられた第1マーク及び第2マークを含む。
【0011】
本発明の第2態様によるデバイス製造装置は、
複数のチャンバーと、前記複数のチャンバーのうちのいずれか1つのチャンバーから他のチャンバーに被搬送体を搬送するための前記ロボットシステムと、を備える。
【0012】
本発明の第3態様によるデバイス製造方法は、
前記ロボットシステムを用いてデバイスを製造するデバイス製造方法であって、
基板が搬送されるべき複数の搬送位置を含む複数のティーチング位置を前記記憶部に記憶させる工程と、
所定位置に設置された前記ロボットハンド部の前記マーク部を検出して測定された、前記ロボットハンド部の位置に関する第1情報を前記記憶部に記憶させる工程と、
前記ロボットハンド部を前記所定位置に設置するための制御を行った状態で前記ロボットハンド部の前記マーク部を再検出して、前記ロボットハンド部の位置を再び測定する工程と、
前記記憶部に記憶された前記第1情報と、再び測定された前記ロボットハンド部の位置に関する第2情報とに基づいて、第1方向、前記第1方向と交差する第2方向、前記第1方向及び前記第2方向とそれぞれ交差する第3方向を回転軸とする回転角方向における、前記ロボットハンド部の位置ずれ量を測定する工程と、
前記第1方向、前記第2方向及び前記回転角方向のうち、少なくとも1つ以上の方向における前記位置ずれ量が、該当方向に対する所定の閾値を超える場合、該当方向における前記位置ずれ量に基づいて、複数の前記ティーチング位置を補正する工程と、を含む。
【0013】
本発明の第4態様によるデバイス製造方法は、
前記ロボットシステムを用いてデバイスを製造するデバイス製造方法であって、
前記デバイスの製造に用いられる基板を搬送するロボットであって、ロボットアーム部と、前記ロボットアーム部に連結され、マーク部が設けられたロボットハンド部と、を含むロボットを用い、
前記基板が搬送されるべき複数の搬送位置を含む複数のティーチング位置を前記記憶部に記憶させる工程と、
前記ロボットハンド部を所定位置に設置した状態で、前記ロボットハンド部に設けられた前記マーク部を測定手段によって検出して前記ロボットハンド部の回転角を測定する工程と、
測定された前記ロボットハンド部の前記回転角に関する情報を含む情報に基づいて、前記記憶部に記憶された複数の前記ティーチング位置に関する情報のうち前記所定位置とは
別の位置の他の複数の前記ティーチング位置に関する情報のうちの少なくとも2つをそれぞれ補正する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、ロボットハンド部の回転角を測定することにより、ロボットを精度良く制御することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、有機EL表示装置の製造ラインの一部の模式図である。
【
図2】
図2は、本発明のロボットシステムの模式図である。
【
図3】
図3は、本発明のティーチング位置調整のためのロボットシステムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施例を説明する。ただし、以下の実施例は、本発明の好ましい構成を例示的に表すものであり、本発明の範囲は、これらの構成に限定されない。また、以下の説明において、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理の流れ、製造条件、大きさ、材質、形状等は、特に特定的な記載がない限り、本発明の範囲をこれに限定しようとする趣旨のものではない。
【0022】
<電子デバイス製造ライン>
図1は、電子デバイスの製造ライン(デバイス製造装置)の構成の一部を模式的に図示した平面図である。
【0023】
図1の製造ラインは、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製
造に用いられる。スマートフォン用の表示パネルの場合、例えば、フルサイズ(約1500mm×約1850mm)又はハーフカットサイズ(約1500mm×約925mm)の基板に有機ELの成膜を行った後、該基板を切り抜いて複数の小さなサイズのパネルを製作する。
【0024】
有機EL表示装置の製造ラインの成膜クラスタ1は、一般的に
図1に示すように、第1被搬送体としての基板10に対する処理(例えば、成膜)が行われる複数の成膜室11と、使用前後の第2被搬送体としてのマスクが収納される複数のマスクストックチャンバー12(第2被搬送体収納チャンバー)と、その中央に配置される搬送室13を具備する。
【0025】
搬送室13内には、複数の成膜室11の間に基板10を搬送し、成膜室11とマスクストックチャンバー12との間にマスクを搬送するロボット14が設置される。ロボット14は、例えば、多関節アームに、基板10を保持するロボットハンドが取り付けられた構造を有するロボットである。本実施例のロボット14の構造については、
図2を参照して、詳しく説明する。本実施例では、ロボット14が基板やマスクを搬送するための搬送ロボットである例をあげて説明するが、本発明はこれに限らず、他のロボットにも適用できる。
【0026】
各成膜室11には、成膜装置(蒸着装置とも呼ぶ)が設置される。成膜装置では、蒸発源に収納された蒸着材料がヒーターによって加熱及び蒸発されて、マスクを介して基板上に蒸着される。ロボット14との基板10の受け渡し、基板10とマスクの相対位置の調整(アライメント)、マスク上への基板10の固定、成膜(蒸着)などの一連の成膜プロセスは、成膜装置によって自動的に行われる。成膜装置は、2つのステージを有するデュアルステージ(Dual Stage)タイプであってもよい。デュアルステージタイプの成膜装置では、1つのステージに搬入された基板10に対して成膜が行われている間、他のステージに搬入された他の基板10に対してアライメントが行われる。
【0027】
マスクストックチャンバー12には、成膜室11での成膜工程に使われる新品のマスクと、使用済みのマスクとが、2つのカセットに分けて収納される。ロボット14は、使用済みのマスクを成膜室11からマスクストックチャンバー12のカセットに搬送し、マスクストックチャンバー12の他のカセットに収納された新たなマスクを成膜室11に搬送する。
【0028】
有機EL表示装置の製造ラインの成膜クラスタ1には、基板10の流れ方向において上流側からの基板10を成膜クラスタ1に搬送するパス室15と、該成膜クラスタ1で成膜処理が完了した基板10を下流側の他の成膜クラスタに受け渡すためのバッファ室16が連結される。搬送室13のロボット14は、上流側のパス室15から基板10を受け取って、当該成膜クラスタ1内の成膜室11の1つに搬送する。また、ロボット14は、当該成膜クラスタ1での成膜処理が完了した基板10を複数の成膜室11の1つから受け取って、下流側に連結されたバッファ室16に搬送する。
【0029】
このように、ロボット14は、搬送室13の周りに配置された各種チャンバーの間で、基板及びマスクのような被搬送体を搬送する。
【0030】
図1を参照して、本発明の成膜クラスタ1について説明したが、本発明の成膜クラスタ1はこれに限定されず、他の種類のチャンバーを有してもよく、チャンバー間の配置が変わってもよい。
【0031】
以下、ロボット14を含むロボットシステムの構成について説明する。
【0032】
<ロボットシステム>
図2は、ロボット14を含むロボットシステムの構造を例示的に示している。
【0033】
以下の説明においては、ロボット14のロボットアーム部とロボットハンド部との接続部の回転軸に平行な方向をZ軸としたXYZ座標系を使用する。Z軸の方向を第3方向とする時、これに垂直なX軸の方向及びY軸の方向のうち、いずれかの方向を第1方向とし、他の方向を第2方向とする。また、Z軸方向を中心とする回転角をθで表示し、Z軸方向を中心とする回転方向を回転角方向とする。
【0034】
本実施例のロボットシステムは、ロボット14とロボット14の動作を制御するための制御部25を含む。
【0035】
ロボット14は、搬送室13の底面に設置されるベース部21と、ベース部21から鉛直方向又はZ軸方向(第3方向)に延長し、Z軸方向に移動可能なシャフト部22と、シャフト部22に回転可能に連結されるロボットアーム部23を含む。
図2(a)では、ロボット14が1つのロボットアーム部23を有するものと図示したが、ロボット14は、2つ又はそれ以上のロボットアーム部23を有することもできる。これによって、基板10やマスクの搬送効率を高めることができ、工程時間を短縮することができる。
【0036】
ロボットアーム部23は、複数のアームが関節部を介して互いに回動可能に連結された構造を採用し得る。例えば、ロボットアーム部23は、一端がシャフト部22に回転可能に連結される第1アーム231と、一端が第1アーム231の他端と回転可能に連結される第2アーム232を備える構造を採用し得る。
図2(a)では、2つのアームが関節部を通じて互いに回動可能に連結された構造を示したが、本発明はこれに限定されず、2つのアームがアームの長手方向に相対的に摺動変位し、伸縮可能な構造を有することもできる。また、第1アーム231がシャフト部22に回転可能に連結される構造を示したが、本発明はこれに限定されず、第1アーム231がシャフト部22に固定的に連結されて、その代わりにシャフト部22自体が回転する構造も採用し得る。
【0037】
第2アーム232の他端には、ロボットハンド部24が回転可能に設けられている。ロボットハンド部24は、基板及びマスクがその上に載置できる構造を有する。
図2には図示していないが、ロボットハンド部24は、基板を安定的に支持するため、ロボットハンド部24の長手方向(ロボットアームとの接続部からロボットハンド部の自由端部に向かう方向)と交差する方向に延びる複数の支持部を有することができる。ロボットハンド部24の基板やマスク載置面には、基板10の損傷を防止するため、フッ素コーティングなどを施すと好適である。また、搬送途中に基板10がロボットハンド部24上で動いたり落下したりすることを防止するため、把持機構のような保持手段を含んでもよい。
【0038】
このような構造を持つ本実施例のロボット14は、シャフト部22を中心とした第1アーム231の回転角度、第1アーム231と第2アーム232との間の角度、第2アーム232とロボットハンド部24との間の角度、シャフト部22の高さをそれぞれ調節することにより、ロボットハンド部24上に載置された基板又はマスクの直線移動、回転移動、及びこれらの複合移動を行うことができ、基板又はマスクをXYZ座標系上の任意の所望の位置に移動させることができる。
【0039】
本実施例のロボット14のロボットハンド部24には、所定位置(例えば、後述する原点位置)におけるロボットハンド部24の回転角または回転角方向における位置ずれ量を測定するのに用いられるマーク部241が形成される。マーク部241の具体的な構成及び機能については、
図3を参照して後述する。
【0040】
本実施例のロボットシステムは、ロボット14の動作を制御する制御部25を含む。制御部25は、プロセッサー、メモリー、ストレージ、I/Oなどを有するコンピュータによって構成される。例えば、制御部25は、ロボット14の搬送動作を制御するためのプログラムが格納された記憶部251と、この記憶部251に格納されたプログラムを実行してロボット14を制御するように構成されたプロセッサー252を含む。コンピュータとしては、汎用のパーソナルコンピュータを使用してもよく、組込み型のコンピュータまたはPLC(programmable logic controller)を使用してもよい。または、制御部25の機能の一部または全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。本実施例では、制御部25がロボット14とは別途に設けられるものと説明するが、本発明はこれに限定されず、ロボット14が制御部25を有することもできる。
【0041】
記憶部251には、ロボット14の搬送動作を制御するための複数のティーチング位置(待機位置及び搬送位置)に関する情報が記憶される。制御部25は、記憶部251に記憶されたティーチング位置に関する情報に基づいて、ロボットハンド部24が該当位置へ移動できるように制御する。
【0042】
図2(b)に示すように、ロボット14は、第1アーム231のシャフトを回転させるための第1アーム駆動部2311と、第2アーム232のシャフトを回転させるための第2アーム駆動部2321と、ロボットハンド部24のシャフトを回転させるためのロボットハンド駆動部242と、シャフト部22を鉛直に駆動するための昇降駆動部221を具備する。
【0043】
これらの駆動部は、それぞれサーボモーター(不図示)及び動力伝達機構(不図示)を含む。サーボモーターから動力伝達機構を介して第1アーム231のシャフト、第2アーム232のシャフト、ロボットハンド部24のシャフトに回転動力が伝達され、これによって、第1アーム231、第2アーム232及びロボットハンド部24がそれぞれ回転する。
【0044】
昇降駆動部221は、ロボット14のベース部21に設置され、回転モーターを含むボールねじ機構によって構成される。例えば、昇降駆動部221は、ねじ軸と、このねじ軸と螺合するように構成されたボールナットと、ねじ軸を回転させるよう構成された回転モーターを含む。この場合、シャフト部22がボールナットに固定されて、ねじ軸の回転につれてボールナットとともに昇降される。
【0045】
制御部25は、これらの駆動部から第1アーム231の角度位置、第2アーム232の角度位置、ロボットハンド部24の角度位置、及びシャフト部22の高さに関する情報を取得することにより、各駆動部をフィードバック制御することができる。これによって、ロボットハンド部24が高精度でティーチング位置に移動することができるようになる。
【0046】
<ロボットの教示>
図1を参照して説明したように、ロボット14は、成膜クラスタ1内の複数の成膜室11と、パス室15またはバッファ室16との間で基板10を搬送する。
【0047】
ロボット14によってパス室15から第1成膜室11aに基板10を搬送する場合を例に挙げて説明する。搬送前においては、ロボット14のロボットアーム部23が縮んだ状態(すなわち、第1アーム231と第2アーム232との間の角度が小さくなるようにロボットアーム部23の関節が曲がった状態)にあり、ロボットハンド部24は、その自由端部がパス室15を指向した状態で第1待機位置に位置している。そして、この状態から、ロボットアーム部23は、パス室15内の基板ステージ上の搬出位置(この位置がパス
室に対するティーチング位置になる)に向かって伸びて、パス室15に設けられた基板ステージ上の基板10を受け取る。その後、ロボットアーム部23が再び縮むことによって、ロボットハンド部24は、上記の第1待機位置に戻る。
【0048】
次に、ロボットアーム部23がシャフト部22を中心に旋回し、ロボットハンド部24の自由端部が第1成膜室11aを指向する第2待機位置(他のティーチング位置になる)に移動する。この状態でロボットアーム部23が伸びることで、ロボットハンド部24が第1成膜室11aへの基板搬入位置(第1成膜室に対するティーチング位置)に移動することによって、基板が第1成膜室11a内に搬入される。その後、ロボットハンド部24は第2待機位置に戻る。
【0049】
このような基板の搬入や搬出における搬送動作は、当該成膜クラスタ1で全ての成膜処理が終了され、該当基板が基板の流れの下流側のバッファ室16に受け渡されるまで繰り返される。このようなロボット14による搬送動作が円滑に遂行できるようにするため、当該成膜クラスタ1内の待機位置及び基板10の搬入位置や搬出位置に関する情報がティーチング位置の情報として、制御部25の記憶部251に記憶されている。
【0050】
ティーチング位置に関する位置情報(例えば、当該位置のX、Y、Z、θ座標値)をロボット14に教示する作業(当該位置を測定し、これを制御部25の記憶部251に記憶させる作業)をティーチング作業といい、これはロボット14を成膜クラスタ1に設置する時や、ロボットアーム部23またはロボットハンド部24を、メンテナンスのために除去又は交換した際、作業者によって行われる。
【0051】
ティーチング作業は、作業者が操作パネルを通じてロボット14を少しずつ移動させながら、各ティーチング位置にロボットハンド部24を移動させ、当該ティーチング位置における、シャフト部22を中心にした第1アーム231の回転角度、第1アーム231と第2アーム232との間の回転角度、第2アーム232とロボットハンド部24との間の回転角度、シャフト部22のZ軸方向の位置に関する情報に基づいて、当該ティーチング位置の座標値を算出し、これを制御部25に記憶させることにより、行われる。この際、各回転角度値などは、第1アーム231のシャフトの駆動部2311、第2アーム232のシャフトの駆動部2321、ロボットハンド部24のシャフトの駆動部242、シャフト部22の昇降駆動部221から得られる。
【0052】
このようなティーチング作業は、通常は、作業者が手動で操作パネルを操作し、ロボット14のロボットアーム部23及びロボットハンド部24の少なくとも一方を旋回または伸縮させることにより行われるが、各ティーチング位置に設置されたガイド部を用いて、ロボットハンド部24を目標位置にガイドし、その位置情報を得る方式で行うこともできる。また、目標位置に移動したロボットハンド部24に設けられた標識をセンサーで認識し、当該ティーチング位置の座標値を得る方式で、ティーチング作業を行うこともできる。
【0053】
また、各チャンバー間の相対的な関係が一定である場合、例えば、各チャンバー内のティーチング位置(基板の搬入位置や搬出位置)が、ロボット14のシャフト部22から実質的に同一距離に位置する場合(つまり、ロボット14を中心とした円弧上に配置される場合)には、これらのチャンバー間の相対的な位置関係を利用し、他のチャンバー(ティーチング位置)に対するティーチング作業を迅速に行うこともできる。
また、ティーチング作業は、基板10をロボットハンド部24に載置していない状態で行われるのが一般的であるが、基板10をロボットハンド部24に載置した状態で行うこともできる。これによって、実際の搬送状況に合う正確なティーチングを行うことが出来る。
【0054】
<ティーチング位置を調整するためのロボットシステム>
以下、
図3を参照して本発明によってティーチング位置(待機位置及び搬送位置)を調整するためのロボットシステムについて説明する。
【0055】
ロボット14の最初の設置、又はロボットアーム部23やロボットハンド部24のメンテナンスが行われた後、実際にロボット14を用いて基板又はマスクを搬送する場合において、ロボットアーム部23やロボットハンド部24が製造ラインを構成する他の部分と衝突する場合がある。例えば、成膜クラスタ1内でロボット14によって基板10またはマスクを各チャンバー内に搬送する過程で、ロボットハンド部24などが成膜室11、パス室15、バッファ室16などの基板ホルダや基板ステージ又は基板支持部と衝突することが考えられる。また、マスクストックチャンバー12内のマスク収納カセットやそのカセット内のマスク支持部と衝突することも考えられる。
【0056】
ロボットハンド部24及びロボットアーム部23などに機械的な衝撃が加えられると、ロボットハンド部24及びロボットアーム部23自体が変形する恐れがあり、これらの間の関節部も変形する恐れがある。
【0057】
たとえ、衝突が起きなくても、基板の大型化によってロボットハンド部24自体が基板10の重さによって変形したり、ロボット14の関節部に持続的に加えられる負荷によって関節部が変形したりすることにより、ロボットハンド24の移動位置が、最初のティーチング時とは変わることが考えられる。
【0058】
この場合、制御部25が、記憶部251に記憶されているティーチング位置に関する情報に基づいて、当該ティーチング位置にロボットハンド部24を移動させるための命令を各関節部の駆動部及び昇降駆動部221に下しても、ロボットハンド部24は、当該ティーチング位置に移動せず、当該ティーチング位置からずれた位置に移動する。すなわち、ロボットハンド24によって保持された基板10を制御部25に記憶されたティーチング位置(待機位置および搬送位置)に移動させようとしても、基板がティーチング時に想定した位置に移動するのではなく、X、Y、Z、θ方向にずれた位置に移動するようになる。このような位置ずれによって、基板やマスクの搬送の過程で製造ラインの他の装置などとの衝突の可能性がさらに大きくなる。また、基板に対する処理(例えば、成膜)にも不具合が発生し得る。
【0059】
特に、基板の形状が円型である半導体基板とは違って、有機ELディスプレイに使われる矩形の基板の場合、Z軸を中心とした回転角方向(θ方向)においての基板の位置ずれは、成膜クラスタ1内の成膜プロセスに大きな影響を及ぼすため、ロボット14の衝突などによって回転角方向へのロボットハンド部24などの位置ずれが発生した場合、これを調整する必要性が大きい。
【0060】
従来技術では、このようにロボット14の衝突などの原因で、ロボットハンド部24などに位置ずれが発生し、ロボット14の搬送動作がティーチングの際に教示したものとは違う位置、また、違う軌道で行われていると判断されれば、成膜クラスタ1内のすべてのティーチング位置(待機位置及び搬入位置や搬出位置などの搬送位置)に対してティーチング作業を再び遂行していた。
【0061】
しかし、有機EL表示装置の製造ラインにおいて、ロボット14のティーチング位置は、ロボット14が設置された搬送室周辺に配置された処理室(成膜室)で基板及びマスクを載置する位置、マスクストックチャンバー12で使用前後のマスクが収納される位置、パス室15及びバッファ室16で基板を受け渡しする位置などの多数の位置を含むため、
各位置に対するティーチング作業に相当な時間がかかる。
【0062】
しかも、単位時間あたり、より多くの搬送動作を行うことができるようにロボット14が2つのロボットアーム23を有する場合もあり、それぞれのティーチング位置に対して、大気開放状態及び真空状態で別途にティーチングを行わなければならないため、大型の製造ラインにおいては、数十回に及ぶティーチング作業が必要になり、ティーチング作業に数十時間がかかり、この間製造ラインを止めざるを得なかった。
【0063】
そこで、本発明においては、ロボット14の衝突などの原因で、ロボット14、特に、ロボットハンド部24の位置ずれが発生した場合に、成膜クラスタ1内のすべてのティーチングの位置に対して再ティーチング作業を遂行するのではなく、所定位置(本実施例ではこれを原点位置といい、原点位置は、例えば、特定のチャンバー内の基板やマスクの搬送位置であってもよい)におけるロボットハンド部24の位置ずれ量を測定し、これをもとに他の複数のティーチング位置の位置情報を補正する手法を採用している。これによって、他の複数のティーチング位置に対するティーチング作業を省くことができ、再ティーチング作業にかかる時間を短縮することができる。
【0064】
これに用いられる本発明のロボットシステム30は、
図3に示すように、ロボット14、制御部25及び検出手段31を含む。
【0065】
ロボット14のロボットハンド部24には、ロボットハンド部24の回転角又はロボットハンド部24の回転角方向における位置ずれ量を測定するのに用いられるマーク部241が設けられる。ここで言う回転角とは、Z軸に平行でロボットハンド部24を貫く仮想軸線を中心とした回転角である。
【0066】
マーク部241は、ロボットハンド部24を貫く仮想軸線を中心とした回転角又は回転角方向(θ方向)においての位置ずれ量が測定できるように、ロボットハンド部24の長手方向(ロボットアーム部23との接続部からロボットハンド部24の自由端部に向かう方向)に沿って配置された複数のマークを含む。
図3(a)には、マーク部241が2つのマーク(第1マークおよび第2マーク)を有する構成を図示したが、本発明はこれに限定されず、3つ以上のマークを有してもよい。また、本発明は、複数のマークがロボットハンド部24の長手方向に沿った直線上に配置される構成に限定されず、複数のマーク間の変位がロボットハンド部24の長手方向に沿った成分を持てばよい。ただし、この場合、後述する検出手段31による画像処理がもっと複雑になることが考えられるので、複数のマークはロボットハンド部24の長手方向に沿った直線上に配置されることが好ましい。
【0067】
本実施例において、マーク部241のマークは、ロボットハンド部24に形成された+字標識であるが、本発明はこれに限らず、他の任意の形状のマークであってもよい。
【0068】
また、他の実施例として、本発明のマーク部は、
図3(b)に示すように、ロボットハンド部24の長手方向に沿って延びる線状マーク(
図3(b)中の線状マーク2412参照)であってもよい。
【0069】
このように、マーク部241として、ロボットハンド部24の長手方向(つまり、第2アーム232との連結部位からロボットハンド部24の自由端部に向かう方向)に沿って配置された複数のマーク、又はロボットハンド部24の長手方向に延びる線状マークを用いることで、ロボットハンド部24のX軸方向及びY軸方向における位置ずれ量だけでなく、ロボットハンド部24を貫く仮想軸線を中心とした回転角、又は回転角方向における位置ずれ量も測定できるようになる。この際、ロボットハンド部24を貫く仮想軸線を中
心としたロボットハンド部24の回転角は、複数のマーク(第1マークと第2マーク)を結ぶ線分又は線状マークが仮想基準線に対して成す角度によって測定される。ここで言う仮想基準線はロボットに対して仮想的に設定される直線であり、仮想基準線は仮想軸線と直交する直線である。典型的には、原点位置(所定位置)において位置ずれのない、理想的な状態のロボットハンド部24の複数のマーク(第1マークと第2マーク)を結ぶ線分又は線状マークを含む直線が、仮想基準線となる。
【0070】
図3には、ロボットハンド部24が1つのフィンガーからなる構成を図示したが、ロボットハンド部24は二股のフィンガーからなることもでき、この場合、マーク部241は、2つのフィンガーのいずれかに設けられる。
【0071】
本発明のロボットシステム30の検出手段31は、ロボットハンド部24のマーク部241を検出することにより、X軸方向、Y軸方向、及びロボットハンド部24を貫く仮想軸線を中心とする回転角方向におけるロボットハンド部24の位置ずれ量を測定できるようにする。
【0072】
検出手段31は、ロボットハンド部24が原点位置(例えば、パス室15内の基板搬出位置)に設置された状態で、マーク部241が検出できるように、原点位置においてマーク部241に対応する位置に設置される。例えば、原点位置がパス室15の基板搬出位置である場合、検出手段31は、パス室15の基板ステージの下方でマーク部241を検出できる位置に設置される。検出手段31として、後述するように、撮像用カメラ(撮像手段)を用いる場合には、パス室15の底面に透明窓を設けて、その外部に撮像用カメラを設置することができるが、本発明はこれに限定されず、パス室15内に撮像用カメラを設置してもよい。
【0073】
検出手段31は、例えば、マーク部241が複数の個別的なマークを含む場合、個別マークを撮影して個別マークの位置を検出できる複数の撮像用カメラ311であることが好ましいが、本発明はこれに限定されず、個別マークの位置を検出できるものであれば、他の手段であってもよい。
【0074】
このように、マーク部241を、ロボットハンド部24の長手方向に沿って配置される複数の個別マークで構成し、検出手段31をこれら個別マークの位置を計測できる複数のカメラで構成することにより、ロボットハンド24の回転角及び位置ずれ量、特に、回転角方向における位置ずれ量を測定することができる。
【0075】
つまり、衝突などによってロボット14に位置ずれが発生する前に(例えば、最初のティーチング作業の直後に)、ロボットハンド部24を原点位置に設置して、検出手段31によってマーク部241のそれぞれのマークを検出することにより、ロボットハンド部24が原点位置に設置された場合のロボットハンド部24の位置に関する情報(基準位置情報、第1情報)を得ることができる。特に、本発明においては、マーク部241がロボットハンド部24の長手方向に沿って配置された複数のマークを含むため、ロボットハンド部24を貫く仮想軸線を中心とする回転角方向における位置(回転角)を測定できるようになる。したがって、基準位置情報は、少なくともX軸方向、Y軸方向及びロボットハンド部24を貫く仮想軸線を中心とした回転角方向においてのロボットハンド24の位置に関する情報を含んでいる。これらの基準位置情報を制御部25の記憶部251に記憶しておく。ロボットハンド24のZ軸方向の位置に関する情報は、ロボットハンド24の下方にロボットハンド24から離隔して設けられた別途のレーザーセンサーや撮像用カメラによって測定可能である。
【0076】
その後、ロボット14の衝突などによって、位置ずれが発生した場合、ロボットハンド
部24を再び原点位置に設置するための制御を行い(このような制御を行っても、衝突などにより変形が生じた場合には、ロボットハンド部24は、衝突前の原点位置に移動できない)、検出手段31によってマーク部241のそれぞれのマークを再び検出することにより、衝突後における、複数のマークの位置情報を取得する。このように再取得した複数のマークの位置情報に基づいて、ロボットハンド部24の位置情報を再取得して、再取得したロボットハンド部24の位置情報(第2情報)を、記憶部251に記憶しておいた基準位置情報と比較することで、衝突の前後における、ロボットハンド部24のX軸方向、Y軸方向及びロボットハンド部24を貫く仮想軸線を中心とした回転角方向の位置ずれ量(ΔX、ΔY、Δθ)が得られる。ロボットハンド24のZ軸方向の位置ずれ量(ΔZ)も同様に、記憶部251に予め記憶しておいたZ軸方向の基準位置情報と、衝突後においてのZ軸方向の位置に関する情報を比較することで、得られる。
【0077】
すなわち、本発明では、ロボットハンド部24に位置ずれが発生する前に、ロボットハンド部24のマーク部241の位置を検出手段31によって検出して、ロボットハンド部24の基準位置を算出し、これを制御部25に予め記憶しておく。そして、ロボットハンド部24の衝突などによって位置ずれが発生した場合、ロボットハンド部24を再び原点位置に設置するための制御を行った後、マーク部241のずれた位置を検出手段31によって再び検出することにより、ロボットハンド部24のずれた位置を算出して、算出された位置と基準位置との差分に基づいて、ロボットハンド部24の位置ずれ量(ΔX、 ΔY、 Δθ)を算出する。
【0078】
一方、複数のマークに対応するように複数の検出手段31を設置して、検出手段31それぞれによってマークを検出することにより、マークの位置を特定する方法の代わりに、1つの検出手段31、例えば、複数のマークを撮影できる視野範囲を有する撮像用カメラで複数のマークを撮影して画像データを得た後、画像処理を通じて各マークの位置に関する情報を得ることもできる。
【0079】
このようなマーク部241の位置検出方法は、マーク部241がロボットハンド部24の長手方向に沿って延びる線状マーク2412の場合にも適用できる。
【0080】
例えば、
図3(b)に示すように、原点位置であるパス室15のティーチング位置の下方に、検出手段31として相対的に広い視野角を有するカメラ312を設置する。
【0081】
ロボットハンド部24を原点位置に設置した後、検出手段31であるカメラ312でロボットハンド部24に形成された線状マーク2412を撮影することで線状マークの撮像画像が得られる。得られた撮像画像に対して、制御部25の画像処理部(不図示)、又は制御部25とは別途に設けられた画像処理部による画像処理を行い、ロボットハンド部24のX軸方向、Y軸方向、及び回転角方向の位置を算出する。算出された位置情報をロボットハンド部24の基準位置の情報として制御部25の記憶部251に記憶しておく。
【0082】
衝突などによってロボットハンド部24に位置ずれが発生した場合、再度ロボットハンド部24を原点位置に設置するための制御を行った後、カメラ312でロボットハンド部24の線状マーク2412を撮影し、撮像画像の画像処理を行って、ロボットハンド部24の位置を再測定する。ロボットハンド部24の再測定された位置に関する情報と、メモリー部251に予め記憶された基準位置に関する情報と、に基づいて、ロボットハンド部24のX軸方向、Y軸方向、及び回転角方向の位置ずれ量(ΔX、ΔY、Δθ)を算出する。これによって、衝突の前後のロボットハンド部24の位置ずれ量が得られる。
【0083】
このように、1つのカメラ312によって得られたマーク部241の画像(複数のマークの画像、線状マークの画像)を画像処理して位置ずれ量を算出する場合、カメラ312
の視野範囲が後述するティーチング位置の調整可能範囲を決めることになる。つまり、視野範囲が広いカメラ312を使用することにより、搬送位置の調整可能範囲を広くすることができる。
【0084】
本実施例では、成膜クラスタ1内の複数のティーチング位置のうち、パス室15の基板搬出位置を、ロボットハンド部24の位置ずれ量を測定するための原点位置とした。これは通常、成膜クラスタ1内の多数のティーチング位置のうち、パス室15の搬送位置がロボット14のシャフト部22から最も遠く離れた位置であり(すなわち、ロボットアーム部23及びロボットハンド部24が最も伸びた状態に対応する位置であり)、ロボットハンド部24の衝突による位置ずれ量が最も大きい位置になるからである。また、パス室15の場合、チャンバーの下部に蒸発源が設置される成膜室11と異なり、基板ステージの下方に検出手段31を設置することが容易になる長所もある。
【0085】
ただし、本発明の原点位置は、パス室15の基板搬出位置に限定されず、他のチャンバー(例えば、成膜室、バッファ室、マスクストックチャンバー)内の搬送位置であってもよく、搬送室内の位置(例えば、搬送室内の待機位置)のいずれか1つであってもよい。原点位置を搬送室内の複数の待機位置のいずれか1つにすることで、検出手段31の設置がより容易になる。さらに、本発明の原点位置は、成膜クラスタ1のティーチング位置でない第3の位置であってもよい。
【0086】
このように、本発明によると、ロボットハンド部に、ロボットハンド部の長手方向に沿って形成された複数のマーク、又はロボットハンド部の長手方向に沿って延びる線状マークをカメラなどの検出手段で検出することにより、ロボットハンド部の衝突などによって発生した、ロボットハンド部の所定位置における位置ずれ量(特に、ロボットハンド部24を貫く仮想軸線を中心とした回転角方向における位置ずれ量)を計測し、計測された位置ずれ量に基づいて、搬送動作の他の複数のティーチング位置(待機位置及び搬送位置)に関する情報のうち、少なくとも2つの搬送位置に関する情報を補正する。これによって、他の複数のティーチング位置に対する再ティーチング作業を行なわず、ティーチング位置の確認作業だけで装置を再稼動できるようになり、再ティーチングにかかる時間を大幅に短縮することができるようになる。
【0087】
<ティーチング位置の調整方法及びデバイス製造方法>
以下、ロボットハンド部24の、原点位置における位置ずれ量に基づいて、成膜クラスタ1内の他の複数のティーチング位置を調整する方法、及びこれを用いて有機EL表示装置のようなデバイスを製造する方法について説明する。
【0088】
まず、基板10が搬送されるべき複数のティーチング位置(搬送位置及び待機位置)がロボット14にティーチングされる。すなわち、複数の搬送位置及び待機位置の位置情報が、ティーチング位置情報として制御部25の記憶部251に記憶される(S1)。
【0089】
ロボット14のロボットハンド部24が、複数のティーチング位置中の1つである原点位置に設置される(S2)。そして、ロボットハンド部24のマーク部241が検出手段31によって検出され、その検出結果に基づいて算出されたロボットハンド部24の位置情報がロボットハンド部24の基準位置情報(第1情報)として制御部25の記憶部251に記憶される(S3)。
【0090】
以降、搬送過程で成膜クラスタ1の他の部分との衝突などにより、ロボット14に生じた変形などによってロボットハンド部24に位置ずれが発生した場合、その位置ずれ量を測定するため、ロボットハンド部24を原点位置に再び設置するための制御を行う(S4)。つまり、ロボット14の駆動部に原点位置の情報を入力する。しかし、衝突などによ
り生じた変形などによって、ロボットハンド部24は、衝突前の原点位置に移動できず、衝突前の原点位置からずれた位置に移動することになる。その衝突前の原点位置からずれた位置に移動したロボットハンド部24の位置が、ロボットハンド部24のマーク部241が検出手段31により検出されることによって、再び測定される(S5)。
【0091】
制御部25は、ロボットハンド部24の再測定された位置に関する情報と、制御部25の記憶部251に予め記憶されていた基準位置に関する情報から、衝突の前後のロボットハンド部24の位置ずれ量を算出する。本発明の構成によると、X軸方向(第1方向)、Y軸方向(第2方向)の位置ずれ量だけでなく、θ方向(回転角方向)の位置ずれ量も測定できるようになる。同様に、ロボットハンド24のZ軸方向の位置ずれ量も測定される。
【0092】
制御部25は、測定された位置ずれ量をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向、及びθ方向それぞれに対して予め定められた所定の閾値と比較する。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、及びθ方向のいずれかの方向においての位置ずれ量が該当方向の所定の閾値を超えると判定されれば、制御部25は、当該方向における位置ずれ量に基づいて、記憶部251に記憶されている複数のティーチング位置に対する位置情報のうち、少なくとも2つの搬送位置に関する情報を補正する。
【0093】
例えば、制御部25によって算出された該当方向の位置ずれ量を他のティーチング位置の該当方向の位置情報に加算したり、減算したりして該当ティーチング位置の位置情報を補正する。
【0094】
すべてのティーチング位置に対する位置情報が補正されれば、ロボット14を補正されたティーチング位置に基づいて、動作させてみることで、ティーチング位置の補正によってロボットハンド部24が成膜クラスタ1の他の部分と衝突なく目標位置にきちんと移動できるかを確認する。ロボット14が問題なく複数のティーチング位置への搬送動作を行うことができることが確認されれば、ロボット14による基板やマスクの搬送を再開する。
【0095】
このように、本発明のティーチング位置調整方法によると、ロボット14に成膜クラスタ1の他の部分と衝突などが起きた後に、複数のティーチング位置のすべてに対して、ティーチング作業を遂行する代わりに、原点位置におけるロボットハンド部24の位置ずれ量だけを測定し、他のティーチング位置に対する補正を行う。これにより、ロボット14の衝突後の再ティーチング作業にかかる時間を大幅に短縮することができるようになる。
【0096】
本実施例では、衝突などによってロボットハンド部24に位置ずれが発生した場合に、ロボットハンド部24を原点位置に設置するための制御を行った後、マーク部241の位置を再測定すると説明したが、本発明はこれに限定されず、衝突などが起きなくても、一定時間以上ロボット14が使われた後に、ロボットハンド部24を原点位置に設置するための制御を行った後、ロボットハンド部24の位置を再測定してもよい。これによって、ロボット14の継続的な使用による関節部などの変形によって、ロボット14の成膜クラスタ1の他の部分と衝突することを未然に防止することができるようになる。
【0097】
上記実施例は、本発明の一例を示したものに過ぎず、本発明は上記実施例の構成に限定されず、本技術思想の範囲内で適宜に変形してもよい。また、本発明は、上述の実施例の1以上の機能を実現するプログラム(ソフトウェア)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読み出して実行する処理において、そのプログラム、及び該プログラムを格納するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体によって構成されても
よい。
【符号の説明】
【0098】
1: 成膜クラスタ
11: 成膜室(処理室)
12: マスクストックチャンバー
13: 搬送室
14: ロボット
15: パス室
16: バッファ室
22: シャフト部
23: ロボットアーム部
24: ロボットハンド部
25: 制御部
31: 検出手段
241: マーク部