(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】リチウム二次電池の電解質用添加剤、リチウム二次電池用電解質およびそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20231113BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231113BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20231113BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20231113BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20231113BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231113BHJP
C07C 317/28 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M4/525
H01M4/38 Z
H01M4/587
H01M4/36 A
H01M4/36 E
C07C317/28
(21)【出願番号】P 2022535187
(86)(22)【出願日】2021-01-20
(86)【国際出願番号】 KR2021000802
(87)【国際公開番号】W WO2021194074
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】10-2020-0035649
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オルガ・ツァイ
(72)【発明者】
【氏名】スジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒョンボン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンヘ・カン
(72)【発明者】
【氏名】ジン-ヒョク・イム
(72)【発明者】
【氏名】ミュンファン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ウォンソク・チョ
(72)【発明者】
【氏名】パヴェル・シャトゥノフ
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-146558(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0005369(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0567
H01M 10/052
H01M 4/525
H01M 4/38
H01M 4/587
H01M 4/36
C07C 317/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物を含む、リチウム二次電池の電解質用添加剤。
【化1】
(前記化学式1において、
R
1は置換または非置換された
C1~C5アルキル基またはイソシアネート基であり、
Lは置換または非置換された
C1~C5アルキレン基、置換または非置換された
C2~C6アルケニレン基であり、
nは0
または1である。)
【請求項2】
前記添加剤は下記化学式1aまたは下記化学式1bである、請求項1に記載のリチウム二次電池の電解質用添加剤。
【化2】
【化3】
【請求項3】
非水性有機溶媒;
リチウム塩;および
下記化学式1で表される添加剤を含む、リチウム二次電池用
電解液。
【化4】
(前記化学式1において、
R
1は置換または非置換された
C1~C5アルキル基またはイソシアネート基であり、
Lは置換または非置換された
C1~C5アルキレン基、置換または非置換された
C2~C6アルケニレン基であり、
nは0
または1である。)
【請求項4】
前記添加剤の含有量は前記
電解液全体含有量100重量%に対して0.1重量%~3重量%である、請求項3に記載のリチウム二次電池用
電解液。
【請求項5】
前記添加剤の含有量は前記
電解液全体含有量100重量%に対して0.3重量%~2重量%である、請求項3に記載のリチウム二次電池用
電解液。
【請求項6】
前記添加剤は下記化学式1aまたは下記化学式1bである、請求項3に記載のリチウム二次電池用
電解液。
【化5】
【化6】
【請求項7】
前記リチウム二次電池用
電解液はフルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、スクシノニトリル、ヘキサントリシアニド、LiBF
4、またはこれらの組み合わせである追加-添加剤をさらに含むものである、請求項3に記載のリチウム二次電池用
電解液。
【請求項8】
前記追加-添加剤の含有量は前記
電解液全体100重量%に対して、0.1重量%~10重量%である、請求項7に記載のリチウム二次電池用
電解液。
【請求項9】
正極活物質を含む正極;
負極活物質を含む負極;および
請求項3ないし8のいずれか一項に記載の
電解液を含む、リチウム二次電池。
【請求項10】
前記正極活物質は下記化学式4で表される、請求項9に記載のリチウム二次電池。
[化学式4]
Li
xNi
yCo
zAl
1-y-zO
2
(前記化学式4において、
1≦x≦1.2,0.5≦y≦1,0≦z≦0.5)
【請求項11】
前記負極活物質はSi系活物質および炭素系活物質を含むSi-C複合体を含む、請求項9に記載のリチウム二次電池。
【請求項12】
前記負極活物質は結晶質炭素をさらに含むものである、請求項11に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リチウム二次電池の電解質用添加剤、リチウム二次電池用電解質およびそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は放電電圧が高く、エネルギ密度が高いため、多様な電子機器の電源として注目を浴びている。
【0003】
リチウム二次電池の正極活物質としてはLiCoO2、LiMn2O4、LiNi1-xCoxO2(0<x<1)等のようにリチウムイオンのインターカレーションが可能な構造を有するリチウムと遷移金属からなる酸化物が主に使用される。
【0004】
負極活物質としてはリチウムの挿入/脱離が可能な人造、天然黒鉛、ハードカーボンを含む多様な形態の炭素系材料が主に使用されている。
【0005】
リチウム二次電池の電解質としてはリチウム塩が溶解した有機溶媒が使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一実施形態は、電池抵抗を減少させ得る、特に高温貯蔵時の電池抵抗の増加を抑制して電池性能を向上させることができ、常温でのサイクル寿命特性を向上させることができるリチウム二次電池の電解質用添加剤を提供することにある。
【0007】
他の一実施形態は、前記添加剤を含むリチウム二次電池用電解質を提供することにある。
【0008】
また他の一実施形態は、前記電解質を含むリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態によれば、下記化学式1で表される化合物を含むリチウム二次電池の電解質用添加剤を提供する。
【0010】
【0011】
(前記化学式1において、
R1は置換または非置換されたアルキル基またはイソシアネート基であり、
Lは置換または非置換されたアルキレン基、置換または非置換されたアルケニレン基であり、
nは0~10の整数の一つである。)
【0012】
前記添加剤は下記化学式1aまたは下記化学式1bであり得る。
【0013】
【0014】
【0015】
他の一実施形態によれば、非水性有機溶媒;リチウム塩;および前記化学式1で表される添加剤を含むリチウム二次電池用電解質を提供する。
【0016】
前記添加剤の含有量は、前記電解質全体含有量100重量%に対して0.1重量%~3重量%であり得、一実施形態によれば、0.3重量%~2重量%でもあり得る。
【0017】
前記リチウム二次電池用電解質は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、スクシノニトリル(SN)、ヘキサントリシアニド、LiBF4、またはこれらの組み合わせである追加-添加剤をさらに含み得る。
【0018】
前記追加-添加剤の含有量は前記電解質全体100重量%に対して、0.1重量%~10重量%であり得る。
【0019】
他の一実施形態は、正極活物質を含む正極;負極活物質を含む負極;および前記電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0020】
前記正極活物質は下記化学式4で表されるものであり得る。
[化学式4]
LixNiyCozAl1-y-zO2
(前記化学式4において、1≦x≦1.2,0.5≦y≦1,0≦z≦0.5)
前記負極活物質はSi系活物質および炭素系活物質を含むSi-C複合体を含み得る。また、前記負極活物質は結晶質炭素をさらに含み得る。
【0021】
その他実施形態の具体的な内容は以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池の添加剤は、電池抵抗を減少させ得る、特に高温貯蔵時の電池抵抗の増加を抑制して電池性能を向上させることができ、常温でのサイクル寿命特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施形態によるリチウム二次電池を簡略に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものであり、本発明はこれによって制限されるものではなく、本発明は後述する特許請求の範囲の範疇によってのみ定義される。
【0025】
一実施形態は下記化学式1で表される化合物を含むリチウム二次電池の添加剤を提供する。
【0026】
【0027】
前記化学式1において、R1は置換または非置換されたアルキル基またはイソシアネート基であり、
Lは置換または非置換されたアルキレン基、置換または非置換されたアルケニレン基であり、
nは0~10の整数の一つである。
【0028】
一実施形態で、前記置換されたアルキル基、置換されたアルキレン基または置換されたアルケニレン基であり、置換基は、アルキル基、ハロゲン基、芳香族基であり得る。
【0029】
前記アルキル基はC1~C5アルキル基であり得る。
【0030】
また、前記アルキレン基はC1~C5アルキレン基であり得、前記アルケニレン基はC2~C6アルケニレン基であり得る。アルキレン基およびアルケニレン基で炭素数が前記範囲に含まれる場合、向上した高温貯蔵特性を示すことができる。
【0031】
一実施形態で、前記化学式1の添加剤の具体的な例としては下記化学式1aまたは下記化学式1bが挙げられる。
【0032】
【0033】
【0034】
このような化学式1の添加剤を含む電解質を使用する電池を貯蔵時、特に高温で貯蔵時、負極表面での非水性有機溶媒の還元分解を効果的に抑制することができる。これは前記化学式1の添加剤が一般的に負極に化学吸着されている(chemisorbed)酸素基と反応したりまたは高温でも非常に堅固で(robust)、安定したSEI膜を形成できるからであると考えられる。
【0035】
また、イソシアネート(-NCO)基を含む添加剤を含む電解質を使用することによって、イソシアネート(-NCO)基の電気化学重合がポリアミド類似(polyaminde-like)SEI成分を引き起こし、緻密で安定したSEI膜を形成することができ、そのため、電解質非水性有機溶媒の追加的な還元を抑制することができ、電解質との副反応を抑制できるので、抵抗が低いSEI膜を形成することができ、電池内部の抵抗を減少させることができる。
【0036】
さらに、イソシアネート添加剤は電解質に存在し得る酸性HF不純物および水を除去(scavenge)することができ、水が少量でも存在する場合、LiPF6が加水分解されて酸性HFを排出することができ、このHFがSEI成分を分解させて、正極活物質を溶解させる問題を防止することができ、サイクル寿命特性およびセルインピーダンスを向上させる効果が得られる。
【0037】
さらに、前記化学式1のように、スルホニル基およびイソシアネート基をすべて含む添加剤を電解質に使用する場合、高温貯蔵安定性およびサイクル安定性のような電池特性を向上させることができる。
【0038】
このように、前記化学式1の添加剤はイソシアネート基(NCO)を一つ以上含み、スルホニル基(SO2)を含み、このようなイソシアネート基とスルホニル基が連結基であるLを媒介として結合されている化合物であって、特に、イソシアネート基とスルホニル基が連結基であるLを媒介として結合されており、より優れた電池抵抗増加の抑制およびサイクル寿命特性の向上効果を得ることができる。仮に、イソシアネート基またはスルホニル基だけを含む場合には、高温貯蔵安定性およびサイクル安定性の電池特性をすべて向上させることは難しく、また、イソシアネート基とスルホニル基をすべて含んでも、イソシアネート基とスルホニル基が直接結合されている場合は、この化合物が反応性が大きすぎて、負極の分解が激しく、負極および正極の表面に過度に厚い膜を形成させ得るため適切ではない
【0039】
他の一実施形態は、非水性有機溶媒、リチウム塩および前記化学式1で表される添加剤を含むリチウム二次電池用電解質を提供する。
【0040】
一実施形態で、前記添加剤の含有量は、前記電解質全体重量に対して0.1重量%~3重量%であり得、0.3重量%~2重量%でもあり得る。前記添加剤の含有量が前記範囲に含まれる場合、電池抵抗の減少、特に高温貯蔵時の抵抗増加を効果的に抑制することができ、電池性能をより効果的に向上させることができ、常温でのサイクル寿命特性の向上効果をより一層増大させることができる。仮に、添加剤の含有量が0.1重量%未満の場合には、電池抵抗の減少およびサイクル寿命特性の向上効果が多少微小であり、3重量%を超えると電極に過度に被膜が形成されるので、高温貯蔵特性などの電池特性が低下し得る。
【0041】
前記電解質は前記添加剤を第1添加剤として含み、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、スクシノニトリル、ヘキサントリシアニド、LiBF4、またはこれらの組み合わせである追加-添加剤、すなわち、第2添加剤をさらに含み得る。前記追加-添加剤(第2添加剤)をさらに含む場合、負極表面により堅固な被膜を形成し、正極界面を安定化して付随的な電解液分解をよりうまく防止することができる。前記追加-添加剤(第2添加剤)をさらに含む場合、追加-添加剤(第2添加剤)の含有量は前記電解質全体重量に対して0.1重量%~10重量%であり得る。追加-添加剤(第2添加剤)を前記範囲の量で含む場合、第2添加剤の使用に伴う効果をより好適に得ることができる。仮に、前記追加-添加剤(第2添加剤)を前記含有量より過量使用する場合は抵抗を過度に増加させて充放電サイクルが行われる間、電池劣化の問題を発生させ得る。前記追加-添加剤(第2添加剤)として、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、スクシノニトリル(SN)、ヘキサントリシアニドまたはLiBF4を混合して使用する場合、これらの混合比は適宜に調節でき、限定する必要はない。
【0042】
前記非水性有機溶媒は電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割をする。
【0043】
前記非水性有機溶媒としてはカーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非プロトン性溶媒を使用することができる。
【0044】
前記カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)等が使用できる。前記エステル系溶媒としてはメチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、t-ブチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)等が使用できる。
【0045】
前記エーテル系溶媒としてはジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどが使用でき、前記ケトン系溶媒としてはシクロヘキサノンなどが使用できる。
【0046】
前記アルコール系溶媒としてはエチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが使用でき、前記非プロトン性溶媒としてはT-CN(Tは炭素数2~20の直鎖状、分枝状、または環状構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含み得る)等のニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン(sulfolane)類などが使用できる。
【0047】
前記非水性有機溶媒は単独でまたは一つ以上混合して使用できる。一つ以上混合して使用する場合の混合比率は目的とする電池性能に応じて適宜調節することができ、これは当業者に広く理解されることができる。
【0048】
また、前記カーボネート系溶媒の場合、環状(cyclic)カーボネートと鎖状(chain)カーボネートを混合して使用した方が良い。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは1:1~1:9の体積比で混合して使用することが優れた電解液の性能を現す。
【0049】
前記非水性有機溶媒は前記カーボネート系溶媒に芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含むこともできる。この時、前記カーボネート系溶媒と芳香族炭化水素系有機溶媒は1:1~30:1の体積比で混合され得る。
【0050】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒としては下記化学式2の芳香族炭化水素系化合物が使用できる。
【0051】
【0052】
(前記化学式2において、R9~R14は互いに同一または異なり水素、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、ハロアルキル基およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである。)
【0053】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒の具体的な例としては、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジフルオロベンゼン、1,2,3-トリフルオロベンゼン、1,2,4-トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、ヨードベンゼン、1,2-ジヨードベンゼン、1,3-ジヨードベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1,2,3-トリヨードベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、2,3-ジフルオロトルエン、2,4-ジフルオロトルエン、2,5-ジフルオロトルエン、2,3,4-トリフルオロトルエン、2,3,5-トリフルオロトルエン、クロロトルエン、2,3-ジクロロトルエン、2,4-ジクロロトルエン、2,5-ジクロロトルエン、2,3,4-トリクロロトルエン、2,3,5-トリクロロトルエン、ヨードトルエン、2,3-ジヨードトルエン、2,4-ジヨードトルエン、2,5-ジヨードトルエン、2,3,4-トリヨードトルエン、2,3,5-トリヨードトルエン、キシレン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである。
【0054】
前記リチウム二次電池用電解質は電池寿命を向上させるために、下記化学式3のエチレンカーボネート系化合物を寿命向上添加剤としてさらに含むこともできる。
【0055】
【0056】
(前記化学式3において、R15およびR16はそれぞれ独立して水素、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO2)およびフッ素化された炭素数1~5のアルキル基からなる群より選ばれ、前記R15およびR16の少なくとも一つはハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO2)およびフッ素化された炭素数1~5のアルキル基からなる群より選ばれ、ただR15およびR16はいずれも水素ではない。)
【0057】
前記エチレンカーボネート系化合物の代表的な例としては、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、またはシアノエチレンカーボネートなどが挙げられる。このような寿命向上添加剤をさらに使用する場合、その使用量は適宜調節することができる。
【0058】
前記リチウム塩は有機溶媒に溶解し、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極の間のリチウムイオンの移動を促進する役割をする物質である。このようなリチウム塩の代表的な例としては、LiPF6、LiSbF6、LiAsF6、LiPO2F2、LiN(SO2C2F5)2、Li(CF3SO2)2N、LiN(SO3C2F5)2、Li(FSO2)2N(リチウムビスフルオロスルホニルイミド(lithium bis(fluorosulfonyl)imide:LiFSI)、LiC4F9SO3、LiClO4、LiAlO2、LiAlCl4、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)(ここで、xおよびyは自然数であり、例えば1~20の整数である)、リチウムジフルオロビスオキサラトホスフェート(lithium difluoro(bisoxolato) phosphate)、LiCl、LiI、LiB(C2O4)2(リチウムビスオキサラトボレート(lithium bis(oxalato) borate:LiBOB)およびリチウムジフルオロ(オキソラト)ボレート(LiDFOB)からなる群より選ばれる一つまたは二つ以上を支持(supporting)電解塩として含む。リチウム塩の濃度は0.1M~2.0M範囲内で使用した方が良い。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度および粘度を有するので優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0059】
他の一実施形態は、前記電解質、正極および負極を含むリチウム二次電池を提供する。
前記正極は電流集電体およびその電流集電体に形成され、正極活物質を含む正極活物質層を含む。
【0060】
前記正極活物質層から、正極活物質としてはリチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物(リチエイテッドインターカレーション化合物)を使用することができ、具体的にはコバルト、マンガン、ニッケル、およびこれらの組み合わせから選択される金属とリチウムとの複合酸化物のうち1種以上のものを使用することができる。より具体的な例としては下記化学式のいずれか一つで表される化合物を使用することができる。LiaA1-bXbD2(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5);LiaA1-bXbO2-cDc(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05);LiaE1-bXbO2-cDc(0≦b≦0.5,0≦c≦0.05);LiaE2-bXbO4-cDc(0≦b≦0.5,0≦c≦0.05);LiaNi1-b-cCobXcDα(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.5,0<α≦2);LiaNi1-b-cCobXcO2-αTα(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.5,0<α<2);LiaNi1-b-cCobXcO2-αT2(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.5,0<α<2);LiaNi1-b-cMnbXcDα(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.5,0<α≦2);LiaNi1-b-cMnbXcO2-αTα(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.5,0<α<2);LiaNi1-b-cMnbXcO2-αT2(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.5,0<α<2);LiaNibEcGdO2(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.9,0≦c≦0.5,0.001≦d≦0.1);LiaNibCocMndGeO2(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.9,0≦c≦0.5,0≦d≦0.5,0.001≦e≦0.1);LiaNiGbO2(0.90≦a≦1.8,0.001≦b≦0.1)LiaCoGbO2(0.90≦a≦1.8,0.001≦b≦0.1);LiaMn1-bGbO2(0.90≦a≦1.8,0.001≦b≦0.1);LiaMn2GbO4(0.90≦a≦1.8,0.001≦b≦0.1);LiaMn1-gGgPO4(0.90≦a≦1.8,0≦g≦0.5);QO2;QS2;LiQS2;V2O5;LiV2O5;LiZO2;LiNiVO4;Li(3-f)J2(PO4)3(0≦f≦2);Li(3-f)Fe2(PO4)3(0≦f≦2);LiaFePO4(0.90≦a≦1.8)
【0061】
前記化学式において、AはNi、Co、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;XはAl、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;DはO、F、S、P、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;EはCo、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;TはF、S、P、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;GはAl、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;QはTi、Mo、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;ZはCr、V、Fe、Sc、Y、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;JはV、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0062】
もちろんこの化合物の表面にコート層を有することも使用でき、または前記化合物とコート層を有する化合物を混合して使用することもできる。このコート層はコーティング元素のオキシド、コーティング元素のヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネートおよびコーティング元素のヒドロキシカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも一つのコーティング元素化合物を含み得る。これらのコート層をなす化合物は非晶質または結晶質であり得る。前記コート層に含まれるコーティング元素としてはMg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはこれらの混合物を使用することができる。コート層形成工程は前記化合物にこのような元素を使用して正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えばスプレーコーティング、浸漬法など)でコートできればいかなるコーティング方法を用いてもよく、これについは当該分野に当業者によく理解されることができる内容であるから詳しい説明は省略する。
【0063】
一実施形態によれば、前記正極活物質は下記化学式4で表され得る。
[化学式4]
LixNiyCozAl1-y-zO2
(前記化学式4において、1≦x≦1.2,0.5≦y≦1,0≦z≦0.5)
正極活物質として前記化学式4の活物質を使用する場合、抵抗増加の問題が発生し得るが、一実施形態による化学式1の添加剤を含む電解質と共に使用する場合、抵抗増加を効果的に抑制することができる。
【0064】
前記正極で、前記正極活物質の含有量は正極活物質層の全体重量に対して90重量%~98重量%であり得る。
【0065】
一実施形態において、前記正極活物質層はバインダおよび導電材をさらに含み得る。この時、前記バインダおよび導電材の含有量は正極活物質層の全体重量に対してそれぞれ1重量%~5重量%であり得る。
【0066】
前記バインダは正極活物質粒子を互いによく付着させ、また、正極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たし、その代表的な例としてはポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロライド、カルボキシル化されたポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンゴム、アクリレーティッドスチレン-ブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0067】
前記導電材は電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず電子伝導性材料であればいかなるものでも使用可能である。導電材の例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料が挙げられる。
【0068】
前記電流集電体としてはアルミニウム箔、ニッケル箔またはこれらの組み合わせを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0069】
前記負極は電流集電体およびこの電流集電体に形成され、負極活物質を含む負極活物質層を含む。
【0070】
前記負極活物質としてはリチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションできる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質または遷移金属酸化物を使用することができる。
【0071】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションできる物質としては、例えば炭素物質、すなわちリチウム二次電池において一般的に使用される炭素系負極活物質が挙げられる。炭素系負極活物質の代表的な例としては結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらを共に使用することができる。前記結晶質炭素の例としては無定形、板状、鱗片状(flake)、球形または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としてはソフトカーボン(soft carbon)またはハードカーボン(hard carbon)、メソフェースピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0072】
前記リチウム金属の合金としてはリチウムと、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnからなる群より選択される金属の合金が使用できる。
【0073】
前記リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質としてはSi、SiOx(0<x<2)、Si-Q合金(前記Qはアルカリ金属、アルカリ土金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Siではない)、Si-炭素複合体、Sn、SnO2、Sn-R合金(前記Rはアルカリ金属、アルカリ土金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Snではない)、Sn-炭素複合体などが挙げられ、また、これらのうち少なくとも一つとSiO2を混合して使用することもできる。前記元素QおよびRとしてはMg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0074】
前記遷移金属酸化物としてはリチウムチタン酸化物を使用することができる。
【0075】
一実施例による負極活物質はSi系活物質および炭素系活物質を含むSi-C複合体を含み得る。
【0076】
前記Si系活物質はSi、SiOx(0<x<2)、Si-Q合金(前記Qはアルカリ金属、アルカリ土金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Siではない)またはこれらの組み合わせであり得る。
【0077】
前記Si系活物質の平均粒径は50nm~200nmであり得る。
【0078】
前記Si系活物質の平均粒径が前記範囲に含まれる場合、充放電時に発生する体積膨張を抑制することができ、充放電時の粒子破砕による伝導性経路(conductive path)の断絶を防止することができる。
【0079】
前記Si系活物質は前記Si-C複合体の全体重量に対して1~60重量%で含まれ得、例えば3~60重量%で含まれ得る。
【0080】
他の一実施例による負極活物質は前述したSi-C複合体とともに結晶質炭素をさらに含み得る。
【0081】
前記負極活物質がSi-C複合体および結晶質炭素を共に含む場合、前記Si-C複合体および結晶質炭素は混合物の形態で含まれ得、この場合、前記Si-C複合体および結晶質炭素は1:99~50:50の重量比で含まれ得る。より具体的には前記Si-C複合体および結晶質炭素は5:95~20:80の重量比で含まれ得る。
【0082】
前記結晶質炭素は例えば黒鉛を含み得、より具体的には天然黒鉛、人造黒鉛またはこれらの混合物を含み得る。
【0083】
前記結晶質炭素の平均粒径は5μm~30μmであり得る。
【0084】
本明細書で、平均粒径は累積分布曲線(cumulative size-distribution curve)で体積比として50%での粒子の大きさ(D50)であり得る。
【0085】
前記Si-C複合体はSi-C複合体の表面を囲むシェルをさらに含み得、前記シェルは非晶質炭素を含み得る。前記シェルの厚さは5nm~100nmであり得る。
【0086】
前記非晶質炭素はソフトカーボン、ハードカーボン、メソフェースピッチ炭化物、焼成されたコークスまたはこれらの混合物を含み得る。
【0087】
前記非晶質炭素は炭素系活物質100重量部に対して1重量部~50重量部、例えば5重量部~50重量部、または10重量部~50重量部で含まれ得る。
【0088】
負極活物質として前記Si-C複合体を使用する場合、抵抗増加の問題が発生し得るが、一実施形態による化学式1の添加剤を含む電解質と共に使用する場合、抵抗増加をより効果的に抑制することができる。
【0089】
前記負極活物質層は負極活物質とバインダを含み、選択的に導電材をさらに含み得る。
【0090】
前記負極活物質層における負極活物質の含有量は負極活物質層の全体重量に対して95重量%~99重量%であり得る。前記負極活物質層からバインダの含有量は負極活物質層の全体重量に対して1重量%~5重量%であり得る。また、導電材をさらに含む場合には負極活物質を90重量%~98重量%、バインダを1~5重量%、導電材を1重量%~5重量%使用することができる。
【0091】
前記バインダは負極活物質粒子を互いによく付着させて、また、負極活物質を電流集電体によく付着させる役割をする。前記バインダとしては非水溶性バインダ、水溶性バインダまたはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0092】
前記非水溶性バインダとしては、エチレンプロピレン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリビニルクロライド、カルボキシル化されたポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0093】
前記水溶性バインダとしては、スチレン-ブタジエンゴム、アクリレーティッドスチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコールまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0094】
前記負極バインダとして水溶性バインダを使用する場合、粘性を付与できるセルロース系化合物を増粘剤としてさらに含み得る。このセルロース系化合物としてはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して使用することができる。前記アルカリ金属としてはNa、KまたはLiを使用することができる。このような増粘剤の使用含有量は負極活物質100重量部に対して0.1重量部~3重量部であり得る。
【0095】
前記導電材は電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性材料であればいかなるものも使用可能である。導電材の例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、デンカブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料が挙げられる。
【0096】
前記集電体としては銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタニウム箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコートされたポリマー基材、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0097】
前記正極活物質層および負極活物質層は活物質、バインダおよび選択的に導電材を溶媒の中で混合して活物質組成物を製造し、この活物質組成物を電流集電体に塗布して形成する。このような活物質層の形成方法は当該分野に広く知られている内容であるから本明細書での詳細な説明は省略する。前記溶媒としてはN-メチルピロリドンなどを使用できるが、これに限定されるものではない。また、負極活物質層に水溶性バインダを使用する場合、負極活物質組成物の製造時に使用される溶媒として水を使用することができる。
【0098】
また、リチウム二次電池の種類によって正極と負極の間にセパレータが存在し得る。このようなセパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライドまたはこれらの2層以上の多層膜が使用でき、ポリエチレン/ポリプロピレン2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレン3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層セパレータなどのような混合多層膜が使用できることはもちろんである。
【0099】
図1に本発明の一実施形態によるリチウム二次電池の分解斜視図を示した。一実施形態によるリチウム二次電池は円筒型電池であることを例として説明するが、本発明はこれに制限されるものではなく、パウチ型、角型など多様な形態の電池に適用することができる。
【0100】
図1を参照すると、一実施形態によるリチウム二次電池100は正極114、正極114と対向して位置する負極112、正極114と負極112の間に配置されているセパレータ113および正極114、負極112およびセパレータ113を含浸する電解液(図示せず)を含む電池組立体と、前記電池組立体を収納している電池容器120および前記電池容器120を密封する密封部材140を含む。
【0101】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。しかし、下記した実施例は本発明の一実施例であり、本発明は下記した実施例に限定されるものではない。
【0102】
(製造例1)化学式1aのジメチルスルホンジイソシアネート(dimethylsulfone diisocyanate)の製造
ジメチルチオジグリコレート(dimethyl thiodiglycolate)をTetrahedron 2004,10671に記載された下記方法により製造した。
【0103】
500ml丸底フラスコで、チオジグリコール酸(thiodiglycolic acid、50g、0.333mol)を乾燥メタノール(125ml)に溶解し、ここに濃い硫酸(5ml)を滴加した。得られた混合物を24時間の間還流した。還流生成物から、過量のメタノールを蒸発させて除去し、残留物をエチルアセテートの中ら得た後、飽和重炭酸ナトリウム(sodium bicarbonate)溶液で水性層が中性になるまで洗浄した。有機層を分離して得た後、硫酸ナトリウム(sodium sulfate)下で乾燥した後、溶媒を攪拌蒸発器で除去し、明るい黄色液体であるジメチルチオジグリコレートを得た(50.5g、85%)。
【0104】
製造されたジメチルチオジグリコレート30g(0.168mol)を酢酸165mlに添加し、次に、ここに30%過酸化水素38gを常温で滴加して添加した。得られた混合物を45℃で一晩加熱し、酢酸をロータリーエバポレータ(rotary evaporator)で除去した。得られた固体残留物をガラスフィルタで排出させて、エーテルで洗浄して乾燥した(30g、85%)。
【0105】
得られた乾燥生成物であるジエステル(4g、0.02mol)を40℃で同じ体積のn-ブタノールおよびエタノール(60ml)の混合物に溶解し、ここにヒドラジン水和物溶液(3.75g、0.06mol)を添加した。得られた混合物を45分間還流した後、0℃で冷却して、濾過および乾燥してスルホニルジ酢酸のジヒドラジド(dihydrazide of sulfonlyldiacetic acid)を得た。得られたジヒドラジドを1M HCl/CHCl3の二相溶液(60/60ml)に溶解し、ここにNaNO2(20ml H2O中に3.9g)水溶液を0℃で滴加添加した。得られた反応混合物を10分間攪拌した後、有機層を分離して、水層をCHCl3で抽出した。分離された有機層である複合有機抽出物をMgSO4上および0℃で乾燥させて濾過した。
【0106】
濾過工程で得られたジアセチルアジドCHCl3溶液を、45℃で発生するN2が観察されるまで徐々に加熱した。反応混合物を約50℃で1時間の間保管した後、徐々に加熱して還流させた(約65℃)。還流生成物を1時間の間再び還流させて、常温まで冷却した。得られた冷却生成物から溶媒を揮発させて白色固体を得た。得られた白色固体である粗生成物(crude product)を乾燥エーテルで処理して不純物を除去し、また、不溶性物質を濾過して除去した。ろ液を蒸発させて、得られた固形物を少量の冷たい乾燥CHCl3に添加した。生成物を濾過して真空下で乾燥し、下記化学式1aのジメチルスルホンジイソシアネートを製造した(2.1g、60%)。
【0107】
【0108】
(製造例2)化学式1bのメチル(スルホニル)メチルイソシアネート((methylsulfonyl)methyl isocyanate)の製造
化学式1bの化合物をWO2009077741に記載された変形された方法に従い次の通り製造した。(メタンスルホニル)酢酸メチルエステル(Methanesulfonyl)acetic acid methyl ester (14.9g、0.98mol))を同じ体積のn-ブタノールおよびエタノール(100ml)の混合物に溶解し、ここにヒドラジン水和物溶液(9.2g、0.147mol)を添加した。得られた混合物を2時間還流した後、0℃で冷却して、濾過および乾燥してメチルスルホニル酢酸のヒドラジド(hydrazide of methylsulfonylacetic acid)を得た(13.4g、90%)。
【0109】
得られたヒドラジド(5g、0.03mol)を1M HCl/CHCl3の二相溶液(45ml/45ml)に溶解し、ここにNaNO2(15ml H2O中に3.17g)水溶液を0℃で滴加添加した。得られた反応混合物を10分間攪拌した後、有機層を分離して、水層をCHCl3で抽出した。分離された有機層である複合有機抽出物をMgSO4上および0℃で乾燥させて濾過した。ろ液を蒸発させて、得られた固形物を少量の冷たい乾燥CHCl3に添加した。生成物を濾過して真空下で乾燥し、下記化学式1bのメチル(スルホニル)メチルイソシアネートを製造した(1.6g、36%)
【0110】
【0111】
(実施例1)
電解液組成は下記のとおりである。
(電解液組成)
塩:LiPF6 1.5M
溶媒:エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート:ジメチルカーボネート(EC:EMC:DMC=2:1:7の体積比)
添加剤:下記化学式1aで表されるジメチルスルホンジイソシアネート0.5重量%
追加添加剤:フルオロエチレンカーボネート7重量%、LiBF40.2重量%、スクシノニトリル0.25重量%
【0112】
添加剤および追加添加剤の含有量は電解質全体含有量100重量%に対する値である。
【0113】
【0114】
LiNi0.88Co0.105Al0.015O2正極活物質96重量%、ケッチェンブラック導電材2重量%およびポリビニリデンフルオライド2重量%をN-メチルピロリドン溶媒の中で混合して正極活物質スラリーを製造した。前記正極活物質スラリーをアルミニウム箔にコーティング、乾燥および圧延して正極を製造した。
【0115】
天然黒鉛(平均粒径(D50):5μm)とSi-C複合体が89:11の重量比で混合された混合物である負極活物質、スチレン-ブタジエンゴムバインダおよびカルボキシメチルセルロースをそれぞれ98:1:1の重量比で混合し、蒸留水に分散させて負極活物質スラリーを製造した。
【0116】
前記Si-C複合体は人造黒鉛およびシリコン粒子を含むコアおよび前記コアの表面にソフトカーボンがコートされた形態であり、この時、人造黒鉛の含有量はSi-炭素複合体全体重量に対して40重量%であり、前記シリコン粒子の含有量は40重量%であり、前記非晶質炭素の含有量は20重量%であった。前記ソフトカーボンコート層の厚さは20nmnmであり、前記シリコン粒子の平均粒径(D50)は100nmであった。
【0117】
前記負極活物質スラリーを銅箔にコーティング、乾燥および圧延して負極を製造した。
【0118】
前記電解質、前記正極および前記負極を用いて通常の方法で、円筒型リチウム二次電池を製造した。
【0119】
(実施例2)
前記化学式1aの添加剤の代わりに、下記化学式1bの添加剤を0.5重量%使用した電解質を使用したことを除いては前記実施例1と同様に実施してリチウム二次電池を製造した。
【0120】
【0121】
(実施例3)
前記化学式1aの添加剤含有量を0.5重量%から、0.1重量%に変更した電解質を使用したことを除いては前記実施例1と同様に実施してリチウム二次電池を製造した。
【0122】
(実施例4)
前記化学式1aの添加剤含有量を0.5重量%から、1重量%に変更した電解質を使用したことを除いては前記実施例1と同様に実施してリチウム二次電池を製造した。
【0123】
(実施例5)
前記化学式1aの添加剤含有量を0.5重量%から、3重量%に変更した電解質を使用したことを除いては前記実施例1と同様に実施してリチウム二次電池を製造した。
【0124】
(参考例1)
前記化学式1aの添加剤含有量を0.5重量%から、0.09重量%に変更した電解質を使用したことを除いては前記実施例1と同様に実施してリチウム二次電池を製造した。
【0125】
(参考例2)
前記化学式1aの添加剤含有量を0.5重量%から、3.1重量%に変更した電解質を使用したことを除いては前記実施例1と同様に実施してリチウム二次電池を製造した。
【0126】
(比較例1)
化学式1の化合物を添加しなかったことを除いては、製造例1と同様の方法でリチウム二次電池用電解質を製造した。
【0127】
(比較例2)
前記化学式1aの添加剤の代わりに、下記化学式5の添加剤0.5重量%を使用して製造された電解質を使用したことを除いては、前記実施例1と同様に実施してリチウム二次電池を製造した。
【0128】
【0129】
*直流内部抵抗(DC-IR:Direct current internal resistance)の評価
実施例1~5、比較例1および参考例1~2で製造されたリチウム二次電池を60℃で充電状態(SOC,state of charge=100%)で30日間放置して、高温(60℃)放置時の抵抗増加率を評価した。その結果を下記表1に示した。
【0130】
初期直流抵抗(DC-IR)は互いに異なる電流を印加した時のそれぞれの電流差および電圧差から計算したものであって、次のように実施した。
【0131】
リチウム二次電池を満充電状態(SOC,state of charge=100%)で10秒間10Aの定電流で放電した。次に、10秒間1Aの定電流放電した後、4秒間10Aの定電流放電した。
【0132】
初期直流抵抗(DC-IR)は18秒および23秒のデータから式ΔR=ΔV/ΔIによって計算した。すなわち、(10A 10秒放電、1A 10秒放電および10A 4秒放電後の測定電圧値-10A 10秒放電および1A 8秒放電後の測定電圧値)/10A 10秒放電、8秒放電後の電流値により求めた。
【0133】
高温直流抵抗はリチウム二次電池を満充電状態(SOC,state of charge=100%)で10秒間10Aの定電流で放電し、10秒間1Aの定電流放電した後、4秒間10Aの定電流放電した後、60℃で30日間保存して、電圧および電流値を測定した後、初期直流抵抗の測定と同一に計算して得た。また、高温直流抵抗増の加率は保管直前の直流抵抗値と、30日後測定した直流抵抗値で、下記式1により求めて得た。
【0134】
[式1]
DCIR増加率=[DCIR(30d.)-DCIR(0d.)]/DCIR(0d.)×100%
式1中、DCIR(30d.)は30日後DCIRを示し、DCIR(0d.)は保管直前のDCIRを示す。
【0135】
【0136】
前記表1に示すように、化学式1aまたは化学式1bの添加剤を含む電解質を使用した実施例1~5のリチウム二次電池の高温貯蔵時、DC-IR増加率が添加剤を含んでいない電解質を使用した比較例1より低く示されたので、抵抗増加の減少効果に優れることがわかる。
【0137】
また、添加剤を使用しても、その含有量が過度に少量(0.09重量%)または過度に過量(3.1重量%)である参考例1と参考例2の場合もまたDC-IR増加率が実施例1~5より高く示され、特に過量使用した参考例2の場合は添加剤を使用していない比較例1よりもDC-IR増加率が高いことがわかる。
【0138】
さらに、添加剤としてスルホニル基(SO2)とイソシアネート基(NCO)が直接結合されている化学式5の化合物を使用した比較例2の場合、高温貯蔵時、DC-IR増加率が実施例1~5より高く示されたので、スルホニル基(SO2)とイソシアネート基(NCO)が直接結合された場合には、負極および正極表面に過度に厚い膜が形成されて抵抗増加の抑制効果が劣化したものと考えられる。
【0139】
*サイクル寿命特性の評価
前記実施例1~5、前記比較例1および前記参考例1~2により製造されたリチウム二次電池を45℃で4A、4.2V、100mAカット-オフ充電、10分休止および10A、2.5Vカット-オフ放電、30分休止の充放電条件で250回充放電を実施した。1回放電容量、500回サイクル後、放電容量を測定し、1回放電容量に対する500回放電容量の比を計算して下記表2に1回放電容量(初期放電容量)、500回サイクル後、放電容量および容量維持率を示した。
【0140】
【0141】
前記表2に示すように、化学式1aまたは化学式1bの添加剤を含む電解質を使用した実施例1および2の500回サイクル後、容量維持率が比較例1より高く示されたので、抵抗増加の減少効果に優れることがわかる。
【0142】
また、添加剤を使用しても、その含有量が過度に少量(0.09重量%)または過度に過量(3.1重量%)である参考例1と参考例2の場合もまた、容量維持率が実施例1~5より低く示されたことがわかる。
【0143】
さらに、添加剤としてスルホニル基(SO2)とイソシアネート基(NCO)が直接結合されている化学式5の化合物を使用した比較例2の場合、高温貯蔵時、容量維持率が実施例1~5より低く示されたので、スルホニル基(SO2)とイソシアネート基(NCO)が直接結合された場合には、負極および正極表面に過度に厚い膜が形成されてサイクル寿命特性の向上効果が劣化したものと考えられる。
【0144】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造でき、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更せず他の具体的な形態で実施できることを理解することができる。したがって、上記一実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。